貴音「飛んで、飛んで、飛んで、飛んで……♪」P「回るな」back

貴音「飛んで、飛んで、飛んで、飛んで……♪」P「回るな」


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1:
P「(事務所に帰ってくるとそこには貴音一人だけだった)」
P「(律子は今日は事務所に戻らないらしいし、音無さんは有給をとっている)」
P「(恐らく他のアイドル達も帰ったんだろう。最近冷えるからな)」
P「(かく言う俺も早く帰る気満々だ。何のために昨日寒い中こたつを引っ張り出したと思ってる)」
P「(さっさと残業を終わらせて帰ろう……)」
P「(さて、ところで)」
貴音「…………」クルクルクルクル
P「(何だあれは)」
貴音「うっ……」クルクルバタッ
P「(目が回ったのか……)」
2:
貴音「…………」スッ
P「(座り直した)」
P「(状況を整理しよう)」
P「(貴音が俺の事務椅子の上に膝を抱えて座りながらくるくる回っている)」
P「(ドアの音もしたはずだし何より事務所には誰もいないのに貴音は俺に気付かない)」
P「(角度的には俺の椅子からもギリギリ扉が見えるはずなんだが)」
貴音「…………」クルクルクルクル
P「(回ることに熱中しすぎて周りが見えてないみたいだな)」
P「(それにしても)」
貴音「…………」クルクルクルクル
P「かわいいなおい」
貴音「何奴!?」
8:
P「魚っ」
貴音「あなた様?」
P「……ごほん。おう貴音、何してるんだ一体」
貴音「……いつからそこに?」
P「えーと5分もいなかったと思うが」
貴音「数分は見ていたのですね……」
P「何かまずかったのか?」
貴音「……いえ、これといって特に」
P「それならいいんだが……で」
貴音「はい」
P「何してるんだ一体」
貴音「回っておりました」
P「見りゃわかる」
11:
P「いいか。見れば分かることを今更聞くわけない。これはお前も分かってると思う」
貴音「失礼しました」
P「素直に謝れるのはいいことだ」
P「どっかの誰かさんみたいでなく話を聞いてくれるだけマシだと俺は思う」
貴音「ありがとうございます」
P「礼儀もしっかりしてるな。うん、いいことだ」
P「で、本題だけど」
貴音「はい」
P「何してたんだ一体」
貴音「回っておりましたが」
P「おう……」
13:
貴音「あなた様」
P「すまん、今のは俺が悪かったみたいだ」
貴音「そのようなことは」
P「いやいや、そう答えざるを得ない質問だった。ごめん」
P「改めて。どうして回ってたんだ?」
貴音「…………」
P「……いきなり黙ってどうした」
貴音「いえ、特に理由もございませんでしたので」
P「あー……よくあるよ、うん」
貴音「強いて言えば……」
P「おっ」
貴音「回りたかったので……」
P「おう……」
15:
P「まあいいや。残業あるから退いてくれないか?」
貴音「…………」
P「貴音?」
貴音「」フルフル
P「……何で?」
貴音「いえ……」
P「俺残業終わらないと帰れないんだけど」
貴音「小鳥嬢の椅子を、どうぞ」
P「……仕方ないな」
貴音「ありがとうございます」
P「あっすっげー柔らかい。腰に良さそう」
17:
P「よし、はじめるか……だる」
貴音「頑張ってください」
P「おう」
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「む……」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「えーっとこれは……」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「(気になる……)」
20:
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「なぁ」
貴音「はい」
P「楽しいか?」
貴音「いえ、特には」
P「……そうか」
貴音「どうかしましたか?」
P「何でもない」
貴音「そうですか」
P「(何なんだ一体……)」
貴音「…………」クルクル
23:
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
貴音「あなた様」
P「ん、どうかしたか」カタカタ
貴音「いえ、用はありません」
P「そっか」カタカタ
貴音「……邪魔ですか?」
P「そうでもない」カタカタ
貴音「……いえ、それでも邪魔になるといけないので一応やめておきます」
P「ありがとう」カタカタ
貴音「どういたしまして、です」
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
25:
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
貴音「あなた様……」ボソッ
P「ん」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「貴音?」
貴音「はい?」
P「どうかしたか」
貴音「声はかけておりませんが……」
P「……声、出てたぞ」カタカタ
貴音「なんと」
P「まあいいか」カタカタ
貴音「…………」
29:
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
貴音「あなた様」
P「ん、今度は何だ?」カタカタ
貴音「そろそろ終わりそうですか?」
P「んー……あと10分」カタカタ
貴音「それを終えたら共にらぁめんなどいかがですか」
P「そうだなぁ……最近食ってないし、いいかな」カタカタ
貴音「では、交渉成立ということで」
P「交渉でも何でもないけどなぁ」カタカタ
貴音「らぁめん……らぁめん……」カタカタ
P「温まるしいいなぁ……」カタカタ
34:
P「…………」カタカタ
貴音「…………」クルクル
P「うっし、終わり!」
貴音「お疲れ様でした」クルクル
P「おう、ありがとな」
貴音「それではあなた様、帰宅の準備をしましたら出発いたしましょう」クルクル
P「それにしても……」
貴音「?」クルクル
P「よく目が回らないもんだ」
貴音「聞くところによると、一方向を見続けながら回ると目が回りにくいようです」
P「へぇ……でもさっき俺が見てた時は椅子から転げ落ちてたけど」
貴音「……それは今と違って目印がなかったからですね」
P「目印って?」
貴音「それは……とっぷしーくれっと、です」
45:
P「何だ、教えてくれよ」
貴音「なりません」クルクル
P「ケチだな」
貴音「けちではありません」
P「ケチじゃないか」
貴音「……すーなおーなーきもちーをーあなーたにー」
P「お?」
貴音「つーたーえるーすーべーをしーいっていたならー」
P「夢想花か……」
貴音「いーまーはしずーかーにここーろをーとじてー」
P「円広志さんの声もいいけどこれもまたいいな……」
貴音「ゆーめのーなかーへぇとーんでーゆくわー」
貴音「飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで」
貴音「回って回って回って回るぅー」クルクルクルクルクルクルクル
P「本当に回るな」
49:
貴音「ごほっ、ごほっ……うぅ……」
P「そら見ろ。歌いながら回るからだ」
貴音「め、面目ありません……けほっ」
P「ほら、立てるか」
貴音「あなた様……はい。それでは行きましょう」
P「食い意地は相変わらずか。でも二十郎は行かないぞ」
貴音「なんと!」
P「あんなもんこの時間帯に食ったら明日以降が怖い」
貴音「私は何ともありません!」
P「お前がそうでも俺は違うの。ほら別のとこ行くぞ」
貴音「あなた様!」
P「ダメだ」
貴音「けち!あなた様はけちです!」
P「何とでも言え」
51:
P「俺がブクブク太ったらどうしてくれるんだ」
貴音「痩せればいいのです!運動して!」
P「お前が言うと現実味ねぇなあ。それにそんな時間取れるほど暇じゃないし」
貴音「私、健康番組で見ました!ですくで出来る簡単すとれっちなるものが存在すると!」
P「む」
貴音「椅子に座りながら、こう……何と申しますか……」クイッ
P「……?」
貴音「回って回って回って回る……」クイックイッ
P「あーツイストか」
貴音「それです!それを実践すれば!」
P「でもダメだ」
貴音「けちですあなた様!」
P「ケチってなぁ……そもそも太ってからダイエットするより最初から太らない方がいい」
貴音「なんと……」
53:
貴音「では、私はどうすれば……」
P「いやいや普通に他のところで食べればいいだろ」
貴音「しかしそうしますと……」チラッ
P「何だ?」
貴音「あなた様のお財布にだいえっとしていただくということに……」
P「お前、俺を脅迫するつもりか……」
貴音「私はあなた様のためを思ってですね」
P「それなら最初っから俺に奢ってもらおうと思わないだろ」
貴音「むぅ……確かにその通りです」
P「ほら、どうするんだ貴音。帰る準備は出来たぞ」
貴音「あなた様のお財布の体型を維持し、なおかつらぁめんをたくさん食べられる方法……」ブツブツ
P「おーい貴音ー」
貴音「……決めました」
貴音「あなた様。今日は二人でらぁめん鍋をいたしましょう」
P「は?」
54:
P「らぁめん鍋ってのは何だ」
貴音「鍋というのは便宜上のものでして。要は即席らぁめんを一度に食すのです」
P「なん……だと……」
貴音「大鍋で一度に茹でるのです。味はそこまででもありませんが、お財布にも優しいですよ」
P「何かもっと健康に悪そうなんだが」
貴音「そうと決まれば早すぅぱぁへ行きましょう」
P「いつ決まったんだ」
貴音「野菜も買わねばなりませんね。残っているでしょうか……」
P「いや、残ってるも何もこの時間帯じゃスーパーは閉まってるだろ」
貴音「…………」
P「貴音?」
貴音「あなた様!どうすれば!」
P「まあ落ち着け」
58:
貴音「落ち着いていられません!あなた様は麺だけのらぁめんを食せとおっしゃるのですか!」
P「違う。そうじゃない」
貴音「ならば何を!」
P「こら聞け。いいか、俺は今日寂しく一人鍋をするつもりで野菜も買ってあるんだ」
貴音「……今、何と?」
P「んで、昨日苦しい思いをしてこたつまで出した。この意味、分かるか?」
貴音「あなた様……!」パァ
P「(かわいいなおい)」
貴音「では行きましょう!あなた様の家へ!」
P「食ったらちゃんと送るからな。安心しろ」
貴音「?」
P「不思議そうな顔しても送るもんは送るからな」
貴音「……いけずです」
62:
P「ほら、事務所閉めるから出ろ」
貴音「はい♪」
P「(機嫌いいな。無事ラーメン食えるって喜んでくれたみたいで良かった)」
貴音「むっ」
P「何だ?」
貴音「またあなた様が勘違いをなされた気が……」
P「俺?」
貴音「そういえば、即席らぁめんはあるのですか?」
P「うちにサッポロ一番のみそとしょうゆがある」
貴音「野菜はどうなのです」
P「白菜ともやしとネギ、くらいはあるぞ」
貴音「めんまとちゃあしゅうは……」
P「俺は鍋をするつもりだったんだって」
貴音「仕方ありませんね……」
67:
貴音「まわるまーわるーよじだいーはまわるー」
P「今日は回るがキーワードなのか?」
貴音「……ふと、唐突に、円が美しいと感じまして」
P「いつも月、見てるもんな」
貴音「円というのは真、不思議なものです。私、永遠というものは信じないたちのですが」
P「永遠ねぇ。万物は流転する、ともいうしな」
貴音「円、回転には終わりがない……。円周率とやらもその数字を循環させず永遠に続いていくものらしいのです」
P「…………」
貴音「勿論、回転には終わりがないというのも例外はあります。地球上では様々な事物がその回転を止める」
貴音「しかし宇宙―――あの月がある場所なら、その回転に終わりはありません」
P「確かにそうだな」
貴音「……話が飛躍しすぎてしまいましたね。私も何を伝えようとしたのか分かりません」
P「気にするな」
70:
P「ま、永遠を美しいと思うのは人それぞれだろ」
貴音「と、申しますと?」
P「死にゆく者こそ美しい、滅びの美学なんてものもあるんだ。人の好みなんて千差万別さ」
貴音「確かに……その通りです」
P「だろ?」
貴音「しかし、それでも。私は永遠は美しいと思います」
P「ふーん……」
貴音「時代は回り、喜び、悲しみ、出会い、別れを繰り返して、生まれ変わって巡り逢うのです」
P「中島みゆきの時代、か」
貴音「しかし永遠と言葉に言うのは簡単ですが、実際にはそうもいきません」
P「そりゃそうだ」
貴音「ですがその一方で―――永遠に変わらないものというものも、私たちの身近に存在するのです」
74:
P「へぇ、教えてくれよ」
貴音「なりません」
P「ケチだねぇ」
貴音「けちではありません」
P「じゃあ教えてくれよ」
貴音「いずれ必ず伝えますよ」
P「何だそりゃ」
貴音「さぁ、あなた様。もう少し早くお歩きになってください。一日が終わってしまいますよ」タタッ
P「全く……こら、待てって!」
貴音「ゆうきをーくれたきみーに てれてるーばあいじゃないかーら……」
貴音「ことばよーりもほんきーな ららららーららーぶそーん……」
おわり
76:

8

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