義妹「お兄さん、今日のご飯は何ですか?」兄「何にしようか」【前半】back

義妹「お兄さん、今日のご飯は何ですか?」兄「何にしようか」【前半】


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5:
兄「ん、ご飯は炊いたし、卵……あ、野菜が切れかけだな」ガチャッ
義妹「無理しなくてもいいですよ……パンでもいいですし」
兄「家族なんだから遠慮しなくていい、気を使わないでもいいの」
義妹「……はい」ニコッ
兄(最近結婚したうちの両親は、基本家にいない)
兄(毎月必要な分の金を置いてくれるし、俺のバイト代もそこそこあるが)
兄(義妹が急な病気や事故にあった時のため、無駄使いはしない事にしている)
兄(決して俺はシスコンではない)
兄(うちでは俺が料理担当だ。一人の時間が多かったから、そこそこ出来る)
兄(義妹は俺にはもったいないくらいの良い子で、主に掃除洗濯を手伝ってくれる)
兄「よし、決めた」
兄(まず、鶏肉に胡椒をし、袋に入れる)
兄(料理酒、少しの砂糖を加え、よく揉みこんで放置)
義妹「何か手伝う事はありますか?」
兄「今は無いかな、ありがと」
ピンポーン
兄「悪い、出てくれるか?」
義妹「はい」ガチャ
友「夕方に失礼します、兄は居ますか?」スマイル
兄「友か、どーした?」
友「野菜のおすそ分けに来ました」ニコッ
兄「おー!切れかけだったんだ、助かるわ!」
友「いえいえ、それでは」ペコリ
兄「おう、またなー」
兄(友は紳士を絵に描いたような奴だが、畑を借りて野菜を育てている)
兄(高校ではそのギャップがたまらんと、モテまくっている)
兄(噂ではバレンタインにクラス一個分の女子からチョコを貰ったとか)
兄(……そろそろいいか、小さなフライパンに油をひいて)
兄(鶏肉、それに玉ねぎを炒める)ジュウゥゥ
兄(ある程度火が通ったら、さっきの調味液、それに醤油を加えてひと煮立ちさせ)
兄(最後に溶き卵を加え、蓋をする)
兄「もう出来るわー」
義妹「はい」
兄(それをご飯によそい、青ネギを少し散らす)
兄(三つ葉が欲しい所だが、生憎とそんなものはない)
兄「今日は親子丼です(材料費 160円ほど)」コトッ
義妹「おいしそう……いただきます」ペコッ
兄「いただきます」
義妹「おいしい……鶏肉が柔らかい」モグモグ
兄「我ながら卵の火の通しが最高だなー」ガツガツ
義妹「お兄さんは、コックさんにならないのですか?」
兄「俺はそーゆーの向いてなくてな」
兄(そう、俺は自炊は出来ても料理が出来ない)
兄(父が忙しく、一人でいる事が多かったせいか、自然と飯は自分で作っていた)
兄(材料が少ない親子丼や唐揚げは出来ても、ハンバーグは作れない」
兄(義妹のためにもっと覚えないとなー……)
兄「ごちそう様、風呂入ってくる」
義妹「はい」
6:
兄「ふー、さっぱりした……洗い物ありがと」
義妹「いえ、作っていただいたのですから当然です」
兄「そっか、じゃあ俺は課題終わらせてくるわ」
義妹「はい」
兄「計算とかマジで向いてないんだよ……材料費ならともかく」カリカリ
兄「終わった……頭痛い」
義妹「お兄さん」コンコン
兄「ん、義妹はまだ起きてるのか?」ガチャ
義妹「はい、眠れなくて……一緒に寝ていいですか?」
兄「ん、いいよー」
兄(別にやましい気持ちは無いが、俺は義妹の表情を見て、断れなかった)
兄(不安げな顔だ。怖い話でも見たのだろうか)
兄(電気を消して布団に入ると、義妹はすぐに寝てしまった)
兄(……そういえば、前の家の話とか聞いた事ないな)
義妹「……いや……」
兄「!」
義妹「……」
兄(寝言か)
兄(義妹の目から、涙が流れた。怖い夢でも見ているようで、随分と魘されている)
兄「……」ナデナデ
義妹「……」
兄(少しして義妹の涙は止まった)
兄「明日……聞いてみる……か……」
兄(へばりついてくる眠気に、俺は意識を失った)
7:
義妹「……おはようございます」
兄「おはよ、朝ごはん出来てるぞー」コトッ
兄「フレンチトーストとヨーグルト、野菜ジュースだけど嫌いなものとかある?」
義妹「いえ、大丈夫です……いただきます」
兄(うちには残念な事にオーブンがない)
兄(父がオーブンなど使うはずもなく、あるのは小さなオーブントースターだ)
兄(だから、お菓子作りはそこまで得意ではない。義妹のためにケーキとか覚えた方がいいのだろうか)
義妹「わ、このヨーグルト……」
兄「リンゴをすりおろして入れてみた」ドヤッ
義妹「プレーンはあまり好きではないのですが……おいしいです」
兄(やっぱ嫌いなものあったのか、あぶねぇ!)
兄(俺はプレーンでも大丈夫だが、念のため入れてよかった。栄養も摂れるし)
兄「朝はやっぱ糖分だよな、果物もいいけど」
義妹「このフレンチトースト、しっとりしてておいしいです」ニコッ
兄「一晩漬けたらやっぱしっとりするよなー」モグモグ
兄(昨日のうちに食パンを卵・牛乳・砂糖・バニラエッセンスの液に浸し)
兄(バター……と言いたいところだが、高いのでマーガリンを溶かし)
兄(弱火でじっくりと焼いたものだ。気に入ってくれてよかった)
兄(義妹が家に来たのはおよそ一週間前。最初は面食らったが)
兄(今はある程度心を開いてくれている)
兄(まだよそよそしい所は残っている。まぁ、時間が経てば慣れてくれるだろう)
兄「ごちそう様、日直だから先に学校行ってくる」
義妹「はい、また後で……」
兄「弁当は机の上だから、じゃ、戸締り頼む」
義妹「はい」
兄「じゃ、いってきまー……やべ、鞄忘れる所だった!」
義妹「ふふっ……いってらっしゃい」
兄(よく「行ってらっしゃい」という言葉が一人暮らしには心に来ると言うが)
兄(こんなにもじんわりした気分になるとは思わなかった)
兄(今までは朝起きて一人で行ってたからなぁ)
兄「……さて、急ぐか!」
8:
――
兄「昼だぁー」グッタリ
友「貴方は本当に計算が苦手なんですね」
兄「向いてないんだものー。あー腹減った」カパッ
友「……炒飯だけ、ですか?」
兄「うん、金かからんし」
友「しかし随分と極端な……でも、おいしそうですね」
兄「別にただのパラパラにした炒飯だよ、何なら食べるか?」
友「ぜひ……うん、やはり美味い」
兄「大げさだろー、あ、そのプチトマト一個くれ」
友「もちろん。ですが、義妹さんもまさか炒飯一色……?」
兄「アホか。義妹のはちゃんとした奴だよ」
友「そうですか」ニコリ
友2「義妹ちゃんの弁当を炒飯だけとか許さねぇぞ!」バンッ
兄「どっから沸いてきた、帰れ」
友「貴方は相変わらず一途ですね……」
友2「だってよ、あの小さな身長、さらさらの黒髪、可愛らしい顔!!」
友2「成績もクラストップ、運動もそこそこ出来る!!」
友2「完璧じゃねぇか、何でお前の家にいるんだよ!!」
兄「耳元で叫ぶなよ、頭に響く……」
友「頭の悪さがにじみ出てますね」
友2「あれっ、お前俺に対してキツくね?」
兄「そこまで言うなら隣のクラス行って、一緒に食べてこいよクソ坊主が」
友2「くそが、もう……ぼ、坊主は関係ねえよ!」
友(すでに行ってやんわりと断られたように見えますが)
兄(奇遇だな、実は俺もだよ)
友(「ごめんなさい、友達と食べるので」……のように断られたのでは)
兄(うわぁすごい分かる、困った顔が目に浮かぶわ)
友2「お前の家に泊まりたいよぉぉぉぉ」
兄「うわキッモ、今度は涙目になりだしたぞ」
友「不愉快ですね、学校に来ないでほしいです」
友2「だから言い方キツくない!?」
9:
義妹「……」モグモグ
妹友「義妹ちゃんのお弁当ってすごい綺麗だよね」
妹友2「彩りが多く、栄養も良さそう」
義妹「卵焼き、食べますか?」
妹友2「ぜひ……絶品」モグモグ
妹友「これ、隣のクラスの兄が作ってるんだっけ?」
義妹「はい、お兄さんのご飯は美味しいですよ」ニコ
妹友(これは……!!)
妹友2「今日、遊びにいかない?」
義妹「えっ?」
妹友「あ、私も!」
義妹「え、あぅ……お兄さんに許可を取らないと」
義妹「私だけが勝手に決めるわけにもいきませんし……」
妹友(かわええ)
妹友2(頭撫でたい)モグモグ
妹友(こんな子と住んでるのか……どんな奴かはよく知らないけど)
妹友「なら行ってくる、待っててね!」
義妹「あ、ちょっと……」
妹友2(この野菜炒めも絶品。キャベツの甘みが活かされている)モグモグ
義妹「行っちゃった……どうしましょう」オロオロ
妹友2「どうせすぐ帰ってくる、心配ない」モグモグ
義妹「大丈夫でしょうか」アレ、ヘッテル
友2「なぁ兄、今日家行っていいか?」
兄「生憎うちにはゴキブリホイホイ無いからちょっと……」
友2「せめて人間扱いしろよ!トイレ行ってくる」
兄「あ、ジュース買ってきてくれね?」
友2「動けや!」
友「まあまあ……ん、誰かこっちに来ますよ」
妹友「ねえ兄」
兄「……誰?」ピクッ
妹友「義妹ちゃんをあんまり縛らないであげて」
兄「あ?」
妹友「あの子に手をだしたらただじゃおかないからね」
兄(……ああ、気持ち悪い)
友2(何だよこの空気、どーするよ)
友(……まずい、ですね)
兄「それで、話はそれだけか?」
妹友「あ、後今日義妹ちゃんと遊ぶから」
兄「ふーん……ご自由に」
14:
兄(そうして、妹友は戻っていった)
友「……大丈夫ですか?」
兄「ああ、悪い……」
友2「おいおい、そんなヘコまなくても」
友「いえ、そういう事ではなく」
友2「?」
兄(俺は、自分と同じ年の女子が嫌いだ)
兄(嫌い、と言うと語弊があるか。好きではないと言った方がいいのだろう)
兄(大抵の女子には、簡単に心を開く事が出来ない)
兄(ある事がきっかけでそうなった。軽い女性不信のようなものだ)
兄(女は口で言う事と思っている事が違いすぎる。まぁ、それなら男もと思うだろうが)
兄(確かにそうだ。たまたまきっかけが女子だっただけで、頭では理解している)
兄(しかし、近くにいると気分が悪くなってしまう。もちろん、全ての女子がそうではなく)
兄(「大丈夫」そうな人間は、一目で分かる。義妹もそうだった)
兄(大方、さっきの妹友さんは「あんな可愛い子を独占している兄から彼女を救う」と言う、少女漫画地味た事を考え)
兄(あんな風に言ったのだろう。「美人の友達」と言う立場に酔うと共に、軽い嫉妬もあったと見える)
兄「……」ハァ
友「しかし、先ほどの方はすごかったですね」
友2「あいつと知り合い?」ゴクゴク
兄「ちげーよ」
友2「マジかよ、じゃあ初対面の奴呼び捨てとか、性格キツそうだよな」モグモグ
兄「さあなー、お、そのミニメロンパン一個もーらい」
友2「ああっ、俺の貴重な昼飯!」
友「さて……あ、兄。今日はスーパー手伝いますよ」
兄「おお、助かるわ!卵今日安かったはず」
友2「俺もバレーが無かったら行くんだけどなぁ」
兄「別に呼んでないけどな」
友2「ちょっ、ひどくね?」
友「ふふっ……もう昼休みも終わりですね」
兄「晩飯何にしようかなー、お、決めた」
ヴヴーッ
兄(あ、義妹からメール)
兄(「今日は遅くなりそうなので、晩御飯は大丈夫です」か)
兄(帰りどうすんだろ、心配だ)
兄(……まぁ、俺一人なら、コスパ最強のアレでいくか)
兄「よし、友、お前の玉ねぎ使わせてもらうわ」ドヤ
友「アレですね。その顔を見るに」
兄「おう、やっぱアレは男飯って感じするよなぁ」
友2「アレって?」
兄「ふふふ……聞いて驚け」
兄「――玉ねぎ丼だ」ドヤァ
16:
――
兄「悪かったな、手伝って貰って」
友「いえ、私からやった事ですから」ニコ
兄「卵が四パックあるのは嬉しいわー、明日の休日畑手伝うよ」
友「有り難いですが、義妹さんは良いのですか?」
兄「おおう、やっぱまだ家に一人は慣れてないか……」
友「また今度と言う事で、明日は一緒に居てあげて下さい」
兄「うん、今度ピザでも食べようじゃないか」
友「ええ、楽しみにしてます。では」ペコリ
兄「またなー」フリフリ
兄「さて、義妹居ないし掃除しとくか」
兄「……お、もう夕食どきか、行くぜ!!」
兄(まず、スーパーの肉コーナーで貰った牛脂を刻み、弱火にかける)
兄(その間に玉ねぎをみじん切りにし、ご飯を用意しておく)
兄(牛脂が溶けたら玉ねぎを投入、塩と胡椒をしてあめ色になるまで炒め)
兄(ご飯に混ぜ、最後に半熟茹で卵を乗せれば)
兄(ご飯が光の度で消える、玉ねぎ丼の完成だ)ドヤァ
兄(材料費は精々80円にもならないだろう)
兄(もやしに変えてもやし丼にするとさらに安くなるが、やはり玉ねぎの方が美味い)
兄(コツとして、塩をきつめに加えるのがポイントだ)
兄(塩がうすいと、牛脂のせいで玉ねぎの味がぼけてしまう)
兄(辛くなりすぎたなら、スープを加えて「玉ねぎ茶漬け」にするのもうまい)
兄「いただきます」カチャッ
兄「うめえぇぇぇ!!」ガツガツ
兄(牛脂で炒めたあめ色玉ねぎは、旨みをたっぷりと吸いつつ本来の甘みと調和させ)
兄(そこにトローリととろける卵黄が、その濃厚な旨みを見事に纏めている)
兄(冗談抜きで茶碗の米が消える。かきこまずにはいられないッ!!)
兄(すだちを絞れば最高だが、生憎とそんなものはない)
兄(栄養はあまり好ましくないが、何より安くてうまい)
兄「ごちそうさんー」
シーン
兄「……そういや、いつもなら義妹がいるんだよな」
兄(少し寂しくなってしまった自分を笑いつつ、洗い物を終えた俺は風呂に入った)
17:
義妹「……ただいま、です」
兄「お帰り、遅かったな」
義妹「あ、ごめんなさい……」シュン
兄「別に怒ってる訳じゃないけど、心配する」
義妹「……!」
兄(義妹の表情が、少し明るくなったように見えた)
兄「で、今日は楽しかった?」
義妹「はい、初めてプリクラを撮りに行って、それから……」
兄(それから義妹は、楽しそうに今日の出来事を話してくれた)
兄(クレープを初めて食べた、ファミレスで色々と話した、など)
兄(ナンパされたと聞いた時は驚いたが、今朝の妹友が守ってくれたようだ)
兄(次会ったら、一応感謝だけはしておこう)
兄「そっか、友達と馴染めてるなら良かったよ」ハハッ
義妹「妹友さんも妹友2さんも、優しい人で良かったです」
兄「友達は大事にしろよー、転校生は何かと目立つからな」
義妹「……はい」
兄(しかし、最初の実力テストで圧倒的成績を取った義妹は、十分目立っている)
兄(実際、友2がその存在を知っているくらいだ。悪い虫がつかないといいが)
兄「……そうだ、義妹」
義妹「?」
兄「もっとお互いの事を知ろうと思うんだ、義妹の事を教えてくれないか?」
義妹「……」
兄(義妹は無表情になり、うつむいてしまった)
兄(何かまずい事を言ってしまったのだろうか)
兄「え……ごめん、何か言いたくない事なら別に」
義妹「お兄さん」
兄「はいっ!」ビシィ
義妹「……お兄さんは、ずっと私と一緒、ですよね」
兄「うん」
兄(義妹はそれを聞くと、優しく微笑み、今までの事を語りだした)
兄(義妹は以前女子中に通っていたらしい)
兄(容姿端麗で成績も優秀な義妹は、女子グループのリーダー的な女子に僻まれ)
兄(辛辣ないじめを受けたそうだ)
兄(何よりも辛かったのは、親友だと思っていた子からも蔑まれ)
兄(担任からは「義妹ならうまくやっている、大丈夫」と決め付けられ、心配すらされなかった事)
兄(自分は一人だと思い、誰にも相談できずに)
兄(それでも母に心配をかけないため、三年間通学を貫いたそうだ)
兄(涙を零しながら語るその姿は、ひどく弱弱しかった)
兄(俺は漫画の主人公ではない。他人の痛みなど本当に理解など出来るはずがない)
兄(無力の俺に出来る事は――)
兄「……義妹」
義妹「は、い……」
兄「……辛かったんだな」ギュッ
義妹「う、う……!!」
兄「義妹は一人じゃない。絶対に見捨てないから、その……安心してくれ」
義妹「お兄さん……!!」
兄(声を上げて泣きじゃくる義妹の頭を、俺はしばらく撫でていた)
18:
兄(それから数日後、その……何と言うか)
義妹「お兄さん、おはよーございます!」
兄「おはよー」
兄(よそよそしさが消え、義妹が懐いてくれた。それはいいのだが)
義妹「えへへ、今日は学校はお休みです。お兄さんと一緒にいれます」ニコニコ
兄(……性格変わりすぎじゃね?)
義妹「お兄さん、今日の予定はありますか?」
兄「そうだな、今日は友の畑手伝う予定だけど……義妹は?」
義妹「お兄さんが行くなら行きます、着替えてきますね」タタタッ
兄(ただ、依存に近い懐き方なのが気になる所だ)
――
友「兄と義妹さんですか、兄弟揃ってどうされました?」ザクザク
兄「畑手伝いに来たよー」
義妹「こんにちは」
友「ありがとうございます、では兄は土壌の手入れ、義妹さんは収穫をお願いします」
兄「りょーかーい」クソッ、クワガオモタイ
義妹「どこまで収穫すればいいですか?」
友「そうですね、ここから……この三列ですね」
義妹「分かりました」
兄「しかし重労働だよな、こんなん一人でやってるとかすごいわ」ザクッ、ザクッ
友「慣れればそこまで辛くは無いですよ」ザクザク
義妹「わ……これはカブ、ですか」
友「ええ、カブは育てやすいですからね」ザクザク
兄「クワ振るのすぎだろ」ザクッ、ザク
友「何事も慣れですよ、貴方もかなり筋が良くなってきたじゃないですか」
兄「最初の事は忘れろ、マジ」
義妹「最初のお兄さんはどんな風でした?」
兄(クワ振り上げた瞬間転んだとか言えない)
友「クワを扱えずに転んでいましたね」
兄「友てめぇぇぇぇぇ!!」
友「おっと、作業を再開しましょうか」ザクザクザク
兄「さらにい!?」
義妹「……」クスクス
21:
友「お疲れさまです、今日はこの程度にしておきましょうか」
兄「何で息切れ一つしてないのお前……」ゼェゼェ
友「慣れですよ」ニコリ
義妹「野菜、収穫終わりました」コトッ
友「ありがとうございます、はい、お礼です」ゴトト
兄「え、三割くらい入ってるけどいいのか?」
友「良いんですよ、お気になさらず」
兄「あ、なら夕食うちで食べないか?」チラッ
友「良いのですか?」
義妹「ぜひ来てください」ニコ
兄「……だそうだ」
友「ふふ、ではお言葉に甘えて」
――
兄「ちょっと待っててくれよー」
義妹「お兄さん、手伝う事はありますか?」
兄「んー、ソースを作ってくれるか?やり方は……」
友(……距離が近くなっている。どうやら打ち解けたようですね)
兄(さて、では取り掛かる事にしよう)
兄(ホットケーキミックスを一袋ボウルにぶちまけて)
兄(人肌程度に温めた湯を加え、ヘラで混ぜ)
兄(塩一つまみとオリーブオイルを少し加え、さらに混ぜる)
兄(まとまってきたらラップをし、三十分ほど寝かせる。別に十分でも良いが)
義妹「こんなもので良いでしょうか?」
兄「おっけ。よくできました」ナデナデ
義妹「……えへへ」ニコニコ
兄(そして、少し膨らんだ生地を手にし、まな板に打ち粉をして延ばす)
兄(トースターの面積の都合で、二つ作る事にしよう)
兄(薄く延ばしたら、ピケをしてから淵を作ってソースを塗り、チーズ、豚肉を乗せ)
兄(ブラックペッパー・バジルを振りかける。これで準備完了)
兄(上にふんわりとアルミホイルを被せ、トースターで焼く)
兄(今回は趣向を変え、醤油・おろしにんにく(無臭タイプ)・玉ねぎ・蜂蜜・ごま油)
兄(それらを合わせ、弱火で煮詰めたソースにしてみた)
兄「――焼けた、今日の夕食はピザと友の野菜です!」(材料費 320円ほど)
友「おお、チーズの香ばしい香り……素晴らしいですね」
義妹「いただきます」
友「いただきます」ペコリ
友「おお、生地がカリカリ、そこにとろけるチーズ、プリプリの豚肉!」
友「それにこのソース……醤油をベースにしているのですね、それがまた合う!」モグモグ
兄(そう、トマトも良いが、醤油とチーズは相性抜群なのだ)
兄(ホットケーキミックスのおかげで、生地はイースト菌が無くても膨らむ上にボリュームがでる)
義妹「友さんの野菜も美味しいです、トマトも瑞々しい」モグモグ
友「ははは、ありがとうございます」
兄(明るい食卓。俺はこんな風景に憧れていたのだろうか)
兄(一人で食べる、あの虚無感が感じられない。暖かい気持ちだ)
義妹「お兄さん、どうしました?」
兄「……いや、何でもないよ」ニコッ
兄(そう言って、俺はとびきりの笑顔をしてみせた)
25:
兄「うー、もう腹いっぱいだ」
友「実に美味しかったです、さすがは男ですね」フキフキ
義妹「ごちそうさまでした。お腹いっぱい……」
兄「安くて美味いものは正義と思うんだ」キリッ
友「はは、ではそろそろ御暇しましょうかね」
兄「おう、また来いよー」
義妹「お野菜、ありがとうございました」ペコ
友「いえいえ、こちらこそ。では」ペコリ
バタン
兄「ふう、お腹いっぱいだ、さて、ちょっとくつろごうか」ゴローン
義妹「お兄さん、猫みたいです」クスクス
兄「食べてすぐ横になるのは、消化に良いんだぜ?」キリッ
義妹「クスクス……えいっ」ギュッ
兄「あうっ!?」
義妹「安心します……」ウットリ
兄(寝転がった俺を抱きしめる義妹。やはり、一人では無いと言う事実が、安心できるようだ」
兄(ただ、同学年の女の子に抱き着かれるのはまずい、メンタル的に考えて)
兄「よし落ち着け義妹、年頃の男に抱きつくのはやめよう、マジで」
義妹「?お兄さんにしかこんな事しませんよ?」キョトン
兄「ぐふぅ……とにかく駄目です、ほら頭撫でてやるから」ナデナデ
義妹「むー……なら許してあげます」
兄「懐いてくれたのは嬉しいけど、随分甘えんぼさんになったなぁ」ナデナデ
義妹「えへへ、もっと甘えちゃいます」ギュー
兄「仕方ない、なら撫でるのやめようかな」ピタッ
義妹「お兄さんは……私の事、嫌いですか?」
兄(なん……だと……)
兄「いや嫌いじゃないけど、やっぱまずいじゃん?」
義妹「最初、お兄さんは「兄弟なんだから気を遣わなくて良い」と言いました」
兄「ぐぬぬ」
義妹「ただの兄弟のすきんしっぷ、ですよお兄さん」ギュー
兄「負けました」ナデナデ
義妹「えっへん」
兄(まぁ、変な事はしないし大丈夫だろう)
義妹「お兄さんに抱き着いていると、落ち着きます」
兄「そりゃ重畳。そろそろ風呂入ってくるわー」トテトテ
義妹「はーい」トテトテ
兄「……いや、何でついてくんの?」
義妹「駄目ですか?」ウルウル
兄「それだけは絶対に駄目です」
義妹「……はーい」
兄(……近いうちに、俺の精神が押し負けそうで怖い)
26:
――
兄「さて、忌々しい数学も終わりだ」グデー
友「……大丈夫ですか?」
友2「腹減った……何で家庭科室で食べるんだ?」
兄「電子レンジ借りにきた」スチャッ
友「それは!」
友2「何それ、パン?」
兄(これは、昨日のピザの生地を大き目に延ばし)
兄(それにたっぷりの特製ソース、チーズ、豚肉を入れて包み、焼き上げたもの)
兄(カレーパン風ピザのようなものだ)ドヤァ
友2「うわ、なんかレンジから良い匂いが」
友(昨日の味が脳裏に蘇ってきました)ジュルリ
チーン
兄「さて、いっただっきまーす」カプッ
兄「……」モグモグ
兄「――うめぇぇ!!」
友2(くそう、一口食べた瞬間、アツアツのチーズの匂いが広がりやがった!)ジュルリ
友「おお……」
兄(カレーパン風にする事によって、ソースとチーズをたっぷりと入れる事が出来る)
兄(一口食べた瞬間、ソースにチーズが絡みついた濃厚な旨みが広がり)
兄(豚肉の脂のコクが、その魅力をさらに倍増している)
兄(昨日と違い、今回はソースがメインだ。少しスープで薄め、潰したプチトマトを一つ加えた)
兄(それにより、特製ソースは、まるでビーフシチューのような味わいとなる)
友2「くそう……テロだ、俺の弁当が霞むじゃねえか!」
兄「焼きそばに唐揚げ、後はおにぎりか」
友「しかし、ここで食べている人がいたらかなりの迷惑に……」
ガタッ
義妹「あ、お兄さん」ニコッ
妹友「……チッ」
妹友2「ふうん、あれが……」
兄(――俺は、突然の来訪者に、ほんの一瞬だけ、動きが止まってしまった)
兄(立ち上がるチーズの香ばしい匂い)
兄(間違いなく、ドン引きされるか罵倒されるか。そのどちらか)
義妹「あ、もしかしてこの匂いは」
兄「おっと飲み物忘れたなー、買いにいってこよーかなー(棒読み)」ガタッ
妹友2「待って」シュンッ
兄(一瞬で背後に回られた!?)
妹友2「私は義妹の友達。よろしく」
兄「……よろしく(何だこいつ、善意的か悪意的か分からん)」
妹友2「あなたと話したい事がある、放課後図書室まで来て」
友2「なん……だと……!?」
友(予想外ですね、しかし……)
義妹「……えっ」
妹友「はぁ!?」
30:
兄(それから学校が終わり、俺は図書館へと出向いた)
兄(中には妹友2が一人、本を読んでいた)
兄(長身、長い黒髪、凛とした目。図書室にいるとやけにしっくりくる容姿だ)
兄(書道部と言われても信じてしまうかもしれない)
兄(正直な所、妹友2はよくわからない。俺の嫌いな独特の感じは無いが、信用しろと言われても無理だ)
兄(まあ話したことも無い他人だ。その程度の距離感がちょうどいいだろう)
兄(無視して帰りたかったが、義妹の友達だ。一応行くに越したことはない)
兄「話って?」
妹友2「兄くんは料理が得意と聞いた」
兄「いや、別に得意ってわけじゃ」
妹友2「だから、私と友達になってほしい」キリッ
兄「……えっ」
妹友2「同じ趣味の人が居ない。一人で作るだけなのは面白くない」
兄(一人で、か……)
兄「でも、女子なら何人かいるんじゃないか?」
妹友2「お菓子作りをアピールして男子に媚びる人は嫌い。男の目なんてどうでもいい」
兄(ふと、俺は妹友2に親近感を抱いた。少し違うような感情かもしれないが)
兄「……そうか、別にいいけど」
妹友2「ありがとう、迷惑でなければ、今日メールしてほしい」
兄「ん、俺妹友2さんのアドレス知らないけど」
妹友2「問題ない。もうポケットに紙を入れておいた」
兄「……マジだ、いつのまに!?」ビクッ
妹友2「それじゃ、待ってる」フリフリ
兄(いつの間に俺の視界に入らずにドアまで!?)
妹友2「……ばいばい」パタン
兄「いや、俺もすぐ出るけど……もう階段まで行ってやがる。何もんだよあれ」
兄(……「迷惑でなければ」なのに「待ってる」ねぇ)
兄(メールしてみようかな……ま)
兄「気が向いたら、だけど」
34:
兄「ただいま」
義妹「お兄さん、お帰りなさい」トテトテ
兄「すぐご飯にするからなー、今日も丼だけど」
義妹「手伝う所は?」
兄「簡単だから大丈夫、ゆっくりしててくれ」
義妹「はい」
兄(某寿司屋の丼が美味そうだったので、それっぽいものを作る事にする)
兄(小さなフライパンにごま油を引き、豚バラを炒め)
兄(醤油・みりん・ザラメ砂糖で作った、適当なタレを加えてひと煮立ち)
兄(肉を先にご飯に乗せ、真ん中に半熟茹で卵、それを包むように青ネギをたっぷり乗せて)
兄(最後にタレを回しかければ完成だ)
兄(後は、皿にトマト、レタスを添え、スモークサーモンを乗せる)
兄(味付けはオリーブオイルで大丈夫だが、念のため小皿に注ぎ、ついでにドレッシングも持っていこう)
兄「今日の夕食は豚バラ丼です」(材料費 110円ほど)
義妹「わ……いただきます」ニコッ
兄「いただきまーす」
兄(豚バラとごま油は、相性が良い)
兄(ごま油の香ばしさが、豚バラの脂の甘みを引き立て)
兄(それの旨みが溶け込んだタレがご飯に染みわたり)
兄(全体的に濃いめの味を、半熟卵が纏め、さらにねぎが口を爽やかにしてくれる)
兄(つまり何が言いたいかと言うと)
兄「ンまいっ!!」ガツガツ
義妹「おいしいです、お兄さん」
兄「おかわりもあるぞー」ガツガツ
35:
兄「うまかった、ごちそーさん」
義妹「ごちそう様です。お兄さん」
兄「さすがに丼ばっかは飽きるよな、明日は別のものにするわ」ゴローン
義妹「お兄さんのご飯なら、何でも好きですよ?」ギュー
兄「もう夕食後のハグが恒例になってるな」ナデナデ
義妹「えへへ、おにーさーん……♪」
兄(ただ、このハグで俺自身も安心感を抱いているのも事実だ)
義妹「お兄さん、今日妹友2さんと、何を話してたんですか?」
兄「なんか、友達になってくれって(真顔で)頼まれた」
義妹「あの子が自分から男子と話してる所、見た事ないです」
兄「なんか趣味が一緒だからどーとか」
義妹「そうですか、妹友2さん、良い人ですよ?」
兄(女子の「良い人」はあてにならんが、義妹が言うのならそうなんだろう)
兄「じゃ、メールでもしてみるかな」
兄『兄です。一応送ってみたよ。よろしくなー』ピロンッ
ヴヴーッ
兄「返信早すぎだろ」
義妹「何て書いてありますか?」
妹友2『送ってくれてありがとう!! 異性の人とメールするなんて初めてだから緊張してます。笑 さっそくだけど、兄君の得意料理って何?』
兄「」
義妹「……」ニガワライ
兄「」
義妹「お兄さん、しっかりしてください」ユサユサ
兄「はっ!」
義妹「妹友2さんは、メールで素が出せるそうですよ」
兄「いやいや、義妹よりも変貌してんぞ……」
義妹「ほら、返信してあげて下さい」
兄「えー……『コストが高くない料理です。丼ものとかは得意かな』っと」ピロン
ヴヴーッ
兄「早すぎだろ、マジで」
妹友2『そうなんだ!丼ものって男の人って感じするよね。笑 義妹のお弁当がすごい綺麗だけど、お弁当は苦手なの?野菜炒め食べさせて貰ったけど、すごい美味しかったよ!』
兄「早すぎだろ、予測してるのを疑うレベル」
義妹「お兄さん、ふぁいと、です。お風呂入ってきます」クスクス
兄(やはり女子は理解出来ない)
36:
――
友2「それで、お前……寝るまで、メールしていた、と?」
友「意外ですね、見た所機械を使わないタイプのように見えましたが」
兄「それが返信くっそ早い。ビビるぜマジで」
友2「おう、帰れ。リア充は帰れ」
兄「お前もリア獣じゃねーかよ」
友2「うまくねーよ」
友「まあまあ……おや、今日の昼食は」
兄「ん、焼きおにぎり。安くてうまいし、朝食の余った奴」テッテレー
友「確かに朝の焼きおにぎりは安心しますね」モグモグ
友2「カリッカリに焼くのがうまいんだよな」モグモグ
兄「塗ってるのは味噌と醤油、それにレモンを少し絞った奴だ。カリカリで香ばしいのに、いくらでも腹に入る」
友2「詳しい説明要らねえから!」
友「本当に罪な人ですよ……」モグモグ
兄「お前のサンドイッチも自家製だろ?絶対うまいじゃん」
友「朝収穫したのを挟んだだけですよ」
友2「友の朝採れ野菜……だと……!?」
兄「で、お前のは??」
友2「や、焼きそばパン……(小声)」
兄「え?何て?」
友2「うっせええぇぇ!!焼きおにぎりよこせやコルァァ!!」
兄「うわ、叫びだしたぞ」
友「単細胞って怖いですね」
友2「だから辛辣なんだよ!!」
――
妹友「それで、実は先生の靴が……」
義妹「え、左右反対だったんですか?」
妹友「そうそう、だから言ったら、開き直りだしてさ」
妹友2「愚の骨頂……」
妹友「それでさ、来週の予定なんだけど、ケーキ食べ放題でいい?」
義妹(あんまりお金を使いたくないなぁ……お兄さんに迷惑かけたくないし)
妹友2「……」チラッ
妹友2「私の家に来る?」
義妹「……えっ」
37:
兄「ふーん、来週あの人の家かぁ」ジュウウウゥゥ
義妹「はい……駄目、でしょうか」
兄「「遠慮しなくて」良いって。連絡さえしてくれたら」ジャカジャカジャカジャカ
義妹「はい、お兄さん」クスッ
兄(今日の夕食は、炒飯だ)
兄(ただの炒飯ではない、まず、刻んだにんにくを油で熱し、きつね色になったら端によけておき))
兄(卵を入れたら間髪入れず、ご飯を投入)
兄(卵と油がご飯によく馴染むように、全身全霊でブンシャカする)
兄(ただ、家庭用のコンロでは熱がすぐ逃げてしまうので、ある程度馴染んだらブンシャカをやめ、木べらで混ぜる)
兄(そこそこぱらぱらになった時に、塩胡椒で味付けし、新鮮な春キャベツと刻んだソーセージを投入)
兄(キャベツの歯ごたえを損なわない程度まで火を通せば完成だ)
兄(スープにはベーコン・玉ねぎ・キノコを入れた、簡単なコンソメスープだ)
兄「今日は春キャベツの炒飯です」(材料費 100円ほど)
義妹「いただきます」パクッ
兄「いただきます」ガツガツ
兄(香ばしいにんにくの香りが食欲を湧き立たせ、炒飯を口に入れるごとに、シャキシャキとした春キャベツの歯ごたえと甘み)
兄(口の中に広がる、細かく刻んだソーセージの肉汁)
兄(そして、コンソメスープのほっとする味。炒飯にも良く合う)
兄(あえて醤油を使わない事によって、春キャベツの甘みを最大限まで感じる事が出来る)
兄(味わい深いのに決してしつこくなく、ぱくぱくと口に入れる事が出来る一品)
兄(贅沢な料理ではないが、春キャベツの炒飯は個人的にかなり好きだ)
義妹「美味しいです、お兄さん」モグモグ
兄「うまうま」モグモグ
ヴヴーッ
兄「あ、妹友2さんからだ。」パタン
義妹「良いんですか?」
兄「食事中に携帯いじる奴は嫌いなんだよ」
義妹「そうですか、あの子とは仲良しですか?」
兄「仲良しって……別に悪い関係じゃないよ。結構話しやすいし」
義妹「……お兄さん、今日は一緒に寝て良いですか?」
兄「えっ!?」
義妹「何だか、今日は甘えたい気分なんです」
兄「ははは、まさか妹友さんに嫉妬とか?」
義妹「むー、お兄さんは私のです……」ジトー
兄( マ ジ で し て た )
兄「ごちそうさま」
義妹「ごちそうさま、です」
兄「なぁ義妹」
義妹「何ですか?」クルッ
兄「お前は俺の可愛い妹なんだから、見捨てたりなんかしないよ」ナデナデ
義妹「……うー//」
兄「だから安心して良いんだよ」
義妹「……もう、ずるいですよ」ギュッ
兄「なんとでも言うがよい」ナデナデ
義妹「えへへ……ずっと、一緒ですよ、お兄さん?」ニコッ
40:
――
友「今日もここですか?」
友2「もうお前がここに来る=テロって分かってるんだよこっちは!」ガタッ
兄「あ、今日は別に手作りじゃないよ。インスタントの焼きそば」
友2「マジかよ。なら安心だな」
友(「安く・美味く」がモットーの彼が、何の工夫も無しに既製品を買うとは考えにくい……何か、来るッ!!)
兄「お、お湯湧いたな」コポポポ
友2「まぁ焼きそばくらいなら、俺のコロッケパンも霞まんだろう」モッシュモッシュ
兄「友のは……フルーツサンドか!」
友「ええ、苺もかなり収穫できるようになったので」モグモグ
友2「スイーツ系で攻めてくるとは……何と言う伏兵!!」
兄「よし、お湯切ってー」ジャバババ
兄「ソースを入れて―」プツッ
友2「く、ソースの良い匂いが……でも焼きそばくらいならいつでも」
友(いや――来る!)
兄「よく馴染むように混ぜて――こいつだ」スチャッ
友「そ、それは……」
友2「鰹節……だと!?」
兄「こいつを一パック、贅沢に入れて」ファサッ
友「おお……」
兄「スーパーの魚コーナーで置いてる、醤油を少し垂らし」タラーリ
友2「……」ガクガク
兄「よく混ぜてから――かきこむッ!!」ガツガツ
兄「うめえぇぇぇぇ!!」
友2「貴様ァァァ!!」
兄「ワシワシと麺を噛むごとに口に広がる、ソースの芳醇なコクと鰹節の香ばしさ!!」
兄「キャベツの甘みがソースと調和し、ますます食欲が沸いてくる!!」
友2「許さねぇ……絶対に許さねぇぞ!!」
友「これを教室でやったら、全員から罵倒が飛んできそうですね……」
兄「ふはははは、あー美味かった」ドヤァ
友2「畜生、コロッケパンが味気なく感じる……」モッシュモッシュ
友「ごちそう様でした」フキフキ
兄「あ、トイレ行ってくるなー」
友「ごゆっくり……おや」
友2「これは、兄のケータイ……それも、ロックがかかっていない!」
友2「……これは、履歴見るしかないだろう」パタン
友「止めはしませんが……」チラッ
友2「さりげなく見てんじゃねーかよ」
友「気になるもので」
『女子 好むご飯』『女子受けが良い美味しいお弁当』『お前ら、女子が好きな食べ物教えろpart2』『女の子 スイーツ』『お弁当 彩り・栄養』
友「兄……」ホロリ
43:
義妹「お兄さん、起きてください」ユサユサ
兄「んー……」
義妹「せっかくの休日ですよ、昼寝しないでいちゃいちゃしましょうよ」ユサユサ
兄「うー……」
義妹「……」フーッ
兄「うわあぁぁ!?」
義妹「えへへ、おはようございます♪」
兄「耳に息吹きかけるのは駄目だろ……つーか自分からいちゃいちゃ言うな」
義妹「起きないお兄さんが悪いんですよー」
兄「くそ、目も冴えた……仕方ない、おやつでも作るか」
義妹「やった!」ニコニコ
兄(まずは、生クリームを温め、砕いたビターチョコに混ぜる)コポポポ
兄(よく混ざったら冷蔵庫に入れておく)バタン
兄(これだけ)ドヤァ
兄(そして、白玉粉に少量の砂糖を混ぜ、人肌に温めた湯を加えてヘラで混ぜる)
兄(よく練ったら、ラップをしてレンジにぶち込む)ガタンッ
兄(一回目が終わると、水で濡らしたヘラで軽く練り、もう一度レンジへ)チーン
兄(それを繰り返し、三回目辺りで透明感が出る生地になる。これで求肥の完成)
兄(そうすれば、片栗粉をまぶして……と言いたい所だが、別に小麦粉でもそこまで大きな差は出ない)
兄(さっと全体に小麦粉をまぶし、適度なサイズに伸ばす)
兄(と、そろそろ固まってきただろう。先ほど作った生チョコを求肥で包み、丸める)
兄(それを延々と繰り返す……よし、おk)
兄「生チョコ大福だよー」(材料費 320円ほど)
義妹「いただきまーす♪」モニュモニュ
兄「……」モチノビー
義妹「おいしいです」モニュモニュ
兄「小さな一口サイズにしたから、しつこい甘さになってないだろー」モチノビ-
兄(生チョコと大福は、かなりナイスなコンビだ)
兄(苺大福も好きだが(白あん派)、生チョコもうまい)
兄(もっちもちの求肥に包まれた生チョコは、口の中に入れると滑らかにとろける)
兄(一口で口に入るサイズにしたため、一気に喉が渇く事もない)
兄(しかしそこは俺、ちゃんと紅茶を用意してある)
兄「ほら、紅茶。砂糖はお好みで」
義妹「さすがお兄さんです」モニュモニュ
兄「生チョコ大福は簡単に短時間で作れるからいいよなー」
義妹「……」モニュモニュ
兄(うわ、もう半分になってる。随分と気に入ってくれたようだ)
兄(お、新しい料理閃いた。明日挑戦してみよう)
兄「ごちそう様ー」(摂取量・5個)
義妹「ごちそう様でした」(摂取量・10個)
兄「意外と食べるんだな……」
義妹「甘い物は別腹、ですから♪」ニコニコ
兄「まったく……あ、メール」ヴヴーッ
妹友2『兄君、今日はキッシュに挑戦してみました♪ 初めてだったけど、上手に焼けたよ!』
兄「おお、何だこれ……甘くない、料理の方のタルトみたいなもんかな」
兄『おお、すげー! 何かオサレな名前だけど、ピザみたいな感じのタルト的な奴かな?』ピロンッ
ヴヴーッ
妹友2『そんな感じかな? あ、良かったら、今日おまけで作ったタルト食べる?』
49:
兄「……どうしよう」
義妹「お兄さん、こんなメールは素早く返してあげて下さい」
兄「何で見てんだよ。まぁ……一応、貰いますか」
兄『くれるのなら食べます(必死)』ピロンッ
ヴヴーッ
妹友2『分かった、今から届けに行くね!』
兄「えっ、明日学校でとかじゃないの?」
義妹「学校は妹友さんの目があるから、あまり動きづらいのでは?」
兄「妹友さんのけ者かい。つーか学校で話しかけてきたよな?」
ピンポーン
兄「……早くね?」
義妹「妹友2さんの家は……こんな早くに来れる距離では……」
兄(あらかじめ近くに来ていたのか……はたまた超スピードで来たのか)
兄(……あの人なら超スピードで来るのが否定できないのが辛い)
兄「どうしよう、出るのすっごい怖い」
義妹「お兄さん、男の見せ時ですよ」
兄「えー……」ガチャッ
妹友2「持ってきた。早めに食べてほしい」
兄「お、おう(キャラ違いすぎだろ)」
義妹「妹友2さん、こんにち……夕方ですし、こんばんはの方が正しいですね」ニコ
妹友2「こんばんは」ペコリ
「……」
兄「(何だよこの間は!)えー、えっと、なんか違和感すごいな」ハハ
妹友2「私はただコミュ障なだけ……心の中ではメールの性格」
兄(つまりさっきのは、『タルト持ってきたよ、早めに食べてほしいな♪』って事か)
兄(なんか……うぅん……)
兄「ま、まぁすぐ慣れるわ。大体訳せるようになってきたし」
妹友2「嬉しい。では、もう帰ることにする」
義妹「妹友2さん、お兄さんが送っていってくれるそうですよ」ニコ
兄「えっ!?」
妹友2「では、お願いする」ペコリ
兄(おい、何無理ゲーに挑ませてんだよ!!)
義妹(仲良くなるチャンスですよ♪)
兄(まず会話長持ちしないって!)
義妹(メールでは出来てるんでしょ?)
兄「(畜生……)じゃあ行ってくるわ」
義妹「行ってらっしゃい」フリフリ
兄「……えっと」スタスタ
妹友2「……」スタスタ
兄「そ、そういえばさ、あのタルトって生地から手作りs……」
妹友2「兄君」クルッ
兄「はいなんでしょうか!!」ビクゥ
妹友2「……義妹の事、どう思ってる?」
50:
兄(……まあ、「異性として」って意味だろうなぁ)
兄「大切な妹だよ。それ以外でも何でもない」
妹友2「……そう」
妹友2「妹友から聞いてって頼まれてた。これで問題ない」
兄「あー、そーゆー……」
妹友2「じゃ――私の事は?」
兄「えっ……」
兄(夕暮れで真っ赤に染まる塔をバックに振り返る妹友2は、とても綺麗に見えた)
兄「メールするようになってからそんな日数経ってないし、まだ分かんないかな」
兄「ただ、き、……嫌いじゃないけど」
兄(うわあぁぁぁぁ何言ってんだ俺えぇぇ!!)
兄(野郎のツンデレなんて需要無いのに!!)
妹友2「……そう、今はそれで良い」
兄(妹友2は、そう言うと――)
妹友2「ここまでで大丈夫。……またね、兄くん」ニコッ
兄(少し恥じらいが混じった、とびっきりのスマイルで、去っていった)
兄「あ、おう……」
兄(俺はしばらく、呆然として動けなかった)
――
義妹「お兄さん、どうでした?」
兄「おーう……」
義妹「何かあったんですか?」
兄「おーう……」
義妹「聞いてますー?」ジー
兄「おーう……」
義妹「今日、一緒にお風呂に入りましょうよ」
兄「おー……はっ、駄目だっつーの!」」
義妹「ちっ」
兄「今舌打ちしたよね?」
義妹「とんでもない。で、どうしたんです?」
兄「んー」
兄「そうだな、「何も無かった」よ」ニコッ
義妹「何ですか、それー」ジトー
兄「さーな。さて、夕食にしようか!」
兄(ポイントで貰ったシリコンスチーマーに春キャベツ・豚バラ・春キャベツ……と重ねていく)
兄(途中で塩胡椒を振りながらだ。そして、レンジにぶち込む)チーン
兄(これだけ)ドヤァ
兄「今日は炊き立てご飯、味噌汁、そしてこいつだ」イタダキマース
義妹「……これは、前の炒飯よりもキャベツの甘みが活かされてます!」モグモグ
兄(キャベツ自体の水分のみで蒸された豚バラは、ジューシーでとても甘く)
兄(旨みをダイレクトに吸収したキャベツは、甘みを生かしつつもシャキシャキとしていて)
兄(また、そこに溜まったキャベツの出汁と豚バラの脂のスープを、スプーンで飲むのも醍醐味だ)
兄(白菜と豚バラを重ねた鍋の、簡易版と言った所か。110円しかかからんし)
兄「うまい!!」ガツガツ
52:
―翌日―
兄(暇だ)
兄(学校が終わり、義妹はいつもの三人で妹友2さんの家にいる。なんか一日泊まるらしい)
兄(着替えやら鞄やら教科書やらを集めていたのは、そういう事だったのか。先に言ってほしかった)
ピンポーン
兄「……どしたん?」ガチャ
友2「突然ですが、泊まりに来ました」キラッ
兄「帰れ」バタン
友2「待って、俺だけじゃないから!!」
友「実は私もいます」
兄「何でだよ、唐突すぎるわ!!」
友「今日学校で話してたじゃないですか、それで」
友2「兄が「義妹ちゃんいなくて寂しいよぉぉwwww」ってならんように、泊まりに来てやった訳だ」
兄「よし、明日お前の黒歴史を学校で放送してやる。楽しみにしてろ」
友2「くっ、ひ、卑怯だぞ!!」ガクガクブルブル
友「まぁまぁ……野菜持ってきましたし、入れて下さいよ」
兄「それを先に言え」ガチャッ
友「おじゃまします」
友2「おじゃまー」
兄「ったく、夕食は食べたよな?」
友・友2「えっ」
兄「……たかる気マックスかよ。どれどれ」
兄(友の持ってきた袋の中には、キャベツ、ジャガイモ、カブ、ニンジン、玉ねぎがあった)
兄(んー、よし)
兄「決めた、今のうちにやっとくか」
友2「よし、スマブラしよーぜ」ガタ
友「私はゲームキューブのコントローラーで」
兄(……俺のでっていうが火を噴く時が来たようだな、待っていろ貴様ら……!!)
兄(とりあえず野菜の皮をむいて、適当に切る。カブだけは大きめにカットだ)
兄(鍋に水を入れ、ニンジン・ジャガイモを入れ、火をつける)
兄(沸騰したらコンソメと醤油を投入、軽く表面を焼いたカブ、玉ねぎを入れ、落し蓋をして火を止める)
兄(とりあえずこれで放置)
兄「よっしゃ、俺も混ぜろ野郎共!!」
友2「ヨッシー?そんなんで俺の圧倒的火力、ガノン様に勝てるわけがないっていうwwwwwww」
兄「……てめーは俺を怒らせた」
友(ああ、友2は今地雷を踏みましたね)←ルカリオ
友2「ふっ、魔神拳で一気に……呑み込みやがった!」ペロッ、ポン
兄「からの転がり→転がり→転がり解除→ジャンプして上からヒップアタック→上スマッシュだ!」ドガン
友「フッ……甘いですね、二人共」パリン
兄「友のすぐ側にスマッシュボールが!? しまっ……ああぁぁぁぁ!!」ドドドドドド
59:
――
兄「くそ、さすがは64からやってる古参なだけあるぜ、友……」
友2「次のステージはハイラルで良いよな」ポチッ
兄・友「えっ」
友2「……」
兄「……まぁ良いか」
友2「何だよその微妙な空気。悪いが今回は俺の勝ちのようだな」←ドンキーコング
兄(どうせ背負ってそのまま道連れにする気だろ……)←ルイージ
友(徹底的に倒しましょうかね……)←クッパ
友2「行くぜっ」ピコピコ
兄「掴みを緊急回避で避け、A連打からの地獄突きだ!」ドュクシ
友「さすがに簡単には倒せないですね……」ピコピコ
兄「敵キャラのレベル最強にしたからな」
友2「はっ、スマッシュボール!」キラン
友2「よし、貰ったぜ!」ドコドコ
兄「と思わせてーの」パリンッ
友(ファイアボールで後ろから破壊したか……さすがですね。逃げましょう)
友2「くそっ、この距離じゃ……」
兄「ネ ガ テ ィ ブ ゾ ー ン 」ミワワワワ
友2「くそ、動けねぇ!」ガチャガチャ
兄「動けないゴリラにゆっくりと近づき――」
兄「ゼロ距離のファイアジャンプパンチだ」カッキーン
友2「くそおぉぉ!」キラーン
友「よし、倒した……最終決戦ですね、兄」
兄「お前が72%、俺が30%か……あ、そろそろ飯にするか」
友「そうですか、では残念ながら」
友2「あ、なら俺がやる!」
友「手は抜きませんよ?」ピコココ
友2(全く反撃出来ない!?)
兄「ほら、ゲーム中止しろ。今日はポトフだ」コトッ
友「ええ、もう終わりました」
友2(一度も攻撃できずに負けた……)
兄・友・友2「いただきます」
兄「……」ズズー
友2「はぁ?」
兄(ポトフは、野菜をスープで煮込むだけの料理だ)
兄(つまり野菜がメインの料理だ。今回は肉を入れていないが、牛すじをじっくりと煮込んだ奴も良い)
兄(温かみのある、思わず息をついてしまう素朴な味だ。蕪が口の中でとろけ、ホクホクのじゃがいもがまた美味い)
兄「普通はマスタードだが――こいつも、合うぜ?」スチャッ
友「柚子胡椒ですか……おぉ、確かに!」
友2「鼻にすーっと通る爽やかな香りと、舌にピリピリと流れる辛み!こいつはうめぇぜ!!」
63:
――
兄「おっ、ナイス友」カッ
友「いえいえ、任せてください」
友2「お、落ちてきた。俺のカジキマグロが火を噴くぜ!」ズガガガガ
兄「ちょっ……えっ」
友(パーティで曲射を使う人ですか)
兄「せめて頭狙おうぜ……」シャキーン
友「では私は左の翼を狙います」←スラアク・ラギア
兄「おう、任せたぜー」←双剣・ゲネル
友2「あ、狂走薬が無くなった。くれ」←弓・カジキマグロ
兄(マジでこいつ帰ればいいのに)
友(典型的な地雷ですね)
友2「あ、倒した。とどめは間違いなく俺だな!」
兄「モンハンやってたらもうこんな時間か」
友「……」
友2(そーいえば、夕飯ってあのポトフだけだったな。腹減った)
兄「さて、夜食にするか」
友2「一生ついて行きます師匠」
兄「スマブラ付けといてくれー」
兄(昨日の残りご飯があった。三人分くらいならまぁ大丈夫だろう)
兄(俺の夜食=おにぎり・ソーセージ・卵焼きが鉄板だ。大晦日の夕食も、毎年それで固定している)
兄(だが、今回は……)
兄(まずはご飯をレンジで温める)チーン
兄(そして、目玉焼きを焼いて、ご飯に乗せる。ご飯は少な目にしておく)
兄(醤油を用意する。ただし、この醤油は燻製にした醤油だ)
兄(ホームセンターにある小さな土鍋とスモークチップがあれば、マンションでも簡単な燻製が可能だ)
兄(土鍋に周りをアルミホイルで包んだチップを入れ、上に百均で買った網を乗せる)
兄(その網に具材を乗せ、蓋を被せるのが理想だが、蓋に高さが無くて無理ならアルミの箱のようなものでも良い)
兄(具材の上にそれを被せ、その隙間をアルミホイルで塞げば、もう燻製は可能だ)
兄(スモークチーズ・ビーフジャーキー・鶏むね肉の燻製程度なら何とか出来る)
兄(ちなみに、この醤油には燻製の時に鰹節を入れて燻してある)
兄「今日の夜食は――目玉焼き丼です」
友「おお……」
友2「いただきまー……!?」
友(口に入れた瞬間、燻製の香ばしい香り、それに麺つゆのような旨みが!!)モグモグ
友(それが半熟の卵黄のコクと合わさり、まろやかで濃厚な味わいだ!!)
友2「うめえぇぇwwwwwwwww」
兄「これが深夜のテンションか……しかしうまい」モグモグ
70:
妹友「嫌あぁぁぁ!!」ギュー
義妹「……」ガクブル
妹友2「……♪」オ、オイ、イマコエガ
妹友「なんで見る映画がホラー物なのよ!!」キノセイジャネ?イコーゼ
妹友2「ジャンケンで負けたあなたが悪い」チョッ、マテヨ、ウ、ウシロ……
義妹「うぅ……」エ?ウシロ?
妹友「わああぁぁぁ!!」ギャアアァァァ
妹友2(おかしい……涙目になって耐えるばかりで、抱き着いてこない)
義妹(もう2時……眠くなってきました)
妹友「やっと終わった……もう寝よ」
妹友2「分かった」
妹友「義妹はいつごろ寝てるの?」
義妹「いつもは12時頃にですね」ゴソゴソ
妹友「兄になんかされたらいつでも言ってね」
義妹「大丈夫です」
妹友2「明日の教科書も用意した。もう電気を消す」カチッ
義妹「おやすみなさい」ニコ
妹友「おやすみー」
義妹(お兄さんは、今頃ぐっすり寝てるのかな)
兄「ッシャアアァァ来てるぜ、よし、よし!」ドゴ、ドゴ
友「最後です、決めて下さい兄!」ガキン
兄「振り向き―の……うおおぉぉお!」シュイーンドコゥ!!
友2「いったあぁぁぁぁ!!」
兄「やっべえぇぇ!!」
友「おおおお!!」
友2「なんてコンビネーションだよ……すげぇ」ズササー
兄「ホームランコンテスト新記録だあああああ!!」
友「やはり一人より二人の方が安定しますね!」
友2「こんな記録初めて見たぜ!!」
兄「野郎共、次は亜空の使者だ!!」
友2「やらいでかぁ!!」
兄「あ、友と俺な。お前は実況でもしてくれ」
友2「え、ひどくね?見てるの好きだけどさ」
兄「冗談だよ、お前やっていいぞ」
友2「兄……//」
兄「きもい」
友「汚物ですか……」
友2「おーい!!」
74:
――
兄「……」グデー
友「……」アクビ
友2「……」グデー
兄「さすがに徹夜はやりすぎたな……」
友「とてつもなく眠いですね……」
友2「……」
兄「もう動くの無理だわ……食べようか」
友「おや、今日は普通の弁当ですか」
兄「今日はって別に……」
兄(弁当は海苔を敷いたご飯・唐揚げ・プチトマト・レタス・鮭だ)
兄(弁当に揚げ物は入れない主義だが、唐揚げだけは許せる)
兄「んまい」モグモグ
友「その唐揚げはまさか……朝やっていた」
兄「ああ、自家製だよ。もも肉を生姜・無臭ニンニク・料理酒・醤油のつけダレで漬けて、牛脂で揚げた奴だ」
兄(ちなみに、別に牛脂じゃなくても良い。油使うのがもったいないからだ)
兄(俺はめったにやらないが、揚げ物には拘るタイプだ)
兄(かみしめるごとにぷりぷりの肉から旨みが溢れだし、レモンをあらかじめタレに絞っているので、こってりかつさっぱりとしている)
兄(これの揚げたてはマジでやばい。カリカリの衣とジューシーな肉のハーモニーを感じながら、がつがつとご飯を口に入れ――麦茶で流し込むッ!!)
兄(自家製の揚げたて、それは一種の贅沢だ)ドヤァ
兄「うん、やっぱ冷めても美味いわ」モグモグ
友「良い匂いです」
ガララ
兄「いつまで死んでるんだお前は」
友2「義妹ちゃんの匂い!!」ガバッ
兄「え?」
義妹「お兄さん、少しついてきて下さい」
妹友「おいハゲ、何義妹をキモい目で見てんのよ」ドゲシ
友(……机を蹴った)
妹友2「少しだけ協力してほしい……」
兄「え、良いけど……」ガタ
友2「怖い……あいつ怖い……」ブルブル
友(これは、何かありますね)
75:
後輩「……この人ですか?」
義妹「そうです。うちのお兄さんです」ニコ
妹友「ほら、挨拶」
兄「兄です。そろそろ説明してくれ。帰りたい」
後輩「一学年下の後輩です。実は、好きな人がいて、誕生日にお菓子をプレゼントしたいんですけど」
兄「(なんだリア充の見せつけかよ)いいんじゃね?」
後輩「ただ、私自身はお菓子作りが下手で……」
兄「妹友2さんがいるじゃん。俺いらないよね」
妹友「……?」
妹友2「私だけでも教えるだけなら大丈夫、だけど、男の好みなども参考にしたいし……何より」チラ
後輩「うぅ……」シュルッ
兄「何より?」
後輩「あうぅ……」
兄「?」
兄(目を隠していた前髪の一部をゴムでくくった後輩は、目を合わせてくれない)
兄(しかし綺麗な目だな……隠さなくてもいいのに)ジー
義妹「後輩ちゃんは恥ずかしがり屋さんなんです」
妹友2「そう。つまり、兄くんで克服するのも兼ねている」
兄「なるほどー」
妹友「ふん」ドゲシ
兄「いって……何なのお前」
妹友「キモい」
兄「あっそ……」
妹友2「では、本題に入る事にする。作るのは――」
妹友2「プリン」キリッ
82:
兄(プリンは、卵・牛乳・砂糖で作る、簡単なお菓子だ。俺もそこそこ作る)
兄「どんな奴にするのか決めてる?」
妹友2「兄くんは普通どうやってる?」
兄「アレンジしてスーパーカップを溶かして卵黄二個、それをカラメルを注いだ容器に入れて蒸すだけ」
兄(ただ、アイスを溶かせばどうしても細かい泡が残るので、気になるなら半紙などで除くのもいいかもしれない)
兄(バニラアイスを溶かし、卵を加え、入れる。ただし、うちには蒸し器もオーブンもない)
兄(ならば鍋だ。容器を鍋に入れ、水を半分くらいの高さまで注ぎ、弱火で蓋をする)
兄(地獄蒸しと呼ばれるやり方だ。フライパンでも出来る)
兄(もともと完成されたバニラアイスに卵黄を足すだけなので、砂糖もいらない)
妹友2「それは初めて聞いた。でも……」
兄「手作り感に欠ける、って言いたいのは分かってる。だから、こんなのはどうだ?」ゴニョゴニョ
妹友2「――それはいい。かなりいい」
後輩「お、お願いします!」
妹友2「なら、明日の放課後私の家でやろう。みんなで晩御飯もついでに」
義妹「本当ですか?」
妹友「妹友2の料理はおいしいもんね。いただくよ」
妹友2「明日の放課後、うちに来て。材料は揃えておく……」
兄(……あれ?)
義妹「お兄さん、楽しみですね!」ニコニコ
兄「え、俺も行く事になってるけど……」
妹友2「レシピを知ってる人が来なくては意味が無い」
後輩「お、お願いします」
兄「……(マジかよ)」
妹友「何?」ギロ
兄「はぁ……分かった、行くわ」
兄(女子の家に行くとか……妹友さんがいるし)
兄(憂鬱だ)
――
ジャアナー バイバーイ マタアシタ
友「……兄」
兄「ん?」
友「――「何が」あったのですか?」
兄「……お見通しか。さすがは親友」
兄「いや……いい加減区切りをつけないとな」
友「あれですか……ゆっくりで良いんですよ。一番辛いのは貴方なのですから」
兄「義妹にはまだ話してない。俺はただの卑怯者だよ」
友「いいえ、それも貴方の優しさですよ」
兄「臆病なだけだ」
友「違います」
友「――あの人は、まともじゃなかった」
83:
兄「……」ドキドキ
義妹「お兄さん、挙動不審ですよ、落ち着いて下さい」
兄「お、おう」
ガチャ
妹友2「いらっしゃい」
後輩「今日はよろしくお願いしますね」ペコリ
妹友「……」
兄(家に入った瞬間、女子の匂い、と呼べばいいのだろうか。そんな匂いがした)
兄「とりあえず洗面器借りる。手洗って……あ、材料は」
妹友2「もう用意してある」グッ
兄「さすが。じゃ、行こうか」
義妹「はい」
兄(本日作るのは、オーブンを使わないケーキ的なものだ)
兄(ちっさいフライパンで作る事にする)スチャッ
義妹「あ、持ってきたのはこれですか」
兄「そだよー、準備はいいよな」」
後輩「は、はい」シュッ
兄「まず、小麦粉を用意、三つの卵を分け、レモン汁を少し加えて卵白を泡立てる」
後輩「泡だて器、ですか?」
兄「おう、自分の手で泡立てるんだ」
妹友「ちょっと、そんなの女の子にさせる気?」ジロ
後輩「……やります!」ガチャッ
義妹「後輩ちゃん、頑張って」
兄「よし、こんなもんか……そしたら次は」
妹友2「はい」スッ
兄(すでにバター・牛乳・砂糖・卵黄を練ったものを作っていただと!?)
兄「お、おう。じゃあそれを混ぜて……」
後輩「ちょっと重いですね……」ネリネリ
兄「混ざったら、バターを溶かしたフライパンに入れる。空気が抜けるように、出来るだけ高い所からな」
後輩「はい!」
兄「さて、こっからが本番だ……蓋をして超弱火で焼く」
後輩「どれくらい焼けばいいですか!」
兄「一時間かな。十秒に一回くらいは濡れ布巾で底を冷ませよー」
妹友「はぁ!?」
義妹「手間がかかりますね……」
兄「ホットプレートやオーブンなら大丈夫だろうがな。心を込めて焼けよー」ソファスワリー
妹友「ちょっ、そこで丸投げって……やる気あんの!?」
兄「おう、それとも、出来ないか?」
後輩「――いえ、やります!!」キリッ
兄「……いいね」ニヤッ
85:
兄「おー、良い感じに焼けたな」ホクホク
後輩「成功ですかね?」
兄「味見してみるか」
義妹「あ、私が切ります」サクッ
妹友「バターの香りだ。何これ?」
兄「何だろうな。材料的にはケーキなんだが……よくわからん」
妹友「やっぱふざけてんの?」
後輩「でも、すごい綺麗な黄色……いただき、ます」オズオズ
義妹「!」モグモグ
兄(材料で考えれば、これはカステラに近いか)
兄(しかし、ふわふわぱさぱさのカステラと違い、これはしっとりもちもちとした食感だ)
兄(一番近いのがプリンケーキ……だろうか)
妹友2「表面は綺麗な茶色なのに、中は鮮やかな黄色……」モグモグ
義妹「でも、素朴で暖かい味です」
後輩「レシピは覚えました。先輩は、誰にこれを習ったのですか?」
兄「……」
義妹「?」
兄「自分でてきとーに作ったら出来た。ほらよく言うじゃん、失敗は成功のもとって」
後輩「そうですか」クス
妹友2「……」
後輩「ありがとうございます、来週一人で作って、それで……」
兄「あー、はいはい」
86:
妹友2「では、そろそろ夕食にとりかかる」
兄「あ、手伝うわ」ガタッ
妹友2「兄くんはお客様。手伝わせるような事は出来ない」
兄「はい」シュン
兄(そう言うと、妹友2さんはエプロンを着て台所へ向かった)
兄(何か、こう、新鮮な感じがする。良いねこういうの)
妹友「……」ギロ
兄「何すか」
妹友「キモい」
兄「お前まじで何なの。言いたい事があるならちゃんと言えよ」
妹友「別に。話しかけないでくれる?」
兄「は……?」
後輩「二人とも、お、落ち着いて下さい」
義妹「お兄さん」
兄「……分かった」
兄(帰りたい)
後輩「と、所で、兄先輩の友達って誰ですか?」
兄「友と友2かな。よくつるんでるのは」
後輩「そうなんですか……」
義妹「来週渡すんですよね?」
後輩「は、はい!」
義妹「頑張って」ニコ
後輩「頑張り……ます……//」
妹友2「出来た」コトッ
兄「鰆、回鍋肉、サラダ、すまし汁か。うまそー」
妹友2「おかわりもある」
義妹「いただきます」
後輩「……うわ、鰆がふわっふわ!」モグモグ
妹友「でも皮がカリカリ……それに、オリーブオイルで焼いたのかな」
兄「……ポワレ、か」
妹友2「正解。皮がカリッとしたら、最後に蓋をして蒸し焼きにした」
義妹「なるほど……」
兄「回鍋肉もうめぇ。これは……イカのわたか!」
妹友2「さすが。この回鍋肉にはわたにお酒と醤油、レモンを加え、煮詰めたソースを混ぜた」
後輩「塩胡椒で味付けされたイカも、コリコリしておいしいです!」ガツガツ
兄(わたの濃厚でねっとりとした旨みが、回鍋肉の根強いコクとなっている。さすがだぜ)
後輩「……おかわり頂きます」ガツガツ
兄(こいつは大食いかよ)
兄「よっしゃ、俺もおかわり貰おうかな!」
87:
――
義妹「ごちそうさまでした」
妹友「美味しかった。さすがは妹友2だね」
後輩「また来てもいいですか」
妹友2「もちろん。またこの「五人」で集まろう」
兄(あれ、さりげなく俺も入れられてね?)
兄「今日はごちそうさん。それじゃ、帰ろうか」クルッ
義妹「はい。ありがとうございました」ペコリ
妹友2「いつでも歓迎する。ばいばい」フリフリ
後輩「……あ、バスに間に合わない。失礼します!」バヒュン
兄「いなー、さすが陸上部」
義妹「あ、忘れもの……少しだけ待ってて下さい」タッタッタ
兄「えっ」
兄「……」
兄「」チラッ
妹友「なに」ギロォ
兄(ふえぇ……こいつと二人っきりとか無理だよぅ……)
妹友「……あんたはさ」
兄「ん?」
妹友「運命とか、神様って信じる?」
兄「……?」
妹友「何でもない……そう、あんたには関係無い事だから」
兄(どういう事だ……突然口を開いたと思ったら、わけわからん事言い出したぞ)
兄「なんか俺が悪い事した?」
妹友「別に」
兄「……あっそー」
義妹「お待たせしました。行きましょうか」タタタッ
兄「そうだな」
妹友「うん」
89:
兄「義妹は……寝たか」
兄(突然ですが、兄です。宿題を終わらせているともうこんな時間です)
兄(今まではバイトで攻寝てたけど、やっぱ辞めたら自由時間が多くなるな)
兄(そんなわけで、とてもお腹がすきました)
兄(なら作るしかないだろう、そう――夜食の時間だ)
兄(夜食の魅力は、何と言ってもその美味さと、「手軽に作れる」という事だ)
兄(まずは、お隣から分けてもらったバターをフライパンに溶かす)ジュウゥゥゥゥ
兄(十分温まったら――こいつだ)ゴハンッ!
兄(素早くフライパンを振りながら、バターをまんべんなくまぶす)
兄(いい感じになったら、醤油・胡椒を加える)
兄(この匂いがたまらん。醤油バターマジ最強)
兄(しばらくしてから、くぼみを作り、卵を割る)カパ
兄(そして蓋をしてちょっと放置)
兄(オープン!)ホワアァァ
兄(そう、これは「醤油バターご飯」だ)
兄(当然カロリーは高く、お世辞にも健康的とは言えないものだが)イタダキマース
兄(これがうめえぇぇぇ!!)ガツガツ
兄(バター醤油。この調味料を吸い込んだご飯の中で、時折感じる胡椒の香り)
兄(それが食欲を湧き立て、さらに箸が進む!!)
兄(半分ほど食べてから卵の黄身に傷を付ける)トロー
兄(これで味の変化が生まれ、まろやかなコクが生まれる)
兄(うめえぇぇ!!)ガツガツ
兄「ふぅ、美味かった……」
兄(スモークチーズも作っておいたし、もう寝る事にしよう)
兄(それでは皆様、良い夜食を)キリッ
97:
兄「よし、先に行ってるぞー」ガチャ
義妹「はーい♪」
兄「……あ、おっさん。おはよー」
隣人「おっさん言うな。傷つくぞ」
兄「スモークチーズはもう作っておいたぜ」ニヤ
隣人「そうか、実はまた北海道の実家からバターが届いたんだが……」ニヤ
兄・隣人「wwwwwwwwwwwwwwwwww」
兄「じゃあ学校行ってくるわ」
隣人「おう」
隣人2(何なんだあいつら……)
――
兄「世界史まじちょろいわー」
友「ほう、次のテスト勝負でもしてみますか?」
兄「いいだろう……負けた奴は卵一パックだ」
友2(この秀才どもが……くそ、くそぉ!)
兄「そろそろ保温型の弁当とか買ってあげた方がいいかなぁ」
友「どうでしょう……おや」
友2「ハッ、この匂いh」
妹友「……」ギロォ
友2「アーコロッケパンウメーナー」
友「それ、焼きそばパンですよ……」
後輩「せ、先輩!!」
兄「あー、了解」ガタ
アイツガナンデアンナカワイイコタチト? ノロッテヤル メシテロヤロウノクセニ
後輩「せせせ先輩、か、改良して持ってきました」ビクビク
兄「そんな緊張しなくても」
後輩「だって、そんな……あうぅ」
妹友2「目を見てこれを渡す。貴女なら出来る」
後輩「……」ガクガクガク
兄「……」ジー
後輩「ど、どうぞ!」
義妹「及第点……じゃないでしょうか?」
妹友「まぁこれくらいなら、ね」
兄「いただきまーす」ヒョイパク
兄「おぉ」モッシュモッシュ
妹友2「これは、半分がカラメルソース、もう半分はコーヒーソース……おいしい」モッシュモッシュ
兄「刷毛で塗った後、ちゃんとカットして爪楊枝も添えてあるな。良いじゃん」
義妹「コーヒーのほろ苦さと、カラメルの甘さが良い感じです」
後輩「あ、明日渡そうと思う……んですけど」
兄「これなら全然オッケーだろ。うまいうまい」モッシュモッシュ
妹友「――で、相手は?」
98:
――
兄「今日は本気の黄金炒飯を作る事にします」キリッ
義妹「わー」パチパチ
兄「ぶっちゃけこれで出来ないとか考えられん。メモはいいか?」
義妹「はい!」
兄「よし。まずは、米に卵を割りいれ、隅々までなじむようかき混ぜる」カパッ
義妹「卵かけご飯を作るんですね!」
兄「そこにごま油だ。分量大匙一ほど」トロー
義妹「なるほど」メモメモ
兄「醤油、隠し味に焼き肉のタレを加える」
義妹「ふむふむ」メモメモ
兄「鍋にサラダ油を引き、熱々になるまで熱する」ジュウゥゥゥ
兄「そして、卵かけご飯を入れ、箸を使ってかき混ぜつつブンシャカだ」ジャカジャカジャカジャカ
義妹「卵で纏まっているようですが、大丈夫ですか?」
兄「大丈夫だ、五分くらいしてれば……ほら、ほぐれてきた」
義妹「わ、お米が卵を纏って独立してきました」ワクワク
兄「もうそろそろだな」ジャカジャカジャカジャカ
兄「仕上げに塩、胡椒を加える」パッパ
兄「これでパラッパラの黄金炒飯の完成だ」
義妹「本当にパラパラですね、お箸で掴めない……」ポロ
兄「お、ホイル焼きも出来たな」
兄(ついでに、これはホイルに玉ねぎをびっしり敷き、鮭、バターをほんの少し、コンソメスープを注いで閉じ、鍋に乗せて火をつけたものだ)
兄「後は生のトマト。さて、いただきまーす」
義妹「いただきまーす」
兄(スプーンで口に入れた瞬間、ふわっとした舌触り)
兄(噛みしめるごとに米の甘みがじわじわと広がり、ごま油の香ばしい味も感じられる)
兄(米と卵と言う単純な材料だからこそ可能な、シンプルな旨み)
兄(無論、ホイル焼きもうまい。ホイルを割った瞬間、熱気と共に素晴らしい香りが広がり)
兄(玉ねぎの甘さと一体化したスープ、ふっくらと蒸された鮭、そして、少量のバターがコクを加える)
兄「うん、いい出来だな」モグモグ
義妹「おいしいです」モグモグ
兄「いよいよ明日だな、後輩さん」
義妹「頑張ってほしいですね……」
兄「ま、大丈夫だろ。風呂入ってくる」
義妹「……?」
兄「ん?」
義妹「何でもない……です」
兄「お、おう」
義妹(お兄さん……何か変だった……?)
102:
兄「いよいよだな」コソコソ
妹友「大丈夫かな……」コソコソ
義妹「結局、告白するまでは秘密って言ってましたもんね」コソコソ
妹友2(静かに、誰か来た)
兄(こいつ直接脳内に……!)
後輩「……」ガクガクガクガクガク
兄「くっそ震えてんじゃねーかよ」
義妹「ギリギリ見えませんね……」
妹友「……!?」
兄「あ、あれは……!」
「あの時の子か。話って?」
後輩「あ、あの……こ、これ、受け取って、貰えませんか」
後輩「――友2先輩!!」
友2「お、何これ?」ガサガサ
友2「ケーキかな、いっただっきまーす」
後輩「……」ビクビク
友2「おー、うめぇ!!」モッシュモッシュ
後輩「!」
友2「もっちもちでうまいわ。……ん?」カサ
友2「これは……手紙?」
後輩「よ、読んでください」
友2「……」フムフム
友2「――なるほど」
後輩「へ、返事が……欲しいです」
友2「付き合うのは無理だ」
後輩「え……」
兄(真剣な表情になったと思ったら……)
義妹(即答……)
妹友2(……)
友2「俺バカだから、正直恋愛とかよくわからん」
後輩「……そう、ですか」
友2「だから、まずは友達から始めないか?」ホレ
後輩「これは」
友2「俺のアドレス。暇なら送ってくれ」ニカッ
後輩「……は、はい!!」
友2「じゃーな!」
後輩「やっぱり優しい……あの時、私を救ってくれたみたいに」
105:
後輩「……」
妹友2「」シュンッ
後輩「!?」ビクゥ
妹友2「立派だった」
後輩「見てたんですね……」
妹友「まぁ振られた訳じゃないけどさ……」
義妹「近くのカフェにでも行きましょうか」ニコ
後輩「全員いるんですね……あれ」
後輩「――兄先輩は?」
兄「よう」
友2「……お前、さては」
兄「見てました」
友2「は?……どこから?」ガリガリ
兄「受け取った所から」
友2「全部じゃねーかよ!」
兄「まぁ茶番はここまでで」
友2「だな」
兄「あの子と何があったんだ?」
友2「あのケーキはお前が絡んでたな?」
兄「教えただけだ。作ったのは本人だし、尋常じゃない手間がかかる」
友2「そうか……うまかったわ」
友2「ちょっと前、ある男が夕暮れを歩いていました」
兄「どうみてもこいつです。本当にありがとうござい(ry」
友2「その時、近くの暗がりでとある女の子がストーカー的な奴に着けられていました」
兄「マジかよ」
友2「ストーカーと思われる人物は、カッターを取り出してその子に近づきます
友2「その時、とっさにその男がストーカーに飛び蹴りをかましました」
兄「……」
友2「男はその後気まずくなり、逃げるように家に帰りました」
兄「うわぁ」
友2「ま、こんな感じだよ。たまたま俺だっただけだ」
兄「そっか、とりあえずラーメン屋行こうぜ。お前のシリアスモードは見てて歯痒くなる」クルッ
友2「何だよそれ」ニヘラ
兄「……ごめん、財布忘れた」
友2「友の畑でも見に行くか。耕してるだろ」
兄「……」ジー
友2「ん?」
兄「……何でもねーよ」ニヤ
友2「おい、その意味深な笑みは何だ、ちょっ、ニヤニヤすんな!」
106:
文一つ入れ忘れてました……………
兄「マジかよ」
友2「ストーカーと思われる人物は、カッターを取り出してその子に近づきます
の間違いです。申し訳ありません。
108:
後輩「……友2先輩は私の事嫌いなのかな」
義妹「そんな事無いと思います。わざわざ嫌いな人を助けたりしないでしょうし」
妹友「気になってたんだけど……そのストーカーはどうなったの?」
後輩「怖くて逃げたんでよく分かりません」
妹友2「それは危険。何故それを言わなかった」シュビビビビッピロン
義妹(スマホを超高で打ってる……)
後輩「え?」
妹友2「その男と面識は?」
後輩「顔をよく見ていないので何とも……」
妹友2「もしそうなら、その男は逆上して襲い掛かってくる可能性がある」
妹友「……」ギロ
妹友2「顔を見られていないなら、ある程度動ける――後輩と友2くんが危ない」
109:
兄「あ、メールだ……妹友2さんか」
兄「……何!?」
友「どうしました?」
兄「おいハゲ、ストーカーの特徴とかは」
友2「ただの坊主だよ! フードとマスクとグラサンしてたからなぁ」
兄「お前と後輩を逆恨みして襲う可能性がある」
友2「考えてなかった」テヘッ
友(……)
友「何があったのかは察しました。これからは一人で帰らないようにして下さい」
兄「部活ある時はしゃーねーけど、無い時は三人で帰るか……後輩はどうする?」
友「彼女も一人にしないよう気を付けましょう。もっとも、あの人がいるので多少はマシでしょうが」
兄「妹友さんか……あれでも女だし、いざと言う時はやばくね?」
友「ふむ……「彼」に協力してもらいましょうか」
友2「まさか、あいつか?」
兄「出てきそうだなぁ……行ってみるか」ピロン
――
兄「うぇーい」コンコン
「……」ガチャ
兄「ちょっと良いか?」
「……」コクン
兄「実はなー」カクカクシカジカ
「……分かった」
兄「そっか、助かるわ……謎男」
謎男「別に気にしてない……多分」
兄「多分?」
兄(こいつは、引きこもりの謎男)
兄(成績は圧倒的によく、身体能力もドン引きするレベルだ)
兄(しかし学校にはほとんど来ない。定期的に出席日数の調整のために来る程度だ)
兄(簡単に言えば学校をサボっているだけだ。たまに一人で山へ行っている。そして――)
謎男「そいつの体型は……?」
友2「そこまで高く無かったな。ちょうど兄みたいな体型で……ハッ」
兄「こっち見んな」
謎男「普通ってとこか……凶器さえ持ってなかったら兄でも戦いにはなるね」
兄「狂気なら満ち溢れてるだろうけどなぁ」
謎男「とりあえず、しばらくは行動する……殺人未遂してるゴミは捨てないと」ギラ
兄(野性的な目つきになった……)
謎男「しばらくはその子の帰りを見送る……任せておいて」
兄「助かるわ」
謎男「良い……今度ケーキでもおごってくれれば」
兄(そして、甘党と言う一面がある)
114:
義妹「あ、お兄さん。お帰りなさい」
兄「ただいまー」
義妹「その……後輩ちゃんの事なんですが」
兄「メール来たよ。しばらくは固まって帰ってやってくれ」
義妹「はい。友2君も心配ですが……」
兄「あいつは心配ないよ。後、謎男って奴もしばらく送ってくれるからな」
義妹「誰ですか?」
兄「学校サボってるけど良い奴だよ。ほら写メ」
義妹「この人、この前クレープ屋さんで五つも買ってた人です!」
兄(何やってんだよあいつ……)
兄「そうか、まぁ……知ってるならやりやすいか。後輩にも説明してやってくれ」
義妹「はい……」
兄「……心配すんなって。さて、おやつでも作ろうか」ニコ
兄(卵を分け、白身に軽く砂糖を加え、全力で泡立てる)ガチャチャチャ
兄(もったりとして角が立ったら、小麦粉を加えて)ファサァ
兄(湯煎したビターチョコに珈琲を加えたもの、卵黄を加えて混ぜ)ドロー
兄(100均で買ったココット皿に流し入れ、強火のトースターに入れる)ガタン
兄(後は様子を見ながら焼き、焦げそうになったら弱火だ)
兄(ぷっくらと膨らんで焼けたら完成)チーン
兄「フォンダンショコラだよー」(材料費 140円ほど)
義妹「甘い匂い……」ウットリ
兄「いただきまーす」サク
義妹「中身がとろとろです」ハム
義妹「んー♪」ニコニコ
兄(サックサクの表面にスプーンを入れると、中から甘い香りと、とろけるチョコが現れる)
兄(ビターチョコにコーヒーも加えてあるので、甘すぎない大人な味だ)
兄(アーモンドプードルを混ぜてもいいかもしれないな)
兄「うまうま」
義妹「ごちそうさまでした」カタン
兄「さて、くつろぐか」ゴローン
義妹「そうですねー」
兄「背中に乗るな。重い」
義妹「女の子に向かって重い……?」ゴゴゴゴゴゴ
兄「嘘ですごめんなさい羽のように軽い義妹マジ女神です」
義妹「まぁ……良いですけど」テレテレ
兄(ちょろい)
義妹「とか思ってたらお風呂一緒に入りますけどね」ジー
兄(心を読みやがった!?)
兄「まぁまぁ」ナデナデ
義妹「全く、お兄さんは……♪」ニコニコ
117:
――
兄「さてと」
友「おや、何処へ?」
兄「図書室にでも行こうかなーと。借りた本の期限ヤバいし」
友「では行きましょうか」
友2「そうだな」
兄「ただあの人がいるからなー、面倒くせぇ」
友2「あの人?」
友「あぁ……」
友2「誰だよそれ?」
兄「お前滅多に行かないもんなぁ。もう着いたし分かるよ」ガチャ
「やあ兄君。持ってきたかな?」
「兄君じゃない。久しぶりね」
兄「ちゃんと持ってきましたよーだ」
友2「えーっと」
兄「ああ、名前な。こっちのちっこい女「みたいな」顔の奴が……」
図書娘「図書委員の図書娘です」ニコ
友2「どうも……(どうみても小柄な女子にしか見えん。これで男子かよ)」
兄「で、このイケメンが」
会長「イケメンって言われても嬉しくないわね……生徒会長をしてる会長よ」
友2「……?」
友2「どうも」ペコリ
兄「ちなみに髪短いけどオネェじゃなくてちゃんとした女だよ」
会長「失礼ね……先輩への敬いが足りないと思うんだけど」
兄「返却カードくれー」
図書娘「ああごめんね。はい」スッ
会長「スルー?」
兄「……あれ、後輩の名前が」サラサラ
兄(「誰でも出来る美味しい家庭料理」「初心者のための包丁マナー」「基本のクッキー生地」「これはうまい、絶品ご飯」「こねこちゃんがかたる、ぶらっくきぎょうのげんじつ」などを借りている)
兄(一ヶ月前から頻繁に来ている。やはり努力していたんだな)
会長「彼女なら少し前から来るようになったわ。随分とお菓子を勉強していたみたいだけど」
兄「……」
友「そうですか、最後に来たのはいつ頃ですかね?」
会長「12日前。最後は「自分の勇気を知る本」を借りてたはずよ」
図書娘「会長、僕の仕事取らないでください」
兄「そもそも何で会長様(笑)がここにいるんですか」
会長「本の匂いって好きなの」
兄「俺は珈琲とか紅茶の匂いが好きですね」
図書娘「あ、今度紅茶ごちそうするよ。僕紅茶入れるの得意なんだ」
兄「ほほう」
118:
兄「お、来たか」
義妹「はい」
兄「しばらくはこの謎男に送ってもらう」
後輩「よ、よろしくお願いします……」
妹友「……別にそんなのいらないけど」ギロ
謎男「……」
妹友2「しばらくお願いする」ペコリ
謎男「気にしてないよ……多分」
友2「なんかごめんな、俺があんな中途半端な事したから」
後輩「い、いえ、全然大丈夫です!」
兄「じゃ、頼むぜ」
謎男「任せておいて」
――
兄「友、どう思うよ」
友「おそらくは同じ事を……ですが、決めつけるのにはまだ早いですね」
友2「?」
兄「ま、しばらくは様子見って事で……明日朝市やってるらしいけどさ、行くか?」
友「もちろん」
友2「行くに決まってるじゃん?」
兄「フヘヘ……あなご天……サンマ……タコ天……」
友2「おい、兄がおかしくなったぞ」コソコソ
友「あの朝市は安くて美味しいですからね……」コソコソ
兄「あ、俺今日ここに寄りたいんだけど……」
友「構いませんよ。待っています」
兄「サンキュ。すぐ戻ってくるから」
友2(え、此処って)
【珈琲 森のせせらぎ】
兄「どうもー」カランカラーン
マスター「やぁ」
兄「さっそくですけど」
マスター「うん、もう時間的にも大丈夫だよ。はい」
兄「ありがたい」
兄(ここのマスターとはちょっとした知り合いだ)
兄(たまに店が終了する時間帯に、使い終わった出がらしを貰っている)
兄(もともとは廃棄されるだけの、ただの土のように見えるが、紙コップにいれて布で包むと、消臭効果とコーヒーの香りがじんわりと広がる)
兄(うちではトイレに置いている。結構使えるんだこれ)
兄「ありがとマスター。また飲みにくるわー」カランカラーン
マスター「うん。待ってるよ」ニコ
マスター「……兄も変わったなぁ」
120:
ガヤガヤ イラッシャーイ ヤスイヨヤスイヨー
兄「良いなぁ朝市の活気は」
友2「フオォォォオォォ!!」
友「……」ジトー
友2「ちょっとテンション上がっただけだから。そんな目で見ないで下さい」
謎男「……」
兄「おっうま」ヒョイパク
友「エイのひれの干物ですか……おぉ、良い味です」
兄「お、見っけた」
兄「一つ下さい」キリッ
おばちゃん「ありがとーね、葱と醤油は大丈夫?」
兄「大丈夫です」チャリン
おばちゃん「はい、あなご天とご飯(並)! 熱いから気をつけやー」
兄「フヘヘ……これだよこれ」ニヤニヤ
友2「あなごの天ぷら……だと!」
兄「いただきます」サクッ
兄(朝市と言えばやはりあなご天……!!)
兄「さくさくの衣に歯を立てた瞬間、ふんわりとした舌触りのあなごが!!」
友2「ゴクリ」
兄「口の中に広がる滑らかな旨み! シャキシャキとしたねぎと醤油がまたうまい!」
友2「……」ブルブル
兄「これでご飯をッ!! 頬張るッ!!」モグモグ
兄「……うめぇぇぇwwwww」
友2「もう辛抱できねぇぇぇぇぇ!!」オバチャン、ヒトツクレー!!<ハイヨー
友「おお、素晴らしい味です」モグモグ
謎男「うまいねこれ……」モグモグ
友2「お前らいつの間に……いただきまーす」サク
友2「」
友2「兄……お前は……最高だぜ……!」ガシッ
兄「フハハハ、そうだろうそうだろう!」ガシッ
友「タコ天などもあるようですね……謎男?」
謎男「見 つ け た」バキュゥン
兄(妹友2さんを超える度で移動しただと……!?)
謎男「これと……あとこれ」
お爺さん「まいど」
謎男「うまそう……」
兄「苺大福と桜餅……白あんとは分かってるな」
謎男「……うまい。特に桜餅が最高」モグモグ
兄「どれどれ」コレクダサーイ
兄(ほほう、こしあんの滑らかな甘みに、桜葉の塩っ気が絶妙なバランスだ)
121:
兄「ふー、楽しかったな」
友「お土産のしらす干しも買いましたし、もう帰りましょうか」
友2「今からだとバス遅いぜ。電車乗るか」
兄「……電車か」
友「あっ」
友2「?」
謎男「まぁ急いでないし……バス待とうか」
友2「別にいいけど……?」
友「」ホッ
謎男「ここの和菓子はキてる……」モグモグ
友2「ゆっくり食いたいだけかよ」
友2「しかしお前が来るなんて意外だよな」
謎男「別に学校で学ぶ事なんか無いだけ」モグモグ
兄「ハイスペックすぎだろ……」
友2「寝ていても学力が全く落ちないとは……」
謎男「退屈だ、釣りや山の探索をする方がよっぽど楽しい」
兄「もう飛び級とかやっちまえよ」
謎男「それは困る……お前らとこうしてたまに遊べない」
兄・友・友2「えっ」
謎男「失言したか……寝る。着いたら起こしてくれ」
友「はいはい」クスッ
友2「寂しいのか、寂しいのか謎男ちゃんは(・∀・)」ニヤニヤ
謎男「……」シュッ
友2「ぐふぅ!?」
兄「ナイスパンチ!」グッ
友「今のは擁護できませんね」
友2「ちょっとは心配……しろ……」ガクッ
122:
――
兄「ブリのごついアラ買ってきたよー」
義妹「お帰りなさい」ニコ
兄「すぐお昼にするからなー、100均で面白いの買ってきたし」
兄(ブリのアラはまず熱湯に通し)ドボン
兄(塩・胡椒・バジルで臭み取りをする。まぁバジルはあったから使っただけだ)
兄(鍋に醤油・料理酒・生姜・麺つゆの適当なタレを作り、入れる)
兄(そして、こいつだ)テッテレー
兄(片面は落し蓋・もう片面には三本の足がついていて、蒸す事が可能なものだ)ドヤァ
兄(つい衝動買いしてしまった)
兄(適当に切った大根を入れ、こいつを上から乗せて、弱火でじっくりと煮る)カチッ
兄(……もうそろそろ大丈夫だな)

兄(次はご飯を用意し)
兄(庶民の味方、豆腐から出来た油揚げさんを用意)スチャ
兄(軽く炙ってやり、いい感じになったら四つの正方形に切る)
兄(それをご飯に乗せ、大根おろしを少々)
兄(それを囲うようにしてしらすを乗せるッ!!)
兄(最後に、大根おろしに醤油を少しだけ)タラーリ
兄(よくある、油揚げとしらすご飯だ)
兄「いただきまーす」
義妹「ブリが柔らかい、それにトロトロです!」モグモグ
兄「生姜があるとかなり変わるな、大根もいけるぜ」モグモグ
兄「油揚げご飯もいただくか」
兄(香ばしい油揚げに醤油を吸った大根おろしの爽やかさ、しらすが全体的に味を上げている)
兄「こいつもうまい!」ガツガツ
義妹「どうしてこんなにも合うのでしょうか?」モグモグ
兄「もはや運命的な何かを感じるよな」
ーあんたはさ、運命とか、神様って信じる??
兄「……」
義妹「どうしました?」
兄「いや、別に何も……でも」
兄「そろそろ割り切らないとな、と思ってな」ニコ
127:
兄(その翌日。いつもの平凡な日常は、ある一通の手紙によって崩れ去った)
友2「誰だよ……こんな事した奴は……!!」
兄(友2のロッカーを開けると、ズタズタにされた靴と、一枚の紙)
【許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さな許さない許さない許さない絶対に許さない】
兄(それには、許さない、と殴り書きされた文字が羅列していた。筆圧の強さから見るに、相当な憎しみが込められているようだ)
友「誰がこんな事を……」
友2「……」
兄(これで、犯行は学校内の人間に絞られたわけだ)
兄「謎男に連絡を……あ、あれは」
後輩「こ、これ……」
義妹「……」
友「どうされました……これは!」
【愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる】
兄(後輩が持ってきた手紙には、先ほどとは違い、狂気を感じるほどに丁寧な文字がびっしりと並んでいた。)
友2「後輩にも……あいつ……」
妹友「絶対に見つけ出す」
妹友2「すでに入っていると言う事は、昨日の夜遅くか今日の朝早く……」
兄「昨日は学校休みだったから、行けるのは部活をやってる奴か」
妹友「あんたは絶対に守るから、一人で帰ったらダメだよ」
後輩「……はい……」
謎男「……」シレッ
兄「うおぉ!」ビクゥ
謎男「どうする、先生に言うか?」
後輩「そ、それはやめて、下さい!」
謎男「……何故?」
後輩「目立ちたく……無いんです、それに」
後輩「友2先輩に、迷惑かけたくないから……」
友2「後輩……」
妹友「……今回は特別。次何かされたら問答無用だからね」ハァ
友2(……この紙の匂い、どこかで)
兄「そろそろ戻ろうか、時間だ」
友「そうですね……何かあったら遠慮なく言ってください」ペコリ
友2「じゃあな……」
後輩「……はい」シュン
――
【森のせせらぎ】
兄「おぉ、ドアの隙間からアップルパイの匂いが」クンクン
友「このシナモンの匂い……たまりませんね」ウットリ
友2「……!?」
友2「なぁ――まさか、とは、思うんだけどさ」
128:
(可愛い……)
後輩「……」オドオド
(その怯える顔。不安げな足取り。引き締まった美しい足)
(全てが魅力的……壊してしまいたくなるくらいに)
(このナイフで指を切り落として保存しよう)
(愛してる……誰よりも、心の底から。あの男なんかに渡したりはしない!!)ダッ
後輩「……ひっ!!」ビクッ
謎男「あいつの言った通りか……ゴミ処理の時間だ」ギラ
「ああああああぁぁぁぁ」ブン
謎男「とりあえずは全力で帰って。お前が出来るのはそれだけ……」スカッ
後輩「は、はい!!」ダッ
謎男(さて、どうするか……腹に帯を巻いてあるが所詮気休め程度。相手はナイフを持ってる。リーチは60?と考えた方が良いな)
「殺してやる……邪魔をする奴は全員眼球を抉りとってやる!!」
謎男(ひどく興奮しているな……力ずくでねじ伏せるしかないか)
謎男(こんなゴミは見てて吐き気がする)チラ
「……死ねぇ!!」ダッ
謎男「こんな戦闘は、まず「絶対に刃物を持っている相手のリーチに入らない」」ダッ
謎男「次に「突きと頭への攻撃だけは確実に回避出来るように意識を向け」」キュッ
「あああぁぁぁ!!」ブン
謎男「「わずかな隙を見せ、乗ってきた所をステップで避けて」」スカ
謎男「――「手首に強烈なダメージを与える」」ドコ
「うっ……!?」ポロ
謎男「痛いだろう……俺の蹴りは」
謎男(そのまま体制を崩させてと……腕ひしぎでもかけておくか)ギリリ……
「離せ、離せ離せ離せ離せ離せ!!」ジタバタ
謎男「ゴミが人間みたいに喚くな……耳障り」ギリギリ
謎男「その腕へし折るぞ?」
「……」ゾッ
友「お疲れ様です」グルグル
謎男「しっかり腕縛っておけ……完全に理性飛んでる。ちゃんと証拠の動画もあるだろうな」
友「勿論ですとも。今日はよく喋りますね」
「ころ、じてやる!!」
友「貴女はどうして大切な物をわざわざ壊そうとしたのですか?」
友「……会長さん」
会長「殺そうとしてない、ただ、指を一本だけ貰おうとしただけ!!」
兄「レズに興味は無いが……頭おかしいんじゃねえの」
会長「邪魔するな、私の初恋を!!」
友「なるほど……」
友「ふざけんなよお前」
130:
友「後輩がどれだけ怖かったか分かってんのかよ」
会長「私の愛だ!」
友「指を切り落とそうとしておいて……自分の頭がおかしいのを正当化してるだけだろ?」
会長「私は誰よりも愛してるわ! あんな男よりも私の方がふさわしい!」
友「……会話が通じないな」
兄(ああ、気持ち悪い)
ー回想ー
友2「もしかしたら……あの会長って人が犯人かも」
友「何か気付きましたか?」
友2「犯人に飛び蹴りかました時にさ、ほんのりだけど……この、シナモンの香りがしたんだよ」
兄「……」
友2「図書室で初めて対面した時、どこかで嗅いだ匂いだなって思ったんだけどさ」
兄「そうかもしれないな」
兄「あの人さ、やけに後輩に固執しているように見えたんだよ。図書係のあいつよりも早く借りた本を言ってたし、「流暢に話せすぎ」と思った」
兄「でも、唯一説明出来ないのは」
友「ええ……あの人は女性です」
兄「だよな……今はただ怪しいってだけだし」プルル
友2「お、電話きてんぞ」
兄「はいはいっと」ピッ
義妹「お兄さん……その」
兄「ん、何かあったか?」
義妹「朝、後輩ちゃんが手紙を見た時に、その……」
兄「ああ、何かぼーってしてたな。何かあったのか!?」
義妹「見ちゃったんです、向こうの校舎で、生徒会長の人がこっちを見てて……」
義妹「にたぁっ、て笑ってたのを……」ブルブル
兄「……分かった、一人で帰るなよ」ピッ
友「どうでした?」
兄「会長っぽいわ。確信は持てないけどな。ならレズビアンか……」
友「あんな格好いい人があの手紙を……」
兄「よし、決めた」
友・友2「……?」
兄「ハゲは会長に見つからないように謎男達と行動。後輩が部活終わったら、わざと人気のない通りを歩かせる」
友2「坊主だよ!」
兄「後輩の近くには謎男。一応顔を見られてるらしいから、会長に気付かれないように動く」
兄「俺は会長の後ろを尾行する。逐一電話で状況を報告するから」
友「危険です、私が……」
兄「お前は謎男といてくれ。三人もいたら十分取り押さえれるだろ」
友「分かりました」
兄「後は、会長の見てる所で、友2が後輩とちょっと親しげにしてれば良い。すぐ喰いついてくるだろ」
友2「了解」
――
136:
兄「お前のさ」
兄「‘愛’って何なの?」スゥ
友(まずい、兄が)
会長「後輩のためなら死ねる、それくらいの気持ちよ!」ハァハァ
兄「そうか、じゃあさ」スッ
兄「今死ぬ?」ジィッ……
会長「……!?」
兄「お前が死なないなら、今から後輩を呼び出して殺しにいくけど」
会長「なっ……(本気の目をしてる!)」
兄「ほら、死ねるんだろ? はよ」
友(兄の目が、昔のような虚ろな目に!)
会長「わ、私は!」
兄「所詮お前らの言う‘愛’なんてそんなもんなんだろ」
兄「いつ後輩が好きになったの?」
会長「初めて会った時からよ!!」
兄「何で?」
会長「は……?」
兄「何でそんな簡単に人を好きになるの?」
会長「好きになる事に理由なんて……」
兄「表面しか見てないじゃん」
会長「私はそれからずっとあの子の事を」
兄「だから表面だけ見て好きになって、それから中身を知ろうとしたわけじゃん」
兄「何でそんな軽々しく人を好きになれるの?」
会長「軽々しくなんか」
兄「なあ、何でだよ」グッ
会長「あ……カッ……(息が……!)」
友「そこまでだ、兄」ドゴッ
友2(友が兄に攻撃した!?)
友「落ち着け……」
兄「チッ、お前も敬語消えてるじゃねーかよ……まぁいいか」
兄「すまん、ちょっと血がのぼってた」
友「分かればいい……ですよ」
謎男「もういいだろ……こいつを警察に連れてく、それだけ」
友2「なぁ……会長」
会長「何よ……」
友2「兄にビビってるのは良いけどさ、何で俺に危害を与えなかったんだよ」
会長「お前に汚される前に、私があの子を……」
友2「どこまでも自分の事だけか……あいつがどれだけ怯えてたか……!!」
友2(あれ、何で俺はこんなに会長の事が……)
友2(そうか、これが――)
137:
兄(それから数日後。事件が終わり、いつもの日常へと戻った)
兄(会長は警察に引き渡された。詳しくは知らないが、後輩曰く「もう会う事は無い」との事)
兄(そうして、俺達の平穏な日々は元に戻った――ある一点を除いて)
後輩「はい先輩、あーん」
友2「ちょww自分で食えるしwww」パク
後輩「とか言いながら食べるくせにー」
友2「後輩の弁当が美味いのが悪い」モグモグ
後輩「あ、ご飯粒ついてますよ」ヒョイパク
友2「お、おう……」テレテレ
兄(こいつらがくっつきやがった)ビキビキ
友「……」
兄(先日の一件があり、友2は「守りたい人が見つかった」とメールを送ってきた)
兄(そうして学校に行ったらこれだよ!!)
兄「友……負担はお前にかかるが、頼みがある」
友「何でしょうか?」
兄「ちょっと、面白い事をな」ニヤァ
138:
――
友2「くそ、明日までにこの課題終わらせねえと……」カリカリ
友2「もう12時か……腹減ってきたなぁ」テレーン
友2(この時間帯に友からメール?)
友「動画が入ってる……まさか……」
兄『やぁ、今頃山のように溜まった課題をやっている頃かな?』
兄『所で友、こいつをどう思う?』スチャ
友『すごく……丸いです……』
兄『そうだな、これは友の畑で採れた新じゃがだ』
友『その新じゃがを丁寧に洗います』ジャー
友『そして、小鍋に油を注ぎ』トポポ
兄『火を点け……そして』
友「ま、まさか……」
兄『じゃがいもを入れる』ジュウゥゥゥウゥ
兄『揚がったら油をよく切り、十字に切れ込みを入れてー』アチチ
友『バターを乗せ、醤油を少々』
兄『では』
友『いただきます』
兄・友『……』カプ
兄・友『』ニッコリ
友「こっち見んなクソがあぁぁぁ!!」
兄『プチッとした皮の歯ごたえと、溢れるホックホクの新じゃがの旨み、それを包むバター醤油』
友『やはりじゃがバターは正義ですね』
兄『そうだな――そしてこいつですよ』タキタテゴハンッ!
兄『はい、こちらは豚バラです。それに100円のチーズを乗せてねー』
兄『くるくると巻くのですよ、お爺さん』
友『ほほう、左様ですか』
兄『そしてフライパンに油を引いてね』
兄『塩胡椒して焼く。これだけ』ドヤァ
友『おぉ、豚肉のジューシーな匂いに、チーズのとろける香りが……』
兄『はい、ご飯に乗せた皿に豚バラチーズ巻きを乗せて』
友『レトルトのカレーを投入します』
兄『ではいただこうか』
友『はい』
兄『あえて辛口にしたが、どうよ?』
友『素晴らしい、豚バラをスパイスの鋭い香りが包み込み、口に入れるとジューシーな旨みが!』
兄『しかもトロリと口の中でとろけるチーズのコクが、さらにカレーと合う!』
兄『ご飯が進むな』ガツガツ
友『全くですね』ガツガツ
友「ああああああああぁぁぁ!!」
144:
友2「……」ガラッ
兄「友2さんちーっすwwwwwwwwwww」ニヤニヤ
友2「おかげで全然集中出来なかった……」ゲンナリ
兄「ごめんなー、いやぁしかし美味かったわ^^」
友2「てめえぇぇ!!」
友「あれはちょい足しと呼ばれる何かですか?」
兄「ちょい足しにしては手が込みすぎてるけどな」ピロン
兄(ん、妹友2さんからだ)
妹友2【昨日挑戦してみたよ。笑 なかなか綺麗に出来たと思うけど、兄くんの感想を聞きたいです!】
兄(これは……トマトをくりぬいて、中にトマトのジュレとコンソメゼリーを詰めたものだ)
兄【フレンチの前菜っぽいね。トマトのジュレとコンソメゼリー的な物を組み合わせるとはさすがだわw】テレン
兄「それにしてもさー」
友「……ええ」
友2「?」
後輩「?」
兄「くっつきすぎなんだよお前ら!」
友「まさかホームルーム寸前まで来るとは……」
後輩「えー、だってー」
友2「なー」
後輩「ねー」
兄「うわキッモ」
友「ゴリラがリスの物まねをしているようですね」
友2「だから厳しいんだよお前らは!」
――
兄(放課後。突然図書娘(男)から連絡があり、今日うちに来ることになった)
兄(前話していた紅茶を入れてくれるらしい。楽しみだ)
兄(紅茶と合うかは微妙だが、俺もおやつを作ることにする)
兄(バニラアイスを溶かします)
兄(溶けたら卵黄を入れてよく混ぜます)カチャチャ
兄(余った卵白は、豚バラチーズ巻きなどを焼く前にまぶせば、白身の膜が出来て肉汁が逃げにくくなる)
兄(砂糖を熱してカラメルを作ります)ヂゥゥ
兄(これをお湯でのばすわけだが、ざるなどの上から注ぐと、弾けたカラメルで火傷をしない)バチュゥン
兄(よく混ざったら何度か濾す。二回くらいでオッケー)
兄(そしてカラメルソースを注いだ器に入れ、蒸すッ!!)カチッ
兄(前にも言ったが、このプリンはカラメル以外に砂糖を使わないのが楽だ。バニラエッセンスも要らないし)
兄(唯一の欠点は、アイスに細かい気泡がついているので、蒸し終わった表面が気泡だらけな事だ)
兄(まぁ中は大丈夫だから、気にしないにこしたことはない)
兄(後は冷やしておけば完了っと)バタン
ピンポーン
兄「……お、来たか」
147:
兄「いらっさーい」
義妹「ただいま」ニコ
図書娘「おじゃまするねー」
兄「おー。義妹も一緒だったのか」
義妹「図書娘ちゃんとはよく話しますよー」
図書娘「だからちゃん付けはやめようか」
兄「図書娘ちゃん」ニヤリ
図書娘「もー!」
兄「まぁまぁ、紅茶用のカップでも用意するから」ガラ
図書娘「じゃ、ポットも持ってきたし淹れようかな」
兄「お、どれどれ」
図書娘「まず、鉄が含まれてるポットは使わないんだ。何かよくないらしいよ」
兄「ほほー」
図書娘「水道水を汲みます」ジャー
兄「あ、水道水でいいのか?」
図書娘「うん。酸素の濃度がどーとかでいいんだってー」
図書娘「はい、鍋に注いで沸騰させます」カチ
図書娘「ちょっと多めにね。あ、カップ貸して」
兄「?」ホラヨ
図書娘「入れる前に、別のお湯でポットとカップを温めておきます」
義妹「あ、よく聞きますね」
図書娘「おっきい泡がブクブクしてきたら火を止めて―」
図書娘「ポットに茶葉を入れて、お湯を注いでさっと蓋をします」
義妹「蒸らすんですね!」グッ
兄「あー、そーゆーの珈琲に似てんなぁ」
図書娘「個人的には高い所から注ぐ方が良い感じかな。はい、後は三分くらい置いとくだけっ!」ニパー
兄(天使が降臨なさった)
義妹(とか思ってたら……)
兄(こいつ直接脳内に……!?)
義妹(妹友2さんに教えてもらいました)
兄(習得できるもんなのかよ)
図書娘「でっきあーがりー♪」
兄「合うかは知らんが、プリン作ってたんだ」ガチャ
図書娘「あ、実はクッキーも持ってきたんだ。食べようか」
兄(何でこいつ男なの。マジで)
義妹(全くですねー……)
兄「まぁ、いただきますか」
義妹「はーい」ニコ
図書娘「いただきまーす」ニコニコ
兄(全く、俺も随分と……あ、ヤベ、これも聞かれてるんだった)
149:
兄「では」
図書娘「いただき」
義妹「ます」
図書娘・義妹「いぇいっ!」ハイタッチ
義妹「では、紅茶をいただきます」ズズ
兄「おぉ……芳醇な香りと香ばしい味わいが……心地よい苦みだな」
図書娘「いつもと一味違うでしょ?」ドヤ
義妹「香りでリラックスできますね、クッキーもおいしい」モグモグ
兄「これは……オレンジ?」
図書娘「そ、オレンジピールを混ぜてみました」
義妹「オレンジの風味が紅茶と合いますね」ゴク
兄「午後の一日をゆっくり過ごしたくなる味だな」ゴク
兄(これが癒しオーラか……)
義妹(羨ましいですね……)
兄(お前もそこそこ放ってるじゃん)
義妹(……ふふ)
兄「では、俺のプリンも出すことにしようか」コト
図書娘「兄君のプリン……いただくね」
義妹「!」
兄「フッ」ドヤァ
図書娘「普通のとちょっと違う……これ、ティラミスみたい!」
兄(そう、俺流プリンは表面はしっかりと固まっているが、中身はティラミスのようになっている)
義妹「こってりしてて、すごい緻密な舌触り……それを苦めのカラメルソースが、甘ったるくしないようにしてます!」
兄(まぁアイスには生クリームが入っているから、必然的に普通よりも濃厚な味になるな)
兄「うまうま」モグモグ
図書娘「さすが兄君だね!」ニコ
兄「まーな」ドヤァ
義妹「……」ジトー
兄(?)
義妹(お兄さんがデレデレしてる……)
兄(してねーよ。後ナチュラルに脳内に送んのやめてくんない?)
義妹「ちっ」
兄「今舌打ちしたよね?」
義妹「気のせいですよ」
兄「よしよし」ナデナデ
義妹「その手にはかかりませんよ?」
兄「チッ」
義妹「今舌打ちしましたよね?」
兄「気のせいだよ」
図書娘「二人とも仲良いねー♪」ニコニコ
154:
兄「え、焼き肉?」
妹友2「そう、たまには息抜きも必要」
兄「本音は?」
妹友2「最近接点が無くて寂しい」キリッ
兄「……お、おう……良いんじゃね?」
妹友2「兄くんならそう言うと思った、すでに連絡は済ませてある」
兄「用意周到すぎるだろ……」
兄(って事はあいつも来るのか……ハァ)
兄(憂鬱だ……)
――
ワイワイ ロースニニンマエー ミズクダサーイ 
兄(と、思っていたが、男子女子の席に分かれてくれた。よかった)
兄「よし、これで問題なく食べまくるぜ……フヒヒ……」
友2「おい、兄がまた呟いてるぞ」ヒソヒソ
友「肉を目の前にしたらすぐ戻りますよ」ヒソヒソ
店員「お待たせしましたー、タン四人前でーす」
兄「いただきまあぁぁぁぁぁぁす!」
店員「ひっ」ビクゥ
友「失礼しました、どうかお気になさらず……」
店員「いえいえ」スタスタ
友2「ドン引きしてたな」
友「焼きましょうか、兄の目が血走ってます」ジュゥウゥ
友2「はいはいっと」ジュウゥゥ
兄「……」ギュルルルル
兄「では……いただきます」パク
兄「んまいっ!」
友2「うめぇww」
友「良いタンですね、ここのは」
兄「タンの魅力はやっぱり歯ごたえと、しつこくない旨みだよな」モグモグ
友2「コリッコリだよな」モグモグ
友「次は何にしますか?」
兄「ハラミで」ピッ
友2「じゃあ俺はレバーで」ピッ
友「では私はロースを」ピッ
兄「レバーちゃんと焼けよ?」
友2「分かってるよ!」
友「まぁ別に食中毒起こしても構いませんが」
兄「だよな」
友2「おーい!」
兄「あ、ちょっとトイレいってくるわー」
155:
兄「ん」
妹友2「あ……」バッタリ
兄「……や、やっほー」
妹友2「やっほー」
兄(無表情のやっほーとかシュールすぎるだろ)
妹友2「突然誘って迷惑だった?」
兄「むしろご褒美です……って何でそんな事聞くんだ?」
妹友2「――最近、他人がよくわからないから」
兄「え……?」
妹友2「何でも無い……ほら」
妹友2「楽しもう、兄くん?」
兄「……何かあったのか? いや、簡単に聞くのも良くないよな。悪い」
兄「分かった、楽しみまくるよ」コクリ
妹友2「うん」
――
兄「お、来てるな」
友「もう焼いてますよ……」ピクピク
友2「後輩、いっぱい食べろよー」
後輩「先輩こそー」
兄(何でこいつら一緒の席になってんだよ……)ヒソヒソ
友(少しテンションが上がっているようですね)ヒソヒソ
兄「まぁいただくか」ジュワッ
兄「うめえぇぇ!」
友「ハラミの幾重にも折り重なった旨みの層が口の中で広がりますね!」モグモグ
兄「しかも肉汁が一気に口で弾けるよな、俺ハラミ大好きだわ」モグモグ
友2「レバーもうまいんだよなぁ」
後輩「ねっとりとした口当たりですね、それにまったりした旨み」
友「ですがロースも負けていませんよ?」
兄「くそ、こいつもハラミに負けず劣らずだぜ……!!」
友「赤身自体の旨みと脂の旨みが共存してますからね」
兄「ご飯が止まらないいぃぃぃ!」
友2「ご飯おかわりする奴ー」
兄・友「はい」
友2「大盛りにしとくなっと」ピッ
兄「焼き肉は最高だな、鶏肉頼んだの誰だよ」
友2「俺だ」ドヤァ
兄「しっかり火を通せよー」
後輩「私が見てますから大丈夫ですよ」
友2「こいつー」ワシャワシャ
兄(後でこいつの飯に塩まぶしてやろう)
156:
カラーン
マスター「申し訳ありませんが、今はまだ準備中で……ああ、君か。どうしたんだい?」
謎男「……別に、気が向いたから来ただけ」
マスター「他の子は居ないのかい?」
謎男「今頃焼き肉に行ってる」
マスター「君は行かないのかい?」
謎男「俺が行っても白けるだけだ……」
マスター「そうか、それよりも……ナイフ持った相手とやったんだって?」
謎男「」ギクゥ
マスター「一応戦い方は教えたけど……「まず第一の攻略は戦わないこと」って言ったよね?」ジロ
謎男「仕方ないだろ……あのままだと後輩がやられてたかも知れないし、何より」
謎男「――大人の力を借りたくはない」
マスター「君ね……命より大事なものなんて無いよ?」ハァ
謎男「俺にとっては命なんかよりも「自分」の方が大事だ」
謎男「あんたに教わった総合格闘技も……約束通り、自分のためには使ってない」
マスター「まぁ生きててなによりだけど……所で、彼の様子は?」
謎男「兄は……やっぱり心の底が不安定だ。本気で首を絞めてた」
マスター「大分変わったと思ったんだけどね……」
謎男「それでも、新しい家族が出来た事で大分落ち着いてると思う」
マスター「え、何それ初耳……」
謎男「義妹と言う女の子だ」
マスター「なっ!」
謎男「大丈夫だ、兄が言うには「大丈夫な奴は見れば分かる」らしい」
マスター「良かった……」ホッ
謎男「それと、友が「兄はそろそろ本気で過去に立ち向かうつもり」と」
マスター「ほう……彼も成長した、と言う事か」
謎男「それでも、一人で会わせるわけにはいかない」
マスター「そうだね、それに……」
謎男「ああ、あいつには大切な存在が出来た」
マスター「……珈琲でも入れようか」コポコポ
謎男「……ああ、頼む」
マスター「どうぞ」コト
謎男「……」ゴク
謎男「うまい」
マスター「それはよかった」ニコ
謎男「……ごちそうさま、もう行く」ガタ
マスター「……君は自分がちっぽけな存在と思ってるようだけど、案外気にかけてくれる人はいるもんだよ?」
謎男「……ふん」カランカラーン
マスター「ん、メモが……」ペラ
【ありがとう】
マスター「――全く、素直じゃないなぁ」クス
160:
オカイケイ 〇〇エンニナリマース ハーイ
兄「うまかったな」
友2「腹いっぱい……死ぬ……」
後輩「もう、食べ過ぎですよ」
妹友「これからどうするの、妹友2」
妹友2「決めてない。どこかで話す?」
後輩「あ、私はそろそろ門限が……」
友2「俺が送るよ」キリッ
友「早く消えてくれませんか?」
友2「ひどくない!?」
後輩「クスクス……失礼します」ニコ
友2「じゃーなー」
兄「おー、二度と現れんなー」フリフリ
友「この公園にしましょうか」
兄「おう」
義妹「あ、自動販売機に行ってきます」
妹友「あたしも行くよ。夜の一人歩きは危ないから」
友「私も行きますかね」
妹友「……」
友「別に干渉はしませんから」
妹友「……良いけど」
兄(……この人と二人か。珍しい)
妹友2「座ろうか」
兄「……? おう」
妹友2「つい先日、全く知らない男子から告白をされた」
兄(まぁ……モテるだろうなぁ)
妹友2「理由を聞くと、「一目ぼれした」と言われた」
兄「え……」ズキ……
妹友2「それを聞いた瞬間、何だかとても悲しくなった」
兄「……」ズキ、ズキン
兄(胸が 痛い)
妹友2「他人が分からない……」
兄(痛い)
妹友2「確かに私は普通の女子とズレている……でも」
妹友2「私と言う「個人」を理解しては、くれないの?」
兄「俺……は……」
兄(いや……逃げるな!)
161:
兄「俺は妹友2さんが、どれだけ苦しいのかは分からないけど」
兄「少なくとも、俺……いや、俺達は、妹友2さんを見ている」
妹友2「……」
兄「俺には、もう「好き」なんて感情は分からないけど」
兄「それでも」
兄「妹友2さんの事を信じてる」
兄「……一人じゃないんだからさ、もっと他の人に頼ってもいいと思うぜ?」
妹友2「……」
妹友2「……私は、貴方の事が……」
兄「……え」
妹友2「この気持ちは……何……?」
妹友2「貴方の事が、頭から離れない……」
兄(まさか)
妹友2「貴方の言葉が、やけに心地いい……何故?」
兄「ちょっと待て、考えすぎんな」
妹友2「貴方の側に居たい……これが」
妹友2「――これが、「好き」なの?」
兄「あ……」ズキ
妹友2「もしそうだとしたら……嬉しいと思っている自分がいる」
兄「落ち……着け、嫌な事を話したばっかで、そんな気分になっているだけだ」
妹友2「ううん、違うよ」
妹友2「私は、貴方の事が好きです。この気持ちは多分変わらないよ」
兄「……口調が」ズキ
妹友2「今だけ、貴方には本当の自分を出せる……」
妹友2「私は、兄くんの事が――」
「おいおい、えらいべっぴんさんがいるじゃねえかァ」
兄「!」
チャラ男「こんな夜中に公園にいるとか、あれじゃん?」
兄「……お前、何だよ」
チャラ男「あ? お前には話しかけてねーよ。帰れ」
妹友2「……」
チャラ男「なーなー、ちょっと別の所で話そっか。俺おごっちゃうよー」ニコ
妹友2「……不愉快。消えて」
チャラ男「またまたー、ツンデレって奴?」ギュ
妹友2「触らないで」バチ
チャラ男「あ……? お前、女だからって調子に乗んなよ?」ギロ
兄(痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
兄(ゴミは、どうするんだっけ……)
兄(ああ、そうだ――)
兄(潰さないと)
164:
ほら、泣かないで。
うん。ありがとう。
どうして泣いてるの?
僕が弱いから。
君は弱くないよ。
いいや、僕は何も守れないんだ。
私は、君が好きだよ?
え……?
ほら、帰ろうよ。
うん。「お姉ちゃん」。
――――
兄「――はっ」
妹友2「……」ビクビク
チャラ男「ごめんなさい……ごめんなさい……」ブツブツ
兄(目が覚めると、血まみれのチャラ男がいた)
兄(鼻からは大量の鼻血が出ていて、顔は真っ赤だ。ピアスだけが明かりに照らされて光っている)
兄(妹友2さんは、ひどく怯えた様子でこちらを見ている)
兄(横たわっていた身体を動かすと、全身に激痛が走った。両手は奴の鼻血で真っ赤に染まっている)
兄(そうか)
兄「俺、は……」
妹友2「兄くん……?」
兄「俺は、俺は」ブルブル
化け物だ。
兄「……」ダッ
妹友2「待って、兄くん!」
友「お待たせしました……これは!」
義妹「な、何があったんですか?」
妹友「……」
妹友2「この人がナンパをしてきて、怒った兄くんが……」
友(まずい)
友「皆さんはもう帰っていて下さい。私が追いかけますから」
義妹「そ、それだったら皆で探した方が」
友「――いいから早くしろ!!」ギロォ
義妹「」ビク
友「くそ、まずい……」ピッ
謎男『……何』
友「兄が、暴走したみたいだ! 来てくれないか!」
謎男『場所は?』
友『夕暮れ広場の近くだ。俺も今探してる!』
謎男『分かった、すぐ行く』
167:
兄「……」
兄(もう夜になりかけだ。辺りは薄暗い)
兄(俺はみたいな化け物は……もう、いっそ、このまま)
友「見つけた」ガサ
兄「!」
友「ここに来ると思ったぜ。お前はいつもここにいたもんな」
謎男「……追いついた」トッ
兄「……」
友「兄、お前が今何考えてるかなんて分かんだよ……大方、自分の頭がおかしいから、消えようとでも思ってんだろ」
兄「俺は……」
謎男「お前はいつも考え事をする時に、ここに来てた」
友「この小さな公園は、人気が無くて屋根があるから、リラックスできるんだっけ?」
兄「来るな、見ただろ……俺は、やっぱり、駄目だったんだ」
友「まだ時間なんて山ほどある。それに」
友「――お前には、義妹がいるだろ?」
兄「……」
謎男「お前は純粋すぎるんだ……」
兄「もう、俺には、空っぽの感情だけが、ズキズキと痛みつけてくるだけだ」
友「空いたなら、また埋めればいいだけだ……ん?」
義妹「お兄さん!」ガサッ
友「……ついてくるなと言ったのに」
兄「義妹」
義妹「私は全てを話しました。だから、お兄さんも……一人で抱え込まないでください」グスッ
兄「……」
謎男「……兄」
兄「分かった、今夜……全てを話すよ」
兄「随分と、長くなるかもしれないけどな」
――
そうだな。あれは、俺が中学二年生くらいの時だった。
俺には、近所に住んでいた姉代わりのような人が居たんだ。名前は……幼馴染。
小学校の頃からの中でさ、本当に姉みたいに思ってたんだ。俺は一人っ子だったから。
今思えば、俺も半分依存してたかもしれないな……。
とりあえず、最初から話していこうか。
兄「暑い……夏なんて嫌いだ……」グテー
兄(今は昼休み、早急に昼飯を平らげた俺は、学校の隅のスペースにいる)
兄(簀子が置いてあり、外からの竹が良い感じに光を遮る、俺の涼みスポットだ)ドヤァ
兄(あれ、近くで誰かが寝てる。……倒れてる?)
兄「……どうしたんだお前、アイス食うか?」
友(茶髪)「……あ? 別になんもねーよ」ハァ、ハァ
これが、友との最初の出会いだったんだ。
169:
兄「いやいや、お前傷だらけじゃん……ほら」スッ
友「お前、傷だらけの人間にアイス差し出すか?」
兄「暑いじゃん。ほれほれ」
友「……お前、変わってんな」パク
兄「と言いつつ食うんですね。はいはいツンデレツンデレ」
友「お前、シメんぞ?」
兄「傷だらけの身体で言われてもなぁ……誰にやられたんだ?」
友「別にお前には関係ねーよ……さっさと消えろ」
兄「ここは俺の涼みスポットだ。動く気はないな」ドヤァ
友「……調子に乗りすぎだ」ブンッ
兄「うおぉ」スカ
友(避けやがった!? いくら傷だらけの身体とはいえ……)
兄「おおおお前あぶねぇだろ! 当たったらどうすんだ!」
友「……お前」
兄「そろそろ、何でそんな傷だらけなのか教えてくれよ」
友「(変わった奴だ……)別に」
幼馴染「あ、いた!」
兄「あ」
幼馴染「あれ、兄も……さっきは助けてくれてありがとう!」
友「……チッ」
兄「どーいう事?」
幼馴染「朝、登校してたらナンパされて……それをこの人が助けてくれたの」
友「余計な事を……」
兄「ふーん……なんか」
兄「お前、面白い奴だな!」ニコ
172:
友「お前……ふざけてんのか?」
兄「さっきからお前お前うるさいよ。俺の名前は兄だ」
友「……俺は友だ」フン
それからはさ、その三人でよく行動するようになったんだ。
暑い夏のひと時を、いつもの三人で過ごしてさ。我ながら、ああ、学生っぽいなーって思ってた。
それで、テストも終わって、俺達は遊びに出かけたんだ。渓流で釣りでもしようぜって。
兄「おー、涼しいな……」
友「釣りは良い……落ち着かせてくれる」
幼馴染「ほら、フルーツサンド作ってきたよ」コト
兄「俺は特製ビーフジャーキーとスモークチーズだ」ドヤ
兄(スモークチーズは、市販のチーズで十分だ。そして、小さな土鍋を用意し)
兄(アルミホイルで周りを包んだチップ(桜)を土鍋に入れる。煙が真っ直ぐ上がるようにだ)
兄(そして、火をつける。土鍋には百均で買った網を乗せ、さらにその上にチーズを乗せる)
兄(後はその上から蓋を被せ、隙間をアルミホイルで防ぐ)
兄(チップが黒焦げになったら火を止めて放置。念のため近くに水を用意しておく)
兄(十分ほどしたらチーズが黄金色に染まる。後は冷やすだけだ)
兄(一日熟成させると、さらに味が深くなる)
兄(ビーフジャーキーの方は、オーストラリア産の赤身肉を用意した。132円でこのサイズは素晴らしい)
兄(燻製は、水分と脂肪が少ない物が向く。胸肉とかな。赤身肉をフォークで滅多ざしにし)
兄(塩・胡椒・蜂蜜を刷り込んで、一日?三日ほど冷蔵庫で放置)
兄(後は軽く塩抜きをし、薄く切る。それを同様に燻すだけだ)
兄(チップに砂糖を少し混ぜると、照りが出る。気がする)
兄「いただきまーす」
友「……」モグモグ
友「……うまい」
友(チーズはまろやかで濃厚な旨みだ。燻製の香りが鼻をくすぐり、チーズの味を数段階上まで上げている)
友(ビーフジャーキーは赤身自体の旨みだけではなく、胡椒の香りと燻製の香りが見事に調和している。噛みしめるごとに深い味が出てきやがる……)
兄「フルーツサンドはラップで乾燥するのを防いでるな。苺と生クリームがぴったりだ」
幼馴染「こっちのみかんとももの奴も美味しいよー」ニコニコ
兄「おお、こっちもさっぱりしててうまい。さすがは幼馴染だな!」
幼馴染「もー、お姉ちゃんでしょ?」
兄「この年でそれは恥ずかしいわ」
友「……!」シュビッ
兄「お、来たか!」
友「鮎か。ここの川は綺麗だから食えるかもな……」ピチピチ
兄「スモーカー(燻製のための箱。一斗缶や段ボールでも可)持って来ればよかったなぁ」バチュウゥン!
幼馴染「……あれ、今、奥の方で……」
兄「……俺の目が濁って無かったら、今すげえスピードで魚を取る奴が居たように見えたが」
友「奇遇だな。俺もだ」
そして、俺達はそこで謎男と出会った。
177:
登場人物まとめ
兄…高2。心の底が不安定。暑さが苦手。「飯テロ野郎」。旨い飯を食べることに全力を注いでいる。
友…高2。サラッとした髪のイケメン。元ヤン。何でもそつなくこなすハイスペッカー。ねこ大好き。
友2…高2。バレー部所属。バカ。よく二人にいじられている。後輩命。姉に頭が上がらない。
謎男…高2。友を越えるハイスペッカー。身体能力が異常。マスターに援助してもらい、ほぼ独り暮らし中。
義妹…高2。小さな可愛らしい美少女。兄になついている。モテまくっているが、本人は全く眼中に無い。
178:
妹友…高2。若干茶色がかった短めの髪。男が嫌い。その性格上近寄る男子は居ないものの、ひそかに噂されている。
妹友2…高2。絵にかいたような清楚美人。身体能力や脳内会話など、忍者のようなスペックを誇る。メールで女子力が開花する。
後輩…高1。陸上部所属。男性が苦手だが、ほんの少しだけ克服。友2が大好き。眉毛がチャームポイント。
図書娘…高2。小柄な女の子にしか見えないが男。絶大な癒しオーラを放つ。笑顔が眩しい。
マスター…独身。喫茶「森のせせらぎ」で、今日も絶品のコーヒーを入れる一流バリスタ。格闘術の心得がある。
180:
謎男「……何」
兄「あ、いや、えっと」
マスター「こら、初対面の人にそんな無愛想な態度を取らない」
謎男「……」
友「確か同じクラスにいたな、謎男だったか」
幼馴染「知り合いなの?」
友「別に」
謎男「……チッ」
マスター「ああ、君たちは同じ学校の子か……見ての通り、こんな性格だから友達も居なくてね。良かったら仲良くしてあげてくれないか?」
兄「はい」
友「ふん……」
幼馴染「え、えっと、さっきすごいさで魚捕ってたね!」
謎男「これくらい鍛えてるから楽勝だ」
兄(あ、ちょっと照れた。表情は変わらんけど。つーかこいつ目のクマすごいな)
友(ただ者じゃねぇな……)
幼馴染は持ち前の明るさとコミュ力で、すぐ謎男の心を開かせた。
マスターとは後々話すが、随分とお世話になったよ。
ただ、俺達は男で、幼馴染だけが女だろ?
だから、ちょっとしたすれ違いもあったりするわけで……。
幼馴染「ん?……」
兄(長い……服を買いに来ただけなのに……)
友「早く決めろよ」イライラ
謎男「……」
幼馴染「……やっぱ、今回はいいかな」
友「はぁぁ!?」
幼馴染「クレープでも食べに行く?」
友「知るかよ、俺は帰る」スタスタ
まぁ、そんな感じで、だんだん幼馴染と過ごす時間が減っていってさ。
幼馴染とは疎遠になってきたんだ。学年も一つ上だし。
ただ、俺は家が近いから、何度か話す事もあったんだ。
それが良くなかったんだろうな……。
幼馴染「ねえ、最近私に冷たくない?」
兄「?」
幼馴染「あんまり私と話してくれない……嫌いになっちゃった?」グスン
兄「あり得ないって、大丈夫だよ」ナデナデ
幼馴染「本当に?」
兄「本当だよ、「お姉ちゃん」だろ?」
幼馴染「……ふふ」
俺も、幼馴染には「家族愛」みたいなのを感じてて。
幼馴染もそうだろうな、って思ってたんだ。
184:
友「……悪いな、突然家に来ちまって」
兄「まぁうちは両親ほとんど家に居ないし、全然オッケーだぜ」
友「何を作ってんだ?」
兄「ん、腹減ってるだろ?」コト
友(こ、この匂いは……チキンラーメンッ!!)
友(俺の大好物じゃねぇか!)ワクワク
兄「いただきます」
友「いただきます」
友「……うまい!」ズルズル
兄「やっぱ元祖って感じするよな。この麺とか。無性に食べたくなる時がある」ズルル
友「鶏ガラのすっきりしたスープが良いんだよ」ゴクゴク
兄「今回はあえて卵を用意しなかったぜ」
友「ああ、卵で味がぼけてしまうからな……純粋なチキンラーメンを楽しめる」
兄「まぁ他の用途のためにも……で、まだ腹減ってるだろ?」
友「まさか……」
兄「コンビニで買ってきた冷凍炒飯もあるんだ。あ、スープは残しておけ」コト
友「冷凍ねぇ……う、うまい!?」パク
兄「チャーシューもしっかり入ってるのがポイント高いよな。粗挽き胡椒が良い仕事してる」モグモグ
友「香味油が良い香りだ。思ってたより冷凍炒飯ってのも悪くないな、むしろうまい」モグモグ
兄「はい、炒飯が半分になった所で、お行儀が悪いのは承知していますが……」スッ
友「おい、まさかお前!」
兄「――そう、チキンラーメンのスープを投入ッ!!」ジャァァ
友「あぁ、せっかくのパラパラが!」
兄「まぁ落ち着けよ。ほらスプーン」
友「……」パク
友「何だと……」
兄「」ドヤァ
友(チキンラーメンの鳥ガラスープが、この炒飯とぴったり合いやがる!)
友(時折感じるチャーシュー、胡椒と香味脂の風味、それがこのすっきりしたスープとマッチして……)
友(しかも、パラパラ感はなくなったが、炒飯の歯ごたえはまだ残っている!)
友(くそ、行儀が悪いが……これはうまい!!)
兄「どうだったんですかー」ニヤニヤ
友「くそが……うまかったよ!」
兄「フッ」ドヤァ
友「」イラッ
兄「所で、何で突然家に?」
友「ああ、幼馴染の事で……お前は不快に感じるだろうが」
友「少し、気になった事があって、な」
兄「気になった事?」
友「ああ、今日、偶然見てしまったんだが――」
185:
――――
友(……あれは幼馴染? 何か雰囲気が……)
幼馴染「今、何て?」
モブ「え、だから」
モブ2「お前、一つ下の兄って奴に絡まれてんだろ? 俺らに任せておけって」
幼馴染「……どうして?」
モブ「いや、だって明らか不釣り合いじゃん、あんなフツーな奴がお前に近づくとか……なぁ?」
モブ2「うんうん。いやいや付き合ってやってんだろ? もうやめとけって。俺らが何とかするからさ」
幼馴染「何言ってるの?」ジィ
モブ「……!?」ゾッ
モブ2(表情は変わっていないのに……何だ、この威圧感!?)
幼馴染「兄は私の大切な弟なの、あなた達は何も知らないくせに」
幼馴染「勝手な事言わないでよ……」
モブ「わ、悪かったって、ちょっとした冗談っていうかさ」
モブ2「お、おい、バイトに遅れんぞ、行こうぜ」
幼馴染「兄……会いたい、会いたいよ……そうだ、掃除ちゃんとしてるのかな……」ブツブツ
友(……何だありゃ、完全にヤバイ状態じゃねえか)
幼馴染「今までずっと側にいたのに……どうして……あの二人が兄を奪って……」ブツブツ
友(とりあえず、謎男に連絡しておくか。兄には直接言った方がいいだろう)
――
兄「マジか……」
兄(確かに、思い当たる事は無い事もなかった……先日の発言など)
兄(あまりにもいつも通りすぎて、変化に全く気付けなかった)
それを聞いてから、俺は考えたよ。
でも、やっぱり、今までずっと一緒に居た家族みたいなもんだからさ、そう簡単には割り切れなくてさ。
だから、一度二人でじっくり話してみようと思ったんだ。当然友や謎男には反対されたが……。
二人が影で見守るって条件で、俺は幼馴染をとある公園に呼び出したんだ。
今でも鮮明に覚えてるよ。夕暮れの、かすかに蒸し暑い琥珀色の公園。
二人でブランコに乗って、他愛もない話をして。
漠然とした不安を抱えたまま、幼馴染の顔を見てた。
それで、「どうしたの?」って言われて。
俺は、聞いたよ。「幼馴染は、異性として俺の事が好きなのか」って。
「うん」……即答だった。だから、俺は言った。
「俺は、幼馴染を大切な家族と思っている。だから、付き合えない……ごめん」と。
すごく傷ついた顔をしていた。触れると今すぐにでも崩れてしまいそうな。そんな顔をしてから、あの人は言った。
幼馴染「……あの二人のせいだ」
191:
その後、幼馴染はびっくりするくらい元気な声で、こう言った。
「じゃあ、まずは整えないとね!」
兄「整える……?」
幼馴染「兄は何も心配しなくても良いよ、また元に戻すだけだからね」ニコ
幼馴染「じゃ、またね」フリフリ
友「……」ガサ
謎男「……」ガサ
兄「どう思う?」
謎男「精神状態が良くないな……目に光が灯ってないみたいだ」
友「ありゃ駄目だろ、もしかしたら俺達に危害与えてくるかもな」
兄「いつからあんな風に……」
友「いや、最初から「ああだった」のかもな」
謎男「今までは兄とすぐ側にいたから大丈夫だったが、俺達が兄と出会ってから、「兄が取られる」ように感じたんだろうな」
兄「俺は……」
友「お前はいつも通りに接してやれ」
謎男「下手に刺激を与えると何をするか分からないからな」
兄「分かった」
友「じゃあな」ザッ
謎男「……」
謎男(一悶着、ありそうだな)
その次の日。いつもは家の前で待ってる幼馴染は居なかった。
俺は心にもやもやと広がる嫌な感覚を抱えて、すぐに学校へ走ったよ。
兄「――ハァ、ハァ……!!」
友「来たか。俺は無事だが――」
ヒソヒソ……
友「ごらんの通りだ。とりあえずやった奴はシメといた」
教室を開けたら、友の机に落書きや、水が浴びせられていた。靴に画鋲も仕込まれていたらしい。
部屋には何人かの男子が倒れていた。すでに友がやった奴を脅して吐かせ、ボコボコにしたらしい。
兄「……謎男は」
友「あいつは今日は学校に来てねぇ」
兄「くそ……!」
友「もう連絡は取ってる。大丈夫だ」
兄「お前は大丈夫じゃないだろ!」
友「ハッ……随分と甘く見てくれてるようだが」
友「この程度で負けるような男じゃねえよ、俺は」
兄「……」
オイ、ココカ? ハイ
先輩「おい……お前だ、ちょっと来いや」ガラ
兄「!」
友「――大丈夫だよ、心配すんな」ニッ
195:
友が連れて行かれるのを、俺は唖然として見てた。
もしかしたら友の噂を聞きつけた先輩が呼び出しただけかもしれない。
しかし、もしも幼馴染の手によるものだったとしたら……?
兄「……」
でも、動けなかった。
友(大丈夫だ)
友の覚悟を決めた眼を見て、俺は動けなかったんだ。
俺は抜け殻のように自分の教室に戻り、その日を過ごした。
俺が何か下手な行動を起こせば、幼馴染が何か仕掛けてくると分かってたから。
それから学校が終わり、俺は急いで友を探そうとした。
――でも。
幼馴染「兄、一緒に帰ろう?」ニコ
兄「……うん」
幼馴染が教室の前に来て、行けなかった。
友「……が……」
金髪「おい、こんなもんかよ?」ドゴ
先輩「暴れやがって……しかし、まさか一人で三人も倒すとはな」スッ
友「……!!」
先輩「腕、折っとくか」ミシッ……!!
友(俺は負けない……絶対に!!)
友「あああああぁぁ!!」ブン
金髪「コイツ、まだこんな力が!」ブン
友「――おらぁ!」メリッ
先輩(金髪のフックを避けて、鳩尾にカウンターを決めやがった……相当喧嘩慣れしてんな)
金髪「ぐふっ……」ドサ
友「残りはお前だ!!」バッ
先輩「だが、まだ荒い」スカ
先輩「動きが雑だ」ガシィ
先輩「……おぉ!」ブオッ
友(ぐっ……投げ技!? こいつ、ただのヤンキーじゃ――)
先輩「からのー、はい、首に極まりましたー」
友「……!!」ジタバタ
先輩「終わりだよ」ミシ
友(意識……が、消え)
謎男「――全く」ドゴォ!
先輩「て、てめぇは!」
謎男「話すつもりはない」ガガガッバァン! メキィ!
先輩「」ドサッ
謎男「ふぅ」
友(ありえねぇ……瞬殺しやがった!)
198:
謎男「大丈夫か」
友「こんぐらい平気だ」ペッ
謎男「兄が心配だな……」
友「すぐ向か……」フラッ
謎男「満身創痍で無茶するな」ガシ
友「……悪い」
幼馴染「……♪」ニコニコ
兄「……」ハァ
兄「なあ、楽しいか?」
幼馴染「うん、楽しいよ?」
兄「俺一言も喋ってないけど」
幼馴染「それでもいいの、兄さえいれば……」
兄「」ゾク
幼馴染「私を……見捨てないで、兄……」
幼馴染「お願い……」ポロポロ
兄「幼馴染……」
兄(俺は、どうすればいいんだろう)
兄(幼馴染をこのままにしていたら、自殺さえ躊躇いなくしそうだ)
兄(……)
ギュッ
幼馴染「あ……」
兄「大丈夫だよ、「お姉ちゃん」……俺は、見捨てたりなんかしないから」
幼馴染「……」ギュウウウ
兄「よしよし」
兄(何とか落ち着いた……か?)
幼馴染「じゃあ」
幼馴染「あの二人と二度と会わないで?」ジッ
兄「……!?」
200:
兄「おいおい、何言ってんだよ。何であいつらが……」
幼馴染「兄があの二人に取られそうで、不安で心が張り裂けそうなの……お願い……」
兄「俺は絶対に幼馴染から離れないって。信じてくれよ」
幼馴染「それでも」
幼馴染「あの二人が居なければ、私が苦しむ事も無かった」スゥ
兄(あ、目のハイライトが消えた)
幼馴染「私の可愛い弟を……どうして……」ブツブツ
兄「おーい、戻ってこーい」
幼馴染「そうだ……全部あの二人が悪いんだ……」ブツブツ
兄「幼馴染さーん?」
幼馴染「消さないと……」ブツブツ
兄「こら」ペシ
幼馴染「いたっ」
兄「落ち着けって。そもそも今まで俺が話しててもそんなの無かったじゃねーか。何で今更」
幼馴染「兄にはクラスで話す友達はいっぱい居たけど。遊ぶ友達は居なかった」
兄「現実突きつけないで。俺泣いちゃうよ?」orz
兄「いやいや、何回か遊んだ事はあるんだぜ?」
兄(いや……待てよ……?)
兄(昔、遊んでから一週間くらいした後、何故かそいつが俺を避けだしたのは……?)
兄「まさか……」
幼馴染「ううん、野蛮な事はしてないよ。ただ弱みを握ってただけ」
兄「何で」
兄「何でそんな事したんだよ……俺はお前のおもちゃじゃねえぞ……!!」
幼馴染「えへへ……♪」
兄「何笑ってんだよ!!」
幼馴染「兄が今、私だけを見てくれてる……」ウットリ
兄「」ゾクゥ
幼馴染「大好き♪」ギュー
兄(他人から見れば、可愛い女の子に抱き着かれてるリア充に見えるんだろう)
兄(でも、少なくともこの瞬間、俺は「得体の知れない何か」に抱き着かれていたんだ)
兄「……」ガクガク
幼馴染「何で震えてるの? 何も怖くないよー?」ニコニコ
兄(怖い)
兄(得体が知れない)
兄(次の瞬間、俺は幼馴染を振り払って、駆け出していた)
202:
兄「ハァ……ハァ……」ブルブル
クソ暑い夏なのに、俺はぶるぶる震えながら、毛布をかぶってた。
震えが止まらなかったよ。鳥肌もすげぇ立っててな。
それから次の日、ついに俺にも牙が向けられた。
その日は、プールの授業があったな。幼馴染の級と合同の。
俺はその日は行きたくなかったけど、あいつらが心配で少しだけ遅れて行ったんだ。
「兄、遅刻だぞ。準備運動とシャワー浴びて来い」
兄「はい」
何故か、やたら幼馴染の周りの奴が俺を見てたのを覚えてるよ。気持ち悪かったなぁ……。
それから授業が終わって、俺達は教室に戻った。
兄(やけに女子が居ないな……もう二時間目始まるぞ?)
それから十分くらいしてから、一人の女子が言ったんだ。
「〇〇の服が盗まれた」ってな。
そりゃ皆ざわめくわ。男子に至っては「お前だろ?」「まさかww」とか行ってるし。
一応その授業の先生がカバンチェックをしたんだ。
「……え?」
空気が凍りついたね。
教師「兄……お前、これ、どうしたんだ?」
兄「ちょっ……おかしいって! 絶対俺じゃ無い!」
「じゃあ、何でお前のカバンにあるんだよ?」
「兄wwwwwwwまじかwwwwwwwww」
「ヒソヒソ……アリエナクナイ? ナイテルヨ?」
「言い逃れ出来なさすぎワロタ」
「そもそも、このクラスで盗めるの兄だけじゃん」
兄「違うって!!」
「必死すぎwwwwwブフフwwwwww」
「追い詰められてるな。彼も若かったのだよ……」
無口女「兄君……どうして……?」ポロポロ
兄「俺じゃないから、本当に俺はやってないから!!」
「そもそも、ドアも窓も鍵かかってたよな」
「兄シャンズ・トリックってかwwwwwwww」
「うわぁ……」
教師「兄、今なら俺も一緒に謝ってやるから」
兄「……誤ってんのはそっちだろ」
「うまいwwww」
「追い詰められすぎて逆ギレきました」
「内心震えてるんだろうな、ざまぁ」
教師「……指導室に来い」ギロ
兄(何でだ。確かに俺が怪しいのは間違いないが、ドアも窓も鍵が……)
そうして辺りを見回した時に、俺は気付いた。
203:
兄「……」
ようやく解放された俺は、憮然とした表情のまま学校を出た。
俺は見つけてたんだ。ドアも窓も鍵がかけられていたけど、「上の窓」の一番右端の鍵だけ開いてたのを。
さすがに女子更衣室は覗けなかったが……。
ただ、幼馴染の身体能力では無理な高さだった。つまり、別の誰かがやった事になる。
友「……居た!」ダッ
謎男「大丈夫か」
兄「どいつもこいつもゴミばっかだ……吐き気がする」
謎男「今日職員室で日誌を見てきたが……幼馴染の所は遅刻者が二人居た」
友「そこそこ噂されてるぜ、怪我が無ければシメてたんだが」
兄「遅刻者か……俺の見た感じだと、俺より後に入った奴は一人居たな。性格悪そうな女」
兄「そいつにでも頼んで、俺の席を教えて、無口女……いや、誰でも良かったんだろうが、服を盗む」
兄「二人なら可能かな、一人が誰か居ないかチェックして、もう一人が教室に入って、俺のカバンに入れる」
友「難しくないか、いや、お前の組だけ二階の端だったな……」
兄「お前らは一階だが、幼馴染は三つ左に行った所のクラスだからな」
謎男「女子更衣室はどうするんだ?」
兄「これもあくまで想像だが……「あ、ゴーグル忘れたから鍵閉めは私がするね」とでも言ったんじゃないかな」
兄「そう言いながら、後ろの鍵を開けておくんだ。それなら俺みたいに先生に鍵を貸してもらわなくても入れる」
兄「多分、女子更衣室も上の窓空いてると思う」
兄「いや、そもそも何で俺の教室の、上の窓が開いていたんだ……?」
兄(まさか、俺のクラスにもあいつの協力者がいるのか?)ブルッ
友「待て待て。そもそも移動してたら誰かに見つかるだろ。掃除のおばちゃんとか」
兄「幼馴染のためにわざわざするのか分からないけど、人望高そうだな……」
友「あくまで想像なんだろ? 気にしすぎだ」
謎男「明日調べる……それだけ。お前は学校を休め」
兄「……あぁ」
友「あんまり思いつめすぎんなよ。またうまい飯でも食おうぜ」
謎男「……桜餅が食べたい」
兄「……そうだな」ハハ
兄「ありがとな、お前ら」
204:
謎男(……なるほど、やはりか)カキカキ
謎男(昨日休んでいたのは不良女とバレー部所属のバレー女か)
謎男(怪しい所は見られていないが、確かに鞄を持って移動していた所を掃除のおばちゃんが見ている)
謎男(その中に服が入っていても気付かないな。幼馴染と接点は無いようだが……)
謎男(もっと決定的な証拠が必要だな……あいつが残しているわけもないが)
???「……」ジー
謎男「チッ……何も残してないか」
謎男(兄が心配だな……今から家に向かうとしよう)
謎男(友、兄。まさか兄にまで危害を加えるとは思っていなかったが……まぁ次は)
???「」ブンッ
謎男「俺だろうな……」パシッ
???「!?」
謎男「先ほどから視線を感じていた……お前は誰の差し金だ?」
ストーカー「お前に教える必要は無い」ヒュッ
謎男「まぁ幼馴染だろうが……」スカ
ストーカー「」カチン
ストーカー「幼馴染‘様’を付けろ貴様ァ!!」ダッ
謎男「ゴミが……」シュンッ
謎男「――喋るな」メキィ!!
ストーカー「がうっ……」ドサ
ストーカー(何てさ……急所を的確に狙われた……)
ストーカー(だが、俺は負けない……)
ストーカー(幼馴染様のために!!)ムクリ
謎男「俺の攻撃を受けて立つか……少しは根性が据わってるようだな」
ストーカー「あぁああぁぁぁぁ!!」
謎男「叫ぶな、頭に響く……」バキィ
ストーカー「」バタッ
謎男「さて、こいつを……ちょうどいい、あの公園に運ぶか」グッ
兄「ハァ……ハァ……」ガクガク
兄(迂闊だった……まさか家にまで来るとは!!)
幼馴染「寝込んでるって聞いたから。ちゃんとしたもの食べないと駄目だよー?」
兄(くそ、どうやったら逃げられる……!!)
幼馴染「はい、出来たよ。ちゃんと栄養のあるもの食べてね?」ニコニコ
兄「これは……」
兄(見た感じ、塩胡椒をして炒めたゴーヤに、ベーコンと卵を合わせた、ゴーヤチャンプルー風に、冷製スープ)
兄(何かおかしなものは入れていないように見えたが……食べないと、どうなるか分からないな)
兄「いた、だきます……!?」パク
兄「こ、これ……お前、どういう事だ!?」ガタン
207:
兄(ゴーヤの炒め物の方は、しっかり塩味をきかせて、最後にレモンを絞ってえぐみを感じさせず)
兄(ベーコンとゴーヤの旨みを共存させ、半熟の卵が舌に心地よい)
兄(そして、ご飯の炊き上げ具合だ。俺の好きな、べちゃっとしない固めの炊き上げ)
兄(そして、この冷製スープ。あさりと鯛のあらで取った出汁に鰹節で旨みを補強したものだ)
兄(豊かな旨みが舌に染みわたる。何度も濾しているのだろうか、漉き取るような清冽な味わいだ)
兄(底には黒胡椒が香るコンソメのジュレが忍ばされてある。鋭い旨みがまた違った味わいを感じさせてくれる)
兄(出汁を取り終えた鯛のほぐし身を混ぜ込んだ卵焼きも、ふっくらとしていてうまい)
兄(申し分なく――うまい、うまいが……この味は)
『兄、お金をいっぱい使わなくても、安い材料で美味しい物は出来るのですよ?』
兄「何でお前が……この味は――母さんの味だ!!」
幼馴染「ふふ♪」
兄「どうやって盗んだ!!」
幼馴染「兄に喜んでもらいたくて、昔ごちそうになった味を必死に思い出して……」
幼馴染「ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと練習したんだ」スウゥ
兄(……本当に練習したんだろうな、完璧に母さんの味をコピーしてある)ゾクゥ
幼馴染「本当は直接聞きたかったけどね、まぁ別にいいんだけど」
兄「」ピキッ
兄「……帰れ」
幼馴染「え……?」
兄「帰れ、と言ったんだが」
幼馴染「兄、どうしたの?」キョトン
兄「 消 え ろ 」ギロ
幼馴染「……そんな怖い顔しないでよ、今日は帰るね」ニコ
パタン
兄(あいつは俺を挑発するために言ったのか?)
兄(本気の憎しみがむき出しになってしまった……)
兄(いつから、幼馴染はこんな風になってしまったんだろう)
兄「俺はどうすればいいんだよ……母さん」ポロ
211:
謎男「起きろ」ドサ
ストーカー「ぐっ……」
謎男「とりあえず、知ってる事は洗いざらい吐いてもらう……別に言いたくないなら良い」
謎男「無理やり吐かせる。それだけ」アクビ
ストーカー「俺が言うとでも思ったか? 甘く見るなよ」
謎男「ふーん」ドゴッ
ストーカー「!」
謎男「どうせ「幼馴染の事は絶対に離さない俺一途でカッコいい」とか心の中で思ってるんだろ」
ストーカー「幼馴染さ……」
謎男「ゴミが人間みたいに喋るな」ガッ
謎男「お前らみたいな欲望をむき出しにしてる奴を見てると……吐き気がする」
謎男「俺は人殺しをしたくない……だから」
ストーカー「……」ブルブル
謎男「――吐けよ」ギラ
ストーカー(ば……化け物だ!!)
友「いてて……まだ思いっきり動けねぇな」ズキズキ
友(この調子じゃ兄を守れねぇ……面目ないが謎男に任せるしかないか)
友(しかし、幼馴染は何故このタイミングで豹変したんだ……?)
友(もう少し……夏の七月十二日は……)
友(兄の誕生日だぞ?)
???「坊ちゃん、お客様が来ておりますが……」
友「お客様……?」
???「はい、三日月のアクセサリーを付けた、とても綺麗な女性でございます」
友「なっ!?」
???「どうしましょう?」
友(おそらく、幼馴染だろう……俺の家を割り出したのか!?)
友「……俺の部屋に迎えて構わない。お茶を頼む」
執事「かしこまりました」ペコリ
コンコン
友「入れ」
幼馴染「ごめんね、いきなり来て」
友「分かってるんなら帰れ」ギロ
幼馴染「私ね、考えたの」
友(!)
幼馴染「兄が私の思い通りに動いてくれないから、焦ってたんだ)
友(何か……してくる!)
幼馴染「だから、まずは」
幼馴染「――あなたから、攻める」
213:
友「お前、何やって……!!」
幼馴染「ふふ……」スル
友「ふ、服を着ろ!」ギロ
幼馴染「顔赤らめながら言っても説得力無いよ?」
友「お前、こんな事していいと思ってんのか!」
幼馴染「人を呼ぶ? 良いよ、別に」
友(この状況じゃ、間違いなく俺が悪者になる)
友(ちっ……ドアはあいつの方にある。逃げれねぇか)
友(しまった、執事に紅茶を頼んだんだった!)
執事「坊ちゃん、お茶をお持ちしましたが」コンコン
友「す、すまん、コーヒーにしてくれ!」
執事「……? 承知しました」
友(危なかった……)ホッ
幼馴染「隙ありー」スッ
友「! 近寄るな!」ドン
パシャッ
幼馴染「よし、これで証拠は出来たっと♪」ピロン
友(ケータイのセルフタイマーカメラ!? しまった!)
幼馴染「うん、よく撮れてる」
友(よりによって俺が押し倒した瞬間に!!)
友「チッ!」バッ
幼馴染「もう遅いよ?」
友「誰に送りやがった!」
幼馴染「私のもう一つのケータイに送ったから無駄だよ♪」
幼馴染「あ、服は着てあげるね」
友(やられた……!!)
幼馴染「ね、お願い聞いてくれるよね?」
友「だったら、兄に危害加えないように……」
友「今、お前を潰す」ギロ
幼馴染「あ、女の子に手を上げちゃうんだー、ひどいねー」クスクス
友「俺は男女関係無く扱う……俺は、ただ自由に生きたいだけだ!」
執事「コーヒーをお持ちしました」コンコン
友「チッ……入ってくれ」
執事「失礼いたします」ペコリ
幼馴染「今日の所は帰るね、私がしてほしい事は一つだけ」
幼馴染「兄に関わらないで?」ニコッ
215:
謎男「……しつこいな、いい加減吐けよ!!」ドゴ
ピロン
ストーカー「よう……や、くか」ニヤ
謎男「……幼馴染!?」
【終わったよ、お疲れさま】
謎男「どういう事だ……?」ポイ
ストーカー「俺の、もく……ガハッ、てきは、お前を足止めすゲホッゲホ、る、事……ガハァ」
謎男(落ち着いてから喋ってほしい)
ストーカー「幼馴染様、が、すでに、布石を打っておいオエエェェ」ビチャァ
謎男「くそ、兄か……!!」
ストーカー「足止めこそが俺の役目、つまりこの勝負は俺の勝ウップ」
謎男「チッ!!」ベキィ
ストーカー「」ドサッ
謎男(兄が電話に出ない……くそ、直接向かうか!)シュバッ
謎男(兄はもうかなり心にきてる……これ以上何かされたら!)ダダダダダ
謎男(――!)ザッ
謎男「兄か!?」
兄「……」
謎男(ブランコに乗っている……あれは確かに兄だ)
謎男「大丈夫か?」
兄「謎男……」
兄「俺、どうするべきなんだろうな」
謎男「?」
兄「これ、友からだ」
友【すまん、やられた。しばらく……いや、かなり長い間お前に近づけない】
謎男(くそ、布石を打っておいた、とは友の事だったのか!)
兄「もう、お前達に関わらない方が良いのかもな」
兄「俺が不幸を呼んでるんだよ、多分」
謎男「それは違うぞ」
謎男「俺は、お前達と出会えて……孤独では無くなった」
謎男「お前達と出会わなかったら、どこか虚ろな生活を送っていたかもしれない」
謎男「感謝してるんだ、皆に……」
兄「謎男……」
兄「ありがとうな」スッ
兄「また、楽しかったあの頃に戻ろう!」
謎男「あぁ、そうだな」ニコ
兄(謎男が笑った! 珍しいな)
兄「お前のおかげで元気出て来たわ」ニカッ
【俺、もっと頑張ってみるよ。ありがとう友!】ピロン
兄「よし、帰るか!」
216:
――
幼馴染「話って何?」ニコニコ
兄「幼馴染……」
兄「もう、戻ろう」クルッ
幼馴染「?」
兄「楽しかったあの頃に、戻ろうぜ?」
幼馴染「……」
兄「また、四人で笑いながら、楽しく遊びに行こう」
幼馴染「嫌」
兄(即答か、ちくしょう)
幼馴染「私は兄さえいれば、それで満足なの」
兄「俺はお前が大事だ。本当の姉のように思っている」
幼馴染「!」
兄「だからこそ、俺に依存せずに、もっと輝いてほしい」
兄「……それでも嫌か?」
幼馴染「……無理だよ、もう」
幼馴染「戻れないよ。今まで心の中で眠ってたこの心が」
幼馴染「抑えられないよ……」スゥ
幼馴染「兄が笑ってたら私も嬉しくなる。兄が側にいるだけで心がぽかぽかしてくる。兄の事を思うだけで世界が輝いて見える。兄が話しかけてくれるだけで、いくらでも元気が湧いてくる。兄が悲しそうにしていたら、泣きそうになる。兄が誰かと喋っていると、胸が張り裂けそうになる」
幼馴染「あなたが大好きなの……」グスッ
兄「心が、制御できないのか」
幼馴染「うん……」
兄「……」ギュッ
幼馴染「あ……」
兄「心が制御できないのなら、俺が一緒に付き合ってやる」
兄「ゆっくり、ゆっくり治していこう」
幼馴染「う……あ……」ウルウル
兄「よしよし」ナデナデ
謎男(大丈夫みたいだな……)クルッ
謎男「!?」
謎男(おいおい、マジか……)ゾクゥ
幼馴染「グスッ……」ニヤァァ
謎男(まさか、兄が幼馴染を受け入れる事を読んでいたのか!?)
謎男(兄からは顔が見えないな……くそ)
謎男(兄の優しさを利用しやがって)ギリ
謎男(覚えていろ……お前は必ず、俺が徹底的に追い詰めてやる)
謎男(ゴミは俺が処理する!!)タッ
その日から、俺は出来るだけ幼馴染の側に居て、心を制御できるようにしようとした。
でも、それは全くの逆効果で、むしろ幼馴染の依存を強める結果になってしまったんだ。
今思えば、俺も焦っていたんだな。
219:
兄「幼馴染、忘れ物だぞ」
幼馴染「あ、ごめん、じゃあ行こっか?」
そして、最後に、俺に強烈なトラウマを与えたのが、俺の誕生日の前日。
俺は、幼馴染と海に行く事になった。こっそり謎男も着いてこさせて。
やけに蝉の鳴き声が、家を出た時に頭に残っていたなぁ……。
でも、ちゃんと聞こえているのに、どこか夢心地、みたいな。不思議な気分だった。
幼馴染「水着はちゃんと持ってきた?」
兄「着て来たわ。ガキじゃねーんだし」
兄(こうしてると、幼馴染は普通に無害なんだけどなぁ)
幼馴染「海なんて久しぶり」
兄「つっても去年も来ただろ」
兄(あれ……俺、これまで本当に幼馴染だけと過ごしてたんだな)
幼馴染「……あ、バス来たよ」
ブルルン……
兄(やはり暑苦しいのは嫌いだが、夏の雰囲気だけは大好きだ)
兄(バスも良い。眩しい太陽が照らす、流れゆく風景を見るのも好きだ)
兄(謎男は見つからないよう、電車で海へと行っている)
幼馴染「ねぇ、兄」
兄「ん?」
幼馴染「……何でもない」
兄「何だそれ」ハハッ
兄「着いた。暑い。帰りたい」グデー
兄(早く水を浴びたい)
「お待たせ♪」
兄「……」
幼馴染「どうしたの?」
兄「……似合ってんな」プイッ
幼馴染「!」
幼馴染「ふふ……さ、行こ?」ニコ
兄「おう。!」
謎男(暑い……)
兄(よし、来たか)
それから数時間は、普通に俺達は海を楽しんだ。幼馴染は泳ぐのが得意だったっけな。
謎男は退屈そうに空を眺めてた。あいつには悪い事したな。
途中で逆ナン?みたいな事もされたっけ。
遊び疲れてくたくたになって、辺りは夕焼けになっててさ。そろそろ帰ろうとしたんだよ。
俺は喉が渇いてさ、ラムネを買いに、少し離れたんだ。
この時、俺は幼馴染の目が、あの目になっていたのに気が付くべきだった。
戻った俺の目に映ったのは――
220:
兄(どこに行ったんだ……?)スタスタ
謎男「兄」シュバッ
兄「お、幼馴染どこ行ったか分かるか?」
謎男「今すぐ帰った方が良い」
兄「え?」
謎男「今すぐ帰れ」
兄「何かあったのか?」
謎男「俺からは言えない……が」
謎男「吐きそうになった」ギロ
兄「あいつに何かあったのか?」
謎男「探すな。お前にとってはもはやトラウマに……うっ」ビチャァ
兄「謎男が吐くほどの……まさか!」ザッ
謎男「やめ、ろ、兄……」ハァハァ
謎男(止め、ないと、俺が……)
――お前が全部悪いんだ!!
――あんたなんて、産むんじゃなかったわ!!
謎男「う……!!」ズキン
謎男(くそ、こんな時に……意識が……)
兄(あ、これあいつのサンダルだ。こんな人気の無い茂みに……?)
「あっあっ、……んっ」パンパン
兄「え……」
幼馴染「あは、兄……やっと来てくれた♪」
兄「……何、やってんだよ……」
幼馴染「見て、んっ分からないの? あっ」
グラサン「あ、彼氏君? いただいてまーす」パンパン
兄(俺の目に映ったのは、水着を脱いだ幼馴染と)
兄(それに腰を打ちつける、知らない色黒のグラサン男だった)
兄「なん、で」
幼馴染「ほら、嫉妬、するでしょ……私のっ、気持ち、分かってくれた?」
グラサン「役得だわー、こんな良い女とやれるとか」パンパン
兄「あ……あ……」ブルブル
幼馴染「私も、そんな思いだったんだよ?」
兄「おえっ……!!」ビチャアァ
グラサン「うわ、吐いてやんのww」
幼馴染「兄……大好きだよ」
兄(その言葉を最後に、俺の景色は歪み、反転した)
221:
夢を見ていた。
昔、家族……あ、俺の方の母さんな。親父と母さん、それと幼馴染の両親もいて、桜の木の下で、花見をしてた。
あの頃は、皆笑っていた。幸せだった。
兄「はっ」
幼馴染「起きた?」
兄(今のは夢……?)
幼馴染「ほら、帰ろう?」ギュッ
兄「!!」バッ
兄(今のぬるっとした感触は)
幼馴染「あぁ、さっきのは夢なんかじゃないよ?」
兄「……何で、そんな事したんだ」
幼馴染「だから、兄に知ってもらうために」
兄「あいつとはどんな関係だ?」
幼馴染「知らないよ」
兄「――ふざけんなよ!!」
幼馴染「?」
兄「そんな事のために、お前は身体を許したのか!!」
幼馴染「あ、怒ってくれた……♪」
兄「いい加減にしろよ!!」
兄「お前はただ自分が良ければそれでいいだけだろ!!」
幼馴染「怒らないでよー」
兄「お前は俺の事が好きなんかじゃない!! ただ理想の恋人像を押し付けてるだけだ!!」
幼馴染「ああ、もうバスの時間じゃないね……電車乗ろう?」
兄「……」
その時、俺はこいつに何を言っても届かないって分かった。
もうこいつは自分の世界に囚われてる、そう思った。
電車の中でも、俺は一言も口を利かなかった。
その時は、時間的にかなり人がいてさ。満員のぎゅうぎゅう詰めだったよ。
そして、次の駅で俺達の町だって時に、幼馴染は――
幼馴染「……んっ」モジモジ
兄「!?」
俺に密着してきた。俺の身体に背中を向ける形で。
そして、顔を赤らめ、不安げな顔をして……気の強そうな女に視線を送り始めた。
俺は離れようとしたが、人が多すぎて動けない。謎男も遠い所に居た。
「この人、痴漢です!」
そして、そいつはそう叫んだ。乗客たちが一斉にこっちを見て、幼馴染はへたりこんだ。
「ちょっと君、この駅で降りて」
そう言われ、俺はほぼ強制的に降ろされた。謎男が叫んでいたが、人ごみのせいで届かない。
幼馴染を見ると、やっぱりうっとりしながら笑っていた。
223:
「君、名前と学校は?」
兄「ちょっと待って下さい、俺は何も」
「実際に彼女は顔を赤くしてたじゃないか?」
幼馴染「何でもないんです、ちょっと風邪気味だっただけで……」
「ああ、そうだったのか? 紛らわしいリアクションはやめてくれよ」
幼馴染「はい、迷惑かけてすいません」
「君、疑ったりして悪かった。最近は痴漢が多くてね……」
兄「いえ、気にしてないっす」
「それじゃ、仕事があるのでこれで」スタスタ
幼馴染「……ふぅ、ドキドキしたね♪」
兄「……」
幼馴染「皆私達だけを見てたよ、ふふ」
兄「……」
幼馴染「さ、帰ろうか」
兄「もう……うんざりだ」
幼馴染「?」
兄「頭おかしいよお前」
幼馴染「どうしてー?」
兄「好きなのに他の男に気軽に身体を許して、人を痴漢野郎に仕立て上げようとして」
兄「俺の友達にまで危害を及ぼして」
兄「――もう、お前なんか大っ嫌いだ!!」
幼馴染「え……」
兄「顔も見たくない、二度と俺に近寄るな!!」
幼馴染「待ってよ兄、まだ言いたい事が」
兄「うるさい!!」
幼馴染「誕生日プレゼントは、「二人っきり」で過ごそうと思って、遊園地のチケット買ったんだ」
兄(謎男に気付いてたのか!?)ゾク
兄「?!!」
兄「もう俺に一切関わるな。お前なんてもう」
兄「――「お姉ちゃん」じゃない」
幼馴染「あ、あ……」
兄「じゃあな、幼馴染さん」スッ
幼馴染「兄、私を見捨てないで、兄……!!」
兄「……ハァ、ハァ……オエッ」
プルルル
兄「……はい」
兄「分かりました……」
兄「今、行きます」
225:
幼馴染父「来てくれたか……」
兄「……」
幼馴染父「今日の事は、謎男君から全て聞いたよ」
幼馴染父「君に辛い思いをさせてしまった、本当にすまない」スッ
兄「頭を上げて下さい……あんたは何も悪くないでしょ」
幼馴染父「そもそも、君に幼馴染の様子を聞いた時に、もっと気を付けるべきだった……」
幼馴染父「幸い、私達は明後日で遠くに引っ越す予定だった。もう君に関わる事はないと思う」
兄「そうですか……」
幼馴染父「今は部屋に籠って君の写真を眺めていたよ」
幼馴染父「いつからあんな風になってしまったんだろうな」
兄「……」
幼馴染父「最後に君の父親に会えなくて残念だよ、よろしく伝えておいてほしい」
兄「はい」
幼馴染父「……すまないね。本当に。今日はゆっくり休んでくれ」
兄「失礼……します」
兄(心に、ぽっかりと穴が開いた気分だ)
兄(もう全部がどうでも良い)
ソレデネー、ソノトキアイツガサ
兄「うっ……」
兄(気持ち、悪い。吐くものが無くて、胃酸がこみ上げてきた)フラフラ
兄(女は……気持ち悪い)
兄(気持ち悪い……気持ち悪い……)
兄(ああ、全部考えなければ良いんだ)
兄(心の片隅に、嫌な気持ちを押し込んで)
兄(楽しい事を考えよう)
兄(あれ、楽しいってなんだったっけ……)
兄(もう、霞んで思い出せない)
兄(……俺は、何だったっけ)
兄(今までの……俺……は……)フラッ
ドサッ
謎男「見つけた!」
友「おい、大丈夫か!」
兄(何で……居るんだ……)
友「おい、意識はあるか!」
兄(……眠って、しまおう)
謎男「おい、兄!!」
兄(目が覚めたら、あの頃に戻っていたらいいなぁ)
227:
兄「……」パチ
謎男「!」
マスター「目が覚めたようだね。はい、水」スッ
兄「……」ゴク
友「大丈夫か?」
兄「……」
謎男「今日はもう休め」
兄「……」コク
カランカラーン
マスター「大丈夫……ではなさそうだね」
友「……兄」
それからは、まぁ学校もサボって、抜け殻のように過ごした。
そして、あいつが引っ越す日になったが、俺は部屋に籠ったままだった。
幼馴染は最後に、「ずっと待ってるから」とメールを残して、引っ越していった。
俺はそれから、本当に抜け殻だったよ。
友と謎男は随分気を使ってくれて、いつでも三人で過ごすようになった。
マスターはよくアウトドアやキャンプに連れて行ってくれたっけな。
兄「……」
友「兄、ゲーセン行こうぜ!」
兄「……」コク
謎男「明日は祭りだな、行くか?」
兄「……」コク
友「よし、明日は夕方に神社で集合だな」
兄「……」グッ
友「執事が育てたスイカを貰ってきた。食べようぜ」
兄「……うん」
謎男「!」
友(ゆっくりで良いんだ、回復してくれれば)ニッ
謎男「……焼き芋。それだけ」スッ
友「いや分かんねぇよ!?」
謎男「良いさつま芋を貰った。たき火するぞ」
友「それ犯罪じゃね?」
謎男「ヤンキーのお前が言うか」
兄「プッ」
謎男(ようやく笑ったか)フッ
友「寒っ、もう冬だな」
兄「そうだな」
謎男「マスターに珈琲でもたかりにいくか」ニヤ
228:
友「寒いな……マフラーでも買うべきか」
謎男「マフラーをするヤンキーか……」
友「うっせーよ! そんくらい別にいいだろーが!」
兄「……?」
友「どうした?」
兄「あれ……」
謎男「――!!」
「いってー、今のは痛かったわー」
「すいません」
「謝罪とかいいからさ、ちょっと付き合ってくれるー? 俺紳士だしさ」
「えっと、その……」
「ほらいいから、とりあえず行こうぜ」グイ
友(まずい、ナンパしてやがる!)
友(……やべぇ!!)
兄「ゴミ、は、消さない、と……!!」
兄「俺、が……全部……全部……」ズキ
謎男「落ち着け兄!」ガシ
兄「あ……う……!!」ブルブル
兄(頭と、胸が、痛い)
兄「――あああああああああああぁぁぁぁぁあぁぁ!!」バッ
謎男「ぐっ!」ドサ
友(謎男を跳ね除けた!? なんてパワーだ!)
「な、なんだよお前!」
「何でキレてんだよ……二人でやるぞ」
謎男「おい、やめろ!」
「やべーよ、こいつ目がイってるって!!」
「ビビんなよ、隙だらけだ」ガツン
兄「があぁぁ!!」ブン
「うっ!」
「何だよこいつ、怯まねえぞ!」シュッ
兄「ああぁぁ!!」メキィ
「ぐっ、調子にのんな!」ガッ
兄「ぜん、ぶ、全部ぶっ壊してやる!!」ベキィ
兄「俺、が、この手で!!」
謎男「くっ……!!」ガッ
友「ナイスだ! おいお前ら、早く逃げろ!」
兄「ヴヴヴ!! があああああああぁぁぁ!!」
「お、おい、もう行こうぜ」ダッ
謎男「……くぅ!」ミシシ
友(それから十分ほど暴れようとした兄は、力尽きて眠ってしまった)
229:
謎男「!」
友「兄、分かるか?」
兄「俺、何してたっけ」
友「覚えてないか……」
兄「確か、俺は……あ、あ……!!」ガクガク
謎男「しっかりしろ!!」
兄「怖い……もう……近寄らないでくれ」
兄「俺と居たら、また傷つける……」
兄「人が怖い……」ポロッ
友「あーもう……面倒くせぇな!!」ダン
謎男「!?」
友「女々しいんだよお前!! しょーもない気ばっかり使いやがって!!」
友「いくらでも俺らに迷惑かけやがれ!! 何でも相談しろや!!」
友「――俺達は親友だろーが!!」
兄「!」
友「ハァ……ハァ……」
兄「友……」スッ
兄「ありがとうな」
兄「そうだな……俺達は親友だ」
兄「これからも、よろしく頼むぜ!」ニカッ
友「おう!」ニッ
謎男(さすがは友だな……激情的なあいつだからこそ、心の声を思い切りぶつける事が出来た)
謎男(……)
友「おいクマ野郎、お前もだよ!」
謎男「!」
友「どうせ自分は違うとか思ってんだろ! お前もとっくに仲間だろーが!」
謎友(仲間……)
謎男「誰がクマ野郎だ……別に睡眠はとってる」
友「これだからツンデレは……」
兄「ぷっ……」
友「……」
謎男「……」
「あははははwwwwwwwww」
兄「はー、久しぶりに笑ったわ」
友「……」
兄「?」
友「俺、結構恥ずかしい事言ってたよな……」
謎男「……『俺達は親友だろーが!』」ニヤニヤ
兄「『お前もとっくに仲間だろーが!』」ニヤニヤ
友「やめてください!!」
232:
マスター「なるほど、兄が……」コト
謎男「完全に理性を失っていた。目が獣のようにギラついていた」
マスター「理性、か」
謎男「表情は怒りに満ちていたが、苦しんでいるようにも見えた。おそらくあの激昂は」
マスター「溜めこんだ膨大なストレスが、一時的に爆発した、と?」
謎男「ああ。ナンパを見て、幼馴染につけられたトラウマを思い出したんだろう」
マスター「それが、彼が言う‘心の化け物’か」
謎男「こればっかりは時間が経つのを待つしかない……」
マスター「同意見だ。トラウマが風化してくれるのを待つしか出来ないね。ただ」
マスター「もしまた君の目の前で暴れたら、君が止めてやるんだよ」
謎男「勿論だ」
マスター(兄は良い友達を持ったね)
――――
まぁ、それから時間が経って、俺は他人がナンパされても暴走しないようになったんだ。
自分で言うのも何だがかなり明るくなったし、またうまい飯を探求するようにもなった。
でも、やっぱり学校では居場所は無くて辛かったな。変態の烙印は最後まで消えなかったし。
だから、うちの中学の生徒は、大抵は南の方の高校に行くんだが、俺は北の高校……今の所だな。そこへ行った。
中学を卒業する事には何の未練も無かったが、あいつらと離れるのは辛いなーって思ってた。
でも、あいつらはわざわざ俺に高校を合わせてくれたんだ。
本当に良い友達を持ったよ。
兄「……もうこんな時間か。長々と話し込んで悪かったな」
義妹「……」
兄「どうした?」
義妹「自分の境遇が恥ずかしいです」
兄「え?」
義妹「お兄さんはこんなに辛い思いをしたのに、私はあれくらいでふさぎ込んで……」
兄「おいおい、別に俺は」
義妹「だから」ギュッ
兄「!」ビクッ
義妹「私はどんな事があっても、絶対にお兄さんを苦しめたりしません」
義妹「お兄さんがどんな立場になっても、ずっと味方でいます」
義妹「もう……死のうなんて思わないでください」
義妹「お兄ちゃん……!!」
兄「義妹……」
兄「……すまん」ギュッ
義妹「グスッ……」
兄「ごめんな……!!」ポロッ
義妹「……」ギュウゥ
兄(それからしばらくして、俺達は手を繋いで眠った)
236:
兄「……」
義妹「何オドオドしてるんですか。早く入りましょうよ」
兄「いや、よく考えたら妹友2さんに暴走したの見られててさ……」
義妹「妹友2さんは優しいですし、大丈夫ですよ」ドン
兄「いてっ、無理やり校門くぐらせる事もないだろ」
義妹「可愛い妹と登校したんですからいいじゃないですか!」
兄「あ、自分で可愛いとか言っちゃうんだ」
義妹「……//」ウツムキ
兄「恥ずかしいんなら最初から言うなよ……」ハァ
義妹「は、早く行きますよ! もう!」ギュッ
兄「はいはい」プークスクス
友「おはようございます」ニコッ
兄「うわぁ」
友「?」
兄「義妹に話してから今のお前みたら、違和感すげぇわ」
友「私の事も話しました?」
兄「あー、別にお前のキャラチェンジのきっかけとかは言ってないよ、必要無さそうだったし」
友「まぁ別に聞かれても構いませんが……恥ずかしいじゃないですか」
兄「あのヤンキーが随分紳士になったもんだ」ニヤ
友「からかわないで下さいよ……おや」
友2「うーっす」
兄(誰だったっけ……)ヒソヒソ
友(えーと……)ヒソヒソ
友2「聞こえるように言うのやめようか」
兄「あー、思いだした、ハゲか」
友2「坊主だっつってんだろ!」
――
兄「さて、昼食タァァァァイム!!」
友「いつにもましてテンションが高いですね……あっ」ガラッ
兄「」
妹友2「兄くん……ちょっと良いかな?」
兄「はい」
妹友2「ごめんね……じゃあ、行こう」
友(……あれ、妹友2さんの口調が少し変わった……?)
友2「もしかしてこれは」ガタッ
友「野暮な事はしないように」ガシ
友2「友っ……貴様ッ!!」
友(さて……どうなりますかね)
237:
兄(おおおおお落ち着け俺素数を数えるんだ)
妹友2「ここなら誰もいない……はず」
兄(1,3……あれ、素数って何だったっけ)
妹友2「……」
兄(奇数だったっけ……いや違う、何か一つだけの数字みたいな)
妹友2「ごめんなさい」ペコリ
兄「!?」
妹友2「昨日は兄くんが私のせいで傷ついたのに……私は怯える事しか出来なかった」
兄「いや、あれは俺が勝手に暴れただけだし」
妹友2「それでも、あの時兄くんが居なかったら、どうなっていたか分からない」
妹友2「……あなたに何があったのかは知らないけど、側を歩いて行きたいです」
妹友2「付き合ってください」
兄「……俺は」ズキッ
兄(大丈夫、大丈夫だから……!)
兄「妹友2さん……ごめん」
兄「俺には、好きって感情が分からないんだ」
兄「このまま付き合ったら、絶対に傷つける」
兄「だから、好きになれるかもしれないけど……ごめん、無理だ」
妹友2「っ……何が、あったの?」
兄「ちょっと話すと長くなるんだ。今日の夜に電話してもいいか?」
妹友2「分かった」シュン
兄「……」
妹友2「じゃあ、今日の夜……待ってるね」
兄「……うん」
――
友「兄」
兄「ん?」
友「何かありましたね」
兄「……俺はやっぱり駄目な奴だな」ハァ
友「そんな事ないですよ……」
兄「でも、今日の夜にきっちり説明するよ。昔とは違うんだ、だから」
兄「女々しいなんて言わせないぜ?」
友「……成長しましたね」フッ
兄「所で、あのハゲは何で隅っこで呪詛を吐いてるんだ?」
友「『義妹ちゃんに懐かれて妹友2さんから呼び出しされる兄くたばれ』だそうです」
兄「彼女いるくせに何言ってんだよ……」
友2「あ、やっぱりwwwwwwww?」グワッ
兄「」イラッ
友2「だよな、確かにwwwwそれはwwwwww仕方がない? っつーかwwwwwwブフフwwww」
兄(今度後輩にこいつの黒歴史教えてやろう)
242:
兄「暑いな」
義妹「暑いですね」
兄「こいつの出番だよな」ソウメンッ
義妹「やってきましたか」ハァ
兄「そんな残念そうな顔するなよ、そうめんうまいじゃん」
義妹「最初は良いんですけど……飽きますよね、絶対」
兄「そうめんにはトッピングと言うものがあってだな」
義妹「トッピング……? 錦糸卵とかですか?」
兄「こいつですよ」カニカマッ
義妹「かにかま……?」
兄「そう、別にこのまま使うわけじゃないよ」
兄(醤油をまぶしたかにかまに適当な衣を付けて、小さなフライパンで揚げる))
兄(これだけで、あのかにかまがやたらとうまくなるのだ)ドヤァ
兄(カレー粉をまぶしてもいいかもしれない)
兄「さて、いただきまーす」ホラ
義妹「あ、ありがとうございます」イタダキマス
兄「麺つゆにワサビ入れるならどうぞー」
義妹「ちょっとだけ……では」パクッ
義妹「あ、美味しい……!?」
兄(揚げたかにかまは、醤油であらかじめ味付けしている)
兄(カリッとした衣の歯ごたえと、柔らかい中身の変化が楽しい)
兄(しかも、熱々のかにかまは旨みたっぷりで甘く、これだけでもご飯のおかずになりそうな味だ)
兄(しかし、それだけでは無い……この揚げかにかまは)
義妹「あ、麺つゆに浸してもおいしいですね!」
兄(そう、麺つゆとの相性が抜群なのだ)ニヤリ
兄「たまには良いだろ、こーゆーのも」ズゾゾー
義妹「たまには、ですね」ズゾゾー
兄(さて、そろそろ電話しないとな)
――
兄「……これで俺の過去は終わり」
妹友2「……」
兄(おいこのリアクション二回目だぞ)
妹友2「兄くん、あなたは恋愛感情を無くしてしまっただけ」
兄「え」
妹友2「あなたの心が埋まるその時まで……好きでいてもいいですか?」
兄「俺の、心が埋まる時……」
妹友2「もし、他に好きな人が出来たその時は、私を振ってくれても構わない」
妹友2「でも、それまでは……まだ、あなたを思っていてもいいですか?」
兄「どうしてそこまで……」
妹友2「決まってる」
妹友2「――あなたが、好きだから」
244:
――
兄(先日の告白を受けて以来、しばらく俺は妹友2さんとの接点を失っていた)
兄(しかし、あのバカが余計な事をしてくれたおかげで、今、俺達は――)
コッチハマグリサンニンマエ オーイ、イカノイチヤボシマダカー! オオアサリウマスギワロリッシュ
兄(浜焼き屋さんに来ている)ハァ
友2「賑わってるなぁー」
図書娘「潮の匂いがする!」クン
兄(余計な事しやがって……しかもそこそこの人数だ)
兄(面子は俺・友・ハゲ・図書娘・義妹・妹友・妹友2・後輩だ)
兄(かなり金がかかるからなぁ……それに、あいつがバイトしてるらしいし)
友「ほら機嫌直して下さいよ」
兄(しかも席は俺・友・義妹・妹友。もう一つのテーブルに図書娘・妹友2・後輩・ハゲ)
兄(憂鬱すぎんだろ畜生)
友「ほら、注文しますよ、何にします? ハマグリですか?」
兄「さっそくハマグリ頼む奴はバカだね、汁が飛び散って火傷するのが目に見えるぜ」
妹友「偉そうに……じゃあ最初は何頼むの?」ギロ
兄「睨むなよ……最初は大アサリにしとけ」
義妹「ではそれで、四つで良いですか?」
妹友「うん」
「こちら大アサリ四人前になりますっ!」コト
兄「すげぇ元気だな」
友「すでに貝殻は片方カットされていますね」
兄「ちなみに和名はウチムラサキだったはず、貝殻の中が紫色だったから……的な」
妹友「誰も聞いてないし」
兄「最初にタレをかけてから焼けよ、焼きすぎてパッサパサになるからな」ハァ
友「お任せあれ」シュピピピッ
兄「タレがぐつぐつしてきたら食べごろなー」
妹友「仕切りたがりって絶対に一人は出てくるよね」
義妹「まぁまぁ、落ち着いて下さいよ」ニコ
友「もう全体的に良さそうですね」
兄「じゃあいただきますかー」パクッ
友「おお、うまい!」
義妹「身がぷりぷりしてます! すごいジューシー!」
妹友「……」
友(無表情を貫こうとしているが、頬がゆるんでますね)ヒソヒソ
兄(うまいものの前では、所詮奴も一人の女よ……)ヒソヒソ
妹友「……何」ギロォ
兄「いえ」
友「何でも」
兄・友「ございません」キリッ
245:
友2「あっつ、ハマグリあっつ!!」バチュゥン
後輩「もう、落ち着いて下さいよー」フキフキ
図書娘「あ、開いたよ。どうぞ」スッ
妹友2「ありがとう」
図書娘「どういたしまして♪」
友2「ハマグリに殺されるかと思ったぜ」フゥ
後輩「落ち着いて取ってくださいよ、もう」
友2「すまんなwwwww」
図書娘(どうして僕はいちゃいちゃを見せられてるんだろう)ニガワライ
妹友2(あの二人は勝手に楽しむから大丈夫)
図書娘(……え、えっ!? 今口動いてな……えっ?)
「こちらサザエ四人前になります……あ、来たんだね」ニコッ
友「ああ、ここでバイトしているんですか、イケメン君」
イケメン「ああ、知り合いが働いててね、存分に食べていってくれ!」キラッ
兄(俺はこいつが嫌いだ、いや、すごい良い奴なんだが……)ジロー
イケメン「おいおい兄、そんなに睨むなよ」ナデナデ
兄(こいつは軽いホモなのだ。とりあえずボディタッチがものすごい多い)パシッ
兄「はよ厨房に戻れよ」
イケメン「つれないなーもう」ハハ
友「いただきましょうか、これもタレを?」
兄「うん、確かここの奴はほとんどタレかけてから焼くタイプと思う」
義妹「これもぐつぐつしたら食べれますか?」
兄「おう、最初にタレをしっかりかけとかないと、奥でひっついたりするからな」
友「ぬかりはありませんよ」シュピピピピッ
妹友「……」クン
義妹(バレないように匂いを嗅いでる……)フフ
兄「よし、もういけるな」スッ
兄「よっと」ドゥルッポン
友「おお、さすがですね、コツなどは?」
兄「ちょっと斜めに挿して、殻を回す事かな?」
義妹「……あ、出来た!」ドゥルッポン
友「ふぅ」ドゥルッポン
妹友「……」
兄「……貸してみ」
妹友「……ん」スッ
兄「ほいさっと」ドゥルッポン
妹友「……ありがと」
兄(こいつにお礼を言われる日がくるとは……)
兄「どういたしまして」
248:
義妹「んー、身がコリッコリですね!」コリコリ
友「噛むたびに旨みがにじみ出てきます」コリコリ
兄「やっぱ肝だろ、まったりとした強烈な旨みと適度な苦みがたまらん!!」モグモグ
義妹「肝は苦くて苦手です……」
妹友「レモンをかけるみたいだよ」ホラ
義妹「あ、これなら大丈夫です」モグモグ
兄「そろそろまとめて注文するか、何にする? ハマグリは面倒だから最後が良いと思うぞ」
友「ホタテ、イカの一夜干し、後は刺身や吸い物がありますね」
妹友「ホタテが良いな」
兄「よし、ホタテとサザエで」キリッ
義妹「あ、じゃあ呼びますねー」ピンポーン
――
兄「ふぅ、美味かったな」ケプッ
義妹「最後のハマグリも美味しかったです」ニコニコ
兄「ハマグリは開いた瞬間食う食べ物だからな、おかげで指がやられたけど」ヤケドガイテェ
妹友「……」
兄「?」
妹友「……ん」スッ
兄「あ……(絆創膏だ)」
義妹(ふーん)クスッ
妹友「ん!」
兄「はいはい、ありがたくいただきますよっと」ヒョイッ
妹友「ふん」プイッ
兄(何か印象変わったなぁ)
友「あちらも食べ終わったようですし、そろそろ帰りますか」
義妹「そうですね」チラッ
友2「うまかった」
後輩「ですねー」ニコ
図書娘「ごちそうさまー」ポンポン
妹友2「満足」
兄「じゃあ帰るか! 経費はハゲ持ちで!」
友2「破産するだろ!! バカか!」
ハハハ……
兄「今日は楽しかったな」テクテク
義妹「楽しかったですね、皆でわいわいするの……憧れてたんです」
兄「そっか、それは良かった。……お、月が綺麗だな」ニコ
義妹「……//」
兄「ん、……あっ、悪い、完全に無意識だった!」ペコリ
義妹「お兄さん」
義妹「……本当に、綺麗な満月ですねっ」ニコッ
249:
兄(皆様、こんばんは。しがない兄です)
兄(今日は義妹は妹友2さんの家で食べてくるそうです)
兄(仕送りはもう少ししたら来ますが、浜焼きでかなり金を使ったので、俺一人の時は節約します)
兄(もやし丼で行くか……いや、別に今日くらいはいいだろう)
兄(ここに一杯のご飯があります)ゴハンッ
兄(それを二つに分けます。一つは小皿に乗せて)
兄(フライパンで炙った塩を少し多めに加えて、全体にいきわたるようにします)
兄(完成です、今夜の夕食はご飯定食です)
兄「いただきまーす」
兄(塩飯を馬鹿にする奴がいるが、やっていることはおにぎりと大差ない)
兄(塩は全ての食材の旨みを増幅させる、米も例外ではない)
兄(塩によってコメと言う穀物自体の純粋な旨み、芳醇な甘みを感じる事が出来る)
兄(固めに炊く事によって、いつもとは違う米の歯ごたえをも楽しめる)
兄「この焼き塩仕立ての米を頬張って」
兄「――普通のご飯を喰らうッ!!」ガツガツ
兄(そして、味付けしないご飯は、その食材の味を全て受け止める)
兄(旨みたっぷりの少し塩辛い塩飯+普通のご飯)
兄(うまいっ!!)モッシュモッシュ
兄「ごちそう様でしたー」
兄(茶碗一杯分なので、食べ終わるのも必然的に早くなる)
兄「さて、宿題やって寝よ……」
250:
兄(ここは、森の小川。精神を沈めるのにちょうど良いと、謎男に教えてもらった場所だ)
兄(……夏休みが近づいてきた)
兄(ちょうど、トラウマを植え付けられたあの日)
兄(あの日に、全部終わらせよう)スタスタ
兄(俺が……自分自身の過去と、心の化け物を制御するために)カツン
兄「ちっ、何だよ……人がせっかくシリアスモードに入ってんのに」ヒョイ
兄「……まつぼっくりか、久しぶりに見るなぁ」クルッ
兄「うおっ!?」バッ
兄(こ……これ……くっついてんのって……)
兄「――何かの、爪だよな?」
兄(それにしても、どっからこんなものが……)キョロキョロ
兄(ん?)
兄(何だあれ……こんな森の中に……)
兄「廃墟……?」
兄「――って事があったんだが」
謎男「あの廃墟は俺もよく知らない……近寄らないに限る」
兄「そりゃそうだけどよ、あの場所でさ、何かの爪が「丸ごと」くっついたまつぼっくりを見つけたんだ」
謎男「ほう」ニヤ
兄「お前こーゆー謎追いかけんの好きだったよな」
謎男「……」
兄「今度あの廃墟調べないか?」
謎男「……まぁ」
謎男「気が向いたら、な」ニヤ
兄「友がすももくれたんだけどさ、俺酸っぱくて苦手なんだよなぁ」
義妹「あー、確かに強烈ですよね、私はわりと好きですけど」
兄「でも酸っぱいって事はさ、パイナポゥやキウイと似たような感じだろ?」
義妹「パイナポゥって……」クスッ
兄「まぁそんなわけで、スーパーでこれ買ってきたわけよ」ガサッ
豚肩ロース(トンテキ用 138円)
兄「今日のご飯はトンテキと味噌汁でいいか?」
義妹「お兄さんの料理なら何でも」ニコ
兄(とりあえず、すももの芯を取ってすりつぶしておく)
兄(肩ロースは包丁の背でよく叩いた後、筋切りをして胡椒をしておく)
兄(それをジップロックに入れて、すりつぶしたすももを加えてよくもみこむ)
兄「うまくいくといいけどなぁ」
義妹「え、実験するんですか……?」
兄「まずかったら今日のご飯はリゾットに変更します」キリッ
義妹「もう、適当なんだから」フフ
251:
兄「さて、もういいかな」
兄(つけこんだすももは、よく払っておく)パシッ
兄(煮詰めてソース……と言いたいが、すももを煮詰めてもおそらくまずいだろう)
兄(軽く小麦粉をまぶし、丁寧に焼く)ジュウゥウ
兄(いい色になったら、爪楊枝を刺してみる)プスッ
兄(透明な肉汁だ、そろそろ良いだろう)
兄(目玉焼きを乗せて、千切りキャベツ(お買い得品;半分65円)を添えておく)
兄「では、いただきますかー」
義妹「はーい」ニコ
兄「どれどれ、……うん、うまい」
義妹「柔らかいですね! これは成功です!」
兄「うーん、けどやっぱ若干残ったすももの味が合わないなぁ」
義妹「そうですか? 言われなければ気付かない範囲だと思いますけど」
兄「美味い物には妥協したくないんだよ、余ったすももは半分ジャムにしよう」
義妹「あ、それはおいしそうですね!」
兄「今回はこれで我慢してくれ」
義妹「我慢だなんて……そもそも、目玉焼きの黄身のおかげで、全く気になりませんよ?」
兄「そうだな、ありがとう」
義妹「どういたしまして」ニコ
兄「明日はリゾットでいいか?」
義妹「勿論です!」
兄「よし、明日はうまいもん作るよ」
義妹「ふふ……」ギュー
兄「何故抱き着く」シュドッ
義妹「いたっ、チョップしないで下さいよ」
兄「暑いんだよ!!」
義妹「ちょっと失敗したからってしょげてるお兄さんが可愛かったからつい」テヘ
兄「やかましい、夏は抱き着くの禁止」
義妹「そ……そんな……家族のぬくもりが……」ガクガク
兄「……涼しい日なら許す」
義妹「お兄さーん!」
兄「だから今は暑いだろうが!」スカッ
義妹「ぶーぶー」
兄「蜂みたいに鳴くなっつーの、あ、そういえばさ、今日森で」
義妹「森で?」
兄「……やっぱ何でもね」ニカッ
義妹「何ですかそれー! 気になるじゃないですかー!」
兄「まぁまぁ、頭撫でてやるから」ナデナデ
義妹「むー……何か納得できませんね……」
兄(義妹が近寄ったらまずいしな、廃墟の事は言わないでおこう)
258:
兄「ん」」
隣人「お」バッタリ
隣人「丁度いい、取りすぎたからこれやるわ」
兄「またでっけぇお菓子のプライズだけ取りやがって……俺もゲーセン行きたいなぁ」
隣人「行かないのか?」
兄「無駄な金は使いたくないんで。これはありがたくいただきますー」
隣人「またいつか二人で乱獲しに行こうぜ」ニヤ
兄「そうだな」ニヤ
兄・隣人「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
隣人2(仲良すぎじゃね、あいつら……)
???「……」ジー
兄「今日はリゾットです」
義妹「わー」パチパチ
兄「えっとー、まず……おっさんに貰ったバターをちょっと溶かして」ジュゥ
兄「刻んだ玉葱を炒めます」ジャァァ
義妹「ふむふむ」
兄「良い感じになったらかるーく洗った生米・薄めたコンソメスープを加えて炊きます」
義妹「薄めるんですか?」
兄「煮詰めていく過程でどうしても辛くなるからな、熱々のうちは辛さを感じにくいし」
義妹「なるほど」
兄「何回か継ぎ足していって、良い感じになったら角切りにしたスモークチーズを投入」パララ
兄「あ、別にこれは無くてもいいぞ、あったから使っただけだ」
義妹「あれ、溶けませんよ?」
兄「スモークチーズは溶けにくいからな、味の変化に使っただけだ」
兄「はい、とろけるチーズを投入、全体になじませたら終了」
兄「じゃあ、いただきますか」パン
義妹「ですね」パン
兄「うっま、あつっ、やっぱ熱々のチーズは最高だな」ハフハフ
義妹「玉ねぎの甘さが溶け込んで美味しいです! お米もプチプチした歯ごたえがあって!」モグモグ
兄「アルデンテにしておいたからな、気に入ってくれてよかった」ハフハフ
義妹「それに、とろけるチーズとスモークチーズの二重の味が、深いコクを出してますね」モグモグ
兄「普段はスモークチーズの代わりにベーコンを入れるんだけどな」ハフハフ
義妹「あ、それもおいしそうです」モグモグ
兄「うまかった、ごちそーさまー」フゥ
義妹「ごちそうさまでした」
義妹「さて、洗いますからお風呂入ってきてください」ニコ
兄「ん、ありがとなー」
兄(こんな日常が、いつまでも続くといいな)
259:
兄(ふと俺は思った。人を褒めちぎったら、どんなリアクションをするのだろうか)
兄(そんなわけで、今日は褒めに褒めまくってやろう)ニヤ
義妹の場合
兄「なぁ、義妹、お前って本当に良い子だよな」
義妹「へ? どうしたんですか突然」
兄「いや、よく考えたら手伝いもよくしてくれるし、頭は良いし、めっちゃ良い子だし」
義妹「そ、そんな……」テレテレ
兄「よくなついてくれるし、気配りもできるし」
義妹「……//」
兄「本当に完璧だわ、こんな妹を持てて俺は幸せだな」ハハ
義妹「お兄さーん!!」バッ
結果;頬ずりしながら三分ほど抱きしめられた。
妹友の場合
兄「妹友さんってさ、実は優しいよな」
妹友「は?」ギロ
兄「なんかこの前絆創膏くれたし、さりげなく義妹にレモン上げてたし」
妹友「うっさい、媚びる奴は嫌い」ガン
結果:蹴られた。もっと仲良くなろう。
妹友2の場合
兄「妹友2さんってさ、何か側にいて落ち着くよな」
妹友2「?」パラ
兄「何か安心するって言うか、何でだろうな、初めて会った時も大丈夫だって分かったし」
妹友2「……そうなの?」ペラ
兄「うん、口数は少ないけど、心はすごい優しい人だって知ってるし」
妹友2「……う、うん」
兄(あ、ページをめくる手が止まった)
兄「すごい献身的だし、本当に理想的な清楚美人っていうかさ」
妹友2「……そう//」
兄「綺麗だけどやっぱり内面だな、本当に性格良いし」
妹友2「……//」ポフポフ
兄「いた、ちょっ、本で叩くのはやめっ」
兄(まぁ全然痛くねーけど)
結果:顔を真っ赤にして本で顔を覆われた。
おまけ イケメンの場合
兄「なあ、お前ってホモだけどすげぇ良い奴だよな」
イケメン「どうしたんだい兄、突然褒めだして」ギュー
兄「それに頭もすげぇ良いし、運動神経抜群だし」
イケメン「ははっ、照れるじゃないか」サワサワ
兄「ああぁぁぁぁぁ尻を触るな、抱きしめるな!!」パシィ
結果:アッー!
260:
友「……おや、チャージアックスを使うようになったのですか?」ピコピコ
兄「今まで毛嫌いしてたけどさ、使ってみるとかなり強いわ」ピコピコ
友2「あれ使いにくくね?」
兄「慣れたら簡単だぜ? ガード・ステップ・尻尾切断・スタン・高威力技・飛び込み攻撃出来るし」
友2「おお、それ聞いたら良さそうだな」
兄「特にテオをボコボコに出来るのが嬉しいね、希ティ狩れた時は鳥肌立ったわ」
友「なるほど、次の看板武器ですもんね……さ、何狩ります?」
友2「俺ラージャンの角欲しい」
兄「団長の挑戦状やってろ」
友2「ダレンモーランとか」
兄「あれランスで突進するだけじゃん」
友2「レウス亜種……」
兄「あ、それならいいぞ」
友(欲しい素材無いんですけどね)ピコピコ
兄「クシャル装備で行くか)
友2「よっしゃー」
兄「あ、こっちからだわ」デン!
友「了解、隣ですね」
友2「ペイントボールはよ」
兄「はいはい」ペチン
レウス亜種「ゴアァァァァァ!」
友「おや、耳栓ですか」
兄「クシャル用の装備だからな、お前は操虫棍か」
友「……よし、そろそろダウン取れますよ」ピコピコ
兄「ナイス! 頭貰っていいか?」
友「どうぞ」
兄「生憎これはスタン取れる奴じゃないけど、その分ダメージ入るからさー」ジャキィン
友「おお、モーションがかっこいいですね」
友2「待たせたな……あっ」
兄「バックジャンプブレス喰らってやんのwww」
友「マタセタナッ」ウラゴエ
兄「ぶwwwww」
友2「やべえ、早く回復しないと……ああっ! 毒喰らった」
兄「よっと」カッ!
友「ナイス閃光玉です」ボトッ
兄「高出力属性解放斬り楽しいわー」
友「名前がすごいですね……」
兄「おいハゲ、そこに居たら多分」
友2「あ、死んだ!!」ガクン
兄「尻尾に当たるくらい分かるだろ……」ハァ
261:
兄「お、妹友2さんからメールが」ピロリン
兄「……ほう、……なるほど……ほぉ!」
兄「さすがだな――良いだろう、作ってやるさ!!」ギラッ
【兄くん、この前話してくれた豚バラチーズ巻きだけど、アレンジを思いつきました】
【もちろん、材料も最小限にしています、一つしか足しません】
【まず、豚バラに塩胡椒をします】
兄「暑いなぁ」パッパッ
【卵を白身と黄身に分けます】
兄「……」パキッシャカシャカ
【豚バラを全て巻いて、一つの肉の塊のようにします。チーズ巻きと違って、全てを合わせます】
兄「豚バラチーズ巻きはトッピング系だが、こうしてみるとメインディッシュって感じがするな」
【それに白身をまぶします、全部纏めてからにしないと崩れやすくなってしまいます】
【よく表面と隙間にまぶしたら、強火で表面を固めます】
兄「――ヒャッハアァァァァ!!」ジュウゥウゥゥウゥ
義妹「お、お兄さん!?」
 
兄「悪いな、肉とフライパンが奏でる音色についテンションが上がってしまった」
義妹「確かに良い匂いですけど……」
【表面が固まり、肉汁が逃げないようになったら、ホイルで包んで、トースターで15分ほど火を通します】
【兄くんの家はトースターだったよね? 間違ってたらごめんね】
兄「大当たりですよっと」カチッ
【卵黄に塩胡椒を加え、焼いた後の脂と、少しだけ醤油を加えます、お湯でも良いけど】
【それを湯煎しながら撹拌して、乳化させます】
【脂が足りなかったらサラダ油やごま油、オリーブオイルを足すと良いです】
兄「乳化……マヨネーズを作るのと一緒だな、俺マヨネーズ嫌いだけど」
義妹「あ、私もです。出来ればなかったら嬉しいかなーって」
兄「うん、使わんよー」
【もったりとしたら完成です、義妹と食べるなら二人前……卵が二ついるかもです】
【火が通ったら、ホイルに溜まった油もその乳化ソースに加えてあげて下さい】
【火を通してから五分くらいはそっとしてあげてください、肉汁が落ち着くようにです♪】
【それで完成です、名前は……なんちゃってローストポーク、卵黄ソース添え……なんてどうでしょう?】
兄「完璧だ……卵を一つ加えるだけでそれっぽい肉料理にするとは」イタダキマース
義妹「あ、これあの子が教えてくれたんですか?」イタダキマース
兄「うん。……おおぉぉ!!」パクッ
兄(まるで漫画のようだ、口に入れた瞬間、じゅわっと脂が溢れてきやがった!)ジュワッ
兄(ぷりぷりのバラ肉はジューシーで、ボリューム満点だ!)モグモグ
兄(そのジューシーさが、まろやかな卵黄ソースとマッチして……)
兄「うめえぇぇぇ!!」
義妹「うん、すっごい美味しいです!!」
兄「これはうまい、ご飯ともばっちりだ!!」
義妹「さすがは妹友2さんですね♪」ニコ
264:
兄「今日は席替えか、何でこんなタイミングに……」
友「次はどんな席になるでしょうね」
兄「俺の番だ、くじ引いてくる」
兄「21番だ」
イケメン「えーっと、……おぉ、いい席取ったね」カッカッ
兄「後ろの端か、よっしゃ」
イケメン「俺の隣だね」ニコッ
兄「」
友「……あ、私は一番前ですか」
友2「俺がいるぜ?」ドヤ
友「チッ」
友2「おい、今舌打ちしたよな!?」
兄「……」
兄(俺の前の席……あいつか)
兄「嫌だなぁ」
イケメン「何がだい?」ズイッ
兄「お前じゃねーよ! いや、お前も嫌だけどさ!」
天然女「あ、兄くん後ろなんだ?、よろしくね?」ニコニコ
兄「うん、よろしくな」
兄(この天然女は、ぽわぽわとした癒し系だ)
兄(だが、その八方美人っぷりが気に喰わない。あくまで俺の好みなんだが)
兄(あいつと重なって見えてしまうんだ)
兄(はやく夏休みに入らないかな)ハァ
――
ミーンミンミーン 
兄「うえっ、蝉の声が……」
友2「ザ・夏って感じだな」フワァ
友「……」
兄「大丈夫だよ」ニッ
友2「?」
兄「所でさ――」
1,とある廃墟があるんだが……(探検)
2,プール行かないか?(妹友と和解)
3,このハゲにも教えないか?(兄の過去・友の口調変化の出来事)
4,謎男が最高の飯を食べさせてくれるってよ(日常)
安価>>270
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