薔薇乙女のうた『マグロ・アンド・ドラゴン』back

薔薇乙女のうた『マグロ・アンド・ドラゴン』


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真紅
ローゼンメイデン第5ドールにしてアリスゲームを制した究極の少女。
他人の話を聞かない女王様。手先が器用で工作は得意だが料理の腕は今一。
「何事も暴力で解決するのが一番よ」
雛苺
ローゼンメイデン第6ドール。真紅には下僕として扱われ、翠星石からはオモチャ扱いされる。
「トモエも知ってるのよねー! ジュンは変態さんなのよー」
翠星石
ローゼンメイデン第3ドールであり夢の庭師。通称『働かない庭師』。
イタズラが大好きで暇さえあれば近所の子供に催眠術をかけようとしている。
「まだ意識があるですか!? 頸椎を狙ったはずですのに」
蒼星石
雑学知識豊富な第4ドール。翠星石の双子の妹で同じく夢の庭師。こっちはちゃんと働く。
真紅、雛苺、翠星石を『桜田家の三馬鹿』と最初に言い表したのは彼女。薔薇屋敷在住。
「くっ! ええい! ナムサン!!」
金糸雀
第2ドール。バイオリンが弾ける。
水銀燈
最凶の第1ドール。強い、賢い、美しいと三拍子揃った長女だが二言目には憎まれ口を叩く。
「右の鼻の穴からピンセットで鼻毛を一心不乱に引き抜いては、隣の左の鼻の穴の中に移植していたっていうの?」
雪華綺晶
何か色々あって、ようやく実体化できた第7ドール。性格もわりと普通になった。
しかし、時々ねっとりと野獣じみた眼光で雛苺を見つめている事がある。
「……ええ、おはようございました」
薔薇水晶
ローゼンの弟子を自称する槐が作ったドール。ラプラスの魔と雪華綺晶もその製作に関わった。
「マウンテン真紅は漫画を読みながら鼻くそをほじってますね」
599 :
桜田ジュン
真紅、雛苺、翠星石、蒼星石そして雪華綺晶のマスターでありマイスターローゼン。
チビ人間、マエストロ、桜田(弟)、ホモゲロムシなど彼を言い表す言葉は実際多い。
桜田のり
ジュンの姉。三馬鹿とジュンを生温かい目で優しく見守り続ける。
柏葉巴
雛苺の元マスター。ジュンの幼馴染で同級生で委員長で通い妻。
オディール・フォッセー
雛苺の元マスターであるコリンヌの孫娘。日本文化を愛好しているが勘違いも多い。
草笛みつ
金糸雀のマスター。金糸雀を溺愛する一方で、水銀燈の餌付けにも成功した。
結菱一葉
蒼星石の元マスター。薔薇屋敷の主。車椅子に乗ったり乗らなかったりする。
結菱二葉
一葉の双子の弟。幽霊であり、薔薇屋敷に居ついている。
幽霊の先輩として柿崎めぐにインストラクションを与えることがある。
柿崎めぐ
水銀燈のマスター。原作で死んだので幽霊になったが、水銀燈との契約は続行中。
600 :
庭師連盟
nのフィールドに居を構える夢の庭師達の共同体。nフィー内の最大派閥の一つである。
蒼星石も名誉会員として在籍している。翠星石は面接試験で落とされた。
庭師十人兄弟
庭師連盟の枢軸を担う九男一女の兄弟。全員が『庭師道具』を持つ凄腕の庭師らしい。
トキ
庭師十人兄弟の末弟。庭師の剣を兄弟の長男であり庭師連盟の盟主でもあるカズキから受け継いだ。
礼儀正しい純朴な少年風の人物だが、諸事情により水銀燈にそのハートを鷲掴みにされており
彼女の前では舞い上がったり、奇異な言動を取りがちになる。
ジャバウォック
生前の柿崎めぐのダークサイドから生まれた黒い竜。その誕生にはラプラスの魔が関わっているらしい。
nのフィールドに棲んでいるが一頭だけでなく何頭もいることが判明した。人語を操る個体もいる。
601 :
オディール「ブラァボーーーッ! さすがは東京スゴイタカイツリー! 絶景ですネー!」
雛苺「うぃー! まるで鳥さんになった気分なのー!」
巴「オディールさん、雛苺、あっちに両国国技館が見えるわよ」
オディール「レアリィ? スモトリいますか? 見えますか!?」
巴「いや、そこまではちょっと分からないけど」
雛苺「ヒナもお相撲さんを見たいのー」
のり「あわわわわ、オディールちゃん、ヒナちゃん走ると危ないわよぉ…」
巴「…? のりさん大丈夫ですか? 先ほどから顔色が青いですよ」
のり「た、高いところって実は苦手なのよ?。もう本当ぎりぎり、今にも失禁すれすれよぉ」
オディール「失禁!? Oh! ファンタスティック!」
巴「オディールさんファンタスティックの使いどころ違う。それに何でフランス人なのに英語のカタコト…」
オディール「細かいことは言いっこなしです! それにジャポネーズはしめやかに失禁するのが奥ゆかしさ重点!」
雛苺「うゆゆ、オディールが何を言っているのか意味が分からないの」
のり「フランスに帰国中の間に、また何か変な漫画かアニメで間違った日本観を育ててしまったみたいね」
オディール「とにかく久しぶりのジャポネ、もっともっと案内してくださ?い」
のり「昨日から観光ぶっ続けなのに元気ね?オディールちゃん」
巴「昨日はチケット切れだったけど、今日はスカイツリーに登れてよかったわね雛苺」
雛苺「うぃ?」
602 :
のり「きゃっ!? 何、この大きな音? 館内のサイレン? アラーム!? それとも昔懐かしのブブゼラ」
巴「何か事件が…?」
オディール「ひょっとしてテロルですか!? それともミヤモトマサシのクローンが地下で復活ですか!?」
観光客達『なんだなんだ!? 一体、何が…!?』ざわざわ
雛苺「うゆゆ!? み、見て! 何かおかしいの! 回廊の向こう側が…」
巴「え?」
のり「照明が奥の廊下からどんどん順番に消えていく!? て、停電!?」
巴「それだけじゃありません、のりさん! よく見て!」
のり「ッ!?」
オディール「インクレディブル…ッ! 床や壁がささくれやかさぶたのように痛々しく剥がれて…!?」
のり「やだ、剥がれた後がまるで…赤黒い血の色みたい!」
雛苺「あやややや! 何なの!? 何が起きているのよ!?」
巴「分からない! けど、どんどん停電の闇や床板と壁紙の崩壊が近づいて来ているわ。このままじゃ…」
のり「逃げなくちゃ! 皆、反対方向に…」クルッ
603 :
巴「後ろからも既に赤黒の崩壊と闇が迫って…!!?」
雛苺「逃げ場がないのー!」
オディール「おお、神よ…」
ブオーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
巴「うっ!? サイレンが急に大きく!」
オディール「何て不快なサウンド…っ!?」
雛苺「うにゃにゃにゃ、足に力が入らないの」
のり「ど、どうしよう!? このままじゃぁ…!」
雛苺「わーん! 怖いのー! ヒナ、死んじゃうのー!」
巴「泣かないで雛苺。何があっても私達は雛苺の傍にいるから」
雛苺「ほ、本当?」
オディール「本当です! だから気をしっかり持って」
雛苺「じゃあ…、じゃあ! ヒナの手、みんなで握っていて離さないでほしいの!」
のり「分かったわヒナちゃん! ほら、これで怖くない」ギュッ
オディール「私も握手です」ギュッ
巴「大丈夫。きっと大丈夫だから雛苺…」ギュッ
ブオーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
604 :
ラプラス「や、やめてください! お願いします! どうか…」
水銀燈「しらばっくれるんじゃあないわよぉ!」ドコォ
ラプラス「ぐはぁ!」
真紅「ネタは上がっているのだわ! 大人しく全て白状なさい!」バコッ
ラプラス「ぎゃっ!?」
翠星石「オラオラ! これでも食らえですぅ!」ボコッ
ラプラス「ぐあああ…っ」
605 :
真紅「あ、ジュン」
翠星石「見てのとおりですぅ。ラプラスの魔を囲んで棒で叩いているのですよ」
ジュン「何故、そんな真似を…」
ラプラス「ぼ、坊ちゃん! お助けを! マイスターローゼンの威光で、この暴力ドールズを鎮めてください」
水銀燈「戯言ぬかすんじゃあないわよ! 元はと言えば悪いのはアンタ!」ドスッ
ラプラス「ひぎぃ!」
ジュン「ま、まあまあ…。理由は分からないが、それぐらいで許してやったらどうだ?
  アリスゲームの時、確かにコイツに良い思い出は無かったが…」
水銀燈「その時の負債を今、このウサギに払わせるために拷問している」
ジュン「負債?」
真紅「ジャバウォックよ」
ジュン「じゃばざはっと?」
水銀燈「ジャバウォック! めぐの生前の暗黒面から生まれたドラゴン。忘れたの!?」
ジュン「良く覚えている…とは言えないが、それがどうかしたか? もうジャバウォックはいないんだろ?」
翠星石「馬鹿チビ人間! ジャバウォックは一匹だけじゃないのです!」
水銀燈「私達も長い間そう勘違いしていた、けど二匹…いや三匹以上は確実にいる!」
ジュン「まじで!?」
真紅「そうよ。かつてお父様の作った不思議のダンジョンで出会った個体に…(※1)」
翠星石「庭師連盟のカズキが討伐したブラックドラゴンも実はジャバウォックだったと判明しているです(※2)」
水銀燈「その他にもnフィー内でいくつか似たような存在の目撃証言が散見されている(※3)」
※1 薔薇乙女のうた『こんにちは赤ちゃん/不思議のダンジョンのアリス』  
※2 水銀燈と竜の骸に湧く蝿  
※3 ドわすれ金糸雀  
606 :
水銀燈「めぐを利用してジャバウォックを生み出したのはラプラスの魔よ」
真紅「だから、こいつをしばいて情報を得ようとしているわけ」
翠星石「ほらほら、とっとジャバウォックの総数とその居所を教えやがれですぅ!」
ラプラス「ですから先ほどから申し上げているとおり、あの時の私はあなた達のお父様…ローゼンさんと
   三日三晩、徹夜でマージャンしていた後のことで自分でも何も覚えていないんです!」
真紅「嘘おっしゃい! 小学生でももう少しまともな嘘をつくわよ!」ドゴッ
ラプラス「ぐはっ! 本当です! 信じてください! このウサギの尻尾にかけて嘘は言っておりません!」
翠星石「やかましいです! さっさと真実を言わねば、その尻尾もちょん切るですよ!」
ラプラス「ひぃいい! 本当ですってば! しかも接待麻雀で私、ローゼンさんに勝利を謙譲していたんですよ」
水銀燈「斬新な言い訳ね。長く苦しみたいと見えるわ」ドグシャアッ
ラプラス「ぐはっ…!」ガクッ
真紅「あらやだ、ラプラスの魔が気絶したわよ」
翠星石「やりすぎですぅ水銀燈」
水銀燈「ちっ。そこの人間、今すぐ塩水を持ってきなさい。こいつにぶっかけて目を覚まさせる」
ジュン「待て待て待て待て待て! そもそも、どうしてそこまでジャバウォックに固執する?」
真紅「え、なんで…って? それは…」
翠星石「えーと…、なんででしたっけ? 水銀燈?」
水銀燈「…あんたらは理由も分からずラプラスの魔に殴る蹴るの暴行を加えていたと言うの?」
真紅「いや、だって水銀燈があまりにも楽しそうに棒で殴っていたから、つい…」
翠星石「薔薇乙女として乗り遅れてはいけない流行のビッグウェーブであると直感したのですぅ」
ジュン「……」
607 :
ジュン「うわああああああああああっ!? か、柿崎さん!? いつの間に横に」
めぐ「いやぁだ、も?! さっきからいたわよぉ? ジュン君」
水銀燈「…真紅達のマスターが今の今までめぐに気付かなかった、いえ
  気付けなかったように、めぐの存在感がかなり希薄になってきている」
翠星石「カナチビみたいなもんですね」
水銀燈「あんなポンコツとめぐを一緒にしないで頂戴。これは幽霊としてのめぐが不安定であるためなの」
ジュン「どゆこと?」
めぐ「二葉さんにも相談してみたんだけど、私のように満足して死んだ人間はそもそも幽霊にはなりにくい。
 なのに幽霊になった。それゆえに不安定。そうでなくても、幽霊の一年生の偶発的な成仏率は高いそうよ。
 逆に最初の一年間ぐらいの時期を乗り越えた幽霊は安定した浮遊霊や地縛霊になれるらしいの」
ジュン「安定した幽霊って、どういうことだよ」
真紅「最初の一年間を乗り越えれば大丈夫とかって、縁日で掬ってきた金魚みたい」
翠星石「考えるな、感じろ…ってレベルの話ですぅね」
水銀燈「結局、めぐは幽霊になったとしても体力がない。
  病魔に怯える心配はなくなっても、今度はnフィーの怪魔に怯えることとなった」
翠星石「nフィーがやべぇなら現世で暮らせばいいじゃねーですか」
水銀燈「私とめぐが揃って暮らせて、騒ぎにならないような場所は得がたい」
めぐ「薔薇屋敷に住まないかって誘われたこともあったんだけどねぇ…。水銀燈ったら天邪鬼だから。
 それでも何だかんだ言って、水銀燈が体を張って私を守ってくれてはいた」
ジュン「それで結局、柿崎さんのためにジャバウォックをどうしようって言うんだ?」
水銀燈「ジャバウォックは言わば、生前のめぐから切り離された力の結晶。それも成長している」
真紅「なるほど、少し見えてきたわ。水銀燈あなたのやろうとしていることが」
608 :
水銀燈「当初は単純にジャバウォックを飼いならして私達の護衛にできればいいと思った。
  今でも、その方法は考えてある。けれど別の方法としては、めぐをマスターとするドールである
  私がジャバウォックのエネルギーを吸収すれば、めぐにも力として還元されるはず」
翠星石「ほへぇ?」
真紅「なるほど。DIOがジョセフ・ジョースターの血を吸って馴染んで最高にハイになったのと同じ原理ね」
ジュン「同じ原理なのか?」
水銀燈「ジャバウォックの居場所に関してはnフィーで地道に捜索を続けて、いくつか目撃情報も得たけど
  ついに二進も三進もいかなくなって、こうしてラプラスの魔に情報提供をお願いしていたというわけ」
めぐ「ラプラスの魔に頼るのは絶対に嫌だって、水銀燈は言っていたんだけど流石にそうも言ってられなくてね」
水銀燈「逃げ回るラプラスの魔の尻尾を捕まえられたのが、たまたまこの家の庭だった」
翠星石「そしてたまたま翠星石達も、そこに出会わせたのですぅ」
真紅「えっへん」
ジュン「何故、真紅が威張る? それはそうと頼み込むのが嫌なのは分かるが、何もここまで強硬手段に出なくても」
ラプラス「ま、まったくそのとおりです…」プルプル
真紅「あ、ラプラスの魔が息を吹き返したわ」
翠星石「よっしゃ、これでまた棒で殴れるですね」
水銀燈「真紅達のマスターもやる? 棒は余ってるわよ」
ジュン「やらないっての。と言うか、止めろって」
真紅「君がッ! 吐くまでッ! 殴るのを止めない!!」ドボォ
ラプラス「ギャーーーーッッ!」
ジュン「止めろって言うのが分からんのか、こら!」ガシッ
真紅「離して頂戴ジュン! こいつだけは私がこの手で…!」ジタバタ
ジュン「ああもう! ワケの分からんことを!」
609 :
翠星石「えいっ! えいっ!」ドコッ
ラプラス「ぎゃひー!」
水銀燈「とりゃっ! とりゃっ!」ズガッ
ラプラス「おごーーっ!」
真紅「ほら見なさいジュン。私を止めたところで他の二人は棒で殴るのを止めないわよ」
ジュン「くっ! 本当になんなんだお前達は。暴力の申し子か」
めぐ「これが薔薇乙女よジュン君」
ジュン「達観しているんだか諦観しているのか分からないこと言わないで柿崎さん」
金糸雀「いや、その! ちょっと待った! 待ってって言ってるかしら! 大切な話が…」
翠星石「うりゃっ! うりゃっ!」ドボッ
ラプラス「ひょんげー!」
水銀燈「おらっ! おらっ!」ベキッ
ラプラス「ぎえぴーっ!」
金糸雀「ちょっと! いい加減、これ以上無視されると流石のカナも…」
610 :
翠星石「蒼星石ィ!?」ピタッ
水銀燈「何ですって? 蒼星石?」クルッ
ラプラス「四番目のお嬢さん…?」
ジュン「蒼星石が」
めぐ「蒼星石?」
真紅「まあ、蒼星石!」
金糸雀「……」
蒼星石「騒動は聞かせてもらった! 実は今、僕と金糸雀のもとへ
  ある一頭のジャバウォックらしきドラゴンの位置情報が届いている!」
水銀燈「なっ…」
翠星石「なんですとー!」
ジュン「何というグッドタイミング!」
金糸雀「そ、そういうことなのかしら! これ以上ラプラスの魔を棒で殴る必要は無いかしら」
真紅「確かに、これ以上殴っていたら私達が手首を痛めるところだった」
翠星石「と言うですか、何でカナチビが蒼星石と一緒に…?」
金糸雀「ふっふっふー! 最近のカナは桜田家よりもセキュリティの高い
  薔薇屋敷への単独潜入ミッション訓練を行っているのかしら?。今日だって…」
蒼星石「そんなことはどうでもいい。ジャバウォックが居を移す前に行動した方が良い、水銀燈」
水銀燈「ええ。場所さえ分かれば道化ウサギにかまっている暇などない」
蒼星石「分かっているとは思うがジャバウォックは強敵だ。それに今回のジャバウォックの位置が悪い」
めぐ「位置が悪い?」
蒼星石「それは移動しながらおいおい説明する。とにかく水銀燈一人だけで何とか出来る問題じゃあないって事」
水銀燈「……」
金糸雀「カナと蒼星石も同行するかしら」
真紅「何か面白そうだから私達もついていくわ」
翠星石「翠星石もですぅ」
水銀燈「勝手になさい。拒む理由はない」
めぐ「丸くなったわねぇ?。理由は無くても拒むのが水銀燈だったのに」
水銀燈「めぐ、一言多い」
めぐ「ごめーん」
水銀燈「あと、流石にあなたの同行までは許さないわよ」
めぐ「うーん残念」
真紅「そうね、ジュンにこの家で匿ってもらいなさいな」
翠星石「良かったですねチビ人間。昨日からのりが留守で」
ジュン「どういう意味だ」
翠星石「しらばっくれるなですぅ。今日のことは通い妻気取りのケンドーカシワバにも黙っておくですから。きひひ」
ラプラス「あの…、できれば私もお宅でしばらく静養させていただけませんでしょうか坊ちゃん」
ジュン「……」
611 :
巴「ここは…いったい?」
のり「ええと、スカイツリーの中…じゃ、なさそうね」
雛苺「いつの間にかお外の地面にヒナ達が座り込んでいたのよ」
巴「周りにたくさんいたはずの観光客は一人もいない。いるのは私たち四人だけ…」
オディール「間違いありません! ここは裏世界です!」
のり「裏世界?」
オディール「思い出してください! 私達がここへ来る直前のインシデントを!
  薄気味悪いサイレンの音! 病的に剥がれて、めくれあがる壁と床ッ!!」
巴「異常な光景だったわね」
オディール「まさしく裏世界への転移現象です! 私は怪異現象に詳しいんです」
のり「頼もしいわオディールちゃん!」
オディール「ウィー! お任せあれ! ゲームや映画とおんなじでーす」
のり「え?」
巴「ゲームや映画…」
雛苺「そう言えばジュンも、そんな怖いゲームをやっていたような気がするの」
のり「いくら同じだからって、映画とかと同じ現象が実際に起るわけ…」
オディール「ノンノン! 先入観を捨てなくては駄目です、のりさん!」
巴「オディールさんも変な先入観を持っている気が…」
雛苺「あ、そうだ! ベリーベルに聞いてみればいいのよ! ねぇ、ベリーベルぅ?」
ベリーベル「……!」ふよんっ
のり「ベリーベルちゃんを連れてきていたのねヒナちゃん」
ベリーベル「ッ!」
雛苺「うゆゆ! ベリーベルはここはnのフィールドのどこかだって言っているのよ!」
巴「nのフィールド…」
オディール「Oh! ノット裏世界? いや、しかしnのフィールドもある意味、裏世界のような…」
のり「nのフィールドのどこか、か。分かったようで分からないような状況だけど
 次に気になるのは、どうして私達がnのフィールドに突然に飲み込まれたかよねぇ?」
ベリーベル「…すま…ない。私…のミス…だ」ザザッ
巴「!?」
オディール「ワッザ!? ベリーベルが…!?」
のり「喋った!? 人の言葉を?」
雛苺「みょわーっ! ついにやったのよ! ヒナの教育が実を結んだのー!
  ちゃんと喋ることのできる人工精霊なんてベリーベルが最初なの!」
のり「凄い! 凄いじゃないベリーベルちゃん!」
雛苺「とっても誇らしいのー! 姉妹みんなに自慢できるのよー! ベリーベルはヒナの自慢なの!」
ベリーベル「ち…がう! これ…は私が人工精霊の周波数を借りて喋っているだけ…です」ザザッ
雛苺「うぇ?」
のり「どういうこと?」
ベリーベル「この精霊にもあなた達にもすまないとは思う。しかし他に方法が無かった。
  呼び寄せるのもドールである雛苺だけのつもりだった。
  しかしあなた達が精神的にも物理的にも強く雛苺と結びついていたために…」
巴「誰かがベリーベルを通して私達に喋りかけているんだわ」
オディール「ハッキングということですか!?」
のり「しかも、この人が私達をここへ連れてきたってことみたい」
雛苺「ええと、それでベリーベルの向こうでお話しているあなたは誰なのよ?」
ベリーベル「私は…」
612 :
トキ「ジャバウォックが現れたのは我らの禁域であり聖域であるノバラの園です」
真紅「ノバラの園!」
翠星石「オズレがレイキとともに眠っている地じゃあないですか!」
金糸雀「ええ、カナ達がトキから連絡を受けたときも耳を疑ったかしら」
翠星石「しかし、どうしてジャバウォックがノバラの園に…!?」
水銀燈「おそらくアストラルの残滓狙い。あそこでは昔からなんやかんやあった。
  ジャバウォックのような曰く付きの怪物が寄り付くのも、さもありなんよ(※)」
※ 薔薇乙女のうた『王樹の夢』
613 :
トキ「素晴らしいです水銀燈さん! 僅かな情報から真実を見抜くご慧眼!
 そしてそれを咀嚼し、皆に伝える話術。しばらくお会いせぬ内に…」
水銀燈「世辞はいい。それより現状は?」
クキ「事態はかなり緊迫した状況とも言えるし、そうでないとも言えます。
 現に庭師連盟からの対応要員は俺とトキの二人だけ」
金糸雀「え? 本当なのかしら、それ? だって、確か以前にブラックドラゴンが
  発生した時には盟主のカズキさんが直々に討伐したって聞いたわよ」
トキ「前回のジャバウォックは世界樹の根元に住み着き、その根をかじり続けていました。
 世界樹へのダメージは、nのフィールド全体にはかりしれない悪影響を与えます」
蒼星石「だからこそカズキさんが出た。むしろあそこで出てこなければ庭師連盟の存在意義自体が
  揺らぎかねない。その時のジャバウォックを殺処分するという重い決断もそのためだ」
クキ「ちなみに今回、俺とトキが連盟から受けた使命はジャバウォックを追い払うこと。だが…
 連盟自体はノバラの園はジャバウォックに潰されてしまってもいいと考えているフシがある」
翠星石「な、なんでですぅ!? そりゃ世界樹と比べることはできないですけど
  ノバラの園だって、庭師連盟にとっては大切な場所のはずじゃあ…」
真紅「…大切な場所じゃあなかったわね」
水銀燈「ええ。大切な場所…ということにしておきたかった場所」
トキ「私達兄弟にとっては生誕の地であり、隠された長姉レイキの死地でもありますが。
 それは感傷にすぎません。その他の古くからの上層部庭師にとっては…」
クキ「とっとと消し去りたい負の遺産だとでも思っているのさ。それを作ったのは自分達だというのに。
 その上、自分の手で始末する気も無いんですよ! あいつらには」
トキ「クキ兄上…」
蒼星石「カズキさんも連盟内の古狸をなだめすかすのに苦労しているようだ」
翠星石「まったく、これだから組織ってやつは嫌いですぅ! 大体カズキが盟主なんですよね!
  一番偉いんですよね! だったらカズキがビシッと言って、それで終わりじゃねーですか!」
水銀燈「一番上が決めたからって他が従うとは限らないでしょ。別に組織とかに限ったことではないわぁ」
真紅「……」
614 :
  nのフィールドの大勢には影響しない。跡に記念碑でも建てれば、それで済んでしまう。
  勿論、形式上だけでも責任を取らなくてはいけない人が出てくるかもしれないが」
翠星石「……」
クキ「ジャバウォック退治に俺達を選んだのも古狸どもです!
 十人兄弟から二人出してもジャバウォックは止められなかった、という事実が欲しいんでしょう」
トキ「我々二人合わせても、盟主の半分の力にも満たないと言うのに」
金糸雀「でも、そこにカナ達の力は計算されていないんでしょ?」
トキ「勿論です。逆に我々二人だけということは幸運でした。もし、仮に反十人兄弟派閥の庭師も
 一人、二人同行させろと言われていたら、このように薔薇乙女に対し表立った協力は求められなかったかと」
水銀燈「随分と私達のことを便利屋扱いしてくれているようねぇ」
トキ「い、いえ! 頼りにしているということです! わ、私個人としても特に、その…」
水銀燈「それと、さっき自分達はカズキの半分にも満たないとか言ってたけど
  アンタにとって庭師の剣はただの飾りなわけ? そっちのクキも庭師道具はあるんでしょ?」
トキ「…!」
クキ「俺達だってやる前から全てを諦めているわけじゃありません」
翠星石「だったら、グチグチ言ってないで成功することだけ考えていればいいのです!
  やるだけやれば、神様がケツに奇跡を突っ込んでくれるですぅ!」
真紅「今がどういう状況だか詳しく説明しろって言い出しのは、あなたじゃない翠星石」
翠星石「ぬおっ!? そ、そうだったっけです!」
トキ「…みなさん! まもなく禁域に到着します。ご注意を!」
615 :
薔薇水晶「……」
雪華綺晶「一通り掃除は済みましたよ。しかし墓標は水晶の剣そのもの、手を切らないようにするのが大変でしたわ」
薔薇水晶「ありがとうございます。しかし、あなたの口からここに来たいとの言葉が出るとは…思いませんでした」
雪華綺晶「私も自分で驚くばかりの心境の変化ですわ。ここで弔われている野薔薇の中には
   私自身が手にかけ、利用し、すり潰し、道具とした者も少なくない」
薔薇水晶「それは私も同じです。ただ倒したというだけであれば、その数はあなたよりも…」
雪華綺晶「アリスゲームを経て、私は間違っていたことを知った。これからは正しく歩めるかもしれない。
   しかし、誤った過去の足跡は残り続ける…。この野薔薇の墓のように」
薔薇水晶「雪華綺晶、私は…」
雪華綺晶「私の内に後悔も自責も生まれました、しかし紅薔薇のお姉様はそれでも前に進み続けることが
   ローゼンメイデンの在り方であると示してくれた。故に私の心も今は…少しずつ晴れつつある」
薔薇水晶「苗床にしていた人達を解放して、さらに彼らの余生の後押しや援助をしているそうですね。最近のあなたは」
雪華綺晶「ええ。罪滅ぼし…にもなりはしませんが、これが今の私のささやかな生きがいです。
   私のせいで不幸になってしまった人達に幸せになってもらうこと」
薔薇水晶「……」
雪華綺晶「苗床だった方達が全員、元の生活以上の幸福を手に入れることで
   ようやく私はマイナスからゼロに戻ることができる。その時こそ私の心も真に晴れやかとなるでしょう」
薔薇水晶「厳しい十字架を背負うのですね」
雪華綺晶「薔薇水晶」
薔薇水晶「…?」
雪華綺晶「今度こそ、あなたのことも幸せにしてみせます」
薔薇水晶「……」
ピシッ
薔薇水晶「ッ!? 何の音です?」
雪華綺晶「あれを…。水晶の剣が一つ、真ん中にヒビが。おそらく、その音」
薔薇水晶「…確かに」
雪華綺晶「もしかしたら私が掃除の際に力を入れすぎたのかも」
薔薇水晶「まさか。しかし、この剣の墓標は…」
雪華綺晶「どういった野薔薇の墓標なのです? 私も知っている人形で?」
薔薇水晶「何か…胸騒ぎが、嫌な予感がする」
雪華綺晶「……」
616 :
ベリーベル「私はオズレ」
雛苺「オズレ!?」
のり「オズレ…て!」
巴「ど、どうして、あなたが!」
ベリーベル「私ではマザーとグランマザーの眠る地を守りきれなかった。ノバラの園は死んでしまった」
オディール「!!?」
ベリーベル「雛苺あなたを見つけられたのも幸運だった。スカイツリーという
  高い場所で、電波も強いところだったからこそ、こうして周波数を合わせて連れ込めた」
のり「ううん…、私って文系だからこういうお話はよく分からないわ」
オディール「ノンノン! のりさん、ジャポネすぐ文系理系言う、それ良くない」
雛苺「オディールにはオズレの言っていることが分かるのよ?」
オディール「ちっとも分かりません」
巴「のりさん、大丈夫です。nフィーの謎理論は考えても分からない事だらけですから」
のり「そ、そうよね」
巴「けれど、ノバラの園が死んだなんて急に言われても…」
ベリーベル「ここがノバラの園でした」
雛苺「ッッ!?」
のり「ここが!?」
オディール「Oh! インクレディブル…」
巴「…あなたは助けてほしいと言ったわよね」
ベリーベル「はい」
巴「何を…誰を助ければいいの? オズレ、あなたを? できることがあれば何でもする」
ベリーベル「助けてほしいのは私でもマザー達でもありません。ノバラの園は失われ
  私も全てがアストラルの中へ還り、ジャバウォックの糧となるのでしょうが
  それもまた一つの形での静謐。生命の輪の中へ戻ることが許されたとすら感じます」
のり「うーん、またオズレさんが何を言ってるのか分からなく…」
オディール「私には分かります、これは遺言ですよ」
巴「……」
雛苺「今、ジャバウォックって言ったのよ!? ジャバウォックがここをこんな風にしちゃったの!?」
ベリーベル「そうです」
617 :
  庭師連盟はおそらく、聖域であるここを荒らした黒竜に討伐隊を仕向けるはず」
巴「……」
ベリーベル「ジャバウォックが今どこにいるかは分かりません。しかしまだ、この地のどこかにいるのを感じます」
雛苺「それを見つけ出して、ヒナ達がどこかへ追い出せばいいのよね?」
ベリーベル「そういうことです。ジャバウォックは強力ではありますが邪悪な存在ではありません」
オディール「自分を食べた相手の心配をするとは…お人好しですねオズレは」
のり「まあ、甲子園でも負けたチームが自分に勝ったチームを応援したりするからね」
巴「そういうことなのですか…?」
ベリーベル「私なりに最後の小細工として、外部から侵入しようとする敵に対して罠をかけてはおきました」
オディール「罠? トラップを!?」
ベリーベル「多少の時間稼ぎにはなるでしょう。その隙にジャバウォックを逃がして…やってください」ザザッ
巴「オズレ? 何だか声の調子が変よ?」
ベリーベル「時間切れ…です。私も限界…。まあ、既に消えた存在…の声の残滓…」
雛苺「そんな…」
ベリーベル「お別れはずっと前に…済ませてある。失礼にも今回は、それを破る形に…」
雛苺「そんなことないの! ヒナはオズレとちょっとでも話せて嬉しかったのよ」
ベリーベル「あな…たも薔薇水晶と同じく…私の決意を鈍らせるようなことを…言う」ザザッ
雛苺「オズレ!」
ベリーベル「ジャ…ビーを頼みます。また…彼には…」ブツッ
雛苺「オズレ…?」
618 :
巴「ベリーベルが…」
のり「いつものベリーベルちゃんに戻った」
雛苺「……」
オディール「行きましょう雛苺。オズレが言っていたように時間との戦いです」
雛苺「うぃ…」
巴「けれども、探すにしても闇雲に動くわけには…」
ブォオーーーーーーーーーーーーーーッ!!!
オディール「Oh! こ、これは…!?」
のり「スカイツリーで聞いたサイレン!? 何でまた?」
巴「オズレはもう完全に消えたのに」
雛苺「オズレが原因じゃない音だとしたら、これは…?」
のり「ジャバウォックの鳴き声か何か!?」
オディール「音がした方向はあっちですよ、皆さん!」
雛苺「うぃ! ダッシュでゴーなの!」タタタッ
巴「ええ、そうね! いくしかないわ」
オディール「このサイレンのような音は、赤錆だらけのまさに地獄めいた世界でブッダが垂らしたクモの糸ですね!」
のり「オディールちゃんったら詩人ねぇ?」
619 :
水銀燈「…? 今、何かちょっと変な感じしなかった?」
翠星石「んあ? 何を急に言い出すですか?」
蒼星石「別に何も感じなかったけど」
クキ「ひょっとして、ここの惨状にあてられたのでは?」
真紅「確かに、ノバラが茂っていた往時を見る影もない…赤錆だらけの砂漠じみた景色だけど
  これでまいるほどの可愛い神経を水銀燈は持ちあわせちゃあいないわ」
金糸雀「言えてるかしら」
水銀燈「…ふん」
トキ「本当に大丈夫ですか水銀燈さん? 私、水筒を持っていますが水でも飲まれますか?」
水銀燈「必要ないわ、トキ。ところで」
トキ「はい?」
水銀燈「庭師の剣、ここでは私が使わせてもらう」
トキ「!」
蒼星石「水銀燈ッ?」
水銀燈「言ったはずよ、ジャバウォックは私の獲物。こいつら庭師兄弟に協力してやるのも
  目的と都合が一致しているからに過ぎない。ならば、道具も有効活用させてもらう」
クキ「……」
水銀燈「トキは自分の力不足を自覚してる。かつてジャバウォックの血を吸った庭師の剣は
  ヴォーパルソードでありドラゴンスレイヤーでもある。それが今じゃ宝の持ち腐れ」
翠星石「だから自分が使うって言うのですか! あんたってお人は全く勝手ですぅ」
トキ「いえ、水銀燈さんの言う通りです。お言葉に感服しました。
 私の心を見通しておられるのですね。いえ、ひょっとしたら心と心が通じているのやも…」
水銀燈「御託はいい。早く渡しなさい」
トキ「勿論です。どうぞ、庭師の剣です。お納めください」カチャッ
水銀燈「…ありがと」
クキ「おい、トキ…お前、本当に?」
トキ「いいんです。クキ兄上」
水銀燈「トキ、やっぱり返すわ、この剣」
トキ「え?」
金糸雀「ちょっ? 水銀燈あなたさっきから変よ! それも唐突に!」
真紅「ええ! ワガママすぎるわ! 何、今さら思春期!!?」
620 :
水銀燈「ええ、以前には返せなかったところにね」
トキ「?」
水銀燈「心臓へよ」ドスッ
トキ「…ぐあっ!?」
蒼星石「水銀燈!!!?」
クキ「貴様! トキに何をーーーッ!」
翠星石「お前イかれちまったんですか水銀燈ーーッ!? 剣はともかくワケを言えですーーーッッ!」
水銀燈「わめかない。このトキは偽者よ」
真紅「えっ!?」
金糸雀「な!?」
トキ「ガフッ! グゥウ…」ぞぼぼ
蒼星石「ああっ! トキの傷から流れているのは血じゃなくて砂だ」
クキ「どういうことなんだ一体!? いや、まさかこれは」
水銀燈「さっき私が言った違和感の正体よ。何者かがちゃちな精神的トラップを仕掛けていたようね」
翠星石「トラップ!?」
水銀燈「この違和感には覚えがある。グループの誰かをゴーレムと入れ替えるタイプの罠」
トキ「ぞぞぞぞ、ぞのとおりだ…が…、何故、私がそのゴーレムだとだとだと…」ボボボ
水銀燈「このノバラの園に先頭で到着したのはトキだった。だからカマをかけてみた。
  外れれば他の奴らにも順番に試していくつもりだった」
トキ「カカカカマママママ…?」
金糸雀「そうか、やけに不自然な感じで庭師の剣を要求していたけど」
蒼星石「本物のトキなら流石にそんなことはしない…か」
翠星石「けど、かなりきわどい見極めだったんじゃねーのですぅ?
  トキなら水銀燈のお願い事は何でもホイホイ聞いちまいそーですよ」
真紅「その可能性も無いとは言い切れないわね、確かに」
水銀燈「その時はその時。意志の虚弱なニュービー庭師が一人死ぬだけの事」
クキ「…!」
トキ「ぶぐぐ、シブいねぇ…おたく全くシブい…よぼぼぼ…」ドシャッ
金糸雀「ゴーレムが完全に崩れ去ったかしら」
水銀燈「剣もよく見ればただの木の棒か。まるでタヌキに化かされた気分ね」
翠星石「それで、本物のトキはどこにいるですか!?」
クキ「おそらく、付近の砂の下で眠らされている。この罠はかつて魔女時代のレイキ姉さんが好んで使った術だ」
蒼星石「!」
真紅「では、この術を仕掛けたのは…?」
蒼星石「レイキさん? いや彼女は死んでいる…はず」
水銀燈「どうも私達が聞いた以上に複雑な状況のようねぇ、ここは…」
621 :
金糸雀「本当にすぐ近くに埋まっていたかしら?」
トキ「げほっ! げほ! げほほっ!」
クキ「大丈夫かトキ」
トキ「は、はい。しかしクキ兄上、私は一体」
クキ「地蜘蛛の術だ。それの仕掛けにお前が嵌った。修行不足だな」
トキ「そ、そうだったのですか! 申しわけありま…せん」
水銀燈「トキ」
トキ「水銀燈さんにもご迷惑をおかけしたようで! すいません! 償いは何でも!」
水銀燈「何でも?」
トキ「はい、何なりと!」
水銀燈「じゃあ、庭師の剣を寄越しなさい。今回のジャバウォックを追う間だけでいい」
トキ「……」
蒼星石「水銀燈…」
真紅「……」
クキ「……」
トキ「すいません、それだけはできかねます」
水銀燈「どうしてぇ?」
トキ「どうしてもです。ただジャバウォックを追う間はこの私自身が水銀燈さんの剣として…」
水銀燈「もういい、黙って」
トキ「は、はい! ヨロコンデー」ぴたっ
水銀燈「行くわよ、あんた達。誰だか知らないけど今の罠を仕掛けた奴は時間を稼ぎたがっている」
金糸雀「茶番を始めたのは水銀燈かしら」
水銀燈「…金糸雀」
金糸雀「う、ごめんかしら…お姉ちゃん」
水銀燈「ふんっ」スタスタ
トキ「わ、私…水銀燈さんを怒らせてしまいましたね。大人しく渡せば良かったのでしょうか」ヒソヒソ
蒼星石「いや、水銀燈は怒ってないよ。どちらかと言えば…」
真紅「喜んでいるわ」
翠星石「ですぅ」
トキ「?」
ブオーーーーーーーーーーーーーー!!!
クキ「!」
真紅「何、この音…!? 誰か豪快なオナラでもした?」
蒼星石「風鳴りか、いや、今はほとんど無風…」
翠星石「ひょっとしてジャバウォックの鳴き声ですか?」
金糸雀「こんな声してたかしら、今まで会ったジャバウォックは」
水銀燈「しかし何かが音の元にあるのは確か。他にあてもないし…、向かいましょう」
622 :
ジャバウォック「ブオオーーーー! ブオーーーー! ブーーーオー!」ばさばさ
雛苺「ほら、もっともっと頑張ってなのよ!」
のり「そうよ! 浮いてる浮いてる! ちょっとずつ浮いてるわ」
巴「…まさか、こうもジャバウォックが簡単に見つかるとは」
オディール「しかも食べ過ぎで、まさかのメタボで飛べなくなっていたとは」
巴「ノバラの園が崩壊するほどアストラルを一気に吸ったせいなのかしら」
雛苺「食いしん坊さんなのよね」
ジャバウォック「ブオッブブー」
のり「けど、このままじゃあ、じきに庭師の討伐隊が…」
オディール「そうです。危険がデンジャーです。ジャビー飛んで飛んで! ユーキャンフライですよ!」
ジャバウォック「ブオブーーーーー!」ばさばさ
のり「もう少し! 今度こそイけそうよ! 頑張って! 頑張って!」
巴「あっ! あっちを見てください、皆」
オディール「アーハン?」
雛苺「うみゅみゅ、砂ぼこりが上がっているの」
のり「誰かが走ってこっちに向かってきて…!? いや、あれは背ビレ!?」
オディール「ワッザ!? 背びれだけが砂の上を走って!? まさかジョーズ!? サンドジョーズ!?」
巴「そういうB級映画あったような気がしますね」
雛苺「とんでもないさでこっちに向かってきているのよ!」
のり「まさか、私達を狙っているんじゃあ!!?」
オディール「オーノー! 絶体絶ライフ!」
623 :
のり「きゃーーーーーっ! 出たぁーーー!」
オディール「ジョーズです!」
エヌマグロ「え? ジョーズ? どこ!? どこどこ!? ここ砂漠だぞ、ちょっと前までノバラ園だったけど」キョロキョロ
巴「え?」
エヌマグロ「え?」
のり「きゃーきゃー、よく見たらサメでもないわー!」
オディール「足が生えているですよー! ニンギョです! ナンデ!? ニンギョナンデ!?」
雛苺「あ! こ、この喋るお魚さんは見た事があるような気がするの!」
エヌマグロ「ん? そう言えば、何となく俺もお嬢ちゃんに見覚えがあるような…」
624 :
巴「!?」
のり「こ、今度はカナちゃんが走ってきた!?」
雛苺「急にどこから来たのよ!?」
翠星石「それはこっちの台詞ですよチビチビ。スカイツリーに行ってたんじゃあねぇのですか」
雛苺「みょわっ! 翠星石まで!」ビクッ
蒼星石「僕達もいるよ」
クキ「どうも、クキです」
トキ「どうも、トキです」
オディール「Oh! 団体さんですねー。ドーモはじめましてオディールです!」
金糸雀「ギョ???セ???フ!」
ギョセフ「な、何者だ! アンタ! 何故俺の名前を知っている!?」
金糸雀「ちょっ!? ギョセフ、あんまりかしら! アイアム金糸雀!」
ギョセフ「いやっはははは! 冗談です! 冗談冗談! 覚えてるぜ金糸雀! 久しぶりじゃねーか」
金糸雀「久しぶりどころじゃないかしら! カナはてっきり、もうギョセフは死んだものと…(※)」
※ 桜田ジュンの膨満『料理の恋人』
625 :
ジャバウォック「ブオー!」
金糸雀「ジャ、ジャバウォックに!?」
ジャバウォック「ブオオ?ン」
水銀燈「…あのさぁ、ジャバウォックがやたらデブだわ、変なマグロまでいるわで
  何かもう状況がカオス過ぎて、理解不能よ。誰か話を簡潔にまとめて頂戴!」
蒼星石「落ち着いて水銀燈、答えを急ぐのは君の悪い癖だ。落ち着いてお互いの情報を全て出しあおう」
真紅「そうね、真の理解は対話からしか生まれないのだわ」
626 :
   みんな似た者同士で美女揃い。素敵ですなぁ、ギョハハハハハ!」
蒼星石「何か性格は軽そうなマグロだなぁ…」
翠星石「体重は100kg超えてそうですのに」
ギョセフ「えぇと、それで俺は金糸雀と共にコカトリスの卵を入手するための冒険に出てたが
   うっかりコカトリスの猛毒石化ガスを吸い、崖から落ちて彼女と生き別れになってたんですよ」
オディール「すいません。色々ツッコんでいいですか」
のり「オディールちゃんがツッコむって相当よ」
金糸雀「家に帰ってからにしてかしら。ちなみにギョセフの話はギャグじゃなくてマジかしら」
ギョセフ「体中に傷を負い、血もかなり流してしまったが逆にそれで体内の石化毒も抜けたらしい」
水銀燈「斬新な解毒法ね」
ギョセフ「しかし、このままではすぐにエヌマグロの活けじめができあがるだけ。
   ツキジに並べられたのかのように血塗られたままピクリとも動けない俺のもとへ
   やってきたのがジャバウォック、ジャビーだったわけだ」
ジャビー「ブブオー! ブオーブッ」
ギョセフ「当時のジャビーは俺よりも小さかった。なのに俺を食おうとしやがった」
雛苺「助けられたんじゃなかったの?」
ギョセフ「一生懸命に俺の肉を齧りとろうとしていたんだが、何故かそれが俺のツボを刺激して
   体内の血の巡りが復活、俺は少しだけ動けるようになり自力で回復できるキッカケを得た」
翠星石「魚のツボとか全然意味分かんねーです」
ギョセフ「馬鹿! 足の方だよ足! 足ツボ! ほら、エヌマグロは下半身が人間だろーが!」
翠星石「な! マグロに馬鹿呼ばわりされる筋合いは、ねーですよ!」
ギョセフ「ふ、どーだかな。マグロはDHA豊富なんだぜ。DHAは頭にいいんだぜ」
翠星石「じゃあ、テメェを食って賢くなれるか確かめてやるですぅ!」
ギョセフ「お!? やるか、こら!」
金糸雀「ちょっとちょっと! ギョセフも翠星石もやめるかしら!」
雛苺「ケンカはダメなのー!」
翠星石「ふん、ちょっとした冗談ですよ」
627 :
ジャビー「ブオッブブ…、オーブ!」
水銀燈「マグロとドラゴンの馴れ初めなんてどうでもいいわよ。
  けど、その…もう一つの話の方、オズレがベリーベルを通して言ったこと、本当なの?」
巴「ええ、本当よ」
クキ「レイキ姉さんですらもが、もうノバラの園にとらわれたくないということかもしれない」
トキ「しかし実際、ノバラの園はジャビーに食い尽くされてしまった。
 それを誤魔化すための方便ではないでしょうね。貴女方を疑いたくはありませんが」
水銀燈「当然の懸念ねトキ、しかし邪推でもある」
トキ「水銀燈さん…」
蒼星石「ノバラ園がこうまで荒らされたのはジャビーの食事の早さが第一の理由だろうが
  それだけじゃあない。第二の理由もかなりのウェイトを占める」
のり「第二の理由?」
トキ「それは…」
クキ「我々の連盟の初動の遅さです。むしろ十人兄弟以外の庭師達は
 ここは更地にでもなってしまった方がいいと考えていたかもしれない」
翠星石「むう、そう言えばそんなことを道中で言っていたですね」
金糸雀「だったらレイキやオズレの意志は、十人兄弟にとっても慰めになるんじゃあないのかしら」
クキ「巡る生命の輪の中に…か。渡し守の教義みたいで、あまり好きじゃあないが…」
トキ「レイキ姉上らしいと言えば、そうかもしれません」
628 :
薔薇水晶「偽りの姿と身分での生活とは言え、何か得る物があったのかもしれませんね」
真紅「雪華綺晶に薔薇水晶!」
水銀燈「あんた達まで!?」
オディール「グレート! ローゼンメイデンが全員集合ですよ」
雪華綺晶「どうも、お久しぶりですわオディール」
のり「いやはや本当、久しぶりじゃない。みんなが一堂に集まるなんて…」
トキ「しかし、どうして御二方まで?」
薔薇水晶「虫の知らせです」
クキ「そう…ですか」
雪華綺晶「それでどうするおつもりですか? 各々がた?」
水銀燈「はぁ?」
ギョセフ「どうするつもり…とは?」
クキ「……」
雪華綺晶「簡単にまとめれば、ジャビーのエネルギーを食べたい水銀燈と
   ジャビーを逃がしたい雛苺達、後はまあどうでもいい庭師達」
金糸雀「どうでもいいとは随分な言われようかしら」
翠星石「けどまあ、大体あってるですよ。トキ達にとっちゃあ既に後の祭り…アフターフェスティバルです」
蒼星石「確かに、ここのノバラの園も、また植物が生えてくるだろうが
  元のノバラの園が再現されはしないだろう。それはまた別の植物圏だ」
雪華綺晶「渡し守に言わせれば、こういった食物連鎖の変遷こそが魂の循環、輪廻、進化
   …と今は、そのような事を論じても詮無き事」
水銀燈「……」
雪華綺晶「黒薔薇のお姉様もそろそろ気付いているとは思いますが
   ジャビーのエネルギーを殺さない程度に吸って、痩せさせればいいのです」
水銀燈「そんな微妙な手加減をしろ、と?」
雪華綺晶「かつての柿崎めぐ相手の加減に比べればベイビー・サブミッションでしょう?」
水銀燈「……」
のり「そうね、それがいいんじゃあない! メタボもジャビーちゃんには良くないし」
ギョセフ「こいつが自然に痩せるまで俺もここに足止めかと思ってたから丁度いいや」
水銀燈「ちょっと、私はまだ承諾したわけじゃ…」
雪華綺晶「このジャビー、今後も何度かメタボるでしょう。その度に余剰エネルギーを
   お姉様が吸い、柿崎めぐへと還元する。win-winな関係が築けると思いませんか?」
水銀燈「それは…その…」
金糸雀「雪華綺晶の提案以上の案はカナも思いつかないかしら」
蒼星石「後から出てきて全部美味しいところを持って行ったね」
薔薇水晶「……」
水銀燈「分かった。言うとおりにするわよ」
真紅「水銀燈」
水銀燈「じゃ、ちゃっちゃとやりましょ。けどちょっとぐらい吸い過ぎても泣かないでよねジャビーちゃん?」
ジャビー「ブオォ…?」
ギョセフ「ダイジョブ! ダイジョブだってジャビー! 少しの我慢だ!」
雛苺「そうそう! 水銀燈の人は脅しているだけなの!」
629 :
クキ「意外と時間がかかるものだな。しかし…トキ、俺達はこれでいいんだろうか」
トキ「これで、とは? 兄上?」
クキ「結局、何もできず俺達に残されたのはこの赤錆の大地だ」
トキ「そうですね。姉上や母上のアストラルの残滓すら消滅した大地です」
クキ「けれど…ゼロじゃない。土があるな」
トキ「はい。種を植えましょう、木を育てましょう。私達は庭師、庭師連盟です」
クキ「…立派なこと言うようになったな」
トキ「ありがとうございます」
クキ「でも、俺の方が立派だからな」
トキ「分かっています」
クキ「お前より背が低くても俺の方がアニキだからな」
トキ「分かっていますってば兄上」
630 :
ギョセフ「はい? なんです? えぇと、あんたは第5ドールの真紅…だよな」
真紅「そうよ。あなたギョセフ・サーカナーよね」
ギョセフ「姓まで名乗ったかな? 俺?」
真紅「いえ、私はあなたの父親を知っている。その父親も、そのまた父親も。皆、あなたにそっくりよ」
ギョセフ「……」
真紅「全員、私の目の前で死んだ。それも原因は全て私よ。
  あなたの実父ギョージ三世に到っては、この手でその脳天に銛を突き刺した」
ギョセフ「どうして、そんな話を俺に? 嫌がらせか? 生粋のドS乙女という風には見えないぜ、あんた」
真紅「あなたには知る権利がある。そして復讐する権利も」
ギョセフ「復讐なんてめんどくせーし、ロクでもない事だ。俺にとっちゃあな」
真紅「ギョセフ…」
ギョセフ「サーカナーの血筋はそれなりに誇りに思ってる。エヌマグロの中でも肉質の良い血統だからな。
   だが、俺は卵を産みっぱなしでそれっきりの顔も知らねぇ親のために命をはれない」
真紅「……」
ギョセフ「今はジャビーと生きてくだけで精一杯。俺はチキンなんだ、シーチキンなのさ。ツナだけに」
真紅「ギョセフ、私が言うのもおこがましいけど、それは臆病者の心ではないわ。
  何故なら絆とは血の繋がり以外のところにも生まれる物のはずだから」
ギョセフ「お人形さんが言うと、なかなか説得力があるぜ」
真紅「ふふ、ありがとうギョセフ」
631 :
ジャビー「ブォオオオーーー! ブオッ!!」
巴「体が軽くなって嬉しそうだわ」
雛苺「良かったのジャビー」
薔薇水晶「しかし、声質はデブっぽい声のままですね…」
金糸雀「逆に水銀燈ちょっと太ったんじゃないのかしら?」
水銀燈「太ってない!」
ギョセフ「よっしゃ! それじゃあ本当に怖い追手が来る前に、次の旅へ出ようぜジャビー!」
ジャビー「ブブオオブ! オーブ!」
ギョセフ「あらよっと!」ピョン
翠星石「ギョセフがジャビーの背に飛び乗ったですぅ!」
金糸雀「恰好いいかしら! ギョセフーッ!」
ギョセフ「金糸雀の姉御! また縁があればお会いしましょう! 今度はもっと脂の乗ったマグロになってますぜ」
金糸雀「期待してるかしら?!」
ジャビー「ブオオーーー!」バサバサッ
巴「飛んだ! 凄い風! 羽搏いただけで、こんな!」
のり「あの巨体で飛ぶんだもの! 凄いわよねぇ本当!」
オディール「グレートですよ、これはー!」
632 :

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