男「ちっ・・・また非通知電話かよ・・・」back

男「ちっ・・・また非通知電話かよ・・・」


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1:
Prrrr・・・
男「毎日毎日・・・よく飽きないな、コイツも。逆に関心するよ」
ここ一週間、毎晩9時になると俺の所に非通知電話がかかってくる。
ホントに9時ピッタシにだ。
悪戯にしてはよく精が出る。
Prrrr・・・
男「はぁ・・・うるさいなぁ」
Prrrr・・・
???「・・・」
Prr・・・ピッ
???「・・・っ!」
???「あっ・・・あああたし、メリー! 今あなたの・・・っ」
『ただ今、電話に出ることが出来ません。ピーという発信音の・・・』
メリー「・・・」
メリーちゃん「迎えに来て欲しいの…」 by ヽ(*゚д゚)ノ<ゼフィ on pixivボークス アクションドール CD-120 345208
3:
男「ふん。こっちは社会人なんだ。ガキのお遊びに付き合ってる暇はねーんだよ」
男「ふわぁ・・・寝るか」
『・・・お名前とご用件を入れてください。ただ今、電話に出ることが・・・』
メリー「・・・」
メリー「はぁ・・・」
メリー(今日も出ない・・・か)
6:
私は一年前、彼に捨てられた人形、メリーだ。
気がついたら、ゴミ収集車の中にいた。
あまりにも唐突だった。
メリー「結構可愛がられてると思ってたのにな・・・」
メリー(小さい時から、ずっと一緒だったのに・・・)
メリー「・・・ぐすっ」
メリー「許せないっ!」
私は彼への恨みを晴らすため、『呪いの人形』へと姿を変えた。
7:
魔女「恨めしいのかい。かつてのご主人様が」
夢の島。
そこはゴミ達の流刑地。
一年前、そこで埋もれていた私は、ひとりの魔女と出会った。
魔女「欲しいかい。その恨みを晴らす力が・・・」
魔女「どうしても欲するなら、お前に授けよう」
魔女「まぁ・・・制限付きの能力だけどね」
私は逡巡して、頷いた。
その時は体を動かすことは出来なかったけど。
魔女「ならば与えよう」
私は『呪いの人形』になった。
8:
社会人の奴が一年前まで人形持ってたってどうよwww
9:
私は話すことが出来るようになった。
歩くコトさえ・・・
魔女「それが出来るのは『恨みを晴らす意思』に基づく時だけだよ」
充分だ
私は彼が憎い・・・
絶対に許さない
魔女「お前は『恨み人』に近付き、呪い殺すことができる・・・ただし」
魔女「近付けるのは、彼が電話に一度出る度に、30メートルだけだ」
構わない。
電話をかけ続けて、いくらでも近付いてやる。
メリー「つもりだったのに・・・」
10:
まあ非通知じゃな
12:
メリー「電話に出てくれないんじゃ、玄関から一歩も動けないじゃない・・・っ」
メリー「はぁ・・・そういや昔から、根は臆病な人だったっけ・・・」
雷の日。
学校で虐められた夜。
そして、お父さんが死んだとき・・・
彼はよく私を抱いて眠ったものだった。
メリー「暖かかったな・・・あの時・・・」
13:
Prrrr・・・
メリー「今日も出ない・・・かな」
ザアアアア・・・
メリー「あ、雨」
16:
男「はぁ・・・疲れた。会社なんて、もうやめてーよ」
『何をやっとるんだ、たるんどるぞっ!』
『まぁ・・・もうちょっとしっかりしようぜ』
男「なんだよ、部長も、同僚も・・・ちょっとミスしたぐらいで・・・」
男「はぁ・・・」 スッ
男「ああ・・・そういや、もうないんだっけか、アレ・・・」
『アレ』と言うのは、俺がガキの頃親父に買ってもらった人形のことだ。
辛いときは、よく抱いて寝た。
今でも無意識のうちに手で探してしまう。
去年、母親がゴミと間違えて捨ててしまったが・・・
17:
親父の形見だったのに・・・
母を責め立てようと思ったが、泣いて謝られたのでそれ以上なにも言えなかった。
Prrrr・・・
男「・・・ったく、こんな日まで・・・」
Prrrr・・・
男「まぁ・・・今日はちょっと付き合ってやるか」
ちょうど『アレ』に代わる話し相手が欲しかったところだ。
18:
Prrrr・・・
メリー「はぁ・・・今日もダメか・・・」
メリー「クッシュン! はぁ・・・今晩は諦めよう」
Prr・・・ピッ
男『もしもーし』
メリー「っ!?」
20:
メリー(で、出た・・・っ)
男『もしもーし? おーい、せっかく出てやったんだからなんとか家よ』
メリー(ど、どどどうしよう・・・っ!)
一年振りの彼の声・・・
彼に言いたいことが、山ほどあったのに・・・
頭が真っ白になって、なにも出てこない。
メリー「あ、あああの・・・っ!」
男「?」
メリー「わ、私・・・メリーっ! 今、あなたのマンションの、玄関にいるの・・・っ!」
21:
男『はぁ? なんじゃそら?』
メリー「と、とにかくっ・・・そういうことですからっ!」
ピッ!
メリー「ハァ・・・ハァ・・・」
メリー「あ・・・っ」
メリー(『呪いの人形』の癖に敬語使っちゃった・・・)
メリー「台なしじゃん・・・」
だが、これで彼に30メートル近付ける。
まぁよしとしよう。
23:
男「・・・なんだってんだ」
『わ、私・・・メリーっ! 今、あなたのマンションの、玄関にいるの・・・っ』
男「玄関に・・・って、この雨の中か?」
まったくバカバカしい。
男「それにしても、メリーか・・・」
メリー・・・メリー・・・
男「!!」
男「『アレ』と同じ名前だ・・・っ!」
24:
なんてことだ・・・
偶然だろうか
男「いや・・・幼い少女の声・・・そしてメリーという名前・・・」
男「偶然にしては、出来すぎている・・・」
ということは、毎晩非通知電話をかけてきていたのは・・・
男「あ、あのメリーなのか?」
だとすれば・・・
だとすれば・・・
男「彼女は毎晩玄関の前で待ちぼうけを・・・」
男「・・・っ!」
28:
メリー「・・・っと、ここまでか・・・」
体が自動的に動かなくなった。
多分、ここが30メートルのラインなんだろう。
メリー「はぁ・・・遠いな。あと何回電話しなきゃいけないんだろ・・・」
だが諦める訳にはいかない。
彼だけは、絶対に許せないんだ。
メリー「何度だって、かけ続けてやるんだからっ!」
私はそう決意して、魔女に渡されたア○フォンを手に取った。
その時・・・
男「メリーっ!!」
メリー「っ!?」
31:
メリー「あ・・・あ・・・っ」
男「やっぱり・・・っ」
彼だ、どうしよう。
溜まった・・・溜まりに溜まった恨みが、言い尽くせないほどあるのに・・・
メリー「あ、あの・・・わ、私・・・っ」
男「メリー!」 ギュッ
メリー「・・・!?」
33:
男「メリー、会いたかった!」
メリー「!? あ、私・・・は」
男「ゴメンな・・・あの時、探したんだけど・・・どうしても見つからなくって」
メリー「な、なにを・・・」
男「もう絶対、手放したりしないからな!」
メリー「あ・・・っ」
懐かしい・・・
この暖かさ。
におい。
感触。
メリー「この・・・っ」
36:
ふざけるな。
捨てておいて。
今日はお前を呪い殺すために来たんだ。
絶対に許さない。
メリー「あ・・・っ」
男「・・・うん? なんだ、メリー」
メリー「あ・・・っ」
男「・・・?」
メリー「会いたかったです・・・ご主人様・・・っ」
溢れる恨み言を押し退けて口をついて出たのは、そんな言葉だった。
41:
コンニチハ ワタシ リカチャン
デンワシテネー
42:
男「俺もだよ、メリー・・・」
メリー「・・・」
男「・・・メリー?」
メリー「・・・」
男「おい、メリー、メリー?」
結局、メリーが動くところを見たのは、その夜だけだった。
彼女は今、部屋の棚に飾ってある。
昔と同じように・・・
辛い時、メリーはいつも俺に暖かい眼差しを向けてくれる。
昔と同じように・・・
ただ昔と違うのは、帰りが遅くなると彼女から電話がかかってくるようになったことだ。
非通知電話で。
<男「ちっ・・・また非通知電話かよ・・・」> 【完】
44:

46:
そういや恨みじゃないと動けないんだっけか
47:

男のところに戻ってからも怒ってる時は動けるってのは良いオチだった
55:
乙!
5

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