美希「ハニーひとりだけでいいの」back

美希「ハニーひとりだけでいいの」


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1:
「ただいま、美希」
「おかえりなさい、ハニー」
いつものように軽く言葉を交わして美希の隣に腰を下ろす
今日もいつもと同じような顔――どことなく冷たい表情の美希は顔色を変えない
そんな様子に驚きはせず、むしろ安心した
俺は美希を優しく自分の方へ引き寄せた
少し安心したように美希はなすがまま俺に倒れ掛かるが、その表情は依然暗いままだ
「今日はさ、春香が歌の番組でMVPを獲ったんだ。あとは亜美と真美もついに海外進出するみたいだ」
「そうなんだ……よかったね、みんな」
2:
いつもの日課、帰ったらまずは事務所のアイドルの報告
それに対してこれと言って感情的になるわけでもなく、また惰性で聞き流すわけでもなく
無機質な表情の美希は楽しみに待っているのだ
「……ここでの生活は……もう慣れたか?」
「…うん…美希、ここでハニーと暮らせて幸せだよ」
ほぼ毎日、ここに帰ってきている
それも美希のために
今の美希は昔と違うのだ
美希は―――――足が動かなくなってしまったのだ
―――
――

4:
「ハニー!おはようなのー!!」
「おはよう、美希。今日は元気だな」
「美希はいっつも元気だよ!とくに今日はもっともっと頑張れるって感じ!」
「おぉ、それは期待してるぞ」
大きなコンサートの後、美希は俺のことをハニーと言うようになった
見違えるようにやる気も出てきたし、こちらとしてはありがたい限りだ
星井美希。中学生にして抜群のスタイルと天性の才能を持ち、今となっては知らぬものはいない伝説のアイドル
しかし事務所入りたてはそんな様子を微塵も、いや少しはにじみ出ていたのかわからないが”物がいい”だけに調子に乗っているものとばかり思っていた
7:
実際にレッスンさせてみるとすぐに飽きる、さぼる、投げ出す
これじゃあ結果は目に見えてるなと思うも、いざ本番をやらせてみると完璧にこなす
まさに才能だった。しかしそれにも限界は訪れ、一度の挫折が彼女をこの世界から遠ざけた
俺は必死に説得した。初対面の時には感じた憤りのようなもの、プロデューサーとしてのプライドすべて投げ捨てて
そして彼女の気が変わってくれることを信じ、大規模なライブが行われた
ハードスケジュールだったのにもかかわらず終わった後のこちらに見せた美希の笑顔は今でもしっかりと覚えている
そして今現在、すっかりなつかれてしまったわけだが効率は見違えるように上がり仕事も上々
行く末トップアイドルになる人材であることはこのころから核心へと変わっていた
がその矢先、一つの問題が発生してしまったのだ
8:
「えぇ?うちの他のアイドルもですか!?はいっ!ぜひともよろしくお願いします!」
「どうしたのハニー?今日はこれから歌番組の生放送だよね?」
「あぁ!それが他のアイドルも出られることになったんだ!これは大チャンス…こうしちゃいられない!」
事務所には10人前後アイドルがいる。その中で美希は頭一つ抜けて仕事をこなしていた
しかし今回、他のアイドルにもそのおこぼれと言うべきか否か、チャンスが舞い込んできたのだ
それぞれ活動はしているもののこれといった起爆剤がないため
この機会を生かし、事務所全体で業界の目に付けば将来は安泰であろう
言うまでもなく僥倖。この時俺はそう思っていた
9:
「よし、そろそろ本番だな……っておい、美希どうした?具合でも悪いのか?」
「な、なんでも…ないの。そろそろ時間だよね、頑張ってくるの!」
「おう、全力で頑張ってこい!」
本番前の美希の目が一瞬曇ったのを俺は見逃さなかった
他のメンバーも着々と準備を進めているのがわかったがこの時は何が起きたか深く考えることはしなかった
そして本番。美希を中心とした事務所全体のパフォーマンスは素晴らしいもので、スタッフたちの反応もよかった
だが終盤、事件は起こってしまった
「きゃっ!」
バタン!という音が短い悲鳴の後につながってスタジオに響く。すぐさま音楽にかき消されるが、その音楽もすぐに止んだ
10:
「み、美希!」
「だ、大丈夫だからハn…プロデューサー!」
流石に生放送だ、ハニーと呼ぶことを躊躇ってくれたようだが、それどころではない
一見足をくじいたように見えるが……
「とりあえず控室へ!」
番組に関してはスタッフさんもうまく対応してくれたようで、軽く一礼を済まし、急いで控室へ向かった
「な、なんだこれ……」
俺は急いで控室に戻り、長座の姿勢で座っている美希をほぼ全員が囲むように立っていたが、一瞬にして血の気が引いた
美希の足が靴に収まりきらないほど真っ赤に腫れ、みただけでいかにひどいか理解できた
12:
「ど、どうしてこんなことに……美希、一体どうしたんだ?」
「…………」
俯いてしまい何も答えない美希。それならばと
「誰か、美希が苦しそうにしてるところを見てたって人はいないか?」
「…………」
あろうことか誰も反応しない。すると俺はここで気づいてしまった
誰一人として美希をいたわろうとしないことを
思い返してみれば美希以外のオファーの際、多少美希が中心であることを強調しすぎたかもしれない
だからと言って、こんな逆恨みのような、あろうことか仲間を見捨てるなんということがあってよいものか
と考えているうちに、恐ろしい結論を導きだしてしまった
14:
「……お前らがやったんじゃないだろうな?」
「…………」
「なんで……なんで何も答えないんだよっ!!」
「…………」
「やってないならやってないって……言ってくれよ……」
序盤は怒りに任せて、終盤は想いむなしく、全員が下を向いて何も言おうとしない
こんな時にすべきことはなんだ?結局美希から聞き出すしかないのか?そもそも今一番つらいのは美希だ
今の状況を認めたくなくて、そうであってほしくない思いを片隅に残しながら、美希を抱えて控室を後にした
――

15:
局のロビー。応急措置を済ませ椅子に座らせた美希の隣に座る
美希は相も変わらず俯いたまま、かと思いきややはり少し苦しそうな表情を見せた
「……美希。辛いと思うけど、理由があったら聞かせてくれないか?」
「…………」
「アイドルってこういうこともあって辛いんだ。でもずっと耐えるわけにはいかないだろ?」
「…………」
「もちろん他のみんなもサポートするつもりだけど、まずはお前を助けるからさ」
「…………」
「無理はしなくていい。ゆっくり話してくれればそれで…」
「……嫌…」
「…え?」
「……他のみんなも一緒なのは……嫌…」
「美希……」
16:
どんな表情をしていただろうか
合ってほしくなかった事務所内でのイジメ。原因不明の美希の怪我。
どちらも原因がわかったということで安堵したというには言葉が足りないだろうか
プロデューサーとしてこれほどの屈辱はない
自らがプロデュースしているアイドル同士が痛めつけ合う姿を見るなど目玉をえぐられる思いだ
何よりそんなやつらであったことが残念で仕方がない
もちろん主犯と加担してるやつら、標的にされないために加担する振りをしているやつらいるだろう
しかし、それでもあろうことか仕事中にけがをした仲間を見捨てるとは言語道断であろう
今後はやつらとはぜひとも距離を置きたい。が、それは無理な注文であるだろうし、そんなことをしたらますます被害が拡大する
……だがこんなことをやすやす許しておくわけにもいかない
美希につきつつもあまり目立たない用に今まで通りのスタイルを貫く
だがそれは思った以上に過酷なものだった
そして限界はすぐに訪れたのだ
18:
「ハニー……もう……美希疲れちゃった……」
「美希……そうか…それじゃあ少し休め」
「…………美希…あのさ」
「やめて!」
絞り出すように叫んだと思うと、胸めがけて倒れこむように泣き崩れた
これだけ弱気な美希を見たのは初めてだった
しばらくして泣き止んだ美希は俺にもたれかかったまま離れようとしない
そしてゆっくり話始めた
「……美希ね。思うことたくさんあるの。でも……今言っちゃったら耐えきれないと思うから…」
「……うん」
「もし……もしもう耐えられなくなったらハニーに全部話すね…?」
「……わかった」
「……ごめんね……ごめんねハニー…」
21:
一つ一つ、言葉を伝える美希は本当に壊れそうで
それでもアイドルとして輝く美希が見たいと思う自分が正しいのかわからなくなる
「…………ハニー…」
「なんだ?」
「大好き……大好きなの……」
「そうか……ありがとうな」
「大好きで大好きで……それでも……今のままじゃ辛いのに辛いからハニーに迷惑かけちゃって……」
「何も迷惑なんかじゃないさ。少しでも困ったら俺を頼っていいんだ。甘えていいんだ」
「ありがとう……ごめんなさい……大好きだよハニー……」
27:
そういうと目に涙を浮かべながらそのまま眠りに落ちてしまった
眠っていれば何も苦しむことはないだろう
幸せそうに眠る美希の髪を梳いてやる
もうすでに俺は美希のことを好いているのだろう
平等なんてとっくの昔に壊れていたんだ
徐々に傾いていた自分の中の天秤が音を立てて地に着いた
もう目に見えて美希びいきの生活になりつつあった
だが事務所はそれに驚きもしない。むしろ気づいていたかのように、それが自然と言わんばかりの通常運行
それなのに、なのにもかかわらず目を離すと美希は傷が増えていた
もはや憤りなどはなく、ただただ美希が心配で、愛おしくて。美希を守る自分に価値を見出している頃
ついに美希にヒビが入ってしまう
「ごめんね……ハニー……もう無理……みたい…」
「……美希…?……美希!……おい美希!しっかりするんだ美希!!」
29:
過度のストレスは簡単に人間を砕く
美希は俺に守られていることさえストレスに感じてしまっていたのだろうか
病室に横たわる美希。約1日経った今も目を覚ましてはいない
仕事そっちのけで見守る。事務所のことなど全く意識にない
ただひたすら美希を眺め、祈っていると電話のバイブが作動した
電源を切ることすら忘れていたらしい
「はい。私ですが……はぁ、はいありがとうございます。」
そっけなく返して10秒にも満たない電話は終了する
社長から美希の看病に専念できるよう有給にしてくれるとの話だ
とは言っても元から休みなど眼中にない
美希が回復してくれるまで、何をする気もおきないだろうと自覚していた、とその時
「み、美希!!」
「ん……は、ハニー……?」
31:
柄にもなくその声を聴いた瞬間、抱き着いてしまった
美希はすっかり良くなったようで
「ハニー……甘えん坊さんなの……」
「美希……大丈夫なのか?って大丈夫…じゃないよな…」
「ううん、休んだからもう大丈夫だよ。ただ……」
「あぁ、もちろん話はつけてあるから心配するな。落ち着くまで休暇を取ろう。お前なら復帰しても十分売れるはずさ」
あ、うん。と言ったものの美希の顔はひきつったまま俯いている
危惧していたのはそれじゃないのか?と考えても答えは出てこない
「どうした?他に心配ごとがあるのか?もちろん無理に詮索したりはしないからゆっくり時間をかけて…」
「あのねハニー。もう……ずっとこのままじゃ仕方ないと思うから。」
「そうか……」
その言葉で理解する
美希は順序良く、事を話し始めた
34:
「すっごく……辛いの。話すのも、今思い出すのも」
「あぁ…」
「それでも……それでも、離さなきゃいけないって思ったの」
「うん」
「美希がこんなこと言っていいのかわからないけど、ハニー、落ち着いて聞いてね?」
「あぁ、わかったよ」
まさか美希から心配されるとは思っていなかった
落ち着いて聞くつもりだが憤ることは間違いないだろうと歯を食いしばるように耳を向けた
「えっと、歌番組の時の足の怪我はね、別に事務所のみんなのせいじゃないの」
「えっ?どういうことだ?」
「あの番組ディレクターさんにこの後お食事でもってさそわれて、でも興味ないから断ったら強引に行こうよって言われたの」
「それでちょっと怖くなって、逃げようとしたら腕をつかまれて、必死に振りほどいたら足を捻っちゃって」
「そしたら謝ってくれて、なんとか逃げられたんだけど…」
美希の音しか聞こえてこない
変わらず耳を澄ませる
36:
「本番前になってやっぱり痛み出して、ハニーに言おうかなって思ったけど迷惑かけるの嫌だったからこのまま頑張ろうって思ったの」
「それでも春香が気が付いて、スタッフさんに言っちゃったの。そしたらスタッフさんが……」
『美希ちゃんが出ないってなると厳しいよねー』
「…って言っちゃったの。それを聞いてたのは春香だけじゃなくほとんど全員で…」
「そんな空気になっちゃったらもう出るしかない…って。美希の勝手で他のみんなに迷惑かけたくないって思ったから」
ここまで聞いてまだ脳内の処理が追いついていない
が、質問が脊髄反射的に飛び出た
「じゃあなんでみんな、美希が倒れたときになにも言わなかったんだ?」
「それは……やっぱり美希が倒れちゃったことで番組が台無しになっちゃったし…」
「そんなことだけで…やつらはお前を見捨てたのか?」
「ち、違うの!ただ……みんなはそこまでして美希とお仕事したくなかっただけなんだと思う……」
「何?」
「みんな言ってた……美希が凄いのは認めるけど、そのついででしかないなら自分たちなりに頑張るって」
「そう……か」
38:
ようやく脳が追い付いてきたようで、だいたい話がつながった
が、まだいくつかわからない点が残っている
「それなら……美希が他の人が嫌だっていったのは他の人のためか?」
「うん……」
「なんでそんなわざわざ、自分が悪者になる可能性もあっただろうに」
「ううん、美希もう悪者だよ。でも後悔はしてないの。美希は美希なりに、他のみんなは他のみんななりに頑張っているのに勝手なことしちゃったから」
「そんなこと…」
「美希はね、お詫びのつもりだったの。でもハニーが毎日ついてくれたから、嬉しくって、なのに……なのに辛くって…」
「でもイジメとかではないってことだろ?それならなんで毎日あんな…」
「違うの……違うんだよハニー…。ハニーが事務所で一人になっていく姿を見るのが辛かったの…」
と瞬間、徐々にいつもの働きを取り戻した俺の脳内は演算処理をするごとに熱を帯びていた
美希が孤立する原因となったのはなんだ?俺が他のメンバーを誘ったから?
なんでもない彼女らを疑い、怒鳴り散らした上、一人孤立した美希を連れ出す
挙句の果てには平等というアイドルプロデュースの根本をあっけなく無視し敵と見る
…………敵は俺だったか。主犯は俺だったか。
気が付いた時にはもう真っ白で、いてもたってもいられなくって
気が付いたら―――病室を飛び出していた
40:
「ハニー!」
その声ももう聞こえなくなって、どこへ、どこへ?
何を思って走ってるのか、それすらわからなくて
我に返ったときには暗くなった事務所の前にいた
ゆっくり扉を開ける。なんだろう、すごく懐かしく感じる
一歩ずつ、一歩ずつ、歩いて自分の机の前について軽く撫でる
馬鹿みたいにはしゃいで机がめちゃくちゃにされたこともあった
やたらおいしそうな手作りのクッキーがおいてあることもあった
みんな、みんなが笑顔を持ち寄って俺の周りに集まってきてくれていた
それなのに、それなのに。
その思いでさえ自分の黒い心をさらに黒くするには十分だった
俺の勝手な勘違い。ちょっとした勘違い
美希は本当に素晴らしい人材だ。プロデューサーですら虜にしてしまうんだから
虜になり、盲目になり、自分が本来何をすべきか見失わせてしまう姿はまるで天使か悪魔か?
俺が、この事務所を崩壊させてしまったのか
そう思おうと、思うまいと、澱んだ心は少しも光ろうとはしなかった
41:
立ち上がりまた歩く、歩く
ここは事務員さんが座っていたかなぁ。もう記憶すら曖昧
机に手をやり、少し撫でてその手とは反対に目を向ける
テープで記された”765プロ”の文字だ
この窓って開くのかな、そう思う前に開けていた
風が寒い。ほとんど何も感じない
一旦後ろを振り返る。暗くも、思い出に満ち溢れた事務所は今ではぐちゃぐちゃに塗りつぶされた読めない落書きのような
もう、自分には必要ないもの。何も自分には必要ないのかな
窓から下を覗いて、特にこれと言って思うこともない
もう思考するのも辛い、というかほとんど考えてないに近いのか
長い長い記憶整理は多分数分、いや本当に数時間たってたかもしれない
氷のように冷たくなった自分はそのまま虚空へ倒れ込むように―――――
42:
と、覚醒したときにはものすごい嫌悪感を感じた
なんだ、何をしていたさっきまでの自分は。というかいつの自分だ
ふわふわと浮くような感覚にさいなまれながらしばらくして頭の中に響く声
「…………ニー……」
聞き覚えのあるこの声
愛おしくなるこの声
「……ハニー……」
そうだ、ハニー……ハニーは俺か?俺は………
「ハニー!!」
我に返ると虚空を眺めている俺、と必死に手をひっぱる……俺をハニーと呼ぶ少女
とにかくこの少女の元に帰らねばという潜在意識が働き、直感的に重力にあらがうように体を動かす
もう少し、なぜか体が思うように動かないが既に落ちる心配はないだろう
最後の一押し、ならぬ一引き。本来では少女一人で大の大人を引き上げられるわけなどないのだが
踏みしめる足の感覚、とともに戻ってくる感情。そして視界には――
44:
「は、ハニー…」
ハニーと呼ぶ少女……そうだそうだ。俺がこの世で最も愛し、貴く思い、すべてをささげようと誓った――
ほぼ同時に二人は半ば倒れ込むように事務所の床へ座り込んだ
「美希………どうして……」
美希。そう美希だ。まぎれもなくあの美希だろ?
美希は満身創痍といった様子で倒れ込んだあとも俺にもたれかかっている
「ハニー……辛いよね……美希が、美希があの時言ってればこんなに辛くて苦しい思いをさせずに済んだのにって…」
「何度も、何度も思ったんだよ?でも、そのたびにこうなるハニーのことが浮かんだから…」
「だから……ここに来てくれたのか。俺を助けてくれたのか……」
「ハニー……もう大丈夫。大丈夫なの。みんなハニーのこと恨んだりしてない。事務所だって大丈夫だから、ね?」
そういう美希の目からは涙がこぼれそうで
愛しい、これほどに愛しいと想えることがすごいと我ながらに思う
みえる限りの美希をくまなく眺める。あぁ、美希だ。俺の知っている美希だ
生きていることを実感する。自殺未遂の死の恐怖が遅れてきたんだろうか
と、みていると気が付いた。傷がどこにもない。どこにもないじゃないか
そうか。あの傷は……美希が。俺をこうさせないために……
そう思った瞬間堰が切れた
46:
「美希…美希!!ごめん!……ごめん!!ここまで苦しませて、俺のために悩ませて」
「俺が、俺じゃなくなる気がして。事務所が俺の居場所じゃなくて敵の本拠地みたいで」
「怖い。怖いんだ。本当に、でも美希が、美希の声が聞こえたから」
「俺、戻ってこれたんだ。そう思った、また美希と苦しんだり辛い思いをしたりしたとしても」
「美希がいない俺なんて考えられないんだ」
「俺は……星井美希、お前を愛してる」
「だから…こんな俺だけど、最後まで一緒にいてくれるか?」
「…………もう苦しんだりするのはいや、かな」
「でも。ハニーがいないなんてつまらないもん。だからこれまでの責任として、これからも一緒にいてくれるよね?」
「美希……美希ぃ!うわあああああああああああああ!」
所謂洪水の涙とか形容されるのはこういうことなのか
全身の水分がという表現もあながち大げさではない
泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、とにかく泣いて
今までのことを自分の中で水に流したくて。もちろんそんなことじゃ消えはしないし消えたら困る
でも今は美希のぬくもりにすがっていたくて、そのまま眠りに落ちた
―――
――

48:
美希の足が動かなくなったと知ったのは次の日の朝
無理な衝撃とショックによる症状は原因不明
まあ原因は大まかに予想がつくが、それでも少しばかりの地獄を味わった俺たちには対したことじゃないと思っていた
だって俺たちの傷が癒えたころにきっとよくなる。そう信じてたし妙な核心があった
毎日美希の病室に顔をだす、というかやはり帰ってきたの方が正しい気がする
ここから出勤して、帰ってきてここで寝てしまうことがほとんどだ
プロデュース業をやめることも覚悟だったが、美希の意見で続けることにした
美希が言った通り皆許してくれて、今では問題なく仕事ができている
美希はその状態だからアイドルは休んでいるがきっと復帰できると信じて
今日もまた同じような顔をした美希、その冷たく暗い顔は
きっとトラウマになってしまっているからだろう
俺が来るとちょっとバツの悪そうな顔をするのは、本人が言いはしないが俺のあのシーンがフラッシュバックするからだと思う
それでもなんとか笑顔で、言葉は心から感謝をこめて。対応してくれる美希と俺は幸せかと言えば幸せだと思う
今日はいつもと違う話題を振ってみた
49:
「いつまでも同じ場所にいると、症状がよくならない気がするんだ」
ちょっと目を見開いたがすぐ元通り無機質な表情で
「うーん、どこかいい場所があるの?」
「その前に、だ。」
懐から四角い箱を取り出す
「あと1年あるけど、むしろ完全な状態で結婚したいからどうかなって思ったんだ」
と言うと同時に箱を開けて中身を見せる
美希はこれと言って表情を変えない、むしろより表情が硬くなったか
「そう……ありがとう…すごく嬉しい…」
「俺……いまだに忘れてないよ。でも、忘れなくてもよくなる気がするんだ。新しい俺たちの家にいかないか?」
必死に稼いで1年間。美希以外に割いた時間はごく少数だったため自然と給料は最低分以外残るというシステムで
新しい住まいは車椅子でも快適に過ごせるようなものだ
アイドルに戻ったときの設備なども充実させた
何よりも、俺との時間をより増やしてトラウマのショック療法という名目が一番強いのだが
51:
「美希……自分でもなんだかわからなくなるの……手がちぎれるように痛くなって、空気を掴んでたりするのが自分でも嫌で…」
「そしたら俺が手を握っててやる。美希にしてもらったように、今度は俺がこっちに呼び戻すから」
「ハニー……」
「全部俺のせいだっていうことの償いもあるけど、お前と一緒に過ごす時間がもっともっと欲しいんだ」
というと半ば強引に唇を重ねる
そういえば初めてだったかな、と変に冷静な俺をよそに美希に変化が
「ハニー……」
ポロポロと涙を流している
感情が封じ込められたかのような先ほどまでとは一転、子供のようになきじゃくる美希を見て一瞬ひるんだが
「大丈夫、大丈夫だから。」
そういって抱きしめる
が、美希は振り払い、目をごしごし擦って何回か瞬きをした後、こちらを見て
とびっきりの笑顔を見せた
「ハニー…!!笑えるように…なった……あはっ。夢みたいだね…王子様のキスで呪いが解けちゃったみたいに…」
「……お前の笑顔を見た瞬間恥ずかしながらも同じことを思ったよ」
52:
擦って赤くなった目から再びこぼれだしそうな涙
すると美希は思い立ったように自らの足にかぶさっている布団を剥ぎ取り
下半身を手を軸にくるりと回して、空中に浮いた両足を一瞬みて、その後俺を見る
「もしかしたら、もう1年いらないかもね?」
と言うと徐々に足に力を入れている様子―――かと思いきや、すっと立ち上がる美希
それを見て軽く笑みがこぼれる
「お前、1年ってそういう1年じゃないんだぞ。しっかり待っててくれよな」
ちょっと馬鹿にしすぎたかな
わかってるよっ、と突っ込みをいれ、ピョンピョン跳ねて飛びついてくる美希の笑顔は俺の知ってたもので
「美希、ハニー一人だけでいいの」
「ん?」
「って足が動かないときずっと思ってた。ただお話を持ってきてくれて、好きな人と過ごせるだけで幸せだなって」
「うん」
「でも、今は違うの。やっぱり美希はみんなと一緒に楽しくすごして、もっともっとキラキラしたいの!」
「んーでも結婚するならアイドルは厳しいんじゃないか?」
「あ、そういえばそうなの……でもなんとかなるって思うな!」
53:
おいおい、ってこいつ何でもできるからな
一度伝説になったアイドルだ、やりかねない
そんなことを思いながらふといじわるをしたくなった
「お前の”ハニー”ってのは美希の言うみんなか?」
と、ちょっとやってやった顔をするが、美希も負けじといい顔で
「そうだね、ハニーはみんなかも!」
内心え、とちょっと焦る。だがすかさず
「もうハニーは、旦那様だもんね!あなたっ!!」
と返される。こりゃ一本とられたなと思いながらも
「でも不思議と、ハニーの方がしっくりくるんだよな」
「あはっ!美希もちょうどそう思ってたところなの!というわけでこれからよろしくね?マイハニー♪」
やっぱり、そうだな
ハニーは俺一人で十分だ
Fin
54:
おつつ
55:

美希が幸せになるSSがもっと増えて欲しい
56:
乙なのー
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