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綾波「んっ、司令官の……あったかいです」


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1:
――
提督「温度はちょうど良さそうだな」
綾波「はい、とっても美味しいです」
提督「そうか、それはなにより」
綾波「綾波が淹れるお茶よりも、心が癒されます」
提督「いやいや、まだ綾波のお茶には敵ないよ」
綾波「いえいえ、そんなことないです」
提督「いやいや」
綾波「いえいえ」
提督「……」ズズッ
綾波「……」コクッ
綾波「……夜風が気持ち良いですねぇ」ハフゥ
提督「……だなぁ」ホゥ
――
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2:
――
提督「なぁ綾波」
綾波「はい、何でしょう?」
提督「……」
綾波「……」
提督「……?」
綾波「……?」
綾波「あっ、今日のお昼の献立は綾波特製肉じゃが定食ですよ」
提督「ごめん、何言おうか忘れただけなんだ」
――
3:
――
提督「なあ綾波」
綾波「はい」
提督「俺達はこんな夜更けに、縁側で海を眺めながらお茶を飲んでいても良いのかな」
綾波「遠征隊が帰って来るまでの間ですから、良いのではないでしょうか」
提督「でもさぁ……」
綾波「……司令官は綾波とお茶をするのはお嫌ですか?」
提督「いやいや。このひとときのために生きていると言っても過言じゃない」
提督「……」ズズッ
綾波「……」コクッ
綾波「……そこまで言われてしまうと綾波、少し恥ずかしいです」ハフゥ
提督「俺も恥ずかしいよ」ホゥ
――
4:
――
提督「綾波の司令官の発音って"しれーかん"に近いよな」
綾波「そうでしょうか?」
提督「試しに言ってみ?」
綾波「しれーかん」
提督「司令官」
綾波「しれーかん」
提督「し・れ・い・か・ん」
綾波「し・れ・い・か・ん」
提督「司令官」
綾波「しれーかん」
提督「……」
綾波「……?」
提督「……まぁ可愛いからいいか」
綾波「しれーかん、しれー……んぅ?」
――
5:
――
提督「あーやなみー」
綾波「なーんでーすかー」
提督「よーんだーだけー」
綾波「……」
提督「……」
綾波「ふふっ」
提督「ははっ」
――
6:
――
提督「話は戻るけど」
綾波「はい」
提督「本当にこのままお茶を飲んでいても良いのかな」
綾波「……綾波はいいと思います」
提督「皆が危険に晒されているかもしれない状況なのに?」
綾波「……」
提督「時折、無力な自分がもどかしくてたまらなくなるんだ。ここぞという時に何もしてやれない自分がさ」
綾波「……」
提督「そう考えたらさ、こんな所で本当にお茶を飲んでいてもいいのか、本当は俺なんて必要ないんじゃないかってさ」
綾波「……司令官は司令官、適材適所ですから」
提督「そう、かな」
――
7:
――
綾波「そうです」
提督「そうかなあ」
綾波「そうなんですっ」
提督「綾波は変な所で強情だな」
綾波「綾波にだって譲れないものくらいあります」
提督「だろうけど」
綾波「……」
提督「……」
綾波「……司令官は自己評価が低すぎます」
提督「んー?」
――
8:
――
綾波「司令官は知っていますか?」
綾波「"ただいま"と言える人がいる安心さを」
綾波「"おかえり"と迎えてくれる人がいる温かさを」
綾波「"お疲れ様"と笑顔で労ってくれる人がいる嬉しさを」
――
9:
――
綾波「綾波は知っています」
綾波「いつも綾波たちを一番に迎えて下さるのが誰なのか」
綾波「いつも全員が帰還し、就寝するまで必ず起きて待っているのが……誰、なのか」
綾波「少ない資材と資金を叩いて、綾波たちのために最善の設備と装備を……グスッ、揃えて、下さっているのがっ……誰っ、なのかっ」ポロポロ
提督「……」
――
10:
――
綾波「司令官はっ、綾波たちの大切な司令官です!!」
提督「っ!」ビクッ
綾波「だから、だから必要ないだなんてっ……言わないで、くださいっ」ポロポロ
提督「……ん、ハンカチ」スッ
綾波「ありがとっ……グスッ……ございます」ゴシゴシ
――
11:
――
提督「ごめんな、そんなつもりで言ったんじゃないんだ」
綾波「……なら……グスッ、もう言わないでください」グシグシ 
提督「ごめん」
綾波「謝るのも禁止です」
提督「すま――」
綾波「次謝ったら怒りますっ」
綾波「……」
提督「……」
提督「……お茶、冷めちゃったな」
綾波「次は綾波がお淹れしましょう」
――
12:
――
提督「はぁ、トップの俺が弱気になっちゃダメだよなぁ。挙句、部下に弱音吐いて泣かせる始末」
綾波「そんな、綾波は嬉しいです」コポコポ
提督「そうか?」
綾波「はい、司令官はもっと誰かに甘えてもいいと思います」
提督「そっか」
綾波「……あっ、訂正してもよろしいでしょうか?」コトッ
提督「んー?」スッ
綾波「司令官はもっと、綾波に甘えてもいいと思います」
提督「……」
――
13:
――
提督「これでも目一杯甘えてるつもりなんだけどな、みんなに」
綾波「もっとです、もっと」
提督「ふーむ、例えば?」
綾波「……金剛さんや酒匂さんが司令官にするみたいに」
提督「……」
提督「……」
綾波「……」
提督「そいつはキツイな、色々と」
綾波「綾波は、可愛いと思いますよ」コクッ
――
14:
――
提督「あの二人の言動には困ることばかりだからな……」
綾波「そんなふうに言わなくても」
提督「好意持たれるのは嬉しい。が、処構わず抱きつかれたりすると驚くし、周りの目も気になる」
綾波「……」
提督「その二人意外にも鈴谷とか如月とか……な。俺だって上司である前に、一人の男なわけだからあんまりさ」
綾波「……」
ススッ
キュッ
提督「……突然袖を摘まれたらお茶こぼしちゃうだろー」
綾波「……」キュゥ
――
15:
――
提督「なぁ綾波」
綾波「はい」
提督「綾波が出撃しなくなってどのくらい経つかな」
綾波「前回の大作戦以来ですから……2ヶ月ほどでしょうか」
提督「そっかぁ」
綾波「はい」
提督「……」
綾波「……」
提督「すまな――」
綾波「えいっ」ペチッ
――
16:
――
綾波「謝ったら怒るって言ったじゃないですか」
提督「怒っている綾波も見てみたくて」
綾波「もう」
提督「……」
綾波「……」
提督「……綾波はさ」
綾波「はい」
提督「海に出られなくて退屈じゃなかったか?」
綾波「? 特には」
――
17:
――
提督「意外な回答だ」
綾波「そうでしょうか」
提督「ああ、前の綾波からは想像もつかないな。意外と好戦的だったし」
綾波「む、昔の話はいいじゃないですか」
提督「これ以上の練度向上は軍規違反になるし、仕方ないと言えば仕方ないんだが」
綾波「そんなことより」
提督「……そんなことすか」
綾波「綾波は、こうして司令官と二人の時間を独り占めできるんです」
提督「……」
綾波「こんな素敵な指輪までいただきました」
提督「……」
綾波「……これ以上を望んでは、バチがあたってしまいます」
提督「そうか……」
綾波「はい」
提督「今日からまた、頼むな」
綾波「はい」
――
18:
――
綾波「頼むだなんて、そんな他人行儀じゃなくても……」
提督「危険な処へ送り出すんだから、頼むであってるんだよ」
綾波「心配してくださるんですか」
提督「当たり前じゃないか」
綾波「司令官……」
提督「何となく娘を嫁に出す父親の気持ちが理解できたよ」
綾波「……」ムッ
提督「あと、そろそろ掴んでいる袖を放してくれないかな」
綾波「……絶対にいやです」
――
19:
――
綾波「……」キュゥ
提督「あー、綾波」
綾波「いやです」
提督「まだ何も言ってないよ……」
綾波「司令官には……綾波の隣にいて欲しいです」
提督「大丈夫、ここに居るから」
綾波「……」
提督「大丈夫だから、な? お茶がこぼれちゃうって」
綾波「……司令官は意地悪です」
提督「ごめ――いたっ」ペチッ
――
20:
――
綾波「……そんなに綾波と一緒は嫌ですか?」
提督「そんな訳ないだろ」
綾波「……」
提督「でも、いつもの綾波の距離感とは違うからさ、こっちも困惑してるんだよ」
綾波「……金剛さんたちには許してるくせに」
提督「許可を出した記憶はないんだけどな」
綾波「……なら綾波も勝手にします」キュゥ
提督「……まぁ、いいか」ポンポン
――
21:
――
提督「なぁ」
綾波「?」
提督「……何か、あったのか?」
綾波「……どうしてそう思うのです?」
提督「んー、様子がおかしいから、かな」
綾波「……」
提督「俺のせい?」
綾波「いえ……」
提督「まぁ、話したくないなら聞かないけど」
綾波「……」
提督「頼りにならないかも知れんが、俺で良ければ……な?」
綾波「……」
綾波「……昔の事を思い出してしまっていたんです」
提督「昔の事?」
――
22:
――
綾波「司令官と出会う前の、もっともっと昔のこと」
提督「……」
綾波「まだ綾波が"今の綾波"ではない頃の記憶です」
提督「……」
綾波「……」
提督「……そうか、今日はもう11月14日か」
綾波「……はい」
――
23:
――
提督「時々思い出すのか?」
綾波「……夜の海を見ると、ちょっとだけ」
提督「なら、これからはお茶は昼間にしようか」
綾波「……いえ、今はもう平気です」
提督「そうか」
綾波「はい、司令官がそばに居てくださいますから」
提督「そうか」
提督「……不甲斐なくてごめんな」
綾波「やっ」ペチッ
――
24:
――
提督「そろそろ、おでこを叩くのやめて欲しい」
綾波「司令官が悪いんです」
提督「あー、ちょっと赤くなってきたな」
綾波「……」
提督「何だかヒリヒリするなぁ、あんなに叩かれたもんなぁ」ヒリヒリ
綾波「……ご、ごめんなさ――いたっ」ペチッ
提督「ははっ、ひっかかった」
綾波「もうっ」
――
25:
――
綾波「あっ」
提督「ん、そろそろか」
綾波「はい、遠征隊の帰投予定時刻です」
提督「んじゃ、ちょっくら迎えに行ってくるよ」スクッ
綾波「綾波もお伴します」スクッ
提督「今日は風強いし、一段と寒いからここで待ってていいぞ」
綾波「……」
綾波「……」キュッ
提督「……裾を掴まれると行けないなぁ」
――
26:
――
綾波「……」
提督「……」
綾波「……暗い夜に」
綾波「……独りになるのは」
綾波「……もういや、です」フルフル
提督「……」
綾波「……綾波を置いて行かないでください」フルフル
提督「……」
綾波「……」フルフル
提督「ん、これ羽織な」スッ
綾波「……ごめんなさ――あうっ」ペチッ
提督「謝るのは禁止なんだろ」
――
27:
――
ザザーン
提督「おう長良、おかえり」
綾波「……」キュッ
提督「ん、初雪と白雪もお疲れ様」
綾波「……」
提督「報告は明けたらでいい。今日はもう風呂に入ってゆっくり休んでくれ」
綾波「……」
提督「……ん? ああ、大丈夫。誰だって心細くなる事くらいあるさ」
綾波「……」
提督「ほれほれ、心配しなくて平気だから、五月雨も電も早く戻ってお休み」
綾波「……」
――
28:
――
提督「よしよし、全員いるし問題はなさそうだな」
綾波「……」フルフル
提督「……」チラッ
綾波「……」フルフル
提督「そうでもない……か」
綾波「……」キュッ
――
29:
――
提督「綾波、みんなも部屋に返したし俺たちも戻ろう」
綾波「……」フルフル
提督「……」
綾波「……」
提督「……あー、もう少しここに居るか?」
綾波「……」コクリ
提督「それじゃお茶持ってくる」
綾波「……」キュッ
提督「……」
提督「ん、一緒に取りに行こう」
綾波「……」コクリ
――
30:
――
ザザーン
提督「……」ズズッ
綾波「……」コクッ
提督「……」ホゥ
綾波「……」ハフゥ
提督「あのさ、綾波」
綾波「……?」
提督「呼んでみただけだ」
綾波「……そうですか」
提督「……」
綾波「……」
――
31:
――
綾波「……しれーかん」
提督「んー?」
綾波「ふふっ、呼んでみただけです」
提督「はは、そうか」
綾波「……」
提督「……」
綾波「……何だか、安心します」
提督「そうか」
――
32:
――
綾波「……っ」ブルッ
提督「ほれ、言わんこっちゃない。寒いなら戻ろう」
綾波「へっちゃらですよ」
提督「震えながら言われても説得力ないな」
綾波「まだ、こうしていたい気分なんです」
提督「でも……」
綾波「……でしたら」
提督「?」
ツツツ
ピトッ
綾波「こうして司令官にくっついていれば、寒くないです」スリ
提督「……そうかそうか」ポンポン
――
33:
――
提督「なぁ綾波」ポンポン
綾波「また呼んだだけ、ですか?」チラッ
提督「違うよ」
綾波「?」
提督「また、綾波が不安になることがあったらさ」
綾波「はい」
提督「こうして海辺まで来て、夜空でも眺めながらお茶飲もうな」ナデナデ
綾波「……はい」キュッ
――
34:
――
提督「日に日に寒さが増してきてるな」
綾波「そうですね」
提督「次に備えて、もっとしっかりした防寒具を明石に用意させようかな」
綾波「……綾波には必要ないです」
提督「そうか?」
綾波「はい。だって――」
――
35:
――
綾波「司令官の隣は、こんなにもあったかいですから」
――
36:
――
おわり
――
37:
高レベル単艦放置の妄想。
そして綾波の時報やら放置ボイスが素敵んぐだったのでつい。反省はしてる、ごめん。
史実的には今晩なんだけど、どうしても外せない用事があるんだ、ごめん。
依頼出してきます。
あ、イベントお互いに頑張りましょう。
38:
乙?
凄く良い雰囲気の話だった
イベント頑張ろうぜ!
…でもうちは綾波さんまだ居ないんだよなぁ…
39:
ほっこりしたよ、乙! ……タイトルだけで先走ってエヴァSSだとおもったのはないしょだよ
4

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