モバP「アイドルの卵」back

モバP「アイドルの卵」


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1:
【モバマスSS】です
短いです
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2:
 
 一人で目を覚ます朝。
 一人で身支度をして。
 一人でご飯を食べて。
 誰もいなくなる家を出て。
 仕事に行って、働いて。
 仕事を終えて、
 一人の家に帰る。
 一人でご飯を食べて。
 一人でお風呂に入って。
 一人でテレビを見て。
 一人で布団に入って。
 一人で眠って。
3:
 これって、もしかして。
 ああ、一人って寂しいんだ。
 気付いてしまった。
 気付かなければやり過ごせたのだけれど。
 気付いてしまうと寂しくて。
「アイドルの卵は、いかがですか?」
 はい? と立ち止まり尋ねたのは、一人の家に帰る途中。
4:
「お譲りしますよ、お金はいりません」
 アイドルの卵? と聞き返す。
「はい、アイドルの卵です」
 寂しさが紛れそうだと思った。
 そう思ったら、欲しくなった。
 欲しくなったから、財布を取り出す。
「ですから、お金はいりません」
 しかし。
5:
「成長して、要らなくなったら連絡してください。引き取りますよ」
 そんな無責任な。
「それを無責任だと感じる人だからこそ、お譲りできるんです」
 そういうものなのか、と不思議に腑に落ちる。
「では、この袋の中に卵と説明書がありますから」
 丁寧に受け取ると、存外に軽い。いや、重さがないと言った方が正しいのか。
「それでは、また」
6:
 そして一人で家に帰る。
 今夜は卵と一緒に。
 一人でご飯を食べる前に、卵を布団の中に入れる。
 一人でお風呂に入る前に、卵の様子を見る。
 一人でテレビを見ていても、卵の様子が気になる。
 
 一人で布団に……
 ああ、布団の中には卵がいるじゃないか。
 そうだ。今日はコタツで寝てしまおう。
 それがいい。
 目を覚ますと、一人でないことに気付く。
7:
「にょわ?」
「ボク、カワイイ?」
「ふーん」
 三人の小さな子。
 幼児体型の小ささではない。
 体型の比率は少女のそれを縮小したような存在。
 中の一人は他の二人に比べるとちょっぴり背が高いけれど。
 卵が孵ったのだと理解して、袋の中の説明書を確認する。
 昨夜の内に一応目は通していたのだけれど、現物を見ると不安になるのもまた仕方のないことで。
 一人は、嬉しそうににょわにょわ笑っている。
 一人は、褒めて欲しそうなドヤ顔で仁王立ち。
 一人は、「アンタが卵を孵したの? ふーん」とでも言いたげに見上げてくる。
 間違いないのは、三人ともとても愛らしいこと。
8:
 小さなアイドルを育てよう。
 四人で目を覚ます朝。
 三人に身支度をさせて。
 四人でご飯を食べて。
 三人に見送られて家を出て。
 仕事に行って、働いて。
 仕事を終えて、
 三人の待つ家に帰る。
9:
 
 四人でご飯を食べて。
 四人でお風呂に入って。
 四人でテレビを見て。
 四人でゲームをして。
 四人で布団に入って。
 三人に絵本を読んで。
 四人で眠って。
 とても忙しい日々。
 だけど楽しい日々。
10:
 
 小さいアイドルは小さいままで。
 いつまでも自分だけのアイドルで。
 過ぎていく忙しい日々。
 過ぎていく楽しい日々。
 だけどある日気付いてしまう。
 
 
11:
 テレビを見ている三人が、とても羨ましそうだった。
 テレビの向こうで唄っているアイドル。
 如月千早とか、天海春香とか、星井美希とか
 三人はとても眩しそうにアイドルを見ていた。
 それがとても寂しそうで。
 それがとても哀しそうで。
 それは憧れで、もしかすると諦めで。
 
 諦めさせているのは自分だと、気付きたくなくて。
 だけど、気付かずにはいられなくて。
 皆は、アイドルになりたいんだね。
 尋ねる声が泣いていた。
 
 応える声も、泣いていた。
12:
 
「こんにちは」
 泣き声が届いていたのだろう。
 訪れたのは、あの日卵をくれた人。
「モバPと申します」
 そうか。
 そうなのか。
 貴方がそうなのか。
 貴方がこの子達をアイドルに、本当のアイドルに。
 それなら、この子達をアイドルにしてください。
 この子達をあの世界に連れて行ってあげてください。
13:
 自分は寂しくてもいいんです。
 自分は一人でもいいんです。
 
 この子達が寂しくなければ。
 この子達がアイドルになれるなら。
 
 それで満足できます。
 
「そうですか、それでは」
 
 
 
 
 
 
 
 
14:
 
 
 
 一人で目を覚ます朝。
 一人で身支度をして。
 一人でご飯を食べて。
 誰もいなくなる家を出て。
 仕事に行って、働いて。
 仕事を終えて、
 一人の家に帰る。
15:
 一人でご飯を食べて。
 一人でお風呂に入って。
 一人でテレビを見て。
 そこにはあの子達がいた。
16:
 
「みんな、はぴはぴしてゆ?!」
「ボクは、カワイイですからね」
「残して行こうか、私たちの足跡」
 あの日々は夢じゃなかった。
 三人はきっとここにいた。
 ここに、四人でいた。
 あれは夢なんかじゃない。
 誰も知らない日々だったけれど。
 良かったね。
 アイドルになれて良かったね。
 貴女達は、とても輝いているから。
17:
 
 
 ああ、寂しいなぁ。
 あの子達にはもう会えないけれど。
 だけど……
 
 
 
 
 
18:
 
 
 
「また、会いましたね」
「新しい卵はいかがですか?」
 そして、日々が始まる。
19:
 
 以上お粗末様でした
 
 解釈は、ご自由に
20:

絵本みたい(小並感)
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