貴音「か、身体が勝手に技を……!?」back

貴音「か、身体が勝手に技を……!?」


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1:
P「貴音。今なんつった」
貴音「申し訳ございません、誠に申し訳ございません……」
P「俺はな、春香にダイビング食らったり、美希に後ろからタッチダウン食らったりとかは経験あるけどな」
P「まさか、事務所のドアを開けた瞬間に」
P「フロントスープレックスを食らうなんて思わなかった」
P「それも、貴音に」ズキズキ
貴音「重ね重ね、申し訳ございません」
2:
小鳥「ま、まぁまぁ……落ち着いて、ね?」
P「小鳥さんは何食らったんですか?」ズキズキ
小鳥「…………」
P「関節ですか? 締めですか? 投げ?」
小鳥「……ビクトル式膝十字固めでした」サスサス
小鳥「膝が『ミリミリッ!』っていいましたよ。痛い以上に恐怖でした」
P「サンボもありなのかよ」
貴音「そのようです」
3:
P「で、何故こんな事をした?」
貴音「……実は、わたくしにも分からないのです」
貴音「ただ、事務所へ参ってから、何故か呼吸が苦しくなり」
貴音「出社した小鳥嬢へ技をかけたい衝動が抑えられなくなり」
P「いや『技』ってなんだよ」
貴音「『たっぷ』された瞬間、たちどころに呼吸が楽になったのです」
P「意味が全然分からんぞ」
4:
貴音「……」シュン
小鳥「でも、貴音ちゃんが冗談でこんな事するとも思えませんし……」サスサス
P「ええ。本気で投げたのが伝わってきましたし」ヒリヒリ
小鳥「しかし、まずいですよ。このまま事情も知らず他の子が出社してきたら……」
貴音「ええ。非常に……ま…ず……っ」ビクッ
P「貴音?」
貴音「……っ!」ヒュー…… ヒュー……
P「貴音ぇ!?」
5:
小鳥「ま、まずいですよPさん! 貴音ちゃんの顔色がどんどん赤く……!」
P「しっかりしろ貴音! 小鳥さん、救急車!」
貴音「う、うぅぅ……」スクッ……スタスタスタ
P「な、何だ? 入り口前に歩いて行ったぞ?」
小鳥「恐らく……誰かが来るのを察知したんですね」
P「え?」
ガチャッ
響「はいさ 貴音「そいやぁっ!」
ガシッ……ズダァン!
6:
響「ぐえっ! ……た、貴……音……!?」ジタバタジタバタ
貴音「申し訳ございません……申し訳……」ギリギリギリ
P「こ、これは……胴締めスリーパー!?」
小鳥「え、ええ……往年の猪木を彷彿させる、見事な!」グッ
P「見てください。背筋が一直線に伸び切り……いや、反り返らせながらのきれいなチョークですよ!」ゴクリ……!
小鳥「これはもう、失神待ったなしです!」
響「が、ふ……だ、だず……げ……で……!」ジタバタジタバタ
貴音「こうするしか……こうするしか……!」ギチギチギチギチ
7:
響「ぐる……じ……!」ピクッ……ピクッ
小鳥「見てください、涙と唾液でぐしゃぐしゃですよ」
P「とりあえず撮っときましょうか」ピロリーン
小鳥「じゃあ私も」ピヨー
響「っ……ぐげ……!」ブクブク
小鳥「プロデューサーさん! アワ吹きですよ! アワ吹き!」キャッキャッ
P「はしゃぐ場面ですかね、これ」
響「…………」
ビクッ! ビクビク! ビクンッ! プシュッ…… チョロッ…… ジョロロロロ……!
カンカンカンカーン!
9:
P「失神……いや失禁勝ちですね。っていうか何でゴングなんかあるんです?」
小鳥「この間、事務所の掃除をした時に出てきたんです。取っといてよかった」
響「あ……うぅぅ……」ピクピク
貴音「……ふぅ……楽になりました、響。ご馳走様でした」
P「いやお前、選ぶ言葉がおかしいって」
小鳥「こちらこそご馳走様でした」
貴音「さて、床の尿を拭きましょう」
小鳥「あ、片付けもちゃんとするのね……」
P「とりあえず響はソファーに横にさせようか」
10:
響「うーん……。あ、あれ!? 自分、いつの間に寝て!?」ガバッ!
貴音「おはようございます、響。そして、申し訳ございません」
響「え、何が? それに、この毛布……」
貴音「まず、いきなり無礼にも……胴締めすりーぱーをかけてしまった事をお詫びいたします」
響「え、あ……なんだって?」キョトーン
貴音「そしてもうひとつ」
響「?」
貴音「尿で濡れてしまったので、響の下を全て脱がさせていただきました。今は小鳥嬢が『こいんらんどりぃ』へ」
響「う、うぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!? た、貴音! 朝から何するんさー!?」
13:
P「落ち着け、響。これには訳があるんだ」
響「後ろから首絞めてパンツ脱がせる理由ってなんなんだ!? は、犯罪だぞ!」
P「人命がかかっていたんだ」
響「はぁ!?」
貴音「ええ。巻き込んでしまい、申し訳が立ちません」
P「俺から話す。……実は、貴音は――――」
15:
――――――
響「な、なんだ……そういう事だったのか」
小鳥「納得早いわね。はい、下着」
響「ありがと。……ん? 自分、ちょっと思ったんだけどさ」
P「何?」
響「なんで、近くにいたプロデューサーやピヨコじゃなくて、事務所に入ってくる自分狙ったんだ?」
小鳥「確かに一刻を争うなら、近くにいる人に技かけた方がいいわよね」
貴音「その事ですが、一度かけた相手に対しては無効のようで」
P「いや、無効って……」
16:
小鳥「それより、そろそろまた誰か犠牲者が来そうですね」
P「……考えてみると、怖いですよ。もしもやよいや亜美に、危険な投げ技発動したら」
響「だ、ダメダメ! 絶対止めるさー!」
貴音「わたくしも抗ってはみたのですが徒労でした。せいぜい数種類の中から選ぶ事しかできませんでした」
P「なに、お前脳内に技の選択肢とか出るの? X・Y・Bで選ぶの?」
貴音「ちなみに先ほどは、『胴締めすりーぱー』、『水車落とし』、『つーむすとん・ぱいるどらいばー』の三種です」
P「……まぁ、投げ系はできるだけ避けてくれよな。体格差的にやよいあたりが食らったら死んじゃう」
貴音「善処いたします……ん?」ピクッ
ガチャッ
春香「おはようございまーす!」
19:
P「春香、覚悟するんだ」
春香「へっ!?」
貴音「申し訳ございません……」ガシッ
春香「な、何何何? 貴音さん、いきなり後ろから……ひょわぁっ!?」グイッ
P「肩に回して持ち上げ……あ、あの姿勢は……!」
小鳥「アルゼンチン・バックブリーカーですね!」
響「す、すごい……流れるような動きだ! 加えて貴音の長身! 見ごたえバツグンだぞ!」ゴクッ
貴音「はぁぁぁぁっ!」グググッ!
21:
メリメリメリメリ……
春香「い、痛い痛い、いだいぃぃっ!」 ポキポキポキ
貴音「せいぃぃっ!」 ダンッ! ダンッ!
春香「げぶっ……うぇ……ぐるじぃ、よぉ……!」ピクピク
P「まさか……床を踏み鳴らして衝撃まで加えるなんて……!」 グッ
小鳥「まさしく非情! 苛烈な人体破壊技!」
P「リングネームは『非情貴音』で決まりですね」
春香「ぎ……ギブ、アップ…………」ブクブクブクブク
響「ご、ゴングゴング! 貴音! もう決まったぞ!」
カンカンカンカーン!
22:
小鳥「えーっと……1R32秒、アルゼンチンバックブリーカー、ギブアップと」カキカキ
P「何記録してんですか、あんた」
小鳥「あ、すみません……つい」
春香「」ピク……ピク……
響「春香! しっかりするんだ春香! あと、なんで貴音は高々と手を揚げてるんだ!?」
貴音「はっ……す、すみません。つい、勝利に陶酔してしまって……!」
P「貴音、お前半分楽しんでるだろ」
貴音「い、いえ……そのような……」ゾクゾクッ
P「明らかにエクスタシーじゃねーか!」
23:
ガチャッ
律子「おはようございま……何、何ですかこの状況は?」
貴音「おはようございます」ズイッ
律子「ちょ、何? 近いわよ……?」
貴音「すみません……体が勝手に!」ガシッ……バタン!
律子「痛っ……何なのよ、いったい……!」
P「後ろから倒して跨り、首に手を……」
小鳥「これは、キャメルクラッチの体勢ですが」
律子「ちょっと! 何すん……ふぐぁぁっ!?」 グイー
P「い、いや……まさかの鼻フック式・キャメルクラッチだ!」
24:
小鳥「これは従来のキャメルクラッチほどの威力はありませんが……屈辱感を煽り立てる技ですね!」
P「ええ、見てください。律子のふだんの怜悧さが微塵も感じられません!」
律子「や、やめへぇ……見らい、れぇ……」グイー…… ダラダラ
小鳥「伸びきった鼻の穴! 刺激に耐えきれず流れる鼻水! まさに! まさに非情!」
P「心なしか、貴音の顔もさながら処刑人の如き冷徹さ!」
律子「やめへ……やめへ、くらはい……! やめ……」グイー……
小鳥「仕事では男以上に渡り合う律子プロデューサー、まさかの懇願! まさかの戦意喪失!」
P「鼻だけではなく口もあんぐりと開かされ、なんともいえない間抜けさ!」
小鳥「もうレフェリー止めた方がいいんじゃないですか? 危険ですよ」
P「これは……もう、勝負決まりましたね。我那覇レフェリー、そろそろ……」
響「え、じ、自分レフェリーなのか!?」
カンカンカンカーン!
25:
小鳥「レフェリーストップ、と」カキカキ
律子「う、うぅ……ぐすっ……」ポロポロ
P「律子、もうそろそろ……泣くの、やめよう。伊織たちが来るぞ」
律子「だ、だって……みんなに、私の……あんな顔、見られ……」シクシク
貴音「……本当に申し訳ございませんでした。自分では止められませんでした」
響「顔はやめようよ、貴音ー」
貴音「猛省しております」
P「ところで、春香はまだ起きないのか」
小鳥「朝っぱらから本気のバックブリーカーはキツいですよ」
響「どんな技でもキツいと思うさ……」
27:
――――
貴音「せいやぁっ!」ギリギリギリギリ
千早「いだだだだだっ!? ちょ、四条さん、痛っ……がぁぁぁぁ!」ミシミシミシミシ
小鳥「パロ・スペシャル!」
P「まさに大空に羽ばたく自由の翼! 千早の背骨はもう限界か!?」
――――
貴音「とうっ!」ズダァン!!
真「ぐはぁぁっ!」
小鳥「オクラホマ・スタンピード!」
P「鍛え上げられた真にだからこそかけられる技です!」
28:
――――
貴音「はぁっ!」
亜美「んぎゃあぁぁぁぁっ!?」ドガァッ!
小鳥「アトミック・ドロップ!」
P「な、なんと惨い……!」
――――
真美「や、やめてやめてやめて! 恥ずかし……兄ちゃん、見ないでってばぁっ!」ギリギリギリ
小鳥「レッグスプレッド(股裂き)……!」
P「ホットパンツの裾から下着がちらりと見えてますね」
小鳥「眼福眼福」
――――
29:
P「……さて、一通りかけ終わったかな?」
小鳥「事務所の中は死屍累々ですね」
響「あとは……雪歩、だな」
P「やよいはアームロックで済んでよかった」
真「いや、よくはないでしょ」
響「いじめの現場だったぞ、ほとんど」
小鳥「まともに動けるのは響ちゃんと真ちゃんだけですね。千早ちゃんもそろそろ回復しますかね」
P「よかったな、鍛えてて」
真「はぁ」
響「まぁ、結果的には……」
30:
P「さて……雪歩、どんな技が来るかな」
小鳥「あずささんの時の空中殺法は凄かったですね、壁を蹴ってジャンプして」
P「あれは見ごたえがありました。さながら月へ舞い上がるかぐや姫のようでした」
響「なぁ、今日みんな仕事になるのか?」
真「いやぁ……無理でしょ」
貴音「相済みません……これも、全てわたくしのせいで……」
真「あのさ、貴音。わざとじゃないんだよね?」
貴音「ほ、本当です! 身体が勝手に……抑えきれないのです!」
P「今度、め○ゃイケのアレに出てみるか?」
小鳥「……さぁ、そろそろ雪歩ちゃんが来るわよ。ビデオの準備も万端です」
ガチャッ
32:
雪歩「おはようございます。すみません、遅くなり……ひぃっ!?」ビクゥッ!
千早「うぅぅぅ……腰が……」サスサス
亜美「痛い……おまた、痛いよぉ……」シクシク
美希「ごほ、ゲホゲホ……おえっ……!」プルプル
伊織「く……あ、あら……雪歩……おはよう」ガクガクガク
雪歩「な、なんですかこれ!? 何があったんですか!?」
34:
P「すぐ知る事になる。大丈夫……床にマットは敷いておいた」
雪歩「何……わぁっ!?」
貴音「萩原雪歩……本当に、本当に申し訳ございません……!」ググググッ
小鳥「あ、あの体勢は……もしや!」
P「ええ、間違いない!あれは……」
小鳥・P『キ○肉バスター!!』
38:
雪歩「ひぃやぁぁぁぁっ!? お、下ろして! 下ろしてくださぁい!」ジタバタ
P「しかもいつものワンピース姿でのキ○肉バスター! 純白の聖域が開かれています!」
小鳥「フリル付き、しかもサイドは紐です! 最高ですよ、これは!」
真「う、うわ……うわぁぁ……」ドキドキ
響「い、意外にスゴいの穿いてるぞ……」ドキドキ
雪歩「こ、こんなのいやですぅ! 見ちゃだめぇぇ!」
P「おや?」
小鳥「……ええ、抱え上げたまま一向にフィニッシュしませんね」
P「貴音……どうしたんでしょうね」
42:
貴音「く、ぅぅぅ……!」ブルブル
雪歩「し、四条さん?」
貴音「駄目です……このまま叩き付けてしまっては……!」ガクガクガク
P「ま、まさか……技への欲求に抵抗しているのか!?」
小鳥「この土壇場で、何という精神力!」
貴音「これ以上……仲間を……傷付けさせは、しません!」ガク…ガクッ……
雪歩「四条さん……やっぱり……」
P「いや、しかしこれは」
小鳥「ええ……タイミングがまずいですよ」
43:
雪歩「み、見られちゃってますぅ! 下ろして! っていうか早く終わってくださいー!」ジタバタジタバタ
貴音「ふぬぉぉぉ……! そ、そうは……させ……」ブルブルブル
響「なぁ、これって」
真「うん……さらし者だよね」
P「貴音! もうフィニッシュしちゃえって! 公開処刑になっちゃってるから!」
小鳥「完っ全に裏目に出てますね、これ」
44:
雪歩「も、もう病院送りでいいですからぁ! お願いです、早く投げてください!」ジタバタジタバタ
真「あ、バカ……雪歩! 暴れるから、下着の……あ、あそこが……ずれ……」
響「も、もうちょっとで……はみ出しちゃうぞ……」
雪歩「い、いやあぁぁぁぁぁっ! 見ないでぇぇぇぇ!」
ズドオォォォン!
46:
――――――――
P「結局、雪歩は股関節を酷く痛めて二週間は絶対安静」
P「最後には高木社長にスピニング・トーホールドまで決めた」
P「だが、貴音もいつも通りに戻って、今はようやく穏やかな日常を取り戻した」
P「アイドル達も、しばらくは誰かが後ろに立つのを警戒していたようだが」
P「今は平和なものだが、俺はたまに貴音に頼んで技をかけてもらっている」
P「ちなみに、今日は三角締めを頼むつもりだ」
終わり
4

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