双葉杏「夢のおはなし」back

双葉杏「夢のおはなし」


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1:
双葉杏「ねぇ、プロデューサー」
P「どうした?」
杏「ちょっと聞いてほしいんだけどさ」
杏「夢を見たんだよ」
P「……?」
P「あんずのうたか?」
杏「違うよ、本当に夢の話」
杏「なんかね、海にいたの」
杏「浮き輪でぷかーって浮いてる感じ」
P「へぇ」
杏「そしたらね、どんどん流されちゃって」
杏「気付いたらさ、みんながちっちゃく見えるくらいになっちゃってたの」
P「それは怖いな」
杏「でしょ?」
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2:
杏「そしたらさ、誰かが『こっちじゃないよ』って言ったんだ」
杏「近くに誰も居ないのにね」
P「そして、どうなったんだ?」
杏「誰かがさ、杏の浮き輪にロープ付けてたの」
杏「そのまま引っ張ってもらって、助かったんだ」
P「そうか」
杏「でもね、なんか怖くなかった」
P「流されたのに?」
杏「うん。助けてもらえるって、最初から分かってたから」
P「へぇ」
杏「それで、海岸に戻ってきたら目が覚めたの」
P「そうか」
杏「変な夢だよねー」
P「まあ、夢だからなぁ」
3:
――――
杏「ねぇ、プロデューサー」
杏「今日も夢を見たんだよ」
P「今日はどんなだったんだ?」
杏「ずーっと空を見てたの」
杏「青くて綺麗だなーって」
P「へぇ」
杏「そのままぼーっとしてたら、ふわーって身体が浮かんでさ」
杏「空を飛んでるわけじゃないけど、宙に浮いてたの」
P「なんだかいつも浮かんでないか?」
杏「あ、確かに」
杏「それでさ、杏は歩かなくてもいいから楽だなーって思ったんだ」
4:
杏「そしたらさ、浮かんだのはいいんだけど降りられなかったんだよね」
P「ああ」
杏「困ったなーって思ってたら、きらりが来てくれたの」
杏「遠くからだとあんま分かんなかったけど、空飛んでる杏よりもおっきくてさ」
杏「そのままきらりが捕まえてくれて、肩に乗せてくれたんだ」
P「きらり凄いな」
杏「だよね」
杏「きらりもさ、『杏ちゃん、飴食べゆー?』っていつも通りなの」
P「今の似てたな」
杏「えー、そうかなぁ」
杏「……でさ、飴貰ったんだけど」
P「貰ったけど?」
杏「飴もきらりサイズだったんだ」
P「そりゃ残念だったなぁ」
杏「うん。杏より大きいんだもん」
5:
――――
杏「ねぇ、プロデューサー」
P「どうした?」
杏「なんか変な夢を見たんだけどさ……ちょっと聞いてよ」
杏「気付いたらさ、身体が縛られてて動けなかったの」
P「へぇ」
杏「頑張っても全然だったから、もういいやーって諦めたんだ」
P「夢の中でも杏らしいな」
杏「褒めてるの?」
P「さあ?」
杏「……そう」
杏「そしたら、何かがほっぺに落ちてきたの」
6:
杏「上を見たらさ、天井の隙間から水が垂れてて」
杏「そのまま部屋に水が溜まって溺れる!って思ったの」
P「……怖いな」
杏「でしょ?ほっぺに水が落ちてくるし、動けないしでどうしようもなくて」
杏「どうしよーって思ってたら、いきなり身体が軽くなったんだ」
P「軽くなった?」
杏「うん、それで目が覚めたんだけど……」
杏「杏、仮眠室で寝てたんだ」
P「?」
杏「ヒョウくんがさ、杏の上に乗ってたみたいで」
杏「小春に謝られたよ。ヒョウくんがぺろぺろしてごめんなさいって」
P「あー……。そりゃ身体も動かないよな」
杏「うんうん」
7:
――――
杏「プロデューサー」
P「どうした、杏?」
杏「杏、夢を見たんだよ」
P「そうか。どんな夢だったんだ?」
杏「覚えてない」
P「そっか」
杏「うん……それだけ」
P「……杏、コーヒーでも飲むか」
杏「うん。あと飴」
P「今舐めたら、コーヒー苦くなるぞ?」
杏「いいよ別に。それより飴」
P「はいはい」
8:
――――
杏「ねぇ、プロデューサー」
P「どうした」
杏「ちょっといい?」
P「ああ」
杏「じゃ、ちょっと失礼……よいしょっと」
P「……?」
P「どうした?俺の膝なんか座って」
杏「……別に?」
P「そうか」
杏「だめ?」
P「いいけどさ」
杏「……ありがと、プロデューサー」
9:
P「悪い夢でも見たのか」
杏「……」
P「図星だな」
杏「……夢の中で起きたらさ、誰もいなくなってたの」
杏「事務所にいるのに、プロデューサーもきらりも、誰もいなくて」
杏「怖くなって、ずっとソファで寝てたんだ」
P「……そうか」
杏「うん」
P「飴、食べるか」
杏「……ありがと」
P「今日はいい夢見れるといいな」
杏「……そうだね」
11:
―――――
杏「今日はね、楽しい夢だったよ」
P「そうか。良かったじゃないか」
杏「うん」
杏「なんかね、プロデューサーとドライブしてた」
杏「都会だったり、森の中だったり、色んな所を走ってたね」
P「へぇ」
杏「どこ向かってるの、って聞いてもさ」
杏「『どこだろうな』って、プロデューサー教えてくれなかったよ」
P「そうか」
杏「夢の中でまでプロデューサーしなくていいよ、ほんとに」
P「そう言われてもなぁ……杏の夢の中だぞ?」
杏「勝手に入ってこないでよ」
P「勝手に俺を夢に出すなよ」
12:
杏「……まあ、それでさ。途中まで二人きりだったんだけど」
杏「いつの間にか隣にきらりが座ってて、助手席にちひろさんがいて」
杏「ぼやーっとしか分かんなかったけど、みんなで出掛けてるんだなって思ったの」
P「楽しそうだな」
杏「……たまには悪くないかなって思うよ」
P「……珍しいな、杏がそう言うの」
杏「プロデューサーがおぶってくれるならねー。もしくはきらり」
P「はいはい」
P「ああ、そろそろレッスンの時間だな」
杏「えー……もう少しゆっくりしてようよ」
P「はいはい。そうだ、帰りどこか連れてってもいいぞ」
杏「……そう?」
杏「……じゃあ、プロデューサーに任せる」
13:
――――
杏「ねぇ、プロデューサー」
P「どうした?」
杏「杏、夢を見たんだけどさ……」
P「?」
杏「由愛が出てきたんだ」
P「由愛か」
杏「うん。由愛だった」
P「……」
杏「……」
杏「それだけだよ」
P「そうか」
14:
――――
杏「プロデューサーはさ、夢見ないの?」
P「俺か?」
杏「うん。いつも杏ばっかり話してるし」
P「そうだな……でも、あんまり覚えてないぞ」
杏「そっか」
P「気になるのか?」
杏「まあね」
P「……分かった。明日覚えてたらな」
杏「うんうん。いい夢見てね」
P「どうだろうなぁ」
杏「今すぐ寝てもいいんだよ?仕事置いといてさ」
P「それは駄目だ」
15:
杏「……で、どうだったの?」
P「ああ。杏が出てきた」
杏「……どんな夢だったの?」
P「舞台裏でさ、だるそうな顔しながら衣装着てて」
P「やる気なさそうにステージに向かうんだ」
杏「へぇー……」
P「でも、スポットが当たったら、ちゃんとみんなの前でアイドルしててさ」
P「ライブの最後の方なんか、ファンと一緒に楽しそうに笑ってるんだ」
杏「……」
P「そんな風になってほしいって思った」
杏「……あれ、夢の話だよね?」
P「……夢の話だぞ?」
杏「そっちの夢じゃないよ」
P「まあ、まあ。思い出せなかっただけだよ」
杏「まったくもう……」
16:
――――
杏「今日は事務所で寝てたら、プロデューサーがやってきて」
杏「レッスン休みにしたぞーって言ってくれてさ」
杏「ラッキーって思ってたら、仕事が入ったんだ」
杏「お仕事やだなーって思ってたら、それがゲームの先行プレイのお仕事でさ」
杏「カメラで撮られてる以外は自由にゲームしてていいって言われて」
杏「スタッフさんから飴も貰って、ほんとにやったーって思ってたんだよ」
P「ほう?」
杏「……という、夢を見たんだ」
P「他に言うことは?」
杏「……寝坊してごめんなさい」
P「今日がレッスンだけの日で良かったな。ちゃんとトレーナーさんにも謝るんだぞ」
杏「……本当にごめん、プロデューサー」
P「過ぎたことは仕方ないさ。次から気を付けような」
17:
――――
杏「……っ!」ガバッ
杏「あ……」
杏「うわ、汗びっしょり」
杏「……はぁ」
P「またか」
杏「うん」
P「意外と寂しがり屋なんだな」
杏「杏は一人じゃ生きていけないからね」
P「人としてどうなんだそれ」
杏「養ってもらうからいいよ……プロデューサー、飴」
P「はいはい」
18:
――――
ガチャッ
P「お疲れ様です……って、誰も居ないな」
杏「あれ、ちひろさんは休みだっけ」
P「そうだけど……誰かしらアイドルいると思ったんだがなぁ」
杏「そんなこともあるよね……ふわぁ」
P「眠いのか」
杏「……今日はいっぱい働いたからね。しばらくは休ませてもらうよ」
P「明日からレッスンだけどな」
杏「えー……」
P「まあ、まあ。将来のためだ」
杏「明日より今日だよ」
P「はいはい」
19:
P「コーヒー淹れたけど飲むか?」
杏「今日はいらない……それよりほら、座って座って」
P「ん、ああ」
P「どうした、杏?」
杏「よいしょ」ゴロンッ
杏「……プロデューサーの膝、固いね。枕失格だ」
P「じゃあどけてくれ。仕事するから」
杏「えー……せっかく杏が膝枕させてあげてるんだから、もう少し喜ぼうよ」
P「枕失格なのにか」
杏「そこはほら、努力してよ」
P「無茶言うな」
杏「……仕方ないなぁ。杏が折れてあげよう」
20:
杏「それじゃ、おやすみ……」
P「おい、ちょっと待てって……」
P「……杏?」
杏「……んぅ」スゥ
P「おいおい……いくらなんでも、早すぎだろ」
P「はぁ……仕方ないか」
P「……にしても」
杏「ふふ……」
P「いい寝顔だな。一枚失礼して……」パシャッ
P「……いい夢見れるといいな、杏」
杏「んー……」スヤスヤ
21:
――――
P「んー……もう少しで終わるかな……」カタカタカタ……
杏「……あのさ、プロデューサー」
P「……どうした、杏?」
杏「この前、プロデューサーの膝枕で寝てたじゃん」
P「ああ、あれか」
杏「……なんかね、あんまり覚えてないんだけど」
杏「すっごくいい夢だったんだ」
P「へぇ」
杏「なんとなく思ったんだけどさ」
杏「プロデューサーと一緒だったら、いい夢が見れるかもしれないって思ったの」
P「……はい?」
杏「だから、プロデューサーと一緒だったら」
P「いや、聞こえてるから」
22:
P「杏が俺と一緒に寝るといい夢見れる?」
杏「うん。多分」
P「……気のせいじゃないか?」
杏「確かめてみようよ。本当に杏がいい夢見れるかどうか」
杏「という訳でさ。今日泊めてよ、プロデューサー」
P「……はい?」
杏「プロデューサー、今何時か知ってる?」
P「何時って……おい、もう日が変わって……」
杏「杏さー、門限の時間破っちゃってるんだよね」
P「どうしてそれを早く言わない?」
杏「だって、言ったら確かめられないじゃん」
P「全く……早く準備しろ、送ってくから」
杏「いいよ別に。帰っても帰らなくても、どうせ怒られるんだし」
23:
杏「待っててあげるからさ、早く仕事終わらせなよ」
P「杏」
杏「ほら、帰るの遅くなっちゃうよ」
P「……はぁ」
P「もういい、分かったから」
杏「泊めてくれるの?」
P「……今回だけだからな」
杏「やった!」
杏「……ありがと、プロデューサー」
P「親御さんにどう説明すりゃいいんだよ……全く」
杏「その時はその時だよ」
杏「……大丈夫、まだプロデューサーにはプロデューサーでいてほしいからね」
P「頼むぞ、本当に」
24:
――――
杏「……へー、意外と片付いてるんだね」
P「酷い言い様だな……ほら、ベッド使っていいぞ」
杏「あれ、プロデューサーはどこで寝るの?」
P「どこって、少なくともベッドで一緒には寝れないだろ……」
杏「えー……それじゃ何のために来たのか分からないじゃん」
杏「それにプロデューサーのこと信用してるから、こんなこと言ってるんだよ」
P「杏……」
杏「……ほら。プロデューサーは明日も早いんだし、早く寝ようよ」
杏「杏からは何もしないし、プロデューサーも杏に何もしないって、信じてるから」
P「……何が杏をここまで突き動かすんだ」
杏「いい夢のためだよ」
杏「……たぶん」
25:
パチッ
杏「……おやすみ、プロデューサー」
P「ああ。おやすみ」
杏「……」
杏「ん……」
杏「ねぇ、プロデューサー」
P「どうした」
杏「あのさ……手、握っていい?」
P「……好きにしろ。ほら」
杏「えへへ……ありがと」
26:
杏「プロデューサーの手、あったかいね」
P「そうか?」
杏「うん……なんか、落ち着く」
P「そりゃどうも」
P「……いい夢見ろよ、杏」
杏「うん。プロデューサーこそ、いい夢見なよ」
杏「それじゃ……おやすみなさい、プロデューサー」
27:
――――
杏「……んっ」パチッ
杏「あれ……そっか、プロデューサーの家だっけ……」
杏「……ふふ」
杏「ねぇ、プロデュー……」
杏「あれ……?」キョロキョロ
杏「……プロデューサー?」
P「どうした、杏?」
杏「わっ!?」
杏「あ、えっと……おはよう、プロデューサー?」
P「おはよう、杏」
杏「……いなくなったかと思ったんだけど」
P「起きるのが遅いだけだぞ……ほら、飯食うか」
杏「……うん」
28:
杏「……ねぇ、プロデューサー」
P「どうした?」
杏「……杏さ、今日はいい夢見たよ」
P「……良かったな」
杏「うん」
P「どんな夢だったんだ?」
杏「えっとね……」ジーッ
P「……?」
杏「プロデューサーがね、ずっと甘やかしてくれる夢」
杏「ちゃんと杏のわがまま聞いてくれるんだ」
P「へぇ、どんなわがまま言ったんだ?」
杏「……それは、内緒」
P「そうか」
29:
杏「やっぱり、プロデューサーと一緒だといい夢見れるみたい」
P「そんなまさか」
杏「でも、本当だったもん」
杏「……ねぇ、プロデューサー?」
P「なんだ?」
杏「……いつもとは言わないからさ、また怖い夢見たら……いい?」
P「……」
P「次からは、ちゃんと泊まるって言うんだぞ」
P「……電話、掛かってきてたからな。ちゃんと理由を話して謝ること」
杏「……うん」
30:
杏「ありがと、プロデューサー」
P「俺は何もしてないけどな」
杏「……ううん。そんなこと、ないよ」
P「……はぁ」
P「これは、お互いの夢のためだからな」
杏「……うん」
杏「夢のため、だからね」
31:
終わり
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