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P「貴音がトイレについてきてくれと言い出した」


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1:
―夜の事務所―
P「どうした?貴音?」
貴音「その……お、御手洗いに行くので……」
P「あ、ああ、行って来い」
貴音「あの……」
P「?どうした?」
貴音「……ついてきていただけないでしょうか?」
3:
P「……は?」
貴音「その……御手洗いまで一緒に行っていただけたらと」
P「……えーっと」
貴音「ひ、響が悪いのです!」
P「……何かされたのか?」
貴音「それはもう!誰かから聞いたという怪談話を嬉々として語るのです!」
貴音「わたくし、もう怖くて怖くて……」
5:
P「……止めてくれって言えば良かったじゃない」
貴音「……あのように嬉しそうな響の話を
 遮ることなどわたくしにはできません」
P「あっそう」
貴音「あの……いかがでしょう……?」
P「分かった分かった。ついて行ってやるよ」
貴音「あ、ありがとうございます!」
P「すっごいいい笑顔」
7:
P「じゃ、行こうか」
貴音「あ、あの、あなた様」
P「ん?」
貴音「その……手を、繋いで頂けると、大変ありがたいのですが」
P「……」
10:
貴音「あなた様?」
P「トイレってすぐそこだぞ?」
貴音「ええ」
P「別に、そんなことしなくても」
貴音「……あなた様は、わたくしを見捨てるおつもりですか……?」
P「ああ、泣くな、泣かないでくれ。ほら、手」
貴音「ありがとうございます、あなた様」ぎゅ
12:
P(そんなに強く握らなくていいと思うが)
貴音「あ、あなた様。もう少し強く握り返して下さいませ」
P「お、おう」
P「しかし響も、貴音が苦手なことを知ってるんだから、もう少しこう手心というか」
貴音「わたくしが怖がるので面白いのでしょう」
貴音「一度、亜美や真美にも話したようですが、期待外れの反応だったようです」
P「どんな話なんだ……」
14:
P「さ、着いたぞ。行って来い」
貴音「はい……」
P「……じゃあ俺は戻るから」
貴音「!!」
P「なぜ驚く?」
貴音「あの……わたくしてっきり、扉の前で待っていて頂けるものだとばかり……」
15:
P「いや、でも、お前、恥ずかしいだろ?」
貴音「それはもう」
P「だから戻るよ」
貴音「……」ぎゅ
P「……涙目で見つめないでくれ……」
20:
―トイレ―
P「あー、それでな、俺の学生時代は……」
P(なんでこんな話を)
貴音「あ、あなた様!言葉を途切れさせないでくださいませ」
P「おう、すまんすまん」
P「それでな、生徒会長の……」
22:
貴音「……あ、あの……」
P「どうした?」
貴音「恥ずかしくて……その……」
貴音「……出ません……」
26:
P「じゃあやっぱり俺戻るよ」
貴音「あ、あなた様、見捨てないで!!」
P「大げさだなあ」
P「ふーむ、どうしたものか」
28:
P「よし、じゃあ面白い話でお前をリラックスさせるか」
P「あるとき、アメリカの学校で先生が生徒に質問しました。
 
 『ワシントンが桜の木を切ったことを正直に話したとき、
 彼の父親はすぐに許しました。何故だか分かりますか?』
 そしたら、生徒はこう答えました。
 
 『はーい。ワシントンはまだ斧を持っていたからだと思います』」
P「Hahahaha」
29:
貴音「わしんとん?」
P「……俺が悪かったよ」
P「ふーむ、ではどうしたものか」
貴音「あの、急いでお願いします」
31:
P「よーし、それじゃあこれしかあるまい」
P「俺が小学生の頃、花子さん、というのが流行ってな」
貴音「花子さん?何やらかわいらしい響きですね」
P「ああ」
P「基本的に、花子さんはトイレに住んでるんだ」
貴音「なんと!それは苦労していますね……」
33:
P「そうだな。苦労していると言えば苦労しているんだろう」
P「ただまあ、花子さんがトイレにいると、皆落ち着いて用が足せないだろ?」
P「だから、普段は花子さんは出てこないんだ」
貴音「なるほど、思慮深い人物なのですね」
34:
P「ああ。でな、花子さんを呼び出すには、ちょっと手順が必要でな」
P「トイレのドアを3回たたいて、花子さん、遊びましょ♪」
P「って言う風に歌わなくちゃいけないんだ」
貴音「まあ、他人を呼び出すならば、その程度の礼儀は必要というもの」
35:
P「……」
貴音「それで、花子さんとやらを呼び出すと、どのような遊びを?」
P「頭から食われる」
貴音「は?」
P「頭からバリバリと食われる」
P「あれ?腹からだったかな?」
40:
貴音「あ、あなた様……!」
P「で、食われた人間は、いなかったことになる」
貴音「……え?」
P「存在自体消えてしまうんだそうだ」
P「不思議なもんだな。それで、誰かいなくなっても騒ぎにならないんだ」
P「これが『恐怖の花子さん』の話だ」
44:
貴音「ひ、ひいい……」
P「さて」
貴音「あ、あなた様……?」
P「……」トン
貴音「あなた様!!」
46:
P「……」トン
貴音「や、止めてくださいまし!!」
P「……」トン
P「花子さん♪」
貴音「ひ、ひいい……」チョロロロロロ
50:
P「お、出た出た」
貴音「うう……思えば短い人生でした……」
貴音「さようなら……」
P「っていう、パソコンのゲームがあってな?」
53:
貴音「……?」
P「あー、えっと、今の話は作り話ってことだ」
貴音「あ……」チョロロロロロロ
P「安心した?」
55:
―Pの席に戻ってきました―
貴音「あなた様!!酷すぎます!!」
P「悪かったって。でも、
 ああでもしないと、お前いつまでたってもできなかったろ?」
貴音「それにしても!わたくしがどんなに……どんなに……!」
P「だからごめんって」
60:
貴音「生きた心地がしませんでした!」
P「悪かったよ。この埋め合わせはいつかしよう」
貴音「きっと……ですよ?」
P「ああ、分かった分かった」
62:
―そのちょっと後―
P「さてと、じゃあ、そろそろ帰るか。貴音、送っていくよ」
貴音「ええ」
P「あ、でも、ちょっとトイレに……」
貴音「……」ティン!
貴音「あなた様、わたくしもついて行きます!」
P「え?」
貴音「そして、先ほどの仕返しをするのです!」
66:
P「……」
貴音「そういたしますと、そこに人魂が……ひええ……」
P(自分で話してて怖いのか)
貴音「あ、あなた様?怖かったら悲鳴をあげてもいいのですよ……?」
68:
P「あ、俺、そういうの結構平気なんだよ」
貴音「な、なんという精神力!やはりわたくしはあなた様に見出されて正解でした」
P「……ははは、そりゃどうも」
P「しかし、お前、一人でトイレの外にいてよく平気だな?」
貴音「……あ……」
6

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