小野寺「私、実は一条君のことが……す……す……」back

小野寺「私、実は一条君のことが……す……す……」


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1:
小野寺「……好き……です」
楽「えっ?」
小野寺「……」(カアアァァ
楽「えっと……」
るり「一条君の気持ちはどうなのよ」
楽「みっ、宮本! お前、帰ったんじゃ……」
るり「そんなことどうでもいいのよ。それより小咲の告白に対する一条君の返事はどうなの?」
小野寺「……」ドキドキドキドキ
楽「えっ、その……えっと……。お、俺も小野寺のことがす、好きだ!」
10:
小野寺「えっ?」ドキドキドキ
るり「ほらね。やっぱり私の言った通りじゃない」
楽「ど、どういうことだよ宮本?」
るり「端から見たらどうしてアンタ達とっととくっつかないんだろうってイライラしてたってことよ」
小野寺「る、るりちゃん!!」
るり「なに? 私、なんか違うこと言ってる?」
小野寺「別にそうじゃないけど……。やっぱり恥ずかしいよ」(カアアア
るり「なに言ってんのよ。もうアンタ達今日から恋人同士でしょ」
20:
小野寺「えっ?」
るり「だってそうじゃない。お互いがお互いを好きなんでしょ。一条君、桐崎さんとは偽の恋人なんだし」
小野寺「……い、一条君は本当に私なんかでいいの?」(カアアアァァ
楽「あ、当たり前じゃねえか! そ、それより小野寺こそ本当に俺なんかでいいのかよ」
小野寺「うん」(カアアアァァア
楽「……」(カアアアァァ
るり「はいはい。目の前でそういうことされるとうっとうしいからアンタ達はやく二人で帰りなさい」
小野寺「ふ、二人で!?」
るり「恋人同士なんだから当然でしょ。桐崎さんには明日説明すればいいし」
小野寺「そう……だね」(カアアア
小野寺「一条君、帰ろ?」(カアァァァ
楽「お、おう」(カァァァ
千棘「……」ジー
30:
小野寺「……」テクテク
楽「……」テクテク
小野寺&楽「あ、あの……」
小野寺「い、一条君、先に言っていいよ」
楽「い、いや小野寺が先に……」
小野寺「……私ね。今、本当に嬉しいんだ」
楽「えっ?」
小野寺「実は私、本当は一条君のこと中学生のときから好きだったんだ。
私に勇気がなくてこんなに思いを伝えるのが遅くなっちゃったけど本当にありがとう。一条君」
楽「小野寺……」
37:
千棘「おはよう。もやし」
楽「お、おう」
楽「(すぐ分かることだし小野寺と付き合いはじめたこと千棘には言っておかなくちゃな)」
楽「な、なあ千棘」
千棘「なに?」
楽「俺、実は小野寺と付き合うことになったんだ」
千棘「ふーん」
楽「って反応薄過ぎだろ!」
千棘「だって知ってたもん」
楽「えっ? まさか昨日見てたのか? な、なんでじゃ出てこなかったんだよ」
千棘「出て行けるわけないでしょ。アンタ小咲ちゃんに鼻の下あんなに伸ばして同じ恋人の私とはひどい違いよね」
楽「そ、それは仕方ねえだろ。お前とは本当の恋人じゃねえんだし」
39:
千棘「大体、小咲ちゃんも小咲ちゃんよね。普通、恋人がいる男に告白するかしら?」
楽「だから俺とお前は偽の恋人で……」
千棘「……違うんだ」(ボソッ
楽「えっ? なんだよ?」
千棘「先に行ってる」タタッ
楽「あっ、ちょっと待てよ千棘……ったく……」
41:
楽「ったくなんなんだよ朝からあいつは……」
楽「ん? なんか教室が騒がしいような……」
ガラッ
千棘「彼女がいる男に告白ってアンタ最低じゃない!」
小野寺「ごめんごめんね。千棘ちゃん……」
カレシガイルノニコクハク? マサカオノデラガラクニコクハクシタノカ? デラチャンサイテー
楽「お、おい! なにやってんだよ千棘!」
48:
千棘「あっ、おはようダーリン」ニコッ
「一条来たじゃんww」「うわー、修羅場?」「おい一条、説明しろよ」
楽「千棘、お前なになってんだよ!」
千棘「なにって? 私の大事なダーリンに小咲ちゃんが告白したなんて聞いたから本当かどうか聞いてただけよ」
楽「はあ? 俺とお前は偽の……」
楽「んんっ?」(クチフサギ
小野寺「だ、駄目だよ一条君。それを言ったら一条君と千棘ちゃんの家の人にも迷惑がかかっちゃう」(ボソボソ
楽「で、でもこのままだと小野寺が悪者みてーに」(ボソボソ
小野寺「私は大丈夫だよ。後で三人で話し合おう?」(ボソボソ
楽「……」
52:
昼休み 屋上
楽「どういうことだよ千棘! なんで皆の前であんなことやったんだよ!」
小野寺「落ち着いて一条君。きっと千棘ちゃん、誤解してるんだよ」
千棘「千棘って名前で呼ばないでくれる?」
小野寺「えっ……」
千棘「なんでってそんなの決まってるじゃない。私とアンタが恋人だからよ。例え偽物だとしても!」
楽「はあ? 説明になってねえじゃねえか! いくら偽の恋人を演じてるからってわざわざ皆の前で言うことねえだろ!」
千棘「もしクロードの耳にアンタと小野寺さんが付き合ってるなんてことが入ったらどうなるか分かってるの?」
55:
楽「それは……」
千棘「アンタに釘をさすために言ったのよ! あれは! いくら偽の恋人だからって嘘だってバレたら大変なことになるのに他の女の子と付き合いだすなんてアンタばっかじゃないの!?」
楽「だ、だからってそれと小野寺は関係ねえじゃねえか! あれじゃ小野寺が皆に誤解されたままじゃねえかよ!」
千棘「偽物とはいえ人の男に手を出したんだから当然の報いよあんなの」
楽「お前……ふざけん……」
小野寺「も、もういいよ一条君!」
楽「小野寺……」
58:
小野寺「私が悪いんだよ……。自分のことしか考えずに告白しちゃったから……」
楽「そ、そんなことねえよ小野寺! 悪いのは全部こいつ……」
千棘「とにかくアンタには学校内では今まで通り恋人のふりをしてもらうわよ。小野寺さんと付き合いたいなら人目がないところでこっそりすることね!」
楽「……」
千棘「さあ、分かったら行くわよ。ダーリン!」ギュッ
楽「って、おい、くっつくなよ」
千棘「仕方ないでしょ? 恋人のふりをしなきゃいけないんだから」チラッ
小野寺「……」
64:
「おおー! 相変わらずラブラブ?」 「やっぱり小野寺と付き合いだしたってのは嘘だったんだな!」
千棘「この通り! 私とダーリンはラブラブでーす!!」ギュウウウッ
「一条うらやまし?」 「はあ、なんであいつばっかり……」
千棘「ほら! アンタももっとくっついて!」ギュウウウッ
楽「……」
千棘「……」
屋上
小野寺「うっ、うぅ……」
るり「……」
小野寺「……!? る、る、る、るりちゃん?」グスッ
るり「小咲、あんた……」
小野寺「な、なんでもないよ! あっ、もう昼休み終わっちゃう! 戻らないとね」タタタッ
るり「……」
72:
放課後
千棘「ダーリン?、一緒に帰りましょ」
楽「恋人のふりは学校の中で学校の外では関係ないだろ。外ならお前のとこの眼鏡やクラスの奴に見られることもないだろうし……」
千棘「……」
楽「帰ろうぜ、小野寺」
小野寺「う、うん」(カアアアァァ
千棘「……」
るり「桐崎さん、ちょっといいかな?」
78:
るり「ここなら誰も来ないわね」
るり「……今日の朝、どうしてあんなことをしたの?」
千棘「なんのこと?」
るり「惚けないで。小咲が一条君に告白したことみんなに言って大騒ぎしてたでしょ」
千棘「小野寺さんが私のダーリンに告白した、何が違うの? 全部、本当のことじゃない」
るり「あなたと一条君は偽の恋人でしょ?」
千棘「偽とか本当とか関係ない。大体あなたには関係ないことじゃない」
るり「私は小咲の友達だから」
千棘「とにかく話はそれだけ? 私もう帰……」
ガシッ
るり「桐崎さん、もしかしてあなたも一条君のことが好きなの?」
82:
千棘「……だったら何?」
るり「一条君と偽の恋人である関係を利用してる」
千棘「あなたには関係ないでしょ」
るり「怖いんでしょ」
千棘「……」
るり「小咲に負けるのが」
千棘「うるっさいわね! 離しなさいよ!」バッ
タタタタッ
るり「……全くなんであの子はいつもこうなっちゃうのかしら」
83:
楽「……」
小野寺「……」
楽「朝は本当にごめんな小野寺。俺、絶対みんなの誤解解くから」
小野寺「大丈夫だよ。それに確かに千と……桐崎さんの言う通りだったかもしれない」
楽「何言ってんだよ。だから俺とあいつは偽の……」
小野寺「だってきっと桐崎さんも……」ボソッ
楽「ん? なんか言ったか小野寺?」
小野寺「ううん。なんでもないよ」
86:
小野寺「ただいま」
小野寺母「お帰り小咲。新作の和菓子できたんだけど食べてみる?」
小野寺「ううん。今はいいや。部屋にいるね」
ガチャッ
小野寺「はあ……」
小野寺「私、これからどうすればいいんだろう……」
ピンポーン
小野寺母「はーい」
小野寺母「あっ、ちょっと待っててね。小咲ー、お友達よー」
小野寺「誰だろう……?」
88:
小野寺「千と……桐崎さん、私に何か用?」
千棘「ちょっと来てくれる?」
小野寺「うん」
千棘「ここなら人目にもつかないわね」
小野寺「……」
千棘「私ね、小野寺さんがあのもやしに告白するところ見てたの」
小野寺「そう……なんだ」
千棘「あいつあんな顔、私には見せたことなかったのに……」
小野寺「桐崎さん?」
91:
千棘「……なんであいつに告白なんかしたの?」
小野寺「もちろん一条君が好きだからだよ」
千棘「確かアンタって中学校も一緒だったわよね?」
小野寺「う、うん」
千棘「中学校のときから好きだったの?」
小野寺「……うん、そうだよ」
千棘「ふーん。気持ち悪い」
小野寺「えっ……?」
千棘「どうせ主体性のないアンタのことだもん。あいつと離れたくなくて高校まで一緒にしたんでしょ? それってストーカーと変わらないし」
小野寺「で、でも……」
千棘「でもなに? 私アンタみたいな奴大嫌いなのよね! いつもいつも人の顔色ばっかり伺ってそんな生き方楽しいの? ほんっと気持ち悪いったらないわよ」
96:
小野寺「ごめん……」
千棘「そういうところがほんっとに腹立つのよ。なんで謝るの?」
小野寺「だって……桐崎さんも一条君のことが好きだったんでしょ?」
千棘「……」
小野寺「……」
千棘「なんだ分かってるんじゃない」
小野寺「……桐崎さん、私に一つ提案があるんだ」
千棘「なによいきなり」
小野寺「桐崎さんも一条君に告白しようよ」
千棘「……」
小野寺「私が気付かなくて、桐崎さんからみたら私が抜け駆けしたように見えちゃったんだもん。それは桐崎さんが怒るのも当然だよね。だからお互いに告白して一条君に決め……」
千棘「なに言ってんのアンタ?」
小野寺「えっ……?」
千棘「もやしの今の恋人は私なの。なんで私が譲歩しなくちゃいけないのよ」
103:
小野寺「でも……そんなのおかしいよ」
千棘「……私の実家が何なのか知ってるわよね?」
小野寺「……」
千棘「アンタの家の和菓子屋の隣に私の家の人間の詰め所を作ったらどうなるかしら?」
小野寺「そんな! 私の家は関係ないよ!」
千棘「選びなさいよ」
小野寺「えっ……」
千棘「もやしかそれともアンタの家族か」
109:
千棘「あっ、言い忘れてた
アンタがもやしと別れるときは徐々にフェードアウトする感じにしてよね。
さすがにあの鈍感なもやしでも、アンタがいきなりすぐにやっぱり好きじゃないなんて言ったら気付くだろうし」
小野寺「……」
千棘「じゃあまた明日学校でね」(ニコッ
小野寺「うぅっ……う……」(グスッ
小野寺「ごめんね一条君、ごめんねるりちゃん」
115:
翌日の昼休み
千棘「ダーリン?、今日はお昼二人で食べよう?」ギュッ
楽「そうだねハニー!」
クロード「……」ジー
楽「(くそっ……あいつさえ見てなければ……!)」
小野寺「……」ボー
るり「小咲?」
小野寺「……なに、るりちゃん?」
るり「何かあったの?」
小野寺「……ううん」
るり「……あんなの気にすることないわよ。所詮桐崎さんは偽の恋人。本当の一条君の彼女はアンタなんだから」
小野寺「……うん」
121:
放課後
楽「(よし、メガネは……もう見てないな!)」
楽「小野寺、一緒に帰ろうぜ」
小野寺「う、うん」
千棘「……」チラッ
るり「……」
楽「せ、せっかくだからどこか寄り道していこうか。小野寺どっか寄りたいところとかあるか?」
小野寺「……ううん。別にないよ……」
楽「……」
小野寺「……」
楽「(くそっ、話たいことは山ほどあるのに、いざとなると何を話せばいいのか……)」
小野寺「一条君」
楽「ん? な、なんだ小野寺?」
小野寺「私と一緒に居て楽しい?」
122:
楽「あ、当たり前だろ! 小野寺は……つまらないのか?」
小野寺「ううん。ありがとう一条君」
楽「!」
楽「やべえ、またあの眼鏡だ! ちょっと離れてくれ小野寺」
小野寺「う、うん」
楽「(くそっ……偽恋の関係さえなければこんなこと……)」
千棘「ダ?リ?ン?!」
楽「ち、ちとっ……んっ!? んんっ?!」ズチュ
千棘「お別れのキス忘れてるよ? あっ、小野寺さん、ごめん。居たんだ?。ごめんね彼氏借りちゃって」ニコッ
小野寺「……」
楽「ほっ、ほらもう眼鏡はどっか行ったんだから離れろよ」
千棘「もうっ! じゃあダーリンまた明日ねー!」
楽「(千棘の唇すっげえ柔らかかったな……)」
小野寺「……」
154:
楽「(それになんか最近のあいつ丸くなったというか……積極的になったというか……)」
小野寺「……」
楽「(いかんいかん! やっと小野寺と恋人同士になれたのに何考えてんだ俺は!)」
小野寺「じゃあまた明日ね。一条君」
楽「えっ? いや家まで送って……」
小野寺「ありがとう。でもごめんね。今日はちょっと一人になりたい気分なんだ」
楽「そ、そうか。じゃあまた」
小野寺「うん……」
158:
数週間後 昼休み
千棘「ちょっと来てくれる?」(ニコッ
小野寺「う、うん」
るり「……」
千棘「どういうことなの? 全然アンタとダーリンが別れる気配ないんだけど?」
小野寺「う、うん」
千棘「うんじゃ分からないでしょ? どういうことって聞いてんの! それともダーリンを選んでアンタは家を犠牲にしたってことでいいのかしら?」
小野寺「ち、違うよ」
千棘「ダーリンは鈍感だしアンタからもうとっとと振りなさいよ! そうね……。今日中に」
小野寺「きょ、今日中? そんな……いきなりは無理だよ」
千棘「できるかできないじゃないのよ。アンタに選択する権利なんかないの。できないならアンタの家の薄汚い和菓子屋が潰れるだけね」
小野寺「そんな……」
160:
放課後
小野寺「い、一条君、一緒に帰ろ」
楽「おう」
楽「……」
小野寺「……」
楽「今日は時間あるしどこかに寄り道して帰るか! そうだ! 今ちょうど和菓子展が……」
小野寺「ううん。ごめんね。今日はいいや……」
楽「そ、そうか……」
小野寺「……」
楽「(なんだろう……。付き合いはじめてからの小野寺は小野寺じゃない気がする。
緊張してるだけかと思ったらもう一ヶ月だし……。
あれだけ憧れてた小野寺と一緒にいるのに……)」
小野寺「……実は一条君に伝えなくちゃいけないことがあるんだ」
164:
小野寺「他に好きな人ができたの」
楽「えっ?」
小野寺「……」
楽「い、いやだって小野寺は中学生のときからって……」
小野寺「本当にごめんね。でもやっぱり一条君には桐崎さんがお似合いだと思うよ」
楽「な、なんだよそれ! 千棘になんか言われたのか!?」
小野寺「ち、違うよ。これは私の本心」
楽「……」
小野寺「……」
楽「……分かった」
小野寺「……ごめん一条君」
楽「じゃあ……また明日」
小野寺「うん……」
千棘「あれ? ダーリンと小野寺さん? 今、帰り」(ニコッ
167:
千棘「あっ、それともお邪魔だったかな?」
小野寺「わ、私帰るね」
楽「……」
千棘「何かあったのダーリン?」
楽「あの眼鏡いねえぞ。わざわざダーリンって呼ぶことなんて」
千棘「ダーリン」
楽「だから……」
千棘「好き」
楽「えっ……?」
168:
楽「なに言ってんだよ。なんか悪いものでも食ったのか?」
千棘「ち、違うわよ!」
楽「……」
千棘「小野寺さんになんて言われたのよ?」
楽「別れるって」ボソッ
千棘「もっとはっきりいいなさいよ!」
楽「あーもう! 振られたんだよ!」
千棘「よかった」
楽「は? お前、何言って……」
千棘「ずっと不安だったのよ」
174:
楽「は?」
千棘「小野寺さんとアンタが付き合いはじめたって聞いたとき……」
楽「どういうことだよ?」
千棘「あーもう! 鈍いわね! つまり私はアンタのことが好きってことよ!」
楽「えっ?」
千棘「なっ、なによその顔。せっかく女の子が告白してるんだからなんとかいいなさいよ」
楽「い、いや突然のことで頭が……」
楽「(そうか……。きっと俺もいつの間にか千棘のことを……。
だから小野寺といてもどこか楽しくなかったのかもしれない……)」
千棘「ど、どうなのよ?」
楽「ま、まあお前がそこまで言うんなら……」
千棘「なっ、なによそれ!」
楽「……よろしくな」
千棘「えっ?」
楽「あ、改めてよろしくってことだよ……」
千棘「う、うん」
179:
翌日の昼休み
るり「小咲、ちょっと来て」
小野寺「な、なに? るりちゃん」
るり「いいから」
るり「小耳に挟んでまさかとは思ったんだけど、いちおう確認しておくわ。小咲、一条君と別れたっていうのは本当なの?」
小咲「……うん」
るり「振られたの? 小咲が?」
小咲「ううん。違うよ。私が一条君を振ったんだよ」
るり「アンタが一条君を? なんで? ずっと好きだったんでしょ?」
187:
小野寺「う、うん。でもやっぱり一条君とたった一ヶ月だったけど付き合ってみて分かったよ。私と一条君は合わないって……」
るり「桐崎さんに何か言われたんじゃないの?」
小野寺「ち、違うよ。それに私だって中学校のときから好きだった人を誰かに何か言われたぐらいで諦められないよ」
るり「ふーん。アンタがいいならいいんだけど。一条君、今度は本気で桐崎さんと付き合いはじめたみたいだし」
小野寺「そう、みたいだね……」
るり「ほんと振られた当日にすぐ他の女と付き合いはじめるような奴の何がいいんだか」
小野寺「……振られた当日だから、じゃないかな」
るり「……まあいいわ。私は小咲がそれでいいならこれ以上は何も言わない」
小野寺「うん。ありがとう。るりちゃん」
小野寺「(るりちゃん。ごめん。私、るりちゃんに嘘ついちゃったよ……)」
193:
放課後
るり「桐崎さんちょっといいかしら」
千棘「なに? 私、今日はダーリンと帰るんだけど」
るり「すぐ終わるから」
千棘「なに?」
るり「すぐ終わるって言った手前、単刀直入に聞くわ。小咲に何を言ったの?」
千棘「はあ? いきなりなによ?」
るり「小咲が一条君と付き合って一ヶ月でまして小咲の方から振るなんてありえないもの」
千棘「だからってなんで私が原因だっていうのよ」
217:
るり「一条君が小咲と別れてすぐに桐崎さんと付き合いはじめたってことはやっぱり桐崎さんも一条君のことが好きだったってことでしょ?」
千棘「……万が一それで私が小野寺さんを脅してたら何? 今のダーリンの彼女は私なの。
もう偽ではなく本物のね。もう遅いのよ」
るり「そうかしら? 私は遅いとは思わないけど」
千棘「……」
るり「一条君が小咲を振ったのならともかく、小咲が一条君を振ったんだから小咲があなたに言わされて一条君を振ったんだとしたら小咲と一条君が別れる理由はなくなる」
千棘「そんなの証明できるわけないじゃない!」
るり「そうかしら簡単だと思うけど?
あの子の口から本当はやっぱり一条君のことが好きって言葉を引き出せばいいんだから」
220:
千棘「やれるものならやってみれば?」
るり「もちろん自由にさせてもらうわよ」
千棘「アンタさあ、小野寺さんの友達か何か知らないけど、アンタ自身が小野寺さんを駄目にしてるって気付いてないわけ?」
るり「どういうこと?」
千棘「アンタがなにからなにまでしてあげるから、あんな受け身で一人じゃ何もできない八方美人ができあがったってことよ!」
るり「……あの子は優し過ぎるところがあるからね。
それに他人の恋路の邪魔をして失恋させた直後の傷心の状態につけ込んで告白するような人よりは遥かにマシだと思うから」
千棘「ほんっっと腹立つわね! アンタは小野寺さんの何なの!? 保護者?」
るり「親友……かな」
229:
放課後
るり「一条君、明日の放課後桐崎さんを連れて屋上に来てくれない?」
楽「な、なんだよ。いきなり」
るり「小咲から大事な話があるんですって」
楽「お、小野寺から!? 俺は小野寺に振られたんだぞ? 今更何を……」
るり「はあ」
楽「な、なんだよ」
るり「ほんと、一条君ってなんというかなんでも言葉の通り受け取ってしまうのね。イライラするわ」
楽「意味分かんねえよ……」
るり「一条君、あなた本当に小咲が一条君のことを嫌いになったと思う?」
楽「えっ……?」
230:
千棘「ダ?リ?ン! 一緒に帰りましょ!」
るり「ちょうど良かったわ桐崎さん。あなたも明日の放課後一条君と一緒に屋上に来て欲しいの」
千棘「……なんで?」
るり「小咲から話があるんだってさ」
千棘「ふ?ん。でもそれなら明日じゃなくて今でも……」
るり「生憎、小咲はもう帰っちゃってるのよ」
千棘「はあ? 意味分かんないわね」
るり「とにかく逃げないで来てよね」
千棘「私が何から逃げるっていうのよ
行こ! ダーリン!」
233:
小野寺母「小咲ー、お友達よー!」
小野寺「うん。分かった」
小野寺「(誰だろ? こんな時間に……)」
千棘「ちょっと顔貸してくれるかしら」
小野寺「桐崎さん……?」
千棘「どういうこと?」
小野寺「えっ?」
千棘「どういうことかって聞いてんのよ!」
小野寺「な、何のこと?」
千棘「とぼけるのもいい加減にしなさいよ。今更私とダーリンを呼び付けておいて何を言うつもり?」
小野寺「呼び付ける? 私が?」
千棘「そーよ! アンタの親友の眼鏡からの伝言で明日の放課後私とダーリンで屋上に来いってね!」
小野寺「るりちゃんがそんなことを……?」
240:
千棘「その様子からするとアンタ何も知らないんだ」
小野寺「う、うん」
千棘「通りでおかしいと思ったわよ。アンタみたいないつまでもウジウジしてる人間が今更呼び付けるなんてマネできるわけないもんね」
小野寺「……」
千棘「なんとか言ったらどうなの? そうやって黙り込むところもほんっと腹立つ!」
小野寺「ごめん……」
千棘「ダーリンはアンタとなんか一緒にならなくて本当正解だったわね。私といるときのダーリンは生き生きしてたもん」
小野寺「よかった」
千棘「? どういう意味よ?」
小野寺「私はただ一条君が桐崎さんと一緒に居て楽しかったならよかったってだけだよ」
千棘「はあ?」
小野寺「一条君と一緒に居た一ヶ月は本当に楽しかったよ。
でもそれは私にとってってだけだったかもしれないから。
一条君が幸せなら私はその隣に居なくてもいいの。幸せな一条君を遠くから見ることができればそれで……」
350:
千棘「馬っ鹿じゃないの! ほんっと腹立つ!」
小野寺「……」
千棘「……もう明日の放課後屋上になんか来ないでよね。私もダーリンも行かないから!」
小野寺「……うん」
千棘「じゃあ……待てよ……」
小野寺「?」
千棘「やっぱりアンタ明日の放課後屋上に来なさいよ。それでダーリンにアンタの口からはっきり大嫌いって言うの」
小野寺「えっ……?」
千棘「告白したのはあの眼鏡の口車に乗せられて仕方なくってことにでもすればいいのよ。
いい機会だわ。ダーリンもこれでアンタなんかを本当に全く気にしなくなるだろうし」
小野寺「そんな……」
千棘「嫌いっていうだけじゃ甘いわね。そうだ! アタシが明日アンタがダーリンに言う悪口の台本を書いてきてあげるわよ!
それを覚えてダーリンに言いなさい!」
小野寺「で、でも……」
千棘「あら、別にいいのよ? できないならアンタの家の和菓子屋が潰れるだけだし」
351:
小野寺「ひ、ひどいよ……いくらなんでもひど過ぎるよ……」
千棘「はいはい。じゃあアタシはアンタが読む台本かかなきゃいけないから帰るわよ」
小野寺「一条君に悪口なんか言えないよ……」(グスッ
prrrrrr
小野寺「? 誰だろ?」
小野寺「るりちゃん……」
356:
るり「もしもし小咲? アンタに言っておかなくちゃならないことが……」
小野寺「酷いよ。るりちゃん!」
るり「……いきなりなによ」
小野寺「るりちゃんが桐崎さんに明日屋上に来いって言ったんでしょ?」
るり「知ってたんだ……。誰から聞いたの? 一条君? 桐崎さん?」
小野寺「桐崎さんだよ……。さっきまで話してたんだよ?」
358:
るり「そう。なら話は早いわね。小咲、もう一回一条君にきちんと告白するのよ」
小野寺「そんな……もうできないよ……」
るり「一条君のこと本当に嫌いになったの?」
小野寺「……」
るり「じゃあ桐崎さんが言ってた家のことが引っ掛かてるのかしら?」
小野寺「る、るりちゃん、どうして知ってるの?」
るり「アンタと桐崎さんのあとをつけたとき聞いたのよ。言ってなかったかしら?」
365:
小野寺「無理だよ……」
るり「?」
小野寺「どうしてるりちゃんはこんなことするの? 私はただ一条君を近くで眺めるだけで良かったのに……
お母さんやお父さんや春まで巻き込むことになったら私どうすればいいか分からないよ……」
るり「小咲……」
小野寺「……ごめんねるりちゃん。るりちゃんに当たるなんて駄目だよね。
るりちゃんはいつも私の背中を押してくれたし、今回のことだって私のことを思ってやってくれたんだから」
366:
小野寺「やっぱりるりちゃんに話すと少しだけすっきりしたよ」(グスッ
るり「……」
小野寺「ふふ。実はね、るりちゃん。私、明日台本覚えなくちゃいけないんだ」
るり「台本?」
小野寺「うん。桐崎さんが一条君の悪口をかいてくるって」
るり「なによ……それ」
370:
小野寺「これで一条君には完全に嫌われちゃうよね。でももういいんだ。私にはるりちゃんがい……」
るり「いいわけないでしょ」
小野寺「えっ……?」
るり「アンタはずっと一条君のことが好きだったんでしょ?」
小野寺「うん……」
るり「もし桐崎さんが本当にアンタの家の店を潰そうとしたら警察にでも相談すればいい」
小野寺「……」
るり「ずっと我慢してきたんだから少しぐらい我が儘言ったっていいのよ、アンタは」
374:
小野寺「るりちゃん……」
るり「……でも私がアンタにしてあげれるのはここまでよ。どうするか最後に決めるのはアンタだし、アンタと桐崎さんどちらを選ぶのかは一条君次第なんだから」
小野寺「うん……。分かってる」
るり「まあせいぜい頑張るのね」
小野寺「うん。ありがとう。るりちゃん」(グスッ
るり「泣くのはまだはやいわよ」
小野寺「うっ……うん。そうだね」(グズッ
378:
翌日
千棘「おはよう小野寺さん♪ 例のもの机に置いといたから」
小野寺「……」
千棘「分かってるわよね? ちゃんと覚えるのよ?」
小野寺「……うん、分かってるよ」
千棘「分かればいいのよ。分かれば」
楽「……」
381:
放課後 屋上
楽「……」
小野寺「……」
千棘「……」
楽「小野寺、えっと話っていうのは……?」
小野寺「うん。実は一条君に伝えたいことがあるんだ……」
千棘「……」
385:
楽「伝えたいこと?」
小野寺「うん」
楽「小野寺は他に好きな人ができたんだろ? なのに今更……」
千棘「まあまあダーリン、せっかくだし聞いてあげましょうよ」
楽「それになんで千棘まで……」
千棘「いいからいいから」
小野寺「それじゃあ言うね」
楽「……」
小野寺「私、一条君のことが大嫌い。
色々な女の子にちょっかいをだしてふらふらして、
優しいのは結局自己満足で本当に助けが必要な人を助けてくれない。
10年前の鍵の女の子がずっと好きで中学のときから私が好きだったって一条君は言ったよね?
それってつまり二股ってことだよね。
誰よりも誠実なふりをして本当は複数の女の子と遊ぶことしか考えてない。
本当に一条君は最低だよ」
420:
小野寺「……これでいい? 桐崎さん?」
楽「えっ……?」
千棘「ちょ……」
楽「ど、どういうことだよ」
千棘「アンタ何私の名前だして……あっ……」
楽「お、おい……私の名前だしてってどういう……」
千棘「あーもうっ! うるさいわね! 今のがこの女の本心なんでしょ!
ほら! もう帰りましょ! ダーリン!」
421:
楽「いや、ちょ、どういうことだよ?」
千棘「いいから帰るわよ!」
小野寺「一条君!」
楽「?」
小野寺「私が伝えたいことは二つあるの……」
千棘「ちょっとアンタはもういいから黙ってなさいよ!」
小野寺「(るりちゃん、私に勇気をちょうだい……)」
小野寺「一つはさっき言ったように桐崎さんが私達の仲を無理矢理引き裂こうとしていること」
楽「!」
小野寺「もう一つは……」
千棘「黙れええええ!!!!!!!」
小野寺「私は一条君のことが大好きっていうこと!」
427:
楽「えっ……でも、小野寺は他の人を好きに……」
千棘「ダ、ダ、ダーリン! この女が言ってることは全部嘘! 私とダーリンの仲を引き裂こうとしてるのよ!」
楽「いや、お前でも……」
小野寺「一条君!」
楽「?」
小野寺「他に好きな人ができたなんて嘘を言ったことは本当に私が悪かった。ごめんなさい」
千棘「いい加減にアンタは黙……」
小野寺「でも私はやっぱり一条君のことを諦めることなんてできない!」
楽「!」
小野寺「だから答えを聞かせて欲しいの」
431:
楽「俺は……」
千棘「な、何真面目に答えてるのよダーリン! は、はやくこんなの放っておいて帰りましょ!」
小野寺「……」
楽「小野寺のことが好きだ」
千棘「!」
小野寺「……うん!」
438:
千棘「ちょっと意味分からな……」
楽「ごめんな……小野寺。俺、小野寺のことをあのとき信じられなくて……」
小野寺「ううん。私こそもっとはやく勇気を出すべきだったんだよね……」
千棘「私の話を聞きなさいよおおお!!!!!」
楽「……」
小野寺「……」
千棘「告白してまたダーリンをあたしから奪ったつもりかしら?
あー、やだやだ。ほんっと馬鹿の相手は嫌だわ。
アンタとダーリンが恋人である前に私とダーリンは偽の恋人なのよ?
もし私がクロードにアンタにダーリンを寝取られたなんて言ったらどうなるかしら?
集英組とビーハイブの協定は即決裂! この町もアンタもアンタの家族もただじゃすまないわよ!
つまりどういうことだかわかる? 馬鹿だからまだ分からないかしら?
アンタのしてきたことぜーんぶ無駄なのよ! アンタがどう足掻こうがダーリンは私のもの!
分かった? 分かったならはやく私達の視界から消えなさいよブス!

5:
楽「いい加減にしろよ!」
千棘「!」ビクッ
小野寺「い、一条君……」
楽「小野寺には指一本触れさせねえ……」
千棘「で、でも私とダーリンは恋び……」
楽「……小野寺が勇気をだしてくれたんだ。俺ももう中途半端なことはしたくない」
6:
千棘「あっ、甘いわよ! そんなのパパが許すわけないじゃ……」
楽「親父には土下座してでも関係を解消させてもらう。
元々、俺の親父とお前の親父さんは古い仲らしいし話せば分かってくれるはずだ」
千棘「そんな……」
楽「そうなれば俺とお前が偽の恋人である必要はなくなる」
小野寺「一条君……」
8:
千棘「いっ、いいの? そんなことしたらビーハイブを動かしてそこの女の和菓子屋を潰し……」
楽「うるっせえな!! いい加減にしろよ!!!!」
千棘「!」ビクッ
小野寺「いっ、一条君、もういいよ……」
千棘「うっ……うぅ……」(グズッ
10:
千棘「うぅ……うっ……」(グスッ
小野寺「きっ、桐崎さん……」
千棘「私だってダーリンの彼女になりたかった! それだけなのに……。どうして!?」
楽「……」
小野寺「……」
千棘「私の方が顔もスタイルも頭の良さもお金も全部! 全部アンタなんかより持ってるのにどうしてよ!!!!」
12:
千棘「どうしてアンタなんかに……アンタみたいなブスに私が負けなくちゃいけないのよ!!!!」
小野寺「……確かに私は桐崎さんみたいにかわいくないし、スタイルもよくないし、頭もよくないし、お金を持っているわけでもないよ……」
千棘「ならさっさと身を引いて……」
小野寺「でもね! 私、一条君を好きって気持ちだけは桐崎さんに負けないよ? ううん。桐崎さんだけじゃない。
これだけは世界中の誰にも負けない!」
楽「小野寺……」
15:
千棘「はあ? ほんっと馬鹿じゃないの!?」
るり「馬鹿はどちらかといえばあなたの方よ。桐崎さん」
楽「み、宮本!?」
小野寺「る、る、るりちゃんいつから?」
るり「最初からアンタ達に気付かれないように見てたわよ……
まあ、アンタにしては頑張ったみたいね。小咲」
小野寺「……うん!」
るり「……。桐崎さん、あなたは小咲に負けたのよ。
それにこれ以上、私の親友を傷付けるなら許さないから覚悟することね」
16:
千棘「……ほんっっと周りに助けてもらってばかりで馬っ鹿みたい! あーあ、もうどうでもいいわよ!!!」タタタッ
楽「……サンキューな宮本」
るり「なんのこと? 私はあなたに礼を言われる義理はないはずだけど」
楽「いや、さっき俺は千棘どうすればいいのか分からなかったから……」
るり「はあ?。先が思いやられるわね。桐崎さんがあれであなたを完全に諦めたとは思えないわ」
楽「……」
るり「……でも、まあ今、この瞬間ぐらいは新しい恋人のことだけを考えていいんじゃないかしら」スタスタ
小野寺「る、るりちゃん! どこ行くの? 私、まだるりちゃんにお礼を……」
るり「なんでアンタ達がイチャイチャしてるのを私が見ないといけないのよ。じゃあ私は帰るから」ピュー
小野寺「る、るりちゃん!」
楽「行っちまったな……」
小野寺「……」
楽「……」
18:
楽「二人きり……だな」
小野寺「う、うん。そうだね……」
楽「……小野寺、本当に小野寺は俺なんかでいいのか? 小野寺ならもっと……」
小野寺「いっ、一条君こそ本当に私なんかでいいの?」
楽「……おう」
小野寺「……」
楽「なっ、なあ小野寺」
小野寺「なっ、なに?」
楽「こっ、恋人になったんだからさ……その名字で呼び合うのはやめないか?」
小野寺「うっ、うん! そうだね!」
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