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記者「ではよろしくお願いします」 勇者「はい」


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1:
記者「本日は魔王を倒した勇者パーティの勇者さんにお会いできて光栄です」
勇者「いえいえ」
記者「お忙しい中、私のような者の取材を受けてくださり本当に感謝しています」
勇者「や、忙しいっていっても連日の戦勝記念パーティに引っぱり出されてるだけですし。
 大勢の知らない人の前で毎晩ニコニコしてるのも、ちょっとしんどいですからねー」
記者「ああ、それはそうでしょうね」
勇者「記者さんはこの国の大手新聞社の方ですからね。ここらで愚痴っとけば
 そういう集まりも減るかもしれないし、ちょうどいいかなって」
記者「ハハハ、またまたご冗談を」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416568022
2:
記者「では早ですが、魔王を倒した冒険の話についてお伺いしても…?」
勇者「あー、なんだ、そっちの話ですか?」
記者「『そっち』?」
勇者「そういうことなら、私たちが日替わりでつけていた日誌がありますんで、
 私の口から聞くよりも、こっちの内容の方が正確なんじゃないかな。
 記憶とか言葉ってやっぱ、少しずつズレが生まれますしね」
記者「そ、そんな日誌があるんですか!?」ガタッ
勇者「あ、今ここにはないですよ」
3:
記者「ここにはない?」
勇者「うちのパーティの僧侶が、今写本してるところです」
記者「写本?」
勇者「ええ。記念にパーティ全員分書き写してくれるそうです。
 で、ついでといったらアレですが、原本を複製して出版する会社を興すらしいですよ」
記者「え゛ッ!?」
勇者「僧侶はこの先、どこの教会に籍をおいてもまず溶け込めないでしょうからね。
 あいつ、派閥争いとか大嫌いだから、うちのパーティにいてくれたようなとこあるし」
記者「ああ…教会ってそういうドロドロしたところありそうですね」
勇者「もちろん、昔とった杵柄で聖書の出版も平行して行うらしいです」
記者「こ、これは強力なライバル出現…ですかね」
勇者「ま、ま。そんな緊張せず」
4:
記者「そういうことでしたら、今ここで勇者さんに旅のお話を伺うことは…」
勇者「そうですね、あまり微に入り細を穿つような話はできませんね。
 僧侶の本の売れ行きに関わりますから」
記者「で、では…そうですね。勇者さんたちの今後の活動については?」
勇者「というと?」
記者「なんでも、各国から既に国軍の長としてお誘いがかかっているとか」
勇者「え、やだなぁ。どっから聞いたんですかそれ」
記者「私どもも情報を扱うのが仕事ですから」
勇者「まぁ、そういう話ならしても大丈夫かな」
5:
記者「ではまず、勇者さんは今後の生活についてどうお考えですか」
勇者「その話をする前に、知っておいてほしいことがあるんですよね」
記者「え?」
勇者「"私たちがこれまでどういう生活をしてきたか"、について」
記者「おおっ!?しかし、それは先ほどは話さない、と…」
勇者「や、まぁ、これは別に、記録とは関係のないところの話ですから。
 多分、話しても問題ない部分だと思うんですよね」
記者「そういうことなら、是非!」
勇者「えっとですね、私たちのこれまでの収入源についてですけど」
記者「はい」
勇者「魔物の死体からかっぱらったものを売り飛ばしてたんですよ」
記者「」
6:
記者「…っと、そ、それはどういう…」
勇者「あー、別にあれですよ、食肉とかそういう話じゃないですよ?」
記者「そ、そうなんですか?」
勇者「肉を食える魔物もいますけどね、そりゃ。
 そんな得体のしれないもんより、普通の動物の肉を食べたいでしょ?
 国の中で暮らしてる人なら」
記者「それは…まぁ、そうですね」
勇者「私たち、魔王を倒せるくらいの強さは持っていたわけですから。
 まぁ、なんていうんですか。伝説級?の魔物の退治もそこそこしてまして」
記者「は、はぁ」
勇者「そういうのに限って持ってるんですよね、ものすごい"お宝"」
7:
記者「"お宝"…ですか」
勇者「そうそう。強大な魔力を封じたオーブとか、ものすごい強度の牙とか」
記者「は、はぁ」
勇者「うちの魔法使いなんか、倒した竜の血をそのたびにボトル詰めにしてましたね」
記者「そんなものをどうして!?」ガビーン
勇者「え、やだなぁ、記者さんご存じないんですか?竜の血は最上級の魔術的媒介ですよ。
 それこそ見習い程度の魔術師でも、大砲のような火球を撃ち出したりできます」
記者「そんな物騒なものなんですか…」
勇者「魔王との最終決戦ではすごく助かりましたよ、惜しみなく使ってくれましたから」
記者「でしょうね」
8:
勇者「他にも、考えられる限りのお宝はかっぱらっていきましたね。
 持ち物から臓器に至るまで、価値のあるものは根こそぎでした。
 魔法使いと盗賊の二人が、こういうマニアックな知識に長けていたのも助かりましたね」
記者「…これ、オフレコにしときますね。勇者さんパーティのイメージが、どうにも…」
勇者「あ、そうですか。そこはまぁお任せします」
記者「で、そうして得たものは…」
勇者「希少性の高いものや、魔王戦に向けて有用なものは取っておきましたが、
 いらないものは交換したり、売ったりしましたね」
記者「ははぁ」
勇者「私たちも、なるべくみんなが国の中で食べているものを食べたかったですし…
 宿屋とはいえ、柔らかい布団で寝たりしたかったので」
記者「なるほど…」
9:
記者「しかし、そういうものは普通、強力な呪いがかかっていたりするのでは?
 まさか、それをそのまま流通させていたりは…」
勇者「その点はご心配なく」
記者「というと?」
勇者「確かに中には強力な呪いがかかっているものもありましたけどね、
 うちの僧侶がそういうのは一発で見抜いてくれましたから」
記者「あ、なるほど」
勇者「こと破邪・解呪・浄化の技法にかけちゃ、あいつの右に出る奴はまずいませんよ。
 そういう『禍々しいもの』を見抜く才能と能力にかけては、彼女は間違いなく世界一です」エヘン
記者「頼もしい限りですね」
勇者「まぁ、これからの世の中でその技術が生きる場面もあまりないでしょうけど」
記者「……」
10:
勇者「あ、まぁそんなわけで、そういうものを売って生活していたわけですけど」
記者「はい」
勇者「余るんですよね」
記者「余る…というと、そうした"お宝"が?」
勇者「はい。ちょっと旅の最後らへんでは正直やりすぎた感が」
記者「Oh…」
勇者「ただ、基本的には普通に消費されていくものですから、需要は高かったですよ。
 あと、売却先も偏りのないようにわざわざ各国を転移呪文で渡り歩いたので、
 供給過剰になって買い取りを拒否された、ってこともありませんでした」
記者「となると…」
勇者「そうです。それらを売った代金がまず余り始めました」
記者「……」
勇者「……」
記者「…参考までに、おいくらほど?」
勇者「……くらい」ゴニョゴニョ
記者「小国の国家予算クラスじゃないですか!?」
11:
勇者「あ、この国の銀行に預けてある金額だけですよ、今の」
記者「って、まさか、他の国にも!?」
勇者「大きな国にはだいたいここと同じくらいの預金があります」
記者「ええええ!?」
勇者「あ、勇者パーティとして、じゃないですよ?各人の名義でそれぞれほぼ等量に」
記者「ということは、各国に4つ、国家予算クラスの口座が…」
勇者「そうなります」
記者「」
12:
勇者「わざわざ辺鄙な場所に、そういうアイテムの"貯蔵庫"まで造ったんですけどね。
 最終的にはそこの容量もパンクしてしまったんですよ。
 だもんで、基本的に売るしか手立てがなくなっちゃったんです」
記者「ちょ、貯蔵庫!?」
勇者「ええ。完全にモンスターを根絶やしにした洞窟のダンジョンを流用して」
記者「それはかなり興味をそそられますね」
勇者「あ、うちのパーティの盗賊が山ほどトラップ仕掛けてるので危険ですよ」
記者「トラップ、ですか?」
勇者「あいつ曰く、『人生100回やり直せる量』らしいです」
記者「…興味だけでやめておきます」
13:
勇者「だもんで、基本的に我々4人、どこにいたって残りの人生遊んで暮らせるわけです」
記者「なるほど…。しかし、それだけの預金ともなると別の危険があるのでは…?」
勇者「ああ、銀行が預金を反故にしたり、国によっては国家命令で没収されたりとか、ですか。
 一度みんなと協議しましたが、結論としては"まずない"でしょうね」
記者「というと」
勇者「まず、銀行にはこの預金に利子をつける必要はないといってありますから
 それだけで向こうにはこの預金に手出しできないほど大きな貸しがあります」
記者「まぁ、そのレベルの預金になると…」
勇者「次に、国家命令の場合ですけれど」
記者「はい」
勇者「そんなことになったら、我々だって黙ってませんよ?」
記者「」
14:
勇者「まず私と魔法使いについては、言うに及びませんよね?
 私なら国軍と真正面からことを構えても、相手を全滅させて傷一つなく生き延びます。
 魔法使いなら、呪文一発で城どころか城下町ごと消し炭にするでしょう」
記者「……」
勇者「盗賊は広範囲の攻撃手段をさほど持ちませんが、暗殺の技術は私より上です。
 おそらく一晩で、国家の運営に支障をきたすレベルの死人がお偉方に出るでしょう」
記者「……し、しかし僧侶さんは?」
勇者「ああ、確かに彼女はそうしたスキルを持ちませんね。ですが…」
記者「ですが?」
勇者「僧侶の身にそんなことが起きれば、我々3人が絶対に黙っていません。
 おそらく僧侶になにかあった場合が、一番むごいケースになるでしょう」
記者「」
15:
勇者「ま、そういう冗談はさておいて」
記者「寿命が10年は縮みましたよ!!」
勇者「我々の預金は一国の軍隊に匹敵する"軍事力"に裏付けされています。
 賢明な指導者なら、まず手は出してこないでしょう」
記者「…なるほど、よくわかりました。
 しかし、その預金がこれまでの手段で増えることは、もう…」
勇者「そう、ないんですよね。
 魔王が倒れ、世の中から魔物という存在が姿を消しましたから、
 我々がこれまで供給していたアイテムも、もう"貯蔵庫"にあるだけです」
記者「今はまだその事実に世界中の人が目をつぶってますが、数年も経てば」
勇者「誰もが嫌でも気付くでしょうね。
 これまでの世の中がある意味"魔物に支えられていた"ことに」
16:
勇者「というか、冒険者ギルドではこれが既に問題になってまして」
記者「なるほど、でしょうね」
勇者「まず、近隣の魔物を討伐する依頼が一切なくなりました。
 これにより、そうした簡単な依頼によって生計を立てていた初級冒険者は
 既に露頭に迷っています」
記者「なるほど…」
勇者「まぁ、初級冒険者はまだそうした生活にどっぷり浸かっていたわけではありませんからね。
 若ければ若いだけ、別の道を探すという方法もあります」
勇者「…ですが、一番問題なのは『これしか生きる方法を知らない』人たちです」
記者「……」
17:
勇者「ある意味で、私たちが彼らの生活手段を奪ってしまったようなものでして。
 『魔王を倒せる』と確信できたとき、一番懸念していたのがそれでした」
記者「そんな確信があったんですか」
勇者「ああ、魔王城を攻略していたときの話ですよ」
記者「そのへんの話は、例の日誌で…?」
勇者「あー、あのあたりはエグい話ばっかりだからなぁ。あんまり読んでほしくないなー」
記者「…な、なるほど」
勇者「なので、我々にはやっぱり責任があると思うんですよ。
 魔物に脅かされない平和な世界と、これからの冒険者の生活を天秤にかけて」
勇者「たっぷり一ヶ月悩んだ後、更に半年の準備期間をかけて、
 私たちは前者を…『世界平和』を選びました」
記者「……」
18:
記者「…あれ?待ってください、半年の準備期間?」
勇者「ええ」
記者「まさか、本当なら半年早く魔王を倒すことも…」
勇者「できたかもしれません。いや、間違いなくできたでしょう」
記者「それなのに、わざわざ半年もかけて何を準備してたんですか!?」
勇者「そのへんは日誌に書いてありますので」
記者「ううん、焦らすのがうまいですね勇者さんは!」
勇者「まぁ、『どうやって』準備していたのかはそっちを読んでもらうとして、
 『何を』準備していたのかについてなら、今ここでお話できますよ」
記者「ホントですか!?」
勇者「さっきも言ったじゃないですか、『今後の生活の話』ならする、って」
記者「そういえばそうでした」
19:
勇者「まず、盗賊ですが」
記者「はい」
勇者「あいつは各地のダンジョン跡に、あたらしく"宝物"を設置しています」
記者「…は?」
勇者「魔物は魔王が消えたためにもういませんが、新しく大量のトラップと
 魔法使いプロデュースのゴーレム人形が設置してあります。
 あ、一部新しく『ダンジョン』として造り上げた場所もありますよ」
記者「し、しかしそれは…」
勇者「あー、"宝物"って言ってもあれですよ、先程言った魔物の遺物がメインです」
記者「それでも、今の世の中では垂涎のお宝ですね…」
勇者「あと、旅の過程で使わなくなった武具なども。
 どれもちょっとしたものですけど、今の私の剣と鎧には劣りますし、
 …なにより、これからの我々にはまず必要ありませんからね」
記者「なるほど」
勇者「ちなみに、現地近くの国家で使われている通貨の入った宝箱も潜ませてるそうです」
記者「それは夢があるような、ないような…」
20:
勇者「これは盗賊の言葉ですけど、『冒険者の一攫千金の夢は壊したくない』んだそうで」
記者「そのために、わざわざ?」
勇者「タダで配ったって、ありがたみも何もないでしょう。
 やはり、自分の能力で苦難を乗り越えた先に掴んだものだからこそ」
記者「なるほど…これは早く人々に知らせなくては」
勇者「あと、我々の"貯蔵庫"ですけど」
記者「はい」
勇者「"この世の全てをそこにおいてきた"と銘打って、
 近いうちに魔王城以上の高難度ダンジョンに改装しようかな、と」
記者「そんなことしていいんですか!?」
勇者「あの盗賊が"本気で殺しに来ている"ダンジョンですよ?
 それを突破できる人間になら、あの中身を得るに足る人間であると信じますよ」
記者「うわぁ…」
21:
勇者「魔法使いは、新しく魔術師ギルドを立ち上げるそうです」
記者「冒険者ギルドとはまた別に?」
勇者「魔術師って、基本的に基礎以外は独自研究ばかりですからね。
 今まではそれでどうにかなっていましたが、太平の世の中ともなると」
記者「あー…。有用な魔術を会得、ないし発見できない魔術師は…」
勇者「そうして潰れていくのは偲びない、と思ってるようです。
 秘術以外の研究においては広く横のつながりをつくり、技術交換をするべきだ、と」
記者「その号令をかけるのに、魔法使いさんなら適任でしょう」
勇者「あいつの魔法技術なら、ほとんどの魔術師の秘術レベルでしょうからね」
記者「それを習得できるのは魅力的ですね」
勇者「その中で、…あ、これはまだ構想の段階ですけど」
記者「はい」
勇者「転移魔法を大勢の魔術師に習得させて、輸送ネットワークをつくれないかな、って」
記者「なんと!」
22:
記者「しかし、転移魔法…ワープ?テレポート?というのは、非常に難しい魔法では」
勇者「だからこその魔術師ギルドですよ」
記者「というと」
勇者「あいつ…魔法使いのレベルに達さないまでも行使が可能な簡単な転移魔法を
 半年の間に研究して既に開発は終了、もうすぐ体系化もできる目処が立ってるんです」
記者「それはすごい!」
勇者「それを各地の高名な魔術師に伝達するところまではなんとかこぎつけました。
 あとはそれを広く教える体制をつくり、『転移魔法による輸送網』を確立することで、
 将来的に発生するであろう"魔術師という職業の衰退"を防ごうという話です」
記者「なるほどなるほど…。確かに今のままでは、魔術師は便利な兵隊か薬剤師程度の
 扱いになるしかないのは目に見えています…」
勇者「それでは遠からず"魔術師という生き方"に魅力がなくなってしまいますから」
記者「いろいろ考えてるんですねぇ」
23:
勇者「僧侶については先ほど話したとおりです」
記者「勇者パーティの日誌と、聖書などの出版物の刊行…」
勇者「あと、私たちのこれからの事業における記録などもお願いしてます」
記者「なるほど。魔術師ギルドは教科書も必要そうですしね」
勇者「あ、そういうのも要りますね。記者さん、やるじゃないですか」
記者「いやぁ、それほどでも…」
勇者「で、そうか。私の話ですね」
記者「はい。勇者さんは今後はどうお過ごしになられるおつもりですか」
勇者「遊んで暮らすのも悪くないな、って思うんですけど…
 一応、元冒険者の職の受け口として、土木事業でも興そうかと」
記者「土木…事業…?失礼ですがなんというか、勇者さんに似つかわしくない単語ですね…」
24:
勇者「いや、魔王を倒す過程で世界中を回ったわけですけどね」
記者「はい」
勇者「小さな都市国家同士になると、その間に街道なんてほとんどないわけですよ。
 踏み分け道がせいぜい、馬車が通れるならめっけもん、みたいな」
記者「ああ…でしょうねぇ」
勇者「だもんで、せっかく街があるのに流通経路が全く存在しないわけです。
 そういうところに限ってお互いに貧乏だから、整備するための元手も人手も足りない」
記者「わかります」
勇者「そういう体力のない国々が、このままだとどうなっていくと思いますか」
記者「まぁ…いいとこ、近隣の大国に吸収合併されていくのでは」
勇者「ですよね。私もそうなるのかな、って昔からぼんやり思ってたんですけど…。
 ここ最近、ちょっと嫌な感じがしましてね」
記者「嫌な感じ?」
勇者「ほら、記者さんも聞いたでしょう。私が各国の軍に招かれた、って話」
記者「ああ、そういえば」
25:
勇者「つまり、それらの国では魔物の脅威が去った今も軍事力を増強する意志がある。
 こういうのを『覇権思想』っていうんですかね?どの国も人間のリーダーになりたいと
 考えている…ということになります」
記者「…ちょっと待って下さい。それはつまり…」
勇者「ええ。これまでは魔物がいたためにほとんど発生しなかった、
 人間同士の争いが、このままでは再び発生することになりかねません」
記者「そ、そんな馬鹿な!人間はそこまで愚かじゃないでしょう!」
勇者「しかし、私は実際に勧誘されました」
記者「ぐっ……」
勇者「これは憂慮すべき事態です。そしてもし私がそれらのうちのどこか一国につけば、
 おそらくその国が世界の覇権を握る事になるでしょう」
記者「で、ですが……」
勇者「ええ、私もそこまで自分が偉いとは思っていませんよ。
 肩入れした国の指導者が実はどういう考えを持っているのか、見抜く自信はありません」
記者「もし最初は素晴らしい考えを持っていたとしても、
 その人が途中で心変わりする、ということだってありえます」
勇者「そうですよね。そこを考えだすと、もう悪い結論しか浮かびません」
26:
勇者「なので、勧誘をかけてきた国はしばらく見限ることにしました」
記者「…で、それと先程の『土木事業』というのは」
勇者「そうそう、それです。かろうじて自治を保っている都市国家同士を
 物理的に道路で結ぶことで、連合国家のようにできないものかな、って」
記者「……」
勇者「私個人の考えですけど、侵略したりされたり、っていうのはもうイヤなんですよ。
 ですが、そんなことにならないためには都市国家の側にも力が必要になります」
記者「それが、道である…と?」
勇者「そうです。魔物に怯える必要がなくなった農業都市は、これから生産をグンと増やすでしょう。
 それらの近隣に点在する交通の要所を商業国として立たせ、これらをがっちり道でつなぐ」
記者「まさか、魔術師ギルドは!?」
勇者「ええ、その輸送の手段のひとつとしても活躍してもらう予定です。
 現在の転移魔法の精度では大量の荷物を輸送するのは難しいですから、
 当面は人や小荷物の行き来だけになるでしょうが」
27:
勇者「そうして都市国家の連合が力をつければ、大国もおいそれと手出しはできない」
記者「それらの国家に、向こうが道を伸ばして来たがるかもしれませんね」
勇者「そうなれば言うことなしですよ。それだけの価値を向こうが認めた証拠になります」
記者「…しかし、そんな壮大な計画があると知れわたれば、妨害工作も…」
勇者「そこで私たちの出番ですよ」ニコッ
記者「あ」
勇者「一国を向こうに回して渡り合うことが可能なワンマンアーミーが3人。
 そして、大国の非道を許すなと紙とペンで戦う聖職者が1人」
記者「怖ッ……」
勇者「その事業に、職にあぶれた初級冒険者の人たちを募集するつもりです。
 人知未踏のクエストと銘打って、一緒に土木工事をしてもらえないかと。
 そのための資金と彼らへの報酬は、各国に預けた私の口座から出すつもりです」
記者「なるほど…確かに、夢はありますね」
勇者「ベクトルはこれまでとは少し違いますけどね」
28:
記者「…これ、記事にして大丈夫なんですか?
 まさか、このあと盗賊さんが私を…なんてことは」
勇者「いや、絶対にないですよ」
記者「ホントでしょうね…」
勇者「むしろ、すぐにでも記事にして徹底的に周知してほしいくらいですよ。
 特にこの取材をあなたに回してきたであろう、お偉い方たちに見てほしいな」
記者「…バレバレでしたか」
勇者「バレバレでした」
記者「たはは、勇者さんには敵わないな。騙し討ちのようなことをしてすいませんでした。
 …でも、私も上司の命令には逆らえないんですよ。上下社会のつらいところです」
勇者「…そうだ、記者さん」
記者「はい」
勇者「僧侶のつくる出版社に来ませんか?給料ははずみますよ?」
記者「へ?」
勇者「いや、やっぱり普通の社会をよく知ってる人が一人いないとキツいな、とは思ってたので。
 それに記者さんは、はっきり言葉にしないまでも『お偉方の思惑』を私に伝えようとしてくれた」
記者「いや、それは…その…」
勇者「その気持ちだけで言うことなしですよ。後日、改めてお願いにあがりますから――」
「――勇者パーティの"5人目"になってくれませんか?」
29:
――これが、のちの世に伝わる
 五英傑の伝説の始まりであった
 これより幾百年の後に魔王が復活した際にも
 この時代に築かれた人間同士のつながりにより
 難なく魔を退けることが出来たという
 現代でも未だに攻略できないダンジョンと共に
 夢と浪漫を残した男には"迷宮の父"の名が
 世界に点在する魔導の技術を撚り合わせ
 全てを体系化した男には"大魔導師"の名が
 神の教えを世界中の言葉で綴り
 教会の中興の祖となった女には"光の巫女"の名が
 彼らの活動を補佐し記録する裏方に徹し
 今現在も残る正確な史文を記した男には"文筆王"の名が
 そして、人類の結束をつなぐことに人生を捧げた男には
 "絆の勇者"の名が、死後に贈られたと伝えられる――
       ソウリョ出版『五英傑伝説』より
31:
おしまい
リハビリがてらに
未発表フォルダの肥やしを引っ張り出して
加筆修正してきました
依頼は明日の朝に
33:
短いけど楽しかった!
34:
乙!!!!!!
32:
リハビリってことは過去作有るのか
教えてもらえると嬉しい
3

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