「今日も765のアイドルはよく笑う」back

「今日も765のアイドルはよく笑う」


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1:
『765のアイドルはよく笑う』の続き
前作読まないとわからない
2:
目が覚めた
体中が痛い
ただその痛みが、自分が生きているという実感である
生きている
生き残った
いや・・・
死に損なったというべきか・・・
地獄に行けると思った
相応の罰を受けられると思った
しかし、生き残った
それが辛い
今まで感じ得なかった後悔が一気に押し寄せてきた
生きてしまった
生き残ってしまった
暖かな布団から香る洗剤の匂いが
ネガティブな気持ちが渦巻く心とは裏腹なそれが
なお俺を苦しめた
不意に首を横に向けると
男がいた
俺は加賀
かつて、車の運転席に座る部品だった
3:
男「気が付いたか・・・」
俺はこの男を知っている
いや
その道の人間で知らぬ人はいない
萩原組の組長
萩原雪歩の父親だ
この人間の遺伝子があの子に入っているのか・・・
養子じゃないのか?
萩原父「お前はなんであそこにいた?」
どうやら俺はこの人に助けられたのだろう
じゃなきゃ生きているわけがない
俺はゆっくりと話した
前の会社の事
そこで行われていた事
俺がやってきたこと
かつて765に取材に行ったこと
我那覇と四条を騙して765に置き去りにしたこと
会社にばれて殺されるはずだったこと
全てを隠さず話した
30分はかかっただろう
萩原さんはただ黙って聞いていた
4:
萩原父「話は分かった・・・」
萩原さんは、俺が話し終わると助けた経緯について話してくれた
あそこは萩原組の土地であったこと
騒ぎを聞いて駆けつけると俺がいたこと
そしてこの件には765は全く無関係だという事
萩原父「悪いが明日の朝にはここを発ってくれ・・・娘に気付かれぬうちにな」
そういわれて初めて時計を見ると、22:
まぁ当然だろう
俺の身の上を知ったうえで置いてくれるような人間はいない
命が助かっただけでも御の字だろう
「わかりました、助けてくれてありがとうございました」
萩原さんはその言葉を聞いて部屋から出て行った
明日からどう生きようか・・・
部屋の隅には俺の荷物があった
蓄えはあるにはある
明日の昼にでも考えよう
今は眠い
6:
早朝、門の前まで萩原さんは送ってくれた
萩原父「すくねぇがもってけ」
茶封筒にはいったお金をもらった
もちろん受け取れない
返そうとすると、萩原さんは手を前に出して拒否する
俺がどうすればいいのか困っていると、萩原さんは言った
お前がやってきたことはクソだ、最後に人を助けたからといってお前のやってきたことが許されるわけじゃない。
しかし現にお前は死ぬ覚悟で二人の女を助けた。その行動の結果、女は助かり、俺の娘の友達になった。
一人の人間であればお前の行動を罵倒したかもしれない。だが俺はその娘の父親だ。
引っ込み思案な娘を想う一人の父親だ。
俺は娘の友達を助けてくれてありがとうという感謝の気持ちを金にしただけだ。
とっとと失せろ、二度とここに来るな。
そういうと、門は閉じられた
すぐ近くには俺の車があった
後部座席に荷物を載せて、運転席につく
少しだけ窓を開ける
朝の寒さが身に染みる
不意にひゅうっと風が吹いた
冷たい頬が余計に冷たくなった
7:
昼のレストランで定食を頼むとテレビに目をやる
『うっうー!お料理しゃしすせその時間でーす!』
テレビから765のアイドルの声が聞こえた
今日も彼女たちは画面の中で笑顔を振りまいている
渇いたのどを水で潤すと
これからの事を考える
職を失い帰るべき家もない
あるのは少しの金と車と体
運転は得意だ、タクシーの運転手でも目指そうか
暗いこの先の事を考えると腹が減る
まずは飯を食おう
定食の到着を待つ
『今日はやよいと一緒に、ソーキソバを作るぞ!』
聞き覚えのある声がした
彼女の声がテレビから聞こえることがどこか誇らしかった
「A定食でーす」
定食がつくと、味噌汁を啜った
この店の味噌汁はしょっぱい
こんな店には二度と来れないな
10:
店員に変な顔をされた
失礼な奴だ
駐車場に停めてある車に乗りコンビニへ向かう
コーヒーとバイト情報誌とペンを買い、また車に乗り込む
最近は不況だな、ろくな仕事がねえ
前はなんだかんだ結構な額の汚い金をもらっていた
最後のページには履歴書がついていた
最近のものは羽振りがいいな・・・
そう思いながらも、結局良い条件のものは見つからず
目的もなく、車を走らせた
11:
妙案が浮かぶわけもなく、そのまま今夜止まるホテルを探した
職を探す前に、家を探さなければならない
何なら住み込みの職場もいいな
なんとなく楽しくなった
人間は身勝手なものだな
生きてるとわかった途端それを楽しむ
・・・
何を浸っているのだろうか、気持ちが悪い・・・
安いホテルを探しチェックインを済ませた
硬くも柔らかくもないベッドに寝転がるとあの二人の顔が浮かんだ
元気でやっているようでよかった
あの時の選択は間違っていなかったのだと思った
あの兄さんには苦労を押し付けたな
財布にある彼の名刺に載っているアドレスに感謝の言葉でも入れておこうか・・・
そういえば携帯を彼女たちに渡したんだった・・・
せめて手紙でも入れておこう
あの履歴書の裏でいいか・・・
備え付けの鉛筆を走らせる
そんな長い文章はいらない
彼女たちの笑顔を思い出すとなぜか鉛筆に力が入った
一言
助けてくれてありがとう 加賀
名前はいらないな
名前を鉛筆で消した
明日あの事務所の郵便受けに入れておこう
12:
ホテルのチェックアウトを済ませ
車であの事務所に向かう
ひと月前のあの日に、彼女たちをおろした場所に車を停める
車から降り、あの手紙を手に事務所の郵便受けに向かう
もう二度と来ることは無いと思っていた
なんとなく妙な気分だ
無事に郵便受けに手紙を入れた
しかしその場面を765のアイドルに見られた
デコの広い少女とテレビでよく噛む少女だ
大きな瞳がこちらを覗いている
これはマズイ
取材の時に顔がばれている
しかしあんな前の事を覚えてはいないだろう
軽くあしらってすぐに戻ろう
伊織「あなた・・・取材に来てた人よね?」
駄目だった
すぐ去ろう
やよい「あ!あの時のひ―」
無視した
13:
伊織「もう!失礼しちゃうわ!」
やよい「うー・・・なんかしちゃったのかなぁ・・・」
P「ん?二人ともどうしたんだ?」
伊織「手紙よ!礼儀の知らない奴からよ!!」
P「手紙?」
響「ファンレターか?」
貴音「私たちにも・・・ついにふぁんが・・・」
伊織「そんな奴じゃないわよ!昔ここに来た記者よ!」
P「記者・・・伊織、その手紙見せてみろ。」
伊織「これよ・・・何?心当たりでもあるの?」
P「・・・」
響「なんて書いてあるんだ?」
P「・・・」スッ
貴音「・・・ありがとう?」
やよい「うー?どういう事でしょう?」
伊織「待って・・・ここに消した跡が・・・ここを黒く塗ると・・・」ヌリヌリ
響「か・・・が・・・・?」
貴音「加賀・・・誰かの名前でしょうか?」
P「!!」ダダダダ
伊織「ちょっと!!どこ行くのよ!!」タタタ
響「あ!自分も行くぞ!!」ドドドドドド
貴音「わたくしも」ヒュ
やよい「???」
P(あんたか・・・記者さん・・・)
14:
あの後、事務所の近くで買い物を済ませていた
正直焦ったが、名前は消したのでばれる要素は無いだろう
もうあそこに近づくのはやめよう
やや急ぎ足に車に向かう
「待って!!」
その足は止められた
15:
後ろからあの日の少女の声が聞こえた
「ちょっと待ってよ?」
もしかして探しに来てくれたのだろうか
それなら嬉しい
素直にうれしい
だがなんと答えればいいのだろう
おめでとう?ごめんなさい?どれもピンとこない
振り返る
そして彼女とすれ違う
響「待ってよ?たーかーねー!!」
俺の人生で彼女たちと関わる事はもうない
わかってはいたが、目の前でそれを認識させられるとへこんでしまう
そもそも手紙なんかを出す時点で未練がましい
さっさと帰ろう
16:
駐車場に向かう道すがら、あのでこの広い少女と出会った
水瀬伊織というらしい、なんでも財閥のお嬢様だとか
伊織「さっきはどうも・・・」
返事はしない
してしまえば、あの時の記者であることを認めてしまう
伊織「だんまり・・・か・・・」
伊織「実はね、私は響と貴音たちが来た経緯を知ってるのよね・・・」
「!」
伊織「あいつらが来た時に持ってた携帯・・・わかるでしょう?」
間違いないだろう、俺が持たせたものだ
伊織「うちのプロデューサーの机に無造作に置いてあるの見たのよ・・・」
伊織「それを調べさせてもらったわ」
伊織「加賀・・・さん」
なぜ、手紙を入れた俺があの時の加賀とわかったのかはわからない
だが、ばれたという事は紛れもない現実だ
伊織「名乗り出なくていいの?」
伊織「あの会社への入社経緯とか仕事内容を私は知ってるわ・・・」
伊織「あんたがどんな人生を送ってきたのかも・・・」
「えっ!!」
伊織「少なくともあんただけが責められることじゃないでしょう・・・」
伊織「あんたもある意味・・・被害者だった・・・違うの?」
伊織「同情のつもりじゃないわ・・・ただ・・・」
そこまで調べられていたのは予想外だった
しかし相手は水瀬財閥の御嬢さん・・・
身辺調査などお手のものか
伊織「ねぇ・・・何とか言いなさいよ・・・」
伊織「仕事もないんでしょう?これからどうするつもりよ?」
伊織「水瀬なら仕事の紹介もしてあげられるし・・・なんなら事務所の運転手にも!」
もし・・・あの子たちの近くに入れるのなら・・・
あんな空気で仕事ができるなら・・・
俺はあの中に入りたい・・・入りたい!入りたい!!
17:
「人違いです」
18:
伊織「えっ・・・?」
「人違いです!!」
俺は走った
この空気にやられてしまわないように
己の欲望に身を任せぬように
彼女達に関わらぬように
伊織「―――!!―――――――!!!」
水瀬伊織の声はもう聞こえない
全力で走った
車に乗り込みアクセルを踏んだ
これでいい・・・
これでいいのだ・・・
俺は彼女たちの近くにいていい人間じゃない
水瀬伊織の申し出はありがたいが
まぁ慰謝料として携帯を進呈しよう
今度こそ、さよならだ
19:
あの後俺は、タクシー会社に就職した
二種免許の取得には割と時間がかからなかったので、貯金が底を尽く前に仕事につけた
収入は少ないが、割と楽しい毎日だ
コンビニの駐車場でコーヒーを啜りながら電話をしていると上司から電話が来た
「はい加賀です」
『あぁ加賀君?なんか君にご指名が入ったよ』
「指名?」
『あぁ、ABCビルの近くのEFレストランだって』
「はぁ・・・わかりました、向かいます」
指名とは・・・なんとなく嫌な予感がする・・・
とりあえずレストランにつき、乗客が来るまで待機する
しばらくするとドアをノックされたのでドアを開けた
乗ってきたのは小柄な奴だ
すごく嫌な予感がする
「どちらまでですか?」
「765プロ事務所まで」
車を出す
十中八九ばれてるだろうが声はかけない
どちらにせよいいことは無いだろうから
「ねぇ運転手さん」
「なんでしょう?」
「私はね、自分の思うとおりに行かないと腹が立つのよ」
「横暴ですね」
「そうね・・・でもそんなことはどうでもいいわ」
伊織「私から逃げられるとでも思ったの?」
恐い、これが金持ちか
伊織「あいつらにちゃんと事情を説明しないと逃がさないわよ」
「話したら逃がしてくれるんですか?」
伊織「そうね・・・気分によるわ。」
話が違うじゃないか
20:
伊織「現役アイドルと話してるんだから少しは感謝したらどうなの?」
「テレビと随分違うんですね」
伊織「褒め言葉として受け取るわ」
駄目だ・・・どうにもならない・・・
伊織「そうそう、あんた水瀬で雇うから」
伊織「あんたの身の上聞いたら、なんかほっとけないのよ。」
伊織「給料も現状より少し上げるわ、感謝しなさい」
もうわけがわからない
「意味が分からないです」
伊織「話したはずよ、あんたもある意味被害者だった」
伊織「それにあんた・・・中々面白い学歴じゃない・・・」
伊織「いずれ、水瀬を支える私に精々尽くしなさい」
駄目だ・・・話が通じない・・・
無駄に力があるもんだからなおタチが悪い
伊織「そうね・・・加賀てっなんか気に入らないわ・・・」
失礼な・・・
伊織「あんた今度から新堂ね。喜びなさい?うちの執事長と同じ姓よ?にひひ♪」
無茶苦茶だ・・・名前まで変えられた・・・
伊織「精々新堂に骨の髄まで鍛えてもらいなさい!新堂!」
伊織「あと逃げたら・・・すごく痛いわよ・・・」
「・・・・」
伊織「しっかりやるのよ!新堂!」
2

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