lw´‐ _‐ノv「世界が終わるようですよ」( ・∀・)「なんと」back

lw´‐ _‐ノv「世界が終わるようですよ」( ・∀・)「なんと」


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1:
びっくりだね
2:
もうすぐ全ての陸地が海の底に沈むらしい
理屈はよくわからないけれど、世界中の科学者がそう言っているのできっと間違いではないのだろう
初めはみんな信じていなかった。温暖化で南極の氷が溶けて陸地が減りますよ、程度の話だと思っていた
しばらくすると世界中の権力者と金持ちが宇宙へ行く準備を始めた
これはいかんと慌てた一般人達は大急ぎで災害に備えた
高地に移住したり、建物を増築したり、食料を確保したり、とにかく色々と準備をした
「来年の秋頃に、海面が10000メートルくらい上昇します」という発表があったのは去年の暮れのことだ
元スレ
lw´‐ _‐ノv「世界が終わるようですよ」( ・∀・)「なんと」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1363188793/
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4:
(#,,゚Д゚) 美府高〜、ファイ!
(#^ω^) オー!
(#,,゚Д゚) ファイ!
(#´∀`) オー!
(#,,゚Д゚) ファイ!
(#´・ω・`) オー!
(#,,゚Д゚) 甲子園行くぞゴルァァァァァァァァ!!
(#´∀`)(#,,゚Д゚)(#^ω^)(#´・ω・`)「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!」」」」
( ・∀・) ……
( ・∀・) ふむ
( ・∀・)φ 夏もいよいよ――――っと
『夏もいよいよ本番という七月、少年達は摂氏三十六度の情熱を持て余し大地を蹴る
暫しの喧騒と生暖かな風を置き土産に走り去った彼らにとって――――
7:
( ・∀・) 彼らにとって……さて、どう続けたものか
事実上の死刑宣告とも言えるその発表から半年余り、人々の行動はおおよそ3種類に大別できた
あの野球少年たちのように以前と変わらぬ日常を過ごす者(そのような人々が集まって、今年も甲子園大会が開催されるらしい)
生き残りの道を必死で模索する者(残念ながら現在のところ有効な手段は見つかっていないようだ)
そして、某世紀末モヒカンよろしく略奪行為を行う者(彼らの出現により、この国でも一般人の銃器の所持が認められるようになった)
ちなみに僕はその中で言うと1番目
大学に通いつつ趣味の創作活動に精を出す。幸福ではなくてもせめて平穏に、閑やかな最後を迎えよう。そう決めたのだ
( ・∀・) 彼らにとって……彼らにとって……ん?
さて、最後の時もいよいよ数カ月先に迫り夏本番
虫達はここぞとばかりに自己主張を始め、溶けたアスファルトが靴底を汚す
その夏一番の気温を観測した殺人的な猛暑の中、僕は彼女と出会った
lw´‐ _‐ノv はるーくーれーばー、あーよいしょ
( ・∀・) ……あの
lw´‐ _‐ノv たぜーきーこーぜきーさー
( ・∀・) ちょっと
lw´‐ _‐ノv みずーこーでるー……何?
( ・∀・) 何してるんですか?
lw´‐ _‐ノv 見てわからない?田植えだよ
変わった女性だった
8:
大きめの麦わら帽子と首に巻かれたタオル
ズボンを膝までまくり上げ稲の苗床を担いだその格好は、紛れも無くこの国の伝統的な田植えスタイルだ
( ・∀・) そうだろうなとは思ってましたけど、やっぱり田植えですか
lw´‐ _‐ノv 分かっているのに聞いたのか、変な人だな君は
(;・∀・) ……それで、どうして田植えなんかしてるんですか?
lw´‐ _‐ノv 本当は5月辺りにするべきことなんだがね、品種改良に時間がかかってしまったのさ
lw´‐ _‐ノv まあ、寒さにも強く作ってあるから大丈夫だろう
( ・∀・) いや、そういうことじゃなくて
lw´‐ _‐ノv ん?
( ・∀・) どうせ秋にはここら一帯海の底。収穫には間に合わない
lw´‐ _‐ノv だいじょぶだいじょぶ、塩害にも強く作ってあるから
( ・∀・) ……そういうことでもないんだけど
lw´‐ _‐ノv それよりさ、人手が足りないんだけど手伝ってくれる?
(;・∀・) えっ!?
11:
lw´‐ _‐ノv さっきも言ったけど田植えの作業は普通、5月中にやるべきことなんだ
lw´‐ _‐ノv 今は7月、予定より2ヶ月も遅れている
lw´‐ _‐ノv 本来なら一刻も早く終わらせないといけないところなんだけど、邪魔が入っちゃってね
( ・∀・) ……僕?
lw´‐ _‐ノv うむ、君と話したせいで随分と時間をロスしてしまったよ
( ・∀・) 3分も話してなかったと思うけど
lw´‐ _‐ノv いいじゃないか細かいことは。わざわざ話しかけてくるってことは、相当暇だったんだろう?
( ・∀・) まあ、特に用事もないけどさ
lw´‐ _‐ノv そうと決まれば早作業だ。ほら、この長靴に履き替えて!
( ・∀・) 用意がいいね
lw´‐ _‐ノv もともと適当な人に難癖つけて手伝わせるつもりだったし
( ・∀・) ……
13:
素直シュール、と、彼女は名乗った
見た目から同い年くらいだと思っていたが、どうやら向こうが4つも上らしい
この若さにして植物育種学――品種改良やら何やらに関する学問らしい――の権威で、その分野ではそれなりの有名人なのだという
lw´‐ _‐ノv 米への愛がわたしをここまで押し上げてくれたのだよ
そう言って彼女は誇らしげに胸を突き出した
泥で汚れたジャージを身に着けた彼女。その胸元には「素直クール」という刺繍がある
lw´‐ _‐ノv 妹だよ。「当選」して今は空の彼方さ
lw´‐ _‐ノv 父も母も「当選」だ。残ったのは私だけ
( ・∀・) ふうん、植物なんとか学の権威なんでしょ?それでも落選したの?
lw´‐ _‐ノv いいや、私も当選したよ。ここに残っているのは私の意志だ
lw´‐ _‐ノv 妹も両親も、必死で引き止めようとしていたがね
( ・∀・) あれま、もったいない
lw´‐ _‐ノv ……理由を聞いたりしないのかな?
( ・∀・) 聞いてどうなるってわけでもないしね
lw´‐ _‐ノv ああ、さいですか
16:
シューとモララーか、渋いチョイスだね
17:
今年の4月から5月にかけて、「方舟」と名付けられた数十の宇宙ステーションが地球を後にした
その乗員は主に権力者、富裕者、技術者、その他様々な分野の権威
優秀な遺伝子を持つ彼らは人類の存続のために宇宙へと旅立ち、千年計画で火星を植民地化するのだという
そんなことが実現可能かは分からないが、いずれにせよ僕の人生には全く関係のないことだった
僕はどこにでもいるようなた只の学生。どんな奇跡が起こったとしても、「選ばれし民」にはなれないのだ
lw´‐ _‐ノv しかし、男手が入ると違うものだな
lw´‐ _‐ノv まさかこんなに早く終わるとは思っていなかった。礼を言うよ
( ・∀・) うん、どういたしまして
lw´‐ _‐ノv 明日は朝9時集合だから、遅れないようにね
( ・∀・) はーい……
( ・∀・)
( ・∀・)
( ・∀・) 明日もやるの?
lw´‐ _‐ノv 一日で米ができると思う?怒るよ?
( ・∀・) ああ、うん。すいませんでした
lw´‐ _‐ノv 明日は向こう側の田んぼの田植えするから、よろしく
( ・∀・) ……はーい
20:
翌朝、言われた通りに田圃に向かうと、既に作業を始めている彼女の姿があった
lw´‐ _‐ノv 本当に来るとは……君はもしかしたら馬鹿なのかもしれないね
「……それとも、何か下心でもあるのかな?」
そう言って彼女は笑った。甚だ心外である
誓って言うが、僕は他人に命令されたら何でも従ってしまうような馬鹿ではない
ましてや彼女の想像しているであろう不埒な下心を抱えているだなんてことは絶対にありえない
僕が今日ここまで足を運んだ理由、それは――――
lw´‐ _‐ノv ……取材? 何の?
( ・∀・) 趣味で書いてる小説の
lw´‐ _‐ノv 小説ねぇ、なかなかいい趣味をお持ちじゃないの
( ・∀・) それはどうも
lw´‐ _‐ノv どんなのを書いているのか、読ませてもらってもいいかな?
(;・∀・) それはちょっと……恥ずかしいかな
lw´‐ _‐ノv 恥ずかしい? 小説というのは誰かに読まれるために在るんだ。何を恥ずかしがる必要がある
lw´*‐ _‐ノv もしかして、女性には言えないような内容の小説だったりするのかな? その取材ということはやはり……
( ・∀・)ノ[ ミ|彡] どうぞ
lw´‐ _‐ノv わかればよろしい
22:
lw´‐ _‐ノv なになに? 「夏もいよいよ本番という( ・∀・) 音読やめて
( つ[ ミ|彡]
lw´‐ _‐ノv ……
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 僕が書いているのは終わりを直近に控えた人々の記録
lw´‐ _‐ノv 記録ねぇ、そんなもん書いてどうするの?
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 未来に残すんだよ
lw´‐ _‐ノv 未来に?
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 何千年後になるかは分からないけど、宇宙へ飛び立った人類も、きっと地球に戻ってくる
( ・∀・) やがて彼らは僕の残した記録を発見する。そして知るんだ
lw´‐ _‐ノv 何を?
( つ[ ミ|彡]
( ・∀・) 僕や君がこの時間に、確かに生きていたということをさ!
lw´‐ _‐ノv ……ああ、そう
( つ[]パタン
25:
終末ものの綺麗さはどうにも惹かれる
30:
lw´‐ _‐ノv しかし、アレだね
( ・∀・) なに?
lw´‐ _‐ノv 言葉もクサけりゃ、文章の方も中々にクサい
lw´‐ _‐ノv 「摂氏三十六度の情熱」って何?なんとなく良い感じの言葉浮かんだから使ってみましたって感じしかしないよ
lw´‐ _‐ノv 全体的に気取り過ぎだし、読む側のことちゃんと考えてる?
lw´‐ _‐ノv しかもこんだけ気取った文章書いてるくせにところどころにギャグ挟む意味もわからないね
lw´‐ _‐ノv 「方舟」には世界中の文豪も乗り込んでるんだよ?
lw´‐ _‐ノv こんな文章を彼らの子孫に読ませて恥ずかしいと思わn( ・∀・) それ以上いけない
lw´‐ _‐ノv
( ・∀・)
lw´‐ _‐ノv ……まあ、私は好きだけどね。そういうの
( ・∀・) 多分フォローになってないよそれ
37:
lw´‐ _‐ノv さて、またもや時間を無駄に使ってしまったね。作業に移ろうか
( ・∀・) あ、流すのね
lw´‐ _‐ノv 今日も田植えをする……けど、その前にやることがある
( ・∀・) やること?
lw´‐ _‐ノv 車の運転はできるかな?
( ・∀・) できるけど……
lw´‐ _‐ノv それは都合がいい。この地図の場所まで行って、藁を取ってきてほしいんだ
( ・∀・) それはいいけど、藁? 何に使うの?
lw´‐ _‐ノv 肥料みたいなものだよ。さ、行ってきて
lw´‐ _‐ノv 迷わなければ1時間ちょっとで帰ってこれるはずだよ
 ------------- 、
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  /   //.     || |    /~ ̄ ̄ヽ
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  ̄ ̄`--' ̄ ̄ `ー' ̄ ̄`--'  `ー'  WVしJv
[AA画像]
45:
ブロロロロロロロ......
( ・∀・) マニュアル車なんて、教習所依頼だなー
黒皮の座席が太陽光を吸収し、車内は熱気で満ちていた
ハンドルも熱い、窓枠も熱い、もうなんか全部熱い。エアコンも効かないし
どうでもいいけど熱くなった自転車のサドルに座ると痔が治りそうな感じがするよね、どうでもいいけど
( ・∀・) ラジオでも聞こうかな
( ・∀・) ええと、スイッチは……これかな? ピッ
それらしいボタンを押してみると、埃の詰まったスピーカーからノイズ混じりに男の声が聞こえてきた
どうやら当たりだったらしい。まあ、こういう機械はは大体感覚的に操作できるようになっているものなので当然といえば当然か
『ザザッ……おはようございます……ザッ……朝のニュースです』
( ・∀・) おっ
『杉浦ロマネスクを首領とするテロ組織「ローシタ」の活動が活発化し、警察は――』
( ・∀・) ……テロ組織ねぇ
51:
世界の終焉を目の当たりにし、一部の――数にして2割程度の――人類は暴徒化した
その多くは中流以下の階級に属する者で、これまでの鬱憤を晴らすためだろうか、上流階級の人間を主な標的として襲撃を始めた
これが半年前の出来事
一歩及ばず「落選」した小金持ち達はその頃、船などによる生き残りを図り準備を進めていた
最早意味を為さなくなり始めていた紙幣をどうにかこうにか捏ね繰り回して、小金持ち達は船と食料を買い漁る
彼らもきっと、生き残るために必死だったのだろう。まあ、残念ながら――
( ・∀・) ――半年後の現在、地球上に船は存在しない
( ・∀・) 客船も漁船も貨物船も、ぜーんぶ壊されちゃったからね
数の暴力には勝てなかったよ、どんまい
54:
『ローシタは現在、芝里合市を中心に破壊活動を行なっており――』
( ・∀・) 芝里合……結構近いな
『政府は付近住民に警戒を呼びかけています』
( ・∀・) ふーん、気をつけないとね……っと……
車を走らせて20分ほど、大きな庭のある家に着いた
地図を確認してみる。どうやらここが彼女の言っていた場所らしい
車を降りて庭に入ると、庭の一角、綺麗に整備された花壇の横に、山のように積まれた藁があった
( ・∀・) これは……骨が折れるな……
藁の山を見上げ暫し途方に暮れるが、突っ立っていても始まらない
覚悟を決めて両腕を突っ込み、腕に収まるだけの藁を思い切り持ち上げた
次の瞬間、頭頂部に衝撃
僕は意識を手放した
58:
目が覚めると、真っ白な天井があった
lw´‐ _‐ノv 起きた?
( ・∀・) ……ここは?
lw´‐ _‐ノv 私の家。君が倒れてたのはここの庭だね
lw´‐ _‐ノv 中々来ないから様子を見に来たら驚いたよ。藁を抱きしめたまま倒れてるんだもの
lw´‐ _‐ノv 何があったの?
(;-∀・) うーん、藁を持ち上げたところまでは覚えてるんだけど
( ・∀・) 持ち上げた瞬間、頭にがつーんと……
lw´;‐ _‐ノv ……なるほど、わかった
( ・∀・) へ?
lw´‐ _‐ノv ちょっとまってて
( ・∀・) あ、うん
そう言って彼女は何処かに行ってしまった
いったい何が分かったというのだろうか
59:
数分後、彼女は両手に大きな藁束を引っさげて戻ってきた
lw´‐ _‐ノv 持って
( ・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv いいから、持って
( ・∀・) あ、うん
彼女が何を言いたいのかは分からないけれど、逆らう理由もない
差し出された藁束を両手で掴み、受けと――
(;・∀・) うわっ、何これ!? 超軽い!
lw´‐ _‐ノv でしょ?
(;・∀・) いくら藁って言ったってこれは普通じゃないよ! なんでこんなに軽いの?
lw´‐ _‐ノv そういうふうに作ったからね、中身がスカスカだから綿のように軽い
lw´‐ _‐ノv これを普通の藁のつもりで持ち上げようとしたらそれはもう大変よ
( ・∀・) ……あー
lw´‐ _‐ノv 藁式セルフバックドロップとでも名付けようか
……あー
61:
なんと斬新な発想!!
63:
lw´‐ _‐ノv 念のため、しばらく安静にしているといい
lw´‐ _‐ノv 今日はもう遅いし泊まっていきたまえ。幸い、部屋はたくさんある
( ・∀・) もう遅いって……今何時?
lw´‐ _‐ノv もうすぐテレホタイム
(;・∀・) テレ……半日以上寝てたの?
lw´‐ _‐ノv そういうことになるね
( ・∀・) それじゃあ、田圃の方は……
lw´‐ _‐ノv ……君は本当に変わっているね
( ・∀・) 変わってる? そうかな?
lw´‐ _‐ノv 怪我の原因を作った私を責めるでもなく、自分の怪我よりも田圃の心配をするだなんてね
lw´‐ _‐ノv 今の御時世じゃ考えられないようなお人好しだよ
66:
( ・∀・) 買いかぶり過ぎだよ
lw´‐ _‐ノv ……ふん、まあいい。明日も早いんだ、私は寝る
lw´‐ _‐ノv 私は向かいの部屋にいるから、何かあったら声をかけてくれ
lw´‐ _‐ノv それじゃあ、おやすみ
( ・∀・) おやすみ
( ・∀・)
( ・∀・)
( -∀-)
( -∀-) Zzz...
67:
翌朝、物音に目を覚ます
ベッドから起きて部屋を出ると、作業服に身を包んだ彼女の姿があった
lw´‐ _‐ノv おっと、起こしちゃったかな? まだ4時前だからもう少し寝ててもいいんだよ?
( ・∀・) 気にしないで、ぐっすり眠れたよ
lw´‐ _‐ノv それは良かった。調子はどうだい?
( ・∀・) 完全復活ってところだね。昨日迷惑かけちゃった分、しっかり働かせてもらうよ
lw´‐ _‐ノv ……じゃあ、お言葉に甘えようかな
lw´‐ _‐ノv ええと、今日はまず昨日できなかった藁運びと田植え、それと色々運ばなきゃいけないものがあるよ
( ・∀・) じゃあ最初は藁運びだね、昨日みたいなミスはしないよ
lw´‐ _‐ノv うむ、早作業に移ろうか
彼女と二人がかりで藁を軽トラの荷台に積み込む
僕の身長よりも大きかった藁の山も、ものの10分で積み終えてしまった
藁を軽く作ったのは、女手でも簡単に運べるようにするためらしい
69:
車に乗って20分、昨日の田圃に到着した
朝の4時ということもあってか、道中歩行者や車とすれ違うことはなかった
( ・∀・) あの発表があってから、外を出歩く人も随分減ったね
lw´‐ _‐ノv 自殺者も随分出たし、何より暴動が怖いからだろうね
lw´‐ _‐ノv さて、次の作業に取り掛かろう。この藁を田圃に撒くんだ
lw´‐ _‐ノv できるだけ均等にね。ムラが出来ると良い米が作れない
( ・∀・) はーい
彼女に言われたとおりに、できるだけ均等に藁を撒く
「良い米が作れない」という言葉を素直に受け入れてしまう辺り、彼女に毒されてきているんだろうなと思う
この米が収穫出来る頃には間違いなく、僕らは海の底だというのに
70:
藁を撒き終わり田植えも済んで、その頃には太陽は随分高いところまで上っていた
休憩を兼ねた昼食。彼女が作ったという弁当を二人で食べる
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv おにぎり
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv おかゆ
( ・∀・) これは
lw´‐ _‐ノv 餅
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv リゾット
( ・∀・) これは?
lw´‐ _‐ノv 白米
( ・∀・) レパートリーすごいですね
lw´‐ _‐ノv それほどでもない
72:
lw´‐ _‐ノv この米はね、品種改良に使った余りなんだ
( ・∀・) 余り?
lw´‐ _‐ノv 余りというと語弊があるかな? 品種改良の際に出来た失敗作だよ
( ・∀・) ピクッ
lw´‐ _‐ノv 塩害や寒害に強い品種を作ろうと改良を重ねたが、毎回うまくいくとは限らない
lw´‐ _‐ノv この子達は私が望むほどの耐性を持たなかった。そういうことさ
( ・∀・) 失敗作、ね……
( ・∀・) ははは、まるで僕達みたいじゃないか
lw´‐ _‐ノv ……
( ・∀・) 強い者、必要とされる者だけが生き残る
( ・∀・) 弱くて、必要とされていない。僕のような奴は消えていく運命なんだ
( ・∀・) 悲しいけど、そういうものだよね
lw´‐ _‐ノv ……
77:
lw´‐ _‐ノv 私はね、世界には君のような人間が必要だと思うんだ
( ・∀・) 僕が? まさかwww
lw´‐ _‐ノv 茶化さないで聞いてほしい
彼女の言葉を聞いて、僕は彼女が僕を慰めるために冗談を言っているのだと思った
しかし、おどけてみせた僕を咎める彼女の目にはなんとも言えない真剣さを感じた
lw´‐ _‐ノv 私の周りに居た人間はね、あの発表以来みんな”閉じて”しまったんだ
( ・∀・) ……閉じて?
lw´‐ _‐ノv そうさ。彼らは皆、今持っているものを最後まで保ち続けることしか考えていなかった
lw´‐ _‐ノv 資産も、地位も、命も、人間関係も、持っているものは何一つ失わないようにとね
lw´‐ _‐ノv そこには何の発展もない、閉じた世界、閉じた人間だ
lw´‐ _‐ノv ……しかし、君は違った
lw´‐ _‐ノv 君は一昨日、私という新たな関係を作り出した
lw´‐ _‐ノv この世界の中で、君だけは”開いて”いたんだ
79:
( ・∀・) ……
lw´‐ _‐ノv わからないかな? わからなければ、まあ、それはそれでいいさ
lw´‐ _‐ノv だけど覚えていてほしい
lw´‐ _‐ノv 君は弱い人間ではないし、誰からも必要とされていないなんてことはない
lw´‐ _‐ノv 現に今、私が君を必要としているじゃないか
( ・∀・) ……僕は頭が良くないからね、よくわからないよ
lw´‐ _‐ノv そうか、それは残念だ
( ・∀・) わからないけれど、ありがとう。嬉しいよ
lw´‐ _‐ノv ……そうか
lw´‐ _‐ノv それは、嬉しいよ
82:
lw´‐ _‐ノv さて、充分休んだならそろそろ作業に戻ろうか
lw´‐ _‐ノv 午後の作業はちょっと遠出することになるな
lw´‐ _‐ノv ……ところで、車の免許は普通免許?
( ・∀・) そうだけど?
lw´‐ _‐ノv そうか、じゃあ私が運転しよう
 /~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ / ̄ ̄ ̄.ヽ..「 .||
γ-1{二二二口口口二二二二i|=l ー ― - ヽ...||
ll  |r/ /::::::i::::i:_:/:::::::::::_:ヽ、「 ̄ ̄ ̄!| ̄l ||
「|. | ||  :::: ::: ::::::::::::::::::::(_ t.||「 l. ̄ ̄l||::::l| ||
L! l      :::::::::::::::::::::::::::::::: ||'|!_!|  .l||....l| ||.---------------------.--------------------.----------------------┐
'l| il ゞ⌒ヽ  ヽ ::::::::::::::::::::::::::::::::〃{_)  .,j|.==| || |-| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.|-| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|-| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄..| |
ヽ rゝ∠ニニ_∠ニニ__∠ニニ_:::::|Lヽ,__.,/. ...| ...i..|| |. |..   .. . |. | . . . .  |. | .   ...| |
 |―‘――‘--=--‘―‐――┼ ||: ::'''"|~|..,__|..|| |. |..   .. . |. | . . . .  |. | .   ...| |
 |ヽi____ISUZU__giga....iノ.|l   .|...|/ ..l..|| |_,i__,.-._,-._,-._,.-._,-._,-_,.-._,-._,.-.__.,.-._,-._,-._,.-._,.-._,-....| |
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 |l二二ヽ=== ===/二二l_|---//...,-、l:||ilエ二二二二二二二二二二二二エ/  ./:-,-、 .,-.-,,-、ヽ\.ilエ二二二二二二エi||〒(ソwvww″
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 |.==.  ヽ二[l・・20l] 二/   .== | |__|..|.:| i*l |.. ilエ二二二二二二二二二二二二エi__/:::::l..,i*l .|::::| i*|. | .|_..|ilエニ二二二二二ニエil_ ] |/_ゝh_||
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[AA画像]
lw´‐ _‐ノv 乗り給え
( ・∀・) ああ、うん
84:
ブロロロロロロロ......
( ・∀・) 今度は何を運ぶの? なんとなく相当な重量だってのは理解できたけど
lw´‐ _‐ノv でっかい石が必要なんだ。沢山ね
( ・∀・) 石? そんなの何に使うの?
lw´‐ _‐ノv ……なんか田圃に置いとくと猪とか来なくなるらしいよ?
( ・∀・) ……ほんとに?
lw´‐ _‐ノv 昔読んだ本に書いてあったのさ。猪の本能的に入りにくくなるんだとか
( ・∀・) へぇ
lw´‐ _‐ノv まあ難しい話はいいじゃないの。聞いて楽しいものでもないでしょ?
( ・∀・) そうかな、結構面白かったけど
lw´‐ _‐ノv せっかく乙女と二人きりなんだからさ、もっと話題あるでしょ?
( ・∀・) 話題っていってもねぇ
lw´‐ _‐ノv 例えばこう、卑猥な話を振って反応を楽しむとかさ
( ・∀・) そんな発想する人に卑猥な話振っても……
lw´‐ _‐ノv せやな
88:
lw´‐ _‐ノv ……ところで、聞きたいことがあるんだけど
( ・∀・) なに?
lw´‐ _‐ノv 君は未来に小説を残すつもりなんだよね
( ・∀・) そうだけど?
lw´‐ _‐ノv ええとさ、その……紙で?
( ・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv 紙で残すの?
( ・∀・) なんで?
lw´‐ _‐ノv いや、紙って……濡れたら終わりじゃん?
lw´‐ _‐ノv 何か紙以外の方法考えてるのかと思ってね
( ・∀・)
( ・∀・)
(((( ・∀・))))
lw´‐ _‐ノv oh......
91:
(ill・∀・) もう駄目だ……お終いだぁ……
lw´‐ _‐ノv あーあ、やっぱり考えてなかったか
lw´‐ _‐ノv 念のため持ってきて良かったよ
(ill・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv 今私達が向かってるのは支足場山
lw´‐ _‐ノv 荷台にチェーンソーがあるから、適当に木でも切って来な?
(ill・∀・) 木? 石を取りに行くんじゃないの?
lw´‐ _‐ノv 君のためだよ
lw´‐ _‐ノv 木を板状にカットして、鏝か何かで文字を焼き付けるんだ
lw´‐ _‐ノv それなら時間はかかるけど、紙なんかよりずっと長持ちする。水にも強い
lw´‐ _‐ノv 石は私が運んでおくから、君は自分の好きなだけ木を切ってくればいい
(ill・∀・)
(*・∀・)+
lw´‐ _‐ノv 復活早いね
93:
それから1時間ほど車に揺られ、とうとう支足場山に到着した
周囲には両手で抱えるほどの大きな石がゴロゴロと転がっていて、彼女はそれを見て目を輝かせた
lw´*‐ _‐ノv うむ、これならきっと足りるだろう
( ・∀・) それはよかった
lw´*‐ _‐ノv 5分ほど登れば大きな木が群生している。私はここで作業してるから、何かあったら戻ってくればいい
( ・∀・) うん、それじゃあ行ってくるよ
荷台からチェーンソーを下ろし、肩に掛ける
さあ行こうと一歩踏み出した所で彼女に呼び止められた
lw´‐ _‐ノv 念のために、これを持って行くといい
lw´‐ _‐ノv この辺りは熊が出るらしいからね、熊には悪いが、君だって食い殺されたくはないだろう?
そう言って彼女が差し出したのは長さ60センチほどの猟銃だった
lw´‐ _‐ノv 使い方はわかるかい?
( ・∀・) ……うん、大丈夫だよ
lw´‐ _‐ノv じゃ、行ってらっしゃい
( ・∀・) 行ってきます
95:
支足場山の山道は、有名なハイキングコースだ
毎年数十万人の登山客が訪れるというこの山道も、もしかしたら僕が最後の来訪者となるのかもしれない
( ・∀・) しばらく人が通ってないのかな? 植物がだいぶ侵食してきてるな……
何かの植物の蔦を払い、木の根を踏み越えて山道を歩く
右肩に提げた猟銃が、一歩ごとにカチャカチャと音を立てる
( ・∀・) ……鉄砲は、嫌いだ
重いし、うるさいし、人を殺す
僕の両親は暴動に巻き込まれ、銃に殺された
親元を離れ一人暮らしをしていた僕だけが、運良く生き残ることが出来た
( ・∀・) ははっ、一人だと嫌なことばかり考えちゃうな
( ・∀・) ぱぱっと切って、終わらせちゃおう
97:
荒れた山道をしばらく歩くと、拓けた場所にたどり着いた
恐らくここが彼女の言っていた群生地なのだろう。よく育った木々があちこちに生えている
( ・∀・) おいら、木を切るぜ。帰るときゃ丸ごと持ち運ぶぜ!
わかりにくいネタをひとつ挟んで、作業に移る
チョークを引いてエンジンをかけると、ドッ、ドッ、という小気味良い音が周囲に響く
( ・∀・) しかし彼女、よくこんなの持ってたな
( ・∀・) 米作りでチェーンソーが必要な場面ってあんまり思い浮かばないんだけど……まあいいか
程よく育った樹の幹に回転した刃を当てる。樹皮が爆ぜ、粉々になった破片が顔に当たる
為す術もなく切り倒される木々の、人間に対するせめてもの抵抗といったところだろうか
( ・∀・) ……ごめんね
99:
1時間ほどかけて、丁度良い大きさの木を5本切り倒した
そのまま持ち運ぶことは出来そうもなかったので、1メートルほどの長さに切り分けて運ぶことにした
lw´‐ _‐ノv ああ、お帰り。収穫は?
( ・∀・) 良い感じだよ。後は積み込むだけだね
( ・∀・) そっちは?
lw´‐ _‐ノv 十分な量は確保できたよ
( ・∀・) それはよかった
lw´‐ _‐ノv さて、帰りの時間も考えると時間的な余裕も無くなってきた。私も手伝うから、急いで木を運んじゃおう
( ・∀・) ……なんか昨日から僕足引っ張ってるね
lw´‐ _‐ノv ……そうやって卑下するの、好きじゃないよ
( ・∀・) ああ、ごめんね。気をつけるよ
lw´‐ _‐ノv わかればよろしい
102:
木と、石を積み終えて、田圃へと戻る
それなりに急いだつもりだったが、到着した頃には陽は傾き、周囲は薄暗くなっていた
lw´‐ _‐ノv とりあえず、石を降ろそう
( ・∀・) そうだね
lw´‐ _‐ノv 後は木を軽トラに移し替えて……
( ・∀・) ふむふむ
lw´‐ _‐ノv それが終わったら君は帰っていいよ
( ・∀・) えっ?
lw´‐ _‐ノv 後は石を設置するだけだし、君だってやることがあるだろう
( ・∀・) やること……?
lw´;‐ _‐ノv はぁ……小説、書かなくていいの?
( ・∀・) あっ
そういえば、彼女と出会って3日目になるが、その間一度も小説を書いていない
取材に没頭しすぎて肝心の執筆を忘れていたのだ
103:
lw´‐ _‐ノv 原稿書かなきゃいけないし、木材だって加工しなきゃ。丸太のままじゃ駄目でしょ?
( ・∀・) はい
lw´‐ _‐ノv 軽トラは貸してあげるから、はやく帰って書きな?
( ・∀・) はい
lw´‐ _‐ノv じゃ、お疲れ。明日は10時にここね
( ・∀・) はい
lw´‐ _‐ノv それじゃ、また明日
( ・∀・) はい、また明t……あっ
lw´‐ _‐ノv 何?
( ・∀・) ……うち、木材を加工する機械なかった
lw´‐ _‐ノv 
lw´‐д‐ノv はぁ〜……
105:
 _, ,_
lw´‐д‐ノv
( ・∀・)
 _, ,_
lw´‐ д‐ノv
( ・∀・)
彼女が、今までに見たことがない顔で僕を睨みつけた
うん、まあ、ここまでしてもらってこれじゃあ確かに怒るよね、そうだよね
どうしよう、土下座でもすれば許してくれるかな? 許してくれなかったとしても、何もしないよりはマシだろう
よし、土下座するぞ、引くほどするぞ
( ・∀・) えー、この度はまことに申し訳あr lw´‐ _‐ノv もうさ、私の家に住んじゃえば?
( ・∀・) えっ
106:
lw´‐ _‐ノv うちに来ればそういう機材は揃ってるし、ご飯だって出せるよ
lw´‐ _‐ノv 品種改良の失敗作達が向こう一年分くらい余ってるからね
( ・∀・) ……いいの?
lw´‐ _‐ノv 取材ってことはこれからしばらく手伝うつもりなんでしょ? 給料みたいなものだよ
lw´‐ _‐ノv きょうび金なんて無価値だからね、衣食住の保証が給料代わり
lw´‐ _‐ノv どう? 悪くない話だと思うけど
( ・∀・) ええと、さすがに悪い気がするというか……
lw´‐ _‐ノv 学生が遠慮なんてするもんじゃないよ。お姉さんの誘いには乗っておきなさい
( ・∀・) ……じゃあ、よろしくお願いします
lw´‐ _‐ノv よろしい
そうして、僕と彼女の共同生活が始まった
……もっとも、世の多くの男性が望むようなそういう出来事はなかったけれど
109:
翌朝、8時起床
居間に行くと食卓の上に冷めたおにぎりと書き置きが残されていた
『おはよう 昨日は良く眠れたかな?
 今日は田圃A(君と初めて会った方だょ☆)で作業だ
 私は先に行ってるから、君も準備ができたら来てほしい
 おにぎりを作っておいたから良ければ食べてくれ
 海苔を巻いている方がインディカ米、そうじゃないのがジャポニカ米だ』
( ・∀・)ノ▲
( ・〜・)ヽ モグモグ
( ・∀・)ノ△
( ・〜・)ヽ モグモグ
( ・∀・)
( ・∀・) 結構違うな
結構違った
112:
軽トラに乗って田圃に向かう
駐車場に大型トラックがなかったので、きっと彼女はそれに乗って行ったのだろう
それにしても、彼女はどうして大型免許などをもっていたのだろうか
それ以外にもチェーンソーや木材を加工するのに必要な諸々の機材、植物育種学の権威ということだが、それと関係があるのだろうか
( ・∀・) まあ、おかげで僕は助かってるんだけどね
さて、田圃に到着した僕を待っていたのは、なんとも奇妙な光景だった
奇妙な、それはもう奇妙な、田圃の随所に大きな石が配置され、どこぞの無縁墓地さながらという様子だった
(;・∀・) 猪対策って、そこまでするの?
lw´‐ _‐ノv まあ、稲の生育には支障がないから大丈夫だよ
(;・∀・) ……さいですか
lw´‐ _‐ノv さいですよ
lw´‐ _‐ノv さて、今日は雑草取り。張り切っていきまっしょい
lw´‐ _‐ノv ……あ、石にぶつからないように気をつけてね。怪我するから
( ・∀・) ……はーい
114:
lw´‐ _‐ノv 水稲栽培ってなかなかうまいこと出来ててね
( ・∀・) ?
lw´‐ _‐ノv こう、田圃の中を人が歩くと泥が巻き上がるじゃん?
( ・∀・) そうだね
lw´‐ _‐ノv こいつが日光を遮断してくれるから、水中の雑草の成長が妨げられるんだって
( ・∀・) へぇ
lw´‐ _‐ノv だからこう、地面をしっかり踏みしめて、ちょっと大袈裟に泥を巻き上げると良いらしいよ
( ・∀・) なるほどね。こう、こうかな? ギュッギュッ
( ・∀・) ……あれ
lw´‐ _‐ノv どうしたの?
115:
( ・∀・) いや、こうやっていろんな場所を踏んでるとさ…… ギュッ ギュッ
( ・∀・) 場所によって地面が硬かったり柔らかかったりするんだけど
lw´‐ _‐ノv ……ああ、女手ひとつじゃ十分に地面を耕すことができなくてね
lw´‐ _‐ノv ほら、私トラクターとか持ってないから
( ・∀・) ああ、確かに
lw´‐ _‐ノv 場所によっては硬い地盤がそのままになってるのかもね
( ・∀・) ふーん……あれ?
( ・∀・) 大型トラックとか持ってるのになんでトラクターはlw´‐ _‐ノv ほらほら、口より手を動かしたまえ!時間は無限じゃないんだよ!
(;・∀・) はーい
117:

……
………
lw´‐ _‐ノv ……さて、もう夜か
lw´‐ _‐ノv 私はもう少し作業して帰るから、君は先に帰りなさい
( ・∀・) 作業があるなら僕も手伝うよ
lw´‐ _‐ノv いいから、君はやることがあるだろう?
( ・∀・) ……はーい
彼女は毎日朝早く家を出て、深夜まで作業を続けた
稲作の知識が無い僕にはよくわからないが、何やら重要な工程らしい
その「重要な工程」に興味が無いわけではなかったが、僕は僕で小説を書く必要があるので深い詮索はしなかった
彼女から「そのうち話すよ」という言質を受け取っていたというのも大きな要因だろう
118:
8月、彼女と出会ってひと月が経った頃
彼女が倒れた
119:
なんと
120:
ななんと
121:
倒れる一週間ほど前から、彼女は目に見えて消耗していた。連日の疲れが溜まっていたのだろう
どうにかして引き留めようとする僕の言葉も聞かず、疲れを押して一心不乱で作業に没頭していた
倒れるのは時間の問題だった
( ・∀・) 具合はどう?
lw´ _ ノv 最高だよ。いい加減ここから出してほしいね
( ・∀・) だーめ
lw´ _ ノv ……君はひどいやつだ
( ・∀・) そうだね
彼女は現在、彼女の部屋で軟禁状態にある
放っておくとすぐに田圃に行こうとするので、部屋の外側からドアを物理的にロックしているのだ
( ・∀・) 君のためなら、ひどいやつにだってなるさ
lw´ _ ノv ……君はひきょうなやつだ
( ・∀・) そうだね
124:
もともと体が強い方ではなかったのだろう。彼女の体は予想以上に衰弱していた
どうしてもっと早く気付いてあげられなかったのか、後悔ばかりが胸を責める
lw´ _ ノv 君が君を責める必要は無い。そんなことしてほしくない
( ・∀・) ……ごめん
lw´ _ ノv その謝罪も、してほしくない
( ・∀・) ……わかった
( ・∀・) 田圃は僕が頑張るから、君はゆっくり休んで、一日も早く回復してね
lw´ _ ノv ふふ……そうそう、そういう言葉が聞きたかったんだ
lw´ _ ノv 君は開いた人間だ。開いた人間は前向きじゃなきゃね
( ・∀・) ふふ、わかったよ
さて、悪いことは重なるとは良く言ったもので、もう一つの脅威が、その頃こちらに向かってきていた
127:
『朝のニュースです』
『杉浦ロマネスクを首領とするテロ組織「ローシタ」は、破壊活動を繰り返しながら美府市へと移動中です』
『構成員は数十名から百数十名と見られ、その多くが銃器を所持しているとのことです』
( ・∀・)
129:
暴徒が、美府にやって来る。奴等の拠点は確か芝里合市だったはずだ
芝里合から美府……暴徒が僕らの田圃の付近を通過する可能性はゼロじゃない
( ・∀・) 彼女には……言わないでおこうか
そうさ、何も奴等が来ると決まったわけじゃない
伝えた所で何ができるというわけでもない。心配事が増えるだけだ
病床の彼女に無駄に気を使わせる必要なんて無い
( ・∀・) ……さあ、今日も楽しく農作業だ!
今日の作業は追肥と雑草取り
軽トラの荷台いっぱいに藁を積み込んで、田圃に向かう
田圃には、見慣れない人影が2つあった
137:
奇抜な髪型にトゲトゲの肩パッド
漫画の世界から飛び出してきたのかと錯覚するその風貌
説明も、推理も必要ない。奴らは間違いなく暴徒……恐らくはテロ集団「ローシタ」のメンバーだろう
   _
    ,ィ´ii′
 r' li ||
 ( ^ω^) ヒャッハー!田圃だァー!
___
\  /
 ('A`) こーんなもんまで作ってやがった! 今じゃ犬の餌にもなりゃしねぇのによー!
ゲラゲラと下卑た笑い声を上げながら、奴等は苗を踏み潰し、猪除けの石を蹴り飛ばした
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ^ω^) つーかこの時期に田圃ってwwwww田圃ってwwwwwwwww
___
\  /
 ('A`) どこの馬鹿野郎だろうなwwwwww頭おかしいんじゃねーのwwwwwwwwwwwwww
(  ∀ )
(# ∀ ) プツッ
139:
怒りに我を忘れ、何かに乗り移られたように……なんてことは言わない
僕は僕の意思で行動したのだ
( #・∀・) お前らあああああああああああ!!!!!
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^)そ えっ!?
( #・∀・) 人の田圃でえええええええええええ!!!!!
___
\  /
 (;'A`)そ ハァッ!?
( #・∀・) 何やってんだオラアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
僕は軽トラの助手席に積んであった猟銃を取り出して――
――暴徒に向けて、引き金を引いた
141:
( # ∀ ) ハァ……ハァ……っく……
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^)
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (T;^ω^)そ タラッ
___
\  /
 (;'A`) ……う、撃ちやがったぞこいつ!?
( #・∀・) 謝れ
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (T;^ω^) は……?
( #・∀・) 謝れ!
142:
___
\  /
 (;'A`) てめぇ……俺らが誰だか知ってて言ってんのか!?
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (T;^ω^) そうだお!ブーン達はローシタのメンバーで( #・∀・) 謝れ!
狼狽するモヒカン頭に銃口を突きつけ怒鳴りつける
男は「ヒッ!?」という叫びを飲み込んで、震える声で言葉を繋いだ
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (T;^ω^) ……わ、悪かったお
( #・∀・) お前も!
___
\  /
 (;'A`) ……す、すまねぇ
( #・∀・)
145:
( #・∀・) 帰れ!
奴等の尻を蹴り飛ばして罵声を浴びせると、奴らは何やら捨て台詞を吐いて帰っていった
曰く、「これで終わりと思うなよ」
曰く、「絶対にぶっ殺す」
なんとも予想を裏切らない奴等だった
( #・∀・)
( ・∀・)
((  ∀ ))
(ill ∀ ) やっちゃった……
147:
……やってしまった
きっと明日には大勢の暴徒が報復のために押し寄せてくるのだろう
報復の対象が僕だけで済めばいい。しかし奴等はきっと、この田圃も――
――それだけは、絶対にさせない
彼女に負担をかけること無く、この田圃を守り切る
( ・∀・) この田圃には、誰も来なかった
孤独な戦いが始まった
149:
( ・∀・) ねぇ
lw´ _ ノv ん?
( ・∀・) 大きいトラック、借りていい?
lw´ _ ノv 免許ないんでしょ? なんに使うの?
( ・∀・) 木が大量に必要になってね
( ・∀・) 運転方法はだいたいわかるし、今時検問も無いだろう?
lw´ _ ノv んー、まあ良いよ
( ・∀・) ありがと
lw´ _ ノv だからさ、そろそろここから出して?
( ・∀・) だーめ、ご飯作ったからそれ食べてしっかり寝てなさい
lw´ _ ノv んもう
( ・∀・) じゃ、行ってくるよ
lw´ _ ノv ……怪我に気をつけてね
( ・∀・) ……うん
151:
午前10時 支足場山到着
午前10時5分 伐採開始
正午  材木の積み込み開始
午後1時  支足場山出発
午後1時30分 県道2号線沿いGSにて給油
午後3時  美府到着
午後3時1分 昼食
午後3時6分 完食
午後3時7分 作業開始
午前6時  作業終了
作業を終えたあと、軽い食事をとって3時間だけ眠った
悪党が早寝早起きというのは無いだろうという希望的観測だったが、どうやら思い通りにいったらしい
考えうる最高の状態で、奴等を迎え撃つことが出来た
今日僕は、人を殺す
155:
芝里合と美府を結ぶ県道7号線
昨日の二人組の泥だらけの足跡を追跡した結果、奴等はここを通って来ることを知った
僕は一晩かけて、ここにバリケードを張った
( ・∀・) ……来たか
遠くから、バイクの轟音
それが近隣の市民を殺害して手に入れたものであることは、今朝のニュースで知った
犠牲となった市民とは恐らく面識はないが、奴等を殺すことへの躊躇いが少しだけ薄くなった
( ^Д^)
集団の先頭にいるのは、ニヤケ面の男
ゴテゴテと装飾をつけたバイクに跨る、ローシタの特攻隊長といったところだろうか
( ^Д^) ……あ? なんだありゃ?
男はバリケードに気付き、スピードを落とした
158:
( ^Д^) おい、何だこりゃ?
(’e’) バリケード……ですかね
( #^Д^) そんなこたぁ分かってんだよ! どうしてこんな所にバリケードがあるのかって聞いてんだ!
(;’e’) は、はっ! 恐らく、例の話の男が作ったものかと
( #^Д^) ローシタに逆らった馬鹿野郎が……手間かけさせやがって
( #^Д^) 黙って死んどきゃいいのによォ! そう思わねーかおい!?
(;’e’) はい、その通りで!
( #^Д^) 糞、めんどくせぇ……ぶっ壊せ!
(;’e’) は、はい! よし、お前ら手伝え!
暴徒たちはバリケードを壊そうと、続々とこちらに向かって歩いてくる
バリケードの影に僕が隠れていることに気づいている者はいないようだ
160:
(,,゚Д゚) あー、めんどくせ
ミ,,゚Д゚彡 どうせやられるのになんで無駄な抵抗するかねー?
___
\  /
 ('A`) 全くだ
暴徒たちの話し声が近付いて来る
……もっとだ、もっと引き付けるんだ。奴等が逃げられない距離まで
( #^Д^) チンタラ歩いてんじゃねぇ! さっさとやりやがれ!
(;’e’) はっ! ほら、お前らキリキリ歩け!隊長がお怒りだぞ!
(;,,゚Д゚) やっべ、急ぐぞ!
――もう少し
ミ;,,゚Д゚彡 プギャーさん怒らせると殺される!
――もう少し
___
\  /
 (;'A`) お、おう!
――もう少し
161:
 
(’e’) ……ん? なんか変な臭いが……
――今
165:
( #・∀・) うおおおおおおおおおおおおお!!!!!
僕が作ったバリケード、その正体は不安定に積み上げられた丸太の山
ほんの少し押してやるだけでバランスが崩れ、勢い良く転げ落ちる
( ^Д^) ……は?
バリケードの解体に来ていた十名ほどの暴徒が丸太の下敷きになるのを、ニヤケ顔の男は呆然と眺めていた
(;,,゚Д゚) ぐっ……重てぇぞゴルァ!?
ミ;,,゚Д゚彡 ぜ、全然動けん!?
___
\  /
 (;'A`) あの糞野郎、ふざけた真似しやがって!
( ・∀・) ……このバリケードにはもうひとつ秘密がある
(;’e’) 秘密!? ……ッ!? この臭いは!!
( ・∀・) 先に手を出したのは君たちだ
(;’e’) おい、やめろ! やめてくれぇっ!
166:
ガソリンの染み込んだ丸太目掛けて、僕はライターを投げ込んだ
丸太も人も、勢い良く燃え上がった
170:
( ・∀・)
(∀・ ) クルッ
(; ^Д^) おい、テメェ逃げる気か!?
(# ^Д^) こんな事しておいて逃げきれると思うんじゃねーぞ
(# ^Д^) 聞いてんのか、おい!?
男の言葉に耳を貸さず、暴徒の群れに背を向けて走り出す
ここで戦っても勝ち目はない。一度距離をとる必要がある
(# ^Д^) 糞が……てめぇら、あの糞野郎を追え!
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^) で、でも、バリケードが……
(# ^Д^) 馬鹿かテメェは!? 相手は徒歩だ!単車降りて追っかけろ!
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^) は、はいですお!
172:
(# ^Д^) どいつもこいつも使えねぇ……こんな所ロマネスク様に見られたら……
「見られたら、どうなるのだ?」
(; ^Д^) えっ!?
「見られたらどうなるのだと聞いておる」
(; ^Д^) い、いや、これは違うんです!
(; ^Д・:`, これはそnペッ!? ターン
(  Д ・:`,
( ФωФ) 一般人ひとり殺すのに、どれだけ手間取っておるのだ
173:
暴徒たちの怒鳴り声を背後に聞きながら、ようやく次の仕掛けへと辿り着くことが出来た
(; ・∀・) そうさ、バリケードは一つじゃない
徹夜で組み上げた2つ目のバリケード
暴徒の声はすぐそこまで迫っている。急いで隠れねば
(; ・∀・) 次も、上手くいくといいけど
(# ・∀・) いや、そんな弱気でどうする!?
(# ・∀・) 守り切るんだ! 僕らの田圃を!
「オラッ!逃げんじゃねーお!」
(; ・∀・) っ!?
暴徒の声がすぐ近くで聞こえた
息を潜めこっそりと様子をうかがうと、バリケードの前に数名の暴徒が立っていた
175:
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^) またバリケードかお!?
<ヽ;`∀´> あの野郎、用意が良すぎるニダ!
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^) どうするお? 乗り越えようとしたら焼き殺されるお!?
<ヽ;`∀´> ……
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^) ……
<ヽ`∀´> 閃いた!
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 ( ;^ω^) 何だお?
<ヽ`∀´> あいつがバリケードの裏にいるなら、こっちから火を点けてやればいいニダ!
(; ・∀・) ……!!
178:
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (*^ω^) おっwwwwwそれはいいおwwwwwwwwww
<ヽ*`∀´> ウェーハッハッハwwwwww丸焼きニダwwwwwwwwwww
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (*^ω^) ライターに火を点けてwwwwwいっくおーwwwwwwwww
<ヽ*`∀´> GO!GO!ニダwwwwwwww
   _
    ,ィ´ii
 r' li ||
 (*^ω^) せーので行くお! せーーー……
   _
    ,ィ´ii
 r' li 冫
 (*^ω,:'、 nパグヘッ タ------ン!
<ヽ`∀´> ……え?
<ヽ`∀・:'ゞ ターーーーーン!
179:
思った以上に世紀末だった
181:
(; ・∀・) 何度も同じ手を使うほど馬鹿じゃないからね! ターーーーーン!
冫。:ω゚´) プゲラッ!?
二つ目のバリケードは囮、僕は物陰に隠れて無防備に立ち止まった暴徒を射殺する
(;<●><●>) 奴が何処かに隠れているのはワカッテマス!
(;<●><●>) どこだ!? どこだ!? ……クソッ!!
( <○><,;'、 どkペラッ!? ターーーーーン!
( <○><,;'、 ドサッ
(; ・∀・) ……よし!
最後の男が倒れたのを確認してバリケードを崩し、火を放つ
こちらの戦略が向こうにバレないように
(; ・∀・) これで騙されてくれるといいけど……
「……向こうだ! 向こうにいるぞ!」
(; ・∀・) ッ、新手か!? 
暴徒の死体に背を向けて、最後のポイントへと急ぐ
これで……全てが終わるはずだ
184:
最後のバリケードを構成するのは、うず高く積まれた藁の山
彼女が生み出した「綿のように軽い藁」だ
( ФωФ) ……これは、藁であるか?
周囲の部下の怯え様から考えて、藁の向こう側にいるあの男……あいつが恐らく奴等の首領、杉浦ロマネスクだろう
あいつを殺すことが出来れば、この戦いは終わる
( ФωФ) 藁、藁……はたして、何をするつもりなのか
( ФωФ) 藁の中から奇襲? ターン!ターン!
( ФωФ)
( ФωФ) 反応なし
( ФωФ) それとも藁は囮で……
(; ・∀・)
( ФωФ) 何処かに隠れていたりするのかな?
(; ・∀・)
186:
(; ・∀・)
早く……早くしてくれ。もう限界だ
奴にそれを悟られると作戦が成り立たない。急げ、急いでくれ!
( ФωФ)
(ФωФ )
( ФωФ) ふむ、そのような様子もない
( ФωФ) ということは、つまり……
(; ∀ )
(ill ∀ )
駄目だ……緊張と疲労で意識が……
ここでバレたら……全部……終わ…………
187:
 
――――カラン
(# ФωФ) !!
 
(ill・∀・) っ!?
189:
(# ФωФ) そこか!
三(ill ∀ ) バッ!
(# ФωФ)見つけたぞ!
ターーーーーン.........
191:
( ФωФ) 
( ФωФ) な……
(# ФωФ) 何だと……!?
(ill ∀ ) ニヤッ
ロマネスクが撃った物は、物陰に立てかけて接地点に着火しておいた薪
いわば時限式の物音発生装置
予想外の出来事に意表を突かれ、そのうえ藁の山から目を離したロマネスクは――
(# ・∀・) うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
(; ФωФ) ぬあっ!?
――藁の山を突き破って突進する大型トラックへの反応が、一瞬遅れることになる
(#・∀・) いっけえええええええええええええ!!!!!!!
(# ФωФ) く……そおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
ガソリンと丸太をいっぱいに詰め込んだトラックは、暴徒たちを巻き込みながら周囲の建物に激突し……
大きな大きな火柱を上げた
193:
( ・∀・)
黒煙を上げながら激しく燃えるトラックをぼんやりと眺めながら、僕は服の埃を払った
激突の直前に運転席から飛び降りて事なきを得ることができた
( ・∀・) トラックのこと、どう説明しよう……
( ・∀・) 小説に使う木材も、全部使っちゃった……
( ・∀・) あ、帰りは歩きか……きついな……
( ・∀・) あーあ、もうなんか色々と駄目だ
( ・∀・) でも
( ・∀・) 生きてる
( ・∀・) 僕は生きてる
196:
トラックのことは、謝ろう。許してくれるまで、何度も何度も謝ろう
木材だって、もう一度取りに行けばいい
トラックがなくたって、まだ軽トラ……は、貸してくれるかわからないけど、最悪歩きで何とかしよう。数日掛かりで何とかしよう
その時のことを考えれば、今歩いて帰ることだって、大した問題じゃない
なんてったって、僕は生きているんだから
( ・∀・) 未来のみんなーきこえますかー
( ・∀・) 僕は今、生きてますよー
疲れはあれど、足取り軽く
さあ帰ろう。僕達の家へ、僕達の田圃へ
( ・∀・) さーて、今日の作業は追肥と防除だったかな
( ・∀・) うーん、忙しくなるぞー!
197:
 
タ――――――ン
199:
なんかやな予感が
200:
右腕に、殴られたような衝撃
じんわりと広がる熱気と激しい痛み
それが何かを考えるのに、時間はかからなかった
( Фω;;?;;)
(ill ∀ )
( Фω;;?;;) やってくれたな、ゴミが
ロマネスクは、生きていた
いつ死んでもおかしくないような重傷で、それでもなお……
射殺すような敵意をこちらに向けて、そこに立っていた
( Фω;;?;;) 吾輩ももう長くはない。しかし……
( Фω;;?;;) 貴様を道連れにするだけの時間は、充分残されている
焼け爛れた四肢をぎこちなく動かしながら、ゆっくりと、しかし着実にロマネスクは近付いて来る
(ill ∀ ) 銃は……
猟銃を求めて周囲を見渡すが、見つからない
撃たれた衝撃でどこか遠くに行ってしまったのだろう
202:
( Фω;;?;;) 起きろ
痛みの余り蹲っている僕の腹部を、ロマネスクは思い切り蹴りあげた
(ill ∀ )・:', ガフッ!
( Фω;;?;;) その程度の傷でどうして蹲る必要がある? 我輩を見ろ
( Фω;;?;;) こんな状態の我輩がしっかりと両の足で立っている。甘えるでない
( Фω;;?;;) 立て
(ill ∀ )
(# Фω;;?;;) 立たぬか無礼者!!
(ill ∀ ) ッ!?
(# Фω;;?;;) いいか、立てぬほどの痛みという物はな! 例えばそう、右腕に出来た銃創を……
(# Фω;;?;;) 踏まれて!
(ill ∀ ) ぐ、ぐあああああああああああああ!?
205:
(# Фω;;?;;) 踏まれて!!
(ill ∀ ) ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
(# Фω;;?;;) そしてそこに、焼けた木の棒を捩じ込まれるような! ジュウウウウウウウウウウウ
(ill ∀ ) ―――――――――――――ッッッッッッッッ!!!!!!?
(# Фω;;?;;) そのような痛みのことを言うのだ!
(ill ∀ ) …… パクパク
(# Фω;;?;;) ……ふん、叫ぶこともできんか
(# Фω;;?;;) もういい、貴様にも飽きた
(# Фω;;?;;) 一思いに脳味噌を撃ち抜いてやる。感謝するが良い
(# Фω;;?;;) 先に地獄で待っていろ カチャ
(ill ∀ ) ……!
207:
 
タ――――――ン
209:
( Фω;;?;;)
( Фω;;?;;)
( Фω;;?;;) ……何故
(  ω;; ;;) だ…… ドサッ
lw;´ _ ノv ハァ……ハァ……
211:
予想外の方向からの銃声に、痛みを堪えて振り向くと……
硝煙を上げた猟銃を手にへたり込む彼女の姿がそこにあった
(  ∀ ) ……どうして
どうして分かったのか。どうして来てしまったのか
彼女へ向けるべき質問が頭のなかでぐるぐると回り、言葉が出ない
lw;´ _ ノv 女は臭いに敏感なのさ
lw;´ _ ノv 火薬の臭いをプンプンさせたままレディーのところにやって来るなんて、マナー違反だと思わないかい?
(ill -∀・) はは、なるほどね。それは失礼
lw;´ _ ノv 歩ける?
(; -∀・) なんとかね。君は?
lw;´ _ ノv ……ごめん、きつい
(; -∀・) だろうね……ほら、背中に乗って
lw;´ _ ノv ……うん
(; -∀・) 乗り心地は悪いけど、我慢してね
lw;´ _ ノv ……うん
212:
その日僕たちは半日がかりで家に辿り着き、玄関で力尽きて、そのまま丸一日眠った
目が覚めて真っ先にトラックのことを謝ったら、「そこじゃね―だろ」と手痛い腹パンを頂戴した
その後のこと?
そうだね、僕は怪我の完治までに一ヶ月(幸い骨に異常はなかったようで、2週間の時点で農作業が出来る程度には回復していた)
彼女の体調は4日で元に戻った
農作業は4日間放置、その後10日間は彼女一人での作業ということになる
まあ、今度は分かってくれたのか、無理な労働はしないようになっていたよ
さて、楽しい時間は早く過ぎるというけれど、僕達のそれも例外ではなかった
最後の時は突然に……ではなく、充分すぎるほどの前振りを引き継いで、悠々と、堂々とやってきた
214:
『臨時ニュースです、ただ今入った情報によりますと、海面の急な上昇が始まったとのことです』
『海抜27メートルの低地にある当ラジオ局も、間もなく水没することでしょう』
『水没まで残り僅かな時間ですが、皆様とご一緒することが出来れば幸いです』
聞き慣れたアナウンサーの声も、しばらくするとゴボゴボという音とともに聞こえなくなってしまった
僕達がいるこの田圃も、きっと間もなく……
lw´‐ _‐ノv いよいよ、世界が終わるようですよ
( ・∀・) なんとも、あっけないものですね
217:
lw´‐ _‐ノv ……結局、書けなかったね、小説
( ・∀・) そうだね
( ・∀・)
( ・∀・) 結局、間に合わなかったね、収穫
lw´‐ _‐ノv そうだね
lw´‐ _‐ノv 収穫まで、あと2週間くらいかな
( ・∀・) 惜しかったね
lw´‐ _‐ノv そうだね
lw´‐ _‐ノv ねぇ
( ・∀・) ん?
lw´‐ _‐ノv 悔いはある?
( ・∀・) んー、無いかな
lw´‐ _‐ノv ……そう
( ・∀・) 嘘、いっぱいある
218:
( ・∀・) 食べたいものや行きたい場所がたくさんある
( ・∀・) 漫画だって読みたいし、好きなミュージシャンのライブにだって行ってみたい
( ・∀・) 小説も書きたい
( ・∀・) 育てた米を収穫してやりたい
( ・∀・) 君とだって、もっとずっと一緒にいたい
( ・∀・) ……はは、悔いだらけじゃないか
lw´‐ _‐ノv ねぇ
( ・∀・) ……何?
lw´‐ _‐ノv もういっこだけ、聞いていい?
222:
lw´‐ _‐ノv 生きたい?
( ・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv 豪華な食事も、風光明媚な観光地も、面白い漫画も、美しい音楽も無い
lw´‐ _‐ノv 私と、君と、米と小説しかない世界
lw´‐ _‐ノv もしかしたら、死ぬよりも苦しいことがあるかもしれない
lw´‐ _‐ノv そうまでしても、君は生きたいと思う?
( ・∀・)
( ・∀・) そんなの、答えなんて決まっているじゃないか
( ・∀・) ……生きたいよ
lw´‐ _‐ノv そう、ありがと
223:
 
lw´‐ _‐ノv じゃあ、生きよっか
( ・∀・) え?
226:
lw´‐ _‐ノv 田圃の石をどかすの
( ・∀・) 石? 猪除けの?
lw´‐ _‐ノv うん、猪除けの
( ・∀・) どうしてそんなこと……
lw´‐ _‐ノv 急いで、時間がない
( ・∀・) え? ……うん、わかった!
( ・∀・) 何を考えているのかはわからないけれど、君の言うことだ。無碍にするようなことはない
lw´‐ _‐ノv ……ありがと
彼女と2人で協力し、田圃の石を取り除く
ここまで水がやって来る前に。息を切らして石を運んだ
( ・∀・) それで、次は何をすればいいの?
lw´‐ _‐ノv いい
( ・∀・) え?
lw´‐ _‐ノv これで、いい
232:
彼女は大きなカバンを背負って、田圃の中心部へと歩いた
lw´‐ _‐ノv こっち、来て
( ・∀・) ……うん
lw´‐ _‐ノv あのさ
( ・∀・) なに?
lw´‐ _‐ノv インダー族って知ってる?
( ・∀・) 知らない
lw´‐ _‐ノv 例の発表があってから数週間で滅亡した少数民族なんだけどさ
( ・∀・) へぇ
lw´‐ _‐ノv 彼らがなんで滅んだかというと、彼らの持っていたあるもののせいなんだよね
( ・∀・) あるもの? なにそれ?
lw´‐ _‐ノv 木で作った筏の上に、土と腐敗した植物、水草などを混ぜあわせたものを乗せ、固める
lw´‐ _‐ノv 筏の上の混合物は豊富な栄養を持ち、野菜や果物の栽培を可能にする
lw´‐ _‐ノv 通称、”浮島”
233:
lw´‐ _‐ノv まあ、早い話がね
lw´‐ _‐ノv ……浮くよ? この田圃
(;・∀・) えっ!?
突然、足元が大きく揺れた
234:
こんど近くの池でやってみるわ
238:
lw´‐ _‐ノv とうとう水がここまでやって来たね。結構ギリギリだったじゃないか
周囲の風景が水底に沈んで行く。家も、道路も、軽トラも、全部
その中で唯一、僕らの立つ田圃だけが、水面の上昇に合わせて天高く登っていく
( ・∀・) これが……浮島?
lw´‐ _‐ノv そうだよ。初めてにしては上手く作れたと思わないかい?
( ・∀・) ひとりで作ったの?
lw´‐ _‐ノv 見つかったら暴徒に壊されちゃうし、何より君の意思を尊重したくてね
lw´‐ _‐ノv 君が死んでもいいと言っていたら、私も一緒に死ぬつもりだった
( ・∀・) どうしてそこまで……だいたい、生きたいんだったら「方舟」に乗ればよかったじゃないか
lw´‐ _‐ノv あんな閉じた船の中で、あんな閉じた人間たちと生き延びるくらいなら、私は死を選ぶよ
lw´‐ _‐ノv 開いている君を見つけたから……君となら、生きていこうと思った
239:
面白い発想だ
242:
lw´‐ _‐ノv もっとも、これで生存が確定した訳じゃないんだけどね
( ・∀・) そうだね。水も、食料も、天候の変化も、どれかが悪く働けば……
lw´‐ _‐ノv 「死ぬより苦しいこと」が、起こるかもしれないね
lw´‐ _‐ノv まあ当面の目標は、収穫までの2週間を鞄の中の食料で食いつなぐことだね
( ・∀・) もしかしてカバンの中身って全部食料?
lw´‐ _‐ノv 私だって馬鹿じゃない。必要最低限の荷物は詰め込んださ
lw´‐ _‐ノv 防寒具、浄水器、刃物、植物の種、釣具、それに……
lw´‐ _‐ノv こんな物もね
( ・∀・) 僕のノート……
lw´‐ _‐ノv 水の上なら水没を恐れることもない。木や鏝が無くたって、紙とペンさえあれば小説は書けるだろう?
245:
( ・∀・) ありがとう。でも、困ったな……
lw´‐ _‐ノv 何が?
( ・∀・) この数カ月の取材を元に記録を書いたって、誰が信じてくれるっていうのさ
lw´*‐ _‐ノv ……っはは! それはごもっともだ! 誰も信じちゃくれないさ!
( ・∀・) だよねぇ……
lw´*‐ _‐ノv まあ、いいんじゃない?
( ・∀・) 何が?
lw´*‐ _‐ノv 人々の記録って発想は悪くないけれど、地球には60億もの人類がいたんだ
lw´*‐ _‐ノv ひとりかふたりくらい、君と同じ事をやっていたかもしれないよ?
lw´*‐ _‐ノv おんなじものを書いたんじゃ、君の文章力では勝てっこない
( ・∀・) 結構傷つくんだけど
lw´*‐ _‐ノv まあまあ、そういうわけだから君は、誰も書けないような出来事を書いていくのがいいんじゃないかな
( ・∀・) ……誰にも書けないこと?
lw´*‐ _‐ノv そうさ、他の誰にも書けない……例えば、新たな世界のアダムとイヴの日記なんて、面白いと思わないかい?
257:
( ・∀・)φ
「前略、未来の人類へ――
(; ・∀・)φ
「未来の地球はどうですか? 相変わらず水でヒタヒタですか? きっと、そうなのでしょうね。
僕らの時代の偉い学者によると、向こう数千年はずっとヒタヒタらしいですね。
知っていますか? あなたの立っているその船の遙か下、海深く、かつてそこには人が住んでいました――
(; -∀・)φ
「ええとまあ、それはともかく、おかえりなさい。人類の故郷へようこそ
何故僕がこの手紙を書こうと思ったかというと、それは君たちにどうしても伝えたいことがあったからです――
(; ∀ )φ
「そもそも僕は手紙じゃなくて小説で君達に伝える予定でしたが、僕の妻が『君はこっちのほうが良いんじゃない』といったからで、
本来であれば小説に込められたメッセージ的なものとして伝える予定でしたが、まあこの際手紙でも構いません――
(ill ∀ )φ
「それでその伝えたいメッセージというのは、それを伝えるのが僕の人生の目標となるもので、この手紙を君達に読んでもらうことで
僕の人生の目標が達成されることになります.。ええとまあとにかく何が伝えたいのかというと――
262:
lw´‐ _‐ノvφ Σ(・∀・ ill)
「私達は今この時、たしかにこの場所にいて、何物にも代え難い幸せを共有しているということなのです。
ざまーみろ、うらやましいか。ばーかばーか
              草々」
lw´‐ _‐ノvφ(・∀・ ill)
lw´‐ _‐ノv (・∀・ )
lw´*‐ _‐ノv  (・∀・*)
264:
  lw´‐ _‐ノv「世界が終わるようですよ」( ・∀・)「なんと」
          おしまい
265:
終わったw
乙!!!!!
いつか続き書いてくれ
267:
乙です
おもしろかった
269:
最後の最後でスペースを入れ忘れるというミスを犯しましたがおしまいです
支援ありがとうございました
一応矛盾が出にくいように書いたつもりですが「ここおかしくね?」という箇所があったら指摘していただければ適当に補完します
270:
乙です!
271:
乙……乙……!
274:

最後やっぱり二人死んじゃうの?
284:
>>274
どっちとも取れるように書いたつもりなので好きな方で解釈してください
いい加減眠いのでねます。支援乙ありがとうございました
275:
素晴らしい
276:

おかしい所もなくはないけど、面白かったので良かった
ちゃちゃいっぱい入れてごめんね
277:
長時間乙でした、これで亡くなった妹も浮かばれるな
288:
おつかれ
面白かった
289:
素直シュール可愛いよおおぉ
29

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