【モバマス×ニンスレ】「ドリンク・ディペンダンス」back

【モバマス×ニンスレ】「ドリンク・ディペンダンス」


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1:
アイドルマスターシンデレラガールズ
×
ニンジャスレイヤー
第1部「ネオプロダクション炎上」より:
ドリンク・ディペンダンス
前スレ
「アイドルマスター 第一部 ネオプロダクション炎上」
2:
夏。
汗を流しつくして干からびきった人々が、ズンビーめいた足取りで街を歩きまわっている。
水分不足はカロウシ寸前まで働いているサラリマンにとっては特に体に堪えるため辛い季節だ。 1
3:
そんな時、街の至るところにあるオチャ・バーが、人々をボディサットヴァのごとく受け入れる。
「お」「て」「も」「と」とミンチョ体で書かれたノーレンをくぐり、
ガラス製のフスマを開けるとシシオドシと電子マイコの声がしめやかに来客を迎える。 2
4:
「イラッシャイマシドスエ」
「イラッシャイマシドスエ」
「ドスエ」
マイコの声がやまびこめいて響く。
店員は来客の案内をしないが、それがいい。
無人オチャ・バーは人と顔をつき合わせることに疲れた現代人のためのオアシスなのだ。 3
5:
空調の効いた店内はスミエのタイガーが描かれたビヨンボで仕切られ、奥ゆかしいゼン空感を演出している。
より質の高いサービスを提供するために、フートンを引いたチャシツを用意しているところもある。
イントラネットも使い放題だ。 4
6:
ジェイエスはそんなチャシツで古代ローマ貴族のように横たわり、合法オハギとマッチャを交互に流し込んでいた。
彼はシンデレラガールズプロダクションで制作会社や広告代理店との折衝や営業を主に担当している。
今は年越しライブに向けての広告戦略を代理店と練ってきた帰りだった。 5
7:
(どうしてイエローペーパーにまで宣伝を出す必要があるのだ。イディオットめ)
彼は相手の担当者を心の中で罵った。
相手の考えは読めている。大量に広告を出した分、法外な広告宣伝料を事務所に請求する腹積もりなのだ。
こちらは新興の事務所であり、足元を見られているに違いない。 6
8:
(そうはいくか)
ジェイエスは勢い良く最高級マッチャを飲み干しながら勝利の余韻に浸っていた。
相手の思惑を見抜き、タフなプロデューサー交渉術によって事務所の有利な契約を結んだことに満足していた。
彼はカップが空になったことに気づくと、3杯目のマッチャを注文した。 7
9:
なんたる贅沢か。
彼の姿を事務所のレッサープロデューサーたちが見れば嫉妬するだろう!
だがこれも各アイドルの担当プロデューサーではカバーしきれない外回りを一手に引き受けているためだ。
彼は実際有能であり、事務所の中でも特権的な地位を築いていた。 8
10:
(俺の代わりが出来るならやってみるがいいさ。無能どもめ)
ジェイエスはほくそ笑んだ。
一部の同僚を除き、自分に比肩する者などいないというのが彼の持論だった。
だが賢明な読者諸兄はご存知だろう。
ミヤモト・マサシの「驕れる者はすぐ死ぬ」というコトワザを。
彼にどんな結末が待っているのか、ぜひ見届けていただきたい。 9
11:
ジェイエスが3杯目のマッチャを飲みながら最新のモードをチェックしていると、尿意を催してきた。
どうやら少し飲み過ぎてしまったらしい。
チャシツから出てトイレに向かうと、事務所のアイドル、カレン・ホージョーがぶらついているのを見かけた。
どうやらまたレッスンをサボっているらしい。 10
12:
(アッコラー……ンマケッチャコラー……)
心の中で凄んで見せるが、もちろん表に出すことはない。
うっかりしてアイドルから嫌われようものなら、事務所の中でのヒエラルキー低下は避けられないからだ。
彼は社内政治にも敏感であった。 11
13:
たまたま通りかかったフリをして、何をしているのか聞いてやろう。
カレンがうろたえる様子を見せれば弱みを握ったことにもなるだろう。
彼は頭のなかで計算高く未来を予測しながら、声をかける機会を伺った。 12
14:
カレンは「DIY」と掲げられたドリンクサーバーの前で立ち止まると、コップにジュースを注いでいく。
どうやらドリンクバー・サービスを利用しているようだが、何か様子が違う。
コップの中に3種類、4種類とジュースを注いでいくのだ。 13
15:
これは女子高校生の間で密かに流行しているバクダン・カクテルと呼ばれる遊びだった。
彼女たちは3種類から4種類、多い時には5種類以上のジュースを混ぜあわせ、
独自のカクテルを作り上げることを競い合うのだ。 14
16:
作られたカクテルが美味しければ美味しいほど称賛され、不味ければ不味いほど話の種になる。
その競争の過程でカチグミもマケグミも発生しない。
同じハバツ内での無用な蹴落としあいを避けながら、タノシイな時間を過ごす。
女子高校生たちの知恵から生まれた高度な遊びだった。 15
17:
ジェイエスがそのような話を同僚の誰かから聞いたことを思い出していると、カレンはドリンクサーバーの前から立ち去っていた。
声をかけるタイミングを逸したことを悔やみながら、自分もドリンクサーバーの前に立った。 16
18:
ドリンクサーバーの機械には色々なジュースが並んでいる。
オーガニックマッチャやケモコヒなどの定番のドリンク。
バイオピーチや合成コークなどのキワモノジュースまで様々だ。
その中で、ジェイエスはスタミナドリンクとエナジドリンクのボタンが目を奪われた。
(チヒロ=サンも営業熱心なことだ) 17
19:
チヒロサン印のドリンクは主に自分たち事務所の人間たちにしか利用されていない。
センカワ・チヒロは事務所を大きくするにあたってアイドルを売り込むことも大切だが、資金面を強化することも重要だと考えているのだろう。
(抜け目のない事だ)
彼は事務所を実質的に仕切っている事務員の手腕に感心していた。 18
20:
不意にこのドリンク類でバクダン・カクテルを作ったらどうなるだろうか、という好奇心が頭をもたげた。
ショーユとバイオウニから成形プリンが作られる。
ではスタドリとマッチャからは?
違法カルピスとエナドリからは?
試してみたくなった。 19
21:
ジェイエスは通貨素子をドリンクサーバーに差し込む。
キャバーン!素子から金が引き落とされ、専用のシリコン樹脂製のコップが差し出された。
それをドリンクの注入口の真下にセットし、どのジュースから注ごうか逡巡する。
(まずは……マッチャからだな)
彼は決断的にカクテルを作り始めた。 20
22:
―――――
21
25:
午後も遅くなった時間に、モバPは江戸時代と同じ建築方法で建てられた木造の古い建物の間を歩いていた。
おお、これはどうしたことであろうか?
ついに彼はタイムスリップしてまでアイドルをプロデュースしに来たというのか!? 22
26:
否、これは撮影のために特別に作られたセットである。
彼の担当アイドル、シオミ・シューコがここで特殊セットを利用した撮影を行っているのだ。
この撮影場所は寮や事務所から離れた場所にあるため、P自身が車を駆り迎えに来たのだった。 23
27:
スケジュール通りに進んでいれば、今日は日が落ちる前に撮影は終了するはずだ。
車での帰り道、腹をすかせたアイツに何かおごってやらなければならないだろう、
アレは小食の癖にいつも何か口にしているし
……と考えていると、端末にノーティスが届いた。 24
28:
送り主はあの事務員で、それに目を通した途端、モバPの顔が曇る。
渉外担当のプロデューサーが事務所に戻ってこないから連れ戻せ、という指令だった。
どこにいるとも知れない人間を探して連れ戻せと?モバPは重いため息をついた。
面倒事を運んでくるのはいつも自分の周りの人間だ。 25
29:
何故自分がそんなことを、と愚痴の1つも言いたくなる。
だが、こういった社内の面倒事を引き受けるのも仕事の1つだった。
一介のレッサープロデューサーでしかなかった自分が自我の破壊やケジメもされることなく、
あの事務員から特別な権限を与えられているのも、こういった仕事の対価からだった。 26
30:
モバPが渋い顔をしていると、建物の影から白いキツネの化粧を施したアイドルが姿を現した。
件のシオミ・シューコである。その胸は豊満であった。
フォックス・オブ・ナインテールの伝説を模したその衣装は、エキゾチックに妖艶で、彼女のアトモスフィアとも非常に合っていた。27
31:
するりと腕に絡みつくようにして豊満な胸を押し付けてくる様は、本物のキツネのようでもあった。
「Pさん、お迎えありがとさん」
「……御苦労様、と言いたいところだが、また別な仕事が入った。すぐに移動しなければならん。すぐに着替えを追えてくれないか?」 28
32:
強いて柔らかく接しようとするものの、『仕事』への憂鬱感から口から出る言葉の調子は重苦しい。
そんなPに気を使わせないように、シオミの方はいつもと変わらない調子で答える。
「アイ、アイ。分かってるよ」
これが日本人のオモテナシか。
言葉以上に相手を思いやる心によって奥ゆかしさ倍点である。 29
33:
「仕事って、これから?どんな?」
車の助手席に乗り込んだシオミはモバPのポケットから端末を取り出し、先ほどノーティスを読み上げた。
「ジェイエス=サン?そんな人いたっけ?」
「滅多に事務所に寄り付かないやつだ。実際性格が悪い。知らなくて幸運だな」
モバPは率直な意見を述べた。 30
34:
あんまりな評価にシオミは吹き出し、面白そうに続けた。
「同僚をそんな風に言っちゃっていいの?」
「事実だからな……そういうことだから、今日のおごりは、ナシ」
「アイエッ!?そんなの、困る!」
シオミが本気で焦りながらモバPの腕にすがりついた。 31
35:
「……食い意地が張りすぎだ。お前は」
「だって、そんなの酷い。アクマ、ブッダデビル……」
先ほどまでの上機嫌はどこへやら、シオミはがっくりとうなだれている。
「文句ならジェイエスに言ってくれ」
「……確かに、最悪だね。その人」どうやら、シオミもモバPの評価に同意したようだ。 32
36:
―――――
33
37:
「いいか、まっすぐ寮に帰るんだぞ」
「エー、アタシそんなに信用ないかな?」
「ない。全く」
「そんな事言わんといてー」
シオミを寮の近くまで送り届けるまでの数十分のドライブの間に、シオミもだいぶ機嫌が治ってきたようだった。
モバPの軽口にもケラケラと笑っている。 34
38:
モバPは最後にコンビニ弁当をシオミに手渡しながら詫びた。
「スマンな。今度こそ、ちゃんと飯をおごってやる」
「ほんとだよー。お願いねー」
シオミもいつもの軽い調子で応じながら、寮に戻っていった。
これなら明日からのアイドル活動にも支障は出ないだろう。
モバPはほっとして、踵を返した。 35
39:
急がなければならないだろう。
運転中にさらにノーティスが届いたが、前よりも切羽詰まっている。
(全く、仕事を増やしてくれる……!)
場所はオチャ・バー「おてもと」。そこに同じ事務所のアイドルもいるという。
(何をしているのだジェイエス=サン!)
モバPが現場に急行すると、そこにはジゴクが広がっていた! 36
40:
【the idolm@ster】
43:
【the idolm@ster】
44:
モバPは最後にコンビニ弁当をシオミに手渡しながら詫びた。
「スマンな。今度こそは、ちゃんと飯をおごってやる」
「ほんとだよー。お願いねー」
シオミもいつもの軽い調子で応じながら、寮に戻っていった。
これなら明日からのアイドル活動にも支障は出ないだろう。
モバPはほっとして、踵を返した。 35
45:
急がなければならないだろう。
運転中にさらにノーティスが届いたが、前よりも切羽詰まっている。
(全く、仕事を増やしてくれる……!)
場所はオチャ・バー「おてもと」。そこに同じ事務所のアイドルもいるという。
(何をしているのだジェイエス=サン!)
モバPが現場に急行すると、そこにはジゴクが広がっていた! 36
46:
時を遡り、ジェイエスがバクダン・カクテルを作り始めた時間に戻ろう。
ジェイエスはカクテル作りの奥深さを思い知らされていた。
(実際ハイクめいた奥深さな……)
エナジドリンクと違法カルピスは2:
だがこれにもう一種類ドリンクを加えるとなるとまた再調整が必要だ 37
47:
スタミナドリンクは調整済み乳飲料(註:液化ヨーグルト)と混ぜ合わせることで独特の風味を増す。
そしてマッチャはこういうカクテルには合わないようだ。
ミルクと砂糖の組み合わせでなら飲めなくもないが、そうまでして追求する味でもない。 38
48:
こうした1つ1つのカクテルの味を確かめながらメモに書きとどめておく。
こうして話題になることを覚えておけば、営業で見知らぬ人間と会話するときに役立つ。
このドリンクについてリアルの女子高校生たちにインタビューする企画を営業先に持ち込んでもいいだろう。39
49:
飲み物1つでこれほどまで考えが浮かぶとは思わなかった。
面白いネタを発見したものだ、とジェイエスは口の端からよだれを垂らしながら考える。
手にしたコップの中から白い謎の液体を飲み干すと次のカクテル作りに向かった。
「ウフフ……」
楽しい。思わず笑みがこぼれる。 40
50:
さて次はどんな組み合わせでドリンクをつくろうか。
「刺激的な」「ヤバイ」「おマミ」
極彩色でカリカチュアされたフレーズがボタンの上で踊る。
それらは組み合わさりながらジュースの名前となっていく。
「ウフフ……」
その可愛らしい動きにジェイエスは再び笑みを漏らす。 41
51:
開きっぱなしの口からはよだれがこぼれている。
まずはエナジドリンクだ。
次はスタミナドリンク。
バランスが重要だ。
1:
そして次にマッチャを入れる。
コップからは入りきらなかったジュースがこぼれて床にシミをつくている。 42
52:
だがジェイエスは気にも止めない。
それどころか楽しげにその様子を見ている。
スタミナドリンクとエナジドリンク、そしてマッチャ。
全部かけ合わせればスゴクヤンバイ物が出来る。そうに違いない。
「ウフフフ……」なんだか楽しくなってきた。その場でカクテルを飲み干し、次のカクテル作りに戻る。 43
53:
味はなんだかわからない。
だが楽しいな。
ハイになってしょうがない。
今なら隣においてあるイスもアイドルとしてスカウト出来そうだ。
次。
次のドリンクだ。
次のドリンクを飲まなければ……
彼は狂ったようにボタンを押し続け、ドリンクを飲み続ける。 44
54:
「ちょっと、アンタ……」
ドリンクサーバーの前を占拠しドリンクを飲み続けているジェイセスに、他の客が不審がって声をかけた。
その時、振り返ったジェイエスの顔は、おお、ナムサン!
顔に張り付いた笑みはますます大きくなり、ピエロめいた狂気さを孕んでいるではないか!コワイ! 45
55:
チヒロはドリンクを作る際、ドリンク一本で疲れがとれたと感じるように、微量の違法薬物を混ぜてあったのだ!
それを知らされていなかったジェイエスはスタミナドリンクとエナジドリンクのオーバードーズによって、半ば強制的に幻覚を見せられていたのだ! 46
56:
それはピンクの象と緑のブサイク人形が踊る幻覚だった。
あっちではピンクの象が長い鼻でラッパを作り、緑のブサイクがスケートですべる!
こっちではピンクの象は鼻を繋ぎあわせてロープにして縄跳びを始め、緑のブサイクはいつの間にかその踏み台になっている!47
58:
今度はピンクの象がピラミッドに変身し、緑のブサイクがアイドルとなってその上で踊っている!
ピラミッドとアイドルが1つになり、ピンクと緑のコントラストは次第に竜巻のようになり、ジェイエスの目をくらませる。
おお、おお、目が、目が回る。
気分が、胃の調子が悪い……。 48
59:
……ジェイエスに声をかけた男はその狂気的な顔を見て、思わず後ずさりをしていた。
だが遅かった。
その肩をジェイエスが掴んだ。
「オゴーッ!」
「グワーッ!?」
ジェイエスは口からピンク色の液体をぶちまけ、声をかけた男に頭からそれを掛け流した。
人間オンセンだ! 49
60:
かくしてアビ・インフェルノ・ジゴクが始まった。
ジェイエスは体内で大量に摂取したドリンクの薬物成分と、それまでに溜め込んできたオハギのアンコ成分を混ぜあわせた狂気的なドリンクを生成していた。 50
61:
更に幻覚に酔い、正常な判断力を失った彼は人間スプリンクラーめいてその液体をあたり構わず吐き散らし、
周囲にいる人間にもこのドリンクを浴びせ、二次被害を与え始めた。
モバPが店に着いたのはそんな時であり、
店の中にはピンク色の水たまりと、その周囲でうずくまる客の姿が目に飛び込んできた。 51
62:
「これは……!」
「アーッ!?アーッ!?アーッ!?」
「ゴボーッ!?」
「オッオボボーッ!」
水たまりの人間は、同様にピンク色の液体を口から溢れさせながらのたうち回っている。
モバPは知る由もないが、彼らもピンク色の象と緑のブサイクの幻覚を見せられているのだ。 52
63:
そのピンク色の液体は吐き出されるとすぐに揮発していき、周囲に煙のごとく漂っている。
これが周囲の人間にも影響を与えるのか。
このバイオハザードめいた空気はどこかで断ち切らねばなるまいが、うっかりこのジゴクに足を踏み入れるのは避けたい。
「ミイラハンターがミイラになる」のコトワザの通りだ。 53
64:
モバPはアヤメから教えてもらった方法で手ぬぐいを即興でメンポ(註:面頬)に仕立て上げ、口を覆った。
ニンジャの知恵と彼女は言うが、どこまで防げるかわからない。
モバPは少しでもピンク色の煙を防げることを祈った。
準備を整えてから、ゆっくりと店内の捜索を開始した。 54
65:
チヒロからのミッションは、同僚・ジェイエスの暴走を止めること、
そしてこの恐るべきジゴクに巻き込まれているであろうアイドル、カレンを助け出すこと。
(無事でいてくれよ……)
あちらこちらに飛び散ったピンク色の液体がサイケデリックに店内を彩る中、モバPは慎重に進んでいった。 55
66:
すでに店の周囲は事務所の力によって封鎖されているため、これ以上の被害は出ない。
だが長いことは持たない。
すぐにでも別の事務所からの介入やメディアからの攻撃の材料になるだろう。
そうなる前に、素早く片をつける。
なんとしてでも、事務所を潰させるわけにはいかないのだ。 56
67:
モバPの瞳に決断的な意思の炎が宿った時、もう一方の瞳は探すべき対象を見つけていた。
店の真ん中付近のテーブルを、なんとかしてアイドルデビューさせようと話し続けている男の姿、ジェイエスだ。
「ドーモ、ジェイエス=サン。モバPです」
だがジェイエスはそれに答えず、ぶつぶつと何かを呟いている。 57
68:
アイサツは実際大事だ。
それは日本人ならばDNAレベルにまで染み込んでいるはず。
それを返さないということは……
「人ですら無くなったか」
彼は僅かながらに悼んだ。
気に食わないとは言え自分より遥かに有能なプロデューサーだったものを。
だが私情を挟むことなかれ。今は仕事中なのだ。 58
69:
モバPは部屋の真ん中でふにゃふにゃと踊っているジェイエスに近づき、宣告した
「亡者、死すべし!イヤーッ!」
おお、だが見よ!ジェイエスの動きを!
モバPはジェイエスの首を刈り取ろうとチョップした右手をブリッジでかわし、
無防備になったモバPの背中側からピンク色の液体を吐きかけたのだ! 59
70:
「ゴボーッ!」
「グワーッ!?」
モバPのスーツは無残にも汚染された!
このままではスーツに染み込んだ液体が皮膚を通して吸収されることにより、モバPにも幻覚を見せ始めるだろう!
そうなってしまえば仕事の遂行などユメ・オーバー・ザ・ユメじみている。
いよいよ時間が無くなった。 60
71:
バカ!ウカツ!
ズンビーのような見た目に騙されたというのか。
モバPは自分の不手際を呪った。だがもう逃しはしない。
全力でウサギを仕留めるライオンのように、倒す。
彼はバックフリップで距離を取ったジェイエスを睨み据えた。 61
72:
「自我が残っているのか、ジェイエス=サン?」
「アバー」
「まあ、どちらでも良い。オヌシの生死は問わぬと、チヒロ=サンからの言葉だ」
「……!」チヒロの名前を出した時、ジェイエスがわずかに反応した気がしたが、それを無視し、モバPは跳んだ。
「ジェイエス=サン!覚悟!イヤーッ!」 62
73:
【the idolm@ster】
75:
【the idolm@ster】
76:
(これまでのあらすじ)
(有能だが同僚を見下しがちなアイドルプロデューサー、ジェイエスはオチャ・バーでスタミナドリンクやエナジドリンクを他のジュースとカクテルを作って楽しんでいた)
77:
(しかし、スタドリやエナドリには幻覚作用をもたらす成分が混ぜられていたため、ジェイエスは過剰摂取により廃人と化した)
(幻覚作用のあるピンク色の液体をまき散らしながら周囲に被害を与え始めたため、チヒロから切り捨てられ、モバPが派遣されたのだった。)
(カラダニキヲツケテネ!)
78:
「アバー」
「ヌゥーッ!」
モバPはジェイエスの振り回したイスを避けようとしてたたらを踏んだ。
実際苦戦を強いられていた。
ただでさえアイドルプロデューサー力の上の相手で、その上薬物によって脳のリミッターを外している相手なのだ。 63
79:
さらにジェイエスたちが吐き出した液体から気化した毒煙もモバPの行動を阻害していた。
瘴気まがいの毒煙が漂う空間では慣れないメンポをつけずにはいられないが、そうすれば息苦しく運動量が落ちる。
フーリンカザンは敵の手にあった。 64
80:
アヤメから教わっているチャドーの呼吸もいまだ不完全。
となればこの毒煙を物理的に排出するほうが早い。
モバPは端末を取り出して、アイドル界随一のハッカー、イズミにノーティスを飛ばす。
||ハロー、ワールド。どうしましたか||
||イズミ、サポートを頼む|| 65
81:
||オチャ・バー「おてもと」のシステムをハックして、換気扇を全力で回してくれ||
||時間かかるよ。具体的には10分くらい||
||3分だ!||
モバPは無茶な要求をマルナゲし端末を投げ捨てた。
モバP自身も無茶な要求だとわかっている。
ならばこそ全力でジェイエスを足止めする。 66
83:
モバPが攻め手を待ち、膠着した状況になった。
それを見越したのか、ジェイエスが動いた。
「ウオーッ!」
それまでモバPの行動に対応するだけだった彼が突進を開始した。
その向かう先はモバPではなく……ALAS!テーブルにぐったりと突っ伏すカレンである! 67
84:
「貴様……!」
モバPはジェイエスに飛びかかって突進を止めようとしたが、それを引きずってカレンの元へ歩みを進めている。
スゴイ!重戦車めいたそのパワーは薬物だけでは説明出来ない!
カレンとジェイエスの距離がタタミ一枚分となるまで迫った時、ジェイエスが叫んだ! 68
85:
「アイドルと前後!薬物前後!」
あなや!なんという下衆な欲望か!
ニューロンが破壊されたせいで、心の奥底にしまい込まれていた本心が現れたというのか。
モバPはその言葉を聞くと、心の中に僅かに残っていた憐憫の情を捨て去り、宣言した。
「悪徳プロデューサー、死すべし!」 69
86:
モバPはジェイエスの腰を払い、転倒させた。
その隙にカレンに駆け寄り救出すると、ジェイエスから隠れるようにして自分の後ろにかばった。
一方で起き上がったジェイエスは邪魔されたことに怒りの炎を燃やしている。
モバPはジェイエスと向き合い、攻撃のタイミングを待った。
勝負は一瞬の攻防で決まる。 70
87:
2人が睨み合ったまま動かず、奇妙に静かな時間が流れた。
それは永遠にも似た刹那だった。71
88:
ゴウ!天井に備え付けられている換気扇が一斉にフル稼働し始めた。
その音共にモバPとジェイエスが同時に前へ跳んだ。
「アバー……アッ?」
全力でスプリントし始めたジェイエスがバランスを崩した。
その足元には、おお、ゴウランガ!
モバPが投げ捨てた端末が置いてあるではないか! 72
89:
モバPはフーリンカザンが相手に取られている状況で、少しでも有利な空間を作ろうと一瞬の状況判断で投げ捨てた端末上に相手が来るように誘導したのだ!
そして、店内を満たしていたピンクの霧は換気扇によって晴れつつある。
モバPはメンポを剥ぎ取り、思い切り空気を吸い、吐き出した。 73
90:
新鮮な空気が肺を満たし、全身に力をもたらした。
モバPはその力を全て自らの手に込め、前へ突きだした。
「イィィィヤアアア!」
「アバーッ!?」
バランスを崩したジェイエスは避けることも出来ずまともに食らい、吹き飛ばされた。
壁に激突したジェイエスはそのまま起き上がることもなく倒れ伏した。 74
91:
モバPはジェイエスが起き上がらないのを確認すると、ジェイエスをカイシャクしようと足を頭に載せ、踏み潰そうとした。
だが、そこで踏み潰すことを思いとどまり、ジェイエスを引き起こした。
彼には情は無いはず。
では何故? 75
92:
モバPはジェイエスとカレンを車に乗せ、急発進させてその場を去った。
店内で幻覚に苦しむ客のことを心配などしていられない。
モバPにとって守るべきは、自分の事務所とアイドルたちだけなのだから。
運が良ければチヒロが気まぐれに救急車を呼ぶだろう。
彼はそんなことを考えながら、車を飛ばした。 76
93:
―――――
77
94:
「そうですか。ご苦労様でした」
モバPから報告を受けたチヒロはにこやかに答えた。
すでにカレンは事務所と懇意にしている秘密病院に緊急入院させてある。
体の弱い彼女が心配だが、これに関してはどうしようもない。
ジェイエスは引き渡さず、足元に転がしてあるままだ。 78
95:
「チヒロ=サン。こいつを渡す前に聞いておきたいことがある」
モバPは事件の顛末を話し終えた後、真剣な面持ちで切り出した。
チヒロはにこやかな顔で質問するな、と無言の圧力をかけてくるが、それを無視して話し続けた。 79
96:
「こいつが狂った原因は一体なんだ?」
「カロウシするほど追い詰められていたわけではないし、薬物をオーバードーズするほど不満があったわけでもないだろう」
「……」チヒロは無言だ。
「チヒロ=サン。何があったか、教えてくれないか?」 80
97:
チヒロはしばらく沈黙した後に口を開いた。
「私が話さなければ、それにインタビューしますか?」
チヒロは亀甲縛り(これもアヤメから教えてもらったニンジャ拘束・ジツの一種だ)されたジェイエスを見下ろしながら答えた。
「どうせ会話にならないでしょう?」 81
98:
「……」
「取引に使うつもりで生かしておいたんですか?これをそのまま病院に連れて行って検査でもしてもらいますか?」
チヒロのにこやかな顔は変わらない。
だが薄く細められた目は全く笑っていない!コワイ! 82
99:
「ねえモバP=サン。私はあなたに十分すぎる力とそれを存分に発揮できる環境を与えています。あなたのおかげでアイドルたちも健やかに活動できています。それでいいではありませんか?」
チヒロが身を乗り出しワン・インチの距離に迫る。半ば脅迫めいたアトモスフィアを漂わせ始めた。
「何か不満でも?」 83
100:
「……」
モバPは無言で膝を屈した。
チヒロはそれを見て満足気に忍び笑いを漏らした。
「そう。それでいいんですよ。お疲れ様でした」
チヒロは渡されたジェイエスをマットレス代わりに踏みつけながら嬉しそうに付け加えた。 84
101:
「そうそう、ジェイエス=サンがいなくなることですし、モバP=サン。あなた渉外の仕事もやりませんか?きっといい仕事が出来ますよ?」
「断る」
モバPは短く言い捨てて部屋から退出した。
その背中を追いかけるように嬉しそうな笑い声と、不気味な声が響いていた。
「残念、残念ですね。ウフフ……」 85
102:
マッポーの世でなくとも人は心を病み、違法薬物に手を染める。そうでないならなおさらだ。
このマッポーの街で生きるならば注意しなくてはならない。
今も自分が飲んでいるジュースに、中毒性のある罠が仕掛けられていないかを。 86
10

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俺が何を言っても無言無表情で反応を示さないサンタクロース姿の親父。恐怖しか感じなかった

チーズ転がし祭りの参加者女性の盛大な転びっぷりと素早いリカバリーがカッコイイ!!

イオン ついに本物の毒物を販売 今度は中国産米ってレベルじゃないぞ マジで死ぬ

【悲報】木下優樹菜さんがブチ切れてるwwwwwwwwww

うちの猫の中におっさんが入ってるんだが…

ハンターハンター蟻編まで見終わった結果wwwwwwwwwww

海未「あなたのハートを射抜くのは!愛情注いだ一本の矢!!」

女って本気でこんな男がいいって思ってんの?wwwwwwwwwwww

【インド】 妊娠 → 胎児死亡 → 36年間放置 → 胎児の全身骨格入りの石灰化した嚢を摘出

高校生「先輩がヤンチャしてディズニー出禁www」

【ごちうさ】ココア「下着姿の…泥棒さん?」リゼ「動くな、私はレズだ」

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