伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」back

伊織「言いたい事も言えないこんな世の中じゃ」


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1:
小鳥「…………」カタカタ
小鳥「…………ふぅ」
春香「…………」
春香(後ろからソーっと……)
春香「ことーりさん♪」
小鳥「わっ! ど、どうしたの?」
春香「えへへぇ……はいどうぞ! 疲れたときには甘いもの、でしょ?」
小鳥「クッキー? どこで買ってきたの?」
春香「作ってきたんです!」
小鳥「え? これ春香ちゃんが作ったの!?」
春香「はい!」
小鳥「えー! うそ……えぇー!?」
春香「やだなぁ?、私がお菓子を作るのは初めてじゃないですよ?」
小鳥「だってこれ包装だってしっかりしてるし……ホント、売り物みたいよ」
春香「そうですか?」
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2:
小鳥「でも誰か他の人にあげるんじゃなかったの? 私なんかが貰っていいの?」
春香「みんなの分もありますよ。 それは小鳥さんの分です」
小鳥「そっか……うん、ありがとう」
春香「どうぞ食べてください」
小鳥「その前に……ちょっとコーヒー淹れてくるわね!」
小鳥「春香ちゃんも一緒に食べましょ?」
春香「あっ、私淹れてきますよ!」
小鳥「お茶汲みは事務員の仕事よ。 ちょっと待ってて」
小鳥「はいどうぞ」
春香「ありがとうございます」
小鳥「お砂糖とミルクはお好みで入れてね」
春香「はーい」
小鳥「さて、それじゃ頂いてもいいかしら?」
春香「いいですとも!」
3:
小鳥「……あむ」
春香「…………」ドキドキ
小鳥「うん、とっても美味しいわ!」
春香「よかったぁ?」
小鳥「これはタダで食べちゃいけないってぐらい美味しいわね」モフモフ
春香「そんなことないですよぉ」
小鳥「春香ちゃんはホント、お菓子を作るのが好きなのね」
春香「それは……きっと嬉しいからです」
小鳥「嬉しい?」
春香「私がお菓子を作るのは、もちろん自分で食べる為っていうのもありますけど……」
春香「やっぱり誰かに食べてもらって、その人に元気になって欲しいから」
小鳥「…………」
春香「でも気付いたら、元気になっているのは私でした」
小鳥「え?」
4:
春香「お世辞かもしれませんけど、みんな私のお菓子を食べたとき……」
春香「『美味しい』って言ってくれて、私に笑顔のお返しをくれます」
春香「そのお返しのおかげで、逆に私の方が元気を貰ってるんです」
小鳥「笑顔のお返し………なんか、良い言葉ね」
春香「そうですね」
小鳥「やっぱり春香ちゃんはすごいなぁ」
春香「……へ?」
小鳥「私は今の今まで、元気を与えるのは一方的なものだと思っていたわ」
小鳥「自分が持っている元気を、相手に分け与えるものだって思ってた」
小鳥「でも春香ちゃんは違う」
春香「…………」
小鳥「う?ん、なんて言ったらいいのかな?」
小鳥「『人に元気を与えることで、自分も元気になれる』って、実はすごいことだと思うの」
春香「すごいこと?」
5:
小鳥「普通は……って言うと変だけど、相手に何かを与えるときって……」
小鳥「心のどこかで見返りを求めていたり、驕るような気持ちになっているものなのよ」
春香「確かにそうかもしれませんね」
小鳥「でも春香ちゃんは、自分まで元気を貰えるって言ったわ」
小鳥「その言葉が自然と出てくるような心を持ってる春香ちゃんは、とっても素敵」
小鳥「もっと言うなら、そんな春香ちゃんこそアイドルに相応しいのよ」
春香「ちょ、ちょっと話が大げさになってませんか?」
小鳥「そんなことないわ。 お菓子を作ることと、アイドルの活動は似ているの」
春香「え? そう……ですか?」
小鳥「春香ちゃんがアイドルを続ける理由ってなにかある?」
春香「それは、少しでもファンの皆さんに元気になって欲し………ぁ」
小鳥「ね? この二つは手段が違うだけで、根本的には同じことなのよ」
春香「そっか」
小鳥「私も春香ちゃんには、いつもたっくさんの元気を貰ってる」
小鳥「それは何も私だけじゃないの」
6:
小鳥「春香ちゃんは本当に優しい子で、いつも周りを気にかけてる」
春香「う、う?ん」
小鳥「みんなの中で一人だけ元気のない子が居たら、自分から話しかけてあげるし……」
小鳥「元気がないにも色々あって、そっとしておいて欲しいときもあるじゃない?」
小鳥「そんな時には、付かず離れずの距離で相手を見守ってあげてる」
春香「……そんな自覚ないですけど」
小鳥「春香ちゃんは、相手の性格とか、その時のテンションとか、周りの空気とか……」
小鳥「それだけじゃなくて、その場に居る他の子たちの性格なんかも見てるの」
春香「…………」
小鳥「その上で自分がどういう距離感でその人と接すればいいか……」
小鳥「自分がどう振舞えばいいかを瞬時に、そして無意識に判断してる」
春香「私そんなにすごい人じゃないですよ?」
小鳥「あら、さっきだってそうじゃない」
小鳥「私が疲れてるのを見て、お菓子をくれたわ」
春香「あれは…………そっか」
7:
小鳥「私達はね、春香ちゃん。 みんなで夢に向かって歩いてるわけじゃない?」
春香「そうですね」
小鳥「だけど、足並みを揃えて……ってわけには、なかなかいかないわ」
小鳥「歩くのが早い子も居れば遅い子も居る。 疲れて立ち止まっちゃうことだってある」
小鳥「そういうときに春香ちゃんがみんなの歩幅を考えて、調整してくれるの」
春香「歩幅の調整?」
小鳥「例えば歩くのが遅い子が一人居て、みんなと離れてしまったとするわ」
春香「はい」
小鳥「春香ちゃんは、その子のそばに駆け寄って手を引いてあげる」
小鳥「もしくは、そっと背中を押してあげるの」
春香「それは……逆の場合でも?」
小鳥「そうね」
春香「で、でもそういうのって……私じゃなくてプロデューサーさんが……」
小鳥「うん、プロデューサーさんもそういう面にはすっごく気を遣ってらっしゃるわ」
小鳥「でもやっぱり難しいっていうか……」
8:
小鳥「あの方はみんなのプロデューサーであって、お友達ではないでしょ?」
小鳥(それ以上の感情を抱いてる子ばかりだと思うけど……)
春香「ま、まぁ……そうですね」
小鳥「対する春香ちゃんは、みんなのお友達でしょ?」
小鳥「んー友達って言葉は的確じゃないか……」
春香「でも、たしかに友達です」
小鳥「プロデューサーさんは立場上、少し高いところからみんなを見ているの」
小鳥「……上から目線って意味じゃないわよ?」
春香「はい」
小鳥「でも春香ちゃんは、みんなと同じ場所に立っているわ」
春香「同じ場所?」
小鳥「そう……その微妙な立ち位置の差が、私達の関係をより良いものにしてるの」
春香「…………」
小鳥「プロデューサーさんは男性だし、年だってみんなとは違う」
小鳥「手の届かないところだったり、触れてはいけないところがあると思うの」
9:
小鳥「そういった隙間を、春香ちゃんが埋めてくれてる」
小鳥「だからプロデューサーさんは春香ちゃんに感謝してるはずよ?」
春香「えー?」
小鳥「なんていうのかな? 嫌味を感じさせないお節介焼きっていうか……」
小鳥「見返りを求めない優しさっていうのが、春香ちゃんの魅了だと私は思うの」
春香「そ、そう……ですか」
小鳥「ゴメンなさいね、なんか……変な話になっちゃって」
春香「いえ……なんとなく理解できましたし、なんとなく……嬉しいです」
小鳥「実はね、私も自分で何を言ってるのか、なんとなくしかわかってなかったの」
小鳥「自分のボキャブラリーの貧困さに逆に感心したわ」
春香「あはは」
小鳥「でも、なんとなぁーく伝わったなら……まいっか! ふふっ」
春香「そうですね、うふふっ」
10:
――――
――
ガチャ
小鳥「あっ……プロデューサーさん、おかえりなさい」
P「お疲れ様です、小鳥さん」
春香「おかえりなさい!」
P「おっ? 春香は今日も元気だなぁ。 俺は激つかヘトヘト丸だよ」
春香「そんなときは……じゃーん! クッキーですよ、クッキー!!」
P「クッキー? どこで買ってきたんだ?」
小鳥「んふっ、私とおんなじこと言ってる」
春香「これは私が作ってきたんですっ」
P「えっ? マジで!? 春香、スゴイじゃないか!!」
春香「えへへ」
P「ちょうど小腹が空いてたんだ。 さっそく頂こう」
11:
P「いただきまーす」
春香「どうぞ!」
P「もっ……もっ……」
P「うん、旨い」
春香「……やった」
P「これだけ旨いと、クッキーモンスターもビックリだよ」
小鳥「セサミストリート? 懐かしいですね」
小鳥「……は、春香ちゃんも知ってるわよね?」
春香「はい知ってますよ」
小鳥「あー良かった! 知らないって言われたらどうしようかと……」
P「まだお若いですよ、小鳥さんは」
小鳥「んなっ……それはお世辞と皮肉、どちらですか?」
P「いえ、他意は無いです」
小鳥「り……りょうほーですかあああ?」
P「NO! NO! NO! NO! NO!」
12:
ガチャ
伊織「…………」
小鳥「あら? 今度は伊織ちゃん」
P「ん? 律子と一緒じゃないのか?」
伊織「今日律子はあずさ達と一緒。 私は一人だったわ」
P「そうだったっけか……」
春香「伊織、おつかれさま」
伊織「…………」
春香「クッキー食べる? 私、作ってきたんだー」
伊織「いらない」
春香「えっ……あ、そう……」
春香「それじゃ、お家に帰ってから――」
伊織「いらないって言ってるでしょ」
春香「…………ごめん」
13:
P「こら伊織、そんな言い方ないだろ」
伊織「なによ」
P「それは春香が伊織の為に作ってくれたんだぞ」
伊織「誰もそんなこと頼んでないわよ。 勝手に作ったんでしょ」
春香「ぇ……」
小鳥「伊織ちゃん……」
P「どうしてそんなこと言うんだ?」
伊織「…………ウルサイわね」
P「伊織ッ!」
伊織「大声出さなくても聞こえてるわよ!」
P「それなら答えてみろ、どうしてそんなこと言うんだと聞いてるんだ」
伊織「アンタには関係ないでしょ!」
P「なんだと!」
伊織「……もういい帰る!」
バタン!
14:
P「ったく……なんだってんだ」
小鳥「プロデューサーさん、どうして大きな声出すんですか」
P「いや、それは伊織があんなこと……」
小鳥「あんなこと、伊織ちゃんが本気で言うわけないです」
春香「そ、そうです……よね。 伊織、何かあったのかも……」
P「本気じゃないとしても、何かあったとしても、あんな態度を取るのはいけないことだ」
P「伊織の為を想って作ったのに……春香が可哀相じゃないですか」
春香「いいんです私は……それよりも伊織が心配ですっ」
春香「私、ちょっと行ってきます!」
P「はぁ……」
P「ウチはみんな優しい子たちばかりなのに、どうしてこうなるんですかね」
小鳥「きっと、みんな優しい子だからですよ」
P「……え?」
小鳥「もちろんプロデューサーさんも含めて」
15:
春香「はぁ……はぁ………あっ、居た!」
伊織「…………」
春香「伊織ー!」ダッ
伊織「あっ、危な――」
春香「きゃぁ!」
ステテーン
春香「痛つつつつ……また転んじゃった」
伊織「だ、大丈夫!?」
春香「えへへ……大丈夫だよ」
伊織「よかった……」
春香「って、私のことはどうでもよくて……」
春香「伊織、どうしたの? 何かあったの?」
伊織「ぁ……いや……」
16:
伊織「…………」
春香「伊織?」
伊織「どうして……」
春香「???」
伊織「どうして怒らないの?」
春香「……どうして怒らないといけないの?」
伊織「だって……春香が作ってくれたクッキー、いらないなんて……」
春香「そんなの本気じゃないことぐらいわかるよ」
春香「……ちょっとショックだったけど」
伊織「それなら……」
春香「そんなことより、何かあったんでしょ? 私で良ければ相談に……」
伊織「…………」
春香「そっか……ゴメンね、無理に聞いたりして」
17:
春香「私、先に事務所に戻ってるから」
伊織「…………ぁ」
春香「元気出してね……それじゃ!」
伊織「……は、春香!」
春香「なぁに?」
伊織「…………」
春香「どうしたの?」
伊織「…………ぐすっ」
春香「!?」
伊織「わだじ……ぎょうね………ひっく……」
春香「ゆ、ゆっくりでいいよ」
伊織「うぅ……うわぁぁぁん!」ダキッ
春香「おっとっと」
伊織「すんっ……ぐず……」
春香「落ち着いてからね」
18:
伊織「うぅ……はるかぁ……」
春香「よしよし、泣かない泣かない」ナデナデ
伊織「ひっく……ぐずっ………はるか……」
春香「うん、ここに居るよ」
伊織「ぅぅ……」
春香「嫌なことがあったんだね……もう大丈夫」
伊織「…………すんっ」
春香「みーんな伊織の味方だよ」
伊織「ごべんなざい」
春香「いいのいいの」
春香「それより、何があったのか聞かせて?」
伊織「…………」コクッ
春香「ありがと」
19:
春香「そっかぁ……テレビ局の人が悪口を……」
伊織「通りかかったら、たまたま聞こえてきたの」
伊織「何人かで……笑ってた」
春香「悪口って、伊織の?」
伊織「うぅん……765プロとか、プロデューサーのことも」
春香「冗談半分だったんじゃない?」
伊織「悪口は悪口よ」
春香「そうだけど……」
伊織「私……何も出来なかった」
春香(伊織にしては珍しい……)
伊織「プロデューサーとか、みんなの顔が浮かんで……」
伊織「文句を言いに行くと、ソイツ等の悪口を認めちゃうみたいで……嫌だった」
春香「……うん」
伊織「でもでも……何も言えなかった自分が情けなくて、悔しくて……」
20:
春香「私は……伊織が何も言わなかったのは正しかったって思うなぁ」
伊織「えっ?」
春香「私だって765プロの悪口を言われたら悔しいし、言い返してやりたいと思う」
春香「でも、よくわかんないけど、私達が居る芸能界とか大人の世界って……」
春香「多分感情だけで動いちゃダメな場所なんだと思う」
伊織「感情……だけで?」
春香「うん、大人って面倒臭いんだよ」
伊織「…………」
春香「前にね、プロデューサーさんがちょっとしたミスをしちゃって」
春香「テレビ局の人に謝ってたんだけど……」
春香「その人も怒ってたんだろうけど、結構ひどいこと言われちゃったりしたんだ」
伊織「ひどいこと……って?」
春香「うーんと、よく覚えて無いんだけど……とにかく厳しいことを言われたと思う」
春香「あとは、ミスした内容とは直接関係ないことまで言い出したりとか……」
伊織「そう……」
21:
春香「それでね、プロデューサーさんは気付かれないように拳を握って、歯を食い縛って……」
春香「すっごく悔しそうな顔してた。 でも……最後まで頭を上げなかった」
伊織「…………」
春香「プロデューサーさんも今日の伊織と同じで、悔しかったんだと思う」
春香「でも言い返したりしなかったのは、やっぱり私達の為を想って我慢してくれたんだよ」
伊織「私達を想って?」
春香「うん。 だってあそこで感情的になっても、得るものは無いじゃない?」
伊織「だからって好き勝手言われて黙ってるの?」
春香「そうだよ」
伊織「そんなの……」
春香「情けないかな? カッコ悪い?」
伊織「そ、そういうわけじゃ……」
春香「私にはすっごくカッコ良く見えたなぁ」
伊織「…………」
22:
春香「だから今日伊織が我慢したのも、間違いじゃなかったんだよ」
伊織「…………でも、やっぱり私は悔しいと思うわ」
春香「うん、悔しいのは私も同じだよ?」
伊織「だったら……」
春香「私はね伊織……『悔しいと思うこと』が悔しいと思うんだー」
伊織「……えっ?」
春香「顔も知らない人に言われたことなんてさ、別に気にしなくていいじゃん」
春香「それなのにわざわざ悔しいと思って、モヤモヤした気持ちになるのって……」
春香「なんだかその人達に負けたみたいじゃない?」
伊織「…………」
春香「伊織の大切な時間を、その人達の為に使ってあげてるようなものだよ?」
伊織「……そっか」
春香「嫌な人とか嫌なことの為に時間を費やすなんてもったいないよ」
春香「もっと楽しいことに使わなくっちゃ」
23:
伊織「そうよね。 あんな奴等の言うことなんて、聞くだけムダよ」
春香「うん、その調子その調子」
伊織「アイツ等に躓くような伊織ちゃんじゃない」
伊織「私達765プロは、そんなに軟弱じゃないわ」
春香「そうだよ。 誰にも悪口言わせないように、もっともっと頑張ろうよ」
伊織「そうよ、ギャフンと言わせてやるんだからっ!」
春香「……実際にギャフンと言った人に会ったことはないけど」
伊織「ギャフン」
春香「あはは」
伊織「ふふっ」
春香「……やっと笑ったね」
伊織「…………ぁ」
春香「おかえり、いつものいおりん」
伊織「……た、ただいま」
24:
伊織「でも……私も馬鹿よね」
春香「え? どうして?」
伊織「だって、みんなの悪口言われて機嫌悪かったのに」
伊織「それで春香とかプロデューサーに八つ当たりするなんて……」
伊織「これじゃ一緒になって悪口言ってたようなもんじゃない」
春香「そだね」
伊織「私……馬鹿よ」
春香「大丈夫だよ伊織。 私達はちゃーんと分かってるんだから」
伊織「……なにを?」
春香「伊織が優しい子だってこと!」
伊織「いや……そ、そうでもないわよ」
春香「あー照れてるー」
伊織「もぉ」
春香「えへへ」
25:
春香「さっ伊織、戻ろ?」
伊織「…………やめとく。 なんか顔合わせづらいし」
春香「それじゃー私からプロデューサーさんに伝えておくね」
春香「もう大丈夫、心配ないって」
伊織「うん、お願い。 それと……代わりに謝っておいてくれないかしら?」
伊織「プロデューサーと、小鳥にも」
春香「うん! わかった」
伊織「それから、一番は……」
春香「???」
伊織「春香、本当にゴメンなさい」
伊織「あんなこと言って………ぐすっ……ゴメンナサイ」
春香「もう……泣かなくていいよ」
伊織「だって……私………」
春香「ちゃんと分かってるから……ね?」
26:
伊織「すんっ………グス……」
春香(うーんと……そうだ!)ガサゴソ
春香「はい伊織、どーぞ」
春香「落ち込んだ時には甘いもの、でしょ?」
伊織「ぁ……」
春香「今度は……貰ってくれるよね?」
伊織「……ふえぇぇぇん!」ブワッ
春香「あれ?」
伊織「ひっく……ぅぅ……」
春香(もっと泣いちゃった……)
伊織「ごべんなざい…………はるか……ありがどう」
春香「こちらこそ、貰ってくれてありがとう」
伊織「帰っでがら…………食べる……から……」
春香「うん!」
28:
春香「……落ち着いた?」
伊織「うん」
春香「私、そろそろ戻るけど……大丈夫かな?」
伊織「えぇ、もう大丈夫よ」
春香「そっか……それじゃ、またねー!」
伊織「バイバイ」
春香『…………ワァッ!』
ステテーン
伊織「…………」
春香『エヘヘ……バイバーイ』
伊織「優しい子……か」
伊織「優しいのは春香の方よ」
伊織「ありがとう」
29:
――――
――
春香「天海春香、帰還しましたー」ビシッ
P「ど、どうだった!?」
小鳥「その様子から見ると、良い結果が聞けそうね」
春香「えぇ安心してください、大丈夫です」
春香「誰かが悪口言ってるのを聞いたらしくて、それで落ち込んでたみたいです」
P「そうだったのか……伊織らしくないな」
小鳥「でも、それでお二人に当たっちゃうのは、伊織ちゃんらしいですね」
P「あはは、確かに」
小鳥「……オスカーみたいですよね、伊織ちゃんって」
P「オスカー? またセサミストリートですか?」
春香「それって、ゴミ箱に住んでる……」
小鳥「そうそう!」
P「むしろ伊織は豪邸に住んでますけど……」
30:
小鳥「普段はつい憎まれ口をきいちゃうけど、本当は優しい子なんですよ」
P「あぁ、なるほど」
春香「セサミストリートかぁ……」
P「ん? どうしたんだ?」
春香「なんだか、私達みたいですよね」
小鳥「えっ?」
春香「いろんな個性のキャラクターが居て、でもみんなが仲良しで」
春香「お互いがお互いを思いやってる」
P「……うん」
春香「そういう関係って、すっごく素敵だと思います!」
小鳥「そうね、そんな素敵なみんなに囲まれて……私は幸せよ」
P「小鳥さんだって素敵ですよ」
小鳥「やーだぁ! もぅプロデューサーさんったらぁ?ん」
P「…………」
春香「…………」
31:
小鳥「とにかく! 今日もみーんな救われた!」
小鳥「さて、残しておいたクッキーを…………あら?」
小鳥「ない」
P「…………ぁ」
小鳥「ぁ?」
P「い、いえ……」
小鳥「…………」
P「…………」
小鳥「春香ちゃん?」
春香「は、はい」
小鳥「あれって、何枚入ってたの?」
春香「5枚……ですかね」
小鳥「そう………私ね、2枚食べたのよさっき」
P(…………ヤバイ)
32:
P「…………」ソローリ
小鳥「プロデューサーさん?」
P「はい?」
小鳥「……食べやがりましたね?」
P「…………」
小鳥「私のクッキー」
P「て、てへ……ぺろ……」
小鳥「ぷ…………ぷ…………」
P「……ぷ?」
小鳥「プロデューサーさんのばかぁぁぁーーーーー!!!」
P「うわぁー! すいませ?ん!」
小鳥「かえせかえせかえせーーー!!」
P「イタッ………ちょ………バイオレンス反対!」
小鳥「ばかばかばかばか!!」
33:
小鳥「フゥー! フーッ!」
小鳥「トイレに逃げ込むなんて、卑怯ですよっ!」
P(食い物の恨みは恐ろしや……)
春香「あ、あの! 小鳥さん、まだありますからっ」
小鳥「ダメよ! それじゃー私の気が収まらないわ」
P「どうしたら収まってくれるんですかー?」
小鳥「…………」
小鳥「うぅ………」
小鳥「ふえぇぇぇん! はるかちゃ?ん!」
春香「おっとっと」
小鳥「グスン…………」
春香「……よしよし」ナデナデ
春香(ふふっ、子供みたい)
P「……お?」
34:
春香「よぉ?しよしよしよしよしよしよしよし……」
小鳥「…………ぅぅ」
P(なになに? もしかして抱き合ってるのか?)
P(……見てみたいな)
ガチャ
小鳥「……ん?」ギロッ
P「……げっ」
小鳥「ふ、ふえぇぇぇん! プロデューサーさぁ?ん!」
P・春香「「えぇっ!?」」
P「ちょ……小鳥さん?」
小鳥「うぅ……ひっく……」
P「……よ、よしよし」ナデナデ
春香「…………」
35:
P「小鳥さん……ごめんなさい」
小鳥「いいですよもう」
P「よかった」
小鳥「そのかわり……」
P「そのかわり?」
小鳥「もうすこし……このまま……」
P「あっ……は、はい」ナデナデ
春香「むぅ」
小鳥「……春香ちゃん」
春香「はい?」
小鳥「てへぺろ(・ω<)」
春香「ぐぬぬ……」
伊織「…………」
伊織(戻ってきたけど……やっぱりもう帰ろ)
END
36:
お粗末さまでした
3

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