漢「うーむ、奴隷を買うかな……」奴隷商人「やすくしとくよ、旦那」back

漢「うーむ、奴隷を買うかな……」奴隷商人「やすくしとくよ、旦那」


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1:
漢「どんな子が揃っているんだ?」
奴隷商人「へい、例えば……この子とかこの子とか……」
漢「……」
ガタンッ
奴隷商人「!!誰だ!」
奴隷「あ、あのっ……!」ガタガタ
漢「……君は?」
奴隷商人「貴様!何を勝手に出歩いているんだ!どうやって牢の鍵をあけた!」
奴隷「あ、あのっ……!お、お腹がすいて……鍵は……外れてて……」ビクビク
奴隷商人「なんだと!?商人見習いのやつまた鍵を……!ほら!さっさと牢屋に戻れ奴隷が!」ビシィッ!
奴隷「ひぃィィ!!!!」バシーンッ
漢「……よせ、彼女も反省している」ガシッ
奴隷商人「し、しかし!」
3:
漢「ならばその女児は俺が買おう、いくらだ」
奴隷商人「えっ……こ、コイツでいいんですか?コイツはエルフと人間の混血、穢れた血を持つ半魔半人ですぜ?」
漢「かまわん……だからそのムチを収めろ。もはや彼女の所有権は俺にある」
奴隷商人「は、はい」
漢「と、言うわけだ……今日から俺がお前の主だ……よろしく頼むぞ」
奴隷「は、はい……ありがとう……ございます……」ガタガタ
奴隷商人「おい!もっと元気良く返事せんか!」ガバッ
漢「商人ッ!」キッ
奴隷商人「は、はいすいません!すいません!」
6:
漢「……」スタスタ
奴隷「……」ハァハァ……
漢「……暑いか」
奴隷「えっ、あっ、えっ?」ビクゥッ!!
漢「奴隷としてあの場にいて、日の下に出たのも久しぶりなんだろう……」
漢「すごい汗だ、呼吸も荒い」
奴隷「め、滅相もございません……!だ、大丈夫です!」
漢「お前は俺の奴隷で、俺が主だ。わかるな?」
奴隷「は、はい……」
漢「高い金を出してお前を買ったんだ、異常があるなら言え、後になってひどくなられても困るんだ。……わかるな?」
奴隷「は、はい……!」ビクビク……
7:
漢「それで辛いのか辛くないのか……どっちなんだ?」
奴隷「そ、の……少しだけ……辛い……です」ビクビク
漢「そうか」グッ
奴隷「へっ!?」フワッ
漢「……俺が抱き抱えて運んでやる。辛いならば寝ていろ」スタスタ
奴隷「で、でもっ……!」
漢「主のいうことが聞けないのか?」
奴隷「は、はい……わかりました……」
9:
漢「……ついたぞ」ストッ
奴隷「は、はいっ!!あ、あのっ!お手を煩わせてしまってすいませんでしたっ!!」
漢「……」キィッ
漢「入れ。窮屈なぼろ屋だがな」
奴隷「は、はい……(ボロ屋っていうほどでもないような……)」オドオド
漢「冷たい茶を用意してくる、座ってろ」
奴隷「そ、そんな!それは私の仕事ですっ……!」ビクビク
漢「黙れ、そんな汗だくの手で調理道具に触れる気か?汗が止むまで動くな」
奴隷「で、でも……」
14:
奴隷「……行っちゃった」
奴隷(なんだか……奴隷商人から聞いてた話と違う……)
奴隷(奴隷として買われたらもっとひどいと思ってたのに……)
奴隷(皆もいつも苦痛に顔を歪めて買われていってたし……)
奴隷「……」
漢「冷たい茶だ。飲め」トンッ
奴隷「は、はいっ……!あ、ありがとうございます……」ゴクゴク
漢「……うまいか?」
奴隷「は、はい……おいしい……です……」
漢「……ハァ……」
奴隷「!?」
漢「嘘をつくな、本当は美味しくないだろ?……顔に書いてある」
奴隷「そ、そんなことはないですっ!た、ただ私の舌がおかしいんです……!」
漢「おかしくなんかねぇよ。その茶はまずい茶なんだ」
奴隷「へ!?」
16:
漢「汗は止まったか?」
奴隷「……!あ、あれ……?さっきまで汗びっしょりだったのに……?」
漢「その茶は俺が調合した薬茶だ。制汗作用……つまり汗を止める効果がある」
奴隷「す、すごい……」
漢「これが俺の仕事なんだ。薬を調合して色んな薬を製造している」
漢「いずれはお前にも手伝ってもらうからな」
奴隷「は、はい……」
漢「さて……とりあえず汗は止まったんだ。働いてもらうぞ」
漢「この家の中を掃除してもらおうか」
奴隷「は、はいっ……頑張ります!」
漢「しっかり頼むぞ」
18:
奴隷「……よいしょ」セッセッ
奴隷「……よっと」セッセッ
漢「……」
リンリーン
??『旦那ー!薬の注文貰ってきましたぜー!』ドンドン!!
奴隷「!?」ビクッ
漢「ったく……アイツはいつも騒がしいな……」
漢「おら……入れ」ガチャッ
青年「ちわーっす!旦那ー!……って……そっちの子は誰っすか?」
奴隷「あ、あの……!」ビクビク
漢「紹介するぜ。コイツは青年。俺んとこに仕事を持ってきてくる電報替わりの男だ」
青年「ちょっ、その言い方はひどくないっすか旦那ー!」
漢「うるせえ、お前は少し声のボリュームを落とせってんだ。毎度毎度騒がしくてたまらねぇ」
19:
青年「んで、そっちの黒い女の子は?」
漢「奴隷だ。今日買ってきた」
青年「ど、奴隷ー!?嘘!?あの旦那が奴隷!?」
奴隷「あ、あのっ……!よ、よろしくお願いします……!」ビクビク
青年「ロリで黒い肌にツインテール……端正な顔立ちでおまけに奴隷って……ちょっと旦那マニアック過ぎますよ!」
漢「何言ってんだお前は」
青年「えーっ!だって奴隷って言ったらあーんなことやこーんn」ドカッ!!
奴隷「!?」ビクゥッ
漢「それ以上変なこと言ったら顔の原型無くすぞ……大体目的がそれならもっと成熟した奴隷を買うだろうが」
青年「じょ、冗談っすよ旦那ー!あいてて……」
20:
漢「それで、仕事の依頼があるんだろ?どっからだ」
青年「うーっす、これっすね。二丁目の八百屋のじーさんから」
漢「なに?またあの爺さん精力増強剤を買うつもりなのか?」
青年「そうみたいっすね?いや?あのじーさんなかなか元気みたいっすね」
漢「困った爺さんだな……」
漢「おい」
奴隷「は、はい!」ビクゥッ
漢「少し俺は出てくるから、その間に掃除終わらせておけ」
奴隷「わ、わかりました!」ビクビク
青年「んじゃ、またねー奴隷少女ちゃん!」
奴隷「は、はい!」ビクビク
23:
青年「いいんすか?買ってきたばかりの奴隷なんかに家任せちゃって?」
漢「何も問題はないだろ」
青年「いやいやありありですって!もし彼女が金目のもの持って逃げたりしたらコトですよ?」
漢「その時はその時だ、その時になったら考えるよ」
青年「んー、なんていうかなぁ……まぁ旦那なら大丈夫か……」
漢「なんだそりゃ」クク…
24:
奴隷「よいしょ……よいしょ……」セッセッ
奴隷「これは……薬の調合書……?」パサッ
奴隷「……字が読めないから何が書いてあるかわからない……」ウーン…
奴隷「とりあえずまとめて置いておくしかないよね……」セッセッ
ギィッ……
奴隷「!!誰!?」ビクッ
ドア「」ギィッ ギィッ……
奴隷「な、なんだ……風でドアが空いただけか……」
25:
奴隷「あ、あれ……もしかして……」
奴隷「今なら逃げられるんじゃ……?」
奴隷「……」
ドア「」ギィッ ギィッ……
奴隷(ドアは……開いてる……)ドクン……
奴隷(見張ってる人は誰もいない……)ドクン…ドクン……
奴隷「……」ガシッ
ドア「」ギィィィィ…… バタン……
28:
漢「おい爺さん……あんたもいい加減にしないとそのうち腹上死しちまうぞ」
爺「カッカッカッ、さすれば本望よ!おなごと致しながら死ぬる……最高じゃのう!」
漢「バカ野郎、事後処理する相手のことも考えやがれってんだ」
爺「クックックッ、男とはな?女を食うために生まれたようなもんじゃよ!」
青年「あ、そういや旦那が今日奴隷を買ったんすよ」
爺「ほほう?」
32:
爺「奴隷はええぞ?、後のことを考えなくてもええから思う存分出せる……ナニとは言わんがの」
青年「最低っすね」
爺「んで?その奴隷のおなごはどんななんじゃ?いくつじゃ?ムチムチプリンか?」
漢「この色欲ジジイ。買った奴隷はまだ14か15そこらのガキだよ」
青年「そう、ロリで黒肌でツインテール!」
爺「なんとマニアックな……そういう女の趣味だったのか……」
漢「……」ハァ……
35:
漢「ったく付き合ってられん。ほらよ爺さん、薬は確かに届けたからな」
爺「ほほ、確かに!」ウシシ
漢「行くぞ青年」スタスタ
青年「っとと!待ってくださいよ旦那ー!」
漢「あーあと、このスイカ貰っていくからな爺さん」ガシッ
爺「いいけど金払え」
漢「毎回薬調合してやってんだろ、婚くらいただでよこしな」
爺「それはそれ!これはこれじゃ!」
漢「ったく、ケチ臭いな」
爺「うるさいわい!」
38:
青年「……旦那ってスイカ好きでしたっけ?」スタスタ
漢「いや、俺は甘いものはあんまり好きじゃない」スタスタ
青年「え、じゃあなんで……」スタスタ
青年「ああっ!……あの奴隷ちゃんに食わすんですか!」ポンッ!
漢「そう言う事だ」スタスタ
青年「……喜んでくれるといいすね」ニヤニヤ
漢「何ニヤニヤしてんだお前、気色悪い顔だな。……いや元からか」スタスタ
青年「いやん旦那ひどい!」クネクネ
漢「クネクネするな気持ち悪い!」
40:
ガチャッ
漢「帰ったぞ」
青年「ただいまー奴隷ちゃーん……ってあれ?」
シーン……
青年「なんか静かっすね……?」
漢「……」
青年「奴隷ちゃーん?」スタスタ
青年「いない……」
青年「旦那、これもしかして……」
漢「……」
43:
漢「逃げた……か」
青年「あちゃー……」
漢「ま、いいさ別に。この家に取るものなんて何一つない、あるのは薬ぐらいのもんだよ」
青年「旦那……」
漢「……」
ドンガラガラガッシャーン!!
青年「うぉっ!?何事!?」
漢「外から……?」
46:
奴隷「あいたたた……」
青年「あ、奴隷ちゃん!」タタタッ
漢「……どうした、埃だらけだぞ」
奴隷「あ、あの……外の物置整理してたら物が倒れてきちゃって……」ビクビク
青年「うわ、ホントだ」
奴隷「す、すいません!」
漢「気にするな。ここは俺も5年くらいほっといてたからな……」
奴隷「す、すぐに片付けの続きを!」
漢「いや、その必要はない。どうせ使う用事もないしな」
奴隷「で、でも……」オドオド
51:
漢「とにかくその埃っぽいのをどうにかしてこい。風呂なら俺が朝入った時のお湯が残ってるだろうから」
奴隷「は、はい……」バサバサ
奴隷「し、失礼します……!」トテテテ……
漢「やれやれ……」
青年「いやぁ、良かったすね。てっきり逃げたとばかり思いましたよ」
漢「ただの勘違いだったな、さてと、あいつが風呂から上がる前にスイカ切っといてやるか」
青年「うひょ、実は俺スイカが大好物なんすよ。ごちになりまーす!」
漢「やれやれ……」
53:
ザブー……ン……
奴隷「よいしょ……と……」
奴隷「……ふぅ……これだけ暑いとお湯の温度もそんなに変わらないのかな……温かい……」
奴隷「……」
奴隷(あの時……ドアが風で開いた時……私逃げられたのにな……)
奴隷「なんで……逃げなかったんだろ……」
奴隷「わかんない……」チャポッ……
奴隷「……」お湯ブクブクブク……
54:
漢『おい』トントン
奴隷「は、はいっ」バシャッ
漢『とりあえず着替え、俺の長めのシャツとズボン置いとくぞ』
奴隷「あ、ありがとうございます!」
漢『おう、スイカあるからな。早めに上がれよ』スタスタ……
奴隷「は、はいっ」
奴隷「……」
奴隷「……すいか……?」
奴隷(『すいか』って……なんのことだろ……?)
61:
奴隷「あ、あの……今上がりました……ありがとうございました主さま」ペコリ
漢「おう、服のサイズは……って」
青年「ブフォッ!!ちょ、ちょっと!なんて格好させてるんすか旦那!」
漢「俺のせいじゃねぇよ!俺はちゃんとシャツとズボンと渡したはずだぞ!」
奴隷「あ、あの……ズボンは長くて履けなかったので……シャツだけでいいかなって……す、すいません!!」ビクビク
青年「シャツ……1枚……!旦那ァ……おれはなんかイケナイ趣味に目覚めそうです」
漢「やめろ、その趣味は絶対に目覚めさせるな奥底で眠らせろ」
66:
青年「隠すべきところはちゃんと隠れてるけど……逆にそれが……煽情的ないやらs」バキッ
漢「目覚めさせるなって言っただろうが」
奴隷「あ、あの……!」ビクビク
漢「とりあえずお前は下半身にタオル巻いとけ……」
奴隷「は、はいっ……!すいません!すいません!」クルクルッ
青年「はっ……!俺は一体今まで何を……」ガバッ
漢「落ち着け、何も起きてないから。……ほら、スイカ食べろ」
青年「ウヒョーwスイカオイチイ-!」ムシャムシャ
67:
漢「ほら、お前もスイカ食べろ」スッ
奴隷「これは……食べ物何ですか……?」ビクビク
漢「なんだお前、スイカ食べたことがないのか?」
奴隷「は、はい……すいません」
漢「とりあえずまぁ食ってみろ……腹壊すようなモンじゃない」
奴隷「は、はい……!」ビクビク
奴隷「……た、食べます……」ドキドキドキ
ムシャ……
奴隷「!」
69:
奴隷「あ、甘い……!」パァッ
漢「そうか」フッ……
奴隷「……!」ムシャムシャパクパク!!
ガリッ!!
奴隷「あいてっ!?な、何が!?」
漢「あ、種噛んだなお前?」
奴隷「た、種……」
漢「種は食えないからな、食ったら吐き出せ」
奴隷「は、吐き出す……!?」
74:
漢「青年、見本見せてやれ」
青年「へーい、奴隷ちゃんよく見ててな!」
奴隷「は、はい」
青年「まず食って……」ムシャムシャ
青年「種を口の中で噛みながら実から取り出して……」モソモソ
青年「ぷっ!」ププッ カランカラン
奴隷「!?」ビクッ
青年「はい、今見せたとおりにやってみて?」
奴隷「は、はい!」
76:
奴隷「……」ムシャムシャ
奴隷「……」モソモソ
奴隷「ふぅっ!」プシャッ!! ベシャッ
青年「うおっ!?」
奴隷「あ、あれっ!?なんでっ……!?」!?!?
漢「お前噛み砕いた実まで吐き出してるじゃないか……」
青年「あっはっはっはwww大丈夫大丈夫!最初はそれやっちゃうからねwひーww」ケタケタ
奴隷「す、すいません……!」カァー……
81:
青年「さてと、そろそろ俺は帰るかな?」スクッ
漢「おう、じゃあな」
青年「では旦那、奴隷ちゃん、また!」ガチャッ
奴隷「お、お疲れ様です!」ペコリ
漢「……ふぅ、あいつ一人居なくなるだけで随分と静かになるな」
奴隷「……そ、そうですね……」オドオド
漢「……」
漢「お前料理はできるのか?」
奴隷「は、はい!それなりにはできるようにと教育されてますから……!」
88:
漢「ならある物で何か適当に作ってくれ、スイカ食ったら余計腹減っちまってな」
奴隷「は、はい……そ、それではキッチンを借りさせて頂きます」ペコリ
漢「……」
漢「その間にたまってた仕事片付けとくか……」スクッ…
漢(……まだビクビクと俺に怯えているか、無理もない)
漢「やれやれ……俺もなんで奴隷なんて買っちまったかね……」
漢「少し前まではそんなつもりはなかったんだがなぁ……」スタスタ……
91:
奴隷「……」トントントン……
奴隷「……スイカ美味しかったなぁ……甘かった……」トントントン……
奴隷「あんなに甘くて美味しいものってあるんだなぁ……」トントントン……
奴隷「あ、干肉がある……これも使おう」ゴソゴソ
奴隷「ん?」
奴隷「……これはなんだろ……赤くてすこし柔らかい……」フニフニ
奴隷「……これもスイカと同じ色してるし甘いのかな……?」
奴隷「……ちょっとだけ……」カプッ
奴隷「!?」ビクビクビクッ!!
奴隷(あ、甘くないー……!なんかちょっと草臭くて中にドロドロしたの入ってて気持ち悪い……!)ムームー!!
94:
奴隷「んっ……んっ!」ゴクンッ……
奴隷「う……美味しくなかった……」
奴隷「勝手に食べたりするからバチが当たったんだ……う、まだ味が残ってる……」
奴隷「……ここには、みたことない食べ物だらけ……」
奴隷「奴隷商人のところにあったのなんて……本当に少しだけだったんだなぁ……」
奴隷「ととっ……晩御飯の続きしなきゃ!」
96:
奴隷「あ、あのっ主様!晩御飯の準備できました……!」コンコン
ギィッ……
漢「おう、待ってたぞ」
奴隷「お、お待たせして申し訳ございません!」
漢「いや、気にするな」
奴隷「ど、どうぞ……変かもしれないですけど……」スッ
漢「ん……俺が作るのよりかは幾分もうまそうだ。いただきます」
奴隷「……ど、どうぞ……!」ドキドキ……ビクビク……
98:
漢「……」モグモグ……
奴隷「ど、どうでしょうか……?」ビクビク……オドオド……
漢「……うん……なんというか……普通だ」モグモグ……
奴隷「ふ、普通……?とは?」
漢「ん、いや、なんというか……」
漢「まずいというわけでもないが格段にうまいというわけでもない」
漢「なんというか普通レベルのうまさだ」モグモグ……
奴隷「お、お口に合いませんでしたか……?」
漢「いや、普通にうまいぞ」モグモグ
100:
漢「お前もそこに腰おろして飯食べろ」モグモグ
奴隷「わ、私はさっきのスイカでお腹いっぱいですから……!」
漢「あんなのが腹の足しになるか、嘘をつくな」
奴隷「い、いえ本当n」グゥゥゥ~……
漢「……」
奴隷「……」
漢「……食べろよ」
奴隷「はい……すいません……」カァァ……
102:
漢「ふぅ……腹一杯だ」カラン……
奴隷「お、お皿洗いますね……!」カチャカチャ
漢「ああ、頼んだぞ」
漢「それが済んだら、寝るから寝室にこい」
奴隷「!!」ビクッ!!
漢「……?どうした」
奴隷「い、いえ……大丈夫です……!」ビクビク
漢「そうか……?」スタスタ
ガチャッ バタン
奴隷「し……寝室……」バックンバックンバックン…
奴隷「やっぱり……夜は……」バックンバックンバックン…
奴隷「怖い……でも……行かなきゃ……うう……やだよぉ……!」バックンバックンバックン……
105:
奴隷「これも……奴隷の仕事……」
奴隷「奴隷商人の言う通りだった……やっぱり女の奴隷を買う人はそういう目的だって……」ビクビク……
漢「……おい」ヌッ
奴隷「ひ、ひぃっ!?」ドキィッ!!
漢「遅いぞ、コッチは早く寝たいんだからな……」
奴隷「は、はい!すいません!すいません!」ビクビク!!
漢「ほら、皿洗いも終わってんだしさっさと行くぞ……」グイッ
奴隷「!!」グイッ
107:
ガチャッ……バタン……
漢「ほら、ベッドの中入れ……」ポンポン
奴隷「は……はい……!」ギシッ……
漢「よいしょ……と……」バサッ
漢「灯りを消してっと……」フッ
奴隷「あ、あの……」ビクビク
漢「なんだ、トイレか?」
奴隷「わ、私……頑張りますから……!」ビクビク
漢「ん、ああ?」
漢「?」
109:
奴隷「は、初めてだし、そういう教育は受けてないので拙いかもしれませんが……!」ビクビク
漢「なんかわからんがさっさと寝るぞ……眠たくて適わん」
奴隷「!」ビクッ……
奴隷「そ、それでは失礼します……!」ガッ
漢「ちょっと待てこら」ガシッ
奴隷「……へ?」ビクッ
漢「なんで俺のズボンに手をかける?というかお前今脱がそうとしなかったか」
113:
奴隷「で、ですが脱がなければその……できないじゃ……ないですか……」ビクビク
漢「だから何をしようとしてるんだお前は」
奴隷「え……でも……寝るって……」ビクビク
漢「はぁ……頭痛くなってきた……」
漢「寝るってのは純粋にそのままの意味だマセガキ……」
奴隷「え、ええっ……そうなんですか……!?」
漢「ったく……どおりでなんかおかしいと思ったぜ……」
奴隷「す、すいませんてっきりそういうことかと!!」アワアワ
115:
漢「この家にはひとつしかベッドが無いんだ」
奴隷「そ、それなら私は床に寝ますから!」
漢「アホか、風邪ひかれても困るんだよ大人しく寝てろ」
奴隷「で、でも!」
漢「……だったら俺が床に寝るか」ガバッ
奴隷「そ、そんな!それはダメです!」
漢「だったらおとなしく寝ろ」ギロッ
奴隷「は、はい……」ビクビク
122:
漢「明日は朝から薬のことについて教えるからな……しっかり寝ろよ」
奴隷「は、はい」
漢「……」
漢「…………グゥ……」zzz
奴隷「は、はやい……もう寝ちゃった」
奴隷「……」
奴隷「……昨日までの生活からだと……嘘みたいな生活だな……」
奴隷「ベッドも……ふかふかで……ご飯も……いっぱい……」ウトウト……
奴隷「……クゥ……」zzz…
漢「……グゥ……」zzz……
126:
ーーー翌日
奴隷「……はっ!」ガバッ!!
奴隷「ど、どうしよう……!外明るい……!寝すぎちゃった!!」
奴隷「主様は……!?」バッ
奴隷「い、いない……!ど、どうしよう……!」オロオロ
奴隷「と、とにかく直ぐに起きてから主様を探さないと……!!」
127:
ドタドタ
奴隷「す、すいません……!寝坊をーーー」
漢「……その話は断ったハズだぜ、兵士さんよ」
兵士「これは王からの依頼だ。それを断る気か」
漢「悪いね、こちとら王だのなんだのに興味はないんだ……それに依頼なら青年を通しな」
兵士「貴様……!」
奴隷「あ、主様……そちらの方は……?」
兵士「……ふん、貴様も一丁前に奴隷を買ったのか、漢」
漢「……お前はあっちに言ってな、今話をしてるんだ」
奴隷「は、はい……」
131:
漢「……」
兵士「しかしあのメスガキの奴隷……あの黒い肌に尖った耳……噂に聞くエルフと人間の間に生まれるという穢れた血の半魔半人か……」
漢「……それがどうしたってんだ?」
兵士「いや、べつになんでもないさ……ただあんな生物の失敗作を買うとは変わり者もいた者だと思ってな」クク
漢「……」
兵士「……とにかく、この仕事はこの国の発展と国民の為の依頼だ。貴様は黙って首を縦に振ればいい」
漢「……国の発展と国民の為?違うだろ?他国を破滅させ、お前達の汚い腹を満たす為の依頼だ」ニヤッ
兵士「貴様……覚えていろ……!」ガチャッ バタン
漢「……」グシグシ……
漢「はぁ……やれやれ」
135:
奴隷「あ、主様……先程の方は……?」
漢「さっきのは……言ってみれば蟻だよ」
奴隷「蟻……?」
漢「……細かいことは気にするな。それよりも今日は薬のことを教えるんだったな」
奴隷「は、はい」
漢「俺の仕事部屋までついてこい」スタスタ
奴隷「は、はい!今すぐ!」
137:
ガチャッ
漢「入りな」
奴隷「お、お邪魔します……」スタスタ……
奴隷「あれ……なんかいろんな匂いがする……」
漢「いい香りだろう。今いろいろと香料を作ってるんだ」
奴隷「香料……」
漢「薬はよく聞くことも大事だが飲みやすさも大事だ。色んな成分を混ぜると時折ひどい匂いになることもある」
漢「その時にこの香料を使って少しでも飲みやすくできないかと思ってな」
奴隷「なるほど……」
138:
漢「とりあえず一番作るのが楽な薬から教えてやる……そこの瓶の『整腸作用成分』って書いてあるやつをくれ」
奴隷「え、えと……」ビクビク
奴隷「あ、あ……」ビクビク
漢「……?どうかしたのか?」
奴隷「その……すいません!」
漢「なんだ、どうしたんだ?」
奴隷「その……私……字が読めないんです……」ビクビク
141:
漢「……」
漢「そうか……そりゃそうだよな」
漢「やれやれ困っちまったな。まずはそこからか」
奴隷「す、すいません!すいません!」
漢「気にするな。悪いのはお前じゃない」
漢「まずは字の読み書きから教えないとな……」
奴隷「すいません……!」
143:
ーーーーそして、夕方
漢「っと……とりあえず『あいうえお』は大体わかってきたか?」
奴隷「は、はい……まだちゃんとかけない字もだいぶありますけど……」
漢「始めてでこんだけできれば御の字だ。急いでも仕方が無いしな」
漢「っと、そろそろ夕食の準備してもらってもいいよな?」
奴隷「は、はい!一日中ずっとこんなことに付き合わせて本当にすいません!」
漢「だから気にするな……って言っても無理か。とにかく晩飯頼んだ。腹が減ってはなんとやらだからな」
奴隷「は、はい!」
148:
奴隷「あっ……」
漢「ん?どうかしたか?」
奴隷「そ、その……食材が……」
漢「……こいつは傷んじまってるな……これもか……」
漢「買い置きの食材がほとんどダメになっちまってる……夏を舐めすぎたか」
漢「仕方ない、買いに行くか」スクッ
奴隷「あ!わ、私が行きます!」
漢「……字も読めないのに買い物できるのか」
奴隷「う……」
154:
漢「……そんなら一緒に行くか、勉強ついでに買い物の仕方も覚えてもらおう」
奴隷「す、すいません……」オドオド
漢「次からは一人で行かせる。キチンと今回でやり方を覚えろよ?」
奴隷「は、はい!」
漢「……」
漢(案外奴隷って言うのも手がかかるな……いや、そういうわけじゃないのか?)
漢「まぁ、どうでもいいか」
奴隷「?」
157:
ーーー市場
爺「お、なんじゃい漢。またタカリにでも来たか」
漢「バカ野郎買い物だよ。いつ俺が爺さんにタカった」
爺「スイカ」
漢「聞こえねぇな」
奴隷「あ、あの……」ヒョコ
爺「む、そこのお嬢ちゃんは……例の奴隷か?」
漢「……ああ」
奴隷「ど、どうも……」
160:
爺「ほほう……ほほ……ほほう」ジロジロスンスン
奴隷「あ、あの……?」ビクビク
爺「……ええのう……黒い肌に白は映えるじゃろうのう」
奴隷「え……?」
爺「黒髪も綺麗じゃし肌とのコントラストもたまらん……肌もピチピチ……水も水じゃない色んな液体も弾きそうじゃ」
漢「爺さん、そこまでだ」
爺「漢、頼みがあr」
漢「却下だ」
爺「まだなんも言ってないじゃろ!」
165:
漢「どうせくだらないことを言い出すんだろ?」
爺「何を失礼な!ただ一発でいいからその子とヤr……むぐっ!」ガシッ
奴隷「?」
漢「冥土に送られたいのか爺さん」ミシミシ
爺「ぷ、ぷはっ!……じょ、冗談じゃよ……ったく、年寄り相手に暴力を振るいおって……」
漢「とりあえず不快にされたから慰謝料としてナスとトマトとカボチャは貰っていくぞ」
爺「やはりタカリじゃないか!」
173:
奴隷「そ、その赤いやつは……トマトと言うんですか……?」ビクビク
漢「おう、そうだが……どうした?」
奴隷「い、いえ……なにも……」
漢「……」
漢「もしかして……トマト嫌いなのか?」ピーン
奴隷「い、いえ……」オドオド
漢「……まぁ確かにトマトは青臭いしな」
奴隷「そ、そうなんですよ!すごく草みたいな匂いがしてそれでなんか中身が気持ち悪くって……!」
漢「やっぱり嫌いなんじゃないか」
奴隷「」
181:
奴隷「だ、だって……」オドオド
漢「まぁ俺もガキの頃はトマト苦手だったクチだからわかるけどな」
奴隷「そうなんですか……?」
漢「今は好物だ」
奴隷「そうなんですな……」シュン……
漢「……」
漢「ケチャップ買って帰るか……あと卵も」スタスタ……
奴隷「あ、まってください!」スタスタ……
187:
ーーー
ガチャッ バタン
漢「……ちょっとそこで待ってろ、今からちょっとしたもん作るから」ゴソゴソ
奴隷「え、ええ!?それは私が!」
漢「いいから待ってな……これは命令だ」
奴隷「は、はい……」
漢「それでいい、おとなしくしてろよ」
漢「……さてと、久しぶりに作るとするか」ガサゴソ
191:
ーーー
漢「ほらよ、食べな」ストン
奴隷「……あの……これはいったい……?」
漢「見てわかんねぇのか……ってそりゃ知ってるわけねぇか……」
漢「これはな、オムライスって料理だ」
奴隷「おむらいす……」
漢「とにかく食ってみな、ほらよ」
奴隷「い、いただきます……」モグモグ……
奴隷「……美味しい……!」
漢「だろ?」
199:
奴隷「この赤いのが凄く美味しいです……!」
漢「……それな、トマトケチャップって言うヤツなんだ」
奴隷「トマト……けちゃっぷ……って……トマトって……」
奴隷「これトマトなんですか……!?」
漢「ああ、まぁそのままじゃないけどな」
漢「トマトを元に作られたソースだ、トマトも手を加えればこんなに食べやすくなるんだ」
奴隷「そうなんだ……!」パァァ…
209:
漢「さて……と、俺も食べるか」カチャ
奴隷「あ、あの……すいません!先に食べるようなことを……!」
漢「いや、食べさせたのは俺だしな」クク……
奴隷「でも不思議です……あのトマトがこんなふうになるなんて……」
漢「……ある意味こういう加工品ってのは根底をたどれば同じだ」モグモグ
奴隷「え?」
漢「俺が作る薬も、このトマトケチャップもな、根底にあるのは『既存のものを合わせてより良いものを作り出す』って根っこのとこは同じなんだよ」モグモグ
奴隷「……よくわからないです……すいません……」シュン……
漢「ま、今はわからなくてもいずれわかるさ」モグモグ
212:
カチャカチャカチャ……ザーッ
奴隷「『きぞんのものを合わせてより良いものを作り出す』……か……」カチャカチャ
奴隷「言葉が難しくてやっぱりよくわからない……『きぞん』ってどう言う意味なんだろう……」ザーッ
奴隷「……うーん……」キュッ……
奴隷「主様もそのうちわかるって言ってたし……今はいいや……」
奴隷「今日はもう眠ろう……ふぁぁ……」スタスタ……
218:
ーーー三日後
チュンチュン……チチチ……
奴隷「ふぁぁ……朝だ……」ムクリ
奴隷「主様は……」
漢「……グゥ……」zzz
奴隷「まだ寝てる……今のうちに朝食を作っておかなきゃ」イソイソ
奴隷「主様のおかげで昨日までの三日間で結構字もかけるようになってきたし……今日は一人で買い物に行こうかな……」
奴隷「よいしょっと……」
漢「……待て」グイッ……
奴隷「うわっ!?」グイッ!!
221:
奴隷「あ、主様!?」
漢「……グゥ……」zzz…
奴隷「寝てる……よね……?寝言だったのかな……」
奴隷「……って、それよりもどうしよう。腕掴まれちゃった……」
奴隷「ど、どうにかして起こさないように手を解かないと……」
漢「…………い……な……」ボソッ
奴隷「……寝言……?何か言ってる……」
漢「……いくな……」ボソッ……
奴隷「……?」
225:
漢「……グゥ……」zzz…
スルリ……
奴隷「あ、よかった……手を離してくれた」ホッ
奴隷「でも、さっきの寝言なんだったんだろう……」
奴隷「『いくな』って……言ってたよね……」
奴隷「っと!そんなことより朝ごはん作るんだった!」ドタバタドタバタ
ガチャッ バタン
漢「……グゥ……」zzz
229:
ガチャッ
漢「……寝すぎちまった」スタスタ
奴隷「お、おはようございます主様!朝ごはんの準備できてます!」
漢「ん、おお……ここ数日でお前も結構料理がうまくなったな……なんというか彩り豊かだし」
奴隷「お料理ってなんだか楽しくてついつい……す、すいません」
漢「いや別に謝ることじゃない……というか寧ろありがたいことなんだがな」
漢「さて、と食うか……お前も食えよ」
奴隷「は、はい!」ストン
232:
リンリーン
青年『旦那ー!依頼が来てますぜー!』ドンドン
漢「だからお前はいちいち騒ぐな、静かにこい」ガチャッ
青年「ちわーっす!うひょ、なんかいい匂いしますね!」
奴隷「お、おはようございます青年さん」ペコリ
青年「おはよう奴隷ちゃーん、いやーすごく美味しそうな朝食だねぇ」
奴隷「あ、ありがとうございます」
青年「今日僕ご飯食べてきてなくてねー?」
奴隷「は、はぁ……」
青年「え、えーとだからご飯食べてきてなくてねー?」
奴隷「……?」
青年「」
237:
青年「うんまーい!」モグモグ
漢「……食べたいなら素直に食べたいって言えよめんどくさいやつだな」
青年「いやぁなんか自分からいうのって気が引けるというか?」モグモグ
奴隷「すいません気が回らなくて……」シュン
漢「朝飯時狙ってきたくせに何言ってんだお前は」
青年「へへ、ばれてたんすかw」
漢「ったく……それで?依頼があるんだろ」
青年「あ、はい、これっす」スッ
243:
漢「どれどれ……」ガサガサ
青年「それはとなり街の貴族からの依頼っすね」
漢「……」ガサ……ガサ……
漢「なるほどな……おい」
奴隷「は、はいっ」
漢「俺は今日の昼から明日まで仕事で出かけることになったから、留守を頼んでいいか」
奴隷「は、はい!もちろんです!」
漢「ああ、頼むぞ」
青年「あ、おかわりくださいっす」モグモグ
漢「お前は少しくらい遠慮しろ」
253:
漢「それじゃあ行ってくるからな、留守中は誰が来ても鍵を開けるんじゃないぞ」
奴隷「はい!こころえました!」
青年「んじゃ、旦那かりてくね。またね奴隷ちゃん」
奴隷「はい!いってらっしゃいませです!」ペコリ
ガチャッ バタン……
青年「旦那ー!早くしないと馬車行っちまいますよ!」
漢「わかってる、あまり急かすな」
256:
青年「けど大丈夫っすかね、奴隷ちゃん一人置いていって」
漢「なんだ?また逃げるかもって話か?」
青年「いやいやそれはないっすよ。あの子明らかに旦那になついちゃってますもん。俺が心配してんのは奴隷ちゃんの身の安全っすよ」
青年「国の奴ら、まだ旦那のこと諦めてないんでしょ?あいつら結構手荒いから」
漢「大丈夫だよ。鍵は開けないように言ってるしな」
青年「うーん……あ!馬車ありましたよ旦那!おーい!ここだ!」タタタ!!
漢「おい!急に走るな!」
259:
奴隷「……行っちゃったなー主様……」
奴隷「……とりあえず字の読み書きの復習でもしよう」カキカキ
奴隷「……」カキカキ
奴隷「……」カキカキ
奴隷「……」
奴隷「……主様ー?」
シーン……
奴隷「……いや、居るわけないんだけどね……」
奴隷「続きしよ……」カキカキ…
262:
ヒヒーン!! ガラガラガラガラ……
漢「しかし、この貴族とやら相当な金持ちらしいな」
青年「そりゃもう金持ちも金持ちスーパー金持ちっすよ。なんか王族の親戚らしいっす」
漢「報酬金額もケタ二つ分多くねぇかってくらいだ」
青年「それで何の薬を作ってくれって依頼なんスカ?」
漢「鎮痛剤だそうだ。それも体に合うとびきり効く奴を作ってくれと」
漢「俺としてはあまり鎮痛剤なんてもんは売りたくないけどな……結構危険な物も使うんだ鎮痛剤は」
青年「そうなんすか……でも何に使うんでしょうねそんなもの」
漢「さぁ……それは行きゃわかるだろうな」
ヒヒーン! ガラガラガラガラ……
265:
奴隷「……」カキカキ
奴隷「……あ、そろそろ洗濯しなきゃ」スクッ
ーーー
奴隷「よいしょっと……」ドスン
奴隷「ふぅ、今日もすごく天気がいいな……暑い……」
奴隷「さてと、洗濯板を使って丁寧に洗わないと……」バサッ
奴隷「あ……主様のシャツ、主様の匂いがするかも……」スンスン……
奴隷「……」スンスン……
奴隷「あ、あれっ!?何か私変態っぽい!」
奴隷「あ、洗おう!さっさと洗ってしまおう!」ゴシゴシゴシゴシ!!
269:
奴隷「ふー……全部終わった……」
奴隷「洗濯物……私の洋服もだいぶ増えたな……」
奴隷「……なんだかすごく良くしてもらってるよね……私……」
サァァ……
奴隷「風が気持ちいい……」
奴隷「……」
奴隷「……よしっ!次は掃除掃除!」
271:
ヒヒィーン
運転手「はいよお二人さん、着いたよ」
青年「ふー、やっと着きましたねー」
漢「……」ドヨーン……
青年「だ、大丈夫っすか旦那?」
漢「だ、大丈夫だ……少し馬車酔いしただけだから……」ダラダラ
青年「いや汗ダラダラっすよ」
漢「い、行こう……」スタ……スタ……
青年(大丈夫かな……)
276:
青年「ほら、ここが依頼主の貴族さんの豪邸っすよ」
漢「本当にデカイな、どれだけ金があればこんな豪邸に住めるのかねいやはや」ヨロヨロ……
青年「かっこつけてるけど膝が笑ってるっすよ」
漢「煩い」ヨロヨロ……
青年(なんか歩き方おじいちゃんみたいっすね)
執事「ようこそいらっしゃいました……薬師の漢様ですね?」
漢「アンタは……?」ヨロヨロ
281:
執事「私はこの豪邸の主で在らせられます貴族様専属の執事の一人……漢様をご案内するようにと仰せつかっております」
漢「そうか、俺は薬師の漢。こいつは人力電報をやってるの青年だ」
青年「なんか日に日に紹介がそれっぽくなってるんすけどやめてくださいよ……」
執事「それではお二人ともこちらへ」
ギィィ……
???「なっとらん!!なっとらーん!!」ドカッ!!
女「ひぃぃっ!!」ゲシッ
漢「……!」
285:
執事「あちらにいらっしゃるのが貴族様でございます」
漢「……」
青年「これは何事っすか……?」
貴族「もっと犬のように餌皿から綺麗に飯をたべろ!零すんじゃない!」ドカバキッ!!
女「すいません!おゆるしください!!」ゲシッゲシッ
執事「あれは貴族様なりの奴隷への教育でございます」
青年「教育って……いくらなんでもやりすぎじゃ……」
執事「いえいえそんなことはありません……奴隷とは人ならざる者、時には力によりしつけることも大事なのです」
289:
執事「貴族様、お客人です」
貴族「なに?誰だ」
執事「薬師の方々です」
貴族「そうか、そち達が薬師の……執事、客人に茶と茶菓子を」
執事「かしこまりました」スタスタ……
貴族「それ、そち達椅子に座れ」
青年「い、椅子……?でも机しかないっすけど」
漢「……」
貴族「カカカ!椅子ならそこら中にあるではないか……おい!」バシィンッ
女2「は、はいっ!ど、どうぞお座りください……!」
貴族「よっと」ドスン
女2「ぐっ……え……」グシャッ
292:
貴族「ちっ、この椅子は最悪の座り心地じゃのう……座ることもできんとは……ね!」バシィンッ!!
女2「いぎっ……!!す、すいません……!」
青年「う、オエッ……」
貴族「どうした、そち達も遠慮せずともよいぞ」
青年「い、いや……自分は遠慮するっす……」
漢「……俺も遠慮させてもらう」
貴族「ん?そうかの?なかなかに遠慮深いのう」
執事「お茶とお茶菓子に御座います」コトン
293:
漢「それで、アンタが欲しいと言った鎮痛剤のことだが……」
貴族「ほほ、そうじゃったそうじゃった。重要なのはそこなんじゃ」
漢「それで、何にお使いになるんですかね」
貴族「なに、奴隷共にな」
漢「……どなたかが病で?」
貴族「いやぁ……夜の時に使うんじゃ」
青年「よ、夜?」
貴族「その通り、我はそうなんと言うか、女を痛めつけて興奮するクチでの」
296:
貴族「女を痛めつけて骨を折ってやったり指を落としてやったりするとのう、その光景だけでたまらんのじゃ」
漢「……」
貴族「だけどそうすると馬鹿な女共は泣き叫びよるからセックスどころでなくなってしまう」
青年(そりゃそうだよ……)
貴族「そこで鎮痛剤の出番じゃ!」
貴族「そちに強力な鎮痛剤を作ってもらいそれを与えてから女を痛めつけ犯す!」
貴族「パーフェクトプランじゃないかのう!」
漢「……」
302:
貴族「というわけでそちに頼んだんじゃよ」
漢「……」
貴族「もちろんやってくれるな?」ニカッ
漢「……悪いが、今回の話は無かった事にしてくれ」スクッ
貴族「何っ!?」
漢「気が乗らん。依頼するにしても俺以外の薬師にしてもらいな……薬師なんてゴマンといるんだ」
青年「旦那……」
貴族「わ、我はそちが国一番……いや大陸一番の薬師と聞き依頼したんじゃ!それもあんなにも巨額で!」
漢「……悪いな」スタスタ……
貴族「くっ……それでいいのかの、そちは」
漢「……あ?」
306:
貴族「我が家は由緒正しき王族の親戚ぞ……?」
貴族「そちが今国からの依頼を蹴り王からの心象がよろしくないのは把握しておる」
漢「……何が言いたいんだ」
貴族「つまりじゃ」
貴族「我の一言でそちを『国家反逆者』として処刑台に送ることも可能なんじゃよ」
漢「……上等だ、処刑でもなんでもやってみやがr」青年「ストップ!ストップっす旦那!」ムグッ
漢「ぷはっ……!何しやがる青年!」
307:
貴族「ほほ!そっちの男の方はなかなかに聡明よの!」
貴族「漢……そちは今『大陸一の薬師』であるという理由のみで今までの愚行を許されている」
貴族「まぁ一晩泊まってよーく考えるんじゃな……ほほほほ!!」
貴族「執事よ!彼らに部屋を!」パチンッ
漢「青年……どう言うつもりだ」
青年「お、落ち着いてくださいよ旦那ぁ……危うく殺されるとこでしたよ」
漢「俺はそうなったとしても構わないと言ってるんだ」ギロッ
309:
漢「こんな腐った依頼を受け恥を晒して生きるくらいならいっそ国家反逆者だろうとなんだろうとなってやるよ」
青年「はぁ……確かに俺もあの貴族の言うことには嫌悪感も覚えるし腐ってるって思いますけど……でもそれじゃダメじゃないっすか」
漢「何がダメだというんだ」
青年「……奴隷ちゃん、どうするつもりなんすか?」
漢「……」
青年「奴隷ちゃん旦那がいなくなったら一人っきりっすよ」
漢「それは……」
青年「あの子は身寄りいないんすよ?……きっとまた奴隷市場に逆戻り、今度はどれだけやばい奴に買われるかわかりませんよ」
青年「ここの貴族みたいな奴もたくさんいるんすから」
漢「……」
312:
青年「旦那は感情的になるとすぐ突っ走っちゃうから……まぁそこが旦那のいいとこでもあるんすけど」ハハ……
漢「しかし俺は……」
青年「とにかく、一晩考えましょ、結論はそれからでも遅くないっすから」
漢「……」
執事「漢様、青年様、お部屋へ」
青年「あ、別部屋みたいっすね……それじゃあ」
漢「ああ……」
ギィィ…… バタン……
314:
奴隷「いただきまーす」
モグモグ ムシャムシャ
奴隷「んー、美味しくできてる」ムシャムシャ
奴隷「……ん」ゴクゴク
奴隷「こっちのスープもいい感じ」プハー
奴隷「ご飯も美味しく炊けちゃったなー」モグモグ
奴隷「……」モグモグ
奴隷「……」ムシャムシャ
奴隷「……はぁ……ごちそうさまでした……」カチャン
316:
カチャカチャカチャ ザーッ
奴隷「フンフンフフーン♪」カチャカチャ
奴隷「フフンフンフーン♪」ザーッ
奴隷「……あれ、この曲なんの曲だったっけ……」カチャカチャ
奴隷「……うーん」ザーッ
奴隷「あ、そうだ。よく主様が作業してる時に流してる曲だ……」
奴隷「……」
奴隷「はぁ……もう寝ちゃお……」スタスタ……
319:
ガチャッ バタン……
奴隷「よいしょ……と」ゴソゴソ……
奴隷「ふぅ……」
奴隷「……今日はベッド独り占めだー!」ワサワサワサドシタノワサワサ
奴隷「ベッドの上で跳ねてやるー!」スクッ!!
奴隷「……」
奴隷「それはやめとこう」ゴソゴソ
奴隷「はぁー……」モフモフ
奴隷「……」
321:
奴隷「……」
奴隷「……なんか……物足りない感じがする……」
奴隷「ベッドもスカスカだし……」ポフポフ
奴隷「うー……」
奴隷「主様ー……」ゴロゴロゴロ……
奴隷「……」
奴隷「あーあ……どうしよ」
奴隷「なんだかわかんないけど涙出てきた……」グスッ……ズズッ
326:
奴隷「一人なんてちょっと前までは普通だったのに……」グスッ
奴隷「これは全部主様のせいだな……あの男のせいだ!」ズズッ
奴隷「もう私一人とかダメかもしれないや……」グスッ……
奴隷「ちくしょう!もう寝てやる!」グシグシ
奴隷「ばーかばーか!主様のあほー!」ズズッ
奴隷「……あほ……」
奴隷「……ばか」ズビッ
328:
リーンゴーン…… リーンゴーン……
漢「……アイツのことも考えろ……か」
漢「ったく、青年に諭されることになるとは思いもしなかったな」
漢「はぁ……」
漢「……」
ゴソゴソ……
漢「!?……誰だ!」ガバッ!!
女3「ひ、ひぃっ!すいません!すいません!」
漢「お前は……貴族の奴隷の一人か……何しにきたんだ」
女3「そ、その、漢様の夜のご相手をしろと貴族様から……」
漢「なんだと?」
330:
漢「あの男……どういうつもりなんだ」
女3「あ、あの……それで私はどうすれば……」
漢「……どうもしなくていいから即刻帰れ」
女3「で、ですがそんなことが貴族様に知れたら私は……私は!!」
漢「……はぁ……だったらこのベッドで朝になるまで寝てろ、俺はそこらへんの床に寝るからよ」
女3「そ、そんなことできません!!」
漢(奴隷ってのは全員こうなのか?一々面倒臭い……)
333:
漢「だったら俺も一緒に寝ればいいんだろ……言っとくが一緒のベッドに寝るだけだからな、何もしてくるんじゃねぇぞ」バサッ
女3「は、はい……」ソソクサ
漢「ったく……」
女3「……」
漢「……」
女3「……あ、あの」
漢「……なんだよ」
女3「本当に何もしなくていいんですかね……私」
漢「いいんだよ……さっさと寝ろ」
335:
女3「で、でも……」
漢「いいって言ってんだろ……いい加減にしないと本当に追い出すぞ」
女3「す、すいません……」
漢「……」
女3「……」
漢「……」
女3「う……く……!!」
漢「……」
女3「つッ……!!ぐっ……!!」
漢「……今度はなんだよ!」
女3「い、いえ、お気になさらないで……くだ……うぐっ……!!」
漢「横で苦悶の声あげられてたら誰でも気になるだろうが……どうしたんだよ」
339:
女3「そ、その……昼間貴族様に躾てもらった時に付いた傷が痛みまして……」
漢「……見せろ」
女3「し、しかし……!」
漢「俺は薬師だ、薬つけてやるから早く見せろ……それともこの部屋から追い出されたいのか」
女3「……どうぞ……」ピラッ
漢「……傷口に菌が繁殖している。相当悪化しているぞ」
女3「す、すいません!すいません!」
漢「何を謝ってるんだ……ほら、薬つけてやる」スッ
343:
女3「ひゃっ……!」ビクッ
漢「しみるだろうが我慢しろよ、この傷口つけられた時の痛みに比べりゃ楽なもんだろ」ヌリヌリ
女3「は、はい……」ビクッ……ビクッ……
漢「……」スッ
漢「どうだ、だいぶ楽になったんじゃないか?」
女3「……!すごい効き目……!」スゥッ……
漢「と言っても傷口を消毒して保護して鎮痛成分で痛みを緩和してるだけだ。薬が切れればまた痛むぞ」
女3「い、いえ、充分です!明日の今頃には……もう私はいませんから……」
漢「……どう言う意味だ」
346:
女3「明日は私の番なんです……貴族様の夜の相手をする……」
漢「……」
女3「つまり漢様の作られた鎮痛剤を一番最初に使われ犯されるのは、私なのです」
漢「……」
女3「……すいません……聞きたくない話でしたよね……」
漢「……それで」
女3「?」
漢「……それで明日の今頃にはもういないってどう言う意味なんだ」
352:
女3「貴族様の夜の相手をすると言うことは……貴族様により身体を壊されるという事と同じです」
女3「腕や足の骨は折られ、指は切り落とされ、顔や腹……至る所を殴られるでしょう」
女3「そしてそれを終えたあとの奴隷は、貴族様の私有地にある谷へと落とされるのです」
漢「……何故だ」
女3「足や腕の使えない、介護のいる奴隷なんて……要らないでしょう?」
漢「……」
355:
漢「……」ナデ……
女3「えっ……」ビクッ
漢「……何か変なことでもしたか?」ナデナデ
女3「こ、この手は……一体……?」
漢「……別に……撫でたいから撫でただけだ」ナデナデ
漢「嫌ならやめてやるよ、言え」
女3「い、いえ……嫌じゃ……ないです……」
女3「もっと……お願いします……」ドキドキドキドキ…
漢「……」ナデナデナデ…
361:
女3「……漢様は、奴隷は買っていらっしゃるんですか……?」
漢「……ああ」
女3「……その子は、幸せでしょうね……」
漢「……」
女3「漢様……明日、鎮痛剤作ってください」
漢「……わかってるのか、それはお前が……」
女3「解ってます……だけど漢様が死ねば、その子はきっと悲しみますよ……」
漢「……」
364:
ーーー一方その頃 青年の部屋
青年「グオー……グオー……」zzz
女4「あ、あの……」ユサユサ
青年「グオー……グオー……」zzz
女4「お、起きてくださいませ青年様!」ユサユサ!!
青年「グオオオオオ……グオオオオオ……」ZZZ
女4「ダメだ全然起きやしねぇ……」
371:
ーーー翌日
チュンチュン チチチチ……
漢「……朝か……」ガバッ……
女3「すぅ……すぅ……」zzz
漢「……寝かせておくか……」スッ
青年『キャァァァァァァァァ!?!?』
ドンガラガッシャーン!!
漢「!?」
漢「今の声は青年……!?何があった……!」ダダッ
374:
漢「おい!青年!どうした!」ガチャッ!!
青年「だ、旦那!み、みないでー!」
漢「……」
青年「」←下何も履いてない
青年の青年「ハーイ!!」ビンビン
女4「大人しくしてください!私が朝立ちの処理を致しますから!」グイグイ
漢「……」
漢「まぁ、そのなんだ……邪魔したな」バタン
青年『まって!旦那まってぇ!!俺何もしてないっすよー!朝起きたらこの女がーっ!』
女4『えいっ!』グポッ
青年『あっ』ビュッ
漢「部屋に戻るか……」
377:
チュンチュン チチチチ……
奴隷「ふぁぁ?もう朝だ……」ムクッ
奴隷「主様……は、居ないんだった……」
奴隷「……」ズーン……
奴隷「……」ギシッ
奴隷「沈んでたって仕方ないよね……とりあえず朝ごはん食べてから文字の復習しよう!」ウンウン
奴隷「……はぁ……」
379:
リンリーン
兵士『王の使いの者だ!漢!出てこい!』ドンドンドン!!
奴隷「!?」ビクッ
奴隷「王の使い……って……でも……誰が来ても開けちゃダメ……だから……」ビクビク
兵士『いるのはわかってるんだぞ漢!!出てこい!!』ドンドンドンドンドンドン!!
奴隷「……」ビクビク……
兵士『あくまで居留守を使うんだな?……いいだろう、お前ら!やれ!』
兵士2兵士3「ヘイッ!」
ドォォォンッ ドォォォンッ ドォォォンッ!!
奴隷「なにっ!?なになになにっ!?!?なにしてるの!?」ガタガタガタ!!
384:
ドカァァァァンッ!! ドカァァァァンッ!!
奴隷「やだやだやだやだ……怖い!怖いよ主様……!!」ガタガタガタビクビクビク……
バキィッ!ドォォォンッ!!
兵士2『隊長!ドアを破りました!』
兵士『ご苦労だったな……さて……出てこい漢!!さもなければ強制的に全部屋を取り調べるぞ!!』
奴隷「や、やだ!ドア壊して無理やり入ってきた……!か、隠れなきゃ……隠れなきゃっ!!」ドタバタドタバタ
兵士『お前ら!隅から隅まで探せ!邪魔な物は壊してかまわん!!但し薬類は壊すんじゃないぞ!我々の計画が破綻する!』
兵士2『はいっ!』
兵士3『おらぁ!出てこい漢!!』ドカバキ!
389:
奴隷「どんどん……近づいてくる……!やだよぉこわいよ助けて主様……!」ガタガタガタガタ
兵士『次はこの部屋だ!ドアをぶち破れ!!』
兵士2兵士3『どりゃぁぁぁっ!』ドォォォンッ!! ドォォォンッ!!
奴隷「もうやだよぉ……!!」グスッ……ガタガタガタガタ……
兵士2兵士3『でぃやぁぁぁぁ!!!』
ドォォォンッ!!!!バキィッ!!!ガランガラン!!
奴隷「!!!!!」ガタガタガタガタ!!
392:
兵士「……この部屋にも居ないのか?もうこれで全部屋だぞ……」ツカツカ……
兵士3「あの野郎どこに雲隠れしやがった……!」
兵士2「いませんね……」
奴隷(はやく……早くどこかに行って……!!)ガタガタガタガタ!!
兵士「……」キョロキョロ……
兵士「チッ……引き上げるぞ!」ツカツカツカ……
兵士2「はいっ!」ツカツカ……
兵士3「……」キョロキョロ……
兵士3「ん?洗濯物の山から大量の黒い糸が……いやあれは……髪の毛……?」
奴隷「!!」ビクッ!!
397:
奴隷(み、見つかった……見つかった……見つかった見つかった見つかった見つかった見つかった見つかった見つかった見つかった見つかった!!!!)ドックンドックンドックンドックン!!
兵士3「……」スッ
奴隷(やだ!やだやだやだ!やめて……やめて!!)ドックンドックンドックンドックン!!
兵士3「……」グッ
奴隷「!!!!!!!」グッ
兵士「オイ!何をやってる!!早くいくぞ!!」
兵士3「へ、へいっ!!」パッ!!
兵士2「はやくしろノロマ!」
兵士3「う、うるせぇ!」ドタドタドタ!!
401:
奴隷「……」モソッ
奴隷「行った……の……?」ドックンドックンドックンドックン……
奴隷「う……うくっ……!」ウルウルッ……
奴隷「うう……うぐっ……ひぐっ……!!」ポロ……
奴隷「怖がった……怖がっだよぉぉ……!!ひぐっ……!!」ボロボロボロ……
奴隷「もう一人はやだよぉ……早く帰ってきてよあるじさまぁぁぁ……うう……!」ヒグヒグ……
406:
カチャカチャカチャ……
貴族「どうじゃ?執事の飯はうまいじゃろ?」クチャクチャクチャ
漢「……ああ」モクモグ……
青年「……モウボクァダメダ……アヒヒヒ……」
貴族「青年殿は一体どうしたんじゃ?なにやら様子がおかしいようじゃが」
青年「ア、ダイジョブス……キニシナイデクダサイネ……」
漢「……」モグモグ
408:
女「ハグハグハグハグ!!」ムシャムシャ
貴族「ほっほっほっ!やはり奴隷には床に皿を置きそれを食べさせるに限る!まるで犬っころじゃ!」
女「ハグハグハグハグ!!あっ……!」ポロッ
貴族「……」イラッ
貴族「貴様、また皿から餌をこぼしたのか」
女「す、すいません!!ごめんなさい!ごめんなさいっ!!」
貴族「黙れ!!犬の真似もできぬのかグズめ!!」ドカバキボコ!!
女「ゆ、ゆるじでっ……ゆるじでぐだざいっ……!!!」バキボコバキ
412:
漢「……奴隷への『躾』とやらはそこらへんにして、そろそろ本題と行かないか、貴族さんよ」
貴族「ほほっ?そうかそうか……つまりそちの気持ちは固まったということか」
漢「ああ」コクリ
青年「……旦那……」
貴族「して、件の鎮痛剤……勿論答えはイエスじゃろうなぁ?」
漢「……」
漢「答えは……NOだ。失せなクソジジイ」ニヤッ
青年「だ、旦那っ!!なんで!!」ガタッ!
418:
漢「一晩いろいろ考えてみたが、やっぱり俺は自分に嘘まで吐いて生きながらえるってのは性に合わねぇんだ」
漢「だから答えはNO。薬は作らない。わかったなクソジジイ」
青年「そんなっ……!」
貴族「……なるほど……それがそちの答えか……」
貴族「国家反逆者……今この時からお前は国家反逆者だ!!」
青年「旦那っ!!どうして……!奴隷ちゃんのことは考えたんすか!?」
青年「あの子は……あの子はあんたが居なくなれば一人ぼっちに……!!」
漢「……一人ぼっちなんてさせねぇよ……二度とな」
青年「じゃあなんで!!」
424:
漢「だから、俺は鬼畜趣味のクソジジイを殺すことにしたのさ……」
貴族「な!貴様!なにを……っ!?」ガクッ
青年「!」
貴族「これ……は……!?毒薬か……!?まさか……食事に混ぜて……!?」グラッ……グラッ……!!
漢「……安心しろ、毒薬じゃないただの睡眠薬だ。毒薬なんかで殺せば犯人が俺って即バレするだろ?」
漢「……殺すのは、アンタが夢の中に落ちた後さ」
貴族「き……さま……!!愚かな……薬師……が!!」ガクッ
430:
青年「旦那……本気なんすか……!?」
漢「……冗談でこんなこと言うと思うか?」
青年「でも!こんなことしたって少しすればバレて旦那は……!」
漢「……少しの間……数日でも誤魔化せるなら御の字だ」
漢「……その間に俺はアイツ一緒にこの国からトンズラをかますんだからな」
青年「旦那……」
漢「よっと……ったくとんだデブジジイだぜ……重いったらありゃしねぇ」ノシッ
青年「……旦n……ッ!」グラッ!!
漢「……じゃあな、青年……」
青年「こ、れは……!旦那……!俺にも睡眠薬を……!?」グラッ!!グラッ!!
漢「……汚れ役は……俺一人でいい。お前はそこでネンネしとけ」スタ……スタ……
青年「だ……んな……っ!……」ガクッ!!
433:
漢「おい、居るんだろ。出てこいよ」
女3「……」スッ……
漢「よう、お前なら知ってるだろ……コイツの私有地の『谷』っていう不法投棄場所をさ」
女3「そこに、貴族様を落とすのね……」
漢「ああ、どうせそこにゃ他にも捨てられた死体がウジャウジャあるらしいしな……木を隠すなら森の中……だろ?」
女3「……どうして……!どうしてそんな無謀なことを……!!鎮痛剤を作って渡せば……!!貴方は……!!」
漢「……」
漢「いいから案内しろ……あんまり時間がねぇんだ……」
440:
ヒュウウウウ……
漢「……ここが、コイツが奴隷を突き落とし捨てた谷か……」
女3「ええ……」
漢「自分が人間を履いて捨てた場所に自分も捨てられるなんて、よくできた笑い話だ」
女3「……」
漢「よっと……」ドシャア……
漢「お前はどこかに行け、近くにいたら共犯ってバレちまうぞ」
女3「ねぇ……今別れたら、もう私達会うことはないんでしょう……?」
漢「そりゃあな……俺は国外逃亡。会うことはないだろうな」
女3「……ねぇ、最後に抱きしめてよ」
444:
漢「はぁ?……いきなり何を言い出してんだ」
女3「良いでしょ……最後くらい……」
漢「あのなぁ、俺は今から人を殺すんだぜ?そんな男に……」女3「いいから!!」
女3「はやく……!」ブワッ……
漢「……なに泣いてんだよ」
女3「はやぐっ!!」ポロポロ
漢「……」ギュウッ……
女3「……」ギュウッ
漢「……これで満足か」
女3「ええ……満足も満足……大満足よ……」
女3「死ぬ覚悟も……ついたわ」ドンッ!!
漢「!!……なっ……!?」ドシャア……!
450:
漢「お前っ……!!」スクッ!!
女3「来ないでっ!!」
漢「!」ビクッ!!
女3「これでいいのよ……貴方は殺人なんてしちゃダメ……コイツは……私が落とすわ」
貴族「……グゥゥゥゥ……」zzz
女3「どうせ私も今日落とされてたのよ……だから結果は同じ」
漢「何をっ……!」
女3「『奴隷の女、主と共に谷底へ心中』……なかなか派手な新聞の見出しになるわね」クスッ
454:
女3「漢……貴方は汚れないで生きて……」
女3「いるんでしょう?貴方を待つ子が」
女3「貴方はその子に、人を殺した手で触れられる?」
漢「それは……!」クッ……
女3「だから……」
漢「…よせっ……やめろっ!」ダッ!
女3「ーーーーーーさよなら」トンッ……
漢「待て……俺は……お前を助けるためにーーー!!!!!」
……グシャッ……
459:
カンカンカンカンカンカンカン!!
新聞屋「報!報ー!!」
ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ
新聞屋「王族の血縁者である隣町の貴族が殺されたぞー!!」カンカンカンカンカンカンカン!!
群衆「どういうことだー」「誰に殺されたんだー!?」ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ
新聞屋「なんと飼ってた奴隷に一緒に私有地の谷底で発見!奴隷の女の復讐って話だ!」
カンカンカンカンカンカンカン!!
ヒヒーン ガラガラガラガラ……
青年「旦那、街に戻って来ましたよ……」
漢「……ああ」ザッ
青年「……もう新聞が出てるみたいですね……」
漢「……」
460:
漢「……」スタスタ……
青年「旦那……その……元気出してください!……ね!」
漢「……」スタスタ……
青年「……」
青年「あ、あれ……だ、旦那っ!!あれ……旦那の家っすよね!?」
漢「……俺の家が一体どうしt…!?」ダダッ……!!
青年「ま、待ってください旦那!!走らないでください!危ないっすよ!!」
463:
ドア「」ギィィィィ……ボキッ……ギィィィィ……
青年「酷い……ドアがめちゃくちゃに壊されてるっす……」ゼェゼェ
漢「おいっ!居るのか!いるんだったら返事しろ!!おいっ!!」ハァハァ
青年「奴隷ちゃーん!無事なんすかー!返事してー!」
ガチャッ……
漢「……いた……のか……」ハァ……ハァ……
奴隷「……あ……るじ……さま……」
奴隷「あるじ……様……主……様ッ……」
奴隷「主様っ……!主様!怖かった……怖かったよぉぉ……!」ボロボロボロボロ……!
漢「……大丈夫……大丈夫だからな……?」ポンポン……
466:
青年「一体誰がこんな酷いことをやりやがったんすか……家中のドアがめちゃくちゃっすよ……部屋も荒らされてる……」
漢「……兵士の奴らがやりやがったんだ」
青年「なっ、仮にも市民を守るための兵が……こんなことをするわけが!」
漢「作業部屋を見てみろよ、綺麗に薬瓶だけは壊さないように荒らしてやがる」
漢「俺が持ってる薬を壊せば損のある奴らの仕業だ……だとしたらあいつらしかいねぇだろ」
青年「ッ……!」
奴隷「うわぁぁぁぁ……主様……主様ぁぁぁ……!」ボロボロボロボロ……
漢「……」ナデナデ……
470:
ーーー
漢「もう大丈夫か……?」
奴隷「……はい……ごめん……なさい主様……!」
漢「あいつらに何かされちゃいないか、怪我はしてないか?」
奴隷「はい……隠れてて……」グスッ……グスッ……
漢「そうか、なら良かった……」ナデナデ……
青年「とりあえず旦那、どうにかした方がいいっすよ。これじゃ寝ることすら出来そうにない」
漢「ああ……」
474:
??「ほっ!?なんじゃなんじゃ、こりゃどういうことじゃ?おーい漢よい。居るのか?」
漢「……爺さん……何しに来たんだ……悪いが今は薬なんて調合する余裕は……」
爺「安心せい。この状態を見ればそんな状況じゃないことなんてジジイでもわかるわい」
爺「……手酷くやられたの。国王の使いか?」
漢「……知ってたのか」
爺「カッカッ……お前が奴らから受けてた毒薬調合の依頼を蹴ってたのは有名じゃ」
477:
青年「ええっ!?そんなバカな!一体どこから情報が漏れたんすか!」
爺「お前さんが毎回酔うと『旦那の武勇伝シリーズ』とか言って言いふらしとったじゃないか」
青年「えっ」
漢「……爺さん、悪いが用事がないなら帰ってくれないか」
爺「用なら今できた。漢、お前たちウチにすまんか?」
漢「……どういうことだ」
爺「額面通りの意味じゃよ。こんな家じゃ眠ることすらできんじゃろ」
482:
爺「薬を作ってもらってるよしみじゃ、格安で住ませてやろう」
青年「金は取るんすね」
爺「そこはキッチリな」
漢「……いいのか……俺たちが住めば恐らく兵士共が……」
爺「構わん、その代わりと言ってはなんじゃが……」
漢「……なんだ」
爺「またあの精力増強剤……作ってもらえんかのぉ?……勿論タダでな!」
ーーー
486:
チュンチュン……チチチチ……
漢「……んあ……ここは……」パチッ……
漢「そうか……昨日からあの爺さんの所に厄介になってるんだったな……」
奴隷「主様……起きたんですね……」ギュッ……
漢「……まだ、手を離したら怖いのか」
奴隷「はい……!また主様が……どこかに行ったらと思うと……!」ウルウル……
漢「……大丈夫だ……俺はここにいるから……」ナデナデ
奴隷「はい……!」ギュウウ
488:
漢「なぁ」
奴隷「はい」
漢「……トイレぐらい手を離してもいいんじゃないのか……手をつないでドア越しに喋るのも変な気分だ」
奴隷「主様がどこかに行ったらと思うと……」ウルウル
漢「はいはいわかったわかった!離さない離さない!!」
奴隷「♪」
漢(なんか……こいつわざとじゃないのかと思えてきた)
490:
爺「おーい、起きとるかー……って」
奴隷「主様ちゃんといますか」
漢「確認しなくても手つないでんだからわかるだろ」
爺「……」
奴隷「音聞かないでくださいね!耳ふさいで!」
漢「無理言うなよ片手使えないのに」
奴隷「うう……///」カァァ……
爺「何プレイじゃ」
495:
爺「おい漢、ちと折りいった話があるから来てくれんか」
漢「ああ」スタスタ
奴隷「折りいった話ってなんでしょう……」トテトテ
爺「いや、奴隷ちゃんはちょっと席を外してくれぬか」
漢「だとよ」
奴隷「いや、でも私は主様の手を離したら死んじゃいますし」
爺「なんじゃその設定。昔そんな設定の漫画ちらっと見たことあるぞ」
奴隷「とにかくダメなんですよ」
爺「……」
500:
爺「漢、耳をかせ」
漢「なんだよ爺さん」スッ
爺「コソコソ……」
漢「いや、でもそれは……」
爺「いいからモノは試しだ、やってみい」
漢「……わかった……」
奴隷「?」
503:
漢「あいたたたたー(棒)」ガバッ
奴隷「あ、主様っ!?どうしたのですか!?」
漢「どうしようースイカ食べないと死んじゃう病が発症しちゃったー(棒)」
奴隷「す、スイカ食べないと死んじゃう病!?」
漢「助けてくれースイカ食べないと俺は死んでしまうー(棒)」
爺「よし!ワシが……はううっ!」ピキーン
漢「ど、どうしたじいさんー(棒)」
爺「スイカを買いに行こうと思ったら足をつって買いに行けないのじゃー(棒)」
漢「そ、そんなー、スイカを食べないと俺は死んでしまうのにー(棒)」
奴隷「待っていてください主様っ!!すぐに私がスイカを探し出して持ってきますーっ!!」ダダダダ……!!
504:
漢「……」
爺「……行ったな」
漢「しかし、さっきまであんなに手を離すと不安がってがたがた震えて居たというのに……嘘みたいだな」
爺「ああいうのは精神の持ちようじゃよ。精神の中に不安という気持ちがいっぱいになってたんじゃ」
爺「その不安いっぱいになっている精神にそれ以上の別の何かをぶつければ簡単に解決するんじゃよ」
爺「つまり奴隷ちゃんは自分ことよりお主のことを大事に思っとるんじゃなぁ……妬けるのう!」
漢「……」
漢「……それで爺さん、話ってなんだ」
507:
爺「隣町の貴族のこと、全部青年から聞いたぞ」
漢「……」
爺「お主は何がなんでもあの子と生きねばならぬのう」
漢「……ああ」
爺「……その女奴隷の命、無駄にさせるんじゃない」
漢「わかってるよ爺さん。そんなのわかってる」
爺「……まだ、あの娘のことを忘れられぬか、漢……もう5年じゃぞ」
漢「……忘れるわけねぇだろ……一日だって忘れたことはねぇよ……」
511:
爺「……奴隷ちゃんは、似ているな」
漢「……!」
爺「あの娘によう似とる……ま、性格は真逆のようじゃがなぁ……」
爺「だからあの子を、奴隷ちゃんを買ったんじゃろ?」
漢「……」
爺「奴隷ちゃんのことどう思っておるんじゃ」
漢「……それは……ただの奴隷だ……」
爺「カッカッ……かように幸せそうな奴隷は他には見たことがないのう」
爺「……奴隷ちゃんはお前のことを慕っているよ、それが異性としてのそれか、兄妹関係のそれかはわからぬがの」
518:
爺「だがもしそれが異性としての恋慕ならば……お前はどうする?」
漢「どうするってどういうことだ爺さん」
爺「そのままの意味じゃよ。彼女を異性としての愛すことができるのか、できないのかという問じゃ」
漢「それは……できない……」
爺「……」
爺「それは、今でもあの娘を愛しているからか?」
漢「……そうだ……」
爺「カッカッカッ!!……調子に乗るでない、若僧」
漢「!」
521:
爺「お前は……自分がすごく大人だとおもっとりゃせんかのう」
漢「……どういうことだ……」
爺「そのまんまの意味じゃよ……本当は自分でもわかってるじゃろ」
漢「俺はっ……!」
爺「お前は大人のつもりでもな、ワシから見ればヒヨっこもヒヨっこ。それこそ青年となんら変わらん」
爺「……無理に大人になろうとするな漢。そうやってるうちはお前はずっと大人ぶった子供のままじゃ……」
漢「……」
爺「お主のあの娘に対する思いはな、愛なんて綺麗な物じゃない。言うなれば『呪い』じゃ」
漢「呪い……?」
524:
爺「罪悪感と、かつての思い出が交わり強固な鎖となりお前を縛り付ける呪い」
爺「……もうええんじゃよ漢。あの娘は……我が娘は十分に愛された」
漢「お、俺は……」
爺「……これ以上の愛は押し売りとみなして即送り返すからな、わかったな?」
漢「……」グッ……
爺「……約束したんじゃろ、その女奴隷と」
爺「もう我が娘との約束をお前は果たした。……次の約束を果たせ」スクッ
ギィィィィ…… バタン……
528:
爺「……やれやれらしくもないことをしてしまったのう……」
爺「まぁ、たまには年寄りっぽいことをしとかんとただの色ボケと思われてしまうからの……カッカッカッ」
奴隷「はぁ!はぁ!」トタタタ!!
爺「ありゃ、奴隷ちゃん。本当にスイカ買ってきたんか」
奴隷「だ、だって!主様が!」ハァハァ
爺「ありゃ嘘じゃ、ご苦労さん」
奴隷「ええ!?ど、どういうことですか!!」
爺「しょうゆうこと。ま、とりあえずはやく漢のところに戻るんじゃな!カッカッカッ!」
奴隷「???」タッタッタッ!!
爺「……我が娘よ……お前もなかなか幸せ者じゃのう……カッカッカッ……」スタスタ
530:
漢「……俺は……」グッ……
ガチャッ
奴隷「主様ー!嘘ってどういうことですかーっ!!」ドタドタ
奴隷「私大急ぎでこんなに大きなスイカ買ってきたんですよ!」
奴隷「しかもこの家一階がお爺さんのやってる八百屋だからそこから持ってくればいいのにずっと遠くの売り場にーーーって……どうしたんですか……主様?」
漢「……」スッ
奴隷「うわっ!」ドサッ
漢「……」ギュッ……
奴隷「あ、あの……主様……?」ドッキドッキドッキ……
漢「……少しだけ……こうさせててくれ……」
奴隷「は、はぃ……!」ドッキドッキドッキドッキドッキドッキ……
535:
ーーー
兵士「漢のやつまだ見つからねぇのか!」ドンッ!
兵士2「す、すいません!!」
兵士3「兵を総動員させて探しているのですが未だに足取り掴めず……!」
兵士「クソッ……何たる事だ……!」
???「……どうしたのですか、皆さんそんなに慌てられて……?」
兵士「こ、これは大臣様……!じ、じつは薬師の漢が雲隠れしてしまって……!」
大臣「ほう……それは困りましたね……彼のつくる毒薬は即効性も抜群で素晴らしい……他国を責めるには十分な武器たり得るものですよ……?」
兵士「は、はい!わかっております」
大臣「ならばすぐにでも探し出し薬を作らせなさい……」
大臣「それが『王の勅命』ですからね……?」
兵士「は、はいっ!!」
538:
大臣「……王よ、体調は如何ですかな……?」
王「ああ、問題はないよ大臣……ところで件の話はどうなった?」
大臣「ええ、王は何も心配せずとも事は順調に進んでおりますゆえ……ご安心を」
王「ああ、大臣……君は本当に頼もしいな」
大臣「ええ……私は王のために存在するのです……」
王「……しかし、隣国があれほど危険な研究をしていたとはな……」
大臣「ええ……隣国の研究が完遂する前に隣国を潰すが吉……それが民のため国のため……」ククク……
王「ああ、よろしく頼むぞ」
541:
ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ
青年「……でね、今の王って言うのが三年前に王位継承したばかりの人らしいんすよ」モグモグ
漢「……そうか」モグモグ
青年「そんな今の王を補佐してる大臣が先代からのお付きの人でね。国の管理ってのは任せっきりらしいんすよ」
漢「所謂『相談役』って名前の『本体』か」モグモグ
青年「実際そんな感じっすよ。あの毒薬も彼発案らしいですし」ゴクゴク
漢「……」
616:
青年「いやぁ、ここの店の中華料理ほんと絶品すよね!」モグモグ
漢「そうだな、今度はあいつも連れてこよう」モグモグ
青年「おんやあ?また奴隷ちゃんの話っすか?」
漢「なんだよ。何かまずいことか?」モグモグ
青年「いえいえ?なんでもねっす」ニヤニヤ
漢「ったく……いつにも増して顔が変態っぽいぞ人間電報」
青年「何言ってんスカこんな絶世の美男子つかまえといて!」
隣の席のおじさん「ぶふっ……!」ジュボッ
漢「おう、大丈夫かオッサン」
隣の席おじさん「いや、そっちの男が笑わせるから食ってたもん吹き出しちまった」
青年「なんで俺は初対面のおっさんにバカにされるんすか……」
620:
ガラガラガラ……
青年「ふぅー食いましたねー」
漢「そうだな……少し食い過ぎた」
青年「……旦那、あの話本当にやるつもりなんすか?」
漢「……ああ本気だ」
青年「……今度は一人だけ汚れるなんてさせませんからね」
漢「……」
青年「それに成功したときに得られるモノを独り占めなんてずるいっすよ!」
漢「何言ってんだ馬鹿」
青年「……ま、情報集めなら任しておいてくださいよ……いいモノ用意してきますから」ニッ
622:
漢「……ここ一週間で随分とさわがしくなっちまったなぁ」コキコキ
青年「そうっすねー」
漢「それもこれもあのガキを奴隷商人から買ってからだ……いわくでもついてたかね」
青年「……」
漢「……だが、悪いことばかりじゃ無かったな……」フッ
漢「……」スッ……
青年「……旦那、タバコ三年前にやめたんじゃなかったでしたっけ」
漢「……アレだよ、景気づけの一服だ」シュッ ボボッ……
漢「……はぁー」スパァァ……
漢「男として、一匹の人間として、でかい花火打ち上げてやるか……」グシグシ……
627:
ーーー
奴隷「主様……それってどういうこと……ですか……?」
漢「どういうことって、言ってのとおりだ」
爺「本気か?相手は王族、しいては国全体じゃぞ」
漢「わかってる。そんなのがわからない俺じゃねぇよ」
奴隷「じゃあ、じゃあどうしてそんな危険なこと!!」
漢「……アイツに、最後の約束をしてきた。一方的にだけどな」
爺「……」
漢「悪いな爺さん、気遣ってくれたアンタには悪いが俺なりのケジメをつける」
漢「……国を盗る」
634:
爺「しかし、どうするんじゃ……まさか戦争を仕掛けるなんて無茶なことを言うんじゃないだろうな」
漢「違う。さすがに兵団相手に戦えるなんて俺は思ってやいない」
漢「今は青年が方々に駆けずり回って材料を集めてんだ……戦うのはそれが全部揃ってからだよ」
奴隷「だ、ダメです主様……!」ギュッ
漢「……」
奴隷「そんなことしたら間違いなく失敗したら殺されます……ダメです!」
漢「……安心しろ、失敗なんかしない。俺は殺されたりなんてしない」
奴隷「どうしてそんなことが言えるんですかっ!!」
漢「……俺は約束は守る男だからな」ニッ……
640:
ーーー就寝時刻
漢「……」
奴隷「……」
漢「……」
奴隷「主様……」モゾ……
漢「……なんだ、まだ寝てなかったのか」
奴隷「お願いです。国盗りなんて無茶なことはやめてください……」ギュウウ……
漢「……」
漢「それは無理だ」
奴隷「どうして……!!」
644:
漢「言っただろ?……約束してきたんだ、アイツと」
漢「この国を正す……俺は辞めるつもりは毛頭ない」
奴隷「……アイツ……とは誰なのですか……」
漢「……あの爺さんの娘で……俺の元恋人だ」
奴隷「元……恋人……?」
漢「……五年前の大戦の時に殺された」
奴隷「!」
漢「……俺の目の前でな」
648:
奴隷「どうして……?」
漢「……『魔女狩り』ってわかるか」
奴隷「魔女狩り……?」
漢「この国では科学が発展した、隣国では魔法が発展した」
漢「その大戦の頃、魔法を使う者は皆この国じゃ重罪人だったんだよ」
奴隷「そんな……」
漢「……そう言う事だ……ある意味俺が国盗りをするのは運命だったんだよ。寧ろ、遅すぎた」
奴隷「……」
650:
奴隷「……主様……」ギュウッ……
漢「……どうした……」
奴隷「……抱いて……ください……」
漢「なっ……いきなり何を言い出すんだ」
奴隷「お願いします……!」ギュウウ……
漢「……無理に決まってるだろ、マセガキが……」コツン
奴隷「ダメです……抱いてください……!」ウルウル……
漢「……何泣いてんだお前」
652:
奴隷「主様……ん、むぅ……」チュッ……ムチュ……
漢「む……ぐっ……!ぷはっ……やめろ!」グッ!
奴隷「お願いします主様……初めてでうまくないかもしれないけど、気持ちよくないかもしれないけど……」
漢「やめろ……」
奴隷「私頑張りますから……主様が気持ちよくなるように精一杯動きますから……!」
漢「やめろ……」
奴隷「だから……だから私を……めちゃくちゃにーーーーーー」
漢「やめろ!!」
奴隷「ッ……!!」
658:
漢「……大声あげてすまない……だが、もう寝ろ」
奴隷「ーーーどうしてですか……」
漢「……」
奴隷「どうしてしてくれないんですか……?」
奴隷「私が奴隷だからですか……?」
漢「違う」
奴隷「私がまだ子供にしか思えないからですか……?」
漢「違う」
奴隷「私が、半魔半人の穢れた血だから……」
漢「違う」
漢「……そういうのじゃない……そういう事じゃないんだ」ギュッ……
660:
奴隷「じゃあ……どうして……私が……私が嫌いだからですか……?」ブワッ……
漢「……そんなわけないだろう」チュッ……
奴隷「ん、む……!」ムチュ……チュッ……
漢「ふっ……んっ……」ヌルッ……
奴隷「はっあ……舌が……ん……」チュプッ……
漢「…………はぁっ……」チュルッ……
プハッ……
奴隷「ある……じ、様……」ハァハァ……
漢「……好きだ」ギュッ
奴隷「わ、たしも……です……!」ギュッ
漢「……だから……もう寝ろ……これ以上はナシだ……」スッ……
奴隷「あっ……主様……」
663:
奴隷「主様……」ギュウウ……
漢「……俺はまだ、女を抱く気分にはならない。まだ、アイツとのケジメをつけてねえからな」
奴隷「……」ギュウウ……
漢「だから、この国盗りが終わって、それでもお前が俺を好きだったら……いくらでも答えてやる……」
奴隷「……ある、じ様……」
漢「……寝ろ、マセガキ」バフッ……
奴隷「……はい……」
668:
チュンチュン……チチチチ……
漢「くぁ……もう朝か……」ムクリ……
奴隷「お、おはようございます……主様……!」オドオド
漢「ん、ああ……朝食はできてるか」
奴隷「は、はい……こちらに!」ビクビク
漢「……どうした。何か落ち着きがないぞお前」
奴隷「そっ!……そんなことは!」ビクビク
漢(……初めて我が家に買われてきた時を彷彿とさせる距離を感じる)
672:
漢「……うん、うまい」モグモグ
奴隷「そ、それは良かったです……!」ビクビク
漢「……」モグモグ
奴隷「……」チラチラ……カァァ……
漢「……なんだ、どうした?」
奴隷「そ、その……唇……」カァァ……
漢「……?……ボディビルがどうしたんだ」
奴隷「ち、違います!ボディビルじゃなくて……」ハッ!
奴隷「な、なんでもないです早く食べてください……!」カァァ……
漢「……訳がわからん」モグモグ
678:
ドンドンドン
青年『旦那ー!俺っすー!情報集めてきたっすよー』
漢「……」モグモグ
ドンドンドン
青年『旦那ー!あけてくださいよー!』
漢「……」モグモグ
奴隷「あ、あの、開けなくていいんですか?」
漢「ほっとけ、どうせまた飯時狙って来やがったんだ。食べ終わるまで外でまたせてやる」
ドンドンドン
青年「旦那ー!寝てるんすかー?」
681:
漢「おう、入れよ」ガチャ
青年「……何分待たせるんすか旦那……おかげで俺お腹が……」グゥゥ……
漢「言っとくけど飯はねぇぞ。もう食った」
青年「えー!ひどいっすひどいっす!!」
漢「それで、情報はどれだけ集まったんだ」
青年「あ、はい。とりあえずこんだけ」ドサッ
684:
漢「……」ガサ……ガサ……
漢「……結構いろんなところで国民もヘイトを溜め込んでるんだな」ガサ……
青年「そうみたいっすね。王位継承されてから税金とかも上がってますし、あとは金持ち達の『娯楽』に関してもこういう情報があるんすよ」スッ
漢「……なんだこいつは……酷いな」ガサ……
漢「奴隷市場なんて四年前と比べて四倍にも膨れあがってるらしいな」
青年「あとは貴金属市場も拡大してて」
青年「あとは軍事市場なんて五倍以上違いますよ」
漢「……」
686:
ーーー
大臣「……まだ男の行方はわからないのですか……?」
兵士「は、はい……探してはいるのですが……!」
大臣「やれやれ、使えない人達だ……今すぐクビにしてもらいたいのでしょうか」
兵士「そ、それだけはご堪忍を!!」
大臣「……ならば有能なところをもっと見せたらどうなんですか……?」グシッ
兵士「うぐっ……!」グシッ……
大臣「……漢の薬を買ってた得意先をあたりなさい……国内に居るとするならそのどこかで部屋を間借りしている可能性が高いでしょう」
兵士「は、はい!!」
688:
大臣「全くもってああいう使えないグズは頭が回らなくて困りますね……」
大臣「いや……頭が回るグズよりはマシですかね……」
大臣「全くもって面倒くさい、あの漢というヤツは……大人しく毒薬を作ってくれればいいものを」
王「……どうした大臣。なにやらカリカリしているようだな」
大臣「いえいえ、お気になさらないでください王……」
王「そうか……だが一人で悩むんじゃないぞ。相談役として俺はお前に頼りきりだからな」
大臣「お気遣い有難う御座います王……しかし私は私……王が気にかけても仕方なき悩みですので……」
王「そうか……」スタスタ……
大臣「ククク……王よ……あなた十分に働いていますよ……『王』という傀儡としてね……ククク……」スタスタ……
728:
兵士「ご老人、隠してもなんの為にもなりませんよ」
爺「お前さんたちは……王の犬か。なんのようじゃね」
兵士「とぼけるな……ここに漢がいることはわかってるんだ」
兵士2「大人しく吐け。匿ってるんだろう?ご老人」
爺「知らんなぁ……漢?誰じゃそりゃ」
兵士「アンタが薬を買ってた男のことだ……知ってんだろ……?」
爺「さぁのう?歳をとると物忘れが多くてかなわんわい、ヒヒッ!」ニカッ
兵士3「ジジイ!てめぇ!」
735:
爺「なんじゃい?こんなジジイを虐めるつもりかの?」
爺「市民のための兵が聞いて呆れるのう?」
兵士3「てめぇ……!」
兵士2「もう我慢ならねぇっ!!爺!!お前の老い先短い命……今ここで終わらせてやるよ!!」ガバッ!!
爺「やぁれやれ……」
爺「やっぱり、アイツのつくる精力増強剤は……効くのう」シュッ……
兵士2「ッ!?」グオッ!!
741:
ビタァァァン!!
兵士2「な、なに……何が起きた……!?」アゼン
爺「カッカッカッ、剣ばかり扱ってきたか。殴りに腰が入っとらんのう」
兵士3「う、うぉおお!!」ガッ!!
爺「ちょいさっと」ヒョイッ
兵士3「ぐあっ!!」ドガシャア……!!
爺「体ばかり立派なハリボテ……我ながら恥ずかしいわい、こんな奴らにこの国が守られているかと思うとな」
兵士「な、何だこのジジイ……!」
爺「カッカッカッ……ただのしがない色ボケ爺じゃよ」
744:
パチパチパチパチ……
大臣「いやはや……流石ですね……」スタスタ……
爺「……何者じゃ、お前は」
兵士「だ、大臣様……!なぜここに!」
大臣「いえいえ、たいしたことではございませんよ……ただここにすまうご老人が、過去の戦の英雄らしいという噂を聞いたもので……」
兵士「英雄……!?」
爺「……なんじゃ若僧。それがワシじゃとでも?」ハテ……
大臣「……惚けても無駄ですよ。その体術、それはかつての戦で数多の戦歴を上げた英雄の体術」
爺「……」
746:
大臣「……無敗とまで言われたその男は、妻の死によって軍場より姿を消したと聞きましたが……本当だったようですね」
爺「……なんの話かのう」スットボケー
大臣「……あなたの部屋、亡くなった奥さんと娘さんの写真が寄り添って置いてあるんですね……フフ、微笑ましい……」
爺「……覗きかの?……あまり趣味の悪いことばかりしてると天罰が下っちまうぞ若僧」
大臣「若僧?……嬉しいですね、そんなに私は若く見えますか……フフフ……」
爺「……用はそれだけかの?なら帰るんじゃな。ワシはお前らに用無いし」ホジホジ
兵士「じ、ジジイ!なめくさりやがって!」
大臣「およしなさい兵士……あなたごときで勝てる相手ではありませんよ……」
750:
大臣「では、ウチの兵士たちが本当に御迷惑をおかけしましたーーー英雄殿」ニヤ
兵士「だ、大臣!」
大臣「はやくその木偶の坊二人を叩き起しなさい……行きますよ?」スタスタ……
兵士「は、はい……!」
爺「……」
大臣「……ああ、言い忘れていたことがありました……」
爺「なんじゃい。年寄りは長い話は覚えられんぞ」
大臣「いえ……貴方もお気の毒な人だと思いましてね……」
大臣「妻を亡くし、娘を亡くし……最後には義理の息子とまで言える人を亡くす事になるかと思うと……なんとも痛まし……」ヒュゴッ!! ズガッ……
兵士「だ、大臣様!!き、貴様!何をする!!」
パラパラ……
爺「……」ズッ……
大臣「何をするんですかご老人……おかげであやうく私の顔が消え去ってしまうところでしたよ……?」パラパラパラ
754:
兵士「レンガの壁に穴が……!」ゴクッ……
爺「……若僧、粗相が過ぎると己が身を滅ぼすことになるぞ」
大臣「貴重な英雄様のお言葉です……覚えておきましょう……」スッ
爺「……」
爺「……その漢とか言うヤツのことはワシは知らんが、おそらくソイツは死なんよ」
大臣「……なぜ、そう思うのですか?」
爺「……そいつがワシとは違う、本物の『漢』だからじゃよ」
爺「妻の死から目を逸らし、人間の生き死にから遠ざかるため軍場から離れたこのワシとは違う……な」スタスタ……
大臣「……」
758:
兵士「大丈夫ですか、大臣様……!」
大臣「ええ……間一髪でかわしましたから……」
大臣「いえ……かわさせられた……とでも言いましょうか……」コキコキ……
兵士2「あれが、軍場の英雄と呼ばれた男……」
大臣「隠居しボケた振りをしても、英雄は英雄でしたねぇ……甘く見ていました……」スタスタ……
兵士「……ですが、また漢の居場所が分からずじまいで……」
大臣「……十中八九あのご老人のところに世話になってるでしょう……やれやれ、大陸最強の用心棒かもしれませんよ……厄介ですねぇ……」スタスタ……
761:
ーーー
漢「おい爺さん、この手一体何したらこんな怪我するんだよ……」
爺「いやぁ、ちぃとばかしハードなプレイをしてしまってのう!カッカッ!」
漢「ったく……本当に年齢考えろってんだよ色ボケ爺め」
漢「おい、消毒薬と塗り薬をくれ」
奴隷「えーっと、消毒薬……がコレで……擦り傷切り傷への塗り薬が……コレ!」
奴隷「どうぞ」サッ
漢「……もう字はマスターだな」カパッ
奴隷「頑張りましたから!」フンス
764:
爺「のうのう奴隷ちゃんや、ワシの手に薬を塗りつけてくれんかのう?」
奴隷「え?別にいいですけど……」スッ ヌリヌリ
爺「ほほっ……細長くて気持ちのええ指じゃ……」
漢「爺さん、セクハラだぞ」
爺「なにを失礼な!言いがかりはよすんじゃ!」
爺「ところで奴隷ちゃん。実はワシほかのところも怪我しとってな……そこにも薬を塗って貰いたいんじゃ」
奴隷「はい、どこですか?」
爺「ほほっ……それは……ここじゃー!」カチャカチャ……ズルッ!!
ドカァァァッ!!
爺「ほちゃっ!?」ゴロゴロ!!
漢「この変態ジジイ!何ズボンを脱ごうとしてやがる!」
767:
爺「怪我人になんて仕打ちをするのじゃ!」
漢「黙れ変態が……!ズボンを穿け!」
奴隷「えっ、えっ……主様!目を手で塞がれたら何も見えません!」オロオロ
漢「いいからそのまま静かにしとけ、お前が見ていいもんじゃねぇから……」
爺「全くひどいのう……痔に薬をつけてもらおうと思っただけじゃのに」
漢「そんなに薬をつけて欲しいなら俺がつけてやるよ鉄の棒で穴の奥までな」
爺「やめて、ジジイそれ死んじゃう」
769:
青年「旦那ー、お邪魔しやーす」ガチャッ
漢「お前はノックぐらいしろよ」
青年「そんなことしてたらまたこの前みたいに放置されるし勘弁っすね」ツカツカ
爺「青年か、どうかしたのかの?」
青年「どもっす、はい旦那、これ最重要資料っすよー。集めんの苦労したんすからね!」スッ
漢「おう」ガサ……
奴隷「これは……なんの資料なんですか主様?」
爺「……これは……税金の使い道の詳細かの」
漢「ああ、こいつを見りゃ一発で金を何に使ってるかわかる」バサッ
772:
青年「まったく、これを作るのに滅茶苦茶手間かかったんすからね!タダ飯ぐらい食わせてもらわないとわりにあわねっすよ!」
爺「逆にそれで割に合うのか、安い男じゃのう」
奴隷「せ、青年さんって本当はすごい人だったんですね……ただのお調子者だと思ってました!」
青年「奴隷ちゃん、さらっと口悪いっすね……」トホホ
漢「こんだけ情報ありゃ十分だろう。新聞屋はなんて?」
青年「飛びついてきましたよ、ま、大スクープですからねぇ」
青年「明日の朝にはこの資料の内容が街中に知れ渡ってるでしょうねぇ」
775:
青年「なんせこの税金。その約四割が不明瞭な理由で使われてますからね。大方私腹を肥やしてんすよ」
爺「そうなればその日の夜にはもう国中……いや、隣国にまで知れ渡るじゃろうの」
漢「ああ、王に対する支持率は壊滅的になるだろう」
青年「そっからが本番っすね」
漢「ああ」
奴隷「どういうことですか……?」
漢「つまりだ、これが知れ渡れば国民は王に不信感を持つ……そうなれば王を討たんとレジスタンスを組んでクーデターを起こす奴が出てくる事になるだろう」
漢「だかそれではダメだ。そうなれば多くの死者が出ることになるだろう」
780:
青年「だからそこで俺達が動くんす」
青年「俺達が動き国王の元へ向かう、そこで全ての話をつける」
奴隷「そんなこと可能なんですか……?」
漢「この税金に関する資料は俺たちが持ってる情報の一部だ。もっと他にもキナ臭い事柄の資料がある」
青年「それを公表すると脅すんすよ」
爺「……そこまで国家が腐ってるとわかれば、隣国達もそこにつけ込み正義を掲げて攻めてくるじゃろうな」
青年「そゆこと!……つまりこのまま王位を返上するか、それとも国ごと滅ぼされるかって二択を迫るんすよ」
奴隷「なるほど……」
785:
ーーー翌日
カーンカーンカーンカーン!!
新聞屋「報!報だよー!」
カーンカーンカーンカーン!!
新聞屋「なんと国王!税金を不明瞭な理由で使用していたらしい!着服してたってウワサがあるぜー!」
カーンカーンカーンカーン!!
ザワザワザワザワ
「こいつは酷いな……」「新王になってから税金増えたと思ったら……こんなことに!」「税金をなんだとおもってるんだ!!」ザワザワザワザワ
カーンカーンカーンカーン!!
788:
兵士「王……!王ーっ!!」ダダダッ!!
王「どうした兵士よ、朝から騒がしいぞ」
兵士「大変です……!こんな新聞が……!」ガサ
王「なんなのだ……?」ガサ……
王「何だこれは……!?私が税金を着服していた……!?」ガタッ!
大臣「……」
王「誰がこのようなことを……!デマだ!こんなもの大嘘だ!」
兵士「ですが王……もう城門の前には多くの不満を持つ国民が押し寄せて……!」
王「なに……!?」
792:
「出てこい泥棒国王ー!」「税金返せー!!」「王位返上しろー!!」ザワザワザワザワ!!
兵士2「落ち着いて!みなさん落ち着いて!」
兵士3「今事実を確認しておりますから!落ち着いて!」
「落ち着いてなんかられるかーっ!王を出せー!王を出せー!」「そうだそうだー!」ザワザワザワザワ!!
ーーー
兵士「クソ……一体誰がこんなことを……!」
王「そんなことはどうでもいい……とにかく国民たちにこの記事がデマだと言う事を説明せねばならん!」スクッ!
大臣「……なりませんよ。王」ガシッ
王「大臣!なぜ止める!」
大臣「冷静にお考えください、王。これは罠です……」
795:
王「罠……だと!?」
大臣「ええ……私にはこのデマの記事を新聞屋に書かせたのは誰か、わかりますよ」
王「そ、それは誰なんだ!」
大臣「恐らくですが……漢の仕業でしょう」
王「漢……!あの薬師か……!」
大臣「ええ、王には言いませんでしたが彼は毒薬精製の依頼を何度も蹴っているのです……」
王「何故だ!これは大義の為の依頼ではないか!なぜ断る!」
大臣「……恐らく、自分の作った毒薬の成分を我々に知られたくなかったのでしょうなぁ……」
大臣「成分を知られれば我々が毒薬を作るようになりそれを売るだろうと、さすれば自分の毒薬が売れなくなる……そう考えたのでしょう」
王「なんと……なんと業の深い男だ……!」
798:
王「ならば、ならばどうすればいい!」
大臣「落ち着いてください王よ……答えは至極簡単……何をせずとも良いのです」
王「な!?そ、それでは何にもならんではないか!」
大臣「……『飛んで火にいる夏の虫』……」ボソッ
王「何……?」
大臣「彼らは必ずこの城に自らやってくるでしょう。王の首を取りにね」
大臣「だから王は何をせずともいいのです……賊の相手は私にお任せください……王に仇なす賊は私が成敗致しますので」
王「大臣……信頼しておるぞ……」
大臣「ええ……」ニコッ
803:
兵士「どうするのですか大臣様……!」スタスタ……
大臣「兵を王の間に全て集めなさい」スタスタ……
兵士「なっ……全てですか……!?」
大臣「ええ、城の中の兵を一匹も余さず王の部屋に集結させなさい、城の警備をしている兵だけでも二百はいるでしょう?」
兵士「で、ですが!そんなことをすれば城の警備はガバガバに……!」
大臣「構いません。王を守ることだけに全力を賭しなさい。いいですね」
兵士「は、はいっ!」
804:
大臣「やれやれ……これは予想外でしたよ」
大臣「あの漢がこんなことをするとはね……」
大臣「クク……ククク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
大臣「ぁぁぁぁあっ!!!」ドンガラガシャーンッ!!
大臣「はぁっ……はぁっ……!!」カラン……カラン……
大臣「そちらがその気なら構いませんよ……」
大臣「私も全力で、あなたを潰すだけです……ククク……」ニヤァァァ……
809:
ーーー
漢「さぁ、行くぞ青年」
青年「うっす!よろしく頼むぜ旦那!」
漢「ああ」
青年「……やっぱりジーさんと奴隷ちゃんは置いてくんすか?」
漢「……向こうは敵意バリバリだ。そんな中に女と老人なんて連れて行けるわけがないだろう」
青年「それはそうっすけど……」
漢「くだらない話してないで行くぞ」
ガチャッ
爺「……カッカッカッ……詰めが甘いのう、漢」ヌッ
漢「ッ!……爺さん……あんたいつから外に」
811:
奴隷「わ、私もいまーす……」ヌッ
漢「なっ……!」
爺「漢よ、このジジイの目を誤魔化そうとはいい度胸じゃな。ワシの目は針の穴は見えんがなかなか目ざといんじゃぞ」
漢「……連れては行かねぇぞ」
奴隷「ど、どうしてですか」
漢「それは……向こうは敵意を向けてくるんだ、そんな奴らのところに歳食ったジジイとガキを連れて行けるわけないだろ」
爺「ほほ、舐めたことを言うのう漢」
漢「何を……!」
爺「お前が一度でも全力のワシに組み手で勝てたことがあったかのう?」
漢「……」
812:
爺「それに、決めたんじゃろ。二度と奴隷ちゃんを一人にはしないとな?」
漢「……」
奴隷「……主様、私は大丈夫ですよ」
漢「……何を根拠にそんなことを言うんだ」
奴隷「……だって、主様も一緒じゃないですか」
漢「……」
奴隷「主様は、私を二度と一人ぼっちにしないって誓ったのでしょう……?」
奴隷「どんなことがあっても、主様が私を守ってくれますもんね?」クス……
漢「……」
814:
青年「……旦那!」
漢「……」
漢「……はぁ……」グシャグシャ……
漢「チッ、どいつもこいつもめんどくさい奴らばっかだよ」
爺「カッカッカッ、余計なお世話じゃの」
漢「おい」
奴隷「はい」
漢「……俺から離れんじゃねぇぞ。クソガキ」
奴隷「……ええ、私はいつでも主様のそばにいます!」ニコッ
漢「……ああ」
818:
ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ
「王やめろーっ!」「謝罪しろ謝罪ー!」「金返せーっ!泥棒野郎ーっ!」
ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ
青年「うわー、人だらけっすね……」
奴隷「これ、城門まで行くのも一苦労しそうですね……」
爺「……フム、ワシに任せろ。道を作ってやろう」ザッ
漢「どうするつもりなんだ?」
爺「ムフフ……こうするんじゃよ!」サワサワッ!!
民女「きゃーっ!?痴漢ー!」
「なんだなんだ!?」「誰かが痴漢したらしいぞー!」「きゃーっ!?」
爺「ほほほほほっ!こっちのお嬢さんもそっちのお嬢さんもイイケツのじゃのう!」モミモミモミモミ!!
民女2「きゃーっ!!」民女3「いやーっ!!」
823:
奴隷「う、うわー……最低ですね……」ドンビキ
青年「で、でも確かに道が開けてるっす!」
漢「あのジジイはホントにどうしようもねぇな……」ウーン……
ワーワー!
民男「そのジジイを捕まえろ!!」
民女「置換しねーっ!!」
爺「カッカッカッ!あまいわい!」シュバッ!モミモミ!!シュバッ!モミモミ!!
民男2「く、くそっ!このじーさん空を舞うように移動しながら的確にケツを揉んでやがる!!」
爺「ふははっ!そんなへっぴり腰ではワシは捕まえられんよ!」モミモミ!!シュババッ!
827:
ワーワー!ギャーギャー!!キャーキャー!
漢「……道は開けたし……俺達も行くか」スタスタ……
青年「そっすね……」スタスタ……
奴隷(今度からお爺さんの半径2メートル以内には近付かないようにしよう)スタスタ……
ワーワー!ギャーギャー!!キャーキャー!
爺「ほほほのほーっ!!」モミモミモミモミ!!
829:
ーーー城内
青年「おかしいっすねー……兵の一人もいないっすよ……」
爺「これは異常だの……どう思うよ奴隷ちゃん」
奴隷「そうですね」ススッ
爺「え、なんで下がるの」ススッ
奴隷「さ、下がってないですよ」ススッ
爺「嘘じゃ!下がっとる!なんじゃジジイのこと嫌いになったの!?ジジイショック!」スタスタスタ!!
奴隷「き、嫌いじゃないですよ!……ただちかくにいたくないだけですーっ!」スタスタスタ!!
爺「それ嫌いってことじゃないかのぉー!?」ダダダダ!!
奴隷「きゃーっ!こないでーっ!」ダダダダ!!
漢「こら!走り回るな!!」
831:
漢「だが確かに不自然だ……なぜ人っ子一人居ないんだ」
奴隷「そう言えば門番もいませんでしたよね……」
青年「まさか……逃げたとか……?」
漢「そんなバカな……」
爺「とにかくなにはともあれ王を探すのが先じゃな」
漢「……」
???「いらっしゃいませ……ご客人」
漢「!!」
青年「あ、あんた誰っすか!」
839:
漢「……久しぶりだな。大臣……」ギロッ…
大臣「……やぁ……こうして会うのは何年ぶりかな?漢君……」
漢「相も変わらず癪に障るツラしてんじゃねーか?」
大臣「漢君ほどではないよ……ククク」
青年「貴方が大臣さんっすか」
大臣「君たちを待ってたんだよ、私はね」
大臣「どうぞこちらへ……王が待っておりますのでね」スッ
漢「……」
862:
ギィィィ……バターン……
奴隷「ひっ……!?」
青年「辺り一帯兵士だらけっす……!」
漢「……通りで城の中がガランとしてたわけだ……王の周りに兵を固めたってわけかい」
爺「こっちがここに来るってのはバレてたらしいな」
大臣「王……客人です。薬師の漢様御一行ですよ」
王「……お前たちが此度のデマを流布した罪人か……」ギロッ
漢「デマだ?……とぼける気か王様よ?こっちにはこれだけの証拠があるんだ」ザッ
王「そんなものなんの信憑性もないでっち上げの書類だというのは大臣から聞き知っている……」
大臣「……」
864:
漢「……でっち上げのデマかどうか……その目で見て確かめてみな」スタスタ……
兵士「止まれっ!それ以上王に近づくんじゃない!」シャキンッ!!
漢「……」ピタ
大臣「……王はお疲れなのです。あなた方の作り上げた偽の証拠などに目を通す必要などありません……代わりに私が目を通しましょう」
漢「……なるほどね……」ククク
漢「青年の言ってた通りだな、腑抜けの王様よ」
王「……なに……?」ピク……
867:
漢「アンタ今まで国のこと全部この男に任せてきたんだろ?」
大臣「……」
王「……大臣は優秀な部下だ。優秀な者に適した仕事をさせている迄……」
大臣「そう……その通りですよ王……。それに私は最早王と命運をともにする程の存在……私の脳も王であり、そこに在らせられる王の支配下にある物です」
大臣「つまり、私の判断は王の勅命と同じ……」
漢「……ククッ……」
漢「愚かなのも度を越すと寧ろ笑えてくるんだな……ククク……」
兵士「貴様っ!!王を愚弄するか!!」
873:
漢「ならこれを愚かと言わず何と言うんだ?」
漢「自分で判断する脳を持たず、他人の脳に、思惑に体を乗っ取られ、乗っ取られてることにすら気付かない……」
漢「言ってみればお前は操り人形にされてる事にすら気づいてないんだ」
王「何を言うか!!私はそのような愚か者では断じてない!国のため民のため力をつくしている!!」
漢「……なら、知ってるか腑抜けさん。この三年で、奴隷市場は約四倍にもふくれあがってるってことを」
王「……なんだと……?」
880:
漢「その奴隷市場にはこの国の親に見捨てられたガキも多くでまわってるってことを」
王「そんなバカな……」
漢「知ってるか。この国の貴金属市場が膨れ上がり、逆に食材や衣服の市場が格段に下がってるってことを」
漢「一部の貴族に多く売れるからと既存の市場を壊し貴金属や装飾品の市場にかえて税金を多くかけて売ってるからそうなるんだ」
王「う、嘘だ……!」
漢「そして軍事市場は5倍になり、民による殺人が増えていることを知っているか?奴隷が武器の試し相手として刻まれ死んでいることを知っているか?」
漢「……どうなんだ……腑抜け!!」
王「……し……らぬ……」ガクガクガク……
王「私は……何も……!!」ガクガクガク……
漢「それで……そんなんで民のため国のためだと?……ふざけたこと抜かしるんじゃねぇぞ!!」
886:
ザワザワザワザワ……
兵士「貴様!それ以上王を愚弄してみよ!この私が貴様の首を斬り跳ばすぞ……!!」チャキッ……
青年「だ、旦那!」
奴隷「主様!危ないです!」
漢「……」
漢「……はぁ……くだらね」
兵士「なんだと!!貴様本当に死にたいらしいな……!!」
ガシッ
兵士「!!き、貴様っ……気でも違ったか!!剣の刃を素手で掴むとは!!」
漢「……殺れよ」ツー……ポタポタ……
兵士「くっ……!!くっ!!」グッ!グッ!
兵士(う、動かせん……!!こいつ……!!)グッ!
漢「どうした?俺の首を斬り跳ばすんじなかったのか?」ギチギチ……
894:
漢「今俺はお前と話してるんじゃない。あそこにいる腑抜けと話してるんだ」ギッ
漢「邪魔するんじゃねぇ!!」バキィッ!!
兵士「クピョッ……!!」ドシャアッ!!
カランカランカラン……
兵士2「へ、兵士長ー!」
兵士3「大丈夫ですか兵士長ー!」
漢「……それで、どうなんだ腑抜け……お前なりの答えは出たのか?」スタスタ……
王「私は……わ、たし……は……」ガタガタガタ……
899:
王「私は……何も……知らず……に……」ガタガタガタ……
王「国のため……民のため……と……」ガタガタガタ……
王「私は……愚か……」ガタガタガタ……
大臣「……違いますよ。あなたは何も悪くないのです……王」スッ
王「大……臣……?」ガタガタガタ……
漢「大臣……お前はまたそうやってコイツを騙すつもりか?」
大臣「騙す……?私は王を騙したことなど一度もありませんよ?」ククッ
大臣「王、あなたは何も悪くないのです……あなたが頑張ってることは私がよくしっていますからねぇ?」ニヤッ
王「私は……悪く……ない……?」ピタッ
大臣「ええ、その通りです。王よ」
904:
大臣「皆さん……この者たちは王に仇なす逆賊です……!」
大臣「王を言葉巧みにだまくらかし追い詰め国を滅ぼそうとする悪の手先!」
大臣「命令を下します……この者たちを即刻切り捨てるのです!!」
大臣「それが……『王の勅命』です」ニッコリ
……シーン……
大臣「……あれ……?」
910:
大臣「皆さん?一体どうしたというのですか?」
大臣「『王の勅命』ですよ?……」
シーン……
大臣「何故誰も動かない……?」
大臣「あなたがたは王の勅命に逆らうというのか!?」バンッ
爺「……お前さん、今の自分の顔を鏡で見てみるかの?」
大臣「なんですって……?」
爺「そこの壁の鏡を見てみるんじゃな……」
大臣「何を……ッ!?」ハッ
914:
大臣「こ……れは……」
爺「……汗まみれで顔は青ざめ……苦しそうな笑顔を浮かべている自分の顔が見えたか……」
大臣「な、なぜ……!!」
爺「それが今のお前の心の焦り……誰が見てもこう思うじゃろうな」
爺「『怪しい』と」
大臣「あ、ああ……!?」
漢「クク……似合いのツラになったじゃないか……元々のツラよりいくらもマシだ」
大臣「貴様っ……!!」
916:
兵士4「……た、確かにいつも命令をするのは大臣殿だったよな……」ボソッ
兵士5「そ、そういえば……俺大臣殿が夜中にコソコソなんか持ち出してたの見たことがあるんだが……」
兵士6「あ、俺もみたことある」
兵士7「それってもしかして金を……?」
兵士8「奴隷とか貴金属、軍事品の市場を増やすように発案したのも大臣殿だったよな……」
ザワザワザワザワ ザワザワザワザワ
大臣「み、みなさん!落ち着いて……落ち着いてください!!」
大臣「この者達の口車に乗せられてはいけません!!」
王「……大……臣……」
大臣「お、王!この者たちを、この者たちを処刑する命令を!!王!!」ガシッ!!
919:
王「……もう……諦めろ……」ボソッ……
大臣「!!」
王「私達は……間違っていたんだ……」
王「もう、楽になれ……大臣……」
大臣「お……う……?」
大臣「ふざけないでくださいっ……!!まだ!!まだ私は……!!俺はこんなところで終わるような男じゃない!!おいっ!!王!」ガシカシガシ
兵士2「おやめください!大臣様!」
兵士3「王に暴力をふるってはいけません!!落ち着いてください!!」
大臣「あぁぁぁぁぁぁ!!!!うるさいっ……うるさいっ……うるさいっ!!!!」ザクッ!!ザクッ!!
兵士2「がっ……!?」ズバァッ!!
兵士3「大臣……さ……ま……!」ズバァッ!!
920:
兵士達「う、うわぁっ!!」「大臣殿が兵を斬ったぞ!?」
大臣「ハァッ……ハァッ……!!馬鹿な……このまで私は、綿密な計画で……」ガクガクガク……
漢「……終わりだ。大臣」
青年「もう後戻りはできないところまでアンタは行っちまってるす」
大臣「ふ……ふふ……はは……ハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」
大臣「終わらないですよ……私はまだ……終わらない!!」ニヤァァァ……!!
王「大臣……!?なにをっ!!」ガッ!!
大臣「あなた様は人質です……王……最後まで利用させてもらいましょう……」ギリッ
929:
大臣「あなた達……こちらを見なさい……」
王「くっ……」ギリッ……
ザワザワザワザワ
大臣「王は人質です……今すぐにこの場にありったけの金を持ってきなさい!!」
大臣「早くしなければ……王は死にますよ……?」ニコッ
ワーッワーッ!!ザワザワザワザワ
「金を……!金を集めろー!!」「はやくしろっ!!」「金庫があったはずだ!!金庫のも持ってこい!!」ドタバタドタバタ
大臣「あっはっはっはっ……!!さぁ早く……早くっ!!」
漢「奴隷を買ったら」奴隷「国盗りすることになりました」
14:
大臣「漢……あなた方も人質を寄越しなさい……その奴隷をね」
奴隷「!!」ビクッ
漢「なに……?」
青年「人質ならもう十分じゃないっすか!!」
大臣「いいえ……この男だけではあなた方の決定的な抑止力となりえません……ですからその奴隷を寄越せと言っているのですよ?」
大臣「漢君はその奴隷が大のお気に入りのようですからねぇ……?」
漢「……ッ!」
奴隷「……」
奴隷「……主様……私は大丈夫です」
20:
漢「何を……!」
奴隷「……主様は国にとって王様の命と奴隷の命、どちらが大切だとお思いですか?」
漢「……それは……!」
奴隷「だから……私は大丈夫ですから、ちゃんと戻ってきます」
奴隷「だって私決めましたから、絶対に主様から離れないって」
漢「……ッ……」
奴隷「……」スタスタ……
奴隷「これでいいのですね、大臣様」スッ
大臣「……ええ、キチンと躾の効いた奴隷のようですね?ククッ」
26:
大臣「なぁるほど……近くで見ると良く分かります……」ジロジロ
奴隷「……」
大臣「似ていますね……あの女と……フフフ……」ニヤッ
奴隷(この人……ダメだ……すごく気持ちが悪い……!本能が拒否してるのがわかるくらい邪悪……)グッ……
大臣「……ご老人……あなたも似てると、そう思うでしょう?」
爺「……さぁな……ジジイは一昨日の飯のことも覚えとらんからな」
30:
大臣「あれはもう五年も前になりますか……ねぇ?漢君」
漢「……それがどうした」
大臣「私はね、あの日の事が忘れられないんですよ……あの女を魔女として処刑した日のことがね……!」
奴隷「!」
爺「なんじゃと……!?」
漢「……」ギリッ……
大臣「ああ、そちらのご老人は知らなかったのですね……まぁ確かに娘を惨たらしく殺した相手の事など話したくないでしょう!」
大臣「あの女は美しかった……!」
45:
大臣「体を幾度と斬られようと決して悲鳴をあげなかったのですよ……」ゾクゾク……
大臣「歯を食いしばり唇を噛み締め痛みを我慢した!それは何故か!」ゾクゾクゾク……
大臣「……漢君が目の前に居たからなんですよねぇ」ゾクゾクゾクッ!
漢「大臣……大臣ッ!!」
大臣「いい、良いですねその表情!!どうしようもなく憤るしかないその表情……!!」
大臣「あの時と同じです!全く持って同じ!」ゾクゾク……!
53:
大臣「ご老人……あなたの娘が最後になんて言ったかわかりますか?」
漢「やめろッッ!!それ以上その汚い口から……アイツの話をするな!」ガバッ!!
大臣「……殺しますよ?」チャキッ
奴隷「ひっ……!」
漢「ッ!!」ピタッ
大臣「立場をわきまえてくださいね?……こんな女殺すのなんて一瞬で済むんですから」ニタニタ
漢「テメェ……!」
大臣「おっと……話の途中でした……」
大臣「お待たせして申し訳ございませんねご老人!」
爺「……」
65:
大臣「私があの女を十数回に渡り斬りつけ爪を剥ぎいたぶり尽くした最後……」
大臣「いざ私が心臓を突き刺し息の根を止めようとしたその時!」
大臣「彼女はね……漢君に向かって歪に笑ってこう言ったんですよ……」
大臣「『ごめんね』と言って、そして心臓を貫かれたんですよ!!」ゾクゾクゾクゾク!!
漢「うぁぁぁぁぁぁっ!!テメェっ……テメェだけはぁぁぁぁっ!!」
青年「旦那っ!ダメです!落ち着いて!落ち着いて下さい!」
爺「……」
87:
大臣「どうでしたか!?目の前で最愛の女を殺された気分は!?どうでしたか!?最後に笑顔で謝罪された気分は!?」
大臣「顔についた彼女の血はどんな味がしましたか!?色は!?香りはどう感じましたか!?」
漢「うぁぁぁぁぁぁっ!!大臣……!大臣ーーッ!!」
青年「旦那っ……ダメっす!落ち着いてください……!!」
漢「コイツだけは俺が殺す!!コイツだけは……コイツだけはー!!」
爺「……」スゥ……
爺「……落ち着かんか!!漢!!」
漢「!!」
青年「!!」
奴隷「!!」
119:
大臣「貴方は、平然としているのですねご老人……?」
爺「……寧ろ、最高の気分じゃよ」ククッ……
大臣「なんですと……?」
爺「ワシの娘は誇るべき娘じゃったということが知れた」
爺「死ぬ最後の一瞬まで人のために生きることができた……自分の娘とは思えないよくできた娘じゃ」
大臣「……」イラッ……
漢「爺……さん……」
爺「……」
144:
兵士4「大臣殿っ!!金をご用意致しました!!」ドチャッ
兵士5「これで全部です!!……さぁ!はやく人質の解放を!!」
大臣「おやおや、やっとですか……遅かったですねぇ……」
青年「はやく人質を解放するっす!!」
大臣「……まだですよ?金だけもらっても私は逃げられないじゃないですか」
大臣「さぁ、道を開けなさい……私が無事に外まで出ることができれば人質を解放しましょう」
154:
大臣「道を開けなさい……人質の首が惜しいならね?」スタスタ
ザザザザザッ……
大臣「……それでいいのです……さぁ、二人とも、歩きなさい」スタスタ……
王「……」スタスタ……
奴隷「……」スタスタ……
漢「……」
大臣「……お前もどくんだよ……漢……」ニタッ
漢「……」スッ……
167:
大臣「しかし……あなたには疫病神でもついてるんじゃなですか?漢……」スタスタ……
漢「なんだと……?」ピクッ
大臣「あなたに関わった者はいつも酷い仕打ちを受けていますね」
漢「……」
大臣「この奴隷もかわいそうに……あなたに関わったばかりにこんな目にあっている……」ペロッ……
奴隷「!!」ビクッ
大臣「綺麗な肌ですね……おもわず舐めてしまいました」
漢「……やめろ……そいつに変なことをするな……」
大臣「ん?変なこととは一体なんでしょうかねぇ?」ペロッ……
奴隷「ひっ……!!」ガタガタガタ……!
183:
漢「やめろ!」
大臣「おー怖い怖い!実に恐ろしい!」
大臣「ですが……彼女はなぜこんな目にあっているのでしょう?」
漢「……ッ」
大臣「それは紛れもなく、あなたのせいだ」ニヤッ
大臣「あなたがこの子を買ったから、あなたがあの娘を恋人にしたから……」
大臣「あなたは疫病神だ!……関わった者全てを歪ませ不幸を生む者なんですよ!!」
漢「……俺……は!」グッ
奴隷「……それは……違います……主様……」
漢「!」
193:
奴隷「私は……不幸なんかじゃありません……」
奴隷「きっとそれは……お爺さんも、青年さんもそう思っている筈です……」
漢「だが……俺のせいで皆……!」
奴隷「……偶然です」
漢「……偶然……?」
奴隷「そう、ただの偶然……主様が……関わったからじゃない……元からそうなる運命だったんです」
奴隷「そこにただ、主様が関わっただけ……」
漢「だが……っ!」
奴隷「主様……私は奴隷です」
201:
奴隷「犬や猫のように人に買われ、虐げられる生き物……人以下の動物です」
漢「……違う……!」
奴隷「そう……主様はそのようには扱いませんでした……それは主様が優しいから……」
奴隷「奴隷市場にいた頃、何回も他の奴隷が買われていくところを見ました」
奴隷「ある時は貴族の方が奴隷に首輪をつけて地べたを這わせて来店したのも見たことがあります」
奴隷「それが奴隷なのです……その扱いこそが奴隷という生き物に対する正しい扱い……」
漢「……」
奴隷「だけど……私は」ドカッ!!
奴隷「ぐけっ……ふっ!?」ゲホッ!!
大臣「人質がペラペラペラペラと……いつまで話すつもりです……かっ!」ゲシッ!!
210:
漢「テメェっ……!」ギロッ!!
大臣「お喋りな奴は嫌いなんですよ……立場をわきまえてくださいねと言った筈です」グシッ……
奴隷「うぐ……」クッ……
大臣「ハートフルな会話は私のいないところでしてもらいたいモノですね」
奴隷「……大臣……さん……あなたは主様が疫病神だと言いました」
大臣「……それが何か……?」
奴隷「……主様は……疫病神なんかじゃない……主様は……主様です……!」
223:
奴隷「紛れもなく……私や皆に幸せな気持ちをくれる……優しい……主様なんです……!」
奴隷「きっと……お爺さんの娘さん……主様のかつての恋人だった方も……そんな主様が好きだったんでしょう……」
奴隷「……私と……同じように!」グッ
大臣「……あ?」イラッ
奴隷「あなたがなんと言おうと……私は幸せです……!!」
奴隷「あなたの穢れ紡がれた言葉など……屁でもない……!!」
奴隷「あなたは人の悪口しか言えない寂しい人……!」
大臣「ッ……!?」ピキッ……
227:
ーーー『貴方は……寂しい人ね……』
大臣「……なんだと……?なんでお前がそれを知ってる……?」ピキピキピキッ……
奴隷「なにを言って……!」
大臣「なんでお前があの女と同じことを言える……!?」
奴隷「あの……女……?」
大臣「あの女もそうだった……あの女も自身の体を斬りつけられながら……まるで俺をかわいそうな捨てられた動物を見るような目でそのセリフを吐きやがった!!」
230:
大臣「ふざけやがって……!俺はこの国で大臣まで登り詰めた男だぞ……!?」
大臣「その俺に向かって……犬猫に言うように……!!」
大臣「寂しい人だと!?」ガリガリガリッ……!
大臣「……殺す……お前だけは……殺さなきゃならない……」カチャ
大臣「あの女と同じことを俺に言う女など……生かしておくことはできない!!」グワッ!!
奴隷「!!」ビクッ!!
漢「ッ!!よせっ!!そいつに……そいつに手を出すなッ!!」バッ!
大臣「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああッッッッッ!!!あぁっ!!」ブオッ!!
ズバァッ……!
239:
ポタ……ポタタ……ッ
漢「ッ……!!」
奴隷「な、なんで……!どうして……!」
ズバッ……ブシャアッ……!
大臣「……」
大臣「これはこれは……どういうことですかねぇ……?」
奴隷「どうして……!どうして……っ!!」
王「……無事か、少女……ゲホッ……!」ブシャァァァッ……
254:
兵士4「お、王っ……!!」
兵士6「王が……王が斬られた……!?」
大臣「……王……?」
王「……くっ……痛いな……やはり斬られるとはこんなにも痛いものなのか……ゲホッゴホッ……」ボタタッ……
漢「おい!!大丈夫か!?」グッ……
奴隷「王様っ……王様どうして……!!」
王「ふっ……漢よ……これで私はもはや腑抜けとは呼ばれまい……?」
漢「な、なにを……!」
王「……無知とは……罪なものだ……ゲホッ……」
262:
王「やはり私は父のようには出来なかった……」
王「国のこともわからぬ、民のこともわからぬ……何も、何もわからぬ……」
王「だが……そんな私でも……やっと父を超えることができたかもしれんな……ゲホッ……」ボタボタッ……
奴隷「お……うさま……!どおし……て……?」グスッ……ズズッ……!!
王「……奴隷とて、この国に住まう民……」
王「王たる私が護るのに……なんの理屈もいらなかろう……?」
奴隷「おうさま……っ!!」ブワッ……
271:
大臣「……お……う……?」
大臣「……?」
『信頼しているぞ、大臣』
大臣「……これ……は……」
爺「……お前さんも、案外人の道から外れることができなかった男かもしれぬのう。大臣」
大臣「ご……ろう……じん……?」
『お前に任せておけば全て安泰だな……頼んだ』
爺「……聞こえるんじゃろ?記憶の中にあるあの王の声が」
『……お前が大臣か……よし、決めた。お前は今日から私の右腕だ』
大臣「記憶の中の……声……?」
276:
ーーー
先代の王『大臣。今日からお前にわしの息子の教育係になって貰いたいんじゃ』
過去の大臣『……王の仰せのままに、私は王のものでございます』
先代の王『おい、こっちにこんか!』
王子『……』
過去の大臣『こちらが王の息子……王子様ですね……?』
先代の王『そうじゃ、こいつはちとばかし悪戯者でのう?教育係をどうしようかと悩んでおったんじゃ』
王子『……フン……』
280:
メイド『きゃー!』バサッ!!
王子『へへっ!やりぃ!』タタタ!!
メイド『もう!王子様!いい加減にしてくださーい!!』
王子『スカートなんて履いてる方が悪いんだー!やーい!』タタタ……ドンッ!!
王子『あ、あいたっ!』ドスン
大臣『……王子。また悪戯を?』
王子『……な、何だよ……悪いのか!!』
大臣『いえいえ……ですが……』
大臣『……王子様はその程度の悪戯にて満足なのですか?』
王子『……なに?』
288:
ガチャ…… バシャアッ!!
先代の王『うぉぉっ!?なんで扉をあけた途端に上から水が!?』
王子『いえーい!トラップ成功ー!』
先代の王『ま、また王子かー!こらーっ!!』
王子『ほら!逃げるぞ大臣!』タタタ!!
大臣『はい、王子』タタタ!!
先代の王『だ、大臣!?さ、さてはこのトラップは貴様の入れ知恵か!?』
大臣『教育を頼まれましたので……もっと高度な悪戯を教えて差し上げたのですよ……』タタタ!!
先代の王『そ、そんな教育はたのんどらーん!!』
王子『やーい!ばーかばーか!』タタタ!!
299:
王子『あはははー……傑作だったな父上のあの顔は!』ゲラゲラ
大臣『それはよかったですね王子……』
王子『お前なかなかやるな!他にもなんかあるのか』
大臣『……あんなものは扉を開ければ針のムシロになるトラップの簡易版……あの程度の物ならいくらでも……』
王子『な、なんと……!』キラキラキラ!!
王子『よし、決めた……今日からお前は私の右腕だ』ビシッ!
大臣『右腕……ですか……』
王子『ふん!光栄だろ!光栄だといえ!』
大臣『……クク……ハハハ……!いいでしょう。あなた様の悪戯……私が王子の右腕となりアドバイスして差し上げましょう……』ニヤッ
王子『おう!』
304:
大臣「……ああ……!」ガタンッ……
大臣「あ……!ああ……!」ズルッ……
大臣「王……!お……う……!」
大臣「私は……私は……!!」ガタガタガタ……!!
大臣「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!ゲホッ……ゲロッ……!!」
大臣「おえっ……げ……ぇっ!」ベシャベシャベシャッ……
爺「……所詮悪魔のふりをしようと、お前さんはどこまでも人間の域を出ることができなかったようじゃな」
308:
大臣「私は……今まで……!」
爺「……ワシはジジイだからよくわからんが」
爺「お主は、欲と悪しき本能に飲まれすぎた」
大臣「な……ぜ……!」ガシッ!!
爺「……ワシから教えられることはここまでじゃ。後は自分で考えい」
爺「……それと、これは長く生きたジジイとしてではなく、一人の親としてやらせてもらう……」ガシッ……
大臣「!」
爺「どぉりゃアッ!!」バキィッ!!
大臣「うぐっ……!!」ドカァッ!!
315:
ドシャアッ!!
大臣「ご……ろう……じん……」ゲホッ……
爺「……娘の仇分じゃ……噛み締めろ……」スタスタ……
大臣「……わ、たし……は……」ヘタッ……
爺「……」スタスタ……
爺「やれやれ、なんじゃこりゃ……」
爺「とっくに未練などないと思っておったがの……」ズルッ……
爺「今さらになって……涙なんぞ出てきおったわ……」ポタ……ポタタ……
爺「歳をとると涙も小便も漏れやすくなってしょうがないわい……」ボタボタッ……ボタタッ……
318:
漢「おいっ!!すぐに救護班を呼べ!!」
兵士6「は、はいっ!!」
漢「薬を!!止血剤と消毒薬!はやく!!」
奴隷「は、はい!主様……!」ササッ
青年「どうなんすか旦那!!……助かるんスか!?」
漢「どうもこうもない……!傷はそこまで深くはないが出血が多い!とにかく早く止血して縫合を……!」
兵士5「ダメです!!今日は城に兵しか呼ばれておらず……救護にあたっている医者達全員ここまで来るのにかなりかかるかと」
322:
漢「クソッ……薬だけじゃどうにもできん……!」
奴隷「そ、そんな……!王様……!!」
王「……」
漢「出血量が多過ぎたんだ……気を失っている……!」
奴隷「どうにか……どうにか方法……なにかないのですか主様っ……!」
漢「……無い……!」グッ…
漢「クソ……こんな時に魔法が使えれば……!!」ドスッ!!
青年「……魔法……?」
329:
青年「旦那今魔法が使えればって言ったすよね?」
漢「ああ……魔法の中には自己治癒能力を強力に活性化して怪我を回復させる効果がある物もあるんだ……!」
青年「回復させる魔法……回復させる魔法……」ブツブツ
青年「ああっ!!そうだ!!」パチーン!
奴隷「ど、どうしたんですか……?」
青年「確かこのファイルに……!」バサバサバサ!!
青年「あった!!旦那!ありましたよ!回復魔法の情報!!」 バンッ!
335:
青年「これ!魔術適性のある人がこの紙に書いてあるとおりにやれば回復魔法はできるっす!」
漢「なっ……!お前魔術適性なんてあったのか!?」
青年「いや俺は無理でした!毛ほども使えませんでした!」
漢「じゃあダメじゃねーか!」ゲシッ!!
青年「い、痛いっす!ち、違うっすよ!いるじゃないですか!絶対に魔術適性のある子が!」ゲシゲシ!!
漢「何……?誰だ」
青年「んなもんきまってるっすよ!奴隷ちゃんっす!」
奴隷「えっ!?私!?」ビクッ!
342:
青年「奴隷ちゃんはエルフと人間のハーフっすよ!必ず魔術適性がある筈です!」
漢「そ、そういえばそうだった……」
奴隷「だ、ダメです!私魔法なんて使ったことないですっ……!」オロオロ
青年「ダメもヘチマもないっすよ!とにかく駄目で元々当って砕けろ可能性があるならなんでもするべきっす」
奴隷「く、砕けちゃうの!?」
漢「とにかく!……頼む!試してみてくれ!」
奴隷「で、でももし失敗してもっと大変な事になったら……」オロオロ……
漢「……やらなきゃどっちみちコイツは死んじまう……やるしかないだろ!」ガシッ!!
奴隷「主様……」
349:
奴隷「すぅ……はぁ……」ドキドキドキ……
奴隷「……覚悟を決めました……!やります!」
青年「これっす、この説明のとおりにやればできるはずっす……!」ガサ……
奴隷「え、えと……両手の親指と人差し指で三角形を作って……呪文を唱える……」スッ
漢「……」ジッ……
青年「……」ジッ……
奴隷「……すぅ……」
奴隷「ーーーー……ーーーーーーー……ーーーーーーー!!」カッ!!
パァァァァァァァ……!!
363:
パァァァァァァァァ……
青年「す、すごい……これが、魔法……」ゴクリ……
漢「この青い光は……」
ーーーー『ほら、怪我したの?どれどれ愛しの彼女様に見せてごらんなさい!』
漢「あいつの魔法と……同じ光……」
爺「ほっ?……これは何事じゃ?」スタスタ
青年「奴隷ちゃんが回復魔法を使って王様の怪我を治してるんす!すごいっすよ!!」
奴隷「ーーーー……ーーーー……ーーーーーーー」ブツブツ……
パァァァァァァァァ……
爺「……漢、やはり似ているな……まるで本人のようじゃ……」
漢「……ああ……」
369:
奴隷「はぁ……はぁ……」
青年「す、すごい……綺麗さっぱり治ってる」
兵士5「王……!王ー!」
兵士6「起きてください!王!」
王「……う……む……?」グッ……
青年「お、王様!気がついたんすね!」
王「私は……なぜ生きて……?」ムクッ……
漢「……こいつの魔法で助かったんだ。感謝しろよ」
王「少女の……そうか……助けたと思ったが……逆に私がたすけられてしまうとはな……」
373:
奴隷「王様……よかった……」ドサッ……
王「!どうした……!?」
青年「ど、奴隷ちゃん!?」
漢「おいっ!どうしたんだ!おいっ!!」ユサユサ!!
爺「こらこら、そっとしておきなさい。疲れて眠ってしまったんじゃよ」
奴隷「……スゥスゥ……」zzz……
爺「生まれて初めて魔法を、それもあれほどのケガを治すほどの力を使ったんじゃ、疲れて当然じゃよ」
王「そうか……この子には悪いことをした……」
376:
王「……私のような罪人は……簡単に死ぬこともできぬようだ……」
漢「バカ野郎、当たり前だ」
王「漢……」
漢「まだアンタには仕事が残ってんだろ?」
王「私の……仕事……?」
漢「……この国を正しく導け。それがお前の仕事だ」
王「しかし……この国を誤った方向へ進めてしまった私に……そのような権利はない……」
漢「……はぁ……」ボリボリ
漢「甘えてんじゃねぇよ。自分のケツくらい自分で拭け」
378:
王「しかし……私には……もはや王たる事さえも許されないだろう……兵が、民が黙ってはいない……」
爺「カッカッカッ、若者よ。こやつらを見てもそんなことが言えるかの?」
王「なに……?」
兵士4「王!!王……!!」ポロポロ……
兵士5「良かった……お目覚めになられたのですね……王!」グスッ
兵士6「みんなー!王が!王がめざめられたぞー!」
兵士達「王!!」「一時はどうなることかと思いましたよ!」「よかった!本当によかった!」
ザワザワザラザワ……
382:
王「な、なぜ……私を許すというのか……お前たちは……?」
兵士5「なにをおっしゃるんですか!当然です!」
兵士6「というか俺達王にはいろいろ世話してもらったしな?」
兵士4「そうそうその通り!家族のためにもいろいろ気をかけてもらったり労いとして王が宴を開いてくれたりな!」
ワハハハハ…
王「お前……たち……」
爺「どうじゃ?これがお前に不平を持つ者たちに見えるかの?」
385:
爺「お前さんはまだ若い。失敗することもあるじゃろう……だが若さというのはそういう時に再び立ち上がる力もくれる」
爺「……お前は見てきたのだろう?……先代の王の背中を」
王「父の……背中……」
爺「次はその背中の後ろをついていくのではなく、その背中を追い越さんとやれ」
王「……」グッ
兵士6「王様!俺たちまだまだついてきますよ!」
兵士5「操られっぱなしじゃシャクじゃないですか!」
王「ああ……」ズズッ……
王「……そうだな……そのとおりだ……!」ボタボタッ……グスッ……!
388:
兵士7「おらっ!きりきり歩け!」グイッ!
大臣「……」スタ……スタ……
漢「……」
王「……大臣……」
大臣「……」チラッ……
兵士8「止まるな!あるけ!!」グイッ!
大臣「……言われずとも……解っていますよ……」スタ……スタ……
王「……大臣」
王「今まで……俺の悪戯に付き合ってくれて……ありがとう……」
大臣「!!」
392:
ーーー
青年「……これで……全部終わったんすかね……」スタスタ……
漢「ああ」スタスタ……
爺「国盗りはできなかったが……それ以上の結果にはなったんじゃないか?」スタスタ……
漢「フッ……そうだな」
奴隷「ムニャムニャ……あ、るじ様……」zzz……
爺「おや?寝言かの?ええのう愛されとるのう?」コノコノ!!
漢「うっせぇジジイ。黙って歩け!」
青年「お?旦那もしかして照れてるんすか??」
バキッ!
青年「いひゃい……」メシッ……
漢「ったく……どいつもこいつも面倒くさい奴ばっかりだよ本当に……」ニッ……
393:
一週間後
カンカンカンカンカン!!
新聞屋「号外!!号外だよー!」
カンカンカンカンカン!!
ザワザワザラザワ ザワザワザラザワ
新聞屋「王が税金を着服し私腹を肥やしていたというあの事件!真実が明らかに!!」
カンカンカンカンカン!!
新聞屋「なんと真犯人は大臣だった!裏でこっそりと金を盗むたァ太い野郎だ!」
ザワザワザラザワ……
398:
漢「……『真犯人見つかる!大臣の大いなる陰謀』ねぇ……?」ピラッ
漢「まぁ見出しとしたら悪くはないのかもしれないが……この新聞はだめだな」
漢「アンタはどう思うよ」ズズッ
男「……大臣の事ばかりではなく、富裕層の需要へと偏った市場を元に戻そうとしてるという内容も入れて欲しいものだな」ズズッ……
漢「それに加えてなんだ。今奴隷の人権の向上も掲げてるらしいじゃないか」
男「ああ、いずれは奴隷市場というのは無くすことができるようになるかもしれないな」モグモグ
403:
男「その後どうなんだ。調子は」
漢「ああ?なんの問題もない。いつもどおり薬作って売ってるさ」モグモグ
男「そうか……」
漢「だがよ、街に出る旅に思うんだがよ。この街、いい空気になったと思わないか」
男「……ああ……これが正しき街の空気なのだな」ゴクゴク……
漢「案外、今の街は悪くないと思うぜ。俺は……」スクッ
男「もう行くのか」
漢「ああ、アイツが待ってんだ。早いとこ帰らないと大目玉くらっちまうぜ」
407:
漢「……ま、これからこの国がどうなっていくか期待しといてやるよ」
男「……ああ、そうしてくれ」
漢「じゃあな、またどこかで会おうぜ『王様』……いや、街にいるときは男って呼んだほうが良かったんだったな」スタスタ……
男(王)「ああ……また、どこかでな」
スタスタ……
男(王)「……やはり、あの『漢』の後ろ姿はなかなか様になっているな」
男(王)「私にも、あの男のように『漢』のなれる日が来て欲しいものだ……」グビッ
ワイワイガヤガヤ…… ワイワイガヤガヤ……
411:
ガチャ……バタン……
漢「今帰ったぞー」
青年「おかえりなさいっす旦那ー!」モグモグ
漢「……なんでお前がいるんだ」
青年「やだなー仕事の依頼持ってきたんすよー」モグモグ
漢「嘘つけ……飯たかりに来たんだろ」ハァ
奴隷「漢様ー!一体どこをほっつき歩いていたんですかー!」
漢「い、いや、ちょっと街をブラブラと……」
奴隷「今日は早く帰ってくるって約束だったのに……」プクー
413:
漢「お前……なんか最近ワガママになってきたな」
奴隷「そ、そんなことはありませんよ?」ヒュー フスーッ
青年「口笛吹けてないっすよ」モグモグ
奴隷「う、うるさいなー青年さんは!ご飯あげませんよ!」
青年「マジ口笛うまいっすね!まるで一流音楽家の奏でるリコーダーのようだ!」
漢「青年……本当に安い男だなこいつ……」
リンリーン!!
爺『おーい!ワシじゃー!あけとくれー!』
415:
奴隷「あ、お爺さんだ。はーい、今開けまーす」トテテテ……
爺「ふー、外は暑くて適わんわい!」
漢「何の用だよ爺さん」
爺「いや、野菜の仕入れに行ったらなかなかいいスイカを見つけてな……ほれ!」
奴隷「おおっ、本当だ!すごく大きい!」ポンポン!
爺「ふぅ、重いもの運んで疲れたわい……汗びっしょりじゃ」
漢「薬茶飲むか?汗止まるぞ」
爺「ありゃまずいから嫌じゃ」
416:
奴隷「……あの、ちょっとこの薬茶飲んでくださいませんか?」スッ
爺「え、ええ……なんで嫌いじゃと言ったそばからそんなの持ってくるの……?ジジイ奴隷ちゃんがそんなに鬼畜だと思わんかった……」
奴隷「い、いえ!あの!とりあえず飲んでみてください!お願いします!」
爺「はぁ……そこまで頼まれちゃ無下には断れぬのぉ……」グビッ……
爺「ん……?」
青年「どうしたんすか?」
爺「この薬茶……美味い……!」
漢「なんだって?」ガタッ
419:
爺「すごく飲みやすいし口当たりすっきりじゃ!汗も止まる!」ゴクゴク!!
青年「ちょ、ちょっと俺も一杯いいっすか?」
奴隷「は、はい!どうぞ!」トクトクトク……
青年「どれどれ……」ゴクゴク……
青年「本当だ、うまいっすねこれ……旦那の薬茶がドブの水だとしたらこれは白鳥の湖の水っすよ!」
漢「誰の薬茶がドブの水だと?つーかお前の喩えはわかりにくいんだよ」ベシッ
青年「あいたっ!」
奴隷「漢様も……ど、どうぞ!」
漢「お、おう……」
420:
漢「……本当だ……美味いな……」グビッ……
奴隷「えへへ、実は色んな果物から旨み成分を抽出してそれを調合したものを混ぜて味を整えてみたんです……」
漢「すごいな……」
奴隷「なんていうか、トマトケチャップのことを思い出したんです」
漢「トマトケチャップ……?」
奴隷「漢様が私にオムライスを作った時にしてくれた話です」
奴隷「『既存の物を掛け合わせてより良いものを作り出す』……」
漢「……」
奴隷「それにお料理するようになって、なんとなーく美味しさの出し方っていうのがわかって」
漢「そうか……」
425:
爺「こりゃ大陸一の薬師の座も危ないんじゃないかのぅ?漢よ」
青年「そういえばエルフ族には人間の作るどんな薬よりもすごい薬を作ることができる者もいるって話を聞いたことがあるっす!」
爺「こりゃ本格的に危ないのぅ!」
漢「うるせぇ」
ワッハッハッハッハ……
ーーー
爺「……ふぅ、それじゃあそろそろおいとまするかの」スクッ
青年「そうっすね!」スクッ
奴隷「あ、お見送り致します!」
434:
爺「そいじゃあのお二人さん……まあ暇を見つけてくるでの」
漢「いいよ来なくて。どうせまた精力増強剤作ってくれって言うんだろ」
爺「ええじゃろ別に!」
青年「んじゃ、俺も依頼が来たらまた来ますんで!」
漢「飯時以外に来いよ?」
青年「嫌っすね」キッパリ
奴隷「それではお爺さん、青年さん。またあいましょうね」フリフリ
奴隷「行ってしまいましたね……」
漢「ああ、はやく家に入れ。今夜は冷えるぞ」
奴隷「……はい、漢様」ニコッ
443:
ーーー
???「こうしてこの国を助けた二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ……めでたしめでたし……」
息子「えー?それでどうなったのー?」
娘「めでたしめでたしじゃなんもわかんないよー!」
???「うーん、そうは言ってもなぁ……」
???「流石にこの後のことを子供に話すのはアウトだし……///」ボソッ
息子「ねーねーおしえておしえてー!」
娘「おしえておしえてー!」グイグイ
???「こ、困ったわねー……」アセアセ
451:
父「おいお前たち……あまり母さんを困らせるんじゃない」
母「あ、漢さん」
娘「おとこさんだー!」
息子「おとこさん!おとこさんー!」
父「おい、子供の前では父さんで通してくれよ……こいつら完全に俺の事漢さんって呼ぶようになっちまったじゃないか」
母「えへ、ごめんなさい」
父「はぁ……やれやれ」
460:
母「でも時が経つのって早いですよね……もう5年も前ですよ!」
父「……そうだな」ナデナデ
母「♪」
息子「おとこさんぼくもー!」グイグイ
娘「わたしもー!」グイグイ
父「はいはいわかったわかった!やってやるから引っ張るな!」
母「ダメよ!まだママ全然堪能してないんだから!」
父「いや、そこは子供達に譲れ」
母「嫌です」キッパリ
467:
母「……漢さん……」ギュッ
父「な、急にどうしたんだよ」
母「私、幸せです。間違いなく幸せ……」
父「……そうか」ギュッ
母「……好きですよ、漢さん」チュッ
父「……ああ」チュッ……
息子「……」
娘「……」
娘「おとうとよ、われわれはくうきをよもうか」ニッ
息子「わがあねよ、ここはふたりっきりにしていいふいんきをつくってやるとしよう」グッ
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