キョン「もやもや?」back

キョン「もやもや?」


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1:
「やぁ、キョン。偶然じゃないか」
 ある日の帰り道のことである。ハルヒと2人で帰宅していたら懐かしい顔に出会った。
顔を合わせるのは中学を卒業して以来なので、かれこれ1年振りくらいか。
 だというのに、佐々木は相も変わらず涼しい微笑みを浮かべている。俺と佐々木はいつもこんな感じだ。
年月なんか関係なく、会えば昨日も顔を合わせたかのような距離感。
近すぎず、かといってよそよそしいわけではない。俺と佐々木の絶妙な距離感がそこにあった。
「元気そうでなによりだ」
「それはお互い様だよ、キョン。それより、そちらの見目麗しい女性は紹介してもらえないのかな?」
2:
そう言われて隣のハルヒに目をやる。いつもは喧しいのに、何故か妙な表情で黙りこくっている。
普段からこれくらい大人しいとありがたいんだがね。それはさておき。
「ああ、クラスメイトの涼宮だ」
「そうかい。涼宮さん、キョンのことよろしくね」
 柔らかい表情の佐々木。そういえば同性相手にはそんな顔するんだったな。
別に俺といる時に仏頂面であるとかそういうわけではないのだが、どちらかと言うと悪戯っぽい表情をすることのほうが多い。
だからといってどうというわけでもないが。
「まぁ、積もる話もあるけど、時間がある時にゆっくり話そう」
「そうだな。夜買ったら今度家に遊びに来いよ。妹も喜ぶだろうしな」
「是非ともそうさせてもらうよ」
3:
じゃあ、またと佐々木と別れた。別れ際に例のごとく悪戯っぽい笑みを浮かべ、
「楽しそうで何よりだよ」
 くつくつと喉を鳴らしていた。一体全体なんのことやらさっぱりである。
「ねぇ、どういう関係なのよ」
 佐々木の姿が見えなくなってからようやくハルヒが口を開いた。
 俺と佐々木の関係ねぇ……。やはり、1番しっくりくる言葉としては『親友』でなかろうか。
「ふーん……」
 質問に答えたというのに、ハルヒの表情は一向に晴れない。晴れないどころか、ますます釈然としないものになっていく。
ハルヒのことなので、その心情は推し量ることは出来ないが、どうも納得しているようではなかった。
4:
「今からキョンの家に行くから!」
「はぁ?」
 ハルヒからの思わぬ宣言に驚いて立ち止まる。何がどうなってそうなった。
「さっき観たい番組があるからさっさと帰るとか言ってなかったか?」
「うるさいわね!行くったら行くの!録画してあるから問題ないわ」
 むきーっと言い放つハルヒ。ハルヒがいいなら別に構わないのだが。俺の家に来たところで面白いものなど何もないと思うのだがね。
「ほら、さっさと歩く!」
 時間は有限なんだからと、ハルヒはずんずん歩いていく。軽く嘆息してその背中を追いかけた。
5:
さてさて、家までやってきたハルヒなのだが、あれだけ張り切っていたにも関わらず、俺の部屋でごろごろしている。
やはり、ハルヒの考えていることはさっぱりである。
「佐々木さんもキョンの部屋に来たことあるの?」
「ん?ああ、何度かな」
 中学受験の際に、俺に勉強を教えるために何度か訪れたはずだ。まぁ、俺が勉強をしている横で妹と遊んでいたり、
哲学地味た会話を繰り広げただけなのだが。
「……ずるい」
 何がだ?
「知らない」
 ハルヒは答えずに、枕に顔を埋めて足をばたばたしている。健康的な御身足が見え隠れしていささか扇情的である。
「スカート捲れるぞ」
 俺の忠告を無視して尚も足をばたつかせる。まったくなんだってんだ。
6:
「こっち来なさいよ」
 足を止めたハルヒが、枕から少し顔を上げてこちらをじとーっ睨みつける。
 そんな風に睨まれたところで躊躇してしまう。普段、寝起きしている我がベットとはいえ、
流石に「はいそうですか」というわけにはいかないのである。
「いいから!」
 更なる催促。これ以上機嫌をそこねると、どこぞのニヤケ面した超能力者が過労死する可能性が上昇してしまう。
「へいへい」
 腹を括る。いや、別にそんな大層なものではないとは思うのだがね。
せめてもの抵抗とベットの端にちょこんと腰掛けた。
「えい!」
 ハルヒに引き倒される。いやいや、ちょっと待て。
7:
「うるさい。黙ってて」
 非難の声をあげようとするも黙殺される。哀れな俺はハルヒの抱き枕と化すのであった。
 力一杯抱きしめられる。そんなに強くしなくても逃げ出しはしない……たぶん。
「なんかもやもやするのよ」
 ハルヒにもふもふと匂いを嗅がれる。気恥ずかしい気持ちでいっぱいだが、俺の鼻腔もハルヒの匂いで満たされていく。
「しばらくはこのまんまよ」
「さいですか」
 そんなわけで、ハルヒの心行くまで俺は抱き枕に徹するのであった。
8:
終わり
10:
キョン「夏の終わり?」
 夏休みも最終日を迎え、夏の終わりをしみじみと実感する。長かったようで短かった夏休み。
今年も夏期合宿を筆頭に、昨年と同様――いや、それ以上にハルヒには引っ張り回された。もうこれでもかというぐらい振り回された。
体も心もへとへとになってしまったわけだが、それなりに充実していたと訊かれれば頷ざかるを得ない。
 まぁ、そんな夏休みだったわけだが流石に最終日くらいは朝寝という惰眠を貪り、のんびりと過ごしたいと思っていた。
そう、過去形なのだ。そんな俺の休日をぶち壊しにしてくれるやつは数える程しかいない。むしろ特定の人物に決まっていたりする。
俺の特殊な事情を多少なりとも知っているなら直ぐにその特定の人物に思い当たるだろう。
そう、涼宮ハルヒである。
11:
「キョンくんあさだよ?」
 今日は起こさなくていいと言ってあったはずなのに、何故か普段と同じ時間に妹に叩き起こされた。
だがしかし。今日はなんといっても8月31日である。
 そんなことをされても俺は起きないという断固たる意志を見せるべく布団を頭から被り直した。
これで諦めて出ていってくれるだろう。
「ハルにゃん、キョンくんおきないよ?」
「やっぱり妹ちゃんじゃあ軽すぎるのね。ここはあたしが一発フライング・ニーを見せてあげるわ」
 行くわよ?という気合いの入った我が家に存在するはずのない声。おい、ちょっと待て。
そんなはずは無い。俺の灰色の脳細胞は――ん?なんかいろいろと違うような気がするがこの際は構わない。
そんな些細な疑問はアンドロメダ辺りに置いといて、だ。早急に確認すべき事象がある。
「おい、何でハルヒが――」
12:
勢いよく起き上がったのがいけなかった。かばりと布団を跳ねのけて起き上がった矢先に俺の顔面に膝がめり込んだ。
プロレスラーだって失神するような見事としか言い様が無い一撃。
「あっ……!って、キョン!何やってんのよ!?」
 ハルヒのぎゃーぎゃーという文句とともに俺は望んでいた二度寝を失神という形で果たすことと相成った。
「遊びに行くわよ」
 不幸なことに、俺の二度寝は僅か数分で終わった。焦ったハルヒが俺の胸元を掴んで前後に激しく脳ミソをシェイクしてくれたおかげでな。
で、悪夢から目覚めて改めて向き合ったハルヒの第一声がこれである。謝罪の言葉なんてものは遥か彼方に置き忘れてしまったのか。
主語も目的語あったもんしゃない。いや、目的語はあるか。どうも頭が上手く回らない。
「謝罪を要求する」
13:
「嫌よ。何で団長のあたしが平団員に頭を下げなくちゃならないのよ」
「そうか。なら勝手に遊びにでも行ってくれ。俺は寝る」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!団長命令よ?キョンに拒否権なんか無いんだからね!」
 知るか。謝罪もできんやつと遊びに行けるか。などといつになく強気な俺。ひとえに寝起きで頭が上手く回っていないおかげだろう。
まったくありがたくない。
「――……悪かったわよ。これでいいんでしょ?ほら、さっさと着替えなさい」
 まだまだ言いたいことはあったがこれぐらいにしておこう。
これ以上刺激するようなことになってはどこぞの爽やかスマイル0円の超能力者のバイトを増やすことになりかねない。
「それで、どこ行くんだ?」
 母親のにやにやした視線を黙殺しやってきたのは何時もの駅前。朝食もろくに摂ってないせか、若干腹が減っている。
「映画なんてどうかしら?」
「映画?そういや面白そうなのが幾つか公開してたよな」
 魚のアニメやデスメタル、はたまた本格科学冒険映画みたいなやつか。
15:
「で、どれを観るんだ?」
 正直なところ、あまり乗り気ではない。しかし、ボーリングなどのように体力を使わないという点に置いては賛成である。
「これよ」
 ハルヒが手に持ったパンフレットを鼻先に突き付けられる。いつの間に買ったんだ、それ?
「この子供の頃の与太話とかがやたらスケールが大きくて面白そうじゃない」
 確かにハルヒの好きそうな内容ではあるな。番宣程度の知識しかないけどな。
「ほら、チケット買うわよ」
 左手を掴まれズルズルと引きずられていく。無理矢理連れてこられたわけだが、
ハルヒが奢ってくれるわけもなく自腹を切ることとなった。
当たり前か。映画と言えばポップコーン。ポップコーンと言えば映画と言っても過言ではない組み合わせ。
映画館で食べるポップコーンは格別というか、自宅で映画を観ながらポップコーンを食べても味気ないものである。
小腹も空いていたので丁度いい。売店でポップコーンとコーラを購入した。
17:
「何でお前は我が物顔で俺のポップコーンを食べてるんだ?」
「べふにひひじゃなひ」
 ハムスターのように頬を膨らませてもしゃもしゃと咀嚼するハルヒにため息しか出てこない。
 さて、映画館での座席といえば左右にひじ掛けがついていのだが、それの占有権を取れるかどうかで映画をじっくりと楽しめるかどうかが決定する。
時間が早いせいもあってか、幸いなことに館内はあまり混んでおらず、ゆったりと座ることが出来た。
俺の左隣にはハルヒ、右は空いている。ハルヒも対称ではあるが同様の状況下にある。
つまり、ハルヒと俺の間のひじ掛けをゲットできるかどうかで話は変わってくる。
「ちょっと、キョン。邪魔だから手どけなさいよ」
「断る」
 身を削り合う攻防の結果、俺が占有権をとることとなった。これでじっくりと映画が観れると思った矢先、
あろうことかハルヒは俺の手の甲に手を乗せやがった。
18:
「おい、何やってんだ?」
「ふん、知らない」
 文句を言おうとしたところで場内の灯りが落ちる。これ以上の私語は他の客に迷惑だということで渋々黙った。
なんとく手のひらを返してみる。ハルヒの手のひらと俺の手のひらが合わさった。ついでに指を絡めてみた。
ハルヒは怒るかなと思ったが、特に動じた様子もなく画面を食い入るように見入っていた。そんなハルヒの横顔をずっと眺めていた。
 映画を見終わった後は買い物に付き合ったりと、夏休みの大半と対して変わらずにハルヒにぶんぶんとハンマー投げのように振り回された。別れ際にハルヒがまた明日などと言って少しだけ寂しそうにしていたことを除けば、特筆するようなことはなかったと思う。
 帰路に着いたところで、そういえば二人っきりで遊びに出掛けるなんて、まるでデートみたいだなと思った。
 後日、ハルヒ以外のメンバーにそのようなことを話したところ、思い切り呆れられてしまった。
 なんでだ?
21:
終わり
29:
キョン「卒業?」
 いつものように部室の扉をノックした。もはやノックをする必要性など無いのだが、
二年近くも繰り返してきた動作を急に止めることなんて出来やしない。頭ではわかっていても、
身体のほうがそれについていかない。しかし、それにすらそのうち慣れてしまい、
ノックしなくなることを考えると些か淋しいものがある。
「……」
 返事が無いことを確認するまでもなく扉を開けた。いつものように長門が本を読んでいる。
そう、いつものように、だ。それ自体別に珍しいことでも何でもない。
しかし、心の持ちようによってそれは、いつもとは違った風景のように感じてしまう。
しかも、この場合は埋めることが出来ない穴が空いてしまっている。ピースの欠けたパズルのように、
当たり前だった部室の風景が不完全なものになってしまった。
 ぼんやりと長門の姿を眺めているうちに、ハルヒと古泉がやってきた。これで全員。どうしても足りない。
そう、一週間前に朝比奈さんは卒業してしまったのだ。もちろん、未来に帰ってしまったとかそういうのではなく、
単に北高を卒業しただけなのだが、それでも違和感というか何かが足りないという変な気分だ。
 ハルヒはハルヒで、朝比奈さんがいないことに慣れないのか、よく朝比奈さんにお茶をいれるよう頼んでいる。返事が無いことにはっとなって、淋しそうな、なんとも曖昧な表情をするのだった。
31:
将棋を差す手が止まった。現在古泉は、角と飛車のどちらを俺に献上するかで迷っている。古泉が長考に入ったせいで、俺は少々手持ちぶさたになってしまった。熱いお茶でもいれようと思い、何気なく席を立った。
「あ、キョン。お茶いれるならあたしのもついでにいれてちょうだい」
「……わかった」
 いつもなら俺は『そのくらい自分でやれ』とでも言ってハルヒと文句の応酬をするのだが、今日に限ってはハルヒの命におとなしく従うことにした。
俺もハルヒも朝比奈さんがいないことを十二分に意識しているのだ。
 今度お茶を美味くいれるコツなんかを聞いておこう。朝比奈さんは、卒業したとはいえ週末の不思議探索には参加してくれている。
その時でいいだろう。
「ほら、熱いから気を付けろ」
「ん、ありがと」
 普段は礼など言ったことのないハルヒが、パソコンから目を離さないとはいえ、礼を言った。
 思わずハルヒの顔をまじまじと見てしまう。
34:
「何よ?」
「いや、珍しいこともあるもんだなと思ってな」
「あたしだってそういう気分の時もあるわよ」
「そうか」
 そういう気分がどういう気分かはわからないが、その気持ちはわかるような気がした。
「ほい」
 頼まれてはいないが、もののついでに長門の分もいれてみた。不味いと思うが我慢してくれ。
「……感謝」
 本から顔を上げ、ただそう一言述べて再び本に目を落とす。長門らしいというか何というか。
もしかすると気を遣ってくれたのだろうか。
「おや、僕には無いんですか?」
 こちらは女性のみのサービスとなっております。つまり、野郎はセルフでどうぞってことだ。
「……冷たいですね」
 古泉のぼやきは無視して、席に着く。どうやら古泉は角を差し出すことに決めたようだ。お茶を一口飲む。
青汁のCMではないが、不味い。朝比奈さんのいれたお茶はそのままでも美味しい上に、さらにあの笑顔がついている。
スマイルは0円だが、心がこもっていればプライスレス。
35:
「物足りないわね……」
 ハルヒも同じような結論に達したのか、不満そうな表情を浮かべている。
「みくるちゃんはSOS団のマスコットキャラなのに、卒業しちゃったら意味無いじゃない!」
「……まぁ、仕方ないだろ。それに、別に辞めたわけじゃないんだから」
「それはそうだけど……。よし、みくるちゃんの代わりにキョンがメイド服を――」
「断る。目に毒だ」
「それもそうね」
 自分のアイデアだというのに、あっさりと却下。ハルヒも朝比奈さんの代わりなんていないことを理解しているらしい。
「なんだ、淋しいのか?」
「そりゃ、淋しいわよ……」
 卒業式の日、朝比奈さんではなくハルヒが号泣していた。らしくないようでなんともハルヒらしい光景であった。
それだけ、朝比奈さんという存在がSOS団、いや、ハルヒにとって大きいということだろう。
38:
「みくるちゃんが留年すれば良かったのに」
 もしハルヒが本当にそう願っているとしたら、朝比奈さんの卒業が取り消しということになりかねない。それはそれで嬉しいかもしれないが、流石にそういうわけにはいかないだろう。
「……なんて顔してんのよ。冗談に決まってるでしょ」
 朝比奈さんの卒業が取り消しになったとしたら、ハルヒの涙も無駄になってしまうからな。
「うっさい、バカ」
 卒業式の日のことを思い出して照れ臭くなったのか、ハルヒはそっぽを向いた。
その横顔がどことなく赤い。
「卒業したからってみくるちゃんとここで過ごした時間が無くなるわけじゃないわ。
それに、週末には逢えるんだから」
「……そうだな。それに、今度の不思議探索の時に思いっきり朝比奈さんに甘えたらいいさ」
「もちろんよ!これでもかってくらいみくるちゃんにひっついてやるんだから!」
 ハルヒに抱きつかれて困ったように、しかし、嬉しそうに頬笑む朝比奈さんを想像しながらお茶を一口飲んだ。少しだけ、お茶が美味しくなったような気がした。
39:
終わり
40:
古泉「気苦労?」
 どうも、古泉です。只今不思議探索の真っ最中なのですが、少々困ったことになっています。
大袈裟に言うわけではありませんが、世界が危険に晒されている状況だったりします。
何のことはありません、涼宮さんがご機嫌斜めだということです。その原因についてですが、痴話喧嘩です。
涼宮さんの機嫌が悪くなる原因の9割は彼との痴話喧嘩に因るものですから。痴話喧嘩なんて言ったりすると、
二人ともきっと必死で否定するでしょうが、端から見ている第三者からすると痴話喧嘩以外の何ものでもないのです。
「…ったく、ハルヒのやつはいちいち細かいんだよ。別に待ち合わせ時間に遅れたわけじゃないってのに――」
 くじ引きによる班分けで、彼と僕がペアになったわけですが、先程からこの調子で涼宮さんに対する文句を呟き続けています。
今日の喧嘩の原因は、彼が涼宮さんより集合が遅かったということです。そのことを涼宮さんがいつものように注意したところ、
極稀なことですが彼が反論しました。そこから二人の痴話喧嘩が始まったわけです。かなり微笑ましいモノを感じますが、当人にしてみればそうでもなさそうです。
 彼の真似をするわけではありませんが、やれやれと肩を竦めたいところです。
毎回毎回お二人の仲を取り持つ役割は僕に回ってくるわけで、気苦労は絶えません。彼は常々損な役回りをさせられているとこぼしていますが
、はてさて僕と彼ではどちらが損をしていることやら。
 まぁ、そんな思考はひとまず置いておきましょう。
41:
「涼宮さんはあなたにもう少しキチンとしてほしいから、ああやって小言を仰るのですよ」
「ふん、余計なお世話だ」
 涼宮さんの感情の変化を敏感に読み取った結果を素直に述べたところ、彼に一蹴されました。
まったく、二人とも人の話を聞かないと言いますか、自分に絶対的な自信とプライドをお持ちのようで。
さらに、そのプライドがことさら発揮されるのが二人が一緒にいる時ですから、これも悩みの種となっています。
「そもそも、どうして俺がハルヒにキチンとしろと注意されなくてはならんのだ。どうせSOS団の面子に関わるだとかなんとか言うんだろうけどよ…」
 僕はあからさまにため息を吐きます。本当に鈍感なのもいいところでしょう。彼はもう少し夢を見てもいいのではと思います。
全てを頭から否定し、自分の都合の言い様に解釈するのが彼の悪い癖であり、長所でもあります。
客観的意見は時として意味を為さないモノだということを彼に学んでもらいたいものです。
「だいたいだな、やることなすことアイツはいつも無茶苦茶なんだよ。もっと計画性を重んじろ言ってやりたいね」
 それでも何だかんだで彼は涼宮さんの後を追い掛けます。無茶苦茶なら無茶苦茶な割に道を踏み外さないように手綱を握ってやる。
文字通りじゃじゃ馬を乗りこなすと言ったところでしょう。そう伝えると、彼はまさかという表情をして全力で否定の意を唱え始めました。
本人も無自覚というわけで無い証拠です。
42:
「まったく、憶測で物事を言うのはやめろ」
「憶測、というわけではありませんよ。お二人の御様子をつぶさに観察した結果を基に意見を述べているだけですが。
お気に召しませんでしたか?」
「ああ、召さないね。大いに気分を害されたよ」
 どうしてこうも素直になれないんでしょうか。先程も言いましたように、やはりプライドが邪魔をしているからなのでしょうか。
ここはそのプライドを刺激しつつ涼宮さんの方へ仕向けてやるしかないでしょう。
「では、話を変えましょう。例えば涼宮さんが誰かに告白されたとしましょう。あなたは涼宮さんがどうすると思いますか?」
 彼はわけが判らないといった顔をしましたが、しばらく迷った挙げ句こう答えました。
「俺はハルヒの思考回路を理解できるわけじゃないが、きっとアイツは断るだろうよ。
そんじょそこらの連中にアイツを満足させることなんか土台無理な話だからな」
 あまりに的確過ぎる回答に、僕は思わず笑ってしまいました。彼が如何に涼宮さんのことを気に掛けており、
如何に観察しているかがよくわかります。そして、同じような質問を涼宮さんにすると、きっと彼なんかを好きになるやつなんていないと答えるでしょう。
お互いに信頼しあっているという証拠です。
43:
「で、今の質問の意図は?」
「特にありませんよ。単なる好奇心から来るものといっておきましょうか」
「くだらん」
 照れ隠しからか彼はそう吐き捨てて、さっさと先へ行ってしまいます。本当に分かりやすい性格をしています。
おっと、朝比奈さんからメールです。
『涼宮さんは一応機嫌が良くなりつつあります』
 それは何よりです。きっと朝比奈さんが色々と気を遣ってくれたに違いありません。
後は、本人たちに任せておけば大丈夫でしょう。
『了解です。長門さんに、午後は彼と涼宮さんをペアにしてもらえるように頼んでおいてくれませんか?』
 これで良し、送信。
 しつこいようですが、お二人がもっと素直になってもらうしか解決方法はありません。我々はそれを手助けするだけ。
やれやれ。まったくもって損な役回りです。
44:
終わり
49:
キョン「修羅場?」
 暑い夏がやってきたところで日々の生活にさして変化があるわけではない。退屈な授業が終われば熱射病みたいなハルヒに引きずられて部室へ直行。
古泉とオセロやら将棋をして時間を潰すことが大半ではあるが、たまにハルヒに相手をさせられることもある。そんな時は少々アレなのだが、
比較的穏やかな日々を送っている。
 さてさて、そんなある日のことである。今日は掃除のせいで部室に行くのが遅れてしまった。
ハルヒはそういうことに対してもう少し寛大になるべきなのだが、掃除なんかサボれなどとあるまじきことを宣う。
いや、別に掃除をそこまで一生懸命にしているわけではないのだが、調和を乱す行為を嫌う日本人としては当たり前である。
ハルヒは調和などといったものはつまらないの一言で一蹴しそうではあるが……。
 部室のノックをして返事を待つ。この時間帯ならもう全員揃っているだろう。そんなことを考える間もなく、はぁ?いと返事が返ってくる。
もう朝比奈さんの恒例となったコスチュームチェンジは終了しているようだ。安心しと扉を開けた。
出迎えてくれた朝比奈さんの御姿を網膜に焼き付けながらいつもの席へ。
 本当に眼福である。
50:
「あ、お茶入れますね」
 そう仰ってトテトテと動き回る御様子はなんとも癒される。この東京という名の人間砂漠に咲いた一輪の花といったところか。
別にここは東京でも何でもないが。そういう気分なのだ。
「お待たせしました?」
 熱いから気を付けて下さいねと微笑まれ、何故か俺の座っている正面に回り込んで前屈みになりつつ湯呑みを置いて下さった。
いや、その態勢だとふくよかな胸が強調されて――
「どこ見てんのよエロキョン!」
 別に見ようと思って見ていたわけではない。不可抗力だ。なんてことを言ったところでハルヒは聞く耳を持ってくれないんだろうね。
怒りを顕に団長席からずんずんと近づいてきてどかっと乱暴に俺の隣に座った。
「……何をしてるんだ?」
「キョンがみくるちゃんに変なことをしないように見張るのよ」
「だったらこんなに席をくっつける必要はないだろ?狭いんだが」
「うるさいわね。つべこべ言わないの」
 やれやれと言いたくなるのを我慢して、はいはいと投げ遣りに相づちを打って終わりにする。
夏真っ盛りなのに、肩が触れ合う距離でいるせいか正直なところ暑い。ボタンを一つ外してパタパタて胸元に空気を送り込んでやる。
たいした冷却効果を得られるわけではないが、幾分か涼しくなったような気がした。
51:
「どうかしたのか?」
「な、何でもないわよ!」
 視線を感じてハルヒの方に顔を向けると、顔を思いっきりそらされてしまった。
その横顔は暑さのせいかいささか紅潮しているようだった。
「本当に暑いですよねぇ」
 朝比奈さんも何やら胸元に風を――って、待て待て待て!ハルヒ熱湯はマジでヤバイ!
「覗いてんじゃないわよ!ホントエロキョンは隙があったもんじゃないわ。みくるちゃんはあっちに行ってなさい。みくるちゃんのこと襲わないようにあたしが付きっきりでエロキョンの面倒は見とくから」
 酷い言われようである。
今回のことも不可抗力だと言い張りたいのだが、付きっきりとかなんとかで俺の腕にしがみついているハルヒのせいで正常な思考が出来ない。
別に柔らかいんだなとか思っているわけではない。ただ、脳ミソが溶けそうなくらい暑いのだ。
朝比奈さんが入れてくださった熱々のお茶にも負けないのではなかろうか。もしかすると沸騰しているんじゃないかと少し心配になる。
「何ボーッとしてのよ?また変な妄想してんじゃないでしょうね」
「またってなんだ、またって」
 非難の声を上げるが、間近で見るハルヒの顔に見惚れてしまいそうに――だ、断じてそんなことはない。
やっぱり暑さでどうかしてしまったんじゃなかろうか。どうにもさっきからまともな思考が出来ていない。
52:
「むぅ……。涼宮さんもなかなかやりますね」
「えっと、何か言いましたか?」
「いえ、何にも」
 天使様がにっこり。隣で般若様もにっこり。ああ、脳ミソが沸騰する。
というか、そんなに腕をつねると身が引き千切れるから止めていただきたい。
「みくるちゃんにへらへらしてんじゃないわよ。エロキョンはみくるちゃんの半径3m以内に近づいたらダメだからね。あ、あと喋りかけてもダメだから」
 なんだ、そのアメリカのストーカー裁判の判決のようなものは。別に俺は朝比奈さんのストーカーでも何でもない。
むしろ、朝比奈さんをストーカーから守る正義の味方といったところか。自分で言ってて悲しいが、俺にはそんな主人公体質は無い。
精々名も無き一般生徒Bぐらいが妥当なところだろう。
54:
「あ、あしがすべりましたー」
 そんな棒読みくさい台詞が聞こえたと思ったらハルヒとは逆側から柔らかい衝撃が。
いやいやいやいや、それはないだろう。朝比奈さんは確かにおっとりしていらっじゃるが、意外に歳上らしい落ち着いたところもある。
そんな方が足を滑らすだろうか。百歩譲ってあったとしよう。だからといって、足を滑らせて俺に抱きつくようなことが有り得るだろうか。
ああ、神様ありが――
「何やってんのよ、こんのエロキョンがー!こら、さっさと離れなさい!」
「あ、あ、大変です。腕が絡まっちゃいました?」
 ええ、ええ、大変でしょう。でも俺はもっと大変なことになってますよ。ハルヒに首を掴まれて頭をシェイクされてますからね。
 意識が失くなる瞬間、長門と目が合った。普段はあまり感情の籠もらない瞳が、羨ましそうだったのは果たして幻想か。
残念ながら、俺にはそれを確認する術はなかった。
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