ヤムチャ「プーアル! プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」back

ヤムチャ「プーアル! プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」


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プーアル「やったじゃないですか、ヤムチャ様! ようやく仕事が決まりましたね!」
ヤムチャ「そ、そういう言い方はやめてくれよ……」
プーアル「ヤムチャ様は、悟空さんやベジータさんと違って、もう前線には立ってないし」
ヤムチャ「だから、やめてくれよ……」
プーアル「全く……ピッコロさんや天津飯さんだって、頑張っているのに、ヤムチャは様は半隠居生活みたいになっちゃって……」
ヤムチャ「す、すまん……」
プーアル「このまま、ズルズルズルズル、引きこもっちゃうんじゃないかと、僕心配してたんですよ? 本当にお仕事が決まって良かったです!」
ヤムチャ「もう、やめろっ! 弱くてなにが悪いっ! 言っておくが、これでもまだ俺はそこらの格闘家よりかは強いんだぞ!? ただ、孫達が化け物なだけなんだ!」
プーアル「とにかく、早オファーのあったプロレス団体に行ってみましょう! さぁ、今日からヤムチャ様も社会人です!」
ヤムチャ「ベジータだって働いてねぇんだ! あまり、俺ばかり責めるなよ!」
元スレ
ヤムチャ「プーアル! プロレス団体から俺にオファーが来たぞ!」
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3:
ーーー
ヤムチャ「ここが、プロレス団体かぁ……」
プーアル「な〜んか、こじんまりとした団体ですねぇ」
男「ガハハ! お前がヤムチャか! よく来てくれたな!」
ヤムチャ「……ん?」
プーアル「あっ……なにか、ムキムキで身体中に傷のある人がやってきましたね?」
男「私がこの新団体『ストリートプロレス』のチャンピオン兼現場監督のザンギエフだ! よろしくな!」
ヤムチャ「あっ、ども……よろしくおねがいしま〜す……」
プーアル「ザンギエフさんですね! よろしくお願いしますっ!」
ザンギエフ「ガハハ! ヤムチャ君! 君には期待してるよ!」
4:
ザンギエフ「ガハハ! では、早道場を案内しよう! 着いてきたまえ!」
ヤムチャ「は〜い」
ザンギエフ「お〜いっ! お前ら、練習一時中断しろ〜! オファーしてたヤムチャ君がやってきてくれたぞ〜!」
ヤムチャ「今日から、このストリートプロレスでお世話になりますヤムチャです! 皆さん、よろしくお願いしますっ!」
ザンギエフ「一部の連中は、営業やらなんやらで、今ここにはいないが……まぁ、今いるメンバーだけでも紹介しよう」
ヤムチャ「あっ、はい。よろしくお願いします……」
ザンギエフ「お〜い! まずは、ベガにバイソン! お前ら、ヤムチャ君に挨拶をしろ〜!」
ベガ「……ふむ。ヤムチャ君、よろしく」
バイソン「ガハハ! ヤムチャ君、よろしくな!」
ヤムチャ「あっ、ども……」
5:
ザンギエフ「ベガ君は、うちのナンバー2だ!」
ヤムチャ「へぇ〜、ザンギエフさんがトップで、この人がナンバー2と……」
ベガ「私もいつかは、ザンギエフさんみたいに、客を呼べるようになりたいものだ」
ザンギエフ「ガハハ! だったら、もっと頑張るんだな! ベガ!」
ベガ「……はっ! 精進します」
ヤムチャ(ベジータと違って謙虚な人だな。この人とは、仲良くやれそうかな?)
ザンギエフ「ベガ君は、ヒール軍団を作って、私の邪魔をしようとしている! ……と、いう設定だ!」
ヤムチャ「……設定?」
バイソン「そして、俺がそのヒール軍団の一員! バイソンだ! ヤムチャ君、よろしくな!」
ヤムチャ「あっ、ども……」
バイソン「今は席を外しているけど、他にバルログや、サガットなんて奴もいるんだぜ? 仲良くしてやってくれよな!」
ヤムチャ「バルログさんに……サガットさんですね……わかりました」
8:
バイソン「……で、監督、どうするの? ヤムチャ君は俺達、ヒール軍団に入るの? それともベビーでやるの?」
ザンギエフ「う〜む、そこだがなぁ……リュウ君とケン君のパートナーにして、ベビーにしてみようと思っている」
バイソン「え〜!? あいつら、性格悪いぜ? 俺達、ヒール軍団で仲良くやりましょうよ?」
ザンギエフ「いやぁ……一応、格闘シュートスタイルで、合いそうじゃん? 彼らは、空手スタイルでやってるんだし……」
バイソン「きゃ〜、バイソンちゃん、心配〜! ヤムチャ君が、汚れちゃわないか、バイソンちゃん心配〜!」
ザンギエフ「ま、まぁまぁ……何かあったら、俺がなんとかするから……なっ……?」
ヤムチャ「バイソンさんも、謙虚ないい人そうだな。な〜んか、仲良くやれそうな気がしてきたぞ!」
ベガ「……ヒールは人がよくないと出来ないからな」
ヤムチャ「……ん?」
ベガ「いや、何でもない……忘れてくれ……」
9:
ザンギエフ「さて、じゃあ次は……お〜い! 春麗、ちょっとこっちにこ〜いっ!」
春麗「……」
ヤムチャ「あっ、女性の方もいるんですね?」
ザンギエフ「我がストリートプロレスには、女子部もあるっ! 他にも何名かいるが……どうやら、席を外しているようだな……」
ヤムチャ「ど〜も、自分、ヤムチャといいます。 よろしくお願いしますっ!」
春麗「……」
ヤムチャ「……ん?」
春麗「想像してより、不細工なのね? あんた」
ヤムチャ「……えっ?」
春麗「まぁ、うちの団体の足引っ張らないように頑張ってね? じゃあ、監督……私、練習に戻ります」
ヤムチャ「えっ、えっ……? もう、挨拶おしまい……? 僕、もっと女性とお喋りしたいよぅ」
プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」
12:
ザンギエフ「全く……困った奴だ。ヤムチャ君、すまない……」
ヤムチャ「あっ、大丈夫ですよ! ブルマやランチさん以外の女性と話す事なんてないので、何か新鮮でした!」
プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」
ザンギエフ「彼女は春麗。 我が団体では、女子部のベビーをしてもらっている」
ヤムチャ「……あの〜?」
ザンギエフ「ん、どうした?」
ヤムチャ「さっきから、言ってる『ベビー』って何の事ですかねぇ?」
ザンギエフ「おう、すまんすまん……専門用語なんて使ってもわからんよな! 『ベビー』とは『ベビーフェイス』の事だ!」
ヤムチャ「……ベビーフェイス?」
ザンギエフ「まぁ、平たく言えば『正義の味方』って事だな! そして、ヒールは『悪者』という事だ」
ヤムチャ「……ふ〜ん」
ザンギエフ「だから、うちの団体で言えば、最初に話したベガ君達が『悪者』で……さっの春麗が『正義の味方』いうわけだ!」
13:
ヤムチャ「えっ!?」
ザンギエフ「どうした、ヤムチャ君? そんなに驚いて」
ヤムチャ「さっきの、ベガさんとか、バイソンさんとかって、悪い奴なんですか!?」
ザンギエフ「彼らは『ヒール』だからな」
ヤムチャ「僕は凄く、謙虚でいい人そうに見えましたよ? あの人達、悪い人なんですか!?」
ザンギエフ「……う〜む。そこが、プロレスの難しい所でな」
ヤムチャ「……はぁ?」
ザンギエフ「まぁ、ヤムチャ君もそのうちわかるだろう! 最初に色んな事を詰め込みすぎるのはよくないからな!」
ヤムチャ「はぁ……?」
ザンギエフ「今はとにかく、うちの団体の人間の名前と、その設定をしっかり覚えてくれ! プロレスはそこが一番重要だからな!」
ヤムチャ(名前を覚えろってのはわかるんだけど……設定って何だ、設定って)
ザンギエフ「よ〜し! じゃあ、メンバー紹介を続けようか!」
14:
ーーー
ザンギエフ「どうだ? うちのメンバー事は覚えてくれたか?」
ヤムチャ「え〜っと……幼馴染タッグチームのガイルさんと、ナッシュさんでしょ……?」
ザンギエフ「彼らは女性人気の高いタッグチームだぞ? ヤムチャ君も負けるなよ!?」
ヤムチャ「え〜っと……それと、野生児のブランカさんに……ヨガの達人、ダルシムさん……」
ザンギエフ「プロレスには笑いの要素も必要だ。 彼らは私達が出来ないそういう部分を補ってくれるプロだ」
ヤムチャ「う〜ん……なんか、覚え事いっぱいですねぇ? 設定って、なんですか? 設定って」
ザンギエフ「よ〜し! 次で、最後だ! 最後に照会ずるのは、リュウとケンだ!」
ヤムチャ「リュウ……? ケン……?」
ザンギエフ「お〜い、リュウ! ケン! オファーしてたヤムチャ君がきてくれたぞ! そんな所でサボってないでこっちにこいっ!」
リュウ「……」
ケン「……」
ヤムチャ「あっ、ども。ヤムチャです。よろしくお願いしま〜す」
15:
リュウ「……誰、こいつ?」
ヤムチャ「……ん?」
ザンギエフ「おい……リュウ、ヤムチャ君に失礼だぞ? 折角、オファーを受けてくれたのに」
ケン「ヤムチャ……? あっ! 俺、こいつの事、知ってる!」
ヤムチャ「えっ、 マジで? 君、俺の事知ってるの? じゃあ、サインあげようか? ねぇねぇ、サイン欲しい?」
プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」
ケン「こいつさぁ、セルゲームの時、何もしないでバカ面下げて、見てた奴だよ!」
ヤムチャ「……えっ?」
ケン「それでさ、セルJrにぼっこぼこにされて、泣かされてた奴だよ!」
リュウ「あっ! そういや、いたいた! こいつ、腕折られて泣かされてた!」
ヤムチャ「おい、待て! 腕を折られたのは天津飯だ! それに俺は泣いてねぇ!」
16:
ケン「なんで、こんな奴呼ぶんだよ! サタン様呼べよ! サタン様を!」
リュウ「うちの団体、そんなに金ねぇの? 俺をチャンピオンにしねぇからじゃねぇの?」
ケン「こんな奴、いらねぇよ! 帰れよ、てめぇっ!」
リュウ「お前、うちの団体に何しに来たんだよ!」
ザンギエフ「お前ら、いい加減にせんかああぁぁぁっ!」
ケン「!」ビクッ
リュウ「!」ビクッ
ザンギエフ「……折角、ヤムチャ君がオファーを受けてくれたんだぞ? ヤムチャ君に失礼だろう?」
ケン「……」
リュウ「……」
ザンギエフ「……それに、ヤムチャ君はお前と同じ軍団に入るんだ。これからは、仲間なんだから、しっかりしろ!」
17:
ケン「はぁ!?」
リュウ「こいつ、俺達『空手軍団』に入るのかよ!? いらねぇよ、こんな奴!」
ザンギエフ「待て待て、落ち着け……」
ケン「俺達の会場人気、知ってるのかよ!? なんで、わざわざ今更、こんな奴入れるんだよ!?」
リュウ「お前、監督の立場利用しすぎじゃねぇのか? なぁ、ザンギエフ?」
ザンギエフ「まぁ、待て待て……お前達の今日の試合はシャドルー軍団との抗争だ……」
ケン「だから、なんなんだよ」
リュウ「話、逸らしてるんじゃねーよ」
ザンギエフ「お前達は、ストーリー上、負けてもらう事になっている……だが、お前達の会場人気は本物だ……」
ケン「……」
リュウ「……」
ザンギエフ「お前達を無駄に負けさせる事はしたくない……だから、ヤムチャ君を呼んだんだよ?」
18:
ケン「あぁ……なぁ〜る程……」
リュウ「そういう事……ね……?」
ザンギエフ「試合の内容はお前達に任せる。勿論、ヤムチャ君の使い方も、だ……」
ケン「なぁ〜んだ……監督もわかってんじゃねぇか!」
リュウ「そういう事なら、有り難く使わせてもらうぜ? 監督さんよぉ?」
ザンギエフ「お前達の試合は第五試合。時間は20分目安にしてある。20分が来たら、負けてくれ」
ケン「は〜い」
リュウ「了解〜」
ザンギエフ「では、リュウ、ケン……それに、ヤムチャ君……今日は頼んだぞ?」
ヤムチャ「僕、話があまりわかってないんだけど、大丈夫ですかねぇ?」
19:
ケン「いいってよ、いいってよ。 お前は俺達に任せておけばいいからよ?」
ヤムチャ「はぁ……?」
リュウ「じゃあ、とりあえず、打ち合わせだけしておこうか? 俺、飯食いに行きたいからさ?」
ヤムチャ「……打ち合わせ?」
ケン「……どうする、リュウ?」
リュウ「そうだなぁ……じゃあ、ようやくこいつの出番が回ってきたと思ったらさぁ……?」
ケン「うんうん」
リュウ「こいつ、何もできず、いきなりボコボコにされちまうってのは、どうよ!?」
ヤムチャ「……ん?」
20:
ケン「うおっ! いいねぇ! それ、面白そうっ!」
リュウ「なっ!? だろ? だろだろ?」
ケン「それで……負けたこいつを、俺達が励まして、っと……」
リュウ「女性の悲鳴がキャ〜っ! 会場人気がドーンっ! ってな?」
ケン「じゃあ、それで行こう! よしっ、打ち合わせお終いっと! リュウ、飯食いに行こうか!?」
リュウ「そうだな! 今日は肉食うか! 肉!」
ヤムチャ「えっ……? ちょっと、ちょっと……?」
ケン「じゃあ、しっかやれよ! ヤムチャ君よぉ!」
リュウ「鳴り物ルーキー君には、期待してますからよぉ!」
ヤムチャ「えっ……? 何の話だったんだ? 俺、何もわかっちゃいないぞ?」
23:
数時間後ーー
プーアル「ヤムチャ様! これが今日の予定仕合だそうです! ちゃんとヤムチャ様の出番もありますよ!」
ヤムチャ「おい、プーアル……俺、今日入団したばかりだぞ……? そんな奴がいきなり試合に出て大丈夫なのかよ?」
プーアル「それだけ、ヤムチャ様が期待されてるって事じゃないんですかね?」
ヤムチャ「……そういう事なのかねぇ?」
プーアル「まぁ、頑張りましょうよ、ヤムチャ様! せっかくお仕事決まったんですから!」
ヤムチャ「うん、そうだな! じゃあ、自分の出番を確認するか! え〜っと……ん……?」
プーアル「……あれ? ヤムチャ様、どうしたんですか?」
24:
本日の予定試合
第一試合(10分決着)
◯コーディ ― ガイ ×
第二試合(10分決着)
×ブランカ ― ソドム◯
第三試合(15分決着)
◯ 春麗  ―  さくら×
第四試合(15分決着)
◯ナッシュ ― Tホーク×
  ガイル   フェイロン
第五試合(20分決着)
×リュウ  ― サガット◯
  ケン    バルログ
 ヤムチャ  バイソン
第六試合(30分決着)
×ベガ  ― ザンギエフ◯
33:
ヤムチャ「なんじゃこりゃ!?」
プーアル「ヤムチャ様、どうしたんですか? そんなに驚いて」
ヤムチャ「どうしたもこうしたもねぇだろが! プーアル、この予定表見てみろよ!」
プーアル「え〜っと、どれどれ……ん……?」
ヤムチャ「これ、もう勝敗が決まってるじゃねぇか! どうなってるんだよ!?」
プーアル「あれ、本当だ! ヤムチャ様にデカデカとバッテン印がつけられていますね」
ヤムチャ「なんだコレ! 印刷ミスにしても、あまりに失礼すぎるだろっ!」
プーアル「……予想とか?」
ヤムチャ「……は?」
プーアル「いや、だから……この人が負けて……この人が勝つんじゃないかって予想とか……」
ヤムチャ「だから、俺は弱いけどそこらの一般の格闘家なんかよりかは、まだ強いんだって!」
プーアル「……じゃあ、どういう事なんでしょうねぇ?」
ヤムチャ「とにかく、ザンギエフさんに聞いてみよう! 基本的に、あの人言ってる事、わかんねぇんだよ!」
35:
ーーー
ヤムチャ「あの……ザンギエフさ〜ん!?」
ザンギエフ「……どうした、ヤムチャ? もう、第一試合は始まってるぞ? あまり、うろちょろするな」
ヤムチャ「あの、ザンギエフさん……この予定表の事なんですがね……?」
ザンギエフ「……それがどうした?」
ヤムチャ「これ、僕の所にデカデカと×印がつけられてるけど、どういう事なんですかねぇ?」
ザンギエフ「……見ての通りだが?」
ヤムチャ「……は?」
ザンギエフ「お前が、負けるんだよ。 バイソンにフォールを取られてな」
ヤムチャ「……はぁ?」
ザンギエフ「……おっ? 第一試合が終わったみたいだな?」
「お〜っと、ここでコーディ選手の逆エビ固めで、ガイ選手がギブアップ! コーディ選手の勝利ですっ!」
ザンギエフ「……8分か。 2分足りてないな。 仕方ない、春麗達に試合を伸ばしてもらおう」
ヤムチャ「……」
36:
ザンギエフ「お前にも、あれと同じ事をしてもらう」
ヤムチャ「……はぁ?」
ザンギエフ「予定表の所を見てみろ? 第一試合のコーディとガイの、勝敗はどうなっている?」
ヤムチャ「えっ……? それは……コーディの勝ちになっています……」
ザンギエフ「……試合の決着時間は?」
ヤムチャ「10分……決着と書いています……」
ザンギエフ「今の結果を見てみろ。 試合時間は10分に満たない8分だったが、コーディの勝利で試合が終わっただろう?」
ヤムチャ「……えっ?」
ザンギエフ「彼らはその通りにやり切ったんだよ。 これがプロレスだ」
37:
ヤムチャ「ちょ、ちょっと、待って下さいよ!」
ザンギエフ「……どうした?」
ヤムチャ「じゃあ、俺にもわざと負けろって言うんですか!?」
ザンギエフ「……その通りだ」
ヤムチャ「これって、格闘家なんでしょ!? こんな風に、始めから勝敗が決まっているなんて、これって八百長じゃないですか?」
ザンギエフ「八百長ではない。プロレスだ」
ヤムチャ「なぁ〜んで、俺がそんな真似しなくちゃいけねぇんだよ! こっちは腐っても、格闘家だっての!」
ザンギエフ「今のお前は、我が団体所属のプロレスラーだ。契約はもう、済んでいるんだからな」
ヤムチャ「……はぁ?」
ザンギエフ「とにかく、現場監督の俺の発言には従ってもらう」
38:
ザンギエフ「ちなみに、お前はどう負けるつもりなんだ?」
ヤムチャ「……はぁ?」
ザンギエフ「そこに、書いてあるだろう? 今日の第五試合は、お前の負けで決着する。お前はどう負けるつもりなんだ?」
ヤムチャ「いや……いきなり、そんな八百長しろって言われても……俺……」
ザンギエフ「リュウ達と打ち合わせをしたのではないのか?」
ヤムチャ「いや……あの、二人……何、言ってるかわかんまま、飯食いに行って……」
ザンギエフ「チッ……! あの馬鹿、プロレスの仕組みすら説明してねぇのかっ……!」
ヤムチャ「それで……そのまま戻ってこなくて……」
ザンギエフ「仕方ない、今すぐバイソンと打ち合わせして来いっ! あいつらなら、なんとかしてくれるだろう!」
ヤムチャ「……えっ?」
ザンギエフ「早くしろっ! 第五試合まで時間がねぇんだっ!」
40:
ーーー
ソドム「拙者のラリアットをお見舞いするでござる
ブランカ「……ウガ?」
ソドム「でええぇぇぇやぁぁぁっ!」
ブランカ「……エレクトリックサンダー」
ソドム「あばばばばばばばば」
観客「wwwwwww」
サガット「モニター越しじゃなくて、生で見たかったな」
バルログ「ブランカさん、上手いですね。 凄く、観客の笑いをとってる」
バイソン「ソドムさんのリアクションも上手いんじゃね? あの人、第二試合にしてるのは勿体ないよ」
コンコン
バイソン「……ん?」
ヤムチャ「あの〜?」
41:
バイソン「あれ? ヤムチャ君じゃない、どうしたの?」
サガット「あっ、この方が新入りのヤムチャさん? 自分はサガットと言います。よろしくお願いします」
バルログ「私はバルログと申します。 本日の試合はよろしくお願いしますね」
ヤムチャ「あっ、自分はヤムチャと申します……よろしくお願いします」
バイソン「……で、こんな楽屋にまで何の用?」
ヤムチャ「いやぁ……なんか、ザンギエフさんが打ち合わせしてこいって……」
サガット「そうだな。ヤムチャ君のムーブも知らないんだし、打ち合わせは入念にしておいた方がいいな」
バルログ「私はルチャ系ですからね。 一歩間違えれば、大怪我に繋がります」
バイソン「じゃあ、打ち合わせしようか? ヤムチャ君はどういう風な展開がいい?」
ヤムチャ「いや、あの……」
42:
ヤムチャ「あの……今から、俺達八百長するんですよね!?」
サガット「八百長じゃねぇよ」
ヤムチャ「でも、俺、負けなきゃいけないんでしょ!?」
バルログ「その用に決められていますからね」
ヤムチャ「じゃあ、八百長じゃないですか!? これって、格闘技なんでしょ?」
バイソン「……あれ? もしかして、ヤムチャ君ってプロレス始めて?」
ヤムチャ「はい、プロレスはやった事ないっす……」
バイソン「う〜ん……困ったなぁ……じゃあ、何処から説明しようかなぁ……?」
ヤムチャ「……はぁ?」
43:
プロレスはショービジネスだからね
44:
>>41
ちょw帝王さん低姿勢wグランドタイガーショットかよw
45:
バイソン「試合まで、時間もないし、簡潔に説明するよ」
ヤムチャ「……はぁ」
バイソン「先ず、今日の試合、ヤムチャ君にはわざと負けてもらう。それは決定事項。もう、変えられない」
ヤムチャ「……でも、それって」
バイソン「そうだね、八百長だね。でも、それは決まった事。仕方ない」
ヤムチャ「……」
バイソン「君には不本意な事かもしれないけど、君がこの団体と契約した以上は、そうしてもらう」
ヤムチャ「……なんで、こんな事に」
バイソン「……でも、負け方にも色々な負け方があるよね?」
ヤムチャ「……えっ?」
48:
バイソン「例えば、相手をギリギリまで追い詰めたけど、一瞬の隙を疲れて負けちゃった」
ヤムチャ「……」
バイソン「相手と互角の勝負をして、僅差の勝負で負けてしまった」
ヤムチャ「……」
バイソン「強い相手と戦って、何もできずに、ボロボロにさせられて負けちゃった」
ヤムチャ「……」
バイソン「さぁ、ヤムチャ君はどれが一番いいと思う?」
ヤムチャ「……えっ?」
バイソン「どんな負け方をしたら、今日、ここに集まってくれているお客さんは、一番盛り上がると思う?」
ヤムチャ「……えっ?」
バイソン「君はただ、負けるだけじゃないんだ。君の負けで大きな価値を作ろう」
ヤムチャ「負けに価値なんて、あるのかよ……」
バイソン「とにかく、今からそれを皆で打ち合わせしよう! リュウ君達には、何か言われてないの?」
50:
ヤムチャ「あっ、そういえば……」
バイソン「何か指示があったの?」
ヤムチャ「何もできずに、ボコボコにされろって、言ってたような……」
バイソン「……えっ?」
ヤムチャ「それで、俺達が慰めて、女性人気がどうとかこうとか言ってたような……」
サガット「……酷ぇ」
バルログ「……美しくない」
バイソン「なんだよ、それ! あいつら、自分の事しか考えてねぇじゃんっ!」
ヤムチャ「あ〜、俺……そういう、あの人達にいい格好させる為だけに呼ばれたの?」
51: >>49 おk 2014/09/17(水)19:07:54 ID:1GnxxdSlZ
バイソン「ダメだ! そんな負け方は絶対にダメだよ! これからのヤムチャ君が潰れちゃうよ!」
ヤムチャ「な、なんすか……急に熱くなっちゃって……」
サガット「……ヤムチャ君、何か必殺技とかねぇの? ちょっと、ムーブ見せてよ」
ヤムチャ「ムーブ……? 何、言ってるかわかんないすけど、必殺技ならありますよ? 狼牙風風拳って奴が」
バルログ「ほ〜う……素敵な名前ですねぇ。是非、見せて頂きたいです」
ヤムチャ「でも、どうせ俺、負けなきゃいけないんでしょ?」
バイソン「いいから、いいから! 早く見せてよ!」
ヤムチャ「もう、面倒臭いなぁ……じゃあ、狼牙風風拳っ……! ホワチャアッ!」
53:
サガット「凄ぇっ!」
バルログ「美しいっ!」
バイソン「凄い凄いっ! 凄く格好いいじゃん、それ!」
ヤムチャ「えっ……? そうっすか……? なんか……照れちゃうなぁ……」
サガット「それ、やったら絶対、会場盛り上がるじゃん!? それ、やろうぜ!?」
バルログ「そうですね。 きっと、これからのヤムチャ君も期待されるでしょう」
バイソン「じゃあ、20分ぐらいになったら、ヤムチャ君がその技してよ!?」
ヤムチャ「……えっ?」
バイソン「後は、僕が上手い事して、なんとかするからさぁ!? ねっ?」
ヤムチャ「……でも、結局負けるんでしょ、俺?」
バイソン「いいから、いいからっ! 騙されたと思ってやってみなよ! 試合が終わったら、絶対プロレスの楽しさがわかるからさぁ!?」
ヤムチャ「……」
56:
そしてーー
プーアル「ヤムチャ様っ! ナッシュさんが、フェイオンさんから3カウントとりましたよ!」
ヤムチャ「うん。だって、ここに書いてあるもん。知ってる……」
プーアル「次がヤムチャ様の試合ですよ! 頑張って下さいねっ!」
ヤムチャ「頑張って負ければいいの? バカじゃねぇの?」
プーアル「……それにしても、ヤムチャ様の仲間の二人、遅いですねぇ? もう、始まっちゃいますよ?」
ヤムチャ「……何、してるんだろ。あの二人」
リュウ「うわぁ……危ね、危ね……遅刻ギリギリっ……!」
ケン「まぁ、間に合ったから、いいじゃねぇか! いや〜、ちょっとのんびり遊びすぎちまったな!」
プーアル「あっ! 戻ってきましたよ!」
ヤムチャ「……この二人、大丈夫かねぇ?」
58:
リュウ「お〜い、新入り……」
ヤムチャ「……ん?」
ケン「今から、俺達の入場だけどよ? お前はしばらく、そこで待っておけ」
ヤムチャ「えっ……? 俺、試合出ないんですか?」
リュウ「バーカ! 俺達が先に行って……マイクで、お前を呼ぶから……」
ケン「おめぇはそのタイミングに合わせて出てこいって、話だよ」
ヤムチャ「ふ〜ん」
リュウ「おめぇは、余計な事するなよ!? 全部、俺達の言う通りにしておけっ!」
ケン「絶対、格好つけたり、気取ったりするんじゃねぇぞ!? お前は俺達のおまけなんだからよぉ!?」
ヤムチャ「……」
59:
ーーー
ダン「さぁ、試合はいよいよ、第五試合……空手軍団対シャドルー軍団……因縁のスペシャルマッチですっ!」
ワー、ワーワー
ダン「女性の皆様、お待たせしましたっ! 我らがヒーロー……」
キャー、キャーキャー
ダン「リュウ、ケン選手の入場ですっ!」
キャー、キャーキャー
リュウ「今日こそは、シャドルー軍団を絶対に倒すっ! なぁ、ケンっ!」
ケン「あぁっ! 俺達の力を合わせれば、絶対にできるさ、リュウっ!」
キャー、ステキー
65:
実況「さー、華やかな声援に包まれ、今リュウ選手とケン選手が入場しております!」
キャー、キャーキャー
リュウ「俺は俺より強い奴に会いにきたっ!」
リュウー、カッコイイー
ケン「あまり、熱くなりすぎるなよ、リュウ!」
ケンー、ステキー
実況「さー、リュウ選手、ケン選手……今、リングインっ! 場内大歓声ですっ!」
67:
実況「……ん? おっと、ここでリュウ選手がマイクを握りました。どうしたんでしょう?」
リュウ「皆、聞いてくれっ!」
ザワザワ……ザワザワ……
リュウ「最近、俺達はシャドルーとの抗争で、いい結果を残せていない……」
ソンナコトナイゾ-! リュウ、ガンバレ-!
リュウ「……だがっ! それは、奴らがいつも三人がかりで、卑怯な手段を使っているだけだからだ!」
ソウダソウダ-! シャドルーハヒキョウダ-!
リュウ「正々堂々と勝負をすれば……俺達は絶対に勝つ!」
ソウダソウダ-!
リュウ「だからっ! 今日はそんな奴らに勝つ為に、秘策を用意してきたっ!」
68:
ナンダ、ナンダ……?
リュウ「……皆には言ってはいなかったが、俺達の師匠は他にもまだ、弟子を持っているんだ」
ザワザワ……ザワザワ……
リュウ「今日は、俺達の弟分にあたる、三番弟子を連れてきたっ!」
オーッ! オーッ!
リュウ「実力はまだ俺達には遠く及ばないが……だが、これでこっちも三人っ! シャドルーに対抗する事が出来るぞ!」
オーッ! オーッ!
リュウ「さぁっ、紹介しよう! 皆、暖かい声援で迎えてやってくれ! ヤムチャ、お前の出番だっ!」
プーアル「あっ! ヤムチャ様、呼ばれてますよ? このタイミングで入場するんじゃないですかね?」
ヤムチャ「……えっ? 俺、あいつらの弟弟子なの? 違うよ、俺の師匠は無天老師様とか、界王神様だよ」
プーアル「いや、でも呼ばれてますって……! とにかく、ヤムチャ様、入場して下さいっ!」
69:
実況「お〜っと、これは驚きだぁ! なんと、空手軍団に新メンバー加入か!?」
ヤムチャ「おいおい……こりゃ、いったいどうなってんだよ……」
実況「お〜っと! 初登場で緊張しているのでしょうか!? ヤムチャ選手、なんだかたどたどしいですっ!」
ヤムチャ「うわっ……すげぇ、お客さんいるじゃん……」
実況「さぁ! 三番弟子であるヤムチャ選手の入場ですっ! いったい、どんな戦いを見せてくれるのでしょうか!?」
ヤムチャ「と、とりあえず……リングに行けばいいのか……あそこで戦うんだよな……」
ワー! ワー!
実況「暖かい歓声に包まれながら、今っ! ヤムチャ選手、リングイ〜ンっ!」
ワー! ワー!
ヤムチャ「お、おいおい……この人達の前で、俺、八百長しなきゃいけねぇの……?」
70:
リュウ「ヤムチャっ! よく来てくれたな! 待ってたぞっ!」
ヤムチャ「待ってたって……打ち合わせ通りじゃないすか……」
ケン「……余計な事、言うんじゃねぇ」ボソッ
ヤムチャ「……えっ?」
ケン「……マイクを持ってんのはリュウなんだ。後は、リュウに任せてお前は黙っておけ」
ヤムチャ「……えっ? えっ?」
リュウ「さぁ、ヤムチャっ! 今日、ここでお前が師匠から学んだ成果を見せるんだっ!」
ヤムチャ「いや、だから……」
ケン「……だから、黙ってろって。緊張してる感じに見えて、丁度いいんだからよぉ?」
ヤムチャ「……えっ? えっ?」
リュウ「さぁ! 今日の試合は三人の力を合わせて必ず勝とうっ!」
ワー! イイゾー!
71:
ーーー
ダン「続きましては……プロレス界から世界征服を狙う……シャドルー軍団……」
ダン「サガット選手、バルログ選手、バイソン選手の入場ですっ!」
サガット「……」
バルログ「……」
バイソン「……」
ブー、ブーブー
実況「さぁ、先程の声援とは打って変わって、大ブーイングだっ! 悪の組織、シャドルー軍団の入場ですっ!」
72:
プロレスのこうゆうノリは大好きだ
73:
ブー、ブーブー
バイソン「うるせぇ、クソアマっ! ブーイングばかっりしてんじゃねぇぞ! この馬鹿がっ!」
ヤムチャ「……ん?」
バイソン「お前らはちょっと、イケメン見ただけで、す〜ぐチヤホヤするんだな!?」
実況「お〜っと、バイソン……いつものように、お客さんに噛み付いていますっ! 大丈夫でしょうかね、あの女性」
女「バイソン、すきっ歯でブサイクwwwww」
バイソン「なんだと、てめぇコノヤロっ! だったらてめぇの歯も抜いてやろうか!? えぇ!?」
女「バイソン、ブサイクーwwwww」
バイソン「この野郎……てめぇ! ちょっとこっちに来いっ! おめぇの歯も抜いてやるよ、コラっ!」
ヤムチャ「バイソンさん、何してるの……? あんた、そんな人じゃなかったじゃん!」
75:
バルログ「フ……バイソンおやめなさい……」
バイソン「でも、バルログ……このアマがよぉ……?」
バルログ「彼女は……本当の美しさが理解できない、センスのない人間なのでしょう……」
女「バルログ、キモいよ〜wwwww」
バルログ「いいえ、わかっていないのは、あなたです……世界で一番美しいのはこの私……」
実況「お〜っと! ナルシストのバルログ……また、今日も入場中に格好をつけております!」
バルログ「美しい私を差し置いて……あんな野蛮な方に夢中になるなんて……少し、センスを磨いた方がよろしいのではないですかね?」
女「だからバルログ、キモいってwwwww」
76:
サガット「……お前ら、その辺にしておけ」
バルログ「……ん?」
バイソン「でもよぉ……サガット、このアマが……」
サガット「フン、好きに言わせておけ……帝王はゴミになど、興味がないわ……興味があるのは勝利の味だけよ……」
バルログ「フ、サガットらしいですね……では、本日も美しく勝利を頂くとしましょう……」
バイソン「よかったなぁ、クソアマ! お前、サガットのおかげで、命拾いしたじゃねぇか!」
女「アハハ、バイソン頑張ってねぇ〜」
バイソン「今更、おべっか使ったってもう遅ぇよ! 次、会場で見かけたらも〜っと、酷い事してやるから、覚悟しておけよ!?」
女「わかった〜! じゃあ、また来るね〜!」
78:
実況「さぁ、今ようやくシャドルー軍団がリングインっ! 本日も試合前から大暴れでございますっ!」
ヤムチャ「あれ……? ケンさん、バイソンさん達ってあんな人達でしたっけ……?」
ケン「……お前はもう黙ってろ」
ダン「それでは、本日の第五試合……30分一本勝負を行いますっ!」
ヤムチャ「……あれ、30分? 20分じゃなかったっけ?」
ケン「もう、お前は黙ってろ……20分決着だからよぉ?」
実況「さぁ! 今、試合が始まります! さて、この30分一本勝負! 試合の結末はどうなってしまうのでしょうか!?」
79:
実況「では、解説の元さん、よろしくお願いしますっ!」
元「はい、よろしくお願いします」
実況「今回の試合、元さんはどういった点に注目されます?」
元「やっぱり、三番弟子の……え〜っと、ヤムチャ君? でしたっけ?」
実況「はい、その通りです」
元「彼がどのようなファイトスタイルなのかが、一つの大きなポイントになりそうじゃないですかね?」
実況「そうですね! ヤムチャ選手の動きに注目して見ていきましょう!」
元「まぁ、三番弟子なんだし、先発で出るのは彼なんじゃないの?」
実況「シャドルー軍団の先発は……バイソンですっ……!」
バイソン「……」
実況「そして、空手軍団からは……ん? おっ……? おぉっ……?」
リュウ「……」
実況「リュウです! 先発はリュウが出ますっ!」
元「……あら、予想外れちゃったね」
82: >>80 おk 2014/09/18(木)20:04:43 ID:csQuxdv9c
ケン「おい、新入り……?」
ヤムチャ「……はい?」
ケン「とりあえず、お前はこのコーナーサイドでずっと立ってるだけでいいから?」
ヤムチャ「……はぁ」
ケン「18分ぐらいになったら、俺がお前にタッチするから……それまでは、ここでずっと待ってろ」
ヤムチャ「それだけで、いいんですかね……?」
ケン「まぁ、リュウがやられてる時とかは、『頑張れ〜!』とか……リュウが勝ってる時は『いいぞ〜!』とか……そういう声出ししておけばいいから」
ヤムチャ「なるほどなるほど……」
ケン「後は、細かい事が来たら、その場で指示がするから……まぁ、臨機応変に対応しろや」
83:
実況「さぁ……今、試合開始のゴングが鳴らされようと……」
バイソン「おらぁっ!」ガスッ!
リュウ「……ぐっ!」
バイソン「おらおら! このクソボケっ! ちょっと顔がいいからって、調子乗ってんじゃねぇぞっ!」ガスガス
リュウ「……ぐっ! ぐっ!」
実況「お〜っとっ! ゴングがなる前にバイソンの奇襲攻撃だっ!」
元「……これはいけませんね」
実況「今、慌ててゴングが鳴らされますっ! さぁ、この試合どうなってしまうのでしょうっ!」
カーン!
84:
ケン「おいっ! 何やってんだ、コラっ! 卑怯だろっ!」
バイソン「へへ、知るかよ……このバーカ! おらっ!」ガスガス
リュウ「……ぐっ! ぐっ!」
ケン「……おいっ! おめぇも声出せって!」
ヤムチャ「あっ、そっか……! ちょっと、バイソンさん! 卑怯っすよ! ルールは守りましょうよ!」
ケン「……バカっ!」
リュウ「……ぐっ!」
実況「おぉ〜っと! ここで、リュウたまらず場外にエスケープ!」
元「一度、仕切り直そうという事ですね」
86:
ケン「リュウ、大丈夫かオイっ! 俺が行こうか!?」
リュウ「……いや、大丈夫だ。 俺に任せてくれ」
ケン「よしっ! じゃあ、気合入れて行ってこいや!」
リュウ「あぁ!」
実況「さぁ、リュウここで再びリングイ〜ンっ!」
バイソン「へへへっ! おいっ! 今からこいつをぼっこぼこにしてやるから、よ〜く見ておけよ!?」
ブー、ブーブー
実況「なぁ〜んと、ふてぶてしい態度! 会場からはブーイングの嵐です!」
元「どういう教育を受けてきてるんでしょうね、彼は」
87:
実況「さぁっ! 仕切り直して、今試合が始まりますっ!」
バイソン「へへへ、いくぞオイっ!」
リュウ「……来いっ!」
ヤムチャ(これ、いつ声出しが来るかわかったもんじゃないな……気ィ抜けねぇや……)
ケン「……おい、新入り」
ヤムチャ「あっ、どうしたんですか?」
ケン「今のはさぁ、声が小さかったからよかったけど、相手にさん付けとかはやめろ。俺達は勝負してるんだから」
ヤムチャ「あっ……すんません……」
ケン「とにかく、お前が思いつく限りの、薄汚い言葉で相手を罵れ。バカでも、ボケでもなんでもいいからよぉ?」
ヤムチャ(ベジータの真似とかすれば、いいのかね?)
ケン「それと、声……小さすぎ。もっと腹から声出せ」
ヤムチャ「……小さかったっすか?」
89:
ケン「あのね……俺やリュウだけに声が聞こえても、意味ねぇの」
ヤムチャ「……ん?」
ケン「会場のお客さんに、聞こえるように声を出すんだよ」
ヤムチャ「……会場のお客さん?」
ケン「別に、リュウ励ましたって、意味ねぇじゃねぇか。どうせ、この試合はお前が負けるんだからよぉ?」
ヤムチャ「……そうっすね」
ケン「でも、お客さんは知らねぇんだ。おめぇはそれを煽るんだよ」
ヤムチャ「はぁ……」
ケン「……ほら、リュウが優勢だぞ! おめぇ、やってみろや!」
リュウ「はっ! たぁっ! せやっ!」ガスガス
バイソン「……ぐっ! ぐぐっ!」
92:
ヤムチャ「リュウさんっ! いけぇっ! そのままやっちまえっ!」
リュウ「任せろっ! はぁっ! たぁっ!」ガスガス
バイソン「……ぐっ! ぐぐっ!」
ヤムチャ「……こんな感じっすかね?」
ケン「……ダメ。もっと煽れ。もっともっと!」
ヤムチャ「……も〜う」
ケン「いいからやれって……薄汚い言葉を使ってよぉ!」
ヤムチャ「いけぇ〜! そんな奴、ボロ雑巾にしちまえ〜!」
リュウ「任せろっ! はぁっ! たぁっ!」ガスガス
実況「さぁ! お返しと言わんばかりのリュウの猛攻! バイソン、防戦一方です!」
93:
ヤムチャ「いけぇ〜! そのままやっちまえっ!」
ケン「……よし、もういいぞ」
ヤムチャ「……えっ?」
リ・ュ・ウ ! リ・ュ・ウ !
実況「さぁ! 場内から溢れんばかりのリュウコールだっ! リュウ、まさか、ここで決めてしまうのか!?」
リ・ュ・ウ ! リ・ュ・ウ !
リュウ「よしっ! このまま決めるっ……! いくぞっ……!」
バイソン「!」
実況「おぉ〜っと、あの構えは!?」
元「リュウ君の必殺技の、真・昇龍拳ですね」
97:
バイソン「……ぐっ! まずいっ!」
リュウ「……くっ!」
実況「ここでたまらず、バイソン場外にエスケープっ! 今度はバイソンが場外へ逃げますっ!」
元「……まぁ、一度間を取りにいったんでしょうね」
ブー、ブーブー
実況「場内からは大ブーイングっ! 私が、お客さんの気持ちを代弁しましょう! 真・昇龍拳が見たかったっ! この歯抜けっ!」
バイソン「うるせぇっ! 好き勝手言ってんじゃねぇよ! この野郎っ!」
実況「おぉ〜っと、バイソン、本部席の我々に噛み付いてきています! 一体、どういった教育を受けてきてるのでしょう!?」
元「……あんたが、偏った解説するからじゃないの?」
98:
ケン「……まぁ、あんな風によぉ?」
ヤムチャ「……ん?」
ケン「お客さんを上手い事煽れって事だ……」
ヤムチャ「……はぁ」
ケン「おめぇ、格闘技やってたかもしれねぇけど、こりゃプロレスだ」
ヤムチャ「……」
ケン「プロレスはプロレスなりのルールがあるの……わかった?」
ヤムチャ「……べ、勉強します」
ケン「……ったく、入団するなら、それくらい覚えてこいや。面倒臭ぇ」
99:
サガット「何をやっている! バイソンっ!」
バイソン「あっ……す、すんません……」
サガット「もういいっ! 俺が出る! 交代だ!」
バイソン「わ、わかりました……」
実況「おっと……バイソン、ここでサガットにタッチして交代です。 次はサガットが出ます!」
サガット「フン……帝王の力を見せてやろう……」
リュウ「望む所だ! かかって来いっ!」
100:
ケン「……おい、新入り?」
ヤムチャ「あっ、また、声出しっすか?」
ケン「いや……多分、もうすぐバルログが俺達の所に突っ込んでくるからよ?」
ヤムチャ「……へ?」
ケン「あそこからダーって、走ってきて、俺達に蹴りを喰らわせると思う」
ヤムチャ「……何で分かるんですか?」
ケン「……だから、それがプロレスなのっ!」
ヤムチャ「……で、その蹴りを避けずに喰らうって事っすか?」
ケン「お〜、ちょっとはわかってきたみてぇだな! 蹴り喰らったら、そのまま大ダメージ喰らったふりして、暫く場外で寝ておけ」
ヤムチャ「……わかりました」
ケン「俺がいいって言うまで、絶対に起き上がるんじゃねぇぞ? わかったな?」
ヤムチャ「……は〜い」
101:
>ヤムチャ「……は〜い」
ヤムチャやる気ねぇw
102:
サガット「いくぞ、リュウっ!」
リュウ「こいっ! サガット!」
サガット「うおおっ! タイガーっ!アッパー……」
リュウ「それならこっちは……昇竜拳だっ!」
実況「おぉ〜っと! あの構えはっ!」
元「タイガーアッパーカットと、昇竜拳……お互いの得意技のぶつかり合いですね……」
サガット「……フ」ニヤリ
リュウ「!」
サガット「甘いっ! タイガーニー!」ドゴッ
実況「いやっ、屈んだのはフェイントだっ……! これはタイガーニーだっ! サガットのタイガーニーがリュウに炸裂〜っ!」
元「どてっ腹にいいのもらっちゃいましたね」
103:
リュウ「ぐっ……うおぉ……」ヨロヨロ
実況「おおっと! これはダメージが大きそうだ! リュウ、かなり苦しんでますっ!」
サガット「よしっ……うおおっ!」
実況「そしてサガットが、リュウを自軍コーナーへと、降り投げたぁっ!」
元「……これ、ちょっとマズいかもしれませんね?」
ケン「……おいっ! 来るぞっ!」
ヤムチャ「えっ……?」
104:
バルログ「ヒャオッ!」
実況「おっと! バルログがトップロープを飛び越えてリングの中へっ!」
バルログ「……ヒョォオオオ」ダダッ
実況「そして、バルログは……そのまま、ケンとヤムチャの元へ突っ込んでいったぁ〜!」
元「あ〜、これ分担作戦ですね」
バルログ「ヒャオッ! ヒャオッ!」シュッ、シュッ
ケン「……ぐっ!」
ヤムチャ「いて」
実況「おぉ〜っと! ドロップキック二連発! 華麗な空中殺法でケンとヤムチャをけちらしたぁ〜!」
元「いや〜、いいフォームしてますよねぇ」
105:
実況「おぉ〜っと、大変だいつの間にやら、バイソンもリングに入ってきていますっ!」
元「あ〜、これ三対一ですねぇ」
実況「リング上にはリュウ一人! レフェリーも必死に制しようとしていますが、そこは悪の軍団! そんな事など、お構いなしだっ!」
ダン「ちょっと……三体一だから……やめなさいって……」アタフタ
サガット「試合権利は俺にあるだろうがっ! 俺がここにいる事になんの問題があるんだよぉ!?」
ダン「じゃあ……他の二人に、言うからさぁ……?」
サガット「うちのメンバーにアヤつけんじゃねぇよ! 言いたい事があるなら、大将の俺に言えやっ!」
ダン「あんた、滅茶苦茶じゃねぇか!」
バルログ「ヒャオッ! ヒャオッ!」ガスガス
バイソン「おらおらっ! くたばりやがれ、リュウ!」ガスガス
リュウ「ぐっ……うっ……」
106:
実況「これはリュウ、大ピンチっ! 場内からはブーイングの嵐だっ!」
ブー、ブーブー
バイソン「へへ、ブーイングが気持ちいいぜぇ、おい」ガスガス
バルログ「勝利こそが一番美しいのです……過程などは問題ではないのです……」ガスガス
リュウ「ぐっ……! うっ……!」
実況「いや〜、憎たらしいっ! 実に憎たらしいっ! 解説の元さん、これどう思います!?」
元「う〜ん、とりあえず、ケン君と……ヤムチャ君だっけ……? 助けに行った方がいいんじゃない?」
実況「しかし、ケンとヤムチャは、先程のバルログの攻撃で大ダメージっ! 二人は動けませんっ!」
ケン「ぐっ……ううっ……」
ヤムチャ(……ダメージなんて受けてねぇよ。好き勝手、言ってやがるな、あの解説)
107:
観客「ケン、立って〜! リュウがピンチだよ〜!」
ケン「ぐっ……ううっ……」
観客「おいっ! おめぇも立てよ! 兄弟子のピンチを何とかしやがれっ!」
ヤムチャ(だって、起き上がっちゃダメって言われてるんだもん……)
観客「ケ〜ンっ! しっかり〜!」
ケン「くそっ……うおおっ……!」ヨロヨロ
実況「おっ!? ケン起き上がったぞっ!?」
ヤムチャ(おっ……って、事は俺も起き上がっていいのかな?)チラッ
ケン「……」ギロッ
ヤムチャ「!」
ケン「うおおぉっ! リュウっ! 今、助けに行くぜぇっ!」
ヤムチャ(何だよ、今のは怖い目は! よくわかんないけど、とりあえず、このまま寝ていた方がいい気がする……)
115:
実況「さぁ! ここでケンが復帰だっ! 捕まっているリュウの元へと駆けつけますっ!」
バルログ「サガット! 後ろっ……!」
サガット「……ん?」
ケン「うおおおぉぉぉっ!」ガスッ
サガット「……ぐっ!」
キャー! ケーン!
ケン「てめぇら、好き勝手にやってんじゃねぇぞゴルァっ!」
サガット「くっ……このクソ餓鬼が、舐めやがって……!」
118:
サガット「バルログっ! バイソンっ! こいつも纏めてやっちまうぞっ!」
ケン「上等だっ! かかってきやがれっ! 纏めて相手にしてやるよっ!」
バルログ「生意気な……いきますよ、バイソンっ! ヒャオッ!」ガスッ
バイソン「あぁっ! ちょっと顔がいいからって、調子に乗ってるんじゃねぇぞっ!」ガスッ
ケン「ぐっ……! くそっ、空手軍団舐めんじゃねぇぞゴラァっ!」
実況「さぁ! リング上は滅茶苦茶になっておりますっ! この戦い、一体どうなってしまうんでしょうか!?」
サガット「小僧、舐めやがって……貴様は、この帝王が直々にとどめを刺してくれるわ……」ワナワナ
120:
リュウ「おい、サガット……待てよ……」
サガット「……ぬ?」
リュウ「ケンが頑張っているんだ……俺だって、こんな所で倒れてちゃいけない……」
サガット「……こいつ」
リュウ「お前達の好き勝手にはさせないっ……! はぁっ!」ガスッ
サガット「ぐっ!」
実況「おぉ〜っと! ケンの気合が伝わったのか!? ここでリュウも復活っ! 行けっ! シャドルー軍団に制裁を与えてしまえっ!」
リュウ「うおおぉぉっ!」
サガット「舐めてんじゃねぇぞゴミがぁっ! うおおぉぉっ!」
121:
ケン「リュウっ! やっちまうぞっ!
リュウ「あぁっ! わかっているっ! ケンっ!」
バイソン「上等だコラっ! お前ら纏めてやってやるよっ!」
バルログ「シャドルー軍団の恐ろしさ……その身で味わいなさいっ……!」
サガット「お前らは、今日ここで潰してやるっ! うおおおぉぉっ!」
実況「さぁ、リング上は大乱戦っ! 両者入り乱れての大乱戦でございますっ!」
元「う〜ん……これ、早く一体一に戻さないと、危ないよ? レフェリー、何してるのかな……?」
ダン「おいっ! お前ら、いい加減にしろよっ! ちゃんと試合しやがれって!」
123:
ヤムチャはまだ伸びてるふりしてるんだったな
124:
実況「いや〜……しかし、こういった戦いもプロレスの醍醐味なのではないですかねぇ、元さん?」
元「あっ、そういう事じゃなくてね……?」
実況「ん……? と、言いますと……?」
元「ヤムチャ君だっけ……? 彼がまだ、復帰してないじゃない? これ、二対三じゃない?」
実況「あっ、確かに……! 今、リング上にいるのは、リュウ、ケンの二人とサガット、バルログ、バイソンの三人っ!」
元「ねっ? リュウ君達に不利な状況でしょ? あの、二人も冷静になって、一体一の状況をちゃんと、作らなきゃ」
実況「もしくは、早くヤムチャに復帰してもらい、三対三の状況を作るか!」
元「だから、レフェリーの彼も、早く止めなきゃ……こういう事はさぁ……?」
125:
ダン「お前ら、いい加減にしやがれっ! この試合、無効試合にしてやろうか!? ノーコンテストにするぞ!?」
サガット「わかった、わかった……二人を引っ込めてやるよ、だからノーコンテストは勘弁してくれ、なっ?」
ダン「だったら、早く試合権利を持ってねぇ奴は下がりやがれっ!」
バルログ「フッ、では大人しく従いましょうか……」
バイソン「まぁ、結構ボコボコにできたしな……へへ、まぁここらが潮時か……」
ケン「おいっ! おめぇら舐めてんじゃねぇぞっ!」
ダン「ケンっ! お前も下がれっ! 今、試合権利を持っているのはリュウとサガットと二人だっ!」
ケン「うるせぇっ! 今更引っ込みがつくわけねぇだろっ! こらっ!」
ダン「ノーコンテストにするぞ!? いいのか!? 下がらないとこの試合はノーコンテストだっ!」
ケン「ぐっ……! く、くそっ……わかったよ……」
126:
実況「さぁ、ようやくここで、両者収まったでしょうか。 おっと、ここでサガットがバルログに交代します」
サガット「……バルログ、次はお前が行け。 あんな死に損ない、倒すのはもう楽勝だろう」
バルログ「では……私が、美しく勝利をいただきましょう……」
リュウ「……来いっ!」
ダン「おい、ケン……お前は、外に倒れてる奴をなんとかしてやれよ……」
ケン「……ん?」
ダン「ほら、あいつ……いつまで伸びてんだよ? 怪我とかしてるんじゃねぇのか……?」
ケン「しまったっ……! ヤムチャっ……! 大丈夫か!」
127:
観客「おいっ! 新入りっ! 何、やってるんだよ!」
ヤムチャ(聞こえない……聞こえない……)
観客「早く起きろよ! 何やってんだ!」
ヤムチャ(だって、今起きたら、絶対怒られるぜ? 俺、あいつベジータそっくりで、苦手なんだよ……もう、刺激したくねぇよ……)
ケン「おいっ! ヤムチャ、しっかりしろっ!」
ヤムチャ(おっ……? もう、いいのかな?)
ケン「おいっ、起きろっ! ヤムチャ、しっかりしろっ!」
ヤムチャ(もう、いいのかねぇ? これ?)ムクッ
ケン「くそっ、バルログの野郎……汚ぇ、不意打ちしやがって……こいつはまだ、慣れてねぇんだ……あんな事されても対応できねぇよ……」
ドンマーイ! ツギハシッカリー!
ケン「あぁっ! まだまだ、俺達はこれからだっ! 安心してくれ! 今日は必ず勝つっ!」
キャー! ケン、カッコイイー!
128:
ケン「よし! ヤムチャ、じゃあ戻るぞ! いつでもリュウにタッチできるように準備しておけっ!」
ヤムチャ「はい……わかりました……」
ケン「……声が小せぇ」ボソッ
ヤムチャ「わ、わかりましたっ……! つ、次こそは頑張りますっ!」
ケン「よし、ヤムチャっ! その意気だっ!」
ヤムチャ「は、はいっ……!」
観客「新入り、次は頑張れよ〜! 今の所、いいトコなしだぞおめぇ!」
ヤムチャ(うるせぇな……俺は指示された通りにちゃんとやってんだよ……)
129:
ケン「……まぁ、とりあえず、お疲れ」
ヤムチャ「……あっ、どもっす」
ケン「もうちょっと、ダメージ喰らった振りしててもいいぞ? 俺を見習え、俺様を……」
ヤムチャ「……あの〜? ちょっと質問、いいっすかねぇ?」
ケン「……なんだよ?」
ヤムチャ「今の行動に、何の意味があったんですかね? 俺、ずっと伸びてる振りしてましたけど……」
ケン「……おめぇは、本当に素人なんだな? なんで、こんな奴が第五試合なんだよ」
ヤムチャ「す、すいません……」
ケン「この試合……俺達の負けで試合は終わるだろ……?」
ヤムチャ「そうですね。僕の負けで試合が終わりますね」
ケン「おめぇじゃねぇよ……俺達だよ」
ヤムチャ「……俺達?」
130:
ケン「だから、今……負ける為の理由を少しずつ作ってるの……」
ヤムチャ「……理由?」
ケン「お前が伸びてたせいで、俺とリュウの二人で、三人相手にして……そりゃ、ダメージ喰らっても仕方ねぇだろ……」
ヤムチャ「……」
ケン「……と、お客さんはそう思うわな?」
ヤムチャ「……な、なる程」
ケン「そういう事を……少しずつ、少しずつ積み上げて……試合を作っていくの。それがプロレス」
ヤムチャ「ただただ、負けりゃあいいってもんなんじゃないんですね……」
ケン「まぁ、今日のおめぇは、指示された通りにあっさり負ければいいからよ? 余計な事は考えなくていいから」
ヤムチャ「は、はい……! わかりました……!」
131:
バルログ「ヒャオッ!」
リュウ「……ぐっ!」
実況「さぁ! 決まったぁ! バルログのスイングDDTっ! 流れるような動きで、リュウの脳天をマットに叩きつけていきますっ!」
元「……う〜ん」
バルログ「ヒョオォォッ!」
実況「そして、その場で一回転してからのボディプレスっ! いやぁ、なんという身体能力だっ!」
ダン「ワンっ……! ツーっ……! ス……」
リュウ「……ぐっ!」
実況「カウントはツーっ! 2.85でございますっ! リュウ、なんとかこれを返していきますっ!」
元「……ちょっと、リュウ君が捕まってる時間、長いよね?」
132:
元「なんだかんだ、言ってねぇ? シャドルーは上手いと思いますよ?」
実況「ほ〜う、元さん……それは、どういった所を?」
バルログ「バイソン……次は貴方が行きなさい……」
バイソン「おうっ! 任せておけっ! あんな死に損ない、ボコボコにしてやるよっ!」
元「ほら、今度はバイソン君が出てきたけどさぁ?」
実況「ここで、バルログはバイソンにタッチして交代っ!」
元「シャドルーはなんだかんだで、上手い事交代して、それぞれスタミナを回復させながら、やってるじゃん?」
実況「なるほど!」
133:
バイソン「おらおらっ! この糞がっ!」ガスガス
リュウ「ぐっ……! ぐっ……!」
ケン「リュウ、こっちだっ! お前は一度休めっ!」
リュウ「ぐっ! ケ、ケンっ……!」
バイソン「させねぇよっ! この野郎っ!」
実況「おぉ〜っと! タッチをしに行こうとしたリュウを、バイソンがロープに振ったぁ〜!」
元「ねっ? タッチさせてもらえてないでしょ? ちょっと、リュウ君のスタミナが心配だねぇ」
リュウ「……ぐっ!」
バイソン「……へへ、いくぜぇ。オイ」ニヤニヤ
134:
実況「そして、ロープから帰ってきたリュウに……!」
バイソン「おらぁっ! 死ねぇっ!」ドゴォッ
リュウ「……がっ!」
実況「決まったぁ〜! バイソン式、アックスボンバーっ!」
元「……あれ、完全に拳で殴ってますよね?」
実況「本人はアックスボンバーだと、言い張っていますが断じて違いますっ! あれは完全に拳で殴っているだけの反則技ですっ!」
元「……一応、肘は曲げて型は作ってるんだね。彼もよく悪知恵が働くもんだね」
実況「さぁ! リュウはリングの中央にダーウンっ! ここまま決まってしまうのかっ!?」
バイソン「へへ、よし……このまま終わりにしてやるぜぇ……」
リュウ「……」
135:
実況「さぁっ……! バイソンがのっそのっそとトップロープに登り……」
バイソン「へへ、リュウ……これで終わりだ……」
実況「さぁっ! 出るか出るかっ! バイソンのダイビングヘッドバッドっ!」
元「……いやっ! ケン君が動いたっ!」
ケン「させるか、てめぇっ! この野郎っ!」ドゴォッ
バイソン「何っ……! しまった……! ぐあっ!」
実況「おぉ〜っとっ! ケンの蹴りでバイソンを迎撃っ! これは流石のバイソンも大ダメージかっ!?」
元「……ケン君、よく見てましたね」
実況「そして、そのままバイソンはコーナーポストから、転げ落ちたぁ!」
元「これ、チャンスですよ。 ここで、一度代わった方がいいですね」
136:
実況「しかし、リュウも大ダメージを受けております! さぁ、ここで交代できるか!?」
リュウ「ぐっ……ケンっ……」
実況「這いずりながらも、ケンの元へと! 一歩、また一歩と近づいていきます!」
リュウ「……ケ、ケン」
ケン「リュウっ! もう少しだっ! こっちに来いっ!」
実況「さぁ! ケンも必死に手を伸ばし、リュウも待ちますっ!」
リュウ「ケン……後は、任せた……」パシッ
ケン「あぁっ! よくここまで頑張ったっ! あとは俺に任せておけっ!」パシッ
実況「さぁっ! ここで、タッチが成立〜! 試合権利はケンへと移りますっ!」
元「おっ、バイソン君も起き上がりましたよ?」
144:
ケン「よくも好き勝手にやってくれたじゃねぇかっ! オラオラオラっ!」ガスガス
バイソン「……ぐっ! うぐっ!」
実況「さぁっ! ケンの蹴りっ! 蹴りっ! そしてまた、蹴りっ! バイソンを滅多打ちだぁ〜!」
ケン「オラオラっ! ここからは好き勝手にはさせないぜっ!」ガスガス
バイソン「……ぐっ! くそっ! この野郎っ!」
リュウ「ケンっ! いいぞっ! そのままやっちまえっ!」
ヤムチャ「お、おっと……ケンさ〜んっ! いいっすよ〜!」
ケン「任せろっ! このまま決めてやるぜっ! オラオラオラっ!」ガスガス
145:
ケ・ン ! ケ・ン !
実況「さぁっ! 場内からは、溢れんばかりのケンコールっ! ケン、この声援に応える事が出来るかっ!?」
ケン「よしっ……! くたばれっ……! この歯抜け野郎がっ!」
バイソン「てめぇ、あまり調子に乗ってると……」
ケン「……うおおぉぉっ!」
バイソン「何っ! しまった……!」
実況「お〜っと……!? ケンのあの構えはっ……!?」
ケン「竜巻旋風脚だぁ!」ドゴォッ
バイソン「ぐ、ぐわああぁぁっ!」
実況「出たぁ〜! ケンの竜巻旋風脚っ! バイソンにクリィィィンヒットォっ!」
147:
実況「そのままバイソンは吹っ飛んでコーナーポストに激突だぁ!」
バイソン「……ぐっ!」
サガット「チッ、バイソンっ! 何をしている! 奴らを調子に乗らせるな!」
バイソン「ぐっ……! わ、悪ぃ……」
サガット「……交代だっ! 俺が出るっ!」パシッ
実況「さぁ、ここでバイソンはサガットにタッチして交代だぁっ!」
元「……いやぁ、もうちょっとだったのにねぇ。惜しかったね」
サガット「この帝王の力っ……! 思い知らせてやるっ!」
148:
ケン「うるせぇっ! こっちは鬱憤が溜まってんだっ! いくぞオイっ!」
サガット「何っ……!? こいつ、早いっ……!」
ケン「オラオラオラっ! 空手軍団舐めんじゃねぇぞ、ゴルァっ!」ガスガス
サガット「くっ……! ぐっ! くそっ!」
実況「いやっ! だが、ケンの勢いは止まらないぞ!? サガットにも、蹴りの嵐だっ!」
元「いいですね。 このまま押し切っちゃいましょう」
ケン「オラァっ! オラオラっ! 舐めてんじゃねぇぞゴルァっ!」ガスガス
サガット「……くっ! くそっ!」
実況「さぁっ! ケンの大暴れは止まらないっ! いいぞっ! このまま決めてしまえっ!」
149:
リュウ「……おい、新入り?」
ヤムチャ「あっ、はい……また、声出しっすか?」
リュウ「声出し…… なんだそりゃ? そうじゃなくてよぉ……」
ヤムチャ「あれ、違うんですか……」
リュウ「……お前、ミサイル技、何か持ってる?」
ヤムチャ「ミサイル技……? なんですか、それ……?」
リュウ「……って、事はねぇんだな」
ヤムチャ「あっ、えっと……何か、すいません……」
リュウ「いいよいいよ……じゃあ、バイソンになんとかしてもらうから……」
ヤムチャ「……はぁ」
150:
リュウ「まぁ、今からリング上で、色々と巻き起こるけどさぁ……?」
ヤムチャ「……はぁ」
リュウ「おめぇは、余計な事しなくていいから、その場でずっと待機しておけ」
ヤムチャ「ま、また……待機っすか……?」
リュウ「……何? 文句でもあるの?」ギロッ
ヤムチャ「い、いえいえっ……! 滅相もないっ……!」
リュウ「そしたら、バイソンがお前に、攻撃仕掛けにくるからさぁ……?」
ヤムチャ「は、はい……」
リュウ「……お前、それ喰らったら暫く場外でやられた振りしとけ」
ヤムチャ「ま、またっすか……?」
リュウ「……文句あんの?」ギロッ
ヤムチャ「いえっ! わ、わかりましたっ!」
151:
ケン「うおおぉぉっ! オラッ!」ガスガス
サガット「……ぐっ! くそっ!」
ケン「お前もだぁ! いくぞっ! 竜巻旋風脚っ!」ドゴォッ
サガット「ぐ、ぐわああぁぁっ!」
実況「さぁっ! またも、ケンの竜巻旋風脚が炸裂〜! サガットは吹っ飛んで、大きくダーウンっ!」
ケ・ン ! ケ・ン !
ケン「お〜うっ! 皆、見たか! 正々堂々と戦えば、空手軍団がこんな奴らに負けるわけねぇんだよっ!」
実況「さぁ、場内からの声援にケンもアピールしながら応えておりますっ! これが空手軍団の真の実力だぁ!」
元「……油断しちゃダメっ! バルログが動いているよ!」
実況「……ん?」
153:
バルログ「フッ、戦いの最中に隙を見せるとは……美しくありませんね……」
実況「おっと、おっと……! バルログがいつの間にやら、コーナーポストに昇っているぞ!?」
ケン「このまま決めてやるからよぉ!? 皆、俺達の力をしっかり目に焼き付けておけやっ!」
実況「ケンは気づいていないっ! ケンは気づいていないぞっ!? このままでは危ないっ!」
元「一対一の戦いならともかく……隙を見せたら、すぐ動いてくるからね、シャドルーは……」
ケン「よ〜し! じゃあ、今からとどめを……」クルッ
バルログ「……フッ」
ケン「しまったっ……! バルログの野郎っ……!」
バルログ「気づくのが少し遅かったようですね……ヒャオォッ!」
実況「バルログが跳んだああぁぁぁぁっ!」
154:
バルログ「ヒョオォォォッ!」
ケン「ぐっ!」
実況「決まったぁっ! バルログのミサイルキック〜っ! コーナーポストに最上段からのドロップキックをケンにぶち当てた〜!」
元「……いやぁ、本当、フォームはいいですよねぇ?」
ブー、ブー
実況「場内からは大ブーイングでありますっ!」
元「そりゃ、あんな闇討ちみたいな事をしちゃ、そうなりますよ……」
バルログ「フッ……何故、ブーイングをするのですか? 私の美しいフォームを見れて光栄のはずでしょう?」
実況「おぉ〜っと、ナルシストのバルログ、またも格好をつけておりますっ!」
155:
バルログ「さぁ、ブーイングではなく……美しい声援を私に送りなさい……」
キャー、キャー
バルログ「そう、それでいいのです……ようやく、あなた方も私の美しさを理解したようですね……」
キャー! リュウー! イケー!
バルログ「リュウ……? 何故、彼の名前を今……も、もしや……!」クルッ
リュウ「……バルログ、戦いの最中に隙を見せるのはよくないんじゃないか?」
バルログ「し、しまったっ……!」
リュウ「これはお返しだっ! いくぞっ! ミサイル竜巻旋風脚っ!」
実況「さぁ! バルログが格好をつけている間に、コーナーポストに昇っていたリュウが今……跳んだああぁぁぁぁっ!」
156:
リュウ「たああぁぁっ!」
バルログ「……ぐっ!」
実況「さぁっ! リュウのミサイル竜巻旋風脚が炸裂っ! バルログを吹っ飛ばしたぁっ!」
元「コーナーポスト最上段からの竜巻旋風脚ですからね。これは効くでしょう」
リュウ「まだだっ! まだ、終わっちゃいないぞっ! 立てっ、バルログっ!」
バルログ「うっ……ううっ……」ヨロヨロ
実況「そして、ダウンしたバルログを引きずり起こして……出るか出るか出るかぁ!?」
リュウ「うおおぉぉっ! 昇竜拳っ!」ドゴォッ
バルログ「……ガッ!」
実況「出たぁ〜! 昇竜拳っ! これは決まったかぁ!?」
元「えぇ、ダメージ大きいと思いますよ? バルログ君もたまらず、場外にエスケープしますね」
157:
リュウ「ケンっ! 今がチャンスだっ!」
ケン「よしっ! 合体技だっ! リュウ!」
実況「さぁ、リュウとケンがサガットを引きずり起こし……出るか出るか出るかぁ!?」
サガット「うっ……ううっ……」ヨロヨロ
リュウ「いくぞっ! ダブルっ!」
ケン「昇竜拳っ!」
サガット「……ガ、ガハっ」
実況「出たぁ〜! ダブル昇竜拳っ! 二人の合体技がサガットに炸裂だぁっ!」
元「いいですねぇ。このまま決めちゃいましょう」
158:
リュウ「よしっ! 後はスリーカウントをとるだけだっ!」
ケン「よしっ! これで俺達の勝ち……」
バイソン「……うおおおぉぉぉっ!」ダダッ
リュウ「……何っ!?」
ケン「……バイソンっ!?」
実況「いやっ! バイソンがまだ、残っていた! バイソンが一直線に突っ込んできたぞっ! これはマズいっ!」
ヤムチャ(おっ……? 来るのかね? そろそろ、来るのかね?)
159:
バイソン「舐めてんじゃねぇぞ!」ドゴォッ!
リュウ「……ぐわっ!」
バイソン「この野郎っ!」ドゴォッ!
ケン「……がっ!」
バイソン「さっきから、好き放題やりやがって……おめぇもだよぉ! うおおぉぉっ!」
実況「さぁ! バイソンが二人をなぎ倒して……次はコーナーのヤムチャも蹴散らしに行ったぁ!」
元「……凄い、ラフファイトしてますよね。ああいう時のバイソン君って強いんですよ」
バイソン「うおおおぉぉ! おめぇもだよぉ!」
ヤムチャ(お、おおっ……きたきた……)
バイソン「だあぁぁぁっ! くたばれぇぇっ!」ドゴォッ!
ヤムチャ「いて」
実況「さぁ! バイソン、ラフファイトであっという間に三人を蹴散らしたぁ! リュウは大ダメージでたまらず、場外にエスケープっ!」
元「あ〜、これ……また捕まっちゃいそうですね……」
160:
バイソン「サガットっ! 大丈夫かっ!」
サガット「ぐっ、助かったぜ……悪かったな……」
バイソン「このクソバカを今から、やっちまいましょう! 二人でよぉ!?」
サガット「あぁ、小僧……覚悟するんだな……」
ケン「うっ……ううっ……」ヨロヨロ
バイソン「……おらぁっ!」ガスッ
ケン「……ぐっ!」
サガット「……ふんっ!」ガスッ
ケン「……ぐあっ!」
実況「さぁ! リング上ではケンが、サガットとバイソンの二人に捕まってしまったぁっ! これはマズいぞっ!」
元「……シャドルーって、本当、卑怯な作戦上手いよね」
161:
ヤムチャ「……」
観客「おいっ! 起きろっ! 三番弟子!」
ヤムチャ(なるほどねぇ……)
観客「ケンがピンチじゃねぇかっ! 早く助けに行きやがれっ!」
ヤムチャ(こうやって……今度はケンさんがダメージ喰らったって事にしてるのか……)
観客「早く助けにいけよ! 負けちまうぞ、お前らっ!」
ヤムチャ(この人達、ただ八百長してるんじゃなくて……色々やってるんだね……)
観客「おいっ! 聞いてんのか! おいっ!」
ヤムチャ(……ん、待てよ?)
観客「おいっ!」
ヤムチャ(じゃあ、俺の負けはどうなるんだ……? この人達、負ける為に色々としてるのに、俺には何もするなって言ってたよな?)
175:
サガット「……ふんっ!」ガスッ
ケン「……ぐっ!」
バイソン「オラオラァ!」ガスガス
ケン「……ち、ちくしょう」
実況「さぁっ! 卑怯二人掛かりでケンを滅多打ちに! ここで終わってしまうのか、ケンっ! いやっ! きっと、そんな事はないっ!」
元「……苦しい状況とは思いますが、なんとか踏ん張ってもらいたいですねぇ」
サガット「バイソンっ! 合体技だ、いくぞっ!」
バイソン「おうっ! 任せて下さいっ!」
ケン「!」
実況「おぉ〜っと! ここで合体技だぁ〜! 二人掛かりでケンを高々と持ち上げたぁ〜!」
176:
サガット「……おおぉぉぉっ!」
バイソン「……うらああぁぁっ!」
ケン「ぐ、ぐわあああぁぁぁっ!」
実況「出たぁ〜! ダブルブレーンバスターっ! ケンの身体をマットへと叩きつけるっ!」
サガット「よしっ! バイソンっ! とどめだっ!」
バイソン「……うっすっ!」
ケン「うっ……ううっ……」ヨロヨロ
実況「さぁっ! サガットがケンを引きずり起こし……その間にバイソンはロープへと走ったっ! 来るぞ来るぞ来るぞっ!」
バイソン「おらあぁぁっ! ケンっ! 死ねぇぇぇっ!」ドゴオォォッ
ケン「……ガッ!」
実況「出たぁ〜! バイソン式、アックスボンバー! 何度も言わせていたただきますが、これは反則技でありますっ!」
元「……ケン君、危ないねぇコレ」
実況「ケンは大きくダーウンっ! このまま、決まってしまうのかっ!?」
177:
サガット「……フンっ!」ググッ
ケン「……ぐっ!」
実況「さぁ、そして! 間髪いれずにサガットのSTF! S・T・Fでありますっ! 関節技でケンの身体をギリギリと絞り上げていきますっ!」
サガット「オラッ! 早くギブアップしろ、ゴラァっ!」
ケン「ぐっ……! 誰がてめぇらなんかに……」
サガット「だったら、もっと締め付けてやるよ、オラッ!」ググッ
ケン「……ぐ、ぐわああぁぁっ!」
実況「さぁ、STFでケンの身体を絞り上げていきますっ! おそらく、今のケンの顔、足、そして腰には激痛が走っているんでしょうねぇ、元さん?」
元「……サガット君は長身で手足も長いからね。 ちょっと、この関節技は解きにくいよねぇ」
179:
サガット「オラオラっ! 早くギブアップをしやがれっ!」グイグイ
ケン「ぐっ、ロープまで……ロープまで逃げるんだ……」
実況「さぁ! それならば、ケンはロープブレイクで逃げようと関節技を受けつつも、ロープまで必死に逃げます!」
元「まぁ、サガット君みたいな体格の人間にあんな関節技をかけられたら、そうやって逃げるしかないよね?」
実況「えぇ。プロレスのルールでは、関節技を受けている時にロープに触れれば、かけている方は解かなければ反則になってしまいますからね」
元「……でも、サガット君、外してくれるかなぁ? だって、あの人ルール守ってないじゃん?」
実況「いや〜! まぁ、そこはレフェリーがなんとかしてくれるんじゃないですかねぇ?」
元「……あのレフェリーの人も大丈夫なの?」
ダン「おいっ! リュウ! バルログっ! お前ら、怪我とかしてねぇか? 大丈夫なら、早く自軍コーナーに戻れよ!?」
実況「……ん?」
元「……ほら? あの人、何処見てるのよ? なんで場外見てんのさ?」
180:
ケ・ン ! ケ・ン!
実況「さぁ、会場からはケンコールだっ! 私にはお客さんの声援がまるで『ケン、もう少しでロープブレイクだよ!』と言っているように聞こえるっ!」
ケン「ぐっ、もう少しだっ……」
サガット「……くそっ、こいつ、しぶといな」
ケン「よ、よしっ……これでロープブレイクだ……」
実況「さぁ! これで、ロープブレイクだっ! ケンがロープに手を伸ばすっ!」
バイソン「……へへ、残念」ググッ
ケン「ぐっ!」
実況「何ということだっ! ロープに伸びようとしたケンの手を、バイソンが非情にも踏みつけましたっ! これではケンはロープに逃げる事ができませんっ!」
元「……なんで、バイソン君をまず止めないのよ? レフェリー、何してるのよ?」
ダン「お〜いっ! リュウにバルログ〜! お前ら、大丈夫なのかぁ〜?」
実況「あ〜! レフェリー、そこじゃないっ! あなたは見るのはそこじゃないっ! あなたの背後の非情な行為を見て欲しいっ!」
181:
バルログ「へへ……」グリグリ
ケン「……ぐっ!」
サガット「オラっ! オラっ!」グイグイ
ケン「ぐ、ぐわあぁぁ……」
実況「さぁ、こうしてる間にも、ケンの体力は奪われていきますっ! 元さん、これどうしましょう?」
元「……そりゃ、やっぱり、レフェリーが止めるしかないでしょう? 反則なんだし」
実況「だが、レフェリーは気づいていないっ!」
元「じゃあ、リュウ君と、え〜……ヤムチャ君。彼に、なんとかしてもらわなきゃ」
ブー、ブー
実況「さぁっ! 会場からはシャドルーへの大ブーイングだっ! ケン、大ピンチですっ!」
サガット「オラオラっ! 早くギブアップしやがれっ!」
ケン「ぐっ、くそっ……このままじゃ……」
182:
観客「おいっ! 三番弟子っ! 何やってんだ!」
ヤムチャ(俺は、何もするなって指示されてるし……多分、リュウさんがやるんだろうね……)
観客「リュウ! ケンがピンチだよ! 助けに行ってっ!」
リュウ「う、ううっ……」ヨロヨロ
ダン「おい、リュウ! やっと起きたか?」
リュウ「!」
ダン「怪我がねぇんだったらよ、早く自軍コーナーに戻って……」
リュウ「おいっ! レフェリー! お前、何見てんだよ!」
ダン「……えっ?」
リュウ「あいつら、また汚ねぇ手を使いやがって……ケン、待ってろ! 今、助けに行くぞっ!」
ダン「おい、リュウ! なにやってんだ!? 試合権利のない奴はリングに上がるんじゃねぇよ!」
実況「さぁ! ここで、ようやくリュウが復帰っ! ケンへ助けにと、リングへ上がったぁっ!」
184:
リュウ「お前らまた、汚い手を使いやがってっ!」
バイソン「なんだよ! オラッ! やんのか、リュウっ!」
ケン「よし……ロープを掴んだぞ……」
サガット「それがどうした……? ロープを掴んだからって、この帝王がやめるとでも思ったのか……?」
ダン「……おぉっ! なんじゃこりゃぁっ!?」
リュウ「いい加減にしろぉっ! バイソン! 卑怯だぞっ!」
バイソン「知らねーよ、バーカ! 勝てばいいんだよ、勝てば!」
ダン「おいおい、リュウにバイソン! お前らは試合権利を持ってねぇんだから、とりあえず下がれって!」
サガット「フンッ! うおおぉぉっ!」
ケン「ぐ、ぐわああぁぁっ!」
ダン「おいっ! サガット! お前も何やってんだよ! これ、ロープブレイクだから、離せって! 早く離せっ!」
実況「やぁ〜っと、レフェリーが気づきました! 騒動を収めようと、必死になっております!」
元「まぁ、騒動起こしてるのは、シャドルーの三人だけなんだけどね」
185:
そういやこういう対応力あるのDBじゃヤムチャくらいだな
186:
ダン「サガットっ! お前、反則負けにするぞっ!」
サガット「わかったよ、わかったよ……ほら、やめたから、これでいいだろ?」
ケン「ぐっ……」
ダン「それから、リュウっ! バイソンっ! お前らは下がれっ! 従わねぇなら、ノーコンテストだっ!」
バイソン「へいへい、わかりました〜っと」ニヤニヤ
リュウ「……くそっ!」
ダン「ホレっ! 場外で倒れてる、バルログとヤムチャも、自軍コーナーに戻らせろっ! お前らの試合はどうしていつも荒れるんだよぉっ!」
実況「さぁ、ここでようやく、落ち着いたでしょうか? リング上に、ケンとサガットの二人を残して、両者引き下がります」
元「……レフェリーも苦労してるんだね」
187:
リュウ「おいっ! ヤムチャ! しっかりしろっ!」
ヤムチャ(おっ……きたきた……)
リュウ「おいっ! ヤムチャ! 起きろっ!」
ヤムチャ(おっ、合図が来たな……よし、起きよう……)ムクッ
リュウ「ヤムチャ……大丈夫だったか?」
ヤムチャ「くそっ……すいませんでしたぁっ! リュウさん!」
リュウ「気にするな、まだ試合は始まったばかりだっ! これから取り返すぞ!」
ヤムチャ(……始まったばかり? あれ、そういや今、何時だ? これ、後何分続けるんだ?)
観客「そうだ! そうだ! ここから、巻き返せよっ! 空手軍団っ!」
リュウ「あぁっ! 任せろっ! 必ず俺達は勝つ!」
ヤムチャ(やべぇ……後何分だ? 20分に負けろって言われたのに、今何分たってるか、全くわかんねぇ!)
リュウ「よし、ヤムチャ! 戻るぞ!」
ヤムチャ(……何処かに時計とか、ねぇかな?)キョロキョロ
リュウ「……キョロキョロしてんじゃねぇよ、バカ」ボソッ
ヤムチャ「あっ……! す、すんません……」
188:
リュウ「……とりあえず、お疲れ」
ヤムチャ「あの〜? リュウさん……?」
リュウ「……あぁ? 何だよ?」
ヤムチャ「これ、今……何分ぐらいたってるんですかね……?」
リュウ「お前、たった20分だぞ? それくらい体内時計を持っておけっての」
ヤムチャ「す、すいません……」
リュウ「ったく、なんでこんな奴が第五試合なんだよ……まぁ、今は17分ぐらい……って、所かな?」
ヤムチャ「えっ……! もう、17分もたってるんですか!?」
リュウ「多分、次の攻防が終わったら、お前の出番がくるからよ? 準備しておけよ」
ヤムチャ「な、なんか……急に緊張してきた……」
リュウ「……大丈夫だっての。お前は何もしなくていいんだからよぉ?」
ヤムチャ「……えっ?」
189:
リュウ「お前は……何も出来ずに負ければいいって、最初に行っただろ?」
ヤムチャ「……あの、でもですねぇ?」
リュウ「……あぁ?」
ヤムチャ「今まで、皆さん……負ける為に、色々と理由作ってたじゃないですか?」
リュウ「……そうだね」
ヤムチャ「リュウさんが三対一で大ダメージ受けたり……ケンさんが二対一で大ダメージ受けたり……」
リュウ「……うん」
ヤムチャ「俺の時は、そういうのってないんですかね……?」
リュウ「そもそもさぁ……?」
ヤムチャ「あっ、はい……」
リュウ「お前、そういう攻防出来るの? 俺達みたいな、負ける理由を作る為の攻防って、出来るの?」
ヤムチャ「あっ、いや、それは……俺、プロレス初めてなんで……」
リュウ「じゃあ、余計な事、言うんじゃねぇよ。 黙って負けろよ」
192:
ヤムチャ「でも、それじゃあ、俺 、凄ぇ弱くて格好悪い奴に思われませんかねぇ?」
リュウ「おめぇはそういう役目で来たの!」
ヤムチャ「……えっ?」
リュウ「おめぇはただの俺達の引き立て役なんだよ!」
ヤムチャ「!」
リュウ「おめぇ、格闘仲間の中で、一番弱いんだろ!? そういう話聞いてんぞ!?」
ヤムチャ「いや、一応……下にはチャオズがいます……」
リュウ「誰だよそれ、知らねぇよ! いつもいつも、負けて格好悪い事、してんだろ!?」
ヤムチャ「……は、はい」
リュウ「だったら、それと同じように負けてこいや! 格闘で結果出せねぇ癖にプロレスでいい格好しようとすんなや!」
ヤムチャ「……す、すいません」
193:
サガット「……オラッ!」ブンッ
ケン「……ぐわぁっ!」
実況「さぁ! 自軍コーナーにケンを振り投げて……」
サガット「うおおぉぉっ! タイガーニーっ!」
ケン「ぐ、ぐわああぁぁっ!」
実況「出たぁ〜! 串刺しのタイガーニー! コーナーマットと膝の強烈なサンドイッチ!」
サガット「よしっ! バイソン、とどめは譲ってやるよ……」
バイソン「うっす! 美味しくいただきますっ!」
ケン「く、くそっ……負けてたまるかよ……」
実況「さぁ! サガットはバイソンにバイソンに交代します! ケン、このピンチしのげるか!?」
194:
バイソン「よ〜し、これでとどめにしてやる……」ブンブン
ケン「うっ……ううっ……」
実況「さぁ、バイソンが大きく手を振り回して……アピールしています」
元「あれは、ショートレンジバイソン式アックスボンバーだね……反則だけど」
バイソン「うおおおっ! アックスボンバーっ!」ブンッ
ケン「!」
実況「ついに決まって……! いやっ! ケン、避けたっ!」
元「……ケン君、よく見てましたね」
バイソン「何っ……!? こいつ、まだそんなスタミナが残ってやがったのか!?」
ケン「うおおぉぉっ! だああぁぁっ!」
実況「そして、ケンの張り手が炸裂〜! カウンターの強烈な一打だっ!」
元「深追いしちゃダメですよ……ここは、一度態勢を整えた方がいいと思います」
195:
バイソン「おっ……おおっ……」クラクラ
実況「バイソン、大ダメージ! 大きく、よろけていますっ!」
リュウ「ケンっ! こっちだっ! 一度下がれ!」
ケン「あ、あぁ……すまない……」ヨロヨロ
リュウ「次はヤムチャ……! お前が行けっ!」
ヤムチャ「!」
ケン「ヤムチャ……任せたぞ……」
ヤムチャ「!」
実況「さぁ、ここでケンはヤムチャに交代だぁ! ヤムチャ! 三番弟子の力はどのようなものなのか!?」
元「そうですね。 初めて見る選手ですからね。期待しましょう」
リュウ「……いいか? わかってんな?」ボソッ
ケン「……余計な事して試合潰すんじゃねぇぞ?」ボソッ
ヤムチャ「あっ……いや、でも……」
210:
ヤムチャ(……なぁ〜んか、急にやる気なくなってきちゃったなぁ)
バイソン「おっ……おおぉっ……次はこいつか……」
実況「さぁっ! ここで新入りのヤムチャ選手がリングインっ! はたしてどんなファイトを見せてくれるのかっ!?」
元「やっぱり、空手スタイルなんですかねぇ? とにかく、期待しましょう」
ヤムチャ(……そりゃ、俺は確かに弱いよ。でも、一般の格闘家よりかは強い自信は、まだあるぞ!?)
バイソン「……くっ、来やがれっ! この野郎っ!」
ヤムチャ(なんで、俺がこんな奴らの為に、八百長なんてしなきゃいけねぇんだよっ! 俺に得なんて一つもねぇよっ!」
バイソン「よしっ! 行くぞっ! このクソガキめっ!」
ヤムチャ(……うるせぇよ。早く来いよ。もう、ちゃっちゃと終わらせてぇからよ)
実況「さぁ! これは両者、間合いを測っているのでしょうかねぇ!? 元さん」
元「そうだねぇ……まだ、どんなスタイルかわかってないし、バイソン君も攻めにくいよねぇ」
212:
バイソン「お〜しっ! 一発で決めてやるから、覚悟しろよぉ!?」
ヤムチャ(……はいはい。一発で決められてやるよ)
バイソン「この俺様の一撃必殺技……ギガトンブローで……」
ヤムチャ(……しかし、よく喋る人だね。 さっさと決めればいいのに)
実況「いやぁ! 間合いを測っている両者の緊張感がこちらにも伝わってきそうですねぇ! 元さん!」
元「そうだね。 ヤムチャ君はどんな技、使うんだろうね?」
バイソン「よ〜し、覚悟しておけよ! このクソガキがぁっ!」
ヤムチャ(その台詞、二回目じゃねぇの? バイソンさん、何やって……あれ……?)
バイソン「おめぇをギッタンギッタンの……ボ〜コボコにしてやるよぉっ!」
ヤムチャ(あっ……! そういえば、打ち合わせっ! 確か……俺、打ち合わせしたよ、この人と!)
バイソン「『新人潰しのバイソン』なんてのも、ハクがついていいかもな! ガハハハっ!」
ヤムチャ(これ……俺に、いい所を作らせてくれる為に……攻撃待っててくれてるんだっ!)
214:
ヤムチャ(……だったらっ!)シュッ
実況「おぉ〜っと! ヤムチャが構えたぞっ! 何だ、あの構えは!? 見た事ないぞっ!?」
元「珍しい型してますね? 彼の必殺技なんでしょうか?」
ケン「おい……あいつ、なんかやり始めたぞ……?」
リュウ「……何、やってんだよ。 勝手な事はするなって、言ったのによぉ」
バイソン(ふぅ……ヤムチャ君、やっと気づいてくれたか……変な間が出来ちゃう所だったよ……)
ヤムチャ「いくぞっ! これがっ! 狼牙風風拳だっ!」 ホワチャアっ!」シュッ
バイソン「……えっ?」
216:
ヤムチャ容赦なし
217:
ヤムチャ「ハイっ!」
バイソン「……ガッ!」
ヤムチャ「ハイッ!」
バイソン「……グッ!」
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッ!」
バイソン(や、やば……これ……マジで死ぬ……)
オー! スゲー!アイツ、スゲェゾー!
実況「うおおおぉぉっ! 何だこの技は! 何だこの技は!」
元「……おぉ、素晴らしい連続攻撃ですね。 空手軍団、いい秘密兵器持ってましたね」
実況「秘密兵器ヤムチャっ! 激しい連続攻撃でバイソンを滅多打ちだっ! お客さんの大声援も後押しするっ!」
ヤムチャ「うおおおぉぉっ!」
バイソン(ヤバい……マジで、ヤバい……)
ヤ・ム・チャ ! ヤ・ム・チャ !
218:
バイソン....
219:
ヤムチャ(おぉ、凄ぇ声援……何か気持ちよくなってきたぞ……)
バイソン「ガッ……ぐっ……」
実況「さぁっ! 止まらない止まらない止まらないっ! ヤムチャの連続攻撃は止まらないぃっ!」
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」
バイソン(グッ……! 耐えろっ……! バイソンっ! 試合をぶっ壊すわけにはいかねぇんだっ……!)ヨロヨロ
ヤムチャ「ハイッ! ハイッ! ハイッハイッハイッ!」
バイソン「うおおおぉぉぉっ!」
ヤムチャ「……ん?」
バイソン「調子に乗ってんじゃねぇぞっ! 足元がお留守だゴラァっ!」ガッ
ヤムチャ「……い、痛ぇっ! 弁慶蹴るのは酷いでしょうっ!」
実況「おぉ〜っと! これはローキック……でしょうか? バイソンがなんとか連続攻撃から、抜け出したぁっ!」
元「……バイソン君の蹴りって珍しいですよね? よっぽど、追い詰められてたんじゃないですか?」
220:
おいヤムチャ…
221:
ヤムチャ「がっ……ちくしょう……」
バイソン「……とどめだ」クルッ
ヤムチャ「……えっ?」
バイソン「……ギガトンブロー!」ドゴオォォォッ
ヤムチャ「……あっ」クラッ
実況「決まったああぁっ! バイソンの一撃必殺技っ! ギガトンブローっ!」
ヤムチャ(な、何だよ……最近の格闘家って、強ぇんだなぁ……完全にもらっちまったよ……こりゃ、ダメだ)ヨロヨロ
バイソン「……ヤムチャ君、ごめんね」
ヤムチャ(俺……ここまで弱くなっちまったのかな……あっ、ダメ……もう意識なくなるわ……)バターンッ
実況「おぉ〜っと! ヤムチャ、ダーウンっ! 流石にこの技は耐えられないっ!」
サガット「……バルログ! 行くぞっ!」
バルログ「ええっ! 行きましょうっ!」
222:
バイソン「レフェリー! フォールだっ!」
ダン「よしっ……! ワンっ……ツー……」
実況「さぁ! そのバイソンがフォールに入ったぁっ! これはスリーカウント決まってしまうのかっ!?」
リュウ「……おい! なんなんだよ、今のはよぉっ!」
サガット「リュウ……まだ、試合中だっ! 落ち着けっ!」
ケン「おめぇら、何か余計な事を……」
バルログ「ケン! 落ち着きましょう! まだ、お客さんの前なんですから……」
実況「さぁ! カットしようとしているリュウとケンを、サガットとバルログが妨害っ! これは助けに行けないっ!」
ダン「……スリーっ!」
実況「そして、ここでスリーカウントっ! バイソンのピンフォールで試合は決着ですっ!」
223:
おいwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤムチャしやがって…
224:
225:
リュウ「……おい、おめぇらコイツに何か吹っかけただろ?」
サガット「……リュウ、俺達ジョバーにも、信じられる道って物ぐらいあるんだ」
ケン「……踏み台ごときが語ってんじゃねぇぞコラ」
バルログ「踏み台にだって生きる道はあります……私達はそれを彼に伝えました……」
ダン「……そういう事はリングで話すなって。 ほら、楽屋で話せよ。 お前らはとっとと退場しやがれ」
バイソン「結果的にシュートになった事は反省している……今、ヤムチャ君は本気で伸びている。 手当してやってくれ」
実況「おお〜っと! 何を言っているんでしょうかねぇ? リング上ではリュウ、ケンの二人がシャドルーにつっかかっています!」
元「まぁ、そりゃあれだけの力を持った弟弟子だもんね。つっかかりたくもなるでしょう」
サガット「よし、バルログ、バイソン……退場しよう……」
バルログ「……はい」
バイソン「リュウ……ケン……ヤムチャ君の技での盛り上がり見ただろう? しっかりマイクで締めてやってくれよ……」
実況「さぁ! ここでシャドルー軍団が退場! 本日もやりたい放題しての一試合でしたっ!」
226:
ダン「オイ…… とりあえず、そいつをなんとかしろ……」
リュウ「……」
ケン「……」
ダン「……おいっ! この後にはメインイベントも控えてんだよ。 時間かけんな」
リュウ「ちっ、ケン……やるぞ……」
ケン「……あぁ」
実況「今、兄弟子の二人が弟弟子を介抱していますっ! いやぁ〜、涙ぐましい光景ですねぇ、元さん!」
元「でもね、彼はいい技持ってたんだから、これからだよ! これから!」
実況「え〜、そうでしたね〜! あの怒涛の連続攻撃! あれの技名が気になったりしますねぇ?」
リュウ「おい、カス……寝てんじゃねぇよ……」
ケン「早く起きろよ……手間かけさせんじゃねぇよ、タコ……」
ヤムチャ「……」ピクピク
227:
ヤムチャ「……うっ、ぐぐっ」ムクッ
リュウ「……やっと、起きたか」
ケン「手間かけさてんじゃねぇよ……」
ヤムチャ「あれ? バイソンさん達は……? あれ、試合はどうなったんだ……?」
リュウ「……終わったよ」
ケン「……帰ったよ」
ヤムチャ「あっ、そっか……俺、バイソンに殴られて……あっ、負けたのか……」
実況「お〜っと! ようやく、ここでヤムチャが起きました!
元「いやぁ、無事で良かったんじゃない? いいのもらってたからねぇ」
ヤ・ム・チャ ! ヤ・ム・チャ !
ヤムチャ「……ん?」
228:
実況「おぉ〜っと、ここでヤムチャへの大声援っ!」
元「いやぁ〜! 期待の新人だと思うよ! お客さんもきっと、それわかってるんだろうね」
ヤムチャ「何で、俺の名前、そんなに呼んでるんだよ……俺、負けたんだろ……?」
観客「空手軍団〜! 三番弟子やるじゃねぇか〜!」
観客「次は勝てよ〜! 楽しみにしてるからよぉ〜!」
観客「新人〜! おめぇ、凄ぇ技持ってるじゃねぇか! 後、ちょっとだったな!」
ケン「……チッ」
リュウ「……レフェリー、マイクを貸してくれ。 締めて終わらせるよ」
229:
実況「おっと……ここで、リュウがマイクを握りました」
リュウ「皆……今日は本当にすまないっ……!」
ソンナコトナイゾー! ツギハガンバレー!
リュウ「……だが、皆! 見ただろうっ! このヤムチャが俺達の軍団に加わってくれたんだ!」
ヤムチャ「……へ?」
オー! ソウダソウダー!
リュウ「今日は、奴らの好き放題にされたが……次は違うっ! 必ず、この三人で勝つ!」
ワー、ワー
リュウ「最後に……ヤムチャ……」
ヤムチャ「……ん?」
リュウ「お前の必殺技の名前を……皆知りたがっている……皆に教えてやってくれないかな……?」
オー! オー!
実況「おぉ〜っと! 必殺技の名前が発表されるようです! いやぁ、元さん、気になりますねぇ!?」
元「あんた、ちょっと騒ぎすぎだよ。 ヤムチャ君がマイク握ったんだから、大人しく聞こうよ」
230:
ヤムチャ「あ〜、あ〜、あ〜っと……」
ケン「……余計な事してんじゃねぇよ」
ヤムチャ「あっ、すんません……」
ケン(あ〜、マイク持ってやがるから、余計な事言えねぇよクソ……)
クスクス、クスクス
実況「ヤムチャ選手、初マイクですね!? たどたどしいです!」
元「結構、真面目な子みたいだね」
ヤムチャ「……俺の! 必殺技の名前は、狼牙風風拳だっ!」
オー! スゲー!
実況「必殺技の名前は『狼牙風風拳』! いやぁ、いい名前じゃないですかねぇ、元さん!」
元「そうだね、センスいいんじゃない。僕、横文字の名前はあまり好きじゃないからね」
リュウ「……よし、もういいぞ。マイクよこせ」
ヤムチャ「……えっ、いや、まだあの」
ケン「……うるせ、黙ってろ」
231:
リュウ「この技さえあれば……きっと、シャドルーにも対抗する事が出来るっ……!」
ソウダソウダー!
リュウ「だから、次は必ず勝つ……! 皆、俺達を信じて、応援してくれっ!」
オー! オー!
ダン「……よし、そろそろ締まっただろ。そろそろ、休憩時間に入るから退場しやがれ」
リュウ「……チッ」
ケン「……くそっ」
ヤムチャ「あっ、はい……わかりました……」
実況「さぁ! ここで空手軍団が退場します! いやぁ、しかしこれからのシャドルーとの抗争がどうなるか、気になりますねぇ?」
元「そうだね。でも、ヤムチャ君が思ったより、いい選手だったからね……空手軍団も、勢いつくんじゃないかな?」
実況「えぇ! その勢いでシャドルーをぶっ倒して欲しい物ですね! それではこの辺りで第五試合の中継を終了しま〜す!」
232:
観客「お〜い! 新人! 次は頑張れよ〜!」
ヤムチャ「あっ、はい……ありがとうございます……」
観客「シャドルー倒せよ〜!」
ヤムチャ「あっ、はい……わかりました……」
観客「お〜い! もう一回、あの必殺技、見せてくれよ〜!」
ヤムチャ「えっ……? ここでですか……? どうしようかな……?」
リュウ「……調子に乗んじゃねぇ」ボソッ
ヤムチャ「……えっ」
ケン「……早く退場しろ、ボケ」ボソッ
ヤムチャ「あっ……すんません……」
233:
ーーー
プーアル「ヤムチャ様! お疲れ様でした!」
ヤムチャ「お、おう……」
プーアル「どうしでしたか、始めての試合は?」
ヤムチャ「う〜ん……な〜んか、よくわかんねぇんだよなぁ?」
プーアル「?」
ヤムチャ「いや、何か……俺、負けたのに、色々声援もらってさぁ? あれ、ベジータだったら、絶対『ゴミが』とか言ってたぜ?」
プーアル「そういうのがプロレスなんじゃないんですかね?」
ヤムチャ「……そういうのが? まぁ、悪い気はしなかったけどさぁ?」
リュウ「……調子に乗ってるんじゃねぇ! この糞がぁっ!」ドゴォッ
ヤムチャ「えっ……? ガッ……!」
プーアル「ちょ、ちょっと……! ヤムチャ様に何をするんですか!」
234:
リュウ「あれだけ、勝手な事はするなって言っただろがっ!」ガスガス
ヤムチャ「ぐっ……ぐっ……!」
ケン「おめぇ、自分の役割わかってんのかっ! このカスが!」ガスガス
プーアル「ちょ、ちょっと……! ヤムチャ様が死んでしまいます!」
リュウ「おめぇが、一番目立ってどうすんだよ! おめぇはおまけって言っただろが!」ガスガス
ヤムチャ「……ぐっ、ぐっ!」
ケン「お前、次あの技やったら、殺すからな!? 覚えておけよ!」ガスガス
235:
リュウ「……ったく、まぁ今日はこの辺で勘弁しておいてやるよ」
ケン「……気分直しに飲みに行こうぜ? あ〜、今日の試合は最悪だったぜおい」
プーアル「ヤ、ヤムチャ様っ……!」
ヤムチャ「……うぅ」
プーアル「ヤムチャ様! 大丈夫ですか! ヤムチャ様!?」
ヤムチャ「くっ……なんで、俺がこんな目に……もう試合は終わったんじゃねぇのかよ……」
プーアル「ヤムチャ様! しっかりして下さいっ!」
ヤムチャ「プ、プーアル……もう、俺はダメかもしれない……」
プーアル「あっ! 第六試合が始まったみたいだ! もうちょっと近くに行って見てみよ〜っと!」
ヤムチャ「おい、待て! こっちは死にかけてんだぞ!? なんで第六試合なんか呑気に見てんだよ!」
プーアル「……それだけ口が聞ければ大丈夫です。 ヤムチャ様は丈夫なんだから」
ヤムチャ「……最近、プーアル冷たいよね」
236:
ーーー
ザンギエフ「ふんがぁっ!」
ベガ「ぬっ……ふんっ!」
ザンギエフ「甘いっ! ダブルラリアットだぁ!」
ベガ「……ぐっ!」
プーアル「うわぁ、やっぱり大きい人戦うと迫力がありますねぇ? ホラ、僕達の中で大きい人って16号さんぐらいしかいないから」
ヤムチャ「あれも、負ける理由を作る為の攻防なのかね……?」
プーアル「ヤムチャ様何ですか、それ?」
ヤムチャ「プロレスには、そういうのがあるんだって……」
プーアル「……はぁ」
ヤムチャ「……まぁ、でもどっちが有利なんだろ? お互い、同じぐらいのダメージなんじゃねぇのかな、アレ」
237:
バイソン「あっ! ヤムチャ君、こんな所にいたんだ!」
ヤムチャ「あっ、バイソンさん……」
バイソン「何、してんの? 勉強中?」
ヤムチャ「あっ、まぁ……そんな感じっす……」
バイソン「勉強もいいけどさぁ? 反省会もしようよ」
ヤムチャ「……反省会?」
バイソン「今日の試合の反省会……ヤムチャ君、酷かったんだからね?」
ヤムチャ「あぁ……さっき、それでリュウさんとケンさんにボコボコにされましたよ……」
バイソン「ねっ? だからさ、今から反省会行こう! 反省会!」
ヤムチャ「……反省会って何処に行くんですよ?」
バイソン「近所の居酒屋抑えてあるから……ほら、行こう!」
ヤムチャ「居酒屋って……ザンギエフさん達、まだ試合してますよ? いいんですか?」
バイソン「いいんだよ、後片付けは若い子達がするし……それに、女の子も呼んでるんだから……飲みに行こうよ!」
ヤムチャ「よしっ! バイソンさん、反省会をしに行きましょうか!」
プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」
243:
ちょっと…
バイソンさん、第2形態のフリーザ様くらいなら勝てるんぢゃね?
245:
居酒屋ーー
バイソン「うお〜っすっ! ヤムチャ君連れてきたぞ〜!」
サガット「おう! じゃあ、早歓迎会をしようか!」
バルログ「さぁさぁ、ヤムチャ君も座って座って」
ヤムチャ「ねぇねぇ、それより女の子は何処? ねぇねぇ?」
プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」
さくら「……」
ヤムチャ「おっ? 女の子発見っ! なかなか可愛い子じゃん!」
バイソン「彼女はストリートプロレス女子部の……」
さくら「あんたねぇ! 何考えてるっすかっ!?」
ヤムチャ「!」ビクッ
246:
さくら「いきなり、バイソンさんにシュート仕掛けるなんて信じられないっすよ!」
バイソン「ま、まぁまぁ……さくらちゃん……俺は大丈夫だったし……」
さくら「一歩間違えれば大怪我だったっすよ!」
サガット「まぁまぁ……その反省会で集まったんだからさぁ……そんな言い方しなくてもいいじゃん……」
さくら「あんた、バイソンさん潰す気っすか!?」
バルログ「まぁまぁ……さくらちゃん……」
さくら「あんた、わかってるんですか!?」
ヤムチャ「えっと……あの、俺、何か悪い事したんですかね……?」
247:
さくら「シュートと仕掛けたじゃないっすか!? どういうつもりなんですか!?」
ヤムチャ「えっと……シュートって、何ですかね……?」アセアセ
さくら「……えっ?」
バイソン「ほらね……ヤムチャ君には悪気はなかったみたいだし、仕方ないよ……」
サガット「……まっ、プロレス初心者だしね」
バルログ「これから、勉強して……プロレスの仕組みをヤムチャ君に教えていきましょう」
さくら「マジっすか……マジで知らなかったんすか……」
ヤムチャ「あ、あの……このお嬢さん、もしかして、同業者ですかね……?」
248:
さくら「あっ、そういや、自己紹介がまだっすね」
ヤムチャ「あっ、はい……」
さくら「自分は女子部で、ブッカー兼ジョバー担当している、さくらっす!」
ヤムチャ「ブッカー……? ジョバー……?」
さくら「ヤムチャさん、プロレス初心者なんだから、今日はみっちり指導しますよ! 覚悟するっす!」
ヤムチャ「ちょっと! バイソンさん、女の子来るって、こういう事だったんですか!?」
バイソン「いや〜、女子部の話を聞いてみるのも勉強になると思ったからさ、さくらちゃんも呼んだんだよ」
ヤムチャ「なんだよ……折角、ブルマとランチさん以外の女性と触れ合う機会ができたと思ったのに……結局、プロレスかよ……」
プーアル「……ヤムチャ様、みっともないです」
250:
さくら「とにかく……ヤムチャさんはプロレス初心者なんだから、この飲み会でプロレスのノウハウを徹底的に詰め込んでもらうっす!」
ヤムチャ「……も〜う」
サガット「まぁまぁ、酒飲みながらで、いいからよ? 楽にやろうぜ!」
バイソン「ほら、ヤムチャ君、ビールついであげるよ。 ほらほら」
バルログ「君はプーアル君ですか……? 私がついであげますから、ほら、飲んで飲んで……」
プーアル「あっ、僕お酒飲めないんでプーアル茶でお願いします!」
ヤムチャ「……プーアル馴染んでんじゃねぇよ」
さくら「え〜、じゃあ、先ずはヤムチャさんの一番の問題点、シュートについて学んでもらうっす!」
251:
ヤムチャ「そうだよ、シュートって何かわかんねぇんだよ……まぁ、この際だから、勉強しようかね……」
さくら「おっ! いい心がけっす! 勉強熱心な人は伸びますよ〜?」
ヤムチャ「……どうも」
さくら「先ず、今日の試合で理解はしていると思うっすが、プロレスには勝ち負けが最初から、決まってるっす」
ヤムチャ「そうっすね」
さくら「ヤムチャさんは以前、格闘技やってたんすよね?」
ヤムチャ「……一応、まだ現役なんだけどね」
プーアル「何、言ってるんですか……隠居生活送ってるじゃないですか……」
ヤムチャ「プーアル、うるせぇぞ!」
さくら「え〜っと、ヤムチャさん、確か天下一武道会とか出た事あるっすよね?」
ヤムチャ「あっ、ありますよ! ベスト8に入った事もありますよ!」
さくら「その時の試合は……プロレスみたいに勝ち負けは決まってなかったすよね?」
253:
ヤムチャ「そうっすね……あれは、真剣勝負でした」
さくら「その、真剣勝負の事をシュートと言うっす」
ヤムチャ「……ほう」
さくら「真剣勝負はそれでいいもんなんっすが……真剣な分、例えば五秒で決着がつく事とかもあるっすよね?」
ヤムチャ「あ〜、そういや……予選での悟空やベジータの試合はそんなのばかりかなぁ……」
さくら「プロレスは勝ち負けが決まってる分、試合内容を自由に作れるっす」
ヤムチャ「……ほう」
さくら「勝ち負けが決まっている中で……より、ドラマティックに……より、お客さんが盛り上がるように、試合をするのがプロレスっす」
ヤムチャ「ただの八百長じゃないんだね……プロレスって……」
さくら「格闘家の人は、結構この部分が理解できなかったりするんすよ……でも、ヤムチャさん、結構見込みあるじゃないですか!」
ヤムチャ「……そう?」
254:
ヤムチャ「……でもさぁ?」
さくら「……どうしたっすか?」
ヤムチャ「俺、今日、ちゃんと八百長したよ? 言われた通りに負けたよ? その、真剣勝負のシュートしてないじゃん」
さくら「……はぁ」
ヤムチャ「……あれ? 何、その溜息」
さくら「ヤムチャさん……最後に連続攻撃、バイソンさんにしたっすよね?」
ヤムチャ「あぁ、狼牙風風拳ね……でも、あれもバイソンさんに言われた通りにやったよ?」
さくら「あれ……連続で、バイソンに打撃を浴びせる連続攻撃ですよね……?」
ヤムチャ「そうだよ」
さくら「ヤムチャさん……バイソンの何処に攻撃仕掛けたっすか……?」
255:
ヤムチャ「顔」
さくら「……」
ヤムチャ「あ……後、顎!」
さくら「なんでそんな人間の急所ばかり狙うんすか!?」
ヤムチャ「そ、そういう技なんすよ、アレは……!」
さくら「それは真剣勝負でしょうが! 真剣勝負だったら、いくらでも顔や顎狙っても構わないっすっけど、これはプロレスっすよ!」
ヤムチャ「いや、でもそれじゃあ、ダメージ全然なくなるよ?」
さくら「だから、ダメージ与えなくていいんっすよ! これはプロレスなんだから!」
ヤムチャ「な、何……行ってんだよ、この子……」
257:
バルログ「……ヤムチャ君」
ヤムチャ「あっ、どうしたんですか……バルログさん……」
バルログ「試合中……私は貴方にドロップキックを仕掛け、場外に突き落としましたよねぇ?」
ヤムチャ「あっ、ハイ……リュウさんを、三人ががりでやる前ですよね……」
バルログ「私は、その時。。あなたの何処に攻撃をしましたか?」
ヤムチャ「え〜っと……確か、胸板にきたかな……?」
バルログ「そうです、胸板です。貴方にダメージを与え、場外に突き落とすのなら、私の顔に攻撃を仕掛けるでしょう」
ヤムチャ「……えっ」
バルログ「しかし、私はあえてです……あえて、貴方の筋肉でダメージが軽減されるであろう、胸板に攻撃をしかけたのです」
ヤムチャ「……あっ、はい」
バルログ「ヤムチャ君はそれでも、ちゃんと私からダメージを喰らった振りをしてくれたではありませんか」
ヤムチャ「……あっ!」
258:
バイソン「流石によぉ……? 今日は何とかなったけど、一年の半分くらい、あの技食らったら、俺もいつかは死ぬと思うわ」
ヤムチャ「……半分?」
バイソン「ヤムチャ君……試合は明日もあるんだよ? 明後日も、明々後日もだ」
ヤムチャ「はぁ!?」
バイソン「うちの団体は一年で150試合はするからな。 まぁ、三日に一回は試合があると思っていいよ」
ヤムチャ「そんなに、試合するんですか? 天下一武道会は年一ペースですよ?」
バイソン「そりゃ、あんだけ人の急所を狙って……真剣勝負してるんだったら、それぐらいが限界だよ」
ヤムチャ「……」
バイソン「ヤムチャ君だって、毎日毎日、天下一武道会に出てたら、身体が壊れちまうだろ?」
ヤムチャ(そんなの喜ぶの、ベジータぐらいじゃねぇのか)
バイソン「プロレスってのは、相手にダメージが最も残らないやり方で……それでも、真剣勝負と変わらないように見える戦いを見せなきゃいけないんだよ」
ヤムチャ「……なるほど」
バイソン「今日のヤムチャ君の攻撃は、プロレスの攻撃じゃないよ……真剣勝負の攻撃だったよ……」
259:
ヤムチャ「……す、すいません」
バイソン「いや、まぁ……それはお互い様だけどね」
ヤムチャ「……えっ?」
バイソン「ほら、俺だって……弁慶蹴ったしさぁ……ヤムチャ君の顔面にいいのいれたじゃん?」
ヤムチャ「……あっ、はい」
バイソン「流石に、こっちは死にかけてるのに、相手に寸止め……みたいな器用な真似なんて出来ないよ……」
ヤムチャ「……すんません」
バイソン「いや、まぁ、最初にちゃんと説明してなかった俺達も悪かったんだけどね?」
ヤムチャ「あっ……いや……」
バイソン「ヤムチャ君は格闘家だったみたいなんだし、最初に説明するべきだったよ……」
ヤムチャ「そ、そんな事ないっすよ……」
バイソン「そのせいで、リュウ君とケン君にも怒られたみたいだし……本当、ごめんね?」
ヤムチャ「……ん?」
260:
ヤムチャ「いや、その二人に怒られたのは、その事じゃないですよ?」
バイソン「……ん?」
ヤムチャ「なんか……俺は目立っちゃいけない、とか言ってましたけど……それはどういう事なんですかね?」
バイソン「……あの野郎」
バルログ「……我々、ジョバーの事とことん舐めているようですね」
ヤムチャ「あれ、あれ……? これってどういう事なの?」
さくら「……」
サガット「……さくらちゃん、俺は言うべきだと思う。 ヤムチャ君がこの団体に呼ばれた理由を」
さくら「いや、でも……ヤムチャさん、プロレス初心者みたいだし……」
サガット「それでも、第五試合でやっているんだ。 知る権利はある。 それにヤムチャ君だって、いつかは気付く」
ヤムチャ「?」
271:
ヤムチャ「え〜と……皆さん、何か俺に隠してるんですか……?」
さくら「……」
ヤムチャ「何かあるんだったら、言って下さいよ! 俺、またあの二人に殴れるの嫌ですよ!」
サガット「……ヤムチャ君、先ずは試合形式の事から説明しよう」
ヤムチャ「……ん?」
サガット「今日の俺達の試合は、全部で六試合あったよね?」
ヤムチャ「あぁ、そうっすね……六試合ありました……」
サガット「ヤムチャ君が出た試合は五番目……つまり、第五試合だ」
ヤムチャ「……ほぅ」
サガット「いきなり、説明してもわからないだろうから、第一試合から順々に話していこう」
ヤムチャ「あっ、はい。よろしくお願いします……」
273:
サガット「先ず、第一試合……これは、プロ野球で言う所の二軍戦みたいなものだ」
ヤムチャ「……二軍戦?」
サガット「あぁ、コーディとガイは最近身体が出来たばかりでな。主に、うちの団体にはこんな若い選手がいるんですよ……と、お客さんに知らせる為にやっている」
ヤムチャ「……ほぅほぅ」
サガット「……当然、お客さんの入りも少ない。会場の席が半分ぐらい埋まればいい所だ」
ヤムチャ「えっ、半分……? そんなに少ないんですか?」
サガット「まぁ、早い時間だと、まだ仕事中のお客さんや、仕事が終わったけど、まだこちらに向かっている最中のお客さんもいるからね」
ヤムチャ「なるほど」
サガット「仕事終わりに会場に来たら、一番楽しみにしていた試合が終わっていた……なんて事になったら、お客さんも納得できないだろう?」
ヤムチャ「……ほうほう」
274:
サガット「そして、次に第二試合……これは、前説や余興みたいなものだ」
ヤムチャ「余興……?」
サガット「今日の試合はブランカさんと、ソドムさんだったが、彼らにはプロレスとはこういう感じなんですよ……と、お客さんに教える為の試合をしてもらっている」
ヤムチャ「それは、普通に戦うのとはまた、違うんですかね?」
サガット「まぁ、お笑いマッチなんて呼ばれたりもするがね」
ヤムチャ「……お笑いマッチ?」
サガット「やっぱり、この時間帯もまだ会場に到着出来ないお客さんがいたりするんだ」
ヤムチャ「……ほうほう」
サガット「そんな中で、第二試合が一番よかった……なんて、事になったら申し訳ないだろ?」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「だから、第二試合では、お笑い要素などに重点をおいた試合をする事になっている」
ヤムチャ「お笑いって……そんな事できるんですか……?」
サガット「あぁ、勝敗の決まっているプロレスだからこそ、出来る事だな。 真剣勝負の最中には、そうそう面白おかしい事は起きないだろう?」
ヤムチャ「……そうですね」
サガット「だけど、プロレスなら、その面白おかしい事を意図的に起こす事ができる。 第二試合はそういう事などをして、笑いをとっていく試合だ」
ヤムチャ「……なるほど」
275:
…なるほど
277:
サガット「第三試合……この辺りから、お客さんも会場に到着し始める」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「……という事で、ここからが通常の試合の始まりだ」
ヤムチャ「普通に……って、言っても勝敗決まってるんですけど……戦うんですね……」
サガット「あぁ、今日の場合は、春麗とさくらちゃんだったな……」
ヤムチャ「そうっすね」
サガット「まぁ、うちの団体の場合は、第三試合は大抵、女子部の試合になっている」
ヤムチャ「……ほう」
さくら「……どうせ、女子部は第三試合止まりっすよ」ボソッ
ヤムチャ「……ん?」
サガット「まぁまぁ、さくらちゃん……大きな試合とかになると、第四試合になる事もあるんだけどね……」
ヤムチャ「……はぁ?」
サガット「まぁ、天下一武道会で言う一回戦みたいなものかな? 試合しっかりしているんだけど……メインではない……そんな感じだ」
ヤムチャ「ふ〜む」
278:
サガット「そして、第四試合……ここから、俺達はここから会場を盛り上げていかなければならない」
ヤムチャ「……ほう」
サガット「天下一武道会で言う所の準準決勝みたいなものかな?」
ヤムチャ「……さっきの試合より、重要な試合って事っすね」
サガット「あぁ、この辺からは、チケットを買ったお客さんは到着して、会場も埋まり始めるからね」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「天下一武道会の場合なんかは、勝ち残った人間同士が戦う……なんて、自然に盛り上がる形になっているけど、うちの場合は違う」
ヤムチャ「ほ〜う……じゃあ、どうするんですか?」
サガット「ここで、人気レスラーや、ベルトの権限を使い始めるんだ」
ヤムチャ「……ほう」
279:
サガット「今日の第四試合は、ナッシュ・ガイル組対T・ホーク・フェイロン組みだっただろ?」
ヤムチャ「そうでしたね」
サガット「この試合は、タッグチャンピオンベルトを賭けた試合となっていたんだ」
ヤムチャ「……ほ〜う」
サガット「早い話が、うちの団体で一番強いタッグチームは誰だ? なんて、決める試合だな」
ヤムチャ「……な〜る程」
サガット「普通に戦うよりも、もっと盛り上がるような試合を作る為にあるのが、ベルトだ」
ヤムチャ「なる程ねぇ……」
280:
これは分かりやすい
281:
サガット「そして、第五試合……これは、天下一武道会で言うなら、準決勝だな」
ヤムチャ「今日の俺達の試合でしたね」
サガット「あぁ、この頃になると、もう会場も満員だ」
ヤムチャ「あぁ〜、そういや、お客さん、沢山いましたねぇ?」
サガット「だから、さっきの第四試合よりも、もっと盛り上がるような試合にしなければいけない……」
ヤムチャ「……って事は、あの試合を何かベルトとか、かかってたんですか?」
サガット「……いや、あの試合にはベルトはかかっていない。あれはただのスペシャルマッチだ」
ヤムチャ「じゃあ、さっきの試合より、盛り上がないじゃないですか!?」
サガット「……そこで、使われるのが、人気レスラーという訳だ」
ヤムチャ「……人気レスラー?」
282:
サガット「まぁ、リュウやケン……それに俺達、シャドルー軍団の事だな」
ヤムチャ「……ほう」
サガット「うちの一番人気選手はザンギエフさんだ……そして、二番目はベガさんだ」
ヤムチャ「そうっすね。そう言ってましたね」
サガット「そして、ナンバー3は……リュウとケンなんだ……」
ヤムチャ「えっ!? あの、二人そんなに人気あるんですか!? 性格悪いっすよ、あの二人!」
サガット「まぁ、リングではベビーだからね……ほら、マイク握ってる時とかだけはちゃんとしてただろ?」
ヤムチャ「そういえば、そうでしたね……」
サガット「うちのお客さん達はリュウやケン達だけを目当てに来ているお客さんもいる。だから、第五試合に選ばれたんだ」
ヤムチャ「……なるほど」
283:
サガット「そして、ベルトかかっていない、試合でもそういう人気の試合にする為に……俺達ヒール軍団がいるんだ」
ヤムチャ「……ん? どういう事っすか?」
サガット「ヤムチャ君……プロレスはさっき、一年で150試合すると言っただろ?」
ヤムチャ「そうっすね……多いですよね……
サガット「ただ、150試合……勝っただの、負けただのしていれば、いつかはお客さんも飽きて、離れて行ってしまう……」
ヤムチャ「……ふむ」
サガット「……だから、その150試合の中にドラマを作るんだ」
ヤムチャ「……ドラマ?」
284:
サガット「リュウ君とケン君はナンバー3の実力を持っている……という、設定だ」
ヤムチャ「……はぁ」
サガット「だが、しかしうちの団体では、ナンバー3ではない。ナンバー3はこの俺だ」
ヤムチャ「強さ的には、サガットさんがナンバー3なんですね」
サガット「いや、お客さんはそう思ってはいない」
ヤムチャ「……え、なんで?」
サガット「俺が反則を使ったり、一対一での試合でも、バイソンやバルログを助けを借りる卑怯な男だからさ」
ヤムチャ「そ、そんな事……自分で言っていいんですかね……」
サガット「俺の汚い手段のせいで、いつもいつも、俺に寸前で負けてしまっている」
ヤムチャ「……はぁ」
サガット「きっと、お客さんは、『今日こそサガットに勝て!』なんて思いで、俺達の試合を見ているだろうな」
ヤムチャ「……」
サガット「これがドラマだ。こうやって、150試合の戦いで、ドラマを作っていくんだ」
286:
サガット「リュウ君が俺の汚い手段を受けながらも、俺に勝てば、リュウ君は晴れてナンバー3になるだろう?」
ヤムチャ「そうですね……」
サガット「最初から、勝ち負けが決まってるプロレスだとしてもだ」
ヤムチャ「……ほ〜う」
サガット「これは、年間150試合もあり、勝敗が決まってるプロレスだから、できる事なんだ」
ヤムチャ「……なる程」
サガット「チャンピオンや、メインイベンターになるレスラーにはそれぞれのドラマがあり、それぞれの生き様があるんだ」
ヤムチャ「なるほどねぇ……」
サガット「リュウ君とケン君は、ベルトをかけないで第五試合……ナッシュ君とガイル君は、ベルトを賭けているのに第四試合……」
ヤムチャ「……」
サガット「その違いは、彼らの方が俺達シャドルー軍団と抗争しているというドラマがあり、お客さんもそのドラマの続きを見たがっているからなのさ」
ヤムチャ「はぁ……あの二人って凄かったんですねぇ……」
287:
サガット「少し、話が逸れたな。 そして、最後の第六試合……メインイベントだ……」
ヤムチャ「ザンギエフさんとベガさんの試合ですね」
サガット「これは最後の試合だ。天下一武道会で言えば、決勝戦だ」
ヤムチャ「……と、いう事は一番盛り上がる試合にしなきゃいけないという事ですね」
サガット「そうだ。お客さんにはいい気持ちで帰ってもらいたいからな。 カラオケに行った時だって、最後に歌った曲が一番印象に残るだろう?」
ヤムチャ「あ〜、確かに……ベジータいつも、料理の奴締めで歌いやがるからなぁ……もう、覚えちまったよ……」
サガット「今日の場合は、シングルのベルトを賭けた試合だ。早い話が、うちの団体で誰が一番強いのかを決めるベルトだな」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「そして、戦っているのは、団体設立からこの団体を守っている一番人気のザンギエフさんと……」
ヤムチャ「……ふむ」
サガット「俺達、悪の軍団のボスで二番人気のベガさんだ」
ヤムチャ「……ふむふむ」
サガット「人気もドラマも、そしてベルトもかかっている試合だ。 この試合はうちの団体で出来る、今ベストの試合だろう」
ヤムチャ「なるほどねぇ……プロレスいろいろあるんだなぁ……」
288:
サガット「……さて、ヤムチャ君」
ヤムチャ「……ん、どうしたんですか?」
サガット「今日の君の試合は第五試合だったよね?」
ヤムチャ「あっ、そうっすね……」
サガット「実はこれは殆ど特例なんだ」
ヤムチャ「えっ……? どういう事ですか……?」
サガット「さっきも言ったが、デビューしたてのコーディやガイは第一試合だ」
ヤムチャ「……ほぅ」
サガット「プロレスに触れた事もない……ましてや、ドラマも持っていない人間を第五試合に起用して……」
ヤムチャ「……」
サガット「一試合、二試合だけなら、ともかく……君はうちの団体と契約したんだ」
ヤムチャ「そうですね」
サガット「これからの150試合で、どうなるかわからないのに、最初からそんなに責任重大な試合を任せるなんて、普通はしない」
ヤムチャ「……って事は」
サガット「……」
ヤムチャ「俺、めちゃめちゃ期待されてるって考えていいんですかねぇ! コレ!」
サガット「……ヤムチャ君には申し訳ないないが、そうではない」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「恐らく……うちの団体の抱えてる事情に、ヤムチャ君は巻き込まれてしまったんだと思う……」
ヤムチャ「えっ、えっ……? それって、どういう事ですかね……?」
293:
乙でした
かなりわかりやすい説明で良かった
また続きが気になる気になる!
296:
さくら「サガットさん……それ以上は……!」
サガット「さくらちゃん、彼にも知る権利はある」
さくら「でも……万が一、それでヤムチャさんが、プロレス嫌になっちゃったら……」
サガット「……では、自分が何の為に負けているのかもわからずに、ジョバーをさせるのか?」
さくら「そ、それは……」
サガット「これは、ヤムチャ君には知る権利がある。さくらちゃんだって、同じジョバーじゃないか」
さくら「……」
サガット「……話そう。ヤムチャ君はきっと、受け入れてくれる」
さくら「……」
サガット「……だから、話そう」
ヤムチャ「えっ、えっ……? 何か、深刻な話なんですかね……?」
297:
さくら「ヤムチャさん……第六試合、メインイベントの話っす……」
ヤムチャ「あっ、はい……」
さくら「メインイベントは一番盛り上がる試合にしなければいけないっすよね?」
ヤムチャ「そうですね。だから、一番人気のザンギエフさんと、二番人気のベガさんっすよね」
さくら「その通りっす。今日の試合はその二人だったっす」
ヤムチャ「はい」
さくら「今日、ザンギエフさんはベガさん相手にチャンピオンベルトを防衛したっす」
ヤムチャ「そうっすね。ベルト賭けてた試合だったそうですもんね」
さくら「……じゃあ、明日の試合はザンギエフさんは誰と戦えばいいと思うっすか?」
ヤムチャ「……明日?」
299:
ヤムチャ「え〜っと……明日は……」
さくら「二番人気のベガさんは使えないっすよね? 今日、対戦したばかりなんっすから」
ヤムチャ「……使えないの?」
さくら「チャンピオンベルトを賭けた試合が……いつもいつも、同じカードの組み合わせじゃ、お客さんは飽きてしまうっす」
ヤムチャ「え〜っと……じゃあ、三番人気のリュウさんか……実力三番手のサガットさんって所?」
さくら「そうっす。 そういうカードを組まないといけないっす」
ヤムチャ「おっ、なんだなんだ! 俺もちょっとはプロレスがわかってきたぞ!」
さくら「……でも、そうなるとまた問題が起きるっす」
ヤムチャ「……問題?」
300:
さくら「今日の試合はザンギエフさんと、ベガさん……一番人気と二番人気の選手の試合っす」
ヤムチャ「……ほぅ」
さくら「それがザンギエフさんと、リュウさん……一番人気と三番人気の選手の試合になってしまうと……」
ヤムチャ「あっ! なるほど! 見に来てくれるお客さんが減っちゃうんだ!」
さくら「その通りっす……これはリュウさんだから、まだマシな方っすが……」
ヤムチャ「……」
さくら「ザンギエフさんの対戦相手が四番人気のケンさんや、五番人気のサガットさんになってしまうと、もっとお客さんは減ってしまうっす」
ヤムチャ「……なるほどねぇ」
301:
さくら「まぁ、そこは150試合の中で、様々なカードを作らないといけないから、多少は妥協しなきゃ仕方ないんすが……」
ヤムチャ「……ほう」
さくら「そうなると、ザンギエフさんばかりが、ベルトを持っている事になるっす」
ヤムチャ「……ん?」
さくら「ベガさんから防衛して……リュウさんから防衛して……サガットさんから防衛して……また、ベガさんから防衛して……」
ヤムチャ「……おうおう、何かローテーションになってるねぇ?」
さくら「……これじゃあ、ベルトにドラマができないっす」
ヤムチャ「……でもさぁ?」
302:
ヤムチャ「プロレスって勝ち負けが決まってるんでしょ? だったら、ザンギエフさんも負ければいいじゃん」
さくら「……」
ヤムチャ「ザンギエフさんが負けて、ベガさんとかにベルト渡せば、ローテーションになってるのは解決するんじゃないの?」
さくら「……ヤムチャさん」
ヤムチャ「……ん?」
さくら「じゃあ、ベガさんは……その次の試合、誰と戦えばいいっすか……?」
ヤムチャ「え〜っと……リュウさん……?」
さくら「……そうっすね。リュウさんしかいないっすね」
ヤムチャ「おっ! 俺も、なんだか冴えてきたなぁ!」
さくら「……でも、そうなるとお客さんはどうなるっすか?」
ヤムチャ「……えっ?」
303:
さくら「ベガさんとリュウさん……つまり、二番人気と三番人気の選手の試合になってしまうっす」
ヤムチャ「……それって、お客さんはやっぱり、来なくなっちゃうの?」
さくら「うちの団体はザンギエフさんの人気がずば抜けてるっす……このカードより、ザンギエフさんと、バルログさんや、バイソンさんの試合の方が、お客さんは入るっすね……」
ヤムチャ「……うわぁ」
さくら「これが、弱小団体の最大の欠点っす……どうしてもワンマンの試合になってしまうっす」
ヤムチャ「……なるほど」
さくら「ザンギエフさんは、ベルトから離れる事が出来ないっす……」
ヤムチャ「……」
さくら「どうしても、メインイベントや、ベルトの絡む試合にはザンギエフさんを出さざるを得ないっす」
304:
さくら「ザンギエフさんは150試合……殆ど、全ての試合に出ているっす……」
ヤムチャ「……頑丈な人なんですね」
さくら「……そうでもないっす」
ヤムチャ「……えっ?」
さくら「いくら、プロレスで相手にダメージが残らない戦いをしてるからといっても、頭から落ちたりする技を年間150試合近く受けるんすよ?」
ヤムチャ「……」
さくら「少しずつ、少しずつ……ダメージは蓄積されていくっす……」
ヤムチャ「……そうなんだ」
さくら「ザンギエフさん、実は身体、パンク寸前なんっすよ!?」
305:
ーーー
ザンギエフ「ぐっ……! くそ、首が回らんな……」
ベガ「……大丈夫ですか?」
ザンギエフ「なぁ〜に、これはチャンピオンベルトを持っている者の宿命だ……一生爆弾と付き合っていくさ……」
ベガ「無理はなさらずに……」
ザンギエフ「……あぁ」
ベガ「ところで……明日のメインはどうなさるんですか? やはり、リュウ相手ですか……?」
ザンギエフ「いや、豪鬼を助っ人に呼んだ……奴なら人気もあるだろう……」
ベガ「……ギャラの方は大丈夫だったのでしょうか?」
ザンギエフ「……それは、言うな。 弱小団体の宿命だ」
ベガ「……」
ザンギエフ「……リュウがお前とメインを張れる様になるまで、成長してくれればいいんだがな」
ベガ「……そうですね。サガット達に、伝えておきます」
ザンギエフ「……頼むよ。俺もいつまで持つかわからん」
306:
ーーー
さくら「……今、うちの団体に必要な事。それは若いリュウさんの人気を上げる事っす」
ヤムチャ「……リュウさんの?」
さくら「仮に、リュウさんの人気がザンギエフさんと同じくらいまで上がれば、ベルトを持てる人間が増えるっす……」
ヤムチャ「……」
さくら「ザンギエフさん対挑戦者……リュウさん対挑戦者……メインイベントで色々な構図が作れるっす」
ヤムチャ「……」
さくら「お互い、150試合フルなんて、無茶なスケジュールを組まなくても、団体を回す事が出きるっす」
ヤムチャ「……なるほど」
さくら「若いリュウさんに、頑張ってもらわないと、歳とってるザンギエフさんとベガさんが、いつまでたっても、無茶な試合する事になるっすよ!」
308:
ヤムチャ「……でもさぁ? それだったら、リュウさん、とっととサガットさんに勝てばいいんじゃないの?」
さくら「……」
ヤムチャ「サガットさんが実力三番手なんでしょ? サガットさんに勝てば、リュウさんは実力三番手になって人気が出るんじゃないの?」
さくら「……」
サガット「……ヤムチャ君、事はそう簡単じゃないんだ」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「年間150試合もしているんだ……俺とリュウの試合はトータルで五分五分程度になるようには調整している」
ヤムチャ「……はぁ」
サガット「俺は反則や汚ない手段使って五分五分だから、リュウ君の実力は俺より上……だと、お客さんは理解している……」
ヤムチャ「……ほう」
サガット「しかし、リュウ君はそこまでなんだ……サガットより強いが、ベガさんと戦う器ではないと、お客さんは思っている……」
ヤムチャ「……えっ? なんでですか?」
309:
サガット「それは、俺達にもよくわからない……プロレスラーの永遠のテーマかもしれないな……」
ヤムチャ「……えぇ〜?」
サガット「だが、さっき言っただろう? チャンピオンになる人間には生き様が求められる、と……」
ヤムチャ「あっ、言ってましたね……」
サガット「リュウ君が150試合の中で、俺達シャドルー軍団とドラマのある抗争を見せて……どんなにいい試合を見せたとしても、だ……」
ヤムチャ「……」
サガット「お客さんがリュウ君にかける声援は『次はベガを倒せ』ではなく『よく、サガットを倒した』なんだ……」
ヤムチャ「……はぁ」
サガット「今のリュウ君には、何かが足りない……小さく纏まってしまっているんだ……」
ヤムチャ「……」
310:
サガット「そこで、テコ入れとして……ヤムチャ君が呼ばれたというわけだ……」
さくら「本当……! 申し訳ないっす……!」
ヤムチャ「えっ、えっ……? ちょっと待って……?」
サガット「……」
ヤムチャ「……って事は、俺が始めての試合で、重要な第五試合ってのも」
さくら「……リュウさんの為っす」
ヤムチャ「おいおいっ! ちょっと待てよ! 俺、関係ねぇじゃん、なんでそんな事……」
サガット「例えば……三番弟子で弱い君を、俺達の卑怯な反則攻撃から身を挺して守る……なんて事を続けたら、何かが変わるかもしれない……」
ヤムチャ「俺、そんな役目で呼ばれたの!? なんだよ、それっ!」
さくら「ヤムチャさんっ! 本当に、申し訳ないっす!」
311:
ヤムチャ「そんな、役目……俺じゃなくていいじゃねぇかよ! そっちの団体の奴にやらせろよ……」
さくら「い、いや……あの、ヤムチャさん……?」
ヤムチャ「あぁっ!?」
さくら「ザンギエフさんが……昔のヤムチャさんの天下一武道会のビデオを見たんですね……」
ヤムチャ「あん……? いつのビデオだよ、それ……」
さくら「え〜っと、シェンさん……? って、人と戦ってた時の試合で……」
プーアル「あっ! それはまさしくヤムチャ様の黒歴史!」
さくら「その、ヤムチャさん……おちんちん蹴られて……酷く苦しんでだじゃないっすか……」
ヤムチャ「!」
さくら「それ見たザンギエフさんが『ガハハハハ! こいつのやられっぷりはいいっ! 実にいいっ! 勝敗の決まっているプロレスにピッタリだ!』なんて言って……」
ヤムチャ「何年前の話だおいっ! そもそも、誰がそんなビデオ残してたんだよ!」
312:
バルログ「でも、今日のヤムチャ君のやられっぷり、なかなかよかったですよ? 始めてとは思えないです」
バイソン「……まぁ、アレは本気伸びてたからね」
バルログ「いえいえ、ほら……場外でやられて時とか……なかなか上手かったと思いますよ?」
バイソン「あぁ、そういや、アレは上手かったなぁ……うん、始めてとは思えないやられ方だったな……」
プーアル「えぇ! ヤムチャ様は普段から、やられまくってますから! 昔、栽培マンって敵がいたんですけど、ヤムチャ様はその時……」
ヤムチャ「プーアル黙ってろオイっ!」
バルログ「ヤムチャ君、ジョバーの資質あると思いますよ? 折角、契約したんだから頑張りましょうよ」
バルログ「そうだよ、俺達ジョバー軍団で頑張ろうぜ?」
ヤムチャ「……ジョバー? なんですか、それ?」
316:
乙です
かなり面白くてプロレスのことも勉強になるね
318:
サガット「ジョバーというのは、負け役の事だ」
ヤムチャ「……負け役?」
サガット「あぁ、うちのエースはザンギエフさんだが、次期エースはリュウ君だ……」
ヤムチャ「……そうですね」
サガット「そのリュウ君を、エースにする為に、リュウ君に負ける役が必要になるだろ?」
ヤムチャ「リュウさんに負けて……その、ドラマを作っていくわけですね……」
サガット「そうだ。今日の試合で俺達は勝ったが、大舞台……重要な試合になると、俺達は絶対に負けなきゃいけないストーリーが組まれる」
ヤムチャ「リュウさんに、ドラマティックな勝ち方をさせて……人気を出す為にっすか……」
サガット「 そうだ。ジョバーが負けて……エースにドラマを作ってやるんだ」
320:
ヤムチャ「ん……? じゃあ、俺がジョバー……つまり、負け役になるって事は……」
バイソン「まっ……今日みたいな試合が繰り返されるって事だな……」
ヤムチャ「……えっ?」
バルログ「リュウ君とケン君が我々シャドルーに負けるのではなく……ヤムチャ君が足を引っ張って、我々に負けるというストーリーが繰り返されるでしょう……」
ヤムチャ「おいおい、待てよ! なんで、俺がそんな目に……」
サガット「……それがジョバーの役割りだからだ」
ヤムチャ「なんで、そんな嫌な仕事を俺に押しつけるんだよ! そんなの、あんたらの団体の人間にやらせりゃいいじゃねぇか!」
サガット「……」
ヤムチャ「いくら俺が格闘技で結果出ねぇなんて言ってもなぁ! こんな汚れ仕事押しつけるんじゃねぇよ! 俺は便利屋じゃねぇんだよ!」
321:
サガット「……ヤムチャ君、ジョバーは確かに、エースにはなれない」
ヤムチャ「わかってんなら……」
サガット「だが、ヤムチャ君が思っているような汚れ仕事でもない」
ヤムチャ「……はぁ?」
サガット「例えば、天下一武道会の予選で負けてしまったとしよう……それなら、そこで終わりだ。一度の負けで全ては終わってしまう。一年後の天下一武道会をまた待たなければならない」
ヤムチャ「……」
サガット「だが、これはプロレスだ。年間150試合の中でドラマがある……負けても、次や、その次が何度でもやってくるんだ」
ヤムチャ「……」
サガット「ジョバーはエースではない……だが、ドラマはある……150試合の中でエースの踏み台になりながらも、自分のドラマを作ればいいんだ」
ヤムチャ「……はぁ?」
323:
サガット「ヤムチャ君、俺はジョバー……負け役だ……」
ヤムチャ「……そうっすね」
サガット「だが、俺はこの団体のお客さんから、指示されている。俺の人気はナンバー5だ」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「大きな大会では必ずリュウに負けている……だが、お客さんはその俺の負けているドラマを見てくれているんだ」
ヤムチャ「……」
サガット「もっと、言えば……二番人気のベガさんだって、ジョバーだ」
ヤムチャ「えっ……? ベガさんも……?」
サガット「あぁ、ベガさんはここ一番の試合の時は必ず、ザンギエフさんに負けている……だが、リュウ君は俺より、指示されている」
ヤムチャ「……」
サガット「それは、ベガさんが、プロレスの中でドラマを作っているからなんだ」
325:
さくら「……自分も、ジョバーっす」
ヤムチャ「……えっ?」
さくら「自分はサガットさん達みたいにヒールじゃないけど、女子もジョバーをやってるっす」
ヤムチャ「……」
さくら「自分の設定は、格闘技始めたばかりの女子高生が、頑張って戦うって設定っす」
ヤムチャ「……うん」
さくら「だけど、ここ一番の大舞台ではいつもエースの春麗さんに負けてしまうって設定っす……」
ヤムチャ「……そうなんだ」
さくら「自分が頑張って……『最近さくらは強くなってきたな』なんてお客さんが思ってきた所で春麗さんに負けて……」
ヤムチャ「……」
さくら「『やっぱり、ナンバーワンの春麗は強いな!』なんて、思わせるのが、自分の役割りっす……」
ヤムチャ「……」
さくら「でもっ……! 自分は女子部で二番目の人気を持ってるっすよ!」
ヤムチャ「……えっ!」
さくら「大きな試合ではいつも負けてるけど……自分は150試合の中で頑張って、ドラマを作ってるっす!」
ヤムチャ「……」
さくら「お客さんは、それを見て自分の事を指示してくれてるんっすよ!」
326:
さくら「いきなり、プロレスの仕組みを聞かせれて……しかも、負け役をやれだなんて、ヤムチャさんには理解し辛い事だと思うっす……」
ヤムチャ「あ、あぁ……」
さくら「だけど、負け役にだってドラマはあるんすよ! プロレスは戦いの中でドラマを作っていくもんっす!」
ヤムチャ「……」
さくら「ヤムチャさん、まだ来たばっかりじゃないっすか! なにもドラマ作ってないじゃないっすか!」
ヤムチャ「……うん」
さくら「ヤムチャさんの役割りは、負けてリュウさん達の足を引っ張る事っすけど……」
ヤムチャ「……」
さくら「150試合の中で、それを続けていけば、きっとそこにはドラマが生まれるっす!」
ヤムチャ「……ドラマ」
さくら「ジョバーでも輝ける事は、自分達が保証するっす! そりゃ、ナンバー1じゃないけど……必ず輝けるっす!」
ヤムチャ「……」
さくら「だから、ヤムチャさん……お願いっす! 無茶な事、言ってると思うけど、この団体でやってみて欲しいっす!」
328:
プーアル「……ヤムチャ様、さくらさん、必死に頼んでるみたいだけど、どうします?」
ヤムチャ「……う〜ん」
プーアル「……ヤムチャ様?」
ヤムチャ「とりあえず……やってみるかねぇ……?」
さくら「本当っすか!?」
ヤムチャ「続けてれば……なんとか、なるんでしょ? その、ジョバーってヤツ……」
プーアル「ヤムチャ様、珍しく前向きじゃないですか! どうしたんですか?」
ヤムチャ「だってさぁ……ここで、俺やめたら……本当に今日の一試合、ただ八百長しに来ただけじゃん……」
プーアル「確かに、そうなりますねぇ……」
ヤムチャ「こっちは腐っても格闘家だよ? 八百長みたいな真似は出来ないよ」
プーアル「でも、今日、ちゃんと八百長したじゃないですか?」
ヤムチャ「まだ、よくわかんないけどさ……? プロレス格闘技とは違う何かがあるんでしょ? 今日のは八百長じゃなくて、プロレスなんでしょ?」
さくら「……そうっす!」
ヤムチャ「だったらさぁ……まだ、よくわかんないけど……プロレスの仕組みがもうちょっとだけわかるまで、やってみるよ」
さくら「ヤムチャさんっ……! ありがとうございますっ!」
330:
サガット「ヤムチャ君、俺からも礼を言う……ありがとう……!」
ヤムチャ「いやいや、サガットさん……やめてくださいよ……」
バルログ「では、ヤムチャ君の我々ジョバー軍団の加入を祝って……」
バイソン「そうだな! 乾杯でもするか! よし、皆、グラス持ちやがれっ!」
さくら「そうっすね! 乾杯しましょう、乾杯っ!」
ヤムチャ「……」
プーアル「あれ? ヤムチャ様、どうしました? ボケーっとしちゃって……」
ヤムチャ「いや、なんかこの人達……」
プーアル「?」
ヤムチャ「負け役みたいな嫌な事してるはずなのにさ……明るいんだなって思ってさ……」
バイソン「よ〜しっ! では、乾杯の音頭はこのバイソン様がしてやろうではないか!」
さくら「ちょ、ちょっと……! バイソンさん、なんで乾杯の音頭するのに、脱ぐ必要があるんすか……!?」
バルログ「バイソン、美しくありませんよ……いや、マジでマジで……」
332:
ダン「おうおう! や〜ぱり、こんな所にいたか、ジョバー軍団よぉ」
サガット「あっ、ダンさん……お疲れ様です……」
ダン「リュウとケンは、もっと綺麗なお姉ちゃんのいる店にいってやがるぞ? それに春麗だって、ホストクラブだ……」
サガット「……春麗、ホストクラブなんかに行ってやがるのか」
ダン「お前らも、もっといい所で飲めよ? プライドまで負け犬になっちまったら、おしまいだぞ!?」
サガット「いえ……プライドだけは、奴らに負けない自信はありますよ……」
ダン「まっ、わかってんなら、いいよ! あっ、姉ちゃ〜ん! 俺にはいつもの焼酎頂戴〜!」
プーアル「あれ? なんか、新しい人がやってきましたよ? あの人も、ジョバーの方なんですかね……?」
ヤムチャ「あれ……? あの人、何処かで見た事あるような気がするなぁ……え〜っと、何処だったっけ……?」
ダン「あっ、そうだ! おい新入り! ヤムチャ、おめぇだよ、おめぇ!」
333:
ダン「おめぇよぉ! 何やってんだよ! バイソンにシュート仕掛けてんじゃねぇよ!」
ヤムチャ「あっ、すんません……さっき、皆さんから聞かされました……」
ダン「俺もリング上で大変だったんだぞ!? 余計なハプニング起こすんじゃねぇよ!」
ヤムチャ「えっ、リング上……? 何、言ってるんですかね……?」
ダン「おめぇらの、試合中ずっといただろが! ちゃ〜んと仕事してただろが!」
ヤムチャ「あっ……! 思い出した……!」
プーアル「ヤムチャ様、思い出したって……何をですか……?」
ヤムチャ「この人、ダメレフェリーの人だよ! ほら、リング上にいたいた!」
ダン「おい、待て! 誰がダメレフェリーだコラっ!」
335:
ヤムチャ「だって、あんた……サガットさん達が反則攻撃してた時とか、ただオロオロしてただけじゃん!?」
ダン「……なぁ、サガット? こいつ、本当にプロレス知らねぇの?」
サガット「……はい、そうです。 申し訳ありません」
ヤムチャ「……ん?」
ダン「ったく、面倒臭ぇなぁ……あのなぁ? ヤムチャ君よぉ……?」
ヤムチャ「ん……?」
ダン「今日の試合……ちょっと、サガット達に都合のいい事が起きすぎだったとは思わなかったか?」
ヤムチャ「……へ?」
ダン「公平に裁くはずのレフェリーが……三人ががりで、攻撃してる時に限って、何にもしなかったりよ?」
ヤムチャ「……」
ダン「でも、ケンがリング上にやってきたら、急にしっかりと仕事するんだ……おかしくねぇか?」
ヤムチャ「……そりゃ、あんたがダメレフェリーだから」
ダン「ケンが二人がかりでやられてる時もそうだ。後ろで、卑怯な事が行われているのに、俺は場外の二人ばっかり気にしてるんだ」
ヤムチャ「……」
ダン「ちょ〜っと……サガット達に都合のいい様になりすぎじゃねぇか? 俺はそこまで無能じゃねぇぞ?」
ヤムチャ「えっ……って事は、もしかして……」
337:
サガット「その通りだ、ヤムチャ君……レフェリーのダンさんも、プロレスをしているんだ」
ヤムチャ「えっ……! レフェリーが……!」
サガット「ダンさんの場合は俺達とはまた違う。俺達は勝ち負け決まっている試合の結末に合わせて、試合の攻防を繰り返すだろ?」
ヤムチャ「……はい」
ダン「俺の仕事その攻防が自然な流れになるように、サポートするって事だ」
ヤムチャ「……へぇ」
ダン「今日の試合は、サガット達の勝ちで決まっていたんだ。格闘技のレフェリーだったら、あんな反則攻撃はすぐにでも止めただろう」
ヤムチャ「そうっすね……」
ダン「だが、これはプロレスだ。サガット達が何の為に反則攻撃をしているのかを……プロレスのレフェリーである俺は見極めなきゃならない」
ヤムチャ「……ほう」
ダン「サガット達は、反則攻撃のおかげリュウ達に勝てたというドラマが欲しいんだ……だったら、俺はそれを止めてはいけねぇだろ?」
ヤムチャ「な、なるほど……」
ダン「プロレスってのは、選手だけじゃねぇよ。俺だって、戦ってるんだよ」
ヤムチャ「……なるほど」
ダン「まっ、俺はお前らと違って、脚光は浴びれねぇけどね! レフェリーの辛い所だな!」
338:
ダン「でも、ヤムチャ……おめぇはいいもん持ってると思うよ? 頑張れよ?」
ヤムチャ「本当っすか……?」
ダン「レフェリー生活十年続けてる俺が言うんだ。間違いねぇよ」
ヤムチャ「あ、ありがとうございます……!」
ダン「まぁ、でも……まだ、荒削りだな……そこは勉強した方がいいな……」
ヤムチャ「あっ……すいません……」
ダン「実況のキャスターも、解説の元さんも……おまえのフォロー困ってたみてぇだぞ? あんまり、あの二人困らせるんじゃねぇよ」
ヤムチャ「えっ……? 実況……解説……?」
サガット「……ほら、リングサイドで俺達の実況を解説してる二人がいただろ?」
ヤムチャ「あっ、はい……いましたね……」
サガット「あの人達も同じだ。 リング上で戦う選手ではないが……ダンさんと同じように、プロレスの勝敗決まっている部分や、俺達が意図的にしている行動の本質に触れずに、格闘技の試合と同じように解説してくれているんだ」
340:
ヤムチャ「な、なんか……プロレスって凄く、大掛かりなんですねぇ……」
サガット「まぁ、そうだな……だが、大掛かりだからこそ、大きな物が生まれるんだ」
ヤムチャ「……」
サガット「一つの試合を作る為に、これだけの人間が動いている」
ヤムチャ「……」
サガット「ただの八百長だったら、ここまではしないよ」
ヤムチャ「……はい」
サガット「勝ち負けが決まっている試合を……どうやって面白くするか……どうやってそこにドラマを作るか……」
ヤムチャ「……」
サガット「……それがプロレスだ」
ヤムチャ「……なるほどねぇ」
サガット「ヤムチャ君も頑張ってくれよ?」
ヤムチャ「あっ……! はいっ! わかったっす!」
サガット「でも、確かに……ダンさんの言う通り、ヤムチャ君はまだ、荒削りだな……」
ヤムチャ「……えっ? そうっすか?」
サガット「必殺技の狼牙風風拳はよかったが……それ以外はまだまだだな……」
ヤムチャ「うっ……」
サガット「……よし、明日、道場で俺達が指導してやろう!」
ヤムチャ「えっ……! 嘘!? 特訓!?」
サガット「何を嫌がっているんだ……そんな事では、これから試合で、いつかボロ出るぞ?」
ヤムチャ「も〜う……俺はベジータと違って、そんなに特訓好きな方じゃねぇのに……」
343:
面白いな。
ストシリーズも、ドラゴンボールも好きだからなおさら。
347:
翌日、道場ーー
サガット「よしっ! ヤムチャ君、早特訓を始めようか!」
ヤムチャ「でも、特訓って何をするんですか? 俺、仲間内では弱いけど……それでも結構、強い方っすよ?」
プーアル「ヤムチャ様……悟空さんや、ベジータさんの前で、その台詞言えます? ヤムチャ様は雑魚なんです! 自覚して下さいっ!」
ヤムチャ「うるせぇな、プーアル! だから、それは孫達が化物なだけで……」
プーアル「……はいはい、わかりましたわかりましたっと」
ヤムチャ「プーアルさぁ……? 最近、冷たすぎない? もうちょっと、優しくしてくれてもいいんでねぇの?」
サガット「……確かに、ヤムチャ君の言う通りだと、思う。おそらく、ヤムチャ君はこの団体で一番強いだろうな」
プーアル「えっ……? 嘘だっ! 絶対嘘だっ!」
351:
サガット「実は俺やバイソンも、レスラーになる前に、天下一武道会に参加した事がある……」
ヤムチャ「えっ、そうなんですか?」
サガット「俺はムエタイとして、バイソンはボクサーとしての出場だ。自分の力が何処まで通用するか知りたくてな……」
プーアル「それで、結果はどうだったんですか?」
サガット「お互い、本戦に残る事など出来なかったよ、予選敗退だ」
ヤムチャ「……へぇ」
サガット「ベスト64か……はたまた、ベスト128か……まぁ、散々な結果だったさ」
プーアル「……そうなんですか」
サガット「その試合を見ていた、ベガさんや、ザンギエフさんにスカウトされて、俺達はレスラーになったという訳さ……」
ヤムチャ「……はぁ」
サガット「ベスト8に残った、ヤムチャ君が、ベスト64やベスト128から、教わる事など、何もないだろうな」
352:
サガット「だが……それは、真剣勝負……つまり、シュートの場合の話だ」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「昨日の試合でわかっただろう? プロレスは、真剣勝負とは違う……プロレスには、プロレスの戦い方があるんだ」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「ヤムチャより、実力はない俺だが……それでも、プロレスの戦い方は心得ている……君の力になれるだろう」
ヤムチャ「はい、そうっすね。俺、昨日バイソンさんに酷い事しちゃったみたいだし……」
サガット「あぁ、だからそんな事が二度と起こらないように、今日はプロレスの戦い方を学んでもらう!」
プーアル「……でも、プロレス様の戦い方って、どんな感じなんですか?」
サガット「……先ず、派手さだ。見た目の派手さが要求される」
353:
サガット「俺は、ムエタイだから、蹴りが得意だが……ヤムチャ君、真剣勝負の場合、相手の何処を狙って攻撃する?」
ヤムチャ「え〜っと……やっぱり、顔とか……わき腹辺りっすね……」
サガット「そうだ、その通りだ。相手の急所を狙うのが基本だ」
ヤムチャ「はい」
サガット「だが、プロレスではそんな事をしてはいけない……まぁ、一発逆転なんて、ドラマを作りたいのなら、別だがな……」
ヤムチャ「あ〜、そうっすね……試合がすぐ終わっちゃいますもんね? ドラマ作ってる時間がなくなっちゃいますよ」
サガット「だから……相手のダメージの軽減されるであろう場所を狙うんだ」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「そして、同時に技を食らっている方にも、技術が要求される……」
ヤムチャ「……技術?」
サガット「一度、実践してみよう。バイソン! 少し、付き合えっ!」
バイソン「うっす!」
355:
バイソン「オラオラっ! かかって来やがれ! サガットの糞ボケがっ!」
サガット「……フンっ!」シュッ
バイソン「……ぐっ!」
サガット「……」
バイソン「くっ……てめぇ、舐めやがって……」
サガット「……フンっ!」シュッ
バイソン「……ぐぐっ!」
サガット「……」
バイソン「ぐっ……くそっ、くそっ……」ヨロヨロ
サガット「うおおぉぉっ! 連続で行くぞっ! うるあぁぁぁっ!」シュッ
バイソン「ガッ……! ガッ……! ガガッ……!」
ヤムチャ「おいおいおい……バイソンさん、大丈夫なのかよ? 試合前にこんな事してていいの?」
356:
バイソン「とまぁ、こんな感じ? ヤムチャ君、わかった?」
ヤムチャ「……あり? バイソンさん、何でそんなにケロっとしてるの?」
バイソン「そりゃ、サガットが俺の太腿ばかり、狙っててくれるからだよ」
ヤムチャ「……へ?」
サガット「今のは、俺のテクニックというより、バイソンのテクニックだな……」
バイソン「顔や、脇腹を狙ったら、一撃で決まっちまう……だから、サガットは太腿に攻撃を仕掛けてくれたんだ」
サガット「だが、太腿に攻撃をしても、普通の真剣勝負では、決まったりはしないだろう?」
ヤムチャ「……そうっすね」
サガット「だが、連続で攻撃をしたらどうだ? ダメージが軽減されるであろう太腿でも、何発も何発も喰らえば、ダメージが蓄積されてくるように見えないかな?」
ヤムチャ「……なるほど」
バイソン「サガットはそういう事をしようとしてたんだ……だったら、攻撃を受けてる俺は、その意思を感じとって、付き合わなきゃならねぇ」
357:
サガット「ヤムチャ君も、必殺技の狼牙風風拳で……急所を狙うなと言われただろう?」
ヤムチャ「あっ、はい……」
サガット「勿論、急所を狙わなければ、相手を倒す事は出来ない……だが、それは真剣勝負の場合だ」
ヤムチャ「……はい」
サガット「ヤムチャ君が、狼牙風風拳で相手を倒すという意思を持って、急所を狙わずに攻撃すれば」
バイソン「俺達は、その意思を感じとって、例えダメージがなくても、ダメージを受けるという訳だ」
ヤムチャ「……なるほどねぇ」
サガット「だが、これは逆の場合もそうだぞ?」
バイソン「俺達がヤムチャ君に攻撃をする時、どういうつもりで、攻撃を仕掛けているのかを、ヤムチャ君は考えなければいけねぇ」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「大きなダメージを与える意思を持って、攻撃しているのか……それとも、小さなダメージを与える意思を持って攻撃しているのか……」
バイソン「基本的にダメージはねぇ攻撃だけど、ヤムチャ君は、状況状況に合ったやられ方をしなくちゃいけねぇって事だ」
ヤムチャ「う、うわぁ……難しくなってきたぞ……」
359:
サガット「まぁ、ヤムチャ君は、空手スタイルみたいだし……基本的には、俺達が上手くやられて、試合の攻防をリードしてあげるよ」
ヤムチャ「あっ、ありがとうございます……」
バイソン「とにかく、急所さえ狙わなきゃいいからよ? そこだけは注意してくれよな?」
ヤムチャ「本当……昨日はすいませんでした……」
サガット「よし、打撃攻撃はヤムチャ君ならきっと大丈夫だろう! なんたって、狼牙風風拳があるんだからな」
ヤムチャ「まぁ、なんとなくっすけど……わかりました……」
サガット「次は投げ技だ。スープレックス技を教えよう!」
ヤムチャ「……スープレックス技?」
360:
サガット「ヤムチャ君、真剣勝負の試合なら……攻防はパンチや蹴りがメインだろう?」
ヤムチャ「そうっすね」
サガット「何故なら、一番効率的だからだ。 相手を掴んで、放り投げて……そんな事をするなら、二三発殴った方が手っ取り早い」
ヤムチャ「ごもっともっす」
サガット「だが、これはプロレスだ。非効率的な攻撃でも、そこに意思があれば、相手は攻撃を喰らうのを待っていてくれる」
ヤムチャ「……ふむ」
サガット「格闘技の試合では出来ない……見た事もないような、派手なスープレックスで、相手を倒したいという意思があればな」
ヤムチャ「……なるほど」
サガット「スープレックス技の魅力はここだ。とにかく、派手で盛り上がる。だから、ヤムチャ君にも覚えてもらいたい」
362:
ヤムチャ「なんか、俺に技を教えてくれるんですか!?」
サガット「あぁ、ヤムチャ君には、ボディスラムとバックドロップを覚えてもらう」
ヤムチャ「あれ……?」
サガット「ん、どうした……?」
ヤムチャ「俺、プロレス詳しくないんですけど……ボディスラムとバックドロップって……聞いた事ある気がしますね」
サガット「あぁ、基礎中の基礎技だ」
ヤムチャ「!」
サガット「先ずは、ボディスラムから覚えてもらおう。ボディスラムとは、相手を持ち上げて、落とす……ただ、それだけだ」
ヤムチャ「おいおいおい! 今更、基礎っすか!?」
363:
ーーー
ヤムチャ「……持ち上げて」
バイソン「……う、うおっ!」
ヤムチャ「……落とす!」
バイソン「……ぐっ!」ドシーンッ
サガット「いいぞ。なかなか飲み込みがいいじゃないか」
ヤムチャ「バイソンさん、大丈夫っすか?」
バイソン「受け身とっているから、平気だよ? とにかく、この技を完全に自分の物にしよう! ほら、続けて続けて!」
ヤムチャ「う〜ん……じゃあ……よっと、持ち上げて……」
バイソン「うおっ……う、うおおっ……!」
ヤムチャ「……落とすっ!」
バイソン「……ぐっ!」
サガット「よし、いいぞ! 完全に自分の物にするまで、続けるんだ!」
364:
ヤムチャ「……サガットさ〜ん」
サガット「ん、ヤムチャ君……どうした?」
ヤムチャ「この技……凄く地味っす……」
サガット「……」
ヤムチャ「こんな技で盛り上がるんですかねぇ? もっと派手な技、教えて下さいよ」
サガット「……基礎ができんと何も出来ん」
ヤムチャ「いや、俺、結構センスある方ですって……だって、天下一武道会ベスト8ですよ? ベスト8」
プーアル「ヤムチャ様、調子に乗りすぎです」
サガット「……ヤムチャ君、何故君のボディスラムが地味なのか教えてやろう」
ヤムチャ「……えっ?」
365:
サガット「君のボディスラムが地味な理由……それは、そこに何の意思もないからだ」
ヤムチャ「……へ?」
サガット「君はどういうつもりで、バイソンにボディスラムをかけている?」
ヤムチャ「えと……それは……」
サガット「バイソンにどれくらいのダメージ与えているつもりなんだ?」
ヤムチャ「えっと……えっと……」
サガット「そのボディスラムは、今君が使える技の中で、何番目に強いんだ? 狼牙風風拳より強いのか? 弱いのか?」
ヤムチャ「いや……流石に、狼牙風風拳よりかは弱いと思いますけど……」
サガット「今の君は、教えられた事を何の意思も持たずにしているだけではないのかい?」
ヤムチャ「……」
サガット「それじゃあ、プロレスは出来ない……少し、手本を見せてやろう……」
ヤムチャ「……えっ?」
366:
サガット「俺のボディスラムは、基礎技ではない」
ヤムチャ「いや、この技って基礎技なんでしょう?」
サガット「普通の人間使えばな……だが、俺は見ての通り長身だろう?」
ヤムチャ「そうっすね……」
サガット「つまり、他の人間が使うボディスラムより、高い位置から落とす形になるという訳だ」
ヤムチャ「……ふむ」
サガット「つまり……俺のボディスラムは、他の人間のボディスラムより、大きなダメージの攻撃である」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「という、意思を持って、俺はボディスラムをしている。 ただの基礎技にも関わらずだ」
ヤムチャ「……」
サガット「実際に見てくれ。よし、バイソン! 行くぞっ!」
バイソン「うっす!」
367:
サガット「うおおおぉぉっ!」グイッ
バイソン「う、うおおっ……!」
サガット「……バイソン、くたばれ」
バイソン「おっ……おおっ……! うおっ……!」
サガット「うるああぁぁぁ!」
ドシーンッ!
バイソン「……ぐがっ!」
プーアル「わっ、凄いっ! ヤムチャ様のとは全然迫力が違いますっ!」
ヤムチャ「……うるせぇよ。まぁ、確かに、何かが違うわ」
368:
サガット「俺の場合は、少し持ち上げた状態でタメを作ったりしている」
ヤムチャ「……あ〜、そういや、バイソンさんを抱えてる時間、長かったっすね」
サガット「落とす時にも、少し勢いをつけているな。 そうした方が迫力が出るからな」
ヤムチャ「……じゃあ、俺もそういう事をしてみたら、いいんですかね?」
サガット「……そうとも限らん。次はバルログのボディスラムを見てみよう」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「おい、バルログ! バイソンにボディスラムをしてくれ!」
バルログ「わかりました……バイソン、よろしくお願いします……」
バイソン「うっす!」
369:
バルログ「ヒャオっ!」シュッ
バイソン「……うおっ、おおっ」
バルログ「ヒャオっ!」ドスン
バイソン「おっ……だっ……!」
ヤムチャ「うわっ! 何だ、アレ!? 早っ!」
バルログ「……ヒョオオオッ!」
プーアル「あれ? バルログさんが、そのまま流れるような動きでコーナーポストに登りましたよ?」
バイソン「おいおい待て! バルログっ! ムーンサルトはやめろっ! 試合があるんだからよぉ!」
バルログ「……わかってますよ。私のボディスラムはここまでがムーブです」
370:
サガット「……とまぁ、あれがバルログのボディスラムだ」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「俺は長身から、叩きつけて大ダメージを与えるボディスラムだが……」
ヤムチャ「……ほう」
バルログ「私の場合、必殺技のムーンサルトプレスに繋げる、繋ぎの技として使用しています」
ヤムチャ「……繋ぎ?」
バルログ「えぇ。ムーンサルトプレスはダウンしている相手にコーナーポストから、バク宙をして、ボディプレスを仕掛ける攻撃ですからね」
ヤムチャ「……ほうほう」
バルログ「ムーンサルトプレス使うには、相手をダウンさせる必要があります。その為のボディスラムなのです」
ヤムチャ「……なるほど」
バルログ「私の場合はとにかく、スピード重視しています。メインの攻撃はムーンサルトプレスなのですからね」
ヤムチャ「……ふむ」
バルログ「素早いボディスラムから……流れるような動きで、私の必殺技のムーンサルトプレス……この一連の動作が、よりスムーズに行われる事を重視しています」
ヤムチャ「……なるほど」
371:
サガット「同じボディスラムでも、ここまで違いが出るんだ」
ヤムチャ「……えっ?」
サガット「ダメージ優先の……俺のボディスラム……」
バルログ「スピード重視の……私のボディスラム……」
ヤムチャ「……」
サガット「お互い、自分の体格や、ファイトスタイルに合わせて、一番自分に合ったボディスラムを作っている」
ヤムチャ「……なるほどねぇ」
バルログ「だから、ヤムチャ君も、自分のオリジナルのボディスラムを作りましょう。同じ技でも、どう使うかで、レスラーの個性になりますからね」
ヤムチャ「基礎技だと、思ってたのに……奥が深いんっすねぇ……」
バルログ「そんな事ありませんよ。偉大なレスラーは、チョップ一つで、会場が大熱狂するように工夫してたりするんですよ?」
ヤムチャ「え? チョップの一つで!?」
サガット「まぁ、とにかく、何事も基礎だ。ヤムチャ君オリジナルのボディスラムを、バックドロップを今日作ろう!」
373:
ーーー
ヤムチャ「うおおおぉぉっ……!」
バイソン「……ぐっ!」
バルログ「サガット……どうですか……?」
サガット「う〜む……悪くはないんだが……」
バルログ「そうですよね……何かが足りないですよね……」
サガット「……まぁ、暫くは打撃メインにしてやるしかないだろうな」
プーアル「皆さんっ! 本日の試合予定表、ザンギエフさんからもらってきましたよ!」
サガット「おっ、プーアル君、ありがとう」
バルログ「プーアル君はいつも気が効きますね」
プーアル「ほらほら! ヤムチャ様も見て下さいよ!」
ヤムチャ「どうせ、俺負けるんでしょ。俺、知ってるよ」
プーアル「文句を言わないっ!」
374:

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