テマリ「当たったんだよ、一泊二日のペアチケット!」back

テマリ「当たったんだよ、一泊二日のペアチケット!」


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1:
歓喜するテマリ。
手には商店街の福引で当たった温泉旅行券が握りしめられていた。
我愛羅「ほう、良かったな。最近カンクロウのせいでヒドイ目にばかり遭ってたから、天が憐れんだんだろう……」
大きなデスクで山のような書類とにらめっこしながら、我愛羅が応える。
肩が凝るのか、時折腕をぐるぐると回している。
そんな様子を見てテマリは尋ねる。
テマリ「どうだい? たまには息抜きに出かけないか? もちろんカンクロウは抜きで」
我愛羅「いや、いい……。風影として里を守っていかねばならない以上、ここを離れるわけにはいかないからな……」
テマリ「……」
いつの間にか大人になったんだなぁ、と思う。
一昔前は見るものすべてを恨んでいたのに……。
テマリにとって、弟の成長は嬉しかった。
我愛羅「それよりも奈良シカマルとでも行ったらどうだ……?」
テマリ「な! ///」
突然意中の男性の名前を言われてテマリはうろたえる。
我愛羅「いつも邪魔されてばかりで何の進展もないんだろう」
テマリ「そ、そりゃあそうだけど……///」
我愛羅「俺のことは気にせず楽しんでこい……。もちろん、カンクロウは抜きでな……」
テマリ「う、うん……///」
5:
***
そんな2人のやり取りを、物陰からジッと見つめる者がいた。
誰であろうか?
そう、ご存じカンクロウである。
カンクロウ「俺だけまるで、邪魔者扱いじゃん……」
ギリリと歯ぎしりの音が響く。
今日も今日とて、カンクロウの復讐の火は燃え上がった。
18:
***
シカマル「あー……だりぃ……」
土曜の朝、シカマルは布団のなかでうつ伏せになりながらつぶやいた。
――昨日はひどい目に遭った。
アスマが手続きを間違えたせいで、受けた任務はまさかのDランク。
上忍一人と中忍三人で一日中草むしりをする羽目になったのだ。
シカマル「寝ても疲れがとれねえな……」
腰は痛むし腕も筋肉痛。
これならどっかの忍とやり合ってるほうがよっぽどマシだった。
今日は一日家でゴロゴロしてよう……。
シカマルはゆっくりと目を閉じた。
19:
***
――おい、起きろ! 
誰かの声がする。
まぁどうせ母ちゃんだろうが……。
――起きろって! 行くぞ、温泉に!
温泉か……いいな……。
――目をあけろ! ほら! このチケット見ろ!
むにゃ……。
テマリ「起きろォッ!!」
シカマル「うわッ!! な、なんだ!?」
突如布団をひっくり返されて目が覚める。
シカマル「って……テマリッ!?」
テマリ「やっと起きたか……」
目の前には砂隠れの里の忍、テマリが立っていた。
20:
テマリ「さっさと顔洗って飯を食ってこい! 11時にはここをでるぞ」
大きなボストンバッグをぶら下げ、完全に旅支度をしている。
シカマルは状況を理解できない。
シカマル「行くってどこにだよ……?」
テマリ「だから温泉だっての。コレ見ろ!」
テマリが突き出したのは一泊二日の温泉旅行券。
露店風呂と豪華な海鮮料理の写真がプリントしてある。
21:
シカマル「な、なんだこりゃ……」
テマリ「福引で当たったんだ。私は日ごろの行いがいいからな!」
ニッと笑うテマリ。
思わずシカマルはその笑顔に見惚れた。
テマリ「だから、早く行こう! もうポッキーとかも買ってあるんだぞ!」
シカマル「ちょ、ちょっと待て!」
シカマルはひとまず寝ぼけた頭を完全にクールにしてから、思考の海に浸かった。
願っても無いチャンス……。
温泉でのんびり過ごすのはどれだけ素敵だろうか……。
しかも好きな女と一泊……。
念のためコンドームは必要か……。
いや……待て……。
シカマル「……不穏分子がある」
突然シカマルの顔に影が入った。
23:
シカマル「……その、なんだ……。こういうときって決まって……」
歯切れが悪くなるシカマル。
口にも出したくなさそうなその態度にテマリは首をかしげる。
テマリ「ん? カンクロウにはもちろん秘密にしてあるぞ?」
シカマル「よっしゃッ! 母ちゃんッ! 朝飯早くッ! 温泉旅行に行ってくるッ!」
聞くが早いか、シカマルは大喜びで立ち上がった。
24:
***
昼の三時頃、二人は温泉街に到着した。
うっすらと硫黄の匂いが漂うその街には多くのお土産屋がならんでいる。
シカマル「おお……なんかすげえな……///」
テマリ「来てよかったろ! 誰のおかげ? そう! わ・た・し! ///」
よほど嬉しいのだろう。
いつもクールで姉御肌のテマリが今日は随分とはしゃぐ。
シカマル「へいへい、テマリ様のおかげ、おかげ」
テマリ「なんだよ、もっと崇めろよ!」
何だか可笑しくなってきて、2人ともついつい笑ってしまう。
今日は最高の一日になりそうだ……。
シカマルはそう感じた。
25:
***
そんな2人を、カンクロウは温泉宿のベランダから双眼鏡で覗いていた。
カンクロウ「ククク……最高にいたたまれない一日にしてやるじゃーん……」
例によって、隈取がいやらしくぐにゃりと曲がる。
踏まれても踏まれても雑草のようにしぶとく生きる、不屈の男、カンクロウ。
彼は今、五代目風影が砂爆葬送したい奴ランキングの第一位を独走していた。
ナルト「なぁ、そろそろ俺らも温泉に行くってばよ!」
シノ「ああ、そのために来たようなものだからな……」
リー「あ、ちょっと待ってください! 今ちょうど罰ゲームがネジに当たりましたから!」
ネジ「クッ……白眼を使えば良かった……」
キバ「へへッ! ちゃんとチンコにマジックで顔描けよ!」
カンクロウの後ろで勝手に盛り上がっている木の葉の忍達。
バッグにポテチやらウノやらを詰めまくって、この温泉街に意気揚々とやって来たのだ。
チョウジ「それにしても温泉旅行に僕たちみんな連れてってくれるなんて、カンクロウ、すごい太っ腹だよね」
チョウジの賛辞を聞きながら、カンクロウはニヤリと笑う。
カンクロウ「まあな……。俺は金は好きだが、復讐のためなら惜しみなく使う……そんな男じゃん……」
チョウジ「?」
26:
***
チェックインを済ませて、部屋に入る2人。
そこまで広くもないが、小奇麗な和室だった。
畳はまだ新品そのものと言った感じで、イグサのいい匂いがする。
テマリ「おお! なんか旅行してる感がすごく高まるな!」
シカマルは畳にゴロンゴロンと転がる。
シカマル「うへへ……俺、実はこの新しい畳の匂いが好きなんだ……///」
ニヘラニヘラと笑うシカマル。
いつもの切れ者軍師の面影はどこにもなかった。
テマリ「気持ち悪い顔で笑いやがって……。ま、その気持ち、分からなくもないけどな///」
そう言ってテマリも転がってみる。
いつもと違う空間、匂い、そして不思議な高揚感。
2人は存分に部屋を満喫した。
27:
テマリ「私は何度も風呂に浸かりたい派だからな。とりあえず夕飯までに二回は行くぞ!」
備え付けの浴衣を引っ張り出しながらテマリはウキウキとしている。
シカマル「近くの足湯も気になるところだよな」
テマリ「ああ! じゃあ今から一ッ風呂、ンで足湯巡りしながら温泉街散策して、それから二回目だな」
シカマル「ちなみにここは全部混浴らしいぜ」
テマリ「そ、そんなわけないだろ、この馬鹿! ///」
シカマル「へへッ冗談だよ、冗談!」
テマリをからかいながら、「お先ッ!」と言って走り出す。
テマリ「あ! 待てッ!///」
走りながら、今日は全然『らしくねえな』と思った。
自分らしさが全くない。
いつもめんどくせーめんどくせーと言ってる俺が、わざと面倒で馬鹿げてることをやりたがっている。
でも……たまにはこんなのもいいじゃねえか……。
28:
***
カポーン……。
立ち込める湯気のなかで桶の音が響く。
シカマル「ふぃ――……」
ついつい声が漏れる。
ちょいと熱いくらいの湯が、痛む体の節々を癒してくれる。
シカマル「マジで来てよかったぜ……」
パシャッパシャッと顔に湯をかけると、外気で冷たくなった頬や鼻の頭からじんわりと温かさが伝わってきた。
景色も申し分なく、広大な露天風呂からは山々が一望できる。
シカマル「おーい、テマリー! そっちはどうだー!? 気持ちいーかー!?」
高い塀越しに、女湯にいるテマリに向かってわざと声を張り上げてみる。
クスクス……。
案の定、塀の向こうで多くの笑い声が聞こえた。
テマリ「ちょ! 恥ずかしいだろ!? 人がいるんだぞッ!! ///」
テマリの裏返りそうな声が返って来る。
シカマル「構うこたーねえ! どうせ二度と会わない人たちなんだ! それに周り気にして恥ずかしがってちゃ、夜に何もできねえよ!」
ドッ!
女湯の方で大きな笑い声が起こった。
テマリ「ば、馬鹿! お前何言ってんだ!! ///」
シカマルの周りにいた爺さんたちも「やるねえ兄ちゃん!」とか「若いもんはそうでなくちゃ!」と楽しそうにしている。
シカマルは照れながら「へへッ、どうも……」と返した。
29:
まったく今日の俺はどうかしてる。
だが、問題ねえ。
本当にもう二度と会わない人たちばかりなんだ――。
ひゃっほおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
突如、聞き覚えのある雄叫びが男湯に木霊した。
シカマル「!?」
ダダダダッと勢いよく駆けてきたキバがダイナミックに風呂に飛び込む。
ざっぱあああああああああああああああんッ!!!!!!!
舞い上がる水しぶき。
凍り付くシカマル。
44:
「2ばーんッ!」
それに続いてナルトが飛び込む。ダイブの衝撃で周りの老人の顔にビチチと湯が飛び散る。
シカマル「」
「温泉で走ってはいけない……。なぜなら滑って転ぶとたんこぶができるからだ……」
悠々と入ってくるシノ。
ブーーーーーーーーンブンブンブンブン!!!!!!!!
股間には大量の蟲がモザイク代わりに飛び交っていた。
シカマル「」
チョウジ「わあ! 凄く広い露天風呂だね?」
のっしのっしと効果音が聞こえてきそうなチョウジ。
肉塊が歩いているといった感じだ。
シカマル「」
リー「僕の陰茎の長さは平均男性のソレの0.5倍ですよ!」
湯加減を見ながら自嘲気味に笑うリー。
その引き締まった体に、一部の中年から歓声があがる。
シカマル「」
ネジ「白眼ほど温泉で役立つものはない」
勃起状態のネジ。
先ほどの罰ゲームで、鬼頭に日向ヒナタの似顔絵が描いてある。
シカマル「」
45:
ナルト「あれ? シカマルがいるってばよ」
固まっているシカマルをナルトが見つけた。
シカマルは嫌な汗がダラダラと体中から吹き出すのを感じた。
キバ「奇遇だな。お前も誘おうとしたらお前んちのおばさん、どっかに出かけたって言ってたから仕方ねえと思ってたのに……。まさか出会うとはよ」
リー「僕たちの絆の深さがよく分かりますね!」
チョウジ「シカマルもいると、何だかいのを仲間はずれにしたみたいで悪いなあ……」
シノ「お前にもこのモザイク用の蟲を分けてやろう……」
ネジ「白眼ッ!!」
シカマル(嘘だろおおおおおおおおおおおおッ!?)
46:
人生でこれほど仲間たちに会いたくない日はなかった。
テマリとの楽しい温泉旅行が今、音を立てて崩れ始める。
そして唖然とするシカマルに追い打ちをかけるように女湯から声が響く。
テマリ「だだだ、だいたい夜ってシカマルッ! こ、こっちはこここ、心の準備がッ!! ///」
シカマル「」
ナルト「ん? シカマル、女湯に知り合いでもいるのか?」
完全に詰んだ……。
シカマルは自分の運命を呪った。
47:
***
テマリ「おい、シカマルッ!? 聞いているのかッ!? ///」
シカマルがそんな最悪な状況に立たされているとはつゆ知らず、女湯にいるテマリは『シカマル』を連呼していた。
さっきから呼びかけても反応がない。
テマリ「お、おい、シカマル……?」
どうしたのだろうか……?
訝しむテマリ。
――しかし、テマリも3秒後には地獄に突き落とされる運命にあった。
カンクロウ「なかなかいい温泉じゃん?」
よく見知った声が男湯の方から聞こえる……。
こ、この声は……。
まさか……ッ!!
カンクロウ「ついて来て正解だったろ?」
リー「本当にありがとうございます、カンクロウくんッ!」
か、かかッ! かかかかッ!!
カンクロウッ!!?
51:
カンクロウ「いやー、知り合いに会うなんて珍しいこともあるもんだなー……」
シカマル「そ、そーだなー……」
テマリ「」
カンクロウ「……ところでシカマル、夜になんかすんのか?」
シカマル(ぎゃあああああああああああああああああああああああ//////////)
テマリ(ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい//////////)
さも偶然を装いながら、カンクロウが白々しい質問をする。
隈取は落としてあるものの、やはりあの悪人面が下卑た笑いを浮かべた。
52:
テマリ(も、もう上がろうッ! ///)
ザパッ!!
テマリはいたたまれなさのあまり、早々に出ることにした。
本当はもっと浸かっていたかったが、この後の展開を予想したらとても温泉を楽しむどころではない。
ネジ「ハッ!?」
突如ネジが目を見開いた。
彼の息子は天を指し示していた。
チョウジ「どしたの、ネジ?」
ネジ「今立ち上がった女のボディライン……。ウッ!」
びゅるるッとネジの子種が放物線を描き、湯の中にポチャンと落ちた。
キバ「うわッ! 汚えな馬鹿!」
ネジ「すまん……。だがこれは上物だッ! 大きく形の良い乳房。腹も引き締まってるし、そこから腰に掛けての曲線は滑らかだ。尻はほどよい弾力を残し、手にしっくりきそうな丸みを帯びている。見える……手に取るように見えるぞ……!」
シカマル「ぶっふぉッ!! ///」
テマリ「////////////」
次々とネジはテマリの身体的特徴を言い当てていく。
シノ「何でもありだな、白眼は……」
ナルト「し、下の毛はどうだってばよ! ///」
ネジ「毛深い」
リー「青春ですねッ! ///」
バシャンッ!!
テマリは即座に湯に飛び込んだ。
54:
カンクロウ(ククク……。やはりこの面子を選んで正解だったじゃん)
カンクロウが雇った傭兵部隊『人の恋路を邪魔し隊』。
彼らには邪魔をしている自覚は無いものの、存在するだけでとことん迷惑な部隊なのである。
この部隊はかなりの粒ぞろいだな……。
カンクロウは感心する。
※BGM『NARUTO?ナルトー メインテーマ』
ドンドンッ!
ストドンドンッ!
ソイヤッ!!
ピョ―――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
ピョーロロロー――――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
合法的覗き。天才、日向ネジ。
ハァッ!
ピョロロ―――――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
茶化し要員。忍犬使い、犬塚キバ。
ピョーロロロ――――……ピョーピョー(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
シャッ!
木の葉が生んだ巨根。蟲使い、油女シノ。
ピョ―――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
立ち上がれ下半身。木ノ葉の美しき碧い野獣、ロック・リー。
ピョーロロロー――――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
居るだけで邪魔。自称ぽっちゃり系、秋道チョウジ。
ハァッ!
ピョロロ―――――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
ハーレムの術の創始者。意外性No.1忍者、うずまきナルト。
ピョーロロロ――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
オナニスト。砂隠れのオナロウ、カンクロウ。
ソイヤッ!!!
55:
カンクロウ(ククク……。やはりこの面子を選んで正解だったじゃん)
カンクロウが雇った傭兵部隊『人の恋路を邪魔し隊』。
彼らには邪魔をしている自覚は無いものの、存在するだけでとことん迷惑な部隊なのである。
この部隊はかなりの粒ぞろいだな……。
カンクロウは感心する。
※BGM『NARUTO?ナルトー メインテーマ』
ドンドンッ!
ストドンドンッ!
ソイヤッ!!
ピョ―――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
ピョーロロロー――――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
合法的覗き。天才、日向ネジ。
ハァッ!
ピョロロ―――――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
茶化し要員。忍犬使い、犬塚キバ。
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シャッ!
木の葉が生んだ巨根。蟲使い、油女シノ。
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立ち上がれ下半身。木ノ葉の美しき碧い野獣、ロック・リー。
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居るだけで邪魔。自称ぽっちゃり系、秋道チョウジ。
ハァッ!
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ハーレムの術の創始者。意外性No.1忍者、うずまきナルト。
ピョーロロロ――――……(ペンペンペンペンペンペンペンペン)
オナニスト。砂隠れのオナロウ、カンクロウ。
ソイヤッ!!!
60:
***
カンクロウたちが入ってきてからというもの、男湯はこの世で最も下世話な空間に成り下がった。
覗きまくるネジ。
股間に蟲を這わせて遊ぶシノ。
ナルトがおいろけの術を披露し、キバとリーが鼻血を垂らしながら、より理想の女性像に近づけるために議論を交わす。
カンクロウはもちろん浴槽の縁に腰掛けて、心地よさそうに自慰行為にふけっていた。
チョウジ「どしたの、シカマル。具合でも悪いの?」
居心地の悪さにぐったりとするシカマルに、チョウジは声をかける。
シカマル「あ、ああ……ちょっとな……」
――どうにかしてこいつらを撒きたい――
シカマルは試案する。
さっさと上がって手早くテマリと合流したいところだな……。
しばらく宿で身を隠すのが一番だろう。
問題はどうやってテマリとタイミングを合わせるかだ……。
61:
テマリが上がるのを待ってたら、こいつらも来てしまう。
だが、テマリに声をかけるわけにはいかない。
となるとやはり……。
シカマル「腹が痛えから先に上がるわ、俺」
そう言ってシカマルは女湯を睨んだ。
先ほどネジが見つめていた方向と飛び込んだときの水しぶきの音から、テマリのおおまかな位置を特定する。
それから男湯と女湯の出入り口の距離分テマリから離れてかがむ。
シカマル(影真似の術……!)
グイイ――ン……
シカマルの影が伸び、テマリとその他大勢の婆さんに塀越しにつながる。
シカマル(1,2のそれ!)
テマリ「!」
ザパッ!!!!
シカマルの動きに合わせて女湯でテマリと大量の老婆が突然立ち上がった。
62:
ネジ「ムッ!」
即座に反応するネジ。
だが彼の息子は立たない。
キバ「どした? また美人が立ち上がったか?」
ネジ「……いや、汚い婆さんだ。なんのおかずにもならん……」
シカマル(カモフラージュ、上手く行ったようだな……)
63:
出入り口のところで術を解除し、脱衣所に戻るシカマル。
テマリもシカマルの意図を汲み取り、そのまま上がった。
***
シカマル「ふ――……」
テマリ「な、なんとか撒けたようだな……」
宿でひとまず休憩する2人。
パタパタとうちわで火照った体を冷ます。
シカマル「アンタの浴衣の位置さえわかりゃ、あのまま影真似で着替えを手伝ってやってもよかったんだがな」
テマリ「バーカ! そんなことしたらお前、絶対ブラを付け忘れるだろうが」
シカマル「そう言えばそうだな」
ハハハと笑いながらシカマルはテーブルに置いてあったせんべいをかじった。
テマリ「それにしてもカンクロウの野郎……どこまで私らの邪魔をしたら気が済むんだ……」
シカマル「あいつらの事は忘れろ。……さすがに宿までは特定されてねえだろ」
64:
ついさっきまで幸せ全開の温泉旅行だったのに……。
テマリはなんだか悲しくなって来た。
テマリ「本当に……本当にこの日を楽しみにしてたのに……」
ついつい涙がこぼれそうになるテマリ。
シカマルはうつむく彼女の肩を抱き寄せ、ポンポンと叩く。
シカマル「これから楽しい思い出を作るんだろ? まだ温泉街を散策してねえぞ」
テマリ「シカマル……」
シカマルの優しさに心を揺り動かされる。
そうだ、まだまだお楽しみはたくさんあるんだ!
あんなオナニー中毒者なんかに、この旅行を台無しにされてたまるかッ!
テマリ「……あ、当り前だッ! ほら! さっさと行くぞ!」
テマリはいつもの元気を取り戻して立ち上がった。
65:
***
シカマル「へへッ……気持ちいいな、これ……」
テマリ「服を着ながら湯に浸かるってのは新鮮だね」
足湯を見つけた2人。
少しぬるめの湯が足を柔らかくなでる。
テマリ「そっちに柄杓があるけど、それは何のためにあんだろうね?」
テマリは湯の注ぎ口付近に置いてある柄杓を指して言った。
シカマル「飲泉用だろ」
テマリ「飲泉?」
シカマル「ああ。ここの源泉は飲めるって、さっきの温泉の脱衣所に書いてあったぜ」
テマリ「へえー」
試しに飲んでみるテマリ。
途端に顔をしかめる。
テマリ「全然おいしくないじゃないか……」
シカマル「誰も美味い美味いって飲まねえだろ……。たぶん薬効とかそんな目的だ」
テマリ「……美容に効くかな?」
テマリは一応もう一口だけ飲んでおくことにした。
67:
***
ポコンッ!
軽快な音を弾ませながらコルク弾が飛ぶ。
2人は射的屋に立ち寄っていた。
テマリ「だから欲しいのはそれじゃないって言ってんだろ! あのかわいい方の人形だよ!」
シカマル「かわいいじゃねえか、鹿みたいで」
店員「上手いね、あんちゃん。このままじゃウチは潰れちまうよ」
ガハハと笑って6つ目の人形を、シカマルの後ろで立っているテマリに手渡す。
テマリ「どこがかわいいんだい! 頭から角生やしやがって……。上着着ろ、上着ッ!」
テマリが抱えているのは今、木の葉で大流行中の仙人(せんと)くん。
かわいいかどうかで意見が分かれるところだが、六人もずらっと並ぶと誰がどう見たって気持ち悪い。
シカマル「おッ! 当りぃッ!」
テマリ「ああ! もう!!」 
七人目の仙人くんが無表情で景品台から転がり落ちる様はどこか見ていてもの悲しかった。
69:
***
カンクロウ「へへッ……気持ちいいじゃん……」
ナルト「シカマルはどこに行っちまったんだろうな?」
任務を一つ終えた邪魔し隊もまた、温泉街散策中に足湯を見つけた。
シノ「……そこの柄杓はなんのためにあるんだろうか……?」
チョウジ「飲むためじゃないかなあ」
リー「こ、この足湯をですか!?」
ネジ「汚いな、それ」
ナルト「病気になるってばよ」
何故か彼らには、注ぎ口のきれいな湯を飲むという発想はなかった。
キバ「待て! この匂い……」
クンクンと匂いを嗅ぎはじめるキバ。
腰掛のあたりを入念に嗅ぎ回す。
キバ「間違いねえ……。さっき温泉にいた女の匂いだ!」
ネジ「何ッ!?」
シノ「柄杓を俺によこせ」
ナルト「俺も貸してくれッ!」
リー「僕なんか直接ガブ飲みしちゃいますよッ!」
チョウジとカンクロウを除く5人はザバザバと浴びるように足湯を飲む。
チョウジ「気持ちわるいなあ、みんな……」
カンクロウ(テマリの足湯なんか死んでも飲まねえじゃん……)
そう言いながらもカンクロウは、今後自分の匂いを嗅ぎつけた美少女が足湯を飲む姿を想像し、のんびりと自慰を始めた。
70:
***
ブ―――――――――ンブ――――――――ンッ!
ポコポコポコポコッ!!
射的屋で蟲を自由自在に飛ばして景品をなぎ倒していくシノ。
後ろには手に入れたぬいぐるみの山が出来上がっている。
店員「鉄砲使えよッ!! ホントに破産しちまうだろッ!!」
泣きながら店員がわめく。
リー「正拳突きの風圧でも倒せそうですね」
そう言いながらリーも正拳突きをして見せる。
後の幕にぽっかりと穴が空いた。
キイイイイイイイイイイイイイイイン……
ナルトに至っては風遁螺旋手裏剣を飛ばそうとしている。
カンクロウは案の定、精液を飛ばして倒そうと自分のイチモツを擦り始めた。
78:
***
シカマル「あー、いい湯だったぜ……」
テマリ「あいつらがいないってだけで天国だね……」
首からタオルをぶら下げ、部屋へ戻ろうとする二人。
当初の予定通り2回目の風呂にも入れてご満悦の様子だった。
現在6:30
夕食は7:30からだから少し時間がある。
シカマル「飯は葵の間だっけか?」
テマリ「ああ。でっかいズワイガニが食えるそうだ」
指をチョキチョキさせながら舌なめずりをするテマリ。
そのまま酢につけて食べるもよし、あぶっても食べるもよし……。
2人の顔が自然にほころぶ。
シカマル「あと1時間暇だな。部屋でトランプでもするか?」
テマリ「そうだな……。……ん?」
スコン……カン……スコン……カン……
ピンポン玉が弾む音が聞こえる。
そう言えばフロントの館内図に遊戯室があると書いてあったけ。
シカマル「面白そうだな。俺らもやるか?」
テマリ「いいね。……道具はフロントで貸りれるのかな?」
卓球なんてしたこともない二人だが、楽しく時間をつぶせそうだった。
79:
***
テマリ「あはは! なんだい、そのへっぴり腰は!」
シカマル「へッ! お前だってそのラケットの持ち方、ぜってえ違うからな! 何で小指が立つんだよ!」
スコン……スコン……
我流のフォームで打ち合う2人。
下手くそなラリーが続く。
***
スパンパンパンパンパンパンパンッ!
スカカカカッ!!
カッ!!
キュッ!
テマリ「あ、手首のスナップで回転をかけるのか……」
シカマル「あんまり大振りするのも効率が悪いな……」
始めて30分で2人のフォームはほぼ正しいものへと変貌していた。
高ラリーの応酬。
そしてドライブ対カット。
テマリはフロントで借りたツルツルのラバーを使い、遠陣で超回転のバックカット。
シカマルもループドライブとスピードドライブを巧みに使いこなし、テマリを左右前後に揺する。
最初彼らの下手くそなラリーを笑っていた周りの客は、スリッパを履きながら壮絶な卓球を繰り広げる二人の様子に目を見張った。
81:
***
7:20
先ほどシカマルとテマリが使っていた卓球台にのもとへカンクロウ一行もやって来た。
ラケットを片手にみんなホクホク顔だ。
カンクロウ「飯は7:30からだ。……だけど無視して遊ぶじゃん!」
旅館側にどれだけ迷惑がかかるかを全く考慮しない7人。
チョウジもさっき温泉街で試食の温泉まんじゅうを食いつくしてきたので暴れ出さない。
ナルト「よっしゃあ! ピンポントーナメントだってばよ!」
シノ「一人シードだな……」
リー「じゃんけんで勝ったもん順に名前を書いてきましょう」
そう言って勝手に壁に油性マジックでトーナメント表を書く。
チョウジ「優勝者は最下位の人からズワイガニもらうってのはどう?」
キバ「んで、最下位の奴はチンコにマジックで顔描けよ」
ネジ「それに最下位の奴は全裸でフロントにラケットを返しにいくというのも面白いな」
カンクロウ「あと、最下位の奴は女湯からパンツ盗んでこいよ」
ナルト「それから、最下位の奴は帰りに全員分、ラーメン奢れよ」
リー「最下位の人は30分間耐久電気あんまですよ!」
シノ「……最下位の奴のケツの穴に蟲を入れる……」
次々と付加される罰ゲーム。
優勝者はズワイガニとラーメン。
2位から6位まではラーメン。
最下位はカニをとられ、チンコに落書きされ、フロントで犯罪を犯し、女湯で犯罪を犯し、ラーメンを奢り、股間を刺激され、ケツを開発される。
……負けることは許されない戦いだった。
88:
***
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!!!!!!!!!
機銃掃射のようなラリー。
ピンポン玉が白い直線に見える。
ナルト「……まあ予想通りだってばよ……」
シノ「ラーメンを奢ってもらえるだけでも良しとするか……」
リー「まだまだこんなもんじゃありませんよおッ!!」
ネジ「来いッ!」
八門遁甲の五門まで開けてしまったリーと、八卦掌回天でラケットを振り回すネジ。
実際ネジは左の手も使って打ち返しているため明らかに反則負けなのだが、みんなあまりルールに詳しくないためとやかく言わない。
スカンコンスカンコンスカンコンスカンコンッ!!
キバ「て、てめえッ! 最下位決定戦でいきなり飛べるようになるとか卑怯だろうがああッ!!!!!」
チョウジ「無駄だ……。僕はさっきの百倍強い」
一方、皆が持ち前の忍術・体術を駆使して戦う中、己の卓球センスだけで挑むキバ。
もう半泣き状態になっている。
ナルトは影分身の使用を認められ、シノは蟲が勝手にボールを持ち運ぶだけだと言い訳をした。
カンクロウは黒蟻と烏にラケットを持たせた3人体制。チャクラの糸でラケットも飛ぶ。
順当に負け進んで行ったのは動きが緩慢なデブと、犬がいないと何にもできないワイルド野郎だった。
そんなデブも今、本気を出して激ヤセ中。
どんなボールも必ず拾う上に、羽ばたいてボールを飛ばしてしまう。
暇になったカンクロウは、勝負の行方を見守りながら一人遊びにいそしんでいた。
90:
***
キバ「……ごれ……返じに来まじだ……///」
フロント「お、お客さま……」
全裸で号泣しながらラケットを返すキバ。
ビクンビクンと揺れ動く鬼頭部には笑顔の日向ヒナタの似顔絵が描いてあり、頭には女性用下着、ケツからは細長くグロテスクな蟲がうにゅるうにゅるとはみ出ている。
フロントはマニュアル外の事態に困惑を隠せなかった。
93:
***
シカマル「ふぅ?……食った食った……」
テマリ「げふぅッ……。カニも凄く美味かったけど、あのエビのよく分かんない奴が一番だったな……」
シカマル「ああ……あのよく分かんない奴な……」
豪勢な海鮮料理に舌鼓を打ったシカマルとテマリ。
腹がパンパンで思うように動けない。
シカマル「……。しかしこうも順調に事が進むと、逆に気味が悪いな……」
テマリ「結構なことじゃないか。あいつらも温泉で私らを茶化して満足したんだろう」
葵の間に来た時、前方に七人分のご膳が並んでいたため、2人は最悪の事態を予期していた。
もしかしたらあいつらもこの宿に泊まってるんじゃないか――と。
だが、あのチョウジが時間までに飯に来ないハズはないし、きっと別の旅行客だったのだろう。
シカマル「そうかもな……」
シカマルは自分を安心させるためにそう呟いた。
94:
***
テマリ「さーて、本日三回目の風呂だ!」
部屋でくつろいでから、再びお風呂の準備をする2人。
時計はもう9時を指していた。
シカマル「ホントに風呂が好きなのな……」
まあ時間が違えば雰囲気もガラッと変わるわけだし……。
それに風呂は何回浸かってもいい。
丁度腹も苦しくなくなって来たところだ。
まだ全然乾いていないタオルを引っ提げ、シカマルは部屋の鍵をとった。
96:
ガチャリッと鍵を閉める。
シカマルは念を入れて、閉まっているか確認のためにカチャカチャとドアノブを回した。
テマリ「どうした? 心配性か?」
シカマル「いや……なんか嫌な予感がすんだよな……」
胸のざわめきを覚えながら、シカマルは階段を下りていく。
パタパタとスリッパの音が響く。
***
1階のカーペット敷きの廊下を歩く。
このまま真っ直ぐ玄関を抜けてしばらく歩いた先に、1回目に入った温泉がある。
2回目は旅館内部についている温泉に入ったのだが、室内風呂だけだった。
せっかくだから、誰にも邪魔されずに露天風呂に浸かりたい……。
そんなことを考えながら、2人は先ほど夕食をとった葵の間の前にさしかかった。
97:
ガツガツ!
バクバク!!
むっしゃむっしゃ!!!
ちゅるるる!!!!
グイッ! グイッ!
どぴゅっ! どぴゅっ!
シカマル「」
テマリ「」
目の前に広がる異様な光景に、2人は完全に固まる。
なんと例えたらいいのか分からない……。
ありのままに描写すると、まず広い座敷に七人の邪魔し隊が、ご膳を前にしてぽつんと横一列に並んでいる。
そして皆もれなく女性用の下着を被っており、ガツガツと夕飯を食べていた。
見るからに体がズタボロのリーのご膳にはズワイガニが二杯。
スマートになったチョウジの羽が背中にさわさわ当たって、両隣のナルトとネジは鬱陶しそうにしている。
全裸のキバのビクンビクンと脈打つ陰茎でヒナタが微笑み、時折彼の尻から蟲みたいなものが出てくる。
出てくるそれを箸でせっせと詰め直しているシノ。
そして片手でカニをむしゃぶりつつ、もう一方の手で自分を慰めるカンクロウ。
もう、ホント、何がなんやらわけが分からんッ!!!!
98:
***
シカマル「」
テマリ「」
温泉に向かう途中も、入っている最中も、部屋に戻ってきた現在も……。
2人は始終沈黙を保っていた。
カンクロウたちが同じ宿だったという絶望感も大きいのだが、それ以上にさっき見た光景のインパクトが強すぎて頭の整理が全く追いつかない。
とりあえず二度とあいつらと出合うことが無いよう、部屋に入ってすぐに鍵をかけた。
101:
シカマル「……な、なぁ……」
テマリ「忘れろ」
シカマルが沈黙を先に破ったものの、テマリにすぐに止められてしまう。
シカマル「……いや、そうは言っても……」
テマリ「いいから忘れろ。私たちは楽しい温泉旅行をして、今部屋にいる。それだけだ」
ロボットのように無表情で語るテマリ。
昼に興奮して騒いでいたテマリは、もうどこか遠くに行ってしまった。
103:
今回のカンクロウは、直接的に嫌がらせをしてくるわけじゃない……。
だからぶちのめそうにも口実がなかった。
ただ存在だけで気分を害する、ゴキブリのような男め――。
感情を失ってしまったテマリをもう一度元気にしてやりたい。
どうしたものだろうか……。
シカマルは必死に考えた。
105:
シカマル「……ウノでもするか?」
テマリ「気分じゃない」
シカマル「将棋はどうだ?」
テマリ「一人でやってな」
シカマル「お茶入れようか?」
テマリ「欲しくない」
全然構ってくれないテマリ。
こちらに非があるなら土下座なりプレゼントなりで機嫌をとることも出来るが、今回のケースはかなり特殊だ。
心が居れちまいそうだが、テマリの気持ちもよく分かる。
どこへ行くにもカンクロウがつきまとう。
瞳を閉じればカンクロウ。
まぶたの裏にカンクロウ。
寝ても覚めてもカンクロウ。
精神が疲弊しきっているのだろう……。
テマリの顔はニコリとも笑わなくなった。
106:
シカマルはハァ――ッと深いため息を吐く。
このまま最悪の気分で帰るのだけは絶対に嫌だ。
つっても寝たら元気になるってもんでもねえだろうな……。
シカマルは悲しげにゴロンと転がった。
どうしてこうなっちまったんだろうか……。
カンクロウの顔を見るまではあんなに幸せだったのに……。
109:
テマリ「……もう寝る」
テマリは隅っこに布団を敷き、頭まですっぽりと包まってしまった。
シカマル「……」
畳に転がったまま、シカマルは天井を見つめる。
ホントは枕投げとか本将棋とか周り将棋とか山崩しとか挟み将棋とか……もっと色々したかった……。
シカマルは少し涙目になってきた。
途中まではいい感じだったんだ……。
最初この部屋に入ってきたときに一緒に転がったのもなんか楽しかったし、温泉で声が裏返ってるテマリも可愛かった。
足湯巡りだって気持ちよかった。
仙人くんだって大量に手に入った。
卓球もいい感じに拮抗してた。
あのエビのよく分からんやつもスゲー美味かった。
それが……あのワンシーンで……。
くそぉ……オナってんじゃねえよカンクロウ……。
それからシノ……。
箸、汚えだろ……。
つう――。
ひとすじ、シカマルの目じりから涙がこぼれた……。
112:
今日一日を振り返れば振り返るほど涙があふれてくる。
――最高の一日になるはずだったんだ……。
――最高の……。
シカマル「ん?」
脳内に映し出す思い出にネジが出てきたとき、ふとシカマルは思い当たった。
シカマル「……そういえばアンタ……下の毛、毛深いんだってな……」
ビクッ!!
盛り上がった布団が一瞬反応した。
113:
テマリ「……毛深く……ない……」
布団からくぐもった声が聞こえてくる。
テマリが浴槽に飛び込んだ後のネジの説明が、段々鮮明に思い出される。
シカマル「……あと、右乳首が左に比べて若干大きいとか……」
ビクッ!
テマリ「……大きく……ない……」
シカマル「……尻にほくろが3つあるらしいな……」
テマリ「……ねえよッ!!!! /////////////////」
ガシュッ!!!
ガバッと起き上がって思い切り枕を投げるテマリ。
小豆入りの堅い枕がシカマルの顔面にクリーンヒットした。
114:
テマリ「適当なこと言ってんじゃねえぞ、コノ!! ////////」
シカマル「痛だだだだだだだだだだだだ!!!!!!! 訊いてみただけだッて!!!」
シカマルに思い切り逆エビ固めをかけるテマリ。
シカマルの背骨がギシギシときしむ。
テマリ「それはデマ情報だッ!! 騙されてんじゃねえッ!! ///////」
シカマル「痛だだだ!! なら、ちょっと確かめさせてッ!!」
テマリ「ふざけんなッ!! ////////」
顔を真っ赤にしながら、さらに力を入れるテマリ。
くノ一だけあって、結構シャレにならない。
シカマル「折れる折れるッ! 大丈夫、ゴム持ってきてるからッ!!」
テマリ「だ、だだっ! 黙れぇッ!! ////////////」
ギシギシギシギシギシギシ!!!!!!!!!!!
良かった……。
少しは元気になったようだ……。
シカマルは痛みに耐えながら安堵した――。
115:
***
シカマル「ハッ!?」
30分後、シカマルは目を覚ました。
気絶していたらしい。
いつの間にか布団まで敷いてある。
シカマル「おお……腰が痛え……」
テマリ「だ、大丈夫か……? ///」
シカマル「……ん?」
チラリと見ると、テマリの布団がすぐ横に来ていた。
布団の上にテマリがゆでだこみたいな顔で正座している。
116:
シカマル「あ、ああ……大丈夫だ……」
テマリ「そそそッそうかッ! ま、まあアレごときで腰痛めてるようじゃ中忍として失格って言うか、男としてだだだ、ダメっていうか! /////」
シカマル「はあ?」
やけにテンパりまくるテマリ。
シカマルはその様子が気になる。
シカマル「ま、よく分かんねーけど……。それより顔真っ赤だけどお前こそ大丈夫か?」
テマリ「だだだ、だいじょぶだいじょぶ!! きょ、今日はやけに暑いなー!! ////」
テマリは自分の巨大な鉄扇でゴウンゴウンと仰ぎだす。
全くシカマルに眼を合わせない。
シカマル「……」
しばらくの沈黙。
何となく気まずい空気が流れる。
テマリ「……その……できそうか……? /////////」
シカマル「はあ?」
テマリ「いや、だからその……持ってきてるんだろ……? ///////////」
シカマル「何を?」
テマリ「……ここ、こ、コンドーム……//////////」
シカマル「お、おう一応な……」
シカマル「ふぁッ!? ////////////////////////」
118:
突然の誘いに、シカマルの思考回路がショートする。
シカマル「ちょちょ、ちょッ! ちょっと待てッ! なんだイキナリッ!? ///////」
テマリ「い、いや、お前がやりたかったんだろ!? さっきゴム持ってきてるから大丈夫って! /////」
シカマル「あ、あれはお前を元気づけるためにジョークのつもりで……/////」
テマリ「じょ、ジョークッ!? ///////」
クリムゾン・レッドの顔でシカマルをキッと睨む。
シカマル「あ、嘘嘘! すごいやりたかったです! いや、ほんとマジで! ///////」
119:
凄い剣幕に気圧されるシカマル。
テマリからフーッフーッと物凄い鼻息の音が聞こえる。
テマリ「い、いつもうやむやになるから今日こそは言うぞッ!! ////」
シカマル「お、おう……/////」
テマリは少し呼吸を整えた。
テマリ「私はお前のことが好きだッ! /////////」
シカマル「!」
テマリ「凄く好きだッ!! だからお前と一つになりたいッ!! /////」
シカマル「て、テマリ……///////」
テマリ「……お前は……どうだ……? /////////」
やべえ……超嬉しい……
思わずポロポロと涙がこぼれた。
最も愛する人に好きだと言われた……。
最も愛しい人に一つになりたいって言われた……。
世界は残酷なのか甘美なのか、もう全然わかんねえよ……。
俺はどうか?
訊くまでもない。
答えはとっくの昔に決まっている……。
シカマル「お前、ビョーキ持ってそうだから、ダーメじゃーん……」
テマリ「」
――世界は残酷だった。
120:
シカマルの口元に繋がるチャクラの糸。
それが壁を隔てて隣の部屋に続いていた。
シカマル(かかッ! かッ! オナロウッ、この野郎ッ!!!!!!!!!!!)
テマリ「……びょ、びょーき……?」
シカマル「ああ、てめーみてーなクソビッチにぶち込んだら、ゴムが溶けてビョーキになるぜ」
顔面蒼白のシカマルがやたら挑発的な暴言を吐く。
テマリは口をパクパクとさせる。
122:
くっそぉ! 同じ手を使いやがって!!
シカマルはカンクロウがいる部屋を睨む。
まさかこの隣の部屋に、アイツら全員が入ってたとは……ッ!!
テマリ「はは……ははははは……」
テマリの乾いた笑いが響く。
もう意識が持ってかれそうだった。
どうにかしてこれがカンクロウの仕業だと気づかせなければならねえが、体はほとんど自由がきかねえ……。
かろうじて印が組める程度になら動くが、どうしたもんか……。
123:
***
カンクロウ「ククク……大ダメージじゃん……」
隣の部屋ではカンクロウが隈取をぐにゃりと曲げながら必死に笑いを堪えていた。
リー「どうして二人を邪魔するんですかッ!」
キバ「無粋だぜッ!」
今まで散々邪魔をしてきたリーとキバがカンクロウを睨む。
別に2人の未来を祝福したかったからではない。
下半身丸出しで正座している彼らには、今晩のおかずが必要だったのだ。
ナルト「サクラちゃん……///」
股間を擦るナルト。
さっきまでのシカマルとテマリを脳内で勝手に置き換えて妄想にふけっていた。
ネジ「お前はヒナタ様以外で自慰行為をするな、ナルトッ!!」
ナルト「な、なんでそこでヒナタが出てくるってばよ……」
シノ「いい加減、アイツの気持ちに気づいてやれ……。いじらしい」
ナルトをたしなめるネジとシノ。
下半身が丸出しのせいで全く威厳がない。
チョウジ「うおおおおおおおおおおお!!!!!! 僕の性欲はさっきの100倍強いッ!!!」
右手で高ピストンをするチョウジ。
今パンツを履いているのはカンクロウただ一人だった。
125:
***
なんだか既視感のあるこの状況。
だがもう何も考えていられなかった。
そ、そうか――……
シカマルには私はクソビッチに見えるのか――……
あは……あははははっはははっはははははは……。
あ、やばいかも……。
ホントに涙出てきちゃった……。
涙だけでなく鼻水も垂れていたのだが、今のテマリにはそんなことはどうでもいい。
本当に今日はサイテーな一日だったな……。
チラリとシカマルを見た。
シカマルの目線が床を指している。
床?
テマリが視線を床に落としてみる。
突如、黒い影が一筆書きを始めた……。
129:
シカマル「あとお前、実の弟を邪魔者扱いしたりするクズじゃん。カンクロウに謝れ!」
シカマルの罵倒を聞きながら、テマリは一筆書きを読み取っていく。
テマリ「……と……な……り……の……と……と……ろ……う……?」
シカマル(ちげえよ!)
影で大きくバッテンをつくるシカマル。
テマリ「……と……な……り……に……お……な……ろ……う……?」
シカマル(それだッ!)
影で花丸を書く。
テマリはハッと気づいた。
途端に般若のような顔になった。
130:
***
ナルト「悪かったってばよ……」
キバ「すまねえ……」
リー「すみませんでした……」
チョウジ「ごめん……」
シノ「股間が冷えてきた……」
ネジ「風邪ひく……」
カンクロウ「死にゅ……」
上は着てるのに下は真っ裸の少年が6人、ずらりと正座で並ぶ様子はあまりに見苦しかった。
一人は例のごとく、思い切り殴られ蹴られ、鉄塊で叩かれ、山道にたまにいる、車に引かれた狸のようになっていた。
戦力的には明らかにカンクロウ側が勝っていたのだが、テマリがカンクロウを見せしめにした途端、みんなパンツも履かずに正座したのだった。
131:
テマリ「ガキのくせに人の情事を盗み聞きしようとしやがって……恥を知れ恥をッ!!」
テマリの叱責にシュンとなる6人。
ネジとキバの息子に描かれたヒナタも反省しているのか、小さくシュンとなっていた。
132:
テマリ「……。まぁ初犯だからな……。大人しく家に帰るってんなら許してやる。どうする?」
7人は一斉に頷く。
もうしません! 
家に帰ります!
許してください!
ありがとう姉ちゃん!
テマリ「おい……今『ありがとう姉ちゃん!』って言った奴……。お前は初犯じゃないから我愛羅のもとに送るからな」
低い声でカンクロウを睨みつけるテマリ。
カンクロウは自分の余命が幾ばくもないことを悟った。
133:
***
シカマル「まさかアンタが許してやるとは思わなかったぜ」
窓から下半身丸出しで逃げてゆく6人を見ながら、シカマルが呟く。
旅館の外にはカンクロウを閉じ込めて、申し訳程度の空気穴をあけたドラム缶が置いてある。
テマリ「別に私も人を虐めたいわけじゃない。ただ二度とこんな思いは御免だッてことだ」
シカマル「あいつらが反省するかねえ……」
テマリ「するさ……。人は学習して大きくなっていくものだからね」
そう言いながらテマリはドラム缶に向かって唾を吐いた。
もうカンクロウを人としては認めないという姿勢が伝わってくる。
134:
テマリ「……それにな……////」
シカマル「……それに?」
テマリは頬を赤らめながらシカマルを見つめた。
テマリ「今は楽しい思い出が出来ればそれでいい……!! ///」
ガッ!!!!!!!!!!!
シカマル「ちょッ! /////」
タックルをかまされ、布団の上に押し倒されたシカマルにはもう、抵抗する術はなかった。
135:
※EDテーマ『Wind』
フォンフォンフォン……
タッタカタッタッタ!
トゥートゥルル――……
トゥートゥトゥ――……
トゥートゥルル――……
トゥートゥトゥ――……
カールティベィティア ハンガビィ フォーユー アイディアライズッ!
モーティベーティア アンガートゥ メイク ・ ゼン リアライズッ!
クライヴィンザ マーンテーン ン ネヴァ カミ ダン?
ブレーキィン トゥ ザ コンテンッ ン ネヴァ フォリ ダン
136:
トゥートゥルル――……
トゥートゥトゥ――……
ニィ――ッスィティル シェイキンッ ・ ラカイワズトゥエーッル 
スニィーキナウッ ザ クラッスーム バィザバックドゥー
モゥリライミッ トゥアイソゥッ バッディドゥケァー
ウェイティギンザ ウェイスティンッ フォピポ ライミー
138:
ドォンットゥラーイッ トゥ ライッ ソォーウワイッ!
ドォンックラーイッ コズ ヨゥ ソォーウワイッ!
ドォンッドゥラーイッ ウィ フェイクソォーウフィッ!
コゥジュウィッ へイチュア セルッフィンッズィエンッ!
139:
トゥートゥルル――……
トゥートゥトゥ――……
タッタカタッタッタ!
ドォンットゥラーイッ トゥ ライッ ソォーウワイッ!
ドォンックラーイッ コズ ヨゥ ソォーウワイッ!
ドォンッドゥラーイッ ウィ フェイクソォーウフィッ!
コゥジュウィッ へイチュア セルッフィンッズィエンッ!
140:
ドォンットゥラーイッ トゥ ライッ ソォーウワイッ!
ドォンックラーイッ コズ ヨゥ ソォーウワイッ!
ドォンッドゥラーイッ……
141:
***
シカマル「い、今帰ったぜ……」フラフラ
ヨシノ「あら、お帰り。温泉旅行はどうだった? 疲れは取れた?」
シカマル「あー……腰イッテェ……」
ヨシノ「?」
シカク「?」
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やる夫暮らし 涼宮ハルヒ END その1

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