キノの旅SS 「踏襲」 「ボイスレコーダーの国」back

キノの旅SS 「踏襲」 「ボイスレコーダーの国」


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1:
〈目次〉
以下の順でupしていきます。
1、『踏襲?What does the boy choose?― b 』
2、『ボイスレコーダーの国?Fortune comes to a merry home?』
3、『踏襲?What does the boy choose?― a 』
4、『続・ボイスレコーダーの国?thank you?』
〈まえがき〉
このスレを開いてくださってありがとうございます。
以下の注意点をご了承の上お楽しみ下さるようお願いします。
・今回原作にある話を元にした部分があるのですが、手元に全巻揃っていない状態のため、
 おかしい部分があるかもしれません。
・お持ちの原作キャラのイメージと異なることがございます。
・読みづらさや文体などの未熟な点をご了承ください。なお、アドバイスの範囲であれば
 どんどんレスお願いします。
・作者に英語力が無いため、サブタイトルは英訳サイトを利用しました。おかしな点ありましたら
 申し訳ありません。
少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。
よろしくお願いします。
2:
『踏襲?What does the boy choose?― b 』
警察署から出てきた女性に男が声をかけました。
「これで一つ片付きましたね。」
「えぇ、予定通りこれから出国します。」
女性が返事をしながら助手席に乗り込みます。
3:
問題なく出国して、しばらく車を走らせた後、森の入口に止めて、大きなリュックを取り出しました。
乱暴に地面に転がされたリュックは何回転かして止まり、男がふたの部分を開きます。
出てきたのは男の子でした。
「ここでお別れだ。」
男が言うと、
「お願いがあります。次の国まで乗せてください。」
子どもが言います。
4:
「ダメです。私達の受けた仕事はあなたを国外に出すことだけです。」
女性が抑揚なく言いました。
「お願いです。どうか、こんなところで放置されては飢え死んでしまいます。」
「この森の中をうまく生きれば、死ぬことはありません。」
「ですが、僕はこの森で一生を終えるわけには行きません。この森を抜けても、しばらく国はないのです。」
「あなたの言う通り、体一つで行ける距離に国はありません。どうしますか?」
ここまで聞いて、
「どうしますかって師匠、なぞかけはいいからもう行きましょう。」
男が横やりを入れます。
女性もここまでですと言わんばかりに踵を返して車に体を向けた時、
5:
「待ってください!僕と、取引をしてください!」
子どもが叫びました。
男が呆れて、
「あのなぁ、取引っていうのは――
男が言い終わる前に女性が止めました。なんとなく満足そうな表情をしているように見えました。
「内容次第です。話してみなさい。」
「ありがとうございます!次の国まで乗せてもらう代わりに、僕を売ってください!奴隷商でも何でも構いません。
 体は丈夫です!きっと売れます!」
「いいでしょう、その仕事引き受けます。」
「あ、ありがとうございます!」
6:
そうして短い間、黄色い車の中は三人になりました。
最初に着いた国は、軍事国で、兵隊の給料が良かったので、女性はそこで子ども売りました。
報酬は子どもの給料10年分で、たくさんもうけました。
―おしまい―
7:
『ボイスレコーダーの国?Fortune comes to a merry home?』
なだらかな草原を一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。
まばらに花を咲かせているものもあるが道らしき道はない。どれも背が低く、走行に問題は無いがすでに踏み潰された跡が続いているのでその上を走らせている。
モトラドは、後輪の脇に黒い箱を、上に鞄を載せていた。さらに燃料と飲料水の缶をいくつも取り付け、寝袋と共にロープで縛っている。
運転手は、白いシャツと黒いベストを着ていた。鍔と耳を覆うたれのついた帽子をかぶり、あちこちが剥げかかった銀色フレームのゴーグルをはめていた。
腰を太いベルトで締めて、右腿には、ホルスターでリヴォルバー・タイプのパースエイダー(注・銃器。この場合は拳銃)を吊っていた。腰の後ろにもう一丁、自動式を横向きにつけている。
8:
「キノ、見えてきたよ。」
モトラドが旅人に声をかけます。
「僕にはまだ見えないよエルメス。どんな風に見える?」
キノと呼ばれた旅人が尋ねます。
「城壁が見えるけど、丸い模様がたくさんある。」
「丸い模様?」
「模様というより何かが埋め込まれてる感じなんだけど、宝石とかガラスとかじゃないと思う。」
「ふーん。まぁもうすぐ分かるよ。」
「そうだね。」
それからしばらくの間、美味しいものがあるといいとか、オイルの交換を忘れずにねとか話しながら走っていると城壁の前に到着しました。
石造りの城壁に木製の扉。蝶番の部分にコードの様なものが見えます。
そして、確かに丸いものが埋め込まれていました。門を囲うように、アーチ状で何列かに並べられていました。
直径は親指の長さほどで、色は白。表面に赤い丸と緑の三角マークが入っています。
「とりあえず手続きをしよう。あれの正体は後でいいよ。」
そういって門の脇に建っている入国審査官がいるであろう建物へ向かいます。
9:
建物に入ると人の姿は見えず、机が一つと椅子が向かい合うようにして二つ。その向こうに頑丈そうな扉が一つありました。
「キノ、机の上に何かあるよ。」
エルメスに言われて机に向かうと、何やら機械が一つと、紙が一枚置いてあり、紙には機械の三角マークを押すように書いてありました。
大体なんなのか予想が付いたので警戒なく押します。そして半分予想が外れました。
『旅人さんようこそ!ただいま留守にしています。音声が始まると同時に来客信号が送られていますのですぐに向かいます。今しばらくお待ちください。』
そのようにハキハキとした人間の声がしました。
「てっきりカタコトの機械音声だと思ったんだけどな、驚いたよ。」
「ボイスレコーダーってやつだね。喋ったのをそのまま記録して再生出来るんだよ。」
「すると門の丸いやつも?」
「同じマークがついてるからたぶん。」
キノたちが話していると奥の扉の方からドタバタと騒がしい音が聞こえてきました。
扉の向こうが国内につながっていて慌てて駆けつけたといった感じです。
「そうこそ我が国へ!歓迎します。」
扉が開くと制服を着た青年が元気よく飛び込んできました。
「どうも。僕はキノ、こちらは相棒のエルメス。三日間の滞在を希望します。」
「いやぁ嬉しいなぁ、しばらくぶりの旅人さんです。こちらの書類にサインをお願いします。」
10:
「はい、結構です。最後にこれの説明を。」
そういって青年が出したのは丸くて白い例のやつでした。
「城壁に埋まっているのと同じものですね?」
「気づかれましたか?そうです。小型のレコーダーなんですが、赤い丸を押すと録音が開始されて、三分記録することが出来ます。途中でやめたい場合はもう一度赤い丸を。
 やり直しは出来ませんが三分以内なら何度でも続けて録音出来ます。三角を押すと再生です。この国の建国記念公園に、旅人さんがこのレコーダーを埋め込むための石碑
があります。良かったら記念にどうぞ。持ち帰って頂いても構いません。必要なければ出国の時に返却して下さい。」
「なるほどねー。でもなんのために?」
「はい、この国は旅人さんが多いとはいえず、それなら同じ旅人さんに来てもらえばいいと考えました。なぜ旅人さんに来て欲しいかというと、国を盛り上げたいからです。
 旅人さんに来てもらうことで、道中出会った他の旅人さんや商人にこの国のことが伝われば賑わうきっかけになります。それで、この国に記念を残して、またきた時に
 懐かしめるというのが、このレコーダーのアイデアです。ちなみに他の旅人さんの残したレコーダーも再生できますので名前を書いて残せば伝言板にもなります。まだ数は
少ないですけどね。」
「良く分かりました。ではあの門のレコーダーは?」
「それは、今から説明します!門を開けますので外へお願いします。」
11:
そう言って門の前に移動すると、青年がポケットから小さな機械を取り出しました。
「これはリモコンです。電波を飛ばして、機械の力で楽に門を開けます。では、スイッチを押します。」
すると、
『ようこそ我が国へ!』
いくつもの声が同時に響きました。そして同時に門扉が開き始めます。
「大歓迎だよキノ。」
「悪い気はしないね。いこうか。」
そう言いながら少し嬉しそうでした。
「あっ、そうそう。これもお持ちください。周りを気にせずレコーダーを再生したい時に耳に当てて使います。コードの先をレコーダーの下にある穴にさせば使えますので。」
「どうも。それでは。」
「はい、ゆっくりおくつろぎを!」
12:
「これじゃ宿の食事も期待出来ないね。」
「そうだね、正直な感想として美味しくなかったし、残念だよ。」
悪くない気分で入国したキノは早い時間に着いたこともあって宿をとる前に食事に行きました。
頼んだのは野菜のスープとパン、食後のお茶。
「スープは薄い塩味だけで野菜は入ってないくらいに少ないし、お茶もそう、普段同じティーバックで何杯か飲むことはあるけど、あんなに薄いのは初めてだ。」
「そのうえ高かったね。」
「大した大歓迎だよ。」
ついに皮肉まで飛び出しました。
「まぁ、まぁ。泣いた角には福きたるって言うじゃん!」
「笑う門には福きたる、だよ。とても笑える気分じゃないなぁ。」
「そうそれ!そう言わずに笑ってみなよ。」
「あははは・・これでいいかい?」
「キノにとって食事がどんなものか理解したよ。」
エルメスが呆れて、
「仕方ないね、せめてシャワーとベッドだけでも堪能しよう。」
「ふて寝だね。」
宿に向かうことにしました。
13:
宿に向かう途中、
「ねぇ、キノ。あれじゃない?記念公園ってやつ。」
「たぶんそうだね。」
「行ってみようよ、他の旅人がどんなことを記録してるか、おもしろそーじゃん!」
「まぁ、気は紛れるかもね。」
まだちょっとがっかりしたままのキノもエルメスの提案を飲みました。
公園の中に入ると石碑はすぐに見つかりました。青年は数が少ないと言っていましたがそれでも数十個はレコーダーが埋まっています。
「試しにどれか再生してみなよ。」
エルメスが促しました。
「うーん、それじゃあこれにしようかな。」
中でも埋め込まれて随分経っているように見えるものの一つを選んでボタンを押しました。
15:
『これを聴いているやつ!見た目に騙されるな!おんぼろで黄色い車に気をつけろ!乗っている二人組は悪魔だ!』
それだけ録音されていました。
「キノ。これ、どれくらい前だと思う?」
「さぁ。」
答えながらもう一つ押しました。
『くそっ!黒い長髪の女と背の低い男、この二人組に気をつけろ!黄色くてぼろい車に乗ってる二人だ!
 パースエイダーの扱いがハンパじゃねぇ!絶対にやりあうな!』
「ねぇ、キノこれってさぁ。」
「うん?」
さらに一つ押しました。
『黄色い車に乗った旅人さん。ついに僕の戦いの時が来ました。あの時小さかった僕にも奥さんが出来、お腹の中には赤ちゃんがいます。
 生まれてくる子どもは、両親を見ずに育ち、一度も会うことはないかもしれません。ですが、僕は後悔しません。
 子どもが生まれたら、妻と共に仲間たちと合流し、すぐに故郷へ向かいます。今があるのはあなたがたのおかげです。これが届くかは分かりませんが、
直接会うことよりは可能性があると思い、感謝を込めてここに残します。』
「恨まれたり感謝されたり忙しい人だったんだね、まるでキノだ。」
「そりゃぁ、『師匠』だからね。」
そう言って少し笑いました。
17:
「そうそうその調子。」
エルメスがおだてて、
「それじゃあ行こうか。」
キノがエルメスに跨ってスターターに足をかけた時、
「あっ、キノ待った。あれ!」
「どれ?」
「上から三列目の右から四番目!」
言われた場所をキノが見るとそこには、【キノへ】。子どものような字で書いてあるレコーダーがあった。
自分でなくても、もう一人のキノかも知れない。どちらにしても興味はあった。
自然とキノの手がボタンに伸びる。聞こえてきたのは覚えのある男の声だった。
『やぁ、分かるかい?時間も限られているので手短に話す。必ず入国の時に渡された耳あてを使って欲しい――
ここで一度言葉が切れたので、その間にコードをレコーダーに繋げて耳あてをする。
再び音声が流れると、キノの顔が険しい物になる。
「エルメス。そこからあっちにある売店の前に並んでる新聞、日付まで見える?」
「見えるよ。あと、なんか大勢こっちに向かって来てる。けどそれを最後まで聴くくらいの時間は充分あるよ。」
平然とした口調で言い、
「そういうことはもう少し早く教えて欲しかったよ。」
キノが憎まれ口で返しました。
18:
そして再生ボタンを押してちょうど三分になるかという時に、キノの顔が和らぎました。
「終わった?」
「うん。ちょっと待って。」
そう促すとポケットから自分がもらったレコーダーを取り出して赤い丸を押すと、
『どういたしまして』
一言だけ言って空いている穴へ埋め込みました。
「刀のお兄ちゃんに?」
「さぁね。それより今は出国しないと。」
言いながら鞄からお手製の小型爆弾を懐に忍ばせました。
「あの人達、やっぱりそうなんだ。」
「そういうこと。出来ればこういう事はしたくないんだけどね。」
19:
キックスターターでエンジンをかけるとくぐったばかりの門へ向かいます。
「どうして来た方へ行くのさ?」
「反対側の門扉も木製とは限らないからね。もしこの爆弾で壊せない様な扉だったら面倒なことになる。」
「流石、次は本物の大歓迎だといいね。」
「そう願いたいよ。」
そうして、門が見えると爆弾を投げて届く距離で一度止まります。
「残念、門にも待ち伏せされてたね。まぁ、当然と言えば当然か。」
「た、旅人さん!悪く思わないでください!」
入国の時の青年でした。その手にはパースエイダーが握られています。周りにいるあと五人ほども持っていましたが、全員の手元がガタガタ震えていました。
「こ、こんなこと、と。本当はしたくないんです、す、す。抵抗しなければ命だけは、は、助けま、ま、す。」
「ガッチガチだね。」
「はぁ、仕方ないね。」
20:
バンッ!バンバンッ!
残念そうな一言のあと、リヴォルバーの銃声が三つ続き、城壁の上からライフルタイプのパースエイダーが三つゴトンと音を立てて下に落ちてきました。
『ヒッ!』
五つの悲鳴が聞こえるよりも早く、
パンパンパンパンパンパンッ!
今度は自動式の銃声が響き、青年たちのパースエイダーが手元を離れました。
『あわわわわわわわわ・・・』
「ここに爆弾があります。その扉を木っ端微塵に出来ます。乱暴なことは出来ればしたくありません。開けてください。」
落ち着いた口調でキノが言い、
「もちろん、人間もねー。」
エルメスが付け加えました。
21:
『ひいいいいいいいいぃぃぃ!!』
同じような悲鳴をあげながら散り散りに逃げては腰を抜かし、その中の一人がブルブル震えながら機械をポケットから取り出すと門が開いていきます。
「僕が通ったらすぐに閉じてください。」
キノが指示を出し、
「キノ。」
エルメスが名前だけ呼ぶと、キノが正確に狙える位置まで近づいてきている後方の集団に向けて爆弾を投げます。
『ば、爆弾だ!』
気を取られているうちにキノ達は国を出て行きました。
22:
なだらかな草原を、エルメスに乗ったキノが走っていました。
「キノ、それでどういう訳だったのさ?」
「あぁ、シズさん達は今も定住出来る国を探しているって。国政が落ち着いていて、人柄も良いような。それで、ある日あの国を訪れた。」
「それでそれで?」
「簡単に言うと、さっきみたいなことになったらしい。早いうちに気づかせてくれて助かったよ。」
「なるほどねー。で、それだけ?」
23:
「それだけって?」
「なんか隠してない?もしかして愛の告白とか?」
「まさか。どうしてさ。」
「聴き終わった後、少し嬉しそうだったじゃん。」
「そうかな?でも、エルメスの言うとおりだったな。」
「へ?何がさ?」
「笑う門には福きたる。さ。」
「あー!やっぱり何か隠してるんじゃーん!教えてよー。」
「あははは!何にも隠してないってば。」
「ケーチー!」
拗ねたエルメスに乗った、穏やかな顔をしたキノが走っていました。
―おしまい―
24:
『踏襲?What does the boy choose?― a 』
よく晴れた日の太陽が一番高く昇る頃、一軒の家の庭で子どもが一人遊んでいた。
10歳ほどの少年で、しきりに門の方を気にしていた。
門といっても門柱が立っているだけで扉は付いていない。
「母さん遅いな、何かあったのかな。」
少年は心配した。
25:
結局母親が帰ったのは遊ぶのを止めて、おやつを食べて、また遊んで、太陽が沈みかけた頃だった。
ボロボロのバギーに乗った白い髪に緑色の瞳をした女性で、後部座席には手榴弾だとかロケットランチャーのような物騒なものをいくつもシートを被せて隠して載せてある。
門柱にぶつけそうな勢いでエンジンをヴンヴンと唸らせたまま敷地内へバギーをすべり込ませる。
26:
「母さん!ど、どうしたの!」
母親が無事に帰ってきた安心よりも驚きが先に声に出る。
「乗りなさい!早く!」
普段見せない母親の態度に男の子の体が硬直する。
「何してるの!早く!」
母親も冷静さを失い、うまく言葉が出ない。
そんな無駄とも言えるやり取りをしているとエンジン音が一つ近づいてくる。
母親には聞き覚えがあった。先程から自分を追いかけてくる黄色い車。ボロでスピードも大して出ないのに確実に距離を縮めてくる。
綿密に下調べをしてある証拠だ。小型であることを活かして細かい路地まで使ったのだろう。
「間に合わなかった.・・」
27:
少し前、一台のバギーを追いかけながら運転手の男がぼやきます。
「師匠、そろそろこの車買い換えません?新品ならとっくに追いついてますよ。」
男は少し背の低いハンサムな男で、師匠と呼ばれたのは長い黒髪が艶やかな妙齢の女性で助手席に座っていました。
「あなた一人で仕事を終えたなら考えてもいいです。」
「え!ホントに?師匠熱でもあります?」
予想外の返答に男が返しました。
「失礼ですね。どうやら追いかけっこは終わりのようですよ。」
なんとか確認できる程度の距離でバギーが建物の敷地内に入っていくのを捉えながら女性が言いました。
28:
門柱で体が隠せる位置に黄色い車が止まると男が、
「おっと、下手に動かないで下さいね。撃たなきゃいけなくなるんで。」
バギーの後部座席を漁っている母親の動きを見逃さず運転席の窓を開けて言いました。門柱の脇から銃口がしっかり母親を捉えています。
「国の雇われもんかい?悪いけど、まだ私は死ねないし、捕まるわけにも行かないんだよ!」
「お仲間も皆捕まったんだし、諦めたらどうです?」
「そんなのは解ってるさ!けど最後にひと仕事残っててね!」
そんなやりとりをしているといつの間にか助手席にいた女性が堂々と門から姿を見せました。
「師匠!?」
「もう一人居たのかっ!」
二人が驚き、母親が咄嗟に後部座席から手榴弾に埋まっていた自動式のハンドパースエイダーを抜きました。
29:
パンッ!!
「うっ・・。」
先に打ったのは男でした。母親の抜いたパースエイダーは引き金を引かれることなく地面に転がっていきます。
「まぁ、熱くならずにお話をしませんか。何事も確実な方がいいでしょう。」
女性が少し大袈裟に周囲を確認する素振りを見せながら言いました。
「なるほど」
女性の考えを察したのか男が小さく呟きました。
30:
「母さん、僕のことはいいからね。父さんの敵をとるんだろう?」
状況を察したにしても年齢にそぐわない冷静さで少年が口を開きました。
「・・・」
母親は無言のまま少年を抱き抱えると猛ダッシュで家の中へ駆け込みます。何かを覚悟したような顔でした。扉は空いたままです。
その動きを見て女性と男が追いかけます。パースエイダーを構えながら、扉の両側の壁に背中をつけて一度止まり、一気に家の中に踏み込みます。
中に入ると女性は子どもを庇うように立っていました。それを見て、
「残念ながらあなたは助かりません。ですが、取引の用意はあります。」
女性が言いました。
「分かってる、好きなものを持っていけばいい。ただ、この子を国外に連れ出して欲しい。」
「理解が早くて助かります。」
そう言うと、女性と男は簡単に隠し通路を見つけるとその先にあった火薬や他の国で売れそうなものを持てるだけ詰め始めました。
31:
その間に、
「母さん、どうして!」
「いいかい?あんたは賢くて勇気のある子だ。けどね、母さんみたいに敵討ちなんて考えなくていいんだよ。」
「それじゃあ母さんも一緒に!」
「ダメだ、それじゃ仲間に顔向けできない。母さんは手を汚しすぎたんだ。あんたはそうならなくていい。
なんとしても生きて、ただ幸せになることを考えるんだ。」
そんなことを話していて、
「そろそろ行きます。あまり遅いと怪しまれますので。」
そう言って女性は母親を縄で縛ってバギーに積み込み、男が子どもを大きなリュックに閉じ込めて黄色い車に詰め込みました。
もちろん金目の物も忘れません。
32:
道中、男が運転しながら、子どもに話しかけているのか、それともそれ以外に誰かいるかのような口調で話しました。
「平和な国だって聞いてたんだけどなぁ。入ってみれば政府と反政府の抗争中とはね。
 伝統を守ってきた国の大臣が大統領の暗殺を目論んでいて、それに気づいた議員が暗殺されて、あれよあれよの内紛ってまぁ、
 よくある話さ。大臣がやろうとしてるのは私欲の政治だけど、まぁ、仕方ないよ、負けたんだから。」
リュックの中で、男への怒りなのか違う何かなのか、少年は涙を流していました。
―おしまい―
33:
『続・ボイスレコーダーの国?thank you?』
私の名前は陸。犬だ。
白くて長いふさふさの毛を持っている。いつも楽しくて笑っているような顔をしているが、別にいつも楽しくて笑っているわけではない。生まれつきだ。
シズ様が、私のご主人様だ。いつも緑色のセーターを着た青年で、複雑な経緯で故郷を失い、バギーで旅をしている。
同行人はティー。いつも無口な手榴弾が好きな女の子で、白い髪に緑色の瞳をしている。複雑な経緯で故郷を失い、そして私達の仲間になった。
34:
暗い草原を荷物満載のバギーが走る。後方には煙が見える。
私達は今朝ある国に入国し、先ほど出国した。
「ティー、ああいう方法をとるのは最後の手段だ。約束できるかい?」
シズ様が優しい口調で問いかけると、
「ん、分かった。」
短い言葉が返ってきた。ぶっきらぼうなようだが、これでいてティーが理解してくれるのはシズ様も分かっているので、それ以上は何も言わない。
36:
私達は、大歓迎を受けて入国した。
大歓迎と言っても、入国審査官の青年が一人と、城壁にたくさん設置されたたくさんの機械からの声だったが、あからさまな機械音よりは気持ちがいい。
音声と同時に鉄製の門扉が開き始めた。
安心して住める国を探している旅なので、これは期待できるかもしれないとシズ様も感じているように見えた。ティーはいつものことだが無口だった。
青年から、記念や伝言にお使いくださいと城壁に見えるものと同じ機械を渡されたので受け取って入国した。
住むつもりもあるので、使うことはないだろうと思った。シズ様もそうだったと思う。
37:
入国すると私達はまだ時間も早かったので、早国の調査に行くことにした。
結論から言うと、悪くはないが、一つ問題があった。作物の不作が続いていたのだ。
食べ物が無くなると、時により人は野蛮になる。奪うために殺したり、最悪共食いが起きる。
もちろん、そうなると安心して住むどころでは無いが、
「まだ、半年は持つだろう。持っている知識で立て直し出来るかも知れない。明日、役場に行こう。」
シズ様はそう言った。予想の範囲なので私は何も言わなかった。ティーも黙っていた。
39:
それから宿に向かった。すぐに見つかったがもう日は落ちていた。受付をして、案内係に部屋に案内される。受付係はどこかに連絡をとっていた。
部屋に入ると私が伝える前に、
「陸。案内係がどんな連絡をとっていたか聞こえたかい?」
と聞かれたので、
「今部屋に向かった。予定通りに。」
と、受付係の話したままを口にした。
「手遅れだったか、残念だよ。すぐに出国する。」
シズ様が言って、すぐに外に出た。宿には外で食事を済ませると伝えた。
40:
街の中をバギーで走っていると、ぽつぽつと松明のような明かりが灯り始めた。遠いものもあれば、近いものもある。それはどんどん数を増やした。
寄り道をした分、荒っぽい方法になる可能性があったが、誰も後悔はしていなかった。
門が近づくと、たくさんの松明が集まっていた。
「手荒なことはしたくありません!どうか門を開けて欲しい!」
充分な距離を取った位置でバギーを止めるとシズ様はそう言ったが、
「ふざけるな!」とか「こっちが何人いると思ってる!」
そんな言葉しか帰ってこなかった。
41:
シズ様の剣術の腕は確かだが、暗闇の中でパースエイダーが相手。しかも多勢となれば分が悪い。
それでもまだ、穏やかな方法を考えているようだったので、
「シズ様、このままでは囲まれます。家の一つや二つは仕方ないかと。」
そう進言した。
「仕方ないか。」
そう言って手榴弾を取ろうと後部座席に目をやると、いつのまにかロケットランチャーを構えたティーがいた。
シズ様は意図を汲み取ったのか、電池式のランプを付けた。燃費が悪い代わりにかなりハイパワーなやつだ。
するとすぐに、
「わ、わあああああぁぁぁぁ!」とか「に、逃げろぉぉぉぉ!」
そんな悲鳴があがって、散り散りに松明の火が散らばっていく。
叫び声が無くなり、人の気配が遠くなったのを見計らうと、
「手荒なまねはしたくありません!どうか門を開けて欲しい!」
もう一度そう言おうとして開いたシズ様の口は、言葉を発することなく開いたままだった。
42:
目の前を大きな弾が進んでいく。だんだんと小さくなり、やがてそれは物凄い轟音を響かせて門を周りの城壁ごと吹き飛ばした。
意図を汲み取ったというのは甘かった。ティーは撃った。
それが今、後方に見える煙だ。
しばらく静かにバギーを走らせていると、
「ティー、あの機械になんて録音したんだい?」
シズ様が尋ねた。けれどティーは静かに首を振って、
「秘密だ。」
と言って教えなかった。
「そうか、なら聞かないよ。でもティーのおかげで恩返し出来る可能性ができた。ありがとう。」
シズ様が言って、
「ん、問題無い。」
ティーが返した。
43:
そう、私達は寄り道をした。宿を出るときに、ティーがシズ様のセーターの裾を掴んで引き止めた。
「ティー、どうしたんだい?」
そう言われるとティーはポケットから機械を取り出して見せる。入国の時に渡された録音機だった。
「記念を残したいのかい?」
今度はそう聞かれて、返ってきた言葉は、
「キノに伝える。」
だった。
一瞬シズ様の顔が驚いた時のそれになり、すぐに和らいだ。
「分かった、そうしよう。」
そうして記念公園へと向かった。
もちろん私にも異論は無かった。一緒にいるモトラドはともかく、キノという旅人には恩がある。
ただ、その時はそれをティーが言い出した事を以外に思った。
45:
記念公園の石碑の前に着くと、シズ様が機械のスイッチを入れ、足早に説明をしていく。
今はこの国の年号でいついつだとか、調べた国の状況や現状、そんなことだ。
シズ様が喋り終えて一息つくと、ティーがまた裾を引っ張った。
「ティーも話すかい?」
シズ様が機械を差し出したので、
「ん。」
と言って受け取った後、こう付け足した。
「あっちに、行ってて。」
仕方なくシズ様は聞こえない位置まで距離をとった。私はさらに距離をとらされた。
46:
距離をとったのを確認して、ティーが口を開いた。言い終わるとどこで手に入れたのかペンを取り出し、何かを書いて、そして石碑に埋め込んだ。
ティーに誤算があったとすれば、私の聴覚がティーの考えているより優れていたことだ。
そしてそれは、私の気持ちを代弁するものでもあった。
ティーは確かにこう言った。
「あの時、シズの手当をしてくれて、ありがとう。」
―おしまい―
4

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