塞「えっ!? 胡桃、アンタ床屋で散髪してもらってるの?」back

塞「えっ!? 胡桃、アンタ床屋で散髪してもらってるの?」


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1:

……
………
 ――昼 岩手>理美容店ミヤモリ
白望「……」
白望「ん――あれ……塞……?」
白望(……いない あぁ買い出しだったけ
 それにココ、部室じゃない……?)
白望(なら 今のは――)
白望「……夢か――懐かしいな」
 >カランカラーン
 >ただいまー
2:
白望「……」
胡桃「あっ いま寝てたでしょシロ!」
胡桃「隙あらばサボろうとするんだからもう めっ」
塞「ははっ シロのクセは社会に進出しても健在だね」
白望「店長 持病が芳しくないんで……
 長期休暇もらってもいい……?」
胡桃「そーゆーのいーからお仕事する!」
白望「なんてブラックな職場なんだ……」
胡桃「シロが黙ってれば潔白! ホワイトでいられるのっ」
白望「ちぇっ……」
 >カランカラーン
4:
照「うえーん」
塞「いらっしゃいませ――って、照さん!?
 今日はどうしたの? また道に迷った?」
照「な、長野で……っさ、咲と遊んでて
 お菓子の匂いを追いかけてたら はぐれてグスン
 石につまづいて……わーん!」
白望(ここ岩手なんだけど……)
胡桃「はい! いつものアメ! 沢山食べて元気だして!」
照「グスッ……ありがとう」
8:
塞「救急箱とってくるね
 あっと照さん――携帯は?」
照「どこかに落とした……」
塞「了解 妹さんに連絡しておくね」
胡桃「照さん! こっちのソファーに座ろっ」
照「うん……」
胡桃「シロも! そこお客様のチェアでしょ
 そのまま髪切っちゃうよ!」
白望「ふぁい」
照(ペロキャンおいしい)
11:
白望「はい 顔はこの蒸しタオルでキレイにして
 ――今日も髪は切ってく?」
照「ありがとう うん、切りたい」
白望「おまかせでいい?」
照「うん」
胡桃「エイちゃーん 出番だよー」
 >トテテテ ドテンッ……テクテク
エイスリン「コンニチワ!」
照(タンコブ出来てる……)
白望(コケたな……)
胡桃(コケた!)
12:
エイスリン「ジャアカキマスネ!」
エイスリン「?♪」
エイスリン「デキタ!」
照「わぁ……その髪型ステキだね」
エイスリン「フンス」
白望「相手の夢も描けるようになったから……
 今のエイスリンは――まぁ」
白望「トレースするだけじゃ“おまかせ”じゃなく
 ただのお客様任せだから 多少はエイスリンの主観や……
  センスによる手心は加わってるんだけどね――」
胡桃「ね!」
14:
照「ソレは麻雀にも転用できる?」
エイスリン「ヨユーデス!」
照「スゴいね」
エイスリン「ヨクイワレル!」
胡桃「ここの対局でも大人気なんだよ!」
照「スゴい」
エイスリン「デハマタ!」
 >トテテテ ドテンッ……テクテク
胡桃(またコケた!)
白望(麻雀が強くなると 他の部分が劣化するって
 聞いたことあるけど 本当だったのか……?)
照(ペロキャンおいしい)
16:
塞「――おまたせ エイちゃんの手当てもしてきたから 安心して」
塞「じゃあ照さん痛いところ出しましょうね 消毒するから」
照「しみる……グスン」
塞「今トヨネがミルクティー淹れてくれてるから 我慢しましょうね」
照「うん……が、頑張る……ペロペロ――グスン
 ペロペロ」
胡桃(照さん可愛い!)
白望(これで20代だからなぁ……)
 >カランカラーン
17:
内木「こんにちわ」
塞「こんにちわいらっしゃいませー あら内木さん
 今日は長野からの来客が多い日だね」
内木「そうなんですか? あっ――み、宮永プロ!?
 は、はじめまして 内木一太です」
照「はひぃへまふぃへ」
胡桃「こらっ ペロキャン頬張らない!
 はしたないからめっ」
照「ふぁーい」
内木(あぁ胡桃店長は今日も可愛いな……ボクも叱って欲しいな
 ロリポップキャンディも似合うんだろうな 是非とも頬張った姿を
  いつか拝みたいもんだ 駄目かなぁ、しつこく頼み込んでみようか
  もし断られても叱らさえすれば どっちに転んでも得になるし――あぁでも次の来店の時に気まずく)
塞「はいはい妄想してないで座ってましょうね
 トヨネのミルクティーもそろそろ出来上がりますから
 おっと――トヨネー 一人分追加ねー」
20:
内木「本当ですか! 楽しみだなぁ
 じゃあ自分も失礼して――宮永プロはどうしてこちらまで?」
照「迷子になってつい」
内木「それは……
 長野の迷子センターにお世話になった方がいいのでは」
照「迷子にだって迷子センターを選ぶ権利はある」
胡桃「ある!」
内木「ありますよねー胡桃店長! アハハ!」
白望(ここは迷子センターじゃないんだけど……)
姉帯「きたよー」
21:
塞「お疲れ様トヨネ 私も半分運ぶね」
姉帯「うんっ――はい皆さんどうぞ
 熱いから気をつけてねー」
照「美味しい」
内木「ありがとうございます――うん
 なんか岩手に来たって気がします これを飲むと」
姉帯「もー大げさだよー」
内木(岩手に着いたらここに直行して
 ここを出たら長野に直帰してるから
  大げさでもないんだよなぁ……何してんだろボク)
姉帯「じゃあごゆっくりー」
24:
内木「――そういえば 前々から気になってたんですけど
 いま姉帯さんがくぐっていったカーテンの向こうって」
胡桃「住居スペース! 私達5人の!」
塞「二世帯だからね 行き来が激しくて不快ならゴメン」
内木「じゃあ一つ屋根の下で乙女たちが百rじゃなくて
 女性達5人が暮らす仲慎ましい生活空間なんですね!?」
胡桃「も、もうっ いきなり大きな声ださない!」
内木「すいませんありがとうございます!」
照(ミルクティー美味しい)
白望(みんなが話し込んでると自然とサボれていいな……)
25:
内木(そうだったのか……あの一枚の薄布の向こうは
 うら若き女性達が仲慎ましく暮らすプライベート空間……!)
内木(ぶつけどころのない性の渇望……そして 肩を並べながらも
 互いを遠ざける同性という距離感によって、夜な夜な募る
  彼女達の愛は次第に、一番近い同居相手に向けられる……!)
内木(たまらないなぁ……! 何よりそこには
 胡桃店長もいるのか あ、ヤバい……鼻血が)
胡桃「あっ 鼻血でてるよ! はいティッシュ!」
内木(天使だ……この鼻ティッシュは自室に保管しよう……)
胡桃(なぜか分からないけど気持ち悪い! 今日の内木さん)
照「ミルクティー……ごちそうさま
 そろそろ髪とか整えて? シロさん」
27:
白望「では向こうの席へどうぞ」
白望「メニューはいつものメイルやら シャンプーやらを込みで?」
照「あとヘッドスパを食べたい」
 >ヘッドスパは食べ物じゃないよ
 >え!? わたしのスパゲティが……
塞「……なんとなくだけどさ 胡桃」
28:
胡桃「ん?」
塞「シロって照さん相手だと いつもより生き生きしてるよね」
内木(白照! そういうのもあるのか!)
胡桃「あーアレね! なんか照さんの∠がやたら気になるんだって
 髪質が髪のソレとはまるで違うからとかなんとか」
塞「あぁなるほど……」
内木(なんだ……そういうんじゃ……ないのか)
30:
>カランカラーン
塞「いらっしゃいませ――あっ 久しぶりね煌さん」
胡桃「久しぶりっ」
煌「ご無沙汰しております いやはや皆様方
 息災のようで何よりです」
塞「今日も時間あるのよね? 
 なら適当にくつろいで行ってよ いま飲み物だしてくるわ」
胡桃「じゃあソファーで座って話そっ
 あっ こちらは内木一太さん! 週一で来る常連さんっ」
煌「どうもはじめまして 花田煌と申します!」
31:
内木「あ、ご丁寧にどうも 内木一太です」
煌「それにしても 週一とはすばらですね
 どちらからお越しになってるんですか?」
内木「長野からです」
煌「私は東京です! この距離がなければ毎日にでも……あっと
 立ったままというのもアレですので座らせてもらいますね 
 はぁ、やっと落ち着けました」
胡桃「いつも遠いトコからありがとね!」
煌「こちらこそ いつも心安らぐ一時を提供して下さって
 感謝していますよ 胡桃さん」
胡桃「えへへ……」
内木(可愛い)
34:
煌「仕事柄 あまり人と接する機会が少ないものですから
 様々な人が自然と集まるココは これ以上にないすばらな場所です」
 >胡桃の考えたコンセプトが
 >煌さんのニーズに当てはまってたんだね
胡桃「えっ」
煌「おっと 初耳ですねぇソレは 店主のコンセプトとは一体?」
胡桃「ちょ、ちょっとシロ そーゆー昔話は……えっと
 恥ずかしいからめっ 仕事してなさい!」
35:
煌「よいではないかよいではないかー」
胡桃「キャッ き、煌!? そんなギュッとしちゃダメっ」
内木(ガタッ)
煌「おっと失礼」
胡桃「もうっ」
内木(スッ)
塞「お待たせ煌さん はい
 トヨネ特製のミルクティー」
煌「待ってました!」
塞「よいしょ それでみんな何の話をしてたの?
 ずいぶん楽しそうだったけど」
37:
>……誕生秘話みたいな話 になるのかな
 >この店にとっては
胡桃「シロ!」
煌「あらぁ ますます気になりますねぇ」
胡桃「?っ」
内木(照れる店長可愛い)
塞「はっはーん――誕生秘話か
 どおりで胡桃が恥ずかしそうにしてるワケだ」
胡桃「むー……」
塞「はは まぁ、という私にとっても
 あまり誇らしい話ではないんだけどね」
煌「そうなんです?」
塞「この店自体 若けの至りの延長線上に
 乗っかって出来たようなモノだからさ」
40:
煌「まぁなんとっ 昔馴染みの同級生たちが集まり
 お店を開くだけでも希有なケースとお見受けしていましたが
 なにやら 嬉し恥ずかしい裏事情まであるのですね?」
煌「すばらです!」
塞(個人的にはその口癖の裏話も聞きたいけどなー)
内木(すばらって何だろう……)
煌「それで! 話して下さるんでしょう!? 店主!」
胡桃「んー……いいよ!」
煌「本当ですか!」
胡桃「恥ずかしいことづくめの思い出だけど
 一番の思い出でもあるから! 言って回りたい気持ちもあったんだ」
 >ぽふんっ
41:
内木(キタ━(゚∀゚)━!!!!)
胡桃「ね! 塞」
塞「ちょっ……仕事中に充電なし!
 膝枕禁止! みんなみてるでしょ」
胡桃「ぷー」
内木(なにこれ可愛いすぎワロタ)
煌「ふふっ 私は構いませんよ
 そのままの体制でも一向に――ね 内木さん?」
内木「可愛いすぎワロタ」
煌「えっ 今なんと?」
内木「え? あ、はい――自分としては
 永遠にそのままでも一向に、はい」
塞「も、もう……っ」
43:
胡桃「というわけで! 話すねっ 塞も手伝って?」
塞「う、うん……あーもう 二倍で恥ずかしいですけど」
煌「真っ赤になってますよぉ塞さん
 スキンシップには奥手なんですねー すばらです」
塞「うー……もう 話しますよ話しますっ
 話しながら気分を紛らわせますっ」
胡桃「ははっ あれは確か――私達が高校生三年生になって
 1ヶ月くらい後の話っ」
………
……

44:
数年前――夕方 岩手>宮守女子 麻雀部室
塞「えっ!? 胡桃、アンタ床屋で散髪してもらってるの?」
胡桃「うんっ 今日の帰りがてら寄ってくよ!」
胡桃「髪も伸びてきたからね
 最近、シロも充電されづらそうにしてるし」
白望「くすぐったい……」
塞「いやいや シロがくすぐったがってるのは自分の髪にでしょ」
塞「目元どころか顎先まで隠れてるんだから
 シロもいい加減に髪を切りなさい」
白望「ダルい……」
45:
塞「そんな事より胡桃 アンタ今時の女子高生が
 床屋で散髪してもらってるなんて よく臆面もなく言えたモノだわ」
胡桃「えっ」
塞「女の子なら美容院で調髪1択でしょ? フツー
 理容と美容じゃ 髪に与える意味合いが全然ちがうんだから
 法律的にも」
胡桃「でも! アメが食べ放題なんだよ?
 待ってる間はファミコンだってやり放題の
  そんな至れり尽くせりな空間なんだよ? 床屋って」
塞「はぁ……まったく そんなサービスを目的に
 散髪しに行ってる訳じゃないでしょ?
 見た目をより良好にする為じゃないの?」
胡桃「……」
47:
塞「それなら床屋で散髪より美容院で調髪しようよ ね?」
胡桃「プルプル」
塞「髪以外も一通り整えてくれるしさ 確かに
 遊び心は少ないけど アメもゲームも欲しいなら持参できるでしょ」

胡桃「……違う」
塞「……え?」
胡桃「違うよ!」
エイスリン「キャッ」
胡桃「塞は分かってない!」
塞「な、なにがよ」
49:
胡桃「容姿を磨くだけじゃなくて」
胡桃「そーゆートコ以外の事も 満足できる
 あのお店が私は好きなの!」
胡桃「ゲームもアメも大事だけど 他にも沢山いいトコロがあって
 そーゆートコが大事なの! 惚れ込んでるの!」
姉帯「ク、クルミー……あ」
胡桃「帰る!」
 >バタンッ
姉帯「……行っちゃったよー」
塞「……ハァー」
50:
エイスリン「クルミ……オコッテタネ」
塞「ごめんねエイちゃん ビックリさせて」
白望「塞はほんと……胡桃にゾッコンだから」
塞「べ、別にそういうワケじゃ」
姉帯「確かにねー お母さんに髪を切ってもらってるエイスリンさんや
 自分で髪を切るシロには 美容室に行けって言わないもん」
塞「……むー だって――」
塞「だって床屋よ? さっき言ったこともだけどさ
 いつ潰れるかも分からない場所に通う位なら
 もっと将来性のある場所に通った方が 胡桃のためになると思うの」
エイスリン「ベタボレ! ダネ!」
姉帯「ねー」
塞「も、もう あまり茶化さないでよっ」
52:
白望「まぁ……胡桃って可愛いよね」
塞「ちょっ!?」
エイスリン「シュラバダ! サンカクカンケー!」
白望「いや……そうじゃなくて その可愛い胡桃を維持するのが
 ……必ずしも 美容室とは限らないでしょって話」
塞「いやいや、維持じゃなくてさシロ
 胡桃が美容室でもっと可愛くなれば 胡桃も喜ぶんじゃないかって……」
白望「……可愛さって外面を良くすれば 獲得できるモノなのかな」
白望「胡桃が言ってた内面への充足感だって……
 塞が言ってるのと同じ位 胡桃の可愛さを引き立てる要素だと……思うけど」
塞「あ……」
53:
姉帯「いつもニコニコしてるからねー」
エイスリン「ポーカーフェイス! エガオノ!」
塞「そう、だよね……ありがとシロ
 私、勘違いしてたかもしれない」
シロ「次はあまり……長セリフ喋らせないでね ダルいから
 あと――」
シロ「もう1ヶ月は散髪しなくていい? 内面を良好を保つために」
塞「アンタは度が過ぎてるから今日中に切り揃えろ
 良好どころかさっき くすぐったい言ってたでしょうに」
シロ「しょぼーん」
55:
姉帯「今ごろ床屋でゆっくりしてるかなー」
塞「そうね 可愛くしてもらってるんじゃない?」
 数十分後――夕方 岩手>みちばた
胡桃「……」
 >【閉店しました】
胡桃「うーん……? 目の錯覚かな
 さっきからどーも 目が有り得ない二文字を捉えるんだけど」
胡桃「ゴシゴシ」
 >【閉店しました】
胡桃「…………」
胡桃「……」
胡桃「」
58:
次の日――夕方 岩手>宮守女子 麻雀部室
胡桃「」
塞「……」
胡桃「」
塞「……なにこれ?」
姉帯「例の床屋が閉店してたんだって
 朝からずっとこの調子なんだ……」
エイスリン「?♪」
 >バッ【 ・v・ → ゚△゚ 】
姉帯「見事なまでの放心だねー」
塞「うーん……まさかここまで入れ込んでいたとは」
59:
エイスリン「シロ! モット! ジューデンガンバッテ!
  100マンボルト!」
白望「……無理」
姉帯「ふふ 放心してても充電は欠かさないんだねー」
塞「条件付けされてるんじゃない? シロの顔を見たら
 無意識にくっつくように……もう」
胡桃「」
白望「ダルいなぁ……」
塞「明日には立ち直ってくれるといいけど――」
塞(胡桃……)
胡桃「」
62:
次の日――夕方 岩手>宮守女子 麻雀部室
塞「――はい 案の定
 精神的に弱った胡桃が風邪をもらって欠席したので
 今日はみんなで緊急会議です」
塞「昼にメールしたから議題は行き渡ってるね?」
エイスリン「クルミフッカツ!」
塞「うんそう みんな考えてきてくれた?」
姉帯「うーん……考えてみたけどさー はてさてどうしよー状態だよ……」
エイスリン「スゴイジュウデンヲ! カマス!」
塞「シャドーしながら言わない シロは?」
白望「……ダルい」
塞「シロでさえ思いつかなかったかぁ……」
63:
エイスリン「ムムム――」
塞「……私は胡桃が通ってた理容店に
 連絡をとってみたりはしたんだけど もう機材や道具も処分したみたいで……」
塞「思いついた事も どこかの娯楽施設に遠出して
 埋め合わせをする……なんて事ばかりだし」
塞「胡桃にも詳しく聞いてみたんだ
 再現するにはどんな内容や内装をすればいいのか
 みたいな事も メールで……でも、やっぱりダメみたいで」
塞「もう……どうしたらいいか ……グスッ
 分からなくて」
64:
姉帯「あわわわー……塞ー 泣かないでー……?」
塞「ん、ゴメン……大丈夫 ありがとうトヨネ」
塞「本当に辛いのは 私じゃなくて胡桃なんだ
 私が泣いてたらダメだよね うん」
 >お困りのようだね
エイスリン「コノコエハ!」
熊倉「大事な教え子の危機を救うための会議に
 私を入れてくれないなんて 寂しいじゃないのさ」
 \熊倉先生!/
66:
塞「――というワケなんです」
熊倉「なんだ そんなの簡単じゃないか」
塞「か、簡単なんですか!?」
熊倉「要はあの子が気に入ってる場所に見合った
 お気に入りの場所に 髪切り所を仮設してやればいいのさ」
姉帯「そんな場所があるんですか?」
熊倉「通ってたいた髪切り所のように 高校の拘束時間外に
 通える場所に限るなら アンタ達が一番よく分かってるだろう?」
白望「……麻雀部 この部室――」
67:
熊倉「まぁ あの子を満足させられるかどうかは
 アンタ達次第だけどね まぁ勝算はあるだろう」
熊倉「アンタ達以上に 胡桃を理解できる人はいないんだ
 それくらいアンタ達が過ごしている 高校時代という時間は
  濃密で、信用に値する力をくれるモンなんだ」
熊倉「それが裏打ちしてくれるよ
 アンタ達の行く先々の道をきっとね 私も若い頃は――」
塞「熊倉先生」
熊倉「ん? なんだい」
塞「話が長いです」
熊倉「あ、うん ゴメン……」
68:
塞「でも――ありがとうございますっ
 おかげで分かってきました」
塞「どこまで出来るか分からないけど……私は
 胡桃のために やれるだけのことはやってみます!」
姉帯「私もいるよー」
エイスリン「イルヨ!」
白望「よ」
塞「みんな……ありがとう」
熊倉「じゃあ私は行くね 頑張ってみんな」
塞「はい!」
70:
二日後――夕方 岩手>宮守女子 ろうか
白望「部室に連れて行くだけなら分かるけど……
 胡桃をおんぶする必要はあるの?」
胡桃「」
塞「仕方ないじゃない
 シロにくっついて離れないんだから」
塞「風邪も治ってソコは大丈夫ないんだし
 なにより今は胡桃にサービスする時間なんだから キビキビ運ぶ」
白望「ダルい……」
塞「もう ホントは私が運びたかったのに……」
白望「え?」
塞「なんでもない」
72:
塞「はい到着――じゃあ胡桃を下ろして?」
白望「うん」
白望(くっつかれながら下ろすの難しいな……)
胡桃「」
塞「はい胡桃 どうぞ? この扉を押して
 ――うん その調子」
胡桃「」
胡桃「……」
胡桃「あれ? ここ部室だよね?」
胡桃「わぁ……!」
73:
――夕方 岩手>宮守女子 麻雀部室
胡桃「スゴい! なにこれっ」
胡桃「照明とか!」
胡桃「壁紙とか!」
胡桃「床もいつもと全然ちがう! ピカピカしてる!」
胡桃「なんか真ん中に椅子もある おっきー鏡も!」
姉帯「いらっしゃいませー胡桃さまー
 こちらへどうぞー」
エイスリン「オイデヤス?」
胡桃「トヨネもエイちゃんもエプロンしてて可愛い!」
塞(私もしてるんだけどなー)
76:
胡桃「で、でもみんな コレって一体どーゆー」
姉帯「どうぞー こちらがメニューだよー」
胡桃「メニュー……? 料理がたくさん書いてあるけど」
エイスリン「ウデニヨリヲカケマスヨー」
胡桃「う、うんと……? じゃあこのミルクティーと
 クレープをお願い」
姉帯「うんっ しばらくお待ち下さい」
 >ガラッ バタン
胡桃「え? え? トヨネー?
 行っちゃった……」
塞「じゃあ 準備が整うまでの間
 こっちで遊びましょ? 胡桃」
77:
>ウィーンガシャン
胡桃「……」
塞「どうしたの? ボーっとして
 風邪で麻雀のやり方を忘れちゃった?」
胡桃「う、ううん 平気」
 >トンッ
胡桃(なんだか いつもの麻雀部じゃない)
胡桃(内装もだけど みんなの様子とか)
 >トンッ
胡桃(それに……何だろう このニオイ)
胡桃(スゴく落ち着く……)
79:
胡桃(なんだっけ ニオイの名前――)
 >トンッ
胡桃(タルカムパウダー? だっけ)
胡桃(えへへ、何だか床屋さんみた
 ――あっ……)
胡桃(……)
胡桃(そっか――これ……全部みんな)
胡桃(私のため……なんだ)
80:
胡桃「……」
塞「……胡桃? 大丈夫? まだ、どこか悪い?」
胡桃「ううん……グスッ そうじゃないの
 ただ、嬉しくて……えへへ」
胡桃「――ありがとね エイちゃん、シロ、塞 あとトヨネもっ」
胡桃「私、もう 無くなった事を悲しんだりしないよっ」
胡桃「無くなった場所を 補えるくらいの場所を
  自分で作れるように頑張る!」
胡桃「その気になれば出来るんだって みんなが教えてくれたから」
胡桃「だから ありがとっみんなっ」
83:
エイスリン「ドウイタシマシテ!」
白望「……お礼なら 後でトシ先生にもね――あと」
白望「いちばん必死になってた対面の人には 特に」
塞「……へ!?」
胡桃「塞が?」
塞「べ、べつに大した事なんてしてないって
 私が胡桃の為に必死になる事なんて――」
白望「ふーん……胡桃のためだったんだ
 塞以外はみんな 部活仲間のために頑張ってたハズだけど」
塞「も、もうシロ!? そういう屁理屈はなし!」
胡桃「さーえっ」
 >ギュッ
84:
塞「キャッ」
胡桃「ありがとう!」
塞「あ、あはは……ふ ふふふふふふ」
エイスリン「サエ! ニヤケテル! カオマッカ!」
胡桃「んっ シロじゃなくて塞でも充電できるかも!
 あっちで試そっ ねっ」
白望「……」←これからは少し楽が出来るなぁと喜んでいる
 >ガチャ
姉帯「ミルクティーできたよー」

……
………
86:
現在――昼 岩手>理美容店ミヤモリ
煌「なるほどなるほど ここの基本的なスタンスは
 店主が理容店に対してもっていた 思い入れを元に作られたモノだったんですね」
胡桃「うんっ」
内木「ですけど ここって美容店も併合されてますよね
 その点は胡桃店長が認めたって事ですか?」
胡桃「ソコは塞のこだわりっ ねー?」
塞「う、うん……」
煌「すばらですねぇ 対立して別の道に歩むハズだった気持ちが
 互いに認めあって 手を結ぶと決めた」
煌「いやはや 羨ましい限りですよ」
内木(これをキッカケにシロ胡が胡塞になった……アリですね)
 ※実際には理容と美容を合同して経営するのは
 あまり勧められたコトじゃないから よい子はマネしちゃダメだし! カナちゃんと約束だし!
88:
>カランカラーン
咲「お姉ちゃん! ……いた
 あぁ……よかったぁ」
 >あ、咲
 >ちょ 直しがダルくなるから動かないで……
塞「いらっしゃいませ咲ちゃん」
胡桃「いらっしゃい!」
咲「塞さん 胡桃さん
 いつもお姉ちゃんがお世話になってます」
塞「座って? いまミルクティー持ってくるわ
 っと、いい加減にどきなさい胡桃!」
胡桃「はーい……」
内木(一時間足らずで長野からココに来た事はツッコまないのか)
89:
咲「よいしょ――あれ?
 副会長じゃないですか! それに煌さんも」
煌「お久しぶりです宮永さん! 以前ここでお会いしてから
 半年ぶりといったところでしょうか」
内木「ボクは高校の卒業式以来――になるのかな あはは」
胡桃「不思議! 照さんは二週間おきに迷子になって
 内木さんは一週間おきに来てるのに 今まで一度も会わなかったんだ」
煌「ホントですねぇ 私は約2ヶ月おきですし」
内木「ほ、ホントだ! 不思議ですね! あはは
 は、はははは……」
内木(ボクの狙いバレてないよな……?)
咲(副会長は胡桃さん目当てなんだろうな)
92:
白望「――おまたせ 一通り終わったよ」
照「ただいま 咲」
咲「もう! ただいまじゃないでしょ
 いつもお姉ちゃんは――あ……」
照「おめかししてきた」
咲「お姉ちゃん スゴく可愛い……
 いつもだけど、いつも以上に」
胡桃「シロってば相変わらずいい仕事するね!」
シロ「そうすか」
照「私が可愛くなったのは咲のため つまり
 私がいつも、道に迷うのは咲のため」
咲「いやその理屈はおかしい! でも――嬉しいよ! お姉ちゃん!」
93:
咲「じゃあはやく帰ろう! お姉ちゃん
 私のためにしてくれた事なら 私だけに見せて欲しいもん」
照「うん」
内木(なんというシスコンカップル……!
 今日はなんて収穫の多い日だ 来てよかった……!)
白望「会計はこちらで――」
 >――お預かりします
 >またね あ……咲、今日の夜ごはんはスパゲティが
 >カランカラーン
煌「いやはや 宮永妹さんはお姉さんしか
 眼中にないといった感じでしたね」
胡桃「シロとエイちゃんがスゴいからねっ
 それだってお店の自慢!」
塞「あれ? 咲ちゃんは……あれ? 帰っちゃったの!?」
94:
数時間後――昼 岩手>理美容店ミヤモリ
煌「――さて そろそろ私も失礼しますね」
塞「あれ? もういいの?」
白望「みんなで閉店までのんびりしよう」
内木「しましょう!」
胡桃「シロはのんびりしすぎっ」
煌「……」
煌「いえ 見た目は整えて頂きましたし
 それに――良いお話も聞かせてもらえましたので」
塞「そ、そう 私としては適度に思い出した後
 忘れてもらえると助かるかな……はは」
96:
煌「考えておきます! では、ありがとうございました
 また会う日まで皆さん」
 >カランカラーン
煌「……」
………
……

97:
――「花田……なんでば東京に行く!」
――「私らと一緒にいよう約束は のうなったんか……?」
煌「……すいません」
煌「やはり私には 皆さんが用意してくれた場所は
 荷が重すぎます……私では 皆さんの足を引っ張ってしまう」
――「そんなことなかばいて! インターハイば思い出しと」
――「花田をがとなか言うヤツんおったら 私がやかましゅ言うてやる!」
99:
煌「……すいません」
――「なんでよ……花田 花田はそこまでネガティブばこと言わん!
 すらごと言うな!」
煌「……」
――「っ……!」
――「もう知らん! 花田なんて
 どこへとも行うてしまえ! 顔も見たくなか!」

……
………
101:
>ぴっ、ぴっ
煌(怖いですねぇ 向き合うというのは)
煌(数年もの長い間、一度たりとも連絡を取り合わなかった
 仲間達が その相手であれば尚更)
煌(きっと私はずっと逃げていたんですね
 あのお店に……)
煌(強い結びつきを感じられる場所に……
 別れた仲間達との 繋がりを感じさせてくれる場所に)
 >トゥルルル トゥルルルル
煌(店主――次そちらにお伺いする時はきっと
 逃げるためではなく 進むためにお邪魔いたします)
煌(そして感謝させて下さいな
 自分の意も 仲間の意のどちらも蔑ろにしない
 アナタ達の在り方が 私の背中を押してくれた事を)
煌「もしもし、花田 煌です――お久しぶりです 部長」
煌(きっと 仲間達と一緒に――)
カン!!!!
103:

塞さん可愛い
105:
数時間後――夜 岩手>理美容店ミヤモリ
胡桃「さっ そろそろ閉店だよ!
 帰った帰った!」
内木「せ、せめてあと一分 いやあと十秒――」
胡桃「めっ」
内木「めっいただきました――」
 >カランカラーン
 >バタンッ
胡桃「んっー……みんな! 今日も1日お疲れ様!」
塞「お疲れ様ー 先にあっち戻ってシャワー浴びるわ……」
白望「もう動けない……」
106:
胡桃「もう! ソファーで寝たら風邪引くよ!
 はい毛布!」
白望「ありがと……」
姉帯「お疲れさまー 二人とも」
胡桃「トヨネっ」
姉帯「ご飯なら あとあと30分くらいで出来上がるよー」
姉帯「今日はちょっと豪勢だから楽しみしててねー」
胡桃「うんっ だってさシロ!」
白望「起き抜けに食べるから……今は寝かせて」
胡桃「りょうかい!」
胡桃(今のうちに明日の仕込みを済ませておこっと
 なんたって明日は――)
107:
30分後――夜 岩手>理美容店ミヤモリ
 住居スペース>居間
塞「ふーさっぱりさっぱり――うっわスゴっ
 ローストビーフにチーズフォンデュ ケーキまであるじゃない」
塞「今日って誰かの誕生日とかじゃないわよね
 コレって……」
エイスリン「キネンビ!」
胡桃「開店一周年のね! 正確には明日だけど」
姉帯「腕によりをかけて頑張ったよー」
姉帯「みんなとずーっと一緒にいた記念と
 みんなとこれからも一緒にいたい 私からの気持ち」
塞「トヨネ……」
108:
姉帯「えへへ……不束者ですけれど
 これからも末永くよろしくねー」
塞「嫁入りかっ――まぁ私からもありがとう
 これからもよろしく」
エイスリン「ウンッ アリガトウ」
胡桃「ありがとっ 店長として
 これからも邁進するよっ」
白望(一周年か どおりで……あんな夢をみたわけだ
 ――ん 記念日ってことは……まさか)
110:
エイスリン「シロ! ナンカ アオザメテル!」
白望「店長――明日の店の方針も
 もしかして記念日仕様に……?」
胡桃「もちろん! 粗品を配ったり
 割引で会計も少し勝手が違ってくるかな
  開店前には特別な飾り付けを――」
白望「うん、明日は有給とるね 一日中
 夢の中へ旅行しに行くから 探さないで下さい」
胡桃「めっ」
白望「なんてブラックな職場なんだ……」
胡桃「シロの名前で中和すれば グレーゾーン!」
白望「そんな無茶な……」
111:
姉帯「それにしてもスゴイよねー」
塞「スゴイって?」
姉帯「高校生の時みんなとやってた事を 今のお仕事にしてるって」
エイスリン「ハフハフっ! ハムハフハフっ!」
姉帯「あ、わわわー 冷ましながら食べないと火傷するよー エイスリンさん」
塞「仕事なら麻雀でもよかったんだけど 胡桃に誘われてさ
 こういうのも 意外と楽しそうかなって思ったのよね」
白望「というのは建て前で……塞は誘われるまでもなく
 胡桃の居場所を一緒に作っていきたいって いつも言ってt」
塞「わーわー! もうシロ!」
胡桃「くす――」
112:
塞「もう――でもさ シロまで乗ってくれたのは意外だった」
白望「……麻雀よりはダルくなさそうだし いつも自分で散髪してたから
 ……実際は免許とか試験とか面倒だったけど」
塞「シロらしい消去法だね」
姉帯「私は美容とかとか興味あったのが強いかなー
 もちろん みんな一緒なのが第一だったけどね」
エイスリン「トヨネ! オシャレ!」
胡桃「エイちゃんもオシャレ! スタイリスト!」
塞「ふふっ、今となっては みんなオシャレになっちゃうのかな」
姉帯「うんうん みんな一緒だよー」
113:
>イッショイッショ!
 >あ、そこのオタマとってー
 >えへへー

……
………
 数時間後――夜 岩手>理美容店ミヤモリ
 住居スペース>塞と胡桃の部屋
塞「――あっ そうだ胡桃?
 って胡桃はシャワーだったか」
塞(……胡桃)
 >カタン
115:
塞(卒業式に撮ったこの記念写真)
塞(あれからもう何年も経ってるのに
 私達はみんな 何も変わらずいられたね)
塞(変わらないために 変えてしまったこともモチロンある
 でも 私達の本懐はいつでも同じままだった)
塞(これからもずっと このままでいられるかな……)
 >ガチャ
胡桃「さ、塞……?」
塞「胡桃? どうしたの、隙間から顔だけ出して
 湯冷めするから早く入ってきなさい」
胡桃「う、うん――えへへ どうかな?」
塞「どうってなにg――へ!?」
117:
胡桃「じゃじゃん! タンスから引っ張り出してきたんだ」
塞「」
胡桃「みんなと話しているうちに色々と思い出しちゃって」
胡桃「あの頃から 腰とか胸周りとか
 カラダがまるで成長してないのは複雑だけど……」
胡桃「変わり映えが少ないおかげで
 高校の制服を着こなせると考えると 割とお得だね!」
塞「」
胡桃「塞……?」
塞「……は!」
塞(ヤバいヤバいヤバい! いまめちゃくちゃ見惚れてた!
 何コレ不意打ちすぎんでしょ! と、とにかく落ち着くんだ 素数を数えてry)
118:
胡桃「あれ……? もしかして変だった?
 襟が立ってるとか――」
塞「そ、そそんなワケないひゃニャい!」
胡桃「そっ よかった」
 >ピョコン
胡桃「充電充電」
塞(……変わらないなぁ この感触も)
120:
胡桃「さーえっ」
塞「なに?」
胡桃「好き」
塞「私も」
胡桃「お昼もその位オープンならいーのに」
塞「仕事中は別なんです」
胡桃「……分かってる 分かってるけど
 ときどき怖くなるのっ」
胡桃「塞の好きがだんだん少なくなって
 塞が私を 好きじゃなくなるんじゃないかって」
胡桃「変わっちゃうんじゃないかって……怖くなる」
121:
塞(そっか 胡桃も私と同じことを……)
塞「……」
塞「大丈夫 私は変わらないよ」
塞「胡桃が小さくなったり大きくなったり
 どんなに変わってしまったとしても 私の胡桃に対する気持ちは変わらない」
胡桃「ほんと?」
塞「うん だから胡桃は
 胡桃の思うままに変わって 頑張ればいいの」
塞「私がいつまでも側にいるから ね?」
122:
胡桃「嬉しい!」
 >チュッ
胡桃「じゃあ いつもみたいにシてくれる?」
塞「する!」
塞「っていうか私は 胡桃のその姿を見た時からもう
 ギューッとしたくてたまらなかったの――」
胡桃「きゃっ」
123:
昔を懐かしみながらする秘め事は いつも以上に燃え上がり
これからも変わらないという気持ちを誓いあうように
朝日が登るまで、二人は行為をただひたすら繰り返した――
 >クルミクルミィ
 >サエサエサエー
 >ギシアンアン
白望「……この分だと
 明日の準備は一人になりそうだな……ダルい」
もいっこカン!!!
126:
オツヤデー
12

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