男「見られてない?」イケメン「…」じぃーback

男「見られてない?」イケメン「…」じぃー


続き・詳細・画像をみる


男「…っ…」ゾクゥ
男「……!」チラリ
イケメン「…」じぃー
男(み、見てるよなっ? 俺のことすっげー見てるよな…っ?)
男(ここ最近やけに視線を感じてたんだが…やっぱアイツか…俺を見ているのは何故だ…)
男「はぁ〜…」
男(この学校に入学してから早二年。彼女おろか友達も出来ぬまま過ぎ去っていく日々)
男(いや、それは俺の自主性が無さ過ぎるってのもあるんだろうけど、うん、今は別にいいや)フルフル
男「いっ……今の今まで俺は、教室内で…なるべく空気になろうとしてきたつもりだったんだが…っ…」
トントントン トン
男「…」チラッ
イケメン「…」じぃー
男(なんでコッチ見てるんだよ!?)
元スレ
男「見られてない?」イケメン「…」じぃー
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1397382696/
http://rank.i2i.jp/"> src="http://rc7.i2i.jp/bin/img/i2i_pr2.gif" alt="アクセスランキング" border="0" />
http://rank.i2i.jp/" target="_blank">アクセスランキング

 
2: 以下、
男「ぐぅっ…なんだ俺をそんなに見つめて…ッ!」
男(ハァッ!? も、もしや何時の間にかいじめの対象として観察されている、のか?)
イケメン「…」じぃー
男(あ、ああっ…違いないぞあれは…完全に俺を標的として見定めてる目だ…俺には分かる…!)
男(比較的この学級は殺伐とした人間性を持った奴は少ないと思ってたのにっ)
男「やっぱ顔なかァ! 顔が全てを制する手段なのかよ…ッ! 馬鹿野郎、神さはなんにも見ちゃくれてねぇ…!!」ボソッ
イケメン「何が顔なの?」
男「どぅあッッ!?」ガタタ
イケメン「やぁ! どうも! さっきから視線を感じてたから、こっちから話しかけてみたんだけどさ」
男(いや! いやいやいやいや! お前のほうが見てたじゃん! 滅茶苦茶俺のこと観察してたじゃん!)
3: 以下、
イケメン「何かオレに用事? ん?」
男「あ…いえ…別になんも用事ないっすケド…」
イケメン「へぇーそうなんだぁー。んじゃオレの勘違いってことね、ごめんごめん」
男(なんでお前が納得してんだよ! お前がまず説明しろよッ! そのすまし顔もイケメンだな畜生!)
イケメン「んーあのさぁ君って、前から思ってたんだけども」
男「えっ?」
イケメン「なんで何時も怒ってんの? なにかイラつくことでもある感じ?」
男「えっ!? おっ!? 怒って? …る?……ないけど、なに、怒ってる……見える…?」
イケメン「うんすっげー見えるよ。日常的に誰か構わず呪って生きてるように見える」
4: 以下、
男(うぇぇぇっ!? 別に怒ってないけど…むしろ静かに生きたいと願ってる方だけど…)
イケメン「だからオレ的には君が一回笑ってる所見てみたいなー」
男「はぁっ!? な、なんで…」
イケメン「ほらほら。人の笑顔って周りを幸せにするって言うしさ、そういったことも含めて一つ、どう?」
男(そういったことって何なんだ…)
イケメン「え・が・おっ! え・が・おっ! それっ!」パン パン
男「うぇっ?! あ、いや! そんな急に言われても無理っ」
イケメン「出来る出来る君になら普通にできるって。口角上げて、にこーってするだけだしさ」
男「口角上げて…にこー…?」
イケメン「そうそう。やってみ、簡単だから」
男「……に、にこー」プルプル
イケメン「……」
イケメン「怖ッ!!」
5: 以下、
男「ッ…!」ブツン
男「テメーがやらせたんじゃねーかアホ!!」
パァン
イケメン「──………」くらぁ
男「あ…」
「い、今…ウソでしょ?」
「あいつイケメン君のこと叩かなかった…?」
男(や、やばっ俺はなんてことをっ!? あ、謝らなければっ)くるっ
男「ご、ごめなひゃっ! しょなつもりふぁんてっ!」
イケメン「…」
イケメン「キタァ────!!!」
男「ほぁいっ!?」
6: 以下、
がっしぃいいい
イケメン「ちょっとこっち来て」ぐいぐい
男「…っ? …!?」ズリズリ
廊下
男「さ、さっきのことだけど…えっとアレは別に悪気があってやったわけじゃあなくて…っ」ダラダラ
イケメン「聞いてくれ。いいから黙って聞いててくれ」
男「な、なんしゅかっ?」
イケメン「オレの頭叩いたよね」
男「うひっ! あっ、えっと、ごめんなさい…!」
イケメン「フンスー! 最高だったよ! マジでドンピシャクリーンヒットだった!」
男「ついイラッと来て思わず…」
男「は?」
イケメン「小気味よい打撃音。手首の効いたスナップ。淀みない発言。そして──最高のタイミング」
7: 以下、
イケメン「とうとう見つけた…君がオレにとっての最高の救世主! ノアの方舟! マリア様!」
男「のあ…のあ…?」
イケメン「以前から目をつけていたんだ。もしかしたら君がオレの欲望を解消させてくれる人じゃないかってさ」
男(なにこの人怖いよッ!)
イケメン「聞いてくれ…是非にと聞いてくれ…オレの抱える闇を…オレの抱える思いを…」
男「やっ……やだ!」
イケメン「やだって言うなよ! お願いだ! オレの気持ちを解消させてくれるのは君だけなんだ…っ!!」
男「やだやめて…っ…お願いします何でもしますから…っ」
イケメン「何でもするって、何もそこまで怯えなくてもいいじゃないか…」
男(分からねえだろうな! お前にはわからないだろうな! 久しぶりにクラスメイトと喋る奴の気持ちなんて!)サメザメ
8: 以下、
ヒソヒソ ヒソヒソ
イケメン「むっ? 流石にここまで騒ぐと人目を引くか…」
男(お前だからだよ…)
イケメン「ここじゃあんまり詳しく話せないな。付いてきてくれ、説明させて欲しい」グイッ
男「ちょ、ちょっと…マジでなんなんすか…っ」
イケメン「えっ? オレのコト知らない? …結構クラスじゃ目立ってる方だと思うけど」
男(知ってるよ!)
屋上
男「寒い…」ブルル
イケメン「──あれは、この高校に入学してすぐだった…」
男(勝手に語り始めたよ…)
イケメン「俺は入学してすぐに友人が出来た。両手で数えられないぐらいに、たくさん出来たんだ」
男「…さよですか」
イケメン「オレは素直に嬉しかったよ。これはウソじゃない、友好関係がたくさんあったほうが楽しいからな」
9: 以下、
男(泣いていいかな)
イケメン「けど直ぐに気づいたんだ。満足行く高校生活を送れると思っていた矢先、オレはとあることに…」
男「…なんすか」
イケメン「それは……それはっ!!」ガンッ!
男「っ」ビクッ
イケメン「くっ…くそっ…なんでだッ…どうしてこうなったんだッ…!!」
男「お、おい」
男(急にどうしたんだ? そ、そんなたいそれた悩みを抱えてたのか…?)
イケメン「オレはただ…ただみんなから…ッ!」
男「……」ゴクリ
イケメン「突っ込みを貰いたいのに…っ! なんでみんなオレのギャグをスルーするんだ…っ」
男「あの。帰っていいですか」
イケメン「ただオレは何気ない会話で、軽くポイっと突っ込みを入れて欲しいんだよ!!!!!!」
男(知らんッ!)
10: 以下、
イケメン「考えてみてくれッ! 『最近筋トレハマってさーマジ鍛えまくってんだよねぇ』と言われて俺が何気なくッ!」
イケメン「あーじゃ亀のうんことか食べると筋肉育ちやすいらしいぞっ? っと言ったら! みんな…みんな…」
男「…………」
男「え、喰ったの?」
イケメン「……」コクリ
男(クッ! だ、誰だそいつの名前超知りてぇ! 後で影からこっそり顔確認したい!)
イケメン「これだけじゃない…まだまだたくさんある…オレがボケたいがゆえに不幸のどん底に落とされた友人たちがな…」
男(ボケなきゃいいじゃん…)
イケメン「今ッ! だったらボケなきゃいいだろって思ったろッ!」
男「ぇうっ!? お、思ってないデス…!」
イケメン「いやー……いいんだ、君の気持ちもわかる。だったらオレがボケなくていい、ただそれだけで済む話だ」スッ
イケメン「このメモ帳を見てくれ。どこからでも読んでくれていいから」
男「は、はぁ」ペラ
男「…なんすかコレ」
イケメン「オレのボケ手帳だ」
11: 以下、
男「え、えー………」
イケメン「引くだろう。ああ、ドンドン引いてくれて構わない。オレもメモ帳が出来上がった時は三日三晩悶え苦しんだ」
男「で、あの、これが何か?」
イケメン「………」
男「?」
イケメン「今期。オレは放送部員となった、クラスの委員会のな」
男「それは駄目だやめろッ!」
イケメン「それだ───ァッッ!!」
男「はぃいいいぃいっ!?」
イケメン「即座の理解力。そして的確な突っ込み。あっ…ぁぁあっ…ぞくぞくするねぇっ…いいよきみぃ…!!」
男(きめぇ…)
イケメン「ふくくっ…その通り…君が予想したことが現実に起こりえるんだ…この手帳のネタを放送時に使ってしまうかもしれない…このままではッ!!」
イケメン「けれど君の突っ込みがオレの欲望を癒してくれる! こんなものちっぽけだと思い知らせてくれる!」ギュッ
男「………いやいやいやいや……」
12: 以下、
イケメン「お、お願いだ! オレのどうしよもない欲望を…受け止めてくれッ! お礼はなんだってする! 本当だ!」
男「ご、ごめんなさい…他あたってくれませんか…」
イケメン「何が欲しい!? 出来る限りのものなら奢ってやるから! お金なら……うん、バイトするから!」
男「い、いえいえ…そんな金なんて…」
イケメン「じゃあ彼女か!? 彼女なのか!? だ、だったらどーにかして君のこのみにあわあわあわせて紹介してあげるし!」
男「か、彼女ぉ? そ、そういうのって自分で作らないと意味ないと思うし…」
イケメン「…意外と理想が高いんだな」
男「うっさいわ!」
イケメン「ふほぉぉぉぉっ」キラキラキラ
男(し、しまった! 余計な突っ込みを…!)
イケメン「ジュルリ。や、やっぱり君じゃないと駄目だ…っ…オレの高鳴った鼓動は君じゃないと収まり用がない!!」
男「マジ勘弁してください…」
イケメン「ぐぅうぅぅっ…なぜだ何故こうも頑固なんだ…っ」
男(必死過ぎて怖すぎる)
13: 以下、
イケメン「あ。そうだ、だったこれはどうだっ!」
男「…なんすか」
イケメン「友達!」
男「んっ」ぴくっ
イケメン「おっ?」
男「……」プイ
イケメン「おっ? んっ? なぜだろう、君が一瞬反応したかのように見えたんだが?」
男「…な、なんでもねぇよ…」ボソボソ
イケメン「友達、欲しい?」
男「…………イラナイ」
イケメン「やれやれ。ウソが下手くそだなぁ君は」
男「ぐっ、う、うるさい! 俺は怒ってんだよ! 友達欲しいって馬鹿かッ! 俺が友達居ないみたいな言い方するな!」
イケメン「………」
男「うっ……あっ………その………え、居るのとか…惨めになる質問……してくれなくてありがとう……」かぁぁぁ
イケメン「これでも友人は多いからね。うむうむ」コクコク
14: 以下、
イケメン「はてさて。これで君とオレの利害は一致したわけだが」
男「ま、待ってくれ! 俺は別に友達なんて要らないし…!」
イケメン「本当に?」
男「いらない!」
イケメン「一緒に放課後買い食い」
男「ぐぉっ?」
イケメン「宿題を忘れて写させてもらう」
男「ぬぉおっ…」
イケメン「購買部の好きなパンを語り合ってみる」
男「…や、やりたい…っ」
イケメン「え? なんだって?」
男「……………」
イケメン「ふむ本当に君は強情なやつだ。じゃあ最後に──これはどうだ?」
男「え?」
イケメン「これからの残り高校生活、オレと一緒に青春をしよう!」
15: 以下、
男「……青春……?」
イケメン「君には大変醜いところを見せ続けたけれども、これでも、人を楽しくさせる自信はある!」
イケメン「知っているよ。君のことは入学当時から見ていた、君がどんな生活を送っていたかは、どんなことを望んでいたかは──君よりも知っている!」
イケメン「オレは君を満足させる! だからオレを満足させてくれ!」
イケメン「──それがオレと君との契約だ!!」
男「……」
イケメン「ど、どう? やってみたいとか思ったりする、かな?」
男「…は、はは」
入学当時の俺は、
それはそれは何事に対してもわくわくしていた。
桜が散る校庭。
賑わう新入生との声。
見慣れぬ見新しい校舎。
それら全てが俺を祝福してくれてるように思えて、心から期待に身体が震えた。
16: 以下、
ここから新しい自分がスタートする。
昔の自分を捨て去るつもりなんて無いけれど、また新しい自分が始まっていくのだと。
けど──現実はそうじゃない。
期待だけでは何も変われない。
凝り固まった自分は自分のままで、時間の経過と共に輝かしい高校生活は終わりを告げる。
そのまま、ずっとそのまま、俺は俺のままに。
何も手に入れることもなく、こうやって人生も終わるのだろうと思っていた。
けれど消えていく希望の光りの先に、
俺は何かを追いかけるように──とある生徒の背中を見ていた。
イケメン「どうする?」
俺は、一歩だけ近づけたのだろうか。
わからない。とても怖くて足が震えている。
どうしようもなく苦しくて、今にも逃げ出したかった。
男「……駄目だ」
17: 以下、
男「なに、言ってるんだよ。俺がお前と友達…? ハッ、んなの周りから同情されるに決まってんだろ」
男「あーやっぱイケメン君ってかっこいーあーんな根暗な奴も友達にしてあげるなんてー、てさ」
男「影でブチグチ言われるんだろどうせ…それに、お前だって何処まで本気かはわかんねぇじゃん」
男「友達? 友情? バカ言え、んなもんどうせうわべだけの都合のいい関係だろ…」
男「俺は気づいてんだよ。現実なんてツマンネーことばっかで、良いことはお前みたいなイケメンが全部かっさらっていくって」
男「俺は俺用のステージが用意されてんだ。俺は俺だけの誰でもない演技をしていかなくちゃ駄目なんだよ…」
男「カッコイイやつはスポットライトを浴びて…いっぱいいっぱい沢山の歓声を貰える…けど、俺はそうじゃない…」
男「……俺はそこら辺の草役なんだって…」
そう、俺はそんな奴だった。
希望なんて感じずに、暗闇でじっと根を張ってギリギリのラインで生きながら死んでいく。
それが、俺なんだ。
イケメン「だからなに?」
男「…っ…お前に!」
イケメン「そうだな。オレにはわかんないよ、けど、だからなんなんだ?」
18: 以下、
男「だから何…だと…?」
イケメン「それが君だったとして、草役やスポットライトを浴びなくて、それがなんだって言うんだ?」
男「ッ…お前には到底わかんねえだろうな! イケメンでイケメンで女子やら友達やら全てうまく行ってて!」
イケメン「……」
男「そんな奴と俺が友達なんて、ムカつくんだよ! 俺が惨めになるんだよ!」
イケメン「なんで?」
男「だからッ」
イケメン「周りだろ。だからどうした」
男「だから、どうしたって…お前…」
イケメン「周りから惨めに思われて何なんだ。周りから馬鹿にされてなんなんだ」
イケメン「君は周りから見られないと生きられない人間なの?」
男「ちがっ」
イケメン「俺は君だけが欲しいんだよ」
イケメン「周りなんて関係ない。俺は君だけが必要としている。君のその素質を、君の突っ込みを、ただ君だけを…なのに、君は」
イケメン「どうして───オレ以外のことで悩んでるんだッ!」
19: 以下、
男「おおっ…?」
イケメン「なら俺は君の友人となるために周りの友人を全部裏切って見せる」
男「ちょ、それは…」
イケメン「女子も含めるぞ。だったらメルアドも全部消そう、君との通信手段用にしてもいい」
男「ま、まって…」
イケメン「これでいいんだろ。これで君は満足なんだろう? じゃあ、オレと契約しよう」
イケメン「──今のオレは君だけが欲しいんだ」
男「……ぐっ…がっ…ごっ…」
イケメン「オレは真剣だぞ」
男「ぐぎぎっ、じゃ、じゃあ今消してみせろ! メルアド全部!」
イケメン「いいよ」ピッピッ
男「お、おう」
イケメン「…」ピッ
男「……っ…」
男「ま、待った! 分かったお願いしますそれだけはちょっと…!!」
21: 以下、
イケメン「ん。じゃあやめる」ピッ
男(よくよく考えたら俺が後で周りから恨まれる結果になってたんじゃ…?)ダラダラ
イケメン「じゃあどうする! 後は君の答え待ちだぞ!」
男「どう、するって…」
イケメン「オレと友だちになって青春を謳歌する。けれどオレの欲望を解消させてもらう」
男「………」
男「……俺は…っ」
希望の光りは何処にある。。
こんな変態野郎と共に、残りの高校生活を過ごして何かを得られるだろうか。
『──……かっこいいな、君は』
男「…!」
男「………わか、った」コクリ
イケメン「え? 本当に?」
22: 以下、
男「お、俺がお前に突っ込みをするッ! その代わり……ッ…ちょ、ちょもだち! になる!」
イケメン「友達な。友達トモダチ!」
男「そおっ! トモダチ!」
イケメン「トモダチ! トモダチ!」
男「トモダチ! トモダチィ───!!」
ああ、なんだろう。
少しだけ良いなって思ってしまったからには、仕方ない。きっと仕方ない。
イケメン「ありがとう…っ! ありがとう! 本当にありがとう!」
男「な、なんだよ…喜びすぎだろ…」
イケメン「これでやっと夜ぐっすり寝れるしさ…うんうん…ありがとぉ…」
男「寝ろよ…」
イケメン「うんうん…今日から寝る…っ」
男「……くす」
23: 以下、
そんなこんなで、
とんでも無い変態イケメン君が俺の友達となった。
これが後に待つ怒涛の高校生活になるとは、思いもよらなかった、程でもない。
何となく予想はついていた。つきまくっていた。
突っ込みだけに、つきまくっていた。
数日後、
俺とイケメンが恋人関係になったと噂されたのが、
つきまして最初の問題なのだろうと俺は思った。
プロローグ『俺のツッコミ待ち』
25: 以下、
乙、次も楽しみにしてる
たしかにあれじゃホモと間違われるなww
29: 以下、
自販機前
男(珈琲飲もうっと)チャラチャラ
チャリーン コロコロ
男「しまっ…」
男(──落ち着いて見届けるんだ俺……)ジィー
コロコロ…
男(放っておけば壁にぶつかって止まる。誰かこの様子に気がついた者は居ない)チラチラッ
男(気の利いた優しい生徒が拾うとことも無い。俺が注視してないからだ、それが俺の懸念…)
男(だって俺は拾ってくれた相手に、気軽にお礼を言える自信無いからな!)
30: 以下、
チャリン
男(拾いに行こう)スィー
男「よいしょっと…」
バン! ぐりっ!
男(えっ? 誰かに百円踏まれた──)
女「………」ジロッ
男(だ、誰だ!? 全然見たこと無い女子生徒だ…)
男「あの、その足どけてもらってもいいです、か…?」
女「………」
男「下にお、俺の百円があるっていうか、その…?」
31: 以下、
女「……アンタ」
男「な、なに?」
女「アイツと付き合ってるんでしょ。全然信じらんないけど、あの顔だけ良い変態とアンタって」
男「つき、へっ? なに? だれが?」
女「しらばっくれるんじゃないわよ! もう学校中に広まってるんだから!」
男「うひッ!」
女「こんの変態ッ! 男同士で付き合うとか頭どうかしてるんじゃない?! 変態は類を呼ぶって本当だったのね!!」
男「なにそれ……え、別にそんな言葉ないけど……」
女「うるさいわね!! なによ!! なんか文句あるワケ!?」
男(わ、わけがわからん…! とりあえず百円を貸して欲しい…!)
女「あ、そう? あくまでしらを切るってワケね!! へーそーなの、ふーん」グリグリ
男「俺の百円…」
女「いい? べっつにあたしはどーでもいいんだけどさ。心から心底どーでもいいんだけど!」
女「──これ以上アイツをおかしくさせたら、末代まで祟るわよ!」
32: 以下、
〜〜〜〜
男「…ということがあったんだ」
イケメン「へぇー大変だったなぁ」ほのぼの
男(訳が分からなかったが明らかにお前が原因だろう、と流れで突っ込みたい)
イケメン「それからどうなった?」
男「勝手に怒って勝手にどっか行った…」
イケメン「ははっ。アイツらしいな」
男「え、知り合い?」
イケメン「多分幼馴染。隣のクラスの委員長だな」
男「…。なんでその人が俺のこと怒るんだ?」
イケメン「さー?」
男(さーじゃねええええ! 滅茶苦茶怖かったんだぞ! うわぁぁあっ…女子に怒られるのキツイんだからな…っ)サメザメ
33: 以下、
男「と、とにかく原因はあると思うんだ。確か俺が誰かと付き合ってる…とか言ってたから」
イケメン「付き合ってるの? 嘘、初耳だぞ何故黙ってた!」
男「だ、誰とも付き合ってねーよ…っ! それに声でかいから…!」
イケメン「オレというものが居ながら…」
男「誰の許可も貰う必要ねーよっ」パシッ
イケメン「うっひッ!」ビクン
男「ど、どうした?」
イケメン「……いまのグット!」グッ
男(きめぇ…)
イケメン「まあ気にしないで良いと思うけどな。すぐに飽きて関わってこなくなるぞ、多分」
男(最後の一言で不安なんだけど…)
イケメン「それよりもさっ? 今日は何処に行くんだ? そろそろゲーセン行ってみようか?」
男「! い、行きたい!」ピクン
イケメン(嬉しそうだなぁ)
34: 以下、
男(ゲーセン……そもそも一度も行ったことがないけど、お金は大丈夫だよな…ちゃんと貯金箱から出してきたし…)ワクワク
イケメン「じゃあ帰るか。そういえば君は部活はやってる?」
男「え、やってないけど…お前は?」
イケメン「全部辞めてきた」
男「うぇっ? なんでっ?」
イケメン「飽きたから」
男(なんですかそれ…そもそも全部って、幾つ掛け持ちしてたんだよお前…)
スタスタ ガラリ ピシャッ
「…ねえ聞いた? やっぱ噂って本当だったんだねぇ〜!」
「あの二人ガチで付き合ってたの? 急に仲良くなったとか思ってたけど…」
「オレというものがありながら、なんて言っちゃってたな…うっわーっとと、」
バン!
女「……」キョロキョロ
35: 以下、
「おー女じゃん。どうした?」
女「…アイツは? 何処行ったの?」
「イケメン君か。さっき愛しの恋人と一緒に放課後デートに、」
女「チッ! 出遅れたか…これだから売れ残れ教師のhrの長さは嫌なのよ…ッ!」ダダダ
「行っちまった…」
「女も大変だねぇ。昔ながらの幼馴染が同姓に取られるなんてさ〜」
「え? 付き合ってたの二人って?」
「いやいや。勘違いされやすいけど、あの二人って───」
ゲーセン
男「ふわぁー………」キラキラキラキラ
イケメン「とりあえず何がしたい?」
男「ふぇっ? じゅるる、あ、えっと、うんっ! 色々とやりたい……です」
イケメン(普段死んだ目をしているのに…なんてきれいな目を…)
36: 以下、
イケメン「……あ。じゃあプリクラを撮ろうか?」
男「ぷ、ぷりくら?」
イケメン「高機能射影遊戯機体なんだけど」
男「こうきしゃえ…ゆうぎ…?」
イケメン「うんうん。じゃあ早行こう、きっと君も気にいるよ」ズイズイ
男「ま、待って! ちょっと本当に一人にしないで…!」オロオロ
ヒョコ
女「…居たわ」
女(なかなか楽しそうに遊んでるじゃない。なによ、久しぶりにアンタの笑顔なんて見たわね…)
女「だからって認めないわよ…ッ…お、男と付き合うなんてどーかしてるわ! 頭に蛆が湧いてるんじゃないっ!?」
ソソクサ…
男「こ、これ押すのか?」
イケメン「そうだよ。そして次に、ここに立ってくれ」
37: 以下、
男「お、おおっ? これはどういった遊びなんだよ? 説明をちゃんとしてくれないと…」
イケメン「大丈夫。オレに任せとけって」
女(ここに入っていったわ。プリクラ? はぁっ!!? 男二人でプリクラァ!? ば、ばっかじゃないの!?)ソソソッ
女(中でどんな会話してるのかしら…聞き耳立ててやるわ!!)
スッ
男「俺は初めてなんだよ! もっと優しく、」
イケメン「優しくしてるだろ。君がもっと柔らかくしないからだ」
女「」ピキーン
男「柔らかくってなんだよ! お、俺は理解力には定評はあるぞ…!」
イケメン「だったら最初の優しい説明でわかると思うけどな。それに定評って、誰からの?」
女(コイツ等中でなにやってんのよ────ッッ!)【後半を聞いてない】
38: 以下、
女(変態! 変態変態変態ッ! ところかまわず盛ってるのねド変態共…ッ!!)
男「くそぅ…お前のほうがデカいな…」
イケメン「そう? 別に大きいからって良いこと無いと思うけどなぁ」
女(!!??!?!?!!?)
男「…男にとって身長ある方がいいだろっ」
イケメン「い、いまはそうでもないけど…屈まなきゃ映らじゃないかコレ…」
女(へっ変態どもがぁ……なに比べ合ってんのよ…っ…最悪ッ! 耳が腐るッ!)
男「うわっ! いきなりだなオイ…!」
イケメン「ははっ。びっくりした? オレも最初の頃は驚いてさーこんな急にくるもんなのかって」
女(……へ、へぇ〜……そ、早漏なのねアイツ……)
39: 以下、
男「普通はカウントダウンとかしないか…」
イケメン「実はしてたよ。君がテンパってて聞いてなかっただけだ」
女(なんなのよッなんなのよこいつ等ッ! 付き合ってまだ間もないはずじゃなかったの!? この発展具合はなんなのよッ!!)
男「まだやるのかコレ」
イケメン「それだけお金を払ったんだから、一回だけじゃないさ」
女「………えっ?」
男「そうはいっても…俺はもう一回だけで十分だ…」
イケメン「場慣れの問題だって。いつかは慣れると思う」
女「なに、それ…えっ? お金……払った……まだやるのかって………」
女(あの変態…まさかお金を掴ませて……無理やり付きあわせてるってコト…?)
女(確かにあの目つき悪い奴は、たかが百円で必死になってたけど……嘘、嘘嘘……)
40: 以下、
男「…そういうもんか」
女(! 流されちゃダメよバカ! アンタはもっと身持ちを良くしなさい!!)
イケメン「たかが五百円じゃないか。大丈夫大丈夫」
女(五百円で身体売ったの!!? やっぱアンタばっかじゃないの!!?)
男「そうはいっても、俺にとって五百円は大きいんだよ…」
女(大きくないわよ全然小さいわよあんぽんたん!!)
イケメン「えっ? …案外君って家系苦しい感じ?」
女(そこを付け込んだんでしょアンタが!!)
男「…いや、バイトしてるし平気」
女(そのバイトで五百円しか稼いでないけど平気なのそれ!!)
イケメン「へぇー気になるなぁどんなバイト?」
女(アンタサイテーよ!! そうやって問い詰めてプレイってこと!? そういうプレイってこと!?)
女「はぁっ…はぁっ…だ、ダメよ…もうダメ…止めなきゃ駄目…!!」
女「ッ───アンタ達!! 淫行はそこまでよ!!」
41: 以下、
ガバァ!
女「あれ?」
イケメン「こっちで今度は絵を描けるんだよ。おいでおいで」
男「そうなのか。へぇーすげぇ〜ほぉぉー」
女「い、居ない…そうかタッチコーナーに行ったのねっ!」ババッ
女「今ならまだ間に合う──」
警備員「キミ。ちょっと良いかな」
女「えっ? な、なによ!? あたし急いでるんだから…!」
警備員「さっき報告を受けてね。話を聞かせてもらってもいいかな」
女「嫌よ!! 今止めないと何時止められ、ちょまっ! 放しなさいよコラ───ッ!!」
男「ん? なんだか外が騒がしいな…」
イケメン「ふふっくくっ」
男「…なんで笑ってんだお前」
42: 以下、
イケメン「いやいや…やっぱり君と友達になれて良かった」
男「はぁ?」カキカキ
イケメン「オレの日常で埋まっていた面白ものがドンドン発掘されてるんだ。笑わずにいられない、くくっ」
男「訳のわからないことを言うなよな」コトリ
イケメン「…確かに、ごめんごめん」
カキカキ
イケメン「もう少し待っててくれ。君にきっと楽しい青春を送らせて見せるから」
男「お、おおっ?」
イケメン「…待っててくれ」
コトリ
男「…わかった。それと何気なく相合い傘書くなよきめぇ!」
イケメン「マジ突っ込みラブリーっと」
男「やめろーっ!」
43: 以下、
〜〜〜〜
女「……やっと開放された…」ボー
女(こんな店二度と来ないわ絶対に! 周りの友達にも言いふらしてやる…ッ!)
女「あ……そういえば、変態と目つき悪奴は………」
キョロキョロ
男「フンスー」テカテカ
イケメン「フィギュアとれてよかったな」
女「居た!!」ダダッ
女(やっぱりアイツは変態だった──昔から顔だけは良くて周りからはチヤホヤされてたけど……)
女(隠された本性をあたしは知っている! とんだ変態で馬鹿でアホなやつだってことを!!)
女「けど…ッ」
女「ぐっ……!!」
だだだっ
44: 以下、
男(まさかここでレア物が手に入るとは…!)
イケメン「そんなに嬉しいの?」
「──そこの二人止まりなさいッ!!!」
男「えっ?」
女「っ……!!」ダッ
だきっ ぎゅうううううう
男「うぇえええっ!!?」
女「ばかっ…何やってんのよ、馬鹿じゃないのアンタはっ! 苦しいなら頼りなさいよ! もっと周りに相談とかしなさいよ!!」ギュウウ
男「!?!!??」
女「そうやって自分を汚しても何の解決にもならないよッ……例え言いづらくても、例えそれが嫌なことであってもよ…!!」
ポロポロ
女「正直に話せば……ちゃんと人は助けてくれるんだから!!」ポロポロ
45: 以下、
男「…え、えっ、えっ?」ドキドキドキ
女「ばかっ……ちゃんと自分の幸せを考えなさいよ…っ」ぎゅっ
イケメン「あのー」
女「黙れ早漏野郎ッ!!」キッ
イケメン「え、なに早漏…?」
女「アンタには心底失望したわ腐れ外道っ!! 昔から変態だって思えば……なんでこんなんなっちゃったのよ!!」
イケメン「……」
女「あたしは…っ……あたしは昔からアンタのこと大っ嫌いだった!! こんな幼馴染が居るなんて最悪だったわよ!!」
女「けどそれでも! アンタはちゃんと真面目に考えてる、そこだけは認めてあげなくもなかったわ!!」
女「でも……さいあくよっ……なによ、なんなのよっ……それじゃあ駄目じゃない……!」
女「今回のことでアンタのこと……心から嫌いになったわ……本当に…本当によ……」
イケメン「……そうか」
女「なにがそうなのかよ……ッ!」
イケメン「なぁ女。聞いてくれ」
イケメン「──お前勘違いしてるぞ」
46: 以下、
女「…え?」
イケメン「予想するにオレが金を払って、う、うん、身体を買ってると思ってるだろうけど」
イケメン「ただプリクラ撮ってただけだからな?」
女「え……え……」
男「あわわっわわっ」
イケメン「そろそろ離してやってくれ。気絶しちゃうぞ」
女「……」ドサ
男「あ痛っ!」
イケメン「そういうこと。全然違うから、お前の勘違い、だからさ──」スッ
男「い、今なにが起こったんだ……え?なに?今から言うことを言えって? わかった…」
女「……」
男「このド変態女がッ!」
イケメン「ブフッ」サッ
女「」
47: 以下、
男「……。あれ!? 今俺何言った!? ちょ、違うんですごめんなさ…っ!」ハラリ
ハラリ ハラリ パサッ
女「……」スッ
【相合傘プリクラ】
女「っ……っ……」プルプル
イケメン「それ撮ってただけだよーん?」
男「ちょ! 良くわからないけど煽るんじゃないっ!」
女「──こんの…ッッ」ばっ!
女「ド変態カップルが!! 死ね!!」ガン!
男「ふぃぎゅあー!?」
ひゅーん ボゴォ!
女「死ね死ね死ね変態変態変態!! ばーかばーか!! 腐れホモ野郎ども! 死ね、しねぇ───!!! ば──かっっ!」ダダダダダダダ
48: 以下、
イケメン「気をつけて帰れよー」フリフリ
女「ば───かっ!! ホモ!!」
イケメン「ふぅ〜さてさて…」
男「」チーン
イケメン「そんなにショック受けるなって」
男「何が悪いんだ…俺に何の非があったんだ…」シクシク
イケメン「敢えて言うならタイミングかな」
男「意味が分からん…ううっ…フィギュア…俺のフィギュアが…」
イケメン「大丈夫だって。また来ればいいじゃないか」
男「え…っ?」
イケメン「何時だって来れるんだ。今日だけじゃない、いや、明日にまた来よう」
イケメン「──オレと一緒にさ」
男「っ……そ、そんなこと言ってもだまされないぞ!」
イケメン(嬉しそうだなぁ)
49: 以下、
イケメン「あ。そうだついでにアイツも連れて行く? 女のやつもさ」
男「お前は恐れというものを知らないのか…」
イケメン「いやいや楽しいことになるって絶対に」
男「……やめてください、お願いします」
イケメン「ん? もしや抱きつかれた時に……惚れたか!? そうなの!?」
男「ち、ちがっ」
イケメン「友人としてアドバイス。本当にアイツはいい子だから、おすすめする」
男「違うって言ってんだろボケ!」
イケメン「うひぃ〜〜〜っっ」
男「うわぁ…」
なんやかんやあって、ひとつの問題が終わったということになる。
なんやかんやあっても、楽しくなかったといえば嘘になる。
嘘と真はまさに表裏一体。
真が増えればまた嘘も増える。
──この日を境に『俺とイケメン君と女さん』の三巴の戦いになったと噂されるのは、そう遅くはなかったのだった。
一話『俺の突っ込み無し』
56: 以下、
帰宅路
イケメン「帰りに何処かよっていく?」
男「あ、うん」
イケメン「そういえば駅前に美味しいクレープ屋できたんだって。オレ、甘いのに目がなくてさ」
男「じゃ、じゃあ行ってみるか」
イケメン「君も甘いのいけるの? おおっ、じゃー行ってみようぜ」
男「…うん」チラリ
イケメン「ははっ」
男(コイツはいつも幸せそうだな…なにか悩みとか無いんだろうか…)
男「なぁお前ってさ…」
イケメン「どうした?」
男「その、なんていうか」
男(恥ずかしくて聞きにくい…どうやったらそう楽観的に生きられるのか、なんて…)
57: 以下、
イケメン「おいおい。どうした急に、一段と目が死んじゃってるぞ」
男「…死んでるのは元からだし、これ以上酷くなったら困る…」
イケメン「たしかにな」ウムウム
男「その、いきなりこんなコト聞くのもなんだけど……お前って」
イケメン「うん?」
男「えっとあのその〜……う、うん……」ポリポリ
イケメン(…? 何でアゴを掻いてるんだ?)
男(どうしよう、もうここまで言いかけたのなら言ったほうがマシだよな)
イケメン(あごを──ハッ!!? まさか髭の剃り残りあったのか!?)ササッ
イケメン(元より生えにくいけれど、剃り残りはどうしようもない…)サワリサワリ
男「ううっ…あ、あのっ…さ、お前って悩みとか……あったりしないの、かなっ……て」ブルブル
58: 以下、
イケメン(それとなく教えてくれてたのか、あれ? 触った感じ感触が……)
イケメン「なにも無いな…」
男「ええっ!? ひ、ひとつ足りとも…っ?」
イケメン「え、うん? 無いけど…」
男(精神力バケモノかよ! す、すげぇ…これが顔も性格もイケメンってやつか…)ドキドキ
イケメン(えらく驚いてた。そんなに長いの生えてたのか…?)サワサワ
男「………」ズーン
イケメン(あれ、何か落ち込んでしまったぞ。…もしかして髭に憧れてる?)
男(一方俺は悩みだらけで首が回らないぐらいだしな。あー人生もっと楽に生きられないかなー)
イケメン「大丈夫、年を取れば案外増えていくもんだって」ニコリ
男「ッ…!? こ、これ以上増えても困る!!」
59: 以下、
イケメン「ええっ? じゃあ結構、朝とか大変な方だったり…?」
男「あ、朝? ああ、うん…まぁ…毎朝ベッドから出たくなくなったりするかな…」
イケメン「出ること拒むぐらいもじゃもじゃになるのかっ!? しかも毎朝っ!?」
男「…うん、もじゃもじゃになる。こう色々といっぱいいっぱいになって…」
男「それでもやっぱり学校には行かなくちゃって、気になる」
イケメン「が、頑張ってるんだな。オレはそういった経験がないからさ、上手くアドバイスできないけど…」
男(みたいだな…悩みが無いっていうぐらいだし…)
イケメン「……。でも、やっぱ男同士そういったこと隠して生きるの無しにしよう」
男「えっ…?」
イケメン「いくら恥ずかしくても、それが自分のコト──なんだって思わなくちゃな」
男「……」
イケメン「だって自分は一人だけなんだ。ちゃんと向き合って生きていかないと、うん」
62: 以下、
男「お前…」
イケメン「なっ?」
男(な、なんて良い事を言うんだろう…やっぱ悩みがない奴は凄いこと言うなぁ…)
イケメン(だから毎日顔に生えわたる剛毛を、どうそこまでツルツルに剃れるのか方法を是非に聞きたい)ソワソワ
男「そ、そうだな。確かに一人で抱え込んでも……良いことなんて無いよな」
イケメン「っ! そうそう!」
男「その、あの、さ……俺とお前はと、トモダチュ…トモダチ…なんだし…一つ試しに…」ドキドキ
イケメン「うんうん。試しになんだ? もしかてオススメのシェービング…」
男「お、おおっ……そのす、素直をだなっ!」
イケメン「砂をッ!?」ビク
男「あ。うん…そういったのって難しくてさ、俺にとってはさ」
イケメン「誰だって難しいぞそれっ!? す、砂をなんて…無理無理ッ!!」
男「そ、そお? 結構お前とか……そうっぽく見えるけど…?」
イケメン「どんな風に見てるんだオレのこと!?」
63: ていせい 2014/04/21(月) 17:31:15 ID:KylbAPfA
男「お前…」
イケメン「なっ?」
男(な、なんて良い事を言うんだろう…やっぱ悩みがない奴は凄いこと言うなぁ…)
イケメン(だから毎日顔に生えわたる剛毛を、どうそこまでツルツルに剃れるのか方法を是非に聞きたい)ソワソワ
男「そ、そうだな。確かに一人で抱え込んでも……良いことなんて無いよな」
イケメン「っ! そうそう!」
男「その、あの、さ……俺とお前はと、トモダチュ…トモダチ…なんだし…一つ試しに言いたいことがあるんだが…」ドキドキ
イケメン「うんうん。試しになんだ? もしかてオススメのシェービング…」
男「お、おおっ……そのす、素直…とかの…やり方だな…!」
イケメン「砂のやり方ッ!? え、砂っ!?」ビク
男「あ。うん…そういったのって難しくてさ、俺にとってはさ」
イケメン「誰だって難しいぞそれっ!? す、砂をなんて…無理無理ッ!!」
男「そ、そお? 結構お前とか……そうっぽく見えるけど…?」
イケメン「どんな風に見てるんだオレのこと!?」
64: 以下、
男「えっ? …ち、違うの?」
イケメン「違う違う! お、オレは君とその、根本的に違うしさ…!」サスサス
男「あ……うん」ズキン
イケメン「だからやめたほうがいいと思うな…」
男「……そ、そっか。ごめん、変なコト言って」しょんぼり
イケメン(びっくりした〜砂を使って髭を剃るとか、オレには高等技術すぎる…)
男(まぁその…分かってた、うん、俺が素直になるなんて…向いてないし、相談したことが間違いだよな…)
イケメン「えっと、君のことを思って言ってるんだよ? そういうのやっぱ良く無いと思うからさ…」
男「……うん、ごめん、ごめんなさい…」ギュッ
イケメン(ううっ、凄くしょんぼりしている…案外オススメの方法だったのかな…?)
男(もう帰りたいな…家に帰って好きな本読んで飯食べて、寝たい)
65: 以下、
【クレープ屋】
イケメン「あ、ほら着いた。ここだよココ」
男「………」
イケメン「えっと、言ってた評判良いクレープ屋なんだけど、その…一緒に食べる?」
男「………」コクリ
イケメン「あ、うん。じゃあ食べよっか…うん…」
男「………」ズーン
イケメン(ど、どうしようっ!? 凄く傷つけてしまったらしい!! 砂でするのはそこまでの性能を秘めているのか!?)
男「あ」
イケメン「ど、どうしたっ?」
男「えっ? あ、いや…なんでもない…」スッ
店員「いらっしゃいませー何をご注文されますか〜?」
イケメン「っ! え、えーっとそれじゃあ──」
男(今の今まで気づかなかったけど、アイツ、うなじに白髪が一本…)
66: 以下、
イケメン「──クレープを一つと、あとは〜」
男(取ってやろうか。でも、他人に何気なく触れるのは…ちょっと気まずい…)ソワソワ
イケメン「そうだ、君は何を食べるんだい?」くるっ
男(まー……別に良いか、コイツならそう気になったりしない、と思うし)スッ
イケメン「…なんでそこでオレを指差すんだ?」
男「えっ?」びしっ
店員「──……ッ!?」ドキン
イケメン(ハッ!? そういえばまだ剃り残しの件が残ってたじゃあないか! それを指さして…ッ?)サスリサスリ
男(指差し、ああ、取ろうと伸ばした指先がそう見えるのか…)ニギニギ
店員(な、なんなのこの子達ッ!? 男二人でクレープは珍しいと思ったけど、ええっ…た、食べちゃうの? 今晩君はこの子を食べちゃうの…!?)ドキドキ
イケメン「あ、ありがとう。わざわざ言ってくれて、感謝するよ」
店員(感謝しちゃうのね! そこは嬉しがっちゃうのね!?)
男「あ、いやっ……まだ言うのは早いっていうか…」
店員(そ、そうよねっ!!! そういうのは今夜になって、二人で分かち合ってからいうものよねっ!!)
67: 以下、
イケメン「確かにその通りだ。出来れば詳細に言ってくれないかな、頑張って…一人でやるから」
店員(おぅおえっ!? こ、今晩のプレイを妄想しつつ先に独りで…ッ!? なんてもうやらしい子だーぁ!!)
男「でも結構難しい、と思うけど。だって後ろだし」
店員(バック!? そりゃちょっと独りでやり切るのは問題があるわー!)
イケメン「後ろっ!? もうそれは違うものじゃないかな…!?」
店員(そうよそういうのは違うわ目つきが悪い子君! 愛が無い! ラブがないわ! …じゅるる)
男「違う? まぁお前の年齢だと…そうでもないんじゃないか、結構見かけるし」
店員(どういうことぉぉ! バックでぱんぱかしちゃうのは高校生では流行りなの!? きゃーなんつー時代だよまったく!)パン
イケメン「結構見かけるのか…君が言うのなら…君のほうが詳しいしみたいだし、うん、そうなんだろうね…」
店員(お、押し切られちゃうのね!? 今晩はバックでこんばんわってか! なーにいってんだ私! あはは!)
男「お、おう。だからちょっと試しに……後ろ向いてくれないか」
店員「ッ!?」
イケメン「ああ、良いよ。出来れば優しく頼むな…結構痛むから」
店員「ッ……!!?」
68: 以下、
男「うう…っと、届かないから屈んでくれない?」
イケメン「こう?」スッ
店員「────」
男「もうちょっと下。そうそう、右にずらして…」
イケメン「こうかな」ススッ
店員「」サラサラサラ…
男「えいっ」
イケメン「あ、痛ぁ!? ちょ、髪の毛をどうして抜くんだ!?」
男「は、はぁ? だから白髪が──」
イケメン「白髪? …全然違うじゃないか、君が抜いたのは真っ黒だ!」
男「え? あ、本当だ……光の反射でそう見えただけか…あっと、ご、ごめっ」
イケメン「ッ──君はオレにムカついてるはわかってるけれど、そういった返しは酷いと思うぞ!?」
男「えっ? ええっ? い、いや別にムカついてなんか…ただ俺は…」
69: 以下、
イケメン「君が当然と思ってることでも、オレにとっては無茶だってこともあるんだ…っ」
男(何言ってんだコイツ…)
イケメン「そうか、そうなんだなっ…君はどうしてもやってほしいんだな…砂を……!?」
男「っ……そ、その話は………もう終わったろさっき…」プイッ
イケメン「──そんなワケないだろっ!?」グイッ
男「ええっ?」ドキ
イケメン「君があれだけ言いたかったことなんだ! それをオレにやって欲しかったんだろ…!?」
男「やって欲しいって…別に俺はそこまで相談したかったことじゃ…」
イケメン「っ……そうか、君は相談したかったんだな」
男「あっ…ち、ちがっ…」かぁぁぁ
イケメン「それがいつも通りだったとしても、これは間違いじゃないかって気にしてたんだ…それを教えると言いつつ知りたかったのか…っ」
イケメン「──ごめん、友達になろうって言っときながら君の気持ちが理解できてなかったよ…すまない、本当に…」
男「……あぁあううっ…」プシュー
70: 以下、
イケメン「これからもよろしく頼む。こんなオレだけど、君と仲良くしたいんだ」
男「は、はいっ」コクリ
イケメン「おっと。そういえば注文途中だった、すみません長話をしてしまって…」
店員「」ボタボタボタ
イケメン「店員さん!? どうしたんですか!?」
店員「………」グッ
イケメン「え?」
〜〜〜〜〜
イケメン「なぜタダでクレープをくれたんだろう…」
男「…美味しい」
イケメン「おっ? だろうだろう?」
男「お、おう。クレープで美味しいと思うの…初めてかもしれないな…」
イケメン「なんだかエラく気合を入れて作ってれてたから、一味違うのかもしれない」
男「………」ぱくぱく
71: 以下、
イケメン「美味しいかい?」
男「あ。うん、美味しいっていうか…」
イケメン「うん?」
男「…その、なんていうかさ、こう…あのさ、あれっていうか…」
イケメン「どうしたどうした。オレらは友達だろう、もっとハッキリ言っても平気だって」
男「……えっと、友達と食べるのは……美味しいと、おもう、です…」
イケメン「……」
男「やっぱ無し! 今の忘れろーっ!」ブンブン
イケメン「いやいや。オレも君と食べれて、普段よりも美味しいと思えるよ」パクパク
男「……そ、そうっ?」
イケメン「うんうん」
男「あ──そっか……へへっ」
イケメン「おっ? 今笑った!? すっげー普通に笑ったよね!?」
男「ち、ちがっ笑ってねーよ!!」
72: 以下、
イケメン「くっそーもっと近くで見とけば良かった」
男「か、からかうなよ……って、相談のこと聞きたいんだが…」
イケメン「相談? ゴクン、ああそうだった」
男「こ、答えてくれるのか?」
イケメン「勿論。君とオレは友達だ、だから助言してあげるよ」
男「は、ハッキリと頼むっ。曖昧に言われると……寝る前とかで、もじゃもじゃになるから」
イケメン「それは大変だ。じゃあハッキリと言わないとな」
男「お、おう」ドキドキ
イケメン「君の相談の答えだけど──うん!」
イケメン「やっぱ君には砂を……ってのは無いな!」
男「」
【この誤解が解けるまで一週間程かかりました】
第二話『俺の今晩の突っ込み(仮)』
74: 以下、
店員wwwww
続々と被害者が出ておるw
78: 以下、
図書館
男(今日は図書室で読書をして過ごそう…)ガララ
男(最近はよく人から視線をもらって疲れるし…まぁアイツとつるんでたらそうなるわな…)
男(ここは唯一、ゆっくりと落ち着ける場所だ。憩いの場所だといえるだろう)
男「さて…」チラ
眼鏡「…」パラ
男(おっとと、先客さんが居たか。珍しいなこんな放課後に)ガタ
眼鏡「…」チラリ
男「…!」ペ、ペコリ
眼鏡「…」コクリ
男(目があってしまった…ていうか、足なっがー足長おじさんかよ)
79: 以下、
眼鏡「…」パラリ
男(普通に読書に戻ってしまったし、俺も静かに本を読もう…家から持ってきたこの──)
【君に恋して三千里走ったけど本当の大事な人は海から覗いてた!?〈?〉】
男(という究極にまどろっこしいタイトルのラノベだ。実は大好きなんだコレ…)ワクワク
男(陸上部でエースだった主人公は、大会のゴール直前でアワビの殻を踏んで大怪我をしてしまう)
男(その怪我で選手生命を頓挫。部員や両親からも見放され、生きる希望すら無くしかけた時──)
男(──海で不正にアワビを踊り食いしている思い出の少女と再開する)
男(そして、淡い初恋と過去に持ちえていた熱き情熱を胸に、あまんちゅへと捧げる─ハートフルラブコメグルメスポーツ小説…)
男(最高だ。何もかも新天地すぎてうまく言葉すら浮かばない。ただただ、最高だ)ブルブル…
80: 以下、
男(今作で三巻目を迎えるのだけれど、タイトルにもある【君】という女の子がやっと活躍するシーンがあるんだ…!)
男(お馴染みのツンデレ具合。素直になれない不器用さ。主人公のことを陰ながら見守り続け…)
男(己と主人公との逆境と漁業法の罪に苛まれながらも、彼女は胸に秘めた強き想いを…やっと彼に…!)
男「ムッフー…読ませてもらおう…」パラリ
眼鏡「…」じぃー
男「…、………、……?」チラ
眼鏡「…」フィ
男(今…あれ…ん…?)
眼鏡「…」パラリ
男(き、気のせいか? 多分気のせいだろう…うん…そうだよな…)パラリ
81: 以下、
眼鏡「…」チラッチラッ
男「…………」
眼鏡「…」じぃー
男「…………………………」
眼鏡「…」じぃ─────
男「…っ?」チラリ
眼鏡「…」フィ
男(見てたよな絶対に! 凝視レベルで観察されてた!)
男(な、なんだ俺に何か用でもあるのか……じゃあ何で目を逸らすんだろうか……っ?)ズーン
82: 以下、
眼鏡「…」パラリ
男(ちょっとこのまま見続けてみよう、かな)じぃー
眼鏡「…」
男「…」じぃー
眼鏡「…」パラリ
男「…っ…」じぃぃー
眼鏡「…」チラリ
男「っ!」ビクゥ
眼鏡「…」ビクッ
男「っ…っ…っ?」ドキドキドキ
眼鏡「…」カ、カチャ フィ
男(いや無理がある! 何事もなかったように眼鏡の位置なおして逸らしたけど無理がある!)ドッドッドッ
83: 以下、
男(やっぱり俺を観察していたんだ。なんだよ、これで二人目だよ…どういうことだよ…)
「──げっ! なんでアンタがここに居るのよ!?」
男「えっ?」
女「最悪…静かに勉強できるのココぐらいなのにっ」
男(……うっわーココに来て一番会いたくない人来た〜…)
女「な、なによその顔はっ! なんか文句あるわけ!? あるならはっきり言いなさいよ!」
男「……ぅ…」ガタ
女「ふんっ。言っとくけど、この前のことは謝らないからっ。アンタ達が男同士で卑猥なことするから悪いのよ!?」
男「………」イソイソ
女「そ、そりゃまぁフイギュアを蹴ったのは悪いと思うけど──えっ? ちょ、ちょっと何処行くのよ…?」
男「…帰るんだけど…」
女「は、はぁ? なんでよ急にどうして帰っちゃうわけ? 良いじゃない別にここに居たって…」
84: 以下、
男(苦手過ぎるんだよこういうタイプの人…というか女子って時点で苦手なので…)スィー
女「あ…」
男(本は帰ってから読もう。そうしよう、そうしよう)
女「ッ〜〜〜〜! ま、待ちなさいってば!!」ぐいっ
男「うわぁっ!?」
女「そんな嫌そうな顔しなくたっていいじゃない…! そ、その…えっと…だからあれよあれ!!」
男(なんですか…っ!?)ドッドッドッ
女「…………えっと」シュン
男「…?」
女「とりあえずべ、勉強をあたしに教えなさいよ! 何も聞かず教えなさいッ!」
男「……は、はい?」
女「いいから、つべこべ言わず、教えなさいっ! ───わかった?」
85: 以下、
数分後
男「そこは一旦置いといて、次の式に振り当てて…」
女「うん」サラサラ
男「…違う違う。そうじゃなくて、求めた答えは置いておく感じで…」
女「う、うん」サラサラ
男「あれ? 答え最初から間違ってない?」
女「……」ブルブルブル
男(あ。怒りそう)
女「っはぁ〜……そう、ね…間違ってるわ多分…わからないけど…っ」
男(数学苦手なのかこの人…つか教えるのが怖すぎる…爆弾処理してる気分だ…)
女「あー駄目駄目。今日は乗り気じゃないわ、うん、気分が空振ってる感じよね」ポイ
男(気分てなんだろう)
女「…気になったんだけど、あんた今日は一人なワケ?」
86: 以下、
男「え、あ、うん」
女「へぇ〜いつも一緒だってワケじゃあないのね」
男「…まぁ」
女「………」
男「………」
女「…あの、さ」
男「な、なにっ?」
女「いったいアンタってば。どんな魔法使ったのよ」
男「魔法…?」
女「……。アイツをあんな楽しそうにさせるなんて、魔法以外に何があるっていうのよ」
男「意味がわからないんだけど…」
女「そ。わからないなら良いわ、べっつにあたしが気にすることじゃないし。どーでもいいしあんな変態なんて」
87: 以下、
男(変態、ってことはアイツの事なんだろうけど。何が言いたいんだこの人)
女「ただ出来ればその、なんていうのかしらね、ああいったアイツも良いなって思うし」
男「は、はあ」
女「楽しくないよりは楽しそうな変態を見てたほうが安心できるから、アンタにはこれからも──」チラリ
男「っ……」ドキン
女「──待ちなさい、それって【恋覗】じゃない?」
男「へ? こ、こいのぞ?」
女「あたし見たことあるわよ、そのアニメ。深夜に何気なくテレビ見てたらやってたわ、原作なのそれ?」
男「ああ、うん、そうだけども」
女「へぇーちょっと見せなさいよ。ふーん、へぇ〜ほぉ〜このへんはまだアニメ化されてないわね」パラパラ
男「…そういうの抵抗、とかないの?」
女「抵抗? なにそれ、絵柄とかのこと? …フツーに可愛いじゃない」
88: 以下、
男(…少しだけ自分の中の好感度上がった)
女「あたしの姉がこういう系好きで、良く買ってるのよ。読ませてもらってもいるし、アニメも見たりしてるわよ」パラパラ
男「え、結構詳しかったり…?」
女「別にそこまで趣味じゃないし、けど、まぁー面白いか面白く無いかぐらいは言えるわね」
男「ほ、ほう。ちなみにその…こいのぞは…?」
女「うん。笑えるぐらいに面白く無いわよね〜あっははー」
男(好感度急降下)
女「絵柄は可愛くて好きだけど、内容が駄目。盛り込み過ぎて起承転結どころか転転転転、まさにてんで駄目ってやつねぇ〜」
男(そこが面白いというのに…)
女「しかもこのメインヒロイン! なにアワビ食ってんのよばっかじゃない? 腹壊して死んじゃうわよコレ〜! あははは!」
89: 以下、
男(そういった好奇心の塊であるからこそ、他を惹きつける魅力に長けているんだ…!!)ブルブル
女「くっくっ…確かにギャグとしてはセンスあるかもね、あたしは好きじゃないけど」
男「っ……その辺にしておいてく、」
ぞわぁあああぁぁあ
男「!?」ビクゥ
男(きゅ、急激に立ち込めた負のオーラは何だ…っ!? 恐ろしく寒気がする…!!)
眼鏡「───」ぞぞぞぞぞっ
男「……っ!? め、……眼鏡の……人……ッ!?」
90: 以下、
眼鏡「…」ぞぞぞ!
男(今まで静かに読書をしていたのに何故…!? そんな強烈な雰囲気を醸しだして…っ)
女「それにさぁ〜グルメとか銘打ってる癖に、なんら味に関しての描写がなってないの。くっく」
眼鏡「…」ゴォォオオオ!
男「…!」
女「多分この作者、陸上おろか運動もやったことないと見た。心理描写が甘すぎ甘すぎ」
眼鏡「…」ギュインギュインギュインギュイン!!
男「…!?」
女「しかも恋愛も未経験じゃないのこれ?」
91: 以下、
眼鏡「………」ドドドドドドドドドド
男「…や、やめとくんだ、そろそろ…」ダラダラダラ
女「はぁ? 急に何よあんた──あ、ごめ……そういえばあんたの本だったわね」
男「う、うん。俺は別にどうだっていいんだ、違う、心配するところはそこじゃない…!」
女「そ、そお? あんたが好きで買って読んでるわけじゃない、それをあたし…」
男「い、良いんだ! 俺のことは!」
女「えーっと、じゃああんたも同意見ってコト?」
眼鏡「…」ボッッッ! ドゴゴゴゴゴッゴゴゴッゴオッゴゴ!
男「違う!! 俺は違う!!」ガタタ
女「な、なによっ?」
男「はっ…はっ…はぁっ……お、俺は大ファンなんだ……この作品の…!!」
92: 以下、
女「そおなの?」
男「あっ、ああ……だからそういった人もいるわけでっ……一々気にしてちゃ駄目だと、俺は思うんです…!!」ドッドッ
眼鏡「……」しゅるるるるるるる ぽんっ!
男「───ッ……! ……っ…はぁ〜…」ストン
女「なんで最後敬語だったの?」
男「…気にする、な」ダラダラ
男(分かった。分かってしまった、あの人多分、この作品の大ファンか、それ以上の人だ)チラリ
眼鏡「…」パラリ
男(予想では作者様じゃあ無いだろうか。本当に予想だけれども、間違ってるかもだけど)
男(だからさっきから読んでいる俺を気にしてたんだ…なるほどな…そりゃ気になるわな…)
女「じゃあさ、そんな大ファンなら好きな所教えなさいよ?」
男「……!」
眼鏡「……」ぴくっ
93: 以下、
男「えっ? ちょ、何言って…」
女「なによー答えられないってワケ? 大ファンなのに? 実は面白く無いのに惰性で買ってるとか?」
──ヂリッッ…
男「違うっ!! ちゃーんと答えられるぞー!? あったりまえだろ!?」
女「じゃあ教えなさいよ。どんな所が好き?」
男「──ゴクリ……」
男(どんな所が好き!? 言えばなんだって言える! けれどこれを作者様かも知れない人が聞いてるんだぞ…!?)チ、チラ
眼鏡「…」わくわく
男(わくわくしてらっしゃる! 肩がウキウキしてるんだぞ! こ、ここで失礼なことを言ってみろ…今後楽しく読めなくなるだろ!!)
男(どうすればいい!? 何を言えばいい!? 俺はこの作品で何を愛し感動し感銘を受けたか───)
94: 以下、
男「俺は…っ」
『素直が一番だぜ?』
男「っ──………頑固で融通が聞かなくて、けれど結構他人のことを良く見てて」
女「うんうん」
男「勉強は苦手だけど、唯一取り柄の運動だけは頑張ろうという強い意志を持っていて…」
女「ほうほう」
男「昔っからの幼馴染のことを大切に思ってるけれど、そんな素直な言葉は恥ずかしくて出せれない…」
女「…うん?」
男「けれどずっと心配はしていた…人知れず抱えてしまった悩みを、解決できるチカラを持っていないことに悔やんでる…!!」
女「えっ」ドキッ
男「そんな幼馴染を他の誰かに───救われていたことが気に喰わないけれど、けれどやっぱりそれでも素直になれない!!」
女「……」
男「そんな!! そんな…!! その娘が、大好きなんです……っ!!」
95: 以下、
男「──こいのぞの幼馴染キャラのツンデレが!!」
男(言った──言ってやった──俺の素直な感想を…!)
男「ど、どうだっ? これが俺の…!」
女「あ、その……えっと…」もじもじ
男「…?」
女「あ、あたしは別に、どんな所が好きって、あたしのことを聞いたんじゃないんだけど…っ」カァァァ
男「………」
女「ばっ何よ急に恥ずかしいこと言って! アンタなんか全然タイプじゃないし…っ…目つき悪いし…でも、あの…」てれてれ
男(いったい、彼女は、何を言っている?)
女「あ、アンタって変態と付き合ってたんじゃ───」
眼鏡「……」ガタタタ!!
男&女「!?」
96: 以下、
眼鏡「……」ズンズンズン
男「えっ? な、なになにっ? なんですかっ!?」ダクダクダク
眼鏡「───」スッ
だきっ ぎゅううううううううう
男「うぇぇぇぇええええええ!?」
眼鏡「……」ギュウウウ
男「な、なにっえっ!? なにっ!?」
眼鏡「……──」ボソッ
───アリガトウ…
男「……は、はいっ!! 俺も嬉しいです!!!」
眼鏡「…」コクコク
女「」
【この後ド変態ホモビッチと叫ばれました】
第三話『俺の素直な突っ込み』
97: 以下、
教室
イケメン「……」
イケ友「どぉ? 見てよこの上腕二頭筋! キレてないッ? 超絶きれてないッ!?」
イケメン「ああ来てるよコレ。果てしなく来てるねコレ」
イケ友「だろ? ここまで来ると俺も良く分かんなくなっちゃってるからマジやべーよコレ」
イケメン「ふむ。じゃあ続けてるんだ」
イケ友「……ああ、続けてるぜ?」キラリン
イケメン「こうやって効果を目に見えて確認できると、オレもアドバイスしてよかったと思うな」
イケ友「あんがとなー! メキメキ育ててやるぜー? ちょーやるぜー?」
男(コイツかよ亀のウンコ食ったやつ…)チラリ
98: 以下、
イケ友「そういや亀ちゃんの方も元気でなぁ。写メ見る写メ見る?」
イケメン「おお。可愛いな」
男(…どうしよう案外笑えない。気になってたけど実際分かると引いちゃうわコレ…)
イケメン「さて、今日はもう帰るから。お前は部活だろ?」
イケ友「そなのよぅ。バスケの先輩が今日は来いってうるくてさぁ、んじゃまたな〜!」ブンブンブン
イケメン「またな」
男「……」チラリ
イケメン「ん。さあ帰ろう、今日は何処へ行こうか?」
男「な、なぁ…もしかしてアイツが前に言ってた亀のうんこの…」
イケメン「──あれは悲しい事件だった。忘れたほうがいい、オレも無かったことにしたいんだ」
男(じゃあ今からでも止めてあげろよ…)
100: 以下、
イケメン「そんなことより、誤解が解けて久しぶりの一緒に下校だ。とことん楽しもう」
男「…ああ、うん」ガタ
イケメン「近所のディスカウントショップ行ってみるかい?」
男「…!」ぴくっ
イケメン「ははっ。君ってああいった店好きだろう? 実はオレもなんだ、買わなくても見まわってるだけで楽しいし」
男「い、行きたい!」
イケメン「うん。じゃあ早行こうか──」
イケ友「イケメン〜やっぱ今日は一緒に帰ろうぜ〜」ガラリ
男「…あ」
イケ友「なんか部活休みだったわ〜最近行って無くて知らなかったんよ〜ナハハ」
101: 以下、
イケメン「おお。そうか」
男「……」
イケ友「おっけ〜じゃあ準備してくるぞっ」ダダダ
イケメン「了解。玄関で待ってるぞ」
イケ友「ういっす〜」
男「…じゃ、じゃあ俺は先に帰るな」
イケメン「うん? 待つんだ、君も一緒に帰るんだよ?」
男「いやいやいや…! 俺アイツのこと全然知らないしっ! …だから、その」
イケメン「オレは君と帰るんだよ。アイツはおまけだろ」
男「おまけって…」
イケメン「大丈夫、平気だよ。心配しなくてもオレが付いてる。寂しい思いはさせないさ」
102: 以下、
男「あ。うん…」
〜〜〜〜〜
俺は過去に経験したことがある。
あれは小学生の頃。当時はまだ友人と呼べる人も居たのだった。
幼きゆえの無邪気さで、相手もまた大人しい俺を仲間に引き入れてくれて。
俺の友達の友達。そんな知らない人たちと遊べる時間が──とても楽しかった事を覚えてる。
男「…」
それと同時に、凄く悲しかった事を覚えてる。
俺を友達と読んでくれた当時の友人。彼が俺以外の友人と居るときは、
本当に、本当に、楽しそうだった。
わかっている。知っていたんだ、自分が相手を楽しませることが出来ないことは。
不器用で盛り上がる話題も振れないし、共通の趣味も持ち合わせてなかった。
103: 以下、
ただ彼の優しさで付き合ってくれていただけなんだ。
なんら自分の魅力ではない。だから、彼が心から笑うあの表情を見るのが──辛かった。
自分の知らない彼の顔を見るのが、俺は嫌だった。
俺も彼を楽しませたい、けれどやり方がわからない。
なのに、周りは当然のように──彼を笑わせる。
自分の情けなさに、無価値さに、当時の俺は恐ろしく諦めてしまったのだろう。
──何も出来無い、ただのでくのぼうだと。
男(今だって忘れられない…)
あの頃から何も変わってない。自分は一人ぼっちなのだ。
楽しい思い出なんて、結局、俺なんかが作れるわけがないと。
〜〜〜〜
男「…………」
104: 以下、
だから、今もまたそうやって彼の知らない顔を──
イケメン「どう思う? あれはオレの間違いじゃなかった筈なんだ」
男「……」
イケメン「あそこでバヒューンと蹴ったボールは確かに入らなかったけれど」
男「……」
イケメン「あのシュートは正解だった。なのに何故怒られるのだろうか、オレはそれが気に食わないんだよ」
男「……」
イケメン「だからオレは審議を申し立てるんだ。今度の体育でまたああいったチャンスがあるなら…」
男「…あ、あのさ」
イケメン「なに? どうした?」
男「その……俺にだけ話しかけ過ぎじゃない…?」
──だと思ったんだけど。コイツは例外らしい。
105: 以下、
イケ友「……」ぽけー
男「ほ、ほら! あの人もさっきからぼけっとしちゃってるし、話についていけてないし!」
イケメン「ついていけないのは、アイツが体育サボるから悪いんだろう。オレは関係ない」
男「そりゃそうかもしれないけれど…っ…もっと共通の話題とか、友達なら、知ってるだろ色々と…?」
イケメン「…?」
男「お、俺はっ……別に良いんだって、お前らが会話してるのを傍から聞いてるだけで…その、楽しいからさ…」
イケメン「……」
男「そいつは昔からの友人なんだろっ? 俺は知らないけれど、えっと、だから…やめとけって、そういうの」
イケメン「…君は」
男「な、なんだよ」
イケメン「優しいんだな。知らない相手まで気を使うなんて」ニコ
106: 以下、
男(その知らない奴を引き入れたのは何処のどいつだよ! …ま、まぁ俺には関係ないけど…怒ることでもないし…)
イケメン「オレは君と会話したいんだ」
男「えぅっ…なんだよそれ…っ」
イケメン「今日はそもそも君と帰る予定だったろ? アイツはオマケだとさっき言ったじゃないか」
男「で、でもっ」
イケメン「だってもでもじゃない。それに、君が気にするほどイケ友はやわじゃないぞ」
男「…そ、そうなの?」
イケ友「はっ!? またぼんやりしちまったー…ジュルル、なに話してたん? んっ!?」
イケメン「な? だって──亀のウンコ食うやつだぞ…」ボソボソ
男「ブフッ」
イケ友「ちょ、なに人の顔見て笑ったん!? なになになに!?」
イケメン「何でもないさ。そういえば彼のことを紹介してなかったね、彼は男君だよ」
イケ友「おー最近イケメンと仲いいやつだよなっ! よろしくっ!」
107: 以下、
男「よ、よろひゅくっ!」
イケ友「よろちくび!」
男「…古ッ!?」
イケ友「えっ? なははーちょいとネタ古かった? わかりにくい感じだったかー」
男(しまった、何気なく突っ込んでしまったっ)ドキドキ
イケメン「オレが思うに君とイケ友は相性がいいと思うぞ。案外、すぐに仲良くなれると思う」
イケ友「マジでー? でもでもコイツのこと全然知らないぜ?」
男(初対面でコイツとか…いや、初対面じゃないけど…)
イケメン「おいおい。初めて会話するのにコイツ呼ばわりするなよ、失礼だろ」
男「…!」ぴくっ
イケ友「おわぁっ!? し、しまった! ごめんよ男ぉ〜おれってばすぐに、こうなんつーの……やっちゃうからさ〜」
男「い、いや! 気にしてないんで…大丈夫だし…」
イケ友「やっさしぃ〜! ありがとうマジ感謝すっべ! いい友だちできたなぁ〜イケメン〜」
108: 以下、
イケメン「だろう」ドヤッ
男(…照れる)
イケ友「そういえば一つ気になったことがあるんだけどさ、男」
男「な、なにっ?」
イケ友「もしかして……と、飛び級なの?」
男「は?」
イケ友「背小さいし、なんか幼いし、前髪長いし、なんかこう──天才中学生みたいなっ!?」
男「ち、違うけど…同じ高校生だけど…?」
イケ友「うっそマジで!? まぁ目つきが人の血を飢えてる気がするしな…もしかして殺し屋?」
男「違うわ!」
イケ友「わっ」
男「……っ……あ、ごめっ、急に怒鳴って」
イケ友「だよなぁ〜めんごめんご〜なわけないよなぁ? じゃあ飛び級は当たってたかぁ」
109: 以下、
男「それも違う!」
イケ友「えっ? じゃあ高校生、なの?」
男「高校生、立派な高校生だって! アンタと同じタメ……はっ!?」ビクゥ
イケ友「マジかよおれやっぱ馬鹿だなぁ! なはははは! ばっかでぇおれぇ〜」ゲラゲラ
男(危険だ…何故か素でツッコミを入れてしまう…! 段々とアイツのせいでおかしくなってきてる…!)チラリ
イケメン「……………」
男「……?」
イケ友「タメなら趣味もあいそうだなぁ! ちょい男、好きな楽曲はなんだべ?」
男「え、あんまり聞かないけど…」
イケ友「実はおれもなんだよぉ〜! やべぇやべぇ! 趣味合いすぎぃ〜!」
男「じゃあ聞くなよ…!」
イケ友「だよなぁ聞くなって話だよなぁ! なははははは! ひぃーお腹痛いっ」
110: 以下、
男(何か良くわからない人だ…けど、不思議と嫌な気分じゃない、気がする)
イケ友「面白いわぁ男。是非におれとも友だちになってちょんまげ!」
男「! …あ、えっと、その親父レベルのギャグをやめたら、いいけど」
イケ友「うわっ辛辣なコメント! 傷つくわ〜めっちゃ傷付くわ〜」
男「あ…ご、ごめん…」
イケ友「でっも、グッドよそれ。ナイスな突っ込み、でもおれの性分なんで無理なんよ」
男「そ、そうなの?」
イケメン「あのさ、そろそろ店に着くんだが…」
男「お、おう? わかっ──」
イケ友「──なぁなぁ好きな漫画何読むんだ? ワンピース? ナルト?」
男「えっ? いやー漫画は読むけどそこら辺は…詳しくない、かも」
イケ友「んじゃ今度かすべ! めっちゃ泣けるから! ごうきゅうもんだから!」
111: 以下、
男「い、良いの? ありがとう…」
イケ友「良いの良いの。あ、でも、兄貴達に読まれてボロボロだけどオッケ?」
男「全然平気…うん」
イケ友「おー!! 心広いぜー! イケメンなんてボロな奴は嫌だ! なんて言うんだぜ〜」
男「へぇ〜」
イケメン「偶にお菓子の食べかす入ってるだろ。そういうの君は許せる?」
男「…うーん、俺は平気かな。ものは大切にして欲しいけど」
イケ友「だっよなぁ〜! 平気平気! 読めなくなるわけじゃねぇっつの! なぁ?」
男「お、おう」
イケメン「…………………さ、行こうか」
男(なんか、良いなこう言うの。むふふっ)
店内
イケメン「お。これなんて君に合いそうだな」
112: 以下、
男「どれどれ。なんでハリセンだよ馬鹿」
イケメン「実にいい組み合わせだろう? これでオレの頭を…くっふふ」
男(変態…)
イケメン「それに、こう言ったので今度──」
イケ友「ほらみてみぃー男! ほらほらこのマスク! めっちゃ似合ってない!?」ダダダダ
男「ぶっほっ! なに、それ…!?」
イケ友「ハルクだよハルク! ウォォォォオオ! 食べるぞー!!」
男「ハルクは人は食べないだろ…」
イケ友「え、そうなの? マジかー」スポッ
男「ぶふぅ! なんでまた下に仕込んでるんだっ」
イケ友「え? なにかまたおれ被ってる…!?」
男「あ。ごめん、普通の顔だった…」
イケ友「ちょー!? そりゃ失礼だっつーの! 激おこぷんぷん丸だぜぇ!?」
113: 以下、
男「ははっ、ごめんごめん」
イケメン「……!」
イケ友「おー? 男ちゃん、笑った顔素敵じゃーん。いつもしかめっ面で怒ってると思ってたわー」
男「怒ってないけど…それに、お、男ちゃん?」
イケ友「気に入った奴をおれはちゃんづけするのだ。なはは、どうだい嬉しい?」
男「気持ち悪いかも…」
イケ友「えー!?」
男(──なんだろう、何故か普通に会話出来ている気がする。本当に、本当に普通に会話をしてる気分だ)
男(いつもだったら上手く言葉が出なくて、苦しくて、大変で、そのままきゅっと閉じこもるのに)
男(…これも、コイツのお陰かな。コイツと知り合って、と、友だちになって、だから──)チラリ
イケメン「……………」ぐぬぬ
男「…?」
114: 以下、
男(やっぱり変だ。コイツさっきから顔が強張ってる気が、する?)
イケメン「………」プルプル
男「ど、どうした? お腹でも痛い…とか?」
イケメン「おれよりも…」ボソボソ
男「えっ?」
イケメン「ふぅ。いや、なんでもないさ」
男「そ、そっか」
イケメン「ちょっとトイレに行ってくる。ここで待っててくれ」くるっ
男「あ…」
男「……どうしたんだろう、アイツ」
イケ友「いやー楽しいわぁ! こんな楽しいのってどれぐらい久しぶりだろうなぁ」
男「え?」
115: 以下、
イケ友「最近はおれも私生活が忙しくて。あーバイトしてんのよおれっち」
男「へー…」
イケ友「それも含めて、イケメンの様子も気がかりだったし。ここんところ元気なかったしなー」
男(あれ、確かあの人も…女さんも言ってた気がする)
イケ友「けど、なはは。こうやって出掛けて寄り道して、ワイワイとふざけあって笑いあうっつーの?」
イケ友「──良いよなやっぱ。楽しいよな!」
男「………」
ああ、そうだ、これは楽しいことなんだ。
ふざけあって笑い合って会話して。仲良く買い物に出かけること、それは、楽しいことなんだ。
男「…なのに」
アイツは何故か苦しそうだった。
いつもらしさが無くて、それはまるで──自分の知らないアイツの一面を見ているようで。
116: 以下、
男(多分周りが心配してることって、突っ込み成分が足りなくて元気なかったことだと思うけども)
今は違うはずだろう、なんて。
今は俺が居るじゃないか、なんて。
俺ばっかり楽しい気分になってちゃ、駄目なんじゃないかって。
──俺はアイツを喜ばせることが、出来るんだから。
男(だって俺はアイツの……と、友達なんだから…!)
イケ友「どったの? 男ちゃん?」
男「…ごめん、俺アイツの事追いかけなくちゃ」
イケ友「えっ?」
男「帰ってもいいから、もしかしたら、逸れるかもしれないし……だから、その、じゃあ!」ダダダ
イケ友「おー? バイバイ! 今度漫画持ってくるからよー!!」
男「あっありがとう! それじゃあ!」
117: 以下、
〜〜〜〜
イケメン「ふぅ」キィ
イケメン「…らしくないこと考えてしまったな。気をつけよう」
「──おい…! 見つけた!」
イケメン「うん? ああ、男君。わざわざ迎えに来てくれたのか」
男「はぁはぁ…ち、違う、そうじゃなくて…」
イケメン「そうなのか? あれ、イケ友の奴は?」
男「そ、それは今は置いといて…はーぁ、ふぅ。俺の話を聞いてくれ…!」
イケメン「あ。うん、どうした?」
男「……っ…」
コイツは昔の俺と同じなんだ。
自分の知らない友人の顔を見たくない。それはコイツであっても、同じこと。
イケ友とコイツは仲が良かった。
なのに、俺ばっかりイケ友と話してしまって、だから。
118: 以下、
『──最近は私生活が忙しくってよ』
忙しくて笑えてなかった彼の笑顔を、見てしまったから、
なのにぽっと出の俺が彼を笑わせてしまったから。
男「ごめん。何もお前のこと考えてられてなかった」
イケメン「え…」
男「お前だって思うところはある、はずなんだよな。そんなの俺が一番解ってることなのに…」
気にすることなんてない。
コイツは俺よりも人間関係が豊富で、自分よりも強いメンタルを持ってるはずだ。
けど、俺は謝りたいんだ。だって、俺はお前の──
男「…と、友達だからちゃんと言っておきたいんだ」
イケメン「……」
男「だ、大丈夫! あの人は…お前の友達は、ちゃんとお前の友人だよ。お前のことを気にかけてて、大切に思ってた…」
119: 以下、
お前が元気がなくて、彼を笑わせてやれなかったとしても、
今は俺がいる。だからお前は元気じゃないか、だから何時だって──
男「…そう、悲しむなよ。お願いだからさ」
イケメン「男君…」
男「なっ?」
イケメン「…そうか、気づかれてしまったんだ。ははっ、情けないな本当に」
男「……」
イケメン「じゃあ君は察しててくれたんだ。オレの気持ちを」
ああ、お前はとんでもなく変態だけど。
友達を、あのイケ友を大切に思ってるぐらいは分かってたさ。
やさしいやつだって事はわかってる。
イケメン「そっか。じゃあ君にお願いしても良いんだね」スッ
男「うん?」
イケメン「──このハリセンで思いっきりオレを叩いてくれることを、望んでもいいんだね」
120: 以下、
男「…………」
イケメン「ああぁぁぁあああ…ぞくぞくするよぉ……いや、本当に悔しかったんだ。実にね」
イケメン「アイツはオレよりも君の突っ込みを引き出せている。くっそ、なんだよアイツはぁ…!」ギリリ
イケメン「紹介しておいて何だけど、今は凄く後悔しているんだ。君の突っ込みはオレだけのものなのに…っ!!」
男「えっと……」
イケメン「さぁ早くオレをこれで叩いてくれ! かまわないさ、人目があろうとオレは今は望んでいる!」
イケメン「そして誓おう! これからはアイツよりも数倍良くボケてみせると! さぁ男君! さぁ!」
男「……」スタスタ
イケメン「えっ……ど、何処行くんだいっ?」
男「……」チラッ
イケメン「うんっ? はぁはぁ…」
男「……変態ッ!!」
イケメン「ふぉぉぉぉぉおおお!!」
121: 以下、
男「俺が馬鹿だった! お前がこんなことで悩んでたなんてッ…てっきり俺はイケ友のことを思ってたとばっかり…!」
イケメン「え? まぁ嫉妬してたけど…」
男「突っ込みにだろ!」
イケメン「うぅんうん…むひっ…いいよぉ…その突っ込みぃ…」ニヨニヨ
男「きめぇ!」
イケメン「ははっ。今に始まったことじゃあないだろ?」キラ
男「ううっ…俺の心配を返してくれ…っ」
男「ん?」チラリ
イケ友「はわわっ…イケメンが男ちゃんに調教されてる…!!」ガクガクガク
男「えっ!? ちょ、まっ!」
イケ友「ご、ごめんそんな関係だったんだな…う、うん…お、お幸せに!」ダダダダ
122: 以下、
イケメン「ふぅ。オレと君の関係におそれをなしたか……所詮アイツはその程度だ」
男(友達……やっとまともな友達が……)
【次の日はちゃんと漫画本を貸してもらえました。けれど新品でした】
第四話『俺のツッコミ依存症』
124: 以下、
教室 放課後
男(最近よく周りから視線を感じる)
男「……」チラリ
「キャーあの男子がそうなの?」
「マジで〜なにそれ〜」
男「うっ……」ササッ
男(はぁ〜なんでだろう、やっぱりアイツとつるんでると目立っちゃうのか)
男(まぁ仕方ないこと、だよな。俺みたいな根暗な奴が…こう…調子に乗ってるとか思われるだろうし)
男(分かってたことなんだよ。そうそう、分かってたことなんだって)ギュッ
男(……ただ友達になっただけなんだけどな。違うんだけどな)
「こらホモ野郎」
男「……うぇ?」
125: 以下、
女「アンタに頼みたいことがあるんだけど……なによ、その顔は?」
男「え、あ、あれ? …俺に言ってる?」
女「ハァ〜? アンタ以外に誰が居るのよ」
男(ホモ野郎って。まぁ図書室での件を見ればそう思われるかもだけど…)
男「へ、変なことを言うなよ…俺はホモじゃないっ」
女「いやホモでしょ」
男(ぐぬぬ)
女「それで、今日の放課後空いてる? またちょっと勉強教えて欲しいんだけど」
男「えっ? なんで俺が…一人でやればいいじゃん…」
女「一人で勉強して何が変わるっていうのよ。ばっかじゃないの?」
男(そうかもしれないが、実に態度が気に食わない)
126: 以下、
女「だからあんたに──」
「ちょいとお待ちな。お嬢さん」
女「──……あんたはお呼びじゃないわよ変態」
イケメン「おやおや。どうやらオレが知らないうちにお二人さん、随分と仲がよろしくなったようで?」
男「ち、ちがうっ」
女「……。そうよーあんたが愛しい彼氏を放っておいたうちにね」
男「おまっ!? しかも彼氏ってなんだよ…!」
イケメン「……」じぃー
女「なによ」
イケメン「何考えてるんだ?」
女「あんたには関係ないことよ」
127: 以下、
イケメン「彼のことでオレが関係ないことなんて無いけどな」
女「あら? 案外あんたって束縛すんのね。そういうの嫌われるわよ」
イケメン「友人として単に疑問を持っただけだ」
女「友人? ハッ! 一緒にプリクラ取りに行っておいて、友人? もう少しまともな冗談をつきなさいよ変態」
イケメン「……」
女「……」
男(な、何だこの状況は…っ)アワワ
「ねぇーあの状況なになにっ?」
「女とイケメン君が取り合ってるんだってー」
男(何を!?)
イケ友「あああっ…とうとう女っちが乗り出してきたんだ…っ…どっちが飼い主として格があるか勝負をしに…!」
男(あんたは何を言っているんだ…!)
128: 以下、
男(こ、ここは両方の知人として仲裁に入らなければ…っ)
男「あ、あのー二人共…」
イケメン「なに、男君」
女「なによ、男」
男「あのさ、その、取り敢えずこっち見てくれない二人共…?」
イケメン「用がないなら口を出さないでくれないかな」
女「あんたが入ってきちゃ面倒になるのよ、黙ってて」
男「ご、ごめんなさい………」
男(やっぱり二人には勝てなかったよ…)
イケメン「…女。君は昔からオレのことを嫌ってたよな」
女「へぇーあんた気がついてたの? びっくりしたわ、アホだと思ってたのに」
イケメン「モチロン。君はすぐに表情と口が出るからね、まるわかりだった」
女「なによそれ。あたしのことアホだと言いたいワケ…?」
イケメン「オレは何も言ってないよ。ただそう思ったのなら、くく、そうなのかもな」
129: 以下、
女「よく言えたものねあんた…ッ…顔は良いもんだから、見境なく変態行為をしまくってたあんたがよく…!」
イケメン「勝手な解釈だ。とんだ君の勘違いだと思うけどな」
女「勘違い? 小さい頃の数々の変態行為を、あたしの勘違いだと言い切る気? バカ言わないでよ、全てをここでばらしてあげましょうか? ん?」
イケメン「ああ、良いとも。オレは何も恥じゃあない」
女「……。そう、あんたはそういうふうに割り切るのね。それが【正しいこと】だと思うことにしたのね」
イケメン「………」コクリ
女「あっそ。それもあれなワケ、コイツのお陰ってワケ?」ビシッ
男「…?」ビクッ
イケメン「どう捉えるかは君の勝手だ。昔と同じく、君の勝手だ」
女「そうねあたしの勝手だわ。それにあんたにどう思われようとも、あたしは勝手に動くだけ」
イケメン「…なにを」
女「いい? あたしはずっとあんたの【ああいった所】が嫌いだった。それをアンタ一人で納得されても、こっちが納得できない」
女「──何時かまた後悔するかもしれない。そんなの、見ててムカつくのよ。苛つくのよ」
イケメン「……」
130: 以下、
女「コイツに何を救われたかは知らないけれど。ハン! どこぞの知らない男性と直ぐに抱きつくやつよ? あんたを裏切るかもしれないじゃない」
イケメン「なんだそれ。初耳だぞ」
男「…」ギクリ
女「うるさいわね。今は関係ないでしょ」
男(じゃあバラすなよ…)
女「あたしは納得するまで絶対に目を離さないから。あんたがまた変態行為に走らないよう、あんたと──コイツから目を離さない」
男「……」
女「憶えておきなさいよ」
イケメン「……」
女「………」
イケメン「…ははっ、オレのこと心配しすぎだろ女」
女「ばっ違うわよ変態! 何よ心配なんてしてない! ふざけるな変態!」
イケメン「はいはい。わかったわかった、君は本当に優しいやつだよ。幼馴染でよかった」
女「してないってーの! こんのっ……あんたからも何か言ってやりなさいよ!!」
男「お、俺っ!? いきなりこっちふるなよ…!」
131: 以下、
女「あんたの言ったことなら犬になれって言っても、コイツは犬になるわよ!?」
男「ならねーよ!」
イケメン「わん」
男「なるんじゃねーよ!」
イケ友「ッ…!? や、やっぱり…!!」ガクガクガク
男「ち、ちがっ」
女「ほーらやっぱり変態じゃないっ!! そうやっていっつも変態プレイしてるんでしょ!? そーなんでしょ!?」
イケメン「舐めるなよ。こんな程度でオレと彼の関係を見破ったつもりか」
女「なんっ…!?」
イケ友「首輪…ムチ…ロウソク…?」
男「違うから!! ちょっと二人共黙ってくれ! あと君も!!」
シ───ン…
男「あ……」
132: 以下、
女「び、びっくりした」
イケメン「ど、どうした大声をあげて…?」
イケ友(あ! そういえばまだトイレ行って無くね!? 漏れる漏れる…!)ダダダ
男「あっ…いや、その…えっと…」
男(教室中が静かに…もともとこの二人の会話に聞き耳立ててたし、俺が大声をあげたせいで…っ)
じぃー
 じぃー じぃー
 じぃー じぃー じぃー じぃー じぃー
男「俺はっ…違う、から……ホモでもなくて…それに飼い主でも…」
男(きもち、悪い……頭が痛くて、視線が、見られてて、ずっと我慢してたけど、やっぱ)
男「そんなに怒るなって、コイツは……色々と悩んで、たから………」
男「だから、だから、俺は友達だから……ちゃん、と……とも……だち………」ガクッ
男(あれ───視界が、まっくら───)
133: 以下、
ガタタ!
イケメン「……!! 男君!!」
女「きゃあ!? ちょ、あんた大丈夫!? ねぇ! ねぇってば! ちょっと……! 早く保健室!」
イケ友「スッキリスッキリ──んっ!? 男ちゃんどったの!? みんな退け!! 早くおれの背中に乗せろ!」
イケメン「しっかりしてくれ! くそっ、なんでこんなこと───」
男(──声が遠く…)
プツン
134: 以下、
保健室 昼休み
男「モグモグ」
イケメン「ほぉー」じぃー
男「モグ…モグ…」
イケメン「ふーん」じぃー
男「ゴクン」
イケメン「ふむふむ」じぃー
男「なんだよ…!」
イケメン「どうした?」
男「食べてる様子をマジマジみるなっ」
イケメン「何でこんな所で食べてるんだろうと思って」
男「俺の勝手だろ…あと見るな、気が散るから…」
イケメン「そんなの俺の勝手だ!」
男「ああ勝手だなッ!」ドン!
135: 以下、
イケメン「くぅぅうう〜〜〜〜っっ!!」プルプル
男(気持ち悪いな相変わらず…)
イケメン「一旦倒れた後でも、君はキレッキレだなっ! んん〜〜〜!!」
男「な、なぁお前さ…」
イケメン「おお。どうした? まだオレはボケてないから喋らなくてもいいぞ」
男「いや喋らせろよ。会話はさせろよ」ダン!
イケメン「んふふっくふふっ」
男「今の何が嬉しかったの…?」
イケメン「いつものことだ。君が突っ込んでオレが喜ぶ。ただそれだけのこと」
男「ぐっ…!!」
イケメン「おっ? どうした?」
男「そ、それだよそれぇ! お前はなんとも思ってないのかよぉ!?」
136: 以下、
イケメン「ああ『あの噂』か。オレと君が付き合ってるとか何とかの」
男「ッッ…!!」カァァァ
イケメン「何故照れるんだい?」
男「照れてないわッ! 恥ずかしがってるんだよ! ああもうっ…それが原因で周りから見られてたのかよ…!」
男(さっき女さんが全部説明してくれた。くそぅ…なんだよそれ…付き合ってるとか頭おかしいんじゃないか…!)
イケメン「人の噂も七十五日。いつの日か廃れていくさ、ズズ、お茶美味しいな…」
男「なっげーよッ! 七十五日って一学期過ぎるわ終わるわ勝手に茶を飲むなっ!」ぱしっ
イケメン「ほぅ…いいなぁ…こうやって君のツッコミを聞き入れながら、昼過ぎの一杯…ふむふむ」
男「だからお前はそれで良いのかよっ…周りからほ、ほもぉ…ぅ…あ、扱いされてるんだぞ…!」
イケメン「別に。そうなる時は、それなりの覚悟はしてたつもりだった」
男「えっ?」
137: 以下、
イケメン「オレにもわかってたさ。あの時に、あの【契約】のために君を呼び出して、大声でああいったことを言ってしまって…」
イケメン「こうやって連れ添っていればな…些か勘違いされてしまうことぐらい」
男「お前…」
イケメン「だけど収まりが聞かなかった。あの時のオレはオレじゃ無くなっていた」
イケメン「仕方ない、仕方ないことだったんだよ。それはきっとな…」
男「……」
男「うん。しかたなくねぇよ? 分かってたならもっと上手く伝えられただろっ」
イケメン「あ。やっぱり?」テヘペロ
男(コイツ…ッ)ピキィ
「はいはい騒がない青春ボーイ共」ガラリ
138: 以下、
男「せ、先生…」
イケメン「あ。先生こんちにわ」
先生「こんにちわ。さてキミ、キミだよキミ」
男「え、はい? 俺…?」
先生「ここは人が居なくても保健室。騒いじゃ駄目だし、復活したなら出て行きな。飯も食っていいとは言ってないけど」
男「…それは今更じゃないですか…」
先生「そりゃそうだ。今更言い出したんだ、今更ながら認めて出て行ってもらわないと」
男「お、俺はここでの昼食が当たり前だったから…」
先生「私も当たり前だったよ。けど、それは今までのキミだ。今のキミはきっと以前とは違ってる」
男「………」
先生「こんな立派な友達ができたんだ。とっとと屋上でも教室でもいいから、そこで食べておいで」
139: 以下、
男「…と、トモダチ…」チラリ
イケメン「トモダチ?」
男「と、友達だろ!」
イケメン「イェース!」
男「いちいちキメ顔するなっ!」
先生「…おやおや、キミがこんなに大声を出すなんて」
男「くぅぅッ!」カァァァ
イケメン「侮っちゃ困りますよ先生。彼の実力はこんなもんじゃあない、未だオレにだって計り知れないものがあるんです」
男「かっ過大評価するなって! そりゃお前が言ってるだけだろ…!!」
イケメン「オレだけが認めて何が悪い。また他人か、オレじゃなくって他人が大切なのか」
男「そのまた勘違いを引き起こすようなことを…っ!」
イケメン「事実を言ったまで。オレは嘘付かない、ただボケたいだけだし」ムッスー
140: 以下、
男「お前がそうで良いとしてもだなぁ!? 俺はどれだけの問題を背負わなきゃいけないか!」
イケメン「じゃあどうしたら良いか言ってみてくれ。君はオレにどうして欲しいのか言ってみてくれよ」
男「ええっ? じゃ、じゃあその…友達なら…一緒に飯食べに行ったり…その、ゲーセン巡ったり……?」
イケメン「ああ、一緒に池袋でクレープ食べて服を買ったり?」
男「そうそう。そして最後は観覧車に乗って互いの、これデートじゃねーか!!」
イケメン「なんだよオレにとやかく言う割にはノリノリだな」
男「意味のわからないこと言うなよ…」
イケメン「じゃあ一回辞書でノリノリって言葉調べてこい!」
男「ノリノリの意味で困ってるんじゃないッ!」ダン!
先生「ブフッ」
イケメン「おっ?」
先生「あっははは! なにキミ達、漫才でも目指す気っ?」
141: 以下、
男「えっあっちょ…聞かれてた…っ」ボッ
先生「そりゃ大声でやられたら聞きたくなくても、くすくす、なーんだ案外楽しそうじゃんキミ」
男「楽しそうなんてっ」
先生「いやいや。やっぱり前と変わってキミは一段と面白くなったね。先生安心したわー」
男「ううっ…からかわらないでくださいよ…」
イケメン「褒めてくれてるんだと思う。素直に受け止めよう」ぽん
男「黙っとけ変態…!」
イケメン「なんと失礼な」ゾクゾク
男「お前っ…この状況を楽しんでるだろっ? 自分がホモだって疑われても、それを楽しんでやがるだろ…っ!」
イケメン「またとないネタじゃないかっ!」
男(………くそぅ…もうこいつの友達やめたい…)サメザメ
イケメン「ふっふっふっ」ニコヤカ
142: 以下、
先生「……。あーれれぇー? そういえばーぁ? プランターに水あげるの忘れてたかもーぉ?」
男「? 何急にアホの子みたいになってるんですか先生…?」
先生「アホの子いうな。って違う、さっさと入れて来なよキミ。それがキミと私の約束でしょ」
男「えっ? あ、良いんですか……?」
先生「いいよ別に。水あげるぐらいキミにならきっと出来ると先生信じてるし」
男「出来ますから……じゃ、じゃあやってきます」チラリ
イケメン「ん? いってらっしゃ〜い」ヒラヒラ
男「う、うむ」ガララ
ピシャ
イケメン「………さて」
先生「おっと。キミから話ふる? いいよ別に、手間が省けるし」
143: 以下、
イケメン「結構これでも交友関係広いんで。先生、オレのこと怒ってるでしょう?」
先生「誰から聞いたの?」
イケメン「先生の顔を見て判断しました」
先生「ああそういった意味で広いと…うんうん、面白い子だ。実にあの子向きだよ本当に」
先生「コーヒーいる? 特別に作ってあげるけど」ガタ
イケメン「オレ飲めないんで大丈夫です」
先生「そ。まー私が淹れても美味しくないし、後であの子に入れてもらおっと」
イケメン「…先生はいたく気に入ってるんですね、アイツのこと」
先生「そう見える?」
イケメン「見えるから聞いてます。ま、それでも譲りませんけどね。オレのですから」
先生「キミも大層入れ込んでるみたいで。クスクス」ギィ
144: 以下、
イケメン「ええ、まぁ…それなりにですけど」
先生「一応先生だからね。教師としてキミに言っておかなくちゃいけないことがあるよ。平気?」
イケメン「……。はい」
先生「ホモなの?」
イケメン「…ツッコミはオレの持ち場じゃないんですけど?」
先生「その反応は違うみたいね。残念残念」
イケメン(何がだ…)
先生「冗談だってば。とにかく色々と噂になってるのは知ってるよ。些かいい噂だとは先生は思わないな。キミがどんなつもりかは知らないけれど」
イケメン「アイツに迷惑は掛けないつもりです」
先生「……」
イケメン「もう掛かってる。なんて言わないでくださってありがとうございます、けど…オレはそうしてみせます」
イケメン「オレは約束をしました。アイツにはとびっきりの楽しい青春を送らせてやるって、そう、誓ったんです」
145: 以下、
先生「じゃあ今の状況はキミにとって……?」
イケメン「はい! またとないチャンスなんですよ! これでアイツの周りに異変が起こり続けて…」
イケメン「──今までにない青春が訪れるはずなんです!!」
先生「すごい自信だ」
イケメン「自信がなきゃやってられません。だってホモだって疑われてるんですよ? ははっ、本当にまいってしまう…くふふっ」
先生(その割には嬉しそうだけど)
イケメン「…けど、今回のことは本当にオレの失態です。最悪すぎて、彼のことをちゃんと見れてなかった」
先生「……」
イケメン「ここまで彼を苦しめていたなんて。本当にっ…本当に……っ」ぎゅっ
先生「そうだね。君は後先だけを考えてて、今の彼を見てやれてないと思う」
イケメン「…はい」
先生「あの子にとって人の視線は毒だよ。慣れてないものを摂取しすぎていたら、そりゃ倒れてしまう」
イケメン「っ……はい、すみません…」
146: 以下、
先生「…あの子はさ、あんな顔で人付き合いが不器用だけどね」
先生「結構頑張り屋なんだ。誰よりも人を見ているし、そして誰よりも寂しがり屋」
先生「自分なんてこの世に必要なんてない。なんてこと、考えちゃったりするんだよ。中二病だね」
イケメン「…ははっ、そうですね」
先生「この学校に入学してから一年間ちょっと。ずっとあの子と、この保健室で会話し続けていたけれど」
先生「…見てて分かる。あの子は少しずつ明るくなってきてるんだ」
イケメン「そう、ですか?」
先生「うんうん。なってるよ、だから君はもっと自信を持って、言い切ってほしい」
先生「──今、本気で君をあの子から引き離そうと思ってる、この私の気分を遮るほどの、言葉をね」
147: 以下、
イケメン「言葉を……」
先生「どうかな、私は一度決めたら本気でやるタイプだし。必ず君とあの子を引き離すよ」
イケメン「………」
それはオレの希望だった。
薄い膜の中で一生閉じこもってるはずだったオレの唯一の希望。
イケメン「──オレはアイツと人生が関わったことだけに感謝したい」
彼の言葉だけがオレにとって必要であって。
空気や食事や己の価値でさえ、きっと彼には敵わない。
イケメン「…オレを怒るなら、もう少しだけ待ってください。オレとアイツを引き離すなら、もう少しだけ猶予をください」
イケメン「アイツは……アイツは凄いやつなんだ…」
だから、もう少しだけ希望に寄り縋らせて欲しい。
148: 以下、
彼がオレで困ったら、命懸けで助けよう。
彼がオレを嫌っても、命を賭けて謝罪しよう。
彼がオレを好きになったら、命で駈けて寄り添おう。
イケメン「──オレは必ず満足の行く高校生活を送らせてみせますから」
それがオレの【誓い】であって【契約】で──
──心からの償いだ。
先生「…その心意気よし。特別に怒らないで置いてあげる」
イケメン「! そ、そうですか…?」
先生「うんうん。キミは正しい。だから自信を持ってあの子に青春を送らせてあげて良いよ」
イケメン「あり、がとうございます…なんだかやっと落ち着けたような、気がします」
149: 以下、
先生「……。頑張りな、応援してあげるから」
イケメン「はいっ!」
先生「さて、外で気まずそうに佇んでるあの子を呼んであげないとね」
イケメン「んっ?」
男「っ〜〜〜!?」ビクッ
イケメン「なんだよ、早く入って来なよ」クイクイ
男「……っ…」プイ
先生「あの子には保健室で昼食を食べる条件として、花に水をやること…と私が言ったんだよ」
イケメン「そうなんですか。じゃあ今度からオレもやっていいですかっ?」ガタ
先生「良いけど二人もいらないよ?」
イケメン「オレも今日からここで飯を食べるんで。んじゃ決まりってことで!」ガララ
150: 以下、
男「……な、なんだよ…っ」
イケメン「オレも今日からここで昼食食べるよ」
オレは知っている。君は優しい人間だ。
男「なっ…こ、ここは…っ……俺の特別な場所でそうそう他人は…」ゴニョゴニョ
先生「あらま。特別な場所だなんて嬉しい事言ってくれるね」
男「ぐっ!」カァァァ
教室で倒れ目覚めてから、君はずっとオレのことを心配してて。
わざと大声を出して突っ込んでくれていたことを、オレは気づいてる。
イケメン「オレは特別じゃないの…?」
男「特別なんかじゃねぇよ! お前なんてただの……た、ただの…っ」
イケメン「ただの?」
男「……ト、トモダチ…だけど…」
知っているんだ。君のやさしさを。
だからもっと周りにも知ってもらおうよ、君の凄さを。
151: 以下、
イケメン「じゃー良いじゃん決まりだ!」ガシッ
男「ちょっ!」
イケメン「オレは今日からお前と食べる! お前とたーべるたべたべたーべるっ!」クシャクシャ
男「か、髪をくしゃくしゃにするな…っ」
まだまだオレと君の──青春は続くのだから。
イケメン「そういえばそろそろ…みんなが来る時間か」
男「え…?」チラッ
女「い、いま……男を食べるとか言ってなかった……?」カタカタカタ
イケメン「それがどうした?」
男「ちょっちがっ…!」
女「ッ……このホモ野郎ども!! 全く懲りてないじゃない死ね!!」
152: 以下、
イケメン「誤解するな女。オレはホモじゃない。オレは、な」
女「……まさかアンタがガチなの……?」
男「違う!! それはさっき前説明した…!?」
女「少しでも一回でも信用した自分が馬鹿だった……死ね変態!! 腐れもげろ!!」ダダッ
男「ちっちが…なんだよもー!? お前のせいだぞ!? お前のせいで!」ばしばしばし
イケメン「はっはっはっ」
男「ったく……それに、その…急にお前、とか呼ぶなよ…っ」
イケメン「嫌だったかい?」
男「なんか、お前らしく、ない…と、思う」
イケメン「そっか。でもそれがオレだよ男君」
男「そ、そおなの? まぁー悪くないけどな…うん…」
153: 以下、
イケメン「……」
男「で、でもちょっと心の余裕とか欲しい…」
イケメン「ん、そっか。じゃあしばらくは元通り、君でいいかな」
男「…お、おう」テレテレ
先生(ホモっぽいなー)ズズズ
イケメン「よし。じゃあ昼食を食べようか、弁当を持ってくるよ」
男「う、うん」
イケメン「待っててくれ。おっ? イケ友じゃないか」
イケ友「おっすー! 男ちゃん元気なった?」
イケメン「ああ、これから弁当を取りに行く所だよ」
イケ友「えっ……取りに行かされてる……そういった命令を…?」
イケメン「えっ?」
男「なんか聞こえたけど、予測で答えるけど、違う!」
イケ友「あわわわっ」ガクガク
154: 以下、
先生「クスクス、ほらほら青春ボーイ共。あとそこの壁に隠れてるガールも」パンパン
女「…!?」ビクゥ
先生「昼食べるなら、さっさと食べよう。先生もお腹すいたからね」
男「い、良いんですか?」
先生「今日だけ特別ね。あとで美味しい珈琲入れてもらうから」
男「っ…ありがとうございます」ペコ
イケメン「どっか行ってたじゃないのか」
女「う、うるさいわねっ! あんたには関係ないでしょ!」
イケ友「きょ、今日の新刊っす男ちゃん! 読んで読んで!」
男「だからなんで新品なのこれ…?」
ガララ ───……パタン
【この後みんなでワイワイ昼食を取りました】
第五話『俺の突っ込み仲間』
158: 以下、
イケ友おもしろいwww
これはイケメンも妬きますわ
また待ってまーす
160: 以下、
俺にもこんなイケメンが欲しかったよ
おつ
161: 以下、
図書室
男「…えっと」
眼鏡「……」
男「ど、どうも…その先日はご迷惑をお掛けしました…」
眼鏡「……」
男「色々とお騒がせしたっていうか、あの、えっと…」モゴモゴ
眼鏡「……」ガタ
男「っ!」ビクゥ
眼鏡「……」スゥ
男「えっ? 隣に? あ、ありがとうございます!」ペコォ
ストン
男「えへへ」ニマニマ
162: 以下、
眼鏡「……」じぃ
男「あっ! そのですね…! あの、実は貴方が…実はこの作品の作者様なのかって事を…」
眼鏡「……」じぃー
男「聞きたくて、です、ね…えっと…」
眼鏡「……」コクリ
男「やっぱりですかっ!? うわーぁ! やっぱりそうだったんですね! うお〜…っ!!」キラキラ
眼鏡「……」スッ
男(うぉぉっ…マジかぁ…俺の予想はあたってたのかぁ…! あの時キチンと感想言っといてよかったぁ!)
眼鏡「……」サラサラ
男「この前はゴタゴタしすぎてて聞きそびれちゃってて、すみません、ご迷惑じゃなかったら…」
眼鏡「……」スッ
男「うぇ? ええええええっ!? こ、これって恋覗の新刊…ッ!? し、しゅひゃもサイン付き!?」
163: 以下、
眼鏡「……」コクリ
男「なぜゆえにこのようなものをっ!?」
眼鏡「……」カチャ
男(発売日は二週間後だというのにお、俺はその新刊を手にして!? しかもサイン…!?)パァァァ
眼鏡「……」ゴソゴソ
男「と、とにかくありがとうございます…!! もう感動してて、俺あの、その、ありがとうございます…!!」
眼鏡「……」スッ
男「家宝にします──……え? なんですか、コォッ!? コココココ!? コレは!?」
眼鏡「……」コクリ
男「恋覗のツンデレ幼馴染、十六分の一ふぃぎゅあ!!!!???」
眼鏡「……」スッ
男「つ……たぁっ…なん、て…クオリティなんだ……嘘だろうっ…え、なんですかっ? …えっ? くださるんですか!?」
164: 以下、
眼鏡「……」コクリ
男「ちょ、ちょっとそれは! 流石にこのようなモノをタダでもらうなんて…!」
眼鏡「……」シュン
男「!? いやっあのっ違います! 欲しくない訳じゃなくって、」
眼鏡「……」チラ
男「ううっ」
眼鏡「……」スッ
男「…い、頂いてもいいんですか?」
眼鏡「……」コクコク
男「ありがとうございますゥ…!! ぐっ、なんて素晴らしい出来なんだ…!」
眼鏡「……」ゴソゴソ
男(テレビの上に置こう。うん、そうしよう)キラキラ
165: 以下、
眼鏡「……」スッ
男「っ!? なんですかそれ!? アワビの形をしたペンケース! ヒロインの持ち物じゃないですか!」
眼鏡「……!」パァァ
男「作中で一行ぐらいしか説明されてないマイナーネタを商品化したんですか…!? な、なんて無謀な…」
男(だがそんなチャレンジ精神旺盛が大好きだ!)
眼鏡「……」ぐいっ
男「んんっ!? い、頂いても…!?」
眼鏡「……──」
眼鏡「……」コックリ!
男「ありがとうございます!」
眼鏡「……」ゴソゴソ
男「うぉぉぉっ一見機能性皆無の商品なのに…凄くペンが吸い込まれるかのようにしまえる! 凄い!」
166: 以下、
眼鏡「……」ヒョイ
男「それはまさか!? 主人公があまちゅを目指すために、気合を入れる証として作ったTシャツじゃあ…!?」
眼鏡「……」ゴソ!
男「ヒロインのお面!? それにこれは…互いの約束を指し示すあわびペンダント!?」
眼鏡「フンスー」ガサガサ
男「…っ…」ドキドキ
眼鏡「……」スッ
男「ッ───……!? なんだって、それはまさか作中で極秘中の極秘。主人公のあざの原因を作ったもの…?」
〜〜〜〜〜
男「まさか…これを全部頂けるなんて…あ、あはは…ありがとうございます…」
眼鏡「……」コクリ
男(重い…持って帰れるかな…というか何処に持ってたんだこの量を…)
167: 以下、
男「あの、何時もこんなに商品を持ち歩いてるんですか…?」
眼鏡「……」フルフル
男「えっ? じゃあなんで今日は…」
眼鏡「……」スッ
びしっ
男「お、俺? ──あ、もしかして…俺のために持ってきてくれたと…!?」
眼鏡「……」コクリ
男「嘘。本当ですか? うわわっ、なんでそこまで…?」
眼鏡「……」
男「っ…?」ワクワク
眼鏡「…〜〜〜っ……」ボソボソ
168: 以下、
男「えっ? 嬉しかったって──この前の俺の感想が……?」
眼鏡「……」
──コクリ
男「そ、そんな! 俺にとって当たり前な感想を入ったまでですし…!」
眼鏡「……」
男「あの、あんな俺の感想で喜んでいただけたのなら、えっとファン冥利に尽きますっ」ドキドキ
眼鏡「……」テレテレ
男「……」
男「…先生は凄いですね。若いのにこうやって仕事をしているなんて」
眼鏡「?」
男「あ。勝手に先生って呼んじゃってますけど、大丈夫ですか…?」
169: 以下、
眼鏡「……」コクリ
男「ありがとうございます。その、先生ってまだ高校生ですよね? 図書室に居るってことは」
眼鏡「……」コクリ
男「…なのに素晴らしい作品を書いて、世間に認められて、自分の力で活躍している…」
男「自分と年がひとつしか変わらない。なんて信じられないです、むしろ同じ人間なのかって思うぐらいに…」
眼鏡「……」
男「俺は全然人とも上手く喋れなくって、考えや思いを他人に伝えるのが苦手で…」
男「…最近は色んな人と出会って、ちょっとかわれたかな、なんて思ったりするんですけど」
男「けれど色々と周りが凄いのに、自分はやっぱりいつも通りの俺なんだなぁーなんて…」
男「……結局は迷惑をかけてしまうんだなって」
眼鏡「……」
170: 以下、
男「ごめんなさい、なんか愚痴っぽくなってしまって。こんなこと、言うつもりじゃなかったんですけどね」
眼鏡「……」
男「俺、先生の作品が大好きです。キャラクター皆が思い思いに生きてて、自分に嘘なんてついてない」
男「逆境も後悔も全て押しのけて、自分の幸せを追い求める姿が──俺は大好きなんです」
男「俺だったらあの時絶対に挫けてる。けど先生の書くキャラは皆乗り越える、頑張って死に物狂いで立ち向かうんだ…」
男「だから大好きなんです…頑張ってください、大変でしょうけれど応援してますからっ」ペコリ
眼鏡「……」
男「だっ、誰よりも応援しますから!」
眼鏡「……」カチャ
男「…?」
眼鏡「……」ポロ
ポロポロ…
171: 以下、
男「えっ!? ど…どうしたんですかっ!? 俺変なこと言っちゃいましたっ!?」
眼鏡「……」フルフル
男(あわわっ! お、俺が変なことを言っちゃったから…先生が泣いてしまった…!!)
眼鏡「……」ぐすっ
男「あの、そのぉ〜…す、すみません! なんか、困らせてしまいましたか…?」
眼鏡「……」カチャ
ゴソガサゴソ
男「本当にごめんなさい! あーもう変なコト言わなければ良かった…っ」
眼鏡「……」スッ
男「…え? なんですかこれ、色紙───」
『正直に生きることに躊躇いを持つな!』
男「これ…主人公がライバルに言い放った名台詞……」
172: 以下、
眼鏡「……」
男「俺、このセリフ超大好きなんです……無理だって解ってるのに、あまんちゅになんかなれないって…」
男「主人公が一番わかってて、それを指摘されてもなお……ライバルに言い返したシーンで…すっごく心に響いて…」
眼鏡「……」ポンポン
男「あっ……俺にくれるんですか…? でも何で俺なんかにコレを…?」
眼鏡「……」
──君に贈ろう。この言葉を…
男「……」
先生は一言も発しなかった。
けれど綺麗に整った横顔は、眼鏡の奥にある澄んだ瞳は、
そして風に流れる前髪はさらさらと音を伝えてくる。
──そして微笑んでくれた。
173: 以下、
眼鏡「……」ニコ
男「あ…」
先生は応援してくれた、のだろうか。
こんなチンケな一般人を、何も出来ない一人のファンを。
男「…あ、ありがとう…ございます…」
感謝することしか出来ない。
ありがとうございますと、連呼することしか出来なかった。
眼鏡「……」ファサァ
男「え、あっ…」
彼は着ていた上着を俺に、羽織らせると。
静かに足音をさせないまま去っていった。
174: 以下、
男「………」
眼鏡「……」フリフリ
段々と小さくなって、ドアに隠れて見えなくなるまで、俺は見届け続けた。
けれどその背中はいつまでも大きく見えた。
男「グス、っはぁー……なんか慰めてもらった……」
いつか先生に御礼をしなくては。
だからまた今度会えた時、沢山の感想をあの人に伝えよう。
それが唯一出来る、俺の素直な言葉なのだと思ったから。
男「──ありがとうございます、先生」
「…なにやってんの、あんた」
175: 以下、
男「ん?」
女「……」ジィー
男「ああ、居たんだ…気付かなかった」
女「そう。けどその前に、あんた何やってるか教えなさいよ」
男「え?」
女「…男子生徒の上着を大切そうに抱きしめて」
女「ペアネックレスっぽいものを握りしめ、ティシャツも手袋も靴下もペアルックっぽいので」
女「しかもアワビの形した…ものにペンを何本も突っ込んでて」
女「どーして嬉しそうに笑って、ちょっと泣きそうになってるワケ?」
男「ちっちが!」
女「……」スッ
女「……変態」
176: 以下、
男「待って違うこれは色々とワケがあって…!」
女「…ワケ?」
男「そうだっ! ほらこの前の眼鏡の人いただろ…っ? その人にもらっ…」ギクゥ
女「……」ソロリ
男「最後まで聞いて! 貰ったとしても理由がある!」
女「…なに?」
男「それは──」
『正直に生きることに躊躇いを持つな!』
男「───っ……それは! 眼鏡の人を俺が喜ばしたから!」
女「…悦ばした?」
男「そ、そうそう! 感想を言って、ああっえっと…今日はたまたま出会ってから…」
177: 以下、
女「…感想…たまたま出会った…」
男「それからサインを書いてもらって…色々高価なプレゼントを貰って…」
女「悦ばせる…感想…サイン…高価なプレゼント…」
男「あの人はすごい人なんだ、ほら! 知ってるじゃん…っ! 俺が好きだって…!」
女「……好き?」
男「だからあの人も悦んでくれてて、俺もそういったふうに喜んでくれてたなんて思わなくて……ふふっ」
女「…そう」
男「それからあの人も応援してくれたんだ。俺のことを、こうやって」スッ
女「色紙…?」
『正直に生きることに躊躇いを持つな!』
女「……………………」
178: 以下、
男「…俺も頑張ろうと思ったんだ。自分に正直に生きようって」
女「そう。そうなのね、あんたはそうなろうと決めたワケね」
男「お、おう。まぁ…難しいと思うけど…」
女「別に良いんじゃない。あんたが本当に決めたのなら、本気でそうなると思ったのなら」
女「──男性とイチャコラして感想を言い合って、その御礼にプレゼントを貰うことに躊躇いを持たないのなら」スッ
男「……」
女「けど。まぁ………」
女「……あたしは変態だって思うけど」
スタスタスタ ガラリ パタン
男「………」
男「………あれ?」
【ファンと作家の流れを説明するべきだと気づいたのは数日後でした】
第六話『俺のツッコミ不在』
185: 以下、
朝 下駄箱
女「おはよー」
「おはようさん」
女「よいしょっと」ガタ
パサリ
女「ん」ヒョイ
【ラブレター】
「おっ? おやおや〜?」
女「…………え?」
昼休み
男「ええっ? 今日は保健室駄目なんですか…?」
先生「身体検査の準備があるからね。ということで、今日は違う所で食べな」
186: 以下、
男「…そうですか」
先生「じゃあ全学年女子のパロメーター覗き見してく?」
男「じゃあってなんですか、じゃあって。んなの見ませんよっ」
先生「残念、まぁまた明日おいでー」
男「……」フリフリ
男(はぁ〜、今日は屋上で食べるか。でもあそこ時折、カップル居たりするんだよなぁ)スタスタ
男「その時は黙って教室で食べよう──」
ガチャ
男「──うっ…太陽が眩しい…」
男(お。誰も居ないじゃん、らっきー)キョロキョロ
男「…今日は一人でお昼ごはんだ」ストン
187: 以下、
男(アイツ昼は用事あるって言ってたし、でも、あれ?)もぐもぐ
男「でも俺に何か言いたいことあるって言ってた気が……なんだっけ?」
イケメン『言い忘れそうだから、誰かに頼んで君に伝えるよ』
男(あー…そんなこと言ってた気がする。でも誰かって、誰だろう?)
男(話しやすい人だったら良いな。けど大丈夫だろう、アイツはそういう所配慮してくれる奴だし)
ギィ ガチャ
男「…ん」チラリ
女「……」コソコソ
男(うわぁ…またこの人かよ…)
女「っ!」ぴくっ
男(知らないふりしとこう。黙って黙々と食べていよう)モグモグ
188: 以下、
女「……」キィ パタン
男「もぐもぐ」
女「……」スタスタ
男「こくっこくっ、ぷはぁ」
女「……」ストン
男「…っ」ビクゥ
女「…ちょっといいかしら」
男(なっ何で隣に座る…? なんで話しかけてくる!?)
男「な、なに?」
女「あんたしか居ないから聞くんだけど。あたしを屋上に呼び出したのって、あんたなの?」
男「えっ……呼び出してないけど……?」
189: 以下、
女「……」チラリ
男「っ?」
女「そ。良かったあたしの勘違いで」プイ
男(なんだよ急に…呼び出しなんて俺がするわけ──ハッ!? もしかしてアイツからの言付け役は…この人!?)
男(なんつー人選してるんだよ! 信じた俺が馬鹿だった! アイツは何も分かってない!)ブルブル
男(くそぅぅっ……今度買ってもらったハリセンで…っ)
女「悪戯だったのかしら。うん、そうよねきっと」スッ
男「え…あ…ま、待って!」
女「なっなによ?」ビクゥ
男「その…やっぱり俺…かもしれない…かも…?」
女「えっ!? 呼び出したのあ、あんただって言うの…!?」
男「いや、正確には俺じゃないって言うか…」
190: 以下、
女「なによそれ……どっち!? どっちなのハッキリしなさいよ!」
男「うっ」
女「いちいち怖がるなっ! あんたのそういう所前々からどうかと──」
女「ぐっ──違う違う…そうじゃなくって、あたしも怒るなってば…っ」イライラ
男「…ごめん」
女「えっ? い、いや別に謝らせたい訳じゃなくて…そのぉ…えっと…」
男「…ハッキリ言うから。その呼出は……多分俺だと思う」
女「え──……ちょっと多分って何よ。全然ハッキリ言ってないじゃない! どっちなのよ!?」
男「お、俺ですっ」
女「うっ」ドキッ
男(覚えとけよあの野郎…)サメザメ
女「そっそうなんだ…へぇー…」
191: 以下、
男「…ごめん、迷惑だったと思うけど」
女「えっ!? まっまーねぇ! このあたしに時間を取らせるなんて、ほんっとばっかじゃないのっ?」
男「あ…うん…」シュン
女「ばっ違う違う違う!? 今のは言い過ぎたってあたしも思ったから! うん!」わたわた
男「いやそれぐらい言ってもらったほうが助かるっていうか…時間を取らせたのは悪い気分になるし…」
女「そっそこまで卑下しなくても良いんじゃない…っ?」
男「え、そう?」
女「まぁうん……そういうのって大切だと思うし、ううっ、きちんとした想いだから、何言ってるのよあたし…っ」
男「…………」じぃー
女「なっなによ!? そんなにコッチを見ないでよっ…! あたしだって変なコト言ってるのわかって…!」
男「い、いやいや…違うちょっと感動してて、いい人だなって思って」ボソッ
192: 以下、
女「っ……何よそれ! あたしのこと今までどんな風に思ってたワケ!?」
男「言っちゃなんだけど……怖い人だと思ってた」
女「何時も怒鳴って悪かったわね! 生まれつきこんな性格なのよっ! というかあんたが変態なことばっかしてるからじゃない!」
男「ぐっ…確かにそのとおりだ…けどだからこそ色々勘違いのせいもあるかなと…」
男「俺ってあんまり女子との会話が上手く出来ないし、そもそも会話自体苦手で…誤解を弁解するあれもなくて…」
男「段々と勝手なイメージが出来上がっちゃってたんだけど……そっか、そうだよな、だってアイツの幼馴染なんだもんな」
女「……」
男「──悪い人じゃないことぐらい、わかってたのにさ」
女「………あ…」ドキ
女「な…何よ急にわかったようなこと言って──そんな事言ったらまた、前みたいに勘違いされるわよあたしにっ」
193: 以下、
男「え? 前みたいに?」
女「なっ………ナンデモナイワヨ…」ゴニョゴニョンニョ
男「お、俺は素直な感想を言ってるまででっ……別に勘違いされるようなこと、言ってない、と思うけど」
女「ふぇっ!?」
男「俺だって不仲な人が居るのは嫌だ……うん、嫌だって思う」
女「…………」
男「だからもう少し、嫌なら断っていいけど、その……仲良く慣れたらなぁ〜って…思ったりはするんだけど…?」
女「…な、なによ…変なこと言わないでよ…っ」かぁぁ
男「…変なことだと思ったなら…ごめん」かぁぁ
女「あ、アンタはあの変態が好きなんでしょ…?」
194: 以下、
男「だっだからそれは勘違いなんだってば! 前に保健室でも言ったけど、アイツはタダの友人関係だって…!」
女「全然信用出来ないわよ!! いっつもあーんなにべったりくっつき合ってるじゃない!」
男「そう見えるだけだって! だぁーもう、さっきも言ったけど俺は単純にあんたと──」がばぁ
女「っ!」
男「──なかっよく、なりたい、って……思っただけ、なんだけど……っ?」
女「ッ…ばっかじゃないの」プイッ
男「だって俺は素直に生きるって、心がけようと決めたんだ」
女「素直にっ? ……あーあの図書室でのやつ? 色紙に書いてあった…」
男「そう。あの時もちょっとした勘違いがあって、またすれ違いが起こったんだけど…」
女(じゃあ結局あの眼鏡の上級生は誰なのよ…)
男「…けど俺はわかったんだ。勘違いも、すれ違いも、そんなのって俺がしっかりすればどうにか出来るんだって」
195: 以下、
女「…どうにか…?」
男「素直になれば、ちゃんと思いの丈を言い合えば──俺が明確に言い切ればよかった話なんだよ」
女「素直に言い切ればって───」
男「………」じっ
女「あっ……」
男「…だから、さ」ポリポリ
女(うそっこれってもう告──嘘嘘嘘嘘!? えーっ!? あっやばっ顔が熱い…っ)
男(女子生徒の友達か……保健室の先生以外にやっとまともに話せる女性が出来る、のか……?)ドキドキ
女「…じゃあなによ、あ、あたしと仲良くなって…」ボソボソ
男「う、うん」
女「あんたは…それがいいって決めたワケ…? す、すすすっ素直なっ! 気持ちってワケ!?」びっしぃぃぃ
196: 以下、
男「ま、まぁそうなるかな」コクリ
女「………ぉぉぉ…っ」パクパク
男「…駄目、かな」
女「づぁっ!? っ!? あのーそのーっ……えっと、ぐぬぬっ! だぁああああああああ!!」
男「!?」
女「だめだめだめだめ!! まだよく互いに知り合って無いっていうのにっ!! そういうのは早いと思うわけよ!?」
男「そ、そこまで考えることか…?」
女「ッ!? そこまで考える事でしょ!? 何言ってんのよあんたばっかじゃない!?」
男「ッ……! そうだよな、何言ってんだ俺……ごめんっ」ペコリ
女「そーでしょ…! ほらまたそうやって勘違いであたしを怒らそうとしてる!」
男「あ、ああ…そうだよな……俺が一番わかってなきゃいけないことなのにな…」
197: 以下、
男(忘れてた。忘れてしまっていた、友人ってのは簡単にできるものじゃない。そんなの俺が一番理解してたことじゃん…)
女(びっくりした…付き合うってことは簡単な事じゃないでしょ! ……べ、別に付き合うって決めたワケじゃないけど…)
男「アンタの言うとおりだ。俺またやっちまうところだった、許して欲しい」
女「ま、まぁ理解してくれたのならイイケドっ? 今度またやったらゆるさないわよ…っ!」
男「うん。だからはっきり言うべきだよな、こういう時はきっちりと」
女「あぇっ?! あ、あああうんうんうん…っ」
男「…聞いてくれ。俺はアンタと仲良くしたい、けど、今がまだ駄目って言うのなら──」
男「──ど、どうか…それまで…待っててくれたら…その、嬉しいっていうか」
女「っ〜〜〜〜!」ドッドッドッドッ
男「…いいかな?
198: 以下、
女「おっ…にっ……なッ……うううっ…!」
女「にゃっ! ういっいっあっ……」
男「……っ…」ドキドキ
女「…………………………ハイ」コクリ
男「ほっ本当に? 良いの!?」
女「何よ……別に良いわよ……後に決めるのはあたしだし…っ」
男「うぉぉっ……良かった、はぁー……」
女「………っ……」モジモジ
男「じゃ、じゃあさ。お近づきの印にっていうか、まぁ単純に聞きそびれたことがあるんだけど」
女「なによっ?」キッ
男「うっ。何で怒ってるんだ…?」
女「怒ってない!」
199: 以下、
男「そ、そうだよな。勘違いしない勘違いしない……よし、今更申し訳ないけど聞かせて欲しいんだ」
女「えっ?! な、なにを…?」
男「え、だから──俺に言うべきことっていうか」
女「言うべきことって──……っ!? 今の気持ちを言えってこと!?」
男「気持ち? いやいや、言葉だよ言葉」
女「言葉って──このヤロウまたあたしを辱めるつもり!?」
男「アイツにどんなことを言うように頼まれたんだ!?」
女「あんたが言ったんじゃないの!!」
男「はぁっ!? 俺は別に何も頼んじゃ……もしかしてお、俺に大きく関することなの?」
女「そうに決まってるじゃない! あ、あんたがこうやって……コクハク…シテキタンダカラ…っ」
200: 以下、
男「え? なに?」
女「ばぁ──言わないわよ変態!! 何言わそうとしてんのよッ!」バシッ
男「痛ぁ!? そ、そんな怒らなくてもいいだろっ? 少しだけでも仲良くなったんだから、別に怒らなくても…っ」
女「怒るわよッ!? 怒るに決まってるじゃない!! 乙女の感情もわかったもんじゃないわねほんっとばっかじゃないの!!」
男「ええー……ご、ごめん…そんなに言いにくいことを頼んだのか俺…」
女「そうよあったりまえじゃない! ったく、これじゃ先が思いやられるわねっ! なっ仲良くなんか、なれないわよ…っ」
男(女友達難しすぎない!? …気軽に言付けすら出来ないのかよ…うぅっ…本当に先が思いやられる…っ)
女「っはぁーもうやだやだ…」パタパタパタ
男「……。何も顔真っ赤にして怒ること無いのに…」ボソッ
女「べっ別に真っ赤になんてなってない!!」
男「…なってるよ」
女「ぐっ……もうサイテーよあんた! デリカシーがなさ過ぎっ! あっ…あたしだって、ちゃんと応えたいのにっ、あっ違くて、そのっ」
201: 以下、
男「えっ?」
女「っ〜〜〜〜ッッ……だからぁっ! そのっ、あたしだって、このままじゃダメだと思うし…っ」
男「…え、何が?」
女「あ、ああ、あああんたがっ? きちんとこうやって想いを伝えてくれたのにっ! あたしがっ…ココで何も言わないのは、失礼だなっておもうワケ!?」
男(何のこと? 言わないとって、ああ、アイツからの伝言のことか?)
女「と、とりあえず今の気持ちを…えっと言葉だっけ…? いっ言わなくちゃなって、思うわけよ………」プッシュー
男「…どうも。じゃあ教えてくれたら」
女「っ! あ、ああうんっ……そのぉ〜……」モジモジ
男「…?」
女「あっあたしはっ! こんな性格だからっ、自分でも他人に迷惑をかけてしまうってのはわかってるし…」
女「たまに感情を上手くコントロールできなくて…い、色々と間違ったことをしちゃうのは重々承知なんだけど…っ」
女「で、でも……あんたがちゃんと想いを伝えてくれたこと、ってのには……す、素直に……っ」
女「…………うれしかった、ワケよ……」
202: 以下、
男「あっえっ? そ、そっか……さっきの俺の言葉、嬉しかったんだ」
女「ま、まぁね! …経験ほぼ無いからかもしれないけどッ!」
男(え、意外に友達少ないのかこの人…共感持てるな…)
女「だから別に嫌だってわけでもないしっ、これを機に色々と───気まずくなるのも嫌だって思うわけよ…っ」
男「…難しいもんだよな。俺も思う」ウンウン
女「で、でしょっ? けどね、だからこそ今ここで言わなくちゃイケナイと思うのよ。ちゃんと…しっかりと、でしょ?」
男「おおっ! そうだよな……しっかりと、だ」
女「ハッキリと言っておくわ──」
(──あんたには少しだけ興味はある)
(あいつを、幼少期から変わってしまった変態を、今の今になってどう変えたのか)
(もう誰にだってあいつを治せないと思っていた。身の内に閉じこもったアイツを助けだした、この男は──一体何者なんだろうって)
203: 以下、
女(──もしかしたら、あたしもまた……)
この目付きの悪い男と、付き合ってしまう未来の果てがあったとして。
そんなありえない結果から、また手が届かないと信じきっていた──思い描いた理想のあたしを。
あたしは見つけ出せるかもしれない。
女(…なんてね)
男「おーい?」
女「ううん。別に、ちょっと考えこんでただけ。何もない、けどただ一つハッキリと伝えられることはあるわ」
男「…ああ、うん。頼んだ、そろそろ聞いておきたいと思うから」
女「……」チラリ
男「………?」
女「……はぁー」
「これから弁当作ってあげよっか?」
204: 以下、
男「……え…」
女「その、あんまり上手じゃないけど、どうかなって思う───」
男「めっちゃ気持ちわるッ!!」
女「───…………ん?」
男「なにそれっ…えっ? 言いたかったことって、それ!? 人に頼んでまでやることかよ…っ!!」ガクブル
男「何考えてんだアイツ…いやマジでごめんなさい…そんなこと言わせるぐらいなら…ちゃんと俺が聞きに行くべきだった…ッ」
男「──本当にごめんっ! 気持ち悪いから、そのこと忘れてくれ! 俺も後でちゃんと怒って───おく……から………」
女「……」ポロポロ
男「……なん、で泣いてるの……?」
女「そっか。ごめん、あたしが急にこんなことしても、ひっく……ぐすっ…よねっ? だから、忘れて、今のも、ぐしゅっ」
205: 以下、
男「ま、待って。ちょっと待って…なに、何が起こってるんだ…?」
女「違う…あたしが悪いんじゃない、やっぱり言うんじゃなかった───」くるっ
男「あ…」
女「──もう金輪際付きまとわないから、安心して」
ダダッ
男「…………何が起こったんですか……?」
きぃ …パタン
女「ひっぐっ…ひっぐっ…ばか、ばか、ばかっ……気持ち悪いなん、て…そこまで言わなくてもいいじゃない…っ」ポタポタ
女「あたしなりに頑張って考えてっ……けど、違う、文句言うのは違うわよねっ…あたしが悪いんだもん…」カサッ
女「あ……ポケットの中に…らぶれたー……ッ…! こんなの、」
女「……………あれ? 放課後に待ってます?」
206: 以下、
女「……」
『放課後、五時に屋上にて待ってます』カサリ
女「……………うぅんと、えぇと」
ポクポクポク チーン
女「あ〜あ! 時間、間違えたんだっ!」ポン
女「って、何やってんのよあたし─────ぃぃぃぃ!!!」
女「あわわっ! あわあわあわわっ!! ちょー!? こりゃ勘違いってことで済まされる問題じゃ──ううぅー!?」
女(じゃ、なに、さっきまでのアイツとの会話、勘違い!? なによどうやってそう器用に勘違い起こる!?)
女「泣いて、出てきちゃったじゃないの……あたし……っ」
女(やばいやばいやばい)カァァァ
女「絶対に変な女子だと思われたっ! あーうー! どうしようどうしようどうしよう!」ぐしぐし
女「ッ……」グググ
女「───に、逃げないっ! あ、あああああやまりいくわよっ! 当っ然じゃない!!」
207: 以下、
女「っ……!」くるっ
ガシッ
女「はぁーふぅー、回して開ける。回して開ける。そして謝る、謝る、謝る。……お、おっけ」グググ
女「──ご、、ごめんさっきのことなんだけど、」
ガチャッ! 
男「待ってくれ! やっぱさっきのは何処か勘違い──ごはぁっっっ!!」ズドゴン!
女「……」
男「」ピクピク…ピク…
女「……あっやぱっ凄い鼻血の量──って!? ちょっとー!?」゙ダダッ
女「ごめっごめんなさい! こんなことになるなんて、うそっ! 本気で大丈夫っ!?」ユサユサ
男「…ひと、ごろし…」
女「ちょ、しっ失礼なこというなっ! あーもう、ごめんなさいってば!」
男「」ガクリ
208: 以下、
女「まっ…待って気を失うのはほんっとやばいと思うわあたし! 保健室に行かなくちゃ──」
イケ友「よーっす! 先生に聞いてここに居るって聞いたんだけど、男ちゃーん」
女「…」
男「」ダクダク
イケ友「イケメンが放課後はゲーセンに……行こうぜって頼まれて………」
女「…」ダラダラ
イケ友「……WINNER、女っち」びしっ
女「違うわよアホ!!!!」
【この日を境に少しだけ彼女は優しくなりました】
第七話『俺の洒落にならないところだった突っ込み』
214: 以下、
放課後
イケメン「ラブレター?」
男「そう。貰ったらしいんだよ、どうも」
イケメン「そうか。さて何処のどいつかな、オレの男君を奪う輩は」
男「……」しらっ
イケメン(スルーなんて高等技術を使うようになったんだね君は…っ!)ゾクゾク
男「…それじゃ本題に入ろうと、思う」
女「……」
男「…本当に俺らを頼るの? なんか、間違ってないそれ?」
女「だ、だって他にお願いできる人居ないじゃない…」
男(仲の良い友達とかに頼んでもらえばいいじゃん…)
女「……」シュン
男「…えっと…」
イケメン「ふむ。とりあえず要点をまとめてから話を進めよう──女はこのラブレターの相手に、お断りを告げたい」
215: 以下、
女「……」
イケメン「もともと断るつもりだったが、放課後になって今更怖気づいてオレらに助けを求めてきたと」
男「お、おい。もっと言葉を選べよ」
イケメン「もちろん選んでるさ。ただ、相手の想いを切る勇気を忘れかけている女には、ちょうどいいと思うけどな」
女「…うっさいわね、余計なお世話よ」
イケメン「そうか」
女「………」
イケメン「………」
男「…喧嘩するなって」
イケメン「ははっ。してないさ」
女「…はぁ。確かにあたしはお願いしたけどさ、今からでも断ってもいいのよ。明らかに面倒臭がってる奴もいるし」
イケメン「誰のことだろう?」
男(お前だお前)
「──うぇっ!? おれはめちゃくちゃ乗り気よっ!? みんなも同じっしょ!?」
イケ友「なぁなぁ告白だぜ愛のコクハク! しっかも今どきレターときたもんだ、すっげー!」
216: 以下、
イケ友「なぁっ! 男ちゃんと女っち?」
男&女「う、うん…」
イケメン「? どうした二人共?」
男「…べ、別になんでもない」
女「……」プイッ
イケ友「おや〜? おれ嫌われちゃったべか〜ぁ…?」
イケメン「ともかく。幼馴染として言えることだけれども、女なら普通に断るぐらい出来るだろう?」
女「……」
イケメン「なんだその顔。初めて見るな」
女「うっうっさい!」
イケメン「そうか。うるさいなら帰るとしよう、男君ゲーセンでプリクラ撮りに行こう」
男「ま、待て待て。ちゃんと話聞いてやれって…幼馴染なら分かってやれるだろ…?」
イケメン「……。思ったんだがやけに彼女のかたを持つね、君。なにかあったのかい?」
217: 以下、
男「なっなんでもないって……俺のことより彼女のこと、心配してやれよ。そんなつっけんどんしないでさ」
イケメン「…………………」じっ
男(めっちゃ見てる…なんだよ…!)ドキドキ
イケメン「…わかった。君がそうまで言うのなら協力しよう」コクリ
イケ友「おれも全力ですけっとするぜー?」
女「あ……ありがと」モジモジ
男「…良かったな」
女「っ……う、うん」
男「お、おう」
イケメン「………」じっ
男(だからそんな見るなってばっ…!)ドッドッドッドッ
〜〜〜
イケ友「てぇーことでっ? 調べてきましたぜ、相手の情報!」
男「え…?」
218: 以下、
イケメン「ありがとな。いつも助かるよ」
男(何時もってなんですか…?)
女「あ。コイツ同じクラスのやつじゃない」
イケ友「だべ。ちなおれのダチでもあるぜい」
男「…というか、そもそもなぜ手紙に名前を書いてなんだろう…」
イケメン「緊張して忘れてしまったんだろう。あるある、オレだってたまに君への思いが空回りして──」
男「面識はある感じ? いや、同じクラスならあって当然か…」
イケメン(ふぉぉぉぉっ)ゾクリ
女「…えっと」
イケ友「ちっちっちっ。男ちゃーん、その質問はなっちゃいないぜっ?」
男「えっ…なんで?」
イケ友「コイツは学校でもゆーめーな、ガチでやばめの極道モンって言われてるわけよ〜」
男「えっ!?」
イケ友「…と、噂されるほどに顔が怖いやつなのだ」
男(なんだそれ…全然他人事に感じない…)
219: 以下、
女「何度か会話したことは、ある、と思う。けどラブレターなんて貰うほど仲の良いワケじゃないけど」
男「…ラブレターなんてその程度の関係で十分じゃないか…?」
女「そ、そうなの?」
イケメン「本当に?」
イケ友「マジかーさっすが男ちゃん! ものっしりーぃ!」
男「えっ待ってなにその反応! 皆違うの…?」
女「あ、あたし全然経験ないし…告白されるなんて、今までほぼ無かったからなんとも…」
イケメン「誰からでも普通に貰ってたな」
イケ友「左に同じく!」
男(この相談解決無理な気がしてきた)
イケメン「さっきイケ友が言った通り。男君には敵わないが、彼もまた中々の凄みを持っている。それ故にか、堅物として噂は聞いてるよ」
男「おい何て言ったお前。でも、そんな人が…告白するってなると、わっ、やばいっ、すっげー想いが強そうに思えてきた…っ」
女「ちょ、ちょっと!? 不安を煽るようなこと言わないでよ…!! 今でもいっぱいいっぱいなんだから…!」
220: 以下、
男「ご、ごめん」
女「えっ? あ、うん…」
イケメン「……。まぁ結果は決まってるんだ、ここは一つ作戦を決めよう」
イケ友「なになになにっ?」
イケメン「女は元より断るつもりだ。なら、断ることを援助する形で手伝えばいい」
男「どうやって?」
イケメン「──偽物彼氏だ!」
女「…え」
イケ友「はいはいはいっ! おれやりまーす!」
イケメン「却下。友人なら交友関係バレてる可能性がある」
イケ友「なっなるほど…っ! す、すっげーな思いつきもしなかったぜ…ッ」ゴクリ
男(今の当たり前じゃん!)
イケメン「消去法としてオレか男君。どちらかが嘘の彼氏を名乗り、堅物君をどうにか諦めさせるしか無い」
男「…待って、ちょっと待って。そういのって後腐れなく終われるものなのか…?」
221: 以下、
イケメン「まぁ禍根は残るだろうね。偽彼氏を名乗った奴も、そして女の方にも」
男「…もっと他の方法を考えようって。なんか、そういうの嫌だ」
女「……」
イケメン「いやこれしかない。正直に言えばオレはこれしか譲歩しないつもりだよ」
男「お、おい。だからそういう風に邪険な扱いするなって…っ」
イケメン「ならオレらを頼らず友人を頼るべきだ。そもそも自分で自分のことを出来ない奴に、有無を云わせる必要はない」
男「…お前」
イケメン「違うかい? 男君?」
男「……かもしれない、けど」
女「良いわよ別に。あたしだって他人事みたいな立ち振舞するつもりなんて、これっぽっちもないし」
イケメン「……」
女「文句も言える筋合いがないのもわかってる。けど、これだけは言わせて」
イケメン「…なんだ」
女「ニセ彼氏、変態がやりなさい。絶対にそれだけは譲れない」
222: 以下、
男「おい…誰も特をしない作戦なんて…!」
女「あんたは黙ってて。ごめん。お願いだから」
男「…うっ」
イケメン「偽彼氏はオレをご所望か」
女「けどあんたはそれでいいの? 明らかに面倒臭いことが待ってそうだけど」
イケメン「慣れてるさ。構いやしない」
女「…そう。ありがとう、感謝するわ」ペコリ
イケメン「後でジュース奢れよ。缶じゃなく、ペットボトルだ」
女「箱買してあげる。なら、とっとと台本みたいなの決めちゃおうかしら」
男「……」
チョンチョン
男「…な、なに?」
イケ友「こっちこっち」くいくいっっ
〜〜〜
223: 以下、
自動販売機
ガチャコン ガタガタ
イケ友「ほい男ちゃん。珈琲好きっしょ?」ヒョイ
男「うっわっとと」
イケ友「いっひひ〜おれは普通にファンタグレープだぞ〜」ピッ
男「あ、ありがと」テレテレ
イケ友「いーのいーの。こーいうのって、持ちつ持ちつじゃん?」
男「…持たれず、かな」
イケ友「そうそれそれ! だぁーやっぱ頭いいよなぁ男ちゃんはっ」カシュッ
男「……」
イケ友「ぷっは〜ぁっ」
男「…あの二人ってさ」
イケ友「うん?」
男「…なんであんな仲が悪いんだ?」
224: 以下、
イケ友「えっ!? 仲悪いのかアイツ等!? うっそーん!?」
男「…ごめん忘れて今の」
イケ友「そりゃないでしょ男ちゃん。仲が悪い、そりゃ駄目っしょ男ちゃん。だから聞けなかっとことにはしなーいの、わかる?」
男「うぇっ? い、いや…単純に俺の気のせいかも知れない。仲悪いならニセでも彼氏彼女なんてやらないだろうし…」
イケ友「ビンゴ。だよなー仲悪いなら、あんな風に語り合ったりしないわけなのだってばよ」
男「……」
イケ友「べつに男ちゃんが気にすることなーいんじゃない? 二人の問題、アイツ等の問題、おれら無関係だべよ」
男「…うん」コクリ
イケ友「それよりも今だぜ今! この作戦無事に終わらせてやろうぜー?」
男「…そうだよな」
男(けれど──それでいいんだろうか? なにか、上手くいかない気がする──なんて……)
225: 以下、
吹けば吹き飛ぶようなチリにも満たない、小さな予感。
たかが出会って一年にもならない俺が二人を心配しても、何ら無意味だということは理解している。
暖簾に腕押し。本当にただ空回りしてるんだと。だけど、
彼女が抱える問題。
アイツが抱える問題。
それはきっと、見て見ぬふりをして、なかったことにしてはいけない。
長年取り除かれることもなくただ溜まり続けていたモノは決して──
単純ではなくて。現実を見定めることが難解なものへと変貌する。
ただえさえ、俺が認識する世界も重くて大変なのに。辛くてキツイのに。
─このままでは簡単に失敗するんじゃないかと、そう思えてきてしょうがなかった。
男(…その時は)
俺に何が出来るだろう。
彼ら二人に、いや、彼にとって──友人の俺は。
友達として何をしてあげられるだろうか。いや、しなくちゃいけないだろうなって。
柄にもなく頑張ろうと思っている事自体、既に失敗へと近づいているんだと──今の俺は気づいては居なかった。
226: 以下、
屋上
女「居ないわね」
イケ友「相手は堅物くんだぜ。どうせ時間ピッタリに来るはずだと思う、一秒たりとも遅れたりしないなー」
女「…そう」コクリ
イケ友「つぅーこって。お二人さん頑張ってちょ、おれと男ちゃんは陰ながら見守っとくから」チェキン
イケメン「わかった。男くん、さっさと終わらせてゲーセンでも行こうな」
男「…頑張ってくれ、もし何かあったらその…早く合図を送ってくれたら、すぐに駆けつける」
イケメン「ははっ心遣い感謝するよ、きっとそうならないようオレは頑張ってみせるから」
男「……」コクリ
女「……」じっ
男「…その、頑張ってなんていうのもあれだけど…そのっ…が、頑張れ!」
女「…あ、ありがと」モジ
イケメン「…」
227: 以下、
イケ友「おっ。そろそろ時間だぜ、男ちゃんおれらは隠れて、んじゃいっちょ作戦開始だ!」ババッ
女「…? 何その手?」
イケ友「えいえいおーだっべ!? 皆で手を合わせて、空に向かってドーンする奴!」
男「ど、どーん…?」
イケメン「時間がないぞ皆。どうせなら始まる前に、もう一度気合を入れなおそう」すっ
女「はぁ!? 意味わっかんないけど…まぁそう言うなら…」すっ
イケ友「ばっちこい! 男ちゃんもほらはやくっ!」
男「…う、うん」すっ
ぴと!
女「っ〜〜〜!?」ババッ
男「ぇっ?」ビクゥ
女「なっなによっ!? どうしてっ…い、いきなり手に触れるわけ!?」
男「いやいやしかたないじゃん…! 今のどう考えても不可抗力…!?」
228: 以下、
女「そ、そうよね……ごめん、何言ってるんだろうあたし。だーもう、さっさとやるわよ」ぐっ
男「…お、おう」すっ
イケ友「むっふふーじゃあじゃあじゃあ作戦の成功を願ってぇ〜?」
えいえいおー!
男「…これでいいの?」
イケメン「案外なんとも、うん」
女「……」
イケ友「なにその微妙な空気! ったぁー乗り悪いってみなさんよー!」
男「今は隠れよう。何時来るかわかったもんじゃないし、出入口辺りの壁の裏にしとこう」
イケメン「オレ等は奥のフェンスで待ってよう」
女「わかったわ」
イケ友「なんだろなー…時代の流れつーの? 寂しいよなー悲しいよなー」トボトボ
229: 以下、
〜〜〜〜
イケメン「…惚れたのか」
女「は?」
イケメン「分からないでもない。ただあまりにも予期してたものより──早くて正直驚いてる」
女「待って。何を言ってんのよあんたは」
イケメン「男くんだよ。お前惚れてるだろう」
女「な…っ!? ば、ばっかじゃないの!? 例えそれが冗談だったとしても…あたしは絶対にゆるさないわよ!?」
イケメン「違うのか?」
女「…ち、違うわよ」
イケメン「その表情はなんだ。それにさっきから煮え返らない態度も気になるし」
女「…そんな表情に出てる? あたし?」
イケメン「不自然さは、当然のように男くんも気づいているよ。二人に何があったかは知らないけれども」
女「………」
イケメン「仲良くなることは構わない。けれど、不仲になるのは些かどうかと思う。まぁオレが言えたことじゃあないけど」
230: 以下、
女「べっ別に仲が悪くなるわけじゃないけど…っ」
イケメン「気まずくなってぎくしゃくとした関係になる可能性はあるだろう。そういうのって、彼は人より気にするはずだ」
女「あんたに言われなくたってわかってるわよ…!」
イケメン「ほう…よく男君のこと知ってるんだな女」
女「ばっ!! 違うってば!」
イケメン「くくっ」
女「チッ…馬鹿にしてるんでしょ、またあたしのこと」
イケメン「してないさ。さっきも言ったけど、初めて見るその表情は──悪いとも思ってない。むしろ面白いと思ってる」
女「馬鹿にしてるじゃない! こんの変態! 死ねあほたりん!」
イケメン「…なぁどうした。何かあったのか?」
女「っ………べ、別に。ただちょっとした勘違いというか…その…」モジッ
イケメン「へぇーまた?」
女「またって、い・う・な。そうかもしれないけど、言うんじゃないわよ!」
231: 以下、
イケメン「……」
女「はぁ〜…そうねここまで手伝って貰うんだし、言っておいても別にいっか」
イケメン「ああ。どうした」
女「…か、勘違いしちゃったのよ。昼休みに、時間間違えて屋上に来ちゃって」
女「こっこのラブレター? の相手っていうの? それを……あの目つき悪いやつが送ったんだと、思っちゃって」
イケメン「……」ぽかーん
女「色々と会話して、なんかすれ違いが起こって、そこでっ……あたしっ……ああっ…思い出しちゃった…っ」カァァァ
イケメン「…お、おお」
女「引いてんじゃないわよ! 引いちゃうのもわかるけど…っ!」
イケメン「いや。まぁ今はオレのことはどうだっていいけど、それで? 今はその誤解は解けたけれど、いまいち気まずいまんまだと?」
女「っ……怪我もさせちゃったし、ろくに顔も見れないっていうか…っ」
イケメン「実に面白いな。どうしてオレが側に居ない時に限ってそんなこと…」ボソリ
女「ちょっとー!?」
232: 以下、
イケメン「冗談じゃない。もっとオレが側位に居るときにやってくれそういうのは」
女「ここは冗談だって言っときなさいよ! サイテーよそれって!」
イケメン「ただえさえ見過ごせない人物が何人か居るっていうのに…」
女「えっ?」
イケメン「いや、なんでもない。そうか、そんなことがあったのか。それじゃあ仕方ないな」
女「…この際だから聞いておくんだけど。アイツってホモじゃなかったの?」
イケメン「ははっ。違う違う、彼は普通に一般的な男だよ。ただまぁ些か恥ずかしがり屋過ぎるところもあるけれど」
イケメン「勘違いしないでやって欲しい。彼は普通に優しいやつで、普通に可愛いやつだ」ニヨニヨ
女(ああ、コイツが怪しいのか。やっとわかった気がするわ)
イケメン「その気まずさ直ぐに解けるといいな」
女「…無理でしょ。互いにそんな雰囲気感じないし、このまま微妙になっていくわきっと」
イケメン「なわけない。それは流石に男くんを見くびりすぎだ」
女「…なによそれ」
イケメン「彼は意外に粘り強いってことだよ。すぐに怯えて一歩引いたところに逃げ込んでるように思えるけれど──そうじゃない」
233: 以下、
イケメン「彼はなんたって──アレがあるから」
女「あれ?」
イケメン「そう。オレが待ち望んで、それはもう長年ずっと恋い焦がれてきた──あの言葉を、彼は言える人間なんだ」
女「…それって」
イケメン「……」
女「…アンタが救われた理由?」
イケメン「ああ。そうとも、オレが彼に求めたものはそれだけだ。それだけで、たったそれだけで──」
イケメン「──世界は変わったんだよ、女」
女「……一体なによ、それって」
きぃ ガチャ
女「!」
イケメン「来たか。さて、さっさと終わらせようか」
女「…う、うん」
234: 以下、
「…時間通りに来たのだが。なにゆえ此奴が居るのだろうか」
イケメン(此奴!?)
女「……ゴクリ」
「私の恋文は読んでいただけたのだろうか。委員長」
女「読んだわ。だからこそここに居るわけじゃない」
「…なるほど、な。では一体この輩はなぜここに居る。理由を問う」
女「それは…」
イケメン「ん、話が早く済みそうで助かるよ。実はね堅物くん」
「……………なんだ」
女(えっ? コイツの名前堅物じゃないでしょ…!)
イケメン「コイツとはオレが付き合ってるんだ。すまないけれど、ラブレターの件は無かったことにして欲しい」
女「っ……」
「…。事実か委員長」
女「…そ、そうよ。今、あたしはコイツと付き合ってんのよ
235: 以下、
壁の裏
男「…」ズーン
イケ友「どったの男ちゃん?」
男「…いや、上手く聞き取れないけど。あんな風に告白された時、付き合ってる人物紹介されたら…滅茶苦茶凹むなって…」
イケ友「お〜?」
男「勇気を出して手紙を出したのにさ、いざ出向いてみたら、約束の場所には──彼氏と一緒にいる。トラウマもんだなって…」
イケ友「そお? おれ別に平気だけど、そういうの?」
男「……」
イケ友「ん〜っ……あのさ男ちゃん、好きになるってのは別にただ一生一人の女ってわけじゃないっしょ?」
男「…そうかもしれないけど」
イケ友「んだからよーそもそも傷つくってのを恐れてんのはさ、ハッキリ言って、今の現状を壊したくないやつが思うことのワケよ」
男「…おお?」
イケ友「それに関しては堅物君は平気。あいつは通名のとおり、駄目なものは駄目。はっきりとした答えを望んでんの」
イケ友「壊れてもいい覚悟をしてるんしょ。好きよそういった覚悟、だからダチになったわけだべっ」ニカッ
236: 以下、
男「…まるでふられる覚悟を最初からしてるみたいんだ、それって」
イケ友「イイトコつくね男ちゃん。おれっちも、最初からそう思ってたところ」
男「え? それってどういう…」
イケ友「振られるために告白したんだってば。多分、振られると分かってて女っちを呼び出したんだと思うべ?」
男「…可能性すら考えずに?」
イケ友「そうそう。曖昧で踏ん切りつけれない感情とか言葉とか、そういうの嫌うやつだから」
イケ友「今回の告白で自分に決まりをつける、なんて考えてそうだっちねぇ〜……」
イケ友「やっぱ女っちは良いおんなだなぁ。良い奴に好かれるよ、ほんっと」
男「……」
なにか嫌な予感がした。
根本的に何かが異なってるような、遮蔽物を感じる決定的な壁が見えた気がした。
自分の想いに踏ん切りをつける。
告白を利用して、イベントを起こすことによって曖昧な感情に終止符を打つ。
何故だろう。なぜだかそれは─自分はとても傲慢な気がしてならない
237: 以下、
何もしないよりはマシなのだろう。
うじうじと悩み続けて終わりの見えない終わりに身をおくことが絶対的に正しいとは思えない。
やらない後悔よりやって後悔。
彼女に告白した彼は信念にも近い感情でここに出向いてるのかもしれない。
そして友人もまた美徳としてそれを捉えているのだろう。
男(…けどたまったもんじゃ無い。それじゃあやる方だけが満足だ)
じゃあふる方には何も考慮は向けないのだろうか。
告白して満足感を得られるだけに頭がいっぱいで、ただえさえラブレターを貰っただけで戸惑い、勘違いすら起こしてしまう彼女のことを。
一体誰が助けてくれるのだろう?
告白がそれだけ正義となるのだろうか。
思いを伝えることだけが、全てにおいて優先された特別なことなのだろうか。
チャンスは一度きりなんて告白する方だけが持つ特権なんかじゃない。ふる方もまた、一回限りの特別な特権なんだ。
そしてそれはきっと、告白する人間よりも重たくて辛いことなんだ。
相手の感情を無碍に断る。とても、とても、大変なことなのに。
238: 以下、
もしかしたらモテる自分に得意げになる人間だって居るだろう。
他人から察する己の価値に酔いしれることも出来るに違いない。
けど、きっと彼女は違う。
心から申し訳ないと思うはずだ。ごめんなさいって、許してくださいと。
貴方の思いを断ってしまって、なんて。
男(じゃなかったら、あそこまで俺に対して申し訳ないと思うはずがない)
他人の思いに敏感なのは、凄く共感できる。
そしてまた──俺だけじゃなく、アイツもきっと──
「…あヤバイ」
男「え? ど、どうしたの?」
イケ友「雰囲気悪くなった…なんでだ…イケメン怒ってる…?」
男「っ…!」
嫌な予感は的中した。
〜〜〜〜
239: 以下、
イケメン「…どういう意味だ?」
「最初から良い答えがもらえると思ってなかった、と言っているんだ。やはり恋文を送って正解だった」
イケメン「最初から断られるとわかった上で、告白したのか?」
「無論だ。じゃなければ、そもそも告白すらしなかった。断られると理解していたからこそ、私はここに居る」
「何も付き合えるとは思ってない。元より恋人関係になれるとも思っていない」
「ただそんなことを思い描く己に──ただいっぺん足りとも肯定する要素がなくなれば、私は決着をつけられる」
イケメン「なるほどな。自分が救われたいがために、女に告白をしたのだと」
「ああ。そして願いは達せられた、実にいい気分だ。ありがとう委員長」
女「えっ……あ、うん…」
イケメン「何かいうこと無いのか、お前には」
女「べ、別に……あたしは無事に終わればそれだけで…」
イケメン「何が良いんだ。お前はどうする、ここまで悩んで考えた全ては全部ドブに捨てるつもりなのか」
女「ちょ、ちょっと…! いいんだってば、これですませられるなら──あたしは普通に大丈夫だから…」
240: 以下、
イケメン「同じクラスなんだ。まだ数ヶ月と顔を向き合わせることになる。体育祭だって文化祭だって、イベントもまだ残ってるんだ」
女「…っ」
イケメン「振った奴とそれら全て満足に過ごせられると思ってるのか。ましてや、こんな一方的で、なんら──」
女「…違うわよ、それは違う。そういって貰ったほうがあたしだって、早く立ち直れる」
女「これで満足できた…なんて言われたら、それでいいじゃない。もうこれっきりだって思えるじゃない」
イケメン「…………」
女「ありがたいけど、そろそろやめてよ。良いから、大丈夫だから」ぎゅっ
「どうした? 何か問題でも?」
イケメン「………いや、何もない」
「そうか。最後にひとつだけ君に言いたいことがあるんだが」
イケメン「オレに?」
「噂はほんとうだったのだな。君と委員長が付き合っていることが。一つ違う噂も耳にしていたが…まぁいい」
「お幸せに願う。私はそう願っているぞ」
イケメン「………」
イケメン「……勝手に決め付けるな…」ボソリ
241: 以下、
「ん?」
イケメン「そうやってオレをお前が定めた形に収めようとするんじゃない」
「なにを…」
イケメン「他人の意見に流されていれば心底楽だろう。けど、現実はそうじゃない」
イケメン「──オレは違う。お前が考えてるような、オレじゃない」
「っ……」ぞくっ
イケメン「自分の想いすら他人の意見で踏ん切りをつける人間に──」
イケメン「──わかったような事を口にされたくはないんだよ」
女「っ……」
イケメン「君は本当に信じてないのか? ありえない未来なのだと、何一つ考慮にいれることもなかったのか?」
イケメン「女と付き合える答えを。君は少しでも信じられなかったのかい?」
イケメン「──だとしたら正真正銘の馬鹿だ。オレは心から君を軽蔑しよう。そんな奴に告白された女が可哀想で仕方ない」
イケメン「身勝手に他人の価値観に付き合わらせたんだからな。一人よがりにも程がある、そんな他人を思いやれない人間が二度と女に近づくな」
242: 以下、
〜〜〜
イケ友「……」ぐっぐっ
男「な、なにやってるの…?」
イケ友「ん。喧嘩する準備、どっちも収まりつかないだろうし。イケメンも堅物くんも」
男「喧嘩っ? だ、だめだってそんなの!」
イケ友「んなこと言ったって…」
男「っ……」
イケ友「このままじゃ酷いことなるぜ? あそこまで言われちゃ、納得しても売られた喧嘩は買っちゃう奴だし」
男「…それでも、駄目だってば。喧嘩はよくない」
イケ友「じゃあイケメンに言ってやってくれよん。アイツ多分、やる気だぞー?」
男「そん、なこと! ない、だろ…?」
イケ友「わからん。けどありえなくは無いとおもうべ?」
男「ぼ、暴力で解決したら…それこそ、なにも上手くいかないだろ! それに彼女はこんなこと望んじゃいないっ!」
イケ友「──じゃあ答えろ男ちゃん」
男「っ…」ビクッ
243: 以下、
イケ友「男ちゃんに何が出来る? この状況であの雰囲気を割って入る程の、何かを持ってるワケか?」
男「…俺は…」
イケ友「うーん…おれっち馬鹿だからさ、殴り合いなんて慣れてるし、口争いも結構するけども」
イケ友「あはは。何が違う答えがあるっていうのなら、うん、おれっち信じてみてもイイケド?」
男「…イケ友…」
イケ友「おっ? 今はっじめて名前呼んだっしょ? やっりーイケメンより最初〜!」
男「え?」
イケ友「むっふふぅ。男ちゃんに内緒にしてたんだけど、イケメンと名前呼ばれるのどっちが最初か勝負してたワケよぉ」バシバシバシ
男「あいたっいていてっ」
イケ友「なぁ男ちゃん。できるか? あの状況を変えること、できちゃったり出来る系?」ガシッ
男「……っ…」
イケ友「おれで準備運動は出来たっしょ? なら、あとはアイツの事も頼んだぜぃ。くははっ、本当にいい友達できたなぁアイツ…」
男「なっ何を言ってるんだ?」
イケ友「わかるわかる。顔にかいてんよ、んじゃ、いっちょ行って来い!」ドン!
244: 以下、
男「どぅあっは!?」だだっ たっ…たたっ
男「………うっ」
イケメン「……」
「何が言いたい。それは私にたいして喧嘩をふっかけているのか」
女「…!」
男(まだ気づいてない──今なら戻れる、けど…)
男「……っ…」ドッドッドッドッ
男(俺に何が出来る──何も出来無い、怖くて足が震えてる。喧嘩なんて嫌だ、言い争いなんて嫌だ)
男(傷つけたくない。よく知らない人相手に、何かできることなんて無い…自分は何も出来無い───)
『──だからオレを満足させてくれ!』
男「…俺に出来ること…」
男「ッ……!」ダダッ
「──おい、イケメン!!」
245: 以下、
イケメン「っ……男くん…」
男「……」
イケメン「どうして──」
男「…どうしてって、わかるだろそれぐらいっ」
イケメン「っ…オレはただ、」
男「良いから黙ってろ、ここは……その、俺に任せとけ」ぐっ
イケメン「任せとけって…」
男「っ〜〜…!」
やばい。何も考えてない、けれど言うしか無い。口を開くしか無い。
俺が出来ることは、これしかない、はずだから。
男「…」
信じて言ってみるんだ。大丈夫、ほら今だってアイツは──物欲しそうに、笑ってる。
男「…調子に乗ってんじゃねーよバーカ」
246: 以下、
「ッ…なにを貴様!?」
男「お前じゃない。黙っとけヘタレ野郎」
「なっ──」
男「そこの二人に言ってるんだよ。なに勝手に話し進めてるんだ? 違うだろ、そうじゃないだろ」
男「イケメンは俺のモノなのに、勝手に彼氏にするんじゃない」
女「…は?」
イケメン「…………」
男「つまりはそう…うん、そういうことだ。わかってるだろイケメン?」
イケメン「………は、はいっ」
男「違う」
イケメン「えっ?」
男「──わん、だ」
イケメン「わんわんっ!!」
女「ちょっと───!!!?」
247: 以下、
男「三回回って…」
イケメン「わん!」
女「なっ何やってんのよあんたらは!? いきなり現れて、いきなりド変態なことっ!」
男「…変態? はっ、何言ってんだよ俺は別にふつうのコトをやってるだけだ」
女「どこをどーみて普通だと言い切れんのよばっかじゃない!?」
男「誤解がないように言っておくけれど。まぁ誤解されても仕方ないけれど」
男「…俺はしっかり事実を言ってるだけ。しっかりと、本当のことを」
女「っ……あ、あんたそれって…!」
男「だから気にしない」
女「…!」
男「こんなのは嫌だ。喧嘩だって、不仲だって、周りくどい誤解もされたくない」
男「…俺は素直に仲良くなりたい」
女「………」
男「あの時のこと。俺は嘘はいってないよ、誤解や勘違いはあったかもしれないけど……その」
男「た、互いに素直な言葉だったら……嬉しいと思ってる」
248: 以下、
女「…ばっかじゃないの…っ」プイッ
「こ、これはどういうことだ!? なにがどうなって…!?」
男「…アンタはお呼びじゃないってこと」
「なにを!?」
男「あんたの都合すら意味が無い。必要ない。着けはいる隙すら無い」
男「思いも感情も全て──解決すらならない」
男「勝手に告白して、勝手に思い破れてるだけ。彼女は振ってもなく、むしろ興味すらあんたには無い」
男「彼女はずっと今まで、俺ら変態に興味津々だから」
「っ……」
男「あんたは一人ぼっちなんだよ。誰にも関心を持たれてない。だから自分の感情の踏ん切りは、一人でつけろ」
男「まだ説明は──必要か?」
「なっ…にを、言って…」
イケメン「へっへっへっ」
男「…よしよし」ナデナデ
女「ど変態ども! ホモホモ!! ふざけるんじゃないわよ!!」
249: 以下、
「ま、待て! 本当に意味がわからない! 私は一体何を見ているんだ…!?」
男「それは…」
イケメン「現実だ。これが本当のオレたちなんだよ」
「これが、だと…っ?」
女(しゃがみ込みながら、そんな表情されても説得力が…)
イケメン「振られていいと覚悟をしていたお前には見えなかっただろう、本当の現実だよ」
イケメン「…そんな現実を見たくないと、だからあえて告白して、振られて、見えなくさせようとしていた」
イケメン「──女の本当の姿だ」
女「ちょ、違う違う違う!」
男「…女」
女「うぇっ? あ、あああっうんうんうんっ! マジでこいつらド変態だから! あたしが着いてないと駄目なよ!」
「……それが本当の…?」
女「…うん」
「…………そうか、そうだったのか」
250: 以下、
女「だから…ごめんなさい。正直こういうの慣れてなくて、上手く言えないけれど」
女「…そんな告白のしかた、嫌だなっておもう、から」
「……」
女「…だから、その」
「私は君をもっと知るべきだったのだろうか」
女「ふぇっ!? そ、そんなたいそれたこと求めてるわけじゃなくって、あのっ、ううっ上手く言えないっ! けど!」
女「しっつれいじゃない!? 振って当然みたいな風に思われてるのって!? なんかこー…釈然としないっていうか!」
イケメン「そうだそうだー」
男「…黙ってて」ぱしっ
イケメン「フヒヒw」
女「気持ち悪いわよそこッ!」
「………よくわからないが、多分、こういうことなんだろう」
「半端なことが嫌いで、曖昧な感情を断ち切るつもりが、どうやら最高に半端な気持ちだったようだ。」
251: 以下、
女「…あ、うん。けど…告白しようと思ってくれたことは、嬉しかったから」
「ありがとう。だけどムリだろう?」
女「…ごめんなさい」ペコリ
「了解した。面倒をかけた」ペコリ
イケメン「…一件落着か」
男「大変になったのはお前が暴走しかけたせいだけどな…」
イケメン「ああ、すまない。けれど…ありがとう男君」
男「…お、俺は別になにも…」
イケメン「わんわん」
男「ちょっ」
女「コラ変態ども! まだやってんの!?」
男「違う俺は違う! コイツが勝手にやってるだけだ!」
「ふむ。なるほどな、確かに──こう見ると」
「──確かに変態だな、三人共」
252: 以下、
〜〜〜
女「…」ズーン
男「ど、どうした?」
女「…やっぱ一人で頑張るか、友達頼ればよかったなって」
男(だから言ったじゃん…)
イケメン「行くのか」
イケ友「ダチが悲しんでたらカラオケ十時間コースだかんよ! んじゃなっ! あーそれと男ちゃん!」ポン
男「な、なにっ?」
イケ友「良かったぜ。しびれた、惚れちまうところだったぜい!」びっ
男「嬉しいけど、惚れるなよっ」
イケ友「なはは!ばいびー!」
イケメン「くそっ…また突っ込みを取られた…っ」ギリリ
男「もうやめて…今はそっとしておいて俺のこと…」
253: 以下、
女「あーもう、こんな時間なのね。早く帰ってお姉ちゃんに晩御飯作らないと」
男「…俺も帰って晩飯作らないとな」
イケメン「自炊なのか二人共」
女&男「まあね」
女「…なによ」
男「え? なにが…?」
イケメン「くくっ、こんなこと普段なら知り得ない情報だからな。うん、もう帰ろうか」
女「……」くいくいっ
男「…なに?」
女「……」じっ
男「ど、どうした? 今更文句言われても俺は…!」
女「ちっちがう! そうじゃなくって、その……」
女「ちゃんとあんたにはお礼行っとかなきゃなって、思って、それに…」ボソボソ
254: 以下、
男「それに?」
イケメン「ふんふーん」スタスタ
女「……、これだけ言っておこうってと思ったのよっ」キッ
男「あっハイ」ビクゥ
女「っ……えっと、その」
男「……」ドキドキ
女「こ、今度っ? お弁当作ってきてあげよっか…っ?」
男「……」
男「…ははっ」
【この日を境にもう少しだけ彼女は優しくなりました】
特別話『俺の洒落にならないところだった突っ込み、その後』
261: 以下、
保健室
男「こんにちわ。今日も食べに来ましたー」ガラリ
イケメン「お邪魔します」
男「あれ先生居ない…珍しいいなこの時間に居ないのって…」キョロキョロ
イケメン「ふむ。今日は止めておくかい?」
男「多分大丈夫だと思う、けど。今日は平気って言ってたし」ガタ
イケメン「へぇーそうのか──おや、この机に置かれた丸い物体は…?」
男「…おにぎり?」
イケメン「みたいだね。それにしても量が多いな…一個二個…七個もある」ヒョイ
男「誰か置いていったのかな…」ヒョイ
ガララ
女「あ。もう来てたのね、あんた達」
イケメン「ん? 珍しいな君が来るなんて、それに何か用事?」
女「用事も何も、お礼よ。あんた達にお礼を改めて言いにきたの」
262: 以下、
男「昨日の件……ああ、告白の」
女「うっ、ほんっとデリカシー無いわよねあんた…! 言わなくていいのよ、口に出さなくていいのっ!」
男「すっすみません」
イケメン「約束のジュースは?」
女「…それはバイトの給料入ったら渡すから安心して。けど期間空いちゃうし、眼つき悪男との約束も兼ねて一応あんたの分も作ってきた感じね」
男「えっ? この、おにぎりってもしかして」
女「そう、あたしが作ってきたの。さっき置きに来てたってわけ」
男「…覚えててくれたんだ」
女「当たり前でしょ! あんたあたしのことバカにしてるのっ!? すぐに忘れるアホだって言いたいわけっ?」
男「違います違いますっ」
イケメン「君との約束ってなんだい?」ニコリ
男「い、色々とあるんだよっ」
263: 以下、
イケメン(またオレが知らぬ所で…)
男「それにしても凄い量…全部一人で?」
女「まぁね。いつもお弁当作ってるし、手慣れたもんよこれぐらい」ニコニコ
男「そっか。ありがとう」
女「ん、まぁ約束したしね」
男「…う、うん」コクリ
女「なーによ。嬉しそうじゃないわね、あたしが作ったのは食べたくないってワケ?」
男「いっいやいや! その、人から作ってもらうなんて経験なくてさ…その、嬉しいって思う、から」
女「そ、そお? …そっか、うん」
イケメン「エッホン」
男&女「っっっ!?」ビクゥ
イケメン「さてさてオレは何から頂こうかなぁ。なぁ女、これの中身は?」
女「えっ? あっそれはえっと〜……おかか? しゃけ、だと思う……うん、しゃけよしゃけ!」
264: 以下、
イケメン「本当か〜? これでもし梅だったら怒るぞ、梅苦手だから」
女「知ってるわよ! だから梅入れてないし!」
男「あ。そうなんだ……俺、好きなんだけどな梅…」
女「ふぇっ!? あっ、えっと……んなこと知らないわよ馬鹿!! だったらちゃんと言っておきなさいよ予めに!!」
男(流石にそれは理不尽過ぎると思う)
女「その……おかかじゃ、だめ?」チ、チラッ
男「全然いいよ。ありがと」ヒョイ
イケメン「それじゃいただきまーす」
男「あー…」
イケ友「ちょっと待って!! なぁオレのマッスル育成オカズおにぎりしらねっ!?!?」ガララ!
 シィ─────ン………
女「び、びっくりしたー…いきなり現れて大声出さないでよアホ!」
265: 以下、
イケ友「うぇぇ〜ん女っちぃ〜…怒るなってばぁ、おれ困ってんよ〜っ」
女「え、なによ急に…おにぎりがなんだって言うの?」
イケ友「それがなぁー今朝に作った『筋肉育成オカズ』を入れた、おにぎりがどっか行っちゃんだぜっ!?」
男「………」
イケメン「………」
女「はぁ? 何処に置いたか検討もつかないわけ?」
イケ友「う、うーん。多分後で皆で食べようと、保健室に置いてた気がして……こうやって来たわけよ〜」
男「……」ソッ…
イケメン「……」ソッ…
女「えっ? じゃあもしかしたら、あたしのと混ざって──なにそっとおにぎり戻してるの…?」
266: 以下、
男「……なんでもない」
イケメン「……なんでもないな、うん」
女「え、えらく顔が死んでるけど大丈夫…?」
男「…ちょっと静かに」
イケメン「なあイケ友…参考までに聞きたいんだが、何個作ったんだ、そのおにぎりは…?」
イケ友「いっこ…」グスッ
男「今ここには七個──…元のおにぎりの数は?」
女「そういえば一個多いわね。気付かなかったわ、あたしが作ったのは六個よ六個」
男「………」
イケメン「………」
女「だから何なのよその間はっ!」
267: 以下、
男(彼が言うその『筋肉育成オカズ』とは──正しくはイケメンが起こした過ちの一つであろうもので、)
男(彼はイケメンがアドバイスと称して『亀ウンコ食えば筋肉育つ』というボケを心から信じる人だった)
男(つまりはそう──言わずもがな、そのオカズ入りが──可能性ではなく、絶対に)チラ
イケメン「っ……」コクリ
男(ああっわかってる。どうやらいつの間にか、俺は魔境へと足を踏み入れてしまったらしい)
女「どうしたのよ?」
男「…えっと」
女「?」
イケメン「イケ友。お前の見解ではどれが自分のおにぎりだと思う?」
男(ナイス!)グッ
イケ友「けんかい…?」
イケメン「この中で一番、イケ友のおにぎりだと思うのはどれだ」
イケ友「えーと…多分…これだと思う…?」ヒョイ
268: 以下、
男「ほっ…本当に!? 絶対にそれが自分のだと言い切れる!?」
イケ友「おおっ? なんか握り方がおれっぽいと思うわけですよ…うん、やっぱこれだ!」
女「じゃあそれなんでしょ」
イケメン「食べてみてくれ」
イケ友「うっし。んじゃいただきまーす、もぐもぐ」
男「ど、どう?」ドキドキ
イケ友「もぐ……しゃけっすなコレ」
イケメン「ぐッ!」
男「あぁ…」
女「ねぇ。このままアホに食べさせて確認させるつもり?」
男(出来ればそうしてもらいたい…)
イケメン「そうしてもらうとも」
男(言っちゃうんだ…怒るぞ絶対に…)
269: 以下、
女「ちょ、ちょっと! それじゃあ外れっぱなしだと全部食べられちゃうじゃない!」
イケメン「後は六分の一。外れるわけ無いだろ」
女「そうだとしてもよ! 次に当たる確証なんて無いし、そもそも皆で食べて確認すればいいじゃない!」
イケ友「おー? おれは別にいいぜ、こやって女っちのおにぎり食べさせてもらったし。満足満足なり」
イケメン「なんっ…そんなワケないだろう? やっぱり自分の食べたいって──」
男「イケメン。諦めよう、もう無理だ…」ポン
イケメン「諦めるんじゃない男君…! これは、これは…!」
男「…罰だと思う。今までイケ友を騙してきた、罰なんだ」
イケ友「?」
イケメン「くっ……ううっ…すまない、君まで巻き込んでしまって…っ」
男「それは良いんだけど、あのさ、女…さん?」
女「なによ?」
男「これ全部俺達が頂いてもいいかな? その…自分用の弁当とか、用意してるんじゃないの?」
270: 以下、
女「もちろん用意してるけど、出来れば皆で食べようと思って…おかずだけしか」パカ
男(やっぱりか。仕方ない)ガサゴソ
男「…はい、これ。女さんの弁当」ヒョイ
女「えっ? なっなによこれ、あんたが作ってきたの…?」
男「うん。昨日の約束から試しに自分でも作ってみたんだ。出来ればもらってほしいなって…思うんだけど、駄目?」
女「だ、駄目じゃないけど。その……あたしがもらってもいいの?」
男「もちろん」
女「えっと…隣にすっごく貰いたがってる奴が居るんだけど…?」
イケメン「ぐぬぬ」ギリギリ
男「お前は駄目。約束してないし」
イケメン「えー」
男「じゃあ…どうぞ、味付けは普段と違って凝ってみたから、その、口にあわないかもだけど」
女「あ、ありがと…」ヒョイ
271: 以下、
男(これで、よし。女さんを巻き込むことはなくなった。本当は自分の弁当だけど、致し方ない)
イケメン「あ。そういうことか、なるほど頭が良いなぁ男君」ポン
男(…なんだかコイツがイケメンらしい所見てないけど、最近大丈夫かよ…)
イケ友「おっしゃ。次は誰から頂くんだぜ?」ワクワク
男「次は俺から行く」
イケメン「!」
男「…じゃあこれだ」ヒョイ
イケメン「だ、大丈夫なのか? 絶対にそれがセーフだと言い切れるのかい…!?」
女(セーフ?)
男(っ…言い切れるわけがない! 俺だって超不安だよ! けど、いくしかないだろ!)
ぱく!
男「もぐもぐ……もぐ…」
イケメン「っ〜〜〜…!」ドッドッドッドッ
男「、ごくん」
272: 以下、
イケメン「ど、どうなんだい?」
男「………っ」ホロリ
ポタポタ…ポタ…
男「おいひぃっ…美味しいよぉっ…ひっぐ…うぇ…っ」ポロポロ
女「なんで泣くのよっ!?」
男「昆布、なんだ…とても美味しくてっ……今まで、ぐすっ、無いってぐらい…っ」ぐしぐし
女「そ、そおなの?」
男「っ…ありがとう、こんなに美味しいおにぎり食べたの初めてだ…!」
女「ふっ! フッツーのおにぎりじゃない! 感謝しすぎでしょ!!」テレテレ
イケメン(緊張の糸が切れて、耐え切れず感情が爆発して待ったんだろう…よくやった男君)
イケメン「次はオレだな。よし」
イケメン(どれだ、どれが悪魔のおにぎりなんだ? ぱっと見全部普通のおにぎりだと思える…はっ!?)
273: 以下、
イケメン「こ、これは…」
イケメン(ひとつのおにぎりの中身が突出しているじゃないか! これはセーフだ!)スッ
イケメン(ッ──!? ち、違う! 隣のおにぎりもオカズが出ている! まさかここから付着しただけの可能性も…?)ドドドドドドド
イケ友(なんだイケメンの奴…凄いオーラを感じるぜ…!!)
イケメン(どれだッ…どれなんだッ…どちらかがセーフだということはわかっている…!!)
イケメン(コッチかっ!? それともコッチなのか!? ぐぉぉッ──神様我に救いあれ────)
イケメン「───…………ふぅ」
イケメン「オレはこれを頂こう」ヒョイ
男「ッ……本当にそれでいいのか?」
イケメン「ああ。いいんだよ男君……オレはわかったんだ。真理ってやつを」
274: 以下、
男「え、真理?」
女「何いってんのコイツ…?」
イケメン「どちらだっていいんだ。オレは受けるべき罰を、今やっと行われているだけなんだ…」
イケメン「今までずっと蔑ろにされていた…己の過ちの報いを…この瞬間に…」
男「イケメン…っ」
イケメン「…すまない君まで巻き込んでしまって。オレは本当にだめなやつだ、本当に、本当に」
ぐいっ
イケメン「──しかしこれまでなんだよ。オレは全てを受け入れて、新しい自分へとステップアップさせる」あーん
男(お前はわざと亀ウンコ入のおにぎりを…!!)クッ
イケ友「おー?」
イケメン(神よ──我に栄光あれ───)
ガラリ
先生「うぃーっす。来てるねガール&ボーイズ」
男「あ。先生」
先生「君たちもう花に水をやった? その条件はきちんとやってもらわないと───あれ? なにそのおにぎり?」
275: 以下、
イケ友「チッス先生。なんか女っちが作ってきたものらしいっすよー?」
女「先生も食べます?」
男「なん、っ!」
先生「良いの? ありがとーんじゃ遠慮無く…」ヒョイ
男「まっ──」
先生「もぐもぐ」
男(あーっ!? やってしまった!! 先生が…!)
先生「…もっく…」
男「せ…先生…?」
先生「うん。美味しいね」ニパー
男「うっ…おおっ…!?」
先生「うーん、先生はおにぎり作っても上手く三角に出来ないからね。羨ましい」
女「こういうのってコツを掴めば簡単ですよ」
先生「へぇーそうなんだ」
男(先生もセーフだったか…ふぅーじゃあこれで四分の一。あとはイケメンが持つものがあたりの可能性が濃厚に)チラリ
277: 以下、
イケメン「……」
男(お前の志は立派だ。尊く、そして儚い…間違いなくこの状況はお前のせいだけど、その姿勢は褒められるべきことだと思う)
男(あとは、その握ったおにぎりを食べるだけだ…! イケメン! その意思を胸に──)
イケメン「……」ソッ…
男(──意思揺らいじゃってない!? 戻すなって!)
イケメン「お、男くんっ…どうしよっか…っ?」プルプル
男「なっ泣きそうになるなよ! つ、辛いなら……もう諦めたらいいだろ…っ?」
イケメン「ううっ…だってだって…!」ブンブン
男「だってもクソもない。いやくそはあるかもだけど…」
イケメン「ボケはオレの担当だろう…ぐすっ」
男(切り返す余裕はあるんだ…もう食べろよ…)
イケメン「じゃ、じゃあ一つオレと約束してくれないか…一個だけでいい、してくれたら…オレはちゃんと食べるから…!」
男「…なんだよ」
イケメン「今度オレにも弁当…作ってくれないか…?」
278: 以下、
男「はぁ? な、なんで…!」
イケメン「だって食べたいんだもん! 女のやつが羨ましいじゃないか…っ!」
男「だもんて…そんなに俺の弁当食べたい?」
イケメン「…だめかい?」
男「うっ…別に駄目じゃないし、一人用作るよりは二人分作ったほうが楽だけど…」
イケメン「本当かい!? じゃあじゃあ! 食べさせてくれるんだね!?」
男「い、イイケド?」テレテレ
イケメン「よっしッッ! ありがとう! 楽しみに待ってるよ!」グッ
男(喜びすぎだろ…ふへへ)ニヨニヨ
女(またホモっぽいことを…)ジィー
イケ友(え、ええ餌付けだ!)
先生(二人共、素でこれだもんね。そりゃ誤解もされる)
男「え、なに皆して…?」
女「べっつにー。あんたのお弁当って、そんなに安売りされるもんなのねって」ツーン
男「えっ? ち、ちがっ」
279: 以下、
女「違わないでしょ。あーあばっかみたい、これからのやる気が削がれちゃうわ」
先生「ん、拗ねてるの?」
女「ばっ!!? ち、違います!! 拗ねてなんかいませんってば!! このホモ共に言ってやりたかっただけですって!!」ビシッ
男「ほ、ホモじゃない!」
女「あんたは黙ってなさい! てゆーか、そうやっていっつもいっつも周りを誤解されるよーなことばっかりするからじゃないの!」
男「そ、それは仕方ないことっていうか…っ…特に誤解するのはお、女さんのほうじゃないか…!」
女「はぁっ!? あたしに問題があるって言いたいワケ!? よく言えたものねこんの変態がっ!」
先生「おやま。ふーん、ほぉ〜」ジロジロ
男「うっ…な、なんですか先生?」
先生「二人、付き合ってる?」
男&女「付き合ってません!!」
先生「なるほどね。犬も喰わないってか」スタスタスタ
女「ちょ、話し聞いてください最後まで…!!」
男(分かってて楽しんでるな先生…)
280: 以下、
イケ友「およよ。イケメン、そろそろ食べないとおにぎりカピカピしちゃうぜ?」つんつくつん
男「あ…そうだイケメン、覚悟は…?」
イケメン「大丈夫だ。今、しっかりと持てた」キリッ
男「行くんだな…そしたら…!」
イケメン「ああ。オレは敢えてこのおにぎりを選ぶ」ヒョイ
男(そ、それは! 自分も一番怪しいと思っていた──この中で特別大きいおにぎり…!)
イケメン「…行くぞ、見ててくれ男君。これがオレの覚悟だ──」
男「ッ……イケメ…」
ぱくん!
イケメン「もぐもぐ」
男「あ…」
イケメン「もぐ、もぐもぐ」
男「っ…」ドキドキドキ
イケメン「ごくん」
281: 以下、
イケメン「…………………」
男「い、イケメン? どうだったんだ、中身は」
イケメン「………じだ」ぼそっ
男「えっ?」
イケメン「ッ…牛すじが入っていた! オレは外れていた…!!」
男「っ〜〜〜!! イケメン…!!」
イケメン「ああっ…! 神様はオレを許してくれたようだよ男君…!! オレは…オレは…!!」
男「うん…うん…そうだな、よくやったよお前は…」ポンポン
イケメン「うぉぉぉっ! やったー!!」
【BGM・Gonna Fly Now】
男(──そうして俺らは魔境となる苦難を乗り越えて、無事に日常へと生還できたのだった)
男(──この事件は俺とイケメン。どちらにも深いキズを負わせるものとなったが)
男(──しかしそれもまた、終わってみれば楽しい昼休みのひと時なんだと、思えなくもないのだ…)
女「それじゃあ後3つだし。アホと変態と目つき悪いので、わけあって食べるんでしょ?」
282: 以下、
男「…………」
イケメン「…………」
男&イケメン「えっ?」
女「え、違うの?」
イケ友「よし。じゃあおれは、これもーらい」ぱくっ
男「あぁーっ!?」
イケメン「っ……!?」
イケ友「もぐ、これって……いくらぁ!? いくらが入ってんぜ!? なんつー豪華ですか女っち!!」ガーン
女「んふふーでしょでしょ?」
男「おっ…おおっ…!?」
イケメン「じゃあオレはこれを貰おう…」スッ
男「ま、待てよイケメン! 何勝手に取ろうとしてるんだよ…!」
イケメン「………」フイッ
男「そっと目をそらすな!」
283: 以下、
女「早く食べちゃいなさいよ。昼休み終わっちゃうから」
男「うぐぐっ」
男(もう駄目だ…どちらかの手に、あの魔のおにぎりが握らている…)
イケメン「………」ダラダラダラダラ
男(そうだ、俺みたいな奴が友達を作ったからこうなったんだ。もう、もうどうしようもない…)スッ
男(これが終わったら俺…ちゃんとイケ友に謝ろう…黙っててごめんなさい、って…)
ぱくっ
男「……あれ?」モグモグ
イケメン「ん?」モグッ
男「おかかだ…」
イケメン「たらこ…」
男(ど、どういうことだっ!? なんで無事なんだ二人共!?)
284: 以下、
イケメン「っ!? っ……なぜだ、なぜ入ってないんだろう…?」
男「わからない。けど、確かにイケ友のおにぎりは入ってたはずなのに…」
先生「うッ」
女「ぇ、先生?」
先生「なんかお腹痛くなってきた…」
イケ友「大丈夫っすか!? 保健室連れて行かなきゃ…! ハッ! ここだ!」
先生「なんだろうね、何か変なもの食べたかな───んっ!?」ギュルルルルッル
女「変なもの──」サァー
男「………」
イケメン「………」
先生「うッおッ、駄目、お腹が痛く、きゅー」バタリ
イケ友「先生ぇええええええええええええ!!」
男「…そ、そういえば…先生はオカズの中身……言ってなかったな…」
イケメン「…………」ダラダラダラダラ
285: 以下、
先生「君…中々やるじゃあないか…保健室の先生を殺るなんて、ね」ガクリ
イケ友「女っち殺ったの!?」
女「やるってなによばっかじゃないの!? あたし、なにもっ…変なの入れて! ない、のにっ…うぇえええええんっ!」ポロポロ
イケ友「え、じゃあおれのおにぎりが──うぉぉおおおおおお!! すまねぇえええ先生ぃいいいいいいいいいい!!」ダバァー
男「……謝ろう」
イケメン「……うん」
【全部話したら案外許してもらえました】
第八話『俺の突っ込みロシアンルーレット』
289: 以下、
先生は犠牲になったのだ…皆の仲が深まる、その犠牲にな……
おつ!
291: 以下、
コンビニ
男「店長。お疲れ様っした」
店長「はいお疲れさん。今日もがっぽり稼いでくれちゃったね」
男「俺はもう上がりですけど、店長は?」
店長「なにせ店長だからね。残らないとね、仕事だからねウフフ」
男「…そうですか、じゃあ自分はこれで」ペコリ
店長「来週もよろしくぅ〜」
男(……。店長今日は非番なのにな、なんで居るんだろう?)ウィーン
男「え、暗っ」
店長「そうだよねぇ〜最近はめっきり日が落ちるのも早くなっちゃったからねぇ〜」
男「そ、そうですね…季節の変わり目って、ヤツですか」
店長「ウフフ」
男「……なんですか?」
店長「いやね。うんとね、君とこうやって季節のお話ができるなんて、夢みたいだよねってと思いましたね」
292: 以下、
男「うぇ、そんな節操ない人間だと思われてたんですか?」
店長「ウフフ。逆よ逆、信念やら固定概念が強うそうに見えて、店長話しかけづらいなって思ってたのよね」
男(ソッチの方が立ち悪そうに思える…)
店長「けれど、君ってば近頃とんと親しみやすくなっちゃったから、店長嬉しくなっちゃってよく話しかけちゃうのよね」
男「嬉しいだなんて、まぁ、その、ありがとうございます」
店長「良いってことよぉ〜」クネクネ
男(いい人だなぁ。ムキムキマッチョの見事な逆三角形を所持し、立派な髭を蓄えた人だと忘れてしまうぐらいに…)
男(いやいやいや、人を見かけで判断するのは良くない。このような人で良いんだ、自分が言えたものじゃないしな)
店長「時間は遅くないけれど、表通りに出るまでちょっとばかしデンジャラスな通りだからね。気をつけて帰るようにね、それとも家来るぅ?」
男「えっ? いや、晩御飯作らないといけないんで。また今度お願いします」
店長「いやだもぉ〜振られちゃったのねぇ〜ウフフ、じゃあ気をつけてね」
男「? じゃあお疲れ様です、店長」
店長「お疲れ様〜」
293: 以下、
〜〜〜〜
男「…親しみやすくなったか」
男(バイトは入学当初から続けていた。かれこれ一年以上の付き合いの人も居る。店長なんかがそうだ)
男(けれど付き合いと言っても仕事場で顔を突き合わせるだけ。自分が出来る限り支障をきたさないよう気を張っていたから)
男(会話もせず。口にするのは業務上の内容だけ、終始無言に徹し、無駄なものは極力排除していた)
男「まさにバイトマシーンと化していた──なんて、今だからこそ分かることだけど」
男(当時の自分は、それが酷く歪だと言うことも気づかなかった。周りから見れば、ただ単に取っ付きにくい奴。面倒そうなやつ、だなんて)
男(まさに店長が言ってくれた通りのこと。なんか頑固そうなやつ、面白みが無さそうで、関わった分だけ損をしそう)
男「…分かってた、わかってるんだけども。何も出来ないのが自分だった」
男「ふぅ…」
男「変われたんだろうか。あの日から自分は昔の自分よりも、明るくなった……とか」
そう、あの日のことは忘れられない。
凝り固まった世界を割って入ってきた、不躾な視線。
己でさえ怖くて手を出されなかった、新しい自分を欲しがる輩。
294: 以下、

続き・詳細・画像をみる


犬の散歩に出ようと玄関開けたら、お隣の奥さんの「ぎぃやぁああああぁぁぁっっっ」って悲鳴が…

モバP「渋谷、早く準備しろ」

【国際】「日本は武力行使をしないからこそ、信頼されているのに…」 中東などでの民間支援の信頼危機、集団的自衛権の代償

骨の折れる作業が見られる『スター・ウォーズ』のAT-ATの撮影裏

中国製スマートフォンに多機能スパイウェア 盗聴監視ができる サムスン製品の模造品

【悲報】大阪・あべのハルカス、早くも飽きられ来場目標達成できず社長更迭…第2の志摩スペイン村懸念

【中国】「ラーメン分けてくれ」と頼むも断られた男、相手の喉と胸を切り裂き、取り出した心臓を齧る

『Free!-Eternal Summer-』1話感想 丸くなった凛!ごつい新キャラ登場!

精神疾患の病名変更 「パニック障害」→「パニック症」、「注意欠陥多動性障害(ADHD)→「注意欠如多動症」

国土交通省に就職したら3年前に俺を振った元カノが復縁迫ってきた。手のひら返し早すぎだろ…

【悲報】平野綾さん、メンヘラ美少女になる・・・・・・(画像あり)

【サヨク速報】 先生「生徒に『デモ行ったんだ!先生かっこいい!』と言われ、教室で拍手が巻き起こった」

back 過去ログ 削除依頼&連絡先