【閲覧注意】青ざめる程怖い話back

【閲覧注意】青ざめる程怖い話


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7:
小学生時、先生が話してくれた不思議な体験。
先生は大学時代、陸上の長距離選手だった。東北から上京して下宿生活を送っていたが、
大学のグラウンドと下宿が離れていたため、町中で自分なりのトレーニングコースを決めて走っていたそうだ。
いつものコースを走っていると、通りかかった公園の側の公衆電話が鳴っている。
(公衆電話にも電話番号はあるそうだが、番号は公表されているものではないし、
とにかく田舎から出てきた先生は公衆電話が鳴っているのを見たのは初めてで、かなりぎょっとしたそうだ)
「この近くの人宛の連絡にでも使われてるのか?」と思い、足を止めて鳴っている電話を眺めていたが、かが近づいてくる様子もない。
しばらく鳴らして相手が出なければ切れるが普通だと思うが、誰も出ないのに電話は鳴り続けている。
先生は少し気味悪くなったと同時に、誰が掛けているのか、どうして公衆電話の番号を知っているのか、
こんなに長く鳴らしっぱなしにしていると言うことは、なにか大事な用件があって、
そしてもしかしたら番号を間違ってしまって困っているのではないか‥‥‥いろいろな好奇心が持ち上がってきた。
そして迷った末、好奇心に負け、とりあえず受話器を取って「もしもし?」と言ってみた。
「はい。どちら様でしょうか?」中年を少し越えたくらいの女性が不審そうな声で答えた。
掛けてきておいて、どちら様もないもんだ‥‥と思い、
「そっちこそ、どちらにお掛けですか?」と言い返そうとしたところで、
「あんた! T男なの?」という女性のびっくりした声が聞こえた。T男は先生の名前。驚いている電話の相手は自分の母親だった。
先生は、聞きたいことはいろいろあるのに訳がわからなくてしどろもどろ。相手(先生のお母さん)は口早に、
「とにかくすぐ実家に戻ってこい。ついさっきお父さんが倒れた。医者の話では命に別状はないそうだけれど、あんたに会いたがっているから。」
という内容のことをまくし立て、「じゃ、すぐ来なさいよ!」と念を押すと電話を切ってしまった。
慌てて下宿に戻り、その日の内に急な里帰りをすることになった先生だが、
やはりもやもやしていたので、お父さんのお見舞いの後でお母さんに聞いてみた。
「母さん、あの電話だけどさ‥‥」
「ああ! びっくりしたわよ。お父さん倒れたのが急だったからもうバタバタしちゃって。
連絡しようにもあんたのとこ電話ないしさ、どうしようかと思ってたの。しかし、よくまあ凄いタイミングで掛けてきたものね?。
付き添いで病院に行って、帰ってきたらちょうど鳴ってるじゃない。こういうのが虫の知らせって奴かしらね?。」
しきりに感心して喋りまくるお母さんを前に、鳴り続けていた公衆電話に興味半分で出ただけ‥‥とは言い出せなくなってしまったさ
501:
T君が転校してきたのは小学五年の五月か六月くらい、一学期の中途半端な
時期で、どこといって目立つところのない、おとなしい奴だった。
すごく色白だったのが印象に残っている。
別にアルビノとかそういうんじゃなかったけど、九州の田舎の子供はみんな
黒々と日焼けしている土地だったので、なんか珍しい感じだった。
友達を作るのは苦手なようだった。
イジメってほどじゃないが、なんとなく仲間の輪から外されてた。
いつも教室の隅に独りでいるような、そんなタイプの子供。
夏休みのある日、近所をぶらぶらしてるとT君を見かけたので声をかけた。
何してるのって聞いたら「別に」って。
しばらく話をして、じゃあねって言おうとしたら、今からうちに遊びにこないか
と誘われた。
どうせ予定なんか何も無かったのでついて行くことにした。
連れて行かれたのは15階建てくらいの新築のマンションで、あそこは金持ち
ばっかりが住んでるんだぞって聞かされてたとこだった。
ここに住んでるのって聞くと、「うん」と答える。
玄関はその頃まだ田舎では珍しかったオートロック式で、こういう仕組み
なんだよってT君は説明してくれた。
家の人は誰もいなかった。居間には豪華そうなソファーセットが置いて
あったけど、まわりに引越し屋の段ボールが雑然と散らばっていた。
越してきて三ヶ月くらいにはなるのにまだ整理してないのかと不思議だった。
T君は台所からケーキとコーラを運んで来てくれた。
「遠慮しないで食べてね」いつもはオドオドしておとなしいのに、
このときは妙になれなれしいというか、積極的な感じだった。
502:
「いいもの見せてあげる」T君はそう言うと、むこうの部屋から大きな
段ボール箱を引きずってきた。
「ほら見て、これ人形だよ」そう言って箱を開ける。
僕はT君が冗談を言ってるのだと思った。
それはどう見ても生身の人間に見えた。五歳くらいの男の子。小太りで丸顔。
いわゆる知恵遅れの子供に共通するある種の外見的雰囲気を備えている
ような印象を持った。
「人形だよ」こちらの微妙な空気を感じ取ったのか、T君は繰り返した。
そして箱の底を持ち上げると乱暴に中身を放り出した。どしっと音がして
頭が床に激突する。ところが人形は目をつぶったまま微動だにしない。
「ほらね」T君は言った。
人形はT君と同じくらい白い肌をしていた。
家にあった妹のフランス人形と同じで、体を起こすとまぶたを開け、
寝かすと閉じた。
もうひとつフランス人形と同じだったのは、瞳の色がきれいな青だったこと。
「さわってごらん」T君がうながした。
ぷにぷにとやわらかい感触。ひんやりと冷たい肌だった。
「つねってみてもいいよ」言われたとおりにしてみる。
「もっと強く」力任せにねじってみる。
「ね、動かないだろう」つねったところは赤く痕になっている。
「それで刺してみたら……」僕はケーキについていた金属のフォークを指さした。
「いいよ、やってみて。
思いっきり強くね」T君は人形のシャツをたくし上げておなかのあたりを出した。
刃先はけっこう鋭かった。
それでも人形は全然反応しない。刺した所に血がにじんでいた。
503:
そうやって僕とT君はしばらくの間人形をいじめて遊んだ。
そのうちに突然T君がキレ始めた。
きっかけは人形が動いたとか、まばたきをしたとかそんなことだったと思う。
「こら、人形のくせに動くな。ばかやろう」
人形の髪の毛をつかんで頭を床に叩きつけ、みぞおちのあたりを蹴り上げる。
人形がたまらず少しでもうめいたり痛そうな素振りを見せると、
ますます興奮に手がつけられなくなる。
普段のT君とはまるで別人だった。
それから急に部屋から出て行くと、荷造り用みたいなビニールのロープを持ってきた。
「今からお仕置きをする」
T君は人形の首にロープを巻きつけると片方の端を僕に持たせた。
「はなしちゃ駄目だよ」そう言うと別の端を手に巻きつけてぐいと引っ張る。
「絶対に動くなよ、お前は人形なんだから」人形の首筋にロープが食い込む。
血管が浮き出て、顔が真っ赤になる。
「T君やばいって……」僕がロープを緩めようとすると、
「はなしちゃ駄目だって、大丈夫だよ、これ、人形だから」
その時、急に人形が暴れ出した。
ウーウーとうめきながらロープを引っ張り、足をばたつかせる。
「こら、馬鹿、動くなって」
T君はそう言いながらますますロープをきつく締め上げる。
僕は恐怖のあまり、手を放すことができない。
突然、人形ががっくりひざをついた。
「うわっ」と叫んでT君がロープを放したので、僕はうしろにしりもちをついた。
「こいつ、おしっこもらしやがった」
人形は眼を剥いたまま仰向けに倒れ、足のあいだには黄色い液体がたまっていた。
T君がわき腹を蹴る。
「汚ねえなあ。もういいや、こいつ。
 むこうの部屋に行こう。ファミコンがあるから」
504:
その頃クラスでファミコンを持っていたのは一人か二人くらいだった。
僕はまだ一度もさわったことが無かった。
T君は自分専用のテレビに、ファミコンのほかにも何種類かのゲーム機を持っていた。
僕らは夕方までそこでゲームをして遊んだ。
帰り際、居間の方を覗いてみると、人形はまだ眼を剥いたままそこに横たわっていた。
T君は僕を下まで送ってくれた。
「あのさ、よかったらまた遊びに来てくれる?」
いつものオドオドした様子でそう言った。
「うん、来るよ。いっしょにゲームしよう」そう僕が答えると、
T君は「ほんとだね、約束だよ」と言ってにこっと笑った。
三回か四回、約束どおり僕はT君の家を訪ねたと思う。
一度も中からの返事は無かった。
T君は夏休み中に何度かある登校日にも顔を見せず、二学期の始業式の日に、
「T君はご両親の都合で転校しました」と担任に告げられた。
この正月に帰省して古い友人に会ったとき、T君て憶えてる?と聞いてみた。
友人はしばらく考えて、なんか妙に肌の白い奴じゃなかったっけ、と答えた。
だから少なくとも、T君という生徒は実在したわけだ。
全部子供時代の夢か妄想か何かだと思っていたのだが。
あのマンションは少し外装をやりかえたようだったけれど、今も同じ場所にあった。
512:
32 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/20(火) 21:49:55.66 ID:xtjSaiwL0
先月のことです。Aと俺は山へ測量に入りました。
山の測量に行く時は、最低3人で行くようにしていたんですけど
行くハズだった奴がインフルエンザで倒れて、他に手の空いてる人も居なかったんで
しょうがなく2人で行くことになったわけです。
でもやっぱり不安だったんで、境界を案内してくれる地元のおっさんに
ついでに測量も手伝ってくれるように頼みました。
おっさんは賃金くれればOKという事で、俺たちは3人で山に入りました。
前日からの雪で山は真っ白でした。
でも、ポールがよく見えるので、測量は意外にサクサク進みました。
午前中一杯かかって尾根の所まで測ったところで、おっさんの携帯が鳴りました。
おっさんはしばらく話をしていましたが、通話を終えると、急に用事ができたので下りると言い出したのです。
おいおいって思ったんですけど、あとは小径に沿って土地の境界やから、そこを測っていけばイイからって言われて
小径沿いだったら大丈夫かもな、まぁしゃーないか
みたいなムードで、結局Aと俺の二人で続きをやることになりました。
ところがおっさんと別れてすぐ、急に空が曇ってきて天候が怪しくなってきました。
このまま雪になるとヤバイよな、なんて言いながら、Aと俺は早く済まそうと思ってペースを上げました
513:
ところで、俺らの会社では山の測量するのに
ポケットコンパスって呼ばれている器具を使っています。
方位磁石の上に小さな望遠鏡が付いていて、
それを向けた方向の方位や高低角が判るようになっています。
軽くて丈夫で扱いが簡単なので、山の測量にはもってこいなんです。
俺はコンパスを水平に据え、ポールを持って立っているAの方に望遠鏡を向けて覗きました。
雪に覆われた地面と枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、ポールもAの姿も見えません。
少し望遠鏡を動かすと、ロン毛の頭が見えたので、
次に、ポールを探して目盛りを読むためにピントを合わせました。
(あれ?)
ピントが合うと、俺はおかしなことに気付きました。
俺たちはヘルメットを被って測量をしていたのですが、
Aはなぜかメットを脱いでいて、後ろを向いています。
それにAの髪の毛は茶髪だったはずなのに、今見えているのは真っ黒な髪です。
(おかしいな)
望遠鏡から目を上げると、Aがメットを被り、こっちを向いて立っているのが見えました。
が、そのすぐ後ろの木立の隙間に人の姿が見えます。
もう一度望遠鏡を覗いて少し動かしてみました。
514:
女がいました。
立木に寄りかかるように後ろ向きで立っています。
白っぽい服を着ていて、黒い髪が肩を覆っていました。
(こんな雪山に・・・なんで女?)
俺はゾッとして望遠鏡から目を離しました。
「おーい!」
Aが俺の方に声を掛けてきました。
すると、それが合図だったかのように、女は斜面を下って木立の中に消えてしまいました。
「なにやってんスかー。はよして下さいよー。」
Aのその声で、俺はわれに返りました。
コンパスを読んで野帳に記入した後、俺は小走りでAのそばに行って尋ねました。
「今、お前の後ろに女立っとったぞ、気ぃついてたか?」
「またそんなこと言うて、止めてくださいよー。」
笑いながら、そんなことを言っていたAも、俺が真剣だとわかると
「・・・マジっすか?イヤ、全然わかりませんでしたわ。」
と、表情が強ばりました。
515:
Aと俺は、あらためて木立の方を探りましたが、木と雪が見えるばかりで女の姿はありません。
「登山してるヤツとちゃうんですか?」
「いや、そんな風には見えんかった・・」
そこで俺は気付きました。
あの女は、この雪山で一人で荷物も持たず、おまけに半袖の服を着ていたんです。
「それ、ほんまにヤバイじゃないっスか。気狂い女とか・・・」
Aはかなり怯えてました。
俺もビビってしまい、居ても立ってもいられない心持ちでした。
そんなことをしているうちに、周囲はだんだん暗くなって、とうとう雪が降ってきました。
「はよ終わらして山下ろ。こらヤバイわ。」
俺たちは慌てて測量作業を再開しました。
天候はドンドン悪化して、吹雪のようになってきました。
ポールを持って立っているAの姿も見にくいし
アッという間に降り積もる雪で、小径もわかりづらくなってきました。
携帯も圏外になっていました。
俺は焦ってきて、一刻も早く山を下りたい一心でコンパスを据え付けました。
レベルもろくに取らずに、Aの方に望遠鏡を向けようとしてそっちを見ました。
すると、さっきの女がAのすぐ後ろに立っていました。
516:
今度は前を向いているようですが、吹雪のせいで良く見えません。
Aは気付いていないのかじっと立っていました。
「おーい!」
俺が声をかけてもAは動こうとしません。
すると、女のほうが動くのが見えました。
慌てて望遠鏡をそっちに向けてビビリながら覗くと
女は目を閉じてAの後ろ髪を掴み、後ろから耳元に口を寄せていました。
何事か囁いているような感じです。
Aは逃げようともしないで、じっと俯いていました。
女は、そんなAに囁き続けています。
俺は恐ろしくなって、ガクガク震えながらその場に立ち尽くしていました。
やがて、女はAの側を離れ、雪の斜面を下り始めました。
すると、Aもその後を追うように立木の中へ入って行きます。
「おーい!A!何してるんや!戻れー!はよ戻ってこい!」
しかし、Aはそんな俺の声を無視して、吹雪の中、女の後を追いかけて行きました。
俺は、測量の道具を放り出して後を追いました。
Aはヨロヨロと木立の中を進んでいます。
「ヤバイって!マジで遭難するぞ!」
このままでは、自分もヤバイ。
本気でそう思いました。
逃げ出したいっていう気持ちが爆発しそうでした。
周囲は吹雪で真っ白です。
517:
それでも、何とかAに近づきました。
「A!A!しっかりせえ!死んでまうぞ!」
すると、Aがこっちを振り向きました。
Aは虚ろな目で、あらぬ方向を見ていました。
そして、全く意味のわからない言葉で叫びました。
「*******!***!」
口が見たこともないくらい思いっきり開いていました。
ホンキで下あごが胸に付くくらい。
舌が垂れ下がり、口の端が裂けて血が出ていました。
あれは、完全にアゴが外れていたと思います。
そんな格好で、今度は俺の方に向かってきました。
「・・・****!***!」
それが限界でした。
俺は、Aも測量の道具も、何もかも放り出して、無我夢中で山を下りました。
車の所まで戻ると、携帯の電波が届く所まで走って、会社と警察に電話しました。
518:
やがて、捜索隊が山に入り、俺は事情聴取されました。
最初は、あの女のことを、どう説明したらよいのか悩みましたが
結局見たままのことを話しました。
警察は淡々と調書を取っていました。
ただ、Aに女が何かを囁いていた、というところは繰り返し質問されました。
翌々日、遺体が一つ見つかりました。
白い夏服に黒髪。
俺が見た、あの女の特徴に一致していました。
俺は警察に呼ばれて、あの時の状況についてまた説明させられました。
その時に、警察の人から、その遺体についていろいろと聞かされました。
女の身元はすぐにわかったそうです。
去年の夏に、何十キロも離れた町で行方不明になっていた女の人でした。
ただ、なぜあんな山の中に居たのかはわからない、と言うことでした。
俺は、あの時のことはもう忘れたい、と思っていたので
そんなことはどうでもエエ、と思って聞いていました。
けれど、一つ気になることがありました。
女の遺体を調べたところ、両眼に酷い損傷があったそうです。
俺は、Aのヤツそんなことをしたのか、と思いましたが
どうも違ったみたいで、その傷は随分古いものだったようです。
「目はぜんぜん見えんかったはずや。」
警察の人はそう言いました。
522:
結局、Aの行方は、今でもわかっていません。
残された家族のことを考えると、Aには生きていて欲しい、とは思いますが、
あの時のことを思い出すと、正直なところ、もう俺はAに会いたくありません。
ただ、何となく嫌な予感がするので、先週、髪を切って坊主にしました。
終わりです。
追記
Aは春先に山で発見されました。下着姿で凍死。やはり目に怪我をしていたそうです。
眼窩に木片が残っており、どうやら木の枝などで目を潰したらしい。
もう一つ、Aの失踪後に本社の事務員が一人行方不明になりました。
Aが発見された場所から数キロしか離れていないところに車が乗り捨てあったそうです。
以上の話は実体験ではなく伝聞ですので信頼性は低いのですが。
523:
昨年末くらいからなんだけど、ときどき急に目眩とか吐き気がするように
なりました。
最初は風邪かと思ったんだけど、普通に元気にしてるのに突然気分が悪くなって、
しばらくしたら治ることの繰り返しで、普通の体調の悪さとは違うのです。
病院に行っても原因が分からず、ストレスでしょうとか言われ、
薬をもらって飲んだけど全然治りませんでした。
そんなことが1カ月以上続いていたのですが。。。
つい先日のことです。
用事があって近所の家に行ったのですが、たまたま先客がいらしたので、
玄関先でその方に方に軽く会釈しました。
するとその方、品の良い50代くらいの奥さんでしたが、
いきなり顔色が変わったのです。
その奥さんは、「いきなりこんなことを聞いてごめんなさいね、もしかして
あなたが着ていらっしゃるそのセーターは手編みで最近プレゼントされたもの
じゃありません?」とおっしゃいました。
いきなりのことで私は引きまくりでしたが、確かにそれは、中学からの
長い付き合いの友人がクリスマス前に贈ってくれたセーターでした。
友人は編み物がプロ級の腕前で、家族や友人にセーターとか小物を
編んで送るのを趣味みたいにしてるのです。
私がそう言うと、その奥さんは「そのお友達って、こういう感じの方でしょ」と、
容姿を詳しく描写されたのですが、
それがもうビンゴ、本人を知っているのではないかと疑うくらいピッタリ。
その方、いわゆる霊感のある方なのだそうで、
へ? 世の中には本当にそういう能力の持ち主がいるんだな?と
私は単純に感心していたのですが、そのあとこの方が言った言葉に
激しいショックを受けてしまいました。
524:
「普段は私、霊感に関することは親しい人以外には言わないようにしてるんです。
 だっておかしな人だと思われますでしょ? でも、あなたのことはどうしても
 見て見ぬ振りできなくて。こんなことを言って気を悪くされるでしょうけれど
 私にはそのセーターの編み目の一つ一つから
『死ね』『不幸になれ』という言葉が吐き出されているのが聞こえるんです・・・」
そう言われたのです。当然私は怒りました。
だってその友達とは長年仲良く付き合ってきたし、
だいたい彼女はそんなことを言うような人ではないんです。
でもよくよく思い返してみると、体調の悪くなるのは必ずそのセーターか
その少し前にもらったマフラーを身に付けていたときでした。
そして、一応すすめに従ってセーターとマフラーを処分したら、
体調も良くなってしまいました。
あの奥さんの言葉をそのまま鵜呑みにすることはできないにしても
もし本当だったとしたら・・・・
親友と思っていた人が、一目一目恨みを込めながらセーターを編んでいた
ってことでしょうか?
恨まれる心当たりは全くないのですが。
その方の言葉によると
「お友達ご自身も自分の気持ちには全く気付いてないのかもしれませんよ。
 手作りの物には心の奥底にある思いが乗り移ることがありますから」
だそうです。
手作りの物は、気付かないうちに呪われているのでしょうか。
526:
その日、私は息子を連れて散歩に出ていた。
小春日和の、気持ちの良い昼下がり。ベビーカーに乗った息子は、ニコニコ笑顔。
今日は息子の機嫌も良いし、少し遠出してみようかな。。。
これが、そもそもの間違いの元だった。
ベビーカーを押しながら、息子に色々話し掛けて、私はとても幸せな気分だった。
そうこうしているうちに、いつも行く公園よりも、少し遠い公園に着いた。
息子よりは大きいが、2~4歳ぐらいの小さな子供たちが、砂場で遊んでいた。
そのすぐ側で、その子供達の母親と思しき女性達がベンチに座って話し込んでいる。
ごくごく「普通の」公園の風景・・・・・・・
「普通」の公園の風景?
砂場で遊んでいる子供達の手元・・・・・チラッと何かが見えた。
スコップで埋めている。
何を?
目を凝らして見てみる。ここからではよく見えない。
もう一度、今度はベビーカーを押しながら、ゆっくりと近づいて見る。
・・・男の人の・・・・手・・・・・?
・・・・・・のように見えた・・・・けど・・・見間違い・・・だよね?!
自分に言い聞かせつつ、近寄ってみる。
やっぱり男の人の手・・・・気が遠くなりそうになった・・・・
息子の泣き声で、ハッと我に返る。
振り返ると・・・・砂場の子供達の母親達が・・・
息子のベビーカーの側で笑っている。
息子の手に、画鋲を握らせながら・・・・・・・
息子の手は治ったけど、二度と行きたくない公園。
思い出しただけで、ゾッとする。
少し調べたら、画鋲を握らせた上に、息子の手を握り締めていた奥さんの
舅が、未だに行方不明だそうで・・・・・・
545:
この話は、先輩(仮に吉田さん)に聞いた話。
吉田さんは半年ぐらい前まで、都内にあるボーリング場でバイトしていた。
そこはある雑居ビルの中にあって、繁盛しているわけでもないが、
寂れているわけでもない感じの所で、そこはどうゆう訳かバイトも店長も
長続きしなくて1ヶ月いればよい方なぐらいで、オーナーも先輩が働いていた間
1度もお目にかからなかった。
働き初めて3日目で人が続かない理由が分かった。
バイト連中の間ではそこは呪われているらしい。
例えば夜、レーンの掃除をしていると、レーンの奥から女が這い出してきたり。
(先輩が聞いた話だと、貞子のようだとか)
帰ってきたシューズを触ると中が血でベットリで、ビックリして手を離し、
もう一度見ると何にもなかったり。
誰もいないトイレで後ろに女が立っていたり。
みんながみんな少しづつ、そうゆう体験をして、恐くなって辞めてくのだそうだ。
でも先輩は、全然そうゆうの信じてなくて、実際、他のみんなのような体験は
無かったので3ヶ月ほどそこで働いていた。
ある日、1週間ぐらい前からの店長に、一緒に来てくれないかと言われた。
店長の話だと昨日オーナーから電話があって、
「ずっと働いてる吉田くんを連れて 倉庫の中の掃除をしてくれ」
と頼まれたらしい。
先輩は「なぜにおれ?」と思ったけど、特別手当を出すと言われ、渋々承諾した。
546:
その日は定休日朝10時集合。
その倉庫は、従業員休憩室脇の廊下突き当たりにあって、
入ると窓も電気もない埃っぽい8畳くらいの部屋で、
古いピンや掃除用具、ロッカー、事務机が乱雑に置かれていて、
どこから手を着けていいのか分からないほど。
なんとか懐中電灯で掃除を始めたものの、そのうち変なラップ音や
人の声がし始めた。
先輩は気にせず続けた、でも店長と二人で、床に転がっているロッカーを
どけようと手をかけた瞬間、バーンっバーンってものすごい音がしてきて、
突然開けっ放しでストッパーしていたはずの、重い鉄の扉が閉まった。
ビックリして持ち上げていたロッカーを床に落とした。
机に置いて床を照らしていた懐中電灯の先を見たら、ロッカーが置いてあった
ところに、人の形に血の痕があった。それ見た瞬間、店長は半狂乱に。
放心状態で見ていた先輩が店長に近づこうとしたときに、何かにつまずいた。
振り返ってみたら、ただの血痕のはずだった所に人がうずくまっている。
先輩は気絶した。しばらくして、バーンって大きな音がして先輩が気づいたら、
ドアが開いてて、部屋の一番奥で店長がすごい形相で廃人みたくなってた。
そこから一目散に出て119番。
その後、店長は精神病院に送られて、いまも帰ってこない。
後日オーナーに呼ばれて話をしに行ったんだけど、そこで聞いた話によると、
先代のオーナーの時に、その倉庫で女のバイトが一晩閉じこめられた。
翌朝、倉庫を開けたら一日しか経ってないのに、その子血だらけで倒れてて
どう見ても1ヶ月ぐらい放置された死体みたいになってたんだそうだ。
何でそうなったかは分からない。
先輩はその後すぐ止めたけど、そのボーリング場はまだ営業してるそうです。
549:
うちのかみさんが昔旅行代理店で添乗員の仕事やってたときの話。
徳島県に木屋平村っていう過疎の村があって、どこかの会社の慰安旅行
の付き添いでそこへ行ったんだって。
自然以外はほとんど何もない村。
客のほとんどは若いOLで、あとは上司の中年男性が1人いただけ。
二泊三日、川でバーベキューしたり山道をただ歩いたり、かなりのんびりした旅行だったらしい。
何かのお祭りでもあるらしくて、山道を鎧兜を身に纏った村人たちが馬に乗ってたり歩いたりしてた。
かなり本格的な衣装だったんでOLたちは感心して写真をとりまくった。
帰りのバスで、OLの一人が急に体調を崩して、泡吹いちゃってちょっとヤバイ感じだったんで
救急車呼んで近くの病院に運ばれていった。
上司の男性が付き添いで一緒に行った。
その後の車内はいやな感じというか、うまく説明できないけど嫌な気配が
充満してたんだって。
特に運ばれてったOLの座っていた座席に気持ち悪い気配があって、
だれもその方向を見ようとしなかった。
隣や前後の席にいた客も座席を変えて座ったらしい。
かみさんは一生懸命場を盛り上げようといろいろ話をしたんだけど、
車内は暗?い雰囲気に包まれてしまって、泣き出すOLもいた。
550:
かみさんはずっと車内全体を見回す場所に立って話をしなくちゃいけないから、
例の座席の付近も必ず視界に入ってしまう。
気にしないように気にしないようにと思いつつもその座席のほうに目が行ってしまう。
やがてパーキングエリアに到着すると、OLたちはみんな我先にと外の空気を吸いに
車外へ出て、運転手もトイレに行った。
かみさんは一人車内に残されて、いや?な気配のする座席へ行ってみた。
座席の下にポラロイド写真が落ちてた。
運ばれてったOLが鎧兜の村人と一緒に写ってる写真だった。
かみさんは急いでその写真をパーキングエリアのゴミ箱に捨ててしまった。
鎧兜の武士がOLの方へ駆け寄って、
振り下ろされた刀が首に深々と食い込んでる瞬間の写真だったんだって。
その後かみさんは即仕事をやめて、
写真のことは秘密にして俺に話すまで誰にも言わなかったらしい。
あとで木屋平村のこと調べてみたんだけど、鎧兜を着る祭りなんて無いし、
そんな風習も全く無いとのこと。
551:
友人が駅前のビデオ店からダビングのできる昔のビデオを借りてきて
(たしかゴッド・ファーザーの1だったと思う)、
それをデジタル・ビデオ・カメラにダビング、それをハードディスクに
とりこんで、ビデオの編集ソフトで5分に1回くらいの割合で、首吊り死体
の映像を1/24秒間くらい挿入して、借りてきたビデオに上から再録画して
ビデオ店に返した。
(元ネタは有栖川有栖の「海のある奈良に死す」、私がその友人に貸した)
 そうしたら本当に去年の11月の今年の2月にかけて友人の家の近辺で自殺
が相次いだそうです。
 
 私はロルフ・デーケンの「フロイト先生のウソ」(文春文庫)を読んでいま
したので、サブリミナルはインチキだと思っていますが、それ以来、レンタル
で昔のビデオは借りなくなりました。
581:
俺は一人暮らしの社会人。この前、夜中、風呂から上がって鏡見ながら髪乾かしてた。
ふと鏡の端の方に視界を移したら、俺の背後にある扉のわずかな隙間から誰かが
覗いているのが映っていた。
俺はかなりビビって視線をそらし、怖いので後ろを振り返る事が出来ずに固まってしまった。
しばらくし、もう一度視界を鏡の端に移した。だがもう「顔」はなかった。
気のせいだったかと思いながら何気無く鏡の右上角に目をやった。
あった。「顔」はまだ覗いていた。天井の高さ位の所から。
よく見るとそれは本当に顔だけだった。
髪や耳などなく、顔の部分だけが浮いてるような感じに見えた。
俺は悲鳴を上げながら思いきって扉を蹴り開けた。
何もいなかった。だが、あれは見間違いなどでは絶対ない。今でも覚えている。
あの満面の笑みをした表情のように見えた「顔」を。
それ以来、扉やふすまは必ず完全に閉めるようにしている。
688:
私はお婆ちゃん子でした。
両親が共働きでしたし、一緒の家に住んでいたので
私は小さい頃から祖母にはずいぶんと甘えましたし・・・
祖母も孫の中で私が一番可愛いと
二人きりになった時にはよく言ってくれました。
しかし
人には必ず寿命があり、どんなに大切な人にもいつかは必ず死が訪れます。
そして
祖母が死んだのは私が高3の夏の事でした・・・
私は一週間くらいは泣き続けたのを覚えています。
その年の冬の事です。受験勉強で疲れていた私は
夜中に何かの気配でフト目が覚めてしまいました。
枕元を見ると祖母が着物を着てチョコンと座っています。
すぐに、幽霊だと気がついたのですが不思議と怖くありません。
祖母は生前の様な優しい顔で私を見つめていたからです。
「おばあちゃん。」私は声をかけました・・・
689:
すると祖母の霊は私の頭の中に語りかけてきました。
「生前、悪い行いをしたので、成仏するには一番可愛がっていた
 身内を道連れにしなければならない・・・」
そんな感じの意味が頭を駆け抜けた瞬間!
祖母が私の首を掴むともの凄い力で引っ張ります!!
私は声を出そうとしたのですが、首を強く締められているので声はでません。
頭の中で
「お婆ちゃん!やめてくれ!お婆ちゃん!」と何度も念じていました。
しかし、祖母の両手は力を緩めませんでした。
気が遠くなる瞬間に頭の中で
「ちぇ!」と汚く舌打をするような意味が聞こえたと思ったら
私は気を失ってしまいました。
気が付くと両親が私の部屋にいました。
両親に言わせると、大きな物音が聞こえたのので部屋に入ると
私が白目をむいて口から泡を吹いていたと言うのです。
あの日以来、祖母の霊が二度と私の所へ来る事はありません・・・
そして
私はこの話を誰にも・・・両親にさえも話していません・・・
しかし
テレビ番組で霊能者がよく先祖の守護霊だとか
祖母の霊が守っていると神妙な顔で話しているのを聞くと・・・
「何を言うかぁ!偽物霊能者め!」
と思ってしまいます。
694:
怖いというか、不気味な話
俺の遠い親戚が、戦争で死んだおじいちゃんの形見の整理をしてたら
中から、ひょっとこのお面が出てきた
そのお面があまりにもおかしかったから、それをかぶって
4時間くらい踊ってたら、その親戚が急に倒れて
「・・・お面を・・・・・はずしてくれ・・・」
って死にそうな声で言う。
最初は冗談だと思ってたが、なかなか立ち上がらないから
お面をはずしたら、顔面は土色で唇は紫。
これはヤバイと思い、医者を呼ぶと30分後くらいに医者が来て一言
「なんでもっと早く呼んでくれなかったんですか!?4時間前には死んでますよ」
697:
夜の十時過ぎ、バスの中は私だけかと思っていた。
すると後ろから子供の話し声が聞こえた。
そうか、まだ他にも乗客がいたのか。
子供達は怪談話をしていた。
子供1「振り向くと幽霊があの世につれて行っちゃうんだって。」
ああ、この子達は良く帰りが一緒になる塾帰りの子だ
子供2「じゃあ振り向かなければいいんだね。簡単なことだ。」
子供1「それがね、絶対振り向いちゃうんだって。幽霊も振り向かせるために色々な方法を使うらしいんだ。」
もうすぐこの子達が降りるバス停だ。
二人は全く気づいていないようだ。
降り過ごして帰りが遅くなるのは可哀想だと思い、振り向いて声をかけた。
「君たちここで降りるんだろ?」
子供1「ほらね」
710:
当時、私は16?17歳でした。
私は京都に住んでおり、私たちの友人の間では夏休みを利用してあるバイトが恒例になっていました。
それは仲間内で『天国のバイト』と呼ばれており、とあるさびれた駅の駅員のバイトです。
今もあるので、固有名詞は出さないでおきます。
持ち場は全部で3箇所あり、
そのどれもが1時間に3本程、観光客を運んでくるのみで、
その前後5分以外はクーラーの効いた駅員室で漫画を読んだり、
ゲームをしたり、宿題をやったりと、好き放題でした。
それが『天国』と言われる所以です。
他の駅員は、定年退職し、職場を求めた嘱託のおじいさんばかりで、
「今日はなんやしんどいですわぁ」などと言うと、孫ほど離れた私たちが可愛いのか、
嘱託さん達は「それじゃあ宿直室で寝てきたらどうや?」なんか言ってくれるほどヌルイバイトだったのです。
それほど美味しいバイトが一般に募集されるはずもなく、
このバイトは自然に毎年、○○高校在学の生徒で埋め尽くされていました。
バイトをしている者は3回目のバイト、つまり3年を迎えると、
次の年そのバイトに入れる「選ばれた人」が一年から数人選出され、
代々途切れることなく続いてきていました。
当時のバイトメンバーは、
U君、K君、N君、Y君、M先輩、私の計6人。全員男です。
M先輩のみ3年で、残りの5人は2年。その年、1年生はいませんでした。
この出来事は、このバイトに直接関係ありませんが、
このバイトをしている環境が問題でした。
全国的にもその周辺は自殺が異様に多く、嘱託の人たちから怖い体験話を聞かされたりしたものです。
自殺した遺体が毎年必ず数体は発見されますが、その発見者はほとんど早朝から出勤する嘱託の方々。
私たちは8?9時頃からの勤務ですので、幸いそういった現場には出くわしませんでした。
711:
ある暑い日、私たちはそのバイトを終え「お疲れ会」を開くことになりました。
お疲れ会というのは、別段変わったことじゃなく、単にバイト後にみんなで雑談するだけのものです。
バイトは2シフトで終わるのが19時と23時の2種類。
お疲れ会に参加したいけど、早番だという場合は4時間ほど持ち場でヒマを潰して遅番の終わりを待つのです。
その日は珍しく、6人全員が参加しました。
「オレは今日参加しようかなー」というのが残り2人にも波及して、
「じゃあ何もないからオレも」という風に、早番全員が残っていました。
お疲れ会の場所は日によって異なりますが、その日は「風情があるやろ」ってことで、
2本の川が合流し、1本の鴨川になる中州に下りて行うことにしました。
中州に下りるには、2本の川に掛かった2つの橋の間から川べりへと石段を降りていくと着きます。
左右を川がサラサラと流れた砂利の上で座り、いろんな雑談をして楽しんでいました。
K君とN君、それからM先輩はお酒が好きで、近くのコンビニで缶ビールも買い込み、
少しだけ飲めるU君は付き合い程度、全く飲めない私とY君はジュースで、といった具合でした。
皆が談笑しているとき、M先輩のポケベルが鳴り出しました。
他の皆は大して気にすることもなく、話を続けていると、
「あれ?誰やろ…」
M先輩が言いました。
「どうしたんすか?」
誰かが尋ねると、M先輩が自分のポケベルを私たちに見せてくれました。
【ドコニイルノ】
それを見た誰かが冷やかします。
「またぁ?、誰やろって、それはオレらが聞きたいですよ?」
とニヤニヤして言います。
712:
当時、携帯というものはまだ限られたビジネスマンが車の中でだけ使う高価なもので、
普及していたのはポケベルとPHS。今の若い方々は知らない方も多いかもしれません。
基本はポケベルで、中にはピッチPHSを持って、ベルと共用している人もいる、そんな時代です。
数字だけが入るポケベルから進化して、その当時は短いカタカナを送ることができました。
街の公衆電話では、女子高生が高でメッセージを打ちまくる光景をよく目にしました。
11はア、15はオ、21はカ、といった具合に入れるのです。
川原で飲んでいた6人もそれぞれポケベルやPHSを持っていました。
「いや、ホンマ心当たりないし!」
とM先輩が言った瞬間、手に持ってこちらに見せていたベルが再び鳴りました。
確認するM先輩。
訝しげな表情を浮かべ、私たちに見せます。
【ワタシモイレテ】
「どこって聞いておいて、入れてって何やねん。意味分からんわ」
とM先輩。
「彼女ちゃうんすか?」
「いや、彼女おらんのん知ってるやろ」
その時は大して気にも留めず、また雑談を再開しました。
数分して、また鳴るM先輩のポケベル。
「もぉ???誰やね?ん…」
と、また私たちに見せてくれたベルには
【ナイノ】
と。
全員「はぁ??」と苦笑していました。
すると、今度もすかさずもう一度ベルが鳴り、
【ドコニアルノ】
「どこにいる、の次はどこにある、か…」
M先輩はわけが分からない様子で、呆れて鼻で笑っていました。
ところが、ポケットにしまいかけた時、また鳴ったベルを見たM先輩は一気に青ざめたのです。
713:
「…次はなんすか?」
「…どうしたんです?」
興味津々に聞く私たちに、M先輩は何も言わずにベルを見せてくれました。
【ワタシノアタマガナイノ】
と、ありました。
皆に見せた後、M先輩はいきなり怒り出しました。
「ちょ、お前ら。オレが霊感強くてこういう冗談いっちばん嫌いなん知ってるやろ!」
驚く私たち5人。
「誰やねん!こんなふざけたん入れたヤツ。ちょーもうええし、ホンマやめろや」
まで言った時、またベルが鳴りました。
M先輩の真剣さと、もしかして霊的なことなのかという驚きで5人も押し黙ってM先輩が確認する様子を見守ります。
確認したM先輩は「ハッ」とひきつった笑いをすると、M先輩はまた見せてくれました。
【アソボウヨ】
見せながら「誰や」とM先輩は問い質します。
「お前ら、ピッチ(PHSのこと)持ってるやろ。それでこれを入れてるん分かってんねん」
そう言うと「とりあえず全員ピッチここ出せ。発信履歴見るわ」と言い出しました。
PHSからメッセージを送るには、メッセージセンターに電話を掛けなければいけないので、
発信履歴を見ると確認できるのです。
「オレちゃいますよ…」と皆口々に言いながら、砂利の上にPHSを出していきます。
全員が出し終わって、2?3人目のPHSをM先輩が確認し、
「お前もちゃうな」
と言った時です。
またベルが鳴ったのです。
全員のPHSがその場に出されているわけですから、その時点で全員の無実が証明されましたが、
同時に何やら気味の悪いメッセージがこの6人以外から入ってきていることも証明されました。
「え…」と言ってゆっくりM先輩はベルに再び目をやります。
真顔で差し出してくれました。
【アタマサガシテ】
714:
口々に皆気持ち悪がり、
「誰のいたずらか知りませんけど、なんや怖いっすねー」
「うーわ、めっちゃ怖い!」
「霊や、霊や」
「ほんま誰やね?ん」
と少し興奮しつつ、6人が出した答えは「他の場所に移動する」でした。
川の近くで、あまり人気が無かったからという怖さも大きかったからです。
ゴミを集め、6人は降りてきた石段に向かって歩き始めました。
ピリピリピリピリ、ピリ。ピリピリピリピリ、ピリ。
またM先輩のベルが鳴りました。
全員M先輩のベルに群がってメッセージを見ます。
【ドコニイクノ】
それを見た瞬間、全員「うわぁぁぁぁ」とか「おいおいおいおいおい」とか、
「これまじでやばいってー!」など悲鳴を上げて走り出しました。
石段を駆け登って、停めてあった原チャにまたがり、
一番に走り出した人の方向に従って一斉に原チャで逃げ出す6人。
結局、最寄の私鉄駅前まで行って先頭が止まりました。
駅前は、自動販売機や、公衆電話の人工の光があり、皆ちょっとずつ平静を取り戻してきました。
「さっきのんはやばかったなー」
「オレこんなん初めてやわー」
「ちょっとー今日寝れへんかもしれんやーん」
と、まだ多少遊び半分だったのかもしれません。楽しいハプニングが起きた、と。
駅前の街路樹の枠に腰掛けたM先輩がしばらくして皆に言いました。
「アレはホンマにやばかったと思う。実は最初からちょっとイヤな気はしてた」
「まじですか?」などと皆がリアクションしてる時に、
またイヤな音が鳴りました。
715:
M先輩は「勘弁してくれー…」と言いながらも、見ます。
そして一言、「大丈夫そう…」と言って見せてくれました。
【ドコニイッタノ】
皆「見失ったんちゃう?」と言い出し、一人が「今のうちにバラけて家帰ろうや」と言い出しました。
一人で帰るのが怖いという声もありましたが、程なくその案に皆同意、
各自原チャにまたがって「ほなまた明日なー」などと言って用意している時。
再びベルが鳴ったのを聞いて、6人はピタっと動きを止めました。
ベルを確認したM先輩は「帰るのは中止。移動しよう」と言いながらベルをこちらに見せます。
【ミイツケタ】
信号無視もしましたし、首にかけたタオルが風で飛んでも拾いには戻りませんでした。
24時間開いている喫茶店を見つけ駆け込んだ6人の内、3?4人は震えていました。
ドラマのように分かりやすく震えているわけではなく、
椅子に座ると、膝がカタカタ揺れ、それがテーブルに伝わってシュガーケースがコトコト揺れるような震えでした。
移動している間に、
【ドコヘイク】
【オマエ】
【アタマガナイ】
【カエセ】
【アタマヲカエセ】
と次々とメッセージが入っていたそうです。
もう既に少し放心状態の5人はそれを聞かされても「そうですか…」といった反応。
確かにクーラーは効いていましたが、ほとんどの人間が「ここは寒い」とも言い出し、
もうどうしていいか分からない状態です。
1時間ほど喫茶店にいて、結局、6人全員で一番家の近いY君の家にいくことになりました。
Y君の家に着き、Y君の提案で仏間で雑魚寝することに。
「仏さんがいるから守ってくれるんじゃないか?」という安直な考えでした。
それが功を奏したのか、Y君の家に入ってからベルはピタリと止まったのです。
ところが、さらにおかしなことが起こり始めました。
716:
U君が言った一言「あれ?Kはどこ?」。
K君の姿が見えないのです。
「トイレ?」
トイレにはいませんでした。
K君はY君の家のどこを探してもいませんでした。
家の前を確認すると、彼の原チャだけありませんでした。
あれほど怖い状況で一人で無断で帰るとも思えません。
不安になり、K君のPHSに電話を掛けましたが、誰も出ません。
Y君が「これは非常識とかを気にしている状況じゃないから」と、
とりあえず親御さんにいなくなった旨を報告するため、
PTA会員名簿でK君の自宅電話番号を調べ、自宅に電話しました。夜中の3?4時頃です。
しばらく誰も出ませんでしたが、やがて彼のお母さんが出られました。
「非常識なお時間にすいません。K君と一緒のアルバイトしてるYと言いますが…」
彼はそこまで話して、こちらを見ました。
「ちょっと待ってね、やって。K、家にいるみたい…」
「はぁ?なんやねんあいつ!」「帰るんやったら一言言えやー」
と皆口々に愚痴ります。
しばらくして電話口に出たKと会話したYが私達に言ったことは、
「あいつ、今日早番で先帰ったとかゆーとる」
全員、顔をしかめて聞き返す。
「なんか、お疲れ会誘われたけど、今日は用事あったから帰ったやんって」
確かに寝起きの声だったそうです。
皆、よくよく考えましたが、いたようないなかったような、つまり記憶が曖昧なのです。
存在感が無いとかいう話ではないです。6人のうちの1人なので、いなければすぐ分かるはずなのに、
最初の川原からY君の家に着くまで、誰もが「K君がいない」ことを感じていなかったのです。
でも「どんなことを話したか」とか「何か証拠があるか」と言われれば誰も言えない。
ただ、確かに6人だったと皆記憶しています。
かなり長くなりましたが、これが私の体験した一番怖い話です。
長文、すいませんでした。
723:
姉から聞いた話。
その昔、姉は自分と彼氏、そして友達カップルと4人で
夜中ドライブに行ったそうだ。
その友達カップルの彼氏というのはちょっと霊感の強い人で、
よく霊を見ては涙を流すことがあったそうだ。
彼にとってはもう見慣れてるから、怖いとかそういうんじゃなくて、
なんか意味もなく涙が出てしまうらしい。
で、ドライブ中に、その彼がツーと涙を流し始めた。
みんな、彼の霊感のことは知っているので、
「ああ、また見たんだな・・・」とだけ思っていた。
だが、どうもいつもと様子が違う。
彼は急に、「車を止めてくれ」と言ってきたのだ。
「どうしたんだよ?」と聞いても、とにかく止めてくれの
一点張りで理由を説明しようとしない。
仕方ないので、路肩に車を寄せて停車し、彼に
「これでいいのか?」と聞いた。
すると彼は、「これから俺が何を言っても、おまえら
逃げないでくれるか?」と涙を流しながら言うのだ。
724:
もちろん、友達同士の仲であるし、彼の様子を見ると、
「逃げる」なんて言えるわけもない。
「大丈夫だ」「逃げないよ」と口々に言った。
すると彼は、じゃあ言うけど・・・と前置きをして、
俺 今 足首つかまれてるんだ
と言った。
いっせいに彼の足元を見ると、車の床の下から白い手が出て、
彼の両足首をしっかりと握り締めている。
それを見た姉たちは、逃げないと言ったことも忘れ、
恐怖のあまり全員叫び声をあげながら車を降りて逃げ出した。
752:
「うわ!」連れの昭二が突然声を上げた。
「な、なんや、急に・・・」オレは驚いて立ち止まった。
バイトの帰り、大通りの交差点に差し掛かったところだった。
「あれ、あそこンとこ。見えへんか。」そう言って交差点の反対側の方を指差す。
コイツまたか、と思った。昭二は霊感が強いらしくて、何やかんやで良く「見える」。
しかし、一緒にいるオレには「見え」ないし、何も感じられない。この時も同じだった。
「あっ!アカン、アカン!あれはヤバいわ。はよ行こ。」
とまどうオレをしり目に、勝手に状況に見切りを付け、昭二はどんどん先に進んで行く。
早足で追い付くと、オレは尋ねた。
「なんやねんな、なにが見えたんや。」
「・・・車道の真ん中に人が倒れてたんや。せやけど、クルマは止まらんとバンバン走ってて、
ソイツを通り抜けたりしてる。よお見たらソイツ上半身だけなんや。」
「それ、下半身が消えてるってことか?」
「うーん、千切れてるって感じやったな。それで、じーっと見てたら目が合うてしもて・・・」
「それ、ヤバいんか?」
「ヤバいヤバい。憑かれるかもしれん。」
「マジでか?、どーすんねん、ソレ・・」
「はよ離れる方がエエねん。行こ行こ。」オレたちは早足で地下鉄の入り口へ向かった。
753:
駅前でメシを食ったあと、昭二が、自分の部屋に帰るのは怖い、と言い張ったため、
男二人で近くの居酒屋に飲みに行った。
「・・大丈夫やて、もう大分時間たってるやん。」
いつまでも部屋に戻りたがらない昭二を、オレは飲み屋で説得していた。
明日も朝からバイトがあるからだ。
「まあ、電車で動いたしなぁ。憑いてる感じはないし、大丈夫とは思うねんけど・・」
そうやってグズグズ言っている昭二に、店の勘定÷2?500円分の金を渡し、
逃げるように帰ったオレが、自分の部屋に戻ったのは11時を過ぎていた。
疲れ切っていたので、風呂へも入らず真っ直ぐ布団へ・・
と、その時、電話が鳴った。ナンバーを見ると昭二だった。
「もしもし。」
「ああ、俺。あのなぁ、やっぱり部屋の周りがイヤ?な感じで、ホンマ怖いねん・・」
「ぁあ?(怒)」
「どうしたらエエと思う?」
「知るか、ボケェ!」叩きつけるように電話を切った。
しばらくするとまた電話が鳴ったが、放っておくと10コールぐらいで切れた。
ようやく寝入ったところで、今度は携帯にかかってきた。無視しようか迷ったが、一応出た。
「はい。」
「これから、そっちへ行く・・」いきなり切れた。
履歴を見ると、やっぱり昭二だった。時刻は0時過ぎ。電車はもうない。
あいつは原チャリしか持っていないのに、このクソ寒い中、本当に来るのか?
眠くてしょうがなかったので、どうでもよくなって、寝直した。
それでも気になっていたのか、その物音がした時には、うっすらと目が覚めた。
754:
自分の部屋のすぐ横にある階段を上る音。
ああ、あいつマジで来やがった。そう思って時計を見た。4時30分。
何考えてるんや・・心の底からうんざりして、布団を出た。
昭二は、まだ階段を上がっている。2階のオレの部屋まで、ゆっくり、ゆっくり。
原チャでコケて怪我でもしたのか?
少し心配になったオレは、部屋のドアを開け、右手にある階段の方を見た。
階段は部屋の前の通路と直角になっていて、ドアからは見えない。
ズッ・・・ぺタン・・ズズッ・・・
ゆっくりとした音が階段の方から聞こえてくる。
階段を上がる靴の音ではない。何か重いものを引きずるような音・・?
急に悪寒がした。階段を上がっているのは、本当に昭二なのか?
ぺタン・・・ズズッ・・・ズッ・・
音が近づいてくる。そうか、腕だけで体を引っ張り上げるとこんな音が・・
オレは、部屋の中に入るのも忘れて、階段を登りきった角の所を見つめていた。
ズズッ・・ズッ・・ぺタン。
通路の床の上、ゆっくりとした動作で白い手が現れるのが見えた。
オレは勢いよくドアを閉め、震える手でカギをかけると、布団を頭からかぶった。耳を澄ます。
・・ズズッ。
音は部屋の前で止まったようだった。
オレはお経を知らなかったので、布団の中で、来るなっ来るなっ、とだけ念じていた。
755:
どれくらいの時間そうしていたのか。
やがて、そっと開けた布団の隙間から、外が白んでいるのが見えた。
と、ドアの新聞受けが、カタン、と軽い音をさせた。
新聞屋が来た!オレは涙が出そうなくらい安堵した。
ありがとう!ありがとう!朝刊だけでも取っていてよかった!本当にそう思った。
ズル・・ドサッ
玄関の方で、重い肉が落ちるような音がした。え?新聞じゃない・・・
入って来た!入って来た!入って来やがった!オレは気が狂いそうになった。
なんで、あんな細い隙間から入ってくるんだ!と憤ってみたが、どうしようもない。
布団をかぶり直し、ブルブルと震えるしかなかった。
ズ・・ズル・・何かが床の上を這っている。
昭二の馬鹿野郎!泣きながら罵ってみた。
ズズ・・・ズル・・音が近づいてくる。
昭二ゴメン!オレがあの時帰らなかったら・・・
その先のことは考えず、ひたすら昭二に謝ってみた。だから、神様、助けて!助けて!
布団の端がめくれ上がるのがわかった。
生臭い臭い。そして、何ものかの気配が目の前に・・
あかん!今、目開いたらアカン!そう言い聞かせながらも、つい目を開けてしまった・・・
見えたのは、ボンヤリと赤っぽい色、それが視界一杯に拡がっている。
なんだ・・?そう思った瞬間、ピントが合った。
目の前3センチのところに、髪の毛と肉と黄色い脂がグチャグチャに入り交じった顔があった。
759:
これはOLとして働きながら、ひとり暮らしをしていた数年前の夏の夜の話です。
私が当時住んでいた1DKは、トイレと浴槽が一緒になったユニットバスでした。
ある夜、沸いた頃を見計らって、お風呂に入ろうと浴槽のフタを開くと、
人の頭のような影が見えました。
頭部の上半分が浴槽の真ん中にポッコリと浮き、鼻の付け根から下は沈んでいました。
それは女の人でした。
見開いた両目は正面の浴槽の壁を見つめ、長い髪が海藻のように揺れて広がり、
浮力でふわりと持ちあげられた白く細い両腕が、黒髪の間に見え隠れしてました。
どんな姿勢をとっても、狭い浴槽にこんなふうに入れるはずがありません。
人間でないことは、あきらかでした。
突然の出来事に、私はフタを手にしたまま、裸で立ちつくしてしまいました。
女の人は、呆然とする私に気づいたようでした。
目だけを動かして私を見すえると、ニタっと笑った口元は、お湯の中、
黒く長い髪の合間で、真っ赤に開きました。
(あっ、だめだっ!)
次の瞬間、私は浴槽にフタをしました。フタの下からゴボゴボという音に混ざって
笑い声が聞こえてきました。
と同時に、閉じたフタを下から引っ掻くような音が・・・。
私は洗面器やブラシやシャンプーやら、そのあたりにあるものを、わざと大きな音を
立てながら手当たり次第にフタの上へ乗せ、慌てて浴室を飛び出ました。
浴室の扉の向こうでは、フタの下から聞こえる引っ掻く音が掌で叩く音に変わっていました。
私は脱いだばかりのTシャツとGパンを身につけ、部屋を飛び出ると
タクシーを拾い、一番近くに住む女友達のところへ逃げ込んだのです。
数時間後……深夜十二時を回っていたと思います。
カギもかけず、また何も持たず飛び出たこともあり、友人に付き添ってもらい部屋へ戻りました。
友人は、今回のような話を笑い飛ばすタイプで、好奇心旺盛な彼女が、浴室の扉を開けてくれる事になりました。
760:
浴室は、とても静かでした。フタの上に載せたいろんなものは全部、床に落ちていました。
お湯の中からの笑い声も、フタを叩く音もしていません。
友人が浴槽のフタを開きました。しかし、湯気が立つだけで、女の人どころか髪の毛の一本もありません。
お湯もキレイなものでした。それでも気味が悪いので、友人に頼んで、お湯を落としてもらいました。
その時、まったく別のところで嫌なものを見つけたのです。
私の身体は固まりました。洋式便器の、閉じたフタと便座の間から、長い髪がゾロリとはみ出ているのです。
友人も、それに気付きました。剛胆な友人は、私が止めるのも聞かず、便器のフタを開きました。
その中には、女の人の顔だけが上を向いて入っていました。
まるでお面のようなその女の人は、目だけを動かすと、竦んでいる友人を見、次に私を見ました。
わたしと視線が合った途端、女の人はまた口をぱっくりと開き、今度はハッキリと聞こえる甲高い声で笑い始めました。
はははははは…ははははははは…。
笑い声にあわせて、女の人の顔がゼンマイ仕掛けのように小刻みに震え、
はみ出た黒髪がぞぞぞぞっ…っと便器の中に引き込まれました。
顔を引きつらせた友人は、叩きつけるように便器のフタを閉じました。
そしてそのまま片手でフタを押さえ、もう片方の手で水洗のレバーをひねりました。
耳障りな笑い声が、水の流れる音と、無理矢理飲み込もうとする吸引音にかき消されました。
その後は無我夢中だったせいか、よく覚えていません。気が付くと、簡単な着替えと貴重品だけを持って、
私と友人は友人の部屋の前にいました。部屋に入った友人は、まず最初にトイレと浴槽のフタを開き、「絶対に閉じないでね」と言いました。
翌日の早朝、嫌がる友人に頼み込んでもう一度付き添ってもらい、自分の部屋へ戻りました。
しかしそこにはもう何もありませんでした。それでも私はアパートを引き払い、実家に帰ることにしました。
通勤時間は長くなるなどと言っていられません。
今でもお風呂に入るときは母か妹が入っているタイミングを見計らって入るようにしています。
トイレのフタは、家族に了解をもらって、ずっと外したままにしてあります。
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