亜里沙「School idol diary!」back

亜里沙「School idol diary!」


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1:
◆ラブライブ、絢瀬亜里沙のSID風SSです
◆内容は全て私の創作です
◆なおちょいちょい落書きが入ります。ご了承ください
◆更新がすごく遅いです。ご了承ください。
【前作】
雪穂「School idol diary?」
3:
μ's活動日誌
本日のお当番 ・絵里・
こんにちは!
綾瀬亜里沙です!
おねえちゃんといつもなかよくしてくれてありがとうございます!
今回、μ'sの活動日誌はお姉ちゃんが当番ですが、雪穂が書かせてもらったなら亜里沙も書きたい!と言ったらなんと書くのをゆるしてくれました!
ですので今日だけ、亜里沙の書く日誌をごらんください、頑張ります!
4:
School idol diary ・絢瀬亜里沙・
01.亜里沙と雪穂
「亜里沙ー!ごめん、待った?」
「大丈夫!今来た所だよ」
「ごめんねー、お姉ちゃん起こすのに時間かかっちゃってさー!」
「あはは、でも亜里沙もお姉ちゃんに起こしてもらわないと起きれないし、気持ち分かるかも」
「分かっちゃだめだよあんなの!」
「もう、雪穂はお姉さんのこと大好きなんだね」
「あっ!もうこんな時間!亜里沙、遅刻しちゃうよ!」
5:
「じゃ、行こうか」
「うん、それでね...」
雪穂はそう言って歩き出す。
歩き出してもまだ話し足りないみたいで、嬉しそうな顔でお姉さんへの不満を並べてる。
雪穂は、お饅頭屋さん穂むらの娘さんで、亜里沙の大切な親友です。
いろんなことを教えてくれるし、世話焼きでハキハキした性格で、亜里沙は雪穂が大好き!
そういえば、日本に来て一番最初に出来た友達は、雪穂だったっけ
雪穂のお陰で、亜里沙は今こんなに楽しく過ごせてるんです
8:
◇◇
私がロシアから日本にやって来たのはちょうど3年前。中学1年生の頃。
お姉ちゃんはもっと前から日本にいたんだけど、私も日本が大好きだし、おばあちゃんの住んでいた国が知りたかったから頼んで来させてもらったの。
今思うと、雪穂ともμ'sとも出会えたから、日本に来て本当によかったなーって思ってます。
10:
私が編入した中学校は音ノ木坂中学校
雪穂のお姉さんも亜里沙のお姉ちゃんも通ってた小さな学校でした
「今日からみんなと一緒のクラスになる、絢瀬さんだ。」
「ロシアからはるばる来られたらしい。みんな仲良くな」
「はーい!」
初めて接する日本の人達は、みんな元気で、笑顔で
でも亜里沙は緊張してほとんど何を言ってるか聞き取れませんでした...
12:
「え、えっと...絢瀬、亜里沙で、す...。」
頑張って、お姉ちゃんに教えてもらった言葉でなるべく大きな声で自己紹介をした。
でも、終わった途端に教室が更に騒がしくなる。
「すごい!金髪だよ!」
「馬鹿、あれはブロンドだろ」
「片言だよ、本当に外国人なんだ!」
あ、あれ?間違えちゃった?
亜里沙は、自分が何を言われてるか分からないし、みんなに見られて緊張して、正直かなり怖かったのを覚えています。
14:
それで、自己紹介が終わったら女の子も男の子もみんな亜里沙の所に来てみんな口々に何か言って...
「ねえ!ロシアってすごい寒いんでしょ!」
「すごい!髪の色、これなんていうの?」
「目が蒼いよ!綺麗!」
いくつか単語は聞き取れたけど、全然何言ってるか分からなくて、どう答えたらいいのか分からなくって...
亜里沙は初日からみんなの前で泣いてしまいました...
16:
泣いちゃったのは亜里沙が悪いんだけど、その日は先生まで入ってくる大事になっちゃって...
きっとみんなには変な奴って思われたにちがいありません
次の日、亜里沙は学校に行くのがすっかり嫌になってしまいました。
「亜里沙、何があったのよ?お姉ちゃんに言ってごらん?」
「...わかんない」
「わ、わかんないじゃ分からないでしょ...」
「...学校怖い。行きたくない」
「そんなことないわよ。日本の人はみんな良い人よ?」
17:
「...でも、何言ってるか分からないの」
「じゃあ最初は「私は日本語が分かりません!」って言えばいいのよ?みんな分かってくれるはずだから」
「...本当?」
「本当よ、それでもう一回ゆっくり言ってもらえばいいの。だからほら、今日もお姉ちゃんが一緒に行ってあげるから」
「うん!」
お姉ちゃんは亜里沙を優しく慰めてくれて、私はお姉ちゃんと手をつないで学校まで行きました。
19:
でも、その日は学校に着いても朝から誰も話しかけてくれませんでした...
今考えると、昨日いきなり泣き出した子に朝から話しかけられる人なんてあんまりいなくて当然だと思うんだけど
亜里沙は教室で一人ぼっちになっちゃって、朝お姉ちゃんと学校に来た時はあんなに楽しい気分だったのに、どんどん気分が暗くなって...
一人で居る時はロシアの友達に会いたいとか、早くお姉ちゃんと帰りたいとか、そんなことばっかり考えてました。
でも、お昼休みの時間に男の子が一人やってきて亜里沙に話しかけてくれたんです。
20:
「ねえ、絢瀬さん!」
「...えっ、亜里沙?」
「うん!今日朝登校して来る時さ!一緒にいた人いたでしょ?あれ誰なの?」
話しかけてくれてとっても嬉しかったけど、嬉しすぎて緊張しちゃって、言葉が出て来ない
どうしよう、どうしよう
なんか言わないと、なんか...
「えっと...あの」
「わ、私は日本語が分かりません!」
21:
咄嗟に出てきたのはお姉ちゃんに教えてもらった言葉
ち、違うのに
ちゃんと聞き取れたのに
お姉ちゃんだよって一言いえばいいだけなのに
「...あ、そっか、ごめん」
男の子はきまりの悪そうな顔で愛想笑いをして席に戻って行きました
「...うう」
その日は結局、日本語が分からないって宣言しちゃった亜里沙に話しかけてくれる人がいるはずもなく、ずっと一人ぼっち
とってもつまらない一日でした...
ーー
ーーー
ーーーーー
22:
「ちょ、ちょっと亜里沙?歩くの早くない?」
「...」
次の日の朝。
私はお姉ちゃんよりも早くずんずん歩きます。
地面を見て、大股でずんずんずんずん
「亜里沙?なにかあったの?
昨日帰って来た時から元気なかったけど...怒ってるの?」
「...怒ってないもん」
「もうちょっとゆっくり歩かない?」
「歩かないもん」
23:
「も、もう、亜里沙...」
「今日は亜里沙一人で学校に行く!」
「...えぇ?」
お姉ちゃんに教えてもらったように言ったらこんなことになっちゃったんだ
お姉ちゃんと一緒に学校なんて来たからあんなこと聞かれたんだ
それで答えられなくて一人ぼっちになっちゃったんだ
「一人で行くから!」
「で、でも亜里沙、ここからの道分かるの?」
「分かるもん!」
お姉ちゃんを置いてまたずんずん歩く
お姉ちゃんは後ろから何か言ってる
24:
心配するお姉ちゃんを追っ払って自分一人で中学校を目指したけど
あの時の私は、不満とか怒りに振り回されて全然現実的に物事を考えてなかったんです
実際は2、3回通ったことしかない道を覚えてるはずがなくて
結局亜里沙は
「...ここどこ?」
普通に迷ってしまいました。
携帯の時計をみると、もう少しで遅刻の時間
「どうしよう...お姉ちゃんに連絡すれば来てくれるだろうけど...」
さっきまでうっとおしかったはずのお姉ちゃんに会いたくて仕方ない
でもこの時間じゃお姉ちゃんまで遅刻しちゃう
自分の勝手でお姉ちゃんに迷惑かけたくない...
25:
「...う」
また涙が出てくる
どうしよう
周りの人に道を聞こうにも、いるのはみんな日本人だ
日本語で説明してもらっても、分からないに決まってる
また、泣き出しちゃったりして変な奴だって思われるに決まってる
でも...このまま家にも着けなかったらどうしよう
もうお姉ちゃんに会えないと思って、涙が一粒、道に落ちた時でした
「絢瀬さん?」
26:
「...えっ?」
「絢瀬さんだよね?同じクラスの」
私に後ろから話しかけて来たのは、同じ制服を来た茶髪でショートの女の子。
思わず振り返ったけど、泣き顔を見られたって思ってすぐにまた前を向いちゃいました
「あ、あれ?なんでこっち向いてくれないの?」
「あっそうか、日本語分からないんだっけ、えー...と」
「ハロー、えっと、ハウマッチ?じゃない、ハウアーユー?」
「...わかる?」
女の子は不安そうに言ってきた
27:
「あの...亜里沙のいた国は英語じゃなくて」
というか英語としてもめちゃくちゃだったけど...と言い終わる前に女の子が大声で叫ぶ
「ああーーー!
忘れてた!遅刻しそうだったんだよ!」
「絢瀬さん!ホラ!忙がないと!
うちの担任怒ると怖いんだから!」
「もう!お姉ちゃんがいつまでも寝てるから私まで巻き添えだよお姉ちゃんの馬鹿ー!」
「えっ、わぁっ」
女の子は強引に私の手を取って走り出す。
いきなりでびっくりしたし、力が強くて腕が取れちゃいそうだったけど
...なんだか、手を握ってもらったらお姉ちゃんを思い出して、少し落ち着いた
28:
「二人で遅刻なんて、感心しないな」
走ったけど結局遅刻してしまった
私達に先生が言う
「特に高坂!お前は遅刻何回目だ?あんまり多いと進路に響くぞ!」
「絢瀬も!編入して二日で遅刻とは何事だ!先生はこの先が心配だ」
私達は二人で職員室に呼ばれて怒られてしまった。
他の先生がクスクス笑ってて恥ずかしい。
隣を見ると、高坂さんと呼ばれた彼女が「あれはお姉ちゃんが...」とぼやいてる
ふと、いい方法を思いついた
「あのー先生?」
29:
「ん?なんだ絢瀬?」
先生がこちらを向く
「私あの、まだ道に慣れていなくて、道に迷ってしまって」
「それは私が悪いんですけど、彼女は私を助けてくれて、遅れちゃったんです」
「彼女は悪くないと思うんです」
怒っていた先生の表情が少しずつ元に戻って、高坂さんの方に顔を向ける
「本当か高坂?」
「あっ、そ、そうなんですよぉ!
彼女困ってたから、ほっとけなかったっていうか?」
「...なら初めからそう言え」
30:
先生はすっかり普通の顔に戻って、怒ったことを謝って私達を解放してくれた
「はぁ、助かった・、ありがとう絢瀬さん」
「えへへ、ちょっと先生に悪いことしちゃったかな」
そう言うと
高坂さんが声をあげて笑う
「本当だよ!
日本語分からないとか言っといてさ、ペラペラだったじゃん、アドリブまで出来るとか聞いてないよ・」
「で、でも助けてもらったのは本当だし...」
「...私なんかしたっけ?」
「ほ、本当に迷っちゃってたから...」
「へえ...以外と天然なんだね」
「日本には、人工の人間もいるの!?」
「ぶふっ」
31:
高坂さんがいきなり吹き出す
「そういう天然じゃないし!
はぁ、日本語喋れるのになんで誰とも喋らないの?こんなに面白いのにもったいないよ」
「えっと、亜里沙はその、日本語、少しなら喋れるんだけど、聞き取るのは苦手で」
「難しい単語とか分からないし、初対面とかで緊張してると全く聞き取れなくなっちゃうから...」
「へえ、じゃあなんで私とは話せるの?」
「...簡単な言葉しか使ってないから...かな?」
「それ褒めてる?」
高坂さんが私をじっと見る
32:
「あっ、いや、親しみやすいからかも?何故か緊張しないし!」
「親しみやすいか...まあ悪い気はしないからいいけど」
「じゃあさ、絢瀬さん。
これから一緒に登校しようよ
道分からないんでしょ?」
「え?」
「そんで、お喋りしながら登校するの。絢瀬さんも慣れれば誰と話しても緊張しなくなるんじゃない?」
「私も予定があればお姉ちゃんほっといて早く家出れるし、一石二鳥だよ。日本語のことも教えてあげるから!」
33:
心がじーんと熱くなる。
高坂さんは、なんで初対面の私にこんなによくしてくれるんだろう。
今日あったばかりなのに、他の人は亜里沙に話しかけてもくれなかったのに。
...いや、違う。
答えなかったのは亜里沙だ。
話しかけられても、相手の話を聞こうともしなくて、自分がどう返すかばっかり考えて。
クラスのみんなも
あの男の子も
...お姉ちゃんも
みんな亜里沙に話しかけてくれてたし、亜里沙の話を聞こうとしてくれてたんだ。
『そんなことないわ、日本の人はみんないい人よ?』
お姉ちゃんの言うことは、正しかったんだって、雪穂に会って初めて気づいたんです。
34:
「うん!ありがとう!嬉しい!
よろしくね!高坂さん!」
「あー...その高坂さんっていうのやめない?」
「雪穂って呼んでよ。私も亜里沙って呼ぶからさ」
「...うん、よろしくね!雪穂!」
「よろしく。亜里沙」
私達は笑いながら握手をした。
こういう所は万国共通。
「それでね、雪穂。
早教えてほしい日本語があるんだけど...」
ーーー
ーーーー
ーーーーー
35:
「お姉ちゃん?た、ただいま」
「...あ、亜里沙。おかえり」
「お姉ちゃん...怒ってる?」
「お姉ちゃんは怒ってないわよ」
「...そう」
お姉ちゃんが怒ってないっていうのは本当っぽいけど、代わりにひどく落ち込んでるみたい
当たり前だよね...
朝にあんな怒り方しちゃったんだもん
36:
「えっと、お姉ちゃん...?」
「なあに?亜里沙」
「えっと...」
『え?悪いことしちゃった時?
ああ、それは簡単だよ』
『謝りたい時でしょ?そういう時はね、こう言えばいいの』
「"ごめんね"」
そういうと、お姉ちゃんはこっちを向いて、目を丸くした
37:
「亜里沙...」
「あのね、今日できた友達に教えてもらったの。悪いことをしちゃって、謝りたい時に日本だとこうやって言うんだって」
「だからお姉ちゃん、ごめんね?
亜里沙、お姉ちゃんに八つ当たりしちゃってたの」
「お姉ちゃんは亜里沙の話を聞いてくれようとしてたのに、ずっと無視してごめんね」
そこまで言うとお姉ちゃんが優しく抱きしめてくれた
「そんな...私の方こそごめんね。亜里沙が嫌な思いしたのに気付けなくて...」
「教えてくれた友達、いい子ね。
大事にするのよ?」
私は元気に頷きました
38:
「でもなんでお姉ちゃんもごめんねって言うの?お姉ちゃん悪いことしてないよ?」
「ふふ、日本にはこういう言葉があるのよ」
「"喧嘩両成敗"。喧嘩したらどっちにも原因があるからどっちも謝らなきゃいけないの」
「喧嘩両生類...ハラショー」
「亜里沙。喧嘩両成敗よ」
こうして私達は雪穂のお陰で仲直り出来ました。
後に雪穂の仲直りを亜里沙が手伝ってあげることになったりもするんだけど、それは別のお話。
39:
◇◇
「でねー、私ちゃんと昨日の夜言ったんだよ?早く寝ないと起きれないぞって....」
「それで...亜里沙?」
「亜里沙ー?聞いてる?」
「うん、聞いてるよ」
「よかった、亜里沙って時々ぼーっとしてるから、なんか考え事でもしてるのかなって」
「うん、雪穂のこと考えてた」
「え?私?なんで」
「雪穂、色々ありがとうね」
「...私なんかしたっけ?」
「したよー」
「ふーん、まあ悪い気はしないからいいけど」
40:
雪穂はそういってまた話を続ける。
亜里沙はこうやって雪穂の話を隣で聞いてるのが大好き。
雪穂がこうして色々話してくれるから、亜里沙は緊張せずに誰とでも話せるようになったし、お姉ちゃんと仲直りもできたから。
なにより、側にいてくれることがとっても嬉しい!
知らない日本語もまだまだ沢山ある亜里沙だけど、これからもいっぱい教えてね?
よろしくね雪穂!
亜里沙と雪穂 ーおしまいー
61:
02.自慢のお姉ちゃん
皆さんには、尊敬する人っていますか?
亜里沙にはいっぱいいます!
お母さんに、おばあちゃんに、雪穂に、μ'sの皆さん...
でも、私には特別尊敬してる人がいて、その人は亜里沙にとって最高のアイドルで
賢くて、優しくて、強くて、かっこよくて...
いつだって亜里沙の一番の自慢なんです!
62:
◇◇
「お姉ちゃん...」
「あら亜里沙、起きたのね」
ある朝のことです
亜里沙が目をこすりながら起きると、すこし早く起きていたお姉ちゃんが朝ごはんを作ってくれている最中でした
亜里沙は料理中のお姉ちゃんの背中に抱きつきます
「ちょっと、どうしたの亜里沙」
「なんでお姉ちゃん先に起きちゃうの...」
「あら...ごめんね。怖かった?」
「怖い夢見た...」
「あー、ごめんごめん」
お姉ちゃんが頭をぽんぽんと撫でてくれます
63:
「でも亜里沙、もう中学生でしょ?そろそろ一人で寝れるようにならないと駄目よ?」
「うぅ...分かってるけど」
「雪穂ちゃんとかが知ったらきっと笑われちゃうわよ?1人が怖いだなんて」
「うぅ...」
そうなんです
恥ずかしいことなんだけど、亜里沙は一人になるのが苦手なんです
小さい時からお姉ちゃんがそばにいてくれたせいで、そばに人がいないとすぐ不安になってしまうんです
64:
うっすら記憶に残ってるのはまだ亜里沙が小学校に入ったばっかりの頃
かくれんぼをしていて、亜里沙はみんなに見つからないようにすごく見つかりにくい場所に隠れてたんだけど...
そのまま誰も見つけてくれないまま夜になっちゃって、亜里沙は一人で大泣きしてしまいました
結局見つけてもらって、帰りが遅くなったことでお父さんとお母さんに怒られたことまでは覚えてるけど...
そういえばあんな所に隠れてた亜里沙は、どうやって見つけてもらったんだっけ?
今となっては記憶が少し曖昧だけど、暗いし一人ぼっちだし、とってもさみしくて怖かったっていう事だけは忘れられません
65:
今はさすがにいつもお姉ちゃんがいないと駄目...なんてことはないけど
やっぱり寝る時はお姉ちゃんと一緒
怖い夢を見たときに、そばにお姉ちゃんがいないととっても不安になっちゃうから...
そんなことを考えていると、お姉ちゃんが亜里沙の顔を覗き込んでこんなことを言いました
「ま、亜里沙は怖がりだものね。まだ当分一人で寝るのは無理かしら」
「そ、そんなことないもん...!」
「じゃあ今日から別々に寝れる?」
66:
「え...」
おもわずこぼれる間抜けな声
お姉ちゃんは意地悪くにやにや笑って亜里沙を見ています
そんなの無理に決まってる...
夜中に怖くなるのは分かってるし、結局お姉ちゃんの布団に入っていくのなんて簡単に想像できちゃうもん...
でも...でも
「い、いいよ!今日から亜里沙は一人で寝るから!」
大きな声で、亜里沙は言いました
67:
「え?本当?本当に一人で寝れるの?」
言ってしまった亜里沙を見てお姉ちゃんは目を丸くします
きっと亜里沙がこう言うなんて思ってなかったんです
亜里沙自身も言うと思ってなかったけど...
「そうだよ!亜里沙だってもう中学生だから一人で大丈夫だもん!」
言ってしまった以上もう引けません
亜里沙は喋り続けます
お姉ちゃんはというと、「...そう」とだけ言ってまた亜里沙の頭を撫でてくれました
69:
お姉ちゃんはいつも亜里沙を助けてくれます
強くてかっこよくて、亜里沙みたいに苦手なものなんか一つもなくて
だからせめて、寝る時くらいは亜里沙もお姉ちゃんみたいにしっかりしたいと思ったんです
尊敬するお姉ちゃんみたいになれるように、まずはその第一歩として!
胸の中で決意を固めて、お姉ちゃんがテーブルに運んできてくれたトーストをかじりました
75:
◇◇
雪穂「お姉さんみたいになりたい?」
亜里沙「うん。雪穂はどう?」
学校でのお昼の時間
私は今日の覚悟を雪穂に打ち明けていました
お姉さんがいるって点で雪穂は同じ立場だから、相談に乗ってもらおうと思ったんです
雪穂「うーん...私かー...」
雪穂「どっちかというと...お姉ちゃんみたいにはなりたくないなっ...ていうか」
亜里沙「え?そうなの?」
雪穂「あんまり積極的にお姉ちゃんみたくなりたいとは思わないかな...」
そういう雪穂の顔は、何を考えているのか少し引きつっています
76:
亜里沙「でも雪穂のお姉さんすごいよ?μ'sを作って、学校も救って...亜里沙は憧れちゃうな」
雪穂「いやそれはすごいけどさ!
亜里沙はマイナスの面を見てないからそう言えるんだよ!」
亜里沙「マイナスの面?」
雪穂「そう!
家に帰ったら煎餅かじってグータラして、お腹出して寝て!とてもじゃないけど憧れるのは無理だよ!」
亜里沙「そ、それは...」
確かに雪穂の気持ちも分からなくもない...かも
77:
雪穂「その点亜里沙のお姉さんはあれだもんねー。そりゃ憧れるのも仕方ないよ」
亜里沙「うん!お姉ちゃんはすごいよ!」
雪穂「お腹出して寝たり階段ですべってお尻打ったりしないでしょ?」
亜里沙「そ...それはさすがに...ないかな?」
雪穂「だよねー、いいなぁ!
ウチのお姉ちゃんは本当、私がいないとダメだからさー!」
雪穂「まあダメダメな所もお姉ちゃんらしいといえばらしいんだけどね。そこに助けられることもあるし」
雪穂は少し照れ臭そうに言いました
78:
お姉ちゃんは私がいないとダメ...かぁ
亜里沙には一生使うことが無さそうな言葉です
雪穂はお姉さんに頼らずに、むしろ助けてあげるなんてすごいなぁ...
亜里沙も見習って今日は頑張らないと
「よし!頑張るよ!」
「おお、なんか亜里沙気合い入ってるねぇ」
79:
◇◇
ポツリ、ポツリ
雨が降ってきたのは、ちょうど亜里沙達が下校しようと昇降口から出るときでした
最初はポツポツと音を立てるだけだったのに、あっというまに大雨になって今ではザーザーという音で隣の雪穂の声が聞き取りにくいくらいです
「あちゃー、タイミング悪いね。
傘持ってきてよかった」
「本当だね。女心と山の空って言うもんね!」
「亜里沙、珍しく言葉は合ってるけどここは山じゃないよ」
80:
雪穂と雨が弱まるまで昇降口の軒下で待っていると、ポケットのなかで携帯が震えました
「もしもし?お姉ちゃん?」
「あ、亜里沙?すごい雨だけど大丈夫?迎えに行こうか?」
「大丈夫だよ!雪穂と帰る!」
「そう、じゃあお姉ちゃん、雨も強くなってきたし今日は生徒会で遅くなるから。お留守番できるわね?」
「えっ生徒会...?」
そんな、夜も一人で寝るのに帰りが遅くなるなんて...
でも、ここでわがまま言うわけにはいきません
「だ、大丈夫だよ!お仕事頑張ってね!」
「うん、じゃあね亜里沙」
81:
「なんだって?」
「お姉ちゃん今日帰りが遅くなるみたいで...」
「おー、さすが生徒会長。
忙しいんだね」
「うん...」
「...なんか元気ないね。寂しいとか?」
「!? ち、違うよ!亜里沙は一人でも平気だよ!雪穂、勘違いもはだはだしいよ!」
「それを言うなら"勘違いも甚だしい"だけど...ふーん」
82:
「まあ確かに家族のいない家ってちょっと楽しいよね」
「そ、そうなの...?」
「ウチはいつもお姉ちゃんがうるさいからさー、たまにはいない方が楽だよ。あ、雨弱まってきた」
「本当だ」
「行こうか亜里沙」
「うん」
やっぱり雪穂はすごいなぁと思いながら、私達は帰路につきました

ーーー
ーーーーー
83:
「じゃあね亜里沙」
「うん、雨強くなってきたし気をつけてね」
「大丈夫だって、バイバイ」
「はあ...」
雪穂と別れて、家のドアの前に立ちます
ついについてしまった誰もいない家
もちろん平気だけど...平気だけど
ちょっぴり怖いって気持ちが顔を出します
84:
いやいや、亜里沙は一人でも平気でいれるようにならないと駄目なんです
決心して家に入ると、誰もいない家は少しひんやりとした空気
それに雨の日でいつもより薄暗くてちょっぴり不気味でした
亜里沙は大きな声でただいまを言うと、少し急ぎめで部屋に上がります
大丈夫
こんな日のために亜里沙には秘策があるんです
85:
まだ夕方だけど電気をつけて
テレビもつけて
CDプレイヤーも出してきてμ'sの曲を流します
これで完璧!
お姉ちゃんがいなくっても、こうしてればさみしくないし怖くもないんです
このままちゃんと待っていればお姉ちゃんはきっと亜里沙のことを見直してくれます
お留守番くらい、亜里沙はちゃんとできるんです
これくらい平気でできないとお姉ちゃんみたくはなれません
86:
しかし、いくら賑やかな空間を作っても
亜里沙の不安は消えません
ここでお姉ちゃんが隣にいて頭を撫でてくれればすぐにでも元気になるのに...なんて思っちゃったりして
はぁ、はやくお姉ちゃん帰ってこないかな
そんなことを考えながらテレビを眺めていると、窓の外が突然ピカッと光りました
すっかり暗くなった外に突然電気がついたみたいに
一瞬だけピカッ
87:
「きゃっ!」
反射的に手を耳に当て、うずくまる体勢になる亜里沙
でも、耳を抑えても恐ろしい音は手を貫いて簡単に聞こえてきます
ピシャーン!
ゴロゴロ...ゴロ...
雷です
亜里沙はこれが怖くてたまりません
ただでさえ不安なのにこんなのがあったらお留守番なんてできるはずない!
亜里沙はそばにあった毛布に潜って耳をおさえました
88:
CDプレイヤーの音量を上げて、頭の中には出来るだけ楽しいことを思い浮かべます
雪穂とこの前遊んだとき...μ'sのライブを観に行った時...穂むらのお饅頭をご馳走になった時...
必死に思い出を引っ張り出していると、また外がピカッと光りました
そして次の瞬間
ピシャーンという物凄い音が亜里沙の鼓膜を揺さぶるのと同時に、目の前が突然真っ暗になってしまいました
89:
楽しい思い出は突然恐怖に覆い尽くされてしまいました
どうしようどうしよう
明るかった部屋の電気もテレビも消えてしまって、CDプレイヤーもだんまりです
突然の闇と止まらない雷の音で、亜里沙は怖くて怖くてたまらなくなってしまいました
やっぱり一人は怖い
そばに誰もいないと寒いし寂しいし声も自分の物しか聞こえない
私はやっぱり、一人ではなにもできません...!
90:
真っ暗な部屋で毛布に包まって
まるでミノムシみたいな格好で亜里沙はぷるぷる震えていました
雷が落ちるたびに悲鳴をあげて、涙も滲んできます
一体どれくらい時間が経ったんだろう
あとどれくらいこうしていればいいんだろう
電気が消えて、すっかり暗くなった家はまるで自分の家じゃないみたいに不気味で、亜里沙はとてもじゃないけど毛布から出ていける気がしません
95:
頭の中でひたすらお姉ちゃん早く帰ってきて!と呼び続けます
もちろんテレパシーなんて意味ないって分かってるけど、こうでもしてないと頭の中は怖いって感情一色になっちゃって、亜里沙は大声で泣き出しちゃうかもしれなくて...
ふと、自分がいきなり情けなくなりました
ああ、亜里沙って駄目だな
やっぱりお姉ちゃんがいないとダメなんだ
私はお姉ちゃんみたいにも雪穂みたいにもなれないんだな...
情けなさか、恐怖か
どっちだか分からないけど、涙が出そうになった時です
ガチャリと、家のドアが開く音がしました
96:
お姉ちゃんが帰ってきた!
亜里沙はすぐにそう分かりました
玄関の方から物音が聞こえます
きっともうすぐお姉ちゃんが助けに来てくれる
本当は今すぐ玄関まで走って行ってお姉ちゃんに抱きつきたいけど、暗くて全然進めそうにないし、まだ怖くて毛布から出れません
でもお姉ちゃんが来てくれるのを待ってれば、きっとすぐ安心できます
二人だったら、暗闇だろうと雷だろうとへっちゃらです
少しだけ安心した亜里沙は、雷の音が聞こえないようにまた毛布に潜り込みました
97:
おかしいな?
そう思ったのはドアの音が聞こえてから5分くらい経った時
お姉ちゃんが全然亜里沙の所に来てくれません
どうしたんだろう...
家の中が真っ暗だからここまで来れないのかな?
亜里沙の部屋は二階なので、暗闇で階段を登るのは確かに難しいかもしれません
急にお姉ちゃんが心配になって来たけど、でも亜里沙も怖くてここから出られないし...
そう思って毛布から顔だけ出すと、遠くの玄関の方から、とってもとっても小さな声が聞こえてきました
98:
「亜里沙、亜里沙...?」
「どこなの...?どこにいるの...?」
それは確かにお姉ちゃんの声
でもそれはいつも聞くお姉ちゃんのハキハキした喋り声じゃなくて、とっても弱々しくて、今にも消え行っちゃいそうな涙声
とっても驚いたけど、その声が聞こえた時はそれ以上にすごく懐かしい感じがしました
あれ?お姉ちゃんのこんな声、前にも聞いたことあるんじゃないかって
そう、今日みたいに真っ暗闇で、亜里沙はたったひとりぼっちで...
そう、あのかくれんぼの時
99:
ーーーーー
ーーー

『亜里沙...?どこにいるの...?』
『亜里沙...返事して....』
『お姉ちゃん...?』
『亜里沙...?亜里沙!』
『もう!なんでこんな所に隠れてるのよ!』
『ごめんなさい...』
『...こんな真っ暗になるまで...さあ、早く帰るわよ』
『...怒られちゃうかなぁ』
『多分ね...でも、お姉ちゃんも一緒だから』
『大丈夫よ亜里沙』

ーーー
ーーーーー
100:
...思い出した
あの時助けてくれたのは、お姉ちゃんだったんだ
真っ暗になるまで見つけにくい所に隠れてて、さみしくて泣いていた亜里沙を、泣きながら一人で探してくれたのは、お姉ちゃん
怒られる時も何も言い訳しないで一緒に怒られてくれた、強くて優しいお姉ちゃん
亜里沙は本当に、ずっと前から、お姉ちゃんに頼りきりだったんだ
だって困ってるといつもお姉ちゃんが助けてくれるから
お姉ちゃんは賢くて優しくて、強くてかっこよくて苦手な物なんて一つもないから
でも...でも今は...
今聞こえるお姉ちゃんの声は、とっても弱々しい、まるであの時の亜里沙みたいな声
102:
そう思うと勇気が湧いて来て
亜里沙は毛布から出て立ち上がりました
今でも暗闇は怖いけど、雷だって悲鳴をあげちゃうほど苦手だけど
でも、お姉ちゃんが困ってるなら亜里沙が助けてあげないと!
お姉ちゃんが今まで助けてくれたように、今度は雪穂が助ける番なんです!
亜里沙は、すっかり存在を忘れていた携帯電話を手に取ると、画面の明かりを頼りにして部屋から出ました
103:
携帯電話で話すとか、落ち着く方法は色々あったかもしれないけど
亜里沙はとにかくお姉ちゃんの近くに行かなきゃってことばっかり考えてたんです
でもそうやってひとつの事を考えていると、不思議と雷も暗闇もそんなに怖くなくって
亜里沙は夢中で階段を降りて、名前を呼びながらお姉ちゃんを探しました
しかしさっきは玄関から声が聞こえたはずなのに、玄関まで行ってもお姉ちゃんがいません
「お姉ちゃん!いるの?亜里沙だよ!」
「お姉ちゃん?どこ?」
「亜里沙...?」
104:
お姉ちゃんは、玄関から少し歩いた所のトイレのドアの前にへたりこんでいました
明かりで照らしてみると、制服の肩や裾がびしょ濡れで、目にも涙を浮かべてて、おまけにどこかにぶつけたのか、おでこは赤く腫れていました
「お姉ちゃん...大丈夫?」
「亜里沙...亜里沙...!」
お姉ちゃんに近寄ると、お姉ちゃんは私を抱き寄せて、濡れた手で頭を撫でてくれました
「ありがとう...助けに来てくれたのね...無事でよかった...!」
お姉ちゃんはそう言いながら何度も何度も亜里沙の頭を撫でてくれて
亜里沙は、うっかり涙をこぼしてしまいました...
105:
「ごめんね亜里沙...お姉ちゃんかっこ悪いでしょ...」
「雷がすごかったから...亜里沙が怖がってると思って急いで帰ってきたんだけど、停電してるなんて思わなくって」
「私、暗い所が苦手なのよ。小さい時から...亜里沙は覚えてないかもしれないけど」
「ふふ、朝亜里沙をからかっておいて、これじゃ話にならないわね」
「ごめんね、情けないお姉ちゃんで...」
お姉ちゃんは涙声で私に謝ってくれました
もちろん驚いた
お姉ちゃんに怖いものなんて無いと思ってたし、こんな情けない格好のお姉ちゃんを見るのも初めてだった
でも
「...お姉ちゃんは、かっこいいもん」
106:
「...え?」
「お姉ちゃんは、いつだって強くてかっこいいよ!」
初めて見る、情けない格好のお姉ちゃんは、やっぱり亜里沙にはかっこよく見えたんです
びしょ濡れの制服を見ても、亜里沙のために雨の中急いで帰ってきてくれたのが分かるし、赤く腫れたおでこも、亜里沙を探して暗闇の中でぶつけてしまったんだって分かるし...
頭を撫でてくれる手は小さく震えていて、あのかくれんぼから帰る時に繋いでくれた手にそっくりで
やっぱりどんな格好でも、お姉ちゃんはいつも変わらず亜里沙を助けてくれるお姉ちゃんなんだなって思ったんです
107:
「むしろかっこ悪いのは亜里沙だよ...一人で寝れるなんて言って、やっぱり今日はお姉ちゃんがいないと何もできなかったもん」
「お姉ちゃんに助けてもらうことばっかり考えて、怖がってるだけだったもん...」
俯いてそう言うと、お姉ちゃんはゆっくり首を振って亜里沙の手を握ってくれました
「そんなことないわ。亜里沙はこんな真っ暗な家の中からお姉ちゃんを助けに来てくれたじゃない」
「それはお姉ちゃんのためだからがんばれたの!一人じゃ何もできないよ...」
「お姉ちゃんも、亜里沙のためだから頑張れるのよ?」
「え?」
お姉ちゃんがにっこり笑います
108:
「私も亜里沙と一緒よ。亜里沙のためだから頑張れる。一人じゃ何もできないの」
「私が頑張れるのは亜里沙がいてくれるから。だから、私だって昔から亜里沙に助けられてるのよ?」
...そうなんだ
亜里沙は、お姉ちゃんに迷惑ばっかりかけてると思ってて、きっとダメダメな子だって思ってたんです
でも
お姉ちゃんがそう言ってくれたのが嬉しくて
お姉ちゃんも亜里沙と一緒だって言ってくれたのが嬉しくて...
少しだけ、自信がつきました
110:
「...ところでお姉ちゃん。いつまでこうしてるの?」
「あはは、実は腰が抜けちゃって、しばらくは立てないかも...」
「お姉ちゃんったら...そんなに暗いのが怖いの?」
「立てるようになるころには、多分停電も直ってるはずだから...もう少しだけ...ね」
「お姉ちゃんは暗いのが怖いから、もう少しこうしててあげるよ!」
「ふふ...亜里沙は頼りになるわね」
「亜里沙はお姉ちゃんがいないとダメダメだからね!」
「うん、私もよ」
お姉ちゃんと亜里沙は、そのまま電気がつくまでくっつきながらお話ししていました
相変わらず暗くて、雷も止んでいなかったけど、全然平気
だって今度は、一人ぼっちじゃなくて隣にお姉ちゃんがいたから...
◇◇
113:
皆さんには尊敬する人はいますか?
亜里沙の尊敬する人は、お姉ちゃんです
尊敬する人は沢山いるけど、その中でもお姉ちゃんはとびきりすごくて、亜里沙のなかで一番のアイドルだから
賢くて優しくて、強くてかっこよくて...
それでちょっぴり怖がりなお姉ちゃんだけど、亜里沙はお姉ちゃんがいるから頑張れるんです
だからそんなところも含めて、やっぱり自慢のお姉ちゃん
ところで、夜のことですが亜里沙とお姉ちゃんはやっぱり一緒に寝ることにしました!
怖がりなお姉ちゃんが一人じゃないと怖いと言うので、仕方なく亜里沙が寝てあげることにしたんです
これからも、亜里沙は沢山助けてもらうと思うけど、亜里沙もこうやって助けてあげるから許してね
これからも2人で頑張ろうね
お姉ちゃん!
自慢のお姉ちゃん ーおしまいー
119:
03.幼馴染が欲しい!
とってもぽかぽかした春の日のことです
亜里沙は机でウトウトしながら考えていました
日本の言葉
"幼馴染"
についてです
120:
亜里沙は日本に来てからこの言葉を知ったけど、今だに意味がよく分かりません
とりあえず分かっているのは、亜里沙にはいないこと、お姉ちゃんにもいないこと
いたとしても日本にはいないこと...
言葉の意味は分からないけど、亜里沙にはいないと知って少しだけしょんぼりしました
121:
お姉ちゃんに亜里沙が聞くと、お姉ちゃんも実はあまりよく分かっていないようで
「そうねー、μ'sだと花陽と凛、あと穂乃果と海未とことりとかが幼馴染ね」
「私には...幼馴染はいないと思うけど...あれ、でも穂乃果達とは小学校も一緒だったし結構長い付き合いだわ」
「...あれ?ごめん、お姉ちゃんちょっとよく分からないかも...」
と、困った顔をしていました
122:
花陽さんや凛さん、穂乃果さんや海未さんやことりさん...ってことは
やっぱり幼馴染って特別仲のいい人達のことなのかな?
ってことは、亜里沙と雪穂は幼馴染?
でも、幼馴染がいないってことは、雪穂と亜里沙の仲の良さはまだまだってことなのかなぁ
123:
そうやって考えているうちに、亜里沙は陽気に負けて寝てしまったようで、初めて友達にノートを見せてもらうことになってしまいました
雪穂に見せてもらおうと思ったけど、雪穂も陽気には勝てなかったようで、真っ白なノートを胸の前で広げて笑っています
雪穂は
「亜里沙が居眠りなんて珍しい?!」と言ってぽんぽんと亜里沙の頭を叩きました
他の友達も「本当だねぇ」といって亜里沙の頭を撫でたりしました
124:
先生達の会議とかで、学校は午前中に終わったので、亜里沙と雪穂はいつもより少し人通りの少ない帰り道を歩きます
ぽかぽかとした天気のなか、雪穂はいつものように他愛ない話を聞かせてくれて、亜里沙はうんうんと頷いていました
でもさっき考えていた幼馴染のことと、雪穂の頭のうえでぴょんぴょん跳ねている髪の毛が気になって、雪穂の話はバラバラに亜里沙の頭の中に入ってきます
お姉ちゃんが...また体重が...喧嘩を...
海未さんとことりさん...大泣きしちゃって...やっぱり私が...
結局話を殆ど理解していないまま雪穂の家の前まで来てしまいました
125:
雪穂は話を一旦やめて、「上がっていく?」と亜里沙に聞きました
亜里沙はちょうど幼馴染の話がしたかったので「うん」と頷くと、雪穂は「分かった、お茶とお菓子でも出すよ」と言って家の扉を開きました
そして亜里沙が家の中を覗き込む間も無くぴしゃりと扉を閉め直しました
126:
「どうしたの?」
と亜里沙が聞くと、雪穂は扉に手をかけたまま答えました
「ごめん、お姉ちゃんがひどい格好のまま居間で寝てた」
そしてこちらを向いて「ちょっとごめん」と言って一人で家の中に入って行くと
「お姉ちゃん!亜里沙来るからちゃんと服着て!」
「ええっ、なんで!?」
「こっちのセリフだよ!」
って声が聞こえてきて、やっぱり仲がいいなあと亜里沙は思いました
128:
少しだけ疲れた表情をした雪穂が「今度こそどうぞ」と言って扉を開けてくれたので、亜里沙は「お邪魔します」と言って雪穂の家に入りました
雪穂の家はいつも餡子の甘い香りが漂っていて、亜里沙は来る度にお腹がすいてしまいます
「うちにいるとダイエットが大変なんだ...」って言って雪穂が学校でお昼を抜いていたことがあったけど、確かにこれなら気持ちも分かるかも
129:
居間まで上がらせてもらうと、雪穂のお姉さんの穂乃果さんが、「いらっしゃーい」といいながら出てきたので、亜里沙は「お邪魔してます!」と挨拶しました
すると台所でお茶を用意してくれていた雪穂も出てきて「お姉ちゃん風邪引いて学校休んだんでしょ!出てきちゃだめだって!」と言って穂乃果さんの背中を押して階段を登っていきます
穂乃果さんは「ゆっくりしていってねー」と2階から私に言った後、大きなくしゃみをひとつして、部屋に戻っていきました
130:
二階から降りてきた雪穂は「ごめんねーアホなお姉ちゃんでー」と言ってお茶とお菓子を持ってきてくれた後、亜里沙の隣に座りました
しばらくの間、雪穂と亜里沙はお菓子をつまみながらテレビを見たり、μ'sが載った新聞を見たりして楽しく話していたけど
その中ではっと幼馴染のことを思い出しました
131:
亜里沙は雪穂なら幼馴染のことを知ってるかと考えたのです
そして雪穂と亜里沙は幼馴染なのかどうか、雪穂に聞いてみないと分かりません
そう思うと急に緊張してきました
ひょっとすると亜里沙と雪穂は幼馴染ではないのかもしれないからです
亜里沙が幼馴染だと思っていても、雪穂はそう思っていないかも...
132:
「雪穂」
私が控えめに呼びかけると、雪穂はお煎餅をくわえてこちらを向きました
「なあに?」
「雪穂には...幼馴染っている?」
「あー、いるね」
いるのか...
亜里沙のことでしょうか、それとも亜里沙の知らない幼馴染がいるのかな
花陽さんと凛さんみたいな
穂乃果さんと海未さんとことりさんみたいな
仲のいい友達...
133:
「それって...」
誰?って聞こうとおもったけど、少し怖くって言葉が途絶えてしまいました
もし雪穂が亜里沙だって言ってくれなかったら、やっぱりすこし悲しいもん
でも、亜里沙の途切れた言葉に続くようにして雪穂は答えました
「そう、海未さんとことりさん」
「お姉ちゃんの幼馴染ってことは私の幼馴染ってことでもあるんだよねぇ。小さい時はよく遊んでもらったもん」
134:
「え?」
雪穂と海未さん達が幼馴染?
あれ...でも海未さん達は穂乃果さんの幼馴染で...
そんなに仲がいいってことなのかな?
「じゃ、じゃあ雪穂と穂乃果さんは幼馴染?」
「え?なんでそうなるの?お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ」
「じゃあ、じゃあ!雪穂と亜里沙は幼馴染?」
「違うでしょー!何言ってるの亜里沙ー!」
けらけら笑いながら言い放った雪穂の言葉は、どっしりと亜里沙の心にのしかかりました
137:
ここまで話を聞いても幼馴染はなんなのか分からない...というか余計ややこしくなっちゃったけど
亜里沙は雪穂と幼馴染じゃないんだってことだけは分かりました
よく分からないけど、きっと幼馴染は特別仲がいい人同士
でも、雪穂と亜里沙はそうじゃないんだ...
やっぱり、いざ分かってしまうとしょんぼりしちゃう
亜里沙には幼馴染はいないんだ...
138:
そう思っているとだんだん目に涙が浮かんできて、同時に目の前の雪穂の顔がギョッとした表情になります
「えっ!?なに亜里沙どうしたの!?」
「なんでちょっと泣きそうになってるのさ!ちょ...ちょっとちょっと」
「ごめんね私何かした...?」
いきなりの涙に驚いた雪穂が亜里沙の周りでわたわた
雪穂が騒いでるのを聞きつけて穂乃果さんまで二階から降りてきて
泣き顔を見せるわけにはいかないと亜里沙は涙を急いで拭いました
140:
「もう雪穂!亜里沙ちゃん泣かせたらダメだよ!」
「泣かせてないよ!た...多分」
二人が今にも喧嘩を始めそうだったので亜里沙は挙手をしてから
「だ、大丈夫です!すこし寂しくなっちゃっただけですから...」
と弁解しました
こういう時に亜里沙は気の利いた嘘がつけません
「寂しくなっちゃった?」
「どうして?ずっとお喋りしてたじゃん」
141:
隠しても仕方がないので亜里沙は正直に全部話しました
幼馴染が欲しいこと
幼馴染がいないこと
雪穂と亜里沙は幼馴染じゃないって分かって寂しかったこと
亜里沙は話してる時とっても恥ずかしかったのに、そんな亜里沙の話を聞いた後に二人は堪えていた笑いを吹きだして大きな声で笑い出しました
穂乃果さんは「亜里沙ちゃんかわいいー!」と言って亜里沙の頭を撫でまわします
142:
「亜里沙、幼馴染っていうのは小さい頃からずーっと一緒にいた友達のことを言うんだよ」
「そうそう、私と海未ちゃんとことりちゃんは小さい頃からずっと一緒だし、雪穂も一緒に遊んでたから幼馴染!」
雪穂と穂乃果さんは幼馴染のことを丁寧に教えてくれました
なるほど、確かに亜里沙もお姉ちゃんも途中で日本に来たから、幼馴染がいるはずもありません
亜里沙が一人で納得していると、雪穂がすこし困ったような顔で言いました
「だから...私と亜里沙が幼馴染になるっていうのは、ちょーっと難しいけど...」
「でも亜里沙。幼馴染イコール仲がいいってわけでもないんだよ?」
143:
「そうなの...?」
「うん、幼馴染でもそこまで仲が良くない人だっていっぱいいるの。腐れ縁なんて言葉もあるし」
「逆に、幼馴染じゃないからって仲が良くないなんてこともないんだよ。私と亜里沙は幼馴染じゃないけど、私は亜里沙のこと大切な友達だと思ってるもん」
「日本ではそういうのを"親友"って言うんだよ」
144:
雪穂はそう言って亜里沙の手を取りました
亜里沙は、雪穂が亜里沙のことをちゃんと友達だって思ってくれてたのが嬉しくて
同時に自分は、とっても小さなことで臆病になってたんだなって分かって
亜里沙は幼馴染が欲しかったんじゃなくて、本当は幼馴染なんてあんまり重要じゃなくて
ただ、親友が欲しかったんだなって思いました
145:
「だから亜里沙、幼馴染にはなれないけど...親友ならいいかな?」
「うん...うん!もちろん!亜里沙と雪穂は幼馴染じゃないけど親友!幼馴染じゃないけどずっと一緒だよ!」
「雪穂ずるい!私と亜里沙ちゃんも親友になりたい!」
「お姉ちゃんは今関係ないでしょ!ていうか風邪うつるから部屋で寝ててよ!」
穂乃果さんが私と雪穂をまとめて抱きしめて、雪穂が必死に穂乃果さんを引き剥がそうとしている途中で、穂むらの戸が開きました
「穂乃果、風邪だと聞いたのでお見舞いに...来たのですが」
「もう大丈夫みたいだね」
海未さんとことりさんです
二人とも穂乃果さんのお見舞いだったようですが、元気な穂乃果さんを見て苦笑いを浮かべます
146:
「せっかく部活も休んで来たというのにすっかり元気じゃないですか」
「病み上がりにあんまり雪穂ちゃん達にくっついちゃダメだよ」
「あはは、馬鹿は風邪ひかないって言うしねー」
「自分で言いますか...」
「ひいてるしね...」
三人は一緒にいるとやっぱりとっても楽しそうで、私は海未さんに
「海未さん達は幼馴染だから仲がいいんですか?」
と聞いてみました
147:
「え?もちろん私達は昔からの幼馴染ですが...」
「別に幼馴染だから仲がいいってわけじゃないかなぁ?」
「そうですね。遅かれ早かれ私達は友達になっていたと思います。ようは知り合うタイミングが偶然早かったというだけですから」
思わず、「なるほどー」と声が出ました
雪穂も
「そうだよ亜里沙。私達だってすこし知り合うのが遅かっただけで、仲の良さには関係ないよ」
と言ってくれました
148:
幼馴染という言葉の意味が分かって
結局亜里沙には今からじゃできないものだってことも分かって少しだけしょんぼりしたけど
でも、今日亜里沙が知ったことはそのしょんぼりよりとても大きいものだと思います
149:
私は嫌がる穂乃果さんを布団に押し込む海未さんと、横で笑っていることりさんを見ながら
「もし亜里沙が風邪ひいたら、ああやって来てくれる?」
と静かに聞きました。
すると隣にいる雪穂が
「当たり前でしょ。親友なんだから」
と、すこし照れながら答えてくれるのでした
それがとっても嬉しくて、小さく「親友かぁ」とつぶやきます
ぽかぽかした昼下がりの
とっても嬉しかった日のお話です
幼馴染が欲しい! ーおしまいー
152:
Comments? 絢瀬絵里
「おはよう亜里沙、起きてる?」
「あら...もう、亜里沙ったら、書いたまま寝ちゃったの?」
「亜里沙、起きなさい。せっかく書いた日誌がシワシワになっちゃうわよ」
「うう...ん、あれ、お姉ちゃんおはよう」
「目にクマが出来てるわ...亜里沙、昨日相当夜更かしして日誌書いてたわね」
「ク、クマさん?どこ?」
「亜里沙、目のクマは動物とは違うのよ」
「ハラショー...!」
153:
「そうだお姉ちゃん!これ、昨日がんばって書いたの!どうかな?」
「日誌ね...うわ、随分気合入れて書いたわねぇ...雪穂ちゃんのよりかなり多いじゃない」
「えへへ...色々書きたいことがあって。お姉ちゃん読んでみて!」
「どれどれ...ふーん....」
「...というか亜里沙。時間はいいの?もう下で雪穂ちゃん待ってるみたいだけど...」
「えっ、そうなの?大変!日誌雪穂にも見せなきゃ!貸して!」
「あっちょっ...私まだ全然...」
「雪穂ー!」
「...やれやれ、仲が良いわね」
154:
ずっと引っ込み思案でお姉ちゃんにくっつきっぱなしで...すこーし頼りない亜里沙だったけれど、こうやって立派になれたのはみんな亜里沙の頑張りの結果だと思うわ
大事な友達も作って、昔よりずーっと強く逞しくなった亜里沙
姉としてはちょっぴり寂しいけれど、やっぱりとっても嬉しいです
これからも元気で明るくて、ちょっぴり天然な可愛い亜里沙の笑顔を見させてね
「お姉ちゃーん!今日はお姉ちゃんも一緒に学校行こうよー!」
「え?ちょ、待ってよ、私まだ何も準備...ま、待っててね!すぐ準備するから!」
「早く来てねー!」
155:
「亜里沙、大丈夫なの?絵里さんすごく焦ってるけど...」
「いいの!今日はそういう気分だから」
「なんで急に...ていうかそれってμ'sの活動日誌?」
「そうだよ!雪穂とお姉ちゃんのこと書いてたら、どうしても一緒に登校したくなっちゃった!」
「はぁ...まあ、亜里沙が楽しいならいいけどさ」
「そうね...亜里沙が楽しいならそれでいいわ...」
「あ、絵里さん...随分急いだみたいですね...」
「ええ...行きましょうか...」
「うん!雪穂も、お姉ちゃんも隣にいて、今日もとっても楽しいよ!」
ラブライブ!
School idol diary ?絢瀬 亜里沙?
ーおしまいー
15

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