モバP「モバセルク〜黄金時代編〜」【後半】back

モバP「モバセルク〜黄金時代編〜」【後半】


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9:
――――――――――――――――――――――――
「フフ…ついに見つけた…鷹の団のアジト…」
ホー ホー
まゆ「……」
智絵里「あんまり根を詰めないでね…体壊しちゃうよ」
まゆ「智絵里ちゃん…」
智絵里「気持ちはわかるけど…まゆちゃんは今私たちのプロデューサー兼リーダーなんだから」
まゆ「わかってます…」
まゆ「さっきプロダクションの内部の情報を聞きました…」
まゆ「Pさんは社内の古く深い地下室に監禁されているらしいです…」
まゆ「拷問は一年たったいまでも続いていて…そこから聞こえる悲鳴とも
 …呻きともつかないPさんらしい人物の声を何人かの人が耳にしています」
まゆ「………でもここひと月の間…それも…途絶えているそうです…」フルフル
智絵里「……」ギュ…
まゆ「みんなの疲れもピークに達しています…逃亡生活もそろそろ限界です…急がないと…!」
智絵里「信じて…」ポンッ
まゆ「!」
智絵里「もっと仲間を信じてほしいな…」
智絵里「確かにまゆちゃんをリーダーにしたのは私たちだけど…全部一人でしょい込んだりしないで…」
智絵里「みんなが一人一人…自分でできることをするしかないんだから…」
まゆ「…………智絵里ちゃん…」
240:
智絵里「それに少しは休まないと!疲れたままじゃPさんを助けることもできないよ…?」
智絵里「とにかく…ご飯を食べてゆっくり寝ないとね…」
まゆ「…そうですね」
智絵里「じゃあこれご飯置いとくね!ちゃんと食べてねっ」スタスタ
まゆ「智絵里ちゃん」
智絵里「?」
まゆ「ありがとうございます…」
智絵里「……」ニコ
まゆ「……」
カチャ…
カシャアァン
まゆ「う…う…ぐすっ………」ポロポロ
241:
杏「どうだった?まゆは」
智絵里「少し休むって」
杏「その方がいいよ、最近まゆ全然寝てないもんね」
智絵里「まゆちゃんは頑張ってるよね…一年前まゆちゃんがとっさに指揮をとってくれなければ
  みんなあそこで全滅してたかも…」
杏「そーだねェ……そのあとだってまゆがプロデューサー代理をしてくれなきゃ
   今日までみんな生き残っていられたかどうか…」
みく「フーン…生き残るねえ…残ってるからなんだっていうのにゃ」
みく「ただ辞めたくないから続けてるだけじゃにゃい…みく達は…」
みく「たとえ無事に生き延びてどっかで一からやり直そうって言っても…そんなの無理ってもんだにゃあ」
みく「みく達があそこまでのし上がるのに一体何年かかったと思う?うまくいくわけないよ」
みく「だいたいPチャンがいなけりゃ結局みく達はただのノラネコ集団みたいなもんにゃ…」
杏「……なにいってんのさ」
かな子「だからこうしてみんなでPさんを助け出そうって…!」
みく「生きてるって保証があるのかにゃあ?」
かな子「!」
みく「芸能界ってのは…ヤクザの世界とあんまり変わらないにゃ」
みく「……ほんとはさ…何もかも終わっちゃってるんじゃないのかにゃ…もう…」
かな子「な…何言ってるんですか!?」
杏「だったら!!」
杏「だったらなんでみくはここにいるのさ!?なんで辞めていった人と一緒にやめなかったの!?」
みく「…………」
智絵里「あ…杏ちゃん…」
242:
?????????????????????????????
輝子「フフ…フフフフ…全員地獄へご招待してやるぜェ…」
輝子「有名な鷹の団…楽しみだぜ…フヒヒ…」
輝子「ヒャッハ――――ッ!!!行くぞ野郎共ォォォォ!!!」
「て…敵が来たよ!」
まゆ「」ビクッ
まゆ「……!」
ザ…
輝子「てめえがリーダー様かァ…?」
輝子「ということはだ…フハハ!てめえを血祭りにあげりゃあ勝敗は決するってわけだなァーッ!!」
輝子「行くぜェッ!!!オラアアア!!!」シュバ
ドガガガガ
まゆ「くっ!」
まゆ(は…い…!)
輝子「アミタケ!クリタケ!フクロタケ!ヒトヨタケ!キララタケ!ガンタケ!シャグマアミガサタケェ!!」
まゆ(何ですかこのキノコは…!全部聞いたことないです!)
ドゴォ
まゆ「きゃあ!」
輝子WIN!
243:
輝子「勝負ありだなァ…おとなしく降伏するなら命は残しといてやるぜ…」
まゆ「……!」ギリ...
輝子「3つ数える!選べェ!」
輝子「ひとぉつ!」
輝子「ふたぁぁつ!!」
輝子「みぃぃぃっつ……」
幸子「よっつぅぅぅぅっ!!」ドガッ
輝子「うぉわっ!!」ドガシャッ
智絵里「……!」
かな子「!?」
杏「……」
みく「にゃ…」
まゆ「……!?」
幸子「こんな子相手にへばってちゃあ駄目じゃないですか」
幸子「しっかりしてくださいよ…リーダー」
まゆ「………!!」
幸子「……」ニコ
244:
「幸子ちゃん…」
「幸子ちゃん…!?」
「幸子ちゃんだ!!」
みく「さ…」
杏「あ…!幸…!」
「「「幸子ちゃん…!」」」
まゆ「さ…ちこ…ちゃん」
幸子「ボクが更にカワイくなったからってそんなに驚かなくたっていいんですよ!」
輝子「…フフ…そ…そういうことか…フヒ…噂に名高い鷹の団の…」
まゆ「……?」
幸子「へたり込んでる場合じゃないですよ」
幸子「彼女とはちょっとわけありでして…ここは任せてください」
まゆ「……」
タタタ
245:
輝子「フヒ…これも神の采配だ…」
輝子「私のキノコを理解してくれそうだから…また逢いたいと思ってた…」
輝子「前回はやられちゃったから…今回は…」
輝子「あの時負けた復讐をしてやるぜェーッ!!」
輝子「フハハハハ!!ブラァァックミサァァァッ!」
輝子「これから行われる儀式、その生贄にお前らを選んだのだ、感謝しろ!」
輝子「さぁ、ブラッディパーティーの始まりだ!!」
幸子「望むところです!」
輝子「行くぜェェェ!!『キ ノ コ ミ サ』!!」
キノコノコノコ ボッチノコ
エリンギ マイタケ ブナシメジ
キノコノコノコ ボッチノコ
おいしさたっぷり キ・ノ・コ♪
キノコノコノコ ホシショウコ
いけるねマイマイ MYマイタケ
キノコノコノコ ホシショウコ
たのしくわいわい キノコ♪
みんなげんきのこ すっすめ
キノコパワーだ ヒャッハッハッハアアアァァァァ――――ッ!!!
おいしくたべて にっこにこ
キノコクッキングー♪
輝子「キノコ?キノコ?ラブキノコ?♪」
幸子(意外とカワイイ歌じゃないですか…)
246:
幸子「でも!ボクには到底かないませんね!くらえっ!自称じゃなくなったボクの輝きをッ!」
幸子「『溢れる輝き』ッ!」ピカアァァーッ
輝子「う…うおおおおっ!こ…この輝きはまさか…!!」
幸子WIN!
輝子「アンズタケの!ジャック・オ・ランタンキノコー!いやそれ以上…!ヤコウタケのそれだ…!」
幸子「だっさ!ショボすぎでしょ!そんなの全然カワイくないじゃないですか!!」
輝子「しょ…しょぼくなんかないよ…発光キノコの中では世界一の輝きだぜフフフ…キンピカキノコ…素晴らしい…」
輝子「光るキノコは結構あるんだけど…なんで光るのかはよくわかってなくてね…」
幸子「どうでもいいです」
輝子「ア…ハイ…スイマセン…」ショボーン
輝子「そうだ…勝者には…キノコ進呈。こ…これあげる…遠慮はいらないぜフフ…」
幸子「? 本当にさるのこしかけでも持ってきました?」
輝子「それはないけど…これ…」
幸子「ありがとうございます………なんですかこれ」
輝子「冬虫夏草…栄養満点で滋養強壮に効果抜群…フフ…私もこれを食べると元気がでてヒャッハァッ!!!」
幸子「ひいいッ!!?」バッ
輝子「えっ!?なんで…!?」
幸子「それってあれですよね!?セミの幼虫から生えてくるキノコ…!!」
輝子「そ…それもあるけど…蛾の幼虫のが基本で…」
幸子「どっちでもいいですよ!!今回は遠慮しておきます!!」
輝子「そ…そっか…エナジードリンクの代わりにもなるのにな…」ショボーン
「輝子ちゃん!だ…だめだよ!味方は総崩れだよ!」
輝子「…幸子とかいったね…またいつか会おう…フフ…フフフフフ」
ザッ...
247:
幸子「……」
幸子「!」
まゆ「……」
杏「幸子ー!ひさしぶり」
幸子「あ!杏さん!ちゃんとアイドル続けてるんですね!」
杏「…やめるタイミング完全に失っちゃったしね」
智絵里「えへへ…元気そうだね」
かな子「よかったー!」
みく「幸子チャン!おひさにゃあああああ!」
千佳「幸子ちゃん!会いたかったよーっ!!」
幸子「みなさん…」
幸子「フフーン!!やっぱりボクは大人気ですね!!!」
まゆ「ゆっくりしてる暇はありませんよ!敵はまた来ます!今のうちに移動しましょう!」
智絵里「まゆちゃん…」
幸子「そうですね…まゆさんの言うとおり急いだ方がいいです」
248:
――――――――――――――――――――――――――
幸子「…P…さんが……」
智絵里「1年前…幸子ちゃんが出ていった次の日の話なの…」
幸子「……信じられません…あのPさんが…どうして…」
杏「……幸子が出て行っちゃった後、プロデューサーすごく落ち込んでたよ」
杏「思うんだけど…プロデューサーはきっと幸子とのことでさ…」
智絵里「杏ちゃん…」
杏「……」
幸子「……」
幸子「…………………」ギリ
みく「ふん…人気のアイドル事務所が一夜明ければお尋ね者のスパイ集団なんて…」
みく「あんまり出来過ぎてて笑っちゃうにゃ」
幸子「……」
智絵里「この1年で仲間はすごく減っちゃってね…」
智絵里「まゆちゃんが私たちのリーダーじゃなかったら…」
智絵里「今頃Pさんを失った私たちはバラバラ…鷹の団自体残ってないよ」
幸子「まゆさんが…」
249:
かな子「それどころかほんとなら1年前のあの日私たち全滅してたと思うんです…」
かな子「もし…まゆちゃんがあの時指揮を執ってくれなかったら」
かな子「凄かったんですよまゆちゃん…アイテムもなしにたくさんの敵に囲まれて…」
かな子「パニック寸前のみんなをまとめて自ら先陣を切って包囲を突破したんです」
智絵里「…それで…それ以来まゆちゃんを私たちのリーダー兼プロデューサーになってもらったんだ」
智絵里「反対する人は誰もいなかったよ…あれだけ凄いところ見せられちゃったらね」
智絵里「…でも本当は…まゆちゃんにはつらいことだと思うの…」
智絵里「だけど…今の私たちには他に選ぶ道はない…」
智絵里「わたし達みんなが生き延びるためには…ね」
幸子「……」ムゥ...
智絵里「……でもね…そんな話だけじゃないよ」
智絵里「わたし達だってただ逃げてるだけじゃないの…」
智絵里「今日プロダクションにいる仲間から…居場所が分かったって連絡があってね」
かな子「近いうちに…Pさんを助け出します!」
幸子「……!」
かな子「……ここに残ったみんなはもうボロボロです…」
かな子「この一年間さんざんだしロクな仕事もないし…みんな心も体も疲れちゃってます」
かな子「だけどもう誰もここをやめようって人はいないんです!」
かな子「誰も残ってって強制してるわけじゃないのに…」
かな子「結局ここに残った人はみんな芯まで鷹の団の一員だってことですね」
かな子「Pさんを助けるんじゃなく…Pさん無しじゃ始まらないんです…私たちは」
250:
幸子「……」
幸子「…いいものですね」
智絵里「え…?」
幸子「何だか…帰ってきたところが変わってないのは…いいものです」
智絵里「そういえば…幸子ちゃんは何やってたの…?この一年…?」
杏「そーそー!鷹の団の事はかなり広くうわさが広まっちゃってるはずだよ?」
幸子「ごめんなさい…ほんとに知らなかったんです」
杏「どうしてさァ?無人島にでもこもってたの?」
幸子「とある場所で…ずっと特訓してました」
杏「特訓…聞くだけでだるくなる言葉だね」
智絵里「…それで」
智絵里「見つかったの…?例の…」
幸子「……」
幸子「…正直…まだわかりません」
幸子「ですが…一つだけわかりました…」
幸子「いえ…感じました」
幸子「どうやらボクは…ボクのカワイさを世に広めること」
幸子「アイドル以外にはなれない…そんな感じみたいです」
智絵里「えへへ…それをはっきり言えるなら…十分だね!」
251:
幸子「…そういえばみくさんがずいぶんおとなしいですけど…」
杏「あー…さっき言ってたんだけど」
かな子「なんでもお別れの日にあんなこと言っちゃったから顔合わせられないとかって…」
みく「にゃああああ!それは言わないでって言ったでしょ?!!」ガバッ
幸子「あははは!みくさんも変わってないですね!」ナデナデ
みく「も?!みくの方が年上なの!みくぱんち☆にゃ!」ドゴッ
幸子「コフッ…」
みく「あああっごめん!入っちゃったにゃ!!」
幸子「……!ん゛っ……!」バタバタ
幸子「……」ピクピク
みく「ごめんねほんと」
智絵里「ふふ…仲いいねっ…!」
幸子「ハア…ハア…つ…疲れましたし…今日は寝ます…」
智絵里「ちょっと待って…その前に」
幸子「何です?」
智絵里「…まゆちゃんの事」
幸子「!」
252:
智絵里「一年前のあの日の後…心も体も疲れてたまゆちゃんは寝込んじゃってね…」
智絵里「その時まゆちゃんはうなされながら何度も口にしていたんだ…」
智絵里「Pさんと…」
智絵里「幸子ちゃんのことをね」
幸子「!」
チラッ
まゆ「……」
フイッ
幸子「……」
智絵里「まゆちゃんは見かけよりかなり無理してるの…」
智絵里「昔から何でもしょい込んじゃう子だったけど」
智絵里「わたし達じゃ力不足だから…幸子ちゃんにお願いしたいな」
幸子「……」
???????????????????????????
ヒュウウゥゥ...
幸子「……」
ザ…
まゆ「……」
まゆ「…少し……いいですかぁ…?」
幸子「……?」
253:
まゆ「…よく帰ってこれましたね…今さら」
幸子「……え?」
まゆ「もうあなたは私たちの仲間じゃありません…よそ者です」
まゆ「さっさとどこかへ行ったらどうですかぁ…?」
幸子「ちょ…ちょっと待ってくださいよ…何なんですか?」
幸子「一年ぶりに会ったと思ったらまたケンカしようってんですって?」
幸子「…まああなたらしいですが…そりゃないんじゃないですか?」
まゆ「……」ギロ!
ブンッ!
幸子「ちょ…」
バシイッ
まゆ「・・・・・・」
幸子「……!」
幸子「た…タイム!ちょっと待ってください…ねえ!」
幸子「今のビンタ…殺気籠もってましたよ!?」
まゆ「……」ギリッ
ブンッ
幸子「わわっ…!」ヒョイ
幸子(…本気だ!)
254:
ブンッ バン! ドカッ ガシャアァン
幸子「ちょっと!?」ヒョイヒョイ
まゆ「ふざけないで!!避けないでください!」
幸子「避けるに決まってるでしょう!」
ガシ
まゆ「あっ!」
幸子「一体なんなんですか?相変わらず無茶苦茶ですね…」
幸子「訳を言ってくださいよ!」
幸子「1年ぶりに顔合わせたってのにいきなり殴りかかられちゃたまったもんじゃないですよ!」
まゆ「……」
まゆ「…なぜ戻ってきたんですか今頃になって…」
幸子「…?」
まゆ「……あなたのせいです」
まゆ「あなたがすべて…壊した!!!」
まゆ「あなたの…せいで!!」バッ
ガシィッ
幸子「……ボクの?」
まゆ「…そうです」
まゆ「Pさんも、鷹の団も…何もかも!」
まゆ「あなたがメチャクチャにした!!」
255:
幸子「…ボクが?何で……?」
まゆ「……!!」ギリ
まゆ「あなたが出ていったからです!!あなたがPさんの元を離れたから………!!」
幸子「ちょっと待ってください!!」
まゆ「!」
幸子「……」
幸子「そんなはずないじゃないですか……」
幸子「Pさんなんですよ……?」
幸子「彼が…あのPさんが…ボクが出ていったくらいで…」
幸子「そんなことぐらいでダメになってしまうはずないでしょう……?」
幸子「そんなはずないです…」
まゆ「……」
まゆ「……つくづくどうしようもないバカですねあなた…」
ドンッ!
まゆ「言ったはずです!!あの時!!」
まゆ「大きなものを手にしようとする人は!」
まゆ「それだけ人より多く…何かに耐えているんだって!!」
まゆ「Pさんは……!強くならなければならなかったんだって……!!」
まゆ「ですが…Pさんは神様じゃない……!理想や夢だけで人の心は埋まらないんです!!」
まゆ「あなたが!!Pさんを弱くした!!Pさんには……!!」
まゆ「Pさんは………あなたがいないとダメなんです!!!」
幸子「……!!」
バチィンッ
幸子「っ…」
まゆ「…!」
256:
まゆ「なんで…避けられたはずなのに…なんで…?」
ガシ
まゆ「きゃ…」
幸子「他に…」
幸子「どうしようがあったっていうんですか…」グッ...
まゆ「ちょ…ちょっと」
幸子「Pさんと同じように…ボクはやっただけです…!」グググ...
幸子「ボクは…!自分のことをやっただけです…!!」
まゆ「痛…!は…離してください…!」
幸子「他に…他にどうやればよかったっていうんですか………?」ポロ...
まゆ「わ…わかりましたから……!やめてください!!」
幸子「っ…ごめん、なさい…」パッ
ペタン...
まゆ「……」
まゆ「……うふふ」
まゆ「うふふ…くすっ…」
まゆ「…わかってます」
まゆ「あなたの言ってることは正しいって……」
まゆ「ほんとはわかってるんです」
257:
まゆ「…だけど……私にはもう…」
まゆ「もう……耐えられません」
幸子「……」
まゆ「前にあなたに言いましたよね…まゆはPさんの隣にいたい…」
まゆ「あの人の武器になりたいって」
幸子「……ええ…覚えてます」
まゆ「…あれはほんとじゃありません」
まゆ「あれは…私がこうありたいと望む私…強がりです」
まゆ「確かに最初は純粋にそう思ってました…だけどある日気が付いたんです」
まゆ「Pさんは神様じゃなく……そして私は女の子なんだって……」
まゆ「……自分の心を…思い通りにできたらどんなに楽でしょうか……」
まゆ「まゆだってバカじゃありません…Pさんが社長を目指しているのなら」
まゆ「桃華ちゃんと親しくなるのが一番の早道だってこと…気づいてはいたんです」
まゆ「……そしてPさんなら」
まゆ「いつか必ずそれを実行するでしょうって…」
まゆ「今回のことだって…もしかしたら……」
幸子「……」
まゆ「…それでもまゆは耐えられると思いました…思っていたかった」
まゆ「女の子としてPさんに寄り添えなくても…武器としてなら」
まゆ「夢を実現させるために欠かせないものになれるならそれでいいって……思っていたかった」
258:
まゆ「……でも」
まゆ「1年前のあの日はっきりとわかってしまったんです」
まゆ「Pさんの隣にはもうとっくの昔に…隙間はなかったんだって」
まゆ「まゆの夢は…もう」
まゆ「終わっていたんだって」
幸子「……」
まゆ「…私には……もうできません」
フラ…
まゆ「私が鷹の団を守るために必死でやってきたのは」
まゆ「たとえありもしない希望にでも縋っていないと自分が消えてしまいそうだったから……」
まゆ「……でも もういいです…」
まゆ「女の子にもなれない」
まゆ「大切なものにもなれない」
まゆ「生きているかどうかさえ分からない人の壊れかけた夢をこれ以上守り続けるなんて……」
まゆ「私には……もう……」
まゆ「………疲れちゃいました…」
フラ...
まゆ「後は…あなたがやって……」
幸子「……あ」
ヒュウウウゥゥ...
259:
ガシィイ
幸子「く……!」
まゆ「……」
……そしてもう一つ
あの日知ってしまったことがあります
すべてを壊し……まゆからすべてを奪った人なのに
憎んでいるのに…
今でも…
消えてほしいと思っているのに
幸子「うぐ…!」グイ
ドサァ
まゆ「……」
幸子「…………!!」
幸子「何考えてるんですか!!」
幸子「いいですか!?もうあなたは金輪際落ちそうなところに近づかないでください!!」
幸子「2度も3度も引きずり落とされたんじゃたまりませんよ!!」
まゆ「……」
まゆ「……バカですね」
幸子「! な……」
まゆ「いつも……傷ついてますね…………」
260:
まゆ「いつも……まゆのせいで…………」キュ...
幸子「……!」
まゆ「いつも……傷ついてますね…あなた…」フルフル
まゆ「ばか……」ポロポロ
ギュ…
幸子「……」
まゆ「ばか…」
ギュウ...
あの日私は知ってしまった
初めての敗北に打ちのめされ跪くPさんよりも…
振り返りもせず行ってしまうあの子の背中から目を背けることのできない自分に
そんな自分を認めたくなかった
Pさんに出会ってから今までの自分が……今までの思いが全てうそになってしまいそうで
それが怖くて私はPさんの後を継いだ 届かなかったPさんへの思いに殉ずるつもりで
自分の生き方に偽りがない それだけが私の誇りだったから…
Pさんがまゆにくれたものだから
261:
まゆ「……」
幸子「……」
まゆ「幸子ちゃん…」
まゆ「今までの事…まゆが幸子ちゃんにしたいろいろな事」
まゆ「許してほしいんです…ひどいことをしてしまってごめんなさい」
幸子「…なんです急に?」
まゆ「まゆが…幸子ちゃんのことを嫌っているわけじゃないことを言っておきたくて…」
まゆ「もっと幸子ちゃんと仲良くなりたい…一緒にいたい」
まゆ「まゆは嫌われても仕方ないことをしてしまったけれど…」
まゆ「まゆは幸子ちゃんの事…好きですから」
幸子「……」
幸子「ふふーん……今更ですね」
幸子「ボクがまゆさんのこと嫌いなわけないじゃないですか」
幸子「カワイくて、まっすぐで、優しくて…ボクの一番の友達です」
幸子「まあいろいろありましたけど…もちろん許してあげますよ!ボクも優しいので!」
まゆ「…うふふ」
まゆ「まゆにとっても…幸子ちゃんは私の一番のお友達です」
まゆ「まゆは…幸子ちゃんと一緒に歌を歌いたいです」
まゆ「幸子ちゃんと一緒に…ステージで踊りたい」
幸子「ボクも一緒にやりたいです!」
まゆ「うふふ…まゆたちが組んだらどんな人でも虜にしちゃうでしょうねぇ」
まゆ「一緒に…二人で…!頑張っていきましょう!」
幸子「こちらこそ…よろしくお願いしますね!」
262:
まゆ「二人一緒ならもっと頑張れます…!」
まゆ「お互いがお互いを引き立てあって…」
幸子「引き立て…」
ドクン
『お前は引き立て役だ』
幸子(…う……?)
まゆ「まゆも幸子ちゃんのために頑張りますからっ!」
ドクン
『お前のために』
幸子(ボクの…ために…)
まゆ「信じてますからね、幸子ちゃん!」
ドクン!
『信じてるぞ』
幸子(信じて…!)
263:
幸子「う…ああ…」
まゆ「? どうかしました…」
幸子「……っ!!」ドン
まゆ「! きゃあ!」ドサ
まゆ「ど、どうしたんですか!?」タタ...
ガシ
幸子「!」
幸子「うわあっ!!」ドンッ!
まゆ「きゃああっ!」ガシャアァ
まゆ「いたた…幸子ちゃん…!?どうしたの…?」
バン!
まゆ「きゃ…」ビク
幸子「……あんなつもりじゃなかった…!」
幸子「あんなつもりじゃ……」
幸子「あんな…」
幸子「辞めさせるつもりじゃなかったんですプロデューサーさん……!」
まゆ「…………辞める?」
264:
幸子「……あの時ボクに初めてプレゼントをくれた」
幸子「初めてで…本当にうれしかった!!」
幸子「だけど!!それはほかの人から勝手にとった物だった!!」
幸子「…ボクのためにって言ってた」
幸子「ボクを信じてるって……そう言ってそれをくれた」
まゆ「……?」
まゆ「プロデューサーさんが泥棒をして…それで辞めることに…?」
幸子「違う!!」バンッ!
幸子「プロデューサーさんは違います…!!」
幸子「プロデューサーさんは泥棒なんかじゃない!!プロデューサーさんは…!!」
まゆ「……?」
幸子「プロデューサーさんはこんなボクを拾ってアイドルにしてくれた」
幸子「歌を!ダンスを!教えてくれた!!」
幸子「なのにどうして……!」
幸子「…どうして」
幸子「ボクを…無理矢理アイドルを辞めさせようとなんかしたんですか…………」ポロポロ
まゆ「!」
265:
幸子「いつも不機嫌そうだった」
幸子「ボクがデビューをしてからずっと……」
幸子「ほかの子とばかり話をしてた……卯月卯月って…」
幸子「ボクの名前は一度も呼んでくれなかった…」
幸子「寂しかった!悲しかった!悔しかった!」
幸子「こっちを向いてほしかった!見てほしかった!褒めてほしかった!」
幸子「だからもっと!もっと頑張れば!ボクにも優しくしてくれるって!」
幸子「ボクのことを認めてくれるって…!そう思ってた!!」
幸子「なのに…ボクが人気になるのは邪魔だって…うっとおしいって」
幸子「辞めちゃえばよかったんだって言ってた…」
幸子「お前なんか人気が出ずに辞めてしまえばよかったって…」
幸子「ごめんなさい…プロデューサーさん」グス
幸子「プロデューサーさん……」
幸子「う…ぐすっ…ひっく…うああああ………!!」
266:
まゆ「……」ソロ…
ナデナデ
幸子「!!」ガバッ
幸子「………あ」グス...
まゆ「……」
幸子「ご…ごめんなさい…」ヒック...
幸子「とんでもないことしちゃいました……ごめんなさい……」
幸子「せっかくまゆさんが…ボクのために一緒にって言ってくれたのに…」
幸子「せっかくボクのことを信じてくれたのに…それを…こんな……」グス
まゆ「……幸子ちゃん」
幸子「さっき言ってたみたいに…どっかへ行けっていうのなら…すぐ出ていきます…」
まゆ「幸子ちゃん……あなた……」
幸子「そうです……」
幸子「ボクは…昔プロデューサーさんをボクのせいでやめさせてしまったんです」
まゆ「……」
幸子「うっ…!克服したつもりでした…もう…とっくの昔に…」
幸子「この一年近くは思い出しもしなかったのに…どうして今頃になって…」
幸子「ひぐっ…笑ってくださいよ……アイドルとして何千何万人の人の心を掴んできたのに」ツゥ
幸子「何でこれだけが…プロデューサーさんだけが…こんな…」ポロ...
幸子「こんな…」ポロ...ポロ...
まゆ「……」
ギュッ
267:
幸子「……」
幸子「もういいですよ…キズの舐めあいになるだけです」
まゆ「…いいじゃないですか」
まゆ「キズの舐めあいでもいいじゃないですか」
まゆ「まゆはもう全部見せちゃいましたから…」
まゆ「まゆの弱いところもあなたに全部さらけ出してしまいましたから…」
まゆ「……何だかこれでやっと対等になれた気がします」フフ
この子になら私の場所があるかもしれない
幸子「……」
まゆ「あなたにはいろいろしてもらいましたよね…」
与えられるだけじゃなく
まゆ「だから今度はまゆが…あなたにしてあげる番です」ナデナデ
与えることができるかもしれない……
幸子「……」
幸子「……う」
幸子「うわあああああぁぁぁぁん……!」ギュウゥ
まゆ「……」ナデナデ...
268:
幸子「……」
まゆ「落ち着きましたか…?」
幸子「……」
まゆ「どうしました?」
幸子「……」
幸子「思い切り泣いてスッキリしましたが…恥ずかしいです……」
まゆ「……うふ♪」
幸子「あああああ!もう!」ジタジタ
まゆ「……でも無理ないですよぉ…あんなことがあったんですもの…」
まゆ「構ってほしそうなのにいつも一人でいたのもそのせいだったんでしょう?」
幸子「…まゆさんは何ともありませんでした」
まゆ「え…?」
幸子「最初にあなたに看病してもらいましたよね」
幸子「…どういうわけかあの時…全然嫌じゃなかったんです…あなただけは」
まゆ「……」
まゆ「……♪」ニコ
269:
まゆ「……ねえ幸子ちゃん」
まゆ「あなた残りませんか?」
幸子「え…?」
まゆ「Pさんを助けた後もここに…鷹の団に」
まゆ「智絵里ちゃんや杏ちゃんかな子ちゃん、みくちゃんたちと…」
まゆ「今まで通りに…またみんなで…」
幸子「だめです」
幸子「…けじめは…しっかりつけないといけませんから」
まゆ「……」
幸子「だからそれは…できません」
幸子「……」
幸子「特訓してた時のことを思い出します…」
まゆ「え…?」
幸子「この一年いた場所で…」
270:
―――――――――――――――――――――――――――――――――
仁奈「行くですよー!」
幸子「フフーン!いつでもどうぞ!」
ドドドドド…
ゴシャアァ
幸子「セクシーアピール!」バァーン
仁奈「……」
仁奈「衣装もマイクも壊れちまったですね」
幸子「……そーですねェ」
晶葉「…まったく」
晶葉「しばらくボーっとしてると思ったらいきなり無茶な事をして…」ガチャガチャ
幸子「あの特訓マシーン作ったの晶葉さんですよ」
晶葉「…失敗作だったようだな」
幸子「…ねえ晶葉さん」
幸子「あなたはなんでこんな所で一人で働いてるんですか?」
晶葉「一人じゃない、助手もいる」ガリガリ
晶葉「ここは広い施設だからな…いろいろ好きにできるんだ」キュイーン
幸子「……ふ―――ん」
271:
晶葉「ふう……」
幸子「……」
幸子「晶葉さん…あなたはなんで発明家やってるんですか?」
晶葉「……」
晶葉「小さいころからやっているんだ」
幸子「好きですか?発明」
晶葉「ふっ…当然だろう」
仁奈「仁奈も好きですよ!とってもおもしろいでやがります!」
晶葉「私は物心がつく前に機械をいじっていた」
晶葉「自分の作った物で誰かが喜んでくれるのがうれしかった」
晶葉「発明とは誰かの役に立つためにあるものだ…」
晶葉「生きてる者がなぜ生きてるのかはわからないが…これは私の生きがいだ」
晶葉「そしてこれが私の生きる意味でもあると…そう思っている」
幸子「……」
晶葉「そう…ひとつ機械をいじっていて気に入ってるのもがある」
幸子「え?」
晶葉「火花だ」
晶葉「火花はいい…吸い込まれる……まるで命だ」
晶葉「自分の命そのものが一瞬目の前で弾けているような気がするな」
幸子「……」
272:
……結局 ボクにはアイドルだけだ
……夢 アイドルはボクにとって夢なのかな?
『オレはオレの国を手に入れる』
違うかな…?トップアイドルと言ってもPさんの言うような
具体的で到達点のはっきりしたものじゃない
そう…これはもっと身近でボクの体の一部みたいなものだ
アイドルをやっているおかげでいろいろな経験をしてきた
プロデューサーさんを失ったこと
Pさんと鷹の団との出会いと別れ
きらりさんやそのほかの人たちも…
堪えられない様な辛いことも 心から嬉しかったことも
ボクはアイドルとしてその瞬間を乗り越えてきた
忘れられない事 忘れられない人間
そのほとんどはボクがアイドルだったから出会えたことだ
273:
『自分の命そのものが一瞬目の前で弾けているような気がするな』
幸子「火花…ボクも引かれているのかな?火花に…」
人と人とがぶつかり合う時の小さな火花
自分と相手のすべての思い…
存在そのものをぶつけて散らすちっぽけな光
…………ボクはトップを目指す
Pさんのような夢とは違うかもしれないけど
Pさんの横に並ぶために…
Pさんの道具ではなく パートナーとなるために
誰のためでもなく 流されるわけでも…
今度こそ自分の意志で
自分の…一瞬の火花をはじき出すために
274:
―――――――――――――――――――――――――――
幸子「くだらないこだわりかもしれませんが…」
幸子「だけどやっと見つけた自分のことなんです」
幸子「Pさんを助けて鷹の団を立て直すめどが立つまでは付き合います」
幸子「でもそれまでです そのあとはボクはほかの所へ行きます」
幸子「…もう決めたんです」
幸子「もう二度とだれかの夢にぶら下がったりしないって」
まゆ「ふふふ…!」
幸子「……?」
まゆ「うふふ…立派ですねぇ…大したものじゃないですかぁ」
まゆ「いろいろ考えたんですね…昔のあなたじゃ考えられません」
まゆ「…ほんと……Pさんみたい」
幸子「え…?」
まゆ「結局あなたもPさんと同じじゃないですか!」
275:
まゆ「夢が全部!自分のことが全部!」
まゆ「まゆなんかいてもいなくてもおんなじ…!」
まゆ「あなたはまた行っちゃうんでしょう!最初から…そう決めてたんでしょう!」
まゆ「まゆと一緒にいたいとか!一番の友達だとか言ったくせに!」
まゆ「行っちゃえばいいじゃないですか!勝手に一人で行けば!」
幸子「来てくださいよ」
まゆ「………え?」
幸子「あなたもボクと来てくださいよ」
幸子「先のことはわかりません」
幸子「あなたといることがボクのやりたいことにどう影響するのか…今は何も」
幸子「でも…大好きな友達と一緒にいたい、一緒に歌を歌いたい…」
幸子「…と 今はそう思ってます」
まゆ「幸子ちゃん…」
幸子「だから…一緒に来てください!」スッ...
まゆ「……」
まゆ「はい!」ギュッ
276:
市原仁奈(9)
池袋晶葉(14)
278:
――――――――――――――――――――――――――――――――
P「……」
子どものころ空き地で仲間たちと繰り広げた遊び 勝ち取った小さな名誉
奪い取ったキラキラ光る小さな戦利品の数々
夜にテレビをつけると
テレビで、雑誌で見かける女の子たちの歌声
スポットライトに照らし出されるその笑顔
それはオレの目にするものの中で一番キラキラと輝いて見えた
オレは決めた
オレが手に入れるがらくたは あんなのにしようと
279:

一筋の光もない真の闇
この闇に身を浸してもうどれだけの時間が過ぎたのか…
永遠か…一瞬のような気もする……
すべての感覚が麻痺し何も感じられない
オレの体は?まるで中空を漂っているようだ
オレは正気を保っているのだろうか?とうの昔に狂ってしまったのか?
何もかもが虚ろな中 ただ一つだけ鮮明なものがある
あいつだけが まるで闇夜の雷の様に鮮烈にオレの中に浮かび上がる
そして繰り返し津波のように押し寄せる無数の感情
憎悪 友愛 嫉妬 空しさ 悔しさ
いとおしさ 悲しみ 切なさ 飢餓感…
渇望し去来するいくつもの感情
そのどれでもない そしてすべてを内包した巨大な激情の渦
それだけが無感の中 消え入りそうになる意識をくさびとなって繋ぎ止める
280:
オレは自分が人と違うことを知っている 
オレと出会った人間は決してオレを無視できない
必ず好意か敵意のまなざしを向けてくる
好意は信頼や友情に 敵意は畏怖あるいは恐怖に育てる術をオレは知っている
そうやって数多の心の束をオレはこの手に握ってきた
……だが なぜだろう?
オレはあいつのこととなるといつも冷静ではいられなくなる
オレをこの闇の中に閉じ込める原因となったあいつが
今は唯一オレの生命を繋ぐ糧となっている
数千のR 数万のNの中で ただ一人あいつだけがなぜ…?
いつからだろう 手に入れたはずのあいつが
逆にこんなにも強くオレを掌握してしまったのは
遠い日 あの空き地のステージから始まった終わらない遊び
オレにとって唯一神聖なガラクタを手にするための巡礼の旅
だが あいつは今オレの中で
そのがらくたが色あせるほど
ギラギラと目に痛い
幸子…!!
281:
―――――――――――――――――――――――――――
杏「いよいよだね…」
杏「あーあ、風邪ひいてなければ杏もみんなと行けたのになあ」ケホ
かな子「……」
智絵里「……」
幸子「…あはは」
杏「いやほんとだからね!?疑ってんの!?」
幸子「冗談ですよ」
みく「みくたちの分も頼んだにゃ!絶対助け出してね!」
幸子「はい!」
みく「そしたらさ…きっと…また昔みたいに…」
幸子「……」
まゆ「全員準備してください!」
まゆ「これから皆さんを二手に分けて別行動に移ります!」
まゆ「Pさんの救出部隊はすぐに出発します!」
幸子「行きましょうか」
まゆ「……」ニコ
まゆ「全員!出発です!」
282:
??????????????????????????
幸子「なんでこんな薄暗い路地裏に?建物は目の前ですが」
智絵里「正面からはさすがに行けないし…抜け道があるんだよ」
智絵里「あのビルはいろいろな事してるからね…裏口が必要なんだ…」
まゆ「ここですね…」
幸子「でもそういうのって鍵とかがかかっているんじゃあ…」
まゆ「うふふ…Pさん…もうすぐですよぉ…」ガチャガチャ
カチャ
まゆ「開きました!」
かな子「凄い器用だね…まゆちゃん」
幸子(すごい…)
まゆ「それじゃ行きましょうか」
幸子「ちょっと待ってください…」
幸子「ボク達はともかく一番重要な立場のまゆさんが直接というのはやっぱりまずいんじゃ?」
まゆ「仕方ないでしょ?今みたいなことできるのもまゆだけですし」
まゆ「こうなった以上Pさんを連れ出せなければ本当にまずいですから…このメンバーが一番です」
幸子「……ですが」
まゆ「心配してるんですか?あなた」
まゆ「冗談じゃありません!もう子供じゃないんですよ!」
まゆ「私が…あなたの背中くらい守れること忘れないでください」
幸子「……はい…」
かな子「ふふっ」
智絵里「……」ニコニコ
幸子「……」
まゆ「行きますよ」
283:
タタタタ...
幸子「……」
幸子(……Pさん)
いつも上ばかり見ていた
昇りつめること……飛び続けること以外は何も意に介さない
高みを独り飛び続ける……鷹
そう…彼はボク達の這い回る地面には絶対に降りることのない足のもげた鷹だ
挫ける諦めるって言葉がこれほど似合わない人はいない
冷静で冷酷で 抜け目なくて
『オレがお前のために体をはることに…いちいち理由が必要なのか…?』
勝ち続け 奪い続け
『…オレを ひどいやつだと思うか』
幸子(……!)
『Pさんは………あなたがいないとダメなんです!!!』
幸子(……)
幸子(……もしそうなら)
幸子(もしそうだとしたら…ボクは…!)
284:
智絵里「ついたね…」
幸子「しかしよく見つけましたね…こんな抜け道」
かな子「内通者がいましてね…」
「誰ですの?」
幸子「……!」ビクッ
まゆ「待って!」
幸子「え?」
まゆ「味方です」
「た…鷹の団の方々ですわね?」
「お待ちしていましたわ…ほんとうに来てくださったのですのね!」
幸子「誰ですか?」
「あ!あなた!確かPちゃまの横でドヤ顔してた方ですわね!」
幸子「ちょ……」
まゆ「何してるんですかあなた」
桃華「覚えていますわ…桃華ですわ!よろしく!」
幸子「! あなただったんですか…」
まゆ「プロデューサー代理のまゆです…今夜のことは深く感謝しています」
桃華「あ…構いませんわそんなこと」
桃華「とにかく…早く行きましょう…」
真奈美「私は護衛としてついて来た者だ…こっちへ来てくれたまえ」
285:
幸子「ひさしぶりに来るのがこんな形になってしまうとは…」
智絵里「ほんとね…」
まゆ「……」
まゆ(桃華ちゃん…このプロダクションのメインアイドル)
まゆ(まだそんなに年がいっているわけでもないのにお嬢様としての物腰)
まゆ(朗らかで優しそうで…女のまゆでも好感が持てます)
まゆ(…そして……この人がPさんの…)
まゆ(こんなことになってしまった今もPさんはこの人を必要とするのでしょうか?)
まゆ(……Pさんを崇拝する気持ちは今でも変わらない…だけど)
まゆ(…まゆはまだ…こだわってる…嫉妬している!)
まゆ(嫌になります…こんな自分が…!)
ギュッ
幸子「?」
286:
桃華「…まゆさん…わたくし、謝らなければなりません」
桃華「一年前の社長の…Pちゃまとあなたたちへの仕打ち…」
桃華「心からお詫び申し上げますわ」
まゆ「そんな…あなたが謝る必要なんてありません…」
まゆ「こうしてここに来れたのも桃華ちゃんのおかげですし」
かな子「でも…確かにこのままじゃスッキリしませんね…」
かな子「もしご存じなら教えてほしいんです」
かな子「わたし達が嵌められた前日…Pさんが捕まったあの晩一体何があったのか」
桃華「……」
桃華「わかりましたわ」
真奈美「桃華君…!」
桃華「いいのです」
桃華「……」
桃華「あの晩…Pちゃまは…わたくしの部屋に…」
まゆ「……!」ドキドキ
「あら…そこにいるのは誰かしら」
かな子「!」
まゆ「見つかっ…」
桃華「わたくしに任せてくださいまし…」
287:
桃華「……」トコトコ
志乃「あら…誰かと思えば桃華ちゃんじゃない…何やってるのこんな時間に」ヒック
桃華「少し寝つけなかったので…散歩をしていたところですの」
志乃「寝つけないとはいってもこんな時間に出歩くのは感心しないわね…」
桃華「そういうあなたもお酒をこんな時間まで飲んでるなんて感心しませんわ」
志乃「ふふ…言うじゃない…」
真奈美「まあ…ここは互いに黙っているということでいいじゃないか」
志乃「あら真奈美さん…あなたもいたのね」
真奈美「今度一杯奢ってやるから」
志乃「うふ…それじゃあ内緒にしておいてあげるわ…約束よ」
幸子「なかなかやりますね」
桃華「レディは時に大胆に行かなくてはなりませんの」
かな子「なるほど…」
桃華「…それにあの方の……Pちゃまのためなのですから」
まゆ「………」
288:
幸子「ずいぶん古臭い雰囲気の所ですね…」
智絵里「地下だからかな…?」
桃華「基本的には倉庫としてもあまり使われないところですので…」
桃華「どうやらPちゃまは一番下の所にいるらしいですわ」
桃華「これが鍵ですの、どうぞ」
まゆ「ご協力感謝します…ここからは私たちだけでやりますのでそろそろお帰りに」
桃華「いやですわ」
まゆ「え?」
桃華「わたくしもあなた方と一緒に行きますの」
智絵里「ど…どうしてですか…?」
真奈美「おいおい…?勝手にいなくなったらとんでもない事になるぞ?」
真奈美「社長も大騒ぎするだろうしそれは…!」
桃華「やめてくださいまし!!」
桃華「どうでもいいですわあんな人…海に沈めてやっても構わないくらいですわ」
真奈美「な…!?ずいぶん物騒なことを…」
桃華「いいのです!!」
289:
桃華「お願いしますわまゆさん!」
まゆ「!」
桃華「わたくしは…お嬢様ですしあまり色々なことはできないかもしれませんけど」
桃華「Pちゃまと一緒にいられるなら…わたくしなんでも頑張りますわ!」
まゆ「……」
まゆ「…………私は……」
まゆ「私は反対です……」
桃華「!」
かな子「まゆちゃん…」
まゆ「その意思を尊重したいのは山々ですけど…それには大きな問題があります」
桃華「問題…?なんですの?」
まゆ「わたし達がPさんを助けたとしてもそれは会社としては何のデメリットもありません」
まゆ「それに元々人間を監禁している事実を表に出すわけにはいかないのですから…
   仮にデメリットがあったとしても何もする事はできないはずです」
まゆ「しかしあなたを連れだすとすればそれは会社だけじゃなく櫻井家をも巻き込んだ事態に発展します」
まゆ「そうなればあなたを助けるために警察まで出てくるかもしれませんし…ニュースになる可能性もあります」
桃華「で…ですけど……!」
まゆ「それに何よりも女性を誘拐したなどという話になれば…
   Pさんは今後二度と消えない汚名を背負うことになります」
まゆ「そうするとPさんの出世の道は閉ざされ二度と世に出ることはできないかも…」
まゆ「あなたはそれでもかまわないのですか?」
桃華「そんな……!」
290:
桃華「……そんな」
桃華「わたくしはただPちゃまと…………」シュン
真奈美「桃華君…」
まゆ「ですからお気の毒とは思いますけど…」
まゆ「もしPさんのことを一番にお考えならどうかお聞き分け下さい」
桃華「……」
桃華「……ゃ」
まゆ「…?」
桃華「いやいやいやいやいや!絶対いやですわ―――――!!!」
まゆ「!?」
桃華「いくったらいくったらいくったら…絶対行きますわ!!Pちゃまと!!!」
まゆ「ちょ…!?」
幸子「待っ…」
真奈美「やば…」
桃華「………………!!!」モガモガ
「「「…………」」」
シ―――――ン
291:
幸子「いきなり叫ぶなんて何してるんですか…」
桃華「……!!」モゴゴ
かな子「ど…どうしよう…手を離したらまた叫ぶかも」
桃華「????」モゴ
まゆ「うーん……」
まゆ「手を離してもいいですよ」
幸子「!」
まゆ「わかりました…ご一緒しましょう」
桃華「ほんとですの…?」
まゆ「ただし」
桃華「!」
まゆ「もしもPさんがダメだと言われた時は…その時はあきらめてくださいね」
桃華「…でも」
まゆ「……」ジィー
桃華「う……」タジ...
桃華「わかりましたわ…」
桃華(いいですわ!Pちゃまに無理やりでも頼んでしまいますから)
真奈美「フッ…その場合私はどうなるんだろうな…」
智絵里「さ…さあ…」
かな子「その…裏方担当ってことでいっしょに…」
292:
幸子「じゃあ行きましょう…夜が明けちゃいますよ」
まゆ「……」
幸子「どうしました?」
まゆ「…嫌な子ですね…まゆは」
幸子「え?」
幸子「なんでです?あなたの言ったことはもっともだと思いますけど」
まゆ「そうですけど…」
まゆ「あれは本当のことですけど…心のどこかであんな風にPさんのことを話す桃華ちゃんを私……」
幸子「……」
幸子「まったく…くだらないことでいちいち…」
まゆ「ご…ごめんなさい…その」
幸子「今はそういうのはいいですから!行きますよ!」
まゆ「……ごめんなさい…」
幸子「……」
幸子「…急ぎますよ」
幸子(…そうです そうやってPさんのことを気に病むあなたは気に入りません…ですが)
幸子(ですが一番気に入らないのはそれを仕方ないと思ってしまいそうになる自分…)
幸子(まだPさんを吹っ切れずにいるボク自身だ!)
293:
???????????????????????????????
「もうすぐPさんが帰ってくるんだねー」
「一年ぶりだから私たちの成長にびっくりしちゃうよね!」
キャッキャッ
杏「……ケホッ」
杏(みんな楽しそうだな…無理ないけど)
杏(もうすぐ…もうすぐプロデューサーが帰ってくるんだもん)
杏(ずいぶん遠回りしたけどプロデューサーさえいればまた…)
ヒュウウゥ…
「ふわぁ…」
スウゥ...
杏「………!?」
杏(な…何だ今の…?)
杏「………………」
杏「熱による幻覚だな、寝よ寝よ…」ゴロン
キャアアァ…
杏「!?」ビクッ
杏「これは幻聴じゃない…よね…」
294:
杏(一体なんだ!?こんな時に…!)
杏「くっ…!ケホ」ヨロッ...
杏(もう少しで…!)
杏(もう少しでプロデューサーが戻ってくるっていうのに…!)
杏「ハア…フウ…」フラフラ...
杏「!?」
シーン
杏「みんな…?」
杏「……?」
杏「なんだこれ…?誰もいない…」
杏「みんな…何処に?」
杏(敵が来たからみんな逃げたのかな…?)
杏(でも姿は見えないし病人の杏を放っていったりはしないよね…)
295:
ザアアアァァ...
杏「……」
「…げて」
杏「!」
「逃げて…杏ちゃん…」
杏「え…何さいきなり…」
杏「っ!?」ビクッ
小梅「……」
杏「だっ…誰だ!?」
小梅「こ、怖く…ない…よ……?」ユラ...
杏「うっ……」ジリ...
チャリ
杏「……?」
ジャララ…
杏「何だ…メダル?なんでこんなところに…」
小梅「ふふ…」
「きゃああ…!」
チャリーン
杏「…は?」
杏「え……?今何を…メダルに…変わった…?」
杏(待てよ…そういえば聞いたことがある…)
杏(アイドルに対して特別な何かをすると…メダルになる…とか)
杏「まさかこれが…みんな…!?」
296:
こずえ「…ふわぁ…あなた、だぁれぇー?かわいいのー…」
杏「さ…さっきの…!」
こずえ「ふわぁ…こずえ…ようせいさんなのー…」
こずえ「ねえ、おねえちゃん…こずえのおにんぎょうさんになってー…?」
小梅「だ…だめだよ…」
小梅「あの子の…お、お友達になって…もらうから…」
杏「とも…だち…?」
小梅「や、やっぱりみえないかな…?で、でも、もうすぐ、見えるようになるから…」
杏(やばい…体がふらついて動けない…!!)
小梅「こ、怖いの…?それなら…ゆ、夢…見せてあげるね…」
小梅「まあ…悪夢…なんだけど…ね♪」ニコォ
杏「ひっ…」
杏(みんな……!)
297:
ヴワアアァッ
珠美「はあっ!」ザッ
小梅「……!」
こずえ「ふわぁ…」
杏「!」
珠美「退くのです!」ジャキ
小梅「……」
こずえ「おねえちゃん…だぁれぇー?」
珠美「あなた達もこんなところで遊んでいる暇はないはずです」ドキドキ
珠美「急がねばならぬのでしょう?」ドキドキ
小梅「……」
小梅「……」
小梅「…こ、今回は…帰ることにするね…」
小梅「こずえちゃん…い、行こ…」
こずえ「おててつないで…どこいくのー?」
こずえ「おててつめたーい…てがつめたいひとはねー…やさしいんだってぇー」
小梅「じゃ、じゃあ…ゾンビはみんな…や、優しいのかな…?」
珠美「……」
珠美(危なかった…小梅さんが相手だと怪談話をされた日には間違いなく負けていました…)
298:
杏「……」
杏「……!!」
杏「う…」
杏「うわあああ!!」
杏「ゲホゲホッ!う…うう…!な…んだ…」
杏「何なんだ!?何が起こったんだ…!?ゴホッ!」
杏「……」
杏「うそ…でしょ…」
杏「みんな…さっきまであんなにはしゃいでたじゃないか…」
杏「あんなに…プロデューサーが帰ってくるの楽しみにしてたじゃないか…」
杏「どうして…こんな」
杏「こんな…」
杏「こんなのってないよ……!!」
珠美「……」
ザッ...
299:
?????????????????????????
カンカンカン...
智絵里「この階段の下に地下の牢獄が…」
かな子「予想以上に深いですね…」
桃華「一番下の部屋にPちゃまがいるのですね…」
カンカンカン...
幸子「…?」ピク
智絵里「どうかした?」
幸子「……」
幸子(…気のせいかな)
幸子「何でもありません…」
愛海「……」
300:
かな子「! あれですね!」
まゆ(Pさん…この闇の底に…一年間も…)
タタタ...
桃華「Pちゃま!Pちゃま!」ドン ドン
シーン
まゆ「あ……」ガタガタ
ポン
まゆ「!」
幸子「……」
まゆ「ふぅ……」ス...
ガチャリ
ギイイィィ…
301:
シーン...
かな子「うわ…黴臭い…」
まゆ「Pさん…?」
まゆ「Pさん……!」
シーン
智絵里「……もしかして他の部屋じゃ…」
桃華「そ、そんなはずありませんわ!確かに一番下の部屋だと…!」
幸子「!」
幸子「シイッ!誰かいます!」
「「「…………」」」
シーン...
幸子「Pさん…?」
302:
幸子「Pさ…」
幸子「っ!」
P「」
幸子「P…さん…?」
まゆ「!!」
ダダッ
幸子「Pさん!!」
グイッ
幸子「…………!!」
P「」
幸子「あ…あああ…」
幸子(体中がボロボロだ…)
P「」
幸子(……舌も…)
幸子(顔は…変な仮面があってよく見えない…)
303:
幸子「まゆさん…鍵!」
まゆ「」
幸子「まゆさん!!」
まゆ「」ビクッ
智絵里「鍵…かして…?」チャリ
幸子「……」
智絵里「……」
ガチャ
幸子・智絵里「「ひっ!!」」
まゆ「……?」ソロ...
幸子「来ないで!!」
幸子「来ないでください……!!」
まゆ「……!」
304:
幸子「……」
幸子「そんなはずない…」
幸子「これが…あの…Pさんのはずがありません…」
P「」
P「…」
P「……」パチ
幸子「……」
P「…子」
智絵里「! Pさん!?」
P「」ピク...
ガシ
P「・・・・・・」グッ...
智絵里「…!」
幸子「Pさん……!」ギュッ
幸子「う……う……!!」
P「・・・・・・」
ス...
幸子「う……うぅ……!」ポロポロ
P「……」
305:
桃華「……Pちゃま」
ガシ
かな子「……」
桃華「何ですの…?離してくださいまし!」
かな子「……」フルフル
桃華「……どうして?Pちゃまいったいどうしてしまったんですの?ねえ!?」
ドクン ドクン
まゆ「ハア…ハア…!ゲホッ!」
真奈美「お…おい大丈夫か…?」サスサス
愛海「……」
バタアァン
幸子「!」
愛海「うひひ…そこまでだよぉ…」
桃華「だ…誰ですの!?」
愛海「あたしはここの管理者だよ!」
愛海「あなた達もう逃げられないよぉ…鍵かけちゃったもんねうひひ」
愛海「人も呼んでおいたしぃ…もうすぐ来るだろうからあきらめておとなしくしてね」
愛海「はぁ?ん…これでまた新しいぷにょふわが手に入るね…」
愛海「社長にも褒めてもらえるよ…うひひ」
306:
幸子「・・・あなたですか?」
ユラリ…
幸子「あなたがPさんをこんなにしたんですか?」
愛海「怒ってもだーめ!鍵かかってんだから無駄だよ」
愛海「でもこの声聞き覚えが…あっ!あなた幸子ちゃんじゃない!?」
幸子「・・・愛海さん」
愛海「覚えててくれたんだ!嬉しいな!いやー何年振りだろう」
愛海「感動の再会ってカンジ!またふれあえるなんて!どのくらい育ったのかじっくり診てあげるからね!」
幸子「 あ な た が ・・・ や っ た ん で す か ?」
愛海「あー…もしかして怒ってる?」
愛海「でもね、社長が好きにしていいって言ったからあたしはやったんだよ?だからあたしは悪くないよ」
愛海「いや―――こんなきれいなひと手にかけるのあたし初めてだったから…」
愛海「男の人だってのにすごく楽しかったよぉ」
愛海「体中をもみもみしてね…肩、頬、胸、脚、腿、おなか…」
愛海「もう全身最高!新しくめざめちゃったよね!」
307:
幸子「……」
真奈美「……お仕置きが…必要なようだな」ゴゴゴゴ
愛海「げえっ!真奈美さんも居たの!?」
愛海「でも鍵かかってるから大丈夫だもんねー!真奈美さんもあとでじっくりともみもみしてあげ…」
ガチャリ
真奈美「ほう…………?」
愛海「……え?」
愛海「嘘!?なんで鍵開いてんの!?」
まゆ「………」ゴゴゴ
愛海「ピッキングしたの!?嘘でしょ!?さっさと南京錠もかけとけばよかったー!!」
真奈美「……」
まゆ「……」
幸子「……」
愛海「……」
愛海(これはヤバい…本当にヤバい)
308:
愛海「ふっ…」
愛海「三十六計逃げるにしかず!!お仕置きされてたまるかー!!」ダッ
愛海「あばよとっつぁ…」ドン
愛海「うおっ!何…」
清良「……」ニコ
愛海「……は?」
清良「Pさんがケガしてた時のためについて来てよかったわ…」
清良「最近おとなしいって聞いてたけどこんな事してたの……」
愛海「ああああ…」ガタガタ
愛海「逃げっ……」
清良「逃げたってムダですから♪」
愛海「っ!」
ヘレン「フッ…あなたにも世界レベルの体験をさせてあげるわ」
愛海「なんでいんの!?」
ヘレン「世界の海は私の海!愛海…あなたも世界レベルにしてあげる」
愛海「う…うう…」
ザッ...
愛海「ひいっ!」
クラリス「神に弓引く愚か者よ……その罪、その血を以て贖って戴きましょう!!!」
クラリス「神を畏れぬ愚か者よ……」
クラリス「天 罰 覿 面!!!(開眼)」カッ
愛海「」
309:
真奈美「格の違いを見せてあげよう」
清良「愛海ちゃんなら、禁断の治療にも耐えられそう♪」
ヘレン「先ほど庭で、梅の花が散っていたわ。……数分後のあなたの姿よ」
クラリス「祈りを知らぬ傲慢なる者よ……!悔い改めなさい!!」
それはただ一言こう呼ばれるものだった
『絶 望』 と …
310:
愛海「ああああ…た…たしゅけて…」ガクガク
クラリス「どうやら、この娘に関しては特別詳しく取り調べる必要がありそうですね」
真奈美「連れて行くのは任せてくれ」ガシィ
愛海「助けてええええええ!!!もみもみしたのはほんとだけどケガはあたしじゃないよぉぉー!!」
ヘレン「あら、ちょうど部屋が空くじゃない。あなたたち、出てちょうだい」
清良「大丈夫、少々痛くても死にはしませんから。はーい、観念してくださいね♪」
愛海「助けて!助けてぇ!!誰か!誰か!!いやだああぁぁぁ……!!」ズルズル
バタン
まゆ「……」
桃華「……」
かな子「……」
智絵里「こ…こわいです…」ブルブル
幸子「……間違いなく今までで最強の布陣でしたね」ゾクッ…
311:
幸子「それじゃあ…早く…逃げましょう」
まゆ「……」
幸子「まゆさん…?」
まゆ「うっ…ひぐっ…Pさぁん……!」
桃華「ぐすっ…P…ちゃま…!」
幸子「……」
かな子「ふ…二人とも…早くしようよ…」
まゆ「ひぐっ…だ…だってぇ…」
桃華「Pちゃま…Pちゃまぁ…」
幸子「……」
幸子「ふた
智絵里「いつまで泣いてるんですかっ……!!」
まゆ「っ!」ビクッ
智絵里「ここで泣いてたって何も変わらないんですよ…!」
智絵里「わたし達が今やるべきことが何なのかを考えてくださいっ!!」
幸子「智絵里さん…」
まゆ「……」グス
312:
まゆ(そうです…今は…)
まゆ(今はPさんをここから連れ出すことだけを考えないと…!)
まゆ「………!」ゴシゴシ
まゆ「ごめんなさい…!行きましょう!」
まゆ「桃華ちゃんも…行きましょう」
桃華「…わかりましたわ!」
幸子「かな子さん、Pさんは任せます」
かな子「任せてください!おんぶならできそうです…よいしょ」
かな子「っ……」
かな子(……す…すごく軽い…こんなのって……)
かな子(一年もこんなところにいたら仕方ないですよね…きっと…きっとすぐ元に…!)
幸子「それじゃあ急いで行きますよ!」
タタタタ...
P「……」
313:
??????????????????????????????
社長「……」
社長「…おのれェ…」
社長「おのれプロデューサーァァ……」
社長「あの部屋でとうに朽ち果てたはずが……」
社長「闇の底から這い出てまた私から桃華を…光を奪い去ろうというのか……」
社長「そうは…そうはさせぬぞ」
社長「よいか…桃華をここから連れ出そうとしているものを一人残らず抹殺せよ」
社長「特にあのP…あ奴だけは何としても討ち取れ!」
社長「ただし桃華を傷つけることは許さぬ!!万が一にも危害が及ぶことがあったら
 その時はお前たちも地獄へ送ってくれるわ!!」
仁美「御意!」
亜季「サー!」
あやめ「ニンッ!」
社長「よし行けい!私の前に桃華の身とPの首を供ぜよ!!」
315:
智絵里「ふう…」
智絵里(…なんで誰も追いかけてこないんだろう…)
智絵里(愛海ちゃんは人を呼んだと言っていたし…なら誰かは来るはずなのに)
智絵里(考えすぎなのかな…)
幸子「はあ…はあ…疲れた…」
まゆ「もう…汗だくですよ?拭いてあげますね」フキフキ
幸子「あ…ありがとうございます…」
P「……」
まゆ「さあ急ぎましょう…抜け道に行ってしまえばこっちの物です」
「行きましたね……」
316:
タタタタ...
幸子「この通路もの凄く汚いですね…埃だらけ」ケホ
まゆ「桃華ちゃんのお洋服、汚れちゃうんじゃないですか?」
桃華「……」グイ
かな子「わわっ!?なんでスカートを捲って…!?」
桃華「構いませんわ!こうした方が走りやすいですもの」ギュッ
智絵里(何だかキャラが変わっちゃったみたい…)
桃華(そうですわ…格好なんてどうでもいい)
桃華(暖かい暖炉だって、かしずく使用人達だってもういりません)
桃華(口がきけなくてもいい…お怪我だってきっと治りますわ)
桃華(いっしょに居たい…ずっと…ずっと!)
317:
カタン...
幸子「!」ピク
幸子「…? 待ってください!」
まゆ「どうしたの?」
幸子「しっ!」
シーン...
幸子「……」
カサッ
幸子「!」
あやめ「隙あり!伊賀忍法・手甲鈎!」ヒュバ
幸子「うわっ!?」ガキン
まゆ「こ…このっ!」
あやめ「ニンッ!」スゥ...
智絵里「…な……何ですか!?今の…」
幸子「気を付けて!まだその辺にいますよ!」
318:
まゆ「……」
ガサ
まゆ「!?」
仁美「女一輪、鮮やかに咲く!いざ、尋常に勝負ー!」バサッ
まゆ「きゃあ!」ブンッ
仁美「うわっ!対応早っ!」
仁美「なかなかやるねー!でも、まだ戦いは始まったばかりだよ!」スゥ...
幸子「さっきから何なんですか!?もう!!」
桃華「これは…話に聞いたことがありますわ…」
桃華「なんでも特定の人物をやかに始末するための部隊だとか…」
かな子「えええ!?そんな人たちをけしかけるなんてひどすぎじゃないですか!?」
まゆ「忍者と…侍?でしょうか?」
幸子「最初の人は忍法とか言いながら物理攻撃しかけてきてましたよ?何考えてるんでしょうか」
319:
ス…
あやめ(ふふふ…油断大敵です…!くノ一を馬鹿にする者は許しません!)スチャ...
桃華「……」チラ
桃華「っ!?」
あやめ(この毒吹き矢でさらばです!ニンッ!)プシュッ
桃華「Pちゃま…!」
桃華「……っ!」バッ
プス
桃華「あ…」ドサッ
P「……!」
まゆ「桃華ちゃん!?」
320:
幸子「このっ!!」
あやめ(やっばぁい!!やってしまいました!!)
あやめ「ちょ…ちょっと待つのです!!」
幸子「!」
あやめ「取り引きです」
幸子「取り引き…?」
あやめ「桃華ちゃんの身柄を引き渡してもらいたい!その代り桃華ちゃんの命は保証します」
まゆ「なんですって…?」
あやめ「桃華ちゃんに打ち込まれた吹き矢には毒が仕込まれています」
あやめ「放っておけば半時を待たずして必ず命を落とす…」
智絵里「桃華ちゃん…!大丈夫!?」
桃華「う…」ハアハア
321:
あやめ「解毒剤はこちらの手にあります…」
あやめ「我々としても死なれては困るのです」
あやめ「さあ…どうします?」
まゆ「……」
智絵里「桃華ちゃん…!」
桃華「ハア...ハア...」
まゆ「…………」ギリ
まゆ「わかりました…その取り引き…うけます」
幸子「……選択の余地はないですね」
あやめ「ではこちらに連れてきてください」
智絵里「桃華ちゃん…いきますよ」
桃華「……ゃ」
智絵里「!」
322:
ギュ…
P「!」
桃華「……いや……ですわ…」
桃華「いっしょ……いっ…しょに……ずっと………」
まゆ「……」
P「……」クイ
桃華「…?」
P「……」パク パク
桃華「……」
桃華「……」コクリ
まゆ「…………」プイッ
亜季「ではこちらへ…むこうにいた護衛の人に渡しておきましょう」
323:
あやめ「それでは…お命頂戴!」
仁美「一騎駆けこそいくさ場の花!いっくよーっ☆」
仁美「華の大傾奇っ!」
あやめ「いきます!忍術・名刀乱舞!!」
かな子「くっ…!」
まゆ「危ないっ!」ドゴ
あやめ「甘い!忍法空蝉の術!」バサァ
仁美(今です!)
亜季「私はスナイパー・アキ!狙った標的は必ず自分の手で倒すのであります!」
チャキ…
亜季「ワンショット…ワンキ…違いますね。なんでしょう?とにかく!あなたのハートを狙い撃ち♪」
パァン
バチュンッ
幸子「うわっ!?」
バチュ バチュン
まゆ「な、なんですか!?」
幸子「銃かなにか…遠距離攻撃のようです!」
324:
まゆ「狙い撃ちになっちゃいますよ!明かりを消しましょう!」
幸子「でもまだ忍者がその辺にいますよ!」
まゆ(狙いは割と正確…この距離じゃ近づく前にやられてしまうかも)
かな子「……」
かな子「明かりを消してください!」
まゆ「!」
かな子「考えがあります…ちょっと幸子ちゃん…みんなも聞いてください」ゴニョゴニョ
幸子「ええ!?……わ、わかりました!」
フッ...
亜季「ムッ!」
亜季「ムダな抵抗を。降伏すればよいのに」
亜季「だが…さすれば忍者と侍が彼女らを切り裂く!!」
仁美「ふふふ…何か計略を思いついたのかな?」
仁美「だけどそんなことをするのは弱い証拠…虎はなぜ何もしなくても強い?元から強いから!」
あやめ「成程、この状況でもあきらめない姿勢…只者では無いようですな」
あやめ「ならば!くの一あやめ、必殺の一撃を受けてみよ!」
325:
仁美「合戦の作法しかと見て置け!冥土のみやげにね!!とりゃー!」ザッ
あやめ「駆け抜けること風のごとく! ニンッ!」シュバッ
かな子「今です幸子ちゃん!」
幸子「ええい、ままよ!」
            コスモ
幸子「思い知りなさい!アイドルの頂点が誰であるかを!!燃えろボクの小宇宙!!」キュオオオォォ
   サチコスパーク
幸子「『溢れる輝き』!!」カッ!
あやめ「うおっ!?」
仁美「まぶしっ!」
かな子「今です…!」
智絵里・まゆ「「……!」」
ドガッ!
326:
あやめ「くっ…!勝負はわからぬものですな…!」
仁美「フフ…いつでも逃げれば生きられるというものじゃなく…
 突き進んだほうが生きのびられる場合もあるんだね…!」ガクッ
まゆ「これであっちの一人だけに…」
あやめ「言ったはずです…勝負はわからぬものだと」シュンッ
まゆ「えっ…!?」
あやめ「これぞ忍法・変わり身の術!かかりましたな!ニンッ!」
智絵里「まるで…本物の忍者みたい…!」
あやめ「まだわたくしの実力を疑っているのですか!?よろしい!ならば全力でゆきます!」ゴゴゴ...
あやめ「忍法・分身の術!!」
ボンッ!
幸子「なっ!」
まゆ「こ…これは!」
あやめ「「「ニンと!?あやめが3人に!?いざ、本物に向けて、かかってみよ!」」」
かな子「ぶ…分身……!?」
あやめ「「「もし外したら…天誅ー!ですよ!」」」
智絵里「すごーい…!本物の忍者だねっ…!」
あやめ「「「ふふふ…そう言われると照れますな」」」
幸子(…これはどうすれば……?)
かな子(ちょっとみんな!来てください)ボソ
まゆ(何ですか?)ボソ
かな子(聞いてください!3人で…)ボソボソ
327:
あやめ「「「何をボソボソと!来ないならこちらから行きますよ!」」」
幸子「……」ニコ
まゆ「……」ウフ
智絵里「……」エヘヘ
あやめ「「「……?」」」
幸子「ボクは右端」
まゆ「まゆは真ん中…」
智絵里「わたしは左端ですねっ…!」
あやめ「「「え?ちょっと待って」」」
3人「「「えいっ!!!」」」
スカッ
ドゴオッ
スカッ
あやめ「ぐほあっ!!い…いっぺんになんて…ず…る…」ガクリ
幸子「勝てれば…」
まゆ「いいんです」
智絵里「これで今度こそあっちの一人だけ…」
かな子「決着をつけましょう!」
328:
幸子「残りはあなた一人だけです」
亜季(二人がやられましたか…)
まゆ「覚悟してくださいねぇ」
亜季(四対一のこの状況で…)
智絵里「もう…好きにはさせません…!」
亜季(わたしが取るべき行動は一つ…!!)
かな子「さあ…行きますよ!」
亜季「降伏します!お助けを!」ドゲザ
幸子「…そんなのでいいんですか?あなた軍人じゃ…」
亜季「わたしは傭兵です!何より大事なのは自分の命であります」
亜季「社長には全員始末したと報告しておきますのでどうかお見逃しを…」
まゆ「ほかの二人はあれだけ頑張ってたのに情けないんですねぇ♪」
亜季「…………仕方ありませんな」ピク
智絵里「それじゃ…行きましょうか?」
かな子「そうですね…」
幸子「約束は守ってくださいよ?」
亜季「それはもちろんであります!私にお任せを!」
まゆ「はーあ…じゃあ行きましょうか」スタスタ
329:
亜季「……」
亜季「……」
亜季「なんて言うとでも思ったら大マチガイであります!!」ジャキッ
あやめ「さすが亜季殿!!教えた山彦の術ですな!!」
仁美「すごい裏切り!石田光成みたーい☆」ミッカデンカ!
亜季「敵に背を向けたのが運の尽き!私のコイツが火を噴くであります!」
亜季「この特製ロケットランチャー型巨大クラッカーであなた方を狙い撃ち!」
幸子「ず…ずるいですよ!!ウソをつくなんて!」
亜季「さっきあなたたちも言っていたでしょう!勝てればいいのだと!」
亜季「敵が何を言おうとさっさと止めを刺すべきだったのであります!」
まゆ(あれっこの感じ…どこかで…)
亜季「それでは!」スチャ...
智絵里「きゃ…やめ…!」
亜季「メリー・クリスマス!!!(地獄で逢おうぜ)」カチリ
幸子「……!!」
智絵里「………」
かな子「……?」
亜季「………あれ?」
亜季「フンッ!……動けこのポンコツ!スリー…トゥー…ワン…GOファイヤー!」
ドゴォン!
幸子「わっ…」
智絵里「ひっ……」
かな子「きゃ……」
まゆ(やっぱり…)
330:
あやめ「ゲフッ!」
仁美「ガハッ!」
亜季「ゲッホ!ゴホッ!何ですかこれは!!暴発したですと!?」
亜季「くっ…!さては…!やはり製作者が悪かったのか…!?」
幸子「……」
亜季「あっ」
まゆ「……何か言い残すことは?」
亜季「……」
亜季「フッ…我々は道をふさいだ岩石」
亜季「小さな障害物にすぎず、あなた方の流れを食い止めることはできなかったようですな」
仁美「ふふ…あなたたちの顔、汚れて真っ黒な汚い顔だね……だがそれがいい!」
仁美「その汚れがいい!これこそどんな境遇でも夢をあきらめないアイドルの衣装ではござらんか!」
あやめ「皆さん!私達は会社や誰かの道具じゃないのです!」
あやめ「このような事でしか自分を表現できませんでしたが…いつも自分の意志で戦ってきました」
あやめ「あなた方もそうなのでしょう!あなたたちの勝利を願っていますよ!ニンッ!」
331:
幸子(自分の意志で…か)
幸子「……」
幸子「あなた達みたいなボクネンジンは煮ても焼いても食えやしません」
幸子「こんな人たちほっといていきましょう!構ってる暇なんてないですよ!」
まゆ「!」
亜季「………止めを刺さぬのでありますか?」
まゆ「……そうですね…急がないといけませんもの!」
あやめ「あなた達…」
仁美「…なかなかの傾き具合だねっ」
幸子「それでは…」
まゆ「行きましょう!」
智絵里「はいっ…!」
かな子「はい!」
タタタタ...
亜季「……」
亜季「いやあ手強かったですな…」
あやめ「あれならこの先も大丈夫でしょう!」
仁美「きっと最後まで傾き通すだろうね!」
仁美「ただ、この後アタシたちどうなっちゃうんだろうね?」
あやめ「打ち首かもしれませんな!」
亜季「そうなったらとりあえず逃げるのであります!」
仁美「まー人質とかだったのに出世した武将もいるもんね!また頑張ればいっか!」
332:
社長「言ったはずだろうが!!桃華に危害が及ぶようなことは決して許さぬと!!」ドンッ!
社長「その上きゃつを取り逃がすとは…!!しかもそのまま3人とも逃げやがって!!!!」
真奈美「……」
社長「…お前もこの度の企てに手を貸したのか……?」
真奈美「いや…私は…」
桃華「待ってくださいまし…」
社長「!」
桃華「真奈美さんは関係ありませんわ…わたくしが…むりやり巻き込んだのだから……」
桃華「だから真奈美さんは…」フラ
真奈美「も…桃華君!」
社長「おお…!」
桃華「お願い…真奈美さんは許してあげて…」
真奈美「桃華君…」
社長「……」
社長「良いとも…良いとも」
社長「だからお前は何も心配せずゆっくりとおやすみ…」
桃華「Pちゃまも…行かせてあげてくださいまし…」
社長「……!」
333:
桃華「Pちゃまは…もう口もきけませんわ…」
桃華「手も…足も…動きません…」
桃華「一年もの間…暗闇の中で充分苦しみましたわ…もう社長も気が済んだでしょう…」
桃華「これ以上…あの方から…………奪わないで…」
社長「……」
桃華「お願いですわ…」
社長「……」
社長「わかった…」
社長「もう、あの男には手を出さぬ…安心するがいい」
桃華「ほんと…?」
社長「約束しよう…だから何も気に病まずゆっくり体を休めるといい」
真奈美「良かったな…桃華君」
桃華「……!」ホッ...
真奈美「それじゃあ寝室まで送ろうか」
桃華「ありがとうございます…お父様」
334:
社長「……」
社長「……」ギリッ......
「社長…」
社長「今度は……奴らを呼べ…!!」
「茜ちゃん!出撃命令だよ!」
茜「えっ!?出撃ですって!」
茜「でも私今日はちょっと用事がありまして…!」
「でも社長直々の指示だっていうから…何でも鷹の団の人たちを倒せとか」
茜「何ですって!!?」
茜「それは奇遇ですね!!私の用事ってのもその…鷹の団のプロデューサーになんですよ!!!」
335:
木場真奈美(25)
柊志乃(31)
白坂小梅(13)
遊佐こずえ(11)
柳清良(23)
ヘレン(24)
クラリス(20)
丹羽仁美(18)
大和亜季(21)
浜口あやめ(15)
日野茜(17)
338:
……桃華
……この一年口をきくことはおろか部屋に閉じ籠ったきり姿さえ見せなんだ
扉越しに私が一声かけると気でも狂れたかのように叫び泣き喚いた…
まるで恐ろしい怪物にでも追いつめられたかの如く
『ありがとうございます…お父様』
社長「くっくっく…」
社長「お父様だと……」
社長「愛しい男を幽閉し……嫉妬に狂い」
社長「あまつさえ実の娘に鬼畜にも劣る所業を行ったこの私に…お父様と…」
社長「……許さぬ」
社長「桃華にそう言わしせしめた……P」
社長「貴様だけは必ず……!!」
339:
――――――――――――――――――――――
幸子「よいしょっ…と!」
かな子「ようやく連れてこられましたね…!」ハアハア
美世「いやあよかったぁ…あんまり遅いからもう手遅れだったのかと思っちゃったよ」
美世「じゃあみんな乗って!出発するよっ」
まゆ「わかりました」
智絵里「あ…まゆちゃんはそっちね」
まゆ「?」
智絵里「Pさんの具合を横で見ててねっ!」
まゆ「……」
P「」
まゆ(…言葉が見つかりません…聞いてほしいことがたくさんあるのに)
美世「よし!出発するよ!」ブロロン ブロロン
340:
智絵里「こんな時に…のんきなこと言ってられないけど…」
智絵里「これでこの街は見納めかもね…」
幸子「……」
かな子「……」
智絵里「思えばいろんなことがあったよね…」
まゆ「……」
P「……」
智絵里「……もう…ずいぶん遠くなっちゃったなあ…」
P「……」
まゆ「……」
ギュッ
幸子「……」
ブロロロロ…
341:
ゴゴゴゴゴ…
かな子「……?何の音…?」
まゆ「こ…これは…!追手ですか!?」
ドドドドド
まゆ「あれは…!」
茜「見ぃつけましたよぉ――――っ!!!!」ドドドド
「イエ―――――イっ!!!」
まゆ「えっ…あの先頭の子…」
かな子「は…走ってるっ!?」
幸子「は…っ!追いつかれますよ!!こっちは車なのに!」
茜「車より走ったほうがいです!!人間の可能性を信じましょう!!!」ドドドド
美世「ええっ!?この道路、どれくらい出していいんだろ!?60キロくらい!?」
かな子「ちょ…ちょっとまずいですよ!」
342:
幸子「ここはボクが時間を稼ぎます!!行って!」
まゆ「…だ、ダメです!無茶はよして!またあの時みたいに…!」
幸子「!」
幸子「心配しないでください!もうあんな大人数相手は懲りました!ヤバくなったら逃げますって!」
まゆ「…………!」
P「……」
幸子「さあ…てと…」
幸子「!」
かな子「私も行きますよ!少しはいいとこ見せないと!」
幸子「ふふ…お願いします!」
幸子「『セクシーアピール』!」
かな子「『甘い魔法』!」
ドガガガガ…
「くっ!やるねっ!!」「まだまだまだ!いっくよーっ!!」
幸子(この人たち…何人倒しても全然怯まない!)
幸子(なにかもの凄いパッションで満ち溢れてる!!)
「どいてくださーーーーいっ!!」
幸子「!」
幸子「わわっ!」ドコ
343:
茜「元気そうな人がいますね!!!私と勝負です!!!」
幸子「フフフフ…こんなにカワイイボクに挑もうだなんて…愚かな人ですね!」フフーン
茜「うわっ凄い自信だ!でも私は負けませんよ――――っ!!!」
茜「燃えていくぞ――――!!元気バリバリ!!!!」
幸子「ヒイッ!?」ビックゥ
かな子「声大きいです!」
茜「やっぱりお仕事は楽しいですね!!!」
幸子(何だこの人!?)
幸子(この人の異様な迫力…ただものじゃない!)
幸子(………………)
幸子(…知ってる)
幸子(覚えがある……これは……この感じは)
幸子(きらりさんと同じだ!!)
幸子「こ…これはまずい…かな子さん!!逃げますよ!!」ダッ
かな子「えっ!?わ、わかりました!」
茜「あー!ちょっと逃げないでくださいよ!!待ってー!!!」ドドド
344:
幸子(やばい…やばい…!ここは…そうだ!あれを使おう!!)
晶葉『幸子よ、もしも前に言ってたようなすごい強敵に出会った時はこの爆弾を使うんだ』
晶葉『ん?何、大丈夫 本当に爆発したりしないさ、大量の煙が出るだけだから』
晶葉『煙で目くらましをしてその隙に逃げるといい』
幸子「ええいっ!これでどうですかっ!」ポイッ
茜「おやっ!?なんでしょうか!!!?」
まゆ「何ですか今の?」
幸子「前に話した晶葉さんがくれた爆弾です!これで少しは時間稼ぎになっ
345:
ズゴゴゴゴ…
かな子「きゃああああ!」
智絵里「わ…わわわ…!!」
幸子(あ…あれ?ば…爆発して…る……)
まゆ「大爆発しましたよ!?いくらなんでも威力が強すぎるんじゃ…これじゃあの子もしかして」
茜「うううう???、ボ ン バ ―――――――――っ!!!!」ボシュッ
まゆ「全然効いてない!?」
茜「あなた達も!!燃え上がってますね!!!」
茜「エンジョイ&エキサイティング!!ファイ!ヤ――――!!!」
智絵里「す…すっごい元気な人です…」
幸子「…元気なんて生易しいものじゃないですよ…あれは」
幸子(間違いない…あの人は…同じだ!)
幸子(でもどうして!?どうしてあんなのがボクやPさんの前にばかり現れるの!?)
『これより一年の後 蝕の時!!』
幸子(…………そんな)
『この人の夢が終わる時…あなたに死がおとずれるにぃ…ぜったい逃げられない死にょわ…!』
幸子(そんなはずない……!!)
346:
まゆ「どんどん近づいてきますよ!!」
かな子「ま…まずいです!!」
茜「うおおおお!!!追いついたああぁぁ―――っ!!!」
茜「踏み出す一歩が道になります!!! 全 力 !!」
茜「トラ――――――――イッ!!!!」ドガシャ
美世「うわわわわ!!!」ギャギャッ
キイィーッ ガシャアァン
幸子「くっ…!ここはもう一回足止めを…!」
まゆ「いえ…ぎりぎり間に合いました!!」
ヒュン ヒュン
茜「むっ!!?」
ドドド…
茜「これは…!!」
みく「にゃはは…出迎えの祝砲って奴だにゃあ!」
みく「……」ス...
みく(ふふ…一度やってみたかったのにゃあ)ドキドキ
みく「それじゃあ!みんにゃ!!」
みく「全員とつにゅる…れ……」
みく「あれ…!?」
「よーし!」「行きますよ!!」「おーっ!!」
みく「ちょ…ちょっと待つにゃ!今の無し…!もっかい!!」
347:
茜「ふっふっふ…盛り上がってきましたね!!!」
茜「噂に高い鷹の団!たっぷりと味わわせてもらいましょう!!」
ザ!
幸子「あなたの相手はこのボクです!」
幸子「『あなた達』が何者だか知りませんが…ボクが決着をつけます!!」
茜「……」
茜「あなた…何か知っているようですね!!そうか!!」
茜「きらりさんが鷹の団に元気でかわいい子がいるって言ってましたがあれはあなたのことですか!!」
幸子「!!」
幸子(間違いない…!やはりこの人は…!)
茜「これは思いもよらない前夜祭になりそうです!!」
茜「さあ…やりましょう…!!!」
348:
茜「そうだ!!自己紹介がまだですね!!日野茜、好きな食べ物はお茶です!!」
幸子「……」
幸子「お茶は飲み物では?」
茜「あ、そうですよね!!じゃ、好きな飲み物はお茶ですっ!!!!!よろしくお願いします!」
幸子「ボクは世界で一番カワイイ女の子!輿水幸子です!!行きますよ!!」
まゆ「幸子ちゃん!」
P「……」
まゆ「Pさんのこと頼みましたよ!」
「まかしといてよまゆちゃん!」
P「……」
ワアアアア...
P「……」
まゆ「……」
まゆ「いきますよ!!」
まゆ(今はとにかく…!ここを切り抜けるんです!!)
349:
茜「うおおおおおお!!!行っくぞ―――!!!」
幸子「うああああああ!!」
ドガア
ドンドンドンッ
ガガガガガガガ
千佳「わー!近づくと巻き込まれちゃうよ!!」
千佳「すごい…幸子ちゃん!完全復活ー!」
まゆ(た…確かにすごい!想像を絶するくらいに…!)
まゆ(でもあの人は幸子ちゃんのあの動きに難なくついていってる…!?)
幸子「ハア…フウ…」
茜「ふふふ…!!久しぶりです!!こんなに楽しく燃え上がるバトルは!!」
「少し待っててねPさん!」
P「……」チラ
P「……」
ググ…
パタッ
P「……」
350:
「あ…茜ちゃーん!負けちゃいそうだよ!やっぱり鷹の団強すぎ!!」
茜「むむむ…まだまだこれからじゃないですか!!!」
幸子「……」ハアハア
茜「ここはひとつ!!私が!!盛り上げるとしますか!!!」
茜「うっおおおおおおお燃えてきた!!!!」
茜「『熱血乙女A』!!!!」┣¨┣¨┣¨┣¨
幸子「ひいっ!」
ゴゴゴゴゴ…
茜「ふっふっふ…!ボンバーっ!燃え上がる情熱を表すような赤!!!私に一番似合う服ですね!!!」
茜「これが勝負服ってやつですね!!!それでは勝負をしましょうか!!!!」
楽しくなくちゃダメよ グッタリはまだ早い 微熱じゃまだまだイケる
オテンバなのがトリエ 前向きなのもトリエ
いつでも追い風でトライ決めるよ
全身全霊 全然オッケー 元気があれば何でも出来る
体験挑戦 何でもオッケー ほらまた胸が高鳴る
ドキドキしてるよっ!
You can do it! みんなも きっと同意 思い切って新しいコト始めよう!
Just do it! スクラム組んで Do it! 今日も熱き乙女 行動中!!
351:
茜「はぁはぁ…熱くなり過ぎた…」
幸子「う……ぐうっ……」ドサッ
茜「おや!!?お疲れですか!?でもまだまだ私は歌い足りませんよ!!!」
P「っ!」
まゆ「幸子ちゃん!?」ダッ
幸子「」
まゆ「幸子ちゃん!起きて!!」
幸子「」
まゆ「……!!」
グイッ
まゆ「目を覚ましてください!!やられちゃったんですか!?」ユサユサユサユサ
まゆ「……連れて行くんじゃなかったの?私を…」
まゆ「連れて行くんじゃなかったんですか!?」
まゆ「……連れて……行くんじゃ……」
P「……」
352:
茜「あなたもカワイくって元気そうですね!!私と勝負してくれませんか!!?」
まゆ「ひいっ…」
茜(あれえっ!?怖がられてる!!?)
幸子「うあああああっ!!」バキッ
茜「うおっ!」
幸子「人の耳元で…大声で叫ばないでください!!」
幸子「全く…体揺らしまくってくれちゃって…酔いそうでしたよ」
幸子「……でもおかげで力が出ました!」
茜「熱い会話を聞いていたら私まで熱くなってきちゃいましたっ!一緒に熱くなりましょう!!!」
「見てよあれ!」「幸子ちゃん!?」「無事だったんだ!」
智絵里「……!」
「まさかあの子と戦うつもり…?」「いくらなんでも無茶だよ!」
みく「…幸子……チャン」
P「……」
353:
幸子「まゆさん…あなたは下がっててください」
幸子「この人とは一人で勝負をつけます」
まゆ「何バカなこと言ってるんですか!ダメです!ここは引く…」
幸子「いいから下がってて!!」
まゆ「!」ビクッ
幸子「この人たちとは…どうしても決着をつけないといけないんです…」
幸子「自分の力で!!!」
354:
茜「聞かせてもらいました!!その熱い闘志!!弾ける汗!!輝く笑顔!!素敵ですね!!なんだかどんどん熱くなってきました!!!」
茜「じっとなんかしてられません!私の熱さもみんなに伝えましょうっ!!行くぞーっ!!!」
幸子(体中に響き渡る…!叫び声だけで吹き飛ばされそうだ…!)ビリビリ
幸子(通用するの?本当に?ボクの力は…通用するのでしょうか!?)
幸子(……出ろ!ボクの体!前に出てっ!!)
茜「うりゃああああ!!」ゴッ
幸子「……!!」ヒュバッ
ドシュゥ
茜「むっ!!!」
茜「とりゃあっ!!!」ブンッ
幸子「くっ!」シュッ
ズバッ!
幸子(…いける!!)
355:
みく「おっ!お―――!いけそうじゃにゃい!?」
まゆ「……!」
P「……」
幸子「止めですっ!」バッ
茜「!」
バギイィッ
幸子(やった…)
茜「今だあっ!!!」
バゴオォッ
幸子「うあっ!」
茜「全力アタ――――ック!!!」ゴスッ
バギバギバギッ
ズシャアアァ...
幸子「ぐっ…」
幸子(あれだけやってるのにほとんどダメージがないなんて…!)
幸子「っ!」
356:
茜「行くぞーっ!!!ファイヤーっ!!!」ボオオオォ
幸子「……!」
茜「かーらーのーっ!!!」
茜「 ボ ン バ ――― っ!!!」
カッ!
ズドオオォォォン......
幸子「ゴホッ…」
ドサアアァ...
茜「おや!?ちょっとやりすぎてしまいましたかね!!?」
まゆ「あ……!!」
みく「ね、ねえ!やばいんじゃにゃい!?」
かな子「……!」
P「!」グイ
「ちょ…Pさん…」
P「……」ギリ...
ポタッ
幸子(ダメなんですか…!?)
357:
??????????????????????????
仁奈『ケガしちまうですよ!!』
幸子『ゲホッ!』
仁奈『そんなのじゃケガしちまいますよ!体も汚れちまってます!』
幸子『汚れてもカワイイボクはさすがですね!』ゲホ
仁奈『どうしてこんな無茶な事するんでごぜーますか?アイドルってこんなことまでやるですか?』
幸子『どうでしょうか…』
幸子『でもボクをコテンパンにしたのはこんなもんじゃありませんでした…もっと』
仁奈『……』
仁奈『それもアイドルなんですか?』
幸子『まあとりあえずそのようですが…』
仁奈『怪獣みたいでやがります…ドラゴンの気持ちになるですよ!』
幸子『なれるんですか!?』
仁奈『幸子おねーさんはその人とまた戦いたいのでごぜーますか?』
幸子『……』
仁奈『やめた方がいいです!やられちまうですよ』
幸子『そうでしょうか』
仁奈『じゃあ勝てるんでごぜーますか?』
幸子『さあ…どうでしょうか』
仁奈『えー?どっちでやがりますか?』
??????????????????????????
358:
幸子「!」ハッ
茜「もう終わりですかね!!」
幸子「うりゃあっ!」ズバァッ
茜「わわっ!!!」
幸子「フウ…ハァ…」
茜「く…!!や…やりますね…!!!」グラ
幸子(効いてる!!)
茜「あまり余裕はなくなってきました…!そろそろ終わりにします!!!」
ガクガク
幸子「ゲホッ…」
幸子「さあ…どうなんでしょうか…」
359:
幸子(まずい…もうフラフラだ…これはもうまともに動けない…)
幸子(…どうする?)
茜「さぁ、よく見て下さいっ!!!毎日鍛えているこの身体をっ!!!」ゴゴゴゴ
幸子(どうする!?)
幸子(どうやって………!!勝つ!!?)
まゆ「……!!」ダッ
かな子「待って!」ガシ
まゆ「!」
かな子「待ってください!まゆちゃんが行ってもどうにもなりません!」
まゆ「離してかな子ちゃん…!」
まゆ「このままじゃ…このままじゃあの子が…!」
かな子「今行けば足手まといになるだけです!」
まゆ「うっ…!」
智絵里「幸子ちゃんの目…まだ諦めてません」
智絵里「まだ…やる気ですよ…!」
まゆ「……」
まゆ「…どうして…」
まゆ「どうしていつも…あんな無茶を…」
まゆ「もういいですよぉ…たまには逃げてよ…」グス
智絵里「……」
P「……」
360:
茜「うりゃあああ!!!全力で行くぞーっ!!!」ゴッ
幸子(…受けきれるかな!!?)
ガコオオオン
幸子「うぐぅっ!!」
ザザザザザ...
幸子「ゴホッ!」ズサ...
幸子(これ以上は本当にまずい…もう一発喰らったら戦闘不能だ…何とか隙を作らないと…)
幸子「そうだ!」
『これぞ忍法・変わり身の術!』
幸子(……あれを真似すれば…)
茜「おーい!!どこ行ったんですか!!返事してくださーい!!」
茜「こんなに楽しいのはいつ振りでしょうか!まだ楽しみ足りないですよ!!」
幸子(チャンスは一度)
幸子(それ以上はもう体がもたない…)
361:
幸子「……」
ガサッ
茜「そこですね!かわいいことするじゃないですか!!!」
茜「なかなか楽しかったですよ!!!行くぞ――――――っ!!!」
茜「うおおおお!私のこの手が真っ赤に燃えるぅ!!勝利をつかめと轟き叫ぶぅ!!」
茜「ばぁぁぁくねつ!!!あ!か!ね!! ボ ン バ ァァ――――――っ!!!!」ブウン
ドゴッ!
バキバキッ…
幸子(今だっ!!!)バッ
茜「ふっふっふ…いい線行ってましたよ!!!」クルリ
幸子「!!」
茜「てぇりゃぁぁぁっ!!ヒィィィィト!エンドッ!!!」ボッ
ゴギャアア...
茜「これで終わり………ぐうっ!!」
茜「っ!!?こっ…これは…!!!」
バキッ…
茜「『鍵付きクローゼット』っ!?」
362:
幸子「……っ!!!」
ドカァッ!!
茜「くっ!!!」
茜「う…ぐっ!!」バキィッ
幸子「っ…」ゴフッ
幸子「」ズル...
ドサァッ
茜「ふふっ……」
茜「や…やられ…ちゃいました…ねっ……!!」フラッ
ドサアァァ...
363:
智絵里「あ…!」
かな子「やっ…」
みく「やったにゃあ!!」
P「…!」
まゆ「さ……!」ダッ
まゆ「幸子ちゃん…」
幸子「」
まゆ「あ…」
まゆ「!」
幸子「……」グッ!
まゆ「よかった……!!」
ギュッ…
幸子WIN!
365:
―――――――――――――――――――――――――――
真奈美「桃華君…!」
桃華「……」
桃華「…ここは?」
真奈美「君の寝室だよ」
桃華「真奈美さん…」
真奈美「良かった…本当に…一時はどうなることかと」
桃華「……!」ガバッ
桃華「Pちゃまは…!Pちゃまはご無事なんですの!?」
真奈美「……」
真奈美「ああ…あれから半日以上立つけれどP君たちが捕まったという情報は届いていないようだ」
桃華「ほんとうに…!?」
桃華「…良かった」ホッ
桃華「社長は約束を守ってくれたんですのね…」
真奈美「……」
真奈美「とりあえず医者を呼んでくるよ」ガチャ
桃華「真奈美さん…心配おかけしましたわ…わがままばかり言ってごめんなさい」
真奈美「フッ…少しくらいお転婆な方が女は美しいものさ…」
桃華「うふふ…♪」
バタン
真奈美「フー…」
真奈美(……言えないな…鷹の団にまだ追手がかかっているなんて…)
桃華「……」
桃華(Pちゃまは確かに仰られましたわ…)
桃華「もどって…くる……って」ポロ...
366:
――――――――――――――――――――――――――――――
幸子「いたたたた!フギャー!!」
まゆ「……」グリグリ
幸子「痛い痛い!!泣きますよ!!!」
まゆ「うるさいですねぇ…手元が狂います」グッグッ
まゆ「勝手に突っ走ったんだから自業自得です」
幸子「きついですね…あなたがリーダーってほんとは皆おっかなくてついて来たんじゃないの?」
まゆ「真面目な話をしてるんです!!」ゴリッ
幸子「ン゛ッ……!!!」
まゆ「確かにあなたは一年前よりずっと立派になって…とてもいい戦力ですけど」
まゆ「だけど相変わらず引くことを知らないのは昔のままです」
まゆ「子どものケンカじゃないんです!引いたら負けなんてことはありません」
まゆ「やられちゃったらそれこそすべて終わりなんですよ…少しは頭の中も成長させてください」
幸子「大丈夫ですよ!ボクが負けるわけないじゃないですか!」フフーン
まゆ「そんなこと言って…やられちゃったら…どうするんですか……」グス
幸子「うっ……」
367:
P「……」
智絵里「Pさん…包帯変え終わりましたよ…!」
智絵里「それじゃ…移動の準備が出来たら…杏ちゃんたちと合流の場所に出発しますね」
智絵里「二人ともそこでゆっくり休んでてくださいっ」
幸子「はーい」
まゆ「……」
まゆ「Pさん…」
まゆ「……おかえりなさい」
P「……」
まゆ「……」
まゆ「智絵里ちゃん…どうなんですか?」
智絵里「わたしはお医者さんじゃないから…詳しいことは…」
まゆ「お願い…」
智絵里「……」
智絵里「あのね…手も…足も…腱が切られちゃってるの」
智絵里「だから…立ち上がることも…歌や踊りも…もう……」
まゆ「ぅ……」カタカタ
まゆ「ぁ……」カタカタ...
まゆ「…………そう、ですか」
まゆ「みんな急いで!早く移動しましょう!」
智絵里「……」
智絵里(移動して…杏ちゃんたちと合流して…そのあとは)
智絵里(その先は……どうするんでしょう……)
368:
幸子「あ――痛い!まゆさんこそマッサージの一つでもちゃんと覚えればいいんですよ」
P「……」
幸子「……ふふ」
幸子「二人してボロッボロですね…まあ寝ていれば運んでくれるんですから楽でいいですが」
幸子「昨日から休みなしで頑張ってましたしね…」
幸子「…あの時と同じですね……諸星きらりさんの時と…」
幸子「二人ともボロボロ!だけど…二人とも生き残りました」
P「……」ソワソワ
幸子「……?」
幸子「あっ!さては新しい歌とか振付のこと考えているんでしょう!!」
P「……」コクリ
幸子「ぷっ!アハハハ!」
幸子「あなたらしいですね!変わりませんね…いつまでたっても」
幸子「カワイくて歌もうまいボクも手伝ってあげますよ!いっしょに考えましょうか!」
369:
ボンバー!!
幸子「!?」
幸子「この声…まさか!」バッ
茜「いやあ勝負の後のお茶はうまい!!!あなた達もどうですか!!!」
幸子「茜…さん…!?まだ戦うつもりですか!?」
茜「いいえ!別に戦いに来たわけじゃないですよ!!さっき完敗しましたから!!」
茜「皆さんお疲れだと思いまして!!冷たいお茶を持ってきました!!どうぞ飲んでください!乾杯!!」
幸子「……あ…ありがとうございます」
茜「本当に見事にやられちゃいましたね!今後一層精進しますよ!!!」
幸子(これ以上強くなられたらもう太刀打ちできませんよ)
幸子「そうだ、Pさんもお茶飲みます?」
P「……」コクリ
茜「あっ!!その人がウワサのPさんですね!!!会いたかったんですよ!!」
幸子「…?」
茜「話には聞いてましたけど…本当にそんなボロボロになってしまったんですね…!!」
まゆ「……!?」
茜「どうもあの人たちの仲間になる男性だという話じゃないですか!!!すごいですね!」
幸子「……」
P(あの人たち…?)
370:
茜「あなたがもしきらりさんの言うようにあの人たちの仲間になる人なのでしたら…」
茜「持っているんですよね!覇王の卵を!ちょっと見せていただけませんか!」
幸子「覇王の卵…?あの青い変な首飾りのことですか?持ってないみたいですよ」
茜「え!?」
幸子「だってPさんを連れ出した時…そんなものもってませんでしたが…」
茜「えーっ!!そんなぁ!!」
茜「あれですか、あの拷問の時それを含めて何もかもとられちゃったとかですか!?」
まゆ「ちょ…ちょっと!何言ってるんですか!」
茜「あ!ごめんなさい!何もかも失ってなんかいませんよね!!」
茜「体中ボロボロで歩くこともできなくても!歌うこともできなくても!!」
茜「あなたにはまだ命が!夢が!熱い心が!」
茜「そして何より頼れる仲間がいるんですね!!」
まゆ「……!!」
ザワザワ…
「何もかも失ったって…」「体中ボロボロ?」「もう歌えない…?」
智絵里「あっ……」
幸子「……!」ギリ...
かな子「い……言っちゃっ…た…」
茜「?」
371:
みく「それっていったいどういう事にゃ!ほんとなの!?」
まゆ「う……」
茜「……」
茜「あっ……!?これ…もしかして言っちゃいけないことでしたか!!?」
シーン…
茜「あ…あの…その……えっと……」
茜「まさかその…みなさんがまだ知らないと思って無くて…その…」
茜「ごっ!ごめんなさーいっ!!!走ってきます!!!」ダッ
幸子「ちょっと!!!逃げないでくださいよ!!」
茜「本当にごめんなさい!!さようなら!!」ダダダダ...
幸子「……!」
372:
ザワザワ…
幸子「……」チラ
P「……」スースー
みく「ねえ、ほんとなのにゃ?」
みく「でたらめ…でしょ?あの熱血な子の言ってたことは…」
まゆ「……」
みく「もう!らちあかない!いいよ!本人に直接聞くにゃ」
智絵里「む、無理だよ…」
智絵里「Pさんには…答えることができないよ…」
「「「……」」」
シーン…
みく「え…冗談だよね?」
まゆ「……」フルフル
みく「……」
みく「…」
みく「ふにゃあああ!何それ!?」
373:
みく「これからじゃなかったの…?Pチャンが戻ってきてこれからじゃなかったのにゃ?」
みく「訳も分からないうちにプロダクションを首になって…」
みく「一年間ロクに仕事もないけど頑張ってきて」
みく「仲間も半分以上いなくなっちゃって…それでも!それでもPチャンが帰ってくればって…」
みく「信じた挙句が…これかにゃあ…ニャハハ…!」
みく「だから言わんこっちゃにゃい…やっぱりにゃあ…やっぱりにゃあ!」
みく「こんなことだと思ってたのにゃ実際…」
みく「…これで」
みく「これで…もう…」
これで もう…
その先はみんな知っていた
だが 誰ひとりそれを口にする者はいない
風だけが…
戦の終わりを告げていた
374:
「どう…するんですか?」
「これから…私たちどうなるんですか…?」
まゆ「……」
「アイドルがみんないなくなったわけじゃないんですし…このまままゆさんが…」
智絵里「Pさんあっての鷹の団…それはみんなわかってるんでしょ?」
智絵里「いままで一番無理してきたのはまゆちゃんなんだから」
智絵里「これ以上無理させないであげて…」
まゆ(智絵里ちゃん…)
「…だけどそれじゃあ…私達…」
幸子「……」
ザッ
まゆ「時間をくれませんか…?」スッ
まゆ「まだここに来てない人たちが来るまで時間がありますから…それまで考えさせてください」
スタスタ
375:
幸子「……」
幸子「待ってくださいよ、考えるってどうするつもりですか?まさかこのまま…」
まゆ「幸子ちゃん、さっきみんなに何を言おうとしてたんですか…?」
幸子「え…?」
幸子「……」
幸子「自分で決めた道なんだから自分でどうにかしましょう って…」
まゆ「…強いですね、幸子ちゃんは」
まゆ「自分で決めた道だから…自分から辞められないこともあるじゃないですか…」
まゆ「その言葉を…今のPさんに言えるんですか?」
幸子「!」
まゆ「みんな弱いんです」
まゆ「弱いから…人や夢に縋ってる…」
まゆ「すがるものをなくしてしまった人には…何かしてあげられるんでしょうか…」
まゆ「優しい言葉をかけること…厳しい叱咤…」
まゆ「…まゆは」
まゆ「誰かに…そばにいてほしかったです…」
幸子「……」
まゆ「Pさんの所にいってきますねぇ…」スッ
幸子「……」
まゆ「Pさん…包帯取り替えましょう」
誰かに…
そばに…
376:
キュ…
まゆ(Pさんの手…こんなに小さかったんですね…)
まゆ(この手で…すべてを掴もうと…)
まゆ(この手が肩におかれるだけでいつもまゆの震えは不思議と止まりました…)
まゆ(何度も何度も…まゆの不安を掻き消してくれました…)
フルフル
まゆ「あれ…」
ブルブル
まゆ「あれ?」
まゆ(今度はまゆが…そうしなくちゃいけないのに…)
P「……」
カシャン
まゆ「きゃ…!」バシャア
まゆ「ご…ごめんなさい、毛布の代わりもってきますねぇ…」
まゆ「っ…!」
グイッ
まゆ「えっ!?」
P「……」ガバァッ
まゆ「Pさん…!?」
ギュウゥ
まゆ「Pさん…!?やめ…!!」
まゆ「!」
P「ぁ……」ガタガタ
まゆ「……」
P「……」ブルブル
まゆ「……」
まゆ「……」
まゆ「……」ギュ
377:
智絵里「…大変なことになっちゃったね…」
幸子「そうですね…」
智絵里「良い夢でも悪い夢でも…夢の途中は目覚め悪いよね…」
智絵里「それで…幸子ちゃんはどうするの…?これから…」
智絵里「またアイドルの修行?」
幸子「……」
幸子「智絵里さんは?」
智絵里「え…?んー…そうだね…」
智絵里「残った人集めて…事務員でも始めようかなあ…」
智絵里「そうすれば…Pさん一人くらい面倒見れるから…」
智絵里「私…初めて出会った時にPさんに見捨てないで、ってお願いしたんだ…」
智絵里「だから私も…Pさんのことを見捨てることなんかできないよね…」
幸子「だったら…ボクも…」
智絵里「幸子ちゃんはもうぬけてるから…そこまでしてもらう必要はないよ…?」
幸子「あなたには…あるんですか?」
智絵里「うん…だってわたし…まだPさんのアイドルだもん!」
智絵里「だけど幸子ちゃんは違う…自分で道を歩き始めたんだもんね」
378:
「幸子ちゃーん!」「幸子さん!」
幸子「ん?どうしました?」
千佳「幸子ちゃん、また前みたいに…一人で行っちゃうつもりなの…?」
千佳「その時はあたしたちも一緒に連れて行ってよ!」
幸子「みなさん…」
千佳「みんなで決めたんだ!一緒に行こうって!」
「そうだよ!私たち一緒のグループでしょう!」
「歌だって踊りだって、幸子ちゃんさえいてくれれば!」
幸子「……」
『ここならきっと見つかるよ…あなたにも、居場所が』
幸子(ボクの居場所…ほんとはあったのかもしれませんね)
幸子(自信過剰で依怙地で気が付かなかったけれど)
幸子(あの頃のボクがほんとに欲しかったものはここに…)
幸子(あのころの…)
幸子(どうして終わったりなくしてから…いつもそうだったと気が付くんですか…)
379:
まゆ「……」ガタガタ
まゆ「ハア…ハア…」ドキン ドキン
まゆ「……」
幸子「まゆさん」
まゆ「」ビクッ
まゆ「さ…幸子ちゃん…!」
幸子「…? Pさんは?」
まゆ「えっと…今眠ったところです…」
まゆ「……」
幸子「…どうかしました?」
まゆ「な…なにがですかぁ…?」
まゆ「別に…なんでも…」ポロリ
幸子「!」
まゆ「」ポロポロ
幸子「ど、どうしたんですか!?」
まゆ「…違うんです!これは…なんでも…」ボロボロ
幸子「なんでもないのに泣くんですか!」
幸子「Pさんがどうかしたんですか!?」
まゆ「違…!」
まゆ「やめてください…!!違うんです!!」
380:
幸子「……」
幸子「な…なんですか…」
まゆ「ごめんなさい…」
まゆ「行けません」
幸子「え…?」
まゆ「まゆは…幸子ちゃんと一緒に行けないです…」
幸子「……」
まゆ「あのPさんがあんなに小さくなって…あんなに震えて…」
まゆ「あの誇り高いPさんが」
まゆ「あんな……!」
まゆ「置いていけません…」
まゆ「今のPさんを…おいてなんていけません…」
まゆ「ごめんなさい…」ポロポロ
幸子「……」
幸子「…ボクも…」
幸子「残こ…」
スッ
まゆ「…誰の夢にもぶら下がらない…」
まゆ「あなたは…自分の道を行くんでしょう?」
381:
まゆ「桃華ちゃん主催のお食事会での夜の事、今でも覚えていますか…?」
幸子「…はい」
『決して人の夢にすがったりはしない…』
『誰にも強いられることなく自分の生きる理由は自ら定め進んでいく者…』
P「……」
『そして その夢を踏みにじるものがあれば全身全霊をかけて立ち向かう…』
『例えそれがこの私自身であったとしても…私にとってアイドルとはそんな…』
まゆ「あなたは…行かなくちゃ…」
まゆ「幸子ちゃんがPさんのアイドルなら」
まゆ「行かなくちゃだめですよ…」
まゆ「一人でも…行かなくちゃ…」
P「……」
どうして終わったりなくしたりしてから
いつもそうだと気が付くんだろう
382:
P「……」
P「……」
P「!」
P『……』
P『こんなところで何をおびえている』
P「…う…」
P「…あ…!」
P『行こうよ』
P『まだ遊び足りない』
P『夕日はまだ沈んじゃいない』
P「う…」
P「あああ!」
383:
ゴトン
ガラガラ…
幸子「!」
まゆ「!」
幸子「Pさん!?」
まゆ「そんな…どうやって!?自分では動くのがやっとのはずなのに…」
まゆ「…まさか…今の話を…?」
幸子「!」
幸子「とにかくボクは後を追います!」
幸子「まゆさんは智絵里さんたちに知らせてください!」
P「ハア…ハア…」
そう…少し休みすぎた
もう行かなくちゃ
この遊びはまだ終わってはいないのだから
あのイベントのライブは
まだ続いてるのだから
ガシャアアン
P「」
384:
????????????????????????
「Pさん」
「Pさん」
「お食事ですよぉ」
まゆ「あら眠ってたんですか?ごめんなさい」
まゆ「でも少しは風通さないと…」
(まゆ…)
まゆ「なんですか?まゆの顔に何かついてますか…?」
(…ここは?)
まゆ「また寝ぼけて…昔の夢でも見たんでしょう?」
(夢…そうか…あれは…)
385:
まゆ「最近は昔の仲間もあまり顔を見せなくなりましたけど…みんなどうしているんでしょうねぇ…」
まゆ「あの子はまだどこかで…歌を歌っているんでしょうか…」
まゆ「ほんと…今思うとあのころのことは何もかも夢だったような気がします…
  この子にはいいおとぎ話ですねぇ…」
まゆ「こら幸子ちゃん!アッキーいじめちゃだめでしょう!ご飯ですよ!」
幸子「はーいお母さん!」
(……)クス...
まゆ「いろんなことがありましたけど…今となってはみんな思い出です…」
まゆ「でもまゆには…今の生活の方が向いてます」
まゆ「あなたとこの子の…三人の生活の方が」
(そうだな…)
(こんな安らぎも…悪くは…)
386:
???????????????????????????????????
P「」ハッ
P「……」ググ…
ズキン
P「……!」ドサッ
P「……」
P「……」クスクス
P「ハハ…アハハハハ…」
P「は は
 は
  は…」
P「……」
P「……!!」
P「…ぐ」
P「ぐふ… う」グスッ
P「う…
 う…」
P「うぐ…
 ぐ…」
P「……」バシャ
P「……?」
ベッチー「……」
P「……!!」
ゴオオオ…オオオオ…
387:
幸子(Pさん…!)
幸子(ボクなんですか?あなたを追い込んだのは…)
幸子(あなたをそんなにしてしまったのはこのボクなんですか!?)
幸子(どうすればいいんですか…!?このままPさんに追いついて…)
幸子(それで…それで…!?)
幸子「!」
―――ゴオオオオオオオ
まゆ「あれは…!」
幸子(日蝕…!まさかこれが…!?)
P「…う…!!!」
 ドクン
幸子「Pさん!」
P「…!」
P「う… あ…」
P「あ…」
くるな…
P「あ 
 あ あ」
くるな!!
388:
幸子「!」
ゴゴゴゴゴ…
『『『……』』』
まゆ「な…何ですかあれは…!?いつの間に…!?追手でしょうか…!?」
幸子「……!」ザワ...
幸子(…わからない…)
幸子(わかりませんが……!あれは…!)
幸子(あれは…やばいものです!!!)
幸子「Pさん…!!」ダッ
くるな…
くるな
今お前に触れられたら
今お前に肩を掴まれたら
オレは二度と
オレは二度と…!
二度とお前を
  ・・・・・・・・・・・・
ガシッ!
P「……」
P「・・・・・・」
389:
390:
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
幸子(な…何が起こったんですか…?)
「きゃあ!」「こ…ここは!?」「何ですかこれ!?」
みく「何にゃこれ!どこにゃここは!?」
みく「ね…ねえ!今の今までみく達…道を走ってたよにゃ!?」
みく「みく達走りながら夢でも見てるのかにゃ…!?」
みく「それとも…自分で気づかないうちにえええ餌に…」
まゆ「お…落ち着いてください」
みく「落ち着く!?何をどうすりゃ落ち着くのにゃ!?」
まゆ「黙 っ て て く だ さ い」
みく「」
まゆ「わからないことは考えなければいいんです…」
まゆ「幸子ちゃん!Pさんを!」
幸子「わかってます!」
391:
幸子「立てますかPさん?」
幸子「!」
ベッチー「……」
幸子(おかしい…おかしいです…なぜ今これがここにある…?)
幸子(Pさんを助け出した時確かにこれは持っていなかった……!)
幸子(それに何だろう…血の涙?形も変わってる)
幸子(……そうだ…あの一瞬…世界が変わってしまった時に…!)
幸子(まさかこれが…?)
P「う…」
幸子「Pさん…」
「まゆさん!あれ…!」
幸子「!」
まゆ「な…なんですか…?あの人たち…」
『刻がきた…大いなる夜祭の刻が!』
『216週に一度の宴の刻…』
『蝕が!』
幸子(蝕…!)
『来る!』
『おいでになられる!』
『降臨だ!』
『我ら超常なる者たちの王!』
『4人の守護天使の降臨だ!!』
392:
393:
394:
395:
396:
幸子(女神…いや…天使なんですか…?)
蘭子『大いなる祝福の刻…』
蘭子『彼なりし亜の刻 亜なりし彼の地へよくぞ集った』
蘭子『人の造りし神ならざる神の子羊達よ…この聖なる夜祭!存分に味わうがよい!!』
蘭子『因果律により選ばれし御子 Pよ!』
まゆ「御子…?」
智絵里「因果律って…」
幸子(…どういう事ですか…?)
蘭子『お前は選ばれし者…』
蘭子『この刻この地にあるように』
蘭子『大いなる神の御手により定められし者』
蘭子『我らが眷族 渇望の副王なり!』
「眷族…Pさんが…?」
幸子「ふざけないでください!」
幸子「人をこんな訳のわからないところに連れ込んだあげくに何勝手なこと言ってるんですか!」
幸子「御子!?眷族!?バカ言わないでください!」
幸子「Pさんはカワイイボクのパートナーなんです!」
幸子「あなたたちと一緒にしないでください!」
凛『美しい絆だね…』
凛『アンタさぞかし良い生贄になるよ』
幸子「……いけにえ…?」
凛『そう』
      ・ ・ ・ ・
凛『彼が魔王になるための尊いいけにえ』
397:
幸子「…魔王…いけにえですって…?」
楓『その紺碧のベヘリットを手に入れた瞬間から』
楓『あなたは魔王になる資格を得ていたんです』
P「…!」
楓『いえ、その資格があったからそれを手にしたというべきでしょうか…』
楓『そのベヘリットを使って私たちを呼び出したこと自体が』
楓『わたしたちの眷族たる資格があるという証なんです』
楓『なぜならここに集まったすべての者が…』
楓『ベヘリットによってあるべき姿を手に入れたのだから』
幸子(…それじゃ…まさかここのすべての人が…!?)
楓『そしてあなたの手にしているベヘリットはただのベヘリットではありません』
凛『わたしたちクール属性に転生することができる者のみが手にする紺碧のベヘリット』
凛『覇王の卵なの』
凛『そしてアンタたちは女神降臨のための…』
凛『大切ないけにえ』
かな子「……」
みく「いけ…にえ…?」
智絵里「……」
まゆ「……」
みく「みく達が…」
398:
幸子「変えてしまうですって…!?ボク達の命と引き換えに…!?」
凛『少し…違うね』
凛『それをするのは彼の意志』
凛『彼がアンタたちを生け贄に捧げるの』
幸子「…な」
幸子「…そんなわけないじゃないですか」
幸子「そんなわけ…!!」
蘭子『全ては因果の流れの中に…』
蘭子『全ては定められたこと』
蘭子『お前たちの生は…』
蘭子『この聖なる時の接合点"蝕"に向けてつむがれたもの』
蘭子『これより"降魔の儀"を執り行う』
アーニャ『御子を祭壇へ!』
『降魔の儀』『降魔の儀…!』『降魔の儀だ!』
まゆ(こうまのぎ…?)
ゴゴゴゴ…
P「!」
幸子「わっ…!」
幸子(Pさん…!)
P「…………」
蘭子『恐ろしいか!?お前ほどの者が!?』
蘭子『超常のものとしての我らがか?それともこれからお前が辿る未来?』
楓『未来へ至る前に 今一度帰りなさいあなたの原風景に』
楓『そして知るのよ、あなた自身が何者なのか』
楓『これは幻ではありません』
楓『あなたの意識下における真実』
399:
―――――――――――――――――――――――――――――――
P「あれぇ?みんな帰っちゃったのかな…?」
P「今日はイベント見に行こうって言ったのに」
P(いいや、一人で行こ)
P「あれれえ?おかしいなァ、迷っちゃったぞ?」
P「ねー事務員さんイベントどこ?」
事務員「……」スッ
P「ありがとう」
事務員「そうそう坊やのお友達が先にいって待ってるわよ」
P「……」
P「……」
P「……?」
P「真っ暗だ…なんか…変なとこに来ちゃったぞ」
P「どうしよう何も見えない」
P「おーい 誰か…」グシュ…
P「…?」
足元にあったのは大量のアイドルたちの残骸であった
過去にレッスンや特訓をするために使用された『餌』
アイドルとして輝くのではなく他の者を強くするためだけに存在した無数のアイドル
表に出ることも、裏で働くこともできず消えていった者の…その残骸
P「うわあああああ!!!」
P「ひっ!ひ うわ…」
P「あ あ あ あ…」
事務員「うるさい子ね、まったくなに騒いでいるのかしら?」
P「じ…事務員さん…」
400:
P「た…大変だ!アイドルが…!」
事務員「知ってるわよ、最初からそんなことは」
P「知ってるって…ひどいよ!知っててこんな嘘を…!」
事務員「うそじゃないわよ、これがあの城へ行くただ一つの道よ」
事務員「他の道などありはしないわ」
P「これが…」
事務員「あの城へ向かうものはここに倒れている人間を踏みしだいていくか」
事務員「さもないとこの中の一人になるしかないのよ」
事務員「ほら あなたの友達だって」
P「!」
美由紀「……」
P「き…君は…」
美由紀「Pさんはあのお城へ行って王様になるんでしょ?すごいなあ…」
美由紀「えへへ、みゆきはお姫様になりたいんだー! ほら」
P(…このぬいぐるみは)
美由紀「ねぇねぇ、私も一緒に連れて行ってよ!」
美由紀「みゆきはどうせならあなたのお姫様になりたいな!」
P「…だ、だめだよ」
美由紀「えー?どうしてぇ?」
P「だめだよ…できないんだ」
P「だって…だってきみ…もう…」
P「アイドルやめちゃったんだもん…」
401:
『どうしてですか』
『わたしたちも一緒に連れて行ってくださいよ』
『わたし達Pさんと働きたいんだよ』
『あなたの夢にかけてるんですよ』
『あなたとならきっとあの城にたどり着ける』
『わたし達のLIVE見てください!』
『見てみたいな、Pさんのつくる事務所…』
『あなたのプロダクションで働かせてください!』
P「…だめだ」
P「だめなんだ!連れていけないよ…」
P「きみたち移籍しちゃったから…!もう手持ちにいないから…!」
P「だからもうあのお城には…」
P「連れて行ってあげられないんだ…だめなんだよゥ!」
P「ごめん…ごめんよ…」
事務員「やれやれ、なんて子でしょう」
事務員「まったくよく友達にあんなこと言えましたね」
事務員「だいたいあの子たちをあんなにしてしまったのはあなたじゃないですか」
P「え…?」
事務員「だってそうでしょう?みんなあなたについてきたのよ」
事務員「あなたがあそこへ行くなんて言い出さなければ…こんなことにはなりはしなかったんですよ」
402:
P「そんな…僕は誰にも無理について来いなんて…」
事務員「まあ!何て言い草かしら!」
事務員「ここまで歩いてこれたのは一体誰のおかげだと思ってるんですか!?」
事務員「いいですか!あなたが通ってきた道は…」
事務員「全てあの子たちの屍でできているんです」
P「!」
事務員「それだけじゃありません」
事務員「あの子たちがその何倍もの屍を増やしてくれたおかげで」
事務員「あなたはこうしてここまで来ることができたんです」
P「……」
事務員「そして…見てごらん」
事務員「この先あの城まで進もうと思ったなら」
事務員「もっともっとたくさんの屍を積み上げなくちゃ…」
P「……」
ゴクリ
403:
事務員「どうしたの?恐ろしくなったの?引き返したくなったの!?」
事務員「だめよ!そんなこと考えちゃ!」
事務員「そんなことしたら今度はあなたがこの屍の仲間入りすることになるわよ!」
事務員「ほら!見てごらん自分の手足を!」
P「……」ハッ
P「うわああああ!」ボロボロ
P「手が…足が…」
事務員「バカねこの子は!後悔なんてするくらいなら最初からこんなところ来るんじゃないの!」
事務員「ここはそんなに甘いところじゃないんですよ!」
事務員「どうして路地裏から城を見上げているだけで満足できなかったの!?」
P「……!」
どうしてあの城を見上げているだけで…
そんなの…
P「そんなのわかんないよ!!」
事務員「おだまり!あなたは知ってたはずよ!」
事務員「ここがどんなところか知っててここまでやってきたのよ!」
P(…知ってた?)
P(…僕はここがどんな所か…知ってて…)
P(そう…)
―ぼくは知っていた
404:
P(知ってて屍の…)
P(みんなの上を歩いて…ここまで…)
『いまさら何言ってるんですか…』
『…これがあなたの夢につながる道なんでしょう?』
『そう信じてるんですよね?』
『何言ってるんですか、今さら…』
P「……」
事務員「さあ!積み上げるのよ」
楓「まだ遅くはありません!」
楓「あなたがそうなってしまう前に積み上げるのよ屍を!」
楓「もうそうするしかないんです!…ふふ」
405:
―そう
P(…今さら後悔して何になる)
P(今さら何が言える 罪を悔やんで何になる)
P(詫びることなどできない)
P(これはオレが自分から進んできた道)
P(欲しいものを手に入れるために…)
P(詫びることなどできない)
P(いや…)
P(詫びはしない…!)
詫びてしまえば
悔やんでしまえば
すべて終わってしまうから
あそこにはもうとどかなくなってしまうから
――――――――――――――――――――――――――――――
楓『そう…』
楓『それが…あなたよ』
406:
P(…幻!?今のは…!?)
楓『幻などではありません』
楓『それはあなたの意識下における真実』
楓『天空の城めざし…』
楓『頂に屍を積み続ける!』
楓『それがあなたよ』
アーニャ『千のRの屍の上を』
アーニャ『千のRの築きし万のNの屍の上を』
アーニャ『そのどちらでもない屍の上を』
アーニャ『あなたは踏みしだいてきました』
   おもい
アーニャ『唯一つの渇望がゆえに』
凛『そして今 あなたの路地裏の道は途切れた』
凛『…でも見て』
凛『恐怖に震えながらも濁らぬ瞳であなたを見上げてる』
凛『血腥い旅路の果てに』
凛『あなたに最後に残されたもの…』
凛『共に飛び続けてきた鷹の翼』
凛『その羽の 一枚 一枚』
凛『彼女らはあなたを許すでしょう』
凛『たとえ今は絶望に打ちひしがれていても あなたを温かく迎え入れるでしょう』
凛『そしてあなたは生きていける…』
凛『傷ついた身を彼女らに委ねて』
凛『全てを過去にかえて』
凛『夢の…残骸に埋もれて』
P(…夢の
  残骸…)
407:
蘭子『それが…』
    ばつ
蘭子『人の造りし神の慈悲』
蘭子『だがそれでも 思い果てぬなら』
蘭子『それでもなおお前の目に!あの城が何よりも眩しいのなら!』
蘭子『積み上げるがよい お前に残されたすべてを』
蘭子『一言心の中で唱えよ"捧げる"と!!』
蘭子『さすれば頂より天に飛び立つ 漆黒の翼を授からん!』
蘭子『運命が人智を超越し人の子を玩ぶが理なら
 人の子が魔をもって運命に対峙するは因果』
P「……」
ザッ…
幸子「Pさん…!」ハアハア
P「………」
P「……」
P「…」ニコ
 …そう
何千のR
  何万のNの中で
唯一人お前だけが
唯一人お前だけが―
――オレに 夢を忘れさせた
  P「…げる」
408:
幸子「プ…」
幸子「プロデューサーさん!!!」
蘭子『因果律により束ねられし糸は今 結ばれた』
蘭子『約束の刻来たれり!』
キュオオオォ
まゆ「きゃあ!」バシュ
みく「にゃあ!」
かな子「キャッ!」バシュ
智絵里「わっ…!」バシュ
幸子「な…!?」バシュ
409:
移籍
一方的な移籍
…いや それは宴だった
ひたすら貪り回し尽くす
課金する者どもの『狂宴』
まゆ(…これは何ですか?)
まゆ(現実…なの…?)
まゆ(どうして私達はこんなところにいるんですか…?)
幸子「…!!」
蘭子『今 お前たちの体に刻まれたものは移籍の烙印』
蘭子『その烙印が刻まれた者の生命はイベントの供物』
蘭子『そのキャラの最後のセリフ』
蘭子『親愛度MAXの演出までも』
蘭子『新しき女子寮の…ドリンクの糧となる』
410:
幸子「……」
幸子「待っててくださいPさん」
幸子「待っててください…今助けてあげますよ…」
幸子「すぐに…出してあげますから…!」
蘭子『無駄よ アイドルの力ではもはや及ばぬ』
楓『それに助けるなんてお門違いです』
楓『これは本人が望んだこと…』
幸子「…うるさいです」
凛『アンタにも聞こえたはずよ、確かに彼は最後に…』
幸子「うるさい…」
幸子「うるさいって言ってるんです!!!」バン!
幸子「するはずないんですよPさんがそんなこと…!」
幸子「そんなこと…そんなことPさんが口にするはず…」
『この世には人の定めた属性や課金とは関係なく世界を動かす鍵として生まれついた人間がいる』
『それこそが宇宙の黄金律が定めた真の特権階級』
『神の権力を持ち得たものだ!』
411:
幸子「言うはず…」
『誰のためでもない』
『自分が…自分自身のために成す』
『夢です』
幸子「……」
幸子(…あなたが)
『…オレを』
『ひどいやつだと思うか』
幸子(あなたが…望んだことなんですか…?)
412:
――――――――――――――――――――――――
杏(あれか…あの丘の向こうにみんなが…)
杏「……」
杏「……?」
ゴオオオオ…
杏(何だろう…あれ…!?)
杏「み…みんなは…!?」
杏「!」
ゴゴゴゴゴ
きらり「ニョワー☆」ゴゴ
珠美「……」ゴゴゴ
杏(き…きらり!?)
杏(ど…どうしてきらりがこんな所に!?)
杏(それにあれは…)
珠美「……」
杏(あの時の…!)
杏(一体何が起こってるんだ…杏たちの回りで…)
413:
きらり「にょわー!やっぱり珠美ちゃんだにぃ☆」
きらり「やっぱり来たんだにぃ☆きらりの予想ばっちし!」
きらり「とーっても小っちゃくてかわいいにぃ☆ヤバーイ!」
珠美「ち…ちびっこちゃうし!!!」
珠美「あなたが門番なんですね…きらりさん!」
きらり「きらりはそういうのじゃないよ?」
きらり「珠美ちゃんが来るって聞いたからいるだけだゆ☆」
きらり「珠美ちゃんは強いしかわいいし最高だにぃ!きらりんルームにご招待☆」
珠美「いやですよ!あそこ怖いですし!」
珠美「体が小さくてもそれによって負けるわけではありません!行きますよ…この身を剣にかけるのみ!」
きらり「きらりんのきゅんきゅんぱわーで心も体もスッキリさせちゃうよ!せーの、きらりん☆」
414:
―――――――――――――――――――――――――――――――――
まゆ「……」
「ま…まゆさん!」
バシッ
かな子「……!」
まゆ「か…かな子ちゃん!」
かな子「逃げてください!」
まゆ「え…」
かな子「行ってください!」
かな子「逃げて逃げて…」
かな子「あなたは生き残るんです!」
まゆ「何を言って…」
ガシィ
智絵里「……」
まゆ「……!」
まゆ「な…何するんですか智絵里ちゃん!」
415:
まゆ「離してください!かな子ちゃんが…!」
まゆ「…!」
かな子「……」
智絵里「……」
ダッ
まゆ「かな子ちゃん!」
まゆ「智絵里ちゃん戻って!見殺しにする気ですか!?」
智絵里「だめです!!」
智絵里「残るんですまゆちゃんだけは…」
智絵里「今は…あなたが私たちのリーダーなんです…!リーダーが残っていれば私たちは終わりじゃありません!」
智絵里「これが…!」
智絵里「こんなのが…私たちの終わりであってたまりますか…!」
かな子「……」
―――チャリーン
まゆ「……!」
416:
―――――――――――――――――――――――――――――
みく「あ…」
みく「フ…フニャア!」ダダダ
みく「……にゃあ!」ダダダ…
みく「ニャハハハハ!」
みく「ニャハハ…夢にゃ…夢に決まってるにゃ」
みく「これはタチの悪い夢にゃ…その証拠にちっとも痛くなんかないにゃあ…」
みく「うん本当に痛くない…ん?」
みく「あれ?汚れひとつないにゃあ…」
みく「あれ?」
 …そう
何千の通常SR
  何万の通常Rの中で
―唯一人みくだけが
唯一人みくだけが―
――レアメダル耐性を持っていた
みく「…あれ?」
417:
―――――――――――――――――――――――――――
まゆ(どうして…)
まゆ(どうして!?)
まゆ(ここは地獄なんですか!?)
まゆ(それほどの罪を私たちは犯したというんですか!?)
まゆ(これが私たちの旅の終着点なの!?)
まゆ(それともこれは本当にあなたの望んだ悪夢ですか…!?)
まゆ(答えて…)
まゆ(答えてください)
まゆ「Pさん……!!!」
フェイフェイ「あ!こっちにいたヨ!」
フェイフェイ「ふぇいふぇいのミリョク、とくとご覧アレー!」
智絵里「あ、あの…チ…チョップ、です。えい。」ベシッ
智絵里WIN!
フェイフェイ「…ちょっと調子が悪かっただけネ!いつもはこんなじゃないヨ?」
メアリー「ウフ、アタシに勝負を挑むなんて命知らずネ!
  パワーアップした今のアタシは誰にも負ける気がしないワ!」
智絵里「い、いきますっ」
DLOW!
メアリー「ウフフ、コドモ扱いしないでよネ!アタシは立派なレディになるんだもん♪」
まゆ「あなたたち…邪魔」ゴゴゴゴ
メアリー「ヒッ…」ビクゥ
まゆWIN!
メアリー「うぅ、世界デビューは大変…。でもまだ諦めたわけじゃないからネ!」
418:
まゆ「大丈夫ですか智絵里ちゃん!?」
智絵里「まゆちゃんには助けられてばかりですね…ありがとうございますっ」
まゆ「智絵里ちゃん…」
まゆ「…もういいです」
まゆ「もういいです、もどりましょう」
智絵里「だめです」
まゆ「どこへ逃げても同じです!どこまでだって追ってきます…」
まゆ「ここだって出口があるかどうか…!」
まゆ「せめて…」
まゆ「せめて最後くらいみんなと肩を並べて…」グスッ
智絵里「静かにしててください!舌噛んじゃいますよ…!」
まゆ「智絵里ちゃん…」
智絵里「ま、まだ…です…!わたし、みんなと出会って…諦めないって気持ちを学んだんです…!」
智絵里「負けるためのライブなんてなしですよ…!」
まゆ「……」コクリ
420:
李衣菜「イェーイ!みんなにリーナのロックなナンバーを届けちゃうぜぇ!」
李衣菜「うおぉー!!ロックにいくぜーっ!!!」
智絵里「きゃあ!」
まゆ「智絵里ちゃん…!」
李衣菜「熱いロック魂、感じてもらえた?まだまだギターは鳴り止まないよ!」ジャーン
智絵里「い、いぇいっ、です…うぅ」
DLOW!
まゆ「む…無茶しないでください!」
李衣菜「ヒートアップしてるね! クールダウンしてるヒマはないぜぇ!」
DLOW!
DLOW!
DLOW!
まゆ「もういい…もういいです!」
まゆ「このままじゃ…このままじゃ智絵里ちゃん…!」
421:
李衣菜「なかなかやるねっ!なら私の本気を見せてあげるよっ!」
李衣菜「ロックは魂の叫びだぜっ!『Twilight Sky』!」
どこまでも広がる グラデーション
ゆっくりと オレンジが燃える
光差す放課後 続くエモーション
いつまでも 笑い声響いた
Shooting the star 闇を切り裂いて進むよ
Beating my heart それは止められない すべてを輝かすよ
無我夢中 きらめいて 流れる星のストライド
才色兼備 いいけれど 三日月も綺麗だよね
純真無垢に 見えるけど 星の海翔けるグライド
賛否両論 いいじゃない
繋がって 離れる
連なって 輝く
心を 追いかけてく
智絵里「……」
智絵里(…これが)
智絵里(これが私の精いっぱいです…)
智絵里「『風色メロディ』…!」
生まれたての風が 透明な指先で
木の葉に触れる 優しいころ
貴方に出会った あなたの周り全て
ハーモニーに変わる不思議 手のひらの花びらも
風のキスで空に舞い 光の音符になる
貴方がくれた微笑み 握ってくれた手
嬉しくて 大切で もっとそばにいたくて
憧れは思いに変わる 愛をうたう鳥のように
メロディが思いを繋いでくれますように
智絵里WIN!
李衣菜「ぐっ…ロックは死んだんだ…」ガクッ
422:
まゆ「智絵里ちゃん!」
智絵里「うまくきましたか?私の最後の歌…!」
まゆ「…う、うん」グスッ
まゆ「うまくいきましたよ…勝ちましたよ」ポロポロ
智絵里「…えへへ」ニコッ
智絵里「さあ…行ってください」
まゆ「な…」
まゆ「何言ってるんですか!」
まゆ「今最後まで諦めないっていったばかりじゃないですかぁ…!」ポロポロ
まゆ「立ってください!泣き言言わないで!」
まゆ「おぶってでも、引きずってでも連れて行きますよ!」
智絵里「……」
智絵里「…幸子ちゃんと違って…わたしは華奢ですから…えへへ」
智絵里「わかりました…行くね…這ってでも」
まゆ「そうしてください!自分で言ったんですから…」グスッ
智絵里「わたし…他の子と違って臆病だし…」
まゆ「そんなこと言ってる暇があったら行きますよぉ…」
423:
智絵里「もう…」
…とうとうまゆちゃんには言いそびれちゃったな
まゆ「……」グスッ
まゆちゃんの事…いつも応援してたけど…
…ほんとはね…わたしもPさんの事…
智絵里「けっこういっぱい泣きますね…まゆちゃんって」
―チャリーン
まゆ「智絵里ちゃん…?」
まゆ「……」
まゆ「智絵里ちゃ…」フルフル
ガサッ
春菜「眼鏡パワーで今日もバッチリ決めちゃいますよ!それでは眼鏡どうぞ!」
まゆ「…う」
春菜「ああ、あなたを見てると眼鏡コーディネートしたい願望がフツフツと…!」
まゆ「うう…」
春菜「これでまゆちゃんも眼鏡ストの仲間入りです♪」
まゆ「ああああ!」ダッ
春菜WIN!
春菜「必殺!ダブル眼鏡!ふっふっふ、どうです?これで眼鏡の魅力が2倍、いえ3倍伝わるはずです!!」
春菜「どう?1本ではもろくても、2本なら簡単には折れない!」
春菜「まあまあ、眼鏡どうぞ」ズイッ
まゆ「きゃあ…!」
424:
―――――――――――――――――――――――――――――
幸子「う…うああああ!」
幸子「勝負ですよ!いいですか!」
幸子「勝つに決まってます!」
幸子「負けるわけありませんよ!」
幸子「あしらってあげますよ!」
幸子「ボクはカワイくて強いんです!」
凛『頑張るねあの子…』
凛『でも皮肉だね』
凛『あの子の気力が強ければ強いほど
 あの子のライブが続けば続くほど』
凛『それは新しいPのかけがえのない糧になるのに』
凛『良い夢を…P…』
凛『今までのあなたはプロデューサーという夢』
凛『そしてその夢が終わる時あなたは目を覚ます』
凛『決して覚めない夢の中で』
凛『決して明けないイベントの中で』
425:
P(……)
ドクン…
ドクン
…沈んでゆく…
光が遠ざかっていく
…ここは?
  ここはどこだ?
オレの体はどこだ…?
……
沈んでゆく 深く…
ゴオオオ
…!
チャリーン
…これは!?
チャリンチャリンジャラジャラジャラジャラ
みんなの移籍が
突きぬけてゆく…
…オレが望んだこと
  オレが移籍した
不思議だ…何も感じない
沈んでゆく…
ピチャン
…これは?
≪あなたが流した最後の涙の結晶≫
≪人は自らを引き裂くほどの苦痛に直面した時 心凍てつかせる≫
なにか…いる
  チヒロ
……神?
426:
渋谷凛(15)
高垣楓(25)
アナスタシア(15)
神崎蘭子(14)
柳瀬美由紀(14)
427:
…ちひろ?
≪よく来ました Pさん≫
ちひろなのか…?
≪私は 源形≫
≪望まれし神≫
≪金の源形です≫
神…神だというのか?この巨大な…
金欲の塊のようなものが?
≪あなたが目にしているのは私の一部…私の核です≫
≪見てくださいあなたの周りを≫
ガチャガチャガチャガチャガチャ
これは…!?
≪念の海≫
≪ユーザーは心の底に個を超えた…共有する意識領域を持っています≫
≪ユーザーの種としての全体意識…その暗黒面がこのうねりです≫
≪このうねりの中より私は生まれました…この世界の自我として≫
≪この世界自体が私なのです≫
≪全ての人間の心の底に潜む…課金≫
≪課金の源形 それがちひろです≫
428:
ちひろ…
これが…
ユーザーが…
ユーザーがちひろを生み出したというのか?
ユーザーが望んだというのか?
こんなおぞましいものを…
ここは…
ここはまるで…
≪地獄≫
≪そう呼ぶ者もいますね≫
地獄…
≪ここは幾重にも重なる全体領域の一側面にすぎません≫
≪ですがあなたは知っている…ここがどれほどユーザーらしい領域であるかを≫
≪狂暴で孤独な…形容しきれない様々な負の念でここは満々ています≫
≪まさにユーザーをユーザーたらしめる意志です≫
429:
…確かにそうだ
これは オレの中に…ある 感じる
だがなぜだ?なぜおまえは生まれた?
なぜユーザーはちひろという意思を生んだ
≪ユーザーが≫
≪理由を求めたからです≫
≪苦しみの理由≫
≪悲しみの理由≫
≪ガチャの理由≫
≪イベントの理由≫
≪なぜユーザーは苦痛に満ちた時間を送るのか≫
≪なぜユーザーは不条理な敗北を迎えるのか≫
≪人智を越え流転する運命にユーザーは理由を求めました≫
 ちひろ
それが…神…
≪そして私はそれを為す≫
≪そう求められ存在する私は…≫
≪運命を司る≫
≪ユーザーという種の本質に従い≫
≪私は一人一人の運命を紡ぎます≫
430:
…お前が
オレの運命の支配者だというのか…?
お前が…
全てこうなる様仕組んだというのか!?
≪はるか遠い過去よりあなたはここにあるべく定められていました≫
≪ユーザーの深層心理に働きかけ…アイドルとアイドルを交わらせ≫
≪あなたというユーザーが生まれいずる血脈を造り上げました≫
≪あなたが生を受ける時代に向けて≫
≪イベントを操作し…あなたにふさわしい環境を造り上げたのです≫
≪あなたにとってのすべての出会いもまた…≫
≪あなたがここへ至るべく定められた運命の一部です≫
…運命…オレの…
ちひろ!お前はオレに何を望む!?
431:
≪あるがままにありなさい≫
≪私はあなたの心の底に潜むもの…あなたの一部≫
≪あなたは種の意志である私の一部≫
≪あなたの望みは私の望みでもあります≫
≪あなたの行い自体が≫
≪種としてのユーザーにふさわしいものになるでしょう≫
≪例えそれがユーザーの苦しみであっても…救いであっても≫
≪望むままを行ってください…≫
≪選ばれし者よ≫
…ならば
 ―翼を
≪持ち帰りなさい≫
≪この内なる世界に満ちる念の力を≫
≪あなたに相応しい形に変えて≫
432:
――――――――――――――――――――――
幸子「あああああああああ!!!」
ドゴッ バキッ ゴシャッ
グシャ ボゴッ ドカッ
幸子「ああああっ!!」
幸子「っ!!」
バキャッ
幸子「くうっ!!」
ドゴゴゴ…
ジャリイィ…
幸子「く…ゲホッ…」
幸子「これは……!?」
幸子「メダル……」
幸子「っ……!!!」
幸子「う あ あ あ ・・・」
幸子「……ああ……あ…!!」
幸子「いないんですか…!?生きてる人は…いないんですか!?」
幸子「智絵里さん!!かな子さん!!みくさん!!みんな……!!」
幸子「ま…まゆさん…」
ザッ...
千佳「幸子…ちゃん…」フラ...
千佳「幸子ちゃんだよね…?そこにいるの…」
幸子「ち…千佳さん!?」
433:
幸子「千佳さん!!無事だったんですか…あなた…!!」
千佳「えへへ…あんまり無事ってカンジじゃないけどね…」
幸子「どうなってるんですか…?ほかのみんなは…?他に残っている人は!?」
千佳「わかんない…あたしも無我夢中で逃げてただけだから…」
千佳「気が付いたらこんな状態でね…ほかのみんなはどうなっちゃったのか…」
幸子「……!」
千佳「幸子ちゃん…いったい何があったんだろ…?」
千佳「こんなの…まるで誰かの夢の中みたいだよ…」
千佳「…それとも鷹の団自体が…そうだったのかなぁ…?」
千佳「とっても…あたしみたいな子には…あの毎日はすごく楽しくて…キラキラしてて」
千佳「いつもお仕事が終わった後には何だか寂しくなっちゃったんだ…」
千佳「朝…目が覚めたらみんな夢だったんじゃないかって…そんな気がして」
千佳「Pくんは…あたしたちとは違い過ぎるよ…いろんなことが…まるでおとぎ話の人みたい」
千佳「これ…ほんとにおとぎ話だったのかな?魔法の世界だったのかな…?」
千佳「でもあたしが夢見てた魔法の世界って…こんなのじゃなかったのに…!」
千佳「うええん…!みんなを…みんなを幸せにするのが魔法だと思ってたのに…もうやだぁ…!!」グス...
幸子「千佳さん…」
千佳「幸子ちゃん…あたしもう…もうこんなの無理だよぉ…」ゲホッ
幸子「千佳さん…!しっかりしてください!!」
千佳「……ごめん…ね…」
―チャリン
幸子「え……」
幸子「…………」
幸子「千佳…さん……!!う…ヒグッ…グスッ…」
434:
かな子『……』
幸子「…!」
幸子「か…かな子さん!?」
幸子「かな子さん!!生きて……!!」
幸子「……!!」
かな子『……』
幸子「かな子さん…?」
かな子『……』
幸子「…?」ソロ…
スカッ
幸子「っ!!?」
かな子『……』
幸子「ひっ…こ…これって…」
小梅「あ、あなたにも…み、見えるの…?」
幸子「あ…ああ………!!」ガクガク
幸子「……!!」
435:
小梅「あの子も…お友達が増えたって、よ、喜んでる…」
小梅「で、でも…もっともっとほしいって…♪あなたもお友達になってくれる…?」ニコッ
千枝「千枝、今日はわるい子になってお姉さんたちとわるいことしちゃいます!千枝、がんばります!」
周子「他のみんなはアタシに化かされて、楽しい一夜を過ごしてるよ!もちろんあなたもね♪」
裕美「皆さんの血…おいしかったです♪あなたのもおいしそう…」
周子「血?血ならあたしのあげようか?献血が趣味なんだ」
裕美「き…きつねさんのはご遠慮します…」
星花「今日のわたくしは小悪魔ですの。そのわたくしを召喚した代償を頂きますわよ♪」
クスクスクス…
幸子「あなた達…」
アハハハハハハ…
幸子「…………ッ!!!」ギリッ
幸子「っ!!」
春菜「うーん…次はこっちかな!他人を好きにコーディネートできるのって楽しい!」
まゆ「うう……」
436:
幸子「あああああっ!!!!」ダッ
周子「あなたはあたしが化かしてあげる♪」ヒュッ
小梅「スプラッターショーの…始まり…♪」コオオ...
幸子「どいてくださいっ!!!」ドカッ
バギッ グシャッ
幸子「あああああ!!」ブシュ...
ドシュ ゴシュッ
有香「ここからは行かせませんよ!」
シュバッ
幸子「くううっ!!」ドサッ
有香「これが実力です…ふふふ」ギリギリ
幸子「うぐ……!!」
まゆ「幸子…ちゃ…ん…?」
幸子「……!ぐ…ああああ…!!」ジタジタ
ドクン
春菜「!」
小梅「…!」
有香「!」
幸子「……?」
437:
ゴゴゴゴ…
ドキュ…
ドクン!
凛『誕生だよ…』
楓『新たなるP…』
アーニャ『ヤー…私達の新しいP…』
≪覚醒魔王・神崎蘭子≫
≪夜宴の歌姫・渋谷凛≫
≪神秘の女神・高垣楓≫
≪スノーフェアリー・アナスタシア≫
蘭子『我らに連なりし青の眷族の誕生よ!』
P『……』
438:
幸子「……?」
P『……』
スタッ
P『……』
幸子「……」
P『……』ニヤ
幸子「P…さん……?」
シーン…
P『……』
幸子「Pさ…」
P『……』
ス…
幸子「…!」
まゆ「う……」
P『……』グイッ
フニ…
まゆ「ん……」
幸子「……」
439:
まゆ「ぁ……?」
まゆ「……!」
ググ…
ミシ…
幸子「……!!」ググググ…
まゆ「あ……」
P『……』
ペロペロ
幸子「……っ!!」
まゆ「……P…さ…ん…?」
P『……』
チュッ…
まゆ「んむっ…!」
440:
幸子「……!!」ギリッ
幸子「うっ…ぐ……あ゛あ゛あ゛…!!」ズル…ズル…
幸子「プ……ロ…デューサァ……!!」ズル…ズル…
ガシッ
周子「おっと…行かせないよー」
幸子「プロデューサァァ……!!!」グググ…
P『……』
チュ…レロ…
まゆ「ん……!」
幸子「……!」
ムニ…
まゆ「……!いや…!」
凛『さすがはCoP…変態だね』
アーニャ『ダー…変態、ですね』
蘭子『淫靡なる衝動に当てられし卑しき者よ…///』(変態です…///)
楓『大変な変態…ふふっ』
441:
サワサワ プニプニ
まゆ「あ…いや…っ!!」
幸子「………………」ガチ...ガチ...
P『レロ…チュプ…ジュル…』
まゆ「…んむっ…ぷぁ…」
まゆ「…見ないで………」
幸子「う…………ヒグッ…」
P『……』グイッ
まゆ「ん……っ」
チュ…レロ…
まゆ「ん…プハ…」
まゆ「ぁ……」ガク…
幸子「うあああああああああ!!!!」
442:
ビ シ ッ
蘭子『む?』
凛『?』
楓『…?』
アーニャ『シトー…?』
パ リ ィ ィ ン ン
珠美「とりゃああああああ!!!!」バッ!
珠美「氷紋剣奥義・閻水乱舞ッ!!」ヒュバッ
蘭子『真・地獄の業火ッ!!』ゴオオッ
ブシャアァァッ
珠美「くっ…!」
蘭子『むっ…!』
443:
珠美「とうっ!」
ヒュッ ザザザザザ...
小梅「は…い…」
周子「うわっ!全然追いつけない!」
P『……』
スッ
珠美「!」バッ
春菜「ちょっ」
ボシュウウゥ!
ジャラッ…
珠美(危なっ…)
P『……』
444:
珠美「……」ジロ…
まゆ「」
幸子「」
ガシッ
珠美「ていっ!」ザッ
みく「ちょっと待ってー!みくも連れてってー!」
珠美「え!? まだ残ってる人がいたのですか!?」ガシ
ヒュッ…
P『……』
P『……』スッ…
シーン…
楓『ふふ…すごいわね…予想外のことが起こったわ』
凛『全てを予測するなんて不可能だからね…私達は神様じゃないんだから』
凛『それともこれも定められた運命の一つなのかな…?』
蘭子『運命に翻弄されし子羊達の道標は神の掌の内よ…』(わかりません)
凛『どちらにしても魚が一匹は寝たところで川の流れは揺らぎはしないよ』
凛『時はもう流れ始めてしまった…もう彼は誕生してしまったんだから』
445:
――――――――――――――――――――――――――
きらり「……」
きらり「にょわー……」シュン
杏(す…すごい!!)
杏(あのきらりと互角に…)
杏(いや…それ以上にわたりあえるのがいるなんて…しかもあんなにちびなのに)
バババッ
杏「!」
ボッ
ドン!
珠美「ふう…」
杏「わっ…わわわ!」
幸子「」
まゆ「」
杏「!?さ…幸子…!?まゆ!?」
みく「フニャア…」
杏「みくも!?」
446:
珠美「この二人の手当てをお願いできますか」
杏(うわ!二人ともボロボロだ!?いったい何が…?ほ…ほかのみんなは…!?)
みく「い…いそぐにゃ!」
杏「わ…わかってるよ…」
杏(でも手当てって言ってもどうすれば…)
きらり「にょわー☆」ドン
杏「っ…」ビクッ
珠美「構わず続けるのです」
杏(そ…そんなこと言われても…何も持ってないんだけど)
きらり「まだまだまだ終わりじゃないよー☆もっとハピハピしよ☆」
珠美「そうしたいところですが…きらりさん、この勝負預けるつもりはありませんか?」
きらり「えー?なんでー……ん?」
幸子「」
きらり「あーこの子!あの中からだっしゅつできたにょわー?うきゃー☆すごいにぃ!」
きらり「にゃはー☆ハピハピでルンルンだにぃ☆」
きらり「いいよー!またあとでにしてあげるにぃ!」
きらり「じゃあこれ使って!ハピハピキャンディあげる!きらりんぱわーたーっぷり☆」
447:
杏「あ…ありがとう…これで」グイ
幸子「ムググ…」ハピハピ
まゆ「モゴ…」ハピハピ
杏(怖いくらい効くなこれ…)
きらり「それじゃ急いだほうがいいよー?みんな来ちゃうにぃ」
珠美「それでは行きますよ…」
杏「ねえ!いったい何が起こっているのさ!あの中で!他のみんなはどこに…!?」
みく「……」
珠美「……残ってはいません…誰も」
杏「え…?」
珠美「急ぎましょう…行きます」
杏「え…?ちょっ…」グイッ
シュバッ
きらり「あそこから助かるなんてとぉーってもハピハピしてるにぃ☆」
きらり「でもきっとこれからは大変だゆ…これからどうなるのかな?」
きらり「見せてもらうにぃ…これからのあの子の前に広がる世界でどう過ごすのかを…」
448:
佐々木千枝(11)
塩見周子(18)
関裕美(14)
涼宮星花(19)
上条春菜(18)
中野有香(18)
449:
―――――――――――――――――――――――――――
ザッ…ザッ…
幸子「お―――い!」
幸子「待ってください…!みんなどこへ行くつもりですか!?」
幸子「止まって…止まってください!!」
幸子「そっちはだめ…そっちはまずいんです!!」
智絵里「……」スタスタ
幸子「智絵里さん……!!」
かな子「……」スタスタ
千佳「……」
幸子「かな子さん…千佳さん!!」
幸子「だめです…行かないで!戻ってきて!!」
幸子「行かないでくださぁぁぁい!!」
チュンチュン
幸子「ハッ!」
チチチ…
幸子「……」
450:
コツン…コツン…
「……」
幸子「…誰です?」
「幸子おねーさん気が付いたですか!?」ダッ
ツルッ
スッテン!
仁奈「びょええぇ!!いてーです!!」ビエーン
幸子「仁奈さん…?」
杏「あーもうダメだよ仁奈…そんなにあわてちゃ、滑るんだからさ」
みく「気を付けて歩かないとだめにゃあ…」
杏・みく「!」
幸子「杏さん…みくさん…?どうして…?」
杏「……さ…幸子…!気が付いたの!!」タタッ
みく「よかったにゃあ!」タタッ
仁奈「あ!ずりーです!仁奈が先です!」
杏「…もうだめかと思ってたよ…4日もピクリとも動かなかったから…」
仁奈「ここは仁奈の家ですよ!晶葉おねーさんと住んでるんでごぜーます」
仁奈「も――びっくりしたです!
 この杏おねーさんがいきなり家に来て
 ケガしてる人がいるって…
 きてみたらそれが幸子おねーさんで…」
みく「こっちもびっくりにゃ、まさか幸子チャンの知り合いの家だったなんて…」
杏「変な剣士にね…杏たち連れてこられたんだ」
幸子「剣士…?」
杏「不思議な事ばかりで杏疲れちゃったよ…あの中で一体何があったのさ」
451:
杏「プロデューサー救出は…このケガは…?他の……ほかのみんなはどうなったの?」
杏「みくも答えてくれないし…幸子も知ってるんでしょ?」
幸子「……」
幸子「他の……」
幸子「…………!!」ガバッ
仁奈「わっ!」
幸子「……つっ!」ズキン
杏「だめだよまだ動いちゃ…!」
ガシッ
杏「!」
幸子「まゆさんは……」
幸子「まゆさんは……どこですか!?」
杏「……」
みく「ま…まゆチャンは……」
幸子「どこですか!?」
仁奈「まゆおねーさんならあっちですよ、ほら」
ザアア…アアァァ…
まゆ「……」
452:
幸子「……」
幸子「まゆさん…」ヨロ…
杏「あ…あのさ……」
幸子「……」タッ
まゆ「……」
幸子「まゆさん」
まゆ「あらぁ…?幸子ちゃん…目が覚めたんですねぇ…」
幸子「まゆさん…!よかった…無事だったんですか…!」
まゆ「うふ…それはもう…♪うふ…うふふふ…」
幸子「……?どうか…しましたか…?」
まゆ「どうか…?なんともないですよぉ…?それより幸子ちゃんも早く準備してくださいねぇ」
幸子「準備…何のですか?」
まゆ「決まってるじゃないですかぁ…Pさんのお迎えの準備ですよぉ」
幸子「Pさんの…?何言ってるんですか!?もういないじゃないですか!!」
まゆ「そうですよ?いないから迎えに行くんじゃないですか」
幸子「……言ってる意味が…」
453:
まゆ「……」
まゆ「まゆ考えたんですよぉ……あの時Pさんがなんであんなことをしたのかな、って」
まゆ「きっとPさんは、まゆのことを愛していたんです♪」
まゆ「そうでないなら、あんなことしませんもの…」
幸子「え……」
幸子「だ…だったら…!だったらみんなをあんな風にしたのはどうしてだって言うんですか!?」
まゆ「それはきっとまゆと二人きりになりたかったんですよぉ♪」
まゆ「Pさんはプロデューサーという立場上…表だってまゆと愛し合うことはできないでしょう?」
まゆ「だから他のみんながいなくなれば大丈夫…ってことです、うふふ」
まゆ「それとも…もしかしたらまゆが浮気の心配をしないようにしてくれたのかも♪」
幸子「なっ……!?」
杏「病んでるんだよ…まゆは」
みく「きっとあの時のショックで…」
幸子「え……」
454:
幸子「そ…そんなこと…ないですよね…?」
まゆ「当たり前じゃないですか♪まゆのPさんへの愛はとっても純粋なんだから…」
まゆ「まゆは、Pさんに会い、添い遂げるために、この世に生まれたと思うんです…♪」
まゆ「まゆの心と身体は全部Pさんだけのものですよ♪
   …そして…Pさんの心も身体も全部まゆだけのものだから…うふふ♪」
まゆ「だから早く行ってあげないと…きっと寂しがってるわ」
幸子「……っ!」
杏「2日前に目が覚めてからずっとこうなんだ…体の方は大丈夫なんだけど」
幸子「……」
幸子「まゆ…さ…ん」
まゆ「うふ♪」
幸子「……」プルプル
杏「……」
みく「幸子チャン…」
幸子「……」
スタスタ
杏「幸子…どこ行く気なのさ!?そんな体で…」
幸子「……」ドンッ!
杏「!」
みく「幸子チャン…!」
みく「だめだよっ…今無茶したら…!」
455:
ダダダダダ…
幸子「ハッ…ハッ…!」
幸子「あああああ!!!」
ダダダダ…
幸子「ゼェ…ゼェ…」
智絵里『ここならきっと見つかるよ…あなたにも、居場所が』
幸子「……」
智絵里『…見つかるといいね…幸子ちゃんの『何か』』
幸子「……!」
ダッ
かな子『それじゃ行こう!』
幸子『あっ、ちょっと引っ張らないで…』
かな子『私はかな子だよ、よろしくね!』
かな子『それじゃジュース飲んで!」
幸子「う……」
かな子『またいつか…一緒にライブやろうね!』
456:
幸子「うっ………」グス
千佳『あたしも一緒に連れて行ってよ!』
『幸子ちゃんがいてくれれば!』
幸子「うう……」ポロ
まゆ『ふんっ!』
まゆ『仲間の事なんて何も考えていない…ただの自己中です!!』
まゆ『あなたのせいです!!』
まゆ『どうして…あなたでなければならないんですか…』
まゆ『一人で行くなんて…私には…私にはできません!』
まゆ『遠い存在に思えてきて…切なくなるんです』
まゆ『一緒に頑張ってきた仲間じゃないですか』
まゆ『幸子ちゃんは私の一番のお友達です』
幸子「うあああぁ………!!!」ポロポロ
457:
ポツ ポツ
ザアアアアァ…
幸子「……」
幸子「……プロ…デューサー……」ギリ
クスクス クスクス
幸子「!?」
幸子(何…)
クスクス クスクス クスクス
『アノコモ…ナカマニ』『イッショニ…キテ…』
幸子「ひいっ…」
幸子(…また…あの悪夢の続きですか!?)
珠美「心してください」
幸子「!」
珠美「これがこれからのあなたの世界」
珠美「現世と幽世の境界…"狭間の世界"です」
幸子(この人は…あの時の…)
458:
ザザザ…
『イッショニ…アソボ』
珠美「これを使ってください!」シュッ
幸子「! 竹刀…」
『コッチヘオイデヨ…』
幸子「うわあああ!!」ブンッ
ズババッ
幸子(当たっても手ごたえがない…!)
珠美「それはこの地を彷徨う幽霊たちです…」
珠美「餌やアイテムにされた者…主であるPの死とともに消えていった者」
珠美「それがあなたの移籍の烙印に引き寄せられてきたのです」
幸子「ちょっといいですか?」
珠美「なんでしょうか」
幸子「どうしてそんなに遠くにいるんですかー!?」
珠美「だってお化け怖……あなたに巻き込まれないようにです!」
459:
珠美「これがこれからあなたが歩まねばならぬ現実です」
珠美「互いに重なりながら触れあうことのない二つの世界の狭間にあなたは立たねばなりません」
幸子「どうして…!?」
       サダメ
珠美「それが生け贄の烙印を受けたものの運命…あなたの体はすべて捧げられた供物なのです」
幸子「運命…」
幸子「運命、運命、運命!!うるさいんですよ!!」
幸子「偉そうなことを言うのならボクがやられてからにして貰いましょうか!!」
幸子「生贄!供物!運命!小難しい理屈を並べないでください!!」
幸子「要するにこれは戦いでしょう!!いつもと何も変わっていません!!」
幸子「いいですか!!あなたたち今すぐ地獄にたたき返してあげますからあの人たちに言っといてください!!」
幸子「今に見ていろと…ボクはやられたら必ずやりかえします!!」
[自称・天使]輿水幸子「カワイさでボクに劣る人たちが天使なんか名乗るなって!!天使はボク一人で充分だってね!!!!」
『その夢を踏みにじる者があれば全身全霊をかけて立ちむかう…』
『たとえそれが………』
珠美(なかなか凄い精神力ですね…あそこから生き延びたのはこの力ゆえでしょう…)
460:
スウウゥ…
幸子「!」
幸子「いなくなった…もう終わりですか?」
珠美「違います…」
珠美「見つけたのでしょう…もう一つの供物を」
幸子「供物…?また小難しいことを…」
幸子「……!」ハッ
幸子「まゆさんか…!」
珠美「連れて行ってあげましょう!行きますよ!」グイッ
幸子「うわ…あ!?」
珠美「あなたを乗せるのはこれで二度目です…振り落とさぬよう…」
ヒュバッ
ザザザザザ…
幸子(すごい!まるで風みたいだ…!)
幸子「ボクを乗せるのはこれで二度目って言いましたよね!?どういう事です!」
珠美「……」
珠美「あなた達を助けたのはこの私です…」
幸子「え…!?」
珠美「お礼はいいです…ついでですから」
珠美「これも何かの縁でしょう」
461:
幸子「……」
幸子「あなた何者なんです?」
珠美「彼女らに仇なす者…そうとだけ言っておきましょう」
幸子「どうしてボクを晶葉さんのラボに?あの場所は誰にも話したことないですよ」
珠美「私はただあそこから近い安全な場所へ連れて行っただけです」
珠美「お化けというものは激しく瞬く光や金属同士の擦れなどで発生する音を嫌う…」
珠美「あそこは一年中何かを作っていて明るいしうるさいのでうってつけなのです」
珠美「それがあなたのゆかりの場所とは知りませんでした…偶然です」
珠美「そろそろつきますよ!!」
ザッ
タタッ
幸子「まゆさん…!」
仁奈「ひいいい…!お化けはだめです!気持ちがわわわからねーでごぜーます!!」ガタガタ
まゆ「だ、大丈夫よ仁奈ちゃん…!まゆの後ろに…!」ブルブル
晶葉「幽霊だと…!?そんな非科学的なものが存在してたまるか!!ただのプラズマに決まってる!」
晶葉「こんなもの全部塵にしてくれるわ!!喰らえ!ゴースト・バスターズ!」ゴオオオ
みく「さすが晶葉チャン、頼りになるにゃあ」
杏「かがくの ちからって すげー!掃除機で幽霊って吸えるんだね」
幸子「……」
珠美「その掃除機ぜひ一つお譲り頂きたい」
462:
杏「あ…幸子戻ってきたの…よかった」
幸子「ふう…皆さんも無事なようで…」
仁奈「怖えーです…」ガタガタ
まゆ「ううう…」ブルブル
みく「まゆチャンもお化けは苦手だったみたいだにゃあ」
珠美「それではさらばです…」
幸子「!」
珠美「我らもまた相見えることがあるでしょう…縁あらば」
珠美「もしあの人たちを追うつもりならば烙印の導きに従うことです…」
珠美「ですが心するのです…あなたのゆく道は夜の道」
珠美「彼女らと対峙するときあなた自身もまた闇に身を沈めていることを」
珠美「―――良い旅を」
463:
――――――――――――――――――――――
晶葉「うーむ…ここはこうかな…」
キュイーン
仁奈「……」ソロー...
仁奈「ふっふっふ……」カチャ
タタッ
杏「ふわぁー…どしたの仁奈?」
仁奈「こっちでごぜーます!」
杏(いいのかな?勝手に…)
ガチャ…
杏「うわっ!すごい機械の数だ…」
仁奈「晶葉おねーさんは発明家として凄く有名なんでごぜーますよ!」
杏「すごい…よくわからない機械に…ロボットもたくさんだ」
仁奈「頼まれればなんでも作っちゃう天才だったですよ!」
杏「……」
杏「! な…なんだこれは…スゴイでっかくて重い…マイク?」
ゴゴゴゴゴ…
仁奈「あー!それはドラゴンころしでごぜーます!」
杏「ドラゴンころし…何さそれ?」
464:
晶葉「昔ある会社から依頼をされてな」
仁奈「わっ!」ドキッ
晶葉「どんな人間でも虜にできるようなマイクを作れと…それで会社からその仕事を受けた」
晶葉「そのころの私はほかの人間が嫌いだった…やれ綺麗なアイテムだ、やれ可愛いアイテムだと…」
晶葉「発明とは人の役に立つもので、煌びやかに飾り付けるものなんかじゃない…」
晶葉「だから私は作ってやったのだ…たとえドラゴンの心でさえも射抜けるような声になるマイクをな!」
杏「そ…それで?」ゴクリ
晶葉「首になった」
杏「え?」
晶葉「首になった」
杏「……」
晶葉「やりすぎたな…完璧な音程と声量が足りないとまともに動いてくれないんだ…」
晶葉「確かにあの時は未熟だった…威力がある物、強力な物、機能が多いもの…それだけが私のすべてだった」
晶葉「だがそれを扱う物の度量を超えれば足枷にしかならん」
晶葉「発明の本質から外れることを嫌いながら、私のやったこともまた同じことだった…今じゃいい戒めさ」
晶葉「ちなみにネーミングは仁奈がドラゴンの気持ちになってたところからつけた」
仁奈「カッコよさに仁奈のハートも射抜かれちまったでごぜーます!」
杏(それじゃ仁奈が死んじゃうんじゃ…)
晶葉「君の友人は何やらドラゴンとでも戦おうって形相だな…」
晶葉「まだ戦うつもりらしいが…彼女には荷の勝ちすぎる敵なんじゃないか…?」
465:
杏「明日だねー出発…」
幸子「ええ…お世話になりました」
杏「まゆと一緒に行くんでしょ?」
幸子「ええ…まゆさんならきっとPさんの居場所に近付いていけるはずです」
杏(プロデューサー…か)
杏(幸子も、まゆも、みくも…誰も何も話してくれない)
杏(でも…ほんとは杏だってわかってるんだ)
杏(信じたくはないけど…みんなはもう…)
まゆ「うふ…明日が出発の日ですねぇ…はやくPさんに会いに行ってあげないと…♪」
幸子「……」
みく「ねえ…幸子チャン?本気なの…?」
幸子「…ええ」
みく「…幸子チャン…ほんとはね、みく思うのにゃ…二人とも…ここに残るべきじゃないかって…」
幸子「……」
みく「認めたくはないけど…鷹の団も…みんなも…もう…」
みく「もういない人たちのためよりも…今いるみんなで…一緒に…」
幸子「ここにいたって何も変わりませんよ!!みくさんだって悔しくないんですか!?」バンッ
幸子「ボク達の仲間が全員!何の脈絡もなく!唐突に!理不尽に!虫みたいに!」
幸子「みんな若いのに…これからだって何かできたはずです!なのに一瞬で…!」
幸子「ボクにとっては…かけがえのない…!!」
みく「……」
幸子「……」
幸子「もう寝ます」ゴロン
みく「みくはそのかけがえのないものを…これ以上なくしたくないのにゃ…」
みく「まゆチャンと幸子チャンまでいなくなっちゃったら…いやだよぉっ…!」グスッ
みく「う…ヒック…グス…」
幸子「……」
466:
――――――――――――――――――――――――――――
―翌朝
まゆ「ちゃんと準備終わりました?」
幸子「ええ…」
晶葉「行くのか」
幸子「…あなたにはいろいろお世話になりましたね」
晶葉「なーに、その二人に体で払ってもらうさ」
みく「えっ」
杏「え゛っ」
仁奈「わーい」
晶葉「君がどこで何をしようが知ったことじゃないが…餞別にこのマイクをくれてやろう」
晶葉「自慢じゃないが私の傑作だ…きっと役に立つだろう」
幸子「……ありがとうございます」
まゆ「ふふ…仁奈ちゃん…またね♪」ナデナデ
仁奈「うう…寂しいでごぜーます」
幸子「……」フフ…
幸子「……っ」
まゆ「う……?」
晶葉「どうした?」
聖來「見つけたよ…食べ残しはよくないよねっ」
467:
晶葉「どちら様だ?」
幸子「待ってください!!」
まゆ「まゆたちのお客さんですね…」
聖來「残り香を辿って来たんだ…アタシのわんこ、すごく鼻がいいの♪」
聖來「痺れるLIVEをお見舞いするよ!」
幸子「……幸先いいですね…まずは一人目…」
ドクン
ドクン
心を…怒りが塗りつぶしていく
幸子「ボクの天使の歌声で…天国に行ってもらいましょう…」
幸子「『舞い降りる羽根』っ!!」バッ
バギッ ガシュッ ドドオオンン…
聖來「くっ…」
幸子(いける…これなら!!)
杏「す…すごい!」
晶葉「まずいな…」
みく「え…?」
晶葉「たとえ何人ファンを魅了しても壊れることはないだろうがな…造ってないんだよあれは」
晶葉「強力なアイドル自体を相手にして戦うようにはな…」
468:
バシュッ
幸子「ふふーん…」チラ
ボロッ…
幸子(マイ…クが……!)
聖來「あれ、もう終わり?早いね…アタシが魅せ方教えてあげる!」
聖來「『マーメイドダンス!』」
バキィッ
幸子「っ……」
ドシャアアァ…
幸子「く…!」ゴホ
幸子(ふざ…けないで…!こんなので…)
幸子(こんなところで終わってしまうくらいなら…)
幸子(わざわざ生き残りますかああ!!!)
幸子「! これは…」
469:
聖來「ふふっ、みんなの視線アタシに釘付けだね!とっても気持ちイイ?♪」
まゆ「…あなたですか」
聖來「ん?」
まゆ「Pさんを連れて行ったのは…あ な た で す か ?」オオオオ…
聖來「え、えっと…知らないよ…?」
まゆ「とぼけないでください…あなたがあの人たちの仲間だってことくらいわかるんですよぉ…?」
まゆ「許せない…許さない…!まゆからPさんを奪おうだなんて…!!」ギリッ
聖來「ちょ…こ…怖いんだけど…」
まゆ「まゆとあの人は繋がっているんです…!『運命の赤い糸』!」
聖來「うわわ!弾け跳べ!『スプラッシュダンス』!!」
まゆ「! みくちゃんこっちきて」グイッ
みく「にゃあ!?」
ブシャアァ
みく「ゲホッ!いきなり何するにゃ!?」
まゆ「みくちゃんはどんなにやられてもダメージ受けないみたいですから…♪」ウフフ
仁奈「今のまゆおねーさん…何だか怖いでやがります…」
杏(ひどいことするな…)
470:
聖來「アタシの攻撃でやられないなんて!?いったいあなた達…」
幸子「どこを見てるんですか?」
聖來「!?」
幸子「くらえ!『舞い降りる羽根』!!」バサァッ
ガゴッ!!
聖來「うそ…悔しいな……!次はアタシが…」
ドサッ
杏「あ…あれは!どこかで見たドラゴンブレスだ!?」
幸子「人が悪いですね晶葉さん…」
幸子「あるじゃないですかボク向けのやつが!!(重いけど…)」ガシャ
晶葉「それはドラゴンころし…!そいつを使ったのか!」
晶葉「全く君ってやつは…!」ゾクゾク
471:
――――――――――――――――――――――――――
杏「本当に…行っちゃうの…?」
幸子「…ええ」
まゆ「はい」
杏「本当にそれでいいの…?冷たい言い方だけど…!みんなもういないんだ!」
杏「杏たちのアイドルへの道はもう終わったんだ!だったら!だったら何か新しい道を…」
幸子「終わってません」
杏「え?」
幸子「鷹の団もまだ終わっていません」
幸子「まだ…ボク達がいる」
幸子「このイベントはまだ終わってはいません」
幸子「ボクは一番かわいいんだから…イチバンに突っこむ!でしょう?」
晶葉「じゃあ…元気でな」
仁奈「二人ともまた逢いに来てくだせー!」
まゆ「もちろん…きっとまた来るわ…だから仁奈ちゃんも元気でね…♪」ナデナデ
仁奈「ぐすっ…約束ですよ…?」
みく「絶対…絶対負けないでね!約束にゃ!」
幸子「それでは皆さん…さようなら」
復讐…戦い…理由はなんでもよかったのかもしれない
ただ一つ確かな事…今はボクの中の何かドス黒い狂暴なもの…
ただそれだけが この両足を支えている
前へ踏み出せとせきたてる
モバP「モバセルク?黄金時代編?」
終わり
47

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