美希「最近ヘンなことばっかりなの」back

美希「最近ヘンなことばっかりなの」


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2:
「こっちの方が多分、近道だよね」
はー、アイドルってもっと楽チンで楽しいって思ってたのにすっごく期待外れ。
今日もいーっぱいレッスンさせられたし、もうお腹ペコペコなの。
早く帰ってご飯食べてお風呂も入ってゆっくりしたい?って感じ。
「うぅ、なんか薄暗くってヤなふいんき……」
竹林って虫とか多いからあんまり通りたくないんだけどな。
でも今日は急いでるし……あれ?
「お地蔵さん、かな? こーゆーのってお参りした方がいいんだよね、ナンマンダブナンマンダブ」
結構お参りしてる人がいるのかな、お饅頭やお煎餅の袋がたくさん。
あ、お賽銭って言ったら五円だよね!
でもなんで五円なんだろう? まあいっか、えい。
「ゆーっくり、のーんびり暮らせますよーに」
ぱんぱん。
これで明日からは遅刻しても怒られないよね。
ってそんな場合じゃなかったの!
これ以上ゆっくりしてたらミキ、飢え死にしちゃう!
「……」
五円あげたし、お地蔵さんもホントに食べるわけじゃないし、このままじゃ勿体無いし。
いい、よね?
「いただきまーす、なの」
3:
「ごちそう様でした、なの!」
落ち着いてる間にすっかり遅くなっちゃった。
沈みかけの夕日もギラついてて眩しいし、セミもすっごく元気だし。
ホントに早く帰らなきゃ真っ暗になっちゃう。
「お地蔵さん、今度来た時はミキのお気に入り、キャラメルマキアートをご馳走したげるね! あはっ☆」
なでなで、ゴト、なでなで、ゴト……なんかゴトゴトする?
あ、このお地蔵さん、首の所がヒビ割れてる。
前掛けで隠してあるけどこれポッキリ折れちゃってるの。
キャラメルマキアートと一緒にボンドも持って来なくちゃだよね。
「っ、キャ!? ……んもー、強風注意なの!」
レッスン場を出る時にセットした髪がまたボサボサになっちゃった!
急にあんなに強い風が吹くなんて聞いてないの、フツーに立ってたら春香みたいにこけるとこだったの。
あ。
「お地蔵さんの、首……」
4:
地面に落ちて真っ二つに割れちゃってる、けど……ミキのせいじゃないよね!?
だって、急に風が吹いたし! それに最初から首は取れてたもん!
ミキがいなくても、きっとこうなってたってカンジ!
「む、むむー」
仕方ないことなんだから、お地蔵さんもそんな目で睨まないでほしいの……。
ちゃんとボンドでくっ付けておけば許してくれる、よね?
キャラメルマキアートだって奢ってあげるんだし……。
あ、おにぎりも付けてあげよ! うん、これならきっと許してくれるはずって思うな!
「だから、今日はもうサヨナラなのー!」
5:
うぅ、なんか胸のとこがモヤモヤする。
やっぱりすぐ直しに行かないとダメだよね?
でも今日はもうヘトヘトだし……明日行けば、明日、でも明日は遊びに行く予定だし……。
「むう、ただいまー……」
「おかえり、美希。って、ちょっあんたどうしたのその足!?」
「え、ひゃっ!?」
なにコレ!?
菜緒お姉ちゃんの声にもびっくりしたけど、これ、こんな。
「大丈夫? 痛くない? すぐ手当してあげるからそこで待ってなさい。ママー、救急箱どこー!?」
全然気づかなかった。
どこで切ったんだろう、こんなに大きな傷なのに痛みもないし、血も……。
12:
「これでよし、と。美希、ホントにどこで切ったか覚えてないの? 誰かに襲われた、とかじゃ」
「ううん、帰り道は誰とも会わなかったし」
「そう、ならいいんだけど……とにかく明日は病院に行こう、跡が残ったら困るでしょ?」
お風呂、は入れないよね。包帯ぐるぐるだもん。
汗がべとべとして気持ち悪いけど、濡れタオルで拭くぐらいしか出来ないかな。
それにしても、ホントにどこで切ったんだろ?
怖くて傷口は見られなかったけど、菜緒お姉ちゃんは結構深いって言ってたし……。
「美希、怖い顔してるけど傷が痛むの? やっぱり今からでも開いてる病院探して」
「あ、えと。なんでもないの、ありがとっ菜緒お姉ちゃん!」
なんでもなくないけど、痛くもないし大丈夫だよね。
……むぅ、びっくりして食欲もなくなっちゃった。
早く寝る準備しよっと。
13:
ふわふわ、ふわふわ。
雲の上って気持ちいいの。
おにぎりも沢山飛んでるし、お日様もぽかぽか。
まるで夢みたいなの、あはっ☆
「美希姫ー! 美希姫ー!」
この声は王子様?
ミキの王子様はどんな人なんだろう。
やっぱりカッコよくて、優しくて、ミキのこと一番に考えてくれて、それでそれで。
「美希姫ー! 美希姫ー!」
白いお馬さんも一緒だ! ミキのこと呼びながら、どんどんこっちに近付いてくる。
ミキも乗せて走ってくれるかな。きっと風が気持ちいいんだろうなあ。
「美希姫ー! 美 姫ー!」

今、なんか。
「美希ひ ー!  希ひ る!」
なんだろう、声がぐにゃってして。
「美希 る! 美希 !」
ラジオのボリュームを上げたり下げたりしてるみたいな。
あれ? 王子様の顔が暗くなってて見えないの。
それに、あの振り回してるのって?
「美 切る! 切るぅ! ひは、へはひゃひゃひゃひゃは!」
「ヤ、きゃあ!?」
14:
「ヤ、きゃあ!?……っ、はぁ、はぁ、んぐ、はっ、はぁ」
ゆ、め?
「はぁ、はぁ……ふうー」
すごく怖い夢、だったの。
王子様は王子様じゃなくて、大きな口で、目が無くて、錆びた刃物を振り回して。
それで、それであのままだったらミキの、首を。
「あんなことがあったから、かな。ヤな夢見ちゃったの」
お水でも飲んで落ち着こう。
パジャマも汗でびしょびしょになっちゃったし、それにもう眠れなさそうってカンジ。
「痛っ、あ……」
右足に巻いた包帯に血が滲んでる。
あ、痛い。ジンジンして、ズキズキして、どんどん、どんどん。
「うっ、ぐぅう……! 菜緒お姉、ちゃん、ママ、パパ……!」
体が熱い。
目の前もぼんやりして、風邪引いちゃったのかな。
痛い、なあ。痛いよ。助けて、菜緒お姉ちゃん。お姉ちゃん。
「う、う……ひっく、ぐす……」
どんどん暗くなる。
すごく痛い。けど、それも遠くなっていく。
……遠くなっていく。
15:
「私の声、聞こえますかー? ここがどこか、分かりますかー?」
「……びょういん」
「はーい、じゃあお名前と、今日が何月何日か教えてもらえますかー?」
「ミキは、ミキだよ。星井ミキ。今日は……えーと、いつだっけ?」
しばらく看護婦さんとお話して、段々どういうことか分かって来たの。
ミキが床に倒れてるのを見つけたママがヒャクトーバンしたこと。
ミキは救急車でこの病院に運ばれたこと。
三日間寝たままだったこと。
足の傷はまだしばらくかかるけど、跡が残ったりしないこと。
……浅いけど、首にも切り傷があったこと。
「ねえ、お姉さんは怖い夢見たりする?」
「怖い夢? んー、昔は追いかけられる夢をよく見てたけど最近は全然かな」
おまじない?
看護婦さんの左手に巻いてある茶色の紐がぷらぷらしてて、気になる。
「えい」
「? どうしたの、美希ちゃん?」
「あ、ううん。蚊が」
見間違い、だったのかな。
掴もうとした手の中には何もなくて、看護婦さんの腕にも何もなくて。
体温を測ったり、また色々質問した後で看護婦さんは部屋から出て行っちゃった。
「……あふぅ」
さっきまで看護婦さんの首に茶色い紐なんてなかったのに。
ミキの目、おかしくなっちゃったのかな。
21:
「もう帰っていいの?」
「ええ、色々検査してみましたがどうやら過労の様で」
「最近ダンスのレッスンばっかりだったからきっとそれのせいなの」
「足の傷がちゃんと塞がるまでは激しい運動を控えてくださいね、お休みが出来たと思ってこの機会にゆっくりしてください」
「うん、ありがと」
「いえいえ、人を助けるのがお医者ですから。あの、星井さん?」
「肩の……あー、なんでもないの。バイバイ」
ぼやっとしてる。
律子がよく言ってるツカレメってこれ?
夏の遠くの景色みたいに、お医者さんの肩がゆらゆらしてる。
言われた通りゆっくり休もっと。
「もしもし? うん、もう退院していいって。うん、分かった、お願いー」
ママの車が着くまで、ちょっとだけ日向ぼっこしてよっかな。
んー、夏も曇ってるとちょうどいいカンジ。
なんだか眠くなって来ちゃった。
『切るぅ!!』
「ひっ!?」
……あれは夢だから、あんなのただの夢だから、なんてことないの。
気にしちゃダメだよね、早く忘れなきゃ。
「やっぱり、病院の中で待とうかな」
23:
「……?」
微妙にだけど、変な臭い。
さっきまでこんな臭い、しなかったよね?
なんの臭いだろう、嗅いだことがあるような。どこから? こっち?
「うちの孫もねえ、幼稚園ででっかいおじいさんと遊んだーなんて言ってねえ」
「あら、そちらも? 子供って不思議よねえ」
ミキ、目だけじゃなくて鼻までおかしくなっちゃったの?
みんな、全然いつも通りってカンジ。
お年寄りばっかりだから鈍感さんなのかも。
むー、こっちの方かな……エレベーター?
「あ、この臭いって」
思い出した、何かが焦げた時の空気だ。
でも病院で火なんて、あ、扉が開く。
「えっ」
燃えてる。
エレベーターの中から赤い火が、ごうごう漏れて。
ススが、煙が、嘘?
中に。
誰か、中にいる?
ううん違う。
中で何人も、燃えながら。
「たすけて」
「熱い」
「たすけてっ」
「たすけてっ」
「ごほっ、げほ……!」
「熱い!」
「助けて!」
「嫌だ!」
「助けてくれ!」
熱い。
こっちに来る。
燃えながら、足を引きずりながら、ミキの方に、手を。
「美希?」
「きゃあ!?」
24:
ママ、がいた。
「どうしたの? ぼーっとしてたみたいだけど」
「あ、ゃ。はぁっ、は、はぁ、え? え?」
空っぽのエレベーター。
燃えてない。
誰もいない。
ここ何日かで見慣れた、いつものエレベーター。
「やっぱりまだ、頭がはっきりしない? 今からでも先生に言って、検査のやり直しを」
「だい、じょうぶ。うん、大丈夫だよ、もう元気になったから」
「? なら、いいんだけど……あ、帰りに退院祝いのケーキでも買いましょうか」
「ケーキ! ミキ、駅前のお店がいいな!」
「やっと元気な顔見せてくれたわね、じゃあ行きましょっか」
「うん!」
後ろから焦げた臭いがしたけど、振り向かなかった。
25:
「もぐもぐ、はむはむ、まふまふ、はぐはぐ」
うーん、この甘酸っぱさがやめられないの!
ふんわりスポンジに甘ーい生クリーム、それに赤くてかわいいイチゴ! いくらでも食べれそうなの!
「美希、足の方はどう?」
「ふ? ふぁほふぉへーふぁん!」
「はいはい菜緒お姉ちゃんだよー」
「もぐんっ……えっとね、まだ何日かは走ったりしちゃダメって言われたよ」
「そっか、それじゃアイドルも暫くお休み?」
「だと思ったんだけどね、小鳥から自主トレしろってメール来て」
「やるの?」
「やらないよ?」
菜緒お姉ちゃん、心配してくれたんだな。
普通に話してるみたいだけど、ちょっと泣きそうになってる。
「ね、菜緒お姉ちゃん」
「なに?」
「大好き! あはっ☆」
「ふふっ、どうしたのよ急に」
「今のミキはそんな気分なの、あ、パパ帰ってきた?」
「え? ちょっ、美希?」
玄関には誰もいない。
うーん、あれ?
ドアの音がしたと思ったんだけど。
「この時間、パパはまだお仕事してるよ。美希も知ってるでしょ?」
「うん……むー?」
「何? しばらく家族の顔見なくて寂しくなっちゃった?」
「……そうかも」
「寂しかったのは私達もだよ、ばか」
ぎゅって抱き締められた。
こんなに心配かけて、っていっぱい泣かれた。
えへへ、ただいま。
26:
菜緒お姉ちゃんの手、あったかいな。
「一緒に寝るの、久しぶりだね」
「寂しいならいつでも言っていいのよ? 昔みたいに手繋いでてあげる」
「ミキ、もう子供じゃないもん。でも今日はトクベツっ」
お布団の中で一緒にくすくす笑う。
ホントに久しぶり、最後に一緒に寝たのってミキがチューガク入る前ぐらい?
「じゃ、電気消すよー」
「はいなの!」
ミキがぎゅって握ると、菜緒お姉ちゃんもぎゅって握り返してくれる。
「ふふ、寝られないよ」
「ふふふっ」
握ったり、握り返されたり、握られたり、握り返したり。
菜緒お姉ちゃんの手、あったかいな。
27:
……あさ?
んー。
雨の音がうるさいー。
……おやすみなさいなの。
「美希、朝だよ!」
「あとちょっと?」
「五秒だけね、ごーよーんさーん」
「あと五時間?」
「ほらほら、もう起きるの!」
「足引っ張らないで?……ぐぅ」
「え? 引っ張ってないわよ?」
飛び起きた。
菜緒お姉ちゃんはベッドの脇に立ってる。
パジャマも着替え終わって出かけられる格好。
じゃあ、このお布団の下で今も足首を掴んでるのって。
「菜緒、お姉ちゃん? これ、めくってくれる……?」
「? ん、これでいい?」
想像してたような物は何もなかった。
シーツか布団カバーが絡まってただけ、だよ。
うん、そうに違いないの。
だってじゃないと、おかしいもん。
考えすぎなの。
「……あ。菜緒お姉ちゃん、雨だけど出掛けるの?」
「はぁ? 思いっきり晴れてるじゃない、ほら」
窓から青い空が見える。
夢、夢。寝ぼけてたの。
29:
「それよりどんな夢みてたの?」
「多分、雨が降る夢……」
「ふーん? 寝言で『行かなきゃ、行かなきゃ』って言ってたけど」
「行かなきゃ?」
「うん、苦しそうな声で何度も」
行かなきゃ? どこに? 事務所?
事務所に行ってもまたつまんないレッスンばっかりさせられるし、違うよね。
最近行ってないし、カラオケかな?
そういえば自主トレしろって言われてたんだよね。
うん、カラオケでボーカルレッスンなの!
好きな歌を好きなように歌った方が上手くなるに違いないってカンジ!
「じゃカラオケ行ってくるね!」
「あ、うん、行ってらっしゃい」
ふんふんふふーん♪
何歌おっかな、最近暗くなりがちだし明るいのがいいかな。
「痛っ」
……?
今、頭に当たったのってこの石ころ?
むぅ、誰? 人に石なんて投げちゃダメなの!
「……」
誰もいないし。
遠くで誰かが投げた石が、たまたまミキに当たった。
なんて、ありえないよね正直。
「痛っ」
また?
でも、さっきよりなんていうか、近いところから落としたみたいな。
上?
「……空が青いの」
いいや、カラオケ行こ。
33:
まずはマイクチェックからだよね。
『あー♪ あー♪ ちょっと音大きいかな、あー♪ らーらー♪ エコー弱過ぎ、と』
狭いなあ、お店ガラガラなんだから大きい部屋に案内してくれてもいいってカンジ。
こんなとこで踊ったら身体中アザだらけになっちゃうの。
エアコンもタバコくさいし、ハズレ引いちゃったかも。
「何歌おっかなー」
カタログ、カタログ。あ、もうこの曲入ってるんだ。
でも今はそんな気分じゃないしー、どーしよっかなー?
……狭いだけじゃなくて照明もダメダメなの。
チカチカして、ヤ! やっぱり部屋、変えてもらお。
35:
「失礼しました、ごゆっくりどうぞ」
「ありがとっ。そうだ、ポテト大盛りとカプチーノね」
「かしこまりました」
うんうん、結構いいふいんき。
机も端っこに寄せちゃっていいよね。
あ、でもまたマイクチェックからやり直しか。
んー、めんどくさいから歌いながらでいっか。
「それじゃ、テンション上げて行くのー!」
うんたん、うんたん、わん、つー、わんつーすりー♪
『もう 伏し目がちな 昨日なんていらない♪』
ちょっとオケ小さいかな。
『今日これか 始まる 私の伝説♪』

『きっと男が見 ば 他愛のな 過ち♪ ……むぅ、充電出来てないの?』
マイク交換なの!
36:
部屋に置いてたマイク、二本とも全然充電出来てなかったし。
なんか今日はついてないなあ。
「これはちゃんと充電出来てるよね?」
「はい、問題ありません。重ね重ね大変失礼いたしました」
「ううん、いいよ。ポテト特盛りにしてくれたら許したげるっ」
「あ、あはは……」
えっと。
どっちから来たんだっけ、こっち?
多分こっち、見た覚えがある気がする。
ここじゃなくてー、ここも違くてー、ここも飛ばしてー、も一つ奥でー、んー?
「間違えたかな?」
他の人が歌ってる。ってことは別の部屋だよね。
一回戻ろ。
「ここの通路のー、ここじゃなくてー、ここも違くてー、ここも飛ばしてー、も一つ奥でー……」
さっきと同じ部屋。やっぱり中に人がいる。
ミキ、部屋の番号間違えて覚えてたかも?
「お客様? あの、大盛りフレンチフライと特性カプチーノをお持ちいたましたが……」
「これ、ミキが注文した分? ここの部屋?」
「? はい、そうですけれど」
「じゃあ間違ってなかったんだ。ね、誰か間違えて入ってるみたいだから追い出して!」
37:
「もぐ」
ぜーんぜん味しないポテトなの。
……するわけないの。
イミ分かんない。
「もぐ」
店員さんが声かけても、ずーっと座って歌っててさ。
それでミキも文句言ったら、いきなり立ち上がって睨んでさ。
「もぐ」
そのまま、すーって消えちゃってさ。
……イミ分かんない。
「はーあ」
すぐに部屋変えてくれたけど、それって店員さんも見えてたってことでしょ。
もうミキだって分かってるよ。
最近こんなのばっかり、絶対おかしいもん。
カプチーノもポテトも全然美味しくない。
「帰ろ」
帰り道は朝聞いた音みたいな大雨だった。
石は三個飛んできた。
40:
「ただいまー」
がっちゃん。ぽたぽた。
もーびしょびしょなの。あんなに晴れてたのに、もうっ。
「ターオールー……ふぃー」
シャワー浴びたいけど、まだ包帯してるし。
これも濡れちゃったから巻き直さなきゃだよね。
「お帰り美希、早かったね。うわっずぶ濡れじゃない」
「ただいま、菜緒お姉ちゃん。外、すっごい雨だよ」
「音で分かるわよそんなの。あーあー廊下も濡れた足で歩いちゃって、ほらタオル貸して!」
あ、まだミキの髪拭いてるのに。
一応玄関マットで軽く拭いたよ?
前にも同じことして怒られたもん、ミキだって学習するの。
「そんなに濡れてな……」
はあ。
すぐ側の床は光の加減で見えなかったけど、玄関の方は足跡の形に水溜りが光ってる。
ミキのは拭いてあったからそんなに光ってない。
隣の小さい足跡はびっちょびちょ。
「いい加減にしてよ!!」
「きゃ!? み、美希?」
「なんでこんなっ、ミキばっかり……! もうやだ! やだ、よぉ……!」
「ちょっと、美希? 美希、どうしたの!? 美希!?」
菜緒お姉ちゃんに抱きしめられてわんわん泣いてたら、後ろの方で誰かも一緒に泣いてた。
菜緒お姉ちゃんには聞こえなかったみたい。
41:
菜緒お姉ちゃん、やっぱりあったかいなあ。
あったかくて、やわらかくて、いいにおいで、やさしくて。
「……そ、か。辛かったね」
「うん」
「怖かったね」
「うんっ……」
お姉ちゃんに色んなことを話した。
ないものが見えたり。
耳の側で声が聞こえたり。
空から小石が落ちて来たり。
ラジオの電源がいきなり入ったり。
お気に入りのマグカップが弾けたり。
本棚からいつの間にか本が出っ張ってたり。
車に轢かれそうだった子供がいたはずなのに誰もいなかったり。
色んなことを。
「落ち着いた?」
「……ううん」
「じゃあもうちょっとこうしてよう」
「ん……」
泥だらけの足が目の前に並んでる。
何本も。何本も。何本も何本も何本も何本も。
上の方、見たくないなあ。あ、こっちの足は爪が剥がれてる。
よく見たらどれも傷だらけだ、指のないのもある。
「美希、お寺とか行ってみる?」
「そしたら?」
「そしたら、もう怖いのなんてなくなるかも」
喋ってる間もどんどん増える足。
お化けは足がないって、ウソだったんだね。
左だけのは、やっぱり右側をどこかに置いて来たから?
「お祓いって言ってね、お坊さんが魔法で悪いものをやっつけてくれるんだって」
「悪いもの……それがミキに意地悪してるの?」
「うん、多分ね」
目玉と腕が一緒に落ちてきた。
菜緒お姉ちゃんに抱きついたら、きゅって抱き返してくれて、だからまたわんわん泣いちゃった。
あったかいなあ。
42:
気付いたらいつの間にか菜緒お姉ちゃん以外いなくなってた。
いっぱい泣いたし、言いたかったことも全部言えてスッキリしたし、結果オーライかな!
「替えなきゃだね」
「え?」
「包帯。びしょ濡れでしょ?」
「あ、うん」
これ、いつまで巻いてなきゃいけないんだろ?
病院の人は接着剤で傷口を留めてるとか色々話してたけど……むぅ、よく分かんなかったの。
でも跡は残らないって言ってたから、まーいっかーってカンジ。
治す為ににがーいお薬飲んだりしなくていいしね、あはっ☆
「え?」
「へ?」
傷のあった場所がデコボコに膨らんでる。
セロテープみたいなのが傷を塞いでて、その下からデコボコデコボコ……これ、ホントに大丈夫なの?
「これ……動いてる?」
ミキ、足にチカラ入れてないよ?
「だってこれっ」
じっと見てるといきなりデコボコがぐにって歪んで、ぴくぴく震えて。
ナニ、これ。
「ナニ、やだ。やだこんなの、ミキの足、ヤ、やだ」
ぴくぴくがビクビクになって、ぐにゃぐにゃになって、テープが弾け飛んで。
「がぼっはっはっはっはっは! ごぼぼっげぼっあーっはっはっはっはっごぶっはっはっはっはっはっは!!」
傷口が、血を吹き出しながら笑った。
43:
「あーはっはっはっはっごぼぉ! げぶ、ごぼっはっはっはっはっぐぶっはっはっはっはっはっはっ!!」
やだ。
「のっ、このぉ!!」
「うぁあ! ひっく、うぅ、あぁ……!」
菜緒お姉ちゃんもミキも泣きながら足をぐるぐる巻きにした。
押さえつける度、顔に、体に、床に壁に天井に血が飛び散ってた。
耳の奥まで届くようなうるさい笑い声を我慢しながら、何重にも何重にもぐるぐる、ぐるぐる。
それからしばらくごぼごぼ言いながら笑ってたアレは、段々声が小さくなって、十五分ぐらいでやっと静かになった。
辺りは真っ赤で、ぬるぬるしてて。
ぐるぐる巻きの包帯も赤く滲んでて。
いくつもの生首が飛び回りながら、黒い舌で天井や壁の血を舐めてて。
「美希」
「ぐす……うん」
もうこんなのヤだもん。
もう全部終わりにしたい。
オハライ、してもらわなきゃ。
48:
金色でぴかぴかなお寺の中。でっかいお地蔵さん。ダイブツって言うんだっけ?
「これは悪霊が取り憑いておりますな、すぐにでも対処せねば命に関わります。何、愚僧にお任せあれば心配いりません」
真っ白な長いヒゲと、たぷたぷしてるお肉。
このおじいちゃん、いわゆるミエルヒトってやつ?
「美希、何も心配いらないからね。住職、よろしくお願いします」
ママたち、部屋から出て行っちゃった。
これからオハライが始まるんだね……。
「星井、美希さん。アイドルをしているそうですな」
「うん、今はお休み中だけど」
「目立つ職業ですからな、人より嫉妬を買いやすいのでしょう。ふっふ、そんなに怖がらずとも大丈夫です。では、始めますよ」
あ、なんか頼りになるかも?
このおじいちゃんなら、ズキズキしてる足も何とかしてくれそうなの。
「では、こちらに……」
「はいなの」
ちっちゃいテーブルと平たいお皿。
お屠蘇って言うんだよね、これ。
「お神酒にはまだ手を付けてはいけませんよ」
「はいなの」
「では、少々苦しいでしょうが正座は崩さずに……」
あっち向いてムニャムニャ言いながら埃取り振り回し始めちゃった。
足、ホントに痛いんだけどな……。
49:
もうどれ位経ったの?
まだ終わらないのかな……。
「??、????! ??……」
まだバサバサやってる。
足、崩したい……ズキズキ、どんどんおっきくなってて……。
「お神酒を飲んでください。一息でですよ」
「はい、なのっ」
あれ? おじいちゃんの後ろにいる女の人、誰?
「どうしました?」
「ぁ、ごめんなさいなの……んっ」
熱い。口の中も喉もお腹も焼けるみたい。
あ、でもちょっと、痛いのマシになった、かも。
「??、????!」
バサバサやってる。この呪文、眠くなっちゃうってカンジ……。
ううん、ちゃんと起きてないと。
オハライ、してもらわない、と。
「??……??……」
暑……はれ?
ぐにゃぐにゃ。
天井、ぐるぐるまわって。
「??……」
耳の奥……キーンてする。
ダメ、おきてないと。
暗いの、ヤ……。
「……」
50:
「……」

「……へへ」
暑い、な。
ここは……お寺で、オハライしてて。
それから。それから?
ん、くすぐったい。
誰か、触ってる。
「もう……だろ……」
誰?
「よっ……」
お寺で、オハライしてて。それから。
これ、さっきのおじいちゃん?
……?
「っ……ヤ!」
「いで!? もう起き……お、お祓いの最中です! 暴れてはなりません!」
なんで? なんで、ミキの服……!
「ウソつき! ウソつき、ウソつき!」
「くそッ、このガキ……!」
「キャッ!? 痛っ」
髪、引っ張られて。
腕もムリヤリ押さえ付けられて。
足の間、体を割り込ませて。
「やめ……やだ、やだぁ!! ママ、ぱぱぁ!!」
「へっ、へへへ!」
女の人が、そこにいた。
51:
おじいちゃんの首にクッキリ。
ううん、跡だけじゃない。
薄くだけど指先が。
「か、ギぁ……!」
溺れてるみたいにバタバタもがいて、その腕の先、首元に。
何本も、何本も指が絡みついてる。
どんどん首の形が変わって、小さく潰れて行く。
「これって」
女の人の指だ。
キレイに手入れされた指。
星やハートが描いてあるかわいい爪。
……手首には、何本も線が入ってて。
たくさんの真っ白な腕が、おじいちゃんの首を締めてる。
首だけじゃない。太い指にも絡みついて。
「んグっ!?」
「ひっ!」
ぼとっ。ぼとっ、ぱたた。
赤くてぶよぶよしたものがくっ付いた爪。
床に垂れる水みたいな音。
「し、死んじゃうよ……」
ぼとっ、ぼと、ぼとっ。
おじいちゃんが苦しそうな声を出す度に、床に爪が増えていく。
「死んじゃうよぉ!」
女の人と目があった。
……泣いてる。
悲しいの? 苦しいの?
「くやしい」
消えちゃった。
52:
「菜緒お姉ちゃん、そんなに謝らなくていいよ」
って、何度も言った。
言う度にまた泣いちゃって、また何度も謝ってきて。
胸の奥がチクッてして痛かった。
「痛いなあ」
ママもパパも、ミキの顔見ると辛そうな顔してた。
ミキ、めーわくなのかな。
「痛い、な……」
まだ痛む足。包帯の下でアレがヒクついてる。
見える数もどんどん増えて、ハッキリしてきてる。
頭も、目も、ズキズキ。
ズキズキ。
「最近ヘンなことばっかりなの」
いつまでこのままなんだろう。
57:
見つからない。この辺じゃなかったっけ。
2階かな、足も痛いし上りたくないんだけど。
「ママ、頭痛のお薬どこ?」
「どうしたの美希!? 頭、頭が痛むの!? すぐ病院に!」
あー、もー。やっぱり菜緒お姉ちゃんに聞けばよかったの。
「違うよ、ちょっと痛むだけ」
うそ。
すっごくいたい。
「これ? ありがと、ママ」
心配そうな顔、させちゃってるなあ。
ミキ、悪い子かも。
「痛……」
はあ。お薬飲んで、もう寝ちゃお。
足を引きずりながら部屋に戻って。
お薬も飲んで、ベッドに横になって、それから、それから。
58:
ふわふわ。
土の匂い……風の音。
「?」
海の中で目を開けてるみたいにぼやっとしてる。
あれは空、かな。これは……なんだろ。壁?
「……、……」
誰かの声。
聞いたこと、あるよね? 誰だっけ。
「……、……」
キラキラして眩しいな。もしかして、あれって夕日?
なら、さっきからユラユラしてる黄色のこれは?
きゃ!? あ、頭グリグリしてくるの、誰!? やめて、やめてよ!
「……、……」
ヤ、落ちっ
59:
「これ、え? ……え?」
さっきよりずっと地面が遠い。
気がつくと、見下ろしてた。
「お地蔵、さん」
足元に、割れて二つになったお地蔵さんの頭。
赤いのが広がってる。
そうだ、あの日お地蔵さんの頭を落っことして、後で直そうと思って、それから。
「痛っ」
包帯の巻かれていない足。
あの日見た大きな切り傷が、赤いのが、血が、地面に垂れてた。
そのままどんどん広がって、全部真っ赤になって、それから、それから。
60:
起きたら汗でビショビショだった。
「っ……はぁ、はぁ、はっ、はぁ……」
夢、だけど。夢だったけど。
違う。
行かなきゃ!
「美希ー? 具合は……美希!?」
「菜緒お姉ちゃん、自転車のカギ!」
「え? 自転、今チェーン外れてて、あっちょっと! こんな時間にどこへ、美希!?」
すっごく痛いけど。
身体は重いし、頭もフラフラするし、丸太みたいに腫れた足じゃ全然スピード出ないけど!
行かなきゃ!
61:
夜はたくさん見える。
「ふっ、ふぅ……はぁ、はぁ、ん……!」
空いっぱいに生首が飛んで泣いてるし、壁に付いてる目がニラんでるし。
地面から生えた緑色の手がミキの足を掴もうとしてきたり。
車の窓をベロベロ舐めてる腕のないおばさんがいたり。
足と頭だけの猫が横切ったり。
「ぐっ、うぅ……ふぅ、ふぅ……!」
「はぁ、はぁ、はふ、ふぅ」
また、すぐ後ろについてきてる。
首筋に息が当たって気持ち悪いけど、振り向くと家の中まで入って来る人。
もう、ついてこないでよ。
「はぁ、急い、でるのに、はぁ、ふぅ……!」
右に曲がって、川を越えて、真っ直ぐ行って、左に曲がって、道路を渡って、壁沿いに進んで。
「えっと、あっちだから……こっち!」
あの日、たまたま通った竹林。
近道しようとしなかったら、こんなことにならなかったのかな。
「はぁ、はぁ、はぁ……!」
道の隅っこで足を探してるお兄さん。
電柱に絡みついてるおばあさん。
半分だけの体で手を繋いで歩く幼稚園児。
鼻から上が生えてる植木鉢。
燃えながら走るバイク。
緩んできた包帯の下で、アレが笑ってる。
「はあ……はあ……やっと、だよ……」
やっと、着いた。
62:
「あ」
くっつけるもの、持って来てない。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう……」
「ぐぶっはっははは!! はっはっはっごぼっはっはっ!!」
「うるさい!」
叩く。血がびちゃって飛び散る。
……まだ笑ってる。千切れそうなぐらい痛い。もう、立ってられない。
「どうし、よ……え? 直って、る?」
割れてない。
ううん、顔にヒビはあるけど、ちゃんとくっ付いてる。
首のところも、ちょっと欠けてるけどくっ付いてる。
「そっか、あの後誰かが見つけて」
直してくれたんだ。
そうだよね、お菓子も新しくなってるし。
ここにずっとお参りしてる人がいたんだ。
「……ごめんなさい、なの」
謝らなくちゃ。
「お菓子、勝手に食べちゃってごめんなさい。お地蔵さんの頭、割っちゃってごめんなさい。直すの忘れてて、ごめんなさい」
なんで涙が出て来るんだろう。
「ごめんなさい、ぐす、ごめ、なさい……」
胸の奥がきゅーって痛くなって、代わりに足が痛くなくなって。
「ごめん、なさい……!」
笑い声が聞こえなくなって。
何も聞こえなくなって。
それで。
それから。
66:
あーもーフラフラなの。
「美希、お帰りー」
「ただいまなのー……あ、春香クッキー作ってきたんだ? 一枚もらうね!」
「あ、返事も聞かずに!」
「んー、おいふぃー♪」
やっぱりダンスレッスンの後は甘いものだよね。
しばらくゴロゴロしてたからちょっとリズム掴めなかったけど、ミキ的には今日で完全復活ってカンジ。
さっくりもふもふ、春香のクッキーはサイコーなの!
「……ん」
窓の外と目が合う。
「美希? なんか怖い顔してるよ?」
「あっ、とー。んー、なんでもないっ」
「ならいいけど……あ、お茶入れて来るね」
あの後。お地蔵さんのお家の前で倒れた後。
顔に当たる雨で目が覚めた。
またすぐに謝らなきゃって気持ちになったんだけど、お地蔵さんの顔が笑ってるように見えて。
ふっと見たら、足が元通りになってた。
血を吐きながら笑う顔も、あんなに大きかった傷跡も最初からなかったみたいに、元通り。
やったやったやったって喜んでたら、車に乗ったママが迎えに来て、泣かれて、抱きしめられた。
パパや菜緒お姉ちゃんも一緒で、みんながミキに抱きついて、雨に濡れながらわんわん泣いた。
それが三日ぐらい前の話。
「お茶入ったよー」
「ありがと、春香」
「どういたしまして」
67:
「美希、復帰してからぼーっとすること増えたよね」
「そう? 気のせいだと思うの」
「さっきだって窓の外見て」
「あ、あれはでっかい蛾が飛んでて」
「……」
「ホント、だよ?」
「……別にいいけど」
だって信じないよ。
顔が飛んでるなんて言ったら、ミキ、また病院に連れて行かれちゃうもん。
「おかえり」
「もう十回は聞いたよ?」
「それでもおかえり、美希」
「はいはい、ただいまただいま」
この音だって聞こえてないんでしょ?
言えないよ。
「春香ー、お茶おかわりー」
「仕方ないなあ、もう」
「……そんな顔しても、あげないよ」
びたん、びたんって窓にぶつかる音。
十個ぐらいの同じ顔が、何度も窓にぶつかる音。
「美希、何か言った?」
「早くしてーって言ったよ」
「ならちょっとは手伝ってよぅ」
「もう、仕方ないのー」
「ぐぬぬ……」
この事務所には入って来られないみたいだし、多分もーまんたい?
68:
数が減った。
壁や地面に体が生えてることなんてない、足音だけがついて来たりしない。
テレビを見ててもいきなりお葬式が流れたりしないし、目の前に飛び出してきた誰かがその場で消えたりもしない。
「うっ、こっちの道……遠回りしよ」
数は減ったけど、それでも見える。
噂話になるような交差点とか、いかにもな暗い路地とか、事故があってすぐの場所とか。
なんていうか、強い気持ちが残ってると見える、みたいな……ミキもよく分かんないけど。
「はぁ……はぁ……」
「じゅる、ふひ……はぁ……」
「はぁ、はぁ……ひっふひひっ」
「うっとうしいなあ」
パパがちゃんとしたお寺からもらってきたお守りとお札、効果はバッチリみたい。
顔も回りをぐるぐるしてるだけでそれ以上近づいて来ない。
けど……さっきの考え方だと、これも強い気持ちのあるお化けなんだよね?
同じ顔の人がそんなに何人もいるのかな?
「んー、考えても分かんないものは分かんないの」
早く帰ってケーキ食べよっと。
69:
「おはよーございまーす、なの。小鳥だけ?」
「おはよう、美希ちゃん。そうだ、丁度いいしこっちに来てもらえる?」
引っ張られた先。ソファに誰かが座ってる。
「? ……この人、誰?」
あっち向いてて顔は見えないけど、男の人だよね。
「うふふ、そろそろうちも本格始動しようって話は前々からあったんだけど」
何してるんだろ、机の上には雑誌がいっぱい並んでる。
「美希ちゃんがお休みしてる間に、遂に社長がスカウトして来たのよ!」
記事のスクラップ、かな? ファンの人?
「タイミングが合わなくて、美希ちゃんとの顔合わせは今日が初めてになっちゃったけど」
この人、ちょっと変な髪型なの。
どこかで見た気もするけど……どこだっけ?
「なんと! 765プロ待望の!」
ん? あの雑誌……あっちのも、こっちのも、全部ミキが載った時の奴だ。
「プロデューサーさんでーす! ささ、自己紹介をどうぞ!」
男の人が立ち上がる。
あ、やっぱりスクラップしてたんだ。
「はじめまして、なんて言うのは変かな」
だって右手に、おっきなハサミを持って。
「やっとだ、やっとこんなに近くで会えた」
この顔、見たことある。
毎日飛び回って、ミキの周り、を……違う、それだけじゃ、ない。
「俺の」
ライブ会場でも、ラジオの生放送でも、何度も見たことある。
いつも一番前で、一番大きな声出してた、あの顔。
70:
「俺の……美希姫」
ハサミが光って。
――――赤く、染まった。
おわり
71:
ホラーになってたらいいな
夏は終わったが、我が765プロはいつでも君のホラーSSを待っているぞ(一朗ちゃんボイス)
じゃあの
7

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