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晴「春紀さんって素敵ですよね」 兎角「!?」
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1:
兎角「一ノ瀬、なにを言っている」
晴「だって、クールでカッコよくて、人当たりもよくて飄々としているところも素敵だと晴は思います!」
兎角「馬鹿か……本当どうかしている」ハァ
晴「素敵だなぁ……春紀さん」
兎角「……私も、クールだと思うが」
晴「?」
2:
兎角「私も、無駄口は叩かないし……クールといえばクールだと思うぞ」
晴「そうですねっ、兎角さんもクールで格好いいと思います!」ニコッ
兎角「……そ、そうか」ポリ
晴「素敵だなぁ……」
兎角「……そこまで褒められると… 晴『春紀さん』
兎角「……」
3:
晴「春紀さんと、もっと仲良くなりたいなぁ……なんて」テヘ
兎角「……」ハァ
兎角「アイツはお前を殺し狙う、暗殺者だぞ。私たちの敵だ!!」
晴「っ……」
晴「」クス
兎角「なにがおかしい……」ジト…
晴「だって…」
晴「……兎角さん、『私たちの敵だ』って…」
晴「晴はひとりぼっちじゃない、って言ってくれているようで嬉しかったんです」ニコ
兎角「っ……」
兎角「……」
兎角「それは……一ノ瀬は、私が守ると決めたからで…」
晴「はいっ」ニコ
兎角「……本当に、わかっているのか?」タラ
晴「わかってますよ。ありがとうございます、兎角さん」ニコッ
兎角「ま、まあ……わかっているのなら… 晴「でも春紀さんって素敵ですよね」エヘヘ
兎角「……なにもわかっていない…」
8:
晴「春紀さん、なにか欲しいもなあるのかなぁ……」
兎角「お前は惚れた男に貢ぐタイプか。将来苦労するな」
晴「貢ぐなんて……それに、春紀さんは女性です!」
晴「……男性よりも格好よくて素敵ですけど…」
兎角「」イラ
兎角「じゃあ、お前自身をプレゼントしてやればいいじゃないか。向こうも1番欲しいものがやってきてさぞ喜ぶだろう」
晴「は、晴自身をプレゼントですかっ?」
兎角「い、いやっ、今のは勢いでつい……勿論冗談の類だ。気に留めるな」アセ
晴「晴自身を……」
兎角「……バカな事を言ってしまった」ハァ
9:
【教室】
ザワザワ…
晴「春紀さん!」
春紀「おっ、どうしたんだ? 晴ちゃん」
兎角「”晴ちゃん”だと……随分と馴れ馴れしいな」
春紀「おはよう東」ニィ
春紀「なに、クラスメイトと親睦を深めるには愛称を変えるのが手っ取り早いだろう?」
晴「あっ、あの……!」
春紀「? ああ、聞いてるよ。落ち着いて話しな」ニコ
晴「じ、実は……」
晴「春紀さんにっ、私をプレゼントしようと思って!!」カアァ
春紀「は?」
ポロッ
伊介「ちょっと、口からモノを落とさないでよ。きたなーい」
春紀「あー……わるいな。伊介様」
兎角「……頭が痛い…」ハァ
10:
春紀「えー……っと」チラ
ザワザワ…ヒソヒソ…
春紀「黒組中から視線が集まっているけど、それは一体どういう意味だ?」タラ
晴「そのままの意味です! 晴自身を春紀さんに捧げようと思って……」モジ…
伊介「アンタ、どんな手使ったのよ」ジロ…
春紀「いやー……今のところはなにも…」
春紀「けど、くれるというのなら断る手は無いな」スッ
晴「あっ……」
春紀「私が聞くのもなんだが…」
春紀「……いいのかい? 本当に」
晴「は、はい……」カアァ
春紀「ようし、いい子だ。じゃあ早、今夜体育館の方に……」
兎角「寒河江……」
春紀「ああ、忘れていたよ」
春紀「ナイトくん。すぐには仕留めないさ……東兎角が側にいる限りはな」フフ
兎角「……」
兎角「一ノ瀬。馬鹿やってないでさっさと席に… 晴「兎角さん……」
兎角「?」
晴「兎角さんのいじわる!」
兎角「なっ……!?」
11:
晴「晴は、春紀さんと仲良くなりたいのに……」
兎角「そ、それは…」
兎角「……一ノ瀬のためを思って…」
晴「晴の事を思ってくれているのなら、応援してくださいっ」
兎角「うっ……」
兎角「くそっ、私は……試されているのか…」グハッ
伊介「……ギャグ?」
鳰「さぁ……どうっスかね…」タラ
15:
【自室】
兎角「……それで、これからどうするつもりなんだ?」
晴「ええと、春紀さんとお昼でも食べられたら晴は嬉しいですっ」
兎角「……」ハァ
兎角「百歩譲って、お前と寒河江が仲を深めるとする」
晴「はい」ニコ
兎角「もし、その時にアイツから予告票を渡されたらどうするんだ?」
晴「……その時は…」
兎角「……その時は?」
晴「……勿論逃げます」ニコッ
兎角「……」
晴「暗殺に失敗した場合、暗殺者は退学となる決まりらしいので……春紀さんとは学外でお会い出来たら…と」エヘ
晴「でも、そうならないようにたくさんお話したいなと思っています」ギュッ
兎角「……」ハァ
兎角「お前というやつは……救えないな」フフ
16:
【昼】
晴「……」
カチャッ
兎角「寒河江を昼食に誘ったのはいいが…」
兎角「……お前まで誘った覚えはないぞ」ギロ
鳰「やだなぁ?兎角さんったら、ウチも黒組の仲間じゃないっスか」ニコニコ
兎角「腐臭が酷いな……飯が不味くなる」
鳰「……」
鳰「それで、春紀さんのどこをそんなに気に入ったんスか?」ニコッ
晴「えっ」
晴「それは……ぜんぶです」
鳰「全部?」
晴「はいっ。春紀さんのぜんぶが魅力的で…」
晴「……とても素敵だと思います」ニコ
鳰「……こっちまで恥ずかしくなってくるっスね」ハハ
鳰「これは兎角さんの勝ちの目は薄いかもしれないっス」チラ
兎角「黙れ……」イライラ
鳰「……ここに来て1番の殺意っスね…」ハハ…
18:
兎角「見た目ちんちくりんのお前では確かに、寒河江の代わりにはなりそうもないな」
鳰「あらーそんな事言っちゃいますか兎角さん」
鳰「どう見えてるかわかりませんが、こう見えてもウチ、Dはあるんで。セクシーさでも一見の価値ありっスよ」フフン
兎角「……」チラ
晴「トランジスタグラマーさんですね」ニコ
兎角「……」チッ
鳰「ちょっと……兎角さん? こちらに怒りを向けないでくださいよぉ…」ハァ
兎角「一ノ瀬は……寒河江のスタイルの良さも見ているのか?」
晴「たしかに、春紀さんの魅力を語る上で挙げられる一つですね」
晴「格好いいと思います」ニコッ
兎角「……そうか…」
鳰「だからウチを睨まないようお願いするっス」タラ
20:
春紀「来てみれば……」チラ
鳰「あっ、春紀さんどうぞどうぞ」ニコ
春紀「……まあ、いいか」
晴「春紀さん?」
鳰「どうやら、ウチは春紀さんに良い感情を持たれていないみたいなんス」ヒソ
晴「……」
春紀「晴も東も美味そうなの食べてるな。一口くれないか」ニィ
兎角「話しかけるな。お前が話すべきは一ノ瀬だけだ」パク
春紀「つれないねぇ……」
晴「あ、あの……春紀さん」
春紀「?」
晴「鳰さんとも……お話するべきだと晴は思います」
鳰「……」
春紀「わるいけど、ソイツと仲良しごっこする気は無いんでね」
鳰「……い、いや?まいったっスね」
鳰「晴さんも、ウチのために春紀さんの機嫌を損なう必要ないんで。ウチも気にしないですし」
晴「黒組の一員として、クラスメイトとして『気にしない』なんて悲しいこといわないでください……」
春紀「……」ハァ
春紀「わるい、席外すな」
ガタッ
鳰「ああ春紀さん?…」
鳰「……行ってしまいましたね」ハハ…
晴「……」
鳰「……」
鳰「やはり、人の気を惹くのが上手な人ですね……」フム
36:
【自室】
兎角「……よかったのか?」
晴「……皆さん仲良くしてほしいですから」ハハ…
兎角「わからないな」ハァ
兎角「走りなんて放っておけばいいだろう。アイツ自身も気にしないと言っていたし、それで寒河江の心象を悪くする必要なんて……」
晴「兎角さん、心配してくれてありがとうございます」ニコ
兎角「っ」
兎角「(どうして助言なんてしてるんだ私は……)」チッ
37:
香子「……それで、私たちのところに来たのか」
晴「困ったことがあったら委員長さんに聞けばいいかな、と……迷惑ですよね」ハハ…
香子「いや……長として、クラスメイトの悩みは聞こう」
凉「香子ちゃんはしっかりしとるのう……」ノビ
晴「凉さんはストレッチをしてるんですか?」
香子「構わなくていい。私が相談に乗ろう」
凉「相談にのれるほど恋愛ごっこしてきているのかのー香子ちゃんは」ンーッ
香子「ノビをしながら人を挑発するとは器用だな首藤は……」ピキッ
凉「そんな香子ちゃんがワシは好きじゃて」ニコ
香子「っ……」
香子「掴めないやつだな、相変わらず……」
凉「……可愛いじゃろう?」ニッ
晴「はいっ」ニコニコ
兎角「……」
38:
……
香子「なるほど、それで寒河江に付きまとってるわけか」フム
晴「さっき春紀さんを怒らせてしまって……」
香子「結果はともかく、クラスの調和を重んじての事だ。悪いことあるまい」
香子「委員長の私が言うのも難だが、走りを庇って自らの理を逸するなど賢いとは思えないがな」
晴「はは……」
凉「晴ちゃんは仲良くお手々繋いで卒業しましょうと言っているんじゃ」
凉「めんこいじゃろう、よしよし」ニコ
ナデナデ
晴「凉さん……」エヘヘ
香子「……」ムゥ
香子「めんこいなら寒河江にもその可愛さで媚を売るべきだ」
晴「媚って……晴はそんなつもりじゃ…」
香子「それは東に聞けばわかるんじゃないか?」
香子「大分、一ノ瀬に執心らしいしな」
兎角「……」
39:
兎角「一ノ瀬、帰るぞ」
晴「兎角さんっ」
兎角「ありがたい言葉を賜った事だ。もう用はないだろう」
スタスタ…
晴「あっ、ありがとうございました!」ペコッ
タッタッタ…
香子「……」
凉「香子ちゃん……なにをそんなに強く当たるんじゃ?」
凉「晴ちゃんが可哀想じゃろう」
香子「私なりに助言はした。不満なら首藤が教えてやるといい」フン
凉「……若いのう…」フワァ…
40:
【自室】
兎角「ということで、戻ってきたが……」チラ
晴「……」
ギュッ
兎角「なにを抱きついている……」
晴「だって、兎角さん怒っているようだから……」
晴「晴には、慰め方なんてわからないので…」
兎角「……」ハァ
兎角「ただ、神長の言い分があまりに幼稚だったから呆れただけだ」
晴「……それなんですが」
兎角「?」
晴「兎角さんが、晴の事を助けてくれる理由は… 兎角「寒河江のところに向かうぞ」
晴「兎角さーんっ」モウ
兎角「お前らしさを見せてやるだけでいい」
晴「晴らしさ……?」
41:
【2号室】
伊介「なに? 春紀?? 伊介しらなーい」
晴「そう……ですか」
晴「お邪魔しました」ペコッ
伊介「……ちょっと待ちなさーい」
グイッ
晴「うえっ」
兎角「犬飼っ!」
伊介「べつに危害を加える気は無いわ」
伊介「最近、春紀にちょっかいかけてるみたいだし。子バエがたかってるみたいでウザいのよねぇ」
晴「すみません犬飼さん……」
鳰「おや」
伊介「あら鳰、ちょうどいいからこの子捕まえといてよ」クス
鳰「あー…」
鳰「……遠慮しとくっス」ハハ
伊介「はあ?」イラ
鳰「まあ伊介さまの暇つぶしにもならないと思うんで、放っておいたらどうっスか?」ニコニコ
伊介「……」
伊介「もうノリわるーい、イライラする」
パッ
晴「きゃっ」
伊介「めんどいから、もうこの部屋に来ないでよ…」
伊介「……次来たら、予告票なんて関係無しにやっちゃうから」ニコ
ガチャンッ
晴「あっ」
晴「鳰…ちゃんっ、ありがとう」ニコッ
鳰「……」
鳰「あー、ガラにもねえことしたっス」ポリ
鳰「あと、”鳰”でいいっスから」
スタスタ…
晴「はいっ」パアァ
兎角「……」
45:
……
鳰「……」
晴「それでね、春紀さんが私の手をとって『悪いこと出来なそうな手だ』って」エヘ
晴「『柔らかい』とも言ってくれて……好意的な言葉ですよね?」エヘヘ
鳰「……」チラ
兎角「……」
鳰「……なるほど、兎角さんは毎度これを喰らってるってワケっすか」タラ
鳰「春紀さん美人すもんね」ハハ…
晴「?」
晴「鳰もすごく可愛いと晴は思います」ニコッ
鳰「っ」
鳰「いや?まいったっスねえ……」ポリ
鳰「兎角さんの事言えねーっスよウチ…」カァ
55:
【5号室】
しえな「……ボクたちに白羽の矢が立ったワケだ」
乙哉「へーっ、晴っちあんなのがタイプなんだ」
晴「た、タイプと言いますか…」
晴「……素敵な形なので、もっと仲良くなれたらなぁ…って」テレ
乙哉「晴っち乙女だねえ……」ニヘ
しえな「容姿でターゲットを誘惑する……まあ、オーソドックスといえばオーソドックスだな」
乙哉「でも、その気持ちわかるなあ」
晴「武智さんも、春紀さんの魅力がわかりますか?」ワァ
乙哉「ううん」
乙哉「私がわかるのは晴っちの魅力だよ」クス
晴「え?」
乙哉「いいなぁ……想像するだけで興奮してきちゃう…」ハァハァ
晴「なにを想像するんですかっ??」ハラハラ
しえな「……気をつけろよ一ノ瀬…」ハァ
56:
乙哉「なんの想像、って?」
乙哉「そうだねー、まず晴ちゃんの服を剥いて……」
晴「”剥い”……? た、武智さんっ」カアァ
乙哉「その柔らかそうな肢体に指を這わせて……」ハァハァ
ゴツン
乙哉「痛っ!?」
しえな「イジメは許さないぞ」フン
乙哉「やだなあ、しえなちゃん…」イテテ
乙哉「……イジメなんかじゃないって」ニィ…
しえな「……」
しえな「信用出来ないな」キッパリ
乙哉「ヒドいなーもう」ニコニコ
乙哉「……でも」
乙哉「誘惑してみる、っていうのはどう?」
晴「誘惑……ですか?」
乙哉「そう……晴っちは興奮する身体してるんだし… 痛っっ!?
しえな「セクハラもイジメとみなすぞ、ボクは」ジィ…
乙哉「だからイジメじゃないって……」
晴「はは……一応、助言はいただいておきますね」タラ
58:
【自室】
晴「……」
兎角「……」チラ
晴「……」ドキドキ
兎角「……」ハァ
兎角「それで、するのか? 誘惑」
晴「ふぇっ!?」
晴「そそ、そんな誘惑なんて……」
兎角「まあ、そうだらうな… 晴「春紀さんの好みもわからないですし……」テレ
兎角「……」
59:
兎角「一つ確認しておくが」
晴「? はい」
兎角「お前は、寒河江と今よりも仲良くなりたいんだよな」
晴「はいっ」ニコ
兎角「……」
兎角「それは、友達として今よりも。ってことでいいんだな?」
晴「……?」
兎角「」ハァ
兎角「……恋人になりたいわけじゃないんだよな、ってことを言いたいんだ」
晴「こ、こここ恋人!?」ドキッ
晴「それは……」
兎角「……」
晴「……春紀さんの気持ちもあるし…」チョン、チョン
兎角「……」チッ
60:
兎角「正直、ソッチの気があるんじゃないかと疑っている」
晴「は、晴が!?」
晴「そそ、そんなこと……今までまったくなかったし…」モジ
兎角「……武智の言うとおり、お前は男も女も引き寄せる何かがある」
晴「晴は…」
晴「……晴は、みんなに生かされているだけだから」
晴「それが、人を惹きつける特別な力なんて思ってないよ」
兎角「……」
晴「もし、恋人…というか」
晴「そういう気持ちになるのならそれは…」
兎角「……」
晴「それは晴じゃなく、春紀さんが特別な存在ってことなんだと思うな」ニコッ
兎角「…………」チッ
62:
【4号室】
柩「ゆ、誘惑ですか?」カァ
晴「晴もちょっと恥ずかしいなー…と」
千足「桐ヶ谷に妙な事を言わないでほしい」
兎角「すまない。手短に済ます」
柩「でもわかります。春紀さんカッコいいですよね」ニパ
晴「うんっ」ニコ
晴「生田目さんもカッコいいよね」ニパー
柩「はいっ」ニコ
エヘヘ エヘヘ
キャッキャ
千足「……女子、というオーラが出ているな」
兎角「この二人の組み合わせは特に、な……」
63:
柩「この前、晴さんが届かないところにあるモノを春紀さんが取ってくれたじゃないですか」ニコ
柩「ああいうシチュエーションって、ぼく憧れます」エヘ
晴「ドキっとするよね……」
晴「柩ちゃんが転びそうになった時に、生田目さんが咄嗟に支えてくれ時とかも…」ウットリ
柩「王子様ですよね……」ウットリ
兎角「私は、爆発の中でも一ノ瀬を助けるつもりだが」
千足「……苦労しているみたいだな、東も」
64:
千足「一ノ瀬」
晴「?」
千足「まあ……私も人に助言をするほど経験が多いわけではないが」
千足「急くのが良いことだけともならない」
千足「君自身を知ってもらうのもいいが、寒河江の事も同じように知るべきではないか?」
千足「まあ……なにが言いたいかというとだな…」
千足「……着々と積み重ねる事が、確かで、1番の近道かもしれないということだ」
晴「……」
柩「……」
千足「?」
晴「千足さん、カッコいい……」
柩「はい。ぼくも惚れ直しました」ニコ
千足「な……」
千足「桐ヶ谷まで、なにを……」ハァ
兎角「……」
兎角「私も、同じ事を言おうと思っていたところだ」ウン
65:
【自室】
晴「そういえば、春紀さんのこと、晴は詳しく知らないんだ」
晴「……そうだよね、相手の事ももっと良く知らないと。だね」
兎角「……」
兎角「もういいか」
晴「兎角さん?」
兎角「もう、大概やっただろう」
兎角「後は生田目の言うとおり、着実な積み重ねというやつが大事なんじゃないか」
兎角「寒河江の事で私が付き合うのはここまでだ」
晴「兎角さん……」
晴「……ありがとう。兎角さん」ニコ
兎角「……」
晴「晴のために一緒になって付き合ってくれて……」
晴「晴、ますます兎角さんのことが好きになっちゃった」ニコッ
兎角「……」
兎角「……」
兎角「……まあ、もう少しだけなら付き合ってやらないこともない」
68:
ザワザワ…
鳰「春紀さんの情報っスか?」キョトン
晴「うんっ、鳰って情報通だと思って」
兎角「本人には恥ずかしくて直接聞けないヘタレだけどな」
晴「もう兎角さんっ」プン
鳰「……」
鳰「春紀さんは、ご兄弟が多いみたいで…」
晴「そうなんだ……きっとご兄弟も素敵だったり可愛いんだろうなぁ」ニヘ
兎角「そこから話を広げていくか……?」
鳰「……」
鳰「で、でも春紀さんはプライバシーに関係する話は嫌がるようっス…」
兎角「?」
鳰「ウチも、それで尚更嫌われたクチなんで……」ハハ…
鳰「だから、晴は気をつけてください…」
鳰「……春紀さんと仲良くなりたいんスよね?」ニコッ
晴「そうなんだ……」
晴「ありがとう鳰、知らずに本人に聞く可能性もあったし助かったよ?」
ギュ?ッ
鳰「っ」
鳰「はっ、離れるっス! ウチはただ……」
兎角「”ただ”?」
凉「ただ、晴ちゃんのためを思って言った言葉だからのう」クス
兎角「首藤……」
凉「言わずにおけば自らの利になったものを……健気なところもあるんじゃな」ニコ
鳰「……なっ」
鳰「……なに言ってるか、意味わかんねー…っス…」カアァ
73:
……
兎角「走りは?」
凉「『ちょっと頭冷やしてくるっス』……とのことだ」クス
兎角「……そうか」
凉「裁定者といっても可愛いものじゃのう」
兎角「一ノ瀬には、私たち側の人間すら想わせる何かがあるのかもしれない」
凉「同感じゃな」クス
兎角「……お前も、か?」ギロ
凉「……だから言うとるじゃろう」
凉「……『同感じゃ』と」ニコ
兎角「……」
凉「おっかないのう、心配しなくても独り占めしようなどとは思っておらん」
兎角「……」ハァ
兎角「まるで砂糖だな、一ノ瀬は」
凉「ワシらの関係を例えるのなら、砂糖に群がる蟻のようなもの。と言いたいようじゃのう」フフ
兎角「……」
兎角「蜘蛛の糸に捕まった毒虫……とも、見れるけどな」
74:
晴「兎角さーんっ!」ピョン ピョンッ
兎角「……どうだった? 寒河江は」
晴「ネイルについて教えてほしいって言ったら、OKだって!」ニコッ
兎角「……そうか」
晴「それで、1号室を使えたら嬉しいんだけど……ダメ、かな」
兎角「……いいぞ。その時間、私は他に…」
兎角「いや、やっぱりダメだな。私も同席する」
晴「うんっ、兎角さんも一緒に教えてもらおうね」ニパー
兎角「いや、私は……」
タッタッタ…
兎角「……」ハァ
凉「くっくっく……」
兎角「首藤……なにも言うな」ハァ
凉「いや、ワシでもきっと晴ちゃんにかかっては流されていると思う」ニコ
凉「甘いのう……一度知ってしまうと中々離れられまい」クス
兎角「……甘さも、過ぎれば毒だ」フゥ
76:
鳰「……ふぅ」
鳰「大丈夫。平静を保って、何を言われても気にしない」
鳰「……よしっ」
ガラッ
晴「あっ、鳰!」ニコッ
鳰「へ?」
晴「ちょうどよかった! 探してたんだー」ニパ
鳰「さ、探していたって……」
鳰「」ハッ
鳰「何のようっスか? ウチは今忙しいので」キリッ
晴「その……鳰と一緒に、したいな……って」
鳰「し、”したい”って、ナニをっすか……?」タラタラ
晴「今日の夜……空いてる?」モジ…
鳰「よ、よ、夜っスか!?」カアァ
兎角「アレは……牙を抜かれてるな」ハァ
凉「甘いものが好きなのは、やはり女子と相場は決まっておる」クックック…
88:
タッタッタ…
乙哉「晴?っ!」ニコニコ
晴「あっ、武智さん」
乙哉「なんの話してたの? 私も混ぜてよ?」アハハ
晴「実は、今夜1号室でネイルアートの講習が……」
鳰「ネイル……スかっ?」
晴「? うん」ニコッ
鳰「あー……そういうことっスか…合点がいったっス」ハァ
晴「晴と、兎角さん。鳰が参加する事は事前に春紀さんの了解をとっているので……武智さんも一緒にどうかな?」
鳰「えっ」
鳰「ウチが来ても大丈夫って、春紀さんが言ったんスか?」
晴「そうだよ。頼んだら”いいよ”って」ニパ
鳰「……そう…スか」
乙哉「えー? ネイル?? いいよメンドイし。あたしの部屋で遊ぼうよ?色々楽しませちゃうから!」エヘッ
晴「でも……春紀さんと約束しているから」
晴「あ、明日とかどうかな? それなら… 乙哉「寒河江なんか放っといてさ」
乙哉「あたしが1番、晴っちのこと……好きなんだよ?」
ギュッ
晴「た、武智さん……」ドキッ
89:
乙哉「晴っちはこんなに可愛いのに……」
サワ…
晴「ぁ……待って、武智さんっ」カァ
乙哉「笑顔も、意外と芯が強いところも…」
乙哉「………………大好き」ハァ、
晴「あ、あの……っ」
乙哉「皆わかってないよねー……」
乙哉「でも、あたしだけは晴っちの魅力に気づいている」
晴「武智さん……っ」
ポコポコ
乙哉「そんな晴っちをあたしは……」ハァハァ
乙哉『断ち切りたいほど好き』アハッ
ザッ!
乙哉「おっと」
兎角「……やっぱ、ダメだよお前」
晴「兎角さんっ」パァッ
乙哉「……ウザイのきちゃったなー…」チッ
90:
兎角「一ノ瀬……さっきのは反撃のつもりなのか?」ハァ
晴「は、晴なりの抵抗だよっ」
ポコポコッ
兎角「……肩たたきにもならないな」ツーン
晴「ひどい兎角さーん」ウゥ
乙哉「人前でイチャイチャ……毎度見せつけるよねー本当」イラ
兎角「前からお前は気に入らなかったんだ…」
兎角「……暫くちょっかいかけられない身体にしてやるか?」ザワ…
乙哉「へぇ、やる気? いいよ。あたしはべつに」
乙哉「アンタをヤってから晴っちを… しえな「なにやってるんだお前らは」
バシンッ
乙哉「痛!?」
乙哉「……ちょっと、しえなちゃん今いいとこだよー…?」
しえな「”いいところ”じゃない。イジメは許さないって言ったろ」
乙哉「やだなー、マジ顏で怒んないでよ?」ニコニコ
乙哉「邪魔が入ったし、今日は諦めるね晴っち」ニコ
乙哉「今度はあたしの5号室に来なよ。歓迎するからさっ」アハッ
晴「は、はい。今日以外なら…… 」
コツンッ
晴「あぅっ!?」クルッ
兎角「さっきの今で不用心な事を言うな」
兎角「まったく….…」
晴「ごめんね、兎角さん…」
晴「……でも、ありがとう。助けてくれて嬉しかった」ニコ
兎角「……そう思うならもう少し考えて動いてくれ」
晴「晴は、晴なりの理念が……」ウゥ…
キャッキャ
鳰「……」
鳰「カッコいいっスね……兎角さんは」シュン
91:
【自室】
春紀「….…それで、鳰を呼びに晴ちゃんは行ってると」
兎角「ああ」
春紀「いいのかい? ついてなくて」
兎角「アイツもアホじゃないだろう。予告票が届いたら教えてくる……」
春紀「そうだといいけどな」
春紀「暗殺者が予告票を手渡しで寄越してきたら、タイムラグ無しに襲われるんだが……」
兎角「」ハッ
春紀「まあ、それくらい予想しているか」ポリ
春紀「伊介様みたいなソフトなら、ジェルでもいいんだが……」ヨイショ
兎角「……」
春紀「……東?」
兎角「……一ノ瀬を探しにいく…」
スタッ
春紀「は? いやいや、まさか……」
ガチャッ
晴「残念……鳰、やっぱり来れないって……」
兎角「……」
晴「? 兎角さん、どうして立って…どこか行くの??」
兎角「……」
スッ…
兎角「……いや、今座るところだ」
晴「そうなんだ……」
春紀「……」クックック
兎角「……寒河江…」
春紀「いや気にするな。面白いな、お前ら二人とも。いいコンビだよ」ニィッ
晴「??」?
95:
春紀「とりあえずプレパだけやっといて……」
晴「は、はい」ウンウン
兎角「……」
春紀「東もこっち来いよー、教えてやるぞー」
兎角「……私が、そんなモノすると思うか?」
春紀「……それもそうだな」
春紀「でも東は女にしておくには勿体無いよな」
春紀「女子校ならモテるタイプだろ」
晴「春紀さんも……」
春紀「ん?」
晴「春紀さんも、モテそうだと晴は思います……」テレ
春紀「そうか? まあ、東と違ってあたしは女だからな」
兎角「……」
春紀「睨まないでツッコんでくれよ。東も美人だって」ハハ
春紀「晴ちゃんも男子にモテそうだな。こんなに可愛いんだ」ニコ
ナデ
晴「っ」
晴「ありがとう、ございます……」カアァ
春紀「はは、皆と同じでタメでいいから」
兎角「……」
97:
晴「は、春紀さんも…恰好良くて、素敵だと……」
春紀「……でも、私は女子だからなー。可愛いものとかスゲー好きだし」
晴「……晴は、春紀さんのスタイルが良いところも憧れちゃいます」ニコッ
春紀「……晴」
晴「は、はいっ」ドキッ
春紀「お前さー、そんな目であたしを見るなよ」
晴「えっ」
春紀「どう映ってるか知らないが、ソレを求めるなら東か生田目にでもしな」
晴「”ソレ”って……は、晴は」
春紀「この身体も、この顔も。女の気を惹くためにあるんじゃないんだ……わるいな」ニコ
晴「晴は、春紀さんのことを男性の代わりとして見てたワケじゃ… 兎角「一ノ瀬」
晴「っ……」
兎角「ソイツが笑っている内に、その辺にしておけ」
晴「……っ」チラ
春紀「?」ニコ…
晴「……」
晴「……ごめんなさい」
スタッ
タッタッタ…
ガチャンッ
兎角「……」
春紀「追わなくていいのかい?」
兎角「べつに…」
兎角「……今アイツが欲しいのは私の言葉じゃないだろう」フゥ
98:
兎角「……お前こそ」
春紀「んー?」
兎角「ターゲットの好意をみすみすハネ返すなんて意味あるのか?」
春紀「……それだけどな」
春紀「暗殺者っつーのはさ、誰かれ…美学ってのがあるんだ」
兎角「……」
春紀「黒組の中でも、予告票と一緒に弾丸ブチ込むヤツは少ないんじゃねーかな」
兎角「……」
兎角「わからないな。殺す事の美学なんてもの」
春紀「ソレがわからないのなら、ただの殺し屋さ」
春紀「東 兎角はそれでいいのかもしれないけどな」クス
兎角「……」
兎角「……一ノ瀬は」
春紀「……」
兎角「アイツは、お前を男の代わりとして見ていたなんてこと…ないぞ」ハァ
春紀「ああ……その事」
春紀「……わかってるよ。ンな事」
99:
春紀「可愛いよなぁ晴ちゃん」
兎角「……」
春紀「……単純な話さ」
春紀「仕留めるのに余計な情が付くだろ?」ニィ
兎角「……割り切れないのなら、その程度の暗殺者なんだろう」
春紀「自分なりの線引きがあるのさ」
兎角「……」
春紀「あー……でも」
春紀「いい子だなー」
春紀「可愛いと思うんだ。なんでだろうな」ニコ
兎角「……お前も」
兎角「お前も、一緒なんだろう。毒虫は毒虫ってワケだ」
春紀「……なんの話だ?」タラ
兎角「……こっちの話さ」
100:
鳰「……」
香子「どうしたんだ? 走りのやつ」
伊介「伊介が知るわけないでしょ。こんな時間に外なんか見て……厚着しすぎてアタマのぼせたとか?」クス
凉「”のぼせた”……か。あながち間違ってもいないかもしれんのう」
香子「どういう意味だ?」
凉「ほれ、もっとよく見るのじゃ」
香子「?」チラ…
鳰「……」ハァ
香子「……ため息をついているな」
凉「そうじゃな」ニコ
鳰「……」ニヘェ
鳰「っ」ハッ
鳰「??っ」ブンブン
香子「ニヤけたと思えば、頭を振り始めたぞ」
伊介「ちょっと……マジで大丈夫? アタマ」タラ
凉「のぼせておるんじゃろう…」フフ
香子「確かに……真っ赤だぞ。熱でもあるんじゃないか?」フム
鳰「……いやいや、ありえないっスって」カアァ
ブツブツ
香子「……犬飼の予想も満更的外れではなさそうだ…」ウーン
107:
鳰「……」
………
……
…
タッタッタ…
(晴「鳰?っ!」)
(鳰「なんスか?」)
(晴「実は……晴、鳰の事が…」)
(鳰「う、ウチのことが……?」ドキドキ)
(晴「その……す、好…」モジ…)
(鳰「”好”……っ?」ドキドキ)
タッタッタ…
晴「っ……、鳰?」
鳰「? ああ、晴…」
鳰「……その、ウチも…その」チョン、チョン
晴「……?」
鳰「(なんだか、ハッキリとした妄想っス……)」
109:
晴「”ウチも”……?」
鳰「あっ」
鳰「……その…」カアァ
鳰「たぶん、ウチ……麻疹みたいなものにかかったかもしれない、って」モジ
晴「”ハシカ”? 鳰、まだだったんだ。大変……っ」
鳰「大変……そう、大変な事っス」
鳰「ウチは絶対、だまされねーとか思ってて…でも、騙されるとかそういうんじゃなくて……」
晴「鳰?」
鳰「だから……こんなとこでしか言えねーっスけど…」
鳰「……」カァ
鳰「ウチはっ、晴の事が気になってしょうがないんス!!」カアァ
晴「っ!」
鳰「もうなんかウチらしくもねーっつうか、女王蜂の能力とかそんなの関係ないっていうかっ」
鳰「春紀さんとの仲を邪魔しちゃわるいから約束お断りしたとか今こんなこと言う必要ないんスちがうくてっ」
鳰「武智さんとかと楽しそうに話してるところとかどうしようもない気持ちになるっていうか……とにかくっ」
鳰『ウチは、晴を独占したいんス!!』カアアァ
晴「っ……」
晴「……ぁ、その」カアァ
鳰「……ちょっと、スッキリしたっス…」ハァ
鳰「いやー…こんなこと、頭の中でしか…」
鳰「言えない……」
鳰「……」
晴「……あ、あの…鳰?」カァ
鳰「……へ?」
110:
晴「今の……」
鳰「……」
晴「その、鳰?」
鳰「……」
鳰「ドッキリっス」
晴「え?」
鳰「ドッキリッス」
晴「ど、ドッキリ?」
鳰「そもそも、ウチなにも言ってないですし」
晴「は、晴の空耳……?」
鳰「そ、そうっス! 空耳… 香子「”こんなとこでしか言えねーっスけど…”」
鳰「!」
凉「”ウチは、晴を独占したいんス!!”」
凉「……じゃな?」ニコ
鳰「!!!」
鳰「……」カァ…
伊介「……っ、??っ」ゲホ、ゲホ
凉「ムセすぎじゃぞ犬飼……どれだけツボにハマっとるんじゃ」
鳰「……」
鳰「きゅう……」プシュー…
113:
【自室】
ガチャッ
晴「……」ソロ?…
春紀「おっ、帰ってきたか」ニコ
晴「あの……」
兎角「? どうした??」
晴「今日、7号室の方で寝たいと思いましてっ」
兎角「……」
晴「……」グッ…
兎角「……ダメだ」
春紀「……まっ、そうだろうな」
晴「……」シュン
兎角「だが、走りがこの部屋に来るのは認めてやる」
晴「兎角さん……っ」パァッ
春紀「おいおい、いいのか?」ンー
兎角「入室の際に、予告票を持っていないか身体検査はするけどな…」
兎角「……折衷案を出してやらないと、またムリをするに決まってる」フゥ…
晴「兎角さん……ありがとう」ペコッ
晴「……?」
兎角「?」
晴「兎角さん、その爪……」
兎角「……気にするな。すぐに落とす」
春紀「せっかくキメたのに、勿体無い……」
晴「晴は、可愛いと思うよ。兎角さん」ニコッ
兎角「……」
兎角「……こういうのは、一ノ瀬の方が似合う」
116:
……
晴「さあ、どうぞ」ニコ
鳰「……お邪魔するっス」
兎角「神長には?」
晴「うん。普段なら絶対了承しないらしいんだけど…」
晴「……神長さんをもって了承もやむなしらしくて…今回目の当たりにした事は」ハハ…
鳰「うぅ……」ズーン
鳰「もう授業に出られないっス……裏オリエンテーションなんて死んでも仕切れねーっスよ…」
兎角「……詳しくは聞かないが」
兎角「身体検査をしたら後は好きにしろ。ベッドは一ノ瀬のを2人で使うか、床で寝るか任せる」
晴「じゃあ、晴のベッドで寝よう? 鳰」
鳰「え?」
鳰「いやいやいや、さっきの今でそれはおかしいっしょ晴」カアァ
晴「どうして? 鳰ならスペースもとらないし、暖かそうだしで良い事づくめだよ」ニコッ
鳰「ま、まだシャワー浴びてなかったっス」ハッ
鳰「ちょっとバスルームお借りするっス……」
晴「じゃあ、シーツ直しておくねっ」ニパー
鳰「に、二パーって、は…晴……ちょっ、ちょっとタンマっス」
鳰「まだ心の準備が……」ドキドキ
晴「晴、友達と一緒のベッドに寝るのって憧れていたから」ニコ
ワーワー キャッキャ
兎角「(……走りのやつ、どうしたんだ?)」
兎角「まあ……どうでもいいか…」
119:
……
ギシ…
晴「……鳰、起きてる?」
鳰「(寝らんねーっス……)」
晴「……兎角さんも寝ちゃったみたいだし、鳰は背中越しだから顔を見られないし…」
晴「でもね、ありがとう……」
ギュッ
晴「鳰に、ああ言ってもらえたから、黒組の皆でもやっぱり仲良く出来るんだ…って」
晴「……晴のしてる事は間違いじゃないんだ。って、思えたんだ」ニコ
鳰「……」
鳰「(だ、だ、抱きしめられている……)」ドキドキ
鳰「(こ、これは据え膳なんとかというやつなんスか……?)」グルグル…
晴「だから、恥ずかしいかもしれないけど……鳰には明日からも、学校に来てほしい」
ギュー…
鳰「(な、な、なんか良い匂いに包まれて……理性がグルグル、思考がグルグル…)」グルグル…
兎角「……」
121:
チュンチュン…
鳰「……少ししか眠る事が出来なかった…」
鳰「と、とにかく一晩越してなんとなく気力も復活してきたっス」
鳰「昨晩の話が広まっていないことを祈って、登校するんだ。ガンバっス、ウチ」
兎角「準備は出来たのか?」
晴「うんっ、大丈夫だよ」ニコッ
鳰「オーケーっス……」フラ…
晴「鳰、またいつでもお泊まりに来ていいからね」ニコ
晴「想像通り、あったかくて、良い匂いがして……晴、気づいたら寝ちゃってて」エヘヘ
鳰「あー……考えとくっス」
兎角「神長がそう何度も気を使ってくれるとも限らないが」
晴「うーん、なんとかお願いしてみます……」
鳰「はぁ……気ぃ、重(おめ)ーっス」シュン…
122:
……
乙哉「おはよーっ晴っち♪」
伊介「もー武智ったら、鳰に悪いじゃなーい」ニコ
乙哉「? なんで??」
伊介「じつはぁ?」
春紀「おい、茶化すなよ伊介様」
伊介「皆にも教えてあげないと可哀想じゃなーい……仲間はずれは良くないって、伊介思うなー」ニコ
春紀「いいんだよ、どうでもいい事は教えなくて」ハァ
伊介「なに庇っちゃってんの? ムカつく(はぁと)」ニッコリ
春紀「夫婦喧嘩はなんちゃら、ってのと同じで色恋沙汰は犬飼も食わないってな」ニィ…
しえな「イジメの臭いがする……」スンスン
伊介「……」ハァ
伊介「もう、めんどくさいやつ多すぎじゃない? このクラス」イラ
春紀「まあ落ち着きなって。ポッキー食べるか? 伊介様」ニコッ
伊介「いらなーい」フン
鳰「……」
晴「大丈夫そうだね、鳰」ニコ
鳰「そーっスね……」チラ
春紀「?」
春紀「」クスッ
フリフリ…
鳰「手まで振ってくれちゃって…」
鳰「……カッケーっスね。本当」ハァ
123:
ザワザワ…
兎角「走りのやつ、良くは知らないがなんとかなったみたいだな」
晴「だから鳰、他の皆ともああやって普通に話をしてて安心したな……」
兎角「寒河江には、昨日のこと話をしたのか?」
晴「うん。春紀さん、やっぱり優しかった」
兎角「……そうか」
兎角「まあ、これに懲りて… 晴「でも」
晴「春紀さんって、素敵だよね」テレ…
兎角「……」
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