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令嬢「私の執事は格闘家」


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1:
〜 トレーニングルーム 〜
執事「ふっ、はっ、せやっ!」ブオンッ
執事「はっ、とうっ、でやあっ!」ババッ
執事「ハァ……ハァ……」
執事(今日はこのぐらいにしておくか)
ギィィ……
令嬢「執事、お疲れ」
執事「お嬢様、お疲れ様です!」バッ
令嬢「かしこまらなくていいわよ。すぐにシャワー浴びてらっしゃい」
令嬢「汗臭くてかなわないから」
執事「は、はいっ!」ダダダッ
令嬢(フフフ、飛び散った執事の汗をなめるチャンスだわ!)
元スレ
ニュース報(VIP)@2
令嬢「私の執事は格闘家」
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3:
令嬢「ここね……」クンクン
令嬢「…………」ペロッ…
令嬢「…………」ペロペロ…
令嬢(しょっぱくて、おいし〜い!)
令嬢(執事ったら、こんなに塩分を放出して大丈夫かしら?)
令嬢(ああもう、ご飯が欲しくなってきちゃった!)
ガチャッ……
執事「お嬢様、シャワーから戻りました!」
令嬢「!」ハッ
4:
執事「お嬢様……?」
執事「床に這いつくばって、いったいどうされたのですか?」
令嬢「え、あ、あの……こ、これは──」
令嬢「床掃除! そう、床掃除よ!」
令嬢「執事がシャワー浴びてる間に、少しでも床をキレイにしとこうと思ってね……」
執事「そうだったのですか! ありがとうございます、お嬢様……!」
令嬢「いいのよ、これくらい」
5:
執事「しかし……床をキレイにするのならば、あっちにモップがありますが」
令嬢「あら!」
令嬢「全然気づかなかったわぁ〜、もっと早くいってよね!」サッ
令嬢「ル〜ルル〜」キュッキュッ
令嬢「ルル〜ル〜」キュッキュッ
執事「…………」
執事「──って、掃除なら私がやりますよ!」
7:
令嬢「いえ、私がやるわ!」シュッ
ドズッ!
執事「ぐほっ……!」
執事(ミゾオチにモップの柄をクリーンヒットさせるとは……)
執事「さすがです、お嬢様……」ガクッ
令嬢「…………」
令嬢(しまった、たまに私も執事に護身術を習ってるからつい……)
令嬢(あ〜ん、執事の汗をなめたかっただけなのに、どうしてこうなっちゃうの!?)
9:
またある時──
〜 トレーニングルーム 〜
執事「シッ、シッ、シィッ!」
バシッ! バシッ! バシィッ!
ギシギシ……
執事「ハァ……ハァ……」
令嬢「すっごぉ〜い、サンドバッグがあんなに揺れてる!」パチパチ…
執事「ありがとうございます」ニコッ
令嬢(歯が光った!)
令嬢(執事の前歯は一本差し歯だけど、それがまたス、テ、キ)
10:
執事「では次のトレーニングの準備をしてきますので」スタスタ…
令嬢「ええ」
令嬢「…………」
ギシ……
令嬢(サンドバッグ……)
令嬢(執事が蹴ったサンドバッグ……)
令嬢(執事の足が触れたサンドバッグ!)
令嬢(抱きつくしかないじゃない!)ピョンッ
11:
令嬢「サンドバッグゥ〜!」ギュッ…
令嬢(サンドバッグを介して、私の全身と執事の体が触れ合ってる!)
令嬢(いいのかしら、こんなことして!)
令嬢(ああもう、サンドバッグ最高!)
令嬢(サンドバッグ最高! サンドバッグ最高! サンドバッグ最高!)ギュウ…
ガチャッ……
執事「お嬢様……」
令嬢「!」ハッ
12:
執事「サンドバッグに抱きつかれて……いったいどうされたのですか?」
令嬢「え、と、これは……」
令嬢「そう、抱き枕! 抱き枕よ!」
令嬢「前々から私、サンドバッグを抱き枕にしたいと思ってたのよ!」
執事「そうだったんですか……全く気づかなかったです」
令嬢「というわけで、あとでこれ、私の寝室に運んでおいてちょうだい!」
令嬢「よろしくね!」
執事「かしこまりました!」
15:
〜 令嬢の寝室 〜
令嬢(サンドバッグを抱き枕にしたのはいいけれど……)
令嬢(重いし硬い……)ゴロ…
令嬢(もう執事の匂いも消えちゃったし……)ゴロ…
令嬢(こんなものがベッドの上にあったってジャマよ、ジャマ!)
令嬢「えいっ!」ゲシッ
令嬢「いだだ……」
令嬢(サンドバッグって結構硬いのね、でかい風船みたいなもんだと思ってたわ……)
17:
またある日のこと──
〜 トレーニングルーム 〜
令嬢「そんなに瓦を積み上げてどうするの?」
執事「自分のパンチ力がどのぐらいのレベルにあるか試すために、これを割るんです」
令嬢「へぇ〜」
執事「ではいきますよ……」
執事「破片が飛び散るかもしれませんので、離れてて下さい」
令嬢「うん」ススッ…
執事「でやぁっ!」
バキィッ!
18:
執事(よかった……全部割れた)
令嬢「わぁ〜、すっごぉ〜い!」パチパチ…
執事「ありがとうございます」
執事「しかし、これはあくまで動いていない物に対してのパンチ力ですので」
執事「実際の試合ではなかなかこうはいかないのですがね」
令嬢「ふうん」
執事「おっと、瓦を片付けなくては」
執事「ホウキとチリトリを持ってきます」スタスタ…
令嬢「…………」
20:
令嬢(粉々の瓦……)
令嬢(執事の拳が割った瓦……)ゴクッ…
令嬢(寝転がって、私の体にまぶしてみよう!)
ゴロゴロ……
令嬢(ああ……いい気持ちだわ……)
令嬢(執事ったら瓦ばかり割ってないで、私の股も割ってくれないかしら)
令嬢(な〜んちゃっ──)
ガチャッ……
執事「!」ハッ
令嬢「!」ギクッ
22:
執事「お嬢様……瓦を体にまぶして、どうされたのですか?」
令嬢「……し、知らないの!?」
令嬢「これは瓦浴ってやつよ!」
執事「瓦浴!?」
令嬢「岩盤浴や森林浴みたいなもので、とっても体にいいの!」
令嬢「こうしてると背も伸びるし、胸も大きくなるし、病気も治るのよ!」
執事(し、知らなかった……)
令嬢「あとでこの瓦の破片を、私のベッドにまぶしておきなさい! いいわね!」
執事「は、はいっ!」
24:
〜 令嬢の寝室 〜
令嬢「寝られない……」
令嬢(なにしろ私のベッドには、でかいサンドバッグが横たわって)
令嬢(シーツには瓦の破片がまき散らされている……)
令嬢(寝返りなんてうとうものなら──)ゴロッ
チクッ!
令嬢「いったぁ! 破片が脇腹に当たった!」
令嬢「どうしてこうなっちゃうのよ〜〜〜〜〜!」
25:
〜 リビングルーム 〜
父「ずいぶんと眠たそうだが、大丈夫か?」
令嬢「大丈夫よ、パパ……」ムニャ…
母「あなたは大切な一人娘なんですから……体は大事にしないといけませんよ」
令嬢「ママまで……。大丈夫だって……」ムニャ…
執事「お嬢様、ご無理はなさらない方が──」
令嬢「!」シャキーン
令嬢(執事ったら……私が寝不足になってる理由も知らないで……)
令嬢(鈍感なんだから……!)
令嬢(体を鍛えすぎて、脳みそまで筋肉になってるんじゃないかしら!)
26:
父「ところで執事君、今度試合があるそうだね」
執事「はい」
父「今度の試合で勝てば、君の夢である道場設立にグッと近づく」
父「頑張ってくれたまえよ」
母「でもムチャはしないで下さいね。焦らず一歩ずつ、ですよ」
執事「ありがとうございます!」
令嬢(あ〜……眠い)ファ…
27:
〜 トレーニングルーム 〜
執事「はっ、でや、せやっ!」シュッシュシュッ
令嬢「いつにもまして、気合入ってるわね〜、執事」
令嬢「ねえ、なにか私に手伝えること、ない?」
執事「…………」
執事「あ、そうだ!」
執事「お嬢様、私の腕につかまってくれませんか?」
令嬢「え、つかまる!?」
令嬢(ま、まさか……抱き締めてくれるというの!? うひょ〜!)
29:
執事「ふっ、ふっ」グッ…グッ…
令嬢「…………」
令嬢「なにこれ」
執事「お嬢様が私の腕にしがみつき、そのお嬢様を私が上下させることで」グッ…グッ…
執事「上腕筋を鍛えているのです」グッ…グッ…
令嬢「……ふうん」
執事「ありがとうございました!」ハァハァ…
執事「では続いて、私の下半身を押さえていただけるでしょうか?」
令嬢(下半身ですって!?)パァァ…
令嬢「やるわ、やる!」
32:
執事「くっ、くっ」グッ…グッ…
令嬢「…………」
令嬢「なにこれ」
執事「腹筋運動です」グッ…グッ…
執事「これによって、私の腹部の耐久力がさらに高められるのです」グッ…グッ…
令嬢「……あっそ」
執事「ありがとうございました!」ハァハァ…
執事「では続いて、お嬢様を肩車してもよろしいでしょうか?」
令嬢(えっ、どんなプレイ!?)
34:
執事「ふんっ、ふんっ……」グッ…グッ…
令嬢「…………」
令嬢「なにこれ」
執事「スクワットです」グッ…グッ…
執事「お嬢様を肩車したままスクワットをすることで」グッ…グッ…
執事「私の下半身はさらに強靭なものとなるのです」グッ…グッ…
令嬢「……なるほど」
35:
執事「ありがとうございました!」ハァハァ…
令嬢「いいわよ、このぐらい」
執事「では続きまして──」
令嬢(どうせトレーニングでしょ?)
執事「お嬢様、私の上に乗っていただけますでしょうか」
令嬢「!?」
令嬢(騎乗位!? 騎乗位ね!?)
令嬢(パパが隠し持ってた本で勉強したから、やれるわ! やってみせる!)
37:
執事「はっ、はっ……」グッ…グッ…
令嬢「…………」
令嬢「なにこれ」
執事「腕立て伏せです」グッ…グッ…
執事「お嬢様を背中に乗せたまま腕立て伏せをすることで」グッ…グッ…
執事「私の腕力がさらに向上することは間違いありません」グッ…グッ…
令嬢「それはよかったわね……」
執事「ふうっ」
執事「ありがとうございました!」ハァハァ…
令嬢「どういたしまして……」
38:
〜 令嬢の寝室 〜
令嬢(ったく、結局ホントにトレーニングに付き合わされただけだったわ)
令嬢(執事ったら……脳筋なんだから!)ゴロン…
チクッ!
令嬢「いったぁ! 瓦が脇腹に!」
令嬢「いたいじゃないのよ!」ゲシッ
令嬢「あだっ! サンドバッグ蹴っちゃった!」
令嬢「きえ〜っ! 執事のせいで眠れやしない!」
40:
やがて──
〜 リビングルーム 〜
父「いよいよ一週間後だね」
執事「はい!」
令嬢(ああ、そういえば試合があるとかいってたっけ……)
母「でも、もし勝ったらこの家も寂しくなりますねぇ……」
令嬢「えっ、どういうこと?」
父「今度の試合はかなり大きな試合だからね」
父「もし勝てば、彼の夢だった道場設立のための金が貯まるんだよ」
執事「長らくこの家でトレーニングさせていただいて、申し訳ありませんでした」
父「いや、いいんだよ。こっちこそ、娘が世話になって……」
令嬢(そ、そんなぁ……!)
41:
〜 廊下 〜
執事(最近、お嬢様がトレーニングルームに来ないな……)
執事(いったいどうしたのだろう……まさか──)
令嬢「執事!」
執事「あ、お嬢様!」
令嬢「執事なんか、大っ嫌い! 試合なんか負けちゃえ!」
執事「お嬢様……」
執事(や、やっぱり……お嬢様は──)
42:
〜 令嬢の寝室 〜
令嬢(ふんだ!)
令嬢(まだ私の気持ちを伝えてもいないのに、気づかずに出てっちゃうなんて……)
令嬢(執事なんか知らない! 大嫌い!)
令嬢(あ〜もう、こんな瓦なんかどうでもいいわ、ジャマジャマ!)パッパッ
令嬢(このサンドバッグもジャマ! ベッドの下に転がしちゃえ!)ゴロゴロ…
ドズ……ン……
令嬢(やっと快眠できるわ、ふん!)
令嬢「すぅ……すぅ……」
令嬢(執事のバカ……)グスン…
44:
そして試合当日──
父「本当に来ないのか?」
母「せっかく特等席で観戦できるんですから……」
令嬢「行かないったら行かない! 私はお留守番してるわ!」
父「まったく……じゃあ試合のチケットはここに置いておくから」
父「もし来たくなったら、自分で来なさい」
令嬢「行かないってば……」フンッ
45:
〜 試合会場 〜
セコンド「よしっ、準備いいか!?」
執事「ああ!」
セコンド「相手は力士上がりのレスラーだ!」
セコンド「パワーじゃ不利だから、スピードでかき回せ!」
セコンド「いつものように、技術と計算を駆使して戦えば、勝てる相手だ!」
執事「了解!」
執事(お嬢様は来てくれているのだろうか……)
47:
〜 観客席 〜
母「あなた、いよいよ執事さんの試合ですね」
父「ああ、勝って欲しいが……相手も強敵だというし、こればかりはなんともいえんな」
母「そうですねえ……」
母「でも私としては、執事さんが大きな怪我もなく」
母「リングを降りてくれることを祈るのみです」
父「…………」
48:
〜 リング 〜
実況『さあ、いよいよメーンイベント!』
実況『執事VSレスラー!』
実況『連勝街道をひた走る執事が、勢いのままに勝利するのか!?』
実況『はたまたレスラーがその夢を打ち砕くのか!?』
実況『格闘技ファン注目の一戦が、ついに始まろうとしています!』
ワァー……! ワァー……!
49:
カァーンッ!
実況『始まったぁっ!』
執事「…………」ダッ
レスラー「!」
スパパパパァンッ!
レスラー「うぐっ……!」
執事「せいやっ!」シュッ
ドゴォッ!
実況『ジャブからの素早いコンビネーションから、強烈なミドルキックがヒットォ!』
実況『執事、いきなりの猛ラッシュだ!』
50:
〜 観客席 〜
父「うむ……執事君が押しておるな」
母「いいぞォッ!」
父「!」ビクッ
母「やれっ、やれっ、叩き潰せェッ!」
母「そこそこ、左フック! ──そうじゃないッ!」
母「よし、右……左、ああ惜しい!」
母「目だ、目を狙え! 視力を奪ってしまえばどうとでも料理できるッ!」
父「目を狙うのは反則だよ、母さん」
父(こんな母さんを見るのは、昔一度だけ浮気した時以来だな……)
父(あの時は本当に死ぬかと思った……)
52:
バチィッ!
レスラー「……へっ、パンチにキレがなくなってきたな」ニヤッ
執事「!」ハァハァ…
レスラー「オレの戦い方を教えてやろう」
レスラー「オレはな」
レスラー「相手が攻め疲れたところを、一気に叩き潰すのが得意なんだ!」
ドゴォンッ!
執事「ぐはっ……!」
実況『強烈なラリアットが炸裂ゥ〜〜〜〜〜! 一撃で形勢逆転かァ!?』
53:
レスラー「だりゃあっ!」
バチィンッ!
実況『相撲仕込みの張り手が右耳の辺りにヒット! 音が私にまで届きました!』
バチィンッ!
実況『左にもヒットォ! 命に関わりかねない往復ビンタだァ!』
執事「ぐっ……!」ヨロッ…
レスラー「トドメだっ!」バッ
ドゴォッ!
実況『決まったァ〜! レスラーのドロップキックで、執事ダウンッ!』
ワァー……! ワァー……!
54:
〜 観客席 〜
父「むむ、相手もやりおる……執事君が押されている!」
母「…………」ピクピクッ
母「あんなウドの大木に手こずりおって……」
母「こうなったら乱入して、私がカタをつけてやる!」ガタッ
父「わぁっ! やめなさい!」
母「────!」ピタッ
父「どうした?」
母「あそこに……リングのすぐ近くに令嬢がいますね。どうしたんでしょう?」
父「ええっ!?」
セコンド「なんだ君は!? 今、試合中──」
令嬢「ちょっとどいて」ギロッ
セコンド「は、はいっ!」ササッ
55:
〜 リング 〜
執事「お嬢様……!?」
令嬢「あ〜……重かった」ズシンッ
執事(サンドバッグと私が割った瓦……! わざわざ持ってきてくれたのか……!)
令嬢「重かったわ……」
令嬢「でも、あなたがこれまで積み重ねてきたトレーニングの重みは」
令嬢「こんなものじゃないっ!」
令嬢「勝って! 勝つのよ! ──勝てえっ!」
執事「…………」
執事(お嬢様が怒っておられる……お嬢様がメチャクチャ怒っておられる……)
執事(ということは、やはり──)
執事「うおおおおおおおおおっ!!!」
56:
執事「うわあああああっ!!!」
ブオンッ! ブウンッ!
レスラー「!?」
実況『どうしたことでしょう!?』
実況『これまで計算高く、シャープな戦い方を持ち味としていた執事が』
実況『急にメチャクチャに拳を振り回し始めたァ!』
実況『例えるならまるで、悪事がバレてしまって』
実況『自暴自棄になったような犯人のような戦いぶり!』
ガッ! ガゴッ! ゴッ!
レスラー「ぐあっ……!」
実況『──が、しかし! 打撃は的確にレスラーをとらえているッ!』
実況『これはどういうマジックだ!?』
58:
〜 観客席 〜
母「フフフ、当然だ」
父「執事君のパワーアップの原因が分かるのか、母さん!?」
母「執事とはバトラー……すなわち、“Battler(戦う者)”ッ!!!」
母「己の闘争本能に従ってこそ、その真価を発揮する……!」
母「両者スタミナや気持ちに余裕がある試合序盤ならともかく」
母「今のような試合終盤においてものをいうのは技術や計算よりも、本能!」
母「本能が生み出すガムシャラな戦いぶりこそが、勝利を生むのだ!」
母「どうやら娘が、執事の内に眠るガムシャラさを引き出してしまったようだな」
父「な……なるほどォ〜」
59:
母なにもんだよ…
61:
執事「うわあああんっ!」ガッ
執事「うおおおおんっ!」バキッ
レスラー(くそっ、駄々っ子みたいなパンチなのに、効きやがる! なんでだ!?)
レスラー「このぉっ……なめんなァ!」
ガキィッ!
執事「がふっ……」
実況『レスラーのエルボーが執事の顔面にめり込んだァ!』
レスラー「へっ、これで決まり──」
63:
令嬢「負けないで、執事!」
執事「お嬢様……申し訳ございませんでしたァ!!!」ブオンッ
ドゴォッ!
レスラー「ぐはっ……」ガクンッ
ドザァッ……
カンカンカンカンカン!
実況『決まったァ〜〜〜〜〜!』
実況『執事の必殺アッパーで、レスラーがノックダウンだァ!』
令嬢「やったぁ!」
父「おおっ!」
母「ま、及第点といったところか……」
執事 ○ ─ × レスラー
(15分27秒:アッパーカット)
64:
試合後──
令嬢(直接いうのは恥ずかしいから、紙に書いて渡そうっと)
令嬢「おめでとう、執事!」
令嬢「あと……はいこれ!」サッ
執事(紙……?)カサ…
『大切な話があるから、あとで試合会場の裏口まで来て』
執事「…………」ゴクッ…
執事(大切な話、というのはあのことに決まっている!)
執事(や、やはり……)
65:
執事(やはりバレてしまっていた!)
執事(トレーニングにかこつけて、お嬢様の体をさわりまくったことが……ッ!)

持ち上げ中──
執事(お嬢様に腕をさわられてるゥ〜〜〜〜〜!)ハァハァ…
腹筋中──
執事(お嬢様が私の足を押さえている! た、たまらん〜〜〜〜〜!)ハァハァ…
スクワット中──
執事(お嬢様の太ももが私の頭に! おお〜〜〜〜〜! おお〜〜〜〜〜!)ハァハァ…
腕立て伏せ中──
執事(お嬢様が私の背中に乗っている! 私は馬だ! ありがとうございます!)ハァハァ…

執事(最近お嬢様が私を避けていたのも、試合場でお嬢様がなにやら怒鳴ってたのも)
執事(そして大切な話というのも、全てこのことによるものだろう!)
執事(お嬢様の話が終わったら……自首しよう、いさぎよく……)
66:
〜 会場裏口 〜
執事「お嬢様……」ザッ
令嬢「来てくれたのね、執事……」
執事「この紙に書いてある、大切な話というのは……?」
令嬢「うん……あのね……」モジモジ…
令嬢「わ、私──執事のことが好きなのっ! ずっと一緒にいたいの!」
執事「…………」
執事「え、今なんとおっしゃいました?」
67:
令嬢「…………」ピクッ
令嬢「あなたはどこまで鈍感なのよ、バカァ!」
ベチィンッ!
執事「へぶっ!」
執事「あ、いや、すみません!」
執事「そういえば私、レスラー選手の張り手で、両耳の鼓膜が破れてしまいまして」
執事「さっきからなにも聞こえないんですよ、ハッハッハ」
令嬢「なぁんだ、そうだったの」
令嬢「じゃあ骨伝導を使って、告白するわね」
68:
令嬢「私、執事のことが好きなのっ! ずっと一緒にいたいの!」
執事「ええ〜〜〜〜〜っ!?」
執事「いいんですか!? 私のようなヘンタイでいいんですか!?」
令嬢「なにいってるのよ、私こそヘンタイよ!」
執事「しかし、私はトレーニングにかこつけてお嬢様の体をさわりました!」
令嬢「私だって執事の汗をなめて、執事のさわったトレーニング器具と寝たわ!」
執事「お嬢様っ!」
令嬢「執事っ!」
令嬢「今すぐ私を抱きしめて! ──全力で!」
執事「分かりました!」
71:
執事「お嬢様、愛してますっ!」ギュウウウ…
令嬢「あ、いだい……ちょっと待っ──」メキメキ…
執事「愛してますっ!」ギュウウウ…
令嬢「い、いだい……骨、折れ……ちゃうっ!」シュッ
ゴッ!
執事「はうっ!」
ドササッ……
父「どうやら妙なカップルが誕生したようだね、母さん」
母「幸せになってくれるといいですねえ、あなた」
令嬢 △ ─ △ 執事
(0分17秒:金的蹴りとベアハッグによりダブルノックアウト)
         <おわり>
72:

面白かったよ
73:
乙!
7

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