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穂乃果「えっ、隣のお兄ちゃん帰ってきたの!?」


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1:
穂乃果「昔よく遊んでもらったなあ」
穂乃果「俺は作家になる! まずは一人暮らしして執筆する環境作りだ!って言ってどこか行っちゃったんだよね」
穂乃果「まだ穂乃果のこと覚えてるかな?」
穂乃果「あっ、あれお兄ちゃんだよね! お兄ちゃ」
男「」ブツブツ
穂乃果「ん……?」
2:
男「俺は悪くない……理解されないだけだ……」ブツブツ
穂乃果「お兄ちゃん、だよね?」
男「ん、ああ……穂乃果ちゃん。久し振り。元気にしてた?」
穂乃果「う、うん。私は元気だけど……」
男「すっかり女らしくなっちゃって。前までは男女みたいだったのにな」
穂乃果「酷いよー、もう!」
男「はは、悪い悪い」
穂乃果(気のせいだったのかな?)
3:
男「海未ちゃん達は元気にしてる?」
穂乃果「うん、皆元気だよ! 今は一緒に部活やってるの!」
男「ふうん、部活か。いいなあ、高校生って感じで」
穂乃果「なんとその部活でね、スクールアイドルやってるんだ」
男「アイドルゥ? 真面目な海未ちゃんまでよく了解したね」
男「それにしても穂乃果ちゃんがアイドルって……似合わねーな」
穂乃果「今はちゃんと女の子らしくしてるよ!」
4:
穂乃果「それにしても、お兄ちゃんなんで急に帰ってきたの?」
男「いや……色々あってさ。仕事の都合とか」
穂乃果「大人って大変なんだね」
男「大人ねえ、俺本当に大人なのかな」
穂乃果「大人だと思うよ? 確か今年で二十八歳だっけ?」
男「歳だけみたらまあ、そうなんだけどさ」
男「なんだろうな、俺は大人になれなかったっていうか、なりきれてなかったっていうか」
穂乃果「どういうこと?」
男「ごめん、何でもないよ。忘れて」
5:
穂乃果「お兄ちゃんはいつまでこっちにいるの?」
男「いつまでだろうな、しばらくはいると思うけど」
穂乃果「本当!? じゃあ、昔みたいに遊ぼうよ!」
男「ああ、じゃあ今度虫取りでも行くかい。って、もう虫取りなんかやらないよな」
穂乃果「ううん、行こうよ。海未ちゃんとことりちゃんも誘うね!」
男「あの二人にも当分会ってないから、覚えてないんじゃないかな」
穂乃果「たまに話題にあがるし、大丈夫だと思うよ」
男「そっか、なら誘っといて。乗ってくれるか分からないけど」
6:
学校
海未「へえ、お兄さん帰ってきたんですか」
ことり「ことり達が小学5年生くらいのときにどこか行っちゃったんだよね」
穂乃果「でね、お兄ちゃんが今度皆で虫取りに行こうって!」
海未「虫取りですか?」
ことり「変わってないなあ、お兄ちゃん」
穂乃果「二人とも、どう? 今度の日曜日とかに」
海未「私は用事もありませんし、いいですよ」
ことり「ことりも行くよー」
穂乃果「やった!」
7:
穂乃果「じゃあそういう風に伝えて……」
海未「いえ、私達も今日行きます」
ことり「久し振りにお兄ちゃんに会いたいしね」
穂乃果「本当? じゃあ、練習終わったら皆で行こうよ!」
海未「はい、是非とも」
ことり「楽しみだなぁ」
9:
練習後
絵里「穂乃果、今日は皆でガストに行かない?」
にこ「セールもやってるしね」
穂乃果「あ、ごめん。今日はちょっと用事があって」
海未「私とことりもそれに同行しますので、行けません」
絵里「あら、三人でどこかに行くの? なら私達も」
穂乃果「昔仲良くしてたお兄ちゃんが帰ってきたの。だから、お話しに行くんだ!」
絵里「えっ?」
10:
絵里(三人が男の人の家に?)
穂乃果「6年くらい前から連絡取れなかったんだけど、昨日やっと帰ってきてね」
ことり「楽しみだね♪」
海未「そうですね、また前みたいに遊びたいものです」
絵里「私も行くわ」
穂乃果「へ?」
絵里「私もついて行くわ」
11:
穂乃果「で、でも絵里ちゃんからしたら知らない人だし」
絵里「穂乃果達の話を聞いたら私も友達になりたくなったのよ」
穂乃果「そっか! お兄ちゃんいい人だからきっとすぐ仲良くなるよ!」
希「絵里ちが行くならウチも行くやん」
にこ「じゃあにこもー」
穂乃果「ええっ、皆まで!?」
12:
穂乃果「結局9人で行くことになっちゃった」
海未「大丈夫でしょうか、知らない人を6人も連れて行って」
ことり「大丈夫だよ、私達の時も穂乃果ちゃんがいきなり私達を連れていったんだし」
絵里「それで穂乃果、そのお兄ちゃんってのはどういう人なの?」
穂乃果「明るくて、とってもいい人なんだ。小説家になるのが夢で、とっても面白い小説を書くの!」
花陽「男の人の家に行くなんてき、緊張しますぅ……」
凛「いい人らしいから、きっと大丈夫だよー」
13:
隣の家
穂乃果「ここがお兄ちゃんの家だよ!」
にこ「へえ、穂乃果の家の隣なのね」
ことり「だからよく遊んでたんだよー」
穂乃果「お邪魔しますー!」
男の母「あら穂乃果ちゃん、いらっしゃい。まあまあ、可愛い子がいっぱいねえ」
穂乃果「えへへ、お兄ちゃんいます?」
男の母「バカ息子なら部屋にいるわよ。寝てたら叩き起こしてやって」
穂乃果「はーい、皆、お兄ちゃんの部屋は二階だよ!」
14:
絵里(実家なのね。そこまで気を張る必要もなかったかしら)
海未「ここに入るのも久し振りですね」
ことり「昔は毎日のように来てたのにね。なんだか懐かしいな」
穂乃果「ここがお兄ちゃんの部屋だよ。お兄ちゃん起きてるかな?」
ガチャ
男「死ねば楽になれるかな。死にたいなあ、なんでダメなんだろうなあ」ブツブツ
15:
バタン
皆「……」
にこ「あれがお兄ちゃん?」
穂乃果「うん」
にこ「明るいどころか、パソコンに向かって泣きながら死にたいとか言ってたけど?」
真姫「とても明るい性格には見えないけど……」
海未「あ、あれがあのお兄さんですか? とても信じられません」
穂乃果「実は、昨日もお兄ちゃんちょっと変でね……」
ガチャ
男「この声、穂乃果ちゃん? ……と、誰?」
16:
男の部屋
男「ああ、昨日言ってたアイドルって本当だったんだね。急に来たからびっくりしちゃったよ」
穂乃果「本当は海未ちゃんとことりちゃんだけで来るつもりだったんだけどね」
絵里「すいません、私達が無理を言ってついてきてしまって」
男「ああ、いや。此方こそお構いも出来ずにすいません」
男「海未ちゃんもことりちゃんも、本当に大きくなったね。この前までほんの小学生だったのに」
海未「六年も会わなければ人も変わりますよ」
ことり「可愛くなったでしょ?」
男「うん、可愛いと思うし、皆成長したんだなあって思うよ」
17:
にこ(凄いわね……部屋中本だらけじゃない。ビブリオマニアなのかしら)
凛「ところでおにーさん、なんでさっき泣いてたの?」
男「っ!」
花陽「り、凛ちゃん? ダメだよ、そんなこと……」
真姫「失礼でしょ?」
男「はは、見られてたのか……恥ずかしいなあ」
18:
男「別に何でもないことなんだ。極々個人的な理由だから、気にしないで」
海未「ですが……」
男「本当に何でもないことなんだよ。だから、あまり詮索しないでほしいなぁ……なんて」
海未「……分かりました。お兄さんがそういうなら」
穂乃果(雰囲気が険悪になってきてる……話題変えなきゃ)
穂乃果「あ、ああ! そうだ、小説! お兄ちゃん、小説家になるって言ってたよね?」
19:
絵里「そう言えばさっきそんなこと聞いたわね」
穂乃果「お兄ちゃん、とっても面白い小説書くんだよ? 私は本は苦手だけど、お兄ちゃんの小説なら読めたぐらいだもん!」
海未「ええ、お兄さんの小説は確かに面白かったですね」
ことり「続きが読みたくてワクワクしたなぁ、懐かしいよ」
穂乃果「ねっ、お兄ちゃん今も小説を書いて」
ダンッ
穂乃果「」ビクッ
男「……ごめん、今日は帰って」
20:
にこ「ど、どうしたのよ急に……」
凛「おにーさん怖い顔してるにゃ」
穂乃果「ご、ごめんねお兄ちゃん。穂乃果、何か悪いこと言っちゃったのかな?」
男「謝らなくていいから、今日は帰って。虫取り、楽しみにしてるよ」
穂乃果「うん……」
海未「お兄さん……変わりましたね。昔のあなたは、そんなに感情的な人ではなかったのに」
ガチャ
バタン
21:
男「変わりましたね?」
男「違うよ、俺は変われなかったんだよ」
男「叶いもしないような夢を見て、大人になれずに今まで過ごしたからこうなっちゃったんだよ」
男「何が小説家だよ、才能もない癖に」
男「面白かった? あんなの誰でも書けるんだよ」
男「……折角来てくれたのに、怖がらせちゃったな。最低だよ、本当に」
22:
にこ「何よあの男! ムカつくわね!」
真姫「確かにあの態度は酷いわね、私達はともかく穂乃果達まで追い返したり……」
穂乃果「お兄ちゃん、なんで怒っちゃったんだろ」グスグス
希「んー、これはウチの予想なんやけどな?」
絵里「何か分かったの?」
希「多分あの人、小説家になれんかったんちゃうかな?」
穂乃果「ええっ、そんなことないよ! だってお兄ちゃんの小説、とっても面白かったんだよ?」
23:
希「それは穂乃果ちゃん達がまだ小学生やったからちゃうかな?」
凛「凛も、小さい頃は絵本が面白いと思ってたにゃ。けど最近読んだらつまらなかったよ」
花陽「まだ小説をあまり読んでいない時期だったから、面白く感じたんですね?」
絵里「確かにその可能性は高いわね」
ことり「お兄ちゃんは本気で小説家目指してたから……それが駄目となったらああなっちゃったのかも……」
海未「……」
24:
海未「私達もラブライブ優勝という夢をかかげて今までやってきましたね」
海未「私達の夢は叶いましたが、もし優勝出来なかったらと思うと……」
にこ「あの人六年間……その前からも小説家になろうと頑張ってきたんでしょ? そんなにずっと続けてた夢が壊れたら、にこだったら狂うわね」
花陽「可哀想……」
凛「けど、気丈に振る舞ってたにゃ。多分、強い人なんだと凛は思うよ」
海未「ええ、お兄さんは強い人ですよ。それは私が保証します」
25:
翌日
男「」カチャカチャ
男「」カチャカチャ
男「駄目だ、こんなんじゃ一次選考も突破しない」
男「つまらない、つまらないんだよ」
男「なんでもっと面白い話を考えつかないんだ? なんでもっと上手い文章を書けないんだ?」
男「小説家達が皆やってることが、なんで俺には出来ないんだ?」
男「俺だって人一倍、頑張ってきたのに」
26:
男「疲れた、休憩するか」
男「ん? なんだこれ……DVD?」
男「穂乃果ちゃんの忘れ物かな? ライブ……?」
男「再生してみるか」
フーシギーダネーイマノキモチー
男「はは、皆歌が上手いな。流石はアイドルだ」
男「ははっ、はははっ、ぐすっ、ははは」
男「なんで泣いてるんだよ、俺」
27:
男「皆変わったんだ」
男「穂乃果ちゃんは男勝りの男女じゃなくなった」
男「海未ちゃんは恥ずかしがり屋なのに、アイドルをやれるほど勇気を持った」
男「ことりちゃんはいつも周りにべったりだったのに、頼もしくなった」
男「変われてないのは俺だけだ」
男「……次の小説が通らなかったら、本当に最後にしよう。俺ももういい歳だ」
29:
日曜日
男「……」ウツラウツラ
穂乃果「お、お兄ちゃん?」
男「んおっ? ああ、ごめん。最近あまり寝てなくてさ」
海未「大丈夫ですか? 顔色も悪そうですが」
ことり「クマも酷いよ……」
男「平気平気! 今日は虫取りを楽しもう!」
穂乃果「この間はごめんね、穂乃果変なこと言っちゃって……」
男「いいよ、そんな。むしろお礼を言いたいくらいだ」
ことり「お礼?」
男「俺に夢を諦めさせてくれたお礼」
30:
穂乃果「夢を諦め……?」
男「この前、俺の家にDVD置いていったでしょ?」
海未「ええ、三人で相談して、ライブを見てもらおうと思ったんです」
男「あれのおかげで、皆変わったんだなあって気付けたんだよ俺」
男「いつまでも小説家なんて言ってられないしな!」
海未「……」
男「だから、次に送る小説がダメだったら。俺はきっぱりと小説家の夢を諦める」
ことり「そんな……お兄ちゃん、あんなになりたがってたのに」
31:
男「俺もようやく変われそうだよ」
男「いやー、六年間無駄にしたなあ、ははっ」
男「そうだな、募集が終わったら六年遅れの就活を始めて」
パンッ
穂乃果「……」グスッ
男「穂乃果、ちゃん?」
穂乃果「私達を、私達を見て、夢を諦めたなんて言わないで……」グスグス
32:
ことり「穂乃果ちゃん……」
男「力強くなったね、ほっぺたヒリヒリしてるよ」
穂乃果「本当に小説家になるの、諦めるの?」
男「ああ。夢はいつか終わるんだよ、それが今だったって話だろ」
穂乃果「そう、なんだ」
穂乃果「私の我が儘かもしれないけど、お兄ちゃんにだけはそんなこと、言ってほしくなかったよ」
ダッ
海未「穂乃果!」
33:
海未「貴方の夢は貴方のものです。諦めようと諦めまいと、それは貴方の自由です」
海未「けれど、これだけは覚えておいてください」
海未「貴方が夢を諦めたら、泣く人がいるんです」
海未「……私は穂乃果を追いますね」
男「……」
ことり「お兄ちゃん、夢を諦める必要ってあるのかな?」
男「だけど、仕事も探さなきゃいけないし、夢なんて追ってる暇はもうないんだよ」
ことり「お仕事をしながら夢を追ってる人、たくさんいるよ?」
ことり「お兄ちゃんのそれは、ただの現実逃避。逃げてるだけだよ」
男「俺はそんな器用な真似出来ないよ。元々、小説書くことしか出来ない人間だったんだから」
男「いや、なにも出来ない人間かな。ははは……」
34:
ことり「私も海未ちゃんも、それに穂乃果ちゃんも、お兄ちゃんの小説好きだったよ」
男「そうかい、嬉しいよ」
ことり「大丈夫だよ、お兄ちゃんはきっとなれるよ」
男「俺は、でももうダメだよ。挫けたんだ」
ことり「もう一度よく考えてみて」
ことり「私も二人を追うよ。お兄ちゃん、絶対に選択を間違えないで」
男「……はは、ははは」
男「……どうしろってんだよ、俺に」
男「なんで皆、俺みたいな奴にそこまで期待すんだよ」
男「……帰って続きを書くか」
38:
穂乃果「うっ、うっ」
海未「泣き止んでください、穂乃果。お兄さんも迷っているんですよ」
ことり「穂乃果ちゃんが泣いてると私も悲しくなってくるよぉ」
穂乃果「お兄ちゃん、何であんなことになっちゃったんだろ」
海未「きっと私達では想像も出来ないほどに、打ちのめされたんですよ」
海未「小説家になるには賞を取るか編集部に目をかけられることが必須……そのどちらもが、ダメだったのでしょうね」
46:
穂乃果「私ね、本当にお兄ちゃんの小説、好きだったんだよ」
海未「私も好きでしたよ、あの小説には夢が詰まっているように思いましたしね」
ことり「うん……」
海未「出来ることなら、あの頃のお兄さんに戻ってほしいですね」
穂乃果「けど、もうダメなんだよね」
ことり「まだ分からないよ。次で終わりって言ってたから、次でその賞を取れれば!」
海未「勿論、それが一番ですが……今までずっと落選し続けたお兄さんには少々難しいことかもしれませんね……」
47:
男の部屋
男「」カチャカチャ
男「」カチャカチャ
男「」カチャカチャ
男「……ダメだ」
男「これじゃ、また落選だ。もっと手を加えないと……」
男「なんでこんなに真剣に書いてるんだろうな」
男「どうせ一次落ちに決まってるのに」
48:
男「昔は良かった」
男「皆に文章が上手いって誉められて、穂乃果ちゃん達にも面白いって言ってもらえて」
男「何より、書いてる俺自身も面白いと思ってた」
男「今では自分の小説が面白いなんて、全く思わなくなった」
男「クズみたいな文章を書き連ねて、適当な賞に出す流れ作業」
男「……死にたいなあ」
50:
男「なんでこうなっちゃったんだろう」
男「夢を諦めなかったからだろうな」
男「小説家なんて目指すんじゃなかった」
男「才能も無い癖に、小説なんて書くんじゃなかった」
男「中小企業に入って、嫁さん貰って、平凡な生活を送る」
男「学生時代バカにしてきたことが、今の俺には遙か遠いところに見える」
男「友達は皆、そんな生活を送れているのに、俺だけが何も得るはずないのにこうして時間を浪費してる」
51:
男「死にたいなあ」
男「死ぬ勇気もないんだけどな」
ドンドン
男「? はい?」
絵里「失礼します」
男「あれ、君はこの前の……」
絵里「ご挨拶が遅れました。絢瀬絵里と申します」
男「これはどうも、ご丁寧に。……ところで、何の用でここに?」
絵里「穂乃果のことと、貴方の夢について。お話しを伺いにきました」
52:
男「はは、あのことか。あのことならもういいんだ」
絵里「もういい、とは?」
男「聞いたんでしょ? 俺はもう夢を諦めることにしたんだよ、穂乃果ちゃん達は怒ってたけどさ、いつか分かる時が来ると思うよ」
絵里「……」
男「夢なんて叶わない! 歳を取れば、嫌ってほど分かることだよ。ははは」
絵里「私は、無駄に歳を取っただけの人間を大人とは思いません」
男「ああ、だから俺は大人じゃないよ。作家志望のクズなガキだ」
53:
絵里「……分かりました、もういいです」
男「悪いとは思ってるんだ、けど仕方ないことなんだよ」
絵里「ええ、そうでしょうね。貴方にとっては」
絵里「……軽い気持ちで『夢』を汚す貴方にとっては」
男「……聞き捨てならないな、今の言葉。どういうことだ?」
絵里「言葉通りの意味よ。夢って言葉は、貴方みたいな人が軽々しく使っていい言葉じゃない」
54:
男「これでも頑張ってきたんだけどな」
絵里「逃げていただけでしょう?」
男「小説を書いていたこの六年間、否定されるだけだったよ」
絵里「自分の世界に閉じこもって、他人の意見に耳を傾けなかったんでしょう?」
男「違う」
男「違う!」
男「俺は悪くないんだ。俺の小説を理解できないあいつらが悪いんだよ!」
絵里「責任転嫁だけで生きていけるほど、人生は甘くないのよ」
55:
男「……君は何なんだよ。俺にどうして欲しいんだ?」
絵里「この街から消えてもらいたいの」
絵里「貴方がいると、穂乃果が、海未が、ことりが……悲しむのよ」
絵里「私は仲間のそんな顔、見たくない。だから、貴方に消えてほしいのよ」
男「……はは」
男「はははは! 俺は故郷に帰ってきても拒絶されるのかよ!」
男「分かった、この小説を書き上げたら俺は出て行くよ。それまでは我慢してくれ」
絵里「そう……なら、いいわ」
ガチャ
絵里「……ごめんなさい」
男「悪いのは俺だよ。謝らなくていい」
バタン
56:
男「もうここにも居場所はないか」
男「あーあ、人の実家に来て出ていけだなんて強烈なお嬢さんだ」
男「ははは、あはははは!」
男「いい仲間を持ったなぁ、穂乃果ちゃん」
男「俺も欲しかったよ。俺のために他人を拒絶してくれるような、仲間が」
57:
穂乃果「えっ、隣のお兄ちゃんまたどこかに行っちゃったの!?」
穂乃果母「『もう帰らない、ごめん』って書き置き残してどこか行っちゃったんだって」
穂乃果「そんな……」
穂乃果「酷いよ、久し振りに会えたと思ったのに、もういなくなっちゃうなんて」
穂乃果母「そういえば、穂乃果宛ての小包も置いてあったらしいわね。はい、これ」
穂乃果「小包? 何だろう」
58:
穂乃果の部屋
穂乃果「中身は何だろう? 結構小さいけど……」
穂乃果「! これ、お兄ちゃんが大切にしてた小説ノート……!」
穂乃果「それに、手紙?」
 まず最初に謝っとく。ごめん。
 全部俺が悪いんだよ、穂乃果ちゃんは何にも悪くない。
 
 俺、やることなすこと上手くいかなくてさ。実家に帰ってきた理由も適当に濁してたけど、本当はバイトをクビになったからなんだ。
 引っ越してから六年続けてたバイト。店長が変わった瞬間、新入りより使えないからクビって言われたんだよ。
 小説も上手く書けない、バイトすら満足にこなせない。そんな自分が嫌になってさ、けど小説を書くのだけはやめられなくてズルズル続けてた。
 気付いたら俺、本当にクズになってた。きっと嫌な思いもさせちゃったと思う。虫取りも出来なくて、ごめん。
 最後に。俺はもう小説を書くことも無いと思うから、俺の原点ともいえるそのノートは、俺の最初の読者である穂乃果ちゃんにあげよう。
 ま、最後に送った小説がたまたま賞を取ったりしたらプレミアつくと思うから、保管するなり捨てるなり好きにして。
 じゃあね、穂乃果ちゃん。色々ありがとう
5

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