男「妹は殺人罪で刑務所にいるよ」女「えっ」back

男「妹は殺人罪で刑務所にいるよ」女「えっ」


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1:
男「…………もう一度言おうか」
男「僕の妹は人を殺した」
男「今まで隠しててごめん」
女「…………どういう……?」
男「……今から言うこと、他人には話さないで欲しい」
男「妹や、僕の家族のこと。全部聞いたうえで考えてほしいんだ」
男「僕との結婚を」
女「…………」
元スレ
男「妹は殺人罪で刑務所にいるよ」女「えっ」
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2:
女「…………」
男「もう僕らも28歳。結婚を考えるのか、考えないのかはちゃんと決めておかないとだろ?」
女「そう……ですね」
男「…………ちょうど、10年前のことだ」ガサゴソ
女「……、それは?」
男「この瓶は……僕が、あの事件を忘れないためにいつも持ってるもの……」
男「僕の妹……って言うのは、父さんの再婚相手の連れ子でね……」
3:
***
男(18)「今日から大学生だよ」
妹(15)「気持ち悪いから、朝から話しかけてこないでって言ってるじゃん」
男「ごめん……」
妹「はぁ……高校と大学方向同じだから電車も同じとか最悪」
男「……ははは、朝ごはん食べて早く行こう」
4:
***
ガタンガタンガタン
男「(妹ちゃんと同じ時間に家を出て、同じ道を通って、同じホームで電車を待って)」
妹「…………」
男「…………」
男「(妹ちゃんと同じ車両に乗っている……けど)」
男「(…………)」
男「(すごく距離があるなあ)」
妹「…………」ポチポチ
男「(ずっと携帯いじってて全然、僕と目が合わないし)」
男「(はぁ、昔はもっと仲良くて一緒に遊びに行ったりとかしたのになあ)」
5:
***
男「大学生活楽しめそうだなあ!よかった」
男「一日目でいきなり友達できちゃったし、明日さっそくみんなで遊びに行けるなんて!」
僕はとても大学生活をぞんぶんに楽しんだ。
毎日の学校の往復での妹ちゃんとの距離は変わらなかったけど。
それから数か月……
6:
***
母「できたわね」
妹「うん」
男「ただいまー」
母「あら、おかえりなさい」
妹「…………」
男「あれ、なんかすごい荷物だね」
母「ええ、妹ちゃん明日学校に色々持っていかなきゃいけなくってね」
男「ああ、なるほどー」
男「でもそれ重すぎない?もしよかったら明日僕が電車一緒のところまで持っていくよ」
母「妹ちゃん、どう?」
妹「…………気持ち悪いから私のに触らないで」
男「あ……ははは」
7:
***
翌日
男「(やっぱり今日も二人で黙って同じ道を距離置いて歩くんだよね)」
妹「…………っ」
男「(重そうだなあ)」
男「(手袋したら荷物持たせてくれるかな)」
男「(あれ、こっち向いた)」
妹「ねえ」
男「荷物、持とうか!」
妹「そうじゃなくて」
男「あ、あ……あー……うん」
妹「同じ空間にいると気持ち悪くなるから私より後の電車に乗って」
男「え……」
妹「いいでしょ?」
男「う……うん……」
8:
***
男「あーあー……欠席ゼロだったのに……」
友「まあ仕方ないんじゃねえの?電車一本逃したんだろ?」
男「うん……」
友「んで、お前今日はもちろん飲み会行くよな?」
男「あー……」
母『今日はおいしいもの食べるから早く帰ってきてね!』
男「ごめん!ちょっと家族で用事あるんだ」
友「まじかー、んじゃ仕方ねえわな」
男「うん、また誘ってね」
9:
***
男「ただいま!」
母「っ!」
妹「…………」
男「どうしたの?」
母「いえ、なんでもないのよ。おかえりなさい」
男「今日はごはん何?」
母「お肉よ!」
男「やったー!……ってあれ、お肉これ足りる?」
母「あー……確かに足りないかも……買ってきてくれる?」
男「うん、わかった」
母「ごめんねえ、帰ってきたばっかりなのに」
男「いいっていいって」
10:
***
数か月後
男「(大学に入ってから半年が経ったけど……妹ちゃんは増々強く当たってくるようになったな……)」
男「はぁ」
友「どうしたんだよ?」
男「いやあ、ね。妹が最近、冷たくてさ……」
友「ははは、反抗期かなんかじゃねえの?父さんいないんだろ?」
友「お前を父さん代わりに反抗してんのかも」
男「うん、ただの反抗期だといいんだけどね」
11:
友「本当にお前シスコンだよなあ」
男「あーもうやめてやめて!」
友「まあでもわかるけどな。俺もあんな可愛い義妹がいたら好きになるわ」
男「でしょ?」
友「ああ、それにお前のお母さんも綺麗だよな」
男「うん、妹ちゃんお義母さん似なんだ」
男「お父さんが死んじゃってから二人はずっと僕を実の家族みたいに扱ってくれて……」
友「まあだからこそ妹ちゃんはそうなったんじゃないか?高1だろ?」
男「うん……」
12:
***
男「ごちそうさま」
母「えらく疲れてるわね?」
男「うん、ちょっとバイトがきつくってね」
母「まったく、遊ぶお金のためにバイトで倒れちゃ元も子もないわよ?」
男「はーい」
母「それに、山登りもまだやってるんでしょ?」
男「ワンダーフォーゲル、だよ」
母「そうそう、それよ。いかにも疲れそうじゃない」
13:
母「あ、それから妹ちゃんは勉強に気合入れ過ぎよ?」
妹「…………うん」
母「ちょっと待ってね、疲れがとれるスープを作ってあげるわ」
男「もうお腹いっぱいだよ」
母「ちょっとだけだからちゃんと飲みなさい」
男「はーい……」
14:
***
男「はぁ、お腹いっぱいで眠くなったや」
男「はやくお風呂入って寝よう……」
妹「ねぇ」
男「ん?何?」
妹「私、今日まだ風呂入ってないから」
男「あーうん、すぐ上がるからちょっとだけ待ってくれない?」
妹「はぁ……」
妹「…………気持ち悪いから私より先に入らないで」
妹「今日は長くなるから諦めて明日入れば」ガチャ
男「あ……」
15:
***
友「おいおい、それで本当に風呂入らなかったのかよ」
男「うん、でもショックでかやたらとぐっすり眠れた……」
友「まあ、妹ちゃんお父さんいなくて甘えたり反抗したりすることができず育ったわけだし」
友「今はドーンと受け止めてやれよ」
男「う、うん」
16:
***
男「ただいま」
母「おかえりなさい、ねえ、これ見て?」
男「え?これって、この近くの山の?」
母「そうそう、それでね。ネットのクチコミで見たんだけど」
母「こっちの道から入るのが普通じゃない?」
男「まあ道も整備されてるしまず迷わないだろうし……」
男「でも少し難易度が低すぎる気もするなあ」
母「そうなの。それでね、こっちの…柵のところから登るのが通らしいのよ」
男「へぇー!おもしろそうだね」
母「私、山登りはよくわからないけどあなたが好きだって言ってたから、調べてみたの」
男「ありがとう、お母さん!」
男「さっそく今度の休みに行ってみるよ」
17:
***
友「え、あの山に?」
男「うん、おもしろそうな道を見つけてね」
友「へえー、俺は山とか興味ないからわかんねえけどルートにも良い悪いとかあるんだな」
男「そうなんだよ」
男「あ、そうそう。この前借りた本、月曜日返すよ」
友「おお、そっかそっか。わかった」
18:
***
日曜日
男「よーし!今日は山登り行くぞー!」
男「いってきまーす!」
母「いってらっしゃい、気を付けるのよー」
妹「……私も友達の家に遊び行ってくる」
母「あら、友達の家?」
妹「何?」
母「あなたが友達と遊びに行くなんて珍しいから!」
母「よかったわ、私妹ちゃんに友達ができてないんじゃないかと思ってたの」
妹「はぁ……いるよ」
男「それじゃあ妹ちゃん一緒に行こうか」
妹「気持ち悪いから先に行って」
19:
***
男「ふう、結構乗り継いだなあ」
男「近くの山だとは言ってもやっぱり結構遠いからね」
男「それにしても、いい雰囲気だなあ」
男「上まで登ったらきっと気持ちいいんだろうね」
男「ワクワクしてきた。よし!」
男「じゃあさっそく例のポジションを探そう……」
20:
男「ここだなー……よしよし」
男「柵を登って……」prrrrr
男「え……電話?」
男「ったく、なんだってこんな時に…………って妹ちゃん!?」
21:
男「(珍しいな!なんだろう!頑張ってとかかな!いやそんなわけないか!)は
い」ガチャ
妹「あー……あのさ」
男「うん」
妹「今すぐ迎えに来て」
男「え?」
妹「家に帰るバスのためのお金落としちゃったから」
男「え?え?」
妹「すぐに駅に来てくれないとあの本捨てるからね」
男「えええええ!?!」
男「(あの本って友から借りた本だよね……)」
妹「じゃあ」ガチャ
男「…………」
22:
***
男「はぁ……結局行けなくてさ」
友「おいおい……流石にひどいな」
友「一回ガツンと言った方がいいかもしれないな」
男「うーん、それはちょっとできないかなあ」
友「シスコン」
男「ははは……」
男「あ、そうそうこれこれ。死守した本」スッ
友「おう、どうだった?」
男「女だとばかり思っていたけど実は男だったってわかったときなんて……もう絶望すら覚えたね」
友「ああ、でもちゃんと読み返してみたらちゃんと男なんだよな」
男「今度は別の貸してよ」
友「いいぜー」
23:
***
数週間後
ホテル
男「さて……今日は遠くの山だったけど頂上は気持ちよかったなあ」
男「車飛ばしてまで来た価値はあったよ」
男「この前の山に登ろうと思ったのに、『マナーの悪い人が増えたため登山禁止』になってたし」
男「あの時登れてたらなあ……」
24:
男「……今日は早く寝て明日はお土産買って帰ろう」
prrrr
男「あれ……?」
男「また妹ちゃんか……嫌な予感しかしない」
男「…………はい」
妹「……あの」
男「うん」
妹「ケガしたから、病院に連れて行ってほしいの」
男「……っ!?」
男「大丈夫!?すぐいくから、どこ?」
妹「家……階段から落ちちゃって」
男「母さんは!?」
妹「遊びに行ってる……」
男「わかった、すぐに行くから!じっとしてて!」
男「でもお母さんには電話して!あ、あと本当にだめだと思ったら救急車呼んで!」
25:
***
男「大丈夫!?どこ?」
妹「足……ここ」
男「青くなってる……!」
妹「ちょっと痛い」
男「車に乗せるから……その」
妹「何?」
男「触ってもいい?」
妹「ああ……うん」
26:
***
数か月後
男「妹ちゃん、治って良かった」
友「おお、そっかそっかもうそんな時期か」
男「何故か入院をかたくなに拒んで困ったよ」
友「なんか勉強のことになるとやたらと妹ちゃんは譲らないよなあ」
男「うん……入院すればひと月程度で治ったと思うんだけど」
友「俺が高校の時は何とかして学校休みたがったもんだがね」
27:
***
男「ただいまー……ってあれ?」
男「……誰もいない」
男「おなかすいたー」
男「?」
男「1人分の食材はあるのか、ふむふむ、今日はカレーだね」
男「よーし、そんじゃまあ自分で作るかなあっと」
28:
***
男「あとはルー入れるだけだなー」
妹「……」ガチャ
男「あ、おかえりなさい、妹ちゃん」
妹「……っ!」
男「何?」
妹「……」ガサゴソ
男「え?それって部活の絵具だよね?それをどうするつも……」
妹「……」ポチャン
男「あああああ!!!なんでカレーに入れてんの!?!?!」
29:
妹「お……お…お前のカレーなんか食べないから!!」ザッパア
妹「……」タッタッタ
男「…………え」
男「これ僕の……」
男「とどめにカレー全部捨てられてしまった……」
男「………………」
男「今日はもう寝よう………………」
男「はあ…………」
2:
***
友「おつかれー!」
男「うん、そんじゃみんなまたねー!」
男「あちゃー、結構時間立ってるよ」
男「飲み会はついつい遊んじゃうから困るねー……」
男「家に連絡入れたかったけど携帯の充電が切れちゃって困ったな」
男「まあ急いで帰ればいいかな……」
3:
***
まだ人のにぎわう最寄駅に着いた時、
なんだか最近開発の進んでいる駅前を歩いている時、
ギリギリ最後のバスに乗った時、独りで降りた時、
静かで冷たい地元の夜道を歩いている時、
僕は何か嫌な予感を感じていた。
鍵を閉め忘れたかもしれない、とかガス栓忘れたかも、とか。
そんなときの心境に似ていた。
運悪く携帯の充電が切れていたなんてことはよくあるし、
今までだって家に帰るのが少しくらい遅くなるなんてことはあったけど。
でも、それとは別の何か……シックスセンスなんてモノがあるとすればこういうのを言うのかもしれない。
その違和感は、坂道の途中にある少し大きな自分の家の近くまで来た頃に、確信へと変わることとなる。
4:
男「…………なんだこれ……」
家の周りには3台のパトカーが付けられ、人だかりができていた。
深夜の11時だ。
普通、パトカーが来ていてもこんな寒い日には面倒くさがって野次馬なんてしようとも思わない人が多いだろうに。
しかもそれが自分の家の目の前にあるのだから、不安に駆られるわけで。
男「……あ、あの」
警察A「はい?」
男「こ、この家の者なんですが……」
警察A「本当ですか!?ちょっと逃げないで待ってくださいね」
警察A「お兄さん見つかりました!」
警察B「本当か!?よし、すぐに連れていけ!」
男「あの、何があったんですか!」
警察B「何も知らないんだな……」
警察A「……ひとまず署に行こうね」
***
5:
***
男「………………」
警察C「もう一度言おうか」
警察C「妹さんが、君のお母さんを……殺害した」
6:
男「……………………」
男「……いや、いやいや……いくらなんでも……」
警察C「今は信じられないと思うけど……本当なんだ」
警察C「だから、色々聞かせてほしい」
男「…………はぁ……」
男「(いくらなんでも、妹ちゃんが人を殺すなんて……)」
男「(わからない、何が起こってるのか、わからない……)」
男「い、妹に会わせてください」
警察C「……うむ、……今は厳しいんだが……いいでしょう」
7:
***
男「……」
妹「……」
男「……妹ちゃん」
妹「…………お兄ちゃん」
男「……?」
8:
妹「本当は兄さんを殺すつもりだったんだけどね」
男「!」
妹「…………」
妹「兄さんを殺そうとしているのがお母さんにバレちゃったからさあ」
男「そんなっ……!」
妹「あ、あとで警察の人に見せてもらうと思うけど、毒とか入ってた瓶をお兄ちゃんの机に入れて、自殺に見せかけて殺そうとかもしてたの」
男「嘘……だ……」
妹「お母さんがいる時間、もっと念入りにチェックすればよかったわあ」
男「…………ッ」ダッ
妹「…………」
10:
***
****
*****
女「そんなことが……」
女「じゃあ、その瓶はその時の」
男「後からわかったことなんだけど、僕には変な保険がいっぱいかけられてたらしくて」
男「僕を殺して保険金を全部自分のものにしようとしたんじゃないかな……」
女「……」
11:
男「今まで大好きだった妹が、突然僕を殺そうとするなんてさ」
男「そんなの聞いたら女の人を信じるのも難しくなっちゃって」
女「私は……」
女「私は、それでもあなたが好きです」
女「男さんの家族のことは気にしてない……から」
男「……そっか、ありがとう」
12:
***
10年前
母「いいわね?妹ちゃん」
妹「うん」
母「あなた学費のためなのよ」
妹「(私、お兄ちゃんが死んじゃうくらいなら学校なんか行かなくていいよ)」
妹「わかってる……」
13:
母「とにかく、あなたは電車でこの荷物を男の上の棚に乗せるだけでいいから」
母「荷物の配置的に絶対上に置いたら落ちるようになってるわ」
母「あ、たまに忘れてるみたいだけど男には冷たく接すのよ」
妹「うん……」
14:
***
妹「(これで、障害保健が下りるから……って……そんな)」
妹「(……やっぱりお兄ちゃんを傷つけるなんてできない……)」
妹「ねえ」
男「荷物、持とうか!」
妹「そうじゃなくて」
男「あ、あ……あー……うん」
妹「同じ空間にいると気持ち悪くなるから私より後の電車に乗って」
妹「(ごめん、お兄ちゃん……)」
15:
***
男「ただいま!」
母「っ!」
母「(平然と帰ってきた……!?)」
妹「…………(これでいい……)」
16:
***
妹「何?」
母「あのね、悪いんだけどこの瓶を男の引き出しの奥の方に入れるのを頼みたいのよ」
妹「なんで?」
母「それに睡眠薬入れてるから、机に大事そうに入ってたら何かで死んでも警察は自殺だと思うでしょ」
妹「!!!」
妹「そ、それ……て」
母「うん……そろそろあの人の遺産も残り少なくなってきたからねえ」
母「殺そうと思うのよね」
17:
妹「(そんなっ、お兄ちゃんが……)」
妹「そ、そうなんだ」
母「何、びびってるのよ?あなたは私の子供なんだから、賢く生きるってことを教えてきたでしょ?」
妹「わかってる、賢い生き方……」
母「それじゃ、頼むわね」
妹「うん…………」
妹「(これは私が持っていよう……)」
18:
***
母「ちょっと待ってね、疲れがとれるスープを作ってあげるわ」
男「もうお腹いっぱいだよ」
母「ちょっとだけだからちゃんと飲みなさい」
母「(多めに睡眠薬を持って風呂に入れば……)」
母「(風呂で眠ってそのまま水死になる!)」
男「はーい……」
妹「(お母さん……!きっと睡眠薬入れるつもりだ……)」
妹「(極力、私が料理をするようにしてきたけどこれは避けられない!)」
19:
***
男「はぁ、お腹いっぱいで眠くなったや」
男「はやくお風呂入って寝よう……」
妹「ねぇ(お兄ちゃんを風呂に入れちゃだめだ……!)」
男「ん?何?」
妹「私、今日まだ風呂入ってないから」
男「あーうん、すぐ上がるからちょっとだけ待ってくれない?」
妹「はぁ……(こんな風に言うしか……ないよね)」
妹「…………気持ち悪いから私より先に入らないで」
妹「今日は長くなるから諦めて明日入れば」ガチャ
男「あ……」
妹「(ごめん、お兄ちゃん……本当にごめん)」
21:
***
母「ほら見て、妹ちゃん」
妹「ん?ネットの……危険な山紹介してるサイト?」
母「そうなのよ、男ってなんか山登るの好きじゃない?」
妹「うん」
母「そこに誘導すれば事故死させれるのよ!」
妹「(次から次へと……)」
妹「(せめてもの救いは私にいちいち全部話してくれること)」
妹「(私が絶対にお兄ちゃんを守るから……っ!)」
22:
***
妹「とりあえず、途中までお兄ちゃんをつけたのはいいけど」
妹「これ以上は電車代がないからついていけない……」
妹「なんとかしてお兄ちゃんに山を登らせないようにしないと……」
妹「……っ!そうだ……!」
23:
***
男「ここだなー……よしよし」
男「柵を登って……」prrrrr
男「え……電話?」
男「ったく、なんだってこんな時に…………って妹ちゃん!?」
男「(珍しいな!なんだろう!頑張ってとかかな!いやそんなわけないか!)はい」ガチャ
妹「あー……あのさ」
男「うん」
妹「今すぐ迎えに来て」
24:
男「え?」
妹「家に帰るバスのためのお金落としちゃったから(最初から遊んでないけど……)」
男「え?え?」
妹「すぐに駅に来てくれないとあの本捨てるからね」
男「えええええ!?!」
男「(あの本って友から借りた本だよね……)」
妹「(こうするしか思いつかなかった……最低な妹だ、私)」
妹「(結局、私はお母さんの血が流れてる娘でしかないってこと……か)」
***
25:
母「それじゃ、妹ちゃん行ってくるわ」
妹「う、うん……本当にやるの?」
母「ええ、アリバイはばっちり作ったから」
妹「……気を付けて…」
妹「(『男が泊まってるホテルを放火しに行く』って……冗談じゃないよ)」
妹「(お母さん、きっとだんだん頭が回らなくなってきてるんだ)」
妹「(お金欲しさにお兄ちゃんを殺せばそれでいいって思ってる……)」
妹「(今回もお兄ちゃんには帰ってきてもらおう……)」
妹「(でも、どうやって……?)」
妹「(お兄ちゃんはあれから部屋に鍵かけるようになったからモノで脅すのもできないし……)」
26:
***
ホテル
男「さて……今日は遠くの山だったけど頂上は気持ちよかったなあ」
男「車飛ばしてまで来た価値はあったよ」
男「この前の山に登ろうと思ったのに、『マナーの悪い人が増えたため登山禁止』になってたし」
男「あの時登れてたらなあ……」
男「……今日は早く寝て明日はお土産買って帰ろう」
prrrr
男「あれ……?」
男「また妹ちゃんか……嫌な予感しかしない」
27:
男「…………はい」
妹「……あの」
男「うん」
妹「ケガしたから、病院に連れて行ってほしいの」
男「……っ!?」
男「大丈夫!?すぐいくから、どこ?」
妹「家……階段から落ちちゃって」
男「母さんは!?」
妹「遊びに行ってる……」
男「わかった、すぐに行くから!じっとしてて!」
妹「(階段の上からジャンプして足の甲で着地したんだ……きっと折れてる)」
妹「(これで許して……お兄ちゃん)」
28:
***
男「大丈夫!?」
妹「うん……でも」
男「青くなってる……!」
妹「ちょっと痛い」
男「車に乗せるから……その」
妹「何?」
男「触ってもいい?」
妹「ああ……うん(お兄ちゃんにだっこされるの……ううん、触ってもらうのいつぶりだろ)」
妹「(…………お兄ちゃんとどこか遠くに逃げ出したい)」
29:
***
母「うーん」
妹「どうしたの?」
母「もうめんどくさいし、毒でも盛ってやるかなって」
妹「……」
母「私が出かけて、あらかじめ毒を塗っておいた野菜類とカレーの道具を出しておけば自分で作って自分で食べるんじゃないかしらねえ?」
妹「わ、わからないよ。だっていつも私が作ってるし、私を待つかも」
母「んじゃあ、あなたも遅く帰ってきなさいね」
妹「…………」
30:
***
妹「……」ガチャ
男「あ、おかえりなさい、妹ちゃん」グツグツ
妹「……っ!(あれってもしかして……!間に合った!)」
男「何?」
妹「……(ひとまず食べる気無くしてもらわないと)」ゴソゴソ
男「え?それって部活の絵具だよね?それをどうするつも……」
妹「……」ポチャン
男「あああああ!!!なんでカレーに入れてんの!?!?!」
31:
妹「(え、えっと、なんて言えば……!)」
妹「(間違えて?いや、違うでしょ。間違えるわけ……)」
妹「(ああ……そうか、私が悪くないなんて思ってもらおうとする時点でおかしいんだ)」
妹「(とことん悪役にならないと……それでお兄ちゃんが生きられるのなら)」
妹「お……お…お前のカレーなんか食べないから!!」ザッパア
妹「……」タッタッタ
男「…………え」
妹「(これでいい…………)」
32:
***
妹「(もう、完全に嫌われた……ね)」
妹「(最近話しかけてこないし)」
妹「(もう疲れちゃった……)」
母「ねえねえ」
妹「(もう守れないよ……お兄ちゃん)」
母「計算してみたらね、死に方によっては2億2000万円くらい出るみたいなのよね」
33:
妹「(何が賢い生き方よ……最低の……クズ人間……)」
母「それで、殺し代行みたいな人がいるらしくって」
妹「…………!?」
母「それが依頼料1億円と口止め2000万くらいらしいから、引いても1億円以上はおつりがくるのよ」
妹「(本気で……言ってるのか、この人は)」
母「だから、依頼しちゃおっかなーって」
妹「…………もう、無理」
母「え?」
34:
***
妹「もしもし」
妹「母を」
妹「殺しました」
妹「私が」
妹「包丁で」
妹「胸を」
妹「深く」
妹「突き刺して」
妹「逃げるので」
妹「追いかけて」
妹「何度も」
妹「何度も」
35:
***
妹「(きっとお兄ちゃんが優しくしてた私が人を殺したなんて知ったら)」
妹「(お兄ちゃんはもうちょっとくらい人を疑うようになるかな)」
妹「(じゃあ……100%私が悪いことにしよう)」
妹「兄さんを殺そうとしているのがお母さんにバレちゃったからさあ」
妹「あ、あとで警察の人に見せてもらうと思うけど、毒とか入ってた瓶をお兄ちゃんの机に入れて、自殺に見せかけて殺そうとかもしてたの」
男「嘘……だ……」
妹「(これで……全部終わり……)」
36:
***
男「うん、ちょっと色々あってダブっちゃったんだよね」
女「やっぱり年上だったんですね」
男「うん、一つだけ」
女「良かったら、色々もっとお話ししませんか?」
男「え?」
女「私、なんだか男さんのことが知りたくなって」
男「……君、おもしろいこと言うね」
女「え?」
男「うん、おもしろい。色々話そうか」
男「(今はまだ話せないことがたくさんあるけど……)」
37:
***
男が結婚して20年。
男は女と結婚し、子供が一人できていた。
少し同い年の子供たちとは違った雰囲気ではあったが、
なにより美しく、頭がよかった。
「へぇ、お父さんってこんなに保険かかってんだ……すごいね」
「あ!」
「そういえば、お父さんが大事にしてる瓶……あれってなんなんだろう」
「調べてみよっと♪」
38:
男「妹が殺人犯です」女「えっ」

42:
乙です
妹もハッピーエンドな展開も見たいな…なんて(チラッ
43:
妹ごめんね
うざいなんて思っちゃって
俺もハッピールートみたいな|ω・`)チラッ
44:
最後のはどーゆー意味?
4

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