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従妹「にぃにぃ久しぶりっ!」


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1:
従妹「早く一緒にお風呂に入ろっ」
男「おう」
母親「はぁ、また始まった……」
従妹「ん?」
母親「従妹ちゃん、悪いこと言わないから、男と入るのは止めなさい」
従妹「えー何でー?」
母親「何でって……従妹ちゃんも来年から中学生よ?」
従妹「うんっ、でもそれとこれは別だもんっ」
母親「……うぅ……なんて無垢な子なの……?」
母親「男、あんたがしっかりしなきゃ駄目よっ」
男「俺にどうしろって言うんだ……断ればいいのか?」
従妹「それは駄目だもんっ。にぃにぃと一緒に入るっ」
母親「従妹ちゃん……」
3:
──現在
母親「……あんた、昼間からだらっとしないっ」
男「うるせーな……久しぶりの実家なんだからいいだろ?」
母親「大学から課題とか用意されてるんじゃないの?」
男「まだ休みは始まったばっかりだ。焦る必要はない」
母親「もうっ、だったら家の手伝いでもしなさい」
男「あーもうっ! 少しぐらい静かにしろって!」
母親「テレビ消すっ!」
男「うわっ! 今、いいとこだったのに……」
母親「ダウンタウンは下品だから、母さん嫌いよ」
男「知らねえよ……」
4:
母親「そうだ、今日から従妹ちゃん我が家で預かることになったから」
男「……うん、あー従妹ね」
男「って、えっ!?」
母親「昨日、佐智子さんから電話がかかってきて、『よろしくっ!』って」
男「いつもながら豪快な人だな……それでオーケしたわけか」
母親「だって仕方ないじゃない。それに、従妹ちゃんとも久しぶりだし」
男「まあ……なんだかんだ言って何年も会ってないからな」
母親「そういうことだから、あんた頼むわよ」
男「はっ? 頼むって?」
母親「ほら、昔、あの子あんたに懐いてたじゃない。だから、色々面倒は任せたわ」
男「いや、ちょっと待て。あの頃はあいつも小さかったけど、今はもうそんな歳じゃないだろ?」
母親「……そうね、ガン黒ギャル娘になってたりするかも……」
男「あいつに限ってそんなことは……って、あいつ、もう高校生か」
母親「モデルの佐智子さんの血を受け継いでるから、相当美人さんになってると思うわよ」
6:
ピンポーン。
母親「噂をしてたら、なんのそのってね」
男「えっ? もう来たわけ?」
母親「昼のまでには来るって言ってたから、そうじゃない?」
男「ちょ、ちょっと待てよ……まだ心の準備が……」
母親「はいはい、そんな時間はないわよ。ほら、二人で出迎えましょう」
男「……お、俺は遠慮しとくよっ……」
母親「今更になって、なに恥ずかしがってんの。待たせちゃ悪いから急ぐわよっ」
男「ひ、引っ張るなっ、押すなっ! 俺はいいって言ってんだろっ!」
母親「ハーイ、今、開けるわねーっ」
ガチャ……。
7:
従妹「……あっ、どうも……」
母親「…………」
男「…………」
母親「……い、従妹ちゃん……?」
従妹「そ、そうです。お久しぶりですっ……」
男(うわぁ……めっちゃ美人になってる……)
母親「一瞬、芸能人が来たのかと思ったわ……これまた綺麗になっちゃってっ」
従妹「えっ……いや、そんなことないです」
母親「いや、とっても可愛いわっ。ほら、男なんて、驚きのあまり放心状態よ」
男「ちょっ、ババア余計なこと言ってんじゃねえよっ」
じぃー。
男(何だこの視線……見られてる……確実に見られてるっ!)
8:
従妹「……にぃにぃ?」
男「お、おうっ……」
従妹「…………」
男「ひ、久しぶりだなっ! 元気してたかっ!」
従妹「……にぃにぃだぁ……」
男「えっ?」
従妹「にぃにぃっ!」
たたたたっ……ぽんっ!
男「うおっ!」
従妹「会いたかったよぉっ、 にぃにぃ!」
男「おいっ、抱きつくなってっ……」
10:
ぎゅっ。
従妹「やだっ! もう少しこうしてるもんっ!」
男「は、ははっ……」
母親「あらあら、お暑いコト」
従妹「この匂い……ほんとだぁ……にぃにぃだぁ……」
男「汗臭いからあんま嗅いでくれるな……汚いぞ?」
従妹「汚くなんてないもんっ、にぃにぃの匂いだもんっ」
男(しかし、身体は大きくなっても、全然変わってねぇな……)
……ぽよんっ。
男「……えっ?」
……ぽよんっ、ぽよんっ。
男(なんだこれ……ぽよんっ?)
従妹「にぃにぃ……」
男「あっ、うん……」
男(……ま、まさか……こ、これは……)
14:
従妹「今日からよろしくお願いしますっ」
母親「いいわよ、そんに畏まらなくて」
男(……ぽよん……)
母親「佐智子さんはいつぐらいまで海外なの?」
従妹「多分、この月はずっと……」
母親「あら、結構忙しいのね。でも、学校が休みの間はずっとここにいていいから」
従妹「すみません、お世話になります」
男(……ぽよん……ぽよん……)
従妹「……ん?」
男「…………」
18:
従妹「にぃにぃ、さっきからどうしたの?」
男「……あ、うん……」
男(昔と変わらない、あどけなさが残る表情)
男(にもかかわらず、ところどころに美人の風格が……)
男(そ、そして……こ、この……)
従妹「……?」
男(──なんなんだぁこの胸はああああああああっ! たゆんたゆんだぁっ!)
男「け、けしからんっ」
母親「……あれ、あんた鼻血出てるわよ」
従妹「……あ、ほんと……」
男「……ちょっとのぼせちゃったかな? てへっ!」
母親「…………」
34:
母親「従妹ちゃんも着いたことだし、そろそろ買い物にでも行ってこようかしら」
従妹「あっ、私も行きますよっ」
母親「いいのいいの、あなたはここでゆっくりしてなさい」
従妹「で、でも……」
母親「ほら、積る話もあると思うし……ねっ?」
従妹「……は、はい……」
男(頬を赤らめてこっちを見ないでくれ……)
母親「ふふ、では行ってくるわ」
従妹「すみません、お手伝いできなくて……」
母親「そんなの気にしなくていいから。あと、男ちょっとこっちに来なさい」
男「はっ?」
母親「いいから、早くっ」
男「な、何だよ……」
36:
母親「……この辺まで来れば向こうには聞こえないわね」
男「ババア、俺は買い物には行かんぞ」
母親「何、馬鹿な勘違いしてんのよこの子は」
男「だったら何だ、早く用件を言え」
母親「……従妹ちゃん、とても綺麗になったわね」
男「あっ? ……ま、まあ、そこそこだろ」
母親「とっても可愛いし、それに身長も伸びたわ」
男「……俺の方がまだ高いけどな」
母親「それに……発育いいし」
男「…………」
母親「あんた、さっきからあの子の胸ばっかり見てるでしょ」
男「なっ……み、見てねぇしっ」
母親「嘘おっしゃい。そういう視線には女は敏感なのよ」
38:
母親「でも幸いなことに、あの子はまだそれに気付いてないわ」
母親「でもそれも時間の問題。だから気付かれる前に、やめなさい」
母親「さもないと、大好きなにぃにぃから変態の糞野郎に格下げよ」
男「糞野郎って……」
母親「それと、この際だからはっきり言っとくわ」
男「な、何だよ……」
母親「あんた、あの子に少しでも手を出したら……」
母親「──実の子でも殺すっ」
男「ひぃっ」
母親「……それでは、行ってくるわ」
男「…………」
39:
男「……はぁ……」
従妹「あっ、にぃにぃ……って、あれ? 顔、真っ青だよ?」
男「ちょ、ちょっとな……」
従妹「それで、おばさん、何か言ってた?」
男「……ええと、仲良くしなさいとか、そんなところ」
従妹「あ、うん……」
男「ふぅ……とりあえず、お茶でも飲むか」
従妹「私、コップ持ってくるねっ」
男「お、おうっ」
男(くそ……なんか、気恥ずかしくてうまく会話できねぇな……)
45:
男「…………」
従妹「…………」
ズズッ……。
従妹「……こうやって会うの、久しぶりだね」
男「そうだな、何年ぶりだろうな」
従妹「にぃにぃ、おばあちゃんのとこに顔出さないんだもん」
男「それは……確かに俺が悪かったかもな」
従妹「……変わったね、にぃにぃ」
男「そうか? もしかして、ちょっと格好良くなってたり?」
従妹「うん、前より格好いいよっ」
男「……あ、うん……」
男(なんだよ……調子狂うぜ……)
46:
従妹「にぃにぃはもう大学生だよね。どう、新しいキャンパスライフは?」
男「思ってたほどのものじゃないけど、色々楽しいよ」
従妹「いいなぁ……早く私も大学に行きたい」
男「その前に厳しい受験戦争が待ってるからな」
従妹「やめてよぉー、そういうのいらない」
男「ははっ、ちなみにどこ目指してるんだ? もしや、東大とか言わねえよな?」
従妹「うんとね……にぃにぃと同じとこ」
男「……え」
従妹「私の頭じゃ、ちょっと難しいかもしれないけど、頑張るつもり」
従妹「そうすれば、にぃにぃが四年の時に私一年だよ。一緒に通えるねっ」
男「そ、そうか……」
61:
従妹「……ねぇ、にぃにぃは、彼女いる?」
男「か、彼女?」
従妹「大学生になったし……それとも高校から……とか」
男「……残念なことにそういう相手はいないな」
従妹「ふーん、意外だぁ」
男「もしかして、彼氏でも出来たか?」
従妹「にぃにぃと同じ。私もいないよ」
男「そんなこと言っても、結構お誘いはあるだろ?」
従妹「うーん、でも、なんか違うんだよね」
従妹「好きだっ!っていう感情が生まれないっていうかなんていうか……難しい」
男「確かに、恋愛は難しいよな」
62:
母親「てなわけで、夕飯よっ!」
従妹「わーいっ」
男「なんなんだ、その説明口調は……」
母親「今日は従妹ちゃんが手伝ってくれたから、結構早く出来たわ」
従妹「手伝いってよりも、明らかに邪魔だったと思います……」
母親「そんなことないわっ。ほら、男」
男「何だよ?」
母親「この中のどれかが従妹ちゃんが作ったハンバーグよ。ほら、好きなの選んで」
従妹「えっ……おばさん……」
男(見るからに一つ、形が崩れてるやつがあるな……)
63:
男「……これにするわ」
従妹「にぃにぃ、でもそれ……」
男「いいんだよ、なんか旨そうだし。ほれ、お前も選べ」
従妹「うん……ありがと」
母親「いいわ、この初々しい感じ♪ なんか、娘が一人出来たみたいっ」
男「馬鹿言ってねぇで、早くご飯よそえよ」
母親「息子はこれだからね……もうやんなっちゃうわ」
『ただいまぁーっ!』
母親「あら、お父さん帰ってきたみたい」
男「え? もう親父帰ってきたの?」
64:
父親「おっ、従妹ちゃん、久しぶりっ!」
従妹「どうも、お邪魔してます」
父親「母さんに聞いてたけど、ほんと別嬪さんになったねぇ……」
従妹「いえ……そんなことないです」
父親「はは、しかし、おぉーいい匂いがするなあ」
男「うわっ、変態だよ……」
父親「ち、違うわ、馬鹿息子っ、飯のいい匂いって意味だっ」
男「取り繕っても無駄だぜ」
父親「うるさい。母さん、さっそく私も食べたい」
母親「……ごめんなさい」
父親「へっ?」
66:
母親「こんなに早く帰ってくるとは思わなくて、お父さんの分用意してないわ」
父親「あれ? 今日は従妹ちゃんも来たし、早く帰るって言わなかったっけ?」
母親「……ごめんなさい、完全に忘れてた」
男「くくっ、ざまあ」
父親「そ、そんな……」
従妹「あっ、私の分でよければお先に」
父親「いやいや、今日のメインは従妹ちゃんなんだから」
父親「おい男、お前の分を食わせろ」
男「は? 何でだよ」
母親「お父さん、それも無理よ……」
父親「何で? 先に食べちゃ駄目なのか?」
母親「男の分は今日は従妹ちゃんが作ったものなの」
68:
父親「なにっ!? 従妹ちゃんが作っただとっ!?」
従妹「下手っぴなんです……すみません」
父親「いやいやっ! 従妹ちゃんの初手料理なんてっ! 逆にそれは食べたいっ!」
男「誰も初だとは言ってねぇよ」
父親「やかましいわっ! これは何としてもゲットしないとな」
母親「……お父さん」
従妹「…………」
父親「ん? どうした?」
母親「それは従妹ちゃんが男のために作ったの……だから」
父親「なあ、従妹ちゃん、おじさんが食べてもいいよね?」
男「ほんと話を聞かねぇオヤジだな……」
従妹「……え、ええと」
69:
従妹「やっぱりそこは……にぃにぃに食べてもらいたいです……」
母親「ふふ、可愛い」
父親「よ、良かったぁ、にぃにぃって勿論、おじさんのことだよねっ」
母親「お父さん、悪あがきはよして下さい」
父親「いやっ! 嫌だっ! 俺は従妹ちゃんの手料理が食べたいっ!」
男「……もぐもぐ」
従妹「あっ……」
父親「ああああああああっ! この馬鹿息子おおおおっ!」
男「うん、結構おいしいぞっ」
従妹「ほ、ほんと?」
男「見た目はちょっと崩れてるけど、味は上出来だぜ」
従妹「や、やったぁ……」
父親「そ、そんなぁ……くっ……くそぉっ……」
71:
男「はぁ……ほんと糞親父には困ったもんだぜ……」
男「……しかし、従妹……可愛くなってたよな……」
男「しかも……きょ、巨乳なんて……」
男(抱きつかれた時、柔らかかったなぁ……)
コンコン。
男「ご、ごほんっ」
従妹『にぃにぃ、入ってもいい?』
男「あ、うん……」
ガチャ。
従妹「うわぁー昔と全然変わってないねー」
男「男の部屋なんてみんなそんなもんだ」
73:
男「それで、一体どうしたんだ?」
従妹「うん、おばさんがお風呂湧いたよーって」
男「あーそういうこと。分かった、今から入るわ」
従妹「うん、じゃあ私も用意してくるね」
男「おうっ、それじゃ」
従妹「うんっ、先入ってて」
ガチャ。
男「……ふむ、一番風呂か」
男「…………」
男「……って、あれ? 私も用意……? 先入ってて……?」
男「ま、まさか、嘘だろ……?」
75:
たたたたたたっ。
男「おい、ちょっと待てっ!」
従妹「え? 何、どうしたの?」
男「お前、もしかして、俺と一緒に風呂入るつもりじゃねぇよな?」
従妹「ははっ、にぃにぃ、冗談キツい」
男「そ、そうだよな……俺も早とちりして馬鹿だな……」
従妹「そうだよー、一緒に入るに決まってるじゃんっ」
男「決まってるよなっ……って、ええええええええっ!」
従妹「何驚いてるの? 昔も一緒に入ってたよね?」
男「いや、それは昔の話であって……今は、その、身体も大きくなったし……」
従妹「私は気にしないよ?」
男「俺が気にするよっ! この歳で一緒とか、そんな話聞いたこともねぇ!」
79:
母親「……そんなことが」
男「この俺も、まさかの汗だくだぜ」
母親「あの子、危ないわね……まだ無垢なのかしら」
男「分からんが、『にぃにぃ、何言ってんの?』みたいな顔はされた」
母親「とりあえず、あんたを褒めとくわ。よく我慢したわね」
男「当然だろっ! そんな……あ、あの……」
母親「大きいおっぱいみたら、冷静でいられないと」
男「そうそう、大きなおっぱいが……って、誘導尋問やめろっ!」
母親「うーん、私からも一応言っとくわ。多分、気休めにもならないと思うけど」
男「そ、そんな……このままじゃ、時間の問題だぞ……」
母親「急に入ってこられたりしたら、どうしようもないものね」
男「頑張れ、俺……頑張れ、俺の理性……」
81:
コンコン。
男(くっ……ついに来たか……)
従妹『にぃにぃ、わたしー』
男「お、おう、今開ける……」
ガチャ。
従妹「……で、分かってるよね?」
男「あ、ああ」
従妹「久しぶりに一緒にお風呂に入るの楽しみにしてたのに……」
従妹「にぃにぃが、どうしてもっ!って言うから、やめたんだよ?」
男「ご、ごめん……」
従妹「取引条件……きちんと、覚えてる?」
83:
妹「……風呂に一緒に入らない代わりに?」
男「何でも言うことを一つ聞く……だろ?」
従妹「うん、正解っ」
従妹「さーて、何してもらおうっかなぁ♪」
男「お、お手柔らかに頼むよ……」
従妹「どうかなぁー、うーん」
男「……何すればいい?」
従妹「…………」
じぃー。
男「ん?」
男(なんだ……? 俺の顔見て……って、あれ、下の方……?)
86:
従妹「……にぃにぃって彼女いないんだよね」
男「ああ、いないけど」
従妹「……ふーん」
男「な、何だよ……今日、聞いただろ……?」
従妹「私もー、彼氏いないんだー」
男「いや、だから、それも聞いたって……」
従妹「でもね……」
男「え?」
従妹「恋愛に興味がないってわけじゃないの。色々、友達の話とか聞くし」
男「そ、そうなのか……」
従妹「それでね……私も少しだけ経験してみたいっていうか……」
男(……この視線……ま、まさか……)
89:
従妹「……にぃにぃ、キス……してみない?」
男「…………」
男(うおおぉぉぉぉぉっ! やはりぃぃぃぃぃこの流れかぁぁぁぁぁ!)
従妹「ねっ? ちょっとだけ経験してみようよっ」
男「い、いや……ちょっと待って……」
従妹「ほら、にぃにぃも今は彼女さんいないみたいだし、私もフリーだし」
従妹「誰も困らないよ、ねっ? ノープロブレムっ」
男「問題ありまくりだよ……」
従妹「にぃにぃ、もしかして……約束破るの?」
男「何でもするとは言ったが……それは、ちょっとさ……」
従妹「……嘘つき……」
男「うっ……」
92:
従妹「ねっ? ほんの少しだけだからっ」
男「……うぅ……で、でも……」
従妹「家族がチュッってやる感じだよっ、よくあるでしょっ?」
男「……た、確かに家族同士なら……」
男(妹が兄にキスするようなもんだ……な、何の問題もなな、ないかなっ)
従妹「……ん」
男「え……」
従妹「んんっ!」
男(目瞑って唇を突き出してるっていうことは……そ、そういうことなのかっ!?)
男「まさか……お、俺からいくのっ?」
従妹「……ん」
男「……ええ、ええと……ちょっ、ちょっと待って……心の準備が……」
93:
従妹「……にぃにぃ?」
男「うっ……」
男(駄目だっ……男なら覚悟を決めろっ! ここは、いくしかないっ)
男「……っ」
男(で、でも、このままいくと鼻がぶつかっちまうぞ? ど、どうすれば……)
従妹「……早くぅ……」
男(ちょっと顔を横にずらして……)
男(うおおおっ!)
ちゅっ。
従妹「……ん」
男「……ん」
男(うわぁぁ……やべぇ……唇やわらけぇよぉ……)
男(でも、これいつまで続ければ……っ)
95:
男「……んん」
従妹「……ん」
男(息が……息が……も、もう限界……)
男「……ふっ……」
従妹「……あっ」
男「はぁーっはぁっーはぁっ!」
従妹「……ど、どうしたの?」
男「い、息……さ、酸素が足りない……お前は、大丈夫かっ?」
従妹「え? 鼻で息してたけど」
男「あっ……そうか……」
男(……俺は、なんて馬鹿なんだ……)
96:
従妹「しかし……ね?」
男「……ど、どうした?」
従妹「初めてのキス……にぃにぃとしちゃったっ」
男「……う、うん」
男(実は、俺も初めてだ……)
従妹「まだ、胸ドキドキいってるよ……」
男「…………」
従妹「にぃにぃもドキドキしてる?」
男「お、おう……」
従妹「どれどれ……」
ぴたっ……。
男「ちょ、ちょっとやめろってっ……」
男(こいつ……俺の胸に頭を寄せきたよ……)
100:
従妹「ほんとだぁ……ドキドキいってる」
男「わかったなら、も、もういいだろっ」
従妹「うん……」
男「……はぁはぁ……」
従妹「ほら、にぃにぃも確認してみて」
男「えっ……」
従妹「私の胸の音……ね?」
男「……いい、いいよっ……」
従妹「いいからっ」
ぎゅっ。
従妹「どう? 心臓がドクンドクンいってるでしょ?」
男「うわあ……」
男(お、おっぱいっ! 顔に当たってるっ、おっぱいぃぃっ!)
101:
従妹「どう、聞こえる?」
ぽよんっ……。
男「う、うん……」
男(や、柔らかい……な、何なんだこれ……)
従妹「ドクンドクンって」
ぽよんっぽよんっ……。
男「う、ん……」
男(……駄目だ……これは、やばいぃ……やわらか過ぎるぞぉ……)
従妹「すごいね……身体って」
ぽよんっぽよんっぽよんっ……。
男「す、凄いな……」
男(ああぁぁ……もう、だめぇ……たゆんたゆんだぁぁ……)
104:
従妹「じゃあね、にぃにぃ」
男「…………あ、ああ」
従妹「今日は、ありがとね。おやすみっ」
ガチャ……。
男「…………」
男「……あれ……」
男「……俺……キス」
男「従妹と……キスしちゃったんだよなぁ……」
男「……それで……」
男「……ああ」
男「や、柔らかかったぁ……」
男(……駄目だ……もう今日は寝よう……)
男(おやすみ、なさい……)
175:
トゥルトゥルトゥル……。
従妹「にぃにぃ、携帯鳴ってる」
男「……あ、ほんとだ」
男「もしもし……」
……………。
従妹「何の電話だったの?」
男「いや……今から大学来いって……」
従妹「え? にぃにぃの大学?」
男「サークルの先輩が、俺に書いてもらいたい書類があるんだって」
従妹「それじゃあ、今から行くの?」
男「ああ、めんどくさいけど、そうなる」
従妹「ふーん……なら、私もついてっていい?」
男「え?」
178:
従妹「うわぁ……ここがにぃにぃの大学かぁ」
男「そんなに綺麗なもんじゃないだろ」
従妹「ううんっ、しかも、高校に比べるとでっかいっ」
男「そうだなぁ、キャンパスは結構広いほうかも」
従妹「早く中に入ろっ! でも、私入っても大丈夫かな?」
男「全然大丈夫。高校とは違って、誰でも入れるのが大学だからな」
とことことこ。
従妹「道行く女の人……みんな、綺麗だね」
男「いや……」
男(お前の方が何倍も綺麗だろ……)
従妹「いいなぁ……早く私も大学生になりたい」
男「焦らなくても、すぐになれるさ」
182:
ガチャ……。
男「おはようっす」
先輩「あっ、男くん。急に呼び出して悪いね」
男「いや、全然構わないですよ」
先輩「今度の学園祭に必要な書類があって、本人に書いてもらわないと駄目なんだ」
男「あー、そういえばそんなこと言ってましたね」
先輩「これがめんどくさくて……とりあえず、その席に座って……」
先輩「って……あ、あれ?」
従妹「……にぃにぃ?」
男「そうだ先輩、この子……」
先輩「……えっ……なにこれ……か、可愛いすぎる……」
男「先輩?」
193:
先輩「お、男君っ、この子はっ!」
男「あ、はい……」
男(どんな女の告白にも動じない先輩が……なんだこの慌てぶりは……)
従妹「…………」
先輩「芸能人の子かっ? ちょっ、ちょっと紹介してくれっ」
男「いや、実は家のしんせ……」
従妹「にぃにぃっ」
男「えっ? 何っ?」
従妹「いいからっ、ちょっとこっち来てっ」
男「な、何だよ……引っ張るなって……」
194:
従妹「……ここまで来れば聞こえないかな?」
男「何だよ、こんな内緒話みたいな真似、先輩に悪いだろ……」
従妹「これ、マズいよ……」
男「は? マズいって何が?」
従妹「私の勘だけど、ちょっと嫌な感じする」
男「嫌な感じって……先輩が?」
従妹「うん……だから、正直に言うのやめて」
男「じゃあ、どうすればいいんだよ……」
従妹「そうだっ、彼女ってことにしようよ」
男「お前が俺の彼女っ!? いや、それ無理ないか?」
従妹「いいからっ、ほら、そういうことでお願いっ」
男「お、おい……」
196:
先輩「お、男くん、早く紹介してくれっ」
男「あ、ええと……ですね」
先輩「なんだっ、君にしてははっきりしないなっ!」
男「いや……その」
従妹「にぃにぃ……」
男「わ、分かったよ……」
先輩「……にぃにぃ? ってことは、兄弟か何かか?」
男「いや、先輩……」
男「これ、俺の……彼女、なんです」
先輩「…………」
先輩「あっ……そ、そうなんだぁ……」
197:
先輩「男君に……こんな、可愛い彼女がいるなんて……」
男「あー……先輩、まあそういうことなんです」
従妹「…………」
先輩「しかし、待てよ‥‥‥」
男「え?」
先輩「確か君のことをにぃにぃって呼んでたよな……」
男「そ、そうですね」
先輩「ここから考えるに……君達……本当に恋人か?」
男(……大学きっての秀才と呼ばれる先輩を欺くのは難しいか?)
202:
従妹「恋人ですよ」
先輩「あ、うん……で、でも、恋人同士の呼び方としてはちょっと……」
従妹「なんかおかしいところありますか?」
先輩「いやね……にぃにぃってのはさ、うん、微妙だよね……」
従妹「…………」
男(もう隠すのは無理だろ……変態プレイみたいになってるよ……)
先輩「……男君、その辺実際どうなんなんだ」
男「じ、実は……」
従妹「別にいいじゃないですか、にぃにぃでも」
先輩「いや、そうなんだけど」
従妹「そんなに疑うなら、いいです。ここで証明しますからっ」
先輩「し、証明……?」
204:
従妹「にぃにぃ、ほらっ」
男「はっ? ほらって……」
従妹「……ん、んん」
男(……ま、まさか……!?)
先輩「…………」
じぃー。
男(く、くそっ……先輩、がん見じゃねぇか……)
男(何とか逃げれないものかっ……こんな、人の目の前とか……)
従妹「……にぃにぃ」
男(あーもうっ! どうにでもなれっ!)
ちゅっ……。
207:
従妹「……あ」
男「ん……」
先輩「……えっ……」
従妹「んん……」
男(何だ……今日は、やけに積極的だな……)
男(てか、何だかんだ言って、今日で四回目のキスだよ……)
従妹「ん……」
男「……んん」
先輩「もう、分かった……二人はれっきとした恋人同士だ……」
先輩「だから、これ以上はやめてくれぇ……俺の……お、俺の心が……」
先輩「たのむからぁぁぁ、もう見せつけないでくれぇぇぇぇっ!」
219:
父親「おお、今日はカレーか」
男「……最近帰ってくんの早くね?」
父親「うるさいっ、従妹ちゃんがいるんだから当然だろっ!」
母親「じゃあ、お父さん、ご飯よそってね」
男「なんだかなぁ……仕事大丈夫なのか……」
従妹「にぃにぃ、今日も私手伝ったんだよっ」
男「おおそうか、頑張ってるな」
従妹「ふふ、少しずつ、包丁の使い方とかわかってきたの」
母親「従妹ちゃんの上達ぶりは目を見張るものがあるわ。良いお嫁さんになるわね」
従妹「だってぇー、にぃにぃ」
男「お、俺にふるなよ……」
父親「か、かわいい子だなぁほんとに……」
男「親父……手元狂って、ご飯、地面に落ちてるぞ……」
220:
がららら……。
男「ふぅ……良い湯だなぁ……」
男「しかし、今日の先輩……ちょっと可哀想だったな……」
男「もしかしたら、遅咲きの初恋だったりして……ああ、悪いことした……」
男(……ってしてると、もうすぐだな……)
従妹『にぃにぃ、私も入っていい?』
男「だめっ! 絶対、だめっ!」
従妹『えー、今日はいいじゃんっ、一緒に入ろうよぉーっ』
男「あーもうっ、何度言っても分からん子だなっ! 駄目なものは駄目なのっ!」
従妹『ぶーぶーっ……じゃあ、にぃにぃ、いつもの約束だよっ?』
男「……わ、分かったよ……」
従妹『うん、上がるの待ってるからっ』
男「……はぁ……母さんに知られたら、確実に殺される……」
222:
従妹「あっ、にぃにぃ」
男「これから、また俺の部屋か?」
従妹「もちろんだよっ、約束だもんねっ」
男「……そういうことだよな……」
母親「あれ? 二人ともどうしたの?」
男「……あっ」
従妹「あーおばさんっ」
母親「もしかして、今から二人で男の部屋?」
男「あーうん……まあ、そう」
従妹「大学受験に向けて、勉強教えて貰ってるんです」
母親「そういうこと。ほんと兄妹みたいに仲良いわね」
従妹「へへっ」
男「…………」
224:
男(何が良い兄妹だ……こんなこと……)
妹「んー」
男(こんなことやってる家なんて……日本中どこにもねぇよ……)
妹「にぃにぃ、早くぅー」
男(ぐずぐずな流れで……これも四日目……)
妹「まだなのぉー……んーっ」
男「……はいはい……」
ちゅっ……。
妹「ん……」
男「……ん」
男(どうすんだよ……これ……)
男(もう後にも引けなくなってる……うわぁ……柔らかい……)
226:
従妹「ふふっ、もうなんか慣れたもんだね」
男「まあ、こう何度もやってればな」
従妹「でも、心臓はバクバク言ってるよ? にぃにぃも?」
男「そりゃ、勿論だ……」
男(高血圧だったら死んでるよ……)
従妹「へへっ、お揃いだー」
男「んじゃ、また明日な」
従妹「……うん、そう、だよね」
男「どうした? まだ、なんかあるのか?」
従妹「ちょっとさ……私、考えてることあるんだ」
男「……まさか、本当に勉強教えて欲しいとか?」
従妹「それもいいけど、違うよ」
229:
従妹「私ね、ちょっと友達に聞いたことあるんだ」
男「なんか嫌な予感がする……その友達は今後、付き合いを考え直したほうがいい」
従妹「それでね、キスってあるじゃん」
男「だから、今さっきやったやつだろ」
従妹「うん、でもキスはキスでもレベルがあるんだって」
男「レベルねぇ……」
従妹「初心者は、唇と唇をくっ付けるだけ」
男「……ああ」
男(……ま、まさか……)
従妹「でも、上級者になると、舌をお互いに入れ合うだとか、何とか」
男「……で、ディープキス……」
従妹「そうそう、それっ。なんか、卑猥だよね」
231:
従妹「初めそれを聞いた時は、なんか気持ち悪いなぁって、思ってたんだけど」
従妹「今はちょっと大丈夫かなって……」
男「い、いやいやっ! それは全然大丈夫じゃないでしょっ!?」
従妹「にぃにぃが相手なら……私、全然いいかも……」
男「そ、その気持ちは有り難いが、やはりな……」
従妹「駄目かな? にぃにぃ……」
男「そういうのは、恋人同士がやるもんだから……ちょっと……」
従妹「私のこと嫌い? 舌とか入れるのは、汚い?」
男「そ、そういうことじゃなくてさ……やっぱり倫理的っつうか、道徳心っていうか」
従妹「お願いだよ、にぃにぃ。私に他に相手とかいないから……」
男「……従妹……」
従妹「一生のお願いだと思って……ねっ?」
男「…………」
234:
従妹「に、にぃにぃ……私は、目瞑って待ってればいいの?」
男「い、いや、俺も初めてだからよく分からん」
従妹「……にぃにぃも初めてなんだ……」
男「お、おう」
従妹「ふふっ、なんか嬉しいなぁ……ん? でもどうしてだろ?」
男「と、とりあえずっ……舌を絡めるんだよな……」
従妹「う、うん……」
男「ん、んじゃ、舌出して……」
従妹「えっ? キスしてからじゃないの……?」
男「そうなの? 俺、わかんねぇよ……」
従妹「んー……あんま詳しく聞いてないからなあ……」
従妹「と、とにかく、にぃにぃに任せるっ」
237:
男「それじゃあ……舌、出して……」
従妹「う、うん……」
男「……ああ……」
男(うわぁ……なんか、この光景エロいぞ……)
従妹「ほのはは?」
男「お、おう、そのまま……んで、俺も舌出して……」
男(そんで、顔を近づけて……えっ?)
従妹「……うぅ……」
男(やっぱりこれおかしいぞっ……舌出すのは、キスしてからじゃねぇか……!?)
従妹「……?」
男(くそっ……でもここからじゃ、後に引けねぇっ! なんとか強引に行くしかないっ!)
男「……いくどぉ……」
従妹「んっ……」
243:
ぺろ……。
妹「……んっ」
男「……あ」
ぺろ……ぺろ……。
妹「……んっ、んっ……」
男「……あっ……」
男(うおおおおおぉぉぉぉぉっ、なんだこの変態プレイはぁぁぁぁっ!)
男(仕方ねぇ……このままキスに持ち込むぞっ)
ぶちゅっ……。
妹「あっ……んんっ」
男「…………」
男(なんだこれ……未知の世界か……)
男(従妹の口内温かい……うわぁ……涎がすげぇ出てくる……)
246:
男「……んっ」
男(もうこれ以上はやばいっ!)
従妹「……あっ……」
男「……はぁ……はぁ……」
従妹「す、凄いね……」
男「お、おお……」
従妹「なんか、エッチぽかった……」
男「う、うん……」
従妹「口の中が……なんか、お、犯されてるみたいで……」
男「……犯されてるって……」
従妹「うわぁっ駄目だ……恥ずかしい……」
男「……恥ずいな……」
248:
従妹「わ、私……もう部屋に戻るねっ!」
男「そ、そうだなっ、もう遅いしなっ!」
従妹「お、お休みっ!」
男「また明日っ!」
男「…………」
……ガチャ。
従妹「にぃにぃ……?」
男「あっ、うん……」
従妹「また……今度、やろうねっ」
男「……っ」
従妹「ば、ばいばいっ!」
……ガチャン。
男「…………」
男「うおおおおおおぉぉぉぉっ! やっちまったああああぁぁぁ!」
249:
………………。
…………。
……。
こうして従妹と男は、熱々で暮らしましたとさ。
-ラブラブEND-
272:
従妹「しかし、にぃにぃよく食べるね」
男「そうか? 育ち盛りだからな」
従妹「もう大学生でしょ……成長は止まってるんじゃないかな……」
母親「それを言うなら、従妹ちゃんのほうが育ち盛りよね」
従妹「えっ……そんなことは……」
母親「だって見て見なさいよ、この胸っ」
ぽよんっ……。
従妹「あっ……ん……」
男「──ぶはっ! ごほっごほっ……」
母親「きったないわねぇ……」
男「ば、ババアっ! 何触ってんだよっ!」
母親「いいのよ女同士なんだから。ちなみにサイズいくつ?」
275:
従妹「え、ええと……」
母親「あーっ、男がいたら言い難いわねっ! ほら、耳貸すから」
ごにょごにょ……。
母親「うわっ……なにそれっ……ほんと大きいわ……」
男「くそっ、人が飯食ってるって言うのに……」
母親「でもそれだと、気に入ったブラ見つからないでしょ」
従妹「そうなんです……あんまり可愛い系はなくて……」
母親「そうよねぇ、特別に作って貰うのにもお金かかるし」
母親「あっ! でも、確かそういう専門のお店、私、知ってるわ」
従妹「え、それ、本当ですかっ?」
母親「うん、私は利用したことないけど、確かそうだったと思う」
男「洗濯板だもんな」
母親「……はい、晩飯抜き決定ー」
男「ちょっ……」
276:
母親「夕飯が食べたいなら、従妹ちゃんと一緒に買い物行ってきなさい」
男「えっ? 俺がランジェリーショップについてくわけ?」
母親「それも兼ねて、どっか色々遊びに行ったらいいでしょ?」
男「いや、まあそうだけど」
従妹「にぃにぃも来てくれると助かるなっ」
母親「その店までは、バスで二十分ぐらいのとこにあるから」
母親「あと近くに遊園地みたいのもあるはずよ。男分かるでしょ?」
従妹「遊園地?」
男「ああ、そっち方面か……となると……」
従妹「ねっ、にぃにぃ行こうよっ!」
男「あー分かったって……まあ、あの辺なら遊ぶに困らないか……」
母親「どうせ暇なんだから、行ってきなさい。従妹ちゃんをしっかりエスコートするのよ」
男「はいはい、分かりましたよ」
283:
従妹「着いたぁっ!」
男「こんな時間なのにバスこんでたな」
従妹「でも、にぃにぃ、庇ってくれたもんね」
男「そりゃあ……男の役目だからな……」
男(周りの男どもの野獣の目には対抗せざるをえなかった……)
従妹「ええと、この先にあるんだよね」
男「母親のへったくそな地図によるとな」
従妹「地図、もう一回見せて」
男「ほれ、ここの『もくてきちっ!』って書いてあるとこ」
従妹「はは、文字が可愛い」
男「ババア、実は漢字書けねぇんじゃねーかと心配になったわ……」
従妹「もう、そういうこと言わないっ」
285:
男「店に入ると変態だから、俺は外で待ってるよ」
従妹「えー、別に、同伴ならいいでしょ?」
男「いいや……俺にはちょっと無理だって……」
従妹「いいのっ! ほらっ、ついてきてっ!」
ぐいぐい……。
男「うわっ……また、またこの流れっ……引っ張るなっ……」
カランカラン。
従妹「うわぁぁ、おばさんの言った通りだっ」
男(うっ……周りの視線が痛いっ!)
従妹「にぃにぃ見てっ! これすごく可愛くないっ!?」
男「わ、わからんって……俺に聞くな……」
従妹「うーん……でも、ありすぎて迷っちゃう……どれにしようかな……」
289:
店員「どうです、お目当てのもの見つかりましたか?」
従妹「あっ……いっぱいいいのがあって困っちゃってます」
店員「それは有り難いお声、ありがとうございます。失礼ですが、お連れの方は彼氏さんですか?」
男「いいや、しんせ……」
従妹「はいっ! 実はそうなんですよっ」
店員「ふふっ、それはそれは。そうですね、なら彼氏さんに選んでもらうなんてどうです?」
従妹「あっ、それ名案ですね。にぃにぃ?」
男「……え、俺が選ぶの?」
店員「ちなみに、彼女さんはサイズ幾つですか?」
従妹「ええと、Fの70です」
男(……え?Fカップもあんの!?)
店員「そうですね……それだと、この辺がお勧めかな……」
290:
従妹「この店、ほんと種類が豊富ですねっ」
店員「はい、サイズが大きい方のをたくさん用意してますので」
従妹「ほら、にぃにぃ、選んで」
男「選べって言われても……」
従妹「直感でいいから、なんかこれだっ!みたいなやつ」
男「……うーん……」
男「……こ、これかな?」
店員「あらあら……また、アダルティなものをお選びに……」
従妹「く、黒……?」
男「い、いや、なんとなくいいかなって……」
従妹「私がつけるには……うーん……でも、にぃにぃがそういうなら……」
店員「ご試着なされますか?」
従妹「はい、じゃあ、他にもこれと……ええと、これでお願いします」
291:
従妹『……にぃにぃ……ほら、入って見てみてっ』
男「それは、駄目だって……店員さんも見てるしっ」
店員「私は全然構いませんよ。いないものと思って結構です」
男「そ、そんな……」
従妹『ほらお店の人もそう言ってるんだから、悪あがきはやめてさっ』
男「……うぅ……」
従妹『もうじれったいなぁ……よしっ!』
ザザッ……。
男「なっ……」
男(一瞬の隙に引きずり込まれたっ!)
292:
従妹「どう? 結構似合ってるかな?」
男(し、下着姿……しかも、近いっ、近過ぎるっ……)
男「お、おお……似合ってる! 似合ってるよっ!」
従妹「むーほんとぉー? なんか適当な感じがするなぁ」
従妹「もっと近づいてよく見て。ねっ?」
ぐいぐい……。
男「いいって……ここからで十分だって……」
男(当たる……当たっちまうっ! 胸に顔がっ!)
従妹「どう? にぃにぃに選んでもらったやつだよっ」
男「グッドグッド! だから、お願い……もう限界だって……」
従妹「んーまあ、いいか」
男「……はぁー……はぁー……これでやっと終わりか……」
従妹「あと二つあるから、そっちもよろしくねっ」
男「……へっ?」
299:
従妹「ここが遊園地なんだ」
男「……うぅ……」
男(くっ……俺の息子よ……そろそろ鎮まれっ!)
従妹「もうげっそりしてないで、早く元気取り戻してねっ」
男「……あ、ああ……」
従妹「ほらほらっ、初めは勿論、ジェットコースター!」
男「もしかして、回る方か?」
従妹「あれ? にぃにぃって絶叫系駄目だった?」
男「いや……大好きだけど」
従妹「ならオッケーだね。よっし、レッツゴーっ!」
男「そ、その前に……トイレに行かせてっ」
331:
男「やべぇ……まだ目が回る……」
従妹「小さい遊園地なのに、結構ガチのやつだったね」
男「どうだ? そろそろ飯時だし腹がへってきた」
従妹「うん、どっかで昼食にしよっ」
男「んー……お店とか結構出てるけど……」
従妹「あっ、にぃにぃあれっ」
男「ん? どこだ?」
従妹「ほらっ、あのカップル」
男「ああ……なんか飲み物飲んでるな……って、二つストロー?」
従妹「一緒に同じもの飲んでるね、いいなぁ」
男「えっ……まさか」
従妹「にぃにぃ、私達もあれ飲もうよっ」
333:
男「……『カップル限定、真夏のトロピカルジュース』」
従妹「ははっ、もう秋なのにね」
男「……マジで頼むのか?」
従妹「うん、もう決めちゃったもん」
男「はぁ……」
店員「ヘイ、オニイサン。ナニニスル?」
男「ええと、ホットドック一つと……」
従妹「私も、同じ物で」
店員「オーケー、ホットドックフタツネ」
従妹「あと、真夏のトロピカルジュースもお願いしますっ」
店員「オオ、オフタリアツアツネー。ナカイイコトイイネ」
従妹「ふふ、そんなことないですってー」
334:
従妹「わぁ……ストローがハートマークだ……」
男「ちょっ……聞いてないっ!」
店員「オアツイオフタリニ、サービスネ」
男「ノー! ストローチェンジッ!」
店員「イイノイイノ、ハズカシガルノヨクナイネ」
従妹「そうだよっ、折角店員さんが気をきかせてくれてるのに」
男「こんなもんで飲めるかっ! 恥ずかしくて死ぬわっ!」
店員「……シネ? モシカシテ、オニイサン、イマシネイッタ?」
男「えっ? 言ってないよ……」
店員「シネイウナラ、ワタシアイテナルヨッ!! Fack you, boy!!」
男「いや……そんな……」
従妹「ほらっ、にぃにぃいくよっ!」
男(くそ……今更、変えてもらえそうな空気じゃねえよ……)
336:
ちゅぅー……。
男(はずいっ! これは恥ずかし過ぎるっ!)
従妹「にぃにぃ、もっと一緒に飲もっ」
男「い、いいよっ、交互に飲もうぜっ!」
従妹「そんなのつまんないよっ、一緒に飲めばハートが綺麗な色になるのに」
男「お前はこの視線に堪えられるのかっ!?」
通行人A「うわぁ……見て……あれ」
通行人B「熱々だな……そうそう、あれは出来ないぞ……」
通行人C「しかし、あの子すげぇ可愛い……相手は微妙な癖して、うぜぇな……」
男(この刺すような視線……男どもの醜い嫉妬の目)
従妹「いいのいいのっ、他の人は気にしない」
男「そ、そんな……」
従妹「にぃにぃ、せーので飲もっ! やらなかったら、チューしてもらうからっ!」
男「ちょっ……それはさらに無理っ!」
338:
従妹「次は……お化け屋敷っ!」
男「おい、いいのか? 確か、怖いの苦手だっただろ?」
従妹「そ、そんなことないよ……?」
男「完全にまだ苦手じゃねぇか。無理しなくていいんだぞ?」
従妹「で、でも、この機会逃したら、一生入れなさそうだし……」
男「別にお化け屋敷に入れなくたっていいだろう」
従妹「いいのっ、もしかしたら、それほど怖くないかもしれないし……」
男「……お前、看板ちゃんと見たのか?」
従妹「う、ううん……怖くて直視してない……」
男「血だらけの首無し女が大量に描かれてたぞ……」
従妹「……うぅ……」
男「やめとこうな? あんま無理していいことないぞ?」
従妹「行くもんっ! もう、私、大人だからっ!」
535:
従妹「きゃあああああっ!?」
男「うおっ……」
従妹「にぃにぃ、怖いっ……もうやだよぉっ……」
男「だから、やめようってあれだけ言ったのに」
従妹「……うぅ……もう出たい……」
男「はぁ……もう少しだと思うから頑張れ」
従妹「にぃにぃ……」
ぎゅっ……。
男「お前、さっきから近すぎだって……」
従妹「やだっ、絶対離れないもんっ」
536:
男「これじゃあ、抱き合って歩いてるみたいなもんだぞ……」
従妹「そんなの知らない……私、もう目瞑ってるから後はお願いね……?」
ぽよんっ……。
男「くっ……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「わ、分かったっ、俺に任しとけっ!」
男(暗闇の中でこんな状態だったら……くっ、理性がヤバいぞっ!)
男「よ、よしっ! かっ飛ばすぞっ!」
従妹「えっ!? にぃにぃ早いよっ!?」
男(急げっ、一刻も早くこの場から離れないとっ!)
538:
男「…………」
従妹「…………」
男「……あー……つかれた……」
従妹「……もう二度と入らない……」
男「それがいい……お前のためにも、お前と一緒に入る人のためにも……」
従妹「どういう意味なの……それ……」
男「深い意味はない……。で、次どうする?」
従妹「……なんか、落ち着ける場所がいいよね……」
男「んー……そろそろ日も落ちる頃だからなあ……」
従妹「あっ……あれ」
男「どうした?」
従妹「ほら、観覧車っ」
539:
従妹「うわぁ……どんどん上がってくねっ」
男「久しぶりだな、観覧車なんて」
従妹「にぃにぃとも昔、一緒に乗ったよね」
男「どうだろ……そうだったっけ?」
従妹「覚えてないのー? 高いのが怖くて泣いてた私をずっと励ましてくれたじゃん」
男「あー何となく……微かに記憶が……」
従妹「手をずっと握ってくれて、私、とっても心強かったんだから」
男「鼻水垂らしてたな、確か」
従妹「もうっ、何でそんないらない部分だけ覚えてるのっ」
男「はは、ごめんごめん」
従妹「でも、もうあの頃からずっと時間が経ってるんだね」
男「…………」
従妹「お互い、大きくなって……住んでる環境も変わって……」
男「……そう、だな」
541:
従妹「昔みたいに、頻繁に会えるみたいな状況も無くなって……」
男「…………」
従妹「にぃにぃは私と会えなかった間、どうしてた?」
男「普通に高校に通ったり、受験したり……そんなもんだ」
従妹「うん、私もそんな感じ」
従妹「でもね……その間、ずっと会いたかった」
男「…………」
従妹「にぃにぃに、ずっーと会いたかったんだ……」
男「……ああ」
従妹「おばあちゃんのところに帰省するときには、いつもワクワクして……」
従妹「だけど、向こう着いたら、やっぱりにぃにぃはいなくて……」
男「……ご、ごめん……」
従妹「会いたかった……寂しかった……」
男「…………」
544:
従妹「だからね、私……決めたの」
男「えっ?」
従妹「大きくなって環境が変わって、こんな風に疎遠になるくらいだったら」
従妹「私がその環境を変えてやろうって……私自身で何とかしようって」
男「…………」
従妹「だから、私はにぃにぃと同じ大学に行く」
男「……従妹」
従妹「たった一年だけかもしれないけど……でも、それでも私にとっては大切なの……」
男「…………」
男「……そんなに」
従妹「……ん?」
男「そんなに、俺のことを中心に考えなくても……」
男「歳をとって……それで疎遠になっていくって、普通の形なんじゃないか?」
545:
男「血が繋がった兄妹とかなら、その縁は一生離れられないけど」
男「俺達は、従兄妹なんだ。小さい頃は一緒に遊ぶけど……時間が経てば、それも変わってく」
従妹「…………」
男「でも、こうやってたまに会って……昔話に花を咲かせたり、近況を話し合ったり」
男「……それで、いいだろ。それが……普通だろ?」
従妹「……ふつう……なんだろうね」
男「だからさ、お前が俺と同じ大学に来るって言うのは嬉しい……でも」
男「それが、俺と会えるからっていう、つまんない理由なら……正直、賛成は出来ない」
従妹「……にぃにぃ」
男「自分の進路のことをしっかり考えるべきだ。それこそ、自分自身のためにな」
男「厳しいこと言うかもしれないけど、それがお前のためだと思うぞ」
従妹「…………」
男「……ごめんな……ちょっと暗い話しちまった」
従妹「……いいの……私のことを思って言ってくれたんだし……」
男「…………」
550:
とことことこ……。
男「…………」
従妹「…………」
男(……あんなこと言っちまったせいで……気まずい……)
男(がらにも無く……真面目なこと言っちまったからな……)
男「……なあ、従妹」
従妹「……ん?」
男「さっきはああ言ったけど、まあ、深く考えなくていいぞ」
従妹「え……でも」
男「俺の気持ちはそうだけど……実際、決めるのは本人なんだから」
従妹「うん……」
男「すぐに受験ってわけでもないんだから、ゆっくりと考えればいい」
従妹「そう、だよね……」
男「お前がどう決めても、最終的には俺は応援するから」
従妹「にぃにぃ……」
551:
男「せっかく久しぶりに会えたんだ、今は楽しく明るくいこうぜっ」
従妹「ははっ、にぃにぃがそんなこと言うなんて」
男「なんだー? 俺がお前と会って楽しくないとでも思ってんのか?」
従妹「……だって、にぃにぃ、今日もそうだけど乗り気じゃなかったじゃん」
男「そ、それはさ……」
従妹「久しぶりに会ったときも……何か、あんまり相手したくないみたいな」
男「いやいや……それは照れみたいなのが影響してだなっ」
男(あまりにもお前が美人になってるから……正直、どうしていいのか分かんないんだよ……)
従妹「でも、そうやって言ってくれるなら助かったよ」
男「そ、そうか?」
従妹「うん、まだ、にぃにぃも私のこと好きなんだって分かったし」
男「ま、まあ、そういうことだ」
従妹「よしっ、元気取り戻したっ。仲良くいこっ」
ぎゅっ……。
男「えっ、手……握るの……?」
556:
従妹「むっ、にぃにぃ……」
男「わ、分かったよ……今さっき否定したところだしな……」
従妹「そうだよっ、二人仲良くっ」
男「お、おうっ」
男(しかし、この歳になって、手を繋ぐ従兄妹って変だよな……)
従妹「ふふっ……にぃにぃ、顔真っ赤」
男「うるせっ、夕陽のせいなんだから勘違いすんなよっ」
従妹「うん、そういうことにしとくから」
男「くっ……いいようにあしらわれた……」
従妹「いいのいいの、さっきの仕返しだもんっ」
男「なんだよ……仕返しって……」
男(まあ……暗い空気が変わっただけでも良しとするか)
?「……あれ」
男「ん?」
557:
女友「もしかして……従妹?」
従妹「……えっ、うそ……」
男「なに? 知り合い?」
従妹「う、うん……学校の友達……」
女友「なんで従妹がこんなとこにいんの?」
従妹「それは私の台詞だよっ。今、親戚の家に来てるの」
女友「私も実家がこっちだから……」
従妹「えっ……そうだっけ?」
女友「従妹には話したことないっていうか……そんなこと普通話さないというか」
従妹「まあ……そうだね」
女友「……で、お隣さんは彼氏か何か?」
従妹「ええと……」
男「──違います」
女友「うわっ……即答……」
男「こいつの従兄だ。よろしくな」
561:
女友「はぁー従兄ねぇ……しかし、手握ってるけど」
男「そ、それは……ちょっとしたふざけたスキンシップというか……」
女友「ちなみに従兄妹同士なら結婚出来るって知ってます?」
男「ちょ、ちょっと待って」
女友「ははっ、そんなに焦らなくていいのに。逆に疑われちゃいますよ?」
男「…………」
従妹「もう女友っ、にぃにぃを困らせないで」
562:
女友「にぃにぃ?」
男「……そこも深く追求しないでくれるかな……」
女友「あーはい。今ので何となく理解できました」
男「察してくれると、ありがたい……」
女友「なんとなくお兄さんとは、分かり合える気がしますね」
従妹「えっ、何……二人の間で何が?」
女友「いいの従妹は。今の調子でガンガンいきなさい」
男「ちょっ……君」
女友「お兄さんとは分かり合えますが……私、面白いことも好きなんですっ」
565:
男「えっと、何飲む?」
従妹「私、オレンジジュース」
女友「アイスコーヒーでお願いします」
男「了解……オレンジジュースとアイスコーヒー二つで」
店員「かしこまりました」
女友「すみませんね、奢ってもらっちゃって」
男「いやまだ言ってない……まあ、そのつもりだったけどさ」
女友「ははっ、ちょっとした冗句ですよ」
男「君、バリバリ計算高いだろ……」
従妹「……むぅっ」
男「あ、どうした?」
女友「さっきから、お兄さんと私の会話に入れてなくてむくれてるんですよ」
従妹「そんなことないもんっ」
女友「あっ、『もん』が出た」
従妹「そ、そんなことないですっ!」
568:
男「はははっ」
女友「……あれ、何か今おかしいこと言いました?」
男「いや、従妹がどうやって学校生活送ってるか、今ので分かった気がする」
女友「そういうことですか」
従妹「……なんか、言葉に悪意を感じるなぁ」
男「女友さんは、従妹と結構仲良いんだ」
女友「入学式の時に偶然隣の席になりまして……それからこんな感じです」
従妹「いい、にぃにぃ。この子、結構黒いから騙されちゃ駄目だよ」
女友「ちょっと、従妹、何余計なこと言ってんの」
男「まあ、何となく分かってるけどね」
女友「お兄さんまでそんなこと言って……」
男「じゃあ、なんか従妹の面白い話とか知ってるんだ?」
従妹「にぃにぃっ!」
女友「それは勿論、数多くをご用意してますよ」
570:
女友「私が一番驚いたのはですね、入学初日のことでした」
従妹「うわぁ……ちょっとやめてよぉー……」
男「ふむふむ」
女友「入学式もちょっと変な気がしてたんです。でも、それがなんのか分からなくて」
女友「その後、各生徒は自分の教室に移動したわけなんですが、その時も私は従妹と喋っていて」
女友「教室に入った時……あっ、これは、と」
男「ほう」
女友「その時、なんの違和感か理解したんですね。それが、男どもの飢えた視線だって」
男「は、はは……」
従妹「絶対、違うもん……」
女友「幸運なのか悪運なのか分かりませんが、私達は席も隣同士で」
女友「そこからもやっぱり、粘着質な気持ち悪い視線がつづく一方でした……」
女友「それで、女の直感で分かったんですよ……これは、この後、何かあると」
573:
女友「事が起きたのは、担任が挨拶を終えた後のことでした」
女友「生徒たちも初めの緊張からやっと解放され、一人また一人と続々と帰っていく中」
女友「顔をひきつらせながら、一人の男子が私達の元へ」
男「あーはい……」
女友「私も顔には自信が無いわけではありませんが、この隣の子には勝てる気が全くありませんでした」
女友「女の私から見ても、嫉妬を通り越して……最早『すげぇな』の一言で片付けられる始末」
女友「勿論、男子の視線は私など眼中になく、しっかりと従妹を見据えていました」
女友「で、呼び出しですよね、そこは古典的です」
女友「従妹に無理矢理連れられた私、そして従妹」
女友「裏庭では、男子の一世一代の告白が今にも始まりそうな時」
男「え……始まらないの?」
女友「どこに隠れてたんだ……と呆れるほど、木々の端からそれぞれ男が三人現れました」
男「……はぁ……それはまた」
女友「奇怪な光景でした……。男四人が奥で話し合った後、従妹に向かって一列に並んだんです」
男「絶対、奥でジャンケンしてたよね」
576:
女友「そして……」
女友「──悪魔の四人切りっ」
男「……はぁ……」
従妹「……うぅ……だって……」
女友「四人が連続でふられる光景なんて、私初めて見ました」
女友「二人とかなら分かりますが、四人ですよっ?」
男「……俺も今まで見たことねぇな」
従妹「……そ、そんなぁ……」
女友「まぁ、それが初めて従妹と会った日のことで……」
男「いや、本当に凄いね……」
従妹「にぃにぃ……」
女友「ちなみに、授業が始まった後の一週間、のべ十三人が切られましたけど」
男「…………」
従妹「もうっ! にぃにぃが言葉失ってるよっ!」
578:
女友「それで、渋谷のスカウトマンに従妹が言ったんですよ」
女友「『私、エッチなビデオに出るつもりはありませんからっ!』」
男「ははははっ」
従妹「……うぅ……」
女友「初めからきちんとした雑誌の人だって、名刺見せて貰って分かってるのに」
女友「アダルトビデオって……くくっ、スカウトマン、口開けて呆然としてましたよっ」
男「ははっ、し、しかし、話が尽きないな……」
女友「そうですね……話し出すと幾らでもありますから」
従妹「もうーそういうのいいから、にぃにぃも満足したでしょ?」
男「いや、うん、もうたっぷり聞いた」
従妹「女友も喋り過ぎだよ……私のイメージ崩れて来てるじゃん……」
男「それはないって、お前、やっぱり可愛いもんな」
従妹「……えっ……あ、あ、ありがと……」
女友「ふふっ、お兄さんには従妹はメロメロですね」
従妹「もうっ、そんなことないもんっ!」
580:
男「……っと、話してたからもうこんな時間か」
女友「あっ……七時をとっくに過ぎてますね」
男「そろそろ出ないとな、夕飯作って帰りを待ってると思うし」
従妹「うわぁ……おばさんに悪いことしたかも……」
女友「そうだ、従妹」
従妹「ん?」
女友「私、こないだ聞いたんだけど、滝先輩の話」
従妹「えっ……う、うん」
男「滝先輩?」
女友「近いうちに、また告白しようとか言ってるみたいだよ? メール来てるんじゃないの?」
従妹「いや……うん……ちょっとここではいいじゃん……」
男「俺に遠慮しなくていいんだぞ? で、滝先輩って?」
女友「あー、滝先輩っていうのはですね……」
従妹「──女友っ! にぃにぃに話さなくていいっ!」
女友「えっ……でも……」
582:
男「……従妹?」
従妹「別にここで話さなくてもいいでしょ?」
女友「それはそうだけど……」
男「なんだ? 俺に、聞かれたくない話なのか?」
従妹「そ、そういうことじゃないけど……」
男(なんかモヤモヤするな……はっきりと聞いとくか……)
男「滝先輩っていうのは、お前の元カレだったりするのか?」
従妹「違うっ! それは違うよっ、そういうのじゃないって……」
男「でも、お前、すごい言い難そうにしているから……」
従妹「もういいじゃん……この話はあまりしたくないよ……」
男「…………」
男「……ああ、分かった」
男(……くそっ……なんか気になるな……)
女友「…………」
584:
女友「じゃあ今日は、ありがとうございました」
男「おう、こっちも色々、話し聞けて良かったよ」
女友「はい……従妹」
従妹「うん……なに……?」
女友「最後のほう……ちょっと余計なこと言ってごめんね」
従妹「……べつに……いい」
女友「……うん……じゃあ、また」
男「また機会があったらな」
従妹「……ばいばい」
女友「…………」
女友「……そうだ」
男「ん?」
女友「お兄さん、ちょっといいですかっ?」
従妹「女友?」
585:
従妹「にぃにぃに余計なこと言うの止めてよ」
女友「違うって。私も女なんだから、察してくれない?」
男「……えっ……それって」
従妹「だ、駄目だよっ!」
女友「ちょっと待って。別にお兄さんは従妹の彼氏でも何でも無いんでしょ?」
従妹「そ、それはそうだけど……」
女友「だったらいいでしょ。そんなの私の勝手だし」
従妹「……う、うぅ……」
男「お、おいおい……」
男(なんなんだ……この流れ……)
女友「お兄さん、ちょっとこっち」
男「で、でも……」
従妹「…………」
男(従妹が俺のシャツを握ってんだよな……これを振り切りわけにはいかないし……)
586:
従妹「……お兄さん」
男(……ん……? 待てよ……?)
男「……従妹、シャツ離して」
従妹「うっ……」
男「……ん、ありがと」
従妹「…………」
男「そっちで、話せばいいんだな?」
女友「あっ、はい……」
588:
とことことこ……。
男「それで、滝とか言う奴の話なんだろ?」
女友「……話が早くて助かります」
男「この後のフォローのことをもう少し考えて欲しかったけどな」
女友「すみません……咄嗟に、思いついたのがあれしかなくて……」
男「で、何なんだ? 従妹は俺に聞かれるの嫌だと言ってたぞ?」
女友「……それでも、お兄さんには話しておきたいんです」
男「…………」
女友「滝先輩っていうのは、うちの三年の人なんですけど」
女友「サッカー部のキャプテンやってる凄い人で、人気もあるんです」
男「ああ」
女友「その人が、最近、従妹に夢中になってまして……」
男「昔の元カレとかではないんだな?」
女友「勿論違います。というか、従妹が他の男子と付き合ったことは無いです」
593:
男「……そうか」
男(何だよ……なんで、安心してるんだ、俺……)
女友「一度、その人が従妹に告白して……ふったんですけど」
男「ん? 何か問題があったのか?」
女友「いや、そこまでは問題ないんですが」
女友「滝先輩には、その前に付き合ってた方がいて……」
男「ああ……」
女友「従妹が好きになったってことで、その人と別れたんです」
男「……そういうことか」
女友「従妹はそれが自分のせいだと思ってるらしくて」
女友「あんまり、その滝先輩の話は嫌みたいですね」
男「……ん」
女友「とくにお兄さんに聞かれるのは……」
男「…………」
596:
男「…………」
従妹「…………」
男(また、この空気か……いらん置き土産をしてくれたよな……あの子)
従妹「……にぃにぃ?」
男「ん、どうした?」
従妹「……え、ええと……さ」
男「おう」
従妹「女友……何だって?」
男「いや、まあ……うん」
従妹「……にぃにぃ?」
男「ちょっと、気になります……みたいなこと言われただけだよ」
従妹「……そ、それで?」
男「いや、うんと、ありがとう……みたいな」
従妹「……にぃにぃは、女友のこと好きなの?」
男「いや……」
597:
従妹「……そ、そのさ……」
男「ああ……」
従妹「私は……どう、かと思うなあ……」
男「えっ……何が?」
従妹「いや、女友って可愛いけど、本当は腹黒いし……」
男「ああ、そういうことか」
従妹「ケーキだってねっ、お腹一杯とかいいながら、三つとか普通に食べちゃうんだよっ」
男「あ、うん」
従妹「そ、それに……ええと、他に何があるかな……」
男「もういいよ」
従妹「……え?」
男「あの子に悪いけど、俺は付き合う気とかそういうのは無いから」
従妹「……全く? これっぽっちも?」
男「おお、ああいうしっかりものタイプは俺には合わない」
従妹「そ、その通りだよっ」
600:
男「年下に尻敷かれるっていうのは、ちょっとな」
従妹「……う、うん」
男「まあ、どっちかというと」
従妹「……ん?」
男「あの子と従妹なら……俺は、従妹の方がタイプだな」
従妹「……うぅ……」
男「ははっ、照れちゃったか」
従妹「……にぃにぃ」
こてっ……。
男「お、おい……バスの中だってっ……」
従妹「ありがと……にぃにぃ」
男「う、うん……」
従妹「私も……にぃにぃのこと、好き……」
男「…………」
643:
男「ただいまー」
従妹「すみません、遅くなってしまって……」
母親「気にしない気にしない。もう、ご飯は出来てるから」
男「親父は今日も帰って来てんのか?」
母親「さっき電話があって、急な仕事が入っちゃったんだって」
男「いつもならしない連絡をわざわざ……」
母親「それだけやっぱり若い娘がいると、はりきっちゃうんでしょ」
男「完全に変態親父だな……」
従妹「は、はは……」
646:
母親「それで、従妹ちゃん。気に入った下着あった?」
男「ふぼっ!」
従妹「おばさんの言った通り、ばっちしでした」
母親「それは良かったわ。入ったことはなかったから、結構心配だったのよね」
男「食事中に、それも、異性がいるところでする話題ではないだろ……」
母親「どんなの買ってきたの?」
従妹「ええと、三つほど可愛い系を選んできました」
男「おい、お前ら俺の話を聞け」
母親「どれどれ……」
がさがさ……。
男「もうやだ……この母親……」
母親「ちょ、ちょっと……従妹ちゃん」
従妹「えっ……どうかしました?」
649:
母親「黒のやつあるじゃない……最近の子だと、これも可愛い部類なの……?」
従妹「あー、そうだった……。えっと、それはですね……」
男「…………」
従妹「にぃにぃが選んだものでして……」
母親「な、なんとまあ……」
男「好きで選んだんじゃないっ! あくまで強制されてだからなっ!」
母親「それにしても、これを選ぶとは……我が子ながら恐ろしいわ」
従妹「そ、そうですね……」
男「おい、フォローはどうしたフォローは」
母親「でも、あんたが気に入ったのを選んだんでしょ? これが良かったわけ?」
男「いや、まあ……そうだけどさ……」
母親「やはり、あの人の血を継いでるだけあるわね」
男「……それは凹むわ」
従妹「にぃにぃ、元気出して……」
651:
母親「はあー、やっぱり遊園地に行ったんだ」
従妹「はい、時間いっぱいまで色々回りました」
母親「観覧車とかも乗った?」
従妹「最後に一回乗りましたよ」
母親「いいわねぇ……青春してるわね……」
男「まあ、なんだかんだ言って、楽しかったな」
従妹「うん、とっても楽しかったっ」
母親「なんか、懐かしいわね。昔、二人が小さかった頃、みんなで行ったじゃない?」
男「あー……それ、従妹が言ってたな」
従妹「聞いてくださいよ、おばさん。にぃにぃ全然覚えてないんです」
母親「あれ、あんたが一番楽しんでたのに?」
男「いや……微かに記憶はあるけど、そこまでは……」
従妹「私は完璧に覚えてるのにひどいよぉ……」
母親「ほんとこの子ったら肝心なところで駄目ね。親の顔がみたいわ」
男「お前だよ、親お前だから」
652:
男「……ふぅ……」
男(こうやってガス抜きしとかないとな……何があってからじゃ遅い……)
男(しかし従妹が来てからというもの、完璧に回数が増えちまってる……)
コンコン。
従妹『にぃにぃっ、早く入れてっ』
男(噂をすれば何のその、ってやつだな……)
男「おう、今開ける」
ガチャ……。
従妹「もう、遅いよっ!」
男「いやいやごめん……って、おいっ!?」
従妹「どうかな?」
男「どうってお前っ、下着姿じゃねえかっ! このバカっ!」
729:
従妹「だって、せっかくにぃにぃが選んでくれたんだもんっ」
男「だから、試着室で見たってっ!」
従妹「ちゃんと見て欲しいのっ、似合ってるかどうかっ」
男「似合ってるってっ! 頼むから、服を着てくれっ!」
男(やべぇ……このボディは反則だろっ……)
従妹「ほら、後ろも……」
男「あーもうくそっ、埒があかねぇっ」
ザバッ……。
従妹「あっ……」
男「変な声だすな、俺のジャージ貸してやるからそれ着ろ」
従妹「……むぅ……もう、何か適当……」
男「適当も何も……この流れが俺には意味分からんわ」
731:
従妹「気を取り直して……にぃにぃ、いつもの、ね」
男「……そろそろ止めにしようぜ」
従妹「ダメだよっ、私がお風呂に一緒に入らないことの条件でしょ?」
男「それがかなり無茶あるんだって……」
従妹「でも、約束は約束だもんっ! にぃにぃ、お願いっ!」
男「……はぁ……」
男(付き合ってもいないのに……こんなこと続けてもいいのかな……)
従妹「にぃにぃ……?」
男(俺がもし、今後、従妹と付き合う彼氏だったら、従兄とキスしてた女なんて嫌だよな……)
従妹「……も、もしかして……怒った?」
男(やっぱり、従妹のためにも……こういうのは止めた方がいいじゃないのだろうか……)
従妹「何か……返事してよぉ……」
男「…………」
従妹「にぃにぃ……」
男「なあ……従妹」
732:
従妹「……え?」
男「やっぱりこういうのは良くない」
従妹「そ、そんな……」
男「ほら、これからのこと考えろよ。今はお前に好きな奴はいないかもしれないけど……」
従妹「今だけじゃないもんっ、これからもだよ?」
男「まあ俺の話を聞け……確実に今後、付き合いたいなって思う男性が現れるよ」
従妹「……絶対ないもん……」
男「そんな男性が現れた時に、今みたいなことを一から始めればいいだろ?」
男「そんなに焦らなくても、いつかはしなきゃいけない時がくるんだから」
従妹「今がいい……」
男「そう言って、あまり俺を困らしてくれるな……」
従妹「にぃにぃは……にぃにぃは、私だと嫌なのっ?」
男「そういうことじゃなくてな……」
従妹「誤魔化さないでよっ!」
733:
従妹「私だから、年下だから? それとも、妹みたいに思ってるから嫌なの?」
男「そうじゃない……」
従妹「だって、にぃにぃが言ってることってそうだもんっ」
従妹「にぃにぃにだって、付き合ってる女性いないんでしょ? 私もいない……なら、問題ないじゃんっ」
男「それとこれは、話が別だ」
従妹「……にぃにぃ……」
男「母親にも言われたけど、俺はお前に手を出しちゃいけない」
男「お前がまだ恋愛に対して無垢だからこそ、年上の俺が歯止めをきかせないと駄目なんだ」
従妹「そんなこと……」
男「はっきり言って、俺は恋愛を経験したことがない」
従妹「……っ」
男「だから、キスとかそういうのは恋人同士がやるもんだって、信じてる」
従妹「……うぅ……」
男「だから、今みたいなこと続けるのは正直しんどいんだ」
734:
従妹「にぃにぃは……私のことを恋人だと思えないの……?」
男「……恋人というよりは、妹に近いな」
従妹「…………」
男「小ちゃい頃から一緒にいたじゃないか。何も知らない同士とは訳が違う」
従妹「……っ」
男「それにさ、やっぱり俺はお前に幸せになって欲しいんだ」
従妹「……にぃにぃの言う、私の幸せってどんなの?」
男「そりゃ……お前がいい人と付き合って、楽しい日々を送……」
従妹「──押しつけだよ」
男「押しつけって……」
従妹「にぃにぃは私のこと妹みたいに思ってるって言ったけど」
従妹「私はにぃにぃのことを実の兄だと思ったことは一度もない」
男「…………」
従妹「兄でもないにぃにぃに、そんな心配してもらわなくてもいい」
男「……お、お前……」
736:
従妹「大体、いい人って何? あまりにも漠然としてる」
男「そりゃ……お前のことを一番に考えてくれて……」
従妹「そんな人いないもん」
男「お前が知らないだけで、いるって……」
従妹「……いない」
男「従妹……」
従妹「……っ」
従妹「にぃにぃ以上に私のこと考えてくれる人なんて、絶対いないもんっ!」
男「…………」
従妹「にぃにぃじゃ駄目なの? その役目を負ってくれないの?」
男「だから、そういう極端な話じゃなくてさ……」
従妹「私は真面目だよっ? にぃにぃがいいっ」
男(……従妹は……俺を勘違いしてる……)
男(昔の頃の思い出が強すぎて……俺のことを過剰に評価してるんだ……)
男(……有り難いけど……嬉しいけど……でも)
737:
男「お前の錯覚だよ、それは……」
従妹「……そんな……」
男「……もう少し経てば分かる。今は分からないかもしれなけどな……」
従妹「…………」
従妹「……だ、だったら……」
男「ん?」
従妹「にぃにぃは……私が、他の人と付き合うの許せる?」
男「……別に……」
男(……何だ……何でもっとはっきり言わないんだ……)
従妹「別に……って」
男「相手がいい人間だったら……いいじゃないか?」
従妹「…………」
男「ほら……あの、滝先輩とかいたじゃないか」
男(おいっ! 俺は何を言ってるんだっ!)
738:
従妹「……滝先輩は全く関係ないよ」
男「そんなに初めから毛嫌いしなくてもいいだろ?」
従妹「にぃにぃは知らないんだから、それこそ余計なお世話」
男「前の人と別れて……それは、従妹のことを大切に思ってくれている証拠じゃないのか?」
従妹「……な、何でそれ……」
従妹「ああ……女友が話したんだね……」
男「…………」
従妹「……にぃにぃが言いたいことは、もう分かった」
従妹「それで、にぃにぃは滝先輩と私が付き合えばいいって思ってるの?」
男「……まぁ、そういうことだな」
従妹「ふーん……滝先輩ねぇー……」
男「…………」
従妹「いいよ、なんかもう私も分け分からなくなってるし」
男「……えっ?」
従妹「ここに呼び出そ、滝先輩」
740:
男「ちょっと待て……こんな時間にか?」
従妹「いいよめんどくさいし。さっさとこの話を終わらせたい」
男「明日でもいいだろ……相手のことを……」
従妹「私が決めたの。もう、指図しないで」
男「…………」
従妹「滝先輩って人は、にぃにぃが言うようにいい人かもしれない」
従妹「あんまりうわついた話も聞かないし、前の彼女とも別れたしね」
男「……そうか」
従妹「誰が私の連絡先教えたのか知らないけど、たまにメールもくるんだ」
男「…………」
従妹「私は興味なかったから、いつもゴミ箱に直行だったけど」
従妹「まあそれで、連絡先は知ってるの」
男「ああ……」
従妹「じゃあ、連絡するから。時間になったら、二人で駅まで行こっ」
742:
男(俺の思い通りになったはずだ……)
男(従妹との不純な行為も終わって、アイツも幸せになれる……)
男(誰も損をしない……誰もが最良になれる選択だ)
男(でも……どうしてだ……)
男「…………」
従妹「もうすぐ時間だね」
男「……そうか」
従妹「どうしたの? さっきから全然喋らないけど」
男「…………深い意味はないよ。ただ、色々考えてるだけ」
従妹「ふーん……しかし、滝先輩も、こんな夜遅くにバイクで大丈夫かな」
男「…………」
男(どうして……胸が張り裂けるほど、痛いんだろう……)
男(妹を取られる……そんな気持ちなのか……)
男(でも……きっとこれが正しいんだ……)
従妹「……あっ」
744:
男「ん……もしかして、あれが」
従妹「……うん、滝先輩だと思う」
滝「……どうも」
従妹「ごめんなさい……こんな時間に呼び出してしまって……」
滝「あーうん、別にいいよ」
従妹「本当に、ごめんなさい……」
滝「気にしなくていいって。で、話って何なの? それに、この……横の人は?」
男「…………」
男(身長は俺よりもずっと高い……顔も整ってるし……勝てる要素が見つからないな)
男(……ん? なんで、俺が勝てなきゃいけないんだ?)
従妹「この人は、私の従兄です」
滝「はぁー……それで、何でこの人が?」
従妹「ちょっと付き添ってもらったんです」
滝「ええと……ごめん、良く理解できないな……」
746:
従妹「滝先輩には、前から色々気持ちを伝えられてきました」
滝「う、うん……そうだね」
従妹「ごめんなさい、一回目は断ってしまって」
滝「ははっ、あの時は結構落ち込んだよ……」
従妹「でも、彼女さんとも別れたみたいで……」
滝「そりゃ、別の人に告白するんだ、別れるのが普通だろ?」
従妹「それでも……私のせいで、本当にすみません」
滝「もう、さっきから謝ってばかりだな……別れたのは君のせいじゃない」
滝「俺が勝手に決めたんだ。君がぐじぐじ悩むことじゃないし、それに遠慮する必要もない」
従妹「……先輩」
男「…………」
男(……ははっ……なんだ、いいやつじゃないか……)
男(初めはどうなるかと思ったけど……これは任して大丈夫だ……)
男(……ああ……そうか……終わりなんだな……)
男(俺がアイツの面倒を見るのもこれで……最後……)
748:
滝「……もしかして、このことを謝りたくて呼んだの?」
従妹「それも……あります」
滝「そうか……なら、ちょっとだけ俺から話をしてもいい?」
従妹「……え?」
滝「前に一度、俺は君に振られたよね」
従妹「あ……はい」
滝「それからずっと色々考えたんだ。諦めようとか、他の人を探そうとか」
滝「でも、やっぱりさ……君のことを追ってる自分がいて……」
従妹「…………」
滝「ごめん……君には本当に迷惑かもしれないけど」
滝「もう一度やりたいんだ。結果が分かっていてもね……」
従妹「……先輩」
従妹「実は……今日来てもらったのはその話なんです」
滝「ん?」
751:
従妹「この話をしたら、従兄のほうから色々言われまして」
滝「あ、うん……そうなんだ」
従妹「こんなんじゃ駄目だって……いい人がいたら、付き合うべきだって」
男「…………」
滝「えっ……でも」
従妹「私……思ったんです。滝先輩は……いい人なのかもしれないって」
滝「……あ、ありがとう」
従妹「だから……私」
滝「……え……」
男「…………」
男(あー……これで……終わりか……)
従妹「先輩に……今日ははっきりと言います」
滝「…………」
従妹「私……先輩と……」
男「……っ」
755:
従妹「──先輩とは、付き合えませんっ!」
男「なっ……」
滝「…………」
従妹「いくら滝先輩がいい人だって分かってても、にぃにぃに言われてもっ!」
従妹「私が好きな人は先輩じゃないっ……」
従妹「私が……私が……本当に大好きなのはっ……」
滝「……うん」
従妹「──この横にいる……従兄なんですっ!」
男「…………」
男(……何だ……何言ってんだこいつは……)
滝「……じゃあ、前断ったのも?」
従妹「はい……ごめんなさい……」
滝「他の人からの誘いをずっと断り続けていたのも?」
従妹「にぃにぃが……従兄が好きだったから……」
滝「そうか……そうだったんだ」
762:
滝「初めから……全て決まってたんだね」
従妹「…………」
滝「俺が振られる理由がやっと分かったよ。そりゃ、勝てないわ」
従妹「……ごめんなさい……」
滝「そうか、そういうことで今日は呼んだんだ」
従妹「……ごめんなさい、ごめんなさいっ」
滝「ははっ、まあ、すっきりしたからいいよ。残念だったけど、モヤモヤは消えた」
従妹「…………」
滝「話がこれで終わりなら、俺はそろそろ帰るわ」
滝「……ここからまた、一悶着ありそうな気配だしね」
従妹「…………」
男「…………」
男(何だよ……俺のことが好き……? だから、告白を断ってた?)
男(意味がわからない……あいつの言う『好き』は、恋愛のものとは違って……)
764:
従妹「……にぃにぃ」
男「……あ、うん……」
従妹「これで、分かってもらえた?」
男「…………」
従妹「多分、いくら鈍いにぃにぃでも、今ので分かってくれたと思う」
男「……それは……」
従妹「にぃにぃは言ったよね、滝先輩は前の彼女と別れて告白したから、多分いい人だって」
男「…………」
従妹「だから、私もそうしたよ。先輩には悪いけど、そのためだけに呼んだの」
男「……お前……」
従妹「にぃにぃはまだ私のこと子供か何かと勘違いしてるんじゃない?」
従妹「もう私だって、色々分かってるもんっ」
従妹「大切な人のためなら、他の人を犠牲にしても、傷つけても構わない」
従妹「にぃにぃが思ってるほど、私は純情じゃないよ。もっとホントは汚いんだ」
男「…………」
765:
従妹「にぃにぃは気付いてないかもしれないけど」
従妹「お風呂に入ろうって言い出したのもそう、キスし始めたのもそう」
従妹「その場のなりゆきなんかじゃないよ。全部、考えてやったんだもんっ」
男「……そうか……そうだったんだ……」
従妹「にぃにぃが好きだから。少しでも、気付いて欲しかったから」
従妹「でも……にぃにぃの中には……昔の私しかいなくて……」
男「…………」
従妹「なにやってもっ! いくら頑張ってもっ! 『妹』の一言で片付けられちゃうっ!」
男「……ああ……」
従妹「もうそんなの嫌だっ! 私は、にぃにぃが誰よりも好きなのっ!」
男「…………」
従妹「昔から……ずっと昔から……それは初めは兄を慕う気持ちだったかもしれないよ……」
従妹「でも今ならそれは違うって分かるもんっ」
従妹「私は……今も昔も……ずーっと」
従妹「──にぃにぃのことが大好きなんだからっ!」
772:
男「…………」
従妹「…………」
男「……ははっ……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「……これじゃあ、どっちが年上か分かんねえな」
従妹「……え」
男「ここまでされて、やっと気付くなんて……つくづく俺も馬鹿だよ」
従妹「……にぃにぃ」
男「滝先輩には悪いことしたな……俺の責任だ」
従妹「ち、違うっ……」
男「それにさ……お前のことをずっと妹として見てたのは事実だし」
男「今まで必死に、女として見てこなかったのも……正しい」
従妹「…………」
男「逃げてたんだよな、ずっとさ」
776:
男「久しぶりに会ったら、急激に可愛くなって戻って来たお前に……」
男「正直、どうやって対応していいのか、分からなかった」
従妹「……うぅ……」
男「ごめんな……頼りない兄で……」
従妹「…………」
男「本当にごめんな……しっかりしない男で」
従妹「……そ、それって……」
男「俺も覚悟を決めるよ。ここまで想いをぶつけられたなら、真面目になるさ」
従妹「……う、うん……」
男「でも、もう少しだけ時間をくれ」
男「今まで妹として見て来たお前を、きちんと一人の女性として扱うから」
男「それで……答えを出させてくれないか?」
従妹「……ぅう……にぃ、にぃ……」
男「ちょっとだけ時間はかかるかもしれないけど」
男「お前の想いに応えられるだけの……しっかりとした男になるから」
781:
従妹「……うっ……うぅ……ひっく……」
男「泣くなよ……ここから始まるんだからさ」
従妹「だ、だって……うぅ……う、嬉しくてっ……」
男「…………」
従妹「やっ、と……おもいが……通じ、て……うっ……」
男「そうか……」
男「洟垂れで泣き虫のお前が……本当によく頑張ったな」
従妹「……にぃにぃっ!」
ドカッ……。
男「おいおい……急に抱きつくなよ」
従妹「……ぅう……うぇっ……うっ……」
男「でも、もうそれも気にしなくていいんだよな……」
男「……そうだ」
従妹「……っ……ん?」
男「そういえば……今日はしてなかったよな」
787:
従妹「……えっ」
男「……ほら、顔こっち向けろ」
……ちゅ。
男「………ん」
従妹「……んん!?」
男「……はい」
従妹「えっ……もう終わり……?」
男「まだ、付き合うって決まったわけじゃねぇぞ?」
従妹「で、でも……」
788:
男「お互いフリーだし、まあキスぐらいならいいか」
男「なんか、俺がかなり得してるけど……」
従妹「にぃにぃ……はや……」
──んちゅ。
従妹「……ん…んっ」
男「ん……」
男(なんか……胸の奥がすかっとするな……)
男(やっと……これで、対等になれたのかもしれない……)
男(でも、これから……これからが……本当に大事だな……)
男(……こいつのことを本当に女として見れるか……そこが肝心だ……)
従妹「……ひぃひぃ……?」
男「んんっ!」
従妹「ん……あ……」
男(まあ、どうにかなるか……)
800:
男「……とまあ、そういう感じで」
母親「…………」
男「……何か、言いたいことある?」
母親「言いたいことっていうか、今更気付いたわけ?」
男「……は?」
母親「そんなの前から分かってるわよ。従妹ちゃんがあんたのこと好きってことぐらい」
男「マジで?」
母親「見れば分かるじゃない。どう見ても、あれは恋してる顔でしょ」
男「……気付いてなかったのは俺だけか……」
母親「で、どこまでいったの? もしかして、やった?」
男「……どこまでって……」
母親「私、前に言ったわよね。手出したら、殺すって」
男「…………」
母親「あの子が毎日、あんたの部屋に行ってるのは知ってる」
母親「だから、聞くの。どこまでいった?」
802:
男「……うぅ……」
母親「別に殺したりはしないわ。あれは、半端な気持ちで手を出して欲しくなかったから」
母親「あんたがその気なら、特に何もいわない」
男「……おい、それって……」
母親「大体、従妹ちゃんを預かる時に、佐智子さんからそれっぽいことは言われてたの」
母親「『従妹、今回は完璧に男くんのこと落としにいくと思うんで』みたいな」
男「……はぁー」
母親「実の兄妹でもないし、反対みたいなのはしないわ」
母親「男が真面目に付き合うつもりがあるならだけど」
男「…………」
母親「しっかり考えなさい。他所の場合とは全然違う」
母親「何たって従兄妹同士よ? 別れたらそれでおしまいってわけにはいかないんだから」
男「おう……」
804:
母親「それにね、従妹ちゃん、相当優秀みたいよ」
男「…………」
母親「あんたの大学なんて、すかしっぺみたいなもん」
男「す、すかしっぺって……」
母親「それだけ好きなんでしょ。こんなに一途な子なんて普通いないわよ?」
男「…………」
母親「恵まれすぎね。だから、あんたももう少し変わらないと」
母親「何で、従妹ちゃんが好きになったか、ぐらい思い出しなさい」
男「……そんなのあるのかよ……」
母親「これ以上は手助けしないから。あとは自力で頑張れ」
男「……分かった」
母親「……私の子なんだから、期待してるわよ」
男「…………」
805:
男(理由ねぇ……俺のことを好きなる理由……)
男(んー……思い出せねぇ……なんかあったっけ?)
男「あーだめだ……」
男「考えても仕方ねぇか……」
男(なんかの弾みで思い出してくれるといいだがな……)
男(……昔か……昔……)
男(……何だっけ……)
男(……んー……)
男「……駄目だ……何も浮かばない……」
男「…………」
806:
従妹「にぃにぃ、おはようっ」
男「……うっす」
従妹「あれ、元気ないね。あっ……目の下にクマ出来てる」
男「ちょっと昨日は眠れなくてな……」
従妹「……もしかして、私のせい?」
男「んにゃ、ちょっと違うな」
従妹「ふーん……でも、夜更かしは身体に良くないよ」
男「おう、分かってる」
従妹「…………」
男「ん? 朝のキスでもして欲しいのか?」
従妹「ちょっ……い、今はだめっ!」
たたたたっ。
男「何なんだいったい……」
808:
もぐもぐ……。
母親「……聞いたわよ、従妹ちゃん」
従妹「……へっ?」
男「…………」
母親「よく頑張ったわね、えらいわ」
従妹「……あ、はい……どうも……」
父親「ん、何の話だ? お父さんも参加させてくれ」
男「……いいから黙ってろよ」
父親「うるさいわバカ息子」
男「……はぁー……」
母親「今日の二人の予定はどうなってるの? 久しぶりの休日だけど?」
父親「ははっ、待ちに待った休日だなっ」
男「……ええと、まだ考えてない」
従妹「にぃにぃと一緒です」
母親「あら、そうなの」
809:
父親「実は、前々から考えてることがあってなっ」
トゥルトゥルトゥル……。
男「おっ……携帯が鳴ってる」
従妹「にぃにぃ、誰から?」
男「んと……先輩だな……」
従妹「あ、こないだ会った大学の人?」
男「おう……もしもし」
父親「えっと、前から考えたんだがっ、どうだ、キャンプにでも……」
男「あ、はい……え、今日ですか」
父親「みんなで行ったら、楽しいと思うん……」
男「分かりました、飯食べたら向かいます」
従妹「にぃにぃ、何だって?」
男「いや、大学に来いってさ」
従妹「え……なんか、用事でもあるの?」
男「捲し立てられてよくわからんかった……」
811:
父親「えっ……キャンプは?」
男「これから大学行かないと駄目だから俺は無理だ」
母親「あら、それは残念ね」
父親「まあ、男は運が無かったってことで仕方ないな」
父親「悪いが、俺と母さんと従妹ちゃんは今日でかけて……」
従妹「あっ、私もにぃにぃについてく」
男「ん? どうせ、暇だぞ?」
従妹「でも、一緒にいたいし。別に構わないよ」
男「ならいいけど……まあ、邪魔はすんなよ」
従妹「うんっ」
父親「……はい……じゃあ、そういうことで」
母親「お父さん……元気出して……」
父親「せ、折角の……休みなのに……うぅ……」
父親「仕事中なのに……必死に色々考えてたのに……ぐすっ」
男「いや、仕事しろよ……」
894:
ガチャ。
男「ちっーすっ」
先輩「おっ、来たくれたかっ」
男「先輩、急な用って何ですか? 電話では何にも聞けず仕舞いだったんですが」
先輩「ちょっと話があって……そうだ、こないだの彼女さんは?」
男「えっ……あ、はい」
従妹「ど、どうも……」
先輩「……よ、よしっ……うっしっ!」
男「せ、先輩?」
先輩「気持ちが急ぐあまり、彼女さんを連れて来てくれって言い忘れてしまったんだ」
先輩「でも、これでOK。男君、ナイスだよ」
男「えっと……こいつが何か話に関係あるんですか?」
899:
先輩「僕はね……あの後、ずっと考えてたんだ」
男「はぁ……」
先輩「『にぃにぃ』って呼ばれる彼氏がいるのかどうか……」
先輩「一日中……それも、夜の間もずっと眠らないで、考えてたんだ」
男「……えっと……」
先輩「ここまで僕を唸らせた命題も……大学受験以来だ……」
先輩「紙に書いては消し、必死に考え尽くしたっ」
先輩「そして……遂にっ、今日の朝、その真理に辿り着いたんだっ!」
男「…………」
先輩「ズバリ断言しようっ! 男君っ!」
先輩「『にぃにぃ』がまかり通る仲の男女に、恋愛関係などないっ!」
男「…………」
男(……こいつバカだ……)
先輩「ははっ、驚きのあまり言葉も出ないか」
900:
男「それで……先輩はどうしたいんですか?」
先輩「どうしたいもなにも、君は僕を欺いたんだよ? まずはその謝罪が聞きたいな」
男「謝罪ですか……」
先輩「それと、そうしなければならない理由」
先輩「そ、そして……そこにいる、じょ、女性の本当の紹介をして欲しいっ」
従妹「…………」
男「……ちょっと時間下さい」
先輩「構わない。十二分に話しあってくれ」
男「……従妹、ちょっとこっちこい」
従妹「う、うん……」
とことことこ……。
男「で……どうする?」
従妹「やっぱりあの人……変な人だね……」
男「俺も今までは真面目な人だと思ってたんだが……どうやら、病にかかってるらしい」
男(完全に、恋の病だと思うがな……)
902:
従妹「にぃにぃ……どうするの?」
男「……とりあえず、俺に任せろ」
従妹「……信じてもいい?」
男「ああ……昨日の俺とは違うところを見せてやる」
従妹「……にぃにぃ」
先輩「話はそろそろ終わったか?」
男「……はい」
とことことこ……。
先輩「……で、どうなったんだ?」
男「初めに、確かに先輩に嘘をついてたことを認めます」
先輩「ははっ、やっぱりそうだろう。僕を騙そうなんて、君も思い切ったことをする」
男「それは、本当にすみませんでした」
先輩「まあ、いいよ。それで……そ、そこの、女性は一体……?」
903:
男「こいつは俺の従妹で、夏休みの間だけ家で預かってます」
先輩「そ、そうか……従妹なのか……」
男「ただ、先輩」
先輩「……と、なると……ぼ、僕がアプローチしても問題は……」
男「──あるんです」
先輩「……えっ?」
男「こないだ、この子に告白されまして」
先輩「こ、告白……?」
男「今は保留中ですが、正直、他の野郎に渡すつもりは更々ありません」
従妹「……っ」
先輩「そ、そんなっ! 従兄妹同士なんだろっ!? 男君、また君は嘘をついて……」
男「残念ですが、嘘じゃないです」
先輩「う、嘘だっ! 僕は騙されないぞっ!」
男「……だったら、証明してみせますよ……」
従妹「にぃにぃ……?」
904:
ぎゅっ……。
従妹「……あっ……」
先輩「なっ……抱きしめて何を……」
男「先輩には申し訳ないと思ってます……でも」
先輩「……ま、まさか……」
んちゅ……。
男「……ん」
従妹「……あん」
先輩「くっ……躊躇いもなく……目の前でっ……」
男「……んんっ」
男(今日はかなり激しくいくぞっ……)
ぎゅっ。
従妹「……んっ……あっ……」
男「んん……」
先輩「……あっ……なんて熱いんだ……この二人……くっ、くそっ」
908:
男(抱きしめてわかるけど、こいつの身体ってほんと柔らかいな……)
従妹「はっ……んっ……」
男(しかも、必死に俺の強烈なキスについていこうとしてるし……)
従妹「……んっ……あ……んっ」
男(……声も生々しい……やべぇ……ちょっと興奮してきた)
男(俺も負けてられないぞ……唾液を流し込んでやるか……)
にゅちょ……にゅるん……。
従妹「んっ! は……ん……」
男「……んん……」
先輩「……うぅ……なんだよ……こ、こんなの……」
先輩「……はつ、初恋だったのに……これは……キツい……」
従妹「……あっん……ん……」
男「……んっ……」
先輩「……で、でも何だろう……この胸の高まりは……」
先輩「……も、もしかして……自分は……ああ……うっ……」
912:
従妹「…………」
男「どうした、さっきから黙り込んで」
従妹「……いや、にぃにぃが凄い猛烈だったから……」
男「なんだ、意外だったか?」
従妹「予想外だよぉ……あ、あんな……人の前で……」
男「前だってやってるだろ?」
従妹「で、でも……こんなにす、凄いのじゃなかったし……唾液だって……」
男「は、ははっ……あれはかなりやばかったな」
従妹「う、うん……新発見だよ……頭、くらくらしたもん……」
男「また、帰ったらやるか?」
従妹「にぃにぃ……」
男「ん?」
従妹「絶対だよっ! 約束だからねっ!」
男「ははっ、勿論だっ」
男(しかし、帰る直前、先輩が解放された顔だったのが気になるな……何だったんだあれ)
917:
男「案外、用事が早く終わっちまったな」
従妹「家に帰ってもいいよね。みんな待ってると思うし」
男「…………」
男「そうだ」
従妹「……にぃにぃ?」
男「どうだ、これからデートしてみないか?」
従妹「……えっ」
男「こないだは俺がきちんとエスコートも出来なかったしな」
男「挽回もかねて、もう一度仕切り直しなんていいと思うんだ」
従妹「…………」
男「お前はどう思う?」
従妹「う、うんっ!」
従妹「行こっ! 絶対に行こうよっ!」
男「よしっ、そうと決まれば話は早い。どうだ、どこに行きたい?」
従妹「どこだったいいよっ! にぃにぃと一緒なら、どこでも楽しいもんっ!」
918:
従妹「……うわぁ……凄い……」
男「俺も初めて入ったわ」
従妹「……にぃにぃ……でも、これ……」
男「気にするな、お前が好きなものを選べばいい」
従妹「で、でも……値段どれも高いよ?」
男「今までの全部のお返しだよ。こんなんじゃ返せないぐらいだけど、それぐらいさせてくれ」
従妹「う、うん……」
男「どうだ? この辺のネックレスなんていいと思うが」
従妹「……ネックレスかぁ……」
男「何だ? 違うのがのいいか?」
従妹「うーん……」
男「じっくり考えればいい。時間はたっぷりあるんだからな」
従妹「…………」
従妹「あっ……」
924:
男「ん?」
従妹「……これ……」
男「……指輪か」
従妹「う、うん……」
男「これが欲しいのか?」
従妹「……だ、駄目かな……?」
男「そんなことないさ。お前が気に入ったものを買うつもりだからな」
従妹「でも……恋人同士でもないのに、指輪を贈るって……」
男「気にしたら負けだぞ? 言ったもんが勝ちだ」
従妹「…………」
従妹「にぃにぃ」
男「おう、決めたか」
従妹「これ……二つ買おっ」
男「……ん? もう一つ欲しいのか?」
従妹「ううん……私とにぃにぃが一緒につけるのっ」
925:
従妹「ルンルンル?ン♪」
男「えらくご機嫌だな」
従妹「だ、だって……にぃにぃと同じ指輪っ」
男「そうか、そんなに嬉しいのか」
従妹「うんっ! なんか、一緒にずっといるみたいっ」
従妹「これがあれば、離れててもにぃにぃのこと感じられるし……」
男「……確かにそうだな……」
従妹「だから、絶対離さず身につけてないと駄目なんだからねっ」
男「風呂の時もか? 錆びちゃうぞ?」
従妹「でも、銀だから大丈夫なんだよっ。変な成分のお風呂に入らなければ大丈夫っ」
男「ははっ、それは一本取られた」
従妹「ふふっ、にぃにぃっ」
ぎゅっ……。
男「おいおい、一目についちゃうぞ?」
従妹「いいのっ、今日はデートなんだからっ!」
927:
従妹「にぃにぃ、こっちの服とさっきのとどっちがいいかな?」
男「……ええと、前のほうがいいじゃないか……?」
従妹「じゃ、じゃあねっ……次はこっちのやつと……」
男「そろそろ決めようぜ……もう、かれこれ一時間もこのやり取りやってるぞ……」
従妹「だって、いいのがいっぱいあるんだもん」
男「それも分かるけど……もう腹減ってきたって……」
従妹「えー……じゃあ、もう少ししたら決めるよ」
男「……出来るだけ早くな……」
従妹「うんとねー……あっ、あっちのもいいのがあるっ」
たたたたっ……。
男「……なんか、かなり長引きそうな予感がするな……」
従妹「にぃにぃっ! 早く、こっちに来てっ!」
男「お、おう……」
933:
男「…………」
従妹「ご、ごめんね……」
男「……あー……後少しから本当に長かったな」
従妹「だから、さっきから謝ってるじゃん。もう、許してよぉー」
男「別に怒ってないけど……まあ今日はいいさ」
男「今までの謝罪と感謝を込めたのが、本日のデートの意味だからな」
男「姫に振り回されるのも、我慢我慢」
従妹「むぅー……絶対、意地悪だよぉ……」
男「ははっ、よし、飯頼むか」
男「ちなみに、ここはオムライスが評判のお店らしいぞ」
従妹「そうなの? じゃあ、それを頼もうよ」
男「ただ、二種類あってな……どっちにしようか迷ってるんだ」
従妹「ふーん、よくわかんないけど、そんなの悩む必要ないじゃん」
男「えっ? どうしてだ?」
従妹「だって二つ頼んで、分け合いっこすればいいだけだもんっ」
938:
店員「お待たせしました」
従妹「うわぁー……いい匂い」
男「これは……結構うまそうだ……」
従妹「温かいうちに食べよっ! 頂きまーすっ」
男「おう、頂きます」
もぐもぐっ。
従妹「お、おいしいっ」
男「……こ、これは半熟の卵と具が最高のハーモニーを醸し出して……」
従妹「もうっ、そんな解説いらないって」
男「そ、それもそうだ……うまいな」
従妹「うんっ、それに……にぃにぃと食べてるから二倍おいしいよっ」
男「はは、二倍って何の基準なんだ」
従妹「細かいことはいいのっ! すっごくおいしいってことだもんっ」
男「それは良かった。誘った甲斐があるってもんだ」
従妹「うんっ、本当に楽しいっ!」
939:
従妹「にぃにぃ、ほらこっちも食べてみて」
男「おう……って」
従妹「あーん」
男「…………」
従妹「んっ、にぃにぃ! あーん」
男「……ああ、分かったよ……」
ぱくっ……。
従妹「おいしいでしょ?」
男「おう……おいしいな」
従妹「じゃあ、にぃにぃのやつもちょうだいねっ」
男「……まさか」
従妹「勿論、今のをお返しだよ? ほら、にぃにぃの出番っ」
男「……し、仕方ない……あ、あーん」
ぱくっ。
従妹「ふふっ、なんかバカップルみたいだねっ」
941:
男(どうしてこいつは……俺のことを好きになってくれたんだろう)
従妹「にぃにぃ、あーん」
男「……みんな見てるぞ……」
従妹「周りは気にしないのっ、二人だけの時間だもんっ」
男(どうしてこいつは……俺に笑顔を向けてくれるんだろう)
男「……もう、どうにでもなれっ」
ぱくっ……。
従妹「ははっ、豪快な食べっぷりだねっ。さすが、にぃにぃっ」
男「……この野郎……ほらお返しだっ……あーん」
従妹「私は全く恥ずかしくないのだっ」
ぱくっ。
男(どうして……)
男(……どうしてなんだろう……)
男(こんなに楽しそうに……幸せそうに……俺を想ってくれるのは……)
従妹「にぃにぃっ、楽しいねっ!」
943:
──『……嫌……』
男(……えっ……?)
──『……ち、近づかないで……』
男(な、何だコレ……?)
──『……うぅ……ええ……ん……』
男(これは……この声は……?)
従妹「にぃにぃ……?」
男「あ、ああ……」
男「…………」
従妹「どうかした? なんか、表情が変だよっ?」
男「……そ、そうだな……」
男(あの声は……確かに……従妹……?)
946:
従妹「急にどうしたの? なんか、お腹でも痛かったり?」
男「いや……そういうことじゃなくてな……」
男(……そうだ……)
男(あれは……多分……昔の、小さかった従妹の声だ……)
男「…………」
従妹「……にぃにぃ?」
男「……ああ」
男(……何か、思い出しそうだぞ……)
従妹「ちょ、ちょっとどうしちゃったの……?」
男(こうやって……急におかしくなった俺を心配そうに覗き込む、この子も……)
従妹「……なんか変だったらすぐに言ってよ…‥?」
男(確か昔は……)
男(…………)
男「……そうだ……そうだったんだ……」
947:
従妹「……え?」
男「思い出した……思い出したぞっ」
従妹「ちょっと……にぃにぃ……?」
男「小さかった頃……」
男(そうだ……そうだよっ……)
男(今は慕ってくれるこいつも……昔は……)
──『……ち、近づかないで……』
男「…………」
従妹「……えっと……?」
男「……昔さ……お前、俺のこと嫌いだったよな」
従妹「……あ……で、でも何で……?」
男「初めて会ったときも、佐智子さんの後ろにずっと隠れててさ」
従妹「もしかして、にぃにぃ……」
男「俺が必死に遊ぼうって誘ってんのに、ぴぃーぴぃー泣いちゃって」
948:
従妹「……う、うそ……」
男「それでも、ずっとめげずに誘って」
男「でもお前、追いかける俺から一生懸命逃げてさっ、ははっ……」
従妹「……ああ……」
男「仲良くなりたかったのに、お前ってやつはひどいやつだった」
従妹「……にぃにぃ……」
男「でも、ある時、それを見かねた親たちが遊園地に行こうって」
従妹「…………」
男「でも、ずっとお前は佐智子さんの側にいて」
男「なんか悔しくて、それでもまだ仲良くなりたい自分がいて……」
従妹「……う、うん……」
男「そしたらお前、急にいなくなってやんの」
従妹「……あ、あの時は……アイスクリームに目を奪われちゃって……」
男「ははっ、その時から甘いもんが好きだったのか」
949:
従妹「でも……にぃにぃ、思い出したんだ……」
男「ああ……それでな」
従妹「うん……」
男「慌て出した親たちを尻目に……俺は、一人で駆けたんだ」
男「母さんを振り切って……がむしゃらにな」
従妹「…………」
男「憎たらしいお前だったけど、多分泣いてるんだろうなって」
男「寂しがりやで臆病なお前だったから、絶対泣いてるんだろうなって」
従妹「うん……うん……」
男「その姿が何となく浮かんじゃって、居ても立ってもいられなくて」
男「……人ごみの中、小さいからだでその間を走り抜けた」
従妹「……にぃにぃ」
男「そして……見つけたんだ」
従妹「…………」
男「やっぱり泣いてた……小さなお前を……見つけたんだ」
951:
男(……覚えてる……)
男「……覚えてるよ……」
──『……うぅ……ええ……ん……』
男「真っ赤に晴らした目と……視線が合って……」
──『……うぅ……』
男「一瞬、安心した様子だったけど……俺だけだったことに、すぐに戸惑い出して……」
──『……うっ……』
男「それで、泣き虫なお前は……また泣き始めようとしたから」
男「それを止めたくて……女の子を泣かせたくなくて……」
──『えっ……』
男「俺は……手を差し伸ばしたんだ」
954:
従妹「……にぃにぃ……」
男「うん、思い出したよ」
従妹「……ああ……」
男「そうか……そうだな」
従妹「…………」
男「俺のほうが……先に……」
956:
従妹『えっ……』
男『……いいから、手、握れよ』
従妹『……うぅ……で、でも……』
男『ほらっ、遠慮するなっ』
従妹『……っ』
男『……すぐに母さんたちも来るからさ』
従妹『う……うん……』
男『しかし心配したぞ……急にいなくなったりするから』
従妹『ご、ごめんなさい……』
男『いいよ、気にすんな』
従妹『でも……ど、どうして……探してくれたの……?』
男『……だって……俺……』
──……お前のこと好きだから
960:
男「……俺の方が、先に……お前を好きになったんだな」
従妹「……うぅ……にぃにぃ……」
男「ははっ、馬鹿だな……こんな大事なこと忘れてるなんて……」
従妹「……うん……ほんと、馬鹿だよぉ……」
男「そうか……そうだったのか」
男「悩むとか、悩まないとかそんな話じゃなかったんだ」
従妹「……?」
男「前からおかしいと思ってんだよな」
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