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律子「夏はやっぱり蕎麦よねー」


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4:
出前「ちわー、ご注文のざる蕎麦お届けに参りましたー」
律子「はいはいー、暑い中ご苦労様」
出前「どもっす、800円になります」
律子「800円ね、はい。あ、これ余ってるジュースなんで良かったら飲んで下さい。よく冷えてますよ」
出前「すみません、ありがとうございます! はい確かに800円丁度……食器は玄関の所にお願いします、毎度ありがとうございましたー」
律子「はい、ご苦労様ー……さって、お蕎麦お蕎麦ーっと。夏はやっぱり蕎麦よねー」
やよい「うう、おはようございますー……」
律子「な、やよい!? どうしたのそんなにふらふらで!?」
やよい「じ、実はここ数日食べる物がなくて……がくり」
律子「!! やよい、お蕎麦食べなさい! 今丁度ざる蕎麦があるから、ね!?」
やよい「でも、でもそれは律子さんの……」
律子「馬鹿! 私のことはいいの、いいから黙って食べなさい!」
やよい「り、律子さん……うう、ぐす。ありがとうございます! ずる、ずぞぞぞぞ、ぞばば!」
7:
律子「結局、昨日はお蕎麦食べられなかったわね……はあ」
出前「ちわー、ご注文のざる蕎麦お届けに参りましたー」
律子「はいはい、今日も暑いのにご苦労様。800円よね、良かったらジュースも持って行って?」
出前「すみません、いつもありがとうございます! それじゃ食器は」
律子「玄関よね」
出前「はい! 毎度ありがとうございましたー」
律子「今日こそお蕎麦よー、手繰るわよー、超啜るわよー」
真美「たっだいまー! もう真美お腹ぺっこぺこだよ! ちょっと聞いてよりっちゃん!!」
律子「え? お、お帰りなさい真美、悪いけど私これからお昼だから話はその後でいい?」
真美「いいわけないっしょ!! 真美はお昼ご飯抜きでお仕事してたんだよ!? 成長期なのに! 成長期なのに!!」
律子「えっと、そう、それは残念だったわね? あの、じゃあせめて食べながら話を」
真美「しかもその原因はこの前来た兄ちゃんだよ! まったくこの会社の教育はどうなっとるのかねちみぃ!!」
律子「いや、彼もまだ入ったばっかりでミスもするだろうし、その、だからお蕎麦」
真美「いやいやいやいやりっちゃんりっちゃんりっちゃんさんよぅ、その彼をしっかり一人前にするのは誰の仕事だい?ん?」
律子「それは、わ、私、だけど……」
9:
律子「言い返せなかった私が悪かったのかしら……いいえ、お蕎麦一枚明け渡すことで丸く収まったんだからよしとしましょう」
出前「ちわー、ご注文のざる蕎麦お届けに参りましたー」
律子「いつもごめんなさいね、はい800円とジュース。食器は玄関の所に出しておくから」
出前「いつもいつもジュースすみません、お陰様で頑張れてます。毎度ありがとうございましたー」
律子「はいはいーっと……食べる、今日こそ食べるわ!」
貴音「はあ……」
律子「た、貴音!? 一体、いつからそこに……!」
貴音「朝からずっといましたが……いえ、お気になさらずどうぞお食事を」
律子「そう? それなら、じゃあ、お言葉に甘え、甘、甘えて……そんなに見られたら食べにくいわよ!」
貴音「いえいえ、お気になさらず。本当にお気になさらず。わたくしも食べたいなど微塵も」
律子「思ってるならそう言いなさいよ! その気持ち隠すなら涎止めなさいよ!!」
貴音「いえいえ、いえいえお気になさらず。なさることなど。なさらずともよいのです」
律子「……いいわよ分かったよ、食べたいんでしょう? 正直に言えば譲」
貴音「食べたーい!!」
律子「……」
10:
律子「買い置きを日頃から確認してなかった私のミスだわ。アイドルがお腹空かせてるんだもの、お蕎麦譲る位当たり前よ……」
出前「ちわー、ご注文のざる蕎麦お届けに」
律子「ありがとう、ジュースと1600円ね、それじゃ」
出前「え、あっ、はい! ま、毎度ありがとうございましたー!」
律子「蕎麦、蕎麦、蕎麦! こうなったら二人前食べてこの蕎麦欲をどうにか満たさないとやってられないったら!」
雪歩「ただいま戻りましたー……うぅ」
真「大丈夫、雪歩? やっぱり食欲ない? なら軽いお蕎麦でも、あ、でもまたこの暑い中歩くのは……あ、ただいま戻りましたー!」
律子「……おかえりなさい」
雪歩「あ、律子さん今日はお蕎麦なんですね。えへへ、すぐにお茶、淹れますね……」
真「雪歩、無理しちゃダメだよ。ほら、横になって寝てなってば。ああもう、困ったなあ……」
律子「……ん。二人で食べなさい」
真「え、いいの? これ律子のお昼ご飯じゃ」
律子「フタリガ、フラフラデ、カエッテクルノヲ、ミコシテ、ニニンマエ、タノンデオイタカラ」
真「あ、本当だ! じゃあこれは最初からボクらのために用意してくれてたんだね、ありがとう律子! 助かったよ! ほら、雪歩!」
雪歩「ありがとうございます、律子さん……私、この夏のアイドル活動に全力で打ち込みます! このお蕎麦に誓って……!」
11:
律子「リッチャンハ、ヤサシイコデスヨ……」
出前「ちわー、ご注文のざる蕎麦、え? あ、お代とジュース、ええはい、いつもすみません! 毎度ありがとうございましたー!」
律子「最で机まで運び! 流れるような動きで蕎麦を口へと!」
伊織「忙しないわねえ、この伊織ちゃんのプロデューサーならもう少しどっしり構えてくれる?」
律子「あ、伊織……戻ってたの」
伊織「ちょっと! まだ私が話してる途中でしょ、何普通に食べ始めようとしてるのよ!」
律子「いや、だって私、ここの所ずっとお蕎麦……」
伊織「ずっとお蕎麦食べてる!? 何考えてるのよ、倒れたらどうするの!! 没収よ没収、あんたは野菜とかお肉食べなさーい!」
律子「違、ま、待って、やめて、やめてよ伊織……」
伊織「駄目よ! 竜宮小町はこの夏が勝負なの、夏バテしてる暇なんてないわ! 目の前にあると食べたくなるなら私が食べてあげるわ!」
律子「ああ、お蕎麦、ああ……」
伊織「もぐごくん……ふんっ! いい、律子? 言わなきゃ分からないみたいだから言うけど、皆心配してるの! 皆、その、あんたが好きだから!」
律子「お、お蕎麦……うう、ぐす……! ひっく……!」
伊織「ちょ、泣いて喜ぶことじゃないじゃない! ま、まあこの水瀬伊織ちゃんに好きって言われて感動するのは分かるけど……」
12:
律子「心頭滅却すれば火もまた涼し……ざる蕎麦に拘るのは、もうやめにしましょう」
出前「ちわー、あ、いつもありがとうございます。毎度ありがとうございましたー!」
律子「きつね蕎麦……! 暑い時こそ熱い物……! 皆無……! 今この事務所に、篤い蕎麦を欲しがる人間……皆無……!」
小鳥「げほっごほ、うう、おばようございばすぅ……」
律子「……」
小鳥「ぢょっと体冷えぢゃったびだいで……あ、風邪じゃだいでず、すぐ元気でぃだりばすがら」
律子「……」
小鳥「うう、ぞれでぃじてぼお腹減っだだあ、何かあっだがい……でぼだるぎ亭ばおうどんぼお蕎麦ぼやっでだいじだあ……」
律子「……あの、きつね蕎麦食べます?」
小鳥「ええ!? いいんで、げほ、げほごほ……いんでずが!?」
律子「あの、食べてください。それで早く元気になってください」
小鳥「でぃ、でぃづござん……! うう、ばだじごどごおんばいっぢょうばずべばべん!」
律子「……ふふ、何言ってるか分かりませんよ。焦らずゆっくり、よく噛んで食べるんですよ?」
13:
律子「……きっと食べていたら後悔したわ。だからあれで良かったのよ、秋月律子……」
出前「ちわー、ご注文の毎度ありがとうございましたー!」
律子「やはりざる蕎麦よ、初心を貫いてこその……!」
春香「うわわっ!?」
律子「な、春香!? しかも私のざる蕎麦が!?」
春香「すみません律子さん! 山芋擦ってたんですけどうっかり転んじゃって! 責任取って私がちゃんと食べますからー!」
律子「あ! ちょ、お前、お前天海春香!」
春香「すみません律子さんすみません! とろろぶっかけ蕎麦美味しいですけど律子さんが食べようとしてざる蕎麦じゃないからすみません!」
律子「あー! ああー!!」
春香「すみません!美味しいですすみません!ずぞぞばばばばば!!」
14:
律子「水着グラビアに影響がないような部分にとろろをかけてお仕置きとしたのは見事だったわ私、でも今日こそお蕎麦を」
出前「ちわー、毎度ありがとうございましたー」
律子「あら、うずらの卵が双子だわ」
亜美「双子と聞いてずびずばー」
真美「呼ばれて飛び出てずるずぞー」
律子「……」
亜美「んー、蕎麦の実が鼻の奥に咲き乱れるようですわん」
真美「亜美、それじゃあんまり美味しくなさそうだよ! うぉっほん、この喉越しはまさにナイアガラの宝石店やで?!」
律子「……」
亜美「む、無言のプレッシャーがやばいよ真美、やっぱり勝手に食べちゃまずか、あ、りっちゃんも食べ、え?」
真美「そんなこと言ったって亜美ぃ、あれ、りっちゃんわさびチューブ握り締めてどうし、うあうあ?!? 」
律子「食べなさい」
亜美「え、ええー……いやいや、流石にこれは」
真美「り、りっちゃん? ちょーっち落ち着いて話を」
律子「たべろ」
15:
律子「ふ、不覚……まさかお蕎麦屋さんが休みだなんて……」
響「あれ、もしかして律子もお昼はそばがいいのか? 自分も丁度そんな気分だったさー」
律子「あっそう……でもね、誰がお蕎麦食べたがっていようと今日は食べられないのよ……」
響「そんなに食べたいなら作ればいいじゃん。あ、自分が作ってあげよっか? 次の仕事まで暇だし」
律子「え?」
響「それじゃ買い出し行って来るね、留守番頼んだぞ!」
律子「ちょ、響ー!」
――――
律子「美味しい、美味しいわ!!」
響「へへ、喜んでもらえて自分も嬉しいぞ」
律子「でも私が食べたかったのはソーキソバじゃないの!!」
響「もう51回目だぞ、美味しいんだからいいでしょ?」
律子「美味しいわよう……すごく美味しい……けど私が食べたかったのは普通のざる蕎麦よ!」
響「もぐもぐ、52回目さー」
17:
律子「あれはあの子なりに気を使ってくれたのよね……でも、でも……!」
出前「ちわー毎度あざっしたー」
美希「律子ー、美味しいお蕎麦の食べ方教えてあげるね! こうやってツナマヨをつけ汁に混ぜると美味しいんだよ?、あはっ☆」
律子「律子さんだ、豚が」
美希「はい、あーん♡」
律子「ぶっふぉ」
美希「あれ? 美味しくなかった? ……あ、これお素麺のちょい足しレシピだったの、あはっ☆」
律子「げほ、ごほ!」
美希「ご、ごめんね? そんなに美味しくなかった? ……ずるる、ん? これはこれでありな気がするの!」
律子「美希」
美希「どうしたの? 律子……さん」
律子「丸坊主にしてみる?」
美希「むっちゃごめんなさいなの」
20:
律子「なくことーならたやすいけーれどー♪」
出前「かなしみにーはー毎度あーりー♪」
律子「恋したーことこのおそーばさえ♪」
千早「二人とも声が小さいわ、もう一度最初から」
出前「え」
千早「最初から」
律子「……なくことーなら」
千早「音が1/4上にズレてる、やり直し」
律子「……なく」
千早「今度は下げすぎ、それじゃ1/8も下よ。最初から」
出前「あの、お蕎麦伸びちゃいますよ?」
千早「そうね、声の伸びも大切だわ。律子」
律子「なくことーーーーーなら」
千早「勢いがない、初めに戻って、さんはい」
21:
律子「結局お蕎麦伸びちゃって作り直しに帰ったら品切れって……でもその代わり今日こそは!」
出前「こんにちは?、ご注文のお蕎麦をお届けに来ました?」
律子「ありがとう、本当にありがとう! 今日こそ私の悲願が……って、あれ?」
出前「うふふ、喜んでもらえて嬉しいです?。あ、お代金は800円になります?」
律子「いやあの、何してるんですかあずささん」
出前「あら? 見ての通り、お蕎麦屋さんの出前ですけれど……」
律子「おいアイドルおい」
出前「いけない、店長さんに言ってすぐ辞めさせてもらわないと! あ、でもその前にお仕事はきっちりしないと駄目ですよね?」
律子「いやあの、それはそうなんですけど」
出前「それじゃ、すぐ戻って来ますね?。それと、食器は」
律子「玄関ですよね、分かってます……はあ、あずささんにも困ったもんだわ。いえ、それより今は念願のお蕎麦を……」
出前「度々すみません?、今店長から電話がかかってきて、私ったら間違えてざるうどんを?」
律子「……いいです。そんな気はしてましたし。りっちゃん、おうどんも好きな子です」
出前「あ、あらあら??」
22:
律子「はー、今日も暑いわねー」
P「おはようございます! ん、律子髪型変えた?」
律子「ええ、ちょっと気分転換に」
P「なんかまた随分思いきったな」
律子「そうですか? 私は結構気に入ってるんですけど」
P「いやー、どっちかっていうとあんまり律子のイメージっぽくない髪型だからさ」
律子「あはは、そうかもしれませんね」
P「それにしてもエビフライ、パイナップルと来て今度は、えーっと……今度は、あれ? その髪型、なんて名前だっけ?」
律子「ソバージュ」
P「そう、ソバージュ。本当に気分転換だけ?」
律子「ま、言ってしまえば失恋ですね。どうあっても私の気持ちは届かない運命と知って、少し悪足掻きしてみただけです」
P「そっか、大変だったな……よし、今日の昼飯は俺が奢る! 最近美味い出前の蕎麦屋見つけてさ、今日はどうしてもざる蕎麦の気分なんだ!」
律子「……ああ。悲劇が、また」
P「?」
おわり
23:
おつおつ
2

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