春香「ひゃぁ〜!貴音さんって中卒なんですかっ?!」back

春香「ひゃぁ〜!貴音さんって中卒なんですかっ?!」


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1:
ご機嫌麗しくお過ごしのことと存じます。
四条貴音でございます。
わたくしは、トップアイドルになるために故郷に別れを告げました。
己の身命を賭して、高みを目指す……。
その決意に一点の曇りはありませんでした。
黒井「961プロ倒産するわ。ごめんねごめんねー」
貴音「面妖な」
まくどなるど、いんたーねっと喫茶というおそろしき異界を体験して……
わたくしはこの学歴社会という波に早くも呑みこまれそうになっています。
961プロが倒産してもう1日なのですね……
3:
ガチャ……
春香「ただいま?……お母さん……」
春香母「春香、おかえりなさい、遅かったわ──」
猫「にゃーん!!!」
春香母「あ、こら春香!また猫拾ってきたわね!」
春香「ご、ごめん。だって寒そうだったんだもん……えへへ」
春香母「まったく……うちはペットはダメって言ってるでしょ……」
猫「にゃーん!!!」
春香「ごめんね、お母さん。それじゃ……」
ヌギヌギ
春香「た、ただいま……」 スタスタ
貴音「……」スタスタ
春香母「ちょっと待ちなさい春香」
5:
春香「へぇ?!ど、どうしたの?」
猫「にゃーん!!!」
春香母「この方は誰かしら?」
貴音「……」
春香「え、えっと?……」モジモジ
春香母「……」
春香「捨て貴音さん」
貴音「げろっぱ!!!」
春香母「す、捨て貴音さん……」
貴音「げろっぱ!!!」カッ!
9:
ガチャ……
春香「うぅやっぱり怒られた……」
貴音「げろっぱ!!!」
春香「もういいですよ、貴音さん……」
貴音「……申し訳ありません天海春香、わたくしのような下賤な者を拾っていただいて……」スッ
春香「い、いえいえいいんですよ!」
貴音「このご恩は必ずや……」
春香「えっそんな……」
貴音「まずは、お近づきの印にこちらを……」ススッ……
つ ま よ う じ
春香「……えぇ?……家にあがりこんでつまようじくれる人初めて見た……」
貴音所持品:携帯電話 身分証明証 証明写真11枚 履歴書 らぁめん調理器具セット 化粧品etc...
貴音所持金¥4100
10:
貴音「つたない物ですが……」シーシー……
春香「本当につたないですよ!ていうか早一本使わないでください!」
貴音「申し訳ありません。おでんの昆布が歯に挟まってしまいまして……」シーシー……
春香「えーっと、う?ん」ムムッ
春香「とりあえず、961プロの銀色の女王と呼ばれる貴音さんが、どうして──」
貴音「実は……961プロは……倒産してしまったのです」
春香「えっ」
貴音「わたくしは……『にーと』で『ほーむれす』となってしまったのです……」
春香「たかねさん……」
貴音「願わくば、こちらで飼っていただきたいのです……げろっぱ!!!」キリッ
12:
春香「わかりました」
貴音「げろっp……」
春香「困った時はお互いさま、ですよね」ニコッ
貴音「……」
春香「だけど、私の部屋ってそんな広くないですよ」
貴音「天海春香……ありがとうございます……」
春香「えっと、でもこれからどうするんですか?」
貴音「まずは、『ばいと』をしなければいけませんね……」
春香「貴音さんがバイトかぁ……」
貴音「はい」モグモグ
春香「えっ、何食べてるんですか?」
貴音「ふふっ昼に余った、まっくぽてとです」モグモグ
15:
春香「そ、そうなんですか……」
貴音「天海春香、お聞きください……」
春香「えっ」
貴音「まくどなるどとは、まこと素晴らしき場所なのです」
春香「は、はい、私も帰りによく行くけど、美味しいですよね」
貴音「それもさることながら……なんと、今はえす!えむ!える!全てのサイズが150円なのです!」ドォーン!
春香「あ、そうなんですかぁ」
貴音「えるサイズを頼んでも、150円……なんとまぁ……これが、お買い得というものですね!」モグモグ
春香「……あの、貴音さんって普段、一人で買い物したりはするんですか?」
貴音「ぷらいべーどは、詮索されたくはありませんね」フッ
春香「……貴音さん、これから大丈夫なのかなぁ……中卒だし……」
貴音「さらに、揚げたてとふにゃふにゃで二種類の味が楽しめるのです」モグモグ
18:
春香「とりあえず、お風呂入りませんか?」
貴音「よいのですか……?」
春香「えぇ、昨日から入ってないみたいですし……」
貴音「」クンクン
春香「だ、大丈夫です。匂ってないです」ワタワタッ
貴音「昨晩は、『北斗の拳』を読んでいたがゆえ、しゃわーを浴びる暇がなかったものでして……」
……。
ガチャッ
シャワァァァァ……
貴音「ふぅ……生き返りますね……」
貴音「……それにしても……少々温度が……」ブルル
貴音「一体、どこで変えるのでしょうか……」
タッチパネル式
貴音「面妖な」
20:
貴音「……」ソワソワ
貴音「これは、まこと不可解ですね……」
貴音「ここで変えるのでしょうか……」ポチッ
ピッピー ピッピー(呼び出し音)
貴音「なにやつっ!もしや敵襲では……!」ガタガタッ
タッタッタ
春香「はいはぁ?い、たかねさぁ?ん呼びましたかぁ?」ガラッ
春香「あれ?」キョロキョロ
貴音「せいっ!」ブルンッ
ブオォン!
春香「えっ」
ザバーン
22:
シャワァァァ……
春香「……」ブクブク……
貴音「申し訳ありません、春香」シャカシャカ
春香「あ、あはは……いいんですよ……お風呂入ってなかったですし……」チャプチャプ
貴音「わたくしは、風呂へ入る者を仕留めるための奇襲の狼煙かと……」シャカシャカ……
春香「あはは……それじゃそろそろ、出ましょうか……」
ガララッ
貴音「服まで貸していただき、いたせりつくせりですね……」スッ
春香「私のですけれど……我慢してくださいね」
貴音「おや、この下着、少々臀部が……」グイグイ
春香「あ、無理しないでくださっ」
ベリィ
貴音「面妖な」
25:
貴音「……」
春香「……」
貴音「お詫びといっては何ですが……」スッ
おたま
春香「う、うわぁ?丁度欲しかったんですよぉ。お味噌汁作ったときとか……」ヒクヒク
ススッ
春香「怒っちゃダメ……怒っちゃダメ……貴音さんに悪気は無いよ……」ブツブツ
貴音「まさか、わたくしの臀部がここまで罪だとは……」シュン……
春香「えっと、とりあえず今日は遅いですし、寝ましょうか」
貴音「えぇ、おやすみなさい、天海春香」
パチッ 2日目終了
28:
チュンチュン……
貴音「んん……」カザハナッ
春香「むにゃむにゃ……もっと遠くへ泳いでーみたい……」
……。
春香「じゃ、私はお仕事行ってきますから……」
貴音「はい、行ってらっしゃい、春香」
ガチャッ……
貴音「……」
貴音「家があるとは素晴らしきことですね」
貴音「……」ゴロン
貴音「……」ゴロゴロ
貴音「……」ゴロゴロゴロゴロ
貴音「すぅ……すぅ……」Zzz...
31:
貴音「はっ!」カザハナッ
貴音「つい、寝てしまいました……」
貴音「」グゥゥゥ
貴音「小腹がすきました……」
ガチャッ
貴音「こ、この冷蔵庫に冷やされてあるものは……」ワナワナ……
貴音「もしや!ごーじゃすせれぶぷりんではっ!」ワナワナワナワナワナワナ……
貴音「上品でしつこさの無い甘み……蕩けるような食感……」ワナワナワナワナワナ……
貴音「いえっ!ダメですっ!ダメなのですっ!四条貴音!」バッ
貴音「許可無しに、人の食べ物をいただくなど!人の道に背きます!」
……。
貴音「ケプゥ」
貴音「代わりに……」ゴソゴソ
貴音「昨晩、面接の帰りに貰ったコレで……」トンッ
ポケットティッシュ
34:
貴音「……」ゴロゴロ
貴音「おや、もう夜なのですね」
貴音「月を見ましょう」ジー……
貴音「……」ジー……
タッタッタ……
ガチャッ
春香「ただいまです?!貴音さんっ!も?今日も超わっほいでした!」
貴音「おかえりなさいませ、春香」ジー
春香「お仕事見つかりましたかっ?!」
貴音「いいえ、職とはそう簡単に転がり込んでくるものではないですね……」ジー
春香「やっぱり大変なんですね」
貴音「はい、何がいけないのでしょう……」ジー
春香「私、ちゃんと働けるようになるまでずっと応援しますから。四条さんのこと」
貴音「あ、天海春香……」ウルッ
春香「やだなぁ、泣かないでくださいよ。四条さんが泣いてたら私も……」ウルッ
37:
春香「あれぇ?たかねさん?私が冷やしておいた冷蔵庫のプリン知りませんか?」
貴音「プリンはきっと、遠い彼方へ旅立ったのでしょう」
春香「えへへ、相変わらず面白いですね」
貴音「ふふっ」
春香「じゃ、早行きますか!」
貴音「さて……?」
春香「天海春香プロデュース!バイトの傾向と対策ぅ?!」ヴァイ!
貴音「おぉ……春香……なんと有りがたいのでしょう……!」
春香「えへへ、ちょっと今、プロデューサーさんの気分かも」
春香「えっと、それじゃ今日の貴音さんの成果を教えてくださいっ!」
貴音「成果、ですか……ふむ……」スッ
貴音「……」
春香「た、たかねさん?」
40:
貴音「……」
春香「えっと……電話とか?……外でチラシ貰ってきたりとか?……」
貴音「畳みの目の数を数えていました」
春香「えっ」
貴音「一列で63ありましたよ、ふふっ」
春香「あ、あの……貴音さん……」
貴音「はい」
春香「あの、つまりずっと家にいたってことですか」
貴音「果報は寝て待て、ということですね」キリッ
春香「あの、それには?なんというか何かアクションを起こさないと……」ワタワタ
貴音「そうだったのですか」キョトン
春香「へっ」
貴音「わたくしはてっきり、アイドルと同じく勧誘が来るものかと……」
春香「たかねさん……」
44:
春香「貴音さんっ!待っていても来るのは新聞の勧誘とNHKの受信料の徴収だけですよ!」バッ
貴音「えぬえいちけー?」
春香「も?説明するのは後ですっ!早、始めますよ!」
貴音「春香はバイトの経験が豊富なのですね」
春香「えっ、いえ、無いですけれど」
貴音「……」
春香「……」
……。
春香「まずは、履歴書の書き方ですね」
貴音「はい」スッスッ
春香「うわぁ……綺麗な字ですね」
貴音「ふふっ、名前のあとは、住所ですね」スッスッ
【天海家の住所】
春香「たかねさんっ?!」
47:
貴音「どうかしましたか」キョトン
春香「それ二宮ですよね?!」
貴音「はい……ここまで歩いてくるのはまこと過酷でした……」
春香「な、何でナチュラルに私の家の住所書いてるんですかっ!?」
貴音「わたくしは『ほーむれす』なのです」
春香「じ、実家の住所を書けばいいじゃないですかっ」
貴音「それが、それを書いたら門前払いにされてしまって……」
春香「えぇ、そんなこと……ちなみにどこなんですか?」
貴音「月です」
春香「……」
貴音「……」
春香「はい、じゃあ次書くとこは……」
48:
貴音「月とこの二宮……。一体なにが違うのでしょうか……」スッスッ……
春香「うぅ神奈川県民を代表してツっこみたい……」
貴音「どうやらこれで門前払いは免れそうですね」
春香「う?ん、一歩前進……なのかなぁ?」
貴音「……高校中退……」スッスッ
春香「……じゃ、職歴は……」
貴音「961プロダクション所属 アイドル業」スッスッ……
春香「……」
貴音「倒産により退社……」スッスッ……
春香「うぅ、なんだか胸が痛いよ……クッキー食べてください……」
貴音「ありがとうございます」ポリポリ
53:
貴音「資格は無し……」ポリポリ
春香「ですよねー……」
貴音「次は、趣味の欄ですね」
春香「あ、ここは大事なアピールポイントですよ?」
貴音「それはつまりアイドルのオーディションの時と同じ……ということでしょうか」
春香「そうですね、ここで面接官のハートをグッと掴むんです!」
貴音「心臓を掴んだら、死んでしまいますよ。天海春香」
春香「……えっと」
貴音「不可解なことです!わたくしの趣味が、他人の心臓を掴むことなどと!一体誰が申したのです!」ダンッ
春香「なんだかもう、開いた口が塞がりません……」
貴音「なんとっ!もしや顎が外れてしまったのですかっ?!すぐに救急車を!」ダダダン!
春香母「春香!深夜なんだから静かにしなさい!」
57:
貴音「なるほど、そういう意味だったのですね」ホッ
春香「う?ん、貴音さん、心配だなぁ……」
貴音「てっきり、わたくしのまことの素性を知っておられたのかと……」
春香「えっ」
貴音「いえ、何でもありません。わたくしの趣味ですね」ニコッ
春香「はい、ここは961プロのプロフィールに書いてあった事でいいんじゃないですか?」
貴音「なるほど、その通りですね」
貴音「さて、確か……」スッスッ
春香「何なんだろう」
趣味:ひとりになること
春香「たかねさんっ?!」
59:
貴音「なにか可笑しなことでも……」
春香「それ趣味じゃないですよねっ?!」
貴音「ふふっわたくしは、一人で月を眺めるのが趣味なのです」
春香「響ちゃんに謝……じゃなくて!こんな絡みづらい趣味ノーカンですよ!ノーカン!」
貴音「はて……」
春香「どうするんですか!いざ面接に来て『じゃあ四条さんの趣味は』って話になって『ひとりでいること』なんて書かれてたら!」
貴音「仲良くなれるのではないでしょうか」
春香「そうそう、『へぇ?そうなんだぁ、実は俺もぼっちでさぁ……』なんてなりませんよ!わっほい!」
貴音「これが『のりつっこみ』というものなのですね」
春香「思わず苦笑いして流しますよ!ダメ!ダメです!」
貴音「天海春香、あなたは芸人なるものに向いているのではないでしょうか」
65:
貴音「では、天体観測と舞台鑑賞にしておきましょう」スッスッ……
春香「あ、これなら大丈夫ですね」
貴音「ほっ、お許しが出ましたね」
春香「話も広がりやすいですし、舞台鑑賞はリッチなイメージがあるから印象良いですよ、多分」
貴音「では、特技ですね」
春香「えっと、貴音さんってダンスは……」
貴音「数値化されたでーたを以前見たのですが……普通ですね」
春香「あっそ、そうなんですか、じゃあヴォーカルは」
貴音「一番得意と言えますが、至って普通です」
春香「ビジュアル……」
貴音「おそらく、765プロの皆と合わせて、中間ですね」
春香「うん、普通が一番ですよね」
70:
貴音「得意科目は、歴史ですね」スッスッ……
春香「わぁ、歴女ですよ、歴女」
貴音「大分、形になってきましたね」
春香「じゃ、ひとまず自己アピール欄も埋めちゃいましょう」
貴音「わたくしは、確かめたいのです。目指していた高みから見える景色を。あるばいとで」スッスッ
貴音「勤務日数、時間は週7日、午前午後可……と」スッスッ
春香「ひとまず完成?!」パチパチ
貴音「やりました!天海春香!」グッ
春香「うんうん、こうしてみると履歴書は完璧ですね!私の実家の住所が書かれている以外!」
貴音「はい、あとは写真を貼りましょう」ゴソゴソ
72:
春香「あ、証明写真あるんですね」
貴音「こちらです」スッ
春香「……あの、貴音さん何ですかこのポーズ……」
貴音「面妖なる舞です」ドヤッ
春香「あの、無表情が基本なんですよ」
貴音「なんと!『ぐらびあ』とは勝手が違うのですね!」ガタッ
春香「……」
74:
プルルルルル……
オペレーター「はい、こちらお弁当の……」
貴音「あの、そちらのお店で働かせていただきたいのですが」
春香「……」ドキドキ
オペレーター「はい、それじゃ履歴書持って来てください、時間は……」
貴音「はい、どうかよろしくお願いいたします」
プッ
貴音「ふぅ……」
春香「頑張ってください!貴音さん、二人のレッスンの成果を見せてあげましょう!」
貴音「はい」
……そして。
バタンッ
貴音「頼もう!」
75:
店員「いらっしゃいませ?」
貴音「電話をいたしました四条貴音と申します」
店員「あ、昨日の方ですね」
貴音「どうか、よろしくお願いいたします」ペコリ
店員「では、そこに座ってください」
貴音「はい」
店員「綺麗な方ですね」
貴音「ありがとうございます。精一杯頑張ります」
店員「では、履歴書を出してください」
貴音「はい」スッ
76:
貴音(……写真は撮り直しました)
店員「はぁはぁ……字が上手いですねぇ……」
貴音「習い事をやっておりましたので」
店員「へぇ、お嬢様っぽいですね」
貴音「えぇ、そのようなものです」
店員「高校中退ですか。辞めた理由は?」
貴音「それはトップシークレ……アイドル活動のためです」
店員「アイドル?あ、はぁ?あの961プロのアイドルだったんですねぇ」
貴音「はい」
店員「アイドルの活動って大変だった?」
貴音「えぇ、確かに大変な時もありました。しかし、己のやることを精一杯努力しました」
店員「なるほどねぇ……」
貴音「このお弁当屋でも、手を抜かずに励むつもりです」ハキハキ
82:
店員「趣味は、舞台鑑賞。いいねぇ……上品だよ……」
貴音「はい、わたくしの気にいっている舞台は……」
店員「勤務時間はいつでもいいってほんと?」
貴音「えぇ、『しふと』なるものは問題ありません」
店員「頼もしいなぁ」
貴音「わたくしは、確かめたいのです。高みから見える景色を。お弁当屋で」
店員「うん、いいですよ。採用」
貴音「ま、まことですかっ?!」
店員「来週から入れますか?」
貴音「はい!(これで四条家にも顔向けができるというものです……!)」
店員「あ、だけど最後に一つだけ」
貴音「はい、何でしょうか?」
テテテテテテテレッテー……
そして、わたくしは予想だにしない言葉を、聞きました。
85:
「その染髪はダメだなぁ……」
「……はい?」
今、なんと、なんと申したのですか?
──砕け散った空に風花が舞う
「それと長すぎるから切ってきて」
「あ……あ……」
思わず、わたくしは言葉を失ってしまいました。
天海春香も、わたくしも今の今まで、意識していなかったこと。
お弁当屋の看板が、風に揺れてきぃきぃと軋んだ音をたてました。
景色が灰色に見えて、ゆっくりと歪んでいきます。
何か言おうとしても、喉の奥でつかえて、うまく出てゆきません。
「こ、これは、地毛なのです……」
「そんなわけないでしょ。どちらにしろちょっと目立ちすぎるなぁ」
「この髪は……わたくしの……っ!」
余りに無情な現実でした。
──ふわふわと頼りなげに消えた
「う……うぅ……」
不思議と涙がこぼれてきました。
申し訳ありませんっ……!天海春香っ……!許してください。
この銀髪を変えることは、どうしても出来ぬのです……。
87:
──過去が明日に変わり吸い込まれていく未来に
「ダメ、でした……」
「……おかえりなさい」
手ぶらで帰ってきた私を、天海春香は笑顔で出迎えてくれました。
1階のテーブルには、春香が買っていたであろう、らぁめんが2つ並んでおりました。
──心覆う闇は
そして、そのまま職が見つからず数日が過ぎ……
わたくしの椅子が用意された食卓に越しかけます。
「居候の身で、申し訳ありません、いただきます」
「いただきます……」
おや、なにやら天海春香は浮かばない表情をしておりますね。
これでは、せっかくの御馳走も、おいしくなくなってしまいますよ。
──晴れることはなく
「なっ……」
その、食卓に置かれていたものを見て……
思わず、わたくしは握っていた箸を落としてしまいました。
89:
「ごめんなさい、貴音さん……」
「これは……」
お茶漬け……!
──光の外へと心は向かっていく
なるほど、歴史を嗜んでいて、古都にいたわたくしを見込んでの計らいなのですね……。
その意味を、知らぬわけがありません。
「いただきます……」
なんと、美味なのでしょう。
口辺りの良い固めの白米が、茶湯にさらさらとほぐれて、心地よい食感です。
「うぅ……!」
ですが、少し味付けがしょっぱいようですよ……。
──そこに何があるの、確かめたい。高く高く目指す景色の果に永遠が広がる
他人の家を訪問したときに、ぶぶづけを出されるということ。
それは、暗に「さっさとかえれ」という意……。
──追いつめられて言葉無くして思うのは
わたくしは、また『ほーむれす』になってしまうのですね
──心の中に散った風花
つづく
94:
次回予告
四条貴音です。
まこと由々しき事態となりました。
ひとまずまた都会へと戻ったわたくしに待ち受ける……
あまりに凄惨な現実。
そこで見た、一縷の希望
──萩原建設
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