ココア「シャロちゃーん。お金あげよっか?」back

ココア「シャロちゃーん。お金あげよっか?」


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1:
シャロ「どうしたのよ。いきなり」
ココア「今月ピンチなんでしょ? 千夜ちゃんから聞いたよ」
シャロ「う……。そうだけど」
ココア「だからお金あげるよ。そのかわり>>5」
5:
生命保険に入って
8:
ココア「そのかわり、生命保険に入って」
シャロ「それだけでいいの?」
ココア「うん。月々の支払いは私たちがやるから」
シャロ「私”たち”?」
ココア「あ……。とにかく、お金のことは心配しなくていいから」
シャロ「……。ココアなんか変じゃない? いきなりお金くれたり」
ココア「私はシャロちゃんのためを思って言ってるんだよ?
 そんな言い方は無いんじゃないかなぁ」
シャロ「そ、そうよね。ごめん、ココア」
9:
?ラビットハウス?
チノ「うまくいきました? ココアさん」
ココア「うん! ちょっと疑われちゃったけど……。
 札束見たら、途端にシャロちゃん目を輝かせて契約書にサインしてくれたよ」
チノ「この計画のために100万円も用意したんですからね。
 そうでないと困ります」
ココア「シャロちゃんが純粋で助かったね、チノちゃん!」
チノ「はい。>>14する計画に失敗は許されません」
14:
シャロちゃんをうさぎに転生させる
18:
ココア「シャロちゃんをうさぎに転生させるなんて、チノちゃんよく思いついたね!」
チノ「はい。身近に被験体がいるので……。
 あれだけかわいいシャロさんを、人間のままにしておくのはもったいありません」
ココア「そうだよね! うさぎ嫌いのシャロちゃんをうさぎにして、
 オス兎のひしめき合う小屋に放り込むところ想像したら……。
 ああ……っ! 私興奮してきたよ!」
チノ「まぁまぁココアさん。計画に焦りは禁物です。
 少し落ち着いてください」
ココア「そ、そうだよねぇ……、へへへ……。ちょっと私トイレ行ってくるねぇ……」
19:
シャロ「まさか、ひゃくまんえんももらえるなんて……」フラフラ
千夜「シャロちゃん、どうしたの? 変な顔しちゃって」
シャロ「ぴゃあああっ!!! 千夜!? なんでこんなところにいるのよ!?」
千夜「なんで、って……。私が甘兎庵の前にいることが、そんなにおかしいのかしら?」
シャロ「あええ……? ここ私の家?」
呆然自失で歩いていたシャロは、気付くと家の前にいた。
23:
シャロ「ひい、ふう、みい……」
ベッドの上に寝転んだシャロが、真剣そのものと言った顔で札束を数えている。
シャロ「……きゅうじゅうはーち、……きゅうじゅうきゅーう、……ひゃーく」
最後の札をぱちんと指ではじいた。
シャロ「やっぱりあるわ……。100万円……」
ベッドの上を転がりながらうんうんと唸っていたシャロだったが、
突然弾かれたように立ち上がると、家を飛び出していった。
シャロ「100万円あったら、>>27ができるじゃないの……っ!」
27:
ウサギ帝国建国
29:
シャロ「ウサギ帝国を建国して、そこに野良うさぎを全て移住させるのよ……!
 そうすればもう、大っ嫌いなうさぎの顔なんて、二度と見ずに済むわ!」
リゼ「どうしたんだ、シャロ。息を切らせて走って」
シャロ「り、リゼしぇんぱいっ!? ちょ、ちょっと野暮用で……」
リゼ「野暮用って……。じゃあそんなに慌てることもないんじゃないか?」
シャロ「あうあう……。じ、実はトレーニングで走ってるんです!
 日常生活、これすべてがトレーニングですから!」
リゼ「ほう、なるほど。じゃあ私も付き合おう」
30:
シャロ「はぁはぁ……。もうダメ……、走れない……」
リゼ「なんだ。まだ15kmしか走ってないぞ。だらしがないな」
シャロ「はぁ……。はぁ……」
リゼ「ほら、立つんだ」
シャロ「ま、待ってくだしゃい……。実はトレーニングってのは嘘で……。
 本当は、ウサギ帝国を建国するために走ってたんです。役所に向けて」
リゼ「ウサギ帝国!? シャロ、お前まさか……!
 再び戦争でも起こそうって言うんじゃないだろうな!?」
31:
シャロ「そ、そんなつもりはないです。私はただ……」
リゼ「あの戦争で、何人の人が犠牲になったか……。
 お前も知らないわけじゃないだろう!?」
シャロ「で、ですから! 私は野良うさぎを……」
リゼ「野良うさぎ!? お前、そんなものまで兵士の数にカウントしてるのか!
 到底見過ごすことはできない! お前は>>35」
シャロ「お願いだから話を聞いてください!」
39:
シャロ「ぎ、ギロチン!?」
リゼ「そうだ! お前は家のギロチンで首を飛ばしてやる!」
シャロ「ま、待ってください! リゼしぇんぱいっ!」
リゼ「……私だって。……私だって! こんなことはしたくないんだよ!
 シャロ。お前は、かわいい後輩だし、何より、友人として大好きだ。
 ……いや。大好きだった。今のお前は、シャロの皮をかぶった悪魔だ。
 その魂、シャロの一番の友人として、私が浄化させてやる……っ!」
友人との死別を前にして、リゼはその大きな瞳から、
玉のような涙をいくつも流していた。
40:
シャロ「ま、待ってください! これ外してぇ!」
リゼ「暴れるな! 見苦しいぞ!」
シャロは、小さな穴が二つと、その間にやや大きな穴が開いた板に、
それぞれ両手首と首をはめ込まれ、ほとんど身動きが取れない状態だった。
土下座をするような格好で、ジタバタともがいている。
リゼ「これよりこの悪魔に! 刑を執行する!」
シャロとリゼ。二人しかいない広大な庭に、大きな声がこだまする。
シャロ「やだやだやだやだやだ……。
 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない……」
41:
リゼ「救えなくてすまん……。シャロ、愛していたよ……」
シャロ「やだああああああああああああっ!!!!!!
 誰か助けてえええええええっ!!!!!!」
リゼが横のレバーを引くと、嫌な金属音と木の軋む音を響かせて、
巨大な出刃包丁のようなギロチンが一気に落下した。
底板と刃がぶつかる、けたたましい音がすると、
響いていたシャロの絶叫が途端に掻き消えた。
リゼ「すまん……。本当に……っ!」
地面に突っ伏し涙をこぼすリゼの手元に、
金髪の美しい髪を血で汚した頭がごろりと転がってきた。
台座では、首のなくなったシャロの胴体が、ぴゅうぴゅうと赤い血が噴き出している。
46:
ココア「まさかリゼちゃんがやってくれるとはねぇ。
 本当は私がやるつもりだったんだけど」
チノ「こう物事がうまく運ぶと、少し怖い気もしますね」
ココアとチノが、夕日に染まる道を歩いている。人通りは無い。
ココア「あとは何が必要なんだっけ?」
チノ「あとは>>50があれば、シャロさんは晴れて、
 うさぎとしての人生を歩みだせますよ」
髪の毛を無造作に持たれたシャロの頭が、
ココアが歩くの合わせて奇妙に揺れていた。
52:
?ラビットハウス?
ココア「じゃあ、始めるよ」
チノ「……はい」
テーブルの上に6本のロウソクが円形に並べられている。
その中心には、高そうな生地の真っ赤な布が置かれ、
上にシャロの頭部が置かれていた。
ココア「シャロチャンシャロチャンダイスキダイスキ……。
 ダイスキダイスキシャロチャンシャロチャン……」
ロウソクに灯った炎が照らすだけの空間に、ココアの唱える怪しい呪文が響く。
ゴクリ。チノは緊張した面持ちで、生唾を飲んだ。
53:
ココア「モウガマンデキナーイ!」
チノ「っ!?」
ココアが呪文を唱え終えると、突然室内がまばゆいばかりの光に包まれた。
空間が白く染まり、チノ、ココアの二人はたまらず顔を背け、目を覆う。
ココア「う……」
それは一瞬の出来事だったが、一時光に視界を奪われた二人は、
しばらくの間目を覆ったまま動けなかった。
54:
チノ「ううう……。目が潰れるかと思いました……」
先に視力が回復したのはチノだった。
顔を覆っていた手を外すと、ぼやける視界の中に動くものが見える。
それは「きぃきぃ」と奇妙な声を発し、ぴょんぴょんとテーブルの上を飛び跳ねていた。
チノ「ココアさん! やりました! 成功ですよ!」
ココア「ホント!? やったね! チノちゃん!」
チノの目の前に、シャロの面影を残したかわいらしいうさぎが現れた。
56:
シャロ「きぃきぃ! (何よ、これ!?)」
チノ「なんてかわいいんでしょう。やっぱり、思った通りです」
ココア「ああ……。シャロちゃん……。食べちゃいたいくらいかわいいよぉ……」
チノ「食べるのはうさぎ小屋に放り込んでからにしましょう。
 まずはこの痩せ細った体をなんとかしないとですね。
 人間だった頃はスレンダーで綺麗でしたけど、
 うさぎにしてみると病気かと思うくらい痩せて見えます」
ココア「とりあえず>>60を食べさせてみようよ!」
シャロ「きぃきぃ! (あんた達、変な相談してないで早く戻しなさいよ!)」
62:
シャロ「きぃきぃ……。(あんた達……。何言ってるのよ……)」
チノ「そうですね。シャロさんは千夜さんのこと好きみたいだし、
 千夜さんの肉なら喜んで食べてくれるでしょう」
ココア「うん! そうだよね! でも。うさぎのシャロちゃんじゃ全部食べ切れないだろうから、
 残りは私たちで食べようよ。私も千夜ちゃんのこと好きなんだぁ」
チノ「そうですね。私の千夜さんのこと好きです。
 どんな味なのか想像するだけで涎が止まりません」
63:
シャロ「きぃきぃ! (やめなさい! 千夜を食べるなんて許さないわ!)」ドンッ!
シャロがココアに体当たりをした。
ココア「うわ! ……もう、シャロちゃんったら。
 そんなにがっつかなくても、一番おいしい太もものお肉はシャロちゃんにあげるからね。
 私はあの白い首筋に噛みつきたいなぁ」
チノ「さすがココアさん。通ですね。
 私は頬っぺたとふくらはぎにします」
シャロ「きぃきぃ! (お願いだからやめて! 千夜のこと殺さないで!)」
シャロは二人の周りを飛び回り、足にすり付き懇願する。
ココア「あはは。シャロちゃんもこんなに喜んでるよー」
64:
?甘兎庵前?
ココア「千夜ちゃーん!」
チノ「千夜さーん!」
もう店は閉まっている時間だった。
二人は声を張り上げ、拳でドンドンと扉を打ち鳴らす。
千夜「あら。どうしたの? こんな時間に」
しばらくして扉が開かれると、隙間からパジャマ姿の千夜が顔をのぞかせた。
65:
ココア「パジャマってことは、もしかしてもうお風呂入っちゃった?」
千夜「あら? みんなでお風呂行くつもりだったの?
 ごめんなさい。今出たばかりなのよ」
よく見ると、千夜の美しい黒髪はやや湿っているようだった。
ココアはそれを見て満面の笑みを浮かべる。
ココア「ううん。謝らなくていいよ。むしろそっちの方が……」
千夜「え」
突然の衝撃に千夜は膝から崩れ落ちた。
チノとココアの手にはそれぞれ、火花を散らすスタンガンが握られている。
ココア「好都合だよ」
千夜は薄れゆく意識の中で、ココアの笑い声を聞いた。
67:
?ラビットハウス?
シャロ「きぃ……。きぃ……」
床に倒れ、動かなくなってしまった千夜の傍らで、
シャロが悲しげな鳴き声を上げ続けていた。
ココア「はぁー。まさかあそこから粘るとはねぇ。さすが千夜ちゃんだよぉ」
チノ「そうですね。二人がかりじゃなければやられてました」
二人は呼吸を整えると、それぞれ”道具”を手に取った。
ココア「じゃ、始めよっか」
70:
ココア「シャロちゃーん。待たせてごめんねぇ」
シャロは地面にうずめていた顔を上げた。
目の前に、湯気を立てる”肉”の乗せられたお皿が置かれている。
シャロ「……っ!」
ココア「一番おいしいお尻の肉だからね。
 たくさん食べて太らないと、オス兎に相手してもらえないよぉ」
鼻を突く匂いに、シャロは吐き気を覚えた。
これが千夜の……。
悲しげな顔で俯き、震えていたシャロだったが、
いつしかその震えは怒りによるものに変わった。
シャロ「きぃきぃ! (ふざけないで! なんで千夜を殺したのよ!)
73:
ココア「あはは。遊びたいのは分かるけど、ちゃんとご飯を食べてからにしなね」
シャロ「きぃきぃ! (あんた達も殺してやるわ! 千夜の仇は、私が打ってやる!)」
ココアの足元に取り付き、頭突きを食らわせたり、齧り付いたりしてみたが、
どうやらココアにとっては、シャロがじゃれている程度にしか感じられないらしい。
シャロ「きぃきぃ! (返して! 千夜を返してよ……っ!)」
徐々にシャロの心中に、無力感が広がっていく。
やがて動きを止め、地面にうずくまってしまった。
シャロ「きぃ……。きぃ……。(お願いだから返して……。千夜ぁ……っ)」
75:
シャロは数日に渡り、”千夜の肉を食べさせられた”。
何度も嘔吐を繰り返し、太るどころか逆にやつれてしまったように見える。
チノとココアが、拭っても拭ってもシャロは瞳から涙を垂れ流し、
目の淵に大量の目やにを付着させ、小刻みに震えていた。
チノ「はぁ……。どうして吐き戻してしまうんでしょう。
 わざわざおいしいところを譲ってあげたのに」
ココア「うーん……。どこか悪いのかもね」
二人はため息交じりにぼやく。
ふと、思いついたようにチノが口を開いた。
チノ「だったら、>>80してみたらどうでしょう。
 シャロさんも喜ぶと思うし、体調も戻るんじゃないでしょうか」
ココア「名案だね、チノちゃん」
87:
ココア「きっと運動不足でおなかがすいていないだけだよね?
 今日はお友達を連れてきたから」
ワイルドギース「きぃきぃ」
シャロ「きぃ……! (ち、近寄らないで……。お願いだから……)」
チノ「シャロさんも喜んでるみたいですね」
ワイルドギース「きぃきぃ」
シャロ「きぃきぃきぃきぃきぃ!
 (いやああああああああああっ!!!!!! お願いだから来ないでええええっ!!!!)」
88:
ワイルドギース「きぃきぃ。(大丈夫? お嬢さん)
シャロ「きぃきぃ! ……きぃ? (嫌だ嫌だぁ! ……え?)」
ワイルドギース「きぃきぃ。(そんなに怯えないで。ボクは敵じゃないから)」
シャロ「きぃ……。(ぅ、うん……)」
ココア「あはは。もう仲良くなったみたいだねぇ」
チノ「良かったですね」
89:
ワイルドギース「へぇ。人間からうさぎにされちゃったのかぁ」
シャロ「うん……」
ワイルドギース「それで、友達を……。ひどいことをするねぇ」
シャロ「千夜……。うう……っ! 千夜ぁ……っ!」
ワイルドギース「ああ。嫌なこと思い出させちゃって、ごめんね。
  ボクは君の味方だから。なんでも相談して」
シャロ「うう……っ! ぐす……っ! あっ、ありがとぉ……」
91:
ワイルドギース「付いておいで」
シャロ「……?」
ワイルドギース「どんなにつらくても、そのままだと君まで死んでしまうよ。
  ……友達の仇を打つんだろう? ちゃんとご飯は、食べなくちゃね」
シャロは顔を上げると、不器用に前足でゴシゴシと涙を拭った。
シャロ「……うんっ! 千夜の仇は私が打つ!」
ワイルドギース「じゃあおいで。いい餌場があるんだ」
踵を返し駆け出そうとしたワイルドギースが、
何かを思い出したようにシャロの方を振り返った。
ワイルドギース「ああ、あと。顔を拭うときは、後ろ脚の方が楽だよ」
再び前を向き、ワイルドギースは駆け出した。
93:
シャロ「ここは……」
ラビットハウスのキッチン側、裏口の方から外に出たシャロは、
驚いたようにキョロキョロとあたりを見渡した。
そこは高い柵に覆われた、小さな庭だった。
短い緑の草が、そよそよと風に揺れている。
ワイルドギース「ここからは逃げ出せないから、
  あの二人もここまで来るのは黙認してくれてるのさ」
シャロ「そうなの……」
久々に吸った外の空気を、シャロは胸いっぱいに吸い込んだ。
94:
ココア「最近シャロちゃん元気だねぇ」
チノ「やっぱりワイルドギースを呼んだのは正解でしたね」
いつものように裏口へと駆けていく二匹を、
ココアとチノの二人が笑顔で見送っていた。
骨と皮だけしかないほどに痩せていたシャロも、
かわいらしくぷっくりとしたお尻を揺らして、ぴょんぴょんと跳ねている。
シャロ「きぃきぃ! (裏庭に鶏のエサ箱があるなんて! 教えてくれてありがとう!)」
ワイルドギース「きぃ! (どういたしまして!)」
97:
シャロ「うーん。鶏っていつもこんなにおいしいもの食べていたのね。
 ……人間だった頃の私より、いい暮らししてるわ」
体の二倍ほどもある木箱に頭だけを突っ込んで、
シャロがモグモグと口を動かしながら喋っている。
ふと、シャロは視線を上げた。
木箱に映る影から、背後にワイルドギースが近寄ってきていることが分かったからだ。
シャロ「ワイルドギース? 今日は、あなた食べないの?」
そう言い終えるか終えないかというとき、シャロの上に何かがのしかかってきた。
シャロ「きゃあ! 何!? ワイルドギース!?」
必死にシャロはもがくが、完全に覆いかぶさるように乗られているため、
その体の自由はほとんど奪われていた。
98:
シャロ「いやっ! やめてよ! ワイルドギース!」
木箱に前足をかけた状態で、シャロは必死に叫ぶ。
ワイルドギースの荒い呼吸が耳元をくすぐっていた。
シャロ「ちょっ……、悪ふざけは……。ああ……っ! 何してるのよっ!?」
叫びはヒステリックなものへと変貌する。
下半身に侵入してくる何かに、シャロが気付いたためだった。
シャロ「ぐううう……っ! やめてぇ……っ! お願いいいい……っ」
それは激しい痛みを伴って、身体をゆっくりと貫いていく。
シャロは呼吸が何度も止まりそうになりながらも、
背後で息を荒げるものに弱々しい懇願を繰り返していた。
100:
シャロ「ああ……っ! う……っ! ぐうう……っ!」
背中を叩きつけるような感触と、下腹部を貫く様な感覚が同時にシャロを襲う。
それは断続的に続けられ、耳元で響く呼吸も合わせて激しくなっていった。
シャロ「ん……っ! あ……っ! うああ……っ!」
何度も何度も繰り返す痛みの波が、
いつしか快感に変わりつつあることをシャロは自覚していた。
シャロ「あ……っ! あ……っ! あ……っ!」
それでも心中を占める悲しみに変わりは無かった。
”私は無二の親友に、無理矢理穴を犯されている”
101:
計8回。
歪んだ欲望を全て中に吐き出しつくすと、
ようやくワイルドギースは何も知らない少女を解放した。
ワイルドギース「元気な赤ちゃんをたくさん産んでね。ボクと君の子だよ」
ワイルドギースは無表情でそう言い放つと、
ぐったりとしているシャロの横で、もしゃもしゃと餌を食べ始めた。
シャロはしばし、虚ろな瞳でそれを呆然と眺めていた。
下腹部には鈍痛を、心には刺すような深い悲しみを抱えて、
シャロはただ眺めていることしかできなかった。
102:
シャロ「どうして、こんなことをしたの……?」
どれほど時間がたっただろうか。
満腹になり昼寝を始めたワイルドギースが目覚めると、
シャロは唐突にそう質問をした。
ワイルドギース「どうして?」
ワイルドギースは首を傾げる。
ワイルドギース「随分とおかしなことを聞くんだね。
  ボクはエサ場を提供したでしょ。そして君はそこでエサを食べた。
  つまり君はその時点で、ボクの子供を産む決断をしたってことさ。
  それが嫌だったら最初からエサ場に付いてこなければいい」
103:
ココア「またシャロちゃん元気なくなっちゃったね」
チノ「どうしたんでしょうか。昨日まであんなに仲が良かったのに」
ワイルドギース「きぃきぃ。(ちゃんと食べないと体に毒だよ)」
シャロ「きぃきぃ……。(もう、ほっといてよ。私のことは……)」
悲しみに暮れたシャロはゆっくりと立ち上がり、
トボトボと冷蔵庫の方へと歩いて行った。
そして。冷凍室を、前足でカリカリと掻く。
チノ「もしかして……。シャロさんは千夜さんの肉が食べたいんじゃないでしょうか」
106:
ココア「はい! お待たせ!」
シャロの目の前に湯気の立つ器が置かれた。
やや躊躇するようにシャロは、その前をウロウロとしていたが、
決心がついたのか、勢いをつけてそれにかぶりついた。
もしゃもしゃと肉を咀嚼する音が響く。
チノ「やっぱりそうでした。体調が戻った証拠ですね」
ココア「冷凍しておいてよかったねぇ。
 ……シャロちゃん。まだたくさんあるからね」
シャロ「きぃ……。(生きてやる……。何が何でも生きて……)」
108:
?リゼ宅?
リゼ「ああ……。シャロ……。シャロぉ……っ」
机に突っ伏したリゼは、後悔の念に押し潰されそうだった。
たくさんの命と友人の命をはかりにかけて、後者を犠牲に選んでしまったのだ。
リゼ「せめて……。ちゃんと弔ってやりたい……」
我を失い泣き伏せっていたリゼがふと我に返ったときには、
ギロチンで処刑したはずのシャロの頭部がこつ然と姿を消していた。
リゼは家の財力、人脈を使い全力で捜索にあたっているが、
未だ見つかっていないという状況だ。
リゼ「シャロぉ……。本当にすまない……っ」
115:
甘兎庵
116:
?甘兎庵前?
リゼ「やはり……。今日も閉まっている……」
シャロの処刑の日。
それ以来、甘兎庵がオープンしていないことを、
リゼはずっと気にはかけていた。
仮に、千夜がシャロの頭部を奪ったのだとしたら、それに関しても合点がいく。
リゼ「シャロ……。待っていてくれ……」
117:
リゼ「はぁっ!!!」
ミシリ。
リゼが取っ手を引くと、大きく木の軋む音を立てて、
甘兎庵の、鍵が閉まっている扉が開いた。
真っ暗な店内に、日の光が徐々に広がっていく。
リゼ「千夜! いるのか!?」
付いて来ようとする使用人を必死になだめて、
リゼは単身乗り込んできていた。
自分一人の力で解決する肚だった。
リゼ「千夜! 出て来い!」
不自然なほどに暗い店内に疑念すら抱かず。
リゼはどんどんと店の奥へと入って行った。
119:
リゼ「千夜! 千……っ!?」
気配を感じ、慌ててリゼは横に飛び退き地面を転がった。
リゼの耳孔にバチバチと、何かが弾けるような音が残響している。
リゼ「お前は……」
床に片膝をついてしゃがんでいるリゼは、信じられないものを見た。
スタンガンを構え、息を荒げるココアの姿を。
ココア「まさか。このタイミングで避けるとはね……」
121:
リゼ「なんでお前がここにいる!? 千夜はどうした! シャロは!?」
ゆっくりと立ち上がりながら、憤怒の形相でリゼは叫ぶ。
ココアの額から、冷汗が一筋流れた。
リゼ「……ふん。答えないのなら、それもいい」
ココアから視線を外さずに、リゼは制服のポケットから、
鈍く光るナイフを取り出した。それは以前、シャロからプレゼントされたものだった。
123:
リゼ「ここにいるということは無関係でもあるまい!」
リゼはナイフを持った右腕を大きく振り、空間に閃光を走らせる。
リゼ「その体に、直接聞いてやるとしよう!」
両腕を広げ、リゼは疾走する。
ココアの右手で、スタンガンが火花を散らした。
ココア「あはっ! リゼちゃん! 私が一人だと、思わないことだね!」
闇に染まる店内。そのテーブルの陰から。
>>127が姿を現した。
127:
マヤメグ
131:
リゼ「お前ら……っ! お前らもグルか!?」
テーブルの陰から現れたマヤ、メグの両名に、リゼは声を荒げるが、
どうも様子がおかしいことに気付いた。
二人は暗い店内でも分かるほどに青ざめていて、
木造の床が軋むほどにガタガタと震えている。
マヤ「リゼ……。助けて……」
メグ「逃げてください……。リゼさん……」
二人の背後から小さな影が揺れる。
チノ「こういうことです、リゼさん。まさか、見殺しになんてしませんよね」
132:
リゼ「がはっ……」
大きく体を仰け反らし、リゼは床に倒れ込んだ。
椅子が二つほどひっくり返り、派手な音を立てる。
ココア「あはは。リゼちゃーん。もうおしまい?
 じゃあマヤちゃんとメグちゃんも終わりだねぇ」
ココアが振り返りながらそう言うと、チノが頷きナイフを手に取った。
息を呑むような小さな悲鳴が、薄暗い店内に響く。
リゼ「ま、待て……」
テーブルに手を突き、身体を震わせながらリゼは立ち上がる。
頭からは血を垂れ流し、顔は腫れ、ボロボロの制服から肉の裂け目が覗いていた。
ココア「あはは。そうこなくっちゃねぇ」
134:
ココア「ふんっ! ふんっ!」
ココアはささくれ立った角材で、何度もリゼを殴打した。
角材から数本飛び出している釘が、リゼの肉を刺し、抉る。
リゼ「あぐ……っ! ぐう……っ!」
全身を滅多打ちにするのに飽きたココアは、
先程からリゼの左の鎖骨付近を集中的に殴りつけていた。
ココア「えいっ! よい……、しょおっ!」
短いストロークはやめ、大きく振りかぶった一撃を叩きこんだ。
バキン。大きな音がして、角材がへし折れた。
先端がくるくると中空をまわり、地面に落ち、転がる。
リゼ「は……っ。はぁ……っ! うああああああああああっ!!!!!!!!」
顔を苦痛に歪め、左肩を押さえて、ゆっくりと床に膝をついたリゼは、たまらず絶叫した。
鎖骨が折れ、肩が異様な形に隆起していた。
135:
ココア「あはは。もうダメみたいだねぇ」
チノ「そうですね。じゃあ……」
ココアの合図で、チノがナイフを掲げる。
「ひっ」マヤとメグ。二人は短い悲鳴を上げた。
リゼ「ああああっ!!!! ああ……! ま、待ってぇっ!」
ココア「ん? まだ殴られたい?」
リゼ「うう……」
ココアが角材を振り上げると、リゼは固く目を閉じ顔を背けた。
チノ「はい。というわけで。お二人には残念ですが」
136:
リゼ「ひっ……。ひい……っ」
リゼは床に座り込み、固く目を閉じ俯いて、頭を抱え震えていた。
ココア「あはは。リゼちゃん。高校生にもなって恥ずかしいねぇ」
ココアが笑う。
リゼは恐怖と痛みのあまり失禁し、お尻のあたりに水溜りができていた。
その傍らには、マヤとメグの血に染まった死体が転がっている。
チノ「せっかくリゼさん頑張ったのに。その甲斐が無かったですね。
 結局、安っぽい正義感じゃだれも救われないんです。
 マヤさんもメグさんも。そして、シャロさん、千夜さん」
リゼは顔を伏したまま、ゆっくりと目を開けた。
リゼ「シャロ……」
137:
チノ「さて、家に帰ったら楽しいショーが待っていますから」
ナイフを構え、チノは言う。
ココア「そうだねぇ。くっさいうさぎ小屋でたくさんのオス兎に犯されて、
 シャロちゃんはどんな鳴き声を上げるのかなぁ」
両手を広げ、ココアは笑う。
座り込んだリゼの眼前にチノが迫る。
ナイフが煌めく。
光が揺れる。
チノ「さよならです。リゼさん」
チノが腕を振りかぶる。
その背後で、ナイフが光る。
リゼ「シャロおおおおおっ!!!!!!!」
チノ「えっ」
飛びかかったリゼがチノを押し倒した。
固いものが床に叩きつけられる、けたたましい音。
リゼが、シャロからもらったナイフ。
床で鈍い光を放つそれが、チノの身体を貫いていた。
139:
リゼ「ぐううううううううううううっ!!!!!!!!!!」
突き刺すような痛みに耐え、リゼは立ち上がった。
鎖骨の折れた左肩は、野獣に噛みつかれたように熱く疼いたし、
全身は、針の筵を巻き付けたように鋭く感覚を刺激した。
それでもリゼは立ち上がった。
友人を取り戻すために。
リゼ「今……、”シャロちゃん”がどうとか、聞こえたが……」
今にも命の灯火は消えそうだった。
それが嘘のように、眼前の敵を睨み付ける瞳は、光を失っていない。
リゼ「返してもらおう……。私の……、愛する人を……」
リゼは重い体を引きずるように、一歩一歩足を前に踏み出した。
141:
ココア「……なんなのよ。この死にぞこない」
冷汗を流しながら、ココアは後ずさる。
目の前にいるリゼは、言葉の通り”死にぞこない”だった。
ココアが手を下さずとも、勝手に死にゆく体だろう。
ココア「あっはは……。ここまでおいでぇ、ってねぇ……」
ひきつった笑いを浮かべ、なおもココアは後進した。
あと数歩。おそらくあと数歩で、リゼは死ぬだろう。
身体を揺らめかせ歩くその姿と、出血量がそれを物語っている。
ココア「あはっ……。さっさと死になさいよ……」
143:
ココア「ひっ……!?」
何かに蹴躓き、ココアは後ろに倒れた。
その”何か”は「きぃきぃ」と鳴き声を漏らす。
リゼ「あああああああああああああっ!!!!!!!!!」
勝機を見逃すリゼではなかった。
残り少ない命の灯火を全力で燃やし、強く地面を蹴ると疾走した。
ココア「がふっ!!!」
倒れ込むようにしてリゼは、
チノを貫いたのと同じナイフを、仰向けに寝ているココアの胸に突き立てた。
144:
大きく目を見開いたまま、ココアは絶命していた。
その横に同様に仰向けに倒れているリゼも、すぐにそうなることだろう。
か細い呼吸を繰り返し、それに合わせて血塗れの胸が上下していた。
リゼ「……?」
リゼのぼんやりとかすれる視界に、何かが動いているのが見えた。
「きぃきぃ……」
それは暖かく、モフモフとした感触を、リゼの頬に伝えてくれた。
リゼ「シャロ……。ありがとう……」
リゼの頬を一筋流れた涙が、シャロの毛むくじゃらの身体に吸い込まれていった。
147:
?ウサギ帝国?
シャロ「ううううううう……っ!!!!!」
ワイルドギース「頑張って! シャロ!」
約一か月後。
自身の作り上げた国で、シャロはその時を迎えていた。
シャロ「はぁ……っ。はぁ……っ」
ワイルドギース「よくやったよ、シャロ! 6羽とも、無事みたいだ。
  みんな、ボクたちの子供だよ」
シャロ「……ふふっ。それは、なによりだわ」
149:
ワイルドギース「名前はどうしようか」
シャロ「……名前はね、もう決めているの」
ワイルドギース「へぇ! どんな?」
シャロ「千夜、リゼ……。それに、ココア、チノ、マヤ、メグ……」
ワイルドギース「あはは。いい名前だね。どんな願いを込めて、その名前にしたんだい?」
シャロ「そうね……」
ふと、顔を上げ、シャロは遠い目をする。
シャロ「次は、みんなうまくやれるように」
150:
ワイルドギース「次?」
シャロの答えに、ワイルドギースは首を傾げる。
ワイルドギース「おいおい……。もしかして、前の夫との間に生まれた子と、
  同じ名前だとか言うんじゃないだろうね?」
「ふふっ」シャロは含んだように笑った。
シャロ「そんなんじゃないわ……。ただ、別の世界があるなら。
 きっと私たち、うまくやれていたはずなのよ。
 みんなで、楽しく、笑って……」
感慨深げに瞼を閉じたシャロの頬を、涙が一筋つたった。
ワイルドギース「そうだね! ボクたち、きっとうまくやれるはずさ!
 ……さぁ。ボクはお祝いの準備をしないと! キミは寝てていいからね!」
ワイルドギースはいそいそと駆け出していく。
シャロはその背中を見送り、微笑んだ。
シャロ「ふふっ。次は、みんな仲良くしましょうね?」
子供たちの寝床を、シャロは覗き込み笑みを浮かべる。
そこには、これからの生活を暗示するかのように、
すやすやと安らかに眠るかわいらしい顔が、6つ並んでいた。
終わり
152:
おつ!最高のごちうさSSだった
15

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