美希「ハニーが奈落に落ちてから植物状態なの」back

美希「ハニーが奈落に落ちてから植物状態なの」


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6:
吾輩は猫である。名前はねこ太郎。
元はアイドル事務所でプロデューサーをやっていた。
春香を助けようとして奈落に落ちた俺は
お釈迦様に畜生道に落とされ、今は響のペットとして
なんとか食いつないでいる。
響「猫太郎!それじゃあ自分、仕事に行ってくるからな」
P「ニャー(俺も連れて行け)」
響「なるべく早く帰ってくるから寂しがらないでくれよ。自分も寂しいんだぞ」
響が動物の言葉を解するというのは、どうやら本人の思い込みらしい。
8:
しかし何故俺は畜生道に落とされたのか。
響の様子だと人間の俺はまだ生きているらしい。
死んでもいないのに畜生に姿を変えられたのは
不可解だ。
ハム蔵「よう、兄ちゃん。いや、プロデューサーとよんだほうがいいのか」
P「……!?ハム蔵、お前……」
ハム蔵「プロデューサーがなぜ猫なんぞになっちまったかは俺にもわからねぇ。
  しかしてめえの気持ちなら俺も少しはわかるぜ。なんせ俺も元は人間だからだ」
ネズミもどきの分際で恐ろしいことをいうものである。
しかし、俺がもとにもどるためのヒントも何かしらつかめるかもしれない。
いぬ美「俺も元は人間だった。とりあえず、今はあんちゃんもファミリーだ。
  自己紹介でもしていこうや」
10:
P「お前らは一体なにものなんだ!?」
いぬ美「俺は元官僚。職を辞し、バンドで食っていこうとしたが
  才能乏しく挫折した。それからというもの生活は日をおうて苦しくなり、
  妻子の衣食すらままならなくなった。ある日発狂し、気づけばこの姿に
  なり、響ちゃんに拾われた。以上だ」
P「山月記かよ」
へび香「俺は元縄師。不倫中のSMプレイで人妻を死に至らしめ、俺も後をおって死んだ。
  それだけだ。いまでも響ちゃんにまとわりついては、縄師の血が騒ぎ興奮する」
P「変態じゃねーか」
ハム蔵「俺のことは、まぁいい……さて、兄ちゃん、病院に行くぞ」
P「行くってどうやって……ドアもしまってるじゃないか」
へび香「なめるなよ、あんちゃん」
へび香は鍵を開けると、ドアノブに絡みつき、たくみにドアノブをまわした。
へび香「いきな、あんちゃん。なぁに、響ちゃんに悲しい顔をさせないためだ。
  それはあんちゃんにしかできないことだろう」
14:
ハム蔵「プロデューサーが入院しているのはここの三階だ。いくぞ」
病室に着くと、人間の俺が眠っていた。
包帯でグルグル巻にされでひどい姿である。
小鳥「プロデューサーさん……早く目を覚ましてください」
ずっと付き添っていてくれているのだろうか?
音無さんがベッドの脇でそうつぶやいていた。
春香「小鳥さん! プロデューサーさんは目を覚ましましたか!?」
音無さんは春香の方をみると悲しそうに頭をふった。
春香「私がかわりに落ちればよかったんだ……私が……」
違う、俺はプロデューサーとしての職務を果たしただけだ、断じて春香のせいではない。
そう声を掛けたくとも、今の俺は猫である。
ニャーという声以外は出せないのである。
20:
ハム蔵「状況は分かったかい。次は事務所にいくぞ」
そういってハム蔵は、俺の頭に乗り、俺を促した。
このネズミもどきは次は一体何を見せるつもりなのだろうか?
事務所までの道はいつもの道とは違って見えた。
人も建物もいつもより大きく見える。
こんな境遇でなければ楽しめたことだろう。
ハム蔵「ふむ、どうやらレッスン室にいるみたいだな。
  あすこのドアは開けられねえ。窓にまわるぞ」
猫の体は存外自由のきくもので、慣れてくると人間時代の方が
よっぽど不自由に感じてきた。
細い雨樋の上をバランスを取りながらわたっていき、窓の近くまで寄る。
レッスン室のなかでは何やら話し合いが行われているようだ。
中から千早の声が聞こえる。
23:
千早「春香、自分を責めすぎて、もうダメかもしれない……
 だからどうやったら春香を支えてあげられるのか、
 それを考えたの」
それから千早は、春香を支えるにはみんなの協力が不可欠なこと、
わたしたちはひとつの家族なんだということを、たどたどしくも熱く語っていた。
伊織「千早の言うことももっともね」
あずさ「最近忙しくて、みんなで一緒にいることすくなかったものね?」
貴音「目の前のことばかりにとらわれて、大事なことを見失っていたのかもしれません。
 にゅーいやーらいぶ、皆で団結し頑張りましょう」
美希「ハニーの目が覚めたとき、びっくりさせられる位、美希がんばっちゃうね!!」
千早「ありがとう……みんな……」
ハム蔵「分かったかい、プロデューサー。こいつらが頑張っているのはファミリーだからだ。
  そして今、プロデューサーと俺はファミリーだ。だからこうして協力してる。
  言っちゃあなんだが、プロデューサーが畜生道に落とされたのは自業自得だよ。
  あんたが春香ちゃんを助けたのは立派だが、あんた最近あの子の話、みんなの話を
  ちゃんと聞いてやっていたかい? お釈迦様のやることにゃ、何も間違いはねぇんだよ。
  人間に戻ったなら、こんどはちゃんと聞いてやんな。兄ちゃんはプロデューサーなんだからよ」
一体このネズミもどきの前世は何者だったのだろうか。
響の家に帰る道中、俺はずっとハム蔵の言葉を考えていた。
27:
響の家の前まで来たものの、ドアが開けられない。
ハム蔵、いや、いろいろなことを教えてくれたこのネズミもどきを
呼び捨てにするのは流石にもう気が引ける。
ハム蔵氏も困った顔をして、どうするか考えあぐねていた。
ハム蔵「インターフォンに手が届かねぇ……」
猫になってまだ日の浅いので、ジャンプしてもインターフォンまで届きそうにない。
仕方なく、響の帰りを待つことになった。
響「あれ? なんで猫太郎とハム蔵が外にいるんだ?」
弁解しようにも出来ないこの身が嘆かわしい。
響「自分がそんなに恋しかったのか。自分もだぞ、猫太郎、ハム蔵?」
響はそう言って俺たちを抱きしめて頬ずりしてきた。
夜になった。
響「それじゃあみんな、寝るぞー! おやすみ」
俺は自分がどうやったらもとの姿にもどれるのか分からず、
眠らないでハム蔵氏の言葉を考え続けていた。
30:
一週間過ぎても俺は相変わらず猫のままだった。
もっともハム蔵氏の協力なしでも外を歩き回れるくらいには
猫の暮らしも板についてきたので、今日は春香の家まで行くつもりである。
響の独り言の内容からして、春香は未だ仕事には出ていないらしい。
春香「私、なんでアイドルやってるんだろう……」
春香の声が窓越しに聞こえてきた。
春香「私のせいでプロデューサーさんはあんなことになっちゃうし
 事務所のみんなも昔と違ってバラバラだし……もういやだよぉ……」
くどいようだが、今の俺は猫なので春香の声には答えられない。
ただ猫以前はプロデューサーだったので、どうすればいいのか多分知っている。
俺は春香の家に忍び込むと、春香の携帯電話をくわえ、春香の前に姿を見せた。
春香「猫? どこから入って来たんだろう……?
 あれ? それ私のケータイだからダメだよ。
 ほら、返して……」
春香が近づいて来たからタンスの上に逃げた。
肉球が邪魔をして、うまくボタンが押せない。やっぱり猫には生きづらい世の中だ。
なんとか電話帳を開くと、俺は千早に電話を掛けた。
32:
春香「ほら、ケータイ返してよ。いい子だから」
千早が電話に出た。
千早「もしもし、春香!」
携帯を春香の上に落とす。
俺はしゃべれずとも、千早のあの時の思いが本物ならば
きっとうまく春香を救ってあげられることだろう。
春香「千早ちゃん……なんで……」
千早「おかしなこと言うのね、春香は。
 あなたから電話かけたんじゃない。
 まぁなんでもいいわ。私ね、ううん、みんな春香に話したいことがいっぱいあるの。
 続きは事務所にきてゆっくり話しましょう」
春香「でも、みんな仕事で忙しいんじゃ……」
千早「ふふふっ、今はみんな事務所にいるわ。それじゃあ、待っているから」
泣き顔なのに、春香の顔がみるみる明るくなっていく。
電話を切ると、春香は自分の顔を叩き、喝を入れ、俺にこういった。
春香「ありがとうね、猫ちゃん」
春香の家を抜け出すと、俺は事務所へと足を運んだ。
この姿じゃないと見れないアイドルの姿もある。きっとそのために俺は猫になったのだろう。
38:
事務所に春香が来ると、皆あたたかい言葉を春香にかけていた。
貴音「心配しましたよ、春香」
雪歩「もう大丈夫なんですか、春香さん」
春香「みんなごめんね、心配かけて」
美希「春香も戻ってきたことだし、あれやろ?
 ライブの前のあれやりたいの!」
伊織「美希にしてはいいこというじゃない」
そうして皆円陣を組むと、春香が照れくさそうに音頭をとった。
春香「それじゃあ、私、いっぱい迷惑かけちゃったけど、ニューイヤーライブに
 むけて、いっくよー。765プロ、ファイトオ!」
全員「オー!!!」
ようやく気づいたことがある。
一人でも欠けてしまえば765プロではないし、765プロの強みも弱みもこの団結力なのだと。
猫にならなければわからなかったことだろう。
ハム蔵氏のいうようにお釈迦様のやることにやはり間違いはないのだ。
完全に元気を取り戻した春香の姿を窓越しに確認して、俺はハム蔵氏のところに向かった。
43:
ハム蔵氏はドアの前で俺を待っていた。
ハム蔵「よう、答えが見つかったようだな。プロデューサー」
P「あなたがいなければ無理でした」
ハム蔵「もどり方はもうわかるな。病院にいきな、プロデューサー。
  お前はもう猫の身でやれることをやった。後は病院で自分の
  体に体当たりすればもとに戻れるはずだ……俺もさっきお釈迦様
  から聞いたんだが……」
P「はい。何から何まで、本当にありがとうございました」
ハム蔵氏に別れを告げると、俺は病院へ向かった。
気が急き、階段を降りるのがまどろっこしい。
おもいっきりジャンプした。
響「あれ?猫太郎、どうしたんだ?ってなんで飛びかかったくるんだよ?」
階段の下に響がいた。
落ちる体は止まらない。
俺は思いっきり、響の頭の上に落下した。
そこから意識はない。
響「あれ?自分、猫になっちゃったぞ」
44:
おしまい
即興適当乱文の三拍子でございますが読んでくれた方ありがとうございます
49:
良いところで終わっちまったね
乙でした
50:
乙っした
ぜひ何かまた書いてくだされ
51:

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