勇者「天国に一番近い勇者」【後半】back

勇者「天国に一番近い勇者」【後半】


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8:
勇者「結構、街まで距離あるんだね……俺、もう疲れちゃったよ……」
女僧侶「ええ、もう野宿はこりごりです……シャワーも浴びたいな……」
ーー数週間前、俺の前に現れた自称天使の男、天童世死見
勇者「食糧も残り少なくなってきたよねぇ……? 腹減ったなぁ……」
女僧侶「次の街までの我慢です。頑張りましょう?」
ーー俺はこいつが現れてから三度死にかけた
勇者「そうだけどさぁ……? もう俺、腹減って力出ねぇよぉ……?」
女僧侶「……実は、私もです」
ーー 一度目は、火事の家の中に取り残されそうになって。二度目は魔物に焼き殺されそうになって。三度目は……よく、わかんないけど
319:
勇者「……今日中に着くかなぁ? 早く、街に行って休もうよ?」
女僧侶「そうですね……地図を見る限り、もう少しのはずなので頑張りましょう」
ーー嘘か本当か……こいつが天界のものからだと言っている命題を、なんとかクリアしているから俺は生き残る事が出来ている……らしい
勇者「あ?、もう疲れた?! 腹減っった?!」
女僧侶「……私もです」
ーーその命題は……後……
天童「セブンだっ!」
勇者「わっ、わわっ! 急に大声出すなよ……びっくりしたなぁ、もう……」
天童「ハハハ! 相変わらずリアクションがワザとらしいな、勇者君」
320:
天童「おい、ところでよぉ!?」
勇者「……何だよ、テンション高いなぁ」
女僧侶「天童さん、どうかしましたか?」
天童「おめぇらは、さっきから聞いてりゃよぉ? ブツクサブツクサ文句ばっかり垂れやがって!」
勇者「……だって」
女僧侶「……申し訳ありません」
天童「も?っと、ポジティブな考え方は出来ねぇのかってんだ! ほらっ! 空を見てみろ!」グゥー
勇者「……ん?」
女僧侶「……あれ?」
天童「この澄み渡る青い空っ! なぁ?んか、今日はいい事ありそうじゃねぇかっ! 空からでっけぇハンバーガーが降ってくるとか! なぁ!?」グゥー
勇者「……おっさん、おっさん」
女僧侶「……天童さん?」
322:
天童「それに、この心地良い風! あ?、腹減ったなぁ?、牛丼食いてぇな?! この風に乗って匂いだけでもこねぇかなぁ!?」グゥー
勇者「……あのさぁ?」
女僧侶「天童さん、食事の話は今は控えて下さい……私も我慢してるんですよ……」
天童「あ?! カレーに、チャーハン、ハンバーグ! なんでもいいから食いてぇなぁ! そう考えると、お子様ランチって凄ぇなぁ? なっ、なっ!?」グゥー
勇者「おいコラ、おっさんっ!」
女僧侶「天童さんっ!」
天童「わっ……! ど、どしたの……? 二人して、そんな怖い顔して……?」ビクビク
勇者「飯の話はやめろっ!」
女僧侶「食事の話は控えて下さいっ!」
天童「えっ、えっ……? 僕、飯の話なんてしてたかな……?」
324:
ーーーーー
勇者「……もう我慢出来ん。次に魔物見かけたら、どんな魔物だとしても、俺は焼いて食うぞ」イライラ
天童「……勇者、成長したじゃねぇか。俺も付き合うぜ」イライラ
女僧侶「……僧侶として、無益な殺生は認める訳にはいきませんが、今回は許しましょう」イライラ
「いらっしゃ?い! いらっしゃ?い! 道具はいりませんかぁ?!?」
勇者「……ん?」
天童「なんだ、ありゃ?」
女僧侶「ああ、あれは移動商店ですね。ああやって、色んな街を旅してる商人さんがいるんですよ」
女商人「いらっしゃ?い! いらっしゃ?い! 道具はいりませんかぁ?!?」
勇者「おいっ! 天童っ!? 飯売ってるんじゃねぇの、あれ?」
天童「おっ! そうだな! 勇者、行ってみようぜっ!」
325:
勇者「こんにちはっ!」
女商人「あっ、お客さんですか!? いらっしゃいませぇ?!」ニコッ
天童「!」ドキッ
勇者「おおっ、凄ぇっ! パンにおにぎり……食糧がたんまりあるぞ、オイ!」
女商人「お安くしておきますよ??」
天童「……」ドキドキ
勇者「じゃあ、俺はおにぎりと……後、パンと……おい、天童! お前はどうする!?」
女商人「はいはい、おにぎりとパンですねぇ??」ニコニコ
天童「……春は恋の季節ばい」
勇者「はぁ……? 何、言ってんだお前……?」
326:
勇者「……あれ?」
女商人「ん……? どうかしましたか、お客さん?」
勇者「ねぇねぇ、お姉さん……このおにぎり、賞味期限切れてるよ……?」
女商人「!」
勇者「あっ……! こっちのパンもだっ!? これ、全部賞味期限切れてるじゃないですか!?」
女商人「も、申し訳ありませんっ……! 今、ちゃんとしたヤツ探しますから、少々お待ち下さいっ……!」アセアセ
勇者「あっ、装備とかも売ってるんだ? え?っと……この武器は?っと……」キョロキョロ
女商人「え?っと……え?っと……」
勇者(うわっ、なにこれ!? 凄ぇ錆びてる)
328:
女僧侶「……勇者さん、勇者さん」ヒソヒソ
勇者「……ん、どうしたの? 女僧侶ちゃん」
女僧侶「今、薬草や回復薬も見てみたんですが……これ……」
勇者「うわ……それも痛んでるヤツじゃん……」
女僧侶「私、この移動商店、駄目な店だと思います……」ヒソヒソ
勇者「う?ん……そうだね……? お腹減ってるけど、街まで我慢する……?」
女商人「あっ、お客さんっ! ありましたよ! 賞味期限の切れてないパンが一つ!」
329:
勇者「あ?、いいです……僕達、街に行ってから食事とるつもりなので……?」
女商人「えっ……?」
女僧侶「三人で……一つのパンというのも……ごめんなさいね?」
女商人「あっ、待って下さいっ……! 今、探しますっ……!探しますから……!」アセアセ
勇者「あっ、いや……本当に大丈夫です……それじゃあ、また……」
天童「何を言っとるんだっ! 勇者君っ!」
勇者「……ん?」
天童「こんなに素敵で素晴らしい店で買い物をしないなんて、君はどうかしてるよ!」
勇者「……何を言ってるんだ。お前は」
331:
天童「例えば、このおにぎり! と?っても、美味しそうじゃないか! 何で君は買わないんだ!?」
勇者「……だって、それ賞味期限切れてるもん。腹、壊したくないし、いいよ」
女商人「……うぅ」
天童「じゃ、じゃあ……この剣なんてどうだい? ほら、こ?んなに、格好いいんだよ?」
勇者「……錆びてて使いもんにならねぇじゃねぇか? 大根も切れねぇだろ、ソレ」
女商人「……うぅ」
天童「じゃ、じゃあ……この薬草っ! ほら、女僧侶ちゃんに回復任せっきりじゃ、悪いじゃん?」
勇者「薬草食って、毒くらいたかねぇ?よ」
女商人「……うぅ」
天童「え?っと、え?っと……じゃ、じゃあさ……? このアイテムバックは? お洒落で格好いいじゃん?」
勇者「……あっ、それはいいね? お洒落だし、痛んでないし」
女商人「!」
332:
勇者「俺、このアイテムバック欲しいです。いくらですか?」
女商人「あ、あの……そ、それは……売り物じゃないんです……」アセアセ
勇者「え?、なんで? これ、いいヤツなのに、何で売ってくれないの?」
女商人「あの……それ……」
勇者「?」
女商人「……主人の形見なんです」
勇者「……えっ?」
天童「……えっ?」
女僧侶「……訳ありのようですね。よろしければ、お話だけでも聞かせてくれませんか?」
333:
女商人「……うちは元々、鞄屋さんだったんですよ」
勇者「あ?、そうなんだ……このアイテムバック作ってたんだ……」
女商人「主人が獲物を飼って、材料を仕入れて……私が加工して鞄を作って……そうやって生計を立ててきました……」
天童「……ふむ」
女商人「でも、魔王の復活で……狩場にも魔物が現れるようになって……主人はそれで……」
女僧侶「……お悔やみ申し上げます」
女商人「それで、こうやって商人始めたんですけど……やっぱり、私向いてないんですかねぇ……? ダメな商品ばかり捕まされちゃって……」アセアセ
勇者「……」
334:
勇者「……鞄屋さんを続けようとは思わなかったんですか?」
女商人「正直、考え直した事は何度もありました……でも」
天童「……でも?」
女商人「お客さんは、『頑張れ! 頑張って、移動商店続けろ!』なんて応援してくれるんです」
勇者「……」
女商人「それに、今は物資すらない街が沢山あります……そんな街に例え駄目な物資だとしても、支援すると凄く感謝されるんですよ」
天童「皆、危険な場所には行きたがらないからね?、ほ?んとに物資不足してるのはソコなのに」
女商人「やっぱり、今自分がやる事はコレなんだなぁって。きっと主人もそう言ってくれてるような気がします」ニコッ
勇者「……」
335:
勇者「え?っと……じゃあ、このおにぎり二つ下さい……」
女商人「……えっ?」
女僧侶「私はこちらのパンを……」
女商人「えっ、えっ……? あの、賞味期限切れてますよ、それ……?」
天童「なぁ?に! 腹の中に入っちまえば変わらんばいっ! あっ、俺はおにぎり三つね!」
勇者「あっ! おっさん、三つも食うんじゃねぇよ! この大食い野郎っ!」
天童「俺はよぉ? 世の中の経済を潤わしてやってるんだよ! それに、女僧侶ちゃんは、一つなんだから、俺が三つ食ってもいいじゃねぇかよっ!」ギャーギャー
勇者「なんだよ、その理論っ! 意味わかんねぇよっ!」ギャーギャー
女商人「あ、ありがとうございますっ……!」
336:
ーーーーー
勇者「ふ?う……食った食った……」
天童「味はそんなに変わらんもんね……女商人さんはこれからどうされるんですか?」
女商人「私は、物資が不足してる街に支援活動を続けます。でも、その前に西の街で商品を仕入れようと思んですよ」
勇者「あれ、そうなの? 俺達と目的地一緒じゃん?」
天童「よ、よければ、ご一緒しませんかねぇ?」ドキドキ
女商人「あっ! 是非お願いしますっ! 今度は変な商品捕まされないように頑張らなきゃ!」
339:
勇者「おい、天童? お前、仕入れ手伝ってやれよ? そういうの、上手いだろ?」
女商人「えっ!? 天童さんも商人なんですか?」
天童「あっ、はいっ! 私、商人の天童世死見です! 仕入れましょう! 貴方の為に素晴らしい商品を仕入れましょうっ!」
勇者「……ん?」
女商人「じゃあ、天童さん! 是非お願いします! もう私、仕入れが下手で下手で困ってるんですよ!」
天童「任せときんしゃいっ! 三割、四割引きは当たり前っ! なんなら、店ごと買い占めてやりましょうっ!」
勇者「おい、天童……? お前、いつもの『商人(天使)』ってヤツはどうしたんだ……?」
女商人「えっ……? 天使……?」
天童「あっ! いや、なんでもありましぇ?ん! 勇者君?? ちょ?っと来てくれるかな??」コソコソ
勇者「お、おいっ……! 何だよ……?」アセアセ
女商人「?」
345:
勇者「なんだよ、こんな所に呼び出しやがって……」
天童「……」
勇者「女僧侶ちゃん達に聞かれちゃマズい話でもあんのかよ? ……あっ、もしかして命題来たの?」
天童「……」
勇者「命題来たんだったらよぉ、早く確認しようぜ? もう、俺この数日不安で不安で……」
天童「……俺は人を愛しちゃいけないんだ」
勇者「……はぁ?」
天童「俺は天使だから、いくら人間の事を好きになっても、絶対に結ばれる事はないんだ」
勇者「……何、言ってんだお前?」
346:
天童「それに、彼女が振り返ってくれたとしても! ……彼女の気持ちを弄ぶ事になってしまうんだ」
勇者「待て待て……話が見えん……」
天童「だけど!……この胸の高鳴り! そして、トキメキ! なっ、勇者君わかってくれるだろ?」
勇者「え?っと……お前、あの女商人さんに惚れたの……?」
天童「……」コクリ
勇者「それで……自分が天使だって事を、黙っておいてほしいんだ?」
天童「……」コクリ
347:
勇者「なぁ?に、顔を真っ赤にして、バカな事を言ってんだおめぇは!」
天童「なっ……! そんな言い方しなくてもいいだろがっ!」
勇者「おめぇが天使だなんて誰も信じねぇよ! いつもみたいに言っちまえばいいじゃねぇか!」
天童「バ、バカ野郎っ……! 天使と人間との恋愛は天界で禁止されてるんだよ!」
勇者「おめぇみたいなヤツに振り向いてくれるワケねぇよっ! その怪しい風貌から『恋愛』だなんて、どの口が言ってんだよ、バカっ!」
天童「カ、カァ?! 悔しかぁ?! 悔しかぁ?! もう、たまらぁ?んっ!」
勇者「別に黙っておいてやってもいいけどよぉ?? どうせ、お前じゃ無理だぜ? 天界で禁止されてるんなら、あの人の事は素直に諦めろよ?」
天童「童貞のお前にそんな事、言われたくねぇよ!」
348:
ーーーーー
女商人「……お話、終わりました?」
天童「いやぁ?! 急に勇者君がお腹が痛いなんて、言い出したもんですからね! そこの影で糞に付き合わせられましたよ! ハハハ!」
勇者「おめぇ、適当な事言ってんじゃねぇぞコラっ!」
女商人「えっ……! も、もしかしてさっきの賞味期限切れのおにぎりに当たったんじゃ……」アセアセ
天童「あっ! い、いやっ……! 違うんですっ! 勇者君、確か昨日拾い食いしましてねぇ……?」
勇者「おめぇはよぉ……次から次へと出まかせばかりよぉ……」
女商人「ど、どうしよう……? 薬あったかなぁ……? 勇者さん、今、薬出しますね……?」アセアセ
天童「あっ、いやっ……あのっ……! ち、違うんです……! 女商人さん! これは違うんですっ……!」
勇者「……ばーか」
349:
ーーーーー
女商人「ほ、本当に大丈夫なんですか……?」テクテク
勇者「あぁ、あれはこいつの出まかせだから、大丈夫です。それに、俺腹丈夫なんで」テクテク
天童「女商人さん、疲れてませんか? 結構歩きましたよ?」テクテク
女商人「あっ、大丈夫です、天童さん。私、結構体力には自信があるんです」
勇者「おめぇはさっきから、それば?っかりだな!」
天童「いや、レディにそんなキツい事はさせられんばいっ! そうだ! 荷物持ちますよ!」
女商人「あっ、大丈夫です……」アセアセ
勇者(必死だな、こいつ……)
天童「いやいやっ! 私が持ちますよっ! ほら、ほらっ!」
女商人「い、いえっ……本当に大丈夫ですから……」アセアセ
勇者(あ?んな事して、本当に好感度上がるもんなのかねぇ……? ん……?)
女僧侶「はぁ……はぁ……」
勇者「……」
350:
女僧侶「はぁ……はぁ……」トボトボ
勇者「……」テクテク
女僧侶「はぁ……はぁ……」
勇者「……ねぇ、女僧侶ちゃん?」
女僧侶「えっ……! どうかしましたか……?」
勇者「大丈夫? ちょっと疲れてるみたいだけど?」
女僧侶「ど、どうしたんでしょう……ここ数日、しっかり寝れてないからですかねぇ……少し、疲れました……」
勇者「……ふ?ん」
女僧侶「でも、街までもう少しですからね! 私、頑張りますよっ!」
勇者「……うん」
女僧侶「では、行きましょうか? はぁ……はぁ……」
勇者「……」
351:
勇者「……俺、女僧侶ちゃんの荷物持とうか?」
女僧侶「……えっ?」
勇者「疲れてるんでしょ? 無理はしちゃいけないよ? ほら、貸して」ヒョイ
女僧侶「あっ……ありがとう……ございます……」
勇者「街までもう少しだと思うからさ? あっ、そうだ! 今日ぐらい贅沢しようか? 男戦士さんから貰った餞別使ってさ!」
女僧侶「……はい、有難うございます」
勇者(こ?んなので、好感度上がるもんなのかねぇ??)
352:
天童「おい、勇者っ! 街が見えたぞっ! ようやく街だっ!」
勇者「おおっ! 街だっ! ついに街が見えたっ!」
天童「よしっ! 今日は宴会しようっ! 皆で酒場で飲むぞっ!」
勇者「てめぇが飲みてぇだけだろがコノヤロっ! でも、まぁ、今日ぐらいはいいよな?」
天童「なんだよ勇者君?、話がわかじゃないか?! さぁさぁ、女商人さんも早く行きましょう!」
女商人「……」
勇者「あれ? 急に、固まってどうしたんですか? 」
女商人「あっ、いや……!」アセアセ
353:
女商人「……あそこにある高台、見えます?」
勇者「あっ、高台ありますね。それがどうしたんですか?」
女商人「そこに、大きな木があるでしょ? ほら、見えます?」
勇者「あぁ、あの赤い実がなってるヤツですね?」
女商人「あの実って、病に効く凄く希少価値の高い実なんですよ」
勇者「へぇ?」
女商人「……これから行く街で、仕入れる事が出来たらいいんですけどねぇ」
355:
女商人「でも……希少価値の高い物ですし……仕入れる事が出来るかどうか……」
天童「なぁ?に! 俺に任せておけば100個でも200個でも仕入れてやるばいっ!」
勇者「……なんで、わざわざ買うの?」
女商人「……えっ?」
天童「そりゃ、俺がうまく事やって恰好いい所、見せてよぉ?? 女商人さんを……あっ、いや、なんでもないナンデモナイ……」アセアセ
勇者「あそこにいっぱいあるんだから、自分で取りに行けばいいじゃん。それが一番手っ取り早いじゃん」
女商人「そうか……商品って、仕入れるだけじゃなくて、自分で取りに行くって方法もあるんだ……」
天童「あのなぁ、勇者? あんだけ人目につく場所にあるのに誰も手ぇつけねぇんだぞ? なんか、あるに決まってんだろ! でっけえ魔物がいるとかよぉ!」
勇者「あぁ、そういう事か……でも、女商人さんが取りに行きたいなら、協力しますよ?」
357:
女商人「……えっ?」
天童「あっ、てめぇ! 何、格好つけてやがる! 女商人さんにいい所を見せるのは俺……あっ、いや、なんでもないナンデモナイ……」アセアセ
勇者「女商人さん、どうします?」
女商人「う?ん……気持ちはありがたいんですが……やっぱり、天童さんの言う通り、魔物がいたりしたら危険ですし……」
天童「なぁ?に! 俺が仕入れてやるから、大丈夫ですって! 大丈夫っ!」
勇者「でも、欲しいんでしょ……? あの実、物資が不足してる街に持って行きたんでしょ?」
女商人「はい……それじゃあ、今日はとりあえず、街に行きましょうか? 皆さんも疲れてらっしゃるようですし」
天童「……実は?」
勇者「……どうするんですか?」
女商人「もし、街で仕入れる事ができなかったら、明日の昼に取りに行きたいと思います。……その時は協力してもらっていいですかね?」
天童「なるほど」
勇者「わかりました」
360:
街ーーー
勇者「ふう……ようやく街についたか……」
女商人「そうですね。いい商品があるといいんですが」
天童「じゃあ、早仕入れに行きましょうか? 二人っきりで! ねっ、二人っきりで!」
勇者「おめぇなぁ……? ちょっと必死すぎやしねぇかぁ……?」
女商人「え?っと……勇者さん達は、どうされるんですか?」
天童「あっ、女僧侶さん。こういうのは素人がついてきても邪魔なだけすから! 僕と二人っきりで行きましょう! そう、二人っきりで!」
勇者「あのなぁ……?」
女商人「そ、そういうものなんですか……」
天童「勇者君、チミ達は先に酒場にでも行ってなさい。あっ、それと、これこれ……」ヒョイ
勇者「ん……? 何、これ……?」
天童「命題だよ。さっき届いたから、確認しておけ」
361:
天童「じゃあ、僕達はこれから、商品仕入れに行くから! 勇者君?、頑張ってねぇ??」
勇者「いやいや……!」
天童「うわぁ! なんだかこれって、デートみたいですねぇ? 僕照れちゃうなぁ?」
勇者「おいっ、天童っ! おめぇ、命題放ったらかしにしておいて何処行く気なんだよ!?」
天童「……勇者君」
勇者「な、なんだよ、急に真面目な顔しやがって……」
天童「……君はもう、成長した。一人前だ。だから……きっと、命題だって一人でクリアできるよ? ねっ?」
勇者「そっか、確かに俺、ここ数日で自分でも成長したと思うもんなぁ……」
天童「でしょ、でしょ? だから僕は……!」
勇者「なぁ?んて、言うとでも思ったかオイっ! てめぇも付き合えよ! このインチキ天使っ!」
天童「イ、インチキ天使って事ぁ、ないでしょうっ……!」アセアセ
362:
勇者「今日のお前は、何かおかしいっ! なっ? 実らぬ恋はとっとと諦めて、ちゃんと命題をしましょうっ!」
天童「命題をやるのはおめぇだろうが! それに、実らぬ恋ってなんだよ!? おめぇみたいなダメ人間にそんな事言われたくねぇよ!」
勇者「はいはい……そのダメ人間を更生させるのが、あんたの仕事でしょ? 天使がそんな無責任な事、言っちゃいけません」
天童「おめぇはよぉ! 普段はインチキ天使、インチキ天使なんて言ってるくせに、こ?んな時だけ、都合のいいやつだな!」
勇者「都合のいいのは……おめぇじゃねぇかよ……」
天童「それにお前、この前『命題なんか一人でやってやる』って、言ってたじゃねぇかよ!」
勇者「えっ……それは……」アセアセ
天童「困った時はいつも、俺に頼るんだなぁ、お前は! 男だったらよぉっ! 命題くらい、自分の力でビシッとやってみやがれっ!」
勇者「……」
363:
天童「なぁ?、勇者よぉ……勇者君よぉ……」
勇者「……んっ?」
天童「なぁ、頼むよぉ?? 今回だけは見逃してくれよぉ??」
勇者「な、なんだよ……今度は泣き落としかよ……」
天童「そりゃさ……俺は天界の掟を破ってるよ……? でも、俺マジなんだよぉ?……」シクシク
勇者「おっさん、おっさん……」
天童「俺がさぁ……あの人を想う気持ちは嘘じゃないんだよ……だってさ? あの人、態度には出さないけど、旦那さん亡くして辛いハズだぜ?」シクシク
勇者「ええいっ! いい歳したおっさんが泣くな! 気持ち悪いっ!」
天童「誰かが、心の支えになってやらなきゃ、いけねぇよ、きっと?」シクシク
勇者「わかった! わかったよ! 今回は一人でやってやるからっ! もう泣くな、気持ち悪いっ!」
天童「えっ、ほんとぉ?? うわぁ、勇者君って優しい?! かっこいいなぁ?!」
勇者「おめぇ、絶対思ってねぇだろ? で、でもよぉ……やばくなったら手伝ってくれよな……?」
天童「任せときんしゃいっ!」
364:
ーーーーー
勇者「……ったく、嬉しそうに仕入れに行きやがって。てめぇの面、よく見てみろっての」
女僧侶「勇者さん……私達はどうします……?」
勇者「酒場に行っておけって言われたけどなぁ……俺達、酒飲めないしなぁ……」
女僧侶「未成年ですしね……」
勇者「どうしようかな……? あっ、ちょっと待ってて? 命題だけ確認するから……」
女僧侶「……命題?」
勇者「あっ、なんでもない、なんでもない……! こっちの話!」
女僧侶「?」
勇者「え?っと……命題は……っと……」
365:
勇者「んっ……?」
女僧侶「はぁ……はぁ……」
勇者「……」
女僧侶「はぁ……はぁ……」
勇者「……ここ暑いね? とりあえずさ、酒場でもいいから、涼しい所に行こうか?」
女僧侶「……えっ?」
勇者「命題の確認は酒場でするよ。だから、早く休める場所に行こうよ」
女僧侶「……命題?」
勇者「あっ、いやっ……! なんでもないから、気にしないで……」アセアセ
366:
酒場ーーー
酒場の主人「おっ、見ねぇ顔だな? 冒険者か? らっしゃいっ!」
女僧侶「はい、私達東の街からやってきました」
勇者「とりあえず、何か冷たい飲み物二つ下さい」
主人「はぁ?、東の街って魔物に襲われた所だろ? お前ら、大丈夫だったのか?」ガチャガチャ
女僧侶「ええ、私達その魔物の討伐部隊でしたの」
勇者「東の街は今、少しずつですが、復興も始まってるので、この街の皆さんも支援してあげて下さい」
主人「……お前ら、若そうに見えるけど、強いんだなぁ? へいっ、ドリンク二つお待ちっ!」
女僧侶「ありがとうございます。もう、私喉がカラカラで……」ゴクッ
勇者「じゃあ、俺も……あっ、その前に命題確認しておこっと……」
367:
勇者「え?っと……封筒、封筒っと……あれ? どこやったっけ?」
女僧侶「……」ゴクゴク
勇者「あれっ、あれっ? 何処だ、何処だ? ひょっとして、無くした!?」
女僧侶「……」ゴクゴク
勇者「わっ、びっくりした……薬草の間に挟まってるじゃん……も?う、このアイテムバック使いにくいなぁ……」
女僧侶「……」プファー
勇者「え?っと……うわぁ、タイムリミットは明日かよ……だったら、明日に届けてくれよ……」
女僧侶「……」テクテク
勇者「でも、これって、どういう事なんだろ……?」チビッ
勇者「ブッ……! ちょ、ちょっとっ……! おじさん……!?」
主人「……ん、どうした?」
勇者「これ、お酒じゃないですか!?」
368:
主人「おぉ、特製の麦焼酎だよ。臭いもなくて、飲みやすいだろ?」
勇者「い、いやっ……! あのですね……?」
主人「ウチはね、水にこだわってんのよ、水に。なんなら、ボトルキープしておくか? 気に入ったろ、ソレ?」
勇者「あ、あのっ……! 僕達、未成年ですっ!」アセアセ
主人「……えっ、お前ら未成年なの? だったら、先に言えよ。ここ、酒場なんだからさぁ?」
勇者「す、すいません……」アセアセ
主人「あっ、兄ちゃん! あんたの連れが他の客に絡んでるぞ! ダメだよ、うちは喧嘩はご法度なんだから!」
勇者「女僧侶ちゃんが……? って、女僧侶ちゃんのグラス、空っぽじゃんっ!? なんで!?」
369:
女僧侶「そこの貴方達っ!」
「ん??」「ど?したんですかぁ??」
女僧侶「貴方達はどうして、そんなはしたない格好をしているんですかっ!」
「だって、私達遊び人だし?」「ねぇ??」
女僧侶「そんな短いスカートでは、下着が見えてしまいますよ!」
「別に?、コレ見せパンだし??」「パンツ見せてイケメンよってくるならいいよねぇ??」
女僧侶「ふしだらな……本来、女性があるべき姿は私のようなこういった……」
「そんなダサい格好最悪?!」「そんなのじゃ、イケメンよってこないし?」
女僧侶「ダ、ダサい……」ピクッ
「あんた、彼氏いた事とか、絶対ないでしょ??」「キスもまだなんじゃない??」
女僧侶「……」ピクピク
「デートもした事ないでしょ??」「マジウケるwww」
371:
女僧侶「貴方達っ……!」
「きゃ?、怖い?」「最悪?!」
勇者「ちょ、ちょっと……女僧侶ちゃん、何してるの……落ち着いて……」
女僧侶「放して下さいっ! 勇者さんっ! 今から私が彼女達に女性の嗜みというものを……」
「遠慮しておきま?すwww」「私達、楽しくお酒飲みたいんで?」
勇者「あっ、うん……ごめんね……? 楽し?く、お酒飲んで下さ?い。じゃあ、女僧侶ちゃん、席に戻ろうか……?」アセアセ
女僧侶「放して下さい、勇者さんっ! 放して下さいっ!」ジタバタ
372:
女僧侶「うぅ……」ヒック
勇者「女僧侶ちゃん、落ち着いた……?」
女僧侶「……マスター、さっきの飲み物、もう一杯下さい」
勇者「えっ!?」
女僧侶「早く持ってきて下さい……早く……早くっ……!」ヒック
勇者「い、いやっ……! 女僧侶ちゃん、もうやめた方がいいって! って、あんたも持ってくんな!」
女僧侶「ありがとうございます……」ゴクゴク
勇者(おいっ!)
主人(兄ちゃん、悪ぃなぁ? 俺も酔っぱらいの相手は怖ぇからよぉ? ここは大人しく従っておかねぇと……)
女僧侶「あ?、このお水、なんだか凄く美味しいです!」
374:
ーーーーー
女僧侶「……もう一杯、くらさぁ?い」
勇者「女僧侶ちゃん、大丈夫……? 呂律が回ってないみたいだけど……」
女僧侶「大丈夫れ?す……それより、勇者さん……」グスッ
勇者「ど、どうしたの……?」
女僧侶「私……あの子達にバカにされちゃいました……」グスッ
勇者「いやいや、そんな事ないって!な、なにかの勘違いだって……!」
女僧侶「この服……ダサいって言われちゃいました……」グスッ
勇者「そんな事ないよ! 俺は可愛いと思うよ!?」
女僧侶「……本当ですかぁ?」
勇者「あぁ、本当、本当! 可愛い、凄く可愛いっ!」
女僧侶「……じゃあ、私とデートしてくれますか?」
勇者「……えっ?」
376:
女僧侶「私、あの子達に……デートもした事ないってバカにされちゃいました……」
勇者「い、いやぁ……バカにしてたワケじゃないと思うよ……?」アセアセ
女僧侶「そりゃ、私はデートした事ありませんよ……? でも、それは魔法学校に行って……教会で修行して……」
勇者「う、うん……! そうだね……!」
女僧侶「毎日が忙しかったからですよ……あの子達みたいに日々、ぐーたらぐーたら、過ごしてたワケじゃないからですよ……」
勇者(あれ? なんだか心が痛いぞ?)
女僧侶「それなのに……! あんな風にバカにされるって、酷すぎますっ……! だから、勇者さんっ! 私とデートして下さい!」
勇者「い、いやぁ……」
女僧侶「デートして下さいっ!」
377:
勇者「いや……でもさぁ……?」
女僧侶「あっ、勇者さん嫌がってる……やっぱり、私の事ダサいって思ってるんですね……?」グスッ
勇者「いや、そうじゃなくて……デートっていうのはやっぱり、本当に好きな人とした方がいいと思うよ……?」アセアセ
女僧侶「私、勇者さんの事好きですよ?」
勇者「それは、友達として……じゃん……?」
女僧侶「いえ、異性として……一人の男性として、好きです」
勇者「ちょ、ちょっと……女僧侶ちゃん、酔っぱらいすぎだよ……! 俺みたいな奴の何処を好きになるんだよ……」アセアセ
女僧侶「……勇者さん、優しいから」
勇者「……えっ?」
378:
女僧侶「だって、今日だって……私の荷物、持ってくれて……優しかったから……好きです……」
勇者(う、うおっ! アレって、本当に効き目あったのかよ!)
女僧侶「だから……私とデートして下さい」
勇者「う、うんっ……! そ、そういう事だったら……ぜ、全然いいよ……!」
女僧侶「ふふ、やっぱり勇者さんって優しいですね? じゃあ、明日のお昼にデートしましょうね?」
勇者「う、うんっ……!」ドキドキ
女僧侶「約束ですよ? 忘れないで下さいね?」
勇者「そ、そんなの忘れるワケないじゃんっ!」
女僧侶「じゃあ、指切り……しましょう……ゆびきりげんま?ん……って……ZZz……」スースー
勇者「あ、あれっ? 眠っちゃったか……飲み過ぎたもんね……」
381:
天童「おぉ?い! 勇者いるかぁ?!?」ガラッ
勇者「わっ、天童!? 大声出すなよ? 女僧侶ちゃん、寝てるんだからさ?」
天童「……なぁ?んで、女僧侶ちゃんがこんな所で寝てるんだよ? そんなキャラじゃねぇだろ?」
勇者「まぁ、色々とあってね……」アセアセ
天童「?」
勇者「ところで……女商人さんは……?」
天童「あぁ、ちょっとショックな事があったみたいでよぉ……先に宿屋に行って休んでるってさ……こういう時には酒でも飲んでうさ晴らしした方がいいのによぉ……」
勇者「……仕入れでまた変な商品、捕まされちゃったの?」
天童「バ、バカ?ん! 俺が着いてたから、仕入れは上手くいったよ! 仕入れはね?」
勇者「?」
383:
天童「ところで……勇者……」
勇者「ん……?」
天童「すまんかったっ!」
勇者「えっ、えっ? ちょっと、いきなりどうしたの?」
天童「俺は、危うく……天界の掟を破ってしまう所だった……俺の仕事はお前の命題をサポートする事なのによぉ……」
勇者「えっ? 急にどうしたの?」
天童「どうしたもなにも、僕は君の事を思ってですねぇ……!?」
勇者「あっ、わかった! お前、女商人さんに振られたんだろ?」ニヤニヤ
天童「ち、違ぇよぉ! なんで、お前そんなに勝ち誇った目ぇ、してんだよ! よくわからんけど、くやしか?! くやしか?!」
勇者「だぁ?って……急にそんなに態度が変わるっておかしいじゃん……」ニヤニヤ
天童「そ、それは……理由があってだな……」アセアセ
384:
勇者「理由ってなんだよ?」
天童「……」ヒョイ
勇者「ん、封筒……? 何これ……?」
天童「神様から……俺に届いたんだよ……」
勇者「えっ? 命題がまた届いたの?」
天童「命題じゃねぇよ……まぁ、とりあえず、読んでみろよ……」
勇者「え?っと……なになに……?」ガサゴソ
386:
天童
天界の掟を破ったら即・死亡
388:
勇者「……これ、命題じゃねぇか?」
天童「神様には……全て見透かされてたってワケだ……こうやって、俺に警告してくれたんだなぁ……」
勇者「……だから、女商人の事は諦めるってワケね」
天童「あの人は、人間界でちゃ?ぁんと幸せになるべきだよ……彼女を幸せにするのは俺じゃねぇんだよ……」シクシク
勇者「ド、ドンマイ……天童……」
天童「うるせっ! おめぇに慰められたくねぇよっ! こうなりゃ、おめぇの更生、とことんスパルタでやってやるから覚悟しておけよ!」
勇者「お、俺に当たるんじゃねぇよ……」アセアセ
天童「うるせぇ! おめぇの命題はどうだったんだよ! とっとと見せやがれ!」
勇者「う、うん……はい、これ……」
389:
勇者
X月X日 午後3時までに
一番大切な約束を守らなければ即・死亡!
395:
天童「ふ?む……『一番大事な約束を守らなければ即・死亡か』……」
勇者「約束……」
天童「まぁ、よぉ? 今回は楽勝そうじゃねぇか! 今、午後8時だから、明日の3時まで……後、19時間か……」
勇者「うわぁ……なんか今回は長いねぇ……?」
天童「まぁ、大事な約束を守ればいいだけの話じゃねぇか! ところで、お前……大事な約束って、何かわかってるよなぁ……?」
勇者「わかってるよ! 明日の昼に……」
天童「明日の昼?? バァ?カ! 何、言ってるんだおめぇっ!?」
勇者「……えっ?」
396:
天童「勇者君……よく思い出しなよ……? 勇者君の『大事な約束』ってのは、今この瞬間だよ?」
勇者「えっ……? 今、この瞬間……? 俺、何か約束したっけ……?」
天童「ほらほら、街に着いた時に言ったじゃんっ! よ?く、思い出して? ねぇねぇ?」
勇者「街に着いた時……え?っと、俺何か言ったっけなぁ……?」
天童「も?う、勇者君は鈍いんだからぁ……じゃあ、ヒント出すね?」
勇者「お、おうっ……」
天童「ヒントは……宴会……」
勇者「……はぁ?」
天童「あれ、まだわからないの? じゃあ、も?っとヒント出すね? ……今日ぐらいは酒場でお酒を飲んでもいいって勇者君、言ってたよね?」
勇者「……あっ! そういや、俺、そんな事言ったかも!」
397:
天童「という事で……マスターっ! 生中と枝豆をお願いしますっ!」
主人「あいよっ!」
勇者「おいおい、ちょっと待てちょっと待て……!」
天童「いやぁ?、久しぶりのお酒ばいっ……! カァ?! この日をどんなに待ち望んだ事か……」
主人「あいよっ! 生中と枝豆お待ちっ!」
勇者「いやいや、待て待て……! これは大事な約束じゃねぇぞ! 絶対っ!」
天童「なぁ?に、固い事言っちゃいかんばいっ! それじゃあ、いただきまぁ?すっ!」ゴクゴク
主人「追加の注文があったらどんどん言ってくれよな!」
勇者「あっ……! い、いやっ……! この一杯だけでいいですっ!」
天童「カァ?! 五臓六腑に染みるばいっ……! あっ、大将っ! 追加で生、ジョッキで下さいなっ!」
399:
勇者「おめぇはよぉ! 調子に乗ってんじゃねぇぞっ!」
天童「うわぁ……勇者君怖?い……今日は宴会してもいいって『約束』したのに……」
勇者「これは『大事な約束』じゃ、ねぇよっ!」
天童「勇者君、勇者……」
勇者「……あぁ? なんだよ?」
天童「……本当にそう言える?」
勇者「……はぁ?」
天童「もし、これが『大事な約束』だったら、勇者君は死んじゃうんだよ? ねぇ、ねぇ?」
勇者「それは……でも……これは違うだろうよ……」
天童「ねぇねぇ、本当の本当にそう言える? 100%自信を持ってそう言える? もし、間違いだったら、勇者君は死んじゃうんだよ?」
勇者「……」
402:
天童「あらっ! 枝豆がもうないぞっ! 不思議だっ! こりゃ、不思議だっ!」
勇者「……おめぇはよぉ、白々しいヤツだなぁ」
天童「ねぇねぇ、勇者君?? 僕、追加で注文したいなぁ?? しても、いいかなぁ??」ニヤニヤ
勇者「……」
天童「勿論、勇者君がダメって言うなら僕はしないよ? でも、僕勇者君と今日宴会してもいいって『約束』してような気がするんだけどなぁ??」ニヤニヤ
勇者「調子に乗りやがって、この野郎……」
天童「ねぇ、勇者君? 追加で注文してもいい? ねぇ、ねぇ?」ニヤニヤ
勇者「す、好きにしろよ……」
天童「うわぁ?! 勇者君って優しいなぁ! ……という事で大将っ! メニューの端から端までお願いしますっ!」
勇者「お、おいっ……! そんな事したら、金なくなっちまうぞ……!」アセアセ
403:
女僧侶「……ん?」ムクッ
勇者「あっ、女僧侶ちゃん、起きた……?」
女僧侶「……なんだか、美味しそうな匂いがします」
天童「ああっ、先に始めさせてもらってるよ! ホレ、女僧侶ちゃんも一緒に食べるばいっ!」
女僧侶「違います……天童さんの飲んでる……それ……」
勇者「!」
女僧侶「すみません、マスターっ! 私にも、これと同じ飲み物下さい?!」
主人「あ、あいよっ……!」アセアセ
天童「あらぁ?、女僧侶ちゃんって……酒いけるタチなのねぇ……」
勇者「感心してる場合かっ! おめぇも天使なんだったら、止めやがれっ!」
405:
ーーーーー
女僧侶「ふふ、このジュースも、とっても美味しいですね?」ゴクゴク
天童「あ、あらぁ?? 女僧侶ちゃんって……お酒、強いんだねぇ……?」
勇者「女僧侶ちゃん、大丈夫? ちょっと、飲み過ぎなんじゃない……?」アセアセ
女僧侶「ふふ、大丈夫ですよ? 心配してくれてるんですか? やっぱり、勇者さんって優しいですね?」ニコッ
天童「あれ、あれ……? 何、このいい雰囲気……? ねぇ、君達、僕が来る前に何かあったの?」
勇者「えっ……! いやっ……! それは……」アセアセ
女僧侶「ふふ、天童さんには秘密です……ねっ、勇者さん?」クスクス
天童「あんらぁ……な?んか、よくわからんけど、くやしかぁ?! くやしかぁ?!」
勇者「……」
406:
女僧侶「マスター、もう一杯いただけますか?」
主人「ごめん、姉ちゃん……もう品切れ……というか、あんたら飲み過ぎなんだよ……」
女僧侶「え??」
天童「まぁまぁ、女僧侶ちゃん……それじゃあ、今日はそろそろお開きとしましょうか……」
女僧侶「私……もっと飲みたいです……」
天童「まぁ、またの機会があるからさっ? なっ、近いうちにまた宴会しようぜ、勇者?」
勇者「……ヤダ」
天童「……ぬ?」
勇者「……もう、安易な約束しない」
天童「そうそうっ! それだよそれっ!」
勇者「……はぁ?」
407:
天童「俺がこの宴会通して言いたかった事……それは、安易な約束事は身を滅ぼすぞって事なんだよ!」
勇者「……はぁ?」
天童「おめぇもこれで懲りただろ? いやぁ?、結果オーライだったけど、勉強になったからよしとしようっ!」
勇者「……ん?」
天童「やっぱり、『大事な約束』ってのは、誰かの役に立ちたいとか、そういう気持ちから生まれる……」
勇者「……おい、お前、今結果オーライって言っただろ?」
天童「え、えっ……?」
勇者「結果オーライって言ったよなぁ? 確かに聞こえたぞ?」
天童「勇者君、君は何か勘違いをしている……よく聞いて下さい……『大事な約束』というのは……」
勇者「うるせっ! なぁ?に、綺麗事言って纏めようとしてやがる! あんだけ、ハメ外しておいてよぉ?!」ギャーギャー
天童「い、いいじゃねぇか! 久しぶりの酒なんだったんだからっ! それに、おめぇだって勉強になったんだからいいだろっ!」ギャーギャー
409:
ーーーーー
天童「じゃあ、俺は先に女僧侶ちゃん、送り届けるから、お会計よろしくな?」
女僧侶「よろしくお願いします」ペコッ
勇者「もう二度と宴会はしない……絶対にだ……」ブツブツ
天童「おい、勇者? 『一番大事な約束』は忘れんなよ?? 明日の昼なんだからよぉ??」
女僧侶「忘れないで下さいね?」ニコッ
勇者「あっ……う、うん……わかったよ……」ドキドキ
天童「じゃあ、女僧侶ちゃん行こうか……って、あんたもう、フラフラじゃないの!」
女僧侶「そ、そんな事……ないですよ……? ちょっと、ここの地面がグニャグニャしてるだけすよ……」フラフラ
勇者「お、お?い……怪我しないように帰りなよ??」
410:
勇者「え?っと……それじゃあ、お会計よろしいですか……?」
主人「……ほれ、代金表だ」
勇者「え?っと……ゲッ……!」
主人「……」
勇者「これ、マジっすか……?」アセアセ
主人「そりゃ、あんだけ飲んで食ったら、そうなるわなぁ……? 言っておくけど、うちは良心的な店だぜ……?」
勇者「えっ、いやっ……それはわかってますけど……あのっ……」
主人「……まさか、金ねぇってワケじゃねぇだろなぁ?」
勇者「いやっ、ある事はあるんですけど……そうなったら、これからの旅が……」アセアセ
主人「……」
勇者「な、なんとかなりませんかねぇ……?」
411:
主人「……ったく、じゃあよ?」
勇者「まけてくれるんですか?」
主人「うちの麦焼酎は、水にこだわってるって言ってただろ?」
勇者「あっ、言ってましたね?」
主人「その水は、この街の近くの洞窟の中にある、地底湖の天然水なんだ」
勇者「へぇ?、そんな所から仕入れてるんですか……」
主人「ただよぉ……最近、魔物の動きが活発で、その水仕入れるのに、苦労してんだよ」
勇者「は、はぁ……」
主人「兄ちゃん、東の街の魔物討伐した猛者なんだろ? だったら、仕入れてきてくんねぇかな?」
勇者「……そうしたら、まけてくれるんですか?」
主人「あぁ、俺も男だよ。約束する」
勇者「!」
412:
勇者「えっ……約束……ですか……?」アセアセ
主人「……なんだよ、いい話じゃねぇかよ? 不満なのか?」
勇者「い、いやっ……! そういう事じゃ、ないんですが……」
主人「?」
勇者「こ、これ……大事な約束なのかな……? それとも、お金払って済ませた方がいいのかな……?」
主人「?」
勇者「あぁっ! でも、もし『大切な約束』だったら、俺死んじゃうし……どうしよどうしよ……」アセアセ
主人「なぁ?に、ブツブツ言ってんだよ? どうすんの? やってくれるの?」
勇者「あっ……! そ、それはですねぇ……!」アセアセ
413:
洞窟前ーー
勇者「も?う……深夜0時に洞窟探索なんてさぁ……」
勇者「暗いしさぁ……怖いしさぁ……眠いしさぁ……」
勇者「……」
勇者「……それに、女僧侶ちゃんとの約束もあるしさぁ?」シクシク
勇者「……」
勇者「もういいよっ! さっさと終らせようっと! じゃあ、行く……ん……?」
警備兵「……」
414:
勇者「あの?? ちょっと、どいてもらえませんか……?」
警備兵「ん……? 洞窟探索の方ですか?」
勇者「うん、この洞窟の地底湖の水が欲しいんだ。だから、通してよ?」
警備兵「申し訳ありませんっ……! この洞窟は魔物の巣になっていて、危険ですので、現在封鎖しています!」
勇者「……危険だからさぁ? 冒険者の俺が取りに行くんじゃん」
警備兵「では、どうしてもというのなら……街長から、通行許可証を頂いてきて貰えますか……?」
勇者「えっ、何? 入るのに、そんなのがいるの?」
警備兵「はっ……! しかし、通行証さえあれば、探索を許可します。それは私の誇りにかけて約束させて頂きますっ!」
勇者「!」
415:
勇者「あんたの誇りなんかいらねぇんだよっ! も?う……どうして、そんな約束、勝手にしちゃうかなぁ?」
警備兵「?」
勇者「あ?っ……これがもし『大事な約束』だったら、俺死んじゃうし……どうしよどうしよ……」アセアセ
警備兵「どうか……なされたんですか……?」
勇者「あぁっ! もうっ! 街長さんに通行証さえ、貰ってくれば通してくれるんだね!?」
警備兵「はっ! 約束しますっ!」
勇者「うるせっ! 約束なんかもうこりごりだよっ! じゃあ、街長さんの所へ行ってくるよっ!」
警備兵「はっ!」
419:
街長家ーー
勇者「す、すいませんっ! 街長さん、いますかっ!? 街長さんっ!」ガンガンッ
街長「……」ムスッ
勇者「あの、 街長さんですか!? 実はお願いがありましてね……」
街長「……あんた、今何時だと思ってるの?」ムスッ
勇者「えっ……? え?っと……今は、1時前ですね……?」
街長「そうだね。1時前だね? ワシ、寝てたんだけど……」
勇者「い、いやぁ……申し訳ありません……」アセアセ
街長「……と、いう事で用件は明日にしてくれ。ワシ、寝る」
勇者「い、いやっ……! ちょっと待って下さいよっ……!」アセアセ
420:
街長「も?う……何だよお前……ワシ、眠いんだからよぉ……」
勇者「あ、あのっ……! 地底湖ある洞窟の通行証貰えますか……?」
街長「あぁ? ダメダメ……あそこ、魔物の巣なってて、今は危険だから……」
勇者「いえっ、大丈夫ですっ! 実は僕、東の街の魔物の討伐部隊だったんですよ! 腕っぷしには自信あちますからっ……!」
街長「……本当? あんた、そんな風には見えないんだけど?」
勇者「い、いえっ……! 大丈夫ですっ! 僕、絶対に無事に帰ってきますから、通行証下さいっ!」
街長「う?ん……じゃあ、また明日来てくれる……?」
勇者「えっ!? いやっ! 明日って……なんで、今くれないんですか……?」アセアセ
街長「やかましいっ! こっちは眠ぃんだよっ!」
421:
街長「明日来てくれたら、手続きしてあげるから……ちゃんと約束するから……」
勇者「!」
街長「ねっ? 今は寝かしてくれよ?」
勇者「……は、はい」
街長「だいたい、あんたさ? こんな時間に訪ねてくるって、ちょっと常識がないんじゃないの?」
勇者「も、申し訳ありません……」アセアセ
街長「わかったんなら、とっとと帰ってくれっ! ……全く、バカの相手は疲れるのぉ」
勇者「……」
422:
宿屋ーーー
天童「おぉ、遅かったじゃねぇか? どうしたんだ?」
勇者「……」
天童「女僧侶ちゃんと、女商人さんはとっくに寝ちまったぞ? なにしてたんだ、おめぇ?」
勇者「うるせぇっ! 全部お前のせいだぞっ! たらふく飲みやがってっ!」
天童「な、なにそんなに怒ってるんだよ……あれ、八割ぐらいは女僧侶ちゃんが飲んだんだぜ……? それに、お前も結構喜んで食ってたじゃねぇかよ?」アセアセ
勇者「うるせぇっ!」
天童「ま、まぁよ……なぁ?んでお前がそんなに怒ってるのかわかんねぇけどよぉ……? 命題忘れんなよ……?」
勇者「……そのせいで明日はもう、大忙しだよちくしょう」
423:
翌朝7時ーー
天童「……ふわぁぁ、よく寝たなぁ。 お?い、勇者起きろ?」
天童「今日の昼はよぉ……命題の……ん……?」
天童「……」キョロキョロ
天童「あ、あれぇ? 勇者のヤツ、何処行ったんだ……?」
天童「あいつが、こんな時間に起きるなんてねぇよなぁ……どうしたんだろ……?」
天童「……」
天童「……便所かな?」
424:
勇者「街長さんいますかっ! 街長さんっ!」ガンガンッ
街長「……」ムスッ
勇者「あっ、街長さん!おはようございますっ!」
街長「……君ねぇ? 確かにワシは明日は来いといったけどさぁ?」
勇者「はいっ! だから、こうやって来ました!」
街長「……ちと、早すぎやないかい?」
勇者「えっ?」
街長「まだ、7時だよ君……? ワシ、朝飯も食っとらんよ……」
勇者「い、いやぁ……こっちは緊急なものでして……」アセアセ
425:
街長「……とりあえず、朝飯食うから、待ってなさい」
勇者「い、いやっ……! 朝飯なんて後でいいじゃないですか! 先に通行証下さいよっ!」
街長「君、な?んでそんな必死なのよ? ちょっと、君常識なさすぎだよ?」
勇者「い、いやぁ……こっちは命が……」グゥー
街長「……ん?」
勇者「……あっ」グゥー
街長「……ねぇ、君朝飯も食わずに、どうしてそんなに必死なの?」
勇者「……い、いやぁ」
街長「とりあえずさ……? ご馳走してあげるから上がりなよ? 通行証の話はその後でいいでしょ?」
勇者「す、すいません……」
426:
ーーーーー
勇者「な、なんか……突然お邪魔した上にこんな事までして頂いて、申し訳ありません……」
街長「なぁ?に、冒険者ってのはそれくらい生きのいい方がいいもんじゃよ。ワシの若いころを思い出すよ」
勇者「あ、ありがとうございます……」
街長「それで……確か、通行証の話じゃったよな?」
勇者「あっ、そうですっ! 通行証頂けますか!?」
街長「う?ん……」
勇者「あ、あれ……? どうしたんですか……?」
街長「いやぁ……君みたいな生きのいいヤツ、ワシは好きなんだけどねぇ……やっぱり、まだ若いし……どうしよう……?」
勇者「えっ、えっ……?」
427:
街長「いやぁ……最近、この街はモンスターの巣になっている洞窟が近くにある街って、悪い噂が立っててね……まぁ、事実なんだけど……」
勇者「は、はぁ……」
街長「その洞窟で、死人が出たとなったらさぁ……? やっぱり、この街のイメージダウンは避けられないじゃん……?」
勇者「い、いやっ! 大丈夫ですっ! 僕、東の街を襲った魔物の討伐部隊でしたから!」
街長「えっ……? それ、本当……?」
勇者「はいっ! 腕っ節には自信はありますっ!」
街長「え?、そんなきゃしゃな身体で……? ちょっと、信じられないなぁ……?」
勇者「い、いやっ……! 本当ですっ! 信じて下さいっ!」アセアセ
街長「う?ん……」
428:
街長「よしっ! じゃあ、こうしようっ!」
勇者「……ん?」
街長「この街から、さらに北に行った所に広?い平原があるんじゃ」
勇者「は、はぁ……?」
街長「そこのど真ん中に、青い木の実がなった大きな木が生えておる」
勇者「ま、まさか……ソレ、取って来いって話じゃないでしょうね……?」アセアセ
街長「おっ、物分りがいいじゃないか? しかし、最近その平原には魔物が溢れておるから、簡単にはいかんぞ?」
勇者「うわぁ……魔物もいるのかよ……」
街長「もし、その青い木の実を無事にとって来る事ができたのなら、君の力を認めて……」
勇者「……認めて?」
街長「この通行証を渡すと、や……」
勇者「わぁ?っ! わぁ?っ!」
429:
街長「な、なんじゃ……急に大声を出しよって……心臓に悪いわいっ……!」ビクビク
勇者(もう、約束こりごりだよ……なんか、状況がどんどん悪化していってるような気がするなぁ……どうしよう……)
街長「ど、どうする……? このテスト受けるのか……? 受けないのか……?」
勇者(あ?、でも通行証がないと、洞窟には入れないし……もう、どうしよう……?)
街長「……なんじゃ? 急にしおらしくなりおったな?」
勇者「……街長さん」
街長「……ん?」
430:
勇者「その青い木の実とってきたら、通行証を渡してくれるんですね……?」
街長「えっ……? ちょっと、顔近いよ……怖いよ……渡すからさ……?」アセアセ
勇者「とってきた後に、新しい条件つけるのは無しですよ? その青い実をとってきたら、通行証渡してもらいますよ?」
街長「うんっ、渡すっ! 渡すからっ! ちょっと、君怖いって……!」アセアセ
勇者「約束ですよ!? 絶対に守ってもらいますからねぇ!?」
街長「う、うん……約束するっ……! ワシ、約束するっ……!」
勇者「約束守れなかったら、即・死亡ですからねぇ!?」
街長「うわっ! 何、その脅し文句! 君、おっかないよ……」アセアセ
431:
ーーーーー
勇者「あ?、もう……また約束しちゃったよ……もう、頭がこんがらがってきた……」
勇者「え?っと……一度、やる事を整理して落ち着こう……」
勇者「まず、青い木の実をとってきたら……街長さんに通行証が貰えて……」
勇者「通行証を渡せば……洞窟に入れるようになって……」
勇者「洞窟から水を取って、酒場に持って行って……」
勇者「……」
勇者「……女僧侶ちゃんとデートすると」モジモジ
勇者「あ?……とりあえずは木の実を取りに行く所からか……くそっ、時間ないし、出発するかっ!」
433:
その頃ーー
女商人「あっ、天童さん……」
天童「あらっ! 女商人さん、どうしましたか?」
女商人「女僧侶さん、二日酔いが酷いようで……今日はちょっと……」
天童「あらぁ……昨日調子乗って飲ませすぎたかなぁ……? 女商人さん、すんましぇ?んっ!」
女商人「いえ、元々は私の我儘ですから。女僧侶さんは、今日はゆっくり、体調を整えてもらいましょう」
天童「本当、申し訳ありませんねぇ……俺の力不足のせいで……」
女商人「いえ、いくら天童さんでも、在庫のない商品は買えませんよ。昨日は勉強になりましたし、ありがとうございますっ!」
天童「い、いやぁ?」デレデレ
434:
天童「まぁ、でもよぉ? 俺と勇者だけでも付き合うんで、今日は頑張りましょうよ!」
女商人「え、えっ……!? 本当に協力して頂けるんですか……?」
天童「だって、昨日『約束』したでしょ? 『赤い木の実を取りに行くのを協力する』って」
女商人「あ、ありがとうございます……」
天童「珍しく、勇者のヤツもやる気になってますから! 俺達に任せて下さいっ!」
女商人「ありがとうございますっ……! あの?、ところで勇者さんは……?」キョロキョロ
天童「あっ、アイツ朝から、姿が見えないんですよ……おっかしいなぁ……」
439:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……平原、平原……」
勇者「平原って何処だよ、も?う……一時間近く走ってるぞ……?」
勇者「北はこっちだから……方角はちゃんと合ってるハズだし……」アセアセ
勇者「え?っと、今、何時だ……? うわっ……! もう9時じゃんっ!」
勇者「も?う……後、6時間しかないじゃん……」シクシク
勇者「これ、時間間に合うのかなぁ……?」
魔物「グルルルル……」
勇者「……ん?」
440:
勇者「う、うわっ……魔物だっ……!」アセアセ
魔物「ガルルルル……」
勇者「くそっ、アストロンっ! ……って、ちょっと待てちょっと待てよ……?」
魔物「……ガルっ?」
勇者「……そ、そうだ。 この前、この魔法使ったら、戦闘に30分近くかかったんだ」アセアセ
魔物「ガルル……」
勇者「こんなの使ってる場合じゃないよ……俺には時間がないんだから……」アセアセ
魔物「……キシャアっ!」
勇者「う、うわっ……! きたっ……! くそっ、怖いけどやってやるよぉっ!」
441:
ーーーーー
女商人「あの?? 天童さん……?」
天童「は、はいっ! どうしたとですか!?」
女商人「勇者さん……どうしたんですかねぇ……? もう、9時半ですよ……?」
天童「あのバカ、なにしてやがるんだろ……? いくらアイツでも、忘れるわけないのに、おっかしいなぁ……」
女商人「正午には出発したいんですけどねぇ……」
天童「あっ、ハイっ! それぐらいには戻って来ると思いますよ!」
女商人「……何か急に予定でも入ったんでしょうか?」
442:
天童「いやぁ?、いくらなんでも、それはないと思いますよ? 昨日、あれだけ忠告したんだし、命題ですし……」
女商人「……命題?」
天童「あっ、いやっ……! なんでもありましぇ?ん」アセアセ
女商人「……やっぱり、見ず知らずの私の為に、危険な事はしたくありませんよね」
天童「い、いやっ……! そ、そんな事ないですよ……! 女商人さんの為なら、こっちは命だってかけますばいっ!」
女商人「ふふ、天童さん? お気持ちだけで十分ですよ。これは私の問題ですし、勇者さんが正午までに戻って来なかったら、私一人で行きます」
天童「い、いやっ……! ちょ、ちょっと俺、アイツ探して来ますよ……! 多分、酒場にでもいると思いますからっ……!」
443:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……」
魔物「ブギュ……」
魔物「キュ?ン……」
魔物「クゥ?ン……」
勇者「な、なんだよこいつら……仲間ばっかり呼びやがって……」
勇者「ち、ちくしょう……結局、30分以上かかっちまったじゃねぇか……」
勇者「くそぉ……こんな事してる場合じゃないのに……早く、青い木の実を取りに行かなきゃ……」
勇者「……ん? 木の実?」
勇者「あれっ……? 木の実って……なんかあったような……なんだったっけ……」
勇者「……う?ん」
勇者「……って、こんなもたもたしてる時間はないんだよっ! 早く青い木の実取りに行かなきゃっ! 時間がないんだからっ!」
444:
酒場ーーー
天童「あの?? すんましぇ?ん?」
主人「おう、 昨日兄ちゃんの連れか! 水は持ってきてくれたのか!?」
天童「へ……? 水…… ? なんの事ですかね……?」
主人「なんだよ、まだなのかよ! まさか、約束すっぽかす気じゃねぇだろうなぁ……」
天童「!」
主人「あの兄ちゃん、人が良さそうだったから信用したのに……ちくしょう……俺、裏切られたのかなぁ……?」
天童「あ、あのっ……!」
主人「……ん? どうしたの? あっ、あんたが昨日の分のツケ払ってくれるの?」
445:
天童「あ、あいつ……昨日、大将と何か約束したんですかねぇ……?」アセアセ
主人「あれ? あんた、仲間なのに聞いてないの?」
天童「す、すんましぇ?ん……詳しくお聞かせ願えますか……?」
主人「いや、だからよぉ? あの、兄ちゃんが、昨日の飯代払えねぇって言うからよぉ……」
天童「……あっ」
主人「地底湖の水、取ってきたら代金まけてやるって、約束したんだよぉ?」
天童「あ、あのバカっ……! 昨日、安易な約束事は身を滅ぼすって警告しただろがっ……! まぁ、俺にも責任はあるけどよぉ……!」
主人「?」
446:
平原ーーー
勇者「はぁ……はぁ……」
勇者「あった……! あれが青い木の実のある大木だっ!」
勇者「よしっ……後は木の実を取って……」
勇者「……」
勇者「通行証もらって……洞窟で水取って……女僧侶ちゃんとデートして……」
勇者「……」
勇者「……やる事、多すぎて嫌になってきた」
勇者「……」
勇者「くそっ! 考えたら、負けだっ! ちくしょうめっ!」
447:
勇者「……ん?」
魔物「ガルルルル……」
魔物「グルルルル……」
魔物「キシャアっ!」
勇者「そうだよ……この辺、魔物がいるって言ってたなぁ……」
勇者「魔物も倒さなくちゃいけないんだ……も?う……これ以上、やる事増やさないでくれよ……」シクシク
勇者「ええい! ダメだダメだっ! 考えちゃダメだっ! ちくしょうっ! 魔物共、かかってきやがれっ!」シャキン
魔物「キシャアァァっ!」
448:
ーーーーー
天童「えっ!? それでアイツ、あんたとも『約束』したんですか?」
街長「あぁ、青い木の実をとってきたら、通行証を渡すと約束したぞ?」
天童「カァ?、バカ?ん! バカ?んっ! 酒場の件は、俺にも責任あるかもしれねぇけど、ここまでくると、もう俺関係ねぇよ?」
街長「?」
天童「それで……街長さん、アイツは今、何処に……?」アセアセ
街長「あぁ、ここからずっと北の平原に行っとるわ」
天童「な?んで、そんな所行ってんだよぉ……俺、もう嫌だよ……あぁっ! でも、あいつのサポートが俺の仕事だし……」イライラ
街長「?」
天童「それに、俺にも多少は責任あるし……ちくしょうっ!」
街長「お、おおっ……君も急に大声出して……君達って、ヒステリックなコンビだねぇ……?」アセアセ
天童「あ?んなバカと一緒にしないでもらいたいばいっ! ちくしょうっ! それじゃあ、俺も北の平原行ってきますわ!」
街長「お、おぅ……気をつけるんじゃぞ……?」
449:
AM11:00
ーータイムリミットまで後、4時間
454:
ーーーーー
女商人「……」
女商人「どうしたんでしょう……天童さんまで戻ってこなくなっちゃいました」
女商人「もう、十一時なのに……なにか急用でも出来たのかしら……」
女商人「……」
女商人「……後、一時間だけ待って、戻ってこなかったら、一人で行きましょう」
女商人「やっぱり、勇者さん達に甘えてたら、申し訳ないないですし、これからの商売の為にも自分一人でやる力をつけませんとね!」
455:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……」
魔物「プギュ……」
魔物「キュ?ン……」
魔物「クゥ?ン……」
勇者「見たか、この野郎っ……! 俺だって、もう一人前なんだこの野郎っ……!」
勇者「ふ、ふぅ……まず、これで『約束』一つクリアだ……この、青い木の実を街長さんの所に持って行って……」
勇者「……しかし、これマズそうな木の実だなぁ? もっと赤とかだったら美味しそうなのに……」
勇者「……」
勇者「……ん?」
456:
勇者「……あれっ?」
勇者「赤い木の実って……俺、何か大事な事を忘れてる気がするぞ……? え?っと、なんだろ……?」アセアセ
勇者「女僧侶ちゃんと約束して……違う、その前っ……! 天童と宴会の約束して……違う違うっ! もっと前っ!」
勇者「え?っと……え?っと……」アセアセ
勇者「あっ! そうだ女商人さんだ! 女商人さん! 女商人さんだよ、も?う……」
天童「やぁ?っと、思い出したか、このウスラ馬鹿っ!」ゼェゼェ
勇者「天童!?」
天童「な?んで……こんな事に……あっ、ダメ……ちょっと、お水飲んで休ませて……? もう、ここまで走って来て、僕ヘロヘロなの……」ゼェゼェ
勇者「……」
457:
ーーーーー
勇者「……天童、大丈夫?」
天童「いやぁ……ちょっと休んだら、なんとか回復したばい……って、そうじゃねぇよっ!」
勇者「!」ビクッ
天童「何でこんな事になってるんだよ! 俺、昨日警告してやったのによォ?!?」
勇者「い、いや……それは……なんか俺にもよくわかんない……かな……?」アセアセ
天童「今回の命題は楽勝だったんだよ! 自分で自分の首、締めやがって!」
勇者「……だって」
天童「酒場の主人との約束……警備隊さんとの約束……街長さんとの約束……」
勇者「……うぅ」
天童「お前、今、いったいいくつ約束してんだよ!?」
勇者「うぅ……天童……ど、どうしよう……?」アセアセ
458:
天童「どうしようじゃねぇよ! バカっ! 3時まで後、4時間しかねぇんだぞ! どれが一番大切な約束なんだよ!?」
勇者「……それは」
天童「……」
勇者「……一番大切な約束は」
天童「……」
勇者「女商人さん……女商人さん、一番一生懸命だったもん……」
天童「そう思うんだったら、それを信じて行けっ!」
459:
勇者「……でも」
天童「……あぁ?」
勇者「それじゃあ、他の約束はどうすんだよ? 酒場の主人とか……」
天童「バカ?! も?うっ! バっバっバカ?んっ! もうっ!」
勇者「……」
天童「自分がお金まけてもらう為に水取ってくるのはなぁ! 『約束』って言わねぇんだよっ!」
勇者「……」
天童「『取引』って言うんだよっ!」
460:
天童「ほいほい皆と約束しやがって……そういういい加減な安請け合いはなぁ? 結局、皆を裏切る事になっちまうんだよっ!」
勇者「!」
天童「……お前なぁ? そもそも、最初に約束したのは女商人さんだろ?」
勇者「う、うん……」
天童「女商人さんがよぉ……? 誰かの為に、必死になって行動をしてるのを見て、心打たれたんじゃねぇのかよ!」
勇者「……」
天童「それを裏切るだなんてなぁ……死んだ方がマシだっ!」
勇者「!」
天童「えぇっ!? これは俺があの人に抱いてる個人的な感情抜きで言ってんだぞ! わかってんのかオイっ!」
462:
勇者「……」
天童「お前もよぉ? 誰かの役に立ちたいから、この旅始めたんじゃねぇのかよ……?」
勇者「えっ……?」
天童「この旅を始めた時の、その気持ち……ピュアな想い……お前、それ何処にいってまったんだよ!?」
勇者「……」
天童「お前はよぉ? 欲に塗れた最低の人間になっちまったんだよっ! わかるかぁ!?」
勇者「!」
天童「カァ?、決まったねぇ……格好いいねぇ、俺っ! 今の言葉メモしておこ?っと」メモメモ
勇者「!」グッ
天童「ん……? 急に立ち上がってどうした?」
勇者(女商人さん……女商人さん、ごめんっ……! 今、行くからっ……!)ダッ
天童「ったく、やっと気づいたか……あ?、また街まで戻らないといけねぇのか……カァ?! 辛かぁ?! 辛かぁ?!」
464:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……なんとか、街に戻って来れたね……今、何時……?」
天童「12時……10分、って所だな……まぁ、後3時間近くあるし、よかったじゃねぇか!」
勇者「それじゃあ、女商人さんと合流して、赤い木の実を取りに行こうか? 女商人さんは何処にいるの?」
天童「あ?、宿屋にいるんじゃねぇか? 正午には出発するつもりって言ってたから、それまでは宿屋にいるだろ?」
勇者「……ん?」
天童「どうした? 早く宿屋に行って合流しようぜぇ?」
勇者「……天童? お前、今なんて言った?」
465:
天童「だから……宿屋に行って合流しようぜ、って……どうした? でっけぇ耳糞でも詰まってんのか、おめぇ?」
勇者「ち、違う違うっ! その前だよ、その前っ! お前、その前になんて言った!?」
天童「だから……女商人さんは正午に出発するつもりだから……あっ……!」
勇者「……」
天童「……」
勇者「間に合ってねぇじゃん、俺達っ!」アセアセ
天童「わ、わからんっ……! ひょっとしたら、まだ宿屋にいるかもしんねぇ……勇者! 探してみるぞ!」アセアセ
466:
ーーーーー
女商人「ここが……高台への入り口ですね……」
女商人「やっぱり、天童さんの言う通り、大きな魔物がいるんでしょうか……」
女商人「……」
女商人「でも……そんな場所じゃないと、いい商材なんて取れませんよね……!」
女商人「不安もあるけど……困っている人達の為です……頑張りましょうっ……!」
女商人「……」
女商人(貴方……どうか天国から、私の事を守っていて下さい……)
471:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……」
天童「おいっ! 勇者、どうだった!? 女商人さんは宿屋にいたか?」
勇者「ダ、ダメ……いなかった……天童、そっちは……?」
天童「酒場にも、道具屋にも、何処にもいなかったよっ!」
勇者「えっ……じゃあ……」
天童「くそっ……もう、一人で行っちまったらしいな……ギリギリ間に合わなかったみたいだ……」
勇者「!」
472:
勇者「な、なぁ? 天童……?」
天童「……あぁ?」
勇者「俺、死んじゃうの……? 今回の命題、失敗って事だよねぇ……?」アセアセ
天童「諦めんじゃねぇ! まだ、12時半だから、後2時間半あるじゃねぇか! とにかく最後の最後まで、諦めんなっ!」
勇者「う、うんっ……! じゃあ、俺達も約束してた高台に行ってみよう! 今からでも合流できるかもしれないよね……」
天童「よっしゃっ! その意気だっ! おめぇ、ちっとは成長したじゃねぇか!」
473:
ーーーーー
女商人「……」
女商人「意外と……魔物は出ないものですねぇ……?」キョロキョロ
女商人「もっと苦労するかと思ってたのに……私、一人でも大丈夫そうですね……」
女商人「……しかし、この獣道は歩きにくいですねぇ? 頂上への道が全くわかりませんわ」
女商人「……ん?」
女商人「あら、別れ道ですか? 困りましたねぇ……?」
474:
女商人「う?ん……」
女商人「……」
女商人「左……ですかね……?」
女商人「……」
女商人「そうですね。 なんとなくですが、左が頂上へと続いてる道な気がします」
女商人「あまり、時間をかけると、勇者さん達も心配しそうですし、急いで実を取って、帰りましょう!」
475:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……やっと高台への入り口についたね……」
天童「うわっ! 何、この獣道っ! 今日、俺走ってばかりなのに、またこんな所行くの?」
勇者「しょうがねぇじゃん……女商人さん、もう行っちゃたんだからさぁ……?」
天童「うるせっ! わかってるよ! 元はと言えば、おめぇの責任じゃねぇかっ!」
勇者「……だって」
天童「『だって』じゃねぇよっ! 今はとっとと追いつかねぇといけねぇんだから、無駄口叩くなっ!」
勇者「う、うん……」
476:
PM1:00
ーータイムリミットまで後、2時間
477:
ーーーーー
女商人「あら? 今度は三叉路ですか……? 困りましたねぇ……?」
女商人「右か……左か……真ん中か……」
女商人「う?ん……」
女商人「……真ん中ですかねぇ?」
女商人「……」
女商人「そうですね! 真ん中の道に行ってみましょう!」
女商人「……しかし、コレ頂上に近づいてるんですかねぇ? 一向に頂上が見えないんですが」
478:
ーーーーー
勇者「あ、あれっ……!?」
天童「勇者、どうしたぁ!?」
勇者「天童……コレ、道が二つに別れてるよ……?」アセアセ
天童「右か左か……どっちかが正解で、どっちかがハズレだ……女商人さんは必ずここを通ったハズなんだからよぉ……?」
勇者「ど、どうしよう……天童、どっちの道が正解なんだろ……?」アセアセ
天童「そんなもん、勘で決めるしかねぇじゃねぇかっ! 勇者ァ! おめぇの冴えてる所をビシっと見せてやれっ!」
勇者「う、うん……じゃあ……」
481:
勇者「……じゃあ」
天童「おぅ! どっちだ!? 女商人さんはどっちに行ったと思う!?」
勇者「右っ!」
天童「おぅ! 右の道だな!? こっちの道に行ったと思うんだな!?」
勇者「う、うん……俺の勘は多分、こっち……こっちの道で合ってると思う……」
天童「よしっ! それじゃあ、早いトコ追いかけるぞ!」
482:
ーーーーー
女商人「……今度は四叉路ですか。ここ、迷路みたいですねぇ?」
女商人「帰る道も不安になってきましたし……でも、進むしかありませんね……」
女商人「う?ん……」
女商人「左から二番目……ですかねぇ……?」
女商人「……」
女商人「私、遭難とかしてませんよね……?」アセアセ
483:
ーーーーー
勇者「はぁ……はぁ……あれ……?」
天童「おいっ! いきなり立ち止まって、どうしたんだよ!? もう、残り1時間半しかねぇんだぞ!?」
勇者「なぁ、天童……? ここって……」
天童「……ん?」
勇者「……さっきの別れ道の所なんじゃね?」
天童「ん……? そういえば……なんとなぁ?く、見覚えがあるような……」
勇者「コレ、俺達戻ってきたんじゃねぇの!?」アセアセ
484:
天童「バカ?んっ! もう、バカ?んっ! 一分一秒を争うって時に、おめぇは何、してんだよ!」
勇者「うぅ……」
天童「おめぇはよぉ!? 勘も鈍いんだな、このポンコツがっ!」
勇者「ごめん……」
天童「だから、俺は左の道の方が気になるって、散々言っただろうが!」
勇者「……えっ? お前、そんな事言ってたっけ?」
天童「細けぇ事は気にすんなっ! とにかく、左の道が正解だっ! 俺の勘を信じて行くぞっ!」
勇者「う、うん……」
485:
ーーーーー
女商人「なかなか、頂上につきませんねぇ……」
女商人「天童さんが言ってた、誰も手をつけない理由がわかりました……」
女商人「これ、手をつけないじゃなくて……手がつけれないんですわ……」
女商人「多分、この迷路見たいな獣道のせいで、皆、頂上までのルートがわからないのでしょう……」
女商人「困りました……私もたどり着けるんでしょうか……?」
女商人「……」
女商人「……んっ?」
486:
骸骨「……」
女商人「……ひっ!」ビクッ
骸骨「……」
女商人「こ、これは……遭難者の死体……でしょうか……?」ビクビク
骸骨「……」
女商人「早く、頂上までのルートを探さないと……私も同じようになってしまいます……急がないと……」
骸骨「……」
女商人「……どうか、安らかにお眠りになって下さい」
骸骨「……」ギギッ
487:
女商人「……えっ?」
骸骨「……クイ……モノ」ムクッ
女商人「きゃあっ!」
骸骨「オンナノ……クイモノ……」
女商人「こ、こないで下さい……やめて下さい……」ビクビク
骸骨「オレ……ハラヘッタ……クイモノ……ホシイ……」
女商人「くっ……戦えますよ!? 私、商人ですが、戦う事だってできるんですよ!? それ以上近づいたら、斬りますよ……!」ビクビク
骸骨「……」
女商人「……」
骸骨「オマエヲ……」
女商人「……えっ?」
骸骨「クワセロオオオオォォォォ!」ガッ
女商人「き、きゃあっ……!」
488:
ーーーーー
勇者「あれっ……? 今度は三叉路だよ……?」アセアセ
天童「カァ?! またかよ……」
勇者「右か……左か……真ん中か……どの道が正解なんだろ……」アセアセ
天童「勇者ァ! 今度こそはしっかり、一発で当てろよっ! もう、残り1時間しかねぇんだから!」
勇者「う、うん……」
天童「右か……左か……真ん中か……正解の道はどれだと思うんだ!?」
勇者「え、え?っと……」アセアセ
489:
勇者「……真ん中?」
天童「よしっ! 真ん中の道でいいんだなっ! もう、後戻りはできねぇぞ!?」
勇者「ちょ、ちょっと待ってくれよ……! そんな言い方しなくてもいいじゃん……」アセアセ
天童「時間がねぇんだよ、時間がっ! お前、この選択間違えたら、死んじまうんだぞ!?」
勇者「……そう言われると、なんか間違ってるような気してきたなぁ?」
天童「カァ?! モジモジしてんじゃねよっ! 真ん中の道でいいんだな!?」
勇者「……あっ、待って! やっぱり、右の道にするっ! そっちが正解な気がしてきた!」
天童「よしっ! じゃあ、右の道だっ! 急ぐぞっ!」
491:
女商人「たぁっ! やあっ!」
骸骨「……イタイ……ドウシテ、オレヲイジメル?」
女商人「はぁ……はぁ……」
骸骨「オレ……ハラヘッテ……ウゴケナイ……オマエクッテ……マチニカエル……」
女商人「くっ、動きは鈍いのですが……とにかくタフです……このままじゃ、こちらが先にバテてしまいますわ……」
骸骨「オレ……ミッツノサガシモノヲ……シテイル……」
女商人「……えっ」
骸骨「ヒトツハ……アカイキノミト……」
女商人「この方……やはり、私と同じように木の実を探しにきて、遭難されたんですね……」
骸骨「ヒトツハ……ショクリョウデアル……オマエダ……」
女商人「……ぐっ」
骸骨「ソシテ……サイゴノヒトツハ……」
女商人「……」
492:
ーーーーー
勇者「あれ……? ここって、またあの三叉路じゃない……? また、戻ってきちゃったのかな……?」アセアセ
天童「勇者君……君、ホントにダメな男なんだね……絶対、ギャンブルとかしない方がいいよ……負けるタイプだよ……」
勇者「う、うん……そうする……」
天童「おめぇはよぉ! こ?んなに切羽詰まった状況なのに、勘の一つも働かせれねぇのか!」
勇者「ご、ごめん……」
天童「五感を越えた第六感ってヤツを働かせてみろよ! シックス・センスってヤツをよぉ! ついでに、体内のコスモを燃やして、セブンス・センシズってヤツも目覚めさしちまえっ!」
勇者「う、うん……」
天童「さぁ! 右の道は消えたから、今度は真ん中と左の二択だっ! どっちが正解だっ!?」
勇者「じゃあ……え?っと……」
493:
勇者「……真ん中?」
天童「真ん中だと、思うんだな?」
勇者「うんっ、 真ん中っ! 真ん中の道だと思う! 間違いないっ!」
天童「……本当に真ん中だと思うんだな?」
勇者「うん、今度は真ん中っ! 絶対に大丈夫だと思うっ!」
天童「……よし! じゃあ、左の道が正解だな」
勇者「……えっ?」
天童「よしっ! 勇者! 今度は左の道に行ってみるぞ!」
494:
勇者「いやいや、俺は真ん中って答えたじゃん? なんで左の道に行くのよ?」
天童「あのねぇ……? 今日のお前はとことん冴えてないの。だから、今のお前は何をやっても不正解なの」
勇者「そんな言い方しなくてもいいじゃんかよぉ……」
天童「だから?、勇者君が真ん中って答えたら、その逆の左が正解なの。これ、ギャンブルの『逆張り』ってテクニックね?」
勇者「でもよぉ?? もし、これで左の道行って不正解だったらどうすんだよ? 俺、死ぬんだろ?」
天童「じゃあ、どうすんだよ? このまま真ん中の道に行くのか!? 今日のお前の勘は冴えてないから、それこそ死んじまうぞ!?」
勇者「う?ん……」
495:
勇者「う?んと……う?んっと……レミパン……? ドレミファ……ああっ! 違う違うっ!」
天童「……なぁ?に、ブツブツ言ってんだ、お前?」
勇者「ミラージュ……? ミラーマン教授……? ああっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」
天童「おめぇは、何をもたもたしてんだ!? お前なぁ? 命題のタイムリミットまで……」
勇者「『レミーラ』?」ピカーッ
496:
天童「……あぁ? 今、何したおめぇ?」
勇者「……天童」
天童「……あぁ?」
勇者「左の道はダメだよ。その先……崖になってる……」
天童「はぁ? なんで、お前そんな事がわかるんだよ?」
勇者「俺にもよくわかんないだけださ……女商人さんは真ん中の道を進んだ先の、四又路の少し先にいるよ!」
天童「はぁ? 四又路? なんで、おめぇそんな事わかるんだよ?」
勇者「俺にはわかるんだよ! いいから、真ん中の道を急ぐよっ!」
497:
PM2:40
ーータイムリミットまで後20分
499:
天童「おぉ、勇者! おめぇの言った通り、四又路についたじゃねぇか!?」
勇者「う、うんっ……!」
天童「なんか、急に勘が冴え始めたみてぇだなっ! 次はどの道だっ!?」
勇者「一番右は、モンスターの巣になっていて……その隣は、崖になってる……女商人さんがいるのは、その隣っ!」
天童「……左から二番目だな? よしっ! 行くぞっ!」
勇者「ち、違うっ! 天童っ! 行くのは一番左の道だよっ!」アセアセ
天童「はぁ? 女商人さんは左から二番目にいるんだろが?」
勇者「大丈夫……! 少し、遠回りになるけど……道は繋がってるから……! それに、左の道がには冒険者の遺品があるんだ……!」
天童「おめぇなぁ……? 今、遺品なんて漁ってる場合じゃ……」
勇者「天童っ!」
天童「!」
勇者「これは、必要な物なんだよっ! お前が、女商人さんを心配するのはわかるけどさぁ……?」
天童「……」
勇者「頼むよっ! 俺を信じて一番左の道に行ってくれよっ!」
天童「……」
500:
ーーーーー
女商人「はぁ……はぁ……」
骸骨「ソロソロ……ウゴキガニブクナッテキタヨウダナ……」
女商人「はぁ……はぁ……」
骸骨「ソロソロ3ジ……オヤツノジカンニピッタリダ……」
女商人「……くっ」
骸骨「ヤットミツケタ、サガシモノ……オレ、ズットハラヘッテイタ……」
女商人(あなた……ごめんなさいっ……!)
骸骨「イタダキマースっ……!」
「おめぇの探し物はそれじゃねぇだろ」
女商人「!」
骸骨「ダレダっ!」
天童「おめぇの探し物は『コレ』だろ? ほれ、受け取りな!」ポイッ
骸骨「アアアアアアアっ!」
501:
天童「3時ジャストっ……! ぎりぎり合流って所だな! あっ、女商人さん……遅れてすんましぇ?ん……」
女商人「天童さんっ……! 天童さん、今あの骸骨に何を投げたんですか……?」
天童「あぁ、あれ……? あれはね……?」
骸骨「アアアアアアアっ!」シュワシュワ
天童「ありゃ、『聖水』だよ?」
女商人「……聖水?」
骸骨「アアアアアアアっ……! アタタカイヒカリ……オレノサガシモノ……コレデオレモ……ジョウブツデキルっ……!」
天童「おめぇ、ずっとソレ、探してたんだってなぁ? まぁ、長い間野晒しでおかしくなっちまったのは気の毒だけどよぉ?」
骸骨「アアアアアアアっ……! アアアアアアアっ……!」
天童「おめぇが、病気の子供の為に赤い木の実を探しにやってきたって事は、ちゃ?んと神様に言っておいてやるから……大人しく成仏しろや!」
骸骨「アアアアアアアっ……! アリガトウ……アリガトウっ……!」シュワシュワ
502:
骸骨「……」コロン
女商人「この方も……私と同じように……」
勇者「はい、彼の遺品にそう書いてありました……」
女商人「勇者さん……! 勇者さんも助けに来てくれたんですか……!」
天童「木の実探してるうちに倒れて……食料探してるうちに、てめぇの遺品も見失って……まぁ、それでもコイツは最後の最後まで必死に生きたんだろうな……」
女商人「……そうですね。私も一歩間違えれば同じように」
勇者「あのっ……! 女商人さんっ……!」
女商人「……ん? どうしたんですか、勇者さん?」
503:
勇者「あのっ……約束破ってすいませんでしたっ……!」
女商人「……えっ?」
勇者「赤い木の実を取りに行くのを協力するって約束してたのに……こんなに遅れて……ごめんなさいっ……!」
女商人「……」
勇者「……」
女商人「ふふ、何言ってるんですか?」
勇者「……えっ?」
女商人「私を助けに来てくれて……こうやって協力して頂いてるじゃないですか? 感謝するのはこっちの方ですよ?」ニコッ
勇者「……」
女商人「あっ、でも……ここから頂上までまだ道があるんですねぇ……ちゃんと行けるかなぁ……?」
504:
天童「いえいえっ! 女商人さんっ! 頂上まで、勇者君がしっかり、ナビゲートするので、安心して下さいっ!」
女商人「勇者さん、道わかるんですか?」
勇者「えっ……? まぁ……この先の五又路は右から二番目で……その先の六又路は左から三番目で……」
天童「うわっ、何ソレ!?」
女商人「まるで、迷路ですねぇ……私一人じゃ絶対遭難してました……」
勇者「帰りは僕の魔法使えば、高台の入り口に戻れると思いますし……」
天童「あっ、そういや、勇者君、この前変な魔法覚えたね? なんだっけ? 履歴書だったっけ?」
女商人「はぁ?、本当に勇者さんがいてよかったです?。ありがとうございますっ!」
505:
頂上ーーー
天童「やっと頂上だぞっ!」
女商人「うわ?、いい景色……って、眺めてる場合じゃありませんね? さっそく、木の実集めなきゃっ!」イソイソ
勇者「……なぁ、天童?」
天童「あぁ、どうした? おめぇも木の実集めるの手伝えよ?」
勇者「……やっぱり、俺にはあんたがいないとダメみたい」
天童「……あぁ?」
勇者「女商人さんとの、一番大切な約束忘れてさ……皆との約束裏切る事になってさ……」
天童「……」
勇者「……やっぱり、俺にはあんたがいないとダメみたい」
天童「……」
勇者「……」
天童「やっと気づいたか……って言いてぇ所だけどよ……まぁ、今回はお互い様だな……」
勇者「……えっ?」
506:
天童「俺の方こそ、女商人さんにうつつを抜かして……好き放題飲んでよ……悪かったな……」
勇者「……うん」
天童「本当はずっとお前のそばにいねぇといけなかったのによ……まっ、結果的に『判断力』……クリアしたから、よしとするか……」メモメモ
勇者「……うん」
天童「破っちまった約束はよぉ? 俺も一緒に頭下げるから、後で皆に謝りに行こうぜ?」
勇者「そうだね……裏切ったままじゃいけないよね……」
女商人「あっ! 勇者さ?ん! 天童さ?ん! ちょっと来て下さ?いっ!」
天童「……ぬ?」
勇者「……ん?」
507:
女商人「ほらっ! ここ高台なのに、こんな綺麗な川が流れてますよ!?」
天童「あんらぁ?、綺麗な水ねぇ? なぁ、勇者? この水でいいんじゃねぇか?」
勇者「え?? でも、取ってこいって言われたのは地底湖の水だよ?」
女商人「この水、凄く美味しいですよ?」
天童「えっ? どれどれ一口……って、ありゃ、こりゃ上手いっ! 勇者、お前も飲んでみろよ!」
勇者「……あっ、本当だ。凄く美味しいや」
女商人「水が必要でしたら、私が持ってる容器使いますか? この水、凄く美味しいですよ?」
天童「……だってよ? どうするよ、勇者?」
勇者「う?ん……とりあえず、これ持って行ってみるか……?」
508:
ーーーーー
天童「よしっ! 木の実も根こそぎ取ったっ!」
女商人「なんだか……泥棒みたいな言い方ですねぇ……?」
天童「なぁ?に、商人なんてのは、そんなもんばいっ! 水も大量に取ったっ!」
勇者「お、重い……」プルプル
天童「後は、帰るだけだっ! それじゃあ、勇者君、お願いしますっ!」
女商人「あっ、そういえば、勇者さん脱出魔法使えるんでしたね?」
天童「さぁ、女商人さん……僕の身体にしっかり掴まって……危ないですから……」キリッ
勇者「……おめぇはよぉ? じゃあ、行くよ! リレミトっ!」ビューン
509:
酒場前ーーー
天童「なぁ、勇者? あの魔法、直接街に戻ってくる事とかできねぇの?」
勇者「う?ん……そういう魔法じゃないみたい……前のは偶然だったのかなぁ……」
天童「女商人さん、帰り道辛そうだったぜぇ? カァ?! 辛か?! 辛か?! 足が棒?! もう、たまらん、たまらんっ! って」
勇者「……それ、ずっと言ってたのはお前じゃん」
天童「でもよぉ? 街についたら、宿屋に直行だぜ? やっぱり、疲れてたんだよ? あの魔法、絶対改良する余地はあるぜ?」
勇者「う?ん……考えておくよ……」
天童「……っと、おっ? 酒場に着いたな? それじゃあ、水持っていくか!」
勇者「う、うん……」
510:
天童「こんばんはぁ?! とりあえず、生……」ガラッ
勇者「バ、バカっ! もう酒はダメだよっ! 生、いりません! いりませんよ!?」アセアセ
主人「お、おいっ! やっと戻ってきたのか! 無事だったのか! 生き埋めになっちまったのかと思っちまったぞ!?」
天童「……へ?」
勇者「……生き埋め?」
主人「だからよぉ?、あの洞窟に魔物討伐するって魔法使いの親子が来てよぉ? 派手に洞窟ぶっ壊して崩れちまったじゃねぇか!」
天童「……えっ? あの洞窟、崩れたんですか!?」
勇者「俺、あそこ行ってたら、生き埋めになってたじゃんっ!」
主人「……あれ? 何、そのリアクション? もしかして、水取りに行ってないの?」
511:
勇者「す、すいません……」アセアセ
主人「最悪だ……君を信じた俺がバカだった……まさか、こんな形で裏切られるとは思わなかったよ……」
勇者「ご、ごめんなさい……でも、代わりの水、持ってきたんで……」
主人「あのねぇ……? ウチの水は、そんじょそこらの水と違って、こだわりの……ん……?」
勇者「す、すいません……」
主人「……」マジマジ
勇者「……ん?」
主人「こ、これは……! もしかして、あの幻の『迷いの高台』の水ではないでしょうか……!?」
勇者「あ?、確かに迷路みたいになってたもんねぇ? あそこ、そんな風に呼ばれてるんだ?」
513:
主人「こ、こんな素晴らしいお水を持って来て頂けるとは……ありがたやっ……! 嗚呼、ありがたやっ!」
勇者「えっ? これ、そんなにいい水なの?」
主人「いいだなんて、とんでもないっ! 最高級の水でございますっ! このような水はただでは受け取れませんっ! どうか、どうかご馳走させて下さいっ!」
天童「えっ、ご馳走? お酒とか飲んでもいいの?」
主人「はっ! 本日は、食って飲んで騒いで踊って! お好きにして下さいっ! 全て、私の奢りとさせていただきますっ!」
勇者「いやいや、悪いですよ……天童、お前も調子に乗るなって……」
主人「いえっ……! いいのですイイノデスっ! このままでは私の気が済みませんっ! どうか、どうかご馳走させて下さいっ!」
天童「宿屋の連れも呼んできていいですかねぇ? やっぱり、お酒は皆で飲んだ方が楽しいと思うですよねぇ??」ニヤニヤ
主人「ははっ! 是非、お呼びになって下さいっ! この私、精いっぱい腕を振るわせて頂きますっ……!」
勇者「お、おい……天童、調子に乗るなよ……」アセアセ
514:
そしてーーー
女商人「Oh?♪ お願いさ?♪ Take me to heaven?♪」
天童「♪」
女僧侶「あらあら、女商人さんが歌って……天童さんがそれに合わせて踊って……」
勇者「……あいつは、はしゃぎすぎなんだよ」
女僧侶「お酒って、あんなに人を変えちゃうものなんですねぇ……? 美味しいんですかね……?」
勇者「あっ! いやぁ……女僧侶ちゃんは、飲まない方がいいと思うよ……?」
女僧侶「?」
勇者「あっ……それよりさぁ、女僧侶ちゃん……?」
女僧侶「どうしたんです、勇者さん?」
勇者「あの……今日は約束守れなくて……ごめんね……?」アセアセ
女僧侶「……約束?」
勇者「う、うん……?」
515:
女僧侶「私、勇者さんと何か約束したんですか……?」
勇者「……えっ?」
女僧侶「昨日、酒場に来た所ぐらいまでは覚えてるんですが……私、それからの記憶が全くないんですよ……」
勇者「あっ……そうなの……?」
女僧侶「今日は、頭がガンガンして、一日動けませんでしたし……やっぱり、旅疲れなんですかねぇ……?」
勇者「あっ……そうなんだ……」
女僧侶「私、何か勇者さんと約束したんですか……?」
勇者「あっ……! いやっ……! 覚えてないんだったらいいんだ……」アセアセ
女僧侶「え?? そんな事、言われたら気になるじゃないですか?。教えて下さいよ??」
勇者「い、いやぁ……そ、それはねぇ……」アセアセ
516:
天童「お?い、勇者?! 何やってんだ、お前もこっち来て踊れ?ぃ!」
勇者「あっ、 天童が呼んでるや! 俺、ちょっとあいつの所行って、付き合ってくるよ……」アセアセ
女僧侶「え?? 気になるじゃないですか??」
勇者「ま、まぁ……また今度にでも話すよ……?」
女僧侶「……約束ですよ?」
勇者「……えっ?」
女僧侶「だから?、約束して下さいね?」
勇者「も?う、わかった……約束ね……?」
天童「な?に、やってんだぁ、勇者っ! おめぇもとっとと踊りやがれっ!」
女商人「女僧侶さんも、一緒に踊りましょうよ?!」
517:
翌日ーーー
女商人「皆さんには、本当にお世話になりました。ありがとうございますっ!」ペコッ
天童「な?に、困った時はお互い様ばいっ!」
勇者「これから、その木の実を物資のない街に持って行くんですか?」
女商人「はいっ! 今の私に出来るのはこういう事だけですから!」
天童「頑張って下さいっ……!」
勇者「俺達、応援してますから!」
女商人「本当に皆さんには、お世話になりました! お礼の気持ち言っちゃなんですが……コレ、受け取って下さい……」
天童「……えっ、コレって」
勇者「コレ、旦那さんの形見の鞄じゃないですかっ!?」
女商人「はい、やっぱり、鞄は飾るものではなく、使うものだと思うんです……だから、勇者さん、使って下さい」
518:
勇者「い、いやぁ……でも、こんな大切なもの……」アセアセ
女商人「鞄はまた、作ればいいですから。それに……」
天童「……それに?」
女商人「私、主人の事を気にしてたような気がすんです……やっぱり、主人の事は絶対に忘れる事はありませんけど……」
勇者「……」
女商人「それで足踏みして、前に進めないのは主人も嬉しくないと思うんです」
天童「新しい一歩……って、ワケね……」ニコッ
女商人「本当に、皆さんにはお世話になりました! 皆さんのこれからの旅の無事を祈ってます!」
勇者「女商人さん、ありがとう」
女商人「何か困った事があったら、すぐ呼んで下さいっ! 今度はいい商品持って駆けつけますから! 勇者達は私の大切な仲間です!」
519:
ーーーーー
天童「……まっ、これが永遠の別れってワケじゃねぇからな」テクテク
勇者「……そうだね」テクテク
天童「でもよぉ……でもよぉ……勇者君……」
勇者「……ん?」
天童「恋って辛ぇよなぁ?!」
勇者「うわっ! 何、その顔っ! 涙でぐちゃぐちゃじゃん!」
天童「苦しいよなぁ?! 切ねぇよなぁ?! もう恋なんてしないなんて、言わないよ絶対……なぁ?んて言っちゃう気持ち、わかるよなぁ?」シクシク
勇者「そ、そうかな……?」
天童「……ぬ?」
勇者「俺は……恋って……もっと、楽しいものだと思うな……」
天童「……おめぇ、なぁ?んか、気に食わねぇな」
勇者「えっ……?」
天童「コノヤロ……人が落ちこんでる所よぉ? こうなりゃ、残り6個の命題、とことんスパルタやってやるからな! 覚悟しとけよ!」
勇者「お、俺に当たるんじゃねぇよ……でも、後6個もあるのか……も?う……」
526:
ーーまた、今日、運命の日がやってきた
勇者「あ?っ……もう朝か……」
ーーこの数週間、俺は天からの命題をなんとかクリアして、今、こうして生き残っている……らしい
勇者「ったく……やっぱり、野宿はゆっくり寝れねぇな……」
ーー後、命題は6つ……はたしてどんな試練が俺を待ち受けているのか
勇者「今日中に次の街についたらいいんだけどな……さて、今日も一日、なんとかやりますか……」
ーーそして……天童は本当に天使なのか……
天童「あっ、勇者君、起きた? ほらほら、見て見て? 天使っぽいでしょ?」
勇者「……」
天童「やっぱり、天使といったら、頭にわっかだよね? ほらほら、見て見て??」
勇者「……おめぇは、頭にパルック乗っけて、朝から何をしてんだよ」
527:
天童「だってよぉ! おめぇがいつまでたっても信用しねぇから、ちょっとぐらい天使っぽい所見せようとしたんじゃねぇかよ」
勇者「……そういう事じゃねぇだろ」
天童「まぁ、今日はよぉ? 待ちに待った命題の届く日だからよぉ?」
勇者「待ちに待ったって……そんなに待ってねぇよ……」
天童「おめぇは、朝から卑屈だなぁ! オイっ! もっと、元気出せよ、もっと前向きになれよ!」
勇者「……はぁ?い」
天童「そろそろ、届くと思うんだけどなぁ?? まっ、今日も一日頑張ろうぜっ!」
勇者「……はぁ?い」
528:
女僧侶「勇者さん、天童さん、おはようございます」
勇者「あっ、女僧侶ちゃん、おはよう」
天童「おっはようっ! いやぁ?、今日もいい朝だね!」
女僧侶「あの?? 朝、起きたら私のテントの中にコレがあったんですけど……」
勇者「……ん?」
天童「あっ! それ、命題の入った封筒じゃねぇか!」
女僧侶「命題……? これって、勇者さん達の物ですかねぇ……?」
勇者「う、うんっ! ごめん! 多分、女僧侶ちゃんの荷物の中に紛れてたんだね……それ、俺のヤツ、俺のヤツ……」アセアセ
天童「あの?? 確認しておくけど……コレ、中は見てないよねぇ……?」アセアセ
女僧侶「ええ、中身を勝手に見るのは失礼だと思い、見てませんが……」
勇者「あっ、よかった! じゃあ、いいんだ! 女僧侶ちゃん、ごめんね?」
天童「神様、女僧侶ちゃんの寝顔見たって事になるなぁ……いくら、神様でもそいつは失礼なんじゃねぇかな……?」ブツブツ
女僧侶「?」
529:
勇者「天童……! 今回はやけに届くのが早いねぇ……?」
天童「……それだけ、厄介な命題かもしれねぇって事だ。勇者ァ! 気合入れろよっ!」
勇者「お、おいっ……! 見る前に、そんな事言って脅さなくてもいいじゃねぇか?」アセアセ
天童「おめぇは前回、甘く見て痛い思いしたのもう、忘れたのかバカっ! おめぇは鶏かっ! ほれっ、鳴いてみろっ!」
勇者「わかったよ……今回はちゃんとするからよぉ……」
天童「ほれ、クックドゥードゥードゥーって! ほれっ! 言ってみろ、ほれっ!」
勇者「うるせぇよ……確認するから、もう黙ってろよ……え?っと……」ガサゴソ
530:
勇者
X月X日 午後8時までに
老人に優しくしなければ即・死亡!
531:
天童「ふ?む……『老人に優しくしなければ即・死亡』か……」
勇者「出たよ出たよ……まぁ?た、曖昧な命題が出たよ……」
天童「今、午前7時だから……後、13時間……だな……」
勇者「最近、神様、ちょっと曖昧すぎねぇか……? もうちょっとわかりやすくさぁ……してくれてもいいんでねぇの……?」
天童「おめぇはよぉ! ほ?んとに、罰当たるぞ!? 知らねぇぞ? 神様、怒らせたらおっかねぇんだぞ!?」
勇者「……だって」
天童「文句ばっかり言ってても、しょうがねぇだろ! よし、とりあえず、命題やんぞ! ほら、肩揉めっ!」
勇者「……はぁ?」
532:
天童「あ?、そうだねぇ……肩揉んだ後は、腰も揉んでほしいなぁ……」ゴロン
勇者「……なぁ?に、してんだおめぇは」
天童「腰が終わったら?、足ツボマッサージもしてほしいなぁ?」ゴロゴロ
勇者「……おい、起きろ。おめぇは老人じゃねぇだろ、おめぇは」
天童「それが終わったら?、朝御飯買ってきてほしいなぁ?……焼きそばパンと、コロッケパンと……あっ、ヨーグルトなんかも欲しいなぁ……」
勇者「やかましいわっ! おめぇは老人じゃねぇだろうが!」
天童「勇者君、わからないよ? もし、僕が老人だったら、勇者君は死んで……」
勇者「うるせっ! 前回、それで騙されて酷ぇ目に合ったんだっ! 今回は騙されねぇぞオイっ!」
天童「お、おおっ……おめぇ、一丁前に成長してるじゃねぇか……」アセアセ
533:
ーーーーー
天童「よ?しっ! 荷物纏めたかぁ?? 朝飯も食ったし、そろそろ次の街に出発するぞ?!」
女僧侶「あっ、天童さん……ちょっと待ってもらえますか……?」アセアセ
天童「あれ? 女僧侶ちゃん、どうしたの?」
女僧侶「あの……テントが上手く畳めなくって……」
天童「あら?、女僧侶ちゃん苦手だもんねぇ? まぁさ、練習だと思ってゆっくり、慌てずにやりなよ?」
女僧侶「は、はいっ……! 申し訳ありませんっ……!」アセアセ
勇者「……なぁなぁ? 天童、天童?」
天童「……あぁ? どうした?」
534:
勇者「これさぁ……? 命題は『老人に優しくしなければ即・死亡』じゃん?」
天童「おぉ、そうだよ。今日、一日気をつけろよ?」
勇者「これさぁ……? もし、今日一日、老人と会う機会がなかったら……どうなっちゃうワケ……?」
天童「あっ……そうか、確かにそういう事もあり得るなぁ……? そういう時はどうなるんだろ……?」
勇者「どうなるってよぉ……おめぇはいい加減だな! このダメ天使っ!」
天童「ダメ天使て事ぁ、ないでしょう……でも、まぁ老人に会う機会がなかったら……やっぱり、命題失敗なんじゃね?」
勇者「……あぁ?」
天童「だから……老人に会う機会がなかったら、それも命題失敗で、おめぇ死んじゃうよ」
勇者「!」
535:
勇者「ちょっと待て、ちょっと待て! ここ、平原のど真ん中だぞオイっ!」
天童「なぁ? 俺もこんな所野宿なんてしねぇで、街の宿屋のふかふかのベッドで寝たかったよ、ホント」
勇者「いやっ……そういう事じゃねぇだろっ! こ?んな場所の何処に老人いるってんだよ! 老人がっ!」
天童「あ?、そうだねぇ……老人どころか……人っ子一人いないねぇ……?」キョロキョロ
勇者「こ?んな所で、モタモタしてる場合じゃねぇんじゃねぇのっ!?」
天童「あっ、確かに……凄いねぇ? 今日の勇者君、冴えてるよ。うん、冴えてる」
勇者「早く次の街に向かおうぜっ!」
天童「でもさぁ……女僧侶ちゃんがさぁ……」
勇者「……ん?」
女僧侶「え?っと……え?っと……」モタモタ
536:
勇者「あぁっ……! も?うっ! 女僧侶ちゃんっ!」
女僧侶「あっ……今、畳みますので、ちょっと待ってて下さいね……?」
勇者「いやっ、いいよっ! 俺がやるっ! 俺がやるから、見て覚えてね?」
女僧侶「……えっ?」
勇者「まずは……こうやって、フライシート前室のフレームを押し出すの! こうやってさ……!」グイッ
女僧侶「あっ、最初にやるのはそこだったんですね……」
勇者「そうしたら……ファスナーを閉めて……ベルクローテープを貼り合わせて……!」テキパキ
女僧侶「はいっ……! ありがとうございます! メモ取って、しっかり覚えますね」
勇者「それで……ここから畳むんだけど、畳み方の手順は……」テキパキ
女僧侶「はいっ! 勉強になりますっ!」
天童「……あいつ、優しくする相手間違えてねぇかな? だったら、俺の肩も揉んでくれてもよかったんじゃねぇの?」
537:
ーーーーー
勇者「……と、こうやって、テントは畳むの。覚えた?」
女僧侶「はいっ! 次からは任せて下さい!」
天童「いやぁ?、意外な特技! ダメ人間のお前にも、一つぐらい、才能があるんだね?」
勇者「よしっ! じゃあ、次の街に行くよっ! 皆、急いで!」
女僧侶「えっ……?」
天童「いやぁ?、やっぱり、半分人生畳みかけてただけあって、テントの畳みかたは上手いんだなぁ! いや?、やっぱりおめぇは……」
勇者「おいっ、天童っ! 何、チンタラ喋ってんだおいっ!」
天童「!」ビクッ
538:
勇者「……おめぇはよぉ? わかってんのかオイっ!」
天童「いやっ……勇者君、突っ込み待ち……突っ込み待ちだったの、本当に……」アセアセ
勇者「おめぇはよぉ……? 次の街には、困ってる人や苦しんでいる人が沢山いるかもしれねぇんだぞ、オイっ!」
天童「は、はいっ……その通りでございます……!」
勇者「そんな、人達に優しくしてやるのが、俺達冒険者の指名じゃねぇのかよぉ! おいっ!」
天童「うるせっ! おめぇは、老人探すのに、焦ってるだけじゃねぇか! 都合のいい言い方してんじゃねぇよっ!」
勇者「わかってんだったら、早く行くぞっ! こっちは命がかかったるんだからよぉ!」ギャーギャー
天童「おめぇ、そんな事言って、大変な事になっても知らねぇぞ! 俺に泣きついてきたって知らねぇからな!」ギャーギャー
勇者「泣きつくわけねぇだろが! ほらっ! 出発、出発っ!」
女僧侶「……」
539:
女僧侶「……天童さん、天童さん?」
天童「……ぬ? 女僧侶ちゃん、どうしたね?」
女僧侶「勇者さんって……最近、変わりましたよね……? 前は絶対、あんな事言う方じゃなかったのに……」
天童「あぁ、アレね……? 大丈夫、大丈夫。ありゃ、今だけだから……」
女僧侶「……えっ?」
天童「ありゃ、昼過ぎにはいつもの勇者に戻って……8時前には、ダメな勇者に戻っちまうからさ……? 気にしちゃイカンばいっ!」
女僧侶「……そうでしょうか?」
天童「……ぬ?」
女僧侶「私、勇者さんと幼馴染だから、わかるんですが……あっちが本当の勇者さんの姿な気がするんですよねぇ……」
天童「……」
女僧侶「勇者さん、お父さん失う前までは……あんな前向きで……行動的な性格だったような気がします……」
天童「……まっ、そういう事だろうから、神様もあいつを選んだんだろうね」
540:
女僧侶「……神様?」
天童「あぁっ、いや、なんでもないナンデモナイ……しかし、女僧侶ちゃん、あいつの事よく見てるねぇ? おじさん、ちょっと感心しちゃったよ」
女僧侶「はい、私……ああいう、前向きで行動的な勇者さんの事好きでしたから」
天童「あら!?」
女僧侶「勇者さんがもう一度、昔のように戻ってくれたら……って、あっ! 私、何言ってるんでしょう!」
天童「いや?、意外ねぇ?。意外意外」ニヤニヤ
女僧侶「天童さんって喋りやすいから、つい……あっ、あの! この事は勇者さんには内緒にしておいて下さいね……?」アセアセ
天童「大丈夫よ、大丈夫っ! おじさん、口固いからっ!」
勇者「お?いっ! 何やってんだよっ! 早く、次の街に行くぞ?っ!」
女僧侶「あっ……勇者さんが呼んでますね……? 天童さん、急ぎましょう!」
天童「……ったく、あいつはすぐ傍にこんなに見てくれてる人がいるってのに、なぁ?んで腐っちまったんだよ。勿体ねぇなぁ」
546:
街ーーー
勇者「よしっ! 街についたな!」
天童「今日はやけに張り切ってるなおめぇ……しかし、なんていうかこの街……」
女僧侶「……なんだか、活気のない街ですねぇ?」
勇者「……えっ? そうかな?」
天童「なぁ?んか、じめ?っと、どんよ?り、してる気がするよ? うん、いつもの勇者君みたい」
女僧侶「……なにか、あったんでしょうかねぇ?」
547:
勇者「なぁ? これって、ひょっとして困ってる人、いるんじゃね? 老人とかよぉ!?」
天童「……おめぇはよぉ! 何、瞳輝かせて、他人の不幸を望んでるんだよ!」
勇者「えっ……? あっ、いやっ……」アセアセ
天童「あのね、勇者君? 優しくするのと、不幸を望むのは、全?然違うのっ!」
勇者「う、うん……」
天童「やる気になるのはいい事だけどよぉ? 方向性間違っちゃいけねぇよ! おめぇはちったぁ、落ち着け! なっ?」
勇者「う、うん……ごめん……」
天童「まぁ、とりあえず、街の様子も気になる事だし……街長にでも、話を聞いてみるか? 俺達が力になれる事なら手伝えばいいしな」
勇者「そ、そうだね……街長さんの家に行ってみようか……」
548:
ーーーーー
街長「……そうか、君達は冒険者か」
女僧侶「あの?、この街、なにかあったんですか? 随分と様子がおかしいみたいなんですけど……」
街長「……」
勇者「あのっ……! 僕達、何か力になれる事があれば、協力しますから!」
街長「……君達はまだ、若いじゃないか。未来ある若者を危険な目に合わす事はできんよ」
女僧侶「いえっ! そんな事、言わずにお話だけでも聞かせてくれませんかね?」
街長「……」
勇者「僕達、絶対に力になりますからっ……!」
549:
街長「……街の外れにある、塔が見えるかい?」
女僧侶「あっ、何か高い塔がありますね……」
勇者「あそこに、何かあるんですか?」
街長「あの塔に強大な魔物が住み着いているんだよ……」
女僧侶「……えっ!?」
勇者「魔物!?」
街長「この街はその魔物に支配されている街なんだ……君達も彼らに見つかる前に、早い所他の街に行くんだね……」
550:
女僧侶「で、でも……そんな事なら、その魔物を討伐しないと……」アセアセ
街長「多くの若者達が、君達と同じ事を考えて……そして、死んでいったよ……どうやら、塔にいる魔物はとんでもない力を持っているらしい……」
勇者「……」
街長「……しかし、彼らは人間界の支配には興味がないらしく、毎月一人の贄を捧げれば、それ以上の事は望まないらしい」
女僧侶「そ、そんな……! それじゃあ……」
街長「あぁ……我々は毎月、待人の中から一人、贄を出す事に決めたんだ……そして、今日がその日だ……」
551:
勇者「……だから、街の人達は皆、元気がなかったんですね」
街長「あぁ……皆、心の中では納得してないのかもしれない……しかし、我々が生き残るにはそれしか方法がないんだ……」
女僧侶「そんなの、贄にされる人可哀想ですっ! 私達がその魔物を……」
「ええんじゃ、ワシらの事は気にしないでおいてくれ」
勇者「……えっ?」
婆「あんたらと同じ事を考えた、ワシの息子も、孫も……隣の家の坊主も……み?んな殺されちまったわ……」
女僧侶「……お婆さん」
婆「あんたらみたいな未来ある若者が命を粗末にしちゃ、イカン。死ぬのはワシみたいな老いぼれからでええわい……」
勇者(老人!)
552:
街人「……と、いう事だ。彼女を含め、この街の贄に選ばれる老人達は、皆がこの事に納得している。……だから、君達は帰ってくれ」
女僧侶「そんなっ! 私達がなんとかしますよっ! ねっ、勇者さん!?」
勇者「……ぅ……ぁ」
女僧侶「……勇者さん?」
勇者「えっ……? あっ、はいっ! 僕達がなんとかしますからっ……!」
街長「……塔の強大な魔物は、二体いるんだ」
女僧侶「えっ?」
街長「彼らはお互いの力を共有するような、力を持っていて……同時に倒さないと再生する身体を持っているんだ……」
勇者「うわぁ……今回の命題ややこしいなぁ……コレ……」
街長「15人いる部隊ならともかく……たった、3人だろう……? 気持ちはありがたいが……未来ある若者が無駄死にするのを見るのは、もう沢山なんだっ……!」
女僧侶「……」
553:
ーーーーー
勇者「おいおい、天童……どうするよ、コレ……」
天童「……」
勇者「老人には会えたけどさぁ……? 会えたけど、どうすんだよコレ……? 凄ぇ、魔物が二体もいるらしいぜ、コレ?」
天童「おめぇはよぉ! うだうだ言ってんじゃねぇよ!
勇者「!」ビクッ
天童「この街には困ってる人や苦しんでいる人が沢山いるんだぞ、オイっ!」
勇者「……う?ん」
天童「そんな人達に優しくしてやるのが、俺達冒険者の使命じゃねぇのかよぉ! おいっ!」
勇者「わかってるよ……わかってるけどよぉ……」
天童「わかってんだったら、早く行動しろよっ! おめぇは命がかかってるんだからよぉ! ……って、朝、勇者君言ってたよね?」
勇者「……えっ」
天童「あれぇ?? おっかしいなぁ?? 僕、朝に勇者君に同じ台詞言われたような気がするんだけどなぁ??」
勇者「いやぁ?、それはさ……? いや、だって『老人に優しくしろ』なんて言われたら、普通重い荷物持つとかさぁ……そういう事、想像するじゃん……」アセアセ
天童「あれれぇ?? おっかしいなぁ?? 朝の元気な勇者君は何処に行っちゃたのかなぁ??」
勇者「い、いやぁ……それはさぁ……?」
女僧侶「……」
555:
女僧侶「……勇者さん、やりましょうよ」
勇者「……えっ?」
女僧侶「私達だけでも……この街を救う為に、動きましょうよ」
勇者「いやいやっ……! でもさぁ? 魔物は二体いるんだよ? しかも、同時に倒さないといけないらしいんだよ?」
女僧侶「それは……そうですが……」
勇者「俺達、三人しかいないのにさぁ? どうやってやるんだよ、そんな事? パーティー、二手に別れるんだったら、一人で戦う人間が絶対、出てくるじゃんっ!」
女僧侶「……」
556:
勇者「天童、一人で出来る?」
天童「バ、バカっ……! 俺はよぉ、天使だから、ノーカンだよノーカンっ!」アセアセ
勇者「……じゃあ、女僧侶ちゃんは?」
女僧侶「確かに、一人で……と、なると、私も不安ですね……」
勇者「ねっ? 俺もさぁ、一人は無理だと思うよ一人は! 俺達3人じゃさぁ……やっぱり、無理だよ……」
女僧侶「それじゃあ、この街の事は見捨てるんですか……?」
天童「そうだよ、おめぇこの街見捨てたら、死んじまうぞ……? どうすんだよ?」
勇者「い、いやぁ……それはさぁ……?」アセアセ
557:
女僧侶「……勇者さん、今日の朝はそんな後ろ向きじゃなかったじゃないですか」
勇者「……えっ?」
女僧侶「今日の勇者さん、凄く前向きだったのに、どうしちゃったんですか……」
勇者「いや、それはさぁ……俺は冷静に現状を分析してさぁ……この人数じゃ難しいって事を言ってるだけだよ……」
女僧侶「……」
勇者「ちょ、ちょっと……! 何で、女僧侶ちゃん、そんなに悲しそうな顔してるの!? 俺だってさ、この街救いたいとは思ってるよ!?」
女僧侶「……本当ですか?」
勇者「いや、だって……この街、救わなきゃ、俺死んじゃうしさぁ……よしっ! じゃあ、こうしようっ!」
女僧侶「?」
558:
勇者「街長さんは『15人いる部隊だったらなんとかなるかも』って、言ってたじゃん? だから、人数集めようっ!」
天童「おめぇ、15人って……後、12人だぞ!? そんなの、集めれるのかよ?」
勇者「う?ん……それは、わかんないけど……でも、この人数で行くのも無謀じゃん?」
女僧侶「街人が贄になる前に、私達の部隊を増やす、と……」
勇者「そうそう! え?っと、今1時だから、後6時間……! 7時までに、とにかく人を集めれるだけ、集めようよ!」
天童「……で、残り1時間で魔物を倒して、命題クリアってわけか」
勇者「多分、それしか方法はないと思うんだよ……ねっ? だから、とにかく皆で手分けして、協力してくれる人を探そうよ!」
女僧侶「わかりました。7時までに、出来るだけ多くの人を集めましょう」
559:
ーーーーー
天童「おめぇはよぉ! 一人で勝手に問題ややこしくしていくんだなっ!?」テクテク
勇者「……えっ?」テクテク
天童「今回の命題の意味なんて、丸わかりじゃねぇか! 塔の魔物を倒してよぉ? 贄になる老人救ってクリアじゃねぇか!」
勇者「……そうだけどさぁ」
天童「それを、15人集めるだなんて、無茶な事言い出しやがって……出来んのかっ!? おめぇ、そんな事出来んのか!?」
勇者「いや……でも、そうしないとさぁ……死んじゃうじゃん……?」
天童「命題クリアできなきゃ、死んじまうのに、それをややこしくしてどうすんだよ! このバカっ!」
勇者「いや、俺はそうだけどさぁ……やっぱり、女僧侶ちゃんは違うじゃん……?」
天童「……ぬ?」
560:
勇者「女僧侶ちゃんはさぁ……命題受けてねぇんだから、そんな俺の我儘に付き合わせちゃいけないよ……?」
天童「……」
勇者「やっぱり、女僧侶ちゃんが生き残る確率はちょっとでも上げないとさぁ……?」
天童「……」
勇者「やっぱり、その為には他に人が必要だよ? もし、集まらなかったらさぁ……?」
天童「……」
勇者「俺、一人でやってみるからさ……? 天童、その時は女僧侶ちゃんの事、頼むね……?」
天童「はぁ?ん……ダメ人間のお前でも、一応成長してるんだな?」
勇者「……そう?」
561:
天童「でもよぉ!? おめぇ、やっぱり足りないよ! うん、何かが足りないね!」
勇者「な、なんだよそれ……」
天童「おじさん、言わないっ! おじさん、言えないけどね! やっぱり、おじさん、何かが足りないと思うな!」
勇者「な、なんだよ……いつもみたいに、言ってくれよ……」アセアセ
天童「ダメっ! それは約束だから、おじさん言えない!」
勇者「……神様から、何か言われてるの?」
天童「違うっ! 神様じゃないっ! おじさん、言えないっ!」
勇者「じゃあ、誰と約束してるんだよ……?」
天童「そりゃ秘密っ! おじさん、口固いから、絶対言わないよっ!」
勇者「もう、わけわかんねぇよ……ほら、とっとと協力者探しに行くぞっ!」
天童(もうちょっと、周りに甘えてもいい気がするんだけどねぇ……あいつ、この数週間の命題で、一人で背負い込む癖でもついたんじゃねぇだろなぁ?)
562:
ーーーーー
勇者「……とまぁ、そういう理由で」
老人「……帰っておくれ」
勇者「いや、でもこのままじゃ、この街はですねぇ……?」
老人「ワシが犠牲になる事で、息子や孫が助かるんじゃったら、安いもんじゃ……帰っておくれ……」
勇者「しかし、それじゃあお爺さんの命は……!」
老人「もうええっ! 放っておいてくれっ!」バタンッ
勇者「……あっ」
天童「……お?う、またダメだったか」
勇者「……うん」
天童「これで何軒目だ? 老人に優しくしねぇといけねぇのに、老人怒らせてばっかりじゃねぇのか?」
勇者「……そうかも」
563:
天童「もう5時だぞ……? このままじゃ、15人なんて夢のまた夢だよ」
勇者「……」
天童「後、2時間……どうすんだよ、ホントに。おめぇ、一人で行く気なのか?」
勇者「その時は……うん……」
天童「あのなぁ? そ?んな事して、女僧侶ちゃんが喜ぶとでも思ってんのか? 第一、お前一人でどうやって、二体の魔物を同時に倒すんだよ?」
勇者「……女僧侶ちゃんの方はどうだろ? 協力者、見つかったかなぁ?」
564:
女僧侶「そこをなんとかっ……! お願いしますっ……!」
老人「……帰っておくれ!」バタンッ
女僧侶「うぅ、またダメでした……もう5時なのに……」
女僧侶「……」
女僧侶「……勇者さん、天童さんのいう通り、お昼にはいつもの勇者さんに戻ってました」
女僧侶「もし、天童さんの言った通りなら……8時前には、もっと後ろ向きな勇者さんになってしまうんでしょうか……」
女僧侶「……」
女僧侶「そんな事はありませんっ! 勇者さんはこの旅で変わりましたっ! だから、きっと大丈夫ですっ!」
女僧侶「7時まで……まだ、時間はありますっ……! だから、協力者を探さなきゃ……!」
「いや?、ここはなんだか活気のない街だね?」
「はい、そうですね。お父様」
女僧侶「……ん?」
565:
男魔法使い「あら、 男賢者? あんな所に可愛いお嬢さんがいるよ?」
男賢者「お父様、その言い方は少しいやらしいです……」
女僧侶「あっ……!」
男賢者「……あれ? もしかして女僧侶ちゃん?」
女僧侶「男賢者さんじゃないですか?」
男魔法使い「ん? なんなの、君達? 知り合いなの?」
男賢者「はい、魔法学校の同級生なんです。ねっ、女僧侶ちゃん?」
女僧侶「あ、あのっ! 男賢者さんっ! お願いがあるんですよっ!」
男賢者「……お願い?」
566:
ーーーーー
男魔法使い「ふふ、あの?、私がねぇ、男魔法使い……それで、こっちが息子の……」
男賢者「男賢者です。よろしくお願いします」
勇者「うわぁ……賢者さんって、始めてみた……」
男魔法使い「あら、そう? 君、賢者をみるのは始めて? ウチの息子は私に似て優秀でねぇ?? ふふ」
男賢者「……お父様、やめて下さい」
勇者「……はぁ」
男魔法使い「この間も、地底湖のある洞窟の魔物の討伐をたった5分でしたんだよね? ふふ、洞窟ごと破壊して」
男賢者「ああいった魔物は、生き埋めにするのが一番ですから」
勇者「……ん?」
男魔法使い「聞くところによると、君達塔の魔物を討伐しに行くんだって? 私達も協力しようじゃないか!」
男賢者「女僧侶ちゃん、僕に任せておいて」ニコッ
572:
勇者「あれっ? 女僧侶ちゃんって賢者さんと知り合いなの?」
女僧侶「……はい」
男賢者「魔法学校の同級生だったんだよね?」
勇者「へぇ?、同級生なんだ……」
女僧侶「はい……」
男賢者「あの日の約束、まだ覚えてる?」
勇者「……ん?」
女僧侶「……あっ! そ、それは」アセアセ
男賢者「僕はまだ、覚えてるよ?」ニコッ
573:
女僧侶「あ、あの……男賢者さん……?」
男賢者「わかってるって。今は魔物討伐の方が優先……でしょ……?」
女僧侶「は、はいっ……!」
男賢者「返事はまた、後でいいからさ……? 早く塔に行こうよ?」
女僧侶「……」
男賢者「それじゃあ、お父様……女僧侶ちゃん……勇者君……え?っと、それと……」
天童「私、商人(天使)のテンドウと申しますっ! あの、『天使』忘れないで下さいね! 格好書きで、て・ん・し!」
男賢者「え?っと、商人の天童さんですね……? とりあえず、街長さんの家に向かいましょうか?」
天童「……」
勇者「……諦めろって。一番近くにいる俺ですら、おめぇが天使だなんて、まだ半信半疑なんだから」
574:
ーーーーー
街長「……3人が、5人になった所でなぁ」
男魔法使い「あのね? 貴方、うちの息子の事を舐めてるでしょ? うちの息子は私に似て凄く優秀なんだよ?」
街長「……と、言いますと?」
男魔法使い「うちの息子は魔法学校を首席で卒業した優秀な子なんだよ!? そこらのねぇ、冒険者なんかとはワケが違うよ!」
街長「!」
男魔法使い「だからさぁ、うちの息子に任せておきなよ? この子は私に似て、とっても優秀なんだから!」
街長「そ、それが本当なら……奴らを倒す事が出来るかもしれんっ……!」
男魔法使い「ねっ? だから、私達に任せておきなさいよ?」
街長「それでは皆さん……どうか、この街を……我々を救って下さいっ……!」
男魔法使い「任せておきなさいよ! 我々、魔法使い親子にね!」
街長「……あの?、ちなみにお父様も、魔法学校を首席で?」
男魔法使い「あっ、いや?、私はねぇ、大学出てないの」
街長「……」
575:
男魔法使い「それじゃあ、道具も一通り揃えた事だし……もう7時だから、そろそろ出発しましょうか?」
男賢者「女僧侶ちゃん、僕が守ってあげるからね?」ニコッ
女僧侶「あっ……いえ、そのっ……」
天童「おい、勇者ァ! おめぇ、あの魔法使い親子にいい所、全部取られちまってるぞ!」
勇者「う?ん……」
天童「おい、『虎の威を借る狐』って諺知ってるか? 今のおめぇみてぇな事を言うんだけどよぉ? 意味わかってんのか?」
勇者「う?ん……」
天童「強いヤツの後ろについて! てめぇは、なぁ?んにもしねぇダメ人間の事を言うんだ! わかったか!?」
勇者「な、なぁ……天童……?」
天童「何だよ……話、聞いてんのかおめぇ」
576:
勇者「あの、男魔法使いさん、いるじゃん……?」
天童「何だよ……あの人がどうしたんだ……?」
勇者「あの人って……老人……?」
天童「……ん?」
勇者「微妙な所なんだよなぁ……中年にも見えるし……老人にも見えるしさぁ……」
天童「た、確かに……言われてみりゃあ、そうだなぁ? もし、あの人が老人だったら……」
勇者「……ねっ?」
男魔法使い「君達、聞こえてるよ! 私はまだ、若いっ! ほらっ、何してんのっ!」
577:
天童「もし、老人扱いだったとしたら……」
勇者「あの人にも優しくしないと……俺、死んじゃうよなぁ……?」
天童「……」
勇者「……ど、どっちなんだろ?」アセアセ
天童「本人は……まだ、若いって言ってるぜ、アレ……?」
勇者「いや、でも老人ってさぁ……? 皆、そういう事言うじゃん……?」
天童「う?ん」
勇者「……どうする?」
天童「よしっ! じゃあ、発想を変えてみようっ!」
勇者「?」
578:
天童「はい、注目ゥ?! それではァ?、瞳を瞑って想像してみて下さいィ?!」
勇者「久しぶりの金八ネタだな……いいから、普通に話せよ……」
天童「文句を言わずに目を瞑って想像しなさい! このバカチンがァ?!」
勇者「わかったよ……やればいいんだろ、やれば」ギュッ
天童「いいですかァ?? 勇者君はァ?、今、満員の電車の中に乗っていますゥ?」
勇者「電車って何だよ……馬車だろが! 何処の世界の話をしてるんだおめぇは!」
天童「黙って話を聞きなさい! このバカチンがァ?!」
勇者「も?う……わかったよ……」
天童「さてぇ?、満員の電車の中に、あの男魔法使いさんが乗ってきましたァ?」
勇者「……おぅ」
天童「満員電車の中でぇ?、ご老人に席を譲るのはァ?、当たり前のマナーですゥ?」
勇者「う、うん……」
579:
天童「さて……席に座っている勇者君の前にィ?、あの男魔法使いさんがやってきましたァ?」
勇者「う、うん……」
天童「その時ィ?、正しい行いをしなければならない勇者君はァ?、どのような行動をとったでしょうかァ??」
勇者「……えっ?」
天童「席を、譲ったか……譲らないか……勇者君はどっちの行動を取ったでしょうかァ??」
勇者「そ、それは……」
天童「……」
勇者「席を……譲った……!」
580:
天童「……じゃあよぉ? やっぱり、あの人にも優しくしねぇと死んじゃうんじゃねぇか、おめぇ」
勇者「うぅ……やっぱり……」
天童「あの人はよぉ? 多分、老人扱いするなとか、余計なお世話だとか言うと思うぜ?」
勇者「……うん」
天童「でもよぉ、そういうのを越えた所にあるのが本当の優しさってヤツなんじゃねぇか?」
勇者「も?う……また、条件増えちゃったや……」
天童「ややこしくしたのは、おめぇだろうが! とにかくよぉ、男魔法使いさんに優しくしながら、魔物を討伐したら、命題クリアだ!」
男魔法使い「お?い、君達、何してるの?? そろそろ行くよ??」
天童「あっ、すんましぇ?んっ! ホレ、勇者行くぞっ!」
勇者「……も?う」
581:
塔内部ーー
天童「……ん?」カチッ
ヒュンッ
天童「うおおっ! トラップかっ! やべぇ、矢が飛んできたぞっ!」
男賢者「女僧侶ちゃん、危ないっ!」グイッ
勇者「うわっ……! 男魔法使いさんっ……! 危ないですっ!」グイッ
天童「おいっ! おめぇらっ! 俺はっ!? 俺は誰も守ってくれねぇのかよっ!」
勇者「……おめぇが、変なスイッチ踏んだのが原因だろが」
582:
男賢者「女僧侶ちゃん、大丈夫?」
女僧侶「あっ……はい、男賢者さんのお陰で……」
男賢者「それは、よかった。ほら、僕につかまって、立って」
女僧侶「あっ……はい、ありがとうございます……」
男賢者「この先……僕が守ってあげるからね?」
女僧侶「……」
男賢者「……ねっ?」ニコッ
女僧侶「あっ……ありがとうございます……」
583:
勇者「あっ……あのっ……! 男魔法使いさんっ……! 大丈夫ですか……!?」アセアセ
男魔法使い「いやぁ?、君のお陰だよ?、君、以外と使えるんだねぇ? ちょっと、起こすの手伝ってもらえるかしら?」
勇者「あっ……! はいっ……! じゃあ、僕の手につかまって下さいっ……!」
男魔法使い「それじゃあ、ちょっと、引っ張ってもらえるかな?」
勇者「うんしょ……うんしょ……って、わわっ!」ドシーンッ
男魔法使い「もうっ! 君、何やってんのっ!」
勇者「す、すいません……あの……この先、男魔法使いさんは僕が守りますので……」アセアセ
男魔法使い「そんな事言われてもねぇ、説得力ないよっ! 何、その引きつった笑顔! ちょっと気持ち悪いよ!」
勇者「……」
天童「……同じ事してるはずなのに、どうしてこうも違うかねぇ??」
584:
ーーーーー
勇者「あ、あれ……道が二手に別れてるぞ……?」
男賢者「多分、この先に魔物がいるんだと思います。 ここでパーティーを二手に分ける必要性がありそうですね」
天童「俺は、戦力不足の方につこうと思うからよぉ? 勇者、女僧侶ちゃん、男賢者さん、男魔法使いさん……この四人を、どう分担するか決めようぜ?」
男魔法使い「どういう風に別れるのがベストな選択なんだろうね……?」
女僧侶「あ、あのっ……! 勇者さんと、私……男賢者さんと男魔法使いさんというのは、どうでしょうか?」
勇者「……えっ?」
585:
女僧侶「こういうのは……やっぱり、信頼関係が一番だと思うんですよね……?」
男賢者「……」
女僧侶「戦闘の最中、お互いの至らない点をフォローし合うのは、長年の信頼が大切だと思うんです……」
男魔法使い「まぁ、確かに……男賢者の魔法をサポートするのに、最適なのは、優秀な私ぐらいしかいないだろうねぇ?」
女僧侶「だから……男賢者さんと男魔法使いさん……そして、私と勇者さんで……」
勇者「……」
女僧侶「これが、ベストな選択だと思うんですが……勇者さん、どう思いますか……?」
勇者「……いや、俺はそれはベストじゃないと思う」
586:
女僧侶「……えっ?」
勇者「男魔法使いさんと、俺……そして、男賢者さんと女僧侶ちゃんがベストな選択だと思う」
女僧侶「……どうして、そう思うんですか?」
勇者「そりゃ、俺は命題がでさぁ……? あっ! って、そうじゃなくてそうじゃなくて……!」アセアセ
女僧侶「私の事……信頼してくれてないんですか……?」
勇者「い、いやっ……! そうじゃなくてさぁ、戦力的に考えてだよ! 戦力的に考えて!」
女僧侶「……」
勇者「それにさぁ……? 女僧侶ちゃんも、俺なんかといるより、男賢者さんといた方が安全だと思うんだよね……?」
女僧侶「……えっ?」
587:
勇者「だってこの人、魔法学校首席で卒業してるんでしょ? 俺、そんな人には勝てないよ」
女僧侶「……」
勇者「俺みたいな奴なんてさ……? どうせ、大した魔法も使えないし、優れた特技もないしさぁ……?」
女僧侶「……」
勇者「やっぱり、男賢者さんと男魔法使いさんのサポートに徹した方がいいと思うんだよねぇ?」
女僧侶「……」
勇者「だからさぁ、この選択がベストだと思うな! 女僧侶ちゃんの為にも! 俺の為にも!」
女僧侶「……」
588:
男賢者「僕は、その選択肢で構いませんが……お父様、どうします……?」
男魔法使い「え?? この子達使えないの? も?う……年寄りに戦闘させないでよ……」
男賢者「お父様は、いつもまだまだ現役……なんて、言ってるじゃありませんか」
男魔法使い「じゃあ、私達の方に天童さんもらうよ? 構わないかな?」
男賢者「はい、わかりました。では、僕と……女僧侶ちゃんで……こっちの道へ……」
女僧侶「……」
男魔法使い「私と……勇者君と……天童さんで……こっちの道だね?」
天童「任せときんしゃいっ!」
勇者「女僧侶ちゃん、気をつけてね?」
女僧侶「……はい」
595:
ーーーーー
男賢者「ねぇねぇ、女僧侶ちゃん?」テクテク
女僧侶「……」テクテク
男賢者「……女僧侶ちゃん?」
女僧侶「えっ……! あっ、どうしましたか、男賢者さん……?」
男賢者「君の好きだった人って、あの勇者君?」
女僧侶「……えっ?」
男賢者「魔法学校を卒業する日、僕が君に告白したのを『好きな人がいる』って、断ったよね?」
女僧侶「あっ……いや、それは……」アセアセ
男賢者「あれって、勇者君の事だよね?」
女僧侶「……」
596:
男賢者「隠さなくてもいいからさ? 勇者さんの事なんでしょ?」
女僧侶「ど、どうして……わかったんですか……?」
男賢者「女僧侶ちゃんの彼を見つめる目を見てたら……なんとなくね……」
女僧侶「……」
男賢者「……それに」
女僧侶「……それに?」
男賢者「僕はまだ、君の事が好きだからね。好きな人の事はなんとなくわかるんだ」
女僧侶「……あの」
男賢者「……ねぇ、女僧侶ちゃん?」
女僧侶「どうしたんですか?」
男賢者「……僕達と一緒に旅をしない?」
女僧侶「……えっ?」
597:
男賢者「僕は君を必ず守る」
女僧侶「……」
男賢者「そして、世界を平和にもしてみせる……」
女僧侶「……」
男賢者「僕は君の好きだった『明るくて前向きな男』に、今ならなっていると思う。告白したあの時とは違う」
女僧侶「あのっ……! お気持ちは嬉しいんですが……」アセアセ
男賢者「……わかってる。君が好きなのは勇者君だよね?」
女僧侶「……は、はい」
男賢者「でも、彼はさ……?」
女僧侶「?」
男賢者「……君の好きな『明るくて、前向きな男』なのかな? 僕には、そう見えないよ」
女僧侶「!」
598:
男賢者「……少なくても僕なら、こういう状況で、パートナーの君を守りたいと思うな」
女僧侶「……あ、あの」
男賢者「自分には力がない……なんて、言わずにさ? 好きな人を守りぬく事に全力を尽くす事を考えるな」
女僧侶「それは……! 何かきっと、理由があると思うんですよ……」アセアセ
男賢者「……どんな理由?」
女僧侶「それは……わ、わからないですけど……」
男賢者「……僕には彼の事は『後ろ向きでネガティブな男』にしか見えないなぁ」
女僧侶「……」
男賢者「僕は、絶対に君を守る。そして、君の好きな理想の男にもっと近づいてみせる。だから……」
女僧侶「……だから?」
男賢者「この討伐が無事に終われば、僕達と共に旅をする事を考えてほしい」
女僧侶「……」
599:
男賢者「ごめんね? 急に混乱させる様な事を言っちゃって」
女僧侶「そ、そうです……こんな状況の中、そんな事を言われても……私……」
男賢者「……でも、やっぱり自分の気持ちはどうしても伝えたかったから」
女僧侶「……えっ?」
男賢者「この魔物討伐が終わったら、女僧侶ちゃんとは二度と再会できないかもしれないのに、気持ちを伝えないまま終わるのは、やっぱり嫌だからさ……?」
女僧侶「……」
男賢者「後悔したまま人生終わりたくないじゃん? ……なぁ?んて、ちょっとキザな事を言ってみたりして?」
女僧侶「……男賢者さん」
600:
男賢者「ごめんね、返事は後でいいからさ? 今は集中しようか」
女僧侶「……はい」
男賢者「……強い魔力を感じる。多分、この扉の先に魔物がいるんだろう」
女僧侶「……」
男賢者「……大丈夫。僕が必ず、君の事を守るから」
女僧侶「……はい」
男賢者「さぁ、魔物を討伐して、街に平和を取り戻そう!」
ギイィ
601:
魔術師「おやおや……今回の贄は、随分と若いお嬢さんのようですね……」
男賢者「……残念ながら、彼女は贄ではない」
魔術師「……ほぅ?」
男賢者「我々は街を救う為に、貴様を討伐しに来た者だっ……!」
魔術師「おやおや、人間というのは愚かな生き物ですねぇ? 今までに何人の冒険者が私にその同じ台詞を言ったでしょうか?」
男賢者「……」
魔術師「……そして、後悔しながら、私に殺されていったでしょうか?」
男賢者「……僕達をあまり、舐めない方がいいぞ?」
魔術師「ふふふ……一つ、面白い事を教えて差し上げましょう……」
男賢者「?」
602:
魔術師「私は魔術の達人です……そう! 天才なのですっ!」
男賢者「……」
魔術師「愚かな人間達が、一生かかっても、使いこなせない魔法を生み出したのですっ!」
男賢者「へぇ……賢者としては、興味がある話だな……」
魔術師「それが、このっ! 結界魔法ですっ!」ブィン
男賢者「……ほぅ」
魔術師「これは魔力以外の物を完全に防ぐ結界です ……つまり、貴方達の剣や弓の攻撃は私には通用しません」
男賢者「なるほどねぇ……確かに、厄介な魔法だ……」
603:
魔術師「今までの冒険者達は、この結界魔法になす術なく、死んでいきました」
男賢者「……」
魔術師「貴方達も同様です……彼等と同じように死んでいくのです……」
男賢者「面白い魔法だと思うよ……だが、無意味だね……」
魔術師「……何?」
男賢者「僕は賢者だ……そして、彼女は僧侶だ……ここに、魔法以外を使う人間がどこにいる?」
魔術師「何だと……? 貴様、賢者か……!?」
男賢者「魔力が通るんだったら、そんなそんな結界など、無意味だっ! いくぞっ! 女僧侶ちゃん、サポートを頼むっ!」
女僧侶「は、はいっ……!」
魔術師「くそっ……! 面白いっ……! この天才魔術師の力を思い知らせてやるわっ!」
604:
ーーーーー
ミノタウロス「ハッハッハっ! 愚かな人間共よ! 俺様の能力を教えてやろうっ!」
男魔法使い「あっ、聞きたい聞きたい」
天童「俺も! 自分で弱点言ってくれるなら是非聞かせて欲しいっ!」
勇者「……俺、あんまり聞きたくない」
ミノタウロス「俺様の能力はっ! 肉体を硬化させて! 全ての魔法を弾く力であるっ!」
男魔法使い「あら?、そりゃ、凄いわ……」
天童「あんら?、こいつ思った以上に厄介な奴ねぇ……?」
勇者「も?う……だから、俺は聞きたくないって言ったじゃん……」
ミノタウロス「ハッハッハっ! お前達も今までの冒険者と同じように八つ裂きにしてくれるわっ!」
605:
男魔法使い「いや?……厄介な能力だねぇ……?」
勇者「そ、そうですねぇ……」アセアセ
男魔法使い「まぁ、でもなんとかなるでしょ? それじゃあ、勇者君、お願いね?」
勇者「……えっ?」
男魔法使い「私は今回、役に立たないねこりゃ……」
勇者「ちょ、ちょっと待って下さいよっ……! 男魔法使いさんも戦って下さいよ!」
男魔法使い「何、言ってんの君!? あいつ、魔法効かないんだよ? 私、何も出来ないじゃない!?」
勇者「えっ……!?」
男魔法使い「あのねぇ、私は肉体派じゃないの? もう歳だしね? こういう戦いは、君がやりなさい。君が!」
勇者「歳って……! さっきは、まだ若いとか言ってたじゃないですか!?」
男魔法使い「知らん知らん……ほら、とっととアイツを倒しちまいなさいっ!」
606:
勇者「うぅ……何で、こんな時になって老人発言するんだよ……」ブツブツ
ミノタウロス「ほ?う……一番手はお前か……タイマン勝負を挑んでくるとは、ちょっとは根性あるじゃねぇか……」
勇者「い、いやぁ……俺は、そんな事したくないんだけどさぁ……そうだっ! 話し合いとかしようよ!」
ミノタウロス「リングに上がってんのにウダウダ言ってんじゃねぇよっ! おらっ!」ビュンッ
勇者「う、うわっ……!」
ミノタウロス「このチビっ! 逃げんじゃねぇよっ! おらっ! おらっ!」ビュンッ
勇者「ちょ、ちょっとタイムっ……! 話し合いしようよっ……! ねっ、ねっ?」
ミノタウロス「うるせぇ! おらっ!」ビュンッ
勇者「わっ……! わわっ……!」
男魔法使い「……なぁ?にを、やってんだ彼は」
天童「……でも、避けんのは上手ぇなぁ? 一応、成長してんのかな?」
607:
ーーーーー
男賢者「はっ! たあっ!」
魔術師「ぐわぁぁぁ!」
男賢者「女僧侶ちゃん、魔力を分けてくれっ!」
女僧侶「は、はいっ……! んっ……!」
男賢者「よしっ……! これでとどめだっ! 僕と女僧侶の魔力を奴にぶつけてやるっ……!」
魔術師「くそっ……! この私が……この私が……! こうなれば、古の魔法を使って……」
男賢者「無駄だよ……貴方の攻撃は、もう見切っている……」
魔術師「それはどうかな……? 隕石をこの塔に落とし……この塔ごと……! そして、周囲の街ごと……! 貴様を潰してくれるわっ……!」
女僧侶「古の魔法……! 隕石を呼び寄せる魔法って……聞いた事はありますが、本当に存在するなんて……!」
608:
魔術師「……時は来た」ブツブツ
女僧侶「男賢者さんっ! 呪文の詠唱を始めてますよ……! なんとかしないとっ……!」
男賢者「大丈夫っ……! それより、女僧侶ちゃん、僕に魔力を送ってくれっ! 奴を倒すには魔力がまだ、不十分なんだっ!」
魔術師「……許されざる者達の頭上に」ブツブツ
女僧侶「で、でも……隕石が降ってきたら……私達だけじゃなく、街の人達までも……」
男賢者「今は説明している暇はないっ! 奴を倒すのにはまだ、魔力が足りないんだっ! 僕を信じてっ!」
魔術師「……星砕け降り注げ」ブツブツ
女僧侶「……」
男賢者「いいから、僕を信じてっ!」
魔術師「来たぞ来たぞ……さぁ、これで貴様達も終わりだっ! くらえっ! はあぁっ!」
女僧侶「……んっ」
男賢者「よしっ……女僧侶ちゃん……魔力が……溜まってきたぞ……」
609:
魔術師「バカな……何故だ……」
女僧侶「……あ、あれ?」
魔術師「何故だ何故だ何故だっ! 何故、隕石が来ないっ! 私の詠唱が間違っていたとでもいうのか!?」
男賢者「いえ……流石、天才魔術師です……まさか、古の魔法まで使えるとは……おそらく、詠唱も間違っていないと思いますよ……」
魔術師「では……何故……」
男賢者「それは……僕が、貴方の呪文を封じる魔法をかけているからですよ……」
魔術師「……何!?」
男賢者「天才魔術師相手に……それくらいの警戒は当然じゃありませんか……自分の能力を自慢気に語るのは関心できませんね……」
魔術師「……き、貴様ァ!」
男賢者「貴方の詠唱の間……こちらも十分力を溜めさせて頂きましたよ……」
魔術師「!」
男賢者「……くらえっ! これが、僕と女僧侶ちゃんの魔力だっ!」ゴオオオォォッ
魔術師「う、うわああぁぁぁぁ!」
女僧侶「やった……! 奴が燃えていきますっ!」
男賢者「その力……来世では世の為に役立ててもらいたいものです……さて、お父様達は大丈夫かな?」
614:
ーーーーー
ミノタウロス「ちょろちょろ逃げてんじゃねぇよっ! ゴキブリか! てめぇは!」ビュンッ
勇者「わっ……! わわっ……!」
男魔法使い「お?い、勇者君、何やってるのよ……」
勇者「い、いやっ……そんな事、言ったって……こんな奴に殴られたら死んじゃいますよ、僕……」
天童「蝶の様に舞い、蜂のように刺すんだよっ! おめぇはモハメド=アリ先生の試合を見た事ねぇのか!?」
男魔法使い「あ?、猪木との試合はよかったよねぇ? 当時は凡戦なんて言われてたけどねぇ?」
勇者「ちょっとっ……喋ってる暇があるならちょっとは手伝っ……」ガシッ
ミノタウロス「……」
勇者「……ん?」
ミノタウロス「へへへ……捕まえた?っと……」ニヤニヤ
615:
勇者「い、いやっ……あのっ……」アセアセ
ミノタウロス「……」
勇者「や、やばい……これ、まずいかも……男魔法使いさんっ……!」
男魔法使い「……はあっ!」ドヒュンッ
ミノタウロス「……フンっ!」カキンッ
男魔法使い「あ、あらぁ?……やっぱり、魔法弾は弾かれちゃうねぇ……」
ミノタウロス「……言ったはずだ。俺には魔法攻撃は通用しないとな」
勇者「や、やばい……これ、まずい……」アセアセ
ミノタウロス「おい、坊主……? 今から、ちっと痛い事するから、気を失うんじゃねぇぞ……?」
勇者「えっ……? い、いやぁ……何、するつもりなんですかねぇ……?」
ミノタウロス「てめぇをよぉ……? ぶん投げて、壁に叩きつけてやるんだよ……こぉ?んな風になぁっ!」ブンッ
勇者「う、うわああぁぁっ!」
616:
ドーンッ
勇者「……ガッ」
天童「お、おいっ! 勇者ァ、大丈夫か!?」
男魔法使い「ちょ、ちょっと……君……! こっちに飛んでこないでよ! 危ないじゃないっ!」
ミノタウロス「……うまい具合に、三人固まってくれたな」
天童「……えっ?」
男魔法使い「……えっ?」
ミノタウロス「我が肉体よっ……! より、硬化して我に力を与えたまえっ……!」ムキムキッ
天童「お、おいっ……やべぇぞ……」
男魔法使い「奴の身体が……どんどん膨らんでいく……」
ミノタウロス「我に力をっ……! 全てを砕くパワーをっ……!」ムキムキッ
勇者「ぐっ……ううっ……」
617:
ミノタウロス「さぁ……これで最後にしてやる……」
天童「おいっ、勇者っ! 立てっ! あいつ、突っ込んでくる気だぞ!?」
男魔法使い「あんな大きな身体じゃ……逃げ道なんてないじゃないかっ……!」
ミノタウロス「いくぞっ! これでお前達も今までの冒険者と同じように死ぬのだっ……!」
天童「勇者っ! なんとかしろっ! おめぇ、男だろうがっ!」
男魔法使い「う、うわぁっ……! 来たっ……!」アセアセ
ミノタウロス「うおおおぉぉぉっ! ショルダータックルだああぁぁぁぁっ!」
勇者「ぐっ……うぅぅ……」プルプル
618:
天童「男魔法使いさんっ……! こうなりゃ、あんただけでも逃げんしゃいっ!」
男魔法使い「に、逃げるって……何処に逃げるのよ……そんな、逃げ道何処にもないじゃないっ……!」
勇者「ぐっ……ううっ……バイアグラ? ……バイキンマン……ぐっ! 違う違うっ……」
ミノタウロス「うおおおおっ!」
天童「やべぇ! 来たぞっ!」
男魔法使い「このままじゃ、私達全滅してしまうよっ……!」
勇者「バイク王……? さよならBye-Bye(リーシャウロン)……? ぐっ、違う違うっ! そうじゃないっ!」
ミノタウロス「うおおおおっ! これで貴様達も終わりだああぁぁぁっ!」
天童「やべぇっ!」
勇者「『バイキルト』?」ピカーッ
619:
ガシッ
ミノタウロス「……ぬ?」
天童「奴の突進が止まったぞ……? しかし、何故だ……?」
男魔法使い「勇者君……? 今、君何かしたの……? って、その身体っ!? どうしたんだね、君っ!?」
勇者「……えっ?」ムキムキ
ミノタウロス「何っ……? こ、こいつ……! 俺と同等の体格になって、俺の突進を止めやがっただと?」
天童「おおっ、勇者ァ! おめぇ、やるじゃねぇか!?」
男魔法使い「君の身体、壁殴り代行のAAみたいだよ! 凄いよ、凄い筋肉っ!」
勇者「う?ん……助かったのはいいけど……この身体、なんだか気持ちわるいなぁ……」アセアセ
620:
天童「おいっ、勇者っ! 今、7時57分だから……後、3分だっ……!」
勇者「えっ……! もう、そんな時間なの……?」
天童「後、3分以内によぉ? そこのでか物を倒しちまえっ!」
勇者「おめぇは簡単に言うけどさぁ……?」
天童「なぁ?に、言ってやがる! 今のおめぇの身体だったら、楽勝だりうが! 三冠ヘビー級王座選手権、3分一本勝負だっ!」
男魔法使い「あら? 天童さんは、全日派なの? 私はねぇ、新日派なの。 勇者君、IWGP選手権試合期待してるよ!」
勇者「も?う……二人共、何言ってるかわかんないよ……まぁ、時間ないし、戦うけどさぁ……?」
ミノタウロス「!」
621:
勇者「……」ズシンズシン
ミノタウロス「!」ビクッ
勇者「……じゃあ、いくよ?」
ミノタウロス「!」
勇者「……たあっ!」ズバーンッ
ミノタウロス「……ぐわぁぁぁっ!」
勇者「……えっ?」
ミノタウロス「ぐっ……な、なんて重いチョップだ……こいつ、俺の三倍以上の力がありやがるっ……!」
勇者「……えっ、嘘でしょ? ちょっと、軽めに叩いただけだよ、僕」
ミノタウロス「ぐぐっ……しかし、こっちも負けてはいないぞっ……! おらあっ!」
勇者「!」
622:
ペチッ
ミノタウロス「はぁっ……はぁっ……」
勇者「?」
ミノタウロス「何……? こいつ、俺のチョップが効いていないだと……!?」
勇者「う、うん……あんまり、痛くない……かな……?」
ミノタウロス「そ、そんなはずはないっ……! くそっ! くらえっ、マシンガンチョップだっ! おらあっ!」
ペチペチペチペチペチペチペチペチ……
勇者「……」
ミノタウロス「おらおらおらおらっ……!」
勇者「……あのさ? 時間ないし、そろそろ終わらせてもいいかな?」
ミノタウロス「!」
624:
ミノタウロス「こ、こうなれば……! 俺の必殺技、バックドロップで……!」
勇者「……ん?」
天童「おいっ! バカッ! 簡単に背後を取られてるんじゃねぇよっ!」
ミノタウロス「うおおおっ! くそっ……持ち上がれ……持ち上がれぇぇっ……」ググッ
勇者「あれ……これ……どうしたらいいのかな……?」アセアセ
男魔法使い「……あのね、あのね。勇者君?」
勇者「……ん?」
625:
男魔法使い「あのね、あのね……こ?んな感じで、身体を横に逸らすような動きしてみて?」クイクイ
勇者「え?っと……こんな感じですかね……?」クルッ
ミノタウロス「……何っ!?」
男魔法使い「そうそう、そうしたら、相手の背後を取り返せるでしょ?」
勇者「あっ、本当だ……いつの間にか、俺が背後をとってるや……」
ミノタウロス「や、やばいっ……!」
男魔法使い「そしたらね、今度はブリッジする要領で持ち上げたまま、後ろに倒れてみようか? こ?んな感じで……」クイクイ
勇者「え、え?っと……こんな感じですか……?」ググッ
ミノタウロス「う、うおおおおおっ!」
ドシーンッ
ミノタウロス「……グギギ」
男魔法使い「そうっ! それが馳浩の得意技の『裏投げ』だっ!」
天童「1……2……3……! はいっ、カァ?ットっ! 8時ジャストに、勝利の3カウントだっ!」
626:
ーーーーー
街長「本当に……皆さん、ありがとうございましたっ……!」
男魔法使い「いやいや、私は何もしてないよ! 今日のヒーローは、うちの息子と勇者君の二人だっ!」
勇者「……えっ?」
男魔法使い「いやぁ?、久しぶりにいい試合を見せてもらったよ! プロレス好きの血が騒いだねっ!」
勇者「い、いやぁ……」
男魔法使い「それに、男賢者もよくやったっ! いや?、やっぱり、君は自慢の息子だよっ!」
男賢者「……いや、今回の討伐は女僧侶ちゃんの力があったからです。お父様」
女僧侶「……えっ?」
627:
男賢者「今回の敵は、強い闇の力を持っているのを感じました……それに対抗する聖なる力は私も、お父様も持ってはいません……」
男魔法使い「……ほぅ」
男賢者「今回の勝利は、彼女の協力があったからです。 彼女のなしでは、どうなっていたか、わからないでしょう」
男魔法使い「いや?、なるほど! じゃあ、女僧侶ちゃんも頑張ってくれたんだね! いや?、やっぱり、若い子達の力は凄いねっ!」
女僧侶「あ、ありがとうございます……」
男魔法使い「しかし、うちの息子は優秀な上に、謙虚だときたもんだっ! やっぱり、私にそっくりだねぇ! ハハハハハ!」
天童「ねぇねぇ、男魔法使いさん、男魔法使い? 俺は褒めてくれないの? 俺も頑張ったんだけど?」
男魔法使い「……天童さん、私と一緒で何もしてないじゃない?」
天童「バ、バカ?ンっ! 今回、俺も大活躍したぜぇ? カァ?! もう、たまらぁ?ん! たまらぁ?んっ!」
628:
そしてーーー
勇者「……」
天童「まぁ、なんだかんだ、ややこしい展開にはなったけどよぉ……?」
勇者「……あっ、天童?」
天童「『思いやり』……クリアできてよかったじゃねぇか? なっ?」メモメモ
勇者「……うん」
天童「これで、命題は残り5つ……後半分だ……おめぇも順調に成長してるじゃねぇか?」
勇者「う、うんっ……!」
天童「……でもよぉ!?」
勇者「?」
630:
天童「おめぇは確かに成長してるよ? だけどよぉ?」
勇者「?」
天童「なぁ?んか、大事な物、失ってねぇか? 胸に手を当てて、よく考えてみろよ?」
勇者「……えっ? なんだよ、ソレ」アセアセ
天童「さぁねぇ?、おじさん知らないねぇ?」
勇者「お、おいっ……! 大事な物ってなんだよ、教えてくれよ……!」
天童「……おじさん、疲れてるから今日は寝るわ?! まぁ、じっくり考えてみなさ?い!」テクテク
勇者「……な、なんだよ。アイツ」
632:
女僧侶「……」テクテク
勇者「あれ? あれ、女僧侶ちゃんじゃん? お?いっ!」
女僧侶「……」
勇者「あれっ? 聞こえてないのかな? お?い、女僧侶ちゃん?!」
女僧侶「……あっ、勇者さん」
勇者「女僧侶ちゃん、今日はお疲れ様?」
女僧侶「……」
勇者「やっぱり、俺のパーティー分けの判断正しかったでしょ? ねっ? ねっ、ねっ?」
女僧侶「……」
勇者「……あれ? どうしたの? 女僧侶ちゃん、ぼーっとして、話聞いてる?」
女僧侶「……」
勇者「……お?い?」
女僧侶「あ、あのっ……!」
勇者「……ん?」
635:
女僧侶「あの……勇者さん……?」
勇者「……ん?」
女僧侶「勇者さんって……その……あの……」
勇者「……ん? どうしたの?」
女僧侶「あの……その……私の事……」
勇者「?」
女僧侶「……」
勇者「……どうしたの?」
女僧侶「あっ……いえっ……! やっぱり、何でもありませんっ……! 今日は私も疲れたので、もう休みますね……?」
勇者「あっ……うん……わかった……」
女僧侶「そ、それじゃあ……勇者さん……お休みなさいっ……!」
勇者「なんだろぉ? 逃げるように行っちゃったや……なぁ?んか、天童といい女僧侶ちゃんといい、皆おかしいな……?」
636:
ーー五話 「優しくしないと死ぬ!」

653:
勇者「……zZZ」
「……勇者君、起きなさい」
勇者「……zZZ」
「勇者君、もう朝ですよ……起きなさい……」
勇者「んっ……もう朝か……いやぁ、昨日の一件でまだ筋肉痛だよ……痛ててて……」
「……昨日はお疲れ様でした。流石、私の勇者君です」
勇者「……ん? ところで、あんた誰?」
「私は神様です」
勇者「えっ!?」
654:
神様「今日は貴方に、お話があってやってきました」
勇者「えっ……? 神様がわざわざくるってなんだよ……俺、何にも悪い事してねぇぞ!?」アセアセ
神様「いいえ。違います、その逆です」
勇者「……逆?」
神様「最近の勇者君の頑張りはとても素晴らしいです。もう、勇者君はダメ人間なんかじゃないでしょう」
勇者「あっ……ありがとうございます……」
神様「もう……勇者君は一人前です……」ニコッ
勇者「……えっ?」
神様「もう……勇者君には命題なんて必要ありません……あなたはこれから、自由な人生を歩むべきでしょう」
勇者「!」
655:
神様「……」
勇者「マ、マジかよっ……! やったっ! これで俺もついに命題から解放されるっ……!」
神様「……きろ」
勇者「うわぁ……こんな夢みたいな話……俺、信じられないやっ!」
神様「……きろ……んだ……きろ!」
勇者「あれっ……? 神様、急に変な事言い出してるけど、どうしたの……?」
神様「……起きろ……起きろ」モヤモヤ
勇者「あれ……? 神様の顔がぼやけて……な?んか、見た事のある顔に変わっていってるような……」アセアセ
天童「おいっ、起きろっ! 何、都合のいい夢みてんだよっ! とっとと起きろっ!」
勇者「!」
656:
勇者「うわあああっ!」ガバッ
天童「……おめぇはよぉ、複雑な夢を見るんだな!?」
勇者「えっ…… あれ? ど、何処までが夢だ……? 命題は……? もう、やらなくていいのかな……?」
天童「おめぇがよぉ! 天界からの命題をクリアしないと死ぬってのは明白な事実なのー! これが現実なのー!」
勇者「……なんだよ、夢かよ。 せっかく命題なしになったと思ったのに」
天童「もっと、ポジティブシンキングになれよ! もっとやる気を出せよ! 朝からグズんなよ!」
勇者「……おめぇが朝から元気すぎるだけだろが」
657:
天童「……で、今日はどうするんだ? おめぇのポジティブシンキングな考えを聞かせてくれよ?」ニヤニヤ
勇者「う?ん、そうだな……そろそろ大陸移動してみようかと思ってる……」
天童「あらっ、意外? まさか、そんなしっかりした計画があるなんて!」
勇者「……そう? やっぱり、こっちの大陸に魔物が増えたのもさぁ、あっちの魔王城がある大陸から、流れてきてるんだし、向こうの大陸をなんとかしないといけないじゃん?」
天童「……おめぇ、成長してきたなぁ?」
勇者「……そう?」
天童「あぁ、そうだよ。一昔前までのおめぇなら『魔王城がある大陸なんておっかなくていけんば?い』なんて言ってただろ?」
勇者「……言わねぇよ。それに博多弁も使わねぇよ」
658:
天童「まぁ、そういう事なら早い事出発するか!」
勇者「そうだね……あっ! でも、街長さんにお礼だけ言っておこうか?」
天童「……ん?」
勇者「いやぁ……塔の魔物を倒したのもあるけどさぁ……流石に、こんないい部屋に泊めてもらって、ご馳走にまでなってさぁ……?」
天童「……おぉ」
勇者「やっぱり、人としてさぁ……? お礼の一つでも言っておくってのが筋ってもんでしょ?」
天童「……なぁ?んか、真人間に近づいてるじゃねぇか? いい事だけども?、ちょっとムカつく?」
勇者「……なんだよ、ソレ」
659:
天童「……しかし、勇者?」
勇者「……ん?」
天童「真人間になってるおめぇには悪いが、朝から一つやる事があるぞ……?」
勇者「えっ……? あっ、まさか……!」
天童「……それは」
勇者「まさか……命題……」ゴクリ
天童「……」
勇者「……」
天童「うんこっ?!」
勇者「……はぁ?」
天童「ちょっと五分だけトイレ行かせてよ? 朝からどぎついのかましてきますばいっ!」
勇者「……」
天童「テッテテレッテ♪ テッテレッテッテ♪ お?い、ちゃ?んと、待っておいてくれよ?! どぎついうんこかましてくるからよぉ!?」
勇者「……あいつ、絶対天使じゃねぇ。うんこする天使なんて、いるわけねぇ」
660:
ーーーーー
街長「いや?、君達には本当に助けられたよ! ありがとうっ!」
天童「いやいや?、まぁ、全部この私のおかげですばいっ!」
勇者「……おめぇは、何にもしてねぇだろ」
街長「それで……これから、君達はどうするんだね……?」
天童「あっ! 魔王城のある大陸に移動して人助け等をしたいと考えておりますっ! ちなみに、これも私が考えた計画ですっ!」
勇者「……おめぇは、本当によぉ?」
街長「大陸を移動する……? ちょっと、それはマズいかもな……?」
天童「?」
勇者「……どうかしたんですか?」
661:
街長「大陸に繋がる橋があるだろう……? どうやら、あの橋が昨日、君達が塔に行ってる間に嵐で破壊されたらしい」
天童「あらっ?」
勇者「うわぁ……」
街長「ひょっとしたら、昨日塔に行かずに大陸に向かっていたら、巻き込まれていたかもしれないね?」
天童「あら?」
勇者「あ、危なかった……」
街長「君達が我々を助けてくれたおかげで、そういう自体を避けれたのは、不幸中の幸いだけれども……」
天童「……」
勇者「……」
街長「橋の修理や、船の準備が整うまで二三日はかかりそうかな……? まぁ、それまでは私達が面倒をみよう」
662:
ーーーーー
女僧侶「……勇者さんと天童さん、部屋にいませんね? どうしたんでしょう?」
男賢者「女僧侶ちゃん、おはよう」
女僧侶「あっ、男賢者さん! おはようございます」
男賢者「ねぇ? 昨日の話、考えてくれた?」
女僧侶「……えっ?」
男賢者「僕と……冒険するか……それとも、勇者君と冒険するか……」
女僧侶「いえっ……あのっ……急にそんな事、言われても……」アセアセ
男賢者「あんまり、悩んでるのは女僧侶ちゃんらしくないんじゃない?」
女僧侶「でもっ……あのっ……私、勇者さんの気持ち、はっきり聞いてませんし……」モジモジ
男魔法使い「話は聞かせてもらったよっ!」
664:
男賢者「あっ……お父様……?」
男魔法使い「あのねぇ、男賢者? いくら、君が私に似て男前だからと言って、人様の彼女を取っちゃいかんよ! 人様の彼女を!」
女僧侶「あっ……! いえっ……! 私と勇者さんは付き合ってませんっ……!」アセアセ
男魔法使い「あら、そうなの? だったら、私達のパーティーに加わりなさいよ? 私達も回復役が欲しいと思ってたんだよ」
女僧侶「あの……でも……私、勇者さんの気持ちがちょっとわからなくて……」
男魔法使い「……?」
女僧侶「男賢者さんは私を必要としてくれていますけど……勇者さんが私を必要としてくれているのか……よく、わからなくて……」
男魔法使い「あ?、なる程! じゃあ、こうしようっ!」
女僧侶「?」
666:
男魔法使い「決闘しようっ! 決闘! ねっ?」
女僧侶「……えっ?」
男魔法使い「うちの、男賢者と勇者君で、決闘して……勝った方が、女僧侶ちゃんをパーティーに入れれる、と!」
男賢者「……お父様? なんですか、それ?」
男魔法使い「あれ、知らない? WWEってプロレス団体ではね、こういう勝者が女性をモノに出来るって試合形式が結構あるんだよ?」
女僧侶「……は、はぁ」
男魔法使い「それにね……この試合形式ただ強いだけじゃダメなんだ」
男賢者「ほぅ……どうしてですか……?」
男魔法使い「彼女のを必ず、自分のモノにするという前向きな思いっ……! そして、愛がないと絶対に勝てない試合なんだっ!」
667:
女僧侶「前向きな気持ちと……愛ですか……」
男魔法使い「ねっ、面白そうでしょ? ちょっと、WWEに興味持ってくれた?」
男賢者「それなら……僕は負けない自身がありますね……」
男魔法使い「おっ? なんだ、男賢者、やる気になってくれたか? いや?、これはいい試合が見れそうだな?」
女僧侶「……」
男魔法使い「……女僧侶ちゃん?」
女僧侶「……はい?」
男魔法使い「君が二人の事を心配するのはよくわかるけどさ……?」
女僧侶「……」
男魔法使い「君達はまだ若いんだ……言葉を知らなさすぎるんだ……お互いの気持ちを確認し合うのには、こういう方法もあるんじゃないかな?」
女僧侶「……」
672:
ーーーーー
天童「カァ?! 二三日足止めかよ、どうする? 勇者?」
勇者「う?ん……でも、最近ずっと冒険してたから、骨休みってのも悪くないんじゃい?」
天童「おめぇはよぉ? ちっとは真人間になってきたと思ったのに、ま?だ、そんな事言ってんのか!?」
勇者「……えっ?」
天童「ぐーたらぐーたらしようとあいてんじゃねぇよ! こんな世の中だってのに、休んでる暇なんかねぇだろ!」
勇者「……じゃあ、どうしたら」モジモジ
街長「……それでは、一つ頼み事をしたいのだが」
勇者「……ん?」
673:
街長「塔の魔物を倒してくれた君達に……続けてこんな事を頼むのは申し訳ないんだが……」
天童「あっ、構いませんよ! なんでも、引き受けるんで、どんどん頼んで下さい」
勇者「……どうせ、おめぇはやんねぇんだろ。でも、話は聞きますよ?」
街長「ありがとう……助かるよ……」
天童「……で、頼みってのは何なのですか?」
勇者「あんまり、ややこしい事はやめて下さいね……?」
街長「いや、塔の魔物を倒した君達なら、簡単な事だ。見ての通り、我々の街には老人が多い」
天童「そうですね、可愛いお姉ちゃん、いませんよねぇ!?」
勇者「……おい」
街長「……」
天童「あっ、 すんましぇ?んっ! どうぞ、話を続けて下さいっ!」アセアセ
674:
街長「彼等の中には健康状態の思わしくない人間も大勢いるんだ」
勇者「そうですね……やっぱり歳ですもんね……」
街長「我々の街では、彼等の治療にこの薬草を使っている」
天童「あらっ? 綺麗な薬草。 ピンク色の薬草なんて珍しいですね?」
街長「この薬草は、過酷な環境の中成長した薬草でね……非常に高い効能を持っているんだ」
勇者「……えっ? 過酷な環境?」
街長「そんなに心配する事はない、ただの洞窟だ。 まぁ、小物の魔物なんかはいるだろうがね」
675:
勇者「うわぁ……魔物がいるのか……」
街長「若い連中は随分と準備をして行っていたようだが……それでも、怪我人や死者などは、一人もでなかったよ?」
勇者「……う?ん」
街長「それから……塔に魔物が住み着いて……若い奴らは、皆命を失って……薬草を採りに行く人間がいなくなって……」
勇者「なるほど……」
街長「……もう、この薬草が殆ど残ってないんだ」
勇者「……そういう事だったら、しょうがないのかなぁ?」
街長「勿論、引き受けてくれたら、この街にいる間……そして、これからの冒険……我々は全力で支援させてもらう」
勇者「う?ん……」
街長「塔の魔物を倒した君達なら、簡単だと思うんだが……やってくれないかな?」
勇者「……」
676:
ーーーーー
天童「……どうすんだ?」
勇者「う?ん……どうしよかなぁ……」
天童「……おめぇはよぉ?」
勇者「……まぁ、でもさ?」
天童「……ん?」
勇者「今日一日暇だし、別にやる事ねぇんだから、引き受けてもいいんじゃね?」
天童「おっ!」
勇者「たまにはこういう事もしないとね! 良くしてくれた街長さんに恩返しってのもいいでしょ?」
天童「おめぇ、成長したなぁ! でもよぉ! 一つだけ、警告しておく事があるぜ!?」
勇者「……警告?」
677:
天童「……じゃ?ん」スッ
勇者「あっ……! その封筒っ……! それって……!」
天童「そうです、命題です! さっき神様から届きました」
勇者「おい、待てよ……命題は昨日、やったばっかりじゃねぇか!? 連続なんて聞いてねぇぞ!?」
天童「まっ、来たもんはしょうがないね……とにかく、今日一日暇……って、ワケじゃなくなったからよ? 気をつけろよ?」
勇者「も?う……」
天童「まぁ、とりあえず、何て書いてあるか見てみようぜ?」
勇者「も?う……え?っと……」ガサゴソ
678:
勇者
X月X日 午後6時までに
一番大切な物を守らないと即・死亡!
679:
天童「ふ?む……『一番大切な物を守らないと即・死亡!』か……」
勇者「えっ……?」
天童「今、午前9時だから後9時間……だな……?」
勇者「ちょっと待てちょっと待て! 今回、タイムリミット短ぇぞ、おいっ!」
天童「いや?、やっぱり……これくらいがいいんじゃねぇか? おじさん、そう思うよ?」
勇者「何だよ! 連続の命題でよぉ、しかもタイムリミットは9時間だなんて、どんだけ緊急の命題なんだよ!?」
天童「緊急の命題なんだよっ! 神様、ちゃんと見てるんだと思うぜ!?」
勇者「なんだよそれ……も?う……」
681:
天童「まぁ、でもよぉ? 今回の命題は簡単だから、とっとと始めちまおうぜ?」
勇者「……はぁ?」
天童「まず、勇者……おめぇの大切な物って、何だ……?」
勇者「そうか……まず、何を守らないといけないか考えなきゃいけないよな……」
天童「そうそう! そこからさ、ゆっくり思い出してみようよ?」
勇者「え?? でも、俺の大切な物って、大体は家が家事になった時に燃えちまったからなぁ?」
天童「……おめぇ、あの小汚ぇ部屋に何があったんだよ?」
勇者「えっ……? エロ本コレクションとか……カップラーメンの容器コレクションとか……」
天童「……おめぇは根暗だねぇ? そんなゴミ集めて何になるんだ」
勇者「あっ! 人の趣味、馬鹿にすんじゃねぇよっ!」
天童「……次ィ!」
682:
勇者「次って……もうねぇよ? だって、全部燃えちまったんだから……」
天童「じゃあさ? そこからさ、今までの旅で手にした物とか順々に言ってみなよ!? そしたら、バカな勇者君でも思い出すでしょ?」イライラ
勇者「えっ……? まず……おめぇと出会って胡散臭い名刺貰っただろ……? あっ、一応ね、まだとってあるよ?」
天童「だから、俺は本物の天使だって言ってんだろがっ! 『名刺とっててくれたんだ?』なんて、褒める気にもならんわっ!」
勇者「それで、そこからお前と装備買いに行って……」
天童「……抜けとる抜けとる。もう、抜けとる」ブツブツ
勇者「それで……そこから、魔物討伐して男戦士さんに餞別貰ったでしょ……まぁ、殆ど使っちゃたけど」
天童「……なんで、そんなどうでもいい事は覚えてるんだよ」
勇者「それで……女商人さんと出会って……あっ! そういや、鞄もらったやっ!」
天童「!」
683:
勇者「俺の持ち物って言ったら、これくらいだし……これか!? 大事な物ってこの鞄か!?」
天童「……女商人さん」グスッ
勇者「って、事はこの鞄を後、9時間守れって事なのか!? おい、天童! そういう事なんだろ!?」
天童「……勇者」
勇者「……ん?」
天童「その鞄は……大事にしないといけない……だって、それには女商人さんの気持ちが女商人さんの気持ちが詰まってるんだからよぉ……」グスッ
勇者「でしょ? 守らなくちゃいけない物って、この鞄でしょ!?」
天童「おめぇはバカかっ! なんで、鞄が一番大事なんだ! もっと大切な物、あるだろうがっ!」ギャーギャー
勇者「だから、俺の大切な物は家が燃えてなくなったって言ってんだろがっ!」ギャーギャー
「あっ、勇者君ここにいたんだ?」
勇者「……ん?」
男賢者「少し、話があるんだけど……いいかな……?」
勇者「……どうしたんですか? 真面目な顔して」
688:
男賢者「君は女僧侶ちゃんの事をどう思っているんだい?」
勇者「……はぁ?」
男賢者「僕は……彼女の事が好きだ。彼女の事を守ってあげたいと真剣に思っている」
勇者「……はぁ」
男賢者「彼女は……僕にとって、大切な人なんだ」
勇者「はぁ……大切な人ですか……んっ……?」
男賢者「……君は、彼女の事を大切にしている?」
勇者「ちょっと待て……大切な物って……あ、あれっ……?」アセアセ
689:
男賢者「いくら自分に自信がないからって……魔物討伐で大切な人と協力し合わないなんて……僕には考えられない……」
勇者「い、いやっ……! 違うんですよっ……! あれには理由がありまして、ね……?」
男賢者「僕の方が絶対に、彼女を大切にするという自信があるよ」
勇者「いやいやいやいやっ……! 俺だって、大切にしますよ!? 女僧侶ちゃんは大切な仲間ですもんっ!」アセアセ
男賢者「……僕はそれ以上の感情を彼女に抱いている。仲間以上のね」
勇者「いや……でも……」
男賢者「……君にはそんな感情が彼女にあるのかい?」
勇者「……えっ?」
690:
男賢者「……彼女の事をどう思ってるんだい? 仲間以上の感情が君にはあるのかい?」
勇者「そ、それは……」モジモジ
男賢者「……君にはないんでしょ?」
勇者「そ、そんな事ありませんよっ……!」
男賢者「……」
勇者「俺……童貞だから、愛だとか恋だとかは、よくわかりませんけど……」モジモジ
男賢者「……」
勇者「女僧侶ちゃんは……俺が引き篭もってダメだった時も……ずっと側にいて、優しくしてくれたし……」
男賢者「……」
勇者「冒険始めて……右も左もわからなかった俺に……ずっと優しくしててくれたし……」
男賢者「……」
勇者「恋愛とかは……よく、わかりませんけど……とにかく! 女僧侶ちゃんはただの仲間なんかじゃありませんよ!」
男賢者「……」
勇者「俺にとっても、大切な仲間なんですよ! 貴方には渡しませんよ!」
691:
男賢者「……そう言うと思ってたよ」
勇者「……」
男賢者「だから……僕と君で決闘をしよう?」
勇者「……はぁ!?」
男賢者「僕と君で……勝負して、勝った方が女僧侶ちゃんをパーティーに加える事が出来る……どうだい?」
勇者「あのですね……? 女僧侶ちゃんは物じゃないんですから……こういうのは、本人の意思が一番大事でしょ?」
男賢者「……女僧侶ちゃんは、この条件に納得している」
勇者「……えっ?」
男賢者「僕と君で決闘して……勝った方のパーティーに加わるそうだ……」
勇者「……嘘、でしょ?」
男賢者「決闘の時間は5時からだ……お父様曰く、女僧侶ちゃん争奪1時間一本勝負だそうだ……」
勇者「!」
男賢者「5時になったら、街の広場に来てほしい。 伝えたからね?」
693:
ーーーーー
勇者「うわぁぁ……一番大切な物って……コレかぁ……」
天童「……」
勇者「決闘の時間も……タイムリミットとぴったりだし……間違いねぇよなぁ……」
天童「……まぁ、そういう事だね? 気づくのが遅ぇんだよ、バーカ!」
勇者「そういや、ここ数日、女僧侶ちゃんの様子がおかしいと思ってたんだよ……」
天童「……」
勇者「でも、なんで女僧侶ちゃんがあんな条件飲んじゃったんだろ……? 俺、なんか嫌われる様な事、しちゃったかなぁ?」
天童「あのな、勇者……?」
勇者「?」
695:
天童「永遠に変わらねぇ関係なんてねぇんだよ? ましてや、男と女の関係だったら、尚更だよ」
勇者「……えっ?」
天童「人と人の関係ってのは、毎日同じ様に接していても、やっぱり、ちょ?っとずつ変わっていくもんなんだよ?」
勇者「……」
天童「ちょっとした優しさで、好きになったり……ちょっとした誤解で嫌いになったり……な?」
勇者「……うん」
天童「そういうのを、何度も何度も繰り返しながら……より良い人間関係ってのは出来ていくんだよ」
勇者「……」
天童「おめぇと女僧侶ちゃんはよぉ? 多分、もう次のステップに行く時期なんかじゃねぇか?」
勇者「……えっ?」
天童「このまま、グズグズグズグズよぉ……? 幼馴染の関係を続けても、お互いの為にはなんねぇんじゃねぇのか? ……って、神様は思ったんじゃねぇか?」
勇者「……うん」
696:
天童「さぁ、後9時間だ……どうするよ?」
勇者「どうするって……そんなの、どうもこうもないでしょ……?」
天童「……ん?」
勇者「女僧侶ちゃんは……やっぱり、俺にとっても必要な人だし……決闘するしかないでしょ……?」
天童「……おっ?」ニヤニヤ
勇者「今回の件はさぁ……? 命題なんて関係ないよ」
天童「おっ? おおっ!?」
勇者「女僧侶ちゃんを失うのはさぁ……俺、絶対嫌だもんっ!」
天童「おっ!? おめぇ、珍しく気合入ってるじゃねぇか!?」
勇者「命題なんてただのきっかけだよ……俺は女僧侶ちゃんの事……あの人に負けないぐらい、想ってるよ!」
天童「カァ?! いいねぇ?! 青春真っ盛りっ!」
697:
天童「よしっ! じゃあ、5時まで後8時間っ……! 特訓でもするかっ!?」
勇者「そうだね! あの人、強そうだし、特訓でもしなきゃっ! 天童、悪いけど付き合ってくれっ!」
天童「よ?しっ! じゃあ、『ロッキー』式と、『ベスト・キッド』式! どっちがいいか選べっ!」
勇者「へ……? ロッキー……? ベスト・キッド……? 何、それ……?」
天童「おめぇ、知らねぇのか!? 名作なのに、なぁ?んで観てねぇんだよ!?」
勇者「映画か何かの話……? じゃあ、よくわかんねぇけど……『ベスト・キッド』式でお願いします……」
698:
天童「よしっ! じゃあ、勇者っ! 先ず、服を脱げっ!」
勇者「まぁ、修行っていったら、脱がないとね……はい、脱いだよ?」ヌギヌギ
天童「よしっ! じゃあ、次はその服を着なさいっ!」
勇者「……はぁ?」
天童「服を着るんだよぉ? ほれっ! とっとと着ろっ!」
勇者「……なんで、脱いだもんまた着るんだよ? 意味わかんねぇよ?」
天童「いいから、早く着なさいっ! このバカチンがぁ?!」
勇者「わかったよ……わかったから、着ればいいんだろ……よっと、服着たよ?」
天童「よしっ! じゃあ、次はその服を着なさいっ!」
勇者「……はぁ?」
699:
天童「いいから、早く服を脱げってんだよぉ!」
勇者「おめぇ、さっきから服を脱がしたり、着させたりしてるけど、何がしてぇんだよ?」
天童「大丈夫だって! これが『ベスト・キッド』式練習方法だから!」
勇者「これ、なんの意味があるんだよ?」
天童「……信じられねぇかもしれねぇけどよぉ? この特訓終わる時には、カン・フーの達人になってるんだぜぇ?」
勇者「……はぁ?」
天童「映画の俳優もよぉ? おめぇと同じリアクションしてたよ? でも、ちゃ?んとカン・フーの達人になったからよぉ?」
勇者「……本当?」
天童「いいからいいからっ! 騙されたと思って、やってみなさいっ! ほれっ! 服を脱ぎなさいっ!」
勇者「……う、うん」ヌギヌギ
700:
二時後ーー
天童「いいですかぁ?? 勇者君?? 貴方はもう、カン・フーの達人です……」
勇者「服を脱いだり着たりを繰り返してただけだけどなぁ?」
天童「いえっ! そんな事は、ありませんっ! これがベスト・キッド式練習方法っ! ィェァ、ビバ、カン・フー!」
勇者「……俺、強くなった気が一切しねぇんだけどなぁ」
天童「そんな事はありません?。 今から、私が勇者君目掛けて、パンチをしますが……勇者君はカン・フーの力によって、見事に受け止める事ができま?す」
勇者「……嘘臭ぇなぁ」
天童「では……いきますよ……?」
勇者「お、おう……」
天童「……」
勇者「……」
天童「……ホワチャッ!」シュッ
勇者「……ぐべぁ」
バターンッ
天童「ア、アレ……? おっかしいなぁ……ジャッキー先生の映画じゃ上手い事いったんだけどなぁ……」アセアセ
70

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