水銀燈は動かない『とある野薔薇の要望』back

水銀燈は動かない『とある野薔薇の要望』


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§深夜・桜田ジュンの部屋
ジュン「…zzZ」
真紅「ハァ…、ハァ…」ごそごそ
ジュン「…zzZ」
真紅「ゆ、許して頂戴ジュン。こんな事、人形が人間にする事として間違っている。
  でも私は、この内なる衝動…欲望の野獣を抑えられない」
ジュン「…zzZ」
真紅「最初はちょっと痛いかもだけど、決してジュンを悪いようにはしない。
  そのまま、そのまま良い子で眠っていてね。すぐ…、すぐに済むから。ハァ…ハァ…」
271 :以下、
真紅「ッッ!? す、水銀燈」ビクッ
水銀燈「ちょっと用事があったから来てみたんだけどぉ…、真紅にこんな趣味があったとはね」
真紅「いつの間に部屋の中に」
水銀燈「汚らわしいわねぇ真紅ぅ。契約相手が寝ている間に、その肉体で自分の欲望を満たしてしまうだなぁんて」
真紅「……」
水銀燈「仮にもアリスになった乙女がすることじゃないわぁ。お父様がこの事を知ったら、どうなることやら」
真紅「お、お願い! 誰にも言わないで頂戴! これは、これはほんの出来心で…」
水銀燈「出来心ぉ? ただの出来心で…寝ている人間の右の鼻の穴からピンセットで
  鼻毛を一心不乱に引き抜いては、隣の左の鼻の穴の中に移植していたっていうの?」
真紅「くっ! お願いだから! 何でもするから見逃して頂戴!
  この事がお父様どころか、ジュンや翠星石にばれただけでも私の桜田家での立場は危うい!」
水銀燈「うふふ、そうねぇ? 考えてあげないこともないわ。もちろんギブ&テイクで」
真紅「……」
272 :以下、
真紅「あなたが私に頼み事だなんて珍しいわね」
水銀燈「めぐをしばらく預かってほしい」
真紅「?」
水銀燈「少しの間だけど、めぐの傍を離れてnのフィールドを行動したいのよ」
真紅「勝手にすればいいじゃない。わざわざマスターを私に預ける必要があるの?」
水銀燈「あの子を一人だけにしておくと、すぐフラフラとどっか行っちゃうのよ。
  それに、nのフィールド内にはまだまだ危険な奴らも多い」
真紅「だとしても何故、私のところへ? 金糸雀や蒼星石にでも…」
水銀燈「金糸雀のところだと、私についてあること無いこと金糸雀がめぐに吹き込みかねない」
真紅「あー、なるほど。金糸雀って水銀燈の弱みをいっぱい握っているものね」
水銀燈「弱みじゃあないわよ。金糸雀が勝手にそう思っているだけ、でもそれを
  めぐにまで信じこまさせられたら迷惑。あと、蒼星石は薔薇屋敷の皆と温泉旅行に行ってて不在」
真紅「…白薔薇は?」
水銀燈「あの子、改心したとはいえ危険すぎるでしょ。前科ありまくりよ」
真紅「そうよねぇ。まあ、私は構わない。マスターの一人や二人増えたところで何の問題もない」
水銀燈「今回は素直に礼を言うわ、ありがと。じゃ、渡したからね」
真紅「渡した…?」
273 :以下、
めぐ「…zzZ」
真紅「なっ!? いつの間にかジュンの隣に、めぐが寝かされている!?」
水銀燈「眠らせて連れてきていたのよ」
真紅「だとしても、ジュンの隣に寝かせるだなんて」
水銀燈「別に問題ないでしょ。めぐは幽霊だし、そこの冴えないメガネに何かできるとでも?」
真紅「そういうことじゃあないわ。これだと、めぐが邪魔でジュンの鼻毛移植ゲームができない!」
水銀燈「……」
真紅「くっ、こうなったら…」
水銀燈「めぐの鼻毛に手を出したら、ボコボコにするわよ、真紅」
真紅「そ、そんなことするわけないじゃない! それよりも水銀燈…
  一人でnのフィールドで行動したいだなんて、一体何をするつもり?」
水銀燈「……」
274 :以下、
真紅「!?」
水銀燈「勘違いおしでないわよ。会うだけ、争うつもりは無い」
真紅「けど、その野薔薇って何者?」
水銀燈「知らなぁい。私も今回、初めて会う個体。向こうからメイメイにコンタクトを取ってきた」
真紅「相手の目的は? あなた一人で会いに行って危険なんじゃ?」
水銀燈「野薔薇の目的は会話よ。向こうも争うつもりだなんて毛頭ない、多分」
真紅「信じられるの?」
水銀燈「野薔薇にとってみれば、私達は誰でもアリス級の存在。
  私達だって、アリスが実在しているのならば会って話ぐらいしたいと思うでしょ?」
真紅「あなたの目の前に実在しているじゃない、見事アリスになった超真紅様が」ピョンピョン
水銀燈「それに、たとえ向こうが争うつもりだとしても私が遅れを取るはずない」
真紅「ちょっと! アイアムアリスよ! その件を華麗にスルーしないで!」
水銀燈「…アリスゲームを真紅が制覇したのは認める。
  けど、イマイチあんたにはアリスの品格ってのを感じないのよねぇ」
真紅「うぬぬ…。けど、少しこれで合点がいったわ。わざわざ、めぐを連れてきたのも
  唯一の弱点となるマスターを私に預けるためだったのね」
水銀燈「じゃ、弱点ッ? 私に弱点なんて…」
真紅「あら、違う?」
水銀燈「…ともかく、相手は私一人だけを指定している。その希望を破って
  こっちがゾロゾロと出向いたりしちゃあ、おちおち会話にもなりゃしない。
  そろそろ出発しないと、待ち合わせの時間にも遅れるから、もう行くわ」
真紅「水銀燈…」
水銀燈「万が一にも何かアクシデントが起きたら、メイメイを飛ばす」
真紅「……」
水銀燈「その時は、後を頼んだわよぉ真紅」バササッ
真紅「『後を頼む』…ね。アリスゲームをやっていた時には天地がひっくり返っても水銀燈からは聞けない言葉だわ…」
275 :以下、
隊員A「隊長ぉ?、もう充分でしょう?! 帰りましょうよ?東果重工の本社にーっ!」
隊員B「男の癖にだらしのない。まだ、仕事は始まったばかりだろう」
小隊長「その通り。それに、あんまり早く帰っても、どうせ本社の白襟達にまた嫌味を言われるのがオチだ」
隊員A「そんなこと言ったってですね、海岸のゴミ拾いを仕事でさせられるなんて間違ってやいませんか。
  罰ゲームですよ、これじゃあ! 俺らが何か悪いことでもしたっちゅーんですか!」
隊員B「自覚が無いのか貴様。僕達は前回の任務を失敗して…」
隊員A「前回の任務はハードル高すぎだって! 桜田ジュンの心の樹を確保しろだぞ!
  ローゼンメイデンや庭師連盟の十人兄弟クラスが守っている、それを俺達三人だけで!
  いくら黒襟の絶対数が少ないからってさ! そもそも無理ゲーだったんですよ! 無理ゲー!」
小隊長「そう言うな。本社のお偉方もそこは一応分かっている。だから…考えようによっては
  任務失敗したのに、ゴミ拾い程度で済んでいるとも受け取ることができる」
隊員B「確かに。僕達は何かの人体実験やらの被験体に回されても、おかしくなかった」
隊員A「嘘だろぉ! ああっ、やっぱ東果重工って超絶ブラック企業じゃねーか。
  俺みたいな馬鹿でも衣食住に困らないって誘われたから、おかしいとは思っていたが…」
276 :以下、
隊員A「んだと、コラ! だったらお利口さんのお前は何を好き好んで東果に…!?」
隊員B「僕は東果重工で生まれた。他に行くところなんて最初から無かった」
隊員A「っ!? それって…?」
小隊長「東果重工の社員の中にはそういう奴も結構いるってことだ」
隊員A「わ、悪いことを聞いちまったかな」
隊員B「別に。これでもそれなりに気に入ってるんだ、この生活を」
隊員A「…そうか。ところで隊長はどういう経緯で東果重工に?」
小隊長「俺もお前と同じで採用担当の甘言に騙されたクチだよ。
  あと、先に言っておくが東果重工は社内規定で転職活動を禁じているからな」
隊員A「ええぇっ!?」
小隊長「それと、いい加減に口だけでなく手も動かせ」
隊員A「あ、はい!」
隊員B「しかし、ゴミの多いところですね。ここ一帯は渡し守の管轄でしょう?
  彼らにとっても大切なメメントリオン養殖場なのに付近の清掃を怠っているのですか?」
小隊長「俺達のために、しばらく掃除をしていなかったんだとよ。
  わざわざ東果重工と渡し守の集いの上層部との間で、そう取り決めがあったらしい」
隊員A「なんですか、そりゃ。どうでもいいところで、とんでもない協調性を発揮しやがって」
小隊長「雨降って地固まるとは言わんが、桜田ジュンの心の樹の攻防戦で
  東果と渡し守達との関係は良好に向かっているらしい」
隊員A「はぁ?…」
277 :以下、
小隊長「うん? そうか。掃除屋は結構長くやらされていたからな。
  俺も嫌いじゃなかったし。慣れてくるとなかなか面白いぞ」
隊員A「本当ですか?」
小隊長「それに色んなところの掃除にも行かされたもんだ。軍艦(※1)だったり、星幽祭(※2)だったり」
隊員B「へえ…」
※1 薔薇乙女のうた『ある野薔薇とワタハミの樹』
※2 桜田ジュンの良能『星の幽けきは愛』
278 :以下、
  そのせいで未だに俺は本社では死神呼ばわり…」
隊員A「け、けど隊長! 『掃除屋』とか『死神』とかの異名ってカッケーすよ」
隊員B「フォローになってない」
隊員A「うっ! じゃあ話題を変えましょう隊長! 今まで一番きつい掃除って何でした?」
隊員B「あまり変わってないぞ話題」
小隊長「きつかった掃除…?」
隊員A「え、ええ! やっぱり薔薇乙女絡みの事件だったりします…?」
小隊長「そうかもな。けど、どちらかと言えば俺の自業自得かもしれん」
隊員B「どういうことです?」
小隊長「さっきも少し話したが、東果重工で禁じられている転職活動を俺はやってしまったことがある」
隊員A「えっ!?」
隊員B「何に転職しようとしたんです?」
小隊長「第五真紅丸の副船長だ。ちょうど求人広告を見てな(※)」
隊員A「がっつり薔薇乙女絡みじゃないっすか」
※真紅の求人広告
279 :以下、
  同じく副船長希望の金糸雀が緊張を紛らわすためなのか、やたらベラベラと喋りかけてきて、うるさかったが」
隊員B「ローゼンメイデンの中でも、金糸雀とは妙に縁がありますね隊長は」
小隊長「ああ、軍艦の自爆スイッチ押したのも金糸雀、星幽祭で暴走エデンギアに乗ってたのも金糸雀…」
隊員A「ま、まあ、それはそれとして! 転職活動の話の続きの方を」
小隊長「ん、ああ、そうだったな。残念ながら副船長職には落ちたが、それ自体は結果として
  良かったのかもしれん。今現在の時点で、第五真紅丸の副船長って殉職率130%だから」
隊員A「ブラックってレベルじゃねーッすよ、それ!」
隊員B「何故100%を超えて…?」
小隊長「副船長のうちの一人は一度、瀕死になったあと
  第二次ロゼリオン抗争時に復活させられ、真紅と戦わされて死んだそうだ」
隊員B「えげつない…」
※第五真紅丸副船長の歴史
初代副船長 さかなクンJr. ⇒ 寿命で死亡。その後、真紅達に食べられる。
二代目副船長 パウルくん ⇒ オオウナギと戦って実質、死亡。その後、復活するも真紅と戦わされ死亡。
三代目副船長 青島 ⇒ 紆余曲折を経て解雇されるも、その直後に本名のダニエルで再雇用される。
四台目副船長 ダニエル ⇒ ギョージ・サーカナー三世(さかなクンJr.の息子)の攻撃から真紅を庇って死亡。
280 :以下、
隊員A「そ、それでどうなったんですか?」
小隊長「ペナルティで三番星幽炉の解体清掃だよ。しかも、それを全部一人で終わらせるまで帰ってくるなって」
隊員A「三番星幽炉!? 廃炉になっていたあれを…(※)」
※ゴルゴ14になった蒼星石
281 :以下、
小隊長「清掃用エデンギアの試作型とかの重機は現場に置いてあったから
  一人でも何とかなったけど、いやー、あれはきつかった、マジで」
隊員A「何かもう掃除ってレベルじゃないですよね、それ」
小隊長「お前も転職活動は気をつけろよ。バレたらただじゃ済まん」
隊員A「…ですね。こんな静かな海岸の清掃でもひいひい言ってるのに」
隊員B「そもそも手数が少なすぎるんだ。ダメもとで、うちの小隊の増員要請でも出しませんか? 隊長?」
小隊長「本当にダメもとになるけどな。本社の方針は第三世代ロゼリオンの量産ラインの実現化だ。
  こっちにまで人員を回す余裕が無い」
隊員A「矛盾してますよ、それぇ! 第三世代ロゼリオンの量産計画のために
  俺達だって色んな任務やらに着いていたんですよ! こういう現場にこそ人員をですね…」
隊員B「馬鹿なお前にも分かることが、偉くなると分からなくなってしまうものさ」
隊員A「むむ…」
小隊長「末端構成員の嘆きってやつかね」
282 :以下、
隊員A「お前って本当に唐突に失礼な事を聞くよな」
隊員B「貴様に言われたくはない。しかし、隊長は…」
小隊長「確かに、お前の言うとおりだ。わりと仕事上のミスも多かった上に、ローゼンメイデンに一方ならぬ
  怨念を抱いている俺は第三世代ロゼリオンの素体として有望…。本社も勿論そう考えたことは何度かある」
隊員A「だったら…」
小隊長「しかし、俺はロゼリオンにはなれない」
隊員B「どうしてです?」
小隊長「俺は三番星幽炉の解体清掃時に、建材として使われていたサクラダイトの微粉末を
  大量に吸ってしまっているからだ。サクラダイトは野薔薇と素体を繋ぐメメントリオン細胞を拒絶する」
隊員B「!」
隊員A「そうだったんですか…」
小隊長「これも考えようによっちゃあ悪いことでもない。ロゼリオンになっても明るい未来は無いからな。
  それに俺はできることなら…、自分は自分のままで強くなりたいんだよ」
隊員B「確かに。いいこと言いますね隊長」
隊員A「パンパンになったゴミ袋を握り締めながらでなければ、さらに良かったんですけどね」
283 :以下、
  最後に養殖場の詰め所の渡し守に挨拶でもして帰るか」
隊員A「やった! 詰め所でお菓子とか出してくれないっすかね」
小隊長「そうだといいけどな…ッ!?」ピーピー
隊員B「隊長?」
小隊長「本社から俺の携帯にコールだ」
隊員A「あ、ようやくウチの隊にも支給されたんですか携帯電話」
小隊長「はい、もしもし! こちら掃除係…」
隊員A「なんだろうね? ここでまた別の場所の掃除に行けってのは勘弁してほしいよ」
隊員B「同感」
284 :以下、
野薔薇「来てくれましたか。時間通りに」
水銀燈「淑女は時間に正確じゃないとね」
野薔薇「……」
水銀燈「会って話したいと言ってきたのは、そちらの方だけど…
  この挨拶でもう用件が済んだってのなら、私はもう帰ってもいいかしら」
野薔薇「欲しい物があります」
水銀燈「素直ね。言いたいことをはっきり言う子は好きよ。で、何が欲しいの?」
野薔薇「ローザミスティカ」
水銀燈「あ、そう…。なぁんだ、結局はそういうこと。
  話がしたいだなんて言うから来てあげたのに、とどのつまり私のミスティカを狙って…!」
285 :以下、
水銀燈「どういう意味?」
野薔薇「ローザミスティカに限りなく近いモゾーミスティカを作れる者があなた達のマスターの中にいると聞きました」
水銀燈「誰から?」
野薔薇「それは言えません」
水銀燈「ふんっ。十中八九、ウサギの顔をした足長おじさんってとこでしょうけどね」
野薔薇「……」
水銀燈「で、モゾーミスティカなんて手に入れて何がしたいの?」
野薔薇「私の命にしたい」
水銀燈「寝ぼけてるの? 模造品は所詮、模造品…」
野薔薇「しかし私もいわば薔薇乙女の模造品。模造品同士、馴染む可能性は高い」
水銀燈「高い…ね。何を基準にしての可能性なんだか。けれど、それなりに筋は通っているか。
  ただ、今のあんたを見る限り、動作に不都合があるようには見えないけど?」
野薔薇「……」
286 :以下、
  ミスティカが無くても、やたらと強い野薔薇だっている」
野薔薇「薔薇水晶のことですか?」
水銀燈「彼女と面識が?」
野薔薇「いえ、風の噂で。単純な戦闘力だけでなら本家ローゼンメイデンを超える最強の野薔薇」
水銀燈「……」
野薔薇「私もそうであれば良かったのですが、私は核(ミスティカ)を必要とする人形です」
水銀燈「…?」
野薔薇「隠すつもりではなかったのですが、私は今、自分本来の核(ミスティカ)を失っています」
水銀燈「はぁ!? じゃあ、どうして今もそんなに平気な顔で…?」
野薔薇「私にはサブミスティカという補助電源のような物をも備えられています。
  これのお陰で緊急時にはメインミスティカ無しでも行動できる。勿論、時間制限つきですが」
水銀燈「あらまあ、それは私達よりも便利な機能ね。そしてようやくあんたの事情も飲み込めてきた。
  失ったメインミスティカの代わりとしてモゾーミスティカを手に入れたいというわけね」
野薔薇「はい」
287 :以下、
野薔薇「東果重工に奪われました」
水銀燈「…野薔薇狩りにあったのね」
野薔薇「はい。しかし彼らは私のサブミスティカ機能までは気付かなかった。
  メインミスティカは第三世代ロゼリオン用の野茨の聖釘へと加工されるために抜かれ
  残った私のボディは第一世代ロゼリオン用のパーツへと流用されるところでしたが
  すんでのところで再起動した私は東果の研究所を脱走したのです」
水銀燈「ちっ、奴ら本当に全然懲りずに…」
野薔薇「私も頭にきていましたので、脱走時にその研究所と隣の工場の自爆ボタンを押してやりました」
水銀燈「さらっと言ってのけてるけど、あんたも結構なヤンチャねぇ」
野薔薇「けれども、そのせいで私本来のミスティカも爆破で完全に破壊されたと思われます」
水銀燈「なるほど。もう一つ興味本位で聞くけど、あんた自身の延命のためには
  モゾーミスティカだけがその答えではないはずでしょう? むしろもっと可能性の高い方法が…」
288 :以下、
水銀燈「ええ。生きた野薔薇が生きたメメントリオンを摂取すれば、第二世代のロゼリオンとして生きていける。
  あの薔薇水晶だって、目的は別として、この方法でロゼリオン化しているのよ?」
野薔薇「薔薇水晶のロゼリオン化は既に解除されているとも聞きましたが」
水銀燈「っ!?」
野薔薇「サクラダイトでロゼリオン化を解除できることは、最早ほぼ公知の技術」
水銀燈「…確かに。その件に関しては私がただ薔薇水晶の現状を知らなかっただけのようね。
  あの子、自分のことはあまり喋らないから」
野薔薇「メメントリオンを迎え入れる手段を私が採らないのは、解除薬の存在もありますが
  それ以上に私は単に、ロゼリオンになりたくないと考えています」
水銀燈「何故?」
野薔薇「私は私のままで強く生きていきたい」
水銀燈「今までの会話で一番説得力のある理由だわ。しかし、相談する相手を間違えたわねぇ?
  私はモゾーミスティカを作れる奴とは仲が良いわけじゃあない」
野薔薇「……」
水銀燈「ま、そいつにあんたを紹介してあげるから。そこでもう一度、今の話をすればいい。
  あいつはとんだ甘ちゃんだし、あんたの身の上を知れば二つ返事でオーケーよ」
野薔薇「私にここまで親切にしてくれるあなたも相当に甘いと思いますが…。
  水銀燈といえば薔薇乙女の中でも最も冷徹かつ凶悪であると聞いていました」
水銀燈「…だったら、なんで最初に私を交渉相手に選んだのよ」
野薔薇「薔薇乙女の中で最も影響力のあるドールもあなたのはず」
水銀燈「ちっ」
289 :以下、
水銀燈「ッ!?」
野薔薇「!?」
隊員A「……」ザッ
隊員B「……」ザザッ
水銀燈「三人に囲まれている!? いつの間に? まさかあんた…!」
野薔薇「いえ。私にとってもこの事態は想定外。尾行はされていなかったと思うのですが…」
小隊長「確かに尾行はしていなかった。が、東果の情報網をなめるなよ」
隊員A(隊長ったら…。東果を脱走した野薔薇がここにいるって、匿名のタレコミが本社に送られただけなのに)
隊員B(そのせいで、たまたま近くにいた僕達が現場確認に向かわされたわけだが…
  こいつはとんでもない事態だ。脱走した野薔薇だけでなく水銀燈までいるとは)
隊員A(水銀燈って、金糸雀のさらに上の姉だろ? 金糸雀相手にすら手を焼いていた
  俺達の小隊じゃあ、どうにもならんぜ! 隊長だって、少しテンパって…)
小隊長(やばい! 勢いで動くなとか言ったけど、この後どうするよ俺ェ!
  捕まえる? 俺達三人で脱走した野薔薇を? 水銀燈もいるのに!?)
290 :以下、
野薔薇「え?」
小隊長「!!」
水銀燈「奴らの狙いはあんたの方でしょ? 薔薇乙女を捕らえるつもりなら三人ってのは少なすぎる。
  他に隠れている奴らもいないようだし。私までここにいたってのは恐らく彼らの想定外」
隊員A(見抜かれてる! やっぱ金糸雀より頭いいぞ、こいつ)
隊員B「ま、待て! 動くなと言ったはずだぞ!」
水銀燈「そうね。けど、今度命令するのは私の方よ。あんた達は動かないで」ギンッ
小隊長「ぐっ!?」ビクッ
隊員A「うっ!」
隊員B「射竦められた…っ! 一睨みだけで?」
水銀燈「そうそう。動かないでいてくれれば、手荒な真似はしないわよぉ?」
隊員A「そんな…! この威圧感、長姉とはいえ金糸雀と同じ薔薇乙女なのか」
隊員B「格が違う。今まで見たどのドールとも」
野薔薇(こちらが水銀燈の本性なのか? それとも…)
水銀燈「今日は邪魔が入った。野薔薇、今の話の件は日を改めることにしましょ」
野薔薇「はい。それでは、また後日。私にもまだそれぐらいの時間は残されてますので」ザザッ
隊員A「ああっ! 野薔薇が逃げた!」
隊員B「隊長…!」
小隊長「駄目だ。追うんじゃないぞ、お前達」
291 :以下、
小隊長「……」
水銀燈「いつかの掃除屋じゃないの。何? 今は隊長なんてやってるんだぁ? ふーん」ジロジロ
小隊長「……」
水銀燈「時間の流れは皆に平等ってところかしらねぇ。人間でも人形でも変わっていく…」
小隊長「?」
水銀燈「今日の私は機嫌が悪くない。それに動かないでという約束も守ってくれたし、見逃してあげるわ」バササッ
隊員A「ああっ! 水銀燈まで行ってしまって…」
隊員B「情けない、僕達は何もできずに」
小隊長「仕方ない。相手が悪すぎた。水銀燈を怒らせなかっただけでも上等だ」
隊員B「そんな後ろ向きな…」
小隊長「いやいや本当だって。第一次ロゼリオン抗争の引き金は水銀燈を怒らせたことだからな」
隊員A「マジですか」
292 :以下、
ジュン「…zzZ」
真紅「ほらほら、今ならジュンも気付かないから、やってみなさいよ」
めぐ「本当? 私、初めてなんだけど上手くできるかなぁ」
真紅「何事も経験よ。さあ…」
めぐ「こ、こう?」
真紅「もう少し右よ。そして、もっと深く入れなくちゃ」
めぐ「で、でも…ちょっと怖いわ真紅ちゃん」
真紅「最初だけよ、さあ思い切って」
めぐ「うん…」
真紅「どう? どんな感じ?」
めぐ「す、凄い。こんなに奥まで入っていく…」
真紅「ふふふ、いい気持ちでしょう?」
293 :以下、
真紅「っ!?」
めぐ「きゃああっ!?」ズグッッ
ジュン「うぐああっ!? な、なんじゃこりゃぁあああああーーーっ!」ドブシュー
めぐ「やだ! ピンセットがジュン君の鼻の血管を!?」
水銀燈「し?ん?く?っ!?」
真紅「どどど、どうしたのよ水銀燈!? 前置き長かったわりには、随分お早いお帰りで?」
水銀燈「どうもこうもないわよ! 何で、めぐまで変な遊びに巻き込んで…っ!?」
真紅「だ、だって彼女が暇だって言うから…」
水銀燈「ええい、まったくもう! 曲がりなりにもアリスになったんでしょう!?
  少しはアリスとして自覚と淑やかさを持って、自分を変えていこうとは思わないの!?」
真紅「必要ない。私は私のままでアリスへと到ったのだから」キリッ
水銀燈「ああもう! あんたがそれを言うとただの言い訳にしか聞こえないわよ!」ワーワー
真紅「何よ!」ギャーギャー
めぐ「どどど、どうしようジュン君? 二人が喧嘩を…、止めてあげて!」
ジュン「ひとまず、そこのティッシュ取って柿崎さん。喧嘩より先に僕の鼻血を止めたい」ドクドク
水銀燈は動かない『とある野薔薇の要望』 完
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- 「ねぇ、ローゼン。貴方にとって究極の少女ってどんなもの?」
- 真紅、少し優しくなる。
2014/03/13(木) 13:15:16コメント(10)ユーザータグ ローゼンメイデン -->
コメント
※109003 :-:2014/03/13(木) 14:09:58SLPYお得意の未来への自分のパスが出た!
とりあえずシンクミスティカの正式名称はモゾーミスティカで決定したみたいだな※109005 :-:2014/03/13(木) 14:40:23小隊長がロゼリオン化しなかったのはそういうことか
金糸雀の差し入れ喉に詰まらせてたから恨みは消えてないと思ってたけど※109006 :-:2014/03/13(木) 14:43:55モゾーミスティカをモリゾーミスティカと空目したのは俺だけだな、きっと※109008 :-:2014/03/13(木) 15:03:44よかった、貧乏くじを引いている掃除屋が無事で。
今回銀ちゃんが嬉しそうで何よりです。※109012 :-:2014/03/13(木) 16:48:44冒頭でまた鼻毛かな?と思ったらやっぱり鼻毛だった。
今回の野薔薇に名前が欲しいな。※109013 :-:2014/03/13(木) 17:24:08寝ている男子中学生の鼻毛を抜くアリスの人って・・・※109015 :-:2014/03/13(木) 17:57:56めぐが同衾するという事態にベタベタな期待をしたが、そんなことはなかったぜ…
ジュンが目覚めて驚愕し、めぐが一瞬で事態を理解しジュンをいじる とか。
アリスになっても方向性が全くブレない真紅が一緒じゃ、なぁ…※109017 :-:2014/03/13(木) 18:24:00エロ…い…のか…?
これもうわかんねぇな
ところで掃除屋さんに平和は訪れるのだろうか※109038 :-:2014/03/13(木) 22:19:13動かないのは真紅の方じゃ・・・
ところでタレコミしたのは誰なんだろうか?
今後の伏線になるのかな※109042 : :2014/03/13(木) 23:25:26早前回のミスティカ騒動が今後の中核に…
ロゼリオンの時以上に各勢力から狙われそうだなローゼンマイスター
自分のまま強くなりたいが三者三様で出て来たが、真紅だけは何かの間違いだと思いたいw
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【驚愕】女友達の π を後ろから鷲掴みした結果wwww

「日本政府は日本人を守ってほしい」・・米国で「慰安婦」像撤去求める訴訟起こした原告団が支援求める

踊る動物から音楽誕生の謎を探る

日系アメリカ人二世が語る、日系人強制収容所のこと。

オオカミ晩年だな

【画像あり】日本のゲームの北米版パッケージイラストを描いてる人ってさ

TVアニメ『Wake Up, Girls!』4月5日よりIBC岩手放送にて放送開始

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