男「星に願いを…か、アホくさ」back

男「星に願いを…か、アホくさ」


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しばし思考が停止する。
その僅か後に冷や汗がどっと噴出す。
(まさか! 寝過ごした…!?)
部屋の壁に掛けた無機質なデジタル時計はさっきのアラームと同じ時刻を表示していた。
まずい、大遅刻だ。
なぜスマホのアラームが鳴ったのかは解らないが、今は間違いなく午前10時半らしい。
昨日は憂鬱な月曜だったのだから、今日が平日火曜日なのは疑いようもない。
しかしそこで俺は、ふと昨夜の願いを思い出す。
(まさか…いや、ありえないけど…でも)
7: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 18:54:41 ID:WhTnGlUY
急ぐ動作で寝巻き代わりのジャージを脱ぎながら、それでも僅かな期待を抱いてTVのリモコンを手にとり赤いボタンを押す。
画面が表示されるまで数秒のラグ、先だって発せられる音声。
それが耳に届いた時、俺はスーツに伸ばそうとしていた手を止めた。
《○○川に他殺体が上がった!?》
《またか…これで今月に入って3人目ですね…》
俺がTV画面に振り向くと同時に、映し出された映像。
刑事ドラマの冒頭のシーン、そしてその番組は──
「嘘だろ……おい…」
──毎週日曜に再放送されているものだったから。
8: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 18:55:45 ID:WhTnGlUY
《ピーン…ポーン》
入居しているアパート備え付けのインターホンが鳴った。
築10年ほど、古いなりに安いこの部屋だが一応カメラとモニターがセットになった機器が備えられている。
その小さな画面に映されているのは、青色ベースのユニフォーム姿で荷物を小脇に抱えた配達員。
「はい」
《宅配便です》
「…すぐ行きます」
高鳴る胸に手を当てて、俺は玄関へと歩む。
ここで届く荷物が何かを、俺はきっと知っている。
9: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 18:58:29 ID:WhTnGlUY
ドアを開け、やはり予想通りの大きさだった段ボール箱を受け取り伝票にサインをした。
送り主は実家の母、内容物は衣類、全てが記憶の通り。
箱のガムテープを剥がし手荒く中身を取り出して、心の中で何度も『やっぱりそうだ』と繰り返しながら床に広げてみる。
「本当に…同じ日なのか」
見覚えのある涼しげな甚平、その胸元に挟むようにして添えられた手書きのメモ。
… … … … …
男へ
元気にやっていますか?
昼間と夜で気温が大きく違う時期だから、風邪などひかないように
家に余ってた生地で甚平を縫ってみたので送ります。夏向けの部屋着に使って下さい
後輩ちゃんとは仲良くしてますか?
何度かしか会っていないけど、あの娘はいい子だから喧嘩なんかしちゃだめよ
それからたまには帰って、元気な顔を見せるように
母より
10: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 18:59:08 ID:WhTnGlUY
同じ甚平を二着も作って送るわけはない。
ましてそれに一文字も違わぬ内容の手紙を再度添えるなど、あるはずがない。
「嘘だろ、おい」
あまりにも常識を超えた出来事に、得体の知れない不安が胸を襲う。
思いつきで適当に唱えたまじないが、本当に叶ってしまったのか。
あの馬鹿げた創作話のように、俺はこれから閉じた時間の中を生きる事になるというのか。
スマホのスリープ解除のボタンを押し、ロック画面を確認する。
日付は6月1日、俺が『繰り返したい』と星に願った日曜日だった。
11: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 18:59:45 ID:WhTnGlUY
心が平穏でないせいか、それとも単に寝起きだからか、やけに喉が渇いている。
俺は独り暮らし用の小さめな冷蔵庫を開け、中を見回した。
「…やっぱりあるのかよ」
買い置きしていると飲み過ぎてしまうから、週末以外はその日飲む分しか購入しない事にしている缶ビール。
しかし信じ難くも今日は日曜日だから、庫内には3本のそれが冷やされていた。
アルコールを含む飲料は水分補給には適さないと聞く。
でも渇いた喉も不安に苛まれる心も、それを求めている。
2本を片手にとってソファーへと向かい、まずは1本目を3口で飲み干した。
12: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:00:19 ID:WhTnGlUY
スマホの画面ロックを解き、連絡先を開く。
緑色に表示された通話マークをタッチし、数秒後に鳴り始める呼出音。
5コール目、ぶつっというノイズの後で聞き慣れた声は届いた。
《もしもし、○○ですが》
「ああ…母さん、俺だよ、俺」
《あんた毎回『オレオレ詐欺』を装うのやめなさい、通報するわよ》
決してマザコンなつもりはないが、やはりこんな心境の時に母親の声というのは安らぐものだ。
自分でふざけた事を言っておいて、思わず口もとが緩んだ。
「ごめんごめん、荷物届いたよ」
《ああ…もうじき梅雨だからね、部屋ではそんなのもいいでしょ》
「うん、シンプルだしいい色だ。ありがとう」
13: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:00:59 ID:WhTnGlUY
「それと…」
メモで釘を刺された事を、謝ろうと思った。
半年ほども前に後輩と別れている事。
しかしきっと母親が落胆するであろうその言葉は、喉に引っ掛かったように出てくる事を拒んだ。
《…どうしたの?》
「いや…今度、来週か再来週にはそっちに顔出すよ」
結局それを母親に伝える事はできないまま、通話を終える。
心のどこかには『本当に今日6月1日を繰り返すなら、伝える意味が無い』という考えもあったと思う。
俺は2本目のビールの蓋を開け、今度は小さめなひと口を喉に流し込んだ。
14: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:01:35 ID:WhTnGlUY
後輩と別れたのは、クリスマスの事だった。
俺が大学卒業を控えていた年、新入生として同じサークルに入ってきた彼女とは、およそ半年の期間を経て恋仲となった。
『十代の彼女なんて羨ましいやつめ』と周りに冷やかされる事も、当初は嬉しかったはずだ。
少しヤキモチ妬きで寂しがりやな彼女の事を、心から愛しく思っていた。
そして時は流れ、俺は社会に出て三年目、今度は彼女が卒業を控えた年。
今から半年前…つまり昨年末の事だ。
ただでさえ忙しいその時期、俺は10月頃に怪我で入院した同僚の分まで仕事を抱えていた。
もちろんその同僚の全ての仕事量を一手に引き受けていたわけではない。
他数名の仲間達と手分けをして、その重荷を共有していたのだ。
15: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:02:13 ID:WhTnGlUY
その連帯責任は、やむをえず暗黙のルールを生んでしまう。
その日の仕事にキリがついたからといって、自分だけが先に帰るというわけにいかないのは当然の事。
およそ三ヶ月に渡り、メンバー全員が残業や休日出勤に身を投じなければならない状況だった。
必然的に、後輩と会う機会は減ってゆく。
年齢の違いは三つとはいえ、二十代前半においてその差は小さくない。
まして社会人と学生というそれぞれの立場は、精神年齢の面で実年齢以上に大きな差をもたらしていた。
16: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:02:53 ID:WhTnGlUY
大人社会の荒波に揉まれ、ノルマに疲れ果てて。
たまの休日に恋人に会う気力さえ削がれていた自分。
会えない事、連絡が少ない事に不満を募らせ、仕方ないと言いつつも寂しさを隠せない彼女。
『今度はいつ会えますか?』
SNSアプリのトーク画面に表示された文字を見て、向こうには既読マークもついている筈なのに俺の返答は遅れて。
ようやく返したメッセージすら、ぶっきらぼうなものだった。
『解らない、年末までは難しい』
『忙しいのは解ってます。でもクリスマスイブくらいは一緒にいたいです』
『今年に限ってはイブなんてただの平日でしかないよ、たぶん無理』
17: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:04:12 ID:WhTnGlUY
イブ当日、同じアプリには『メリークリスマス』とメッセージが届いた。
それはスマホのロック画面、通知エリアへの表示で気づいていた。
でも俺はアプリを起ち上げもしない、彼女に返信はおろか既読マークをつける事さえせずに。
彼女の心に積もった寂しさ、その許容量が限界を迎えている事など、翌日クリスマスの夜まで気づきもしなかった。
日付が変わる直前、なんの連絡もなく涙化粧の彼女が部屋を訪ねてくるまで。
イブのメッセージに返信が無かった事。
泊めてくれと願う彼女を、タクシーを呼んで帰そうとした事。
年が明ければ会えるようになる、嘘でもそう約束さえしなかった事。
それら全てが彼女の感情のたがを外した。
18: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:05:00 ID:WhTnGlUY
ごくん…と、またビールを一口あおる。
母のメモのせいで変に感傷的になってしまった、今はそれよりも大きな問題に直面しているというのに。
今夜寝て、次に起きたらどうなる?
また今朝に戻るのか、それとも一度だけの不思議な星の悪戯なのか。
一度きりの現象だとすれば、いっそ夢でも見た事にすればいい。
せっかくの思いがけない休日だ、存分に身体を休めてのんびりすればいいだろう。
きっと大丈夫だ、明日は2日の月曜日かあるいは3日火曜日か。
できれば憂鬱の大きな月曜でなければいいな。
自分に言い聞かせるように頷き、俺は残りのビールを空けた。
19: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:05:36 ID:WhTnGlUY
………

10時半までたっぷりと寝ていれば、缶ビールの二本や三本飲んだところで昼寝をする気にもなれない。
(外の人達は俺の知ってる6月1日と同じ行動をしてたりするのかな)
ふと湧いたそんな疑問も手伝って、俺はぶらぶらと散歩にでも行く事にした。
時刻は午後二時、一度目の今日は本屋に行って立ち読みをしていた頃だ。
たしかその前、既に過ぎてしまったが午後一時頃にはアパートから数軒先にあるコンビニに立ち寄ったはず。
20: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:07:08 ID:WhTnGlUY
「いらっしゃいませ…って、お前か」
コンビニの自動ドアをくぐるといつもの声、ここは中学校時代の同級生である『友』の親が店長を務める店だ。
俺が就職して近所のアパートに入居した頃に再会したわけだが、友とは不思議と昔よりも馬があった。
今では月に一度くらいは飲みに出るし、およそ毎日と言っていいほど仕事帰りに立ち寄っている。
「客は客だろ、差別すんなよ」
「おうよ、会計は一切オマケしないぜ」
「そこじゃねーよ」
21: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:07:42 ID:WhTnGlUY
客は少ない時間帯、ちょっとだけ雑談に興じる。
その中で、彼は確かに聞き覚えのある問いを口にした。
「俺、この夏は海外に行こうと考えてんだ。どこだと思う?」
やはり、俺の記憶にある6月1日は嘘ではない。
あまり裕福とは言えない彼、ホテルの予約も知り合いのつても無い状態で、無謀にも行き当たりばったりの旅に出ようと考えていたはずだ。
その行き先は──
「──インドだろ?」
「げっ、なんで解るんだ」
「当たったか、なんとなくだよ」
日本企業が多く進出しているから、比較的日本人は歓迎してもらえるはずだ…なんて、根拠のない見通しを語る友に呆れ顔を返す。
何泊する気かは知らないが『せめてホテルくらいは決めとけよ』と言おうとした。
22: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:08:16 ID:WhTnGlUY
しかしちょうどそのタイミングで他の客がレジに近づいた。
「また来るわ」
「何も買わないのかよ」
「帰りに寄るよ」
「ビール、箱ごと冷やしとこうか……っと、いらっしゃいませー」
客の応対を始めた彼に小さく手を振り、俺は自動ドアを外へとくぐる。
友の問いの内容は記憶の日曜と同じものだった。
しかし彼はその問いを初めてのものとして俺によこしたはずだ。
(やっぱり今日もあの日も、夢じゃないんだな)
未だ信じ難いけれど、俺は間違いなく二度目の6月1日を過ごしているんだ。
23: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:08:49 ID:WhTnGlUY
更に散歩を小一時間、スポーツ用品店を眺めるだけの時間を三十分。
わざと少し遠回りをして、川沿いを地元へ戻る。
約束通りもう一度コンビニに寄って、その日の分だけ酒を買って。
今度は客の多い時間帯だったから、雑談は一言ふた言にとどめた。
アパートに戻ってTVをつけて、いつも日曜に観ている番組をまるで再放送のように眺めて。
夕食は一度食べたはずのチルドピザを焼いて酒の肴にする。
昼間に割と長い散歩をしたせいか、眠くなるのはいつもより早い。
もし目覚めてまた月曜だったら憂鬱だけど、一度目よりも上手く立ち回れるかな……そんな不思議な考えを巡らせている内に、睡魔は俺を拐っていった。
24: ◆M7hSLIKnTI 2014/06/16(月) 19:09:33 ID:WhTnGlUY
……………
………

心地よい眠りを阻害する、定間隔の振動音。
蚊の鳴く程の音量から次第に大きくなる、耳慣れたメロディ。
それに気づいた俺は、ひったくるように枕元のスマホを手にとった。
目覚まし時計ではなくスマホがアラームを告げるという事は、平日ではない。
(本当に日曜を繰り返してるってのか…!?)
画面を確認する、時刻はAM1

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