一条楽「はぁ〜……」back

一条楽「はぁ〜……」


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1:
【バス停】
楽「はぁ?……」
楽「……」
「お待たせしました?っ♪」
楽「!」ビクッ
万里花「おはようございますっ、楽様。 本日は快晴でございますわね?」
楽「お、おはよう……」
「……待たせた」
楽「!?」
鶇「…………何だその目は……」
楽「いや、別に……」
鶇「……。 ……ふんっ」ストン
万里花「朝から無愛想ですわね?。 ……それはともかく! 楽様っ! 今日から2日間、よろしくお願いしますね!」
楽「あ、あぁ……。 よろしく……」
楽「(……)」
楽「(……どうしてこうなった!!!)」ダラダラダラダラダラ
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3:
?3日前 放課後?
【土手】
楽「(やっべー、ついつい帰るのが遅くなっちまった……)」
楽「(……空き地で猫が集会してたら思わず見入っちまうっての!!)」
楽「(あぁ?……可愛かったなぁ?……)」
「一条楽!!」
楽「!?」ビクッ
鶇「この付近で子猫を見なかったか?! 直径35cm程度の三毛猫だ!!」ユサユサ
楽「いや、見てねぇけど……(さっきまでは見てたけど……)」
鶇「……くそっ、見逃したか……?」
楽「どうしたんだよ? そんなに血相変えて。 ……っつかお前って帰り道こっちだったっけ?」
6:
鶇「猫が川に落ちているのを見たんだ」
楽「猫が!? どうして!? まさか捨て猫か!?」
鶇「……違う。 喧嘩だ」
楽「……くそ、なんてひどい飼い主なんだ! 面倒は最後まで……! …………はぇ?」
鶇「猫同士が橋の手すりの上で喧嘩をしていた。 私が見たのは落ちるまでの3秒前後だが」
楽「(……まさか、あの猫の集会のあとでいざこざが?)」
楽「……ん? 待てよ……? ってことは箱にも何にも入ってないってことか!? そんなんじゃ溺れちまうぞ!」
鶇「だからこうやって探しているのだろうが!」
楽「お、俺も手伝う! 流れを下ればまだ追いつかれるかもしれない!」
7:
:2時間後
猫「……みゃあ」
夫人「あ、アルテミスちゃん!? どうしてこんなにずぶ濡れに……!?」
楽「川に落ちていたのを彼女が見つけてくれたんです」グッショリ
鶇「……」ペコッ
夫人「まぁ、そうだったの! 本当の本当にありがとう!」
楽「い、いえ。 当然のことをしたまでですよ」
夫人「んまぁ! なんて律儀な子だこと!」
夫人「……そうだ。 アルテミスちゃんを助けてくれたお礼をしないと!」
楽「お、お礼なんていいですよ! 猫が助かってくれたならそれで!」
夫人「それじゃあ私の気が済まないわ! そうねぇ……。 ……!」ポンッ
夫人「旅行なんてどうかしら!?」
8:
?現在?
【高バス内】
楽「(……無理矢理にでも断っておくべきだったか…………)」
楽「(……でも仕事の都合で行けなくなったご家族の分の旅行券だって行ってたし、無駄にしちゃわりぃよなぁ……)」
万里花「見て下さい楽様! 私と楽様の愛の巣が見えてきましたよ!」
楽「……ん? あ、あぁ。 もう着いたのか?」
鶇「もうって……。 休憩含め、かれこれ6時間近くバスに乗っているんだぞ?」
楽「そうだっけか……はは……」
万里花「……楽様、朝から元気がありませんわね……。 ……やっぱり私と2人っきりの旅をご所望だったのでしょう……」
鶇「……そもそも橘万里花、貴様は何故ここにいるんだ」
万里花「? 知れたことですわ。 私は楽様のいるところであれば、例え火の中水の中……」
鶇「そういうことじゃない」
万里花「あら? 私が地元警察にお力を貸して頂かなければ、飼い主様の所在はわからなかったのですよ?」
鶇「……」
万里花「……もしや。 貴方、楽様と2人きりで旅行に行きたかった、などとおっしゃるのですか?」
鶇「!????!」ボンッ
鶇「なななななななな、何を言ってるんだ貴様!! そんなことあるわけないだろう!! そんなこと!!」
万里花「……」ジーッ
鶇「……ある……わけ……」
万里花「……ふぅん。 まぁ、いいですわ。 それなら、折角あのじゃじゃ馬から離れたところで2人きりになれそうなのですから、邪魔をなさらないでくださいね?」
鶇「……!」
万里花「ねー? 楽様!」ヒシッ
楽「!? きゅ、急にくっつくなっつーの!!!」アセアセ
21:
【旅館】
女将「どうもいらっしゃいませ。 夫人様ご一行でいらっしゃいますね?」
楽「あ、いいえ、俺たちは――」
楽「(ん? 待てよ? ここはそうしておくべきか。 説明がまだるっこしいしな)」
楽「はい、そうです」
女将「お待ちしておりました。 お部屋の方へご案内いたしますね」
女将「お荷物お持ちいたしますね」ニコッ
楽「はい、ありがとうございます」
鶇「あ、ありがとうございます」
万里花「あ、ありがとうですわ……。 はぁ?……ひ、貧血がひどいです……」ゲッソリ
22:
楽「橘、大丈夫か? 本当に顔色が悪いぞ。 少しロビーで休んでいこうか?」
万里花「……は、はい、そうさせて頂きま――」ハッ
万里花「い、いえ! 楽様! 折角の旅行ですし、お部屋で休ませて頂きたいと思います!」バッ
楽「(急に元気になった!?)」
万里花「しかし私はこのように立っているのも辛い身……。 となれば!!」オヨヨ…
万里花「お姫様抱っこをよろしくお願いいたしますわーーっっ!!」ガバッ
楽「!?」
鶇「……」バチコーン
万里花「へうっ!? ……きゅう」バタンキュー
鶇「失礼いたしました。 部屋への案内をお願いできますか?」
女将「は、はい! ただいま!」
鶇「……一条楽、何をしている。 行くぞ」ズルズル
万里花「目、目がチカチカしますわ……」ズルズル
楽「お、おう……(大丈夫かよ、この旅行……)」
23:
【部屋】
女将「こちらが、今回御泊まりになって頂きます、『享楽の間』でございます」
女将「お荷物はこちらに置いておいてもよろしいでしょうか?」
楽「はい、ありがとうございます」
鶇「ありがとうございます」
万里花「……」キュー ←ノビてる
女将「……」
楽「……」
女将「それでは、お部屋の説明をさせて頂きます。 まず、ご夕食の件なのですが……」
楽「あ、待って下さい。 まず僕も部屋に荷物を置きに行きたいので、案内してほしいんですけど」
女将「……?」
楽「……?」
女将「……お部屋は一室しかご予約を承っておりませんが」
楽「……」
鶇「……」
楽・鶇「何ですとぉおぉおおおおおおおぉぉぉおおおお!?」ガビーン
24:
鶇「部屋は一室しかないとは、どういうことですか!?」
女将「も、元々そういうご予約内容で了解していましたが……」
楽「(はっ、そ、そうか! 元々『家族』で来る予定だった旅行だから必然的に……!)」
楽「(すっかり忘れていたーーーーー!!!!)」ガビーン
鶇「一条楽!」グイッ
楽「へう”っ」
鶇「ど、どどどど、どうするつもりだ!! 私はこんなの聞いてないぞ!」アセアセ
楽「し、仕方ねえだろ!! 俺だって知らなかったんだから!」ヒソヒソ
鶇「だからといって、男女が、しかも比率1;2で共同部屋なぞ、問題が多過ぎるぞ!」
楽「な、なんとか交渉してみるから、待ってろ!!」
女将「……あの?、そろそろご説明を開始させて頂いてもよろしいでしょうか?」
鶇・楽「もう少し待って下さい!」キッ
女将「は、はいっ」ビクッ
25:
?20分後?
女将「……ということで、最後にまとめさせて頂きます」
女将「当館ではお食事は全てお部屋に御持ちいたします。 お時間は後ほど御電話にて確認させて頂きます」
女将「大浴場・露天風呂用のアメニティグッズなどはお部屋にご用意しているものをお使いください。
なお、もしもアレルギーやその他の理由でお使いになるのが困難な場合は、改めてカウンターまでお越し下さいませ」
女将「お布団は午後9時に敷かせて頂きますので、午後8時55分頃には部屋に一旦お戻り頂き、係の者をお待ち頂きますようよろしくお願いいたします」
女将「……ということで、何かご質問はございますでしょうか」
鶇・楽「……いえ、何もないです」チーン
万里花「ふぁいひょうふですわ」ハフハフ ←御茶菓子食べてる
女将「それでは、ごゆっくりおくつろぎください。 失礼いたしました」ストン
26:
楽「空き室が……今日に限って、無い…だと…」
鶇「はぁぁ……」
万里花「このお茶菓子、美味しいですわっ! ……楽様!お土産屋さんを見に参りましょう!」
鶇「貴様はどうして平然としている!?」ガーン
万里花「へ? 私は元々そのつもりでしたし。 ねー? 楽様!」
楽「ぶっ!」
鶇「……一条楽、まさか貴様、図ったのか……?」ゴゴゴゴ…
楽「んなわけあるかっつーの!!」
27:
万里花「別に楽様が同じ部屋だったところで、何ら支障はございませんわ♪」
鶇「あり過ぎるだろう!?」
楽「橘、そりゃ流石に不味いって……」
万里花「楽様は私たちに不味いことをするおつもりなのですか?」
楽「そ、そんなことねーよ!! 絶対にそんなことしない! ……けど」
万里花「なら、大丈夫ですわね! 決定です」パンッ
鶇「り、倫理的に問題があるだろ!! そもそもこの男がいつ本能的な劣情を催すかわかったものではないのだし……!」
万里花「本能的な劣情……一体どんなことなのでしょうか?」
鶇「そ、それは……」
鶇「」ボンッ
鶇「そんなことい、言えるか痴れ者!!」
万里花「お答えにならないということは、何も思いつかないということですよね? それでは――」
楽「橘」
万里花「」ビクッ
楽「やっぱりダメだって。 真面目に考えて、俺たち別に付き合ってるわけじゃないし、軽卒にそんなことできねーよ。 しかも鶇の言った通り、女の子が2人だし」
鶇「……一条楽」
万里花「……」
楽「今回は残念だけど、俺は別ん所探して泊まるから。 ここはお前たち2人で宿泊してくれ」
楽「プランを立て損ねてて悪かった! それじゃ――」
28:
万里花「こうしましょう!!」
楽「!?」
鶇「!?」
万里花「このお部屋には幸い、和室が2つあるでしょう? 先ほどの説明だと、お食事や団欒用のお部屋と、寝室用とのことでしたが……」
万里花「そして、お部屋同士の間にある襖を、夜寝る時に閉めるんです! それも、ただ閉めるだけではなく、私たちの任意で、かた?く閉じるんです。道具などを使って」
万里花「そうすれば、お二方が危惧しているようなことは起こりえないのではないでしょうか?」
楽「仕切りを作って、別室状態にするってこと……か? それならまぁ、ある程度は安心だけど……」
鶇「し、しかし! この男が力づくで蹴破って来たりなどしたら……!」
万里花「あら? その時は橘さん、貴方がお止めになればいいことですし。 何より、楽様は私たちにそのようなことはしないと公言しているのですよ? ね?楽様」
楽「あ、あぁ」
鶇「うぐっ……」
万里花「……っていうことで。 ご飯などは一緒に食べて、寝るときだけは寂しいですが、別室状態にさせて頂きます。 よろしいですね? 楽様」
楽「……。 ……それでも、やっぱり俺は……」
万里花「楽様!」ヒシッ
楽「!?」
万里花「私、本当に今回の旅行を楽しみにしてきましたの……」
万里花「それも、別に景色や土産物の話ではなくて……。 『楽様と一緒に旅行に行けること』を楽しみにしてきました」
万里花「そんな私から、1番の楽しみを、楽様は取ってしまうおつもりなのですか……?」
29:
楽「……うっ」ギクッ
万里花「……」ウルウル
楽「……」チラッ
鶇「……な、なぜ私を見る」
万里花「……鶇さんも、それでいいですよね? 危ないときは、貴方が守って下さるのでしょう? それとも、貴方の威勢は口だけですか?」
鶇「!」カチン
鶇「こんなバカ男に負けるほど、私はおちぶれてはいないぞ!」
万里花「――と、言うことですので。 2人共了承済み。 あとは、楽様……貴方のご決断だけですわ……」
鶇「(……しまった…………)」
楽「…………はぁ、分かったよ。 その代わり、絶対に夜、襖開けたりするなよ」
万里花「……!」パァァ
万里花「はいっ! ありがとうございますっ!」ヒシッ
楽「だ、だから抱きつくなっつーの!!」
鶇「(ど、どうしてこんなことに…………)」ズーン
万里花「(このチャンス、逃すわけなかろーもんね……)」キラーン
32:
【部屋】
?10分後?
楽「本当に行かないのか?」
鶇「私は後で1人で見に行く」
楽「そっか……」
万里花「楽様、早く早く!!」グイグイ
楽「そ、それじゃあ土産屋行って来るから!!」
万里花「ら?く?さ?ま?」
楽「分かったから引っ張るなって!」アセアセ
万里花「鶇さんはお留守番、お願いいたしますね?」ヒョコッ
万里花「……お一人で寂しく」クスクス
鶇「」カチン
万里花「お揃いのお土産買いましょうねー♪ 楽様!」
楽「あ、あんまくっつくなってば!!」
鶇「早く行け!! 出入り口で騒ぐな馬鹿共!!」ウガー
33:
【土産屋】
万里花「うわぁ?! お土産屋さんの割には、とても広いですわね!」
楽「さっきの説明でも、別館が丸々土産屋になってるって言ってたしな……。 3階まであるんだっけ」
万里花「これは買い過ぎ注意ですわね……!」グッ
楽「はは、気合い入り過ぎだろ」
楽「(それにしても、本当に広いな……。 じっくり見て回ったら、半日くらい潰せそうだ……)」
楽「(……アイツ、残して来ちまって良かったのかな)」
楽「(でも、あんまりしつこく誘って殺されかけるのは勘弁だからなぁ……)」グモーン
万里花「楽様?」チョンチョン
楽「ん?」クルッ
万里花「はい、あ?ん」
楽「っんぐ」パクッ
楽「」モグモグ、ゴクン
万里花「鰻の骨煎餅だそうですよ!」
楽「う、うまい……。 じゃなくて、何だいきなり!」
万里花「え? あまりに美味しかったので?――」
お客「見て?、何か若くない??」
お客2「カップルさんなのかもな」
楽「……」カァァ
万里花「な、何でそない赤くなっとるけん!! らっくんは初心過ぎん?」カァァ
楽「お前も墓穴掘ってんじゃねぇか!!!」
34:
万里花「楽様! あれ、あのストラップ! 鰻とキテ●ちゃんがくっついてますわ!」
楽「へー……。 これってどこ行っても見るけど……。 何でもコラボすんのな」
万里花「可愛いですわね?……」パァァ
楽「欲しかったら買ってやろうか?(安いし)」
万里花「ら、楽様が私に!?」
楽「あ、あぁ……。 別にいらないか?」
万里花「い、いるいるいるいるいるいるいるいるいるぅ!! いりますわ! 100個ほど!!」ガバッ
楽「取り過ぎだろ!!!」
35:
万里花「えへ?っ」チャリーン
楽「そんなに欲しかったのか?」
万里花「はいっ!」ニコニコ
楽「そ、そっか」
万里花「うふふふ」
楽「(まぁ、喜んでいるようなら良かったな……)」
万里花「あ、楽様! 2階には食べ歩きコーナーがあるみたいですよ! 行ってみましょう!!」
楽「食べ歩きかぁ……。 露店みたいなのが並んでんのかな」
万里花「露店という響きだけでワクワクでございますわ……!」グッ
36:
楽「(って、待てよ……。 それこそ露店なんてあるんだったら、鶇も呼んでこないとダメなんじゃ……)」
万里花「……? 楽様? どうかしましたか?」
楽「俺、やっぱり鶇呼んでくるわ。 思った以上に広くて時間掛かりそうだしさ」
万里花「えぇっ!? でも、彼女は1人でお土産を見たいと先ほどおっしゃっていましたが……」
楽「そうだけどさ、とりあえず時間がかかるっつーことだけでも伝えておかないと」
楽「エレベーターの前にベンチがあるし、あそこに座って待っててくれ。 俺が行って来るからさ」
万里花「ら、楽様、まっ――」
楽「土産見ててもいいけど、また貧血起こさないようになー」タッタッ
万里花「……」ポツーン
万里花「……もう、楽様のバカ」
37:
【部屋前】
コンコン
楽「……」
コンコンコン
楽「…………」
楽「……? いない……?」
楽「……とりあえず、入ってみるか」カチッ
ガチャッ
楽「……おじゃましまーすっと」
楽「(って、おじゃましますって何か変か?)」
38:
【部屋】
楽「……」スーッ
鶇「……う……ん……っ」
楽「(……寝てたか…………)」
鶇「……」スヤスヤ
楽「(そういや、行きのバスでもずっと起きてたみたいだしな……。 疲れたんだろ)」
楽「(そういうことなら、起こさない方がいいか……)」ブルッ
楽「(ちょっとクーラー強過ぎだろ……。 ……温度を上げて……)」
楽「(一応、毛布でも掛けておいてやるか……)」トタトタ
39:
ふぁさっ
鶇「……ん」
楽「(……これで良し、と)」
楽「(それじゃ、橘をあんまり待たせちゃ悪いし、戻るか)」ガッ
ちゃりん
楽「(あっ!! やべっ、部屋鍵を……)」
鶇「……っ」ピクッ
楽「!!」ビクッ
鶇「……ん」スヤスヤ
楽「……」ホッ
楽「(……起きなくて良かった)」
40:
楽「(毛布の上に落ちたから音がほとんど鳴らなかったんだな……。 不幸中の幸いだ)」
楽「(それじゃ、鍵を取って……)」スッ
鶇「おじょ……さ……ま……」
楽「(……ん?)」
鶇「もう……け……ませ……」グッ
楽「(……)」
鶇「わた……し……は…………」
楽「(……っと)」
楽「(人の寝言を黙って聞いてるなんて、悪趣味過ぎるな……。 さっさと鍵を――)」ズルッ
楽「!? (――も、毛布で手がすべっ――)」
どてっ
41:
楽「……いっつつつ……」
楽「……」チラッ
鶇「…………」プルプル
楽「……」ダラダラ
鶇「貴様……。 何を、やっている……?」ピクピク
楽「……あ、あはは、おはよう? は、2回目か? あ、あは、あはははは……」ダラダラ
鶇「この、……変態がッッ!!!!!!!!!!」バキィッ
楽「ですよねッッ!!!!!」ドガァ
42:
鶇「はぁ、はぁ……」カァァ
鶇「(あ、焦った……。 冷静さを欠いてしまった。 ……しかし、なぜあのような状況に?)」
楽「いっててて……マジいてぇ……」ムクッ
鶇「一条ら――……、そこの変態」
楽「呼び直さないでいいからね!?」
鶇「私はもうしかして、寝ていたのか?」
楽「ん? あ、あぁ。 そうだけど……」
鶇「そうか……」
楽「……? どうかしたのか?」
鶇「いや……。 寝込みを襲うなどという卑劣な行為をしてきた変質者に、どのような罰を与えようかと思っていただけだ」
楽「今のは不可抗力だから許してくれ」ドゲザッ
鶇「小1時間前に約束したことをすぐに破る人間の言うことなど信頼できるか」フンッ
楽「とほほ……」
鶇「(……)」
鶇「(……私が他人に寝顔を見せるなど……)」
鶇「(…………はぁ。 ……私は、この男に毒されている……のか?)」
43:
鶇「……?」ファサッ
鶇「……毛布?」
楽「部屋がかなり冷えきってたから一応掛けておいたんだけど……」
鶇「……」
鶇「……ふん、余計なお世話だ」
楽「ですよねぇ……はは」
鶇「だ、だが……」
楽「?」
鶇「一応、礼は言っておく。 ……あ、ぁりがとぅ……」ボソボソ
楽「あ、何か今の女の子っぽい」
鶇「私は女性だ馬鹿者っ!!」バキッ
楽「へぶしっ!!」
44:
鶇「それで?」
楽「ふふぇ?」←顔が晴れている
鶇「何故貴様は部屋にいるんだ?」
楽「あ、そうそう。 ここの土産屋、思った以上に広くてさ。 時間がかかりそうだから、どうせならお前も一緒に回らないかなって思ったんだけど」
鶇「……」キョトン
楽「……?」
鶇「……それだけか?」
楽「え? そうだけど?」
鶇「それだけが用件なら、携帯で連絡をよこせばいいじゃないか」
楽「……あ」
鶇「……貴様らしい短絡的な行動だな」
楽「う、うるせい!」
鶇「ぷっ、くくく……」
楽「そんなおかしいかよ……」
鶇「貴様らしいと思っただけだよ」ニコッ
楽「うっ」ドキッ
鶇「やはり貴様は馬鹿なのだな、とな」
楽「そっちかい!!(一瞬ドキッとした俺の純情を返せ!)」
鶇「?」
45:
鶇「それにしても……。 私は別に1人で行くから構うなと言っているのに、とんだお節介だな」
楽「せっかく3人いんのに1人だけ別行動っつーのはおかしい気がしたんだよ」
鶇「……」
鶇「……仕方がない。 今回は特別に貴様のお節介に乗っかるとするか……」
楽「そ、そうか! それなら早く行こうぜ! 橘も結構待たせちまってるからさ!」
鶇「わかった」
楽「……」
鶇「……」
楽「……?」
鶇「準備をしたいから先に部屋を出ていて欲しいんだが……?」ギロッ
楽「ひぃっ!?」
46:
【土産屋】
万里花「(……楽様、遅いな)」
万里花「(…………そういえば、連絡するだけなら携帯電話に連絡をすれば良かったのでは?)」
万里花「(……寝てたりしたら意味ないでしょうけど)」
万里花「(……)」
万里花「(……あぁ?もぉ?!! せっかくカップルの様な振る舞いができていたのにぃ?!)」ガバッ
万里花「(……ま、まぁいいですわ……。 まだまだ時間はあります……。 楽様を私のモノにするまでの時間は、まだ……!)」フッフッフ
万里花「ふふ……、ふふふふふふっ…………」
鶇「…………あいつは1人で何をやっているんだ」
楽「さ、さぁ……」
47:
万里花「あっ! 楽様!」パァァ
楽「わりぃ、結構待たせちゃったろ」
万里花「全く問題ないです! むしろ今来た所です!」
楽「どこからだよ!」
万里花「まぁまぁ、細かいことはお気になさらず♪」ギュッ
楽「ちょ、ちょっとくっつくなって!! さっきだって勘違いされたろ!」
万里花「えーいいじゃないですかー。 減るもんじゃありませんしっ」
鶇「公衆の面前で恥ずかしくないのか貴様」
万里花「羞恥心なんて感じていたら勝てませんし……」ボソッ
鶇「……!」
楽「?」
万里花「貴方に出来ないことをしているからって嫉妬は醜いですわよ?」ニヤニヤ
鶇「なっ!? ……わ、私だってできる!! 腕と腕を交差させ身体を密着させるだけだろう!?」
万里花「なら、やってごらんなさいな」ギュゥ…
楽「お、おい橘!!(あ、当たってる、当たってる!)」
51:
【ロビー】
楽「ん?っっ……。 結構歩いたな」ノビー
万里花「良い買い物ができましたわね♪」ドッサリ
楽「ちょっと買い過ぎじゃねえか……?」
万里花「へ? そうですか? 明日も買い足そうと思っているくらいなのですが……」
楽「ま、マジか……」
万里花「お土産をお渡しする方々が多いもので」ニコッ
楽「ははは……。 それに比べて鶇は何も買わないんだな」
鶇「めぼしいものもなかったのでな。 無理して買うことも無いだろう」
楽「お前なら千棘にでも買って行きそうだと思ったんだがな」
鶇「無論、また改めて1人で来たときにでも買う予定だ」
楽「めぼしいものが無かったんじゃ……」
鶇「それはあくまで『私にとって』な。 お嬢様の好みそうなものは多々見受けたられた」
楽「じゃあ今それ買えば良かったんじゃ……」
鶇「お嬢様にお渡しするものだぞ!? 精査に精査を重ねたものを差し上げなければなるまい!!」
楽「えぇ?……」
52:
楽「さて、と……。 もう夕暮れだし、そろそろ風呂にでも行ってくっか」
万里花「混浴ですわよね!?」キラーン
楽「んなわけあるか!」カァァ
鶇「全くだ!」カァァ
万里花「あれ? 確か旅行の詳細では混浴1時間無料権がついていたような気がするのですが……」
鶇「それをわざわざ使わなくても良いだろう!?」
万里花「貴方は入らなければいいじゃないですか♪ 私が楽様と2人きり?で入ります」
楽「お、おい!! 勝手に決めるなよ!!」
鶇「気色悪い声色をやめろ!! そ、そんなの認めないぞ!!」
57:
万里花「楽様は私と一緒に入りたくないのですか……?」ウルウル
楽「は、入りたいとか入りたくないとかそういうもんじゃ……!」チラッ
鶇「(入ることにしたら殺す承諾したら殺す受諾したら殺す容認したら殺す肯定したら殺す)」ギロッ
楽「だめだめだめだめ! やっぱりダメだ混浴は!!」アセアセ
楽「(殺気がヤバい!!!!!!!)」
万里花「え?……」ブーブー
鶇「子どものような愚痴を垂れるな。 先ほどの部屋割りの1件をもう忘れたのか」
万里花「部屋では無理だから攻めたんじゃありませんか……」ボソッ
鶇「なぁっ!?」カァァ
楽「ん? 何か言ったか?」
万里花「いえ、な?んにもっ♪ 仕方ありませんわね。 今回は混浴、あきらめましょう!」
鶇「(……こ、こいつは…………)」
楽「……?」
59:
【男風呂】
カポーン…
楽「……はぁぁ?」サブーン
楽「(……良い湯だなぁ?)」
楽「(1日の疲れが吹き飛ぶって感じだな、まさに)」
楽「(……効能は、腰痛・痔・胃もたれ……結構幅広いな……)」
楽「……」チャポ…
楽「(果たして、これで良かったのだろうか……)」
楽「(健全な男女が一緒の部屋って相当……いや、かなりヤバいよな……?)」
楽「(ヤベぇ……。 今更になって先押され切ったこと後悔して来た……)」
楽「(このまま行くと……)」
楽「(……)」
楽「(……っ!)」ボンッ
楽「(あ、ありえない!! っていうか俺には小野寺が……!)」ブンブン
楽「(…………)」ブクブク
楽「はぁ……」
60:
【女風呂】
万里花「……」ジーッ
鶇「……♪」コシコシ
万里花「……」ジーッ
鶇「……♪」ザーッ
万里花「……」ジーッ
鶇「……?」
鶇「」チラッ
万里花「………………」ジーッ
鶇「!?」ビクゥッ
61:
鶇「……」
万里花「……」ジーッ
鶇「……た、橘万里花……?」
万里花「……はい?」ジーッ
鶇「……貴様はもう身体を洗い終わっただろう……? なぜ湯船に浸からない?」
万里花「それは私の勝手でございますわ」ジーッ
鶇「……それはそうだが……」
万里花「私のことは気にせず、続けてください」ジーッ
鶇「……」ジャー
万里花「……」ジーッ
鶇「……」ペタペタ
万里花「……」ジーッ
鶇「…………って、落ち着けるかー!!」ウガーッ
62:
万里花「ちょっと、ここは大衆浴場……。 他にもお客様がいらっしゃるんですよ? 大声は出さないでくださいまし」ジーッ
鶇「どういうつもりだ……」
万里花「何がですの?」
鶇「私の身体をじっと見つめてくるのは、なぜだと聞いているんだ!」
万里花「あら、バレましたか」
鶇「最初からバレてる!」
万里花「いいじゃありませんか、減るもんじゃありませんし」
鶇「貴様のその理論はもう聞き飽きた!」
万里花「ケチですわねぇ……」
鶇「そういう話でもない!!」
63:
鶇「と、とにかくあっちへ行け! 気が散るだろう!」
万里花「はいはい……。 ごゆっくり?♪」
鶇「……まったく」ハァ
鶇「……」キュッ
鶇「……」シャーッ
鶇「……」キュッ
鶇「……」ゴシゴシ ←頭洗ってる
鶇「……」キュッ
鶇「…………」シャーッ
もにゅっ
鶇「!?!?!?!????!??!」ブシャーッ
64:
万里花「あ、あつぅっ!! 貴方どれだけ高い温度でシャワー流してるんですの!?」
鶇「う、うるさいうるさい!! 今のは一体何のマネだ!?」
万里花「偽物ではないのか確かめただけです!」ワキワキッ
鶇「その手をやめろ!! 偽物なわけないだろう!!」
万里花「ちっ」
鶇「その舌打ちはなんだ!?」
万里花「大き過ぎます! そこでは勝てないじゃありませんの!」
鶇「べ、別にこんなものが大きくなくたって不便はないだろう!? むしろ小さい方が……!」
万里花「おっと」ピタッ
鶇「!?」
万里花「それ以上言うと全世界のパーツで悩む女子に殺されますわよ?(貴方より小さい私も含めて)」
65:
【女子風呂:湯船】
鶇「ふぅ……」チャポッ…
万里花「はぁぁ……。 良いお湯加減ですわねぇ」ツヤツヤ
鶇「そうだな……」
万里花「……」
鶇「……」
万里花「混浴……」
鶇「ダメだ」
万里花「まだ何も言ってませんわ!?」
鶇「何を言うかなど冒頭で予測がつく!!」
66:
万里花「ぐぬぬ……」
鶇「諦めろ。 第一、一条楽にそのつもりがないのでは、お前にその気があっても無理なものは無理だろう」
万里花「……」
万里花「…………はぁ。 それも一理ありますね……」チャポ
鶇「(一理……?)」
万里花「……」プクプク
万里花「……鶇さん、貴方、焦ったりしませんの?」
鶇「……? 焦る? 何がだ?」
万里花「貴方、楽様のこと好きでしょう?」
鶇「……は?」
万里花「だから、貴方は楽様に対して恋心を抱いているでしょう?」
鶇「…………」
鶇「!?!?!?!??!?!?!?!?!?!?」ボンッ
67:
鶇「んななななななななななななななぁっ!? お前は何を言っているんだ!?」
万里花「はぁ……。 気付いていないとでもお思いでしたの? とんだ自惚れですわねぇ」
鶇「な、何を勝手に話を進めているんだ!? 私は一言も……っ!!」
万里花「じゃあ、嫌いなんですか?」
鶇「……!」ピクッ
万里花「…………はぁ」
鶇「何だそのため息は!? き、嫌いとか好きとか、そういう判断基準で見たことが無いから戸惑っただけだ! そうだ、そうなんだ!」
万里花「饒舌っぷりが凄まじいですわよ」
鶇「うぐっ……!?」カァァ
68:
万里花「……私は、正直すごーーーーーーーーーーく焦っているんですわ」
鶇「……」
万里花「楽様は、昔とは違って……。 本当に多くの女の子が、周りにおりますもの」
万里花「小野寺小咲、じゃじゃう……桐崎千棘。 認めたくはありませんが、魅力ある子たちばかりです」
万里花「そういった子たちが、一同に楽様に対して、友達以上の感情を持っているとしたら、焦らずにはいられません」
鶇「……橘、万里花」
万里花「だから、私は……。 少し卑怯で、恥ずかしい方法でも。 少しでも周りの子たちよりも楽様に近づけるなら、手段は厭いません」
鶇「……何が、貴様をそこまで一条楽に執着させるんだ……?」
万里花「……?」
鶇「貴様なら、男なんて掃いて捨てるほどいるだろう? それなのに、なぜ貴様はそれほどまでに一条楽に執着する?」
万里花「……ぷっ」
鶇「なっ!?」
万里花「お子ちゃまですわね?。 これだから田舎者は……」
鶇「は、話をすり替えるな! 質問に答えろ!」
万里花「楽様が好きだから。 それ以外の理由は、いらないと思いますが」
鶇「……っ!」
万里花「……貴方は」
万里花「……貴方は、どうなんですか?」
71:
【旅館:庭園】
鶇「……」コクコク
鶇「…………ふー」トン
鶇「(いちごミルク……思ったより美味しいな)」
鶇「(……)」
鶇「(……夜風も丁度いい)」
鶇「(…………)」
鶇「(そろそろ戻るか……)」スッ
――万里花『だから、貴方は楽様に対して恋心を抱いているでしょう?』
――万里花『……私は、正直すごーーーーーーーーーーく焦っているんですわ』
――万里花『……貴方は、どうなんですか?』
鶇「(……)」カァァ
鶇「(やっぱりもう少しだけいよう……)」
73:
鶇「(……)」
鶇「(…………一条楽のことを……)」
鶇「(……私は、好き……………?)」
鶇「(分からない……。 いや、それは逃げているだけ、か……)」
――鶇『私からラブレターを貰ったとしたら どうする?』
――楽『多分、嬉しい』
鶇「」ボンッ
鶇「(!!)」ブンブンッ
鶇「(……はぁぁぁああああぁ)」カァァ
鶇「(……)」
鶇「(…………答えは、もう出ているではないか……)」
74:
「あれ? 鶇じゃねえか?」ゴクゴクッ
鶇「っひゃ!?!??!?!???」ビクビクッ
楽「あれ? 橘は一緒じゃないのか?」
鶇「き、貴様、何故ここいに!?」
楽「いや、お前と一緒だろ……。 風呂上がりに涼みにきたんだよ」
鶇「そ、そうか……」
鶇「(何でこんなときに??!!!)」
鶇「(お、落ち着け、落ち着け私、落ち着け……!)」
楽「で、橘はどうしたんだ?」
鶇「橘万里花は風呂のあとのマッサージを受けている」
楽「旅館のそういうサービス、実際に使うやついるんだな……」
75:
楽「しっかし、風が気持ちいいな、ここ」ノビー
鶇「あ、あぁ……」
楽「……」
鶇「……」
楽「(あれ? 何か気まずい?)」
楽「……」チラッ
楽「お、お前はいちごミルクか?」
橘「そ、そうだが……」
楽「お、俺はコーヒー牛乳なんだよ。 一口交換しないか?」
鶇「なっ!!???!」カァァ
楽「あ……(やべっ、何言ってんだ俺!?)」カァァ
鶇「……別に、いいぞ。 ほら」
楽「そ、そりゃそうだよな! ダメだよな! お、俺は明日の朝風呂の時にでもいちごミルクを飲むわ! ――って」アセアセ
楽「へ?」
鶇「」カァァァァ
76:
鶇「ほ、ほら……。 飲みたいんだろう?」カァァ
楽「あ、あぁ。 じゃ、じゃあ、その……飲むぞ?」
鶇「な、何故そんなに確認を取るんだ! 飲めばいいだろう?!」
楽「……あ、あぁ。 じゃあ、ほら。 俺のも……」スッ
鶇「……」スッ
楽「……んっ」ゴクゴクッ
鶇「(い、一条楽の唇が、触れた……牛乳瓶……)」ドキドキ
鶇「(一条楽の、唇……)」チラッ
楽「ぷはっ、う、うまいな! 牛乳って何に加工しても最高だなぁ! あは、あはははは……」
鶇「(…………)」
鶇「……っ!」ゴクッ
鶇「……」
楽「……」
鶇「……おいしい……」カァァ
77:
楽「……っ!!」
鶇「あ、ありがとぅ……」スッ
楽「……お、おぉ! こっちこそ」スッ
鶇「ん……」
楽「(な、なんだ、何だ……? なんか、なんとなく、その……)」
楽「可愛い……」ボソッ
鶇「え?!」ボンッ
楽「っ!? え?! あ、い、いや! その、これは! えーっと!!」アセアセ
鶇「……っ」カァァ
楽「その……。 何か、すまん」
鶇「……いや、別に…………」
鶇「い、嫌では、ないし……」
楽「……!」カァァ
78:
楽「(あーー……。 何やってんだ俺……)」
鶇「……」
鶇「…………あの」
楽「……ん?」
鶇「わ、私が――」
楽「……」
鶇「わた、しが……もし……」
鶇「(…………私が。 もし、貴様を好きだと言ったら)」
楽「……?」
万里花「らっくさまーーー♪」ダキッ
楽「うわっ!?」ヨロヨロ
万里花「こちらにいらっしゃったのですね!!」スリスリ
楽「お、お前は急に出て来るなよ! あと、抱きつくなって!」
万里花「浴衣姿も、素敵でございますわね!!」キラキラ
楽「話をそらすなっつの!」
鶇「……」
79:
【部屋】
楽「ふぅ?……」ガタッ
万里花「ようやく一心地つきましたわね?」ノビーッ
鶇「まったくだ……」ゲッソリ
楽「旅館についてからゆっくり休んでなかったもんな」グゥ?
楽「……そういや、腹減ったな」
万里花「あら? そう言えばお食事の準備の連絡、来ておりませんでしたわね」
鶇「それなら、私が聞いて来よう」スクッ
楽「? 電話すりゃいいんじゃないか?」
鶇「もう少し土産物を見て来るついでだ。 構わない」
楽「そ、そうか……」
鶇「……あぁ」
楽「じゃあ、頼むわ」
鶇「……」コクッ
がちゃっ
80:
万里花「……楽様?」
楽「……ん?」
万里花「鶇さんと何かございましたか?」
楽「へ? な、何でだ?」
万里花「…………」ジーッ
楽「べ、別に何もないぞ!」
万里花「……そうですか」ニコッ
万里花「(……)」
楽「そういや、マッサージはどうだったんだ?」
万里花「あっ、はい! 最高でしたよ! 楽様も明日あたり受けてみてはいかがですか!?」
楽「いやー。 俺は別に凝ってるってわけじゃないし。 それに、あぁいうサービスって何か受ける気にならないんだよな」
万里花「えー。 せっかくあるサービスなのですから、受けなきゃ損ですわよー。 高いものでもありませんし」
楽「……そんなに言うなら、明日やってみるかな」
万里花「そうそうっ♪ モノは挑戦、ですわよっ!」フンス
82:
?10分後?
楽「(ローカルテレビって案外面白いなー)」ピッピッ
万里花「……」
万里花「さて、と……」
楽「……ぷっ、ははっ。 地元芸人、身体張ってるなー」
万里花「楽様ー」
楽「んー?」スッ ←お茶を取った
万里花「お風呂入りに行きませんかー?」
楽「さっき入っただろ?」ゴクゴクッ
万里花「いえ、混浴露天風呂にですー」
楽「ぶーっっっっっっっっっ!!!!!!』
83:
楽「げほっ、げほっ!!」
万里花「だ、大丈夫ですか!?」サスサス
楽「な、何を言ってるんだお前は!」
万里花「? だから、混浴露天風呂へ」
楽「そうじゃなくて! さっきそれは流石にダメだって言ったろ!」
万里花「何故ですか?」
楽「何故って!! そりゃ」
万里花「……」
楽「そ、それは……、その……」
万里花「私たちが高校生だから、ですか?」
楽「そ、そうそう! いくらなんでも高校生で混浴なんて……」
万里花「今の時代、カップルはもっともっと過激なことをしていると思います」
楽「か、過激!?」カァァ
84:
楽「過激ってお前……!」
万里花「いいじゃありませんかっ♪ 私の願いを叶えると思って」ピトッ
楽「そ、そういうわけにはいかねーっつの!」バッ
万里花「あぁん?」
楽「へ、変な声を出すな!」アセ
万里花「今行かないと鶇さんが帰って来てしまいますし! そうなればもう行けませんよ!」
楽「(早く帰って来てくれー!!!)」
楽「め、飯の時間もあるし、ほら!」
万里花「先ほど7時に用意するという電話がありましたが……。 あと1時間以上ありますわ」
楽「いつ!?」
万里花「芸人さんが思いっきり水田の中に頭を突っ込んだとき辺りです」
楽「(馬鹿笑いしてた……)」ズーン
85:
万里花「と、いうことで? 行きましょう!」
楽「『と、いうことで』で流せる話かっ!」ビシッ
万里花「ぶー……。 頑なですね?……」ムムム…
楽「そ、そもそも、俺とお前は別に付き合ってるわけじゃないし! そりゃまずいだろ!」
万里花「じゃあ……。 付き合って下さい」カァァ
楽「んなぁっ!?」
万里花「私と付き合っていれば、私と一緒に来てくれるんですよね?」
万里花「楽様……。 私の恋人になってください」
楽「な、お、お前、それ、本気か!?」
万里花「本気も何も……。 お風呂の一件を含め、このような事は楽様以外に言うことはございませんわ」
86:
楽「……!」ゴクッ
万里花「……私、はしたない女に見えますか?」
楽「へ? い、いや、そんなことは……」
楽「(で、でも……)」
万里花「……」ウルウル
楽「(……はだけた浴衣とか………。 ……よく見ると、めっちゃ色っぽいぞ……!)」
万里花「……。 自分でもそう思いますわよ。 流石にね」
楽「……」
万里花「でも、そう思われても良いくらい。 ……らっくんと一緒にいんことは大事なんね……」カァァ
楽「……!!!」ドキィッ
万里花「……らっくん……あまり、意地悪しないで……」ススッ
楽「(な、え、お、ええあおwふぁえfはえふぇけふぁえあ)」
87:
万里花「……らっ――」
楽「(……)」
万里花「――っく――」
楽「(………………)」
万里花「――――――ん」
楽「(んぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!!!)」ギリギリ
がばっ
万里花「ひゃんっ」
楽「はぁ、はぁ、はぁ……」
万里花「そ、そんないきなり――(し、心臓が止まりゃ……)」カァァ
楽「ダメだ!!!」
万里花「…………」
万里花「……へ?」
88:
楽「や、やっぱりダメだ……!」
万里花「な、何故ですか……? やっぱり、私に魅力はありませんか……?」グスッ
楽「違うっ!!」
万里花「!」ビクッ
楽「混浴がどう、とか……。 付き合ってるかどう、とか。 そうじゃなくて……!」
楽「俺が、お前を大切にしてやれるかどうか、って話だから……!」カァァ
万里花「楽……様……?」キューン
楽「それに、その……。 告白、めっちゃ嬉しいけど……。 本当に悪いんだけど、俺にはまだ答え、出せないから……」
万里花「……」
楽「だから、少なくとも、今、そんな軽卒なこと、できない……」
万里花「……ふふっ、わかりま――」
楽「……一緒にはいっちまったら……我慢できそうにねーし……どう考えても……」ボソッ
万里花「!!!!」
万里花「(……楽様が、私に、劣情を……催してくださっている……!)」
万里花「……ふ、ふふ、ふふふ……」
楽「(あーもー、小っ恥ずかしい……)」ボリボリ
万里花「楽様????!!!!!」ガバッ
楽「!??!? だ、だからひっつくなっつーのおおおおおおお!!!」アセアセ
101:
――午後7時過ぎ
【部屋】
鶇「……」
万里花「楽様?♪ あーんっ」ススッ
楽「や、やめろ! 自分で食える!」
鶇「…………また一層と、仲が良いことだな……?」プルプル
楽「あはは……。 これには深いワケが……」
万里花「あらっ? ありがとうございます?」テレッ
鶇「褒めているわけじゃない!」
万里花「あらら?」
万里花「楽様?、鶇さんが怖いです?。 まるで鬼の様なお顔をしてらっしゃいますわ」ヒシッ
楽「!? く、くっつくな!! 飯くらいゆっくり食わせてくれよ!」アセアセ
万里花「またまた?、そんなこと言って?」ニコニコ
楽「とほほ……」
鶇「橘万里花……。 先ほどの潮らしさはどこへいった……」
万里花「え?? 何のことですか? 私はいつだって楽様一筋ですしーっ♪」ヒシッ
鶇「」ピシッ
楽「……(もういいや……)」ゴクゴク
楽「(……あ、この抓入美味しい……)」ズズッ
102:
――ご飯後
楽「……ぷはー……。 美味しかった」
鶇「量にしては満腹感が凄いな」
万里花「和食で有名な旅館らしいですからね。 流石のお手前でした♪」
鶇「貴様はほとんど一条楽に食べさせていただろう……」ギロッ
万里花「料理というのは味覚だけではなく、聴覚や触覚、視覚で味わうものでもありますのよ?」
鶇「……詭弁だ」
万里花「下世話な方ですわねぇ……」
鶇「なんだと!?」
万里花「ふーんだ」
鶇「……」バチバチ
万里花「……」バチバチ
楽「(……楽しい空気から一瞬で殺伐とした雰囲気に……)」
103:
?♪
鶇「……?」
鶇「……携帯か? 私のではないぞ」
万里花「私のでもありませんわね」
楽「おぉっっと、俺のだ。 多分、親父とかだろ」
楽「ちょっと電話出て来るわ。 すぐ戻る」ガチャッ
万里花「あ、それでは私も一緒に――」
楽「こんでいい!!」バタンッ
万里花「ぶぅー」
鶇「貴様が行く意味がないだろうに……」
万里花「はぁ……」
鶇「なんだ。 その深いため息は……」
万里花「……分かってませんわねー。 好きな殿方の側に、いついかなる時でも添い遂げたい乙女心が……」
鶇「それは貴様が粘着質なだけだろう」
万里花「ぬぬっ! 聞き捨てなりませんわね。 私のこの純真な恋心を、そんな汚い言葉で表現しないでください」
鶇「……」
鶇「……ふっ」クスッ
万里花「その笑い方、とてつもなく腹立たしいのですが!!!」ムキーッ
104:
鶇「……そういえば」
万里花「……何ですか」ムスッ
鶇「貴様、何かあったな」
万里花「……」ヒュ?♪
鶇「露骨なしたり顔はやめろ」イラッ
万里花「……楽様に、告白しました」
鶇「告白か……。 何だ、そんなこと……かぁっ!?!?」ガバッ
万里花「ぷっ、何ですの、その喜劇風の驚き方」
鶇「こ、こ、こ、告白!?」
万里花「その通りでございます。 っというか、復唱されると流石に恥ずかしいのですが」
鶇「あ、あはは、はははは、貴様、ついに自分の罪を認めたか、あはは」
万里花「……貴方、キャラがおかしくなってますわよ」
105:
万里花「当たり前ですが、そちらの告白ではなく」
万里花「愛しい人に自分の気持ちを伝える方の、告白です」カァァ
鶇「な、なぜそんな唐突に……」
万里花「ふふっ、唐突も何も、私は普段から楽様に気持ちを伝えているではありませんか」
鶇「ま、まぁそれは、確かに……」
万里花「最高の雰囲気でしたのよ? 私と楽様2人きりで、どこかのお邪魔虫さんもいなくて」
鶇「」ズキッ
万里花「私も、身体中から汗が出るのを感じました。 流石に、緊張しましたし」
万里花「けど、そんなことよりも、楽様の紅潮したお顔を見ていて……。 火照ってしまいました♪」
鶇「き、貴様の変態っぷりなど聞きたくもない……!」プイッ
万里花「とことん失礼ですわね。 先ほど言った通り、私がここまでするのは楽様だけですし、これは努力の賜物でございますのに」
鶇「……ふ、ふんっ」
万里花「…………で」
万里花「私と楽様の先ほどの姿を見ても、結果、気になります?」ニヤニヤ
鶇「……!」
108:
万里花「…………」
鶇「……」ドキドキ
万里花「…………」
鶇「……」ドキドキ
万里花「…………うりゃっ」グニッ
鶇「!? ふふぁひふぉふふ!?」
万里花「あははー、面白いお顔ですこと!」グニグニ
鶇「ふぁふぇふぉっ!」パシッ
万里花「乱暴ですわねぇ……」
鶇「きゅ、急になんなんだ! 茶化すなら私も――」
万里花「……ダメでした」
鶇「!」
万里花「……正確には、答えを出して頂けなかった、ですけど」
109:
鶇「そ、それって……」
万里花「ちょっとだけ、先走ってしまったかもしれません」
鶇「……」
万里花「私の、悪い癖だけん。 思い込みだけで、突っ込もーとするん……」
鶇「……橘万里花」
万里花「……けっこう、本気で言うとんに」プイッ
万里花「本当は、ちびっとショックだった」フルフル
鶇「……」
110:
鶇「……」スッ
万里花「……」
万里花「…………なーんて、じょうだ――」
鶇「……」グイッ
万里花「――ん」
鶇「……」ナデナデ
万里花「……な、何しとるん………」グスッ
鶇「……私は、なんて言葉をかけたらいいかわからないから」
万里花「だ、だからって子どもじゃないけん、こんなマネ――」
鶇「――だから」
万里花「!」
鶇「同性として、話を聞いてやることしか出来ないが……」
鶇「……それでいいなら、付き合うぞ」ナデナデ
万里花「……」
万里花「……ふぇ」
万里花「…………ふぇぇん」グスグスッ
鶇「……」
111:
――――――――……
万里花「……っ」グスッ
鶇「……そろそろ気が済んだか」
万里花「えぇ……」ズビーッ
鶇「なら、そろそろ離れろ」
万里花「はぁ……。 楽様はどうしたら私のものにできるのでしょうか……」オヨヨ
鶇「無視か貴様……」イラッ
万里花「……おいしょっ」スッ
万里花「……泣いたらお化粧が崩れてしまいましたので、もう一度お風呂に行って洗い流してきます」
鶇「あ、それなら私も……」
万里花「貴方はこないでください。 その無駄に大きなお饅頭を見せつけたいなら別ですけど」
鶇「お、おま!? バカにしてるのか貴様!」カァァ
万里花「せいぜい、楽様との2人きりの時間をお楽しみください♪」
万里花「ま、根性無しの貴方には何もできないでしょうけどっ」プククッ
鶇「ぐぬぬ……!(慰めるんじゃなかった……!)」
万里花「……」
万里花「……多少は感謝してるから。 ……お礼ですのよ」ボソッ
鶇「……!」
万里花「……でも、負けませんから。 楽様のことだけは、誰にも……」
鶇「……」
万里花「…………。 ……それでは、行って参りますわねっ」ニコッ
112:
鶇「……わ、私は別にそんなことはしないぞ!!」
バタンッ
鶇「……ぁ」
鶇「………」
鶇「……私は……そんなこと……できないし……」
鶇「…………」
鶇「貴様のような、強い気持ちも……まだ…………」
鶇「……」
119:
―5分後―
楽「はぁ?……。 なんとかなったか……」ガチャッ
鶇「……どうかしたのか?」
楽「いんや……。 元々、家には集たちとの旅行って言ってあってさ……」
楽「ちょっと口滑らせちまって、取り繕うのが大変だったんだよ……」
鶇「なんだ、貴様の自業自得じゃないか」ズズッ ←お茶飲んでる
楽「そりゃそうなんだけどさ……。 って、橘は?」
鶇「……寝る前に、もう一度風呂に言って来るんだと」
楽「ふーん……。 お前はいいのか?」
鶇「……あぁ」
楽「そっか」
120:
楽「そういえば、お前はなんて言って出てきたんだよ?」
鶇「?」
楽「ゴリ……桐崎とか、クロードとかにさ」
鶇「(ゴリ……?)私は、遠征に出ることがさほど珍しいことじゃないから」
楽「あぁ、なーる」
鶇「『最も憎い人間を●ってくると』っとな……」
楽「あはは、最も憎い奴かー……」ダラダラ
鶇「冗談だ」
楽「やめてくれよそういう冗談……」
122:
楽「あ、そういえば」
鶇「なんだ?」
楽「ずっと気になってたんだけど、それ帯の結び方違うぞ」
鶇「え? こ、こうではないのか?」
楽「あ、いや。 実際、結べりゃいいんだろうけどさ……」
楽「うちは結構そういうの厳しかったから、なんか目についちまって」
鶇「どうするのが正しいんだ?」
楽「前の方の帯を折って、それを巻く。 んで――」
123:
―3分後―
楽「もういいかー?」
鶇「あぁ」
楽「じゃ、開けるぞ」ガララッ
鶇「……」
楽「お、おぉぉ……!」
鶇「ど、どうだ? これで合ってるか?」
楽「あ、あぁ。 やっぱり、適当な巻き方より、いいな」
鶇「こういう文化には疎かったのでな……。 礼を言う」
楽「……」
楽「ぷっ」クスッ
鶇「な、なぜ笑う!」ジャキッ
楽「ぶ、武器を出すな! 武器を!」アセアセ
125:
鶇「笑うな!」カァァ
楽「わ、わかったから、とりあえずしまえ!」アセアセ
鶇「……」スッ
楽「(あー……。 死ぬかと思った……)」ホッ
鶇「うすら笑いを浮かべおって……何なんだ」
鶇「答えによっては本当に……」ユラァッ
楽「わーっ!! まてまて! 言うから落ち着け!」
楽「……いや、あのさ。 深い意味とか、全然ないんだけど」
楽「俺も随分と、お前と打ち解けられたんだなあ、と思ってさ」
鶇「……えっ?」ドキッ
楽「『お嬢様のために俺を殺す!』とか言ってたお前とさ、こんな風になれるなんて思わなかったから」
楽「なんか、それが面白くて」ニコッ
鶇「……」
126:
楽「それに、さっきから思ってたけど」
鶇「?」
楽「浴衣、にあってるよ」
鶇「」
楽「って、俺に言われても嬉しくねぇか、あはは」
楽「(何言ってんだ俺……)」カァァ
鶇「…………なの」
楽「え?」
鶇「…………そんなの、私だって……」
鶇「私だって、貴様のことを――」ダッ
シュルッ
楽「―――――へ?」
127:
ガタンッ!!!
楽「いっつつ…………」
鶇「……っ、す、すまない……。内帯が、まだ足下まで伸びていたみたいだ……」
楽「あ、あぁ。 俺は別にだいじょう……」
楽「ぶっ!???!?!?!?!??!」バチッ
鶇「……?」チラッ
鶇「なぁああああああ!?!?」ババッ
楽「お、俺は見てないから! 見てないから早く着てくれ!!」
鶇「み、み、みた、貴様、ぜったい、みた……!」
楽「す、すまん、一瞬ぼやーっと……って、見てないから早く!!」
鶇「そんなの、言われずとも――」
―――――万里花『……多少は感謝してるから。 ……お礼ですのよ』
鶇「……!」
128:
鶇「……」
楽「……だ、大丈夫か?」
鶇「……」
楽「……目、開くぞ?」
鶇「……待て!」
楽「! ま、まだか……! すまな――」
フワッ
楽「――えっ……?」
鶇「……………」ギュッ…
楽「(な、なにか柔らかいものが、その……。 え?)」
鶇「……」ギュッ…
楽「……え、えっと……? 鶇さん……? これは一体……?」
鶇「絶対に、目を開くなよ……」
楽「……え、あ?」
鶇「……少しだけ……。 こうしてたいんだよ、ばか……」ギュ……
楽「え――」
ガララッ
万里花「ふぅー……。 良いお湯でした?。 楽様、ただいま戻りーー」
鶇「」
楽「」
万里花「――た」
129:
ー1時間後ー
【寝室 分室後】
万里花「まったく!! 信用なりません!!」
鶇「な、何もしていないって言ってるだろ!!」
万里花「上半身裸で、ふしだらに浴衣を羽織った状態で、楽様に上乗りした貴女を見て」
万里花「誰が信用できるんです!!」
鶇「うっ……」
万里花「お礼です、とは言いましたが、そこまで前進していいとは言っておりません!」
鶇「そ、そんなつもりは毛頭……!」
万里花「毛頭ない、んですか? 本当に?」
鶇「うぐ……」
130:
楽「と、隣りで喧嘩してる所悪いんだけど……」
万里花「なんですか!」
楽「うっ!? ……ゆ、浴衣の着方について、俺がちょっと文句付けたりしたからさ」
楽「それで鶇が直したら、少し不完全な所があって、はだけちゃったんだよ」
楽「だから、別に、変なことをするとか、したとか、絶対なかったぞ!」
万里花「……」
万里花「……まぁ、楽様が言うなら。 信用しますけど……」
楽「……」ホッ
万里花「私を襲ってくれなかったのに、鶇さんは襲うだなんて……ずるいです」ボソッ
鶇「き、貴様、だから、別にそんなことはなかったと言ってるだろう!」ガバッ
楽「え? なんだ?! 聞こえなかったぞ!?」
鶇「貴様は黙って寝てろ!」
楽「えぇ?……!?」
131:
万里花「まったくもう……」
鶇「す、すまない……」
万里花「謝るってことは、疚しい気持ちがあった、ってことですわよね?」
鶇「……その、よくわからないんだ」
万里花「はぁ?」
鶇「転けてしまったとき、その、一条楽の身体に触れたんだ」
万里花「……」
鶇「そのとき、何故か、その……。 頭が呆けてしまって……」
鶇「しっかりとした意識が保てず、その……」
鶇「思わず……と言っていいのか……」
鶇「」カァァ
鶇「あ、あぁもう!! 殺してくれ!! いっそのこと!!!!!」ガバッ
万里花「(な、なんなんですの……。 卑怯な程、可愛いのですが……)」
136:
ー翌昼―
【ロビー】
女将「朝食、お口に合いましたでしょうか?」
楽「めっちゃ美味かったです。 味付けを詳しく教わりたいくらい」
女将「まぁ、お上手。 恐縮ながら、お言葉、受け取らせて頂きますね」
楽「はい!」
鶇「……」ボーッ
万里花「……」ボーッ
楽「……? どうしたんだ? お前ら」
万里花「はい……。 ……どちらが楽様の部屋に夜這いをかけるか口論を――むぐっ!?」
鶇「何でも無い」
楽「え? よ、よば?」
鶇「な・ん・で・も・な・い」ゴゴゴゴゴゴ…
楽「は、はい!」
楽「そ、それじゃ、俺たちは帰りのバスがあるんで!」
鶇「失礼しました」
万里花「とってもいいお宿でした♪」
女将「ご来館頂き、誠にありがとうございました」ペコリ
137:
【バス内】
鶇「……私は別に夜這いをかけるなどと言ってはいないぞ……」ギロッ
万里花「あら? そうでしたっけ? 寝不足過ぎて記憶が曖昧ですので」オホホ
鶇「法螺を吹くのもいい加減にしろ!」
万里花「それはそうですよね……すいません……」シュン
鶇「うっ……なぜ急にしおらしく……」
万里花「貴女は夜が更けるよりも前に、楽様を襲ってましたもんね……」オヨヨ…
鶇「ぶっ!! き、貴様!!」
万里花「ふっふーん。 私、ちょっと根に持つタイプです」
鶇「うぐぐ……」
楽「すかー……。 すかー……」←実は緊張で寝れてなかった。
138:
【バス停】
楽「く?っ……」ググッ
楽「…………っぷは?……!!」
楽「あー、よく寝た!」
万里花「うー……もう少し寝ていたかったです……」ダラー
鶇「……」ウトウト
楽「だ、大丈夫かよ、おい……」
139:
楽「……ってか、全員帰り道違うのか。 どうする? 送ってこうか?」
万里花「いえ、それは大丈夫ですわ」
鶇「……私もだ」
楽「え……。 でも、お前ら結構疲れてるだろ? 荷物持ちくらいするぜ」
万里花「私はすぐそこまで迎えが来る予定ですので、大丈夫ですわ!」
鶇「貴様の力を借りなければならないほど、ヤワではない」
楽「そ、そっか……」
万里花「あ、でも! この後、2人だけで秘密のデートにむかうのであれば、話は別ですが……」
楽「ん、んなわけあるかー!!」
万里花「ふふふっ……♪ 冗談ですっ♪」ニコッ
鶇「(ブレないな……)」ハァ…
140:
楽「それじゃ、日が暮れて来たし、早めに解散すっか」
万里花「はい!」
鶇「……」コクッ
楽「……」フゥ
楽「あ、あのさ」
万里花「?」
鶇「?」
楽「何か色々あったけどさ……。 楽しかったよ、ありがとな!」
楽「お前らと旅行行けて良かったよ!」
万里花「ら、らっくん……」キュゥゥウン
鶇「……」プイッ
鶇「…………よく言えるな、そんなこと。 改まって」カァァ
楽「……へ? 変なこと言ったか? 俺」
鶇「……いや……」
141:
楽「それじゃ、マジでもう行くわ!」
万里花「はい! それではまた!」
楽「あぁ、またな!」
万里花「…………あっ。 楽様!」
楽「……ん?」
万里花「……わすれものっ!」
チュッ
楽「ちょ!??!?! お、おまえ!!」
鶇「!?」
万里花「ふふっ、ほっぺだから、許して下さいね」パチッ
万里花「それでは、また?!」フリフリ
142:
楽「――ったく、あいつは??……」ドキドキ
楽「……はぁ。 それじゃ、俺も行くわ……。 ……鶇、またな」
鶇「……あぁ」
楽「」テクテク
鶇「…………」
楽「」テクテク
鶇「………………」
楽「」テクテク
鶇「…………………?ッッ!!」
鶇「……!」ダッ
楽「はぁ?……。 色々あったなぁ……」
鶇「一条楽!!!」
楽「―――へ?」
チュッ
143:
楽「……あ?」
鶇「……」カァァ
楽「えーっと……? え?」
鶇「さっさと消えろ!」バキッ
楽「へぶぅ!?」
鶇「」ダダッ
鶇「(やってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまったやってしまった)」
鶇「(??????)」
楽「……えぇ?…………」
144:
おわり。
大したもんじゃないのに長い期間かけてすんませんでした。
またニセコイSS書きたいので、書いたら読んでくれるとありがたいです。
それでは。
148:
乙ー
最後はどこにキスしたんだろ
151:
乙ー
また新作できたら読みたいです
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