絵里「あれ…ここは…?」back

絵里「あれ…ここは…?」


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1:
絵里「あれ…私…教室にいたのに…」
絵里「ここは…?」
絵里「なに…?知らない…」
セッキンシチャエ トントント トッシン
マイルールデ トントント トッシン
絵里「え…?この音…」
セッキンシチャエ トントント トッシン
マイルールデ トントント トッシン
絵里「聞き覚えのある声とメロディ…」フラフラ
絵里「あの音のなる方へ行きましょう…」フラフラ
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2:
絵里「この辺から…聞こえて来るんだけど…」
絵里「いったいどこから…」
セッキンシチャエ トントント トッシン
マイルールデ トントント レッツゴー
絵里「…」
セッキンシチャエ トントント トッシン
スキナラ チカヅクドリョク
絵里「…歌」
絵里「この歌…すき」
絵里「落ち着く…可愛い」
3:
サツエイシチャエ パッパッパ パッチン
マイレンズデ パッパッパ レッツゴー
絵里「うえ…?」
サツエイシチャエ パッパッパ パッチン
ジュンアイダモン ミノラセタイモンネ
絵里「あれは…」
フワフワ
希「ん?やっと見つけてくれたん?」
絵里「希…そっか」
絵里「希だったの…」
絵里「どうしたの?その羽衣みたいな…」
希「みたいなじゃなくて、これは羽衣やで?」
希「だってほら」
フワフワ
希「ね?」
絵里「浮いてる…本物か…」
4:
絵里「じゃあ、希は天女なのね」
希「そうよ」
絵里「だと思ってた…」
絵里「だって、可愛いし…」
絵里「一緒にいると落ち着くし…」
絵里「ほんとすき…」
希「そう」
希「ありがとうなぁ」
希「お礼に抱き締めてあげる」ギュッ
絵里「あっ…」
希「ずっと一緒やんな♪」
絵里「ええ…」
6:
絵里「ねぇ…希?」
希「どうしたん?」ナデナデ
絵里「ここはどこ?」
希「う?ん」
希「多分言ってもわからんよ?」
絵里「そう…」
絵里「私はどうしたらいいのかしら…」
希「そうやねぇ…」
希「あっち」
絵里「え?」
希「あっちのほうに進んでみて?」
絵里「何かがあるの?何も見えないけど…」
希「うん、ある」
絵里「わかったわ…行きましょう」
希「ああ、ごめんな」
希「うちは行けへん」
絵里「え?」
希「どうしても」
希「だから、一人で行って?」
絵里「そう」
9:
絵里「でも、ずっと一緒って…」
希「うちは一緒にいけへんけど…これ貸してあげるから」
希「ずっと一緒」
絵里「これは…」
絵里「羽衣…」
希「それ使ってゆったり行くとええよ」
絵里「ありがとう、希」
希「うん、じゃあね」
絵里「ばいばい」
絵里「さて、これを巻いて…」
フワフワ
絵里「気持ちいい…」
10:
フワフワ
絵里「…」
フワフワ
絵里「遅いわね…」
絵里「まあ…ゆったり、いきましょう」
・・・・・
絵里「はぁ…まだかしら」
フワフワ
絵里「ん?」
絵里「あれは…?」
絵里「かなり遠くだけど…何かある…」
絵里「何かしら…」
11:
フワフワ
絵里「あれは…明かり?」
絵里「町かしら?」
・・・・
フワフワ
絵里「ああ、やっぱり町みたいね」
絵里「入ってみましょう」
ザワザワ ワイワイ
絵里「えらく賑わってるわね…」
絵里「でも少し…古いというか…」
絵里「御話しの中の町みたい」
『ちょっと!そこの人!』
絵里「!」
12:
絵里「えっ!?」
絵里「希!?」
希「ちょっと、占っていかへん?」
希「…ってえりちか」
絵里「あなた、さっき別れたじゃない!」
絵里「向こうのほうで!」
希「はん?何言ってるん?」
希「うちはずっとここにいたけど…」
絵里「はぁ?」
希「それより、占ってあげるわ」
絵里「占い?こんなときに別にいいわよ」
希「まあまあ、そう言わずに…」
バッ
希「う?ん、結果が出たよ…」
希「えりち」
絵里「何よ」
13:
希「えりち」
希「あなたはここから南に行って」
希「一人の囚われの姫を救うことになるでしょう…」
絵里「はぁ?南?」
絵里「姫ぇ?何の話よ?」
希「南はあっちの方角やで」
絵里「姫って?」
希「姫は姫や」
絵里「???」
希「まあ、言葉通りやけど」
希「深く考える必要は無いんよ」
希「でも…うちの占いはあたるで?」
絵里「…!」ピクッ
15:

フワフワ
絵里「まあ、でも何のあてもないし…」
絵里「占いにすがるしか無いわよね」
絵里「南…南…」
絵里「方向を見失わないようにしないと…」
フワフワ
絵里「しかし…遅いわね…羽衣…」
・・・・
絵里「あら、凄い森…」
絵里「高度を上げなきゃ…」
フワフワ
絵里「あれ?」
絵里「これ以上…上がらない…」
絵里「どうしましょう…」
16:
シーンジテー コーコロガトキメイタ シュンカンヲ
シーンジテー アーナタノ ジュンアイレンズハー
タダシーヨー
絵里「ん?この歌…」
シャンシャンシャンシャンシャンシャン
『おーい!えりちー!』
絵里「!」
ビュゥゥゥゥゥ
希「おーい!」
絵里「希!」
絵里「その格好…今度はサンタさん?」
希「そうや」
希「皆の所へ愛を届けるのんたんサンタさんやん♪」
絵里(かわいい)
希「所で、えりち…この森を越えたいんやろ?」
絵里「そうなのよ、羽衣じゃ無理で…」
希「おっけー!任しといて!」
希「ほら、後ろに乗って!」
絵里「え?」
希「ソリの後ろ!」
21:
絵里「なに?」
絵里「このソリならこの凄い森を越えられるって?」
希「そうや」
絵里「まっさか?」
絵里「この羽衣でも結構高く飛べるけど、無理だったのよ?」
希「大丈夫、大丈夫」
希「ほら、しっかり掴まっときや」
絵里「大丈夫かしらね?」
希「ほな、いっくでー!」
ビュゥゥゥゥゥ!
絵里「チカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絵里「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
希「どう?いし高いやろ?」
絵里「ぎゃー!い高い怖い!!」
絵里「落ちるぅ!落ちるぅ!」
希「だからしっかり掴まっときって!」
希「いったやん!」
ビュゥゥン
絵里「ちょっ!加しないで!」
絵里「イヤァァァァァァァァ!」
22:
希「なんや、だらしない」
絵里「はぁ…やっと減…」
希「もっとい方が楽しいのに」
絵里「無理無理無理!」
絵里「安全バーの無いジェットコースターに乗ってる気分よ…」
希「楽しいやん?」
絵里「楽しくないっ!」
希「にしし、そうか」
希「おっ!森を越えたで」
絵里「!」
希「ほら、いい景色やろ?」
絵里「本当…一面の草原だわ」
絵里「こんなの初めて見た…」
絵里「あら?何?あの塔は?」
希「さあ?」
絵里「知らんのかい…」
23:
希「…」ニヤリ
絵里「?」
希「えりち、これ」
絵里「ん?何この箱」
希「うちからのプレゼント」
絵里「はぁ?」
希「忘れたん?うち、サンタさんやで?」
希「貰っとき!」
絵里「う、うん…ありがとう」
希「それはえりちが本当に必要な時に空けてな」
絵里「は?必要な時って、何がよ?」
希「ほらほら!あそこに城が見えるやろ?」
絵里「ちょっと、質問に答えなさいよ…」
希「あそこまでいくでぇ!」
ビュゥゥゥゥゥン
24:
絵里「ちょっ!」
絵里「だめぇぇぇ!落ちるっ!」
ビュゥゥゥゥゥン
絵里「あああああああああああ!」バッ
絵里「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ヒュゥゥゥゥゥ
希「えりち、頑張ってねー」
・・・・
絵里「…ん」
絵里「あれ…私…ソリから落ちて…」
絵里「あっ…羽衣…」
絵里「私を守ってくれたの…」
絵里「ありがとう…希」
絵里「それに比べて…」
絵里「んもう!まったく希はぁ!」
絵里「人を落としておいて、拾いにも来ないの!?」
絵里「っていうか、羽衣無かったら死んでたわ!」
25:
絵里「まったく!ここは何処よ!」
フワフワ
絵里「あっ!」
絵里「あれは…ソリの上で見た塔じゃない!」
絵里「そっか…近くに落ちたんだわ」
絵里「ちょっと見て来ましょう」
・・・・
絵里「あれ?」
絵里「この塔…入口が無いじゃない!」
絵里「ええっ?どういうこと?」
絵里「うー…」
シーンジテー アーナタノジュンアイレンズデー キリトッター
絵里「ん?」
絵里「歌…?」
絵里「塔の中からだわ…」
26:
絵里「それも上の方から…」
絵里「窓か何か無いかしら…」フワフワ
絵里「あっ、あった…覗いて…」
希「彼の笑顔の眩しさは?最強だ♪」
希「想いの強さ感じる♪」
絵里「希!」
絵里(やっぱり…)
希「おっ!えりち」
絵里「何よその髪は」
絵里「そんなに長かったかしら?」
希「うん」
絵里「また、さっきの希とは違う希なの?」
希「さっきの?」
絵里「いや、何でもないわ」
27:
希「まあ、せっかく来たんやし…入って!」
絵里「え、ええ」
絵里「そう言えば、何でここ下に玄関が無いの?」
希「そりゃうちが逃げんようにとちゃう?」
絵里「は?」
希「うち、この塔に囚われてるんよ」
絵里「何でよ?」
希「うちがラプンツェルやから?」
絵里「いや、聞かないでよ」
絵里「というかラプンツェル!?」
『 一人の囚われの姫を救うことになるでしょう… 』
絵里「なるほど…ラプンツェルということは…」
絵里「魔女と一緒にここで暮らしてるとか…」
希「いいや、一人や」
28:
絵里「え?」
希「誰に幽閉されてるかも、何もかも分からないんよ」
絵里「??」
絵里「どういうこと?」
希「さあ?」
絵里「何で希いっつもそう何でも適当なの!?」
希「そんなこと言われても…」
希「まあ、取り敢えず何か食べる?」
絵里「えっ?」
希「うちが何でも作ってあげる」キュッ
希「どう?このエプロン」
希「かわいいやろ?」
絵里「…!」
絵里「かわいい…」
29:
希「はい、できたよ」コトッ
希「どうぞ、食べてね」
絵里「ありがとう、どれどれ…」
絵里「って、うどんか…」
希「何?文句あるなら食べんでええんよ?」
絵里「いや、文句っていうか…」
絵里「この情景とうどんって合わないなぁ…って」
希「まあね」
絵里「まぁ、いただくけど…」ズルズル
・・・・
絵里「ふぅ…ご馳走さま」
希「よし、ほな」
希「外へ行こうか」
絵里「え?」
希「え?って…外行かんと話が始まらないやん」
絵里「話…」
30:
絵里(ははーん…)
絵里(なるほどね…占い師の希の言葉…)
絵里(希サンタが塔の近くに私を落とした事…)
絵里(予定調和的)
絵里(つまり…これはゲームでいうところの強制イベントみたいなもので…)
絵里(この希…つまりラプンツェルを救いだし…お姫様としてお城へ連れていくこと)
絵里(それがゲームクリアの条件…)
絵里(ゲームクリア…つまり元の世界に戻れる…)
絵里(なら、やってやりましょう)
希「おーい」
希「えりち??」
絵里「よし、希!外の世界へ連れていってあげるわ!」
希「ほんと?やった!」
32:
絵里「ふふふ、私は怪盗エリーチカよ」
絵里「この塔から希を盗みにきたわ」ガシッ
絵里「ほら、外へ行くわよ!」
希「うん!」
フワフワ
絵里「掴まって!」
希「ひゃっ!飛んでる!」
絵里「何驚いてるの?あなたがくれたんじゃない」
絵里「この羽衣…」
希「え?」
絵里「まあ、いいわ」
絵里「確かあっちの方向に…ほら!希!」
希「うわぁ…おっきいなぁ…」
希「あれがお城かぁ…初めて見たわ…」
絵里「塔の窓とは逆方向だものね」
絵里「あそこに連れていってあげる」
希「えりち…ありがとう」ギュッ
絵里「あっ…い、いいのよ」
33:
希「うわぁ…凄いなぁ」
希「草原ってこんな匂いするんや」
絵里「知らないの?」
希「だってずっと閉じ籠ったもん」
絵里「そっか」
絵里「ん?でも…」
絵里「じゃあ何で私の事知ってるのよ…」
希「わからん…本能的に?かな」
希「この人はえりちやって」
希「うちの大好きな…絢瀬絵里やって」
絵里「そう…/////」
希「おっ?赤くなってる?」
絵里「うるさいわね!」
絵里「ほら、行くわよ…」
絵里「お城まで長いんだから…」
希「うん」
35:
希「ねぇ、えりち」フワフワ
絵里「なに?」フワフワ
希「この羽衣…めっちゃ遅いやん」
絵里「そうね」
希「どうせなら…歩いて行かん?」
絵里「う?ん、まあ…そうね」
シュタッ
絵里「歩いたほうが楽しいでしょうね」
絵里「希にとっては…」
希「うん」
希「地に足を着けたのは初めて…」
希「何だかチクチクする」
絵里「草原だもの」
ポワー
絵里「ん?」
絵里「何これ?何か光って…」
絵里「これは…!」
36:
絵里「希に貰った…プレゼント…」
希「なに?それ」
絵里「分からないわ…いきなり光だして…」
絵里「空けてみましょうか…」
絵里「いや…でも」
『それはえりちが本当に必要な時に空けてな 』
絵里「って言ってたもんねぇ…」
絵里「でも、今光だしたと言うことは…必要な時って今…?」
絵里「あーもう!めんどくさいわ!」
絵里「どうせ予定調和なんだし…空けちゃえ!」パカッ
絵里「…!」
絵里「これは…!」
絵里「靴…?」
絵里「えっ?ほんの小さな箱に何で靴が!?」
希「えりち?、どないしたん?」
37:
絵里「はっ!靴…」
希「それ、なに?」
絵里「希、足を出して」
希「う、うん」
ピト
希「ひゃん!」
絵里「ちょっと!変な声を出さないで!」
希「いきなり足を触るからやん!」
絵里「いいから、動かないでね!」
・・・・
絵里「…しょっと」キュッ
絵里「ぴったり…」
希「うわー!何これ!」
希「足がチクチクしないよ!」ピョンピョン
絵里「もう…そんなに興奮して…」
絵里(それにしてもピッタリのサイズだったわ…)
絵里(やっぱり、ここで空けて正解だったかしら…)
絵里(希も喜んでるしね…)
38:
絵里「でもよく考えれば、お城は山の頂上だし…靴がないとね」
絵里「それじゃ…足も大丈夫になったし…行きましょうか」
希「そうやね」
・・・・
絵里(草原を越え…私たちは森に入ろうとしていた)
希「これが森か!」
絵里「そうよ、木がいっぱいでしょ?」
希「うん、凄いなぁ…」
絵里(こんなに色んな事に驚く希はとても新鮮で…)
絵里(可愛くて、愛しくて…)
絵里(たまに手を握ってくれると)
絵里(歩き疲れた足なんて、気にならなくなる…)
希「えりち!早く入ろう!」
絵里「ふふっ、焦らないで」
39:
・・・・
ザクッ ザクッ
絵里「日が暮れて来たわね…」
希「この辺で休む?」
絵里「そうね…」
絵里「よっ…」ゴロン
絵里「はぁ…疲れたぁ…」
希「うちも…」ゴロン
絵里「もっと、こっちへきて」
絵里「この羽衣、かけてあげるから…」
希「うん」
パサッ
希「ふわふわ…気持ちええなぁ…」
絵里「でしょ?」
希「この羽衣…大事にしてあげてね?」
絵里「えっ…?」
希「あっ!えりち!ほら、空! 」
絵里「そ、そら?」
絵里「あっ…!」
絵里「凄い星の数…いつの間に…」
40:
希「綺麗やろ?」
絵里「そうねぇ…周りの木がなければ…もっと見れるんだけど」
絵里「って…何で希が得意げなのよ」
希「えりちはこんな星空みるのは初めてちゃう?」
絵里「それはそうだけど…」
絵里「東京じゃね」
希「うちは毎日、あの塔で見てたから」
絵里「あっ…」
希「まあ言ったら、この星空の素晴らしさ…がうちがえりちに教えてあげられる唯一の事なんよ」
絵里「そっか…」
絵里「希、教えてよ」
絵里「この星空のこと…」
希「うん」
希「あの青白く光ってる星が…」
絵里(嬉しそうに星の事を語る希の顔は…)
絵里(キスしたくなるほど可愛いかった)
絵里(でも、我慢しなくちゃ)
絵里(今、邪魔したら怒っちゃうかもしれないしね)
41:
希「凄いやろ?」
絵里「ええ…どうしてそんなに詳しいの?」
希「本を読むことと歌を歌う事くらいしかないから」
絵里「そうだったわね」
絵里「歌か…聞かせてよ」
希「ええよ」
希「すーはー」
希「信じて 心がときめいた♪瞬間を」
希「信じて あなたの純愛レンズは♪正しいよ」
絵里(この曲は…この世界のたくさんの希がいつも口ずさんでいた歌…)
絵里(私の大好きな歌…)
ポワポワ
希「ん?」
希「えりち、あれ何?」
絵里「ん?」
ポワポワ
絵里「ひぃぃぃぃ!」
絵里「うわぁぁぁぁぁぁ!」ガダガタ
希「ちょっ、えりち」
希「どないしたん…」
絵里「ひ、ひとだま!」
絵里「あわわわわ」ガダガタ
希「ひとだま?」
ガシッ
絵里「ひぃ!掴むなんて!」
希「これ、虫かな?ひとだまっていうんや」
絵里「えっ…虫?」
絵里「…蛍か」
42:
希「蛍?」
絵里「そうよ」
希「へぇ…これが蛍」
希「ふぅん、ところで何であんなに怖がったん?」
絵里「えっ…」
希「まさか…お化けと間違えたん?ぷぷっ」
絵里「そんなわけないでしょ!」
希「そうか?」
絵里「まったく!」
ポワポワ ポワポワ
希「あっ!」
絵里「凄い数の蛍ね…綺麗」
希「凄い!」
絵里「…」ジー
43:
絵里(今さらだけど、この世界はおかしい)
絵里(実は…この蛍)
絵里(この世界で虫を見たのはこの蛍が初めて…)
絵里(もちろん動物も…)
絵里(占い師の希に出会ったあの町…人はたくさんいた…)
絵里(でも皆、無機質な感じがして)
絵里(ロボットじゃないかと疑うほど、目に光がなかった)
絵里(何て言うか…偽物)
希「えりち!えりち!奥の方!凄いで!」
絵里「足元に気をつけなさいよ」
希「わかってるって!っていうかえりちに言われたくないよ!ポンコツのくせに!」
絵里「なっ!」
44:
絵里(そう…この世界は偽物…な感じがする…)
絵里(でも、そのなかで)
希「えりち!はよう!」
絵里(希の笑顔だけは紛れもなく本物…)
絵里(そう思う)
絵里(根拠は無いけど…)
希「さっきから、何考えこんでるん?」
絵里「な、何でもないのよ!」
絵里「さ、もう寝ましょう…」
希「ええっ!」
絵里「お城まで長いって言ったじゃない」
絵里「体力を回復しとかないと」
希「…そうやね」
46:
・・・・
ザッ ザッ
絵里「希、もうすぐお城よ」
希「うん、これが城下町?」
絵里「そうね」
絵里(相変わらず、人は偽物…)
絵里「しかし…追っ手とかが全く来なかったわね…」
絵里「ラプンツェルってこんな話だっけ?」
希「まあ、危険が無いことに越したことはないやん」
絵里「まあ、そうだけど…」
絵里「早、お城へ行きましょ」
絵里「王さまとか、会ってみましょ」
希「そうやね」
『・・・・・』
絵里「あのー、お姫様を連れてきので…お城に入っても…」
『・・・・・』
絵里「おーい!兵隊さん!」
『・・・・・』
希「えりち、もう勝手に入ってしまおう?」
絵里「そうね、きっと怒られないでしょ」
絵里「ていうかこの分だと、王さまもこんな感じかもしれないわ…」
47:
希「お城の中ってキレイやなぁ…」
絵里「そうね」
希「うち、今から…王さまに会って…」
希「どうなるんだろう…」
絵里「ラプンツェルはお姫様に戻るのよ」
希「お姫様…うちが?」
絵里「そう」
希「いやいや!」
絵里「え?、なに?照れてるの?」
絵里「可愛いところあるわねー」
絵里「ふふっ、そしたら私が王子様になってあげる」
希「ほんまに?」
絵里「ええ…」
希「えりち…」
絵里「希…」
希「ここまで…ありがとう」
希「連れてきてくれて」
絵里「うん」
希「うちな…」
希「えりちに会えてよかった」
希「外の世界に出てよかった」
希「こんな気持ちになれるなんて…」
48:
絵里「うん」
希「ありがとう」
絵里「私ね…」
絵里「いつの間にか、この世界にいて」
絵里「色んな不安と困惑が立ち込めていたわ」
絵里「でも…そこにはいつも希がいてくれた」
絵里「この世界の人たちは皆、偽物で…」
絵里「本物は私と希だけ…」
絵里「これってさ、実は私たち…この世界で二人きりなんじゃないか…って」
絵里「この世界…それは」
絵里「私たちの…」
絵里「二人きりの花園」
絵里「ずっとここで、希と一緒にいたい」
絵里「私、こんな気持ちになった…」
希「……」
49:
絵里「最初はね、ずっとこの世界を抜け出そうと…」
絵里「ここを目指してた…」
絵里「でも、今はずっと…希とこうしてたい」
希「…よ」ボソッ
絵里「えっ?」
希「ごめんな…」
ダキッ
絵里「希…!」
絵里「ごめんって…どういう」
希「んっ…」チュッ
絵里「んん!」
希「…」
絵里「ぷはっ…」
絵里「……希」
『・・・・・・』キリキリ
50:
絵里「希ぃ…」
絵里「ずっと一緒にいましょうね…」
希「…」
絵里「この世界で…」
『・・・・・・』
ビュン
希「ぐふっ…」ドスッ
絵里「は?」
希「が……ぐ……」
絵里「へ?」
絵里「な、なに?」
絵里「希…血が……」ガダガタ
絵里「矢…?」
絵里「あ…あああああ!」ガダガタ
絵里「何よこれ…」
希「え…り……」
絵里「何よこれぇぇぇ!」
絵里「誰が…」
『・・・・・・』シーン
絵里「あ、あなたは…さっきの兵隊…」
絵里「何でこんなことを!」
『・・・・・・』
絵里「答えなさいよぉ!!」
54:
クイッ
希「え…り…ち」
絵里「あぁぁぁ…希!」
希「きいて…」
絵里「希…」
希「これは…運命…」
希「仕方のないこと…」
絵里「何言ってるのよ!意味…わかんない…わよ」
希「ここは…二人きりの花園なんか…じゃない」
絵里「えっ…」
希「抜け出して…」
絵里「そ、そんなこと…言われても」
希「大丈夫…」
希「うちが…一緒やから」
希「うちがいつも味方でいるから…」
希「生きて…」
希「帰って…」
希「約束な…必ず…」
絵里「…希」ポロポロ
希「あと…羽衣を…大事に…」
絵里「ねぇ…希…」ユサユサ
希「……」
絵里「希…希…希…」ユサユサ
希「……」
絵里「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
55:
絵里「希…希…」
絵里「いつも味方でいるって…」
絵里「嘘ばっかり…」
絵里「なら、死なないでよぉ…」
絵里「この世界から抜け出せ…?」
絵里「そんなの…わかんないわよ」
絵里「希…希…」
絵里「何であなたは死んだの」
絵里「運命って何なのよ…この世界は何なのよ…」
絵里「何もわからない…」
絵里「教えてよ…希…」
『う?ら?め?し?や?っ』
ガシッ
絵里「!?」
『お前をわしわししてやる?っ』
56:
絵里「な、なに!?」
ワシワシワシワシ
絵里「ちょ!いやぁぁ!」
絵里「ってあんたは…!」
絵里「希!?」
絵里「その格好は…!?」
希「妖怪わしわしだぞっー!」
希「わしわしするぞぉー!」
絵里「やっ!やめっ…」
希「わしわし?」ワシワシ
絵里「やめっ…」
絵里「うぅ…」ポロポロ
希「えりち、何で泣くん?」
希「わしわしがそんなにイヤだった?」
絵里「うるさい!バカ!」
絵里「私…希が死んだかと…うぅ…」
希「…」
希「死んだよ」
絵里「え…?」
希「えりちと今までいたうちは役目を終えて死んだよ」
絵里「役目……?」
希「約束」
希「えりちとの約束」
希「それがあの希の役目」
絵里「生きる」
希「うん、生きる…元の世界に帰るっていう約束」
希「そのためにあの希は死んだ」
57:
絵里「わからない…そんなに…重要なことなの?」
絵里「元の世界に帰ること…」
絵里「希が死んでまで…私に約束させるような事なの…?」
希「そうや」
希「さっき…えりちはここを、二人きりの花園って言ったやろ?」
絵里「ええ…」
絵里「否定されてしまったけどね…」
希「うん、ここは二人きりの花園なんかじゃない」
希「だって…」
希「うちは…偽物だから…」
絵里「えっ…」
希「あの兵隊と同じ」
希「だから…本物はあなただけ」
絵里「そんな…でも」
絵里「嘘よ…」
絵里「あの笑顔は…」
絵里「本物だって…そう…思ってたのに…」
58:
希「偽物だよ」
希「だって、見てきたやろ?」
希「たくさんのうちを」
絵里「…」
希「本物は一つだけしかありえない」
希「えりちは本物…」
希「だから、本物は本物の世界に帰るべきなんや」
希「本物の笑顔で溢れるあの世界へ」
希「そこには本物のうちもいるやろ」
絵里「…」
希「うちら…そのために存在してるんよ」
希「それぞれの役目を担って…」
希「そして…うちの役目は、門まで導くこと…」
絵里「門…」
希「そう…この世界の門」
希「希の思い…応えて」
希「偽物にだって思いはあるんよ」
絵里「……」
『約束な…必ず…』
絵里「希…」
絵里「わかった…帰る」
59:
希「うん、ありがとう」
絵里「帰って…」
絵里「本物の希を抱き締めるわ」
希「そうしてあげて」
絵里「そうしたら…」
絵里「天女と占い師とサンタとラプンツェルと…」
絵里「あなたのそのキョンシーのコスプレをさせて愛でてやるんだから…」
希「まったく…変態」
絵里「わしわしに比べればマシよ」
希「ふふっ」
絵里「あはは」
希「ほな、いこか」
絵里「ええ…」
60:
絵里「これが門…」
希「ここから…この世界を出れる…」
希「でも…生半可な気持ちではこの門は通り抜けることは出来ない」
希「通り抜けたい…って強い気持ちがないと」
希「そのための約束」
希「人って約束のためなら何でもできるやん?」
絵里「そうね…」
絵里「約束…絶対果たしてみせる」
絵里「希…」
希「うん」
希「あと、その羽衣…」
絵里「これ?」
希「うん、それは…うちらの思いそのもの」
希「えりちの事守ってみせるから、絶対にそれを離さないで」
絵里「ええ」
希「じゃあね」
絵里「希、ありがとう」
希「うん」
61:
絵里「…希」
希「何よ?、それじゃあ何時までたっても出発出来ないやん…」
絵里「ごめんなさい、あなたの顔を見てないと不安で…」
希「それなら…」
希「んっ…」チュッ
絵里「……ん」
希「はいっ!いってこい!」バン!
絵里「ええ」
・・・・・・
絵里(門をくぐると…色んな景色が見えてきた)
絵里(ここは…おばあちゃまの故郷のロシア)
絵里(次は…修学旅行で行った沖縄)
絵里(そして…音ノ木坂)
絵里(人はいない)
絵里(ずっと一人…)
絵里(永遠とも思えるこの時間)
絵里(私は歩き続けた)
62:
絵里(気が狂いそうになるほど歩く…)
絵里(時にはへたりこんで…)
絵里(でもそのたびに、約束が私を再び立ち上がらせる)
絵里(それにこの羽衣…)
絵里(体に巻いていると…とても楽で)
絵里(何時までも歩けそうな気がした)
絵里(早く…帰りたい)
絵里(帰って…会いたい人がいる)
絵里(亜里沙…お父さんにお母さん)
絵里(穂乃果、海未、ことり)
絵里(にこ、真姫)
絵里(凛、花陽)
絵里(そして…希)
絵里(早く…会いたい)
絵里(そう思った時…)
絵里(歌が聞こえた)
接近しちゃえ Ton ton to とっしん
マイルールで Ton Ton to とっしん
絵里(希の歌…)
絵里「希!はぁ…はぁ…」ダッ
絵里「あの音の方へ…希」
絵里「希!」
絵里(そこで意識は途切れた)
63:
絵里「んっ…」
絵里(ここは…?ベッドの上?)
絵里(知らない天井…どこだろ?)
『撮影しちゃえ Pa pa pa ぱっちん』
『マイレンズで Pa pa pa let's go』
絵里「また、この歌…すき」ガバッ
『はっ……えりち…』
絵里「その声は…希か」
絵里「おいで…抱き締めるから」
希「えりち…」
絵里「どうしたの?」
希「えりち…!」ダキッ
絵里「ちょっと!痛いわ!」
希「うるさい!アホ!」
希「ポンコツなんもいい加減にして!」
希「アホ!」
希「うちを…心配させんといて!」
希「うち…えりちがいなくなったら…うっ…」
希「あほぉ…」
絵里「…希」ナデナデ
希「うぅ…」グスグス
絵里「何があったのか分からないけど…」
絵里「心配かけてごめんね…」
64:
希「……」スースー
絵里「あら…寝ちゃってるわ」
ガララッ
穂乃果「希ちゃん来たよ…って!」
穂乃果「あー!絵里ちゃん!」
海未「絵里、目を覚ましたのですか!」
ことり「本当!?よかった!」
絵里「しー」チョンチョン
希「……」スースー
穂乃果「あっ…」
海未「希…寝ているのですか…」
ことり「ずっと寝ずに絵里ちゃんの側にいたからね…」
絵里「!」
65:
絵里「あの…私…どうなってたの?」
海未「覚えてないんですか?」
ことり「絵里ちゃん、滑って転んで頭打って…ずっと意識が無かったんだよ」
絵里「はぁ…?」
絵里(私…だっさ…)
海未「ほぼ3日ですかね、ずっと眠り続けてました」
穂乃果「その間ずっと希ちゃんがみてたんだよ?」
絵里「そう…」
海未「きっと絵里が起きた安心から眠ってしまったのですね」
穂乃果「穂乃果も心配だったよぉ…」
絵里「ありがとうね…心配かけてごめんね皆…」
穂乃果「本当だよー!」ガバッ
絵里「ちょ!痛い!」
海未「こら!静かに!」
66:
ガララッ
凛「絵里ちゃん!」
花陽「はぁ…はぁ…目を覚ましたって!?」
にこ「あんたたち、病院では静かに!」
絵里「ああ、にこ達も来てくれたのね…」
凛「あたり前にゃー!」
にこ「もう…心配させないでよ…アホ」
花陽「花陽も…心配したよぉ…」
絵里「ごめんね…」ナデナデ
にこ「もう絶対に、こんなことは無しよ」
絵里「うん」
凛「約束にゃ…」
絵里「約束…か」
絵里「うん、約束するわ」
花陽「あっ…希ちゃん、寝てるんだ」
にこ「ずっと看病してたもんね」
にこ「ずっと絵里が目を覚ますまで、休まないって…」
凛「ずっと絵里ちゃんの好きなあの歌を…歌ってた」
絵里「歌…」
絵里「そっか…」
絵里「ありがとね、希」ナデナデ
希「う、うう?ん…」
絵里「心配かけてごめんね…希」
67:
ガララッ
真姫「エリー、体の調子はどう?」
絵里「ええ、何とも」
真姫「まったく…」
絵里「真姫も心配してくれた?」
真姫「当たり前じゃない!バカ…」
絵里「ごめん」
真姫「もう、いいわよ…ちゃんと目を覚ましてくれたんだから…」
絵里「うん」
真姫「あのね」
真姫「あなたの今回のケガ…というのかしら」
絵里「?」
真姫「今回の事について説明するわ」
絵里「うん」
真姫「あなたは教室で足を滑らせて、転んで頭を打って…意識不明の重態…」
絵里「うぅ…」
真姫「本当なら、頭に大ダメージがあるはずなのよね」
真姫「だけど…検査しても…何の損傷も無かった」
絵里「えっ…」
真姫「ただ、意識が無かっただけ…」
真姫「…パパも頭を傾げていたわ」
68:
真姫「まったく、不思議なこともあるものね…」
真姫「じゃあ、私は帰るから…」
真姫「一応患者なんだから安静にしときなさいよ」
真姫「あっ…」
真姫「何かベッドの横に落ちてるわよ」
真姫「なにこれ?マフラー?」
真姫「忘れ物かしら」
絵里「…!」
絵里「それは私のよ!」
真姫「ふぅん、そう」
真姫「じゃあね、お大事に」
ガララッ
絵里「これは…羽衣…」
絵里「そっか…希が守ってくれたの…」
『えりちの事守ってみせるから、絶対にそれを離さないで…』
絵里「希…」ポロポロ
絵里「ありがとう…」
希「何泣いてるん?」
絵里「希…起きたの…」
希「うん…」
69:
絵里「ねぇ…希?」
希「なに?」
絵里「ありがとう」
希「うん」
絵里「本当にありがとう」
希「うん…」
絵里「好きよ」
希「…うん」
希「うちも好きよ」
絵里「約束しましょう?」
希「うん、なんて?」
絵里「『私たちはずっと一緒』だってこと…」
希「うん、約束する」
絵里「じゃあ、誓いのキスを…」
希「はあ?何それ?…約束にキスとか結婚か…んむっ!」
絵里「んっ…」
希「あほ…」
絵里「希…」ギュッ
絵里「あともう1つ約束して」
希「なに?」
絵里「コスプレ…してほしいの」
希「はぁ!?」
絵里「天女と占い師とサンタとラプンツェルとキョンシーの」
希「ぐ、具体的やね…」
おわり
72:

かわいい
74:
おつー
なんか終始落ち着いてふわふわとした雰囲気で、読んでて良い気分だった
8

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