イビルジョー「あ〜!超お腹減ったっし♪」back

イビルジョー「あ〜!超お腹減ったっし♪」


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1:
私はイビルジョー。
物心ついた時からずっと独りだった。
両親の顔も知らない。
友達は…
 
友達は出来たことがないわけじゃない。
けど、今はいない。これからもずっといないと思う。
 
私は、一生独りなんだろうな。
 
まぁいいや。今まで出来た友達についてちょっと語らせてもらうね。
 
初めて私に友達が出来たのは、5年ぐらい前だったかな。
私の体は今みたいに大きくなくて、ちょうどドスジャギィくんと同じぐらいだった。
うん。
私の初めての友達はドスジャギィくん。懐かしいな。
 
あの日は…
孤島を歩いてたんだ。よく晴れた日の朝。
ふと、怪我して倒れてるドスジャギィくんを見つけた。
元スレ
ニュース報(VIP)@2
イビルジョー「あ〜!超お腹減ったっし♪」
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5:
岩陰で、苦しそうに喘いでいたドスジャギィくん。
かなり私が近付いても、彼は私には気が付いていないみたいだった。
 
「怪我してるみたいだけど、大丈夫?どうしたの?」
 
私はそう声をかけた。次の瞬間、ドスジャギィくんはビクッと体を震わせながら私の方を向いた。
すると私のことを凄い目つきで睨みながら、怒鳴ってきた。
 
『なんだてめぇゴラァアアッ!!殺すぞてめぇ離れろゴラァアアアアアァァッ!!』
 
「ひっ!ご、ごめんなさい!」
 
なんで怒られたのか分かんなかったけど、私はびっくりして(彼の方がびっくりしてたけど)、謝って逃げちゃった。
私が離れても、
 
『もっと遠くまで行けや近付いたら殺っ…がはっ!げほっ!…こ、殺すぞゴラっ!』
 
って、いつまでも怒鳴ってた。
だから言われた通り私は遠くまで離れた。
振り返ってドスジャギィくんの方を見ると、ドサッと倒れ込む彼の姿が見えた。
6:
私は近くにあった薬草を少し摘んで、またドスジャギィくんの所に行った。
彼は気絶してるみたいだった。
 
「あのー…」
 
って声をかけても、反応はなかった。
私は勝手にドスジャギィくんの傷に薬草を塗ってあげた。血は止まったみたいだった。
そして私はその場に座って彼を見守ることにした。
なんでそんなことしたのか自分でもよく分からないけど…うーんなんでだろ。
彼がなんでこんなに怪我をしてるのか、気になったのかも。
 
まぁとにかく私は、ドスジャギィくんが目を覚ますまでその場に座っていた。
 
太陽が一番高い位置まで昇ったころ、彼はガバッと起き上がった。
私を見るなり、
 
『あっ!てめっ………ん?』
 
ってまた怒鳴ろうとしたんだろうけど、自分の体からポロリと落ちた薬草を見て彼はぴたりと止まった。
 
『お前が……手当てしてくれたのか?』
 
「う…うん……ごめん」
 
『…………悪いな……ありがとう』
 
彼は少し照れたようにそう言った。
私は初めて他人から感謝の言葉を貰った。
7:
「ど、どうして……そんなに怪我してるの?」
 
私は恐る恐るそう訊ねてみた。
そしたらドスジャギィくんはいろいろ説明してくれた。
ジャギィの雄はある程度成長したら群れを出ること。
そして1人で生活して知恵と力をつけて戻って、群れのボスと決闘するってこと。
群れのボスを倒すことが出来れば、その群れを自分のものに出来るということ。
どうやらドスジャギィくんは、群れのボスに闘いを挑んで返り討ちにあったらしかった。
 
「ふーん……大変なんだねぇ」
 
『まぁな。だが近いうち必ずここの群れを俺のものにしてやる』
 
「なんかかっこいいね。頑張ってね」
 
私はそう言った。素直にかっこいいと思ったから。
 
『なぁ………お前……名前なんていうんだよ』
 
「ジョーだよ」
 
『ジョーか。なぁ、ちょっと昼飯奢らせてくれよ。お礼させてくれ』
 
「え?」
 
お食事に……誘われた……?
9:
『アプトノスか?それともケルビが好きか?獲って来てやるよ』
 
「あ……えっとー……」
 
私は少しパニックになった。だってこんなこと初めてだったから。
 
『ははっ!お前いっぱい喰いそうだな…両方か!いいぜちょっと待ってな』
 
「え!?い、いいよ、それにドスジャギィくん怪我が」
 
『もう治っ……ぐおっ…痛ててて』
 
そう言いながら彼は倒れ込んだ。ほら言わんこっちゃない。
 
『ははっ!悪いな。もうちょっと寝たら獲りに行こう』
 
「う………う、うん……」
 
それからドスジャギィくんの体力が回復するまで、私たちはたくさんおしゃべりした。
その時の彼の言葉が凄く頭に残ってる。
『俺たちはもう友達だ』って。
友達。そっかこれが友達なんだ。楽しいな。
私の初めての友達、ドスジャギィくん。
あ、さっきアプトノスとかケルビなんて言葉聴いたから、ちょっとお腹減ってきたかも。
 
ぐうううううううう って、私のお腹が鳴った。
 
その瞬間、私の意識が飛んだ。
10:
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『ははは、おいおい、ジョー、腹の虫が叫んでるぜ』
 
「…………」
 
『どうした?腹減りすぎちまったか?」
 
「…………」ぼた…ぼた…
 
『おいおい凄ぇ涎だし……なんか…目の焦点合ってねぇぞ大丈夫か?』
 
「………ぐるるるる」
 
『ちょ、ちょっとどうしたんだよ怖いよ……分かった!飯喰いに行こう!』
 
「…………」すた…すた…
 
『お、おい無言で近付いてくるなよ怖いって…』
 
「………」すた…すた…ぴたっ
 
『あのー………ジョー………さん……?』
 
 
 
・・・・・・・ガバチョッ 
 
〜〜〜〜〜〜〜〜
12:
ふと目が覚めた。
いつの間にか私は寝てたみたい。
周りを見回した。もう陽が沈んでた。
ドスジャギィくんはいなくなってた。どこかに行ったのかな…?
 
それに……おかしいな。
さっき確かにお腹が空いたような気がしたんだけど。
 
うん。私は満腹になっていた。
そう。私は飢餓を感じたことがない。
あ、ちょっとお腹空いたなって思うと、意識が飛んじゃうんだ。
で、気が付いたら寝てる。
起きたときには空腹が解消されてる。
 
昔から、ずーっとそう。
今も。
 
それっきり、私があのドスジャギィくんを見たことはなかった。
14:
3年ぐらい前かな。
私の体は随分大きくなってた。
砂原を歩いていたら、いきなり襲われた。
ティガレックスっていう、すっごく凶暴で獰猛で声が大きいやつ。
 
私が歩いていたら、岩の上からいきなり飛びかかってきたの。
 
『てめっなに人の縄張りに勝手に入ってんだコラァァアアアアアッ!!!!』
 
とか言って。
ふふ。凄い怒鳴り声だったな。
 
うん。知らないうちに縄張りに入っちゃってたみたいなの。
あ、ごめんなさい、すぐに出て行くから! 
って言いかけた時には、もう彼の爪や牙が私の体に食い込み、切り裂いていた。
 
痛かったな……あれは。
16:
「ごめん!ごめんってば!」
 
私が必死で謝っても、彼、すっかり頭に血が昇っちゃってて。
全然攻撃をやめてくれなかったの。
その時、彼の爪が私の顔に当たりそうだったから、思わず振り向いたんだ。くるっ…て。
 
そしたらちょうど、私の尻尾が彼の顔を殴ったような形になっちゃって。
 
『へぶっ!』
 
って言いながら、彼は吹っ飛んでったんだ。
そしたら吹っ飛んだ先に、運悪く岩があって、彼、そこに頭を思い切りぶつけたの。
あの時は、悪いことしちゃったな……。
 
彼、そのまま気絶しちゃったから、私はその場に座って彼を見守っていたんだ。
17:
砂原の陽が落ちたころ、彼はガバッと起き上がった。
私を見て、一瞬驚いたあと、すぐに目を伏せて
 
『俺は……負けたのか…』
 
なんて言ってた。
いや、負けたっていうか……事故っていうか……。
私は説明した。
たまたま私の尻尾が当たってたまたま岩に頭をぶつけたんだって。
 
『それでもお前の尻尾アタックの威力が強すぎるってことじゃねぇか』
 
なんて言われちゃった。
返す言葉が見つからなかったな。
 
『それにしてもお前強ぇな。恐れ入ったぜ。名前はなんてんだ?』
 
って言われたから、私は名乗った。
 
『そうか…なぁジョー!俺とコンビ組まねぇか?』
 
彼は唐突に言った。コンビ?って返すと、 
 
『そうだ。俺とお前で組みゃあ、この大陸を支配出来るぜ!人間も怖くねぇ!全部俺たちのもんだ!』
 
だって。びっくりしたけど、嬉しかったな。
やっぱり1人は寂しいし、それにティガレックスくんって…なんか…なんとなくこう…どことなく近いものを感じるというか。
上手く言葉に出来ないけど、この人となら上手くやれそうな気がするって思ったんだ。
20:
いいよ。って言うと、彼は立ち上がって、
 
『よっしゃ、決まりだ!早明日近くの人間の街を襲撃しようぜ!』
 
と言った。人間の街?どうして?って返すと、
 
『馬鹿おめー、あの人間の街を俺たちが壊したとなりゃ、この辺のモンスターたちに一気に俺たちの名が知れ渡っぞ!』
『実力を示すには人間のでけー街を壊すのが一番なんだ!』
 
へー、そうなんだ。
私が承諾すると、彼はふと私の背中らへんを見た。
 
『さっきは……その……悪かったな…』
 
ちょっと顔赤くして目を伏せてた。
ふふ、可愛い面もあるじゃんって思った。
いいよ、気にしてないし、あんまり効いてないし、って言ったら、
 
『うっ……それはそれでグサッと来るな…』
 
だって。
あはは。私はその時、久しぶりに笑ったと思う。
本当に……久しぶりに。
22:
『でもお前、よく見ると傷だらけだな。なんだ、他のモンスターの縄張り荒らすのが趣味なのか?』
 
って言われた。うん。なんか知らないけど、知らないうちに傷が出来てるんだよね、私。
 
『知らないうちって、なんだそれ、無意識のうちに戦ってんのか?危ねぇやつだな、ははは』
 
……後々に分かったことなんだけど、この時彼が言ってたことは…。
うん。間違ってなかったんだ。
でもその時の私には分からなかったから、分からない、とだけ返した。
 
それから、私とティガレックスくんは寝っ転がって満天の星空を眺めながらいろいろなお話をした。
本当に綺麗な星空だった。
誰かと一緒に過ごす夜の楽しさを、初めて知った。
願わくば、この瞬間がずっと続くといいな、毎晩おしゃべり出来たらいいな、なんて思ってた。
 
おしゃべりの途中、ぐううううううぅ…って音が、会話を遮った。
一瞬私かな?…って思ったけど、違った。
ティガレックスくんのお腹の音だった。
 
お腹空いてるの?…って聞くと、
 
『わりーわりー、へへ、でも朝まで我慢するぜ』
 
って返ってきた。
そっか、って言ったら、また、ぐうううううぅ…って音が聞こえた。
今度は
 
私の
 
お腹の音だった。
23:
ああ……私もお腹減ったな…ダメだ……意識が遠のく…。
来た。いつもの眠気だ。とても抗えないほどの……酷い眠気。
 
『ははは。なんだ、ジョーも腹減ってんのかよ』
 
嫌だ……嫌だよ。
もっとティガレックスくんとお話したいよ。
私は必死にその眠気に逆らった。
この眠気に負けたら、きっとティガレックスくんはいなくなってしまう。
 
ドスジャギィくんと同じように。
そういう直感が働いていた。
 
友達を失いたくない。
もう、独りにはなりたくない。
寂しいのは嫌だよ。
 
また、ぐううううううぅ、って鳴った。
 
そこで完全に私の意識は途絶えた。
24:
『ははは、でっけー音だなぁ!しゃーねー飯食いに行くか!』
 
「………」
 
『ん?どうした?』
 
「………」ぼた…ぼた…
 
『なんだ腹減りすぎたのか?涎たれてんぞ』
 
「………」ぼた……むくり
 
『おいおい無言で立ち上がんなよ、怖ぇーよ』
 
「………」
 
『なんだ?俺、なんか気に障ること言ったか?』
 
「………」ぼた…ぼたた…ぼた…
 
『おいっ!いつまでシカトしてんだいい加減にしろっ!』
 
「………」すた…すた…
 
『……お、おい……ジョー……お前……や、やめr』
 
 がばちょっ!
26:
なにこのスレ切ない
28:
朝日と共に私は目覚めた。
ティガレックスくんがいなくなってた。
私の空腹が、解消されていた。
 
……周囲一帯に、血が飛び散ってた。
ところどころ、骨や爪だと思われる尖った硬そうな物体も散らばってた。
 
もうここまで来ると……
 
もうこの時には……
 
私は分かっていた。
理解した。
私の本性を。
私の本能を。
 
生きるために、私はーーーーーー。
30:
なんか切なすぎて涙出てて来た
31:
それから私は、行くあてもなく、ただなんとなく、気の向くままに、さまよった。
途中、海で行き止まりになった。
迷わず飛び込んだ。
自殺しようとしたわけじゃないけど、別に溺れてもいいやと思った。
けど……。
 
なんか知らないけど体はプカプカ浮いた。
なんか知らないけど普通に海を泳いでた。
 
普通〜に、ゆら〜りゆら〜りと、青空をぼんやり見ながら海に浮かんで、波に身を任せてた。
 
嵐でも来て海が荒れれば私は間違いなく死ぬな、なんて思ってた。
まぁ嵐が来なくても2、3日もすれば、泳ぎ疲れて体は勝手に沈んでくでしょ。
 
とか思ってたら、お腹が鳴った。
 
私は海のど真ん中で、気を失った。
 
 
 
 
起きたら、見たことない浜辺にいた。
運が良いのか悪いのか、なんと私は海を泳いで(波に流されて?)どっか見知らぬ大陸に着いたらしかった。
ちょっと疑問に思った。私、海でなにを食べたんだろう? 
まぁいいや。
32:
それから私はその新大陸を、また行くあてもなくさまよった。
いろんなところに行った。気が付けば、綺麗な森と丘がある場所に来ていたんだ。
 
森の中から、遠くのアプトノスの群れをボーっと眺めていた。
眺めながら思った。
もうすぐ、私のお腹が鳴る。
そしたら私は、あのアプトノスの群れに襲い掛かるだろう。
いったい何頭殺すことだろう。
 
でも、しょうがないよね。
 
他の肉食竜だって、普通にやってることだし。
でも、私と他の肉食竜とは、決定的に、根本的に違うところがある。
 
他の肉食竜は、自分の仲間を襲わない。
別の種族と縄張り争いとかで戦うことはあるけれど、片方が負けを認めれば勝った方は逃がすし。
必要以上に痛めつけることはしない。
ましてや殺して喰うなんてことは、断じて。
 
けど、私は……
 
ぐぅぅぅぅぅぅぅ…… 
 
あ、
 
お腹減った。
33:
【ココット村】
 
村人「聞いたか?数日前突然森に現れたバケモンだが……」
 
村人「ああ。森丘の生態系を荒らしまくってるあいつか」
 
村人「そのバケモン退治に、街から呼んだ2人のハンターが向かってったろ?」
 
村人「ああ、なんか夫婦でハンターやってるっていう、あの凄腕の」
 
村人「……そう。でも……喰われちまったらしい」
 
村人「まじかよ…」
 
村人「ああ。そんで、とうとう【村長】が出向いた」
 
村人「村長が!? 何歳だよあの人……っていうかあの人はもう何年も前にハンターを引退したはずじゃ」
 
村人「ああ。だから俺たちもご老体を心配して止めたんだが…」
 
村人「【てめぇら村長の意見を尊重できねーのかっ!?】って怒鳴られてよ…」
 
村人「おう……まぁ……村長の無事を祈るしかねぇな…」
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
35:
私は見通しのいい丘に座って、川のせせらぎを聞きながらぼんやりと綺麗な青空を眺めていた。
その時、ふと、後ろから声がした。
 
『よぉ、良い天気だな』
 
振り向くと、私より遥かに体の小さい生き物がいた。
体は小さいけど……凄いな……なんか纏うオーラというか……覇気が半端じゃない。
 
『なーんで恐暴竜がこの大陸にいるのか知らねぇけどよ……良いところだろ?ここは』
 
私は何も答えなかった。
最初人間かと思ったけど、よく見ると違った。
これはあれだ。竜人族だ。
小さい体でありながら驚異的な戦闘力を誇る少数民族……ってだれかが言ってた気がする。
けどこの人見れば見るほど凄いな……。目に宿った力?生命力?というのか……
見た瞬間分かる。
まさに百戦錬磨。歴戦の狩人。
 
『ワシゃあ、この近くの村で村長やってるもんだが……聞いたことねぇか?ココットの英雄って。ありゃワシのことだぜ』
 
聞いたことねぇか?
なんて言われても……ふふ、答えられないよ。モンスターと竜人族なんだから。
言ってることは理解できるけどね。
これ、傍から見たら面白い絵だろうね。
体の大きな竜に話しかける体の小さな竜人族。
40:
『なぁ恐ちゃんよ……おめぇ最近、2人の人間を喰ったろ?』
 
恐ちゃんって……
いやそれより、人間? うーん覚えてないなぁ。
まぁ多分食べたんだろうけど。
 
『これがよ、何だか分かるか?』
 
そういうと竜人族のおじいちゃんは、なんか石ころみたいなのを私に見せた。
 
『これはよ、まぁカネっていうもんなんだが……昨日な、見たことねぇ幼い兄妹がよ、ワシの家に来たんだわ』
『んでな、泣きながらワシにこの小銭を押し付けてくんのよ……こーんな薬草ひとつ買えねぇ小銭をよ』
『足りない分は必ず返す。今はこれしかないけど、どうかこのカネであのバケモンを殺してくれって』
『父ちゃんと母ちゃんの仇を討ってくれ…ってよ……涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら叫ぶのよ』
 
……ああ。そうなんだ。
 
『てめぇらどこから来た?って聞いたら、離れたでけー街からたった2人で来たって言うじゃねぇか』
『その街では、まぁワシは有名でよ、ココットの英雄ならやってくれるって、その兄妹は思ったんだと』
『まだ言葉を覚えて間もねーガキがだぜ?……大したもんだわな。あいつはきっとデカくなるぜ』
 
…………。
 
『ったくよ、こちとら第一線を退いてのんびり老後の生活を送ってたってのによ……』
『でな、……ワシは受け取っちまったのよ……その小銭を』
 
…………。
 
『だからワシは……おめぇを殺さねぇといけねぇ』
42:
『勘違いすんなよ、おめぇは悪くねぇ』
『おめぇは自分を狩りに来たやつを喰った。それだけだ』
 
………ん?
 
『ワシだって今まで数え切れねぇ数のモンスターを殺し、そして喰ってきた』
『そしてモンスターたちもまた、数え切れねぇ数の人間を殺し、そして喰ってきた』
『ちょうど、うま〜くバランスが取れてんだよ、モンスターと人間ってはよ。まぁワシは人間じゃねーが』
『おめぇは2人の人間を殺して喰った。そのおめぇを、今日ワシが殺す』
『んでそのワシを、いつか誰かが殺すんだろうよ。それは明日かもしれねぇし10年後かもしれねぇ』
 
……今日……とは言わないんだね。
 
『……ま……こんな長々と話してもモンスターのおめぇにゃ伝わんねーよな……始めるか』
 
伝わってるよ。
 
『遠慮しなくていいぜ』
 
竜人族のおじいちゃんはそう言いながら、手にした小さな剣で、私を斬り付けてきた。
45:
おじいちゃんは座ったままの私を、斬り続けた。
痛いなぁ。
あ、そこは、昔ティガレックスくんに噛まれたところ……痛いな。
 
無抵抗の私を、おじいちゃんは斬り続けた。
 
斬られる度に、私は思い出していた。
今まで出会った、たくさんの人たちを。
斬られて、古傷が開く度に、ひとつひとつ思い出が甦ってくる。
 
ここに来る前に迷い込んだ樹海では、優しいナルガクルガさんが道案内をしてくれたっけ。
本当に暖かい人だったな。
私にお姉ちゃんが出来たみたいだった。
でも私、途中でお腹が鳴って……意識が途絶えて……
 
無抵抗の私を、おじいちゃんは斬り続けた。
47:
ここに来たばっかりの時は、レウスさんとレイアさんの夫婦が優しく迎えてくれたっけ。
どっちも本当に優しかったな。
私にお父さんとお母さんが出来たみたいだった。
ここで暮らしてもいいよ、なんて言ってくれた。
 
私はここを離れなきゃと思った。
 
ダメだよ、レウスさん、レイアさん、一緒に暮らせないよ。
私はそう言おうとした。けど、言えなかった。
あの2人の言葉に甘えてしまった。
一瞬でも、一時でもいいから、家族の温もりを、誰かと過ごす暖かさを感じたかった。
私は必死で空腹になるのを抑えようとした。
意思の力で。精神力で。
 
空腹になる前に胃に何か入れれば良いんじゃないかと思って、いろいろ飲み込んだ。
だけどすぐに吐き出してしまった。
草も木も飲み込んだ。吐き出した。
石も飲み込んだ。吐き出した。
 
なんで…どうして…どうして吐き出しちゃうんだろう…
私が泣いていたら、レイアさんが優しく翼で抱きしめてくれた。
辛かったね、と言ってくれた。もう大丈夫だよ、と言ってくれた。
 
なぜかその時、本当に大丈夫になったんだと思った。
心の奥底では、なにも問題は解決していないって分かっていたのに。
レイアさんは私を安心させるためにそう言ったに過ぎないって分かっていたのに。
52:
レイアさんの胸に顔をうずめて、わんわん泣いた。
レウスさんも後ろから見守ってくれていた。
泣いた。泣き続けた。
今までの寂しさを、孤独感を、苦しみを、全部吐き出した。
ぶちまけた。
 
でも……
 
たくさん泣いていたら……
泣くのに夢中で……
私のお腹が徐々に……ゆっくりと……
 
音を鳴らそうとしている気配に……
気付かなかった。
気付けなかった。
 
翌日。目が覚めたら、レイアさんとレウスさんの姿がどこにもなかった。
 
私の体には新しい傷がたくさん出来ていた。
火傷もしていた。
57:
竜人族のおじいちゃんが、私の古傷を次々と開いていく。
斬られるたびに、思い出す。
 
楽しかった一瞬の幸せを。
 
斬られるたびに、思う。
 
あの時、私に襲われた人たちはこんなに痛かったんだねと。
 
私の頭の中が、段々赤く染まっていく。
怒り……?
ああ、これが怒りか。
自分への怒りだった。
 
ドスジャギィくん。ティガレックスくん。
ナルガさん。
レウスさん、レイアさん。
クック先生……
 
私に優しく接してくれた人たち。
そして、私が食べてしまった人たち。
 
ごめん……なさい。
 
私は立ち上がった。
 
 
『けっ……ようやくやる気になったかよ』
 
そんな声が聞こえた気がするけど、私はそこで意識が途絶えた。
59:
【ココット村】 深夜
 
村長「………」ふら…ふら…どさっ
 
村人「うおっ!村長!村長ぉおおおおおおおっ!!!」
 
村長「………」
 
村人「おいっ!すげぇ怪我だ!左腕がねぇ!早く止血だ!!」
 
村人「村長!!村長ぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」
 
その夜、ココット村は大騒ぎになった。
深夜に、左腕を失い、全身を朱に染めた村長がふらつきながら自分の足で帰ってきたのだ。
村長は自分の村に足を踏み入れた瞬間、気を失い、その場に倒れ込んだ。
 
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
62:
気がつくと私は森の中で寝ていた。
朝の匂いがする。小鳥の声も。
 
私はいったいどれくらい寝ていたんだろうか。
随分長い間眠っていた気がする。
まぁ実際は一晩だけだろうけど。
 
周りを見渡す。なにか違和感を感じる。
あれ?おかしいな……
視界が……半分になってる……?
 
ちょうど近くに泉を見つけて、水を飲もうと水面に顔を近付けた。
水面に映った自分の顔を見た。
 
あ……
 
右目……
 
私の右目が潰れてた。
 
あの竜人族のおじいちゃんにやられたのかな……そういえば私負けたのかな……
それとも私はあのおじいちゃんを食べてしまったのだろうか。
 
私がそんなことを考えていたら、ふと後ろに気配を感じて振り返った。
65:
後ろには誰もいなかった。
あれ?って思ってもう1度水を飲もうとして……
 
尻尾に何か当たった気がした。
 
『あいたっ』
 
同時に、そんな声が聞こえた。
また後ろを振り向いた。
けど誰もいない。でも気配を感じる。
 
「だれかいるの?」
 
って声をかけたら、しばらくして何もない空間から突然紫色のモンスターが現れた。
 
「あ……」
 
って私が言うと、
 
『わっ!やべっ!』
 
って言って彼はまた姿を消した。
71:
「待って!消えないで!姿を見せて!」
 
って私が叫んだら、彼は姿を現した。
 
『あ、どうも……初めまして、オオナズチです』
 
彼はそう言った。
 
「あなた……透明になれるの?」
 
って聞くと、
 
『はい……へへっ……面白いでしょ?』
 
って返ってきた。
うん。確かに面白い。顔が。
 
「私の後ろでなにしてたの?」
 
って聞くと、彼は少し顔を赤らめて答えた。
78:
『じ……実は…あなたが森丘に来た日に…あなたを見かけて…その……一目惚れしちゃって……』
 
……………なんですって?
 
『体を透明にして……ストーキングしてました……すんません…えへ』
 
……私に……一目惚れ??
で、でも見たでしょ?
私があらゆる生き物を捕食する瞬間を。
貪欲に肉を喰らう瞬間を。
 
『そ、そういう姿も…なんとも威風堂々としていて…』
『僕には出来ないことをあなたは平気でやってのけて……そこに痺れる憧れるというか……』
 
初めて言われた……そんなこと。
なんか、顔が熱くなった。
 
『!?……やっべちょっと顔赤くなってる…!?可愛い…!!』
 
え…!?
 
『はぁわわわ、やべ声に出しちゃった…!』
 
……と、とにかく、このオオナズチくんは悪い人ではなさそうだ。
83:
『じ、実は、ジョーさんと竜人族との戦いも、ずっと見てました』
 
そうだったんだ。
戦いの最中のことはよく覚えてない。
どうだったの?って聞いてみた。
 
『引き分け……ですかね…いや、ジョーさんの勝ちかも…竜人族の方から先に逃げましたから…』
 
……そう。
 
『で、ジョーさん、戦いが終わったあと、森に入ってすぐ倒れ込んで…そのまま眠っちまいました』
『で、僕が、薬草とか人間から盗んだ回復薬とかで傷の手当てをしてました』
 
まぁ!そんなことを!
ありがとう!私は心からお礼を言った。
 
『い、いえ、ジョーさんの寝顔たんまり見れたし……ちょっと顔をペロペロ出来たし…』
 
え?
 
『はぁわわわ、ま、また声に…!なんでもありません!』
86:
とにかく、このオオナズチくんが、私を看病してくれたらしかった。
そして続けて彼は、驚くべきことを言った。
 
『単刀直入に言います!僕と付き合ってください!』
 
……はい?
聞き間違いかと思った。
あの……いまなんて?
 
『あなたが好きです!付き合ってください!』
 
え……ちょ……え?
つ…付き合うって…え?
 
『あなたは僕の運命の人だ!僕と一緒にここで暮らして欲しい!』
 
はっきりと
堂々と
 
彼はそう言った。
89:
例えキークエだったとしても俺はジョーを狩らないって決めた
96:
その時私の顔は赤くなってたと思う。
そ、そんな……ダメだよ…いきなり…
とか言ってたと思う。よく覚えてないけど。
 
『なぜ…!?どうしてだい!?』
 
彼が詰め寄ってきた。
私は一歩下がった。そして正直に話した。
 
私は、他の生き物と一緒に過ごせない孤独な生き物であること。
お腹が空くと、見境なく周囲の生物を喰いまくること。
例えそれが友達でも、お世話になった人でも、容赦なく。
だから離れてと。
気持ちは凄く嬉しい。
けど、生き延びたかったら早く私から離れてと。
そう言った。
 
けれども、彼は引き下がらなかった。
 
『大丈夫!僕に作戦があります!』
 
作戦?
私に食べられない作戦ってこと?
 
『そうです!あなたが空腹になると意識が飛ぶのは調査済みです!そこで僕に考えがあるんですよ!』
 
どんな…?
僅かに……少し期待した。
あ……!やばい…!
お腹鳴りそう…!!
100:
オオナズチくん離れて!
お腹鳴りそう!
早く離れて!
私は叫んだ。
でも、オオナズチくんは離れなかった。
 
『ちょうど良い機会です!もしあなたが満腹になって意識が戻ったときに、僕がまだ目の前にいたら…』
 
『付き合ってください!!』
 
どくん…!
私の心臓が暴れた気がした。
気持ちが一気に高揚した。
顔が熱くなった。
こんなに猛烈にアタックされたのは初めて。
 
けど…
ああ…
ダメ…
早く……
 
逃げ……て……
 
ぐううううううううぅ
 
私のお腹が鳴った。
意識が飛んだ。
107:
「ぐるるるる…!」ぼた…ぼた…
 
『来たな!ジョーさん証明してあげます!僕の愛が本物だということを!』
 
「グォアアアッ」ギロリ
 
『ひゅうっ!僕に狙いを定めた…!怖い…!けど…!冷静にやれば必ず出来る!』
 
「……ガァアアアア………!?」
 
『まず……僕の体を透明にする!これでジョーさんには僕が見えていない!……が!!』
 
「グルルル……」くん…くん…
 
「ソコガァッ!!」くるりっ……がちん!
 
『ひゅうっ!危ない!やはりな…!姿は見えなくても空腹で極限まで研ぎ澄まされた嗅覚で大体の位置を把握される!』
『だが…!目で位置を把握しての攻撃よりは遥かに避けやすい!このステルスを解くわけにはいかない!』
 
「グォアアアアッ!!」
 
『そこだっ…!!げろっ!!』
 
 び ち ゃ っ 
 
『隙を見て、僕が体内で生成した滅気玉を当てる!そう!僕の滅気玉には対象のスタミナを著しく下げる効果がある!』
118:
「ガァッ!」がちんっ!
 
『ジョーさんのっ!』
 
「ゴァァッ!」がちんっ!
 
『攻撃を避けつつ!』
『げろっ!げげろっ!』びちゃっ…びちゃっ…
 
『滅気玉を当て続ける!…すると…!!』
 
「グルルル……ぜぇ…はァ…ぜぇ…はぁ…」
 
『ジョーさんの動きが鈍くなってくる!』
『なぜジョーさんの動きを鈍くするのかって?…だって、動きを鈍らせないといつかはあの噛み付きを喰らってしまう!』
『そうだろ!?…僕だっていつまでも避け続けられるわけじゃない!』
 
げろっ…げげろっ!
 
『だから根気よく!滅気玉を当て続ける!』
 
「ぜぇ…ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」ボタボタ…ボタボタ…ボタボタボタ…
 
『ジョーさんの動きが止まった!凄い涎の量!舐めたい!飲みたい!しかし今は我慢!!』
133:
『そしてジョーさんの動きが止まったここからが本番!!』
 
ぽいっ…ぽぽいっ…!
 
「ぱくっ……もにゅ…もにゅ…ごくん」
 
『僕があらかじめ用意しておいた生肉やら人間から盗んだ携帯食料やら回復薬やら…』
『 と に か く 食 え そ う な 物 をジョーさんの口に放り入れまくる!』
 
ぽいっ!ぽぽぽぽぽいっ!ぽいっ!
 
「もにゅ……もにゅ……もにゅ……ごくん」
 
『ここをチンタラやると食べ物を消化されてスタミナを回復されてしまう!だから!』
『ジョーさんの消化度よりもく!的確にジョーさんの口に食べ物を入れ!』
『ジョーさんの胃袋をいっぱいにする!!』
 
「もにゅ…もにゅ…ごくん…もにゅ…もにゅ…もにゅ…ごくん」
 
『いっくぜぇッ!これが僕の愛の力だっ!!!』
 
ぽいっ…ぽいっ……ぽいっ……
 
〜〜〜〜〜〜〜
141:
はっ…!!
目が覚めた瞬間、私は飛び起きた。
東から太陽が出掛かってる。早朝特有の匂いがする。
翌日だろうか…いやそれよりも…!
私は辺りを見回した。
 
オオナズチく…!
 
『お目覚めですか?お姫様』
 
!!!!
私のすぐ隣に…
 
『ほら言ったじゃないですか。僕に任せろって』
 
オオナズチくんっ!!!!
私は無心で彼に抱きついた。
 
『えっ!?ちょっ…!!』
 
オオナズチくん!オオナズチくん!!
私は彼を強く抱きしめた!
強く!強く!!
 
『ちょっ…待っ…苦しっ……ジョ…さ…死ぬっ…!』ミシッ ミシッ
 
熱い涙が溢れた。初めてだったから。
私が眠りから覚めたあとに……
 
さっきまで話してた人が隣にいるなんて!!
152:
『ちょっ待っ…骨がっ…ジョ…さん…お願…っ!』ミシイッ!!!
私のお腹が満たされても!!
さっきまで話してた人が隣にいるなんて!!
 
オオナズチくん!!
ありがとう!!
本当にありがとう!!
 
ギュウウウウウウウウウウウウウッ!!!!
私はより一層、さらにもっと強く、彼を抱きしめた。
 
『ギャァアアアアアアァアアアアァァァァァァァァアアッ……がっ……かはっ…!!』ミシミシミシミシミシミシイッ!!!!
この日から。
私はオオナズチくんと一緒に暮らすことになった。
164:
幸せだった。
夢のような日々だった。
いつもオオナズチくんと一緒にいた。
昼も。夜も。
バカップルってやつかな。うふふ。
 
森を探検したり、丘でのんびりしたり、川で遊んだり、お昼寝したり。
私のお腹が鳴りそうになると、彼は準備体操をした。
 
『おっし!準備オッケー!』
 
気をつけてね!
オオナズチくん!
 
意識が飛ぶ前に毎回私はそう言った。
本当に、彼の安全を願って。
私が目を覚ました後も、どうか彼が隣にいますようにと願って。
 
そして目が覚めると、彼は絶対に隣にいてくれた。
目が覚める度に、私は抱きついた。
 
ある時、聞いてみた。
私が寝てる間、なにしてるの?って。
そしたら
 
『ジョーさんの可愛い寝顔をずーっと眺めてます』
 
だって!
もう…!ダーリンったら…!!
176:
2人で寝転がって満天の星空を眺めていたある日の夜。
 
『ねぇジョーさん。この世で一番良いものって、なんだと思う?』
 
ふいに、彼が聞いてきた。
一番良いもの…うーん…なんだろう。
 
『僕は希望だと思うな』
 
希望?
 
『うん。希望は良いものだよ。多分何よりも良いものだ。希望を持つと、人生が明るくなる』
『僕は希望したんだ。ジョーさんと一緒に暮らしたいって』
『そして希望を持って努力した。どうすれば一緒に暮らせるか考えた』
『希望を持ち続けたから、今こうしてジョーさんと幸せな日々を送れているんだよ』
 
希望…希望か。良いね。確かに。
 
『ジョーさんは、なにか望んでることある?』
 
彼はそう聞いてきた。私は考えてみたけど…。
 
これ以上、なにを望めっていうの?
強いて言えば、オオナズチくんがずっと健康でいてくれますように。かな。
 
『はは。ありがとう。ジョーさん、愛してる』
 
うふ。私も。ああ。
こんな幸せな日々が…。
ずっと続きますように。
180:
【ココット村】
 
村人「おいおい、森丘に恐暴竜と霞龍がもう長いこと住みついてんぜ」
 
村人「並のハンターじゃ手がつけられんそうだ」
 
村人「まぁでも、今朝…あの3人と村長が討伐に向かったからな」
 
村人「だな…しかし村長もすげーよなぁ…片腕で狩りに行くか?普通…」
 
村人「しかもめちゃくちゃ燃えてたしな…村長…」
 
村人「まぁいずれにせよ、恐暴竜と霞龍が好き勝手出来るのも今日までだな」
187:
【森の中】
 
最強ガンナー「しかし恐暴竜と霞龍を同時に相手なんて……めちゃくちゃな任務ね」
 
伝説ハンマー「がははははは、ちびっちまいそうだぜ」
 
達人ランス「しかしその2種とは……通常ならば有り得ない組み合わせですね」
 
村長「おいてめーらそろそろおしゃべりやめやがれ」
 
村長「気ィ引き締めてかかれよ」
 
3人「イエッサ」
 
村長「くくく」(感謝するぜ…恐暴竜よ…こんな老いぼれの血を、ここまで熱く滾らせてくれたんだからよ…!)
191:
数分後 【森の中】
 
最強ガンナー「!」(驚いたわ…!本当に恐暴竜と霞龍が一緒にいる…!)
 
伝説ハンマー「!」(しかもお互いもたれかかって寝てる……だとぉ?)
 
達人ランス「…」(なんという微笑ましい光景でしょうか…攻撃するのを躊躇ってしまいそうだ)
 
村長「……」(悪いな……恐暴竜…)
 
村長「よし、ガン、霞龍の頭に手甲榴弾を撃ち込め」
 
最強ガンナー「了解」 すちゃ…
 
最強ガンナー「……」かちゃ…かちゃ…がちゃん!
 
 す っ 
 
最強ガンナー「…」(狙いは霞龍の側頭部。命中すれば接触してる恐暴竜もダメージを負う)
 
最強ガンナー「…」(私たち人間も…生き残りたいのよ…ごめんね)
 
 
 ぴ し ゅ ん っ !
 
〜〜〜〜〜
199:
オオナズチくんと身を寄せ合って小鳥のさえずりを聞いていたら、いつのまにか寝ちゃっていたみたい。
私がふと目を覚ました直後、 ひゅんっ って、何かが風を切る音が聞こえた。
 
『いてっ』
 
オオナズチくんがそう言いながら、目を覚ました。
左耳の辺りに、何かが生えてた。
いや…何かが突き刺さってた。
 
オオナズ−ーーーーー
 
  ぼ ん っ !!!!!
 
突如、オオナズチくんの左耳の辺りに刺さったそれが爆発した。
私の右側の耳の中で激痛がした。
鼓膜が破れたのかも。
いやそんなことより。
 
オオナズチくんが。
 
 
ぐらりと傾いて。
 
 
地面に崩れ落ちた。
210:
オオナズチ……くん……?
 
彼は地面に倒れたまま答えない。
左耳の辺りの肉が吹き飛んで血が噴出していた。
彼は目を開けたままピクピクしていた。
 
オオナズチくん、起きて。
 
彼は痙攣したまま動かない。
 
私は後ろを見た。
 
4人の人間が……いや違う。
 
3人の人間と…。
 
 
 
 
 
あの時の竜人族がいた。
221:
私は何が起きたのかすぐに理解した。
 
オオナズチくん。ちょっと待ってて。
ごめんね、すぐに終わらせてくるから。
 
私は立ち上がった。
右目の傷がうずいた。
体中の古傷がうずいた。
 
体が一気に熱くなった。
 
あいつらが……せっかくつかんだ私の幸せを……
 
オオナズチくんを……
 
ぶちっぶちっと…頭の中で何かが切れるのをはっきりと感じた。
 
憎悪。
殺意。
私の中で、ドス黒い何かが急激に成長して膨らむのが分かる。
いま、生まれて初めて、心の底から憎しみを覚えた。
 
私の視界が、赤く染まった。
 
 
 
  殺してやる。
223:
やれえええええええええええ!!!!!!殺せええええええええええ!!!!!!
228:
イビルジョー「グオオアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」
 
びり…びり…!!
 
最強ガンナー「…!」(なんて咆哮!!)
 
伝説ハンマー「くっ……おいおいなんだありゃ…」
 
達人ランス「赤黒いオーラが全身から迸ってる……あんなの初めて見ました」
 
村長「……それがおめぇの真の姿かよ……恐暴竜よ」
 
村長「来るぞてめぇら!腹ァくくれよ!」
 
イビルジョー「ガァァァァアアアアッ!!!」龍ブレス!!!
 
最強ガンナー「くっ」ころりん
 
伝説ハンマー「ちっ」ころりん
 
達人ランス「ふっ」ころりん
 
イビルジョー「ゴァアアアアアアッ!!!」
 
ボキボキ……どしーん!
 
伝説ハンマー「なっ……尻尾の一振りで樹を3本もなぎ倒しやがった…!?」
231:
怒り喰らうモードきたこれ
234:
最強ガンナー「ごめんね…!私たちにも…!守るべきものがあるのよ!」麻痺弾!麻痺弾!麻痺弾!
 
イビルジョー「…ッガッ!…ガッ!」びりっ…びりっ…
 
伝説ハンマー「ワリイな…これが俺たちの仕事なんだ」フルスイング!
 
イビルジョー「ガァッ!」ふらっ…ふらっ…
 
達人ランス「勇ましいあなたと戦えたことを誇りに思います」突進!
 
イビルジョー「グッ……ガハッ!」ぶしゅっ!ぶしゅぅぅぅぅぅぅ!!!
 
村長「……」(ランスの槍が心臓を貫いたか)
 
村長「苦しいか…?いま楽にしてやるからな……!ふんっ!」
 
 ザ ク ッ 
 
3人「なっ…!!」(なに…!?こ、こんなことが……有り得るのか!?)
 
オオナズチ「グ……グオ…!!」
 
村長「…!」(霞龍が恐暴竜をかばいやがった…!!)
245:
〜〜〜〜〜〜
 
ああ、私は死ぬんだな。
もう、立てないや。
ごめんね、オオナズチくん。
 
『ジョーさん!ジョーさん!今助けるからね!』
 
「オオナ……ズチ……くん……逃げ…がはっ!」
 
『しゃべらないで!ほら、人間の秘薬!さっき盗んだんだ!!』
 
「無駄……だよ……ごふっ…心…臓を…貫かれた…んだよ…?」
 
『うるさいうるさい僕が大丈夫って言ったら大丈夫なんだよ!もうしゃべらないで!』
 
「オオ…ナ…ズチ…くんも…酷い…怪我…がはっ!…自分に……使っ……て…げほっ」
 
『しゃべるなっ!僕の怪我なんてどうでもいいんだよ!』
251:
〜〜〜〜〜〜
最強ガンナー「!?…持ってきた秘薬がない…!?」
 
伝説ハンマー「俺もだ…!!あの野郎!!」
 
達人ランス「僕もです…いつのまに…!?」
 
村長「……」
 
最強ガンナー「でもみんな、今がチャンスよ!」
 
伝説ハンマー「おう!一気に畳み掛けるぜ!」
 
達人ランス「まずは瀕死の恐暴」
 
村長「やめろッッッ!!!」
 
3人「!?」
256:
村長「もうこれ以上攻撃はするなッ!」
 
最強ガンナー「し、しかし」
 
伝説ハンマー「今がチャンスですぜ!?」
 
達人ランス「それに剥ぎ取りも」
 
村長「てめぇらあの2頭の顔が見えねーのか!?」
 
最強ガンナー「…顔…!?」(な…!なに…あの霞龍…)
 
伝説ハンマー「モ…モンスターが…!!」
 
達人ランス「あんな表情をするのですか!?」
 
村長「もう勝負はついてる!恐暴竜は見ての通りだ!霞龍も長くは持たねぇ!」
 
3人「……ッ!!」
 
村長「せめて……泣かせてやれ…………帰るぞ」
 
〜〜〜〜〜
268:
『ほらっ!ジョーさん安心して…!人間たちが去っていくよ!』
 
「がはっ!…ほ…本…当…だ……すご…けほっ…やっ……たね……オオ…ナ…ごぶっ!」
 
ああ。
本当だ。凄いな。やったね、オオナズチくん。
 
オオナズチくん。本当にありがとう。
こんな私と…
好きな人も平気で食べちゃうこんな私と一緒にいてくれて。
 
「オオナ…ズチ…く…あり……がと……げほっ!こ、…んな…私と…一緒に…い…ごふっ!」
 
『なに言ってんだよ…!これからもずっと一緒だよ!人間の秘薬は凄いんだ!こんな怪我すぐ治るよ!』
 
駄目だよオオナズチくん。
もう私は助からない。
自分に使って。
お願いだから。
 
「じ……ぶ……ん…に…つかっ…がはっ!…おね…が……けほっ!」
279:
「生……き……て…オオ…ナ……かはっ…チ…」
 
「あり…が…と…う…げほっ…オオ…ナズ…チ…く…ぐふっ」
 
オオナズチくんも酷い怪我だよ。
早くその秘薬を自分に使って。
生きてオオナズチくん。ありがとうオオナズチくん。
 
『ジョーさんがいなきゃ意味がないんだよ!君は僕に生きる喜びを与えてくれた!頼む!生きてくれ!』
 
「…………」
 
ふふ。オオナズチくんの涙が頬に当たる。暖かいな。
ごめんね。
もう、声出せないや。
それに君の方だよ、私に生きる喜びを与えてくれたのは。
ありがとう。オオナズチくん。本当にありがとう。凄く幸せだったよ。
 
『−−−−−ッ!−−−−−−−ッ!』
 
あ、耳も聞こえなくなってきちゃった。
でも、まだ目は見えるよ。
オオナズチくんの顔も。
その後ろに広がる綺麗な青空も。
284:
うふ。こんな青空を見ながらオオナズチくんとお昼寝したっけ。
楽しかったな。
本当にありがとう。オオナズチくん。
孤独な私に、温もりを教えてくれて。
私に幸せな時間をくれて。
いくら私がお腹を空かせても、例の作戦を頑張ってくれて。
私を好きだと言ってくれて、ありがとう。
私も大好きだよ。オオナズチくん。
 
いつかの夜、オオナズチくんは言ったね。
この世で何よりも良いものは希望だって。
あの時はしっかり答えられなかったけど…今……明確な希望を持てたよ。
ふふ、死ぬ間際に希望を持つってのも、おかしな話だけど。
このまま私が死んで……
 
もし……もしも、何かに生まれ変わることが出来たら…
 
どうか……どうか…… 
 
どうかまた、オオナズチくんと…巡り…会えますように。
どうか…また、澄み渡る……青空の下……2人で暮らせ…ます…ように。
ど…うか…今度…は…好きな…人を…傷…つける…ことのない……優しい……人……に……生……ま…れ……… 
 
・・・・・・・・・・・・・・
286:
スレタイからは想像もできない話
迂闊に狩れねえよ・・・
295:
エピローグ
どこかの次元の、どこかの世界で
 
「……もう、遅いなぁ」
 
『お〜いごめんごめん待った?』
 
「もう!遅いよ!オオナズチくん!」
 
『いや〜申し訳ない来る途中……ん?オオナズチ?なにそれ?』
 
「へ?オオナズチ?なにそれ私そんなこと言った?」
 
『え?…いや、いいんだ何でもない』(なんだろう、聞き間違えたのかな…)
 
「それより早くご飯食べに行こうよもうお腹ペコペコだよ」
 
『ははっ!分かった分かったジョーさんはよく食べるからなぁ〜』
 
「きみが遅れてき……ん?ジョーさん?なにそれ?」
 
『へ?ジョーさん?なにそれ僕そんなこと言った?』
 
「え?…いややっぱ何でもない」(なんだろう、聞き間違えたのかな…)
 
『まぁとりあえず、行こっか!それにしても今日は良い天気だね』
 
「そうだね。凄く綺麗な空だね」
 
  完 (終盤の元ネタは刑務所のリタ、タイトルは濃いゾラを参考にしました(・∀・))
314:
>>295

良いもの読ませてもらった
ありがとう
305:
ガバチョッ(泣)
309:
おつ
ジョーさんに喰われてくる
316:

スレタイ詐欺やでぇ
318:
泣いた・・・乙
32

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