貴音「四条と五郎のラーメン探訪」井之頭五郎「……」back

貴音「四条と五郎のラーメン探訪」井之頭五郎「……」


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1:
年を越した気がしなかった。
 個人の貿易商をやっている俺には当然会社の集まりなどという物は存在せず、新年会なんて物が行われるはずもない。
 得意先への挨拶廻りは済ませたものの、やはり新年の実感は湧かず仕舞いだった。
 街のいたるところに見られる『迎春』の文字にも、俺はマンネリズムを感じてしまっている。
 いや、毎年変わらないのは当たり前なんだけど。……年のせいなのだろうか。
五郎「気分を切り替えないとなぁ……。今度、手頃な飲み屋で一人新年会とでも洒落込むか」
 ま、飲みはしないけど。
3:
ーーーー
 井之頭五郎は、食べる。
 それも、よくある街角の定食屋やラーメン屋で、ひたすら食べる。
 時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、彼はつかの間自分勝手になり、「自由」になる。
 孤独のグルメ──。それは、誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為だ。
 そして、この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の「癒し」といえるのである。
『孤独のグルメ』
6:
仕事で池袋に来たのは何度目だろう。
 来る度姿を変えているような気がする、この街。
 今日の仕事はかなり早く片づいてしまったので、俺はぶらぶらと駅からサンシャイン通りを散歩しているのだった。
五郎「東口は本当に若者の街だな」
 西口は西口でまた別ジャンルの若者の街なんだけど。
 未だにカラーギャングがいるってネットの噂で聞いたけど、本当にいるのかな。
7:
適当に洋服屋や雑貨店を見て回っていたが、特にめぼしい物は見つからなかった。
五郎「スーツ以外はあんまり着ないしな……」
 そして、腹が減っていることに気づく。
五郎「けっこう歩いたからなぁ」
 さて、何を喰おう。
 そういえば、池袋はラーメン屋が台頭してるってよく聞くな。
 一時期のつけ麺ブームの後押しもあるのかもしれない。
五郎「ちょっと探してみるか」
8:
魚介ダシのあっさりスープ……。
 濃厚豚骨つけ麺……。
 白醤油ラーメン……。
 チャーシューの代わりに鶏肉……へぇ。
 本当に色んな店がある。
 まるでラーメン博覧会を街ぐるみで年中開催してるみたいだ。
五郎「ん……ここは……?」
 シンプルな黄色い看板が目に留まる。
五郎「ラーメン二十郎……聞いたことあるな」
 確か、ガッツリ系の元祖とも言われるラーメン屋だ。
 二十郎インスパイアの店も多々あるらしいとか。
10:
五郎「入ってみるか……?」
 多少並んでいるようだが、それほど時間はかからないかもしれない。
五郎「……いや、やめておこう」
 こんなにラーメン屋を探しておいて難だが、今はラーメンの気分ではなかった。
 二十郎の前を立ち去る。
 その後しばらく歩いて、首を傾げた。
 ……さっき覗いたとき、何か違和感というか、変な物が見えた気がしたのだが、何だったんだろう。
 サブリミナル的違和感。
 ……まあ、いいか。
12:
当てもなく歩いていると、今度は黒い看板が目に留まった。
五郎「すた丼……?」
 ……店構えからしてがっつり系だ。
 まあ、麺よりは飯って気分だし……入ってみるか。
 地下に降りる狭い階段の壁には、聞いたことのないバンドの宣伝ポスターが所狭しと貼られていた。
五郎「なんだなんだ、これは」
 降りてみると、なるほど店の隣はライブハウスのようだった。
 この『店を詰め込んだ』感。
 雑多な池袋という街の縮図のようだ。
五郎「けっこう有名な店なのかな」
 支店展開してるみたいだし、テレビにも取り上げられてるみたいだ。
13:
五郎「食券タイプか」
 とりあえず、すた丼なるものを所望しよう。
店員「いらっしゃいませー。食券お預かりします。カウンター席へどうぞー」
 水はセルフサービスらしい。席に荷物を置いて、水を汲む。
 喉が渇いていたので、冷水機の前でで一杯飲み干してしまった。失礼。
 そしてコップを持っていそいそと席に戻ろうとした俺は、目を丸くした。
 俺の隣の席に、女性が座っていた。
 すらりと背が高く、銀色の髪が腰まで伸びている。
 ……さっきまで、こんな人座ってなかったよな?
15:
俺は店に入ったとき、「やっぱり男性客が多いんだなー」なんて暢気なことを考えていたはずだ。
 こんな目立つルックスの女性を見逃すはずがない。
 同時に、さっきのサブリミナルが鮮明になる。
 あれ? さっき二十郎にもいなかったか? この人。
 じろじろと見るわけにもいかないので、俺は黙って席についた。
 銀髪の女性は目をつぶってぴくりとも動かない。
 ……まるで息をしていないかのようだ。
 俺はきょろきょろと周りの様子を伺った。
 何しろ驚くほど美人だったので、周りの客が騒いでいるはずだと思ったのだ。
16:
しかし意に反して、他の客は平然としていた。
 一人の客は携帯を弄ったり、二人連れの客は連れと他愛ない会話を繰り広げたりしているだけだった。
 俺は少し怖くなった。
 まさか、この女性が見えているのは俺だけだったりしないよな。
 俺は横目で女性を見た。
 女性はまるでそれに気づいたかのように、同じく横目でこちらを見た。
 ドキッとした。断じてときめいたわけではない。
 むしろちょっと身を引いてしまった。
18:
女性はふっと笑顔を見せると、軽く会釈をしてきた。
 俺は怪訝な表情のまま、会釈を返した。
 その後、二人同時に正面を向き、ただじっと自分の丼を待った。
 何なんだ、一体。
店員「お待たせしましたー。すた丼肉増し飯増しです」
 隣の女性の注文のようだった。
 ……良かった。この女性、店員にも見えている。
 でもやっぱり、俺より先にここに座ってたってことだよなぁ。不思議だ。
五郎「ん? ……肉増し飯増し……?」
19:
おいおい。やたらガッツリだ。
 見た感じは小食のお嬢様タイプなんだが。
 ……さっきの二十郎は見間違いってことか。
 まさかあの後ここに来たわけでもあるまいし。
店員「お待たせしましたー。すた丼です」
 お、来た来た来ましたよ。
【すた丼】
 たっぷりのご飯の上にたっぷりの豚肉とネギのニンニク醤油炒め。
 脇にはたくあんが二枚。
 味噌汁と卵のサービス付き。
五郎「こりゃ美味そうだ」
 六百円にしてはなかなかのボリューム。
20:
五郎「いただきます」
 付いてきてくれたとこ悪いが、卵の処遇は味を見てから決めよう。
 重量感のある丼を持ち上げ、軽くかき込む。
五郎「はぐ……もぐ……」
 うん、いい感じだ。
 にんにくの香りがたまらなくご飯を勧める。
 しかし、人と会う予定のある日は絶対に食べられないな。
21:
五郎「もぐ……もぐ……」
五郎「よし、ここらで卵を入れてみるか」
 三割ほど食べたところで、卵を投入。
 あまり減らしすぎると卵感が強くなってしまう。
 軽く溶いた卵をかけ、さらにかき込む。
五郎「……うんうん。いいじゃないか」
 男の飯、って感じだ。
 スタミナ系の、胃袋にガツンと響く味。
 途中、たくあんを一口。
 このたくあんは助かる。豚尽くしの丼の中ですっごく爽やかな存在だ。
23:
五郎「けっこうなボリュームだったは……」
 締めの味噌汁をすする。美味い。
 ちらりと隣の席の様子を伺う。
 ……丼に夢中で少し忘れかけていた。
 女性は既に丼を空にしていた。
 ……これの肉増し飯増しって、なかなかだぞ。
「真、美味でした」
店員「ありがとうございましたー!」
 女性は妙な言い回しで完食を告げると、風のように去っていった。
24:
五郎「けっこうなボリュームだった……」
 締めの味噌汁をすする。美味い。
 ちらりと隣の席の様子を伺う。
 ……丼に夢中で少し忘れかけていた。
 女性は既に丼を空にしていた。
 ……これの肉増し飯増しって、なかなかだぞ。
「真、美味でした」
店員「ありがとうございましたー!」
 女性は妙な言い回しで完食を告げると、風のように去っていった。
26:
…………
 手近な喫煙所で煙草を吸っている最中も、あの女性のことが頭から離れなかった。
 狐につままれたような、あるいは妖怪に邂逅してしまったかのような不可解さがあった。
五郎「まあ、池袋もなかなか目立つルックスの人は多いからな……」
 原宿、渋谷ほどではないが。
五郎「それにしても今日は寒いな……もう事務所に戻るか」
 帰ったら、風呂に入って一眠りだ。
 しかし、目が覚めたとき、あの女性のことを本当に夢だったように思うかもしれない。
28:
…………
「らぁめん。それは最早ただの食にあらず。日々探求、精進していく道であり、人そのもの……」
 突然、頭の中にモノローグが流れ始める。
「らぁめんは文化。らぁめんは進化。らぁめんは可能性……」
 なんだなんだ。この意味不明なラーメンポエムは。
五郎「……はっ! ここは……?」
「全国のお茶の間の皆様、ご機嫌麗しゅう。四条貴音でございます」
 気づけば俺はどこか路上に立ち尽くしていて、隣にはあの銀髪の女性がいた。
31:
五郎「あ、あなたは……」
貴音「さて、此度の『四条貴音のラーメン探訪』。亜美と真美と共にお送りする予定でしたが、諸事情により"げすと"を迎えての放送となります」
 なんだ? 何が始まるんだ?
 ゲスト? 放送?
 貴音と名乗った女性は戸惑う俺を無視して進行する。
貴音「それではご紹介します。本日のげすと、井之頭五郎殿でございます」
五郎「えっ」
 そこでようやく、俺は目の前の撮影スタッフたちに気づいた。
 何だこれは。テレビ?
33:
夢……だよな、これ。
貴音「五郎殿は"ぐるめ"として名高いお方です。本日お送りするのは『四条貴音のラーメン探訪』特別編。題して……」
貴音「四条と五郎のラーメン探訪」
五郎「……」
貴音「笑うところです、五郎殿」
 どのあたりが?
34:
貴音「とにかく、参りましょう。いざ、本日の決戦の舞台へ」
五郎「あの……話の流れから察するに、ラーメンを食べにいくだけですよね?」
貴音「五郎殿!」
五郎「!?」
貴音「甘い考えでは……呑まれますよ、らぁめんに……」
貴音「らぁめんは呑んでも呑まれるな、とよく言います」
五郎「……ラーメンは飲み物じゃないのでは」
 実に夢らしいわけのわからなさだ。
36:
見覚えのある黄色い看板。
 ラーメン二十郎だ。
 まさか初来店が夢の中とは……。
貴音「頼もう!」
五郎「……道場破りか何か?」
貴音「まずはこの面妖な機械にて食券を手に入れるのです」
 そう言うと、貴音はボタンを連打し始めた。
五郎「…………」
貴音「……?」
五郎「いや、お金を入れないと……」
貴音「……初見で看破するとは。さすが五郎殿」
 いかん。頭痛がする。
37:
貴音「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ!」
 出た。謎の呪文。
 噂には聞いたことがあったが、実在したのか。
五郎「ええと、じゃあ私もそれで」
貴音「なりません! 五郎殿!」
五郎「!?」
貴音「注文を省略してはいけません。注文というのは、例えるなら『一騎打ちの前の武士の口上』……『怪盗の犯行声明』! 疎かにしてはなりません」
五郎「……なるほど」
 一理ある。
 ……いややっぱりない。
38:
ややあって、『二十郎』が姿を現した。
【二十郎ラーメン】
 もやしとキャベツの存在感が圧巻。
 叉焼とこってり系のスープが男らしい見た目を演出。
 とにかく麺が見えない。
五郎「す、すごいビジュアルだ……」
 もやしの山が……いや、塔が建っている。
貴音「いただきます」
五郎「早くないか!?」
 テレビ的に何かこう……無いのだろうか。
40:
言うが早いか、貴音はもやしの山を次々に口の中へ放り込み始めた。
五郎「……いただきます」
 黙ってみていても仕方ないので、俺も食べるとしよう。
五郎「もぐ…………ん。美味いな」
 しつこすぎないこってり。
 こう言っては何だが、もっとえげつない味を想像していた。
 夢なんだから俺の想像通りの味で良さそうなもんだが。
五郎「でも……うん、『二十郎』って感じだ」
 早いところもやしの牙城を崩して麺と対面したいところだ。
42:
無言で食事を続けること数分。
 スタッフのカンペが目に入る。
『黙らずにレポートお願いします』
 俺と貴音は手を止めずに答える。
五郎「物を食べるときはね。誰にも邪魔されず自由で、なんというか……」
貴音「救われてなければいけないのです」
五郎「一人で……」
貴音「静かで……」
五郎「豊かで……」
 スタッフが再びカンペを出す。
『でもグルメレポートのコーナーなんで……』
五郎「……そうか」
 そもそも今一人じゃないしな。
43:
…………
 空になった丼を見つめて、俺は呆然としていた。
 ……さすがに食い過ぎた。
 対する貴音の表情は涼しいものだった。
貴音「真、美味でした」
 すた丼屋で聞いたフレーズ。
 なんというか、現実離れした女性だ。
 いや、夢なんだから当たり前か。
45:
貴音「本日の『四条と五郎のラーメン探訪』、ご視聴ありがとうございました」
 ラーメン食べて終わったけど、いいのか。そういう番組なのか。
貴音「次回もまた、新たなる可能性を求めて……」
五郎「…………」
 謎のテレビ出演は終わりを告げたようだ。
 貴音は満足げな表情でこちらを向いた。
貴音「五郎殿」
五郎「?」
46:
貴音「響がお世話になったようですね。よろしく言っておりました」
 響……という名前には一人しか心当たりがない。
 何故あの子の名前が出てくるのだろう。
貴音「またお会いしましょう。そのときは五郎殿のおすすめを是非」
五郎「え、ええ」
 また夢に出てこられても。
 困りはしないが、何と言えばいいのかわからない。
貴音「では。五郎殿に、良き出会いがありますように」
五郎「……ラーメンとの出会い?」
貴音「ラーメンに限らず、あらゆる『食』との出会いです」
五郎「…………」
47:
…………
五郎「意味不明な夢だったな……」
 気づけば、俺は事務所のソファで横になっていた。
 しかし……何者だったんだろう。
 いや、考えるだけ無駄か。
 池袋でのインパクトが強すぎて夢に見てしまったのだろう。
 大きく伸びをする。
 何か食べに行くかとも思ったが、不思議と全くお腹が空いていなかった。
 夢のせいかな……。
『さて、今週の生っすか!?サンデーもそろそろ終わりの時間が近づいて参りました』
五郎「……いかん。テレビつけっぱなしで寝ちゃってたのか」
 テレビから流れる司会の女の子の声で、俺は我に返った。
51:
『生っすか!?サンデー』……。
 そういえばこの番組、765プロダクションのアイドルたちがやってる番組なんだっけ。
 ちょっと見てみれば良かったな。
『今週の響チャレンジ、なんと成功でーす!』
『や、やったぁ! 実家のみんな見てるか!? 自分、今週はやり遂げたぞ!』
 もはや聞き慣れた声。
 765プロでは最初に出会ったアイドルで、俺と一番関わりがあるであろうアイドル。
 我那覇響が画面の向こうで嬉しそうに飛び跳ねていた。
 番組の名物コーナーの一つ、『響チャレンジ』は成功率の低さが人気の秘訣だと聞いたことがある。
 なんというか……頑張れ、響。強く生きるんだ。
53:
…………
 後日、新年最後の挨拶回りを終えるために俺は765プロへ脚を運んだ。
五郎「結局一月中旬になっちゃったな……」
 とりあえず、これで一段落。気分一新。
 これから始まる2013年。
 良き出会い……か。
 適度に忙しく、適度に美味いものを食べられる年になるといいな。
54:
五郎「ごめんください。先日お電話させていただいた井之頭五郎ですが」
 扉の向こうから足音が近づいてくる。
 さて、誰が出てくるかな。
 響か、雪歩か、美希か、音無事務員か。
 プロデューサーさんか、はたまたまだ見ぬアイドルの誰かか。
 扉が開く。
 その、どれでも無かった。
「またお会いしましたね、五郎殿」
 ……俺はこの光景をこそ、夢だったように思うかもしれない。
終わり
5

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