声優「んギモッヂイィ〜///」(アタシ…何やってんだろ…)back

声優「んギモッヂイィ〜///」(アタシ…何やってんだろ…)


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1:
高校卒業後、声優になることを夢見て上京しはや四年…
理想と現実の狭間で思い悩みながらも、日々をたくましく生き…
自身が下宿するボロアパートの怪しい住人達との心暖まるほのぼの(時々エロエロ)なお話しを…
…誰か書いていただけませんか?お願いします
2:
俺からも頼む
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声優「んギモッヂイィ〜///」(アタシ…何やってんだろ…)
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6:
スタッフ「はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「お疲れ様です」
  オツカレー
声優「お疲れ様でした」
―――――――――――
声優「……はあ」
声優(今週のお仕事はこれでおしまい……か)
声優(…………)
声優(アタシはまだマシな方なのかな)
声優(新しい娘や新人君も大勢見てきたけど……)
声優(残るのはほんの一部)
声優(4年のアタシは、どちらかといえば古株の方ね)
7:
声優(仕事があるだけ幸せなのかもしれないけど……)
声優(4年もエロばかりなのは、正直、精神的にきつい)
声優(もちろん、作品を馬鹿にするつもりはないけど)
声優(たまにはエロ以外の作品にも出演したい……)
後輩「先輩〜」
声優「あ、後輩ちゃん」
後輩「お疲れ様です。 良かったらこの後、ご飯でもどうですか?」
声優「そうね……うん! 食べよっか!」
後輩「やったぁ!」
8:
声優(後輩ちゃん……ついこの前、と言っても3ヶ月前だけど)
声優(アタシみたいに高卒でこの業界に入ってきた娘)
声優(入る前から内情を知っていたみたいで、エロの仕事も)
声優(それ程抵抗はなかった感じだった)
声優(同じ高卒者、という事もあって、アタシは何かと面倒を見る様になっている)
声優(可愛らしい娘だし……夢であるアイドル声優になれるかもしれない)
後輩「どうしたんですか? 先輩?」
声優「ん? ううん、何でも無い」
声優「どこに行こっか?」
後輩「やっぱり庶民の味方! ヨシギューでしょ!」
9:
  ラッシャイ
後輩「いただきまーす!」
声優「いただきます」
  モグモグ
後輩「くう〜! 美味しい!」
声優「そうね」 クス
後輩「あ! 先輩、聞いてください」
声優「ん?」
後輩「私、来週からもう一本仕事が入ったんですよ!」
声優「へえ! よかったじゃない」
後輩「もう少し仕事が増えたら、アルバイトともおさらばです!」
後輩「頑張りますよ〜私は!」
声優「ふふふ」
10:
声優(……懐かしいな、アタシもそうだった)
声優(エロでも仕事が増えて、着実に自分は一歩一歩成長してるって)
声優(実感できていた)
声優(……アタシの方は、そこから長い足踏み状態)
後輩「ごちそうさま! あ〜美味しかった」
声優「うん。 お腹いっぱいね」
後輩「これで明日も頑張れそうです!」
声優「アタシも負けないわよ〜?」
後輩「あははは!」
11:
声優「それじゃ後輩ちゃん、また来週にね」
後輩「はい! また来週です!」
  タッ タッ タッ
声優「…………」
声優「さ、アタシも帰らなくちゃ」
―――――――――――
声優「ふう……ついた」
声優「交通費でないから歩いて帰ってるけど」
声優「バス5停留所分の距離は辛いわね……」
  カン カン カン
声優「え〜っと……カギは、と……」 ゴソゴソ…
12:
??「あ……」
声優「あ……」
声優「こ、今晩は……」
??「今晩は、です」
声優(……この人、苦手だわ)
声優(隣の部屋の住人なんだけど……太ってて見るからにキモヲタっぽくて)
声優(アタシの出演してるエロゲーで抜いてそう)
声優(いつも部屋にいるみたいだし……得体が知れないのよね)
声優「じゃ、じゃあ……」
デブ「あ、はい」
デブ「…………」
13:
デブ「…………」
デブ(いつもながら綺麗な人だ)
デブ(OLかなんかやっているんだろうな……)
デブ(……身だしなみ、少しは気を付けた方がいいんだろうけど)
デブ(面倒くさいんだよなぁ)
デブ(ま……こんな高卒の三流エロ漫画家なんかに言い寄られても)
デブ(嫌な顔されるだけだろうけど……)
デブ(はあ……)
14:
  イラッシャイマセー
デブ(今日は何を食うかな)
デブ(……って言ってもビニ弁、食い飽きたけどな)
デブ(…………) ウ〜ン…
デブ「……あ」
デブ(…………)
デブ(今日、週刊少年・飛翔の発売日か……)
デブ(…………)
デブ(……普通の漫画、描かなくなって)
デブ(どれくらいになっただろう)
デブ(…………)
デブ(止めよう、こんな事考えるの)
15:
  アリガトウゴザイマシター
デブ(…………)
  テク テク テク…
??「あ、今晩は」
デブ「え?」
デブ「……ああ、お隣さんの歌手さん」
デブ「今晩は」
歌手「またコンビニ弁当っスか〜?」
歌手「体に悪いっスよ?」
デブ(……うるせーよ)
歌手「ははは、と言いつつ、俺もコンビニ弁当ですけどね!」
デブ「はあ……」
16:
歌手「っと、引き止めてすんません」
歌手「じゃ!」
デブ「あ、はい」
  テク テク テク
デブ(…………)
デブ(相変わらず、無駄に元気な人だ)
歌手「ふう〜」
歌手「隣人とのコミュニケーション、OK!」
歌手「これから、俺のファンになってくれる人かもしれないからな」
歌手「愛想は、常に良くしておかないと」
歌手「さて、弁当、冷めない内に食わないとな」
  バタン…
26:
翌日
  ♪〜♪〜♪〜
声優「……ん」
声優「ふあ……」
声優「…………」
声優「八時、か……」
声優(今日もいつも通り目が覚めた)
声優(この声は、二つ隣の部屋の住人の発声練習の声)
声優(少し前、問題になったが……本人は毎朝決まった時間にこれをやらないと)
声優(調子が出ない、とかで、話し合いの結果)
声優(10分程度なら許す、という事で折り合いがついた)
声優(いつもきっかり朝八時にやるので、今じゃ ちょっと変わった目覚ましになってる)
27:
デブ(……今日も始まったか)
デブ(徹夜仕事しても、これのおかげで何時かわかるんだが)
デブ(あんまりありがたくない……)
デブ(話し合いの時に強く言えなかった自分が恨めしい)
デブ(…………)
デブ(とりあえず、朝飯食うか……)
歌手「あーあーあーあーあー」
歌手(うし! 今日もいい調子だ!)
歌手(みなさん、聞いてますか〜?)
歌集(未来の超有名ミュージシャンの声ですよ〜?)
28:
声優(さて)
声優(顔を洗って、歯を磨いて、ご飯食べて……)
声優(準備が出来たら、出かけよう)
―――――――――――
  イラッシャイマセー
声優(…………)
声優(発声練習……アタシも家で出来たらいいのになぁ)
声優(近所迷惑を考えてないけど、正直、ちょっと羨ましい)
声優(スタジオを借りるよりずっと安いし近いから)
声優(仕方なくカラオケボックスでやってるけど……)
声優(それでもけっこう馬鹿にならないのよねぇ……)
29:
声優(…………)
声優(ううん、これは必要な事よ)
声優(いつか、必ず、この努力が報われる日が来る)
声優(アタシの演技力が評価される時が来る)
声優(その時まで……アタシは……)
声優(…………)
声優(さて、始めますか)
声優「あーあーあーあーあー」
声優「らーらーらーらーらー」
―――――――――――
声優「ふう……」
声優「こんなものかしらね」
30:
  アリガトウゴザイマシター
声優「いえ、こちらこそ」
声優「それじゃ、また明日……」
  テク テク テク…
店員「テンチョー」
テンチョー「ん?」
店員「今のお客さん、よく見ますね」
テンチョー「ああ、何でも売れない女優さん?みたいで」
テンチョー「ここで発声練習しているんだよ」
店員「へー」
店員「でも売れないって、テンチョー、酷過ぎー」
31:
テンチョー「おいおい、人聞きの悪い事を言わないでくれ、店員ちゃん」
テンチョー「本人がそう言っていたんだよ」
店員「そーなんですかー」
テンチョー「まあ……深くは聞かなかったよ」
テンチョー「どの業界もキビシイところは、あるだろうからね」
テンチョー「こっちとしては、売上が落ちる時間帯だし……いいお得意様だよ」
店員「ですねー」
テンチョー「そんな訳で店員ちゃん、普通に接してあげてね」
店員「了解ですー」
店員(…………)
店員(何だか、私の彼氏みたいー)
32:
デブ「…………」
デブ「ふう……」
デブ「ええと……63番……63番……」
  ゴソ ゴソ
デブ「…………」
デブ「あれ?」
  ゴソ ゴソ
デブ「……無い」
デブ「63番トーン、そんなに使ってたか」
デブ「仕方ない、買ってこないとな」
デブ「ついでに他のトーンも補充しとかないと……」
33:
  ガチャ…
デブ「あ……」
声優「あ……」
デブ「こ、こんにちは……」
声優「こんにちは……」
声優「じゃ……」
デブ「あ、はい」
  パタン
デブ「ふー ……」
デブ「さ、行かないと」
デブ(ついでに昼飯も買ってこよう)
34:
画材店
デブ(63番に62番……と)
デブ(柄物もいくつか……)
デブ(お?……新作の柄が結構出てるな)
デブ(…………)
デブ(……うん、これ、使えるかも)
デブ(犯される女の子の恐怖感、表現するのにいい感じだ)
デブ(…………)
デブ(とか思って実際貼ってみると、微妙に違ってたりするんだけどな) クス
デブ(さて、こんなものか)
デブ「すみませーん」
35:
  アリガトウゴザイマシター
デブ「ふー ……」
デブ「暑い……日差しが厳しいなぁ」
デブ(太ってる人間には辛い季節だ……)
デブ(エアコン、調子を見ておかないと)
デブ(去年、八月に突然壊れて、真面目に死ぬかと思ったからなぁ)
デブ(描いている内容が内容だけに、ファミレスとかで作業出来ないのが悲しい……)
デブ(今やってる原稿が終わったら、業者に頼んでメンテナンスしてもらおう)
デブ(…………)
デブ(それじゃ、昼飯を買いに行くか)
36:
  イラッシャイマセー
デブ(今日もコンビニ……)
デブ(食い飽きてるのに、どうしてここに来るんだろう……)
デブ(…………)
デブ(まあ、雑誌とか置いてあるし)
デブ(ついつい寄っちゃうんだよな)
デブ(…………)
デブ(あ……)
デブ(これ、今月で廃刊……休刊するのか)
デブ(…………)
デブ(1年くらい描いてたエロ雑誌だったけど……正直、あまり待遇は良くなかったな)
デブ(……でも、少し悲しい)
37:
  アリガトウゴザイマシター
デブ(買ってしまった……)
デブ(まあ、これも何かの記念だ)
デブ(…………)
デブ(……そ、それにしても、大荷物になってしまった)
デブ(画材に昼飯と、ついでに買った夕飯用のサンドイッチと飲み物)
デブ(さらにこのエロ雑誌……)
デブ(両手が荷物でいっぱいだ)
デブ(おまけに重い……)
デブ「ふう……ふう……」
38:
デブ「さて……カギを……」
  ゴソ ゴソ…
デブ(荷物のせいで、めちゃくちゃ取りづらい……)
デブ(よっ……このっ……!)
  ガチャ
声優「あ……」
デブ「あ……」
デブ「ど、どうも……」
  ドサドサッ!
デブ「」
デブ(に、荷物のエロ雑誌がああああっ!)
39:
声優「」
デブ「あわっ、あわわわわっ……!」///
  バババッ!
デブ(カ、カギ! 早くカギを!)///
  ガチャガチャ! キィ、バタン!
声優「…………」
声優(……み)
声優(見てない)
声優(見てないから)
声優(ドッピュン☆天国!なんて……)///
声優(見てないから!)///
40:
歌手「シェキナベイベ〜♪」
歌手「お?」
歌手「どうしたんですか? 声優さん」
歌手「そんなところで突っ立って?」
声優「!」///
声優「な、何でも無いですから!」///
  タッ タッ タッ
歌手「…………」
歌手「おやおや〜? 顔を赤くして……あの慌て様」
歌手「もしかして、フラグってやつ〜?」
歌手「まいったなぁ……俺、すでに彼女持ちなのに♪」
41:
デブ(…………)
デブ(……なんて言うか)
デブ(終わった……)
デブ(始まってもいないけど、終わった……)
デブ(…………)
デブ(通報……されないといいけど)
デブ(はあ……)
デブ(…………)
デブ(……よし、気持ちを切り替えて飯を食おう)
  ゴソ ゴソ
デブ(中身……ぐちゃぐちゃだし……)
デブ(はいはい、わかってますよ……さっき落とした時ですよね)
デブ(……惨めだ)
42:
夕方
声優(さて、今日の夕飯は)
声優(ちょっと奮発して牛肉のピーマン肉詰め!)
声優(ぬふふ〜)
声優(こうやって、たまには贅沢しないとやっていけないわよね〜)
―――――――――――
声優「完成!」
声優「ヘルシーにキャベツの微塵切りも山盛り!」
声優「美味しそう〜」
声優「汁物の味噌スープを添えて……出来上がり!」
声優「いただきまーす!」
43:
デブ「…………」
デブ「……いい匂いだ」
デブ「肉を焼いたのかな?」
デブ「…………」
デブ「原稿、もう少しで終わるし」
デブ「このまま続けるかな」
デブ(その方が効率上がりそうだし)
デブ(あー腹減った)
デブ(…………)
44:
歌手「くう〜! たまらねえ! この匂い!」
歌手「腹減ったぜ!」
  ガチャ
店員「やっほー生きてるかー?」
歌手「待ってたぜ、ハニー! 愛しのご飯エンジェル!」
店員「その言い方はありがたくないー」
歌手「俺も手伝うから、飯作ろうぜ!」
店員「たまには、ご飯で出迎えてくれると嬉しいんだけどー」
歌手「すまねえ……俺の才能は、ほとんどが音楽に行っちまっているんだ」
店員「料理に才能が無いのはわかってるー」
店員「んじゃ、じゃがいもの皮を剥けー」
歌手「任せとけ!」
45:
店員「いただきますー」
歌手「いただきます!」
  モグモグ…
歌手「んまいっ!」
歌手「カレーは最高の夕飯だ!」
店員「大げさー」
歌手「もちろん、お前が作ってくれたからだとも!」
店員「はいはい、お世辞もらいましたー」
歌手「素直になれって」
店員「私はいつでも素直ー」
歌手「悪い悪い、感謝してるって!」
46:
店員「…………」
店員「今日、私の働いてるお店の常連さんなんだけどー」
店員「気になる人が居たー」
歌手「なぬぅ!?」
店員「その人は女の人ー」
歌手「驚かすなよ……」
店員「大丈夫ー。 私は、あんたしか見えてないー」
歌手(そのイントネーションのせいで、そう聞こえない事は内緒だ)
店員「で、その人ー、発声練習でカラオケルーム使ってたー」
歌手「…………」
47:
店員「歌手、あんたは、ここで揉めたって聞いたー」
店員「余計なお世話、と言うかもしんないー。 でもー」
店員「費用も安く済むしー、気を使わずに練習も……」
歌手「いや……それは出来無い」
店員「…………」
歌手「金は、なるべくスタジオで使いたい……これは曲げられないんだ」
店員「…………」
店員「……そう」
48:
店員「あんたがそうしたいなら、私はもう何も言わないー」
店員「自分で稼いでいるお金だしねー」
歌手「……まあ、カツカツなのは事実だけどな」
歌手「すまねえ……心配かけて」
店員「いいって事ー」
歌手「ははは」
―――――――――――
声優(…………)
49:
声優(……さて、今週のお仕事は)
声優(エロゲ2本と、エロアニメが一つ、それにオーディション……と)
声優(収録の曜日と場所、時間を間違えないようにしないとね)
声優(…………)
声優(出来たら、セリフの練習もしておきたいところだけど……)
声優(さすがに……それは恥ずかしいのよね)
声優(カラオケボックス側は気にしないと思う……でも)
声優(たまに来るお客さんは……アタシの声を知っているかもしれない)
声優(…………)
声優(止めよう……こんな事考えるの)
声優(もう寝なきゃ)
―――――――――――
デブ(…………)
50:
デブ(……畜生)
デブ(今度はカレーの匂いがしてきた……)
デブ(…………)
デブ(何で、こんな拷問プレイを一人でやってんだよ)
デブ(さっさと飯を食おう)
―――――――――――
デブ「ふう……」
デブ「…………」
デブ「いかん……」
デブ「眠くなってきた……」
―――――――――――
店員「じゃあねー、歌手ー」
51:
歌手「ああ、いつもありがとうな」
店員「気にするなー私が好きでやってる事ー」
店員「あんたが喜んでいるなら、嬉しいのじゃー」
歌手「おう!待ってろよ!」
歌手「一流ミュージシャンになって、必ず、恩返しするぜ!」
店員「期待してるぞよー」
―――――――――――
歌手「…………」
歌手(必ず……必ず、なってみせるぜ、店員!)
歌手(その時、お前に言ってやる……)
歌手(結婚しよう、って……!)
52:
歌手(…………)
歌手(ぬふふ……)
歌手(俺、超カッケー♪)
歌手(…………)
歌手(……さて、明日のバイト、棚おろしがあるんだっけ)
歌手(めんどくさいんだよなぁ……あれ)
歌手(音楽関係のバイトがあればいいのに……)
歌手(…………)
歌手(さっさと風呂入って休むか)
  パタン…
57:
数日後
声優「いやああああああああああっ!!」
声優「痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ! 痛い――!」
声優「抜いてぇっ! オチン○ン、抜いてぇ――!!」
声優「ひぎっ! …いだっ、いがっ……!」
声優「あぎっ、ぎっ、ぎいっ! ひあっ! あああああああっ……!」
声優「ひいっ!?」
声優「い、今、オチ○チン、ビクンッ、って……!?」
声優「嫌あっ! それだけはっ……! それだけは、止めてぇっ!!」
声優「中は、中は止めてえぇぇぇっ!!」
声優「だめっ! いやっ! いや、いやっ、いやいやいやっ!!」
声優「いやあああああああああああああああああああああああっ!!」
声優「出てるっ……出てる、のっ……いっぱい……中に……!」
声優「ううっ……ぐすっ……いやぁ……!」
58:
スタッフ「…………」
スタッフ「はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「お疲れ様です」
声優「お疲れ様でした」
―――――――――――
声優「ふう……」
後輩「あ、先輩、お疲れ様です」
声優「ん? ああ、後輩ちゃん。 お疲れ様」
声優「次はあなた?」
後輩「そうみたいです」
声優「そっか。 頑張ってね」
後輩「はい!」
59:
声優(エロゲやエロアニメのアフレコ)
声優(普通のアフレコみたいに数人でやる訳じゃない)
声優(大抵、男女とも一人ずつ収録する)
声優(会話シーンもあるけど、それも単独でやる事が多い)
声優(……まあ理由としては、演者同士、気まずくなるからそうしていると思う)
声優(…………)
声優(今日は、あともう一本あるけど……)
声優(時間がちょっと空く感じね)
声優(ご飯には少し早いし……どうしようかな?)
スタッフ「すみませーん、休憩中の皆さん」
スタッフ「ガヤ、頼めますか?」
60:
声優「!」
声優「あ、はい。 アタシやれます」
  コッチモデキマス ワタシモ
スタッフ「お手数おかけします」
スタッフ「じゃあ、Bスタジオでよろしくお願いします」
  ハーイ
声優「…………」
声優(ガヤ……街中や場面展開での雑踏の音の事)
声優(普通は、そのアニメなりゲームなりの演者や、スタッフなんかがやる事が多いけど)
声優(たまに、微妙に人数が足らなくなったりする事がある)
声優(そういう時は、こうやって臨時に募集したりする)
声優(ボランティアだけど時間にして数秒だし、アタシにとっては密かな楽しみだ)
61:
スタッフ「それじゃあ始めます」
スタッフ「5秒前……4……3……」
声優「…………」
声優「ガヤガヤ」
声優「ガヤガヤ」
―――――――――――
スタッフ「はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「ありがとうございます、お疲れ様でした」
  オツカレサマー
声優「お疲れ様でした」
声優(ふふふ、ガヤならアタシ、結構深夜帯アニメに出演してるのよね♪)
62:
声優(さて、ちょうどいい暇つぶしも終わったところで)
声優(昼食を取るのにいい時間帯になったわ)
声優(…………)
声優(後輩ちゃん、待とうかな?)
声優(う〜ん……)
声優(いつ終わるか聞いいてないし、約束をしているわけでもないからいっか……)
声優(うどん屋さんにでも行こう)
―――――――――――
声優(ふう……)
声優(さて、そろそろ午後の収録の準備をしないと)
声優(台本、台本、っと……)
63:
声優(……あら?)
声優(後輩ちゃん、何だか元気がないわね?)
声優(どうしたんだろう?)
声優「後輩ちゃん」
後輩「あ……先輩」
声優「収録、終わったの?」
後輩「はい、ついさっき」
声優「そっか……結構かかったわね。 お昼もまだ?」
後輩「はい」
声優「それで元気がないのかな?」
後輩「…………」
後輩「いえ、そういう訳じゃないです」
64:
声優「そうなの?」
後輩「まあ……なんて言うか……」
後輩「声を当てた絵がグロくて……気持ち悪くなっちゃって……」
声優「ああ……触手系?」
後輩「プラス、スプラッター系です」
声優「ダブルパンチね」 クス
後輩「覚悟はしていたんですよ? でも……」
後輩「いざ目の前に、しかも血とか カラーで出されると、さすがに……」
声優「わかるわ〜」
声優「世の男どもは、こんな残酷な絵で抜いているのか、と思うのよね〜」
後輩「あははは……」
65:
声優「こっちとしては、お仕事もらっている立場だし」
声優「需要があれば、答えないといけないのが辛いところよね」
後輩「……ですよね」
声優「アタシもそうだったけど、誰でもぶつかる問題だし、その内に慣れちゃうよ」
声優「怖い事にね」
後輩「…………」
後輩「怖い事……ですか?」
後輩「プロなら、出来て当たり前の事だと思っていたんですけど……」
声優「うーん……今は、まだ知らなくてもいい事だと思う」
後輩「はあ……」
声優「とにかく、全力で頑張ったんだから」
声優「自分に何か、ご褒美をあげてみたらどうかな?」
66:
後輩「ああ、いいですね、それ!」
後輩「何だか少し元気が出てきました!」
声優「そう。 良かった」 クス
声優「おっと……そろそろ時間ね」
後輩「あ……すみません、手間を取らせて」
声優「ううん、いいのよ。 アタシから話しかけたんだし」
声優「それじゃあね」
後輩「はい! 頑張ってください!」
声優「ありがとう」
―――――――――――
声優(…………)
声優(慣れ、か……)
67:
声優(…………)
声優(仕事上いい事なんだろうけど……)
声優(アタシは……苦もなく喘ぎ声を当てる事に)
声優(慣れてしまっている自分に気がついて……怖かった)
声優(いつの間にか そうなっている事に……)
声優(…………)
声優(そんな現状を打破したい、と思うようになったきっかけでもあるけど)
声優(…………)
声優(さて、気持ちを切り替えないと)
声優(だからと言って、仕事で手を抜いたりしない)
声優(アタシ自身の為に)
68:

声優「ふう……疲れた」
後輩「お疲れ様です、先輩」
声優「あら? 後輩ちゃん?」
声優「どうしたの? まさか……待っててくれたの?」
後輩「め、迷惑でしたか?」
声優「ううん、そんな事ない」
声優「でも後輩ちゃんもアルバイトとか、自分の予定があるんじゃないのかな?って」
後輩「大丈夫です」
声優「本当に?」
後輩「…………」
69:
後輩「すみません……アルバイト、ずる休みしちゃいました」
声優「…………」
声優「……そっか」
後輩「…………」
声優「ま……アタシが言うのも変だけど」
声優「そういうのは、今回だけよ?」
後輩「……はい」
声優「じゃ、少し遅い晩御飯にしよっか!」
後輩「! は、はい!」
声優「どこに行く?」
後輩「それはもちろん……」
声優・後輩「ヨシギュー!」
  アハハハ……
70:
デブ「うーん……」 セノビー
デブ(よし、完成)
デブ(後はこれをコピーして、投函して……)
デブ(……って、もうこんな時間か)
デブ(コピーはともかく、郵便局はもう閉まってるな)
デブ(仕方ない……)
デブ(明日、達で出すか)
デブ(とりあえず、コピーを取らないとな)
デブ(…………)
デブ(コンビニ……人があまり居ないといいけど)
71:
コンビニ
デブ(…………)
デブ(……いつもながら緊張する)
デブ(ちょっと遠くの、しかもランダムに選んだコンビニでやってるけど)
デブ(誰かに見られるんじゃないかと……ビクビクする)
デブ(…………)
デブ(さっさと済ませよう)
  ピー カサッ ピー カサッ
デブ(後2ページ……)
  イラッシャイマセー
デブ(くっ……)
72:
デブ(落ち着け……)
デブ(俺の事なんて、誰も気にしてなんていない)
デブ(普通だ。 普通に作業を続けるんだ……)
  ピー カサッ ピー カサッ
デブ(……よし! 終わった……)
??「あれー? もしかして、デブさん?」
デブ「!?」
歌手「やっぱりデブさんだ」
デブ「か、歌手さん……」
歌手「珍しいっすね、こんな場所のコンビニで会うなんて」
デブ「そ、そうですね……」
歌手「ん? なんスか? それ?」
73:
デブ「!! い、いや、その……」
歌手「? 漫画っスか?」
デブ「え、ええ……まあ……しゅ、趣味で……」
歌手「そうなんスか」
歌手「今度、良かったら見せてくださいよ」
デブ「!! そ、それは、は、恥ずかしい、ので……」
歌手「それは残念」
歌手「でも、気が変わったら読ませてくださいね」
歌手「じゃ!」
デブ「は、はあ……」
  アリガトウゴザイマシター
デブ「…………」
74:
デブ(…………)
デブ(し、死ぬほど焦った……)
デブ「ふうううう……」
デブ(…………)
デブ(……無駄に疲れたなぁ)
デブ(…………)
デブ(さっさとビニ弁買って帰ろう……)
デブ(…………)
―――――――――――
デブ「……ふう」
デブ(家に着いた)
75:
声優「あ……」
デブ「あ……」
デブ「こ、今晩は……」
声優「ど、どうも。 今晩は」
デブ「じゃ……」
  ソソクサ……
声優「…………」
―――――――――――
デブ「……はあ」
デブ「ここのところ、よく顔を合わせてしまうな」
76:
デブ「…………」
デブ(そういえば……声優さん)
デブ(こんな時間に帰ってくるなんて珍しいな?)
デブ(…………)
デブ(ま……俺には関係ない事、か)
デブ(さて、食い飽きたビニ弁食って、風呂に入って)
デブ(もう寝よう)
デブ(明日原稿投函したら、別の出版社のをやらないと……)
デブ(スケジュール、少し押してるからな)
デブ(はあ……)
デブ(貧乏暇なし、だな)
77:
歌手「ふふ〜ん、ふんふん……」
  ♪〜♪〜♪〜
歌手「うんうん、こんな感じで」
歌手「サビの部分は、と……」
歌手「…………」
歌手「どうもいいのが浮かばないな……」
歌手「うーん……」
  ♪〜……♪〜♪〜
歌手「……違うな」
歌手「う〜ん」
78:
店員「いいの出来そうー?」
歌手「思いついた時、いいかな、と思ったんだけど……」
店員「産みの苦しみだねー」
歌手「どうもサビの部分が降りてこない……」
歌手「ふふ〜ん、ふんふ〜ん……」
店員「明るい曲ー」
歌手「そうなんだけど……う〜ん」
歌手「……ダメだ、どうもしっくりこない!」
店員「そっかー」
歌手「……あ」
歌手「店員、もうこんな時間だぞ?」
店員「おおう、本当だー」
79:
店員「それじゃ……そろそろおいとましますかー」
歌手「いつも悪いな、店員」
歌手「今日の飯も美味かったぜ!」
店員「礼には及ばぬー」
歌手「ここのところ毎日だしな。 何か、お礼を考えとくよ」
店員「だから気にするなー。 私が好きでやっている事ー」
歌手「送っていかなくて、本当に大丈夫か?」
店員「何度も言ってるー。 私は空手の有段者ー」
歌手「わかってるんだけどな……」
店員「気持ちだけもらっとくー」
店員「さらばじゃー」
  パタン
歌手「…………」
80:
店員「…………」
  テク テク テク
店員「…………」
店員「歌手……そう思うのならー」
店員「『今日、泊まっていくか?』くらい」
店員「言ってくれてもいいんだぞー」
店員「……っと」
店員「…………」
店員「私、とっくに、心の準備は済ませているんだぞー」
店員「……っと」
  テク テク テク…
―――――――――――
81:
数日後・午後
店員「いらっしゃいませー」
店員「あ……」
????「やあ、店員ちゃん」
店員「…………」
店員「イケメン……」
イケメン「久しぶり、高校卒業以来だね」
イケメン「突然訪ねてごめん」
店員「……今は仕事中ー」
イケメン「わかってるよ」
82:
店員「どうしたのー? 今頃ー?」
店員「もう……答えは出てるけどー」
イケメン「…………」
イケメン「いやだ」
店員「……!?」
イケメン「悪いけど、こっちにも事情があってね」
イケメン「どうしても話がしたい」
店員「…………」
店員「……変な事したら、地獄を見るよー」
イケメン「そんな事はしないし、君が空手の有段者なのも知ってるよ」
店員「…………」
店員「……わかった」
イケメン「済まないね……そこの喫茶店で仕事が終わるのを待ってるから」
83:
喫茶店
店員「それで? 何の用ー?」
イケメン「まあまあ。 まずはコーヒーでも」
店員「こっちにも予定があるー」
店員「手短に済ませて欲しいー」
イケメン「変わらないね、君は」 クスッ
店員「…………」
イケメン「……あれからもう6年になるんだね」
イケメン「君をめぐって、歌手と争ったのは……」
店員「…………」
84:
イケメン「あいつは、ミュージシャンになる事以外考えてなくて」
イケメン「将来設計も何も考えていなかった」
店員「人の彼氏、ディスるなー」
イケメン「ごめん」
イケメン「だけど……事実だ」
店員「さっさと本題に入れー」
イケメン「…………」
イケメン「……改めて言うけど」
イケメン「俺は、君の事が好きだ」
店員「……その気持ちには答えられないって、返答してるけどー?」
イケメン「わかってる」
イケメン「で、だ」
イケメン「聞いておきたい事がある」
85:
店員「何ー?」
イケメン「あの時はショックだったし、君が選んだ道だから」
イケメン「それでいいと思った」
店員「…………」
イケメン「でも……ずっとくすぶっていてね」
イケメン「突然で悪いと思ったけど」
イケメン「あいつを……歌手を選んだ理由を聞かせて欲しいんだ」
店員「…………」
店員「そんなのは、私の勝手ー」
店員「あんたに聞かせる話じゃないー」
イケメン「どうしてさ?」
86:
イケメン「君が振った男に止めを刺せ、と、言ってるだけだぞ?」
店員「…………」
イケメン「…………」
イケメン「……俺さ」
イケメン「親から、見合いをする様に言われた」
店員「……!」
イケメン「皮肉な事に……それがキッカケで」
イケメン「ずっとくすぶってた気持ちに火が付いた」
店員「…………」
イケメン「俺は、今でも君の事が好きだ」
イケメン「……随分時間が経っているのにね」
店員「…………」
87:
店員「話はそれで終わり?」
イケメン「……言いたい事は言ったかな」
店員「そう」
店員「なら、もう話す事はない」
イケメン「答えをもらわないと、また会いに来るけどいいかい?」
店員「それは御免被(こうむ)りたい」
イケメン「だけど、それでも会いに行く。 俺は」
店員「それストーカー」
イケメン「それだけ本気って事なんだよ」
店員「…………」
店員「ともかく、今日はこれで終わり」
イケメン「…………」
88:
イケメン「……わかった」
イケメン「じゃあ、いずれまた」
店員「…………」
  アリガトウゴザイマシター
イケメン「…………」
イケメン(店員ちゃん……相変わらずポーカーフェイスだね)
イケメン(けど)
イケメン(途中から口調が変わっていた)
イケメン(……動揺した証拠だよね)
イケメン(…………)
イケメン(自信がないんだろ?)
イケメン(歌手を選んだ事に)
89:
店員「…………」
店員(……早く、歌手の所に行かないと)
店員(…………)
アパート
  ガチャ ガチャ…
店員「…………」
店員(今日も居ないのか……)
店員(カギはもらってるけど)
店員(最近)
店員(待つ事が多くなってる気がする)
90:
デブ「…………」
  プルルルルル… プルルルルル…
デブ「……お、電話だ」
  ガチャ…
デブ「はい、もしもし」
デブ「……ああ、A編集者さん」
デブ「締切はまだ先ですけど……?」
デブ「……はい……はい」
デブ「…………」
デブ「…………え」
デブ「そ、それって……」
デブ「……はい……はい」
デブ「…………」
91:
デブ「そう……ですか……」
デブ「わかりました」
デブ「また……機会があれば、よろしくお願いします」
  プッ……ツーツー
デブ「…………」
デブ「打ち切り……か」
デブ「…………」
デブ「気にするなよ、俺」
デブ「こんな事は、前にもあったじゃないか」
デブ「前にも……」
デブ「…………」
92:
後輩「先輩、明日はいよいよオーディションですね!」
声優「そうだね」
後輩「今度こそ、表舞台に立って見せるんだから!」
声優「頑張らないとね」
後輩「…………」
後輩「……どうしたんですか? 先輩?」
声優「え?」
後輩「何だか元気がありませんけど?」
声優「そんな事無いよ」
声優「ただ……緊張してるだけ」
後輩「そうなんですか……先輩でも落ち着かないモノなんですね」
声優「…………」
93:
声優(違う)
声優(不安に思っているだけ……)
声優(…………)
声優(アタシだけで受けるのなら、こんなに不安には思わない)
声優(あなたと……二人で一緒に受けるから)
声優(……とても怖い)
声優(…………)
声優(もし)
声優(アタシが落ちて、あなただけが受かったら……)
声優(アタシは……後輩ちゃんを祝福できるのかな……?)
声優(…………)
94:
声優(……ううん、余計な事は考えるな)
デブ(きっと、大丈夫)
店員(きっと……)
  これからも、日常は続いていく――
100:
翌日
声優「3番、声優です。 よろしくお願いします」
選定員「はい、よろしくお願いします」
選定員「それでは、お渡ししたセリフを言ってみてください」
声優「はい」
声優「わたくしは、誉れ高き名門の――」
声優(オーディションが始まった)
声優(アタシが希望したアニメキャラは脇役だけど)
声優(お嬢様口調で特長がはっきりしている)
声優(もちろん自分に合っていると判断して応募した)
101:
選定員「……はい、声優さん、ありがとうございました」
声優「ありがとうございました」
選定員「それでは次の方」
モブ美「4番、モブ美です」
声優(……実は、主役級の役は、原作者の希望であらかた決まっていたりする)
声優(ビックネームはずるいなぁ……とか思う)
声優(誰だって上手な演者に演じて欲しいだろうけど……)
声優(どうにかならないものか、と)
声優(つい、いつも考えてしまう……)
―――――――――――
102:
選定員「みなさん、ご苦労様でした」
選定員「結果は後日、各プロダクションの方へ連絡いたしますので」
一同「お疲れ様でした」
  ガヤ ガヤ…
声優「ふう……」
後輩「先輩、お疲れ様でした!」
声優「あら、後輩ちゃん。 お疲れ」
声優「そっちも終わったの?」
後輩「はい、10分くらい前に」
声優「そう……手応えはあった?」
後輩「ううっ……正直、微妙です」
後輩「緊張で2回くらい噛んじゃったし……」
声優「あらら」
103:
後輩「で、でも! 貴重な場数を踏めました!」
後輩「次は、もっと頑張ります!」
声優「うんうん」
後輩「先輩はどうでした?」
声優「……どうかな」
声優「自分としては、全力で演技したと思うけど……」
声優「判断する人が、どう捉えるか、よね」
後輩「そう……ですか」
声優「後から後から、ここはもうちょっとこうしとけば……みたいなのに落ち入るし」
後輩「うう〜……今の私、そんな感じです」
声優「ふふふ」
104:
声優「……」
声優(後輩ちゃんが自信無さげで)
声優(安心している自分がいる……)
声優(…………)
声優(情けないけど……正直な気持ちだわ)
声優(…………)
声優(……結果を知るのが)
声優(怖い……)
―――――――――――
105:
デブ「…………」
デブ「……ふう」
デブ(いまいちはかどらない……)
デブ(…………)
デブ(まあ……これで終わりだし)
デブ(突然の話だったから、まだ動揺しているんだろう)
デブ(……豆腐メンタルだなぁ)
デブ(…………)
デブ(……あ)
デブ(もう午後2時か……)
デブ(昼飯、どうするかな)
106:
  アリガトウゴザイマシター
デブ(結局ビニ弁かよ……)
デブ(いい加減、この食生活から脱出したい)
デブ(…………)
デブ(でも自炊は面倒だし)
デブ(料理なんてした事がない……)
デブ(…………)
デブ(誰かの手料理なんて望めそうもないし)
デブ(はあ……)
  テク テク テク…
107:
夕方
スーパー
歌手「お疲れ様っス」
  オツカレサマー
歌手「さて、と」
歌手「運良く炊き込みご飯の余りをもらえた」
歌手「いくら明日に使えないからって廃棄するのは、もったいなよな〜」
歌手「……まあ業務違反だから、いつももらえるわけじゃないけど」
歌手「タダ飯、ゲットだぜ!」 ニシシ♪
????「……よう、歌手」
歌手「あん?」
歌手「! ……イケメン」
108:
イケメン「久しぶり」
歌手「お、おう……」
イケメン「元気そうだな」
歌手「……お、お前も、な」
イケメン「久しぶりに会ったんだし、少し話さないか?」
歌手「え……」
イケメン「コーヒー奢るぜ?」
歌手「い、いや、俺は」
イケメン「ほら、行こうぜ」
歌手「…………」
109:
喫茶店
  イラッシャイマセー
イケメン「コーヒー。 ブレンドを二つ」
  カシコマリマシター
歌手「…………」
歌手(イケメン……スーツ姿、かっけぇ……)
歌手(バリバリ仕事してそうだ……)
歌手(…………)
歌手(ただの偶然……なんだろうか……)
イケメン「最近、店員ちゃんとどう?」
歌手「!」
歌手「……上手くやってるけど」
110:
イケメン「そう」
イケメン「それは良かった」
歌手「…………」
イケメン「彼女の事だから」
イケメン「あの独特のイントネーションで笑ったりしてるんだろうな」 クス
歌手「まあな」
イケメン「こっちは、来る日も 来る日も 仕事で死にそうだよ」
イケメン「おかげでまだ独り身さ」
歌手「…………」
歌手「お前なら引き手あまただろ?」
111:
イケメン「まあ会社の女の子達、良く食事に誘ってくれるけど」
歌手「イヤミかよ」
イケメン「ハハハ……時間がなくて、一度も行ってないけどね」
歌手「さよけ」
イケメン「……お前はどうなんだ? 仕事とか」
歌手「……!」
イケメン「…………」
  オマタセシマシター
イケメン「ありがとう」
イケメン「…………」 ズズッ…
イケメン「……うん、ここのブレンドはいい味だ」
歌手「…………」
112:
イケメン「最近、夏らしくなったな」
歌手「…………」
歌手「……そうだな」
歌手「毎日クソ暑い」
イケメン「…………」
イケメン「そうだな、クソ暑い」
歌手「…………」 ズズッ…
歌手「……アイスの方が良かったな」
イケメン「悪い」
歌手「……別にいいさ」
歌手「ところで、よ」
イケメン「うん」
113:
歌手「仕事で忙しく、時間がなくて女の子の誘いを断ってるお前が」
歌手「わざわざ何の用だ?」
イケメン「ハハ、本当にただの偶然だよ」
歌手「…………」
イケメン「偶然、時間が出来ただけさ」
イケメン「この後すぐ、社に戻らないといけないしね」
歌手「…………」
イケメン「……おっと、そろそろ時間だな」
イケメン「伝票持っていくよ」
歌手「……ああ」
イケメン「じゃ、またな」
歌手「…………」
114:
歌手(……くそ)
歌手(なんも言い返せねぇ……)
歌手(…………)
歌手(あいつだけじゃない)
歌手(みんな……社会人になって、それぞれで働いている)
歌手(結婚して、子供のいる奴だって……)
歌手(…………)
歌手(俺は……)
歌手(俺は、あいつを……)
歌手(店員を巻き込んでいいのか……?)
歌手(…………)
―――――――――――
115:
  ガチャ
店員「おかえりー」
歌手「ただいま」
店員「夕飯出来ているぞー」
歌手「ああ、美味そうだな」
店員「……?」
店員「どうしたー? 歌手ー?」
歌手「何でも無いって」
歌手「さて、食おうぜ!」
店員「う、うんー」
店員「…………」
116:
店員「ごちそうさまー」
歌手「ごちそうさまでした」
  カチャ カチャ…
店員「洗い物、やっとくー」
歌手「おう、すまんな」
店員「いいって事ー」
店員「…………」
  ジャー… キュッ
店員「洗い物、終わったー」
歌手「そうか」
店員「…………」
店員「歌手ー」
歌手「ん?」
117:
店員「何か、隠してないー?」
歌手「…………」
歌手「いいや?」
店員「…………」
店員「……そう」
店員「なら、いい」
店員「…………」
店員「……そろそろ帰るー」
歌手「そっか」
歌手「じゃ……」
  パタン…
118:
歌手「…………」
歌手「あ……」
歌手「そういやもらった炊き込みご飯……」
歌手「すっかり忘れてた。 ……どうしよう」
歌手(…………)
歌手(……って)
歌手(俺……何、残飯もらって喜んでたんだよ)
歌手(こんなもの……店員に食わせるつもりだったのかよ)
歌手(…………)
歌手(何が、『礼をする』だよ……)
歌手(まともな飯すら用意できねーじゃねーかよ……俺)
歌手(…………)
119:
店員「…………」
店員(どうしたんだろ……)
店員(今までは、どんな事でも話してくれたのに)
店員(…………)
店員(……やっぱり)
店員(音楽の事を良く分かっていない私は)
店員(あんたを……支えてあげられないのかな)
店員(…………)
店員(私は……歌手と一緒に居られれば)
店員(それだけで幸せ)
店員(でも……)
  トボ トボ トボ…
120:
数日後
M「あー後輩ちゃん、声優さん」
後輩「マネージャーさん」
声優「何でしょうか?」
M「この前のオーディションの結果が送られてきました」
声優「!」
後輩「!」
M「えー、その結果ですが……」
M「ちょっと、言いにくいんだけど」
声優(……ま)
声優(まさか……)
後輩「…………」 ドキドキ
121:
M「残念ながら……二人共落選です」
声優「!」
後輩「」 ガーン…
M「……また次、頑張りましょう」
声優「はい」
後輩「はい……」
―――――――――――
後輩「はあ……」
声優「元気だしなよ、後輩ちゃん」
声優「マネージャーさんもまた頑張ろうって、言ってくれたじゃない」
後輩「そうなんですけど……悔しいです」
122:
後輩「それに……先輩、何だか嬉しそうじゃありません?」
声優「! ……そんな事ないわ」
声優「ただ……こういうのも慣れちゃってるだけ」
後輩「…………」
後輩「それも”怖い”ですか?」
声優「ええ。 とっても、ね……」
後輩「…………」
声優(…………)
声優(……今回はいろんな意味で)
声優(嫌な感じ……)
声優(…………)
声優(仕事に集中しないと)
123:
デブ「……ふあっ」
デブ「むにゃむにゃ……」
デブ「…………」
デブ「……!?」
デブ「もう10時を回っている!?」
デブ「…………」
デブ(今日もお隣さん……歌手目覚まし、鳴らなかったのか)
デブ(……風邪でもひいたのか?)
デブ(まあ、いっか)
デブ(仕事しないと……)
124:
夕方
  ガチャ……キィ……パタン
デブ(さて)
デブ(今日も食い飽きたビニ弁買って……)
歌手「あ……」
デブ「あ……」
デブ「どうも」
歌手「どうも、です」
デブ(……?)
デブ(心なしか……元気がない様な……?)
デブ(まあ、関係ないけど)
125:
歌手「…………」
歌手「あ、あの!」
デブ「え?」
歌手「この前、漫画描いてるって、聞きましたけど……」
デブ「は、はあ……」
歌手「もしかしたら……漫画家さん、ですか?」
デブ「!?」
デブ「い、いや、その……」
歌手「だとしたら、お願いがあるんです!」
デブ「だ、だから……」
126:
歌手「漫画を、ぜひ! 読ませてください!」
歌手「お願いします!」 ペコリ
デブ「!?」
歌手「…………」
デブ「…………」
デブ「……何だか解りませんけど」
デブ「そんなに見たいのなら……」
歌手「ありがとうございます!」
デブ「…………」
デブ「でもね……」
デブ「あらかじめ言っておくけど……エロ漫画だよ?」
歌手「……薄々、そんな気はしてました」
歌手「あの日……コンビニでコピーを取ってた時に」
デブ「え」
127:
デブ「…………」
歌手「…………」
デブ「じゃあ……ちょっと待ってて。 今、いくつか持ってくるから」
歌手「はい」
―――――――――――
デブ「はいこれ……2〜3日くらいで返してくれ」
歌手「ありがとうございます」
デブ「なるべく汚さないでね……ああ、それから」
デブ「感想とか、言わなくてもいいから」
歌手「……え?」
デブ「じゃ……」
歌手「…………」
128:
デブ「……ふう」
デブ(引越しとか……考えた方がいいかもしれないな)
デブ(…………)
デブ(しかし)
デブ(何だって俺のエロ漫画を読みたい、なんて思ったんだろう?)
デブ(…………)
デブ(考えても解るわけないか……)
デブ(さっさと買い物済ませよう)
  テク テク テク…
―――――――――――
129:
歌手「…………」
歌手「…………」 パラ…
歌手「…………」
歌手「…………」 パラ…
歌手「…………」
歌手(……ある程度は予想してた)
歌手(けど……)
歌手(無修正だとは思わなかった……!)///
歌手(女の子のマ○コや チ○コや……結合部がっ)///
歌手(…………)///
  ガチャガチャ
歌手(!!)
130:
歌手(やべぇ! 店員が来た!)
  カチリ☆(開錠) ……ガチャ
店員「おっ? 今日は居たねー」
歌手「お、おう……」
歌手(間一髪、隠すの間に合った……)
店員「……どうしたー?」
歌手「な、なんでもない」///
店員「……?」
歌手「さ、さあ、飯を作ろうぜ!」
店員「…………」
店員「わかったー」
131:
店員「…………」
  トントントン パラパラ… グツグツグツ
歌手「…………」
歌手(やばい……)
歌手(店員に……めちゃくちゃムラムラする……)
歌手(…………)
歌手(こうして見ると)
歌手(黒髪のボブカットにスッとした顔立ち)
歌手(胸は控えめだけど、くびれた腰に柔らかそうなヒップ……)
歌手(そして、スラリと伸びた足……)
歌手(……こうして改めて見ると、本当に可愛いよな)///
132:
店員「……歌手ー?」
歌手「!」
歌手「な、なんだ?」
店員「手が止まってるー」
歌手「す、すまん……」///
店員「…………」
店員(……やっぱり、変)
店員(歌手、どうしたの?)
―――――――――――
133:
歌手「ごちそうさま」
店員「……ごちそうさまー」
歌手「…………」
店員「…………」
歌手「え、えと……」
店員「うんー」
歌手「今日も飯、ありがとうな」
店員「何度も言ってるー気にするなー」
歌手「ハハハ……」
歌手「…………」
店員「…………」
134:
店員「歌手」
歌手「ん?」
店員「…………」
店員「私は……歌手に必要?」
歌手「…………」
歌手「え?」
店員「…………」
店員「私は」
店員「音楽の事は、全くと言っていいくらい」
店員「分かっていない」
店員「……私に出来る事は、歌手の食事を作るぐらいが精一杯」
歌手「…………」
135:
店員「私は……」
店員「歌手の『夢』の手伝いが出来無い……」
歌手「…………」
歌手「そんな事ねーよ」
店員「!」
歌手「店員が傍に居てくれるだけで……」
歌手「どれだけ助けになったか、わかんねーよ」
店員「でも……」
歌手「もし、さ」
歌手「店員が居なかったら……俺、たぶん」
歌手「こんな貧乏ミュージシャン活動なんて、とっくに廃業してる」
店員「!」
136:
歌手「……もしかしたら、たった一人かもしんねーけど」
歌手「俺の歌を楽しみにしている奴が、ここに居るって事が」
歌手「どれだけ力になってくれたか……」
店員「歌手……」
歌手「へへ……ちょっと恥ずかしい事、言ったな」///
店員「ううん」
店員「っていうか、もっと言って欲しいー」
歌手「調子に乗んなよ」
  ハハハ…
歌手「……あー、でも、な」
店員「んー?」
137:
歌手「こんな事、言った後で言うのも何だが……」
歌手「今日は、これで帰ってくれないか?」
店員「…………」
店員「……は?」
歌手「頼む……何も聞かずに従ってくれ」
店員「……これだけ上げといて叩き落とすのは」
店員「温厚な私でもさすがにカチンとくる……」
店員「納得のいく説明をするまで帰らない」
歌手(……やべぇ)
歌手(地雷踏んだ……)
138:
歌手「そ、その……割と最低系な理由、とだけ、言っとく」
店員「……余計に情報の開示を求めたい」
歌手(火に油だった……)
歌手「と、ともかく! 帰ってくれ!」
店員「私の空手の腕、見たいのー?」
歌手「白状します……」 クスン…
店員「最初からそう言えー」
店員「でー? どんな理由ー?」
歌手「お、おう……」
歌手「そ、その……な」
店員「はっきりしろー」
歌手「……お前に、ものすごくムラムラしてるからです」///
139:
店員「…………」
店員「は!?」///
歌手「な、何度も言わねーからな!?」///
店員「い、いきなりすぎ……」///
店員「というか、何で今頃!?」///
歌手「…………」///
歌手「これを読んだから……」///
―――――――――――
店員「」///
歌手「…………」///
店員「……お、女の子に、な、なんて物、見せるー」///
歌手「手っ取り早く、理解してもらうためだよ……」///
140:
歌手「……これで分かっただろ」
歌手「今の俺は、ただのケダモノだ……」
歌手「まあ、お前の空手で撃退されるだろうけど、そんな目に会いたくもないし」
店員「…………」
歌手「さ……帰ってくれ」
店員「……ちょっと待ってー」
店員「確かに、ムードもへったくれも無くなるのは嫌だけど」
店員「私は……それを……受け入れる覚悟があるー」///
歌手「」
店員「……歌手」
店員「どうして、今まで、私に手を出さなかった?」
141:
歌手「……!」
歌手「…………」
歌手「……将来が」
歌手「将来がどうなるのか、不安だったし」
歌手「もし……諦めた時」
歌手「店員には、綺麗な体でいてもらいたかったから……」
店員「…………」
店員「そうだったの……」
歌手「…………」
店員「歌手」
歌手「……うん」
142:
店員「私、久しぶりに怒った」
歌手「え」
店員「ここであなたに選択肢を与えます」
歌手「は?」
店員「ひとつは」
店員「ダブルブリザードからの 烈風正拳突きを喰らって貰うこと」
歌手「……なんで闘将ダ○モス知ってるんだよ」
店員「もう一つは」
店員「……その、私と……する事」///
歌手「」///
店員「さあ、選んで」
143:
歌手「で、でも……」
店員「歌手」
店員「私を大切に思ってくれてるのは分かったー」
店員「だけど……」
店員「それは、ある意味で『拒絶』とも取れるー」
歌手「!」
店員「私は……」
店員「不安で不安で……怖かった」
店員「どうしようもなく、恐ろしかった……」
歌手「…………」
144:
歌手「……店員」
  ギュッ…
店員「!」
歌手「悪い……」
歌手「俺」
歌手「逃げて……いや、覚悟が足りてなかったんだな」
店員「……歌手」
歌手「……なんて言うか、ホント、ムードもへったくれもないけど」///
店員「それは、しょうがないー」
店員「けど」
店員「今、私は、最高に幸せー」///
歌手「ハハ……俺も」///
145:
店員「じゃ……準備するー」
歌手「……へ?」
店員「こんな事もあろうかと」
歌手「真○さんか、お前……」
  ゴソゴソ…
店員「お泊まりセットを歌手の部屋に忍ばせておいたー」
歌手「…………」
店員「歌手は童貞?」
歌手「どどどど童貞ちゃうわ!」///
店員「気にするなー。 私も初めてー」
歌手「だから俺h」
店員「ダブルブリザー……」
歌手「童貞です」
146:
店員「じゃ、お湯を沸かすー」
歌手「……? 何に使うんだ?」
店員「これ。 ローションを作るー」
歌手「…………」
歌手「なあ」
店員「何ー?」
歌手「もしかして、経験者?」
店員「ファイヤーブリザー……」
歌手「な、何でもないです!」
147:
店員「まあ、疑うのも分からんではないー」
歌手「さよけ」
店員「私の先輩にあたる人から、いろいろと経験談を聞いたー」
歌手「へえ」
店員「初めて同士は、失敗が多いー」
店員「特に女の子は、個人差があるとは言え、最初の痛みでトラウマになり」
店員「行為はおろか、相手とも気まずくなって別れにつながる事も……」
歌手「…………」
店員「私……」
店員「歌手とそうなりたくないー」///
歌手「お、おう……」///
148:
歌手「他にどんな注意点が?」
店員「避妊具のつけ方とかー、オギノ式の数え方とかー」
歌手(……どんな先輩だよ)
店員「後、○ナルには絶対手を出すな、とかー」
歌手「やらないから。 俺そこまで探求しないから」
店員「実際、かなり危険らしいー」
店員「大腸菌感染でえらい事にな」
歌手「その辺で止めてくれ……萎える」
店員「それは困るー」
歌手「もっと初心者レベルの注意点を、だな……」///
店員「心得たー」
―――――――――――
149:
デブ「…………」
デブ「……ん?」
  アン……アン……ア……
デブ「」
デブ「え」
デブ「ええ!?」
  歌手……モットォ………
デブ(ちょ……)
デブ(ちょっと待ってくれ……)
  アア……スゲェ………店員ッ……
150:
デブ(…………)
デブ(……これってアレか?)
  ヤ……ハゲシイ………ユックリ……
デブ(倦怠期で、刺激が欲しくて)
デブ(俺の漫画を使った……?)
  ソウイワレテモ……ガマン………デキナ……
デブ(…………)
デブ(……まあ)
デブ(役に立ったみたいだけど)
  店員……オレ………モウッ……アアッ………
デブ(出来れば、雑誌を買ってやってくれよな……)
  歌手……歌手ゥ…………
デブ(…………)
デブ(一発抜いておくか……) ハア…
151:
翌日
声優「おはようございます」
M「ああ、おはようございます、声優さん」
後輩「おはようございます、先輩、マネージャーさん」
M「お、来たね、後輩ちゃん」
後輩「?」
後輩「私に何か用ですか? 新しいお仕事、とか?」
M「うん、ある意味ではそうだね」
後輩「はあ……」
M「実は、この前のオーディション」
M「選定員の一人が、ぜひ君にやってもらいたいキャラがあるって」
M「さっき連絡があったんだ」
152:
声優「……!」
後輩「え……?」
後輩「エロですか?」
M「いいや」
声優「!」
後輩「ええ!?」
M「深夜枠だけどね」
M「最近流行りの魔法少女もので、準主役級の役をお願いしたいってさ」
後輩「ほ、本当ですか!?」
後輩「やった! やりましたよ! 先輩!」
声優「……っ」
153:
  アタシの時間が、止まる――
162:
後輩「それで、収録はいつなんですか!?」
M「ハハハ、まだちょっと先だよ」
M「先方(せんぽう)の話じゃ来月下旬くらいになるって」
  …………
後輩「他のキャラの配役は決まっているんですか!?」
M「主要キャラはね」
後輩「有名な人とか、居るんだろうなぁ……」
  ……どうして
163:
後輩「うう〜、い、今から緊張してきました……」
M「まあまあ。 とりあえず、目の前の仕事に集中してくれよ?」
後輩「もちろんです!」
  どうして、なの……?
M「それじゃあ、詳しいスケジュールが分かり次第、連絡するから」
後輩「はい!」
  アタシは――
  アタシのしてた、努力は――
164:
後輩「……?」
後輩「先輩?」
声優「…………」
後輩「どうしたんですか? 先輩?」
声優「…………」
後輩「先輩!」
声優「!!」
声優「あ、う、うん、ごめんなさい、後輩ちゃん……」
声優「ちょっと……寝不足で、ボーっとしちゃってた」
後輩「そうなんですか」
声優「う、うん……そう、なの」
165:
声優「じゃ、仕事に行かないと……」
  ソソクサ…
後輩「あ……」
後輩「…………」
後輩「どうしちゃったんだろう……先輩」
―――――――――――
銀行
  ピ……ピピ……ピ
デブ「…………」
デブ(まだ入金されてない)
166:
デブ(B出版……先月も3日遅れてたし)
デブ(今月もなのか……?)
デブ(しっかりしてくれよ……ったく)
  アリガトウ ゴザイマシタ
デブ(さて……どうするかな)
デブ(…………)
デブ(暑ぅ……)
デブ(とりあえず、喫茶店にでも入って考えよう)
  テク テク テク…
167:
歌手「……う」
歌手「ふああああああっ……」
歌手「…………」 ボー…
店員「おはよー」
歌手「……!?」
歌手「え!? て、店員!?」
店員「何で驚くー?」
歌手「……」
歌手「あ……そ、そうだった……俺達、昨夜……」///
店員「……」///
168:
歌手「って!? もう10時じゃねーか!?」
店員「そうだねー」
歌手「なんで起こしてくれなかったんだよ!? 完全に遅刻だ、遅刻!」
店員「そうだねー」
歌手「そうだねって……お前も遅刻なんじゃね?」
店員「……昨夜」
店員「誰かさんのハッスルで私の一部分が悲鳴を上げておりますー」
歌手「す、すまん」///
店員「そんな訳で、さっき電話して、私は今日休みを取ったー」
歌手「ああ……」
店員「…………」
169:
店員「そういえば、聞きたい事、あるー」
歌手「おう?」
店員「昨日の……その、えっちぃ漫画ー」
店員「あれ、コピーだったけど、無修正だったー」
歌手「ああ……」
店員「あんなの、どうやって手に入れたのー?」
歌手「手に入れた訳じゃねーよ。 借りたんだ」
歌手「お隣のデブさんに」
店員「へー」
店員「やっぱり、そういう雑誌に描いている人ー?」
歌手「まあ、はっきり言わなかったけど……たぶん」
店員「そっかー」
170:
店員「お礼、言うべきかなー?」
歌手「……どうして?」
店員「私と歌手のキューピッドになったー」
歌手「心情的に受け入れたくない事実だ……」
店員「事実は小説よりも奇なりー」
歌手「まあ、真面目な話……デブさん、お礼言われても困ると思う」
店員「……やっぱりそうかなー」
歌手「って、そんな話ししている場合じゃない!」
歌手「電話! 電話入れとかないと!」
店員「歌手も休んだらー?」
171:
歌手「そうしたいのは山々だが……」
店員「?」
歌手「絶対、お前に手を出す……つーか、空手技食らってもヤリ倒そうとする」
歌手「情けないが……我慢できる自信がねえ」///
店員「……歌手のスケベー」///
歌手「う、うるせー」///
歌手「ど、童貞には、過剰すぎる快感だったんだよっ」///
店員「バ、バカ……そ、それ以上言うなー」///
歌手「だあもう! 思い出しちまったじゃねーか!」///
歌手「静まれっ! 俺の情熱マイクッ!」///
店員(……男って、ちょっと可哀想な生き物ー)///
172:
収録スタジオ
声優「ああんっ、あんっあんっ……」
声優「もっとぉ……もっとかき回してぇ……」
声優「子宮の奥ぅ……いいのぉ……あひぃぃぃっ」
スタッフ「…………」
スタッフ「すみません、もう一度お願いします」
声優「……はい」
声優「ああんっ、あんあん……」
声優「もっと……もっとかきき回し……」
声優「……すみません」
スタッフ「……はい」
173:
声優(……ダメ)
声優(もっと……もっと集中しなさいっ!)
声優(こんなの……いつもやっている事でしょ!?)
声優(こんなのっ……!)
  ――やった! やりましたよ! 先輩!――
声優「ああんっ、あん、あんっ……」
声優「もっとぉ……もっと、かき、回して……」
声優「子宮、の、お…く…………っ」
  ――それで、収録はいつなんですか!?――
声優「……っ……うっ……」 ポロッ
声優「うくっ……うっ……ううっ」 ポロポロ……
スタッフ「…………」
―――――――――――
174:
午後
M「……どうしたの、声優さん」
声優「…………」
M「後輩ちゃんくらいの新人ならともかく、君みたいなベテランが……」
声優「……すみません」
M「…………」
M「……まあ、先方(せんぽう)さんにも まだ余裕があったから良かったものの」
M「こういう事が続くと、こっちとしても、ね……」
声優「…………」
175:
M「…………」
M「スケジュールの調整はしておくから、2〜3日休んだ方がいい」
声優「!?」
声優「ま、待ってください!」
声優「アタシは……アタシはやれます!」
M「ダメだよ……今の君は使えない」
声優「……っ」
M「……僕としても、心苦しいけど」
M「今は、休む事を考えなさい」
M「わかったかい?」
声優「………………はい」
176:
夕方
  コン コン
デブ「? は〜い、どなたですか?」
歌手「あ、どうも……隣の歌手です」
デブ「ああ……今 開けます」
  ガチャ
歌手「昨日は突然すみませんでした」
デブ「いえ……」
歌手「これ……漫画です」
デブ「あ、はい」
デブ「じゃ……」
歌手「凄いですね……デブさんは」
177:
デブ「……は?」
歌手「怒るかもしれませんけど……」
歌手「俺……ちょっと、馬鹿にしてたっス」
歌手「デブさんも……エロ漫画の事も」
デブ「…………」
歌手「情けない事に……自分の無くしたやる気を取り戻したくて」
歌手「俺は、この人よりマシなんだって、思い込みたくて漫画を借りたっス……」
デブ「…………」
歌手「でも」
歌手「全然違った」
178:
デブ「……違わないよ。 その通りさ」
歌手「いいえ」
歌手「俺、羨ましいっス」
歌手「デブさんは、立派に『漫画』で食って行けてるじゃないですか」
デブ「…………」
歌手「……俺、今だにスーパーの惣菜売り場でバイトしてるっス」
歌手「もし……ミュージックに『エロ』ってジャンルがあったら」
歌手「是非それで稼いで、少しでも音楽のそばにいたいっス」
デブ「……!」
歌手「それに、このエロ漫画だって凄いっスよ」
歌手「めちゃくちゃムラムラしましたし」
デブ(……それは知ってる)
179:
歌手「ぜひ……大事にしてやってください」
デブ「は?」
歌手「俺は……自分が作った曲は、全部大事にとっているっス」
歌手「中には、こんなダセー曲って言われたものもあります」
歌手「でも……自分で生み出した……言ってみれば子供みたいなものなんです」
歌手「俺、捨てられないっス」
デブ「…………」
歌手「そんな訳で、いろいろ言っちゃったスけど」
歌手「全部ひっくるめて、ありがとうございましたっス!」
歌手「それじゃ!」
デブ「……はあ」
  パタン…
180:
デブ「…………」
デブ(……ったく)
デブ(相変わらず、無駄に熱い人だ)
デブ(…………)
デブ(子供……か)
デブ(悪いなぁ……こんな情けない親で)
デブ(…………)
デブ(……でも)
デブ(やる気は出てきたな)
デブ(………ふふ)
デブ(さ、仕事を続けるか)
181:
翌日
店員「いらっしゃいませー」
店員「……あ」
イケメン「やあ、店員ちゃん」
店員「待っていたぞよー」
イケメン「嬉しい事言ってくれるね」
店員「覚悟しておけー」
店員「特大の引導を渡してやるー」
イケメン「お、お手柔らかに頼むよ……」
182:
喫茶店
  イラッシャイマセー
イケメン「コーヒーを……あ」
イケメン「やっぱり、アイスコーヒーを2つ」
イケメン「それでいいかい?」
店員「何でもいいー」
  カシコマリマシタ
イケメン「さて……聞かせてもらえるかい?」
店員「わかってるー」
店員「…………」
店員「……そうねー」
店員「二人だけだったー」
店員「私の喋り方をバカにしなかったのはー」
183:
イケメン「…………」
店員「もっとも、馬鹿にした奴は片っ端から叩きのめしたけどー」
イケメン「男が相手でも容赦なかったよね……」
店員「でも、そのせいもあってー」
店員「私に話しかけてくる人は、稀だったー」
イケメン「……うん」
店員「……楽しかったよねー」
イケメン「ああ……俺と君と歌手の三人で、よくつるんだもんだ」
店員「…………」
店員「決定的だったのは、学祭の時だったー」
イケメン「…………」
184:
店員「クラス別の出し物で」
店員「初めて、あなたと歌手が対立したー」
イケメン「…………」
店員「あなたは堅実に喫茶店」
店員「歌手は、リクエスト・コンサート」
店員「歌手が、客のリクエストで一曲歌う、という誰が見ても無謀な企画だったー」
イケメン「…………」
店員「結局」
店員「クラスの取り決めで、あなたの案が採用されたー」
イケメン「……そこから、あいつは凄かったね」
イケメン「じゃあ自分だけでもやる!って言い出して」
イケメン「たった一人で実行委員会に企画エントリーした」
185:
店員「……私も無謀だと思ったー」
店員「意地を張らずにみんなで頑張ろう、と、説得もしてみたりもしたー」
イケメン「…………」
イケメン「たかだか高校の文化祭に、自腹を切ってまでステージを作っていたっけ……」
店員「そう」
店員「私もついて行けないって思ったー」
店員「しかも校舎裏……いったい誰が近寄るの?っていう場所ー」
イケメン「……そして当日」
イケメン「追い討ちをかけるような無常の雨が降ってきた」
店員「…………」
イケメン「…………」
186:
  オマタセシマシター
イケメン「ありがとう」
店員「ありがとうー」
  ズズッ…
店員「……私は、心配になって様子を見に行ったー」
店員「案の定、歌手はたった一人で歌っていたー」
イケメン「…………」
店員「歌手はずぶ濡れで、ギター持って……」
店員「でも……ずっと笑いながら歌ってたー」
イケメン「…………」
店員「私……どうしてかわからないけど」
店員「『明るい曲』をエントリーしたー」
187:
イケメン「…………」
店員「……本当にバカだよねー」
店員「だけど……」
イケメン「…………」
店員「私は、文化祭が終わって、片付けを手伝いながら」
店員「いろいろ最悪だったねって言ったー」
店員「そしたら……歌手はなんて言ったと思うー?」
イケメン「……疲れた、とか?」
店員「…………」
店員「笑いながら『そんな中なのに3人も客が来てくれたぞ!』だった……」
イケメン「……あいつらしいな」
188:
店員「その時、私……」
店員「歌手に恋をしたー」
イケメン「…………」
店員「この人は、どんな失敗も苦境も『楽しむ事』ができるー」
店員「どんなに馬鹿にされようとも、どんなに愚かだと言われても」
店員「笑い飛ばして、楽しんでしまえる人なんだって……」
イケメン「…………」
店員「今もそう……」
店員「歌手といると、それだけで私は楽しいー」
店員「経済的には苦しいけど、それを笑い飛ばしてるー」
店員「きっと……これからも」
イケメン「…………」
イケメン「……そうか」
189:
店員「イケメン」
イケメン「ん?」
店員「私は、イケメンの生き方を否定したいわけじゃないー」
店員「多分、私の選択の方が、世間から見たらおかしいと思われるー」
店員「でも」
店員「それでも、合う合わないは、人それぞれー」
イケメン「…………」
イケメン「……もし」
イケメン「もし、歌手がいなかっ――」
店員「…………」
190:
イケメン「……いや」
イケメン「何でも無い」
店員「……そう」
店員「最後に」
イケメン「ん?」
店員「最大にして最強の止めを刺すー」
イケメン「うん」
店員「私は」
店員「歌手に『女』にしてもらったー」
イケメン「ぶふぉっ!?」
店員「まいったかー」 ドヤッ!
イケメン「ハ、ハハハ……」
イケメン「そ、そう……かい。 二重に驚いたよ」
191:
店員「二重ー?」
イケメン「一つは君の思う通り」
イケメン「もう一つは、まだ”シテ”なかったのか、と思ってな」
店員「悪かったなー」
イケメン「ハハハ……」
イケメン「…………」
イケメン「ありがとう、店員ちゃん」
イケメン「おかげで……いい踏ん切りがついたよ」
店員「…………」
イケメン「じゃ、俺はこれで……伝票、持っていくね?」
店員「うん」
―――――――――――
192:
イケメン(…………)
イケメン(……予想はしてた)
イケメン(彼女の心に入り込むのは難しいって)
イケメン(…………)
イケメン(……だけど)
イケメン(結構くるものだな……)
イケメン(…………)
イケメン(世の中の半分は女なのに)
イケメン(どうして、君なんだろうね……)
イケメン(…………)
193:
イケメン(…………)
イケメン(俺は、君を支えたいって、ずっと思ってきた)
イケメン(その為に、堅実に生きてきた)
イケメン(将来を……ずっとずっと先を考えて、見据えて)
イケメン(頑張ってきた……)
 ――私は、イケメンの生き方を否定したいわけじゃない――
イケメン(…………)
イケメン(……君が俺の傍に居ないだけで)
イケメン(十分否定されてるよ……)
イケメン(…………)
イケメン(俺は……)
イケメン(店員ちゃん以外の誰かを)
イケメン(好きになれるのだろうか……)
194:
イケメン「…………」
イケメン「…………」 ピッ
イケメン「ああ、母さん? ……うん、そう」
イケメン「突然なんだけど、お見合いの話、進めておいてくれる?」
イケメン「…………」
イケメン「うん……うん……」
イケメン「うーん……それは約束できないな」
イケメン「何しろ初めての事だし……それに」
イケメン「その人が俺に合うか、合わないか、は、解らないからね……」
195:
数日後
銀行
デブ(……おかしい)
デブ(まだ入金されていない)
デブ(もう5日目だ……)
デブ(…………)
デブ(仕方ない)
デブ(B出版に電話してみよう)
  テク テク テク
196:
デブ「…………」 ピッポッパッ
  お掛けになった電話番号は、現在使われておりません
  もう一度……
デブ「……いけね、間違えたか」 ブッ… 
デブ「…………」 ピッポッパッ
  お掛けになった電話番号は、現在使われておりません
デブ「……あれ?」
デブ「…………」 ブッ
デブ「ええと……○■○ー●○△■と」
デブ「…………」 ピッポッパッ
  お掛けになった電話番号は、現在使われておりません
デブ「…………」
197:
デブ(…………)
デブ(……まさか)
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……プルルルルル……
  ガチャ
デブ「あ……A出版さんですか?」
デブ「すみませんが、A編集者さんをお願いします」
デブ「はい……」
デブ「…………」
デブ「……あ、A編集者さん、すみません」
198:
デブ「……は?」
デブ「ああ……そ、それは確かにお願いしたいですが……別件で」
デブ「……ええ、そうです」
デブ「A編集者さんは、B出版ってご存知ですか?」
デブ「…………」
デブ「ええ、それです」
デブ「その出版社の……」
デブ「え?」
デブ「…………」
199:
デブ「2週間くらい前に不渡りを出した……?」
202:
声優さんだけキッツいなーと思ったらデブも悲惨な事に……
208:
カラオケボックス
店員「…………」
店員「テンチョー」
テンチョー「ん?」
店員「売れてない女優さん、ここんとこ見ませんねー?」
テンチョー「……そうだね」
テンチョー「風邪でもひいたのかな……?」
店員「なるほどー」
店員「ちょっと心配ですねー」
テンチョー「だね」
209:
事務所
後輩「……マネージャーさん、先輩、今日もお休みなんですか?」
M「うん……」
M「体の方は問題ないんだけどね」
M「念のため、もう少し休むってさ」
後輩「そう……ですか」
M「じゃ、今日も収録、頑張ってね」
M「場所、いつもと違うから、気をつけてね」
後輩「はい……わかりました」
  テク テク テク…
M「…………」
210:
収録スタジオ
後輩「ああんっ! しゅごいっ……! しゅごいのぉぉっ!」
後輩「あたしの子宮ぅっ……! 全部っ……ギモヂいいのぉほぉっ……!!」
後輩「んはぁっ……! らめぇぇぇっ! れんぶっ……れんぶギモヂ……いいのほぉっ!!」
後輩「らしてぇっ……! 触手ち○ぽミルクぅ、らしてぇっ!」
後輩「触手ち○ぽミルク、いっぱい子宮にらしてぇぇぇぇっ!!」
後輩「ンはぁっ! きたぁ……! 触手ち○ぽっ、どくどくらしてぇ……」
後輩「ンあヒィィィィィィィッ!!」
後輩「あらしのひきゅう、イグぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
スタッフ「……はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「お疲れ様です」
後輩「お疲れ様でした」
211:
後輩「ふう……」
後輩「…………」
後輩(先輩、どうしちゃったのかな……)
スタッフ「…………声優さん、まだダメなのかな」
後輩「……?」
後輩(……スタッフマイク、入ったままだ)
スタッフ「こっちとしては、そろそろ録りたいんだけどね〜」
すたっふ「声優って……この前、収録中泣いちゃった娘?」
後輩「!?」
212:
スタッフ「そうなんだよ……」
スタッフ「長い事やってるし、そのへんは割り切ってると思ってたんだけどね〜」
すたっふ「まあ……逆に、今まで溜まってたものが一気に吹き出したのかもな」
すたっふ「俺、あの娘がエロ以外で(声を)当ててるの、ガヤ以外で見た事ねえし」
スタッフ「あー……そりゃいろいろクルわなー」
スタッフ「俺がその立場なら……とっとと辞めて他の仕事するわ」
すたっふ「アイドル声優がもてはやされて、その夢を捨てきれないのかもな」
すたっふ「実際、成れるのは ほんのひと握りなのに……」
スタッフ「それはさすがに理解してると思うが……どうなんだろうな」
すたっふ「……まあ、俺たちがボヤいたってしょうがないんだけど」
すたっふ「おっと……マイク、入れっぱなしだった」
  ブツンッ
後輩「…………」
213:
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……
デブ「あ、C出版さんですか?」
デブ「私、以前そちらで漫画を描かかせてもらっていたデブ、という者なんですが……」
デブ「C編集者さんは居られますでしょうか?」
デブ「…………」
デブ「あ、C編集者さん、お久しぶりです」
デブ「はい……はい……」
デブ「そうですね、懐かしいですね」
デブ「それで、ですね……」
214:
デブ「できたら、そちらでまた、漫画を描かせてもらえな……」
デブ「い、いえ、仕事ができるなら、イラストのカットでも何でもいいんです」
デブ「…………」
デブ「は、はい……無理は承知しています」
デブ「ですが……」
デブ「はい……はい……」
デブ「…………そう……ですか」
デブ「…………」
デブ「わかりました……お手間を取らせて申し訳ありません」
デブ「でも御用があれば、いつでも……」
  ブッ……
デブ「…………」
デブ「ええと……次は……」
215:
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……
デブ「あ、D出版さんですか?」
デブ「私、以前そちらで漫画を描かせてもらっていたデブ、という者なんですが……」
デブ「D編集者さんは居られるでしょうか?」
デブ「…………」
デブ「……え? 辞めた?」
デブ「そ、そうですか……」
デブ「あ、あの……でしたら、ですね」
デブ「そちらで是非、仕事を……」
  ブッ……
デブ「…………」
216:
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……
デブ「あ、E出版さんですか?」
デブ「私、以前そちらで漫画を描かかせてもらっていたデブ、という者なんですが……」
―――――――――――
デブ「…………」
デブ(……全滅、か)
デブ(…………)
デブ(…………)
デブ(……どうしたら)
デブ(…………)
218:
デブ(……今やってる仕事が終わったら)
デブ(俺……完全に無職……)
デブ(原稿料は3ヶ月遅れで入ってくるけど……お先真っ暗だ)
デブ(B出版の仕事で何とかなると思ってたのに)
デブ(ここは既に倒産してて、3ヶ月分の原稿料は、丸まるおシャカ……)
デブ(かつてのツテを当たってみたけど……結果は全滅)
デブ(…………)
デブ(……詰んだ……かも、な)
デブ(…………)
デブ(まいった……)
―――――――――――
219:
声優「…………」
声優「……あれ?」
声優「もう無い……ヒック」
声優「…………」
声優「ちょっと、買ってくるか……ヒック」
声優「…………」
声優「んー……んはははは……ヒック」
声優「いーきもちー」
声優「……ヒック」
  フラ フラ…
―――――――――――
220:
声優「んへへへー」
声優「コンビニって便利ぃー……ヒック」
声優「んはははは、声優様のお帰りー」
声優「ヒック」
  ガチャガチャ…
声優「……んあ?」
―――――――――――
デブ「……!?」
デブ(誰?)
  コラァー ダレダァー アタシノ部屋ノカギシメタノー!
デブ「」
デブ「え? 声優さん?」
221:
  ガチャ…
デブ「あのー……あなたの部屋は隣なんですけ」
  ドササッ
声優「んはー……」
デブ「酒臭っ!?」
デブ「って! こんな昼間からどうしたんですか!?」
声優「……うっせー!」
声優「なに人の部屋に入ってんだよ、キモヲタ!」
デブ「」
声優「出て行くのはあんただっつーの……キャハハハハッ!」
デブ(アカン……そうとう酔ってる……)
222:
声優「はははは……はあー……」
デブ(……どうしよう)
声優「……ぐすっ」
デブ「」
声優「なによう……アタシの何がいけないのよう……ヒック」
声優「後輩ちゃんが……えぐっ……どうして……えらばれりゅのよぉ……」
声優「なにが違うってのよぉ……! ぐすっ……えぐっ……」
デブ(…………)
デブ(恋愛のもつれ……かな……?)
声優「……それもこれも」
声優「全部あんたのせいよ! ……ヒック」
デブ「…………」
223:
声優「あんたみたいなキモヲタのブタ野郎が居るから」
声優「アタシが成るのよ!!」
デブ「…………」
声優「訴えてやるんだからぁ……ぐすっ……」
声優「全部……全部……」
声優「恨んでやるんだからぁっ!」
デブ「…………」
声優「う……あああああああああああっ……」
声優「えぐっ……ひぐっ……もう……やだああああああああっ……」
声優「ああああああああっ……」
デブ(……泣きたいのはこっちです) クスン…
224:
夕方
事務所
後輩「お疲れ様でした」
M「ああ、お疲れ様、後輩ちゃん」
後輩「…………」
後輩「あの、マネージャーさん」
M「ん?」
後輩「声優先輩、収録で泣いたって……本当ですか?」
M「…………」
M「君が気にする事じゃないよ」
225:
M「彼女もこの業界、長いんだ……割り切って仕事するのがプロだと」
M「わかっている」
後輩「…………」
M「……でも、人間なんだもの」
M「時々、立ち止まったり、転んだりしちゃうものだよ」
後輩「…………」
後輩「先輩……慣れるのが怖いって、言ってました」
M「…………」
後輩「割り切るって、何なんですか?」
後輩「先輩は、ずっとずっと……我慢してただけなんじゃないですか!?」
M「こ、後輩ちゃん……」
後輩「……私だって、我慢している状態です」
後輩「だからこそ、エロじゃない仕事が入って、嬉しかった!」
226:
M「…………」
M「わかっているよ……そんな事」
後輩「…………」
M「でもね……マネジメントしてる側から言わせてもらうけど」
M「彼女が頑張れば頑張るほど、エロ関連の仕事が増えるんだ……」
後輩「……!」
M「皮肉だよね……」
M「彼女の努力は、確かに認められているんだよ」
M「でも……それが表舞台の仕事を遠ざけていたりするんだ」
後輩「……っ」
227:
M「…………」
M「こっちとしても……できるだけ偏らないようにしたいんだけど」
M「結局……」
後輩「…………」
後輩「……帰ります」
  テク テク テク…
M「あ……」
M「…………」
M(彼女も……)
M(……ヤバイかもしれないな)
M「はあ……」
―――――――――――
228:
後輩「…………」
後輩(……どうして)
後輩(こんな事になったの……?)
後輩(…………)
後輩(私は、この業界の事を調べて、覚悟を決めて入ってきた)
後輩(有名な声の人も アイドル声優で活躍している人も)
後輩(エロをやった事が無い人は皆無……)
後輩(中には、エロができない奴は二流以下、なんて言ってる人も居る)
後輩(…………)
後輩(……私は、このチャンスを無駄にしたくない)
後輩(でも………でも……!)
―――――――――――
229:

声優「…………」zzz
声優「……ん」
声優「ふあああっ……」
  ズキズキッ!
声優「ぐっ……!」
声優「……ったま痛ぁ」
声優「…………」
声優「……さすがに、飲みすぎたみたいね」
声優「…………」
230:
声優(……あれ?)
声優(なに? この汚い部屋……それにあれって)
声優(描きかけの漫画……?)
  ガチャ
デブ「ふう……」
声優「」
デブ「あ」
デブ「目が覚めましたか、声優さん」
声優「…………」 唖然…
デブ「……その、とりあえず話を聞いてください」
デブ「やましい事はしてないし、玄関の鍵は空いてますから……」
声優「……はい」
231:
デブ「――という訳です」
声優「」
声優「す、すみませんでした!!」
デブ「いえ……」
デブ(心に何発かクリティカルヒットもらいましたけどね……)
デブ「ご気分が治られたのなら、どうぞ帰ってください」
声優「はい……重ねてすみません」
声優「すぐにでも……」 ヨロ……
デブ「ああ、無理はしないで……これ、二日酔いの薬です。 どうぞ」
声優「…………」
声優「……本当にすみません」
232:
デブ「じゃ……俺、仕事しますんで……」
声優「あ、はい……」
デブ「…………」
声優「…………」
声優「……あの」
デブ「はい?」
声優「漫画家さん……なんですか?」
デブ「……ええ」
デブ「エロ漫画ですけどね」
声優「! そ、そうなんですか……」
デブ「はは……お恥ずかしい事ですが」
声優「そんな事は……」
233:
デブ「……どうあがいたって、おおっぴらに言えるジャンルじゃないですよ」
声優「…………」
声優「そんな言い方は良くないと思います」
デブ「…………」
デブ「いいんです」
デブ「もうすぐ廃業するかもしれませんし」
声優「え……?」
デブ「……いろいろあって、今書いている原稿仕上げたら」
デブ「次の仕事がないんですよ」
声優「……!」
声優「そう……なんですか」
デブ「愚痴ってしまってすみません……」
声優「……いえ」
234:
デブ「…………」
デブ「皮肉なもんです」
デブ「変な話なんですが、ちょっとやる気になっていたところだったのに……」
デブ「とたんにこのザマです……笑ってしまいますよ」
声優「…………」
声優(……複雑な気分)
声優(この人は……今、どんな気持ちで仕事をしているんだろう)
声優(…………)
声優(アタシは……まだ幸せな方なんだろうか……)
声優(……けど)
235:
声優(…………)
声優(……あれ?)
声優(でも待って……どうしてこの人は……?)
声優(…………)
デブ「…………」
声優(何か、訳があるのかな……?)
声優(…………)
声優(……かもしれない)
声優(聞いたら失礼なんだろうか……)
声優(…………)
236:
声優「……あの」
デブ「はい?」
声優「もしかしたら、何か理由があるのかもしれませんが」
声優「質問してもいいですか?」
デブ「どうぞ」
声優「答えたくなかったら、答えなくてもいいです」
デブ「はあ……」
声優「…………」
声優「デブさんは」
声優「普通の漫画は描かないんですか?」
デブ「……!!」
237:
デブ「…………」
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「……進撃の○人、って、知っていますか?」
声優「え? は、はい」
声優「今、深夜帯でアニメもやっていますよね」
デブ「そうですね……」
デブ「…………」
デブ「あの作品、連載開始当時、十代のデビュー仕立ての新人が描いてるんですよ」
声優「……!」
デブ「…………」
デブ「俺……」
デブ「普通の作品も書いていました」
238:
声優「…………」
デブ「高校卒業後すぐ、何本も書いて」
デブ「週刊少年・飛翔に投稿し続けてました」
声優「…………」
デブ「結局……佳作にすら選ばれず」
デブ「ずっと無職のまま……」
デブ「親から就職しろ、就職しろ、と、うるさく言われて」
デブ「金を稼げば問題ないだろうと、エロ漫画雑誌に投稿したら」
デブ「割とすぐにデビューできました」
声優「…………」
239:
デブ「でも……」
デブ「親はそんな俺を……」
デブ「……って、どうでもいいですね、こんな話」
声優「……いえ」
デブ「話を戻しますけど」
デブ「俺は家を飛び出して、ここに入居してエロ漫画を描きながらも」
デブ「普通の漫画も描いて投稿していました」
声優「…………」
デブ「そして……3〜4年くらい前に進撃の○人を知ります」
声優「…………」
240:
デブ「その頃は、人気が出始めていた程度の作品扱いでした」
デブ「手にとって見た時、絵もそんなに上手くないし、なんだこれ?と思いました」
声優「…………」
デブ「……でも」
デブ「気がついたら、あっという間に読み終えていたんです」
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「どう……言えばいいんでしょうね……」
デブ「なんて言うか……生まれて初めて『才能』というものに衝撃を受けた」
デブ「と、でも言うんですかね……」
声優「…………」
デブ「エロ漫画の仕事が忙しくなっていた事もあって」
デブ「だんだんと普通の漫画の事は、考えなくなって……」
デブ「いつの間にか……描かなくなりました」
241:
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「……情けないですよね」
デブ「会った事もない人に勝手に負けたと思って、逃げ出しているんですから」
声優「…………」
声優(……なんなの)
声優(この胸のモヤモヤは……)
声優(…………)
声優(……アタシは)
声優(この人と同じなの?)
声優(こんな――)
242:
声優「…………」
声優「……デブさん、アタシ帰ります」
デブ「もう大丈夫ですか?」
声優「ええ」
デブ「そうですか」
デブ「お気を付けて」
声優「どうも……」
  ……パタン
デブ「…………」
デブ「……さ、頑張ろう」
デブ「締切は待ってくれないからな」
デブ「…………」
243:
声優「…………」
デブ「なんて言うか……生まれて初めて『才能』というものに衝撃を受けた」
声優(……違う)
声優(そうじゃない)
デブ「……情けないですよね」
デブ「会った事もない人に勝手に負けたと思って、逃げ出しているんですから」
声優(それもちょっと違う……)
声優(…………)
244:
声優(……ただ)
声優(諦めてしまったのよ……)
声優(もう”無駄”なんだって)
声優(どうやったって、こうなれないんだって……)
声優(…………)
声優(アタシは……?)
声優(アタシはあの娘に……後輩ちゃんに何か負けているの?)
声優(…………)
声優(違う)
声優(アタシも逃げているだけ……)
声優(ベクトルは違うけど……現状から目をそらしたいだけ)
声優(…………)
245:
声優(アタシは――)
声優(――負けない)
声優(負けたくない……!)
声優(こんな現状にも、後輩ちゃんにも)
声優(そして……自分にも!!)
―――――――――――
翌日
  あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜♪
デブ「……ん」
デブ「8時……か」
デブ「……ふう、一息入れるか」
246:
  コポ コポ コポ…
デブ「…………」 ズズッ
デブ「うん……コーヒー美味い」
デブ「インスタントだけど」
デブ「…………」
デブ(……さて、ベタが乾いたら修正して、トーン貼って)
デブ(最終チェック終えたら)
デブ(投函しておしまい……だな)
デブ(…………)
  コン コン
デブ「ん?」
247:
デブ(誰だろう……こんな時間に)
デブ「は〜い」
  ガチャ
デブ「! ……声優さん」
声優「おはようございます、デブさん」
声優「これ……ご迷惑をおかけした、せめてものお詫びです」
声優「急ごしらえですけど、サンドイッチを作ってみました」
声優「良かったら、お昼にでも食べてください」
デブ「これはどうも……ありがたくいただきます」
声優「…………」
声優「あの……」
デブ「はい?」
248:
声優「差し出がましい事を言いますが……」
声優「今、チャンスなんじゃないですか?」
デブ「……え」
声優「時間……少し出来るんですし」
声優「やってみても、いいんじゃないですか?」
声優「普通の漫画、描くのを」
デブ「……!」
声優「…………」
声優「もし、作品が出来たら」
声優「アタシ、是非読んでみたいです」
デブ「…………」
声優「じゃ……」
249:
  パタン……
デブ「…………」
デブ「……チャンス」
デブ「…………」
―――――――――――
事務所
声優「おはようございます」
M「……!」
M「お、おはよう、声優さん」
250:
声優「ご迷惑をおかけしました……」 ペコリ
声優「仕事……また貰えるでしょうか?」
M「…………」
後輩「!!」
後輩「せ、先輩!」
声優「後輩ちゃん……久しぶりね」
後輩「い、いえ……それより、あのっ……!」
声優「後輩ちゃん」
後輩「は、はい」
声優「…………」
声優「おめでとう、表舞台に立てて」
後輩「!!」
後輩「先輩……」
251:
声優「ふふふ……この一言言うのに」
声優「だいぶかかっちゃったな……」
後輩「…………」
後輩「先輩、わ、私……!」
声優「気にする必用は無いわよ」
声優「それに、後輩ちゃんが居るところはアタシ未経験だから」
声優「もう教えられる事が無いわ……」
後輩「…………」
声優「だから」
声優「これからは、アタシにいろいろ教えてくれると嬉しいな♪」
後輩「!!」
252:
後輩「は、はい!」
後輩「私でいいのならっ!」
声優「お願いね、後輩先輩」
後輩「ふ、普通に呼んでください……」///
声優「あはは、ごめん」
後輩「あはは」
M「…………」
M「……さぁ〜て」
M「それじゃ声優さん」
声優「はい」
M「サボった分、厳しくなるよ〜?」
声優「覚悟してます」
253:
M「それだけ聞けば十分だ」
M「じゃ、今日は、Aスタジオへ行ってくれ」
M「当分、帰りが遅くなると思うから、そのつもりで、ね」
声優「はい!」
後輩「私も頑張ります!」
M「うん。 期待してるよ」
M「今日も一日頑張ろう!」
声優・後輩「はい!」
  ハハハ……
―――――――――――
254:
デブ(…………)
声優「今、チャンスなんじゃないですか?」
デブ(…………)
デブ(63番……63番……)
デブ(…………)
声優「もし、作品が出来たら」
声優「アタシ、ぜひ、読んでみたいです」
デブ(…………)
デブ(……次は、62番……と)
255:
  早く仕事を終わらせたい……そして――
  俺は、そんな気持ちで一杯だった
271:
数日後
スーパー 惣菜売り場
歌手「えー本日は、北海道産じゃがいもコロッケが」
歌手「2割引になっています!」
歌手「お買い得ですよー!」
マダム「あら、威勢のいいお兄さん。 いい声ね」
マダム「5つもらえるかしら?」
歌手「ありがとうございます!」
歌手「じゃがいもコロッケ5つですね……」 セッセッ セッセッ
歌手「おまたせしました。 お会計は、レジでお願いします」
マダム「ありがとう」
  テク テク テク…
歌手「本日は、北海道産じゃがいもコロッケが、2割引でお買い得ですよー!」
272:
歌手「ふう……」
部門長「ああ、歌手くん。 お疲れさん」
歌手「お疲れっス、部門長」
部門長「今日もご苦労様。 明日も頼むよ」
歌手「はい」
部門長「さて……明日は、と……」
歌手「……?」
歌手「なんスか? そのラジカセ?」
部門長「はは……上からの指示で、明日から流せって音楽だよ」
歌手「! ……どんな曲っスか?」
部門長「聞いてみるかい?」
―――――――――――
274:
歌手「…………」
部門長「どうかな?」
歌手「……偉そうな事、言えないっスけど」
歌手「何だかテンポの悪い曲っスね……」
部門長「ははは……私もそう思う」
歌手「いつも有線から引っ張ってきてるのに……どうして?」
部門長「……さあ」
部門長「私も雇われている身だからね」
部門長「従わない訳には、いかない、としか言えないな」
歌手「…………」
―――――――――――
275:
歌手「…………」
歌手(惣菜コーナーで流す曲か……)
歌手(…………)
歌手(俺だったら……アップテンポで)
歌手(……いや)
歌手(あそこの客層は主婦がメインだし……)
歌手(アップテンポだけど、少し緩めに……だけど、遅すぎない)
歌手(そんな感じで……もし、歌詞を付けるなら……)
歌手(うーん……)
歌手(…………)
276:
  ガチャ
歌手「ただいま」
店員「お帰りー」
店員「?」
店員「どうしたー? 何か嬉しそうだけどー?」
歌手「いや、少し思いついた事があってな」
店員「インスピレーションってやつー?」
歌手「そう、それ」
歌手「少し書き留めておきたいから、飯、ちょっと待っててくれるか?」
店員「了解ー」
店員「と言っても、そうめんだけどねー」
歌手「暑いし、ぴったりだな」
277:
デブ「…………」
デブ「お」
デブ「終わった……」
デブ(思ったよりかかってしまったな……)
デブ(……色々あったからしょうがないか)
デブ(さて)
デブ(いつも通りコピーして投函しないと)
デブ(…………)
デブ(……もう、こんな時間か)
デブ(この前みたいにコピーだけとってくるか)
デブ(ついでにビニ弁も買ってこよう)
  ガチャ
278:
デブ「あ……」
声優「あ……」
デブ「今晩は、です」
声優「今晩は、デブさん」
デブ「この前の……サンドイッチ旨かったです。 ありがとうございました」
声優「いえ……アタシこそ、ご迷惑をおかけしたんですし」
声優「お礼なんていいですよ」
デブ「はは……それじゃ」
声優「はい」
  テク テク テク…
デブ「…………」
279:
デブ(…………)
デブ(……身だしなみ)
デブ(少しは気を付けた方がいいな)
デブ(せめて無精髭くらいは、何とかするよう心がけよう……)
―――――――――――
声優「ふう……」
声優「あー……疲れた」
声優(身から出たサビ、とはいえ……)
声優(さすがに一日で三本録りは……キツかった)
声優(…………)
280:
声優(取り敢えず)
声優(シャワーを浴びて……何か軽く食事を取って)
声優(早く寝よう……)
声優(…………)
声優(……ふふ)
声優(でも……この疲労感、嫌いじゃない)
声優(全力で仕事ができるって……)
声優(幸せな事なのかもしれないわね)
声優(…………)
声優(さ、シャワーを浴びよう!)
281:
翌日の朝
  あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜♪
声優「8時か……」
声優「そろそろ起きないと……う〜ん」
声優「……ふう」
声優「ちょっと疲れが取れてない感じね……」
声優(温泉とか行きたいなぁ……)
声優(…………)
声優(ま、愚痴ってもしょうがないわね)
声優(さ、朝の支度を済ませて)
声優(今日も頑張ろう!)
282:
事務所
声優「おはようございます」
M「おはよう、声優さん」
後輩「おはようございます! 先輩!」
声優「おはよう、後輩ちゃん。 今日も元気ね」
後輩「はい! それが取り柄ですから!」
声優「あはは」
M「それじゃ、声優さん。 今日はBスタジオでお願いします」
声優「はい」
M「それと……」
声優「はい?」
283:
M「締切は来週になるけど、またアニメ選考オーディション募集してるから」
M「配役に目を通して、応募したいキャラを決めておいてくれ」
声優「はい、わかりました」
M「そうそう、今回はメインキャラも含めての募集だから」
声優「!」
後輩「!」
M「ふふ、二人共、受かるといいね」
声優「そうですね……頑張らないと!」
後輩「私も頑張ります!」
M「それじゃ、今日も頑張ってくれ」
声優・後輩「はい!」
284:
デブ「…………」
デブ「…………」 ピッポッパッ
デブ「…………」 プルルルルル……プルルルルル……
  ガチャ…
デブ「あ、もしもし」
デブ「A出版さんですか? 私、デブ、という者ですけど」
デブ「A編集者さんをお願いします」
デブ「…………」
デブ「ああ、A編集者さん。 おはようございます」
デブ「……いえ、締切の延長じゃありませんよ」
デブ「さっき、完成した原稿、達便で投函しましたので……」
デブ「…………」
285:
デブ「そうですね……」
デブ「正直、その気持ちはあります」
デブ「でも今日は、一言お礼を言っておこうと思って」
デブ「……ええ」
デブ「俺……そちらで仕事が出来て良かったです」
デブ「今まで、ありがとうございました」
デブ「…………」
デブ「……はい、それだけです」
デブ「はい……はい……」
デブ「それでは……」
  チンッ
286:
デブ「…………」
デブ「……これで」
デブ「無職、か……」
デブ「ふふ……」
デブ(…………)
デブ(不思議と……なってみれば)
デブ(なんて事ないな)
デブ(…………)
デブ(さて)
デブ(普通の漫画……)
デブ(描いてみるか!)
287:
スーパー
惣菜売り場
歌手「…………」
  ♪ー♪・・・♪〜☆
歌手(い……いまいち……)
歌手(いや、いま3くらい、イけてねえ……この曲)
歌手「きょ、今日はエビフライ……エビフライがお得ですよ〜」
  ♪ー♪・・・♪〜☆
歌手「揚げたて、アツア、ツで美味しいです……よー」
歌手(やべぇ……この曲の妙なテンポで調子狂う……)
―――――――――――
288:
パート「部門長さん……」
パート「あの曲、何とかなりませんか?」
パート「耳障りでしょうがないんですけど……」
部門長「す、すまんね……上からの指示なんで」
パート「…………」
パート「心なしか、お客さんも寄ってきませんし……」
パート「どうなっても知りませよ?」
部門長「……あ、ああ」
歌手「…………」
―――――――――――
289:
夕方
歌手「ただいま……」
店員「おかえりー」
店員「……? どうかしたー?」
歌手「いや……ちょっと疲れて……」
店員「そうなのー? 力仕事が多かった、とかー?」
歌手「そうじゃない……明日から耳栓がいるかも」
店員「????」
―――――――――――
店員「なるほどー」
店員「そういう事かー」
290:
歌手「まあ、誰が作った曲か知らねえけど」
歌手「さすがに受け付けない曲だった……」
店員(事、音楽に関しては、悪口を言わない歌手が)
店員(ここまで言うなんて……)
歌手「ふう……ようやっとマシになってきた」
店員「ご飯食べるー?」
歌手「おう!」
歌手「……で、その後」
歌手「一緒に風呂に入らね?」///
店員「……うん」///
291:
デブ「…………」
デブ(……やべぇ)
デブ(全然まとまらない……)
デブ(…………)
デブ(エロが長かったせい、か……)
デブ(…………)
デブ(昔は……ファンタジー物しか描いてなかったな)
デブ(いわゆる剣と魔法の世界……)
デブ(ダイ大やウィズ、ドラ○ンボールの影響受けまくってたな)
デブ(小説もロー○ス島戦記やフォー○ュン・クエストみたいなのしか)
デブ(読んでなかったっけ……)
292:
デブ(うーん……)
デブ(でも、声優さんに見せるつもりだしなぁ)
デブ(ほのぼの日常系が流行りみたいだし……そっちの方が無難か)
デブ(…………)
デブ(そうだ)
デブ(ここに……このアパートに来て描いたやつ……)
デブ(久しぶりに読み返してみよう)
デブ(……えーっと)
デブ(どこにやったっかな……)
  ゴソゴソ…
デブ(あった)
デブ(1……2……3………)
293:
デブ(ありゃ? 全部で7本か……思ったより描いてなかったんだな)
デブ(……高校卒業後に描いてたやつは、両親の元に置いてきたし)
デブ(その辺でごっちゃになってたか)
デブ(……たぶん、捨てられただろうな、あれ……)
デブ(…………)
デブ(…………) パラ……
デブ(…………)
デブ(…………) パラ……
デブ(…………)
デブ(…………) パラ……
―――――――――――
294:

事務所
後輩「お疲れ様です、先輩」
声優「お疲れ様、後輩ちゃん」
後輩「お腹すきました……」
声優「ふふ、じゃあいつもの、行っとく?」
後輩「はい! こういう時は……」
声優・後輩「ヨシギュー!」
  アハハハ…
―――――――――――
295:
後輩「美味しい〜!」
後輩「やっぱり、ヨシギューは最強です!」
声優「ホントよね〜」
声優「値段が安く、ボリューム満点」
声優「おまけに注文したら、すぐ出てくるし!」
後輩「全くです!」
  アハハハ…
声優「…………」
声優「ところで、後輩ちゃん」
後輩「はい?」
296:
声優「例の仕事の台本……そろそろ来たんじゃないの?」
後輩「!!」
声優「良かったら、アタシに見せて欲しいんだけどな」
後輩「は、はあ……」
声優「……?」
声優「どうかしたの?」
後輩「う〜……その」
後輩「文句を言いたい、という訳じゃないんですが」
後輩「考えてたのとは少し違っていて……」
声優「??」
後輩「……どうぞ」
声優「ありがとう」
声優「…………」 パラパラ
297:
声優「……ああ」
後輩「…………」
後輩「マネージャーさん、『準主役級』なんて言うから」
後輩「敵方の役か、ライバル的な女の子の役だと思っていました……」
声優「要所、要所で入る、『語り部』みたいな役ね」
後輩「おかげで頭の中にあるイメージを、全部、変えなきゃいけません」
声優「あはは……」
声優「でもこの役、毎回必ず登場するみたいだし」
声優「確かに『準主役級』と言ってもいいと思うな」
後輩「それは……まあ……」
298:
声優「ふわぁ……やっぱりメインは豪華ね」
声優「日笠○子さんに 小清○亜美さん」
声優「下○麻美さんに 沢城○ゆきさん……」
声優「沢城さん……いつ寝てるの?ってくらい最近よく見るわよね……」
声優「わ! ゲストに ゆ○なさんが来てる!」
声優「いいなぁ……後輩ちゃん……」
後輩「先輩、ファンなんですか?」
声優「うん……アタシ、この世界に入ったのは
声優「彼女の演技を目の当たりにしたからなの」
後輩「そうなんですか」
声優「すごい人なんだよ? この人」
声優「声の質を変えたり、口調を変えたりするのが上手くて」
声優「アタシが知る限り、(声を)当ててきたキャラにどれもマッチしてるんだ」
後輩「へえ〜」
299:
声優「後輩ちゃんもそういう人、居るんでしょ?」
後輩「林原○ぐみさんは、神ですね!」
声優(……年代的にあってないような)
声優「そ、そうなんだ……」
声優「でも、確かにすごい人よね」
後輩「私の永遠の目標です!」
声優(でっかい目標だなぁ……)
声優「……そうだ。 後輩ちゃん」
後輩「はい?」
声優「わかってたら謝るけど……現場でサインとか、求めたりしない様にね?」
後輩「せ、先輩! ……酷いです」
300:
声優「ごめんごめん……分かってるなら、いいの」
後輩「いくら私でも、それが失礼な事だってわかりますよー」
声優「だからごめんって……ふふ」
後輩「あはは」
声優「…………」
後輩「…………」
声優「後輩ちゃん」
後輩「はい」
声優「頑張ってね」
後輩「はい!」
301:
デブ「…………」
デブ「はは……ひでぇ……」
デブ「ヘッタクソな絵だな……」
デブ「…………」
デブ「…………」
デブ「……でも」
デブ「すげぇ熱いな……」
デブ「…………」
デブ「俺……」
デブ「こんなの描いてたんだ……」
デブ「…………」
302:
デブ(…………)
デブ(そうだよ……)
デブ(俺は……こういう漫画が読みたくて、描きたくて)
デブ(ずっとやってきたんじゃないか)
デブ(…………)
デブ(この漫画……進撃の○人に負けてるのか?)
デブ(…………)
デブ(いや……勝ってる部分だってあるし)
デブ(総合的に負けててもいいじゃないか)
デブ(…………)
デブ(俺は……俺の漫画は)
デブ(”これ”なんだから……!)
303:
翌日の朝
  あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜♪
声優「ふう……もう朝8時かぁ。 歌手さん、今日も元気ね」
声優(今日は久しぶりの休日……)
声優(正直、もう少し寝ていたいけど)
声優(例のカラオケボックスに行って、発声練習しないとね)
声優(最近、これもサボってたからなぁ……)
声優(…………)
声優「よし! 起きるぞっと!」 ガバッ!
―――――――――――
304:
カラオケボックス
店員「いらっしゃいませー」
声優「どうもー」
店員「あ……お久しぶりですねー」
声優「あはは……ちょっと体調を崩してまして」
店員「それは災難でしたー」
店員「では、これにご記入をお願いしますー」
声優「はい」
  サラサラ…
店員「ドリンクは、何になさいますかー?」
声優「烏龍茶で」
店員「わかりましたー」
305:
店員「それでは、23番のお部屋へどうぞー」
声優「はい」
店員「それでは、ごゆっくりー」
  スタ スタ スタ
店員「…………」 テキパキ
テンチョー「店員ちゃん、今のお客って……」
店員「テンチョー。 はい、売れない女優さん、来ましたー」
テンチョー「そうか……」
店員「ちょっと、体調を崩してたそうですー」
テンチョー「そうだったんだ。 元気になってよかった」
店員「大事なお得意様ですしねーテンチョー」
テンチョー「おいおい……酷いな、店員ちゃん」
店員「冗談ですー」 クスッ
306:
店員「…………」
  コン コン ガチャ
店員「失礼しますー。 ドリンク、お持ちしましたー」
声優「どうも」
店員(……?)
店員(台本?)
店員「それでは、ごゆっくりー」
声優「はい」
  パタン
店員「…………」
店員(何か、役をもらえたのかなー?)
店員(頑張ってください)
307:
声優「さて……今度のオーディション」
声優「どの役に応募しようかしら……」
声優「…………」
声優「ふふん! このアタシに勝とうなんて、200年早いのよ!」
声優「べ、別に、あんたの事なんて、好きじゃないんだから!」
声優(コッテコテのツンデレキャラね)
声優「…………」
声優「ご、ごめんなさい……頑張ります」
声優「私だって、や、やる時はやるんです!」
声優(弱虫タイプ? こんな感じ……かなぁ)
声優「…………」
308:
音楽スタジオ
歌手「♪〜♪〜♪〜」
歌手「…………」
歌手「……ふう」
歌手「こんな感じだな」
歌手「…………」
歌手(まだ少し、時間があるな)
歌手(あれもついでにレコーディングしておこう)
歌手「…………」
歌手「そ、そ、そ、惣菜〜、惣菜売り場の売り子さん〜」
歌手「今日はコロッケ、明日(あす)は春巻き、特売日〜」
309:
午後
  テク テク テク
声優「う、う〜ん……」 セノビー
声優「ふう……」
声優(なんか、久しぶりにテンション上がっちゃったな)
声優(普通にカラオケで2時間も歌ってしまった……)
声優(…………)
声優(でも、すっきりしたかも)
声優(ふふふ)
声優(後で、うがいをしておかないと)
310:
声優「さて、鍵、鍵、っと」
  ガチャ ガチャ… カチリ☆
声優「ただいまー」
声優「……と、言っても誰もいないけど」
声優「てか、居たら怖い」
声優「あはは」
声優「…………」
声優「夕御飯作るには、ちょっと早いかな」
声優「…………」
声優「とりあえず、うがいして、テレビでも見よう」
  コン コン
声優「あら? はーい、どなたですか?」
311:
デブ「あ、どうも……隣のデブです」
声優「デブさん?」
声優(漫画……もう描きあがったのかしら?)
声優「今、開けますね」
  ガチャ
声優「どうしたんですか?」
デブ「そ、その……漫画、なんですが」
声優「はい」
デブ「ここに来てから、描いたやつ……あるんですけど」
デブ「良かったら読んでみますか?」
312:
声優「あ、そういえば……ええ、読んでみたいです!」
デブ「そうですか」 ホッ
デブ「じゃ、これがそうです」
声優「わ、ずいぶん描いてたんですね」
デブ「と言っても、7本ですし……」
デブ「正直、今見ると、どれも拙いところが多いんですけど……」
??「あれ? デブさん?」
デブ「あ……歌手さん」
歌手「!? それ、エロ漫画っスか!?」
デブ・声優「ち、違います!!」///
―――――――――――
歌手「へえ! それなら、俺も読んでみたいっス!」
デブ「いいですよ」 クス
313:
歌手「うわぁ、楽しみだな!」
デブ「き、期待しすぎると、がっかりも多いかと思いますが……」
歌手「謙遜は無しっス!」
歌手「超、楽しみにしてますから!」
デブ(相変わらず無駄に熱い人だ……)
声優「じゃあ、アタシが読み終わったら」
声優「そっちに持っていきますね?」
歌手「はい! 待ってるっス!」
デブ「ぞれじゃ、俺はこれで……」
声優「新作も期待してますから」
デブ「は、はい……」///
―――――――――――
314:
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優(こういうの……なんて言うのかな?)
声優(勧善懲悪……少年漫画?)
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
315:
声優(あはは……この主人公、面白い)
声優(……でも、熱血で、今時珍しい感じがするわね)
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優(えー……結局ヒロインとくっついちゃうのか)
声優(この主人公に惚れる女の子って、そんなに居ないと思うけどなぁ)
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
―――――――――――
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
316:
声優「ふう……読み終わった」
声優(…………)
声優(正直、わかりやすいんだけど)
声優(くどい感じがする……説明ゼリフが余計かな……)
声優(7本全部、同じ様なストーリーだし)
声優(…………)
声優(こういうのが好きなんだろうな、デブさん)
声優(でも、アタシにもわかるくらい、後の作品ほど絵は上手くなってたわね)
声優(特に女の子が)
声優(…………)
声優(……う〜ん)
声優(正直に言うべき、なんだろうか……)
317:
声優「…………」
  コン コン
デブ「はい?」
  ガチャ
デブ「あ……声優さん」
声優「どうも」
声優「漫画、全部、拝見させてもらいました」
声優「ええと、今、歌手さんに渡してきたところです」
デブ「そ、そうですか」
声優「…………」
声優「その、感想、なんですけど」
デブ「は、はい」
318:
声優「アタシ、ど素人ですし……あんまり気にしないで欲しいんですけど」
デブ「……ごくっ」
声優「その……正直、面白い、と、言える程ではありませんでした……」
デブ「そ、そうですか……」
声優「説明文とかが、ちょっと邪魔してる印象があって」
声優「読みやすいんですけど、それがくどくしてると思います」
デブ「…………」
声優「主人公はいいんですけど……ヒロインと、いきなりくっついちゃってるみたいで」
声優「今ひとつリアリティがありませんでした」
デブ「……そう、ですか」
319:
声優「だけど」
デブ「……え」
声優「戦闘シーンは、とっても臨場感がありました!」
デブ「!」
声優「そこだけは、自信を持っていいと思います!」
声優「それに、女の子、とっても上手に描ける様になっていますよ?」
デブ「はは……それは、まあ。 仕事で描いていましたし」
声優「…………」
声優「えと……こんな感じです」
デブ「ありがとうございます」
デブ「すごく参考になりました」
320:
声優「そう言ってもらえると、ありがたいです」
声優「……失礼かな、と、思ったんですけど」
デブ「いえ」
デブ「正直な意見は、ありがたいです」
デブ「自分でもそうだと思っていたところや」
デブ「なる程、と思えるところがあって、いろいろ気づかせてもらえました」
声優「そうですか」
デブ「…………」
デブ「ありがとうございました」
声優「そんな……こちらこそ、ありがとうございます」
声優「新作、頑張ってください」
デブ「もちろんです」
321:
歌手「…………」
歌手「…………」 パラ…
  ガチャ ガチャ… キィ
店員「ただいまー」
店員「んー?」
歌手「お、店員。 来たか」
店員「またエロ漫画借りたのー?」
歌手「違うよ」
歌手「普通の漫画。 デブさんが昔、描いてたやつらしい」
店員「へー」
歌手「店員も読んでみるか?」
店員「もちろんー」
322:
歌手「くうっ……!」
歌手「熱い、熱すぎるぜ! この主人公!」
店員「…………」
店員(……まるで、歌手みたい)
歌手「こういう漫画、久しぶりに見た!」
歌手「悪役もいい味出してるし、こう……漢と漢の戦いって感じで」
歌手「すげぇ好きだ!」
店員「……そのへん、私にはわからないー」
店員「でも、確かに最近こういう漫画、見なくなったねー」
歌手「そうそう! 無駄に女の子出してハーレムにしたり」
歌手「パンチラ……というより、パンモロばかりで媚び媚びだしな!」
323:
店員「でもー」
店員「ストーリーは、良く言えば王道」
店員「悪く言えば、短調な感じがするー」
歌手「そうか?」
歌手「俺は丁寧にまとめてある感じがして、好感もてるけどな」
歌手「下手に伏線張るより、いいと思う」
店員「一理あるー」
歌手「それに、話とは関係ないけど」
歌手「どんどん上手くなっているよな?」
店員「そうだねー。 特に女の子ー」
歌手「あはは! 俺も思った!」
―――――――――――
324:
歌手「――って感じっス!」
歌手「いやもう、ホント、面白かったっスよ!」
デブ「そ、そうですか……」
デブ(嬉しいんだけど……相変わらず無駄に熱い人だ)
デブ「そんなに言ってもらえるなんて、正直、嬉しいです」
歌手「そういや、聞いた話っスけど、進撃の○人っていう漫画の作者さん」
デブ「……!」
歌手「少年・飛翔に投稿してたけど、音沙汰ないから少年・弾倉に送り先変えて」
歌手「今の大成功につながったって噂があるっス」
デブ「そ、そうなんですか?」
歌手「本当かどうか、知らないですけどね」
325:
歌手「デブさんのいちファンとしては」
歌手「フットワークを軽くして、いろんな出版社を試してみるのも」
歌手「一つの手じゃないかと思うっスよ!」
デブ「…………」
歌手「俺、デブさんの漫画」
歌手「もっとたくさんの人に読んで欲しいっス!」
デブ「…………」
デブ「は、はは……」
歌手「ははは!」
歌手「それじゃ、俺はこれで!」
歌手「次回作も出来たら、絶対読ませてください!」
  パタン
326:
デブ「…………」
デブ「……本当に」
デブ「無駄に熱い人、だな……」
デブ「…………」
デブ「……っ」
デブ「うく……ぐっ……く……」
デブ「良かったなぁ……お前ら……ちゃんと読んでもらえて……」
デブ「ひぐっ……親にだって……ちゃんと……手にとってもらえなかったのに……」
デブ「ぐっ……くっ……俺の……漫画…………ひぎっ……」
デブ「やっと……誰かに……あぐっ……読んでもらったよ……ぐっ……」
デブ「うあっ……ぐっ……く……ひぐっ…………くっ……」
327:
  今、俺はたぶん、経済的に どん底に居ると思う。
  だけど……今だかつてなかった喜びを、噛み締めていた――
344:
数日後
スーパー 惣菜売り場
歌手「おはようございまーす」
歌手「あれ?」
歌手「部門長、ラジカセ、片付けるんですか?」
部門長「ん? ああ、そうなんだよ歌手くん」
部門長「例の曲……他の店舗でも評判悪くてね」
部門長「ようやく使用中止になったんだ」
歌手「そうなんスか……」
部門長「え? あの曲、気に入ってたのかい?」
歌手「まさか!」
歌手「実は……俺、音楽やってて」
歌手「良かったら、俺の曲も流したら少しはマシかな……なんて思ったんで」
345:
部門長「へえ。 歌手くん、音楽が作れるのか」
歌手「はは……」
歌手(鳴かず飛ばずの貧乏ミュージシャンだとは言えねえ……)
部門長「曲は持ってきたの?」
歌手「ええ、このCDがそうっス」
部門長「聞いてもいいかい?」
歌手「どうぞ」
部門長「どれどれ……」
―――――――――――
部門長「……ちょっと子供っぽい歌詞だね」
歌手「あえてそうしたっス」
346:
歌手「来てくれたお客さんが、楽しくなる様に」
歌手「子供でもわかる様な、わかりやすい歌詞の曲にしたっスよ」
部門長「なるほどねぇ」
パート「……部門長?」
部門長「おや、パートさん」
パート「今日は、いつものあの曲じゃないんですか?」
部門長「ああ。 これは歌手くんが作ってくれた曲だよ」
パート「へえ! すごいわねぇ、歌手くん」
歌手「ははは、結構テキトーっス!」
パート「私は悪くないと思うわよ?」
パート「ウチの子とか、喜びそうだわ〜」
部門長「…………」
347:
部門長「ふむ。 じゃあ、試しに流してみるかな?」
歌手「すんません」
部門長「今日一日だけなら、上も文句は言わないだろう」
部門長「じゃ、仕事を始めようか?」
歌手「うーっス!」
パート「はーい」
―――――――――――
声優「マネージャーさん」
M「はい?」
声優「例のオーディションなんですが」
M「ああ……応募したい役、決まったのかな?」
348:
声優「はい」
声優「ライバルキャラと ツンデレキャラで 迷ったんですが……」
声優「ライバルキャラの女の子でお願いします」
M「はいはい……声優さんはライバルキャラね」
後輩「おはようございます」
声優「おはよう、後輩ちゃん」
M「おはよう」
後輩「あ、先輩も応募キャラ、決めたんですか?」
声優「うん。 ライバルキャラの女の子で……」
後輩「え?」
声優「ん?」
349:
声優「何か……おかしいかな?」
声優「あ! もしかして、かぶっちゃったとか?」
後輩「いえ、そうじゃないです」
後輩「ただ……」
声優「ただ?」
後輩「私、先輩は、このメインヒロインの役にぴったりかな、と思っていたので」
声優「そう? アタシの声、こういう弱虫キャラに合ってないと思うんだけど」
後輩「うーん……うまく言えませんが」
後輩「時々、力強いモノの言い方をしてるし、そういったギャップを」
後輩「先輩の声は、力強く表現できると思ったんです」
声優「…………」
M「一理あるね」
350:
M「どうする? 声優さん?」
M「もう少し考えてみる?」
声優「…………」
声優「そうですね……もう少し考えてみます」
M「わかった。 なるべく早く頼むよ」
声優「はい」
後輩「じゃあ、マネージャーさん」
後輩「私は、このツインテールのロリっ子でお願いします」
M「うん。 わかった」
M「それじゃ、今日も一日頑張ろう」
声優・後輩「はい」
351:
スーパー 惣菜コーナー
  ♪〜♪〜♪〜
子供「そーざい、そーざい ういばの ういこさーん♪」
歌手「はい、ありがとうございます!」
歌手「え? はい、トンカツと チキンカツっスね!」
部門長「お待たせしました、えび天5つになります」
部門長「お支払いはレジで……はい! トンカツを3つですね?」
歌手「パートさん! トンカツ、無くなりそうっスよ!」
パート「はーい、ちょっと待ってねー!」
歌手・部門長・パート(な、なんか、めちゃくちゃ忙しい……)
352:
デブ「…………」
デブ「……よし」
デブ「ストーリーはこんな感じで……いつも通りだけど」
デブ(まあ……あの漫画見せた後だから、『またか』と思われるかもしれないが)
デブ(今回は、描きたい物を描く)
デブ(…………)
デブ(でも、声優さんの言う通り)
デブ(主人公とヒロイン、いきなりくっつきすぎだよなぁ……)
デブ(恋愛経験放棄してたから、その辺りが影響してるのは間違いない)
デブ(どうしたものか、な……)
デブ(う〜ん……)
353:
収録スタジオ
声優「イクっ……!イっちゃう……!んんっ!」
声優「くっさいチ○ポ汁、んっ、中に出されて、んはっ……!イっちゃうっ……ああっ!」
声優「もう、イクっ……! イクのっ……! イっちゃうのっ! ああんっ!あんっ!んんっ……!」
声優「ひゃあ!? 出てるっ出てるよぉ……!」
声優「くっさいチ○ポ汁、中にっ!んはっ!」
声優「熱いっ熱いのぉ……くっさいチ○ポ汁、熱いのぉ……どくどく来るのぉ……」
声優「!? 来る、来ちゃう……! ひあっ……!」
声優「熱くて、くっさいチ○ポ汁で……! 種付けされて……あああっ!」
声優「あたしっ……! イグウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」
スタッフ「……はい、いただきました(OKの意)」
スタッフ「お疲れ様です」
声優「お疲れ様でした」
354:
声優「ふう……」
声優「…………」
声優(弱虫キャラか……)
声優(アタシに出来るのかな……?)
声優(…………)
声優(ゆ○なさんだったら……)
声優(きっと苦もなくやるんだろうな……すごい人だし)
声優(……アタシなんて)
声優(…………)
声優(……!)
355:
声優(ちょっと待って……)
声優(アタシ……何、勝手に決め付けてるの?)
声優(どうして……最初から『出来無い』って思ってるの?)
声優(…………)
声優(同じだ……)
声優(あの時のデブさんと同じ……)
声優(やる前から、何、諦めてるの!?)
声優(…………)
声優(……そうよ)
声優(ゆ○なさんだって……同じ人間じゃない)
声優(そりゃ出来る事と、やれる事は、差があるかもしれない……)
声優(でも、アタシにだって、アタシにしか無いモノが)
声優(ある!)
356:
事務所
声優「お疲れ様です、マネージャーさん」
M「ああ、声優さん。 お疲れ様」
声優「……後輩ちゃんは、まだですか?」
M「うん? もうそろそろだと思うけど……」
  ガチャ
後輩「ただいま戻りました〜」
M「はは、噂をすれば影、だね」
M「お疲れ様、後輩ちゃん」
後輩「お疲れ様です、マネージャーさん、先輩」
声優「お疲れ様、後輩ちゃん」 クス
357:
声優「マネージャーさん」
M「ん?」
声優「例のオーディションの件ですが……」
M「うん」
声優「アタシ……メインヒロインの役に、応募したいと思います」
後輩「!」
M「そうかい。 わかった」
M「じゃ、その応募で出しておくから」
声優「はい」
―――――――――――
358:
  テク テク テク…
声優「後輩ちゃん」
後輩「はい?」
声優「この後……予定あるかな?」
後輩「すみません……バイトに行かないと」
声優「そっか。 ああ、気にしないで」
声優「実は、ちょっと頼みたい事があって」
後輩「ええ!? 私に、ですか!?」
声優「うん」
声優「アタシ、休日はいつも発声練習で、カラオケに行ってるんだけど……」
声優「良かったら、練習に付き合ってくれないかな?と思って」
後輩「!!」
359:
後輩「は、はい! もちろん、いいですよ!」
声優「ふふ、良かった」
声優「じゃあ今度の休みにでも、どうかな?」
後輩「はい! 全然オッケーです!」
声優「ありがとう、後輩ちゃん」
声優「じゃあ、今度の休み……朝の9時くらいに」
声優「駅前の噴水の所で待ち合わせ、で、いいかな?」
後輩「わかりました!」
後輩「楽しみにしてます!」
声優「……遊びじゃないんだけど?」
後輩「あ……そうでした」
  アハハハ……
360:

  ガチャ
歌手「……ただいま」
店員「歌手ーお帰りー」
店員「遅かったねー?」
歌手「おう……めちゃくちゃ忙しかった……」
店員「?」
店員「今日、何かイベントでもあったのー?」
歌手「いや……」
歌手「普段通りだった……はず」
店員「???」
361:
歌手「ともかく……さっぱりした物が食いたい」
歌手「そういうメニューかな?」
店員「……奮発してステーキー」
歌手「すまん……無理だ」
歌手「お茶漬けか何かにしてくれ……梅干付きの」
店員「了解したー」
店員(……今夜も頑張ってもらおうと思ったのにー)
店員(ちょっと欲求不満ー)
歌手「……風呂、入ってくるわ」
店員「わかったー」
店員(でも、歌手の体調が一番大事ー)
362:
デブ「…………」
デブ「……うん」
デブ「これ、行けるかも」
デブ(…………)
デブ(けど……少し重い展開かな)
デブ(…………)
デブ(描く方としても、キツイ内容だし……)
デブ(……いや)
デブ(現実の神様も理不尽が大好きだし)
デブ(俺も、このくらい残酷にならないと……)
デブ(いつもハッピーエンドばかりだったしな)
363:
デブ(…………)
デブ(どんな反応してくれるだろう……声優さん達)
デブ(…………)
デブ(怒ってくれると、嬉しいな)
デブ(それだけ感情移入してくれたって、事だから)
デブ(…………)
デブ(よし)
デブ(ストーリーは、だいたいこんな感じ)
デブ(40ページくらいで……と)
デブ(ネームを描くかな)
―――――――――――
364:
数日後 駅前
声優「…………」
  タッ タッ タッ
後輩「先輩〜! すみません、遅れちゃいました……」
声優「ううん、後輩ちゃん。 アタシもそんなに待ってないから」
後輩「それじゃ、行きますか?」
声優「うん!」
  アハハハ……
―――――――――――
365:
カラオケボックス
店員「いらっしゃいませー」
声優「どうもー」
店員「あ、いつもご利用、ありがとうございますー」
店員「それでは、ご記入をー」
声優「はい」
後輩(……何か変わった喋り方の人)
店員「サービスのドリンクは、何になさいますかー?」
声優「烏龍茶で」
後輩「私も烏龍茶で」
店員「はい、わかりましたー」
店員「では、23番のお部屋へどうぞー」
声優「はい」
366:
テンチョー「……珍しいね」
店員「そうですねー」
テンチョー「っていうか、売れない女優さん」
テンチョー「初めてじゃない? 誰か連れてきたの」
店員「私も少し驚きましたー」
店員「でも、詮索は止めましょう、テンチョー?」
テンチョー「わ、わかってるよ……」
テンチョー「……店員ちゃん、最近、僕の扱い酷くない?」
店員「気のせいですよー」
テンチョー(そうなのかなー……)
367:
  コン コン
店員「失礼しますー」
  ガチャ
店員「お飲み物、お持ちしましたー」
声優「ありがとう」
後輩「ありがとうございます」
店員(……姉妹?って似てない)
店員「それでは、どうぞごゆっくりー」
  パタン
店員(…………)
店員(友達って言うには、年が離れてるし……先輩後輩?かな?)
店員(雰囲気は、よさげだったなー)
店員(女優さん仲間かもねー) クス
368:
声優「さて……と」 ゴソゴソ…
後輩「何ですか?」
声優「はいこれ」
後輩「漫画……あ」
後輩「例のオーディションアニメの原作漫画ですね?」
声優「うん、そう」
声優「今日は、これを使って練習しようと思って」
後輩「…………」 パラパラ…
後輩「そういえば……私、今度の仕事の原作漫画、知らないです……」
声優「後輩ちゃん。 それはそれでいいと思うよ?」
後輩「え?」
369:
声優「先入観のない方が、かえって演じる役に馴染みやすかったりするし」
後輩「じゃあ……どうしてですか?」
声優「あはは……単純に台本の代わりとして使いたいだけなの」
後輩「あ、そういう事ですか」
後輩「納得しました」
声優「本当は、普通の台本みたいに」
声優「セリフだけ抜粋しようとも思ったんだけど……」
声優「10ページで心が折れたわ」
後輩「あはは」
声優「もう、酷いな。 後輩ちゃん」
後輩「す、すみません」
声優「冗談よ」 クス
370:
声優「それじゃ……アタシ、メインヒロインをやるから」
声優「後輩ちゃん、悪いけど、それ以外をやってくれるかな?」
後輩「はい。 分かりました」
声優「後でアタシも逆をやるから」
―――――――――――
後輩「お、思ったより大変ですね……」
声優「メインヒロイン以外、全部やらせちゃてるしね……」
後輩「でも、こうやって漫画を参考にすると、わかりやすくていいかも」
声優「まあ、アフレコで演出家の思う通りにしないといけないから」
声優「結局は無駄かもしれないけどね」
371:
声優「で、どうかな? アタシのメインヒロイン」
後輩「はい。 思ってたイメージとは違ってました」
声優「あら……」
後輩「もっとずっと、良かったです!」
声優「あはは、ありがとう。 お世辞でも嬉しい」
後輩「お世辞なんかじゃないですよ!」
後輩「きっとハマリ役になると思います!」
声優(それはそれで複雑だなぁ……キャラ的には、あんまり好きじゃないし)
声優「そ、そう。 ……じゃ、次はアタシが他のキャラ全部やるね?」
後輩「はい! お願いします!」
声優「肩の力は抜いてね?」 クス
372:
スーパー 惣菜売り場
  ♪〜♪〜♪〜
歌手「今日はお寿司フェアですよー!」
歌手「とってもお買い得ですよー!」
  ガヤ ガヤ
部門長「はい、サラダ巻き3人前ですね?」
部門長「お待たせしました」
歌手「お得パック2つに、いなり寿司を2人前っスね?」
歌手「ありがとうございます!」
  ガヤ ガヤ
―――――――――――
373:
部門長「みなさん、今日もご苦労様」
歌手「お疲れ様っス」
パート「お疲れ様」
部門長「ああ、歌手くん」
歌手「はい?」
部門長「悪いんだけど……あのCD」
部門長「もう少し借りててもいいかな?」
歌手「いいっスよ」
部門長「ありがとう」
部門長「気のせいかと思ったけど」
部門長「あの曲を流してから売上が良くてね」
374:
歌手「そうなんスか」
部門長「信じられないけど、数字に現れてるんだ……」
歌手「へえ……それはこっちも嬉しくなるっス!」
部門長「ああ、引き止めてごめん」
部門長「明日もよろしく頼むよ」
歌手「はい。 それじゃまた明日っス!」
  スタ スタ スタ…
部門長「…………」
部門長(……思い切って)
部門長(上に言ってみようかな?)
375:
歌手「ただいまー」
店員「お帰りー」
店員「ここのところ、遅いねー?」
歌手「ああ」
歌手「なんか、売上が伸びてるんだって」
店員「へえー」
歌手「どうも、俺が作った曲を流してかららしい」
店員「それって……惣菜ソングー?」
歌手「そう」
店員「今度、あれを音楽会社に持っていったらー?」
歌手「いや……他の曲と一緒に持っていったんだけど」
歌手「『幼稚すぎる』って散々な評価だった……」
店員「……ごめんー」
376:
歌手「いいって……元々そんなに期待してたわけじゃないし」
歌手(他のもボロクソ言われたけど……)
歌手「ああー腹減った。 今日のメニューは?」
店員「お肉ー」
歌手「うし! そういうのガッツリ食いたかった!」
店員「それは良かったー」
歌手「…………」
店員「歌手ー?」
歌手「店員、明日休みだっけ?」
店員「うん」
歌手「そっか! 俺もなんだ」
377:
歌手「明日さ、二人で遊びに行かね?」
店員「おおー」
店員「ゼー○ガン○ムで踊りたい気分ー」
歌手「お前はジュ○ーかよ……てか、何でそんなネタ知ってんの?」
店員「明日、何着て行こうかなー♪」
歌手「…………」
歌手(……まあ、いっか)
歌手「今日、どうする? 泊まっていくか?」
店員「もちろんー」
歌手「はは、それじゃメシ作るの手伝うぜ!」
店員「良い心がけー。 じゃ、きゅうりの皮を剥いてー」
歌手「おう!」
378:
デブ「……ふう」
デブ「あ……もうこんな時間か」
デブ(いかんなぁ……不摂生な生活してるから太るんだし……)
デブ(とは言え、腹減った)
  アン……アン……歌手……ヤ……
デブ「……」
  アアッ……店員……キョウモ……イイゼ……
  スゲェ……シメツケテ……ウアッ…………
  バカァ……イキナリ……ハゲシスギ……アッ……
  店員ッ……店員ッ……トマンネェ……ッ……
デブ(コンビニ行こ)
―――――――――――
379:
デブ(まだやってるし……)
  歌手ゥ……歌手ゥ……ヤッ……アン……
  店員ッ……オレ、マタ……アアッ……ウッ!……
  ハアッ……ハアッ……ハアッ…………
デブ(……ようやく終わりましたか)
  歌手ノバカ……ワタシ……コワレルカトオモッタ……
  スマネェ……ナンカ、ヒサシブリダッタカラ……ツイ……
  店員モ、カワイカッタシ…………
  ……ダカラッテ、3レンゾクハ……ヤリスギ……
デブ「」
  ハアッ……ハアッ……店員ッ……
  ヤッ……バカ……歌手のバカッ……スコシ、ヤスマセ……アアッ……
デブ(一発抜こう……)
380:
――1ヶ月後
オーディション会場
選定員「ありがとうございました」
選定員「では……次の方、お願いします」
声優「はい。5番、声優です」
選定員「それでは、お渡ししたセリフを言ってみてください」
声優「はい」
声優「……ううっ、怖い……怖いよう……」
声優「こんな事……どうして起こるの……?」
選定員「…………」
声優「いいえ! それでも私は……私は!」
声優「あの人を信じる!!」
選定員「…………」
381:
選定員「声優さん」
声優「こんなこt……!?」
声優「は、はい?」
選定員「ああ、すみません。 途中だったのに」
声優「いえ……」
選定員「ええと……気弱なセリフを アドリブで言ってもらえますか?」
声優「! はい」
声優「…………」
声優「私に……何ができるの……?」
声優「普通の人間なのよ……? 私は……!」
選定員「…………」
―――――――――――
382:
選定員「……はい、声優さん、ありがとうございました」
声優「ありがとうございました」
選定員「では、次の方。 お願いします」
モブ美「はい。 6番、モブ美です」
声優「…………」
声優(……びっくりした)
声優(今まで、アドリブを要求された事なんて無かったのに)
声優(…………)
声優(いい事……なのかな?)
声優(そうだったら嬉しいんだけど)
―――――――――――
383:
後輩「先輩」
声優「あ、後輩ちゃん」
後輩「手応えはどうでした?」
声優「うん! 何て言うか……出し切った!って思うな♪」
後輩「そうですか、良かったです!」
声優「うふふ」
声優「後輩ちゃんは?」
後輩「私も出し切ったと思います!」
声優「そっか♪」
声優「二人共、受かるといいなぁ」
後輩「そうですね……」
384:
声優「例の収録は、どんな感じかな?」
後輩「うう〜もの凄く緊張してます……」
後輩「恥ずかしながら、NG出してるの」
後輩「今のところ私だけです……」
声優「あらら」
後輩「エロと違って、数人で収録するし……」
後輩「なんか、雰囲気そのものが違いすぎです」
声優「なるほどなるほど」
後輩「……真面目に聞いてます?」
声優「もちろん!」
声優「それじゃ……そろそろ事務所に戻ろっか?」
後輩「はい!」
385:
デブ「…………」
デブ「お」
デブ「終わった……」
デブ「ふううう……」
デブ「…………」
デブ「コピーをとってこよう」
―――――――――――
デブ「…………」
デブ「……久しぶりにやり遂げたって気がするな」
デブ(……でも、漫画の神様、手塚○虫さんは)
デブ(月に100ページを超える連載を抱えてたって聞くけど……)
デブ(案外、本当に(人間じゃないという意味で)神様だったのかもなぁ)
386:
デブ(…………)
デブ(自分は、まだまだ甘いのかな……)
デブ(…………)
デブ(……ったく)
デブ(悪い癖だ……)
デブ(俺は、やれる事を全部、この漫画に入れたんだ)
デブ(もっと、自分に自信を持てよ)
デブ(…………)
デブ(声優さん、今日は遅いのかな?)
387:
  ガチャ ガチャ……カチリ☆
歌手「たーだいまー」
歌手「今日は俺が早かったか」
歌手「…………」
歌手「今日のメシ、何かな?」
  コン コン
歌手「ん? はーい」
デブ「あ……どうも。 デブです」
歌手「デブさん? 今開けますね」
  ガチャ
歌手「どうしたんスか?」
388:
デブ「ははは……漫画、やっと出来上がりました」
歌手「おお!」
歌手「そうなんスか、待ってたっス!」
デブ「これがそうです」
歌手「楽しみだな〜!」
デブ「はは……面白いといいんですけど」
歌手「それじゃ、さっそく読ませていただきます!」
デブ「それじゃこれで……」
  パタン
歌手「どれどれ〜?」
389:
  ガチャ
店員「ただいまー」
店員「んー? 歌手、また漫画借りたのー?」
歌手「…………」
店員「……? 歌手ー?」
歌手「うっ……うっうっ……うっ……」 ボロボロ…
店員「」
―――――――――――
店員「……うわー」
店員「これは……切ないストーリー」
歌手「こんなの、あんまりだ!」
390:
歌手「どうしたんだよ、デブさん!……こんな救いのないストーリー、酷すぎる!」
店員「…………」
店員「でも……私、このヒロインの気持ち」
店員「わからなくは無いー」
店員「もし……私がこのヒロインの立場だったら……」
店員「同じこと、するかもー」
歌手「冗談じゃねぇ!!」
店員「!?」
歌手「例え、世界が救えても……店員が居ないんじゃ全然足りねえ!!」
歌手「それなら俺は、店員と一緒に世界の滅びを迎える!!」
店員「」///
店員「バ、バカ……感情移入しすぎー」///
店員「……嬉しいけど」///
392:
歌手「――という訳で」
歌手「正直、がっかりっスよ!」
デブ「は、はあ……」
歌手「あんなに惹かれあってた二人なのに……」
歌手「世界が救えても、納得できないっス!」
デブ「す、すみません」
声優「……どうしたんですか?」
歌手「あ、声優さん」
デブ「今晩は、です」
歌手「聞いてくださいよ〜声優さん」
声優「?」
393:
歌手「……ってネタバレになるっスね」
声優「ああ、デブさん、漫画が出来たんですか」
デブ「はい」
歌手「これがそうっス」
声優「ありがとう、歌手さん」
歌手「…………」
歌手「……なんか、冷静に考えたら」
歌手「俺、文句言える立場じゃないっスね」
歌手「すんませんした、デブさん」
デブ「いえ……正直な意見を聞けて良かったです」
歌手「はは、そう言われると、余計恐縮するっスね」
歌手「ありがとうございましたっス!」
  スタ スタ スタ…
394:
デブ(やっぱり無駄に熱い人だ……)
声優「それじゃデブさん」
声優「さっそく読ませてもらいますね?」
デブ「ええ、どうぞ」
―――――――――――
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
声優「…………」
声優「…………」 パラ…
395:
声優「はあ……」
声優「…………」
声優「悲しい話……でも」
声優(すごく引き込まれた)
声優(…………)
声優(主人公は、これまでのデブさんの作品には無かった)
声優(クールキャラ)
声優(…………)
声優(これまで通り主人公とヒロイン、くっつく感じだけど……)
声優(その過程がしっかり描かれていて、それだけに)
声優(ラストの別れが悲しく思える……思わされる)
声優(歌手さん、これを怒ってたのかな?)
声優(確かに、少し理不尽よね) クス
396:
声優「…………」
声優(アタシ……結構好きかも)
声優(この漫画)
声優(…………)
声優(だって――)
―――――――――――
デブ「ああ、声優さん」
声優「漫画、読ませていただきました」
デブ「ず、ずいぶん早いですね」
声優「なんか……この漫画好きみたいで」
声優「早く感想、言いたくて」
デブ「ははは……ちょっと照れますね」///
397:
声優「ストーリーは、これまで通り……と思いきや」
声優「最後の別れは、不意打ちでした」
デブ「…………」
声優「それは、前半で描かれている、主人公とヒロインの交流がとても丁寧で」
声優「きっとこの二人は幸せになる……ううん」
声優「幸せになって欲しい、と思わせるキャラだからでした」
デブ「…………」
声優「……アタシ」
声優「実は、俗に言う、”中の人”をやっているんです」
デブ「え? ……と言うと、CVってやつですか?」
声優「そうです」
398:
声優「しかも……ほとんどエロ関係の仕事ばかりを」
デブ「……!」
声優「軽蔑……しました?」
デブ「まさか」 ニコ
声優「ありがとうございます」 クス
声優「……そんなアタシが言うと、失礼かもしれませんが」
声優「もし、このマンガがアニメ化されたら」
声優「ぜひ、このヒロイン役をやりたいです!」
デブ「!!」
声優「それくらい……この作品、いいと思いました」
デブ「…………」
399:
デブ「そんなに言ってもらえるなんて……嬉しいです」
声優「ふふ、お世辞じゃないですからね?」
デブ「ははは」
声優「…………」
デブ「…………」
デブ「明日、さっそくどこかの出版社に投稿したいと思います」
声優「そうですか」
声優「入選……ううん」
声優「大賞とか、取れるといいですね」
デブ「賞金も出ますしね」
  アハハハ……
―――――――――――
400:
  ……その後すぐ、デブさんはアルバイトを始めていた。
  送った漫画が何かの賞を取るとしても、ずっと先だし
  先立つモノは、どうしてもいるから、と……ちょっと切ない。
  けど、デブさん本人は、少しも苦にしてない感じだった。
  漫画を描く時間は減ってしまったが、これからも描き続けるつもりだと
  笑いながら言っていた。 アタシも次回作を楽しみにしている。
401:
  そういえば、思わぬ出世をした人がいる。 それは歌手さん。
  本人は、割と適当に作った『惣菜ソング』が
  歌手さんの勤めているスーパーのテーマソング?として採用したい、と
  正式に依頼があった、というのだ。
  そしてこれが思わぬヒットとなり、音楽会社が数社
  ぜひ、ウチからCDを出してくれ、と、頼み込んできたという。
  歌手さんは戸惑いつつも その内の一社からCDデビューした。
  ふふ、そういえばジャケ絵、歌手さんが頼んでデブさんが描いたんだっけ。
402:
  どのくらいか知らないけど……結構売れたみたいで
  著作権料に驚いたそうだ。 ……いくら位なのかなぁ。
403:
  いちやく時の人、となった歌手さんだけど
  何故か、スーパーのアルバイトは辞めなかった。
  本人言わく、スーパーで働く事も重要なリズムらしい……。
  でも、不安定な職業だし、それもありかな?とも思う。
  そうそう! 歌手さんに彼女が居たんだけど
  行きつけのカラオケボックスの受付の人で、びっくりしたっけ。
  とっても幸せそうで、かなり羨ましく思った……いいなぁ。
404:
  アタシの方は……と言えば、オーディションの結果は
  またしても落選……。
  今回も後輩ちゃんと二人揃って残念な結果に終わっていた。
  だけど……気持ちとしては、そんなに落ち込んでいない。
  アタシは、この仕事が好きだと改めて認識したから。
  役に成りきる事、演じる事が、楽しいと知っているから。
405:
数ヵ月後――
事務所
M「おはよう、声優さん」
声優「おはようございます、マネージャーさん」
後輩「おはようございます! 先輩、マネージャーさん」
M「今日も一日頑張ってね」
声優「はい」
後輩「はい!」
M「後輩ちゃんは、レッスンも忘れずにね」
後輩「わかってます!」
406:
声優「そっか、今日レッスンの日だったっけ」
後輩「はい……遅くなるので、先輩と一緒に帰れませんね」
M(この娘は本当に声優さんが好きだなぁ……)
声優「待っててあげよっか?」
後輩「い、いいえ! そこまで図々しくなれませんよ!」
声優「あはは」
声優「冗談はさておき、大事な歌唱力のレッスンだから頑張ってね」
後輩「もちろんです!」
後輩「絶対にアイドル声優になってみせますとも!」
声優「それじゃ、行ってきます。 マネージャーさん」
M「ああ、道中気をつけてね」
―――――――――――
407:
収録スタジオ
スタッフ「それじゃ声優さん。 今日もお願いします」
声優「はい」
  ――今日も仕事が始まる――
スタッフ「それでは……5秒前……4……3……」
声優「…………」
  ――これからも悩む事があると思う――
声優「んはぁっ!!」
408:
声優「いいのおっ……! オチ○ポ、いいのおっ!!」
  ――でも、きっと――
  ――アタシは、やれるだけ続けていく――
声優「んギモッヂイィ〜!!」
  ――自分の選んだ道だから――
409:
―――――――――――
  数年後
410:
デブ「…………」
  プルルルルル… プルルルルル…
デブ「……お、電話だ」
  ガチャ…
デブ「はい、もしもし」
デブ「……ああ、Z編集者さん」
デブ「締切はまだ先ですけど……?」
デブ「……はい……はい」
デブ「…………」
デブ「……え?」
411:
デブ「アニメ化……ですか?」
デブ「しかし……まだ単行本二冊しか出てないし」
デブ「こんな日常漫画のアニメに需要があるんですか?」
デブ「…………」
デブ「そ、そうですか……」
デブ「それならいいんですけど……」
デブ「…………」
デブ「はい……はい……」
デブ「……希望する中の人?」
デブ「俺が選んでいいんですか?」
412:
デブ「…………」
デブ「そうですか……それなら」
デブ「ヒロインは、声優って人をお願いします」
デブ「それ以外はそちらに……は?」
デブ「ああ、その人、その……エロ関係では有名なんですが」
デブ「……ええ、俺は気にしませんので」
デブ「…………」
デブ「はは……実は個人的な付き合いがあって……」
デブ「こういうのはダメですか?」
デブ「…………」
デブ「良かった。 では、ぜひ、ヒロインは彼女でお願いします」
デブ「そうだ、OPとかはもう決まっているんですか?」
デブ「…………」
413:
デブ「なら、歌手って人をお願いしたいんですが」
デブ「…………」
デブ「ああ……『惣菜ソング』って知ってますか?」
デブ「…………」
デブ「そうです、その人です」
デブ「これも個人的な付き合いで……はい」
デブ「…………」
デブ「そうですか……それなら選考に入れてもらえれば」
デブ「……はい……はい」
デブ「お願いします」
デブ「では……」
  チン…
414:
デブ「…………」
デブ(余計な事……かな?)
デブ(…………)
デブ(……いや)
デブ(そりゃ……全く えこひいきじゃない、と言えば嘘になる)
デブ(でも……)
デブ(彼女たちが、俺の作品に関わってくれたら)
デブ(すごく嬉しい)
デブ(それが……正直な気持ちだ)
デブ(…………)
デブ(さ、仕事を続けるか!)
  おしまい
416:
皆さん、投下遅れてすみませんでした……これで終了です。
お付き合いありがとうございました。
最後、なんか巻が入っちゃった感、否めませんけど
こんな感じにまとめました。 気に入っていただけたら、幸いです。
イケメンは、経済的に幸せなので、それでバランスをとっていると思ってくださいw
レス、ものすごく励みになりました。 ありがとうございます。
417:
乙です
連休明けたら自分も頑張ろうと思いました
面白かったです!
418:
乙!物凄くよかった
420:
乙!
まさかここまでいい話になるとは…
421:
良い意味でタイトル詐欺だったよ!
超乙!!
424:
いい感じにバランスがとれてて良かった!!
乙乙乙!!!
次回作にも期待!!
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