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P「不思議な話」


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1:
日常以上ホラー以下のようなオムニバスをいくつか
全員分はありません
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408376670
2:
春香「桜」
3:
これは、私の小さい頃の話なんだけどね。
家族で、お花見に行った時の話。
私は覚えてないんだけど、お母さんから聞いたの。
「ねえおとうさん、これなぁに?」
お父さんに肩車されてる私が、上を指差して言ったんだって。
「春香、これは桜だよ」
「あれも?」
今度は、その隣を指差すの。
「そうだとも」
「あそこのも? 全部桜ってゆうの?」
辺りを見回して、そう言うの。
「そうだよ」
お父さんは答える。
そして、私は訊いたんだ。
「じゃあ、このいっぱいあるピンクの木は、なんて言うの?」
って。
私はいったい、何を指差してたんだろうね?
4:
あずさ「訪」
5:
あら? 雨、降ってきちゃいましたね。
見てる分にはいいんですけどねぇ。
やっぱり、外に出ないといけない時は嫌ですよね?。
それはそうと。
この前も、雨降りましたよね? あの時の話なんですけど。
その日は私、家に帰るのが結構遅かったんです。
家って言っても、マンションですけど。
遅くにマンションに着いて、エントランスに入ったんですよ。
そしたら、雨の日ですから、割と濡れてたんですね。
でも、普通そういうのって入り口付近だけじゃないですか?
そうじゃなかったんです。
よく見ると、一人分の足跡が続いてたんです。
靴の跡じゃなくて、足跡が。
最初は、特に気にしなかったんです。
それが、エレベーターの前まで続いてたのも。
エレベーターの中にまでついてたのも。
けど、エレベーターを降りた時、その足跡がまだ続いてるのを見た時、少し怖くなって。
歩き始めながら、薄々思い始めたんですよ。
もしかしてこの足跡、私の部屋の前まで続いてるんじゃないかしら……って。
6:
案の定、その足跡は、私の部屋の前で途切れていました。
しばらく迷ってからドアを開けると、やっぱり足跡がありました。
それは、部屋の方に続いてました。
靴を脱いで、奥に進むと、部屋の真ん中で、足跡は大きな水溜まりに変わってました。
それはまるで、人のような形だったんです。
サスペンスドラマでよく見るような、手を伸ばしながら倒れた人のような形の、水溜まりでした。
私は、とっさに手の伸びている方向を見ました。
すると、そこには……。
……ってあら?
すいません、もう時間なんで、次のお仕事に行ってきますね?
え? そこに何があったか……ですか?
大した物じゃありませんでしたよ?
除湿機です。
私、その日の朝、動かしっぱなしで家を出てたんです。
たぶん、そのせいで、水溜まりになっちゃったんだと思います。
あれが何で、どうして私の部屋に来てたのかは分かりませんけど……なんだか可哀想な気もしますよね?。
7:
響「匂」
8:
ねえ、ちょっと……いい?
自分の服の匂い、嗅いでみてくれないか?
え? 響はいい匂いだから気にするな?
ち、違う! そういうことじゃないぞ!
じゃあ、どんなことかって?
……とにかく、嗅いでみてよ。
どう? なんか変な臭いしない?
しない? 本当に?
しない?
……そっか、なら、いいよ。
ごめんね、変なことで時間とらせて。
うん、やっぱり気のせいだよね。
みんなにも訊いてみたけど、みんなそう言ってるし。
…………。
え? いや、大丈夫だぞ。
大丈夫、大丈夫だってば。
…………。
この前、自分、沖縄のロケに行ったでしょ?
あの時からなんだ。
ねえ、もう一回だけ、嗅いでみてくれない?
臭い、しない?
しないか?
海の匂い、しないか?
9:
真「音」
10:
プロデューサー! プロデューサーぁ!
聞いてください! 昨晩、おかしなことがあったんです!
え? 深呼吸……ですか?
すぅ……はぁ……。
すぅ……はぁ……。
……それじゃあ、えっと、昨晩のことなんですけど。
昨日ボクは、いつも通り日付が変わる前に寝たんです。
なのに、何故か昨晩に限って夜中に目が覚めちゃったんですよ。
時計を見たら二時だったから、もう一回寝ようと思ったんですけど……その前に、トイレに行くことにしたんです。
でも、そう思って廊下に出た時、聞こえてきたんですよ。
女の人の、苦しそうな声とか。
それと、ぐちゅっ、とか、ぐちゃっ、って水音とか……。
それから、何かがギシギシって軋む音とかもして……!
ボク、もう怖くて怖くて……!!
ねえこれ何の音だったんだと思います!? プロデューサー──
……って、なんで頭撫でるんですか?
え? 真は可愛いなぁ……?
って! いきなり何言ってるんですか!?
両親に訊いても、気にしないで寝ろって言われたからプロデューサーに訊いたのに……あぁもう!
プロデューサーのばかぁ!!
11:
貴音「麺」
12:
以前、わたくしが体験した話です。
その日、わたくしは街中を散歩しておりました。
しかし、何故か突然、とてもお腹が空いてきたのです。
ですから、どこか食事のできる店に入ろうと思ったのですが、そういう時に限って見つからず。
結局、三十分ほど歩いて、ようやく一軒見つけることができたのです。
店に入ると、客はおらず、ただ店主が一人。
それでも、空腹に耐えられなかったわたくしは、一杯のらぁめんを注文致しました。
しばらくして出てきたのは、いたって普通のらぁめん。
それでも、空腹は最高の調味料と言うように、そのらぁめんは大層おいしゅうございました。
ですが、ひとつ、違和感に気づきました。
減らないのです。
食べても、食べても、減らないのです。
どれほど食べていたのかは定かではありませんが、ゆうに一時間以上は食べていたでしょう。
流石に、わたくしも満腹感を覚え、
「もし、店主殿。申し訳ありませんが、残してもよろしいでしょうか……」
と、言いながら、顔を上げたのです。
すると、店主は、
「お代は結構ですよ」
と言うのです。
わたくしは驚いて、断ろうとするのですが、店主は、
「お代は結構ですよ」
と言って、頑なに代金を受け取ろうとしないのです。
余りに受け取りを拒むので、遂にわたくしは、代金を叩きつけて帰ってしまいました。
13:
その帰り道、わたくしは、急に気分が悪くなり、こらえきれず、嘔吐してしまいました。
わたくしの口から出てきたのは、大量の麺。
ではなく。
大量の、髪の毛でした。 
長くて黒い、艶々とした、髪の毛。
驚いたわたくしは、即座に引き返し、先程まで食事をしていた店に向かいました。
しかし、再び店の扉を開いたわたくしの目に映ったのは、もう何年も人が出入りしていない様な、荒れた光景でした。
今はもう、その店の場所も、店主の顔も、思い出すことはできません。
ですが、ぽつんと置かれた、髪の毛が入った丼、それと、その傍に置かれた代金だけは、未だにはっきりと思い出せるのです。
15:
こわい
14:
やよい「埋」
16:
私、お家の裏の空き地で、家庭菜園してるんです。
いろんなお野菜を植えたりしてるんですけど、これが結構、食費の足しになるんですよ?
ところで、二年ほど前のある日、その空き地の隅っこの土が、一度掘り返した後みたいになってたんです。
誰かが何か埋めたのかなーって思ったんですけど、掘り返すのもよくないと思って、そのままにしておいたんですよ。
そしたら、畑が駄目になっちゃったんです。
どういうことかというと、お野菜が実らなかったり、全然美味しくできなかったりしたんです。
それで、ずっと困ってたんですけど……。
最近、また普通にお野菜が実るようになったんです。
あれ? って思って、空き地の隅っこを見たら、穴ができてたんです。
まるで何かが、土から這い出た跡のような穴が。
結局、何が埋まってたんでしょうか?
18:
伊織「喰」
21:
あんた、私の家に来たことあったわよね?
だったら分かると思うけど、うちの庭って、結構広いのよ。
庭師とかもいるんだけど、それでも管理しきれない部分がどうしてもできちゃうのよね。
しょっちゅうそこらのペットが迷い込んで住み着いたりしてるわ。
そういうわけで、この前執事に、犬が出るらしいから気をつけてって言われた時も、いつものことだと思ってたの。
だからつい忘れて、昨日、ジャンバルジャンの散歩してたのよ。
そういうのが出たら、すぐに猟師みたいなのがなんとかしてくれてたから、油断してたのかもしれないわね。
え? ジャンバルジャンって何? ですって?
私の飼ってる犬の名前よ。それくらい知っておきなさいよね。
22:
それでね、歩き始めてしばらくしたら、ジャンバルジャンが止まったの。
そして、一歩も動かないのよ。
まるで、何かに怯えてるみたいに。
不思議に思ってると、変な音が聞こえてきたの。
ピチャ、とかなんとか。
とにかく、そういう音が。
ジャンバルジャンは動かないから、仕方なく、私一人で音の正体を確かめに行ったわ。
そしたら、女が一人、こっちに背を向けてうずくまってたの。
見慣れない後ろ姿だったから、
「誰?」
って訊いたのね。
そしたら、その女、そのまま振り向かないで、もの凄いさで逃げ出したのよ。
四つん這いで。
あっという間に、茂みの中に入って行って、見えなくなったわ。
はっとして、その女のいた所を見たら、あったのよ。
血溜まりと、犬の死骸が。
すぐに家の中に戻ったわ。
そして執事に命じて庭をくまなく捜索させたんだけど、結局あの女は見つからなかった。
もうおちおち一人で出歩けやしないわ。
だって、顔も知らないあの女に、いつどこで出くわすか分からないのよ?
あの女が食べるのが、犬だけだとは……思えないでしょ?
23:
雪歩「別」
24:
それは、一人で事務所にいた時のことでした。
何気なく壁を見たら、白い壁に、黒い点があったんです。
なんだろう? まさか、ゴキブリ?
そう思って近づくと、それは、穴でした。
五百円玉くらいの大きさでした。
私は、目を、そっと近づけて、中を覗いてみました。
見えたのは、見慣れた765プロの事務所でした。
ただし、今の事務所よりも、もっと、ずっと、汚れて、荒れていました。
薄暗いその事務所には、人が、一人だけいました。
それは、私でした。
昔よく着ていた服を身につけて、誰もいない事務所で一人、お茶を飲んでいました。
疲れたような顔、目には隈、私よりも少し痩せた彼女は、とても悲しそうで。
そんな彼女を見ていると、突然、涙が溢れてきました。
自分でもよく分からなかったけれど、なんだか、申し訳ないような気持ちになっていました。
涙で歪んだ視界の中で、彼女は歌い始めました。
その歌声は、私の声とは、少し違う声でした。
ですが、そんなことは気にならず、私はただただ聴き入っていました。
どれくらい時間が経ったでしょうか。
気がつくと、彼女は歌うのを止め、こっちを見ていました。
すると、私は何故か眠くなりだし、目を開けるのも辛くなっていきました。
そんな中で、彼女は、口を開きました。
「─────。────」
私は、まどろみながらも、確かにその声を聞きました。
目を覚ました時、事務所にはみんなが揃っていました。
壁に目をやると、穴はなくなっていました。
夢のようなその出来事は、今でも私の胸に、深く、深く、刻まれています。
26:
おまけ
小鳥「独」
28:
「夏になると、怪談とかよく聞きますよね」
「そうですね」
「律子さんは、何か怖いものとかありますか?」
「うーん。強いて言うなら、この事務所ですかね」
「え?」
「あ、いえ、なんでもないですよ。それで? そういう小鳥さんは、あるんですか? 怖いもの」
「そうですねぇ……今は、ご縁が怖いですかね……」
「え? …………ああ、なるほど」
31:
以上でおわりです
ありがとうございました
30:
ぴよちゃん一番怖いんですが
32:
乙です
3

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