律子「はるかさんを実験材料にするって?」back

律子「はるかさんを実験材料にするって?」


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1:
P「さっき、厚生労働省から電話があって研究に使いたいから
 一匹分けてくれって」
律子「研究って何をするつもりなんですか?」
P「さあ?確かに水をかけると増えるとか夜中餌を与えると
 暗黒化するとか研究心をくすぐるんだろうな」
律子「一杯いるからお一つどうぞってわけにはいきませんよ?
 だいたい素人に扱えるシロモノと思えませんが」
P「とはいえ国家権力を駆使されると無下にでき無くてなぁ
 連中が来たらはるかさんの危険性を実証して帰ってもらえ」
律子「はいはい。あー、また面倒が増えたわ」
はるかさん「かっかー」
2:
――翌日――
男「先日連絡いたしました厚生労働省のものです。
 あとこちらは東京大学教授の財前先生です」
財前「よろしく」
律子「あー、あのはるかさんを引き取りたいという・・・
 持って帰っても手に負えないと思いますよ?
 水をかけると増えますし、やってみましょうか?」
財前「お願いします」
律子「はるかさん?こっちおいで?」
はるかさん「かっかー」
ジョボジョボ



ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!
3:
律子「ど、どうですかあっという間に事務所が埋め尽くされるくらい瞬く間に増えて・・・」
P「律子!元に戻してくれ!窒息する!」
律子「戻れ!」
ヒュン
P「ふう、死ぬかと思った。お、ゆきぽは穴掘って逃げてたか。抜け目ない奴め」
律子「これは私がたまたま元に戻せますけどそうじゃなかったら非常事態になりかねませんよ?」
財前「・・・素晴らしい。生物学の、いや物理学の常識さえ超越している。
 これは早研究に取り掛からなければ」
律子「はぁ?これを見てもまだ持ち帰る気ですか?」
財前「我々もいきなり水をぶっかけたりはしない。炭酸水で必要な分だけ増やす予定だ」
律子「必要な分って・・・研究って何をするつもりですか?」
男「それは君の知る必要のないことだ」
財前「待ちたまえ。こちらの内容を伏せるのはフェアではない。何もやましいことをするわけではないのだから
 堂々とすればよいのだ。」
男「しかし・・・」
4:
財前「いいから。まず第一にクローン技術に応用できるのではないかということだ。例えば畜産などに応用
 出来れば世界中で食糧の心配が無くなる。」
律子「そんなことが可能だとでも?」
財前「勿論出来ると断言はできないし現時点での人類の叡智では解析不能かもしれない。しかし
 もっと単純に見極められることもある」
律子「はぁ、なんでしょうか?」
財前「このはるかさん自体が食料に出来ないかということだよ」
律子「・・・・・なんですって?正気で言ってますか?この子を食べるって?」
財前「勿論常食にする気などはないさ。見た目上は人間の子供のような容姿で道義的にも
 食用にするのは許されないだろう。だが、災害というのはいつどのように起こるか分からない。
 万が一の時のため今のうちに食用に適するかどうか見極めておくのは必要だろう。
 我々もその万が一が起こらないことを祈ってるがね」
律子「吐き気がするわ。お引き取り願います」
男「きみ!我々をなんだと思ってるんだ!我々の手にかかればこんな事務所の一つや二つどうにでもできるのだよ!」
財前「やめたまえ。我々も強硬手段に出ようと言うつもりはない。だが、あなたが引き下がらないなら考えを改めなければならない。
 別の観点から物を見よう。はるかさんは兵器に転用できるとは思わないかね?いや、まずそちらを先に考えるのが普通かも
 知れなかったな。もちろん我々がはるかさんを使って兵器を作ろうってことじゃないよ?
 ただ、諸外国にもはるかさんのような生命体がいた場合、諸外国がそうしないという保証はどこにもない。
 なら我々は今のうちに徹底的にはるかさんの素性を調べ上げるべきではないか?」
5:
律子「空から何万匹のはるかさんが降ってきても私が一匹に戻しますよ」
財前「それはあなたが生きているという保証があればだろう?国というのは一個人が明日も明後日も必ず生きている
 などという前提では動かないのだよ。それにあなたが生きているという保証があったとしても
 今度はあなたに莫大な権力が生まれてしまう。あなたがあまりにはるかさんの引き渡しを拒むなら
 それはあなたが莫大な権力を掴みたいからと解釈して話を進めていかないとならないな」
律子「そんなわけないでしょ!この子を食用だとか軍事転用だとか馬鹿げたことを言うから
 そんなの同意できないって当たり前のことを言っているんです!!自分たちが正しいと言うなら世間に問えばいいんですよ!
 緊急事態になったらこの子を食べますかって!」
男「この飽食の日本でそんなことを問うてもセンチメタリズムが優先されて正しい回答が得られるとは思えないな。 
 実際に緊急事態にならないと。我々の使命は万が一に備えることなのだよ。災害が起こってからあーすればよかった
 こーすればよかったなどと極力言われないようにするのが仕事なのだ。食用というが食用には適さない可能性も
 充分に高いのだよ。」
律子「そうは言っても一回は食べてみるってことには変わりないじゃないですか!あなた方の高尚な使命は
 秋月律子には届きませんでした。はい、おしまい」
財前「なら、あなたははるかさんがの素性をどこまで完璧に把握しているというのかね?水をかければ増殖するという
 我々の常識を超越した性質があるのだよ。これ以上何も無いと断言できるのかね?」
律子「そんなことわかるわけないじゃないですか!ただ、問題はすべて765プロの中だけで抑えていて
 余所様には迷惑をかけていないはずです!」
6:
男「君は先ほどからえらく感情的になっているが炭酸水をかけて一匹増やして増やした分を我々が持ち帰る
 だけなんだぞ?一匹しかいないものを持ち去ると言うのではないのだ。客観的に見て君が失うものは
 無いはずだが?」
律子「わたしははるかさんが見知らぬ研究室で実験台になるのが嫌だと言っているんです!物理的に増えた減った
 の問題じゃないんです!」
財前「余所様には迷惑をかけていないはず・・・か。だが、ここまで人智を超えているのだ。ある日突然はるかさんが
 無限増殖をしないとどうして言える?あなたの手にも負えなくなることはないとどうして言いきれる?」
律子「はぁ、今来たばかりのあなた方には分からないかもしれませんがこう見えて私たちははるかさん達ぷちどる
 とは信頼関係があるのですよ。イタズラ好きですけど超えてはいけない一線はしっかり守ってるんですよ。
 はるかさん達が人間に害を及ぼすことなんてありませんよ!」
財前「ならこうしよう。あなたに選択権をあげよう。一つ目ははるかさんを増殖して我々に一匹引き渡してもらう。
 二つ目はあなた自身ではるかさんを駆除してもらう。三つ目は裁判所で会おう、この三つだ」
律子「はぁ?駆除ですって?私にこの子を殺せというの?」
財前「その通りだ。我々にとっては非常に残念な話だが、未知の生命体に対する正しい処方ともいえる。
 そしてここは法治国家だ。司法に委ねるというのもまた尊重する。明日また来る、その時に
 あなたの判断を聞かせてほしい」
男「なあ、秋月君。提供してくれたなら一生不自由しないだけの金銭の保証はするし、この事務所の
 便宜を色々と図ろうじゃないか。今日のところは失礼する。賢明な判断を期待するよ」
バタン
7:
律子「くそったれーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
はるかさん「かっかー」
P「ご、ごめん律子、俺何も口を挟めなくて・・」
律子「ああ、いいんですよ。結局私も論破できなかったですし」
P「それでだな、このことを伊織に話してみたんだ。そしたら伊織の父親って総理ともパイプがあるらしく
 そっちから圧力をかけてみるって」
律子「ほう!国家権力には国家権力ですか!それは期待できますね!」
P「それだけじゃないぞ、東大総長ともパイプがあるらしくてそっちからも話を通してくれるって!」
律子「なあんだ、じゃあ万全じゃないですか。偉そうなことを言ってたけど明日はもう来ないかもしれませんね」
P「そうだな。いや?伊織様様だよ。しばらくは頭が上がらないな」
はるかさん「かっかー」
8:


春香「へー、そんなことがあったんですか」
律子「ええ、今は伊織の父親が話を付けてくれている頃だと思うわ」
春香「いや?この子どことなく私に似ているから食べられちゃうのはさすがに、ねぇ」
P「一時はどうなる事かと思ったけどこれで一安心だな」
春香「ふふ、プロデューサーさんも私を食べてみたいって思っちゃったりします?」
P「いや?俺はどっちかというと美希のたわわに実った青い果実の方が・・ほげあr!」
伊織「パパから連絡があったわ。なんでアンタ泣いてるの?」
P「これはちょっとした事故がありまして。ああ、お疲れさま。今度何かお礼に伺わないと」
伊織「落ち着いて聞いてほしいんだけど、結論から言うとどっちも無理だったわ」
律子「え、どうして?」
伊織「まず総理の方は東大のそれも医学部の事情に口は挟めないそうよ」
P「なんじゃそりゃ、それでも国家元首かよ」
伊織「あと東大総長にも拒否されたみたいだわ。理由が知りたければ総長が自ら答えるから
 電話してくれって」
律子「いいわ、私が電話します。伊織、番号教えて」
9:
prrrrrrr
女「『はい、こちら東京大学総長秘書室です』」
律子「『お世話になっています。私、秋月律子と申します。水瀬の紹介でと言えば通じると思いますので
 総長にお代わり願いますか?』」
女「『かしこまりました。少々お待ちください』」
総長「『はい、電話代わりました』」
律子「『秋月律子と申します。早ですが・・』」
総長「『ああ、あの件か。わたしは法学出身でね、医学部には口出しできないのだよ。話を聞く限り財前君の
 主張には正当性があると思うし、何より医学部というのは独立国家みたいなところで外部の人間が
 どうこういう場所じゃないのを理解してほしい。それに財前君は優秀な論文を幾つも発表して
 世界的な評価も高い。この前もコペンハーゲンでの学会では・・・』」
律子「『いえ、そのような話は結構です。単刀直入にお願いします。財前教授の暴挙を止めていただけませんか?』」
10:
総長「『君は何か誤解しているね。総長というのは大学の長であっても独裁者ではないのだよ。
 東大医学部というのは大学の一機関であると同時に日本医学界の頂点でもあるのだよ。
 経営やカリキュラムに口を出すことがあっても研究内容にまで口を出すのはお門違いと言うべきか。』」
律子「『つまりはご協力頂けないと、そういうことですか?』」
総長「『率直に言えばそういうことになるな。世の中にはそういった治外法権的な場所は幾つもあるのだよ
 それは理解してほしい』」
律子「『そうですか・・・・お手数おかけしました』」
ガチャン
11:
P「その様子だとあまりいい返事じゃなかったみたいだな」
律子「ええ、すごい及び腰だったわ。この世で一番偉いのは東大医学部の医学部長なのかしら?」
伊織「うちのパパでも話が通らないなんて東大医学部教授ってすごいのね。将来結婚するなら東大医学部の教授にしようかしら?」
P「いや、多分縄張りがあるだけであちらさんも経済界とかにはそんなに強くないと思うぞ?
 それより伊織、アメリカ海兵隊とかローマ法王とかに知り合いいないか?」
伊織「あるわけないでしょ!うちをなんだと思ってるのよ!」
春香「普通に裁判したらどうですか?はるかさんのこの愛くるしい姿を見たらきっと裁判長だって・・・・」
はるかさん「かっかー」
P「裁判か・・・。負けたら合法的に連れて行かれるんだぞ。その上ではるかさんを匿ったら我々は犯罪者だ」
春香「でもでも、水瀬財閥がバックに付いているなら少なくても持久戦に持ち込めるんじゃ?」
伊織「言っておくけどうちのパパ、この件からは手を引かせてほしいって。やっぱり医者と喧嘩するのは嫌なのね」
春香「ええ??そんな?」
律子「とにかく明日までに対策をしないと。千早とやよいはまだいるわね。彼女たちにも意見を聞きましょう」
12:



やよい「あの?、そろそろ帰らないとタイムセールが終わっちゃいます」
千早「ちひゃーが眠そうにしているからそろそろ帰りたいんだけど」
律子「みんなの知恵が欲しいの。怒らないから率直な意見を聞かせて」
カクカクシカジカ
やよい「ええ!はるかさんって食べることが出来たんですか!」
春香「なぜそうなる」
律子「いや、食べられると決まったわけじゃないわ。もしもの話よ」
やよい「でも、食べることが出来たら毎日水をかけるだけで食材が湧いてくるってことですよね!
 夢の永久機関です?。家計大助かりです!」
律子「聞く相手間違えたかしら」
P「財前教授の言い分もすこーしだけ理解できてしまうな。人間、あまりに空腹だと愛らしさより
 空腹を満たす方を優先してしまうのかも」
律子「落ち着いて考えてやよい、この子が仮に食べられるとして、じゃあ今日は刺身にするかとか
 そういう気持ちになれる?」
はるかさん「ヴぁ?い」
14:
やよい「どういうことですか?水をかければ増えるんですよね?増えた分を食べても元本割れしないですよね?
 無駄な殺生はいけないと思いますけどこの場合はキチンと食物連鎖になってるし」
伊織「決めたわ。私今後一切やよいには逆らわないようにするわ」
千早「高槻さんの言うことも一理あるわ。例えばはるかさんが豚みたいな姿形をしていたら
 間違いなく食用にすることを考えたでしょう。姿が愛らしいからなんていうのは
 結局個人的な感情によるもので万人の同意を得られるとは限らないわ」
春香「豚みたいってひどいなぁ千早ちゃん」
律子「じゃあやよいと千早はおとなしく引き渡せ派なの?」
千早「そうではないわ。個人的にはこの子が食べられるなんていくら増やすことが出来ても忍びないわ。
 かといって裁判をやっても負けそう。ならば残りの手段は一つよ、処分するしかないわ」
春香「げぇっ!千早ちゃん本気で言ってるの?」
千早「勿論それは建前よ。なんなら逃げられたと嘘をついてもいいわ。処分したふりをして匿うの。」
15:
P「う?ん、だが奴らも死体でも見せなければ信じないだろうしなぁ」
千早「そうね、だからこの事務所に隠しても家捜しされるだろうから駄目だし誰かの家も危険だわ。
 下手な場所に探すとこの特異体質のせいで普通に見つかってしまう可能性が高い」
春香「じゃあ、どうすればいいの?」
千早「・・・・・元居た島に戻しましょう。あそこなら見つかる心配無いでしょうし、元々そこで暮らしていたんだから
 生活に困るということもないでしょう」
伊織「千早に賛成ね。いいわ、私が連れてきてしまったんですもの私が帰しにいくわ」
律子「・・・・私も行くわ。途中ではるかさんが増殖してしまっても伊織じゃ元に戻せないでしょ?」
16:



伊織「さあ、ヘリが来たわ。急いで行くわよ。今晩中に戻さないと奴らに見つかるわ」
春香「せっかく仲良くなれたと思ったのに・・・・元気で暮らすんだよ」
はるかさん「ヴぁ?い」
伊織「みんな、お別れの挨拶は済んだわね?律子、乗って。出発するわよ」
17:
――無人島にて――
律子「そう、このお堂にこの子はいたのね」
伊織「今にして思うとだれかがここに閉じ込めたのね。水に濡れたら増えるなんて厄介なもの放っておけないもの
 それで私がパンドラの箱を開けてしまったというわけ」
律子「じゃあね、はるかさん。元気で暮らすのよ。たまには会いに来るからね」
はるかさん「ヴぁい」
伊織「じゃあ、帰りますか」
ピョコピョコ
律子「・・・・・」
伊織「・・・・・」
ピョコピョコ
律子「付いてきちゃ駄目でしょ!そりゃあ、連れてったのは私たちのエゴだけどここにいるのが
 あなたのためなの、お願い分かって」
はるかさん「ヴぁい」
18:
律子「そ、それじゃあね」
ピョコピョコ
律子「・・・・・」
伊織「・・・・・」
ピョコピョコ
律子「だ・か・ら!お願いだから、これ以上私を悩ませないで・・・・」
伊織「律子、ダッシュでこのお堂から出るわよ。その子にはこの扉を開ける力が無いみたいだから
 出た瞬間、扉を閉めるわ。振り返るのも無しよ」
律子「・・・・・・了解」
ダッ!



バタン!
19:
伊織「予想通り扉を開けられないみたいね」
はるかさん「ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い」
律子「あの子泣いているわ、閉じ込められたって、私たちに捨てられたって泣いているわ」
伊織「律子、変なこと考えてないでしょうね?これが最善だって決めてこの島に来たんでしょ?」
律子「決めたわ。私もここに残ってはるかさんと暮らすわ。後のことはよろしくね伊織」
伊織「バカなこと言ってるんじゃないの!首に縄を付けても連れて帰るわ!戻るわよ!」
20:
――事務所にて――
伊織「ただいまよ」
律子「・・・ただいま帰りました」
P「おかえり。さすがに春香と千早とやよいは帰したぞ。お前たちも早く帰ったほうがいい。
 今日は色々あったからな」
伊織「私は迎えが来ているけど、律子、家まで送るわよ」
律子「私はいいわ・・・。今日は事務所で寝るわ」
P「今日は好きにさせるけど・・・体を壊すなよ、俺も帰る。今日はお疲れさま」
バタン
律子「(悲しいはずなのに何故か泥のように眠ってしまいたい・・・)」
ZZZ
21:



チュンチュン
律子「(もう朝か、人はどんなに悲しくてもしっかり寝てしまうものなのね)」
はるかさん「ヴぁい」
律子「あら、はるかさんおはよう」
はるかさん「ヴぁい」
律子「・・・・って、ええ?!?」
P「ど、どうした律子!って、ええ!!お前、はるかさん戻してきたんじゃなかったのか!」
律子「戻してきましたよ!でも何故かここにいるんです!」
22:
伊織「騒がしいわね、どうしたのよ・・・・・アレ?」
律子「私たちちゃんとお堂に戻してきたわよね、伊織!」
伊織「そ、そうね。どういうことかしら?」
千早「おはようございます。朝っぱらから賑やかで765プロは平和ですね」
はるかさん「ヴぁい」
千早「おや?島に返してくるのは止めたんですか?それもいいでしょう。財前教授相手なら
 裁判やっても何故か勝てそうな気がしますしね。ウフフ」
P「いや、違うんだ千早、実はな・・・・」
23:



千早「なんだ、じゃあ、可能性は二つですね。一つはあずささんのようにテレポテーションする能力があって
 ここまで瞬間移動してきた」
P「さすがにそんな能力があったら気づくだろ」
千早「ですね。だったらもっとシンプルに。律子たちが島に戻しに行く前にすでに分裂していて片方、
 つまりこの子はどこかに隠れていた。」
P「そう考えるのが自然だな」
千早「とにかくはるかさんがここにいるのは面倒です。律子、統合してみてもらえませんか?
 どちらに統合されるか分かりませんが上手くいけば島にいる方に統合されます」
律子「そ、そうね。戻れ!」
24:



はるかさん「ヴぁい」
P「駄目か?」
千早「こちらのはるかさんに統合されてしまったのか、それとも遠距離では律子の能力が効かないのか・・・」
伊織「御託はいいわ。ヘリ呼んだからもう一回飛ぶわよ」
25:



伊織「ただいま」
律子「ただ今戻りました」
P「何度もおつかれさん」
伊織「結局お堂にはいなかったわね。律子の能力ってすごい広範囲で効くのね」
律子「それとも本当にテレポテーションの能力があるか、ね」
26:
コンコン
P「はい」
男「おはようございます。早ですが昨日の返事、聞かせてもらえますか?」
律子「・・・あの子は逃げてしまいました。本能的に危険を察知したのでしょう。
 気づいたらいなくなっていました」
財前「それは本当かね?嘘をついて匿っているのではないかね?」
律子「失礼ですね!どうぞご自由にお探ししてください。見つけたら一匹贈呈いたします」
財前「本当かね?我々を騙しているんじゃないのかね?」
律子「騙してなんていません!気が済むまで家捜ししたならお引き取りくださいね!」
財前「ふむ、ではあなたの肩に乗っているのは何かね?」
律子「・・・・・・え?」
はるかさん「ヴぁい」
27:
律子「ちょ、あ、いやだ、この子ったらいつの間に戻って!」
財前「ハハハハ、いいのだよ犬なども気づいたら戻ってきていた、なんてことは良くあることだからね。
 あなたが嘘をついていただなんて微塵も思っていないよ。ただ、約束だからね、
 はるかさんは分けていただくよ」
律子「ちょっとはるかさん!瞬間移動できるなら今すぐどこかに移動しなさい!」
財前「ほう、はるかさんは瞬間移動もできるのかね?ますます興味深い。男くん、逃げられないうちに
 早炭酸水の用意をしたまえ」
男「すでに準備はできています」
財前「よろしい。秋月君、異存はないね?あなた自身が提案したことなのだよ」
律子「あうあうあ」
ジョバジョバ
ポンッ!
財前「素晴らしい。それでは片方頂いていく。それでは今後ともよろしく頼むよ」
はるかさん「ヴぁ?い」
男「それでは失礼しました」
バタン
28:
律子「・・・・・・」
P「・・・・・・・」
はるかさん「かっかー」
律子「ああ!なんてこと!まさかこんなことになるとは!」
伊織「残念だけどもう打つ手なしだわ」
律子「はっ!もう一回統合してみればいいんじゃないかしら!?上手くすればこっちの
 はるかさんに統合されるわ。財前教授には一度引き渡しているから再要求はできないはず!」
P「落ち着け律子!あっちのはるかさんに統合されたらそれこそお手上げだ」
律子「でも私の近くにいる方のはるかさんに統合されるんじゃないかしら?」
P「だから落ち着いて考えるんだ律子!都合よく考えるのは負けフラグだぞ」
律子「はっ!研究だのなんだのいってたけどきっと本当はペットとしてうちで飼いたいんだわ。
 大学教授の見栄が研究だとか言わせちゃってるのよ!はるかさん愛くるしいから仕方ないわね?」
29:
P「アカン」
伊織「もう律子は駄目ね。しばらく休ませた方がいいわ」
はるかさん「かっかー」
P「仕方ない、我々だけではるかさん奪還作戦を考えよう」
伊織「ええ?あなたまだやる気なの?」
P「当たり前だろ。仲間を助けるのに諦めるなんて言葉は必要ないね!」
31:
――財前教授の研究室―― 
研究員「教授、被験体を6体まで増殖しました」
財前「よろしい。まずは被験体1号は堅牢な檻に入れ食事を与えず観察しろ。経過報告は毎日だ。
 もしかしたら自力で増殖して共食いを始めるかもしれない。」
研究員「了解しました」
財前「2号も堅牢な檻に入れろ。そしてこれにはなるべく直射日光を当てるようにしろ。
 さらに集光レンズなどで日光を増幅させて当てた場合より過剰な反応をするのか観察しろ。
 また、死亡したのならどのくらいの時間日光が当たっていたのか報告するように」
研究員「了解しました」
財前「3号は解剖だ。自身の血を浴びても増殖する可能性があるので慎重に行うこと。
 また、組成が既知の生命体と同一視することはできないが脳があるなら脳を外しても
 生命活動を行うのか心臓があるなら心臓を外しても生命活動を行うのか実験すること」
研究員「了解しました」
32:
財前「4号は致命傷の実験だ。もしこの被験体が敵性だった場合、どのような攻撃が最も有効なのか探る。
 頭蓋を銃撃すれば死亡するのか?首を刎ねれば死亡するのか?火炎放射器で全身を焼き尽くせば
 死亡するのか?電流を流せば死亡するのか?ありとあらゆる方法で探れ。また死亡した場合
 死体に炭酸水をかけても増殖するのか実験するように」
研究員「了解しました」
財前「5号はその・・・テレポテーションの実験だ。半信半疑ではあるがこれまででも十分に物理現象を無視しているのだから
 これもありえないと断定することはできない。ただし、友好な関係を結んだ相手にしか見せない特性かもしれないので
 この実験には私のかかりつけの床屋の娘さんに協力を仰いだ」
秋山殿「自分は秋山優花里であります!お国の軍事機密に参加できて光栄であります!」
研究員「え?」
33:
――事務所にて――
P「というわけで律子は自己嫌悪やら色々な感情が渦巻いて大変なことになっているので休んでもらっている
 我々の知恵と勇気でなんとかしよう!」
千早「インターネットで大学がこんな酷いことをしていると書き込めばいいんじゃないでしょうか?」
P「都市伝説扱いで終わるな」
春香「じゃあ、テレビに出た時はるかさんも連れて行ってこの子の仲間が実験材料にされそうです!助けてください!
 ってアピールするのはどうでしょう?私たちが芸能人の特権をフルに使わないと!」
P「ちなみに春香と千早はテレビに出る予定全くないな。直近の仕事は村祭りのセミメインゲストだ。」
春香「とほほ・・・村祭りでもメインゲストになれないなんて」
P「ちなみにテレビ出演の予定があるのはやよいと美希だけだな」
伊織「やよいは駄目ね。思考が向こう側寄りですもの。」
P「しかたない、美希に頼んでみるか。他の案も考えてみてくれ」
34:
――財前教授の研究室―― 
財前「どうだね?1号の様子は」
研究員「はい、まだ数時間しか経っていませんので全く変化なしといったところです」
はるかさん「かっかー」
財前「2号はどうかね?」
研究員「はい。本日は曇天ですので全く日光は当てられません。なお、ハロゲン光、赤外線などを当てているのですが
 人工の光源では全く効果ないようです」
はるかさん「かっかー」
財前「3号の結果は出たかね?」
研究員「それがその・・・。切った瞬間に何故か修復してしまうので全く解剖ができません。
 恐ろしいほどの自然治癒力です」
はるかさん「かっかー」
35:
財前「4号はどうかね?」
研究員「それが機関銃で打ち抜いても100tプレスで圧縮しても放射性物質を当てても全く意に介しません。
 正直、こんな化け物が敵だったら嫌ですね」
はるかさん「かっかー」
財前「5号の様子はどうかね?」
秋山殿「すっかり打ち解けてもう仲良しさんです!さっきもお弁当を一緒に食べたところであります」
財前「ちなみに5号は生肉を食べるのか?」
秋山殿「な、生肉ですか?食べるのかもしれませんが正直この子が生肉を食べる姿は想像したくありませんね・・・」
はるかさん「かっかー」
36:
――事務所にて――
美希「ただいまなの」
P[おお!お帰り美希!早で悪いがちょっと頼みたいことがあるんだ」
美希「プロデューサー、なんで今日の美希のライブ来てくれなかったの?」
P「あー、それは悪かった。だがこっちも緊急事態だったんだ分かってくれ。で、頼みというのはカクカクシカジカ」
美希「ふーん、でも美希やんないよ?」
P「なんでだ!一緒に暮らした仲間だろう!見捨てると言うのか!」
美希「見捨てられるのは美希なの。美希の両親は公務員なの。国に喧嘩を売ったらクビになっちゃうの。
 それに美希も干されてアイドル生命は断たれるの。はるかさんを助けたい人が自分のアイドル生命を
 賭けて助ければいいの。美希は路頭に迷うのは真っ平御免なの」
P「この・・・美希っ!」
バッチーン
37:
美希「・・・・気が済んだ?プロデューサー」
P「お前がそんな薄情な奴だとは思わなかったよ」
美希「そう。美希はもう帰るね」
千早「み、美希!」
美希「なあに?千早さん」
千早「今日はお疲れさま。ゆっくり休んでね」
美希「千早さんも巻き込まれ事故には注意してね」
バタン
38:
春香「ハハッ、美希ってばきっとヤキモチ焼いているんですよ!頭冷やせばきっと分かってくれますって」
千早「プロデューサー。後でちゃんと美希に謝ってください。許してもらえないかもしれませんが
 許してもらえるまで謝ってください。私は心底プロデューサーを見損ないました。
 が、最初から大して期待はしていませんでしたからそれほどショックではありません。
 でも美希はあなたに期待して夢を見て裏切られたんです。そのショックのほどは計りしれません」
春香「ち、千早ちゃん。言いすぎだよ。プロデューサーさんも悪気があってやったわけじゃないんだし」
千早「悪気が無い?だからなんなのよ。それを言ったら財前教授だって悪気なんてないんでしょうよ。
 彼は彼なりの正義に基づいて行動しているのでしょ?」
春香「千早ちゃん、落ち着いて、ね?美希だって話せば分かってくれるって。はるかさんこんなに愛らしいんですもの。
 ただ、今日プロデューサーさんが来てくれなかったから拗ねちゃっただけ。それだけだよ」
千早「美希のあの態度を見てもまだそんなことを言うの?いいわ、だったらあなたが力ずくで取り返してきなさいな。
 武装して財前教授を半殺しにして人質にすればきっとはるかさんを解放してくれるわ」
春香「ちょっと極端だよ千早ちゃん。そんなことをしたら私が捕まっちゃうって」
千早「それがなんなのよ。美希に人生を棒に振れと強要できるなら自分の人生を棒に振る覚悟もあるんでしょうねという話じゃない。
 勿論わたしにそんな覚悟はないから美希に強要はできないわ。どうなの春香?水をかければ増える子のために
 あなたは人生を捨てることができますか?」
春香「それ以上言うと千早ちゃんでも許さないよ」
千早「私がいつあなたに許しなんか乞うたかしら?」
伊織「やめやめ?。今日はプロデューサーも千早も春香も帰った帰った。こっちが仲間割れしてたんじゃできるものもできないわ」
39:
――財前教授の研究室――
財前「さて、夜になってなんか変化はあったかな?1号の様子はどうだね?」
研究員「はぁ何故か体長が途轍もなくでかくなりました。餌を与えていませんからエネルギー消費を抑えるために
 小さくなるというのならまだ理に適うのですが大きくなるのは意味不明です。大きくなった原因は
 全くの不明です。」
財前「一見理解不能なことでも必ず原因というものはある。引き続き観察を続けたまえ」
はるかさん「かっかー」
財前「2号の様子はどうかね?」
研究員「はい、それが・・・・。餌を与えたのですが文字通りの意味で目の色が変わり、泣き声も変化しました」
はるかさん「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
財前「ちなみに何を与えたのかね?秋山君が食事を与えてもそのような変化の報告はなかったが」
研究員「アンコウ鍋です」
財前「そのチョイスは置いとくとして・・・。与えたものに原因があるのか、時間によるものか、個体による特性の違いか・・・
 引き続き観察をしてくれたまえ」
はるかさん「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
40:
財前「3号の様子はどうだね?」
研究員「はい、とりあえず解剖は置いといて遺伝子の解析に入りましたが・・・・。意味不明です。そもそも
 これは本当に遺伝子なのかというレベルで意味不明です。」
財前「ふむ。引き続き解析を進めたまえ」
はるかさん「かっかー」
財前「4号の様子はどうだね?」
研究員「はぁ、ありとあらゆる物理攻撃が効かなかったので極秘で入手したデスノートに記入したのですが
 時間になっても死にませんでした。もしかしたらはるかさんというのは本名じゃないのかもしれません」
財前「それ、人間以外にも効くの?だいたいどこでそんなの拾ったんだよ」
はるかさん「かっかー」
41:
財前「5号の様子は・・・って秋山君は帰ったか。良く考えたら普通の女子高生だしな。」
はるかさん「ヴぁ?い」
財前「ふむ。5号は見た目変化はないな」
カプ カプカプ
財前「うお!こいつ噛みやがる!攻撃か?これがこいつらの攻撃方法なのか?」
カプカプ
財前「噛んでは来るが・・・・甘噛みで全く痛くない」
はるかさん「ヴぁ?い」
財前「どうした?私が憎いなら本気で攻撃してきたまえ、この化け物。」
はるかさん「ヴぁ?い」
 
財前「お前もしかして、秋山君が帰って淋しいのか?」
はるかさん「ヴぁ?い」
財前「そうか・・・・一人ぼっちは淋しいもんな」
はるかさん「ヴぁ?い」
42:
財前「そんなわけで5号には1週間餌を与えられず餓死が迫ってきた虎の母子を入れた
 特製の檻を用意したよ!」
はるかさん「ヴぁい!?」
財前「では5号友達になってあげてくださーい」
ポイ
はるかさん「ヴぁ、ヴぁ、ヴぁ、ヴぁ、ヴぁい!?」
財前「ふう、良く考えたら食肉に出来るかどうか実験していなかったな
 あ、そこの研究員君、私はもう寝るので5号の観察頼んだよ」
研究員「了解しました」
はるかさん「ヴぁ????????????????い」
43:
――事務所にて――
伊織「おはようっと。あらいやだ、まだギスギスしているの?」
亜美「いおりんようやく来た?。空気が悪すぎて亜美たち耐えられないよ?」
はるかさん「ヴぁい」
伊織「ちょっとあなた今頃仲間?が酷い目に遭ってるかも知れないのに平気なの?」
はるかさん「ヴぁい」
真美「ねぇいおりん、はるかさん助けに行こうよ?」
伊織「そうね。亜美と真美が涙目で訴えればあの教授も折れるかもしれないわね」
亜美「本当??真美ぃ、行ってみようZE」
真美「ラジャーだよ」
亜美「ねぇいおりん」
伊織「私は行かないわよ」
亜美「やっぱり灯台って海の方にあるのかな?」
44:
――財前教授の研究室――
亜美「ここだね、真美」
真美「そ、そうだね。どうやって中に入ろうか?」
研究員「おい、そこの子供たち。ここは遊び場じゃないんだ。とっとと帰りなさい」
真美「真美たちね、はるかさんに会いに来たの。キョージュに会わせてくれないかな?」
研究員「ハルカサン?ああ、あの被験体のことか、おっといけね、財前教授はお忙しいのだ
 さっさと帰りたまえ」
財前「まあ、そんなこと言わず入れてあげたまえ」
研究員「教授!ですが!」
真美「おお!話が分かるぅ?」
財前「だけどここのものはすべて重要機密だ、ここで見たり聞いたりしたものは一切口外しない。
 そして我々の研究には口出ししない約束できるかね?」
亜美真美「アイアイサ?」
45:
財前「1号の様子はどうかね?」
研究員「はい、朝方にまた体長が元通りになりました。原因は相変わらず不明です」
はるかさん「ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い」
亜美「ねえ、キョージュはるかさん泣いてるよ?多分おなかが空いているんだよ」
財前「そうだろうな、もう丸1日餌を与えて無いからな」
真美「ちょ、マジ?可哀想だよ?ご飯あげようよ?」
財前「そうはいかない。これは被験体が餓死するまで何日間かかるかの実験なのだから」
亜美「アレ?亜美よく聞こえなかったや。餓死するとかに聞こえちゃった」
財前「なんだ、ちゃんと聞こえてるではないか」
亜美「ちょ、ちょっと酷いよキョージュ!はるかさんに何か恨みでもあるの?」
財前「我々は恨みつらみで研究したりはしない。それに口を出さない約束だったはずだが」
亜美「ぐ・・・・・・」
46:
財前「2号の様子はどうだね?」
研究員「はい、朝方に暗黒化が解除されましたのでもう一度アンコウ鍋を与えましたが
 変化はありませんでした」
財前「ふむ、ということは原因は与えたものでもなく、個体差でも無く時間なのか?」
亜美「(ホッ、こっちのはるかさんはちゃんと食事を貰えているんだ)」
研究員「それで今日は日差しが強いので朝から日光を当て続けています」
はるかさん「ヴぁ?い」
真美「ちょ!何やってるの!?はるかさん日光苦手なんだよ!?止めてあげてよ!」
財前「そうはいかない。これは被験体が日光を浴び続けたら何日で死ぬかの実験なのだから」
亜美「悪魔の実験だよ・・・・」
財前「では集光レンズで被験体に照射したまえ。」
研究員「了解」
はるかさん「ヴぁ?い」
財前「おお、効果てきめんだな。殺虫剤をかけたゴキブリのごとく衰弱してきた」
真美「真美、もう吐きそう」
47:
財前「3号の様子はどうかね?」
研究員「はい、解析を進めていますが出鱈目すぎて現代の科学の限界を痛感しているところです」
財前「焦ることはない、地道に解析を進めたまえ」
はるかさん「かっかー」
亜美「(こっちのはるかさんは無事みたいだね、良かった)」
財前「4号の様子はどうだね?」
研究員「はい、北斗一子相伝の暗殺術を操る男に依頼しましたが先ほどすっかり肩を落として帰って行きました」
はるかさん「かっかー」
財前「(この生命体には死というものが無いのか?やがて地球はこの生命体で埋め尽くされるのか?
 そんなことはあり得るのか?そもそもこの生命体はいつ生まれた?なぜ、地球はこの生命体にって
 埋め尽くされていない?」
亜美「(こっちのはるかさんも無事みたいだね、良かった)」
48:
財前「5号の様子はどうだね?」
研究員「見ての通りです」
真美「あれ??はるかさんいないよ?」
亜美「その代わり、虎が二匹・・・」
財前「簡単な因果律だな。昨夜はこの檻に5号と空腹な虎の母子が入っていた。そして今は満腹な虎の母子が
 入っている。小学生でもわかる問題だな」
亜美「そんな・・とらに・・・・・たべさせる・・なんて・・・・・信じ・・・られない・・」
真美「ちょっと亜美!しっかりして!」
財前「しかし、凄いな。骨一本残らないということは余すとこなく食べられるということだろ?
 虎がまた空腹になったら今度は3号と4号を放り込みたまえ」
亜美「もう駄目・・・ゆるして・・・」
真美「真美たちはもう帰るよ・・・」
財前「ふむ、そうかね?言っておくが・・・」
真美「分かってるよ!他言無用なんだろ!」
49:
――事務所にて――
真「しかし、亜美真美も帰ってきてからすさまじく大人しいな。大学でなんかあったのか?」
真美「もういいんだ、まこちん。すべてを忘れよう。」
雪歩「亜美ちゃんはずっと放心状態ですぅ」
伊織「プロデューサー、千早、春香、美希は冷戦状態。律子、亜美真美は放心状態。
 とてもじゃないけどもう駄目ね。下手したら事務所ごと終わるかもね。」
真「でもボクははるかさんを助けたいと思う。亜美真美の様子からしてとんでもないことに
 なっているんだと思う」
伊織「そう、好きにしなさい。私はパパにこの件から手を引くように言われたわ。
 残念だけど私の協力はこれまでよ」
真「そうか・・・それは仕方ないね。ボクはボクなりのやり方で助けて見せるさ!」
雪歩「真ちゃん・・・わたしはそのあんまり役には立てないけど敵から隠れるための穴を掘るのと
 リラックスするためのお茶を入れることくらいはできるから・・・」
真「ありがとう雪歩。強気なことを言ってみたけどやっぱり一人は心細かったんだ」
50:
雪歩「でもどうするの?真ちゃん。」
真「そうだなぁ、ボクと雪歩で色仕掛けってのはどうだい?」
雪歩「それ、本気で言ってる?」
真「はは、まさか。そんなのが通用しそうな相手ならとっくに春香や律子が素っ裸で突撃しているだろうしね」
雪歩「正攻法は通用しないよね」
真「そうだね。合法的な手段じゃまず無理だね。結局盗み出すしかないね。白昼堂々とはできないから
 夜陰に紛れて盗むしかない。」
雪歩「でも警備は厳重だよね」
真「そう、そこで雪歩の出番だ。少々時間はかかるけど穴を掘って研究室の真下まで直行する」
雪歩「分かった!真ちゃん任せて!」
52:
――財前教授の研究室真下――
雪歩「真ちゃん、研究室の真下まで来たよ。あと一突きで地上に出られる」
真「ありがとう、雪歩。地上に出たら一撃でボクが研究室にいる人間を気絶させる。夜中だし
 そんなに人数はいないだろうしね」
雪歩「じゃあ、いくよ。せーのっ!」
ドゴーン
研究員「何奴?」
真「チェストーーーー」
ドゴーン
雪歩「すごい!本当に一撃で倒した」
真「全部で4人かな?グズグズしてはいられない。早はるかさんを救出だ!」
はるかさん「ヴぁ?い」
真「ようし待ってろよ、はるかさん!今、檻を開けて・・・。ん?鍵がかかってる?
 しかも暗証番号のロック式か!仕方ない、持ってきたガス溶断器で・・・
 くそ!全く歯が立たない!」
財前「そんなことをしても無駄だ。あらゆる事態に備え特注した特殊鋼だ。そんな安物で
 壊せるほど軟ではない」
57:
雪歩「ひっ!いつの間に」
真「へへ、アンタがラスボスかい?手荒な真似はしたくないんだ、ちょこっと暗証番号を教えてくれないかな?」
財前「研究員4人を昏倒させておいて手荒なまねはしたくない、か。まあ、いいだろう。
 それより研究の成果を知りたくないかね?」
雪歩「そうやって時間稼ぎをするつもりですね!うちのお父さんがよくやる手です!」
財前「まあ、落ち着きたまえ。我々が研究を開始してからすでに一月が経つ。いまだに謎だらけで
 我々の理解を超えているところが多々あるが、それでもある種の傾向は掴めてきた。
 あ、悪いが君、お茶を入れてくれないか。給湯室は奥の角にある」
雪歩「あ、はい。只今」
真「それで、研究の成果というのはなんなんだよ」
財前「まずはこの1号だが、この一カ月餌を全く与えていない。人間ならそろそろ餓死する頃だが
 少なくとも1号には餓死しそうな気配が無い。まあある種の生物は数カ月に渡って
 餌を与えなくても生き延びられるから特筆すべきことではないのかもしれないがな」
雪歩「お茶が入りました」
財前「ふむ、ありがとう。そして2号だがこれには太陽光を浴びさせる実験をしている。
 晴れている日は毎日浴びさせている。かなりの衰弱は見られるがいまだに死亡していない。
 何故太陽光が苦手なのかそのメカニズムは今のところ不明だが、太陽光が苦手というだけで
 夜行性というわけではない、そのくらいしかわからない。」
はるかさん「ヴぁ?い」
59:
真「ふ?ん、でもそんなのは予想通りというしかないですね。」
財前「3号は解剖だ。だが、メスを入れた瞬間治癒してしまうので開腹できないのだ。
 もしこの特性を応用できて人間にも使えれば凄いことになるとは思わないかね?
 どんな大けがも一瞬で治せるということだよ。驚くべき自然治癒力だよ」
雪歩「そんなこと・・・できるんですか?」
財前「さて?今の人類には難しいだろうね。だが、今すぐに応用できなくてもいいのだよ。
 未来の研究の礎になれば」
真「ふ?ん、でもさっきから聞いていると分からないばかりですね。日本最高のエリート
 集団なのに」
財前「ふふ、いや全くその通りだよ。お恥ずかしい限りだ。
 そして4号だが、こちらはありとあらゆる手を使い被験体を死に至らしめる
 攻撃をしているのだが、全く効かない。活火山のマグマに放り込んだり
 原子炉に放り込んだりもしたが全くの無傷で生還する。もっともあれだけの
 自然治癒力があるのだ、不思議じゃないのかもしれないがね」
真「一つ質問ですが、うちにははるかさん以外にもぷちどるがいます。彼らも実験対象
 にしようと考えたりはしないのですか?」
60:
財前「私は学究の徒ではあるが鬼でも悪魔でも無いつもりだよ?この世に一つしかない
 生命までは奪おうと思わないね。
 話を戻そう。結局のところありとあらゆる物理攻撃は効かず、一番有効なのは
 太陽光である、しかしそれも死に至らしめることはできない。
 光線といってもチェフレンコ光のようなものではビクともしないのだよ。
 そこで私は疑念がわいてくる。この生命体に死はくるのかと。
 もちろん、老衰などによる死は来るかもしれない。ならこの生命体はいつ生まれた?
 容姿からするに幼くも感じるがこのような新種が生まれるにはどのような条件が
 重なったのだ?放っておけばやがて地球はこの生命体で埋め尽くされるのではないか?」
真「日本がはるかさんで埋め尽くされるというのは考えなくもなかったけど・・・」
財前「水をかけるだけで増える驚異的な自己複製能力、事故や病気では死なない強靭な生命力。
 生命体としてある種の完全さがあるとは思わないかね?
 この生命体が地上の覇者になり、他の生命体を駆逐し地球はこの生命体の楽園と化す
 そんな妄想をしていたところ意外なことが起きた」
真「意外って?」
財前「5号が虎に喰われたのだ」
雪歩「ああ、亜美ちゃんがブツブツ言ってた・・・」
61:
財前「これだけ完成された生命体なのに虎如きに喰われるのか?と。
 試したところある条件下ではほぼすべての肉食動物、それこそ猫や小型犬にまで喰われる。」
真「ある条件下って?」
財前「ハンターが空腹であること、だ。それも生半可のものではなく、今喰わなければ明日にでも死ぬ
 勢いの空腹だ。さらに実験を進めるとそのような条件下なら肉食動物に限らず
 馬、牛、羊といった草食動物にまで喰われることが判明した。だが、空腹度が充分でなかった場合は
 食べられることはまずない。どんな猛獣も軽くいなしてしまうのだ」
真「つまり、相手がどれだけ腹が減ってるかで自分を食べさせるか決めている?」
財前「そう考えるのが自然だろう。ありとあらゆる災害に打ち勝ち途轍もない身体能力を発揮するのに
 極度に空腹な相手の前ではほぼ無抵抗で食べられる・・・」
雪歩「・・・・それって・・」
財前「神、だの神の恵みだのって言葉は学究者としては使いたくないがね。事実、食べられる際の断末魔は
 聞くに堪えないものだよ。神の恵みならその辺の配慮をしてほしいものだ」
真「はるかさんを・・・食べた人はいるんですか?」
財前「当然その疑問は湧くだろうな。その疑念が生まれてから二週間私は一切の食事を取らず空腹にし
 私自らチャレンジしてみたよ」
62:
真「それで・・・どうだったんですか?」
財前「結論としは私には食べることが出来なかった。勿論、感傷的になったわけではなく食べさせてもらえなかったのだよ。
 なんとか足にかじりついたが何故か鉄のように固くとても喰えたものじゃなかった」
雪歩「それって地球を汚しまくる人間に神様が怒って人間には食べさせてあげないって思ったんじゃ?」
財前「さあな?しかし私が食べることが出来なかったのは生き延びるため、ではなく研究のためだったからではないかと
 推論している。そうだとすると私には一生食べることができなさそうだ。
 ソマリアでも行って難民にでも食べさせてみようと思ったのだがね、しかし思ってたより近くに
 良い挑戦者がいたのだよ」
63:
やよい「あれ??真さんと雪歩さんも来ていたんですか?うっうー賑やかになりました!」
財前「紹介する必要はないだろう?彼女が今回捕食にチャレンジしてくれることになったのだ」
真「ちょっとやよい?今から自分が何をするのか分かってるの?」
やよい「えへへ、今日はお夜食におよばれしにきました。しかも全部食べればお父さんの借金も
 チャラにしてくれるんですよ?。ご飯食べさせてもらった上に借金も返してもらえるなんて最高です!」
真「やよい、君が今から食べようとしているのは事務所でよく遊んだはるかさんなんだよ?
 それを食べちゃうというのかい?」
やよい「いやだな?真さん。はるかさんなら事務所にいるじゃないですか。さっきも一緒に遊んでいたんですよ?
 ということはここにいるのは偽物です。偽物だから食べてもオールオッケーです!」
財前「高槻君、用意はできたよ。一気にやってくれたまえ」
はるかさん「ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い、ヴぁ?い」
雪歩「やよいちゃん、考え直して!ね、お願い!」
やよい「雪歩さん、真さん、できれば私が食べている姿は見ないでほしいかなって」
真「・・・・雪歩、もう帰ろう。ボク達が出る幕じゃない」
バタン
やよい「では、いっただきま?す!」
はるかさん「ヴぁ????????????????い」
81:
――事務所にて――
雪歩「結局助け出せなかったね・・・」
真「やよい・・・」
雪歩「やよいちゃんを責めちゃ駄目だよ?彼女は自分だけじゃなく
 家族のことも考えての行動だから」
真「分かってるよ。でもどうにも自分の無力さを呪わずにはいられない」
雪歩「でもあの教授に楯突ける人はこの世にいないのかも・・・」
ガチャ
あずさ「あら、雪歩ちゃん真ちゃんこんな遅くにどうしたの?」
アラブ王「オヒサシブリデース!マコトサーン!」
83:
真「あ、あなたはあの時の!」
雪歩「真ちゃん知り合い?」
あずさ「ええ、石油王さんと花嫁さんとばったりイギリスで
 会っちゃって、お茶でもいっしょに飲みましょうって
 近くの喫茶店に入ったらどういうわけかここに付いちゃったの」
花嫁「だいぶ途中を省略しているけど途中で喜望峰とかゴルゴダの丘
 とかにも行ったんだから・・・なんなのあずさのこの能力」
雪歩「あ、じゃあ私がお茶入れますね」
アラブ王「ドウシタンデスカ?マコトサーン。ナヤミゴトデスカ?」
真「ああ、すみません。自分の不甲斐なさを反省していたところです」
アラブ王「OH・・・ナンデモハナシテクダサーイ。ゴキョウリョクシマスヨ」
85:
真「へへ、じゃあ話だけでも聞いてもらっちゃおうかなカクカクシカジカ」



アラブ王「OH・・・イマカラオナカマヲトリカエシニイキマショウ!」
真「ええ!そんなの無理ですよ!第一また穴を掘ってたら時間かかっちゃうし」
アラブ王「ナゼソンナコトヲスルノデス?ショウメンカライキマショウ」
真「え、ちょっと待って石油王さん!」
――東大医学部正門――
警備員「コラコラ君たち、勝手に入っちゃ駄目だ!ここは関係者以外
  立ち入り禁止だよ!」
アラブ王「石油王デース」
警備員「失礼しました!どうぞお通りください!」
90:
――財前教授の研究室――
研究員「なんだ?またきたのか坊主。あの娘ならもう帰ったぞ
  頼んでもいないのにお代りまでして行ったぞ」
真「財前教授を呼んでいただけないかな?」
研究員「は、性懲りもなく・・・。先生はお忙しいのだ早く帰れ」
アラブ王「石油王デース」
研究員「すぐにお呼びいたします」
92:
財前「なんだと!石油王だと!くそくそくそ!俺は居ないと言え!
 まったくなんてこった!」



研究員「い、今教授は不在でして・・・伝言があれば承りますが・・・」
真「どこにいったのかな?」
研究員「ええとその、あ、そうそうローマ法王に会いにイタリアまで・・・」
アラブ王「OH・・ローマ法王オトモダチデース。イマカラセンヨウジェットデイキマショウ」
研究員「え?宗教違うんじゃ?すみません嘘です」
アラブ王「ナゼウソヲツクノデスカ?」
93:
研究員「教授!石油王相手に嘘をつくなんて私には無理です!」
財前「くそ、仕方ない、私が行くか・・・」



財前「いや?石油王さま。こんな場所にお越しいただいて恐縮至極です。
 今日はどういったご用件で・・・」
アラブ王「ハルカサンヲカエシテクダサーイ」
財前「御意」
こうして無事(?)はるかさんを取り返した真たちは末永くぷちどるたちと
仲良く暮らしたとさ
おしまい
96:
うわあ……(ドン引き)
9

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