アシタカ「生きろ。そなたは美しい」 ナウシカ「えっ///」back

アシタカ「生きろ。そなたは美しい」 ナウシカ「えっ///」


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9:
風歴738年。
風の谷の族長ジルが病没し、娘のナウシカが跡を継ぐこととなる。
周辺諸国の貴族達はこの若く美しい族長と風の谷を求めてこぞって求婚したが
ナウシカはそれを悉く固辞。周辺諸国との関係は微妙に気まずいものとなっていた。
そんな中、酸の海の彼方から暴帝ハウル率いる魔の軍団が押し寄せる。
各国は連合を組みこれと戦うも、未知の力を使うハウル帝の前では全くの無力。
開戦半年後にはトルメキアの首都トラスまでもが陥落、連合は無条件降服を宣言した。
集めた各国貴族の前でハウル帝は『僕の僕による僕のための大ハーレム造営計画』を打ち出す。
内容は明快で『男は皆殺し』『女は綺麗どころだけ残して皆殺し』というものだった。
抗議の声をあげるものは誰もいない。
貴族達はどうすれば自分達だけでも助かるか、必死に考えていた。
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10:
その時、ひとりの姫が席から立ち上がり、ずかずかとハウル帝に近づくといきなりほっぺたぱぁーん!
「あなたは人の命をなんだと思っているの! 恥を知りなさい!」
もちろんそれはナウシカばばーん!
慌てて兵士がナウシカを取り押さえようとするが、ハウル帝が一喝して兵をさがらせる。
彼はナウシカの手を取り、ひざまずいてキスをした。
「素晴らしい。君こそ我が妃にふさわしい」「・・・えっ?」
「諸君聞きたまえ。ハーレム造営はとりやめる。私は今妃を得た。・・・えっと君、名前は?」
「ナ、ナウシカ」
「綺麗な名前だね。君によく似合っている。
諸君、ナウシカだ。来週には式を挙げるから各領地に戻り、私とナウシカを祝福する準備をしてきてくれ。以上」
11:
ざわわざわざわ
「皇帝・・・何を考えているの」
「こわがらないでナウシカ。僕は本気だ。君のことが気に入った。それだけだよ」
「そっ、そんなこと急にいわれても」
「だいじょうぶ。僕はいい夫になるよ。欲しいものならなんだってあげるし、浮気だって・・・まぁなるべくしない。
君がやめてほしいなら戦争だってやめるよ」
「戦争を・・・やめる? 人々には手を出さないと誓うの?」
12:
「誓うよ。別に殺しまわったってあんまり得することなんてないしね。さっきのハーレムは僕なりのジョークさ。
思ったよりウケが悪くて焦ったよ。君がつっこんでくれて助かった。
まぁ・・・貴族達が貢物を持って自分達の助命を願い出てきたときは・・・色々考えたかもしれない」
「色々?」
「色々さ。わかるね、ナウシカ。君が僕と結婚してくれない時は・・・その時は、やっぱり僕なりに色々考えることになる」
「・・・・・・」
「一週間待つから君は君で考えてきてほしい。いい返事を前提に準備するよ。ははは楽しみだな。
返事の手紙には君の好みとかも教えてくれると助かるよ。君と僕の式なんだ。こういうのはふたりで考えないとね」
老婆がそれを遠くから見て溜め息。
「まったくハウルったら。本当に節操がないんだから」
18:
風の谷の城。
ハウル帝に求婚されてから5日。明日には使者がやってくる。
ナウシカの心はハウルから求婚された時には決まっていた。
自分の身ひとつで多くの人の命を救えるのなら、悩むことはなにもない。
ナウシカはその場で返事をするつもりだったのだが、ハウル帝は時間をくれた。
ハウル帝は妙な男だ。
残酷な征服者の顔と、無邪気な子供のような顔、それに相手を思いやる成熟した紳士の顔。
どちらが彼の本当の顔なのだろうか。ナウシカにはわからない。
ただ時間をくれたのはありがたかった。
おかげでナウシカは最後にもう一度風の谷に帰ってくることができたのだから。
自分に手をあげた者を、無事に故郷に帰してやるなどというマネはそうそうできたものではない。
並みの権力者では無理だ。周囲の反発がある。かのトルメキアのヴ王でも同じことをするのは骨だろう。
それだけハウル帝の支配力は絶大ということだろう。それは彼がどれだけ恐れられているかも意味している。
23:
ナウシカが風の谷に帰り着くと、一斉に周辺諸国の貴族達から手紙と使者が寄せられた。
内容は全て「成婚の祝辞」。
まだ正式に婚姻が決まってはいないことを彼らは皆知っているはずだった。
にもかかわらず、こうした手紙を送ってくる理由はひとつ。成婚を確実なものとし、自分達の保身を図るため。
わかっていたこととはいえ、かつてナウシカに熱心に言い寄ってきていた貴族達からも
同じ内容の手紙が送られてきたことには少なからずショックを受けた。
24:
頭では彼らの狙いは風の谷であり、自分は女の族長として見縊られているからこそ求婚されるのだとわかってはいたが
それでもナウシカは年頃の娘だ。
表情と言動はとりつくろえても、情熱的でまことしやかな愛の囁きを完全に無視してしまえるほど枯れてはいない。
この人とならあるいは。そう思えた人もいる。
今の今まで彼との関係はうやむやにはしていたが、
その彼からも同じ内容の手紙が着たときにはさすがに泣きそうになってしまった。
26:
ナウシカの心を唯一慰めてくれたのは、やはり彼女を心配してくれる彼女の民だった。
ハウル帝は地獄の貴公子。彼に愛された女性はその心臓を奪われると噂されている。
事実、ハウルに寵愛された女性は悉く怪死している。
そんな男のところに嫁ぐことになったナウシカの身を風の谷の人々は我が事のように嘆き、心配し、涙してくれた。
「大丈夫よ、みんな。私、ちゃんと生きてもう一度谷に帰ってくるから」
仮に、生きて帰れずとも、それはそれで本望だった。
愛する人々を守るためなら死んでも良い。彼女はそう考えていた。
夜も更けようという時刻、急に階下が騒がしくなった。
「姫様! 大変ですじゃ! ユパ様がっ! ユパ様が生きておられましたっ!」
27:
駆けつけると、そこにはハウル帝の魔軍に挑み、戦死したと伝えられていたユパの姿が。
抱きつくナウシカ。
「話は聞いたぞ、ナウシカ。大変なことになっているようだな」
「ユパ様・・・私、私・・・」
「積もる話はあとにしよう。まずは私の新しい友を歓待してやってほしい」
「新しい友?」
ユパに招かれひとりの青年が前に出る。
珍しい出で立ちをした東方系の青年だ。
青年の瞳は澄み切った水のように濁りがない。
自然と共に生きている人の瞳だ。
ナウシカは谷の人以外でこんな目をした人を見たことがなかった。
28:
「彼だ。魔軍に追い詰められたところを助けてもらった。
彼がいなければ、私は帰って来れなかっただろう」
「我が名はアシタカ。風の谷の姫よ。聡き族長として私もそなたの名は聞いている。お会いしたいと思っていた」
「ありがとう。貴方のような勇敢な方に名前を知ってもらっているだけでもとても光栄に思います。
それに私の先生を助けてくれて本当にありがとう!」
34:
ユパ帰還の報せに谷はわいた。
状況が状況だけに祝賀を催すわけにはいかなかったが、
それでも人々は出来る限りユパとアシタカをもてなした。
「ここはいい谷だ。人々は皆活き活きとしている。人が人らしく生きていけるのは今の世では稀だ」
「命の息吹が近いからです。谷の暮らしは都に比べれば不便だわ。蟲の危険に怯え、森の瘴気に侵され。
生きていくだけでも精一杯。でも、だからこそ生きていることが素敵に思えるんです」
「私の村もそうだった。峻厳な自然と獣と共に生きる暮らし。人はたやすく死んでいく。
だからこそ、命のひとつひとつが重かった」
「仲間を愛しているのですね」
「ああ。できれば終生彼らと運命を共にしたかったが・・・」
アシタカの瞳に寂しげな色がよぎる。彼の旅には何か事情があるのだろう。
35:
その時、ナウシカのために珍しい花を摘もうとした子供が崖から落ちかけるという事件が起きた。
子供を助ける為に、ナウシカはアシタカよりも早く、危険な崖から飛び降りた。
ふたりとも無事だったから良かったものの、危ないところだった。
ナウシカは皆から強くたしなめられた。
その温かな繋がりを見て、目を細めるアシタカにユパが話しかける。
36:
「いいコだろう? 人のためであれば己を省みない娘なのだ。そこには打算も見返りを求める気持ちもまるでない。
そんな主君だからこそ、民は苦しくとも無条件にあのコを慕う。そういう暮らしの中に幸せがあるのだろうな。
だが・・・世は無情だ。世界はあのコには何も与えず、暴君に全てを奪わせていく」
アシタカの脳裏に様々な悲劇の光景がよぎっていく。村が荒らされ、森が焼け、命が踏みにじられていく。
「せめてあのコがハウル帝に無茶なことをせぬよう祈るばかりだ。あのコの命は重たいが、それを摘み取るのはあまりにたやすい」
アシタカは深く、何かを考えているようだった。
その晩、使者が来た。
38:
「おーおー睨まれてる睨まれてる。こりゃ歓迎されてるねぇ」
帝国の使者、元トルメキア将校クロトワがごちる。
「馬車に石投げられないのが不思議なくらいだわ。辺境の弱小部族の連中にしちゃ肝が据わってやがる」
「だが奴等は我等に何もできまいじゃ。この馬車には恐慌の呪いがかけてある。睨むことが関の山。
石を投げるなど、恐ろしくて、とてもできたものではないはずじゃ」
向かいに座る小さな老人の名はマルクル伯。
ハウル帝の側近で、帝と同じく魔術を使うらしい。
39:
「しかしねぇ、この谷には旧世界のガンシップがあるってぇ話でしてね。
連中、いざとなったらあれを駆り出しやしないかと気が気じゃねぇですや」
「ぐわんしっぷ? なんじゃそれは」
「空飛ぶ戦車みたいなもんです。鋼鉄の扉なんかも簡単に撃ち抜く弾を連射できる恐ろしい代物でしてね」
「なっ、そ、そんなものがあるのか。ま、まぁだいじょうぶじゃ。この馬車の壁は強いから問題ないはずじゃ」
「馬車自体は無事かもしれませんがね、あれが出てくりゃややこしいことになるのは間違いないでしょうよ。
あーあ、こういっちゃあなんですが、俺達無事に生きて帰れるかなぁ」
「なっ、なっ、そ、そんな危険な任務なのか? ただ姫を連れてくるだけではないのかじゃ?」
40:
マルクル伯が狼狽しているのを見て、クロトワは笑いを堪えるのに必死だった。危険うんぬんは冗談だ。
谷の人々が反抗してくるはずがない。
命があるだけでもありがたい話なのに、自分達の主が皇帝の妃になるのだ。百利こそあれ一害もない。
人気のある姫だと聞いている。
名残惜しい気持ちはわからなくもないが、彼らにできることといえば精一杯怨みの気持ちをこめて馬車を睨むくらいだろう。
自分も含め、この大陸の人間は皆ハウル帝に征服されてしまったのだ。何をされても文句はいえない。
41:
他の辺境の国と比較しても粗末の部類に入る城の門をくぐる。
睨む視線はあいかわらずだが、馬車から降りた彼らと直接目を合わせようとする者の数は減った。
クロトワとマルクル伯の引き連れる強化歩兵達の異様さのせいだ。
獣人の身体を旧世界の科学で弄り回し、歯車とオイルで動くようになった彼らの姿は魔物と呼ぶにふさわしい。
十人たらずの部隊だが、その気になれば風の谷の兵士全てを殺してのけてしまうだろう。
「よくぞ参られた使者の方々。姫がお待ちじゃ。案内申し上げる」
要人と思われる老人の声も硬い。
通された謁見の間にて正装した件の姫を見た時は、思わず感嘆の声をあげた。
「ほぉ、16と聞いていたから帝はどんな少女趣味かと思っていたが・・・なるほど、これなら無理もない。
それで・・・ナウシカ姫、ご返事は?」
「答えるまでもありません。まいりましょう、もう準備はできています」
42:
城と村を繋ぐ橋を進む。橋の両脇には風の谷の民が並び立ち、姫の見送りをしている。
どいつもこいつも目に涙を浮かべていた。
王族を思って涙する民など見たことのないクロトワにとっては驚きだった。
なんとはなしに嫌な予感がしはじめた。
この谷の連中はトルメキアの民とは違う。
「おい御者、馬を急がせろ。早くこの国から出よう」
馬車が加しはじめたその時、馬車の前にひとりの男が立ちはだかった。
その無謀さに全員が息を呑む。咄嗟に馬を止めてしまった御者を責める気には到底なれない。
43:
「馬鹿野郎! どこのどいつだ! ひき殺されてぇのか!」
「我が名はアシタカ。旅の者だ。この谷の者達には一宿の恩義がある。その借りを返すために参上つかまつった」
「アシタカぁ? 変な名前の野郎だな。そんで借りがなんだってんだ」
「姫を返してもらおう。谷の者達には彼女が必要だ」
44:
クロトワは舌を打つ。こいつは間違いなく面倒な相手だ。声音でわかる。
身体の芯に鉄の棒でも突き刺さってるかのような声の張り方だ。こういう輩はテコでも動かない。
「姫さんは我等が陛下の嫁ぎなさるんだ。てめぇも知ってるだろ。喧嘩の相手を間違えると怪我じゃすまんぜ」
「姫を返していただこう。それまで私はここを動かないつもりだ」
「ちっ・・・まいったな」
姫が小さく「アシタカさん・・・ダメ」だのなんだのつぶやいている。
45:
兵士をけしかけようとした時、別のところから待ったが入った。
「アシタカ! ならん!」
聞き覚えのある声だ。まさか・・・
「あいつは・・剣士ユパ! 生きてやがったのか!」
「ここで争えば多くの人死にが出る。あのコは自分の身ひとつでこの谷を救おうとしているのだ。
その想いを無碍にしてはならん」
「それは違う。ユパ、彼女自身がこの谷だ。彼女はこの谷の心なのだ。。
人はただ生きているだけでは意味がない。心がなければ人は生きてはいけないのだ。
ユパよ、そして谷の人々よ。そなたたちは死にたくないがために、己の心を差し出すというのか」
「・・・・・・」
「それに」
男はこちらに目を向けると(大方姫を見てるんだろう)続けた。
「ナウシカは風だ。風を捕らえることはできない」
篝火の明かりが揺れて、男の顔がはっきりと見えた。
クロトワに戦慄がはしる。見覚えがあった。重要指名手配人物の書類にあった似顔絵だ。
48:
男は各地で魔軍を襲撃し、多くの部隊に甚大な被害を与えたとされている。
その男がここにいる。死んだはずのユパがここにいることの理由に繋がる。
(やべぇなこりゃあ・・・)
クロトワが口八丁で場を乗り切ろうとしたその時、考えなしのマルクル伯が命令を飛ばした。
「なにをしておるのじゃ! さっさとそいつを追い払え!」
49:
強化歩兵達は追い払うためのものとは言い難い凶悪さでアシタカに迫り、ぶんっと斧を振り下ろした。
アシタカはその刃を右手で挟みとるとと、歩兵の腕を掴み、橋から軽々と放り落としてしまった。
あまりの怪力に、その場に居合わせた誰もが目を剥く。
続けて襲いかかってきた歩兵達も殴り飛ばされ、投げ飛ばされ、同じ末路を辿った。
おお! と人々が声をあげ、アシタカを手伝おうと立ち上がりはじめた。
馬車には恐慌の呪いがかけられているはずなのに、
むしろ今やその呪いは馬車の中にいるクロトワとマルクル伯にかかっているようだった。
歩兵達はアシタカとユパ、そして谷の人々にあっという間に倒され、馬車の扉がアシタカの怪力でこじ開けられた。
50:
「アシタカさん! それにみんな・・・!」
「姫様・・・申し訳ありませぬ・・・我らは、己の命惜しさに姫様を見捨ててしまうところでした」
「姫ねぇさま!」「姫様!」わぁわぁおいおい。
馬車から引き摺りだされ、民衆に取り囲まれるクロトワとマルクル伯。
「待った待った! 何もしないから何もするな! なっ!」
「うわぁぁ、ソフィ! 大変なことになっちゃったよぉ!」
52:
「まったく・・・勢い助けたはいいがこれからどうするつもりだアシタカ」
「まずは谷を離れよう。婚姻が阻止されたことを知れば皇帝はすぐにも軍を差し向けてくるはずだ。
ナウシカ、君は谷の人達と逃げなさい。あとは私がなんとかする」
「どうするつもりなの?」
「これから私はトルメキアへ向かおうと思う」
「トルメキアに? 危険だわ」
「だいじょうぶ。皇帝と話をするだけだ。無闇に争うことはしないよ」
「私も連れていって。あなたひとりを危険な目には遭わせられない」
「いやナウシカ、君は彼らと共にいてほしい。彼らには君が必要だ」
あーだのこーだのでもだのなんだの
「おいおいなんだよありゃ。青春ストライクってか? 見てるこっちが恥ずかしくならぁ」
「でもカップルとしてはつまらない組み合わせだよ。
ナウシカみたいな真面目なコには僕みたいな刺激的な男の方がお似合いだと思うよ」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。そんなポルノ雑誌でしか見ないようなチャライ組み合わせ誰得だよ。
今みたいな荒んだ世の中にはああいう純愛ドラマみたいな組み合わせのほうが・・・っておお!?」
クロトワの悲鳴に一斉に視線が集まる。
「こ、皇帝陛下!」
ななんだって〜グワーン!
54:
なにこれすごい面白い
55:
「ハ、ハウルさん!」
「大丈夫かいマルクル? まったく、せっかく手柄をあげさせようとしてたのに。しっかりしてよね。
ああクロトワ君、君はもうクビね。君とは話が合わない」
「そ、そんなケチなことをおっしゃらないでくださいよ陛下」
「皇帝・・・」
「はは、驚かせてごめんねナウシカ。我慢できなくて迎えにきちゃったよ」
その時、ユパが電光石火でハウルに襲撃をかけたが、逆にぶっ飛ばされてしまった。
「ユパ様!!」
「ああごめん。ナウシカの知り合いだったの? たぶん無事だとは思うけど早めに手当てしたほうがいいね」
「ユパ様!」「しっかり!」「うぐぐ」
アシタカが前に進み出る。
56:
「おまえがハウル皇帝か」
「初対面の君におまえなんて呼ばれる筋合いはないけどまぁいいや。君だれ?」
「アシタカ。彼らの友だ」
「ああそう。うん友達。ならいいんだ。ナウシカの友達ね。ふーん、うん、まぁいいや。
で、なんか用?」
「ナウシカをどうするつもりだ」
「結婚するつもりだよ。すごく僕の好みだからね」
「ナウシカにそのつもりはない」
「えっそうなの? そうなのナウシカ?」
「え・・・あ、あの」
「結婚したいってさ。ふふ、君の勘違いじゃない?」
「それはおまえが民の命を盾に脅迫しているからだろう!」
57:
「ははは違うよ。だって僕一言も谷の人達殺すなんて言ってないもん。色々考えたほーがいいんじゃないとは言ったけどね。
色々あるでしょ。ほら、結婚したあとどこに住むとか、一緒の食事は週に何回とか、子供は何人ほしいとかさ」
「ではナウシカが断ればどうするつもりだった」
「うーん、その時はそうだね・・・ハーレムでも造ろうかな(ナウシカ見てニヤリ)」
「はーれむ? ・・・よくわからないが、それがナウシカを縛りつけているものか」
「僕は彼女を縛りつけなんてしていないよ。結婚はあくまでも彼女の意志さ」
「あのコを解き放て! あのコは人間だぞ!」
「見ればわかるよ。ああでもそういうことか。ふーん、君、ナウシカが好きなんだ?」
ナウシカびっくり。
「・・・えっ!?」
58:
「ああ。好きだ」
「えっ! えっ!?」
「あそ。まぁそうだろうね。彼女かわいいし。全然不思議になんて思わないよ」
「おまえに引き渡すわけにはいかない」
「はいはい。それならそうと早く言ってくれたら良かったのに。いいよ、それじゃあ決闘だ」
「わかった」
「あ、あの・・・アシタカさん」
「安心しなさい。私は必ず勝つ」
「いえ、あの、それは嬉しいんですけど、そうじゃなくて」
「ほら早く来なよアカハシ君。さっさと終わらせよう。僕これでけっこう忙しいんだ」
「アシタカだ。ナウシカ、待っていなさい」
「は・・・はい」 お顔真っ赤ナウシカ。
60:
アシタカぱんぱーん! パンチパンチずきゅんずきゅーん!
ハウルごごごご! 魔法パンチ しゅいんしゅいんしゅいん!
ハウルの結界つえー! でもなに!? アシタカの右腕が結界突き破ったぞ!
無敵のハウルに一撃見舞ってぶっ飛ばした! あんびりーばぼー!
「ハウルさん!!」「わーわーさすが旦那だつえー!」
「はは、やるね。殴り飛ばされるなんて生まれてはじめてだ。驚きだよ」
「命まで取ろうとは思わない。彼女のことは諦め、帰って帝国を解体しなさい」
「君・・・どさくさにまぎれてとんでもない条件を付け加えてくるね」
「そうでもしないとおまえは何度でも彼女を手に入れるために人々を苦しめるだろう」
「ばれたか。うん、まぁね。欲しいものはなんでも我慢せずに手に入れたいタチなんだ」
「殺したくはない。手をひいてくれ」
「い・や・だ」
61:
ハウルしゅいーん 瞬間移動! アシタカにずどーん! エリアルレイブ!
うわぁあのぐちょいのは闇の精霊だぁ! アシタカ空中受身反撃反撃!
「厄介な右腕だね。強力な呪いだ。これが君の恐るべき力の源か」
「なっ何をする!」
「治療さ。礼には及ばないよ」
右腕に複雑な魔法の紋様が! アシタカうおおおおお! ずどどどっかーん
膝を折るアシタカにハウルが近づく。
「くっ、これは・・・」
「ふぅ・・・思った以上に厄介な呪いだった。解呪はできなかったが、もう呪いに殺されることもないはずだよ」
「なに・・・!?」
たしかに右腕の疼きがない。
それどころか右腕に蛇のようにまきついていた禍々しい呪いの薄染みが消えかかっている。
62:
「こ・・・これは・・・」
「その腕ならもう忌み人として人里を避けた生活をせずともすむ。
望むなら故郷にも帰れるだろう。それが君の望みだったんだろう?」
「・・・・・・」
「だけど」
ハウルはナウシカのとこにしゅいん!
ナウシカを抱えて空へ飛ぶ。
「もちろん彼女は僕のものになっちゃうけどね。まぁ故郷に帰りなよ。君ならいくらでもいい花嫁が見つかるさ!」
「きゃあ!」
「ナウシカ!」 「姫様!」「おお姫様ー!」「姫ねぇさま!」
「ではさらばだ諸君! 後日、改めて婚姻を宣言するから楽しみにしててくれたまえ。今年くらいは税金免除するから!」
高らか宣言するとハウルとナウシカの姿は消えてしまった。
「ナウシカぁぁ!!」
「おっとごめんマルクル忘れてた。それじゃ改めてさらば。クロトワのことは好きにしていいよ」
しゅいん! もっぺんハウルは消えた。
66:
トラス宮。最上階寝室。
扉どーん! ベッドのうえにナウシカぽーんきゃあ!
「なっなにをするつもり!」
「警戒しなくていいよ。僕は順序を踏まないやりかたは嫌いなんだ。
この部屋が城の中で一番安全だからね。ちょっと野暮ったい部屋だけどしばらくは我慢して」
「ここは・・・どこ?」
「僕の部屋さ。くつろいでいいよ。君も疲れたでしょ。あーっとなんか飲み物あったかな?」
「あなたの部屋? じゃあここって」
「トルメキアだよ。馬車で物見しながら来てくれても良かったんだけど、早く会いたくてさ。
あーどこに何があるかわかんないや。ソフィ! ソフィいるー?」
トルメキア! 風の谷とトルメキアを一瞬で行き来したというのか。
ナウシカが驚いているとひとりの老婆が入ってきた。
67:
「はいはい。そんなに大きな声を出さなくとも、聞こえてるわよ」
「ソフィ、困るよこの部屋。少しは女の子の好みに合うようにしておいてくれなきゃ」
「あなたが突然迎えに行くなんて言い出さなければちゃんと準備できたわよ。
まったく、人をこきつかうクセに文句ばっかり言うんだから」
「文句なんて言ってないよ。ただのリクエストさ。僕の気持ちがわかったほうがソフィも働きやすいだろう?」
「ええええ、そうね。気持ちよく、ええ、気持ちよく働きたいもんだわ。
だから次からはちゃんと事前に相談して。
あなたは王様なのよ。あなたの急な思いつきでみーんな迷惑するんだから」
「ああもうわかったよ。次からはまずソフィに相談する。
わかったから、彼女に何か出してあげて。きっとノドとか乾いてるとおもうから」
「はいはい、ちょっと待ってて」
68:
老婆は押してきたワゴンに載せていた茶器をテーブルに並べ、お茶の用意をする。
「ソフィの淹れる紅茶は美味しいよ。何かあれば彼女が全て世話してくれる。
ソフィ、僕は雑事があるから彼女のこと頼むよ」
「はいはい。いってらっしゃい皇帝陛下」
ハウルは風のようにさっさと部屋を立ち去る。
「あなたがナウシカさんね。ごめんなさいね、ハウルが迷惑をかけて。
悪い人じゃないんだけど子供みたいな人だから」
「いえ・・・」
迷惑をかけられていないとは到底いえないので、それ以上答えず、紅茶の注がれたカップを口に運ぶ。
「・・・美味しい」
「そういってもらえて嬉しいわ。
出来る限り不自由はないようにさせてもらうから、何でも言ってちょうだいね」
69:
ソフィがただの召使いになってるwww
71:
実際、不自由はまるでなかった。
ソフィは腕のいい家政婦で、話し相手としても楽しかった。
ハウルも足繁く部屋を訪れたが、
来るたびに珍奇な品や花、装飾品をプレゼントされるのには困った。
特に高価な物に関しては絶対に受け取らずにいたが
ナウシカに「受け取れない」と拒否されるたびにハウルはえらく傷ついた顔をした。
その顔がなんとはなしにかわいくて、よくソフィと笑いあったものだ。
地獄の貴公子ともいわれた暴帝の下での日々は想像していたよりも平和だった。
風の谷の皆のこともとりあえずは心配なさそうだった。
ナウシカはここに来てすぐに、民の無事を嘆願したが、
出る際のいざこざにも関わらずハウルはそれをすんなり聞き入れた。
奇妙な男だが、存外懐が広いのかもしれない。
72:
ともあれ、彼は暴帝だ。
なにがきっかけで機嫌を損ね、ナウシカを殺そうとするかわからない。
ナウシカはハウルが来るたびに緊張していたが、
ハウルは毎度浮かれたように、大聖堂がどうとか指輪がどうとか料理だの楽隊だのがどうしただとか、結婚式の話しかしてこない。
次第にナウシカは馬鹿馬鹿しくなってきて、話を適当に聞き流すようになっていた。
73:
「ねぇナウシカ・・・ナウシカったら! 僕達の式の話なのに、君ちゃんと僕の話聞いてるの?」
「聞いてるわ。全部あなたの言う通りでいいと思う」
「全然聞いてないよ! 僕今すごく変なことを言ったんだよ!?
神父役をトトロに任せるなんてどう考えても変じゃないか! 
ぶあああ!なんて叫び声だけで式を進行するなんて不可能だよ!」
「それでいいと思う。全部任せるわ」
「ハウル、ナウシカさんがいいとおっしゃってるんならそれでいいじゃない。
早く仕事に戻ったら?」
「ソフィまで! ありえないよ! 絶対ありえない!
ナウシカ、結婚式は一生に一度の一大イベントなんだよ。
僕達にとって思い出深いものにしたくないの?」
「トトロでいいわ。好きにして」
「もう!! 知らないからね!! 後悔しても知らないからね!!!」
ずかずかばーん
74:
「・・・変な人ですね、皇帝陛下って」
「ええ。変なの。前から変だったんだけどこの頃ますます変になっちゃって手に負えないわ」
「陛下とは長いお付き合いなんですか?」
「そうねぇ、長いわ・・・すごく長い。この世界に来る前からのことだから本当に気が遠くなるほど、
昔からの付き合いよ」
ソフィはつとつとと語りだす。
「・・・あのひとはね、心をなくしちゃったの。それを取り戻したくって色んな世界を旅して回ったけど
どこにも見つからないの。かわいそうに。あの人、今じゃ自分で自分がよくわからなくなってるんだわ」
「でもだからって人々を苦しめていいことにはならないわ」
「ええそうね。本当にそう。ごめんなさい、ナウシカさん。
私にチカラがあれば・・・あのひとの心を見つけてあげられればあのひとにも、みんなにも迷惑をかけずにすんだのに」
75:
悲しそうな声のソフィを見てナウシカは驚いた。
老婆であったはずのソフィが美しく若返っていた。
ソフィの皺だらけだった肌は瑞々しく張りを取り戻している。その手の甲に涙が一粒落ちたが
本人は自分が若返っていることには気付いていないようだった。
ソフィが目元を指で拭った時には、元の老婆に戻っていた。
「ナウシカさん、安心して。あなたがハウルのせいで危険な目に遭いそうな時には
私があなたを守るから」
その言葉の響きの暗さにナウシカはソフィが心配になった。
76:
おいしいナウシカかわいい。支援
http://livedoor.2.blogimg.jp/minnanohimatubushi/imgs/6/1/613a5904.jpg
77:
>>76
とてもかわいい。
78:
ナウシカが皇帝自らの手によって連れていかれた。
その際いざこざがあったにも関わらず、風の谷の人々は以前と変わらぬ生活を保てていた。
この平和はあきらかにナウシカの犠牲の上にあるものだった。
彼女はきっと必死に、皇帝に谷の人々の無事を嘆願したのだろう。
以前と変わらぬこの平和を、しかし喜んでいる者はひとりもいない。
谷からは笑顔が消え、風はただびゅうびゅうと寒々しい音を立てていた。
「まったく! なんだって俺がこんなことっ!」
クロトワはひとり農作業をしていた。
79:
置いていかれたクロトワは敗戦者如く、何をされても仕方のない状況だったが
必死に命乞いをして、谷の一員として働くことを条件に見逃された。
「はっ! プライドかなぐり捨ててでも生きることを選んだ末がここか。生きるってぇのは楽じゃねぇや」
大体、プライドなんてものはロクなものじゃない。
クロトワとてできれば格好いい生き方をしたい。そのためにはプライドを持つことが大切だというのもわかる。
けれども、どうにもプライドというやつは人が着こなすには過ぎた代物であるらしい。
クシャナ殿下しかり。あのアシタカとかいう小僧しかり。
クロトワは鍬を杖代わりにつかい、あごを乗せて溜め息をつく。
「どこにいっちまったんだかなぁ・・・あの小僧」
ナウシカがさらわれた翌日、アシタカの姿は谷から消えていた。
80:
呪いだのなんだのが消えたとか言っていたから、故郷に帰ったのかもしれない。
あるいはナウシカを助けにひとりトルメキアに向かったのかもしれない。
どちらにしてもがっかりだ。
前者の場合ならあれだけ格好つけておいて今更逃げるなんてがっかりだし、
後者の場合なら格好のつけすぎでがっかりだ。そんな無謀なことをしてもあの姫だって喜ぶまい。
結局、クシャナもアシタカもプライドで身を滅ぼしたようなものだ。
自分はああはなるまい。
81:
続きをしようと鍬を持ち上げたその時、遠くにいた谷の人々が騒ぎはじめた。またなにかあったのだろうか。
「おい髭のおっさん! 早く城まで逃げろ! 蟲の大群が来るぞ!!」
「ああっ? むし? ・・・蟲だとぉ!!!」
クロトワだーっしゅ! びゅんびゅーん! その美しいフォームは最盛期のベンジョンソン! アラレちゃんもびっくりきゅーん!
82:
「ユパ様! こちらです!」
「うむ・・・」
谷の彼方からもうもうと土煙が近づいてくる。
その根元に多数の黒粒。空にも煙の合間から黒粒があちらこちらにちらほらちらほら。
「間違いない。あれは蟲の群れだ」
「なっ、なぜこんなことに・・・! 蟲を殺したわけでもないのに」
「おい髭のおっさん! まさかあれあんたのせいじゃないだろうな!!」
「おいおいやめてくれぇ! 誤解もいいとこだ! 誰がお前らみたいなムサイ連中と心中するようなマネなんてするか!」
83:
「姫様を犠牲にした我等を恨んでのことやもしれぬ」
「ババ様!」
「あのコは蟲に愛されておった。この谷が平和であったのも、ひとつにはあのコが蟲から谷を守ってくれていたからじゃ」
「・・・・・・」
「ユパよ、わしは心のどこかでこう思うておった。あのコこそが伝承に記されし青き衣の聖者ではないかと。
であれば蟲達が怒るのも当然じゃ。わしらは結ばれつつあった大地との絆を断ち切るようなマネをしたのじゃから」
「そうは言っても、私達は生きなくてはいかん。たとえ大地が私達を呪おうとも、私達は生きる努力をしなくてはならん」
「土から生まれし人が土から離れて生きられようか。ユパ、おぬしの言うことは思い上がりじゃ」
「そうかもしれん。だがそれでも諦めるわけにはいかん。ここで死んではナウシカに申し訳が立たぬ」
84:
「ユパ様! 蟲達の様子が変です!」
「ぬっ?」
蟲達はなぜか谷の入り口から中に入ってこようとはしなかった。
その瞳の色は青い。攻撃の意志はなさそうだった。
一頭、こちらに近づいてくるものがいる。
あの大きなツノの生えたアカシシには見覚えがあった。ヤックルだ。その背に乗っているのは
「・・・アシタカ! アシタカが来るぞ!」
「旦那! アシタカの旦那だって!?」ざわざわ
87:
「すまない、ユパ。思ったよりも時間がかかってしまった」
「アシタカ! これはどういうことなのだ。あの蟲達は一体」
「彼らは仲間だ。ナウシカを助けるためにチカラを貸してくれるそうだ。
各地の蟲が一斉にトルメキアに向かってくれている」
「なんと・・・蟲の協力を得たというのか! アシタカ、おぬしは一体」
ユパの脳裏にババとの話にあったトルメキア古代伝承の一説が思い起こされた。
「その者青き衣をまといて、金色の野に降り立つべし。失われた大地との絆を結ばん・・・。
おぬしがまさか・・・」
「これからトルメキアに向かおう。ガンシップを使えば明日には着くはずだ」
「よっしゃー! やろう! 俺達で姫様を取り戻すんだああ!」「うおおお!!」
「待て!!!」
待ったをかけたのはクロトワだった。
「たしかに蟲達の力があれば魔軍を倒せるかもしれねぇ。
だがトラスを陥とすのは無理だ。侵入すらできねぇ」
「なんでだ!」「適当なこと言ってんじゃねぇぞ!」ざわざわ
88:
「どういうことだ?」
「魔法だよ。結界が張ってあんだ。ハウル帝の許可なしじゃ蟻一匹入れやしねぇ」
ざわざわ「なんてこった」「どうする?」
「どうすればいい?」
「知らねぇよ。それこそハウル帝にでも聞いてくれ」
「いや、私はそなたに聞きたい」
「ああ? なんで俺だよ?」
「私にはわかる。そなたには心当たりがあるはずだ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
舌打ちをし、先に視線をそらしたのはクロトワだった。
89:
「ああ、あるよあるよ。おっしゃる通りだ、確かにあるよ。
征服される前のトルメキアが極秘で開発してた兵器だ。
あいつのチカラなら結界を壊すくらいわけないさ」
「おお! そんなものが」「これなら楽勝だぜ!」
「取りにいく手伝いもしてやる。ただし条件がある」
「なんだ」
「その兵器を俺にくれ」
90:
シーン
「危険を冒すんだ。これくらい欲しがったってバチ当たんないだろ?」
「なんてやつだ!」「おまえみたいな裏切り野郎にそんなもの渡せるわけねぇだろ!」
「いいだろう」 一同なにぃぃ!
「何か事情がありそうだ。悪用しないと誓うならそなたの好きにしてくれてかまわない」
「はは、そうこなくっちゃあな」
「それで、その兵器はどこにある?」
「ペジテだ。その地下に幽閉されている」
「幽閉?」
クロトワはにやりとした。
「ああ・・・幽閉さ。その兵器は生きてるんでな」
96:
戦闘シーン、随分抽象的だな
99:
>>96この話じゃ書く必要も無いだろ
98:
無理にぐだぐだ戦闘書くより読みやすい
101:
辺境都市国家ペジテ。旧世界の遺跡から発掘されるセラミックなどを加工供給することで成長した工房都市。
かつては賑わいをみせていたこの街は、立て続けに二度の侵略をうけ、今は廃墟と化していた。
一度目はトルメキアに。その直後にハール帝の魔軍に。
今も遺跡くらいは残ってはいるものの、そこを訪れる者もいない。
放っておけば数年以内に全て砂に埋もれるだろう。
「こっちだ。人目につかないところに隠してある」
クロトワは以前、この都市の統治を任される立場にあったらしい。
迷いのない足取りで案内する。
102:
一見それとはわからない扉から入り、遺跡の地下へと降りていく。
ひんやりと寒々しい空気が、あるところから急に熱くなりはじめた。
「気ぃつけろよ。旧世界の壊れた炉があいもかわらずマグマを垂れ流してやがる。床踏み外したら死ぬからな」
その最深部に近づくにつれて、妙な叫びが聞こえはじめた。
「なんだ、あの声は?」
「兵器さ。何にも食ってねぇんで腹でもすかせたかな」
重々しい扉のロックをクロトワが解除する。
巨大なドームの中心におぞましい姿の人間が鎖に繋がれていた。
目が煌々と輝き、身体中から絶えず血を噴き流している。
毛髪は全て抜け落ち、肉は爛れているものの、わずかな身体の隆起でそれが女性であることだけはわかる。
女性は正気を失っているようすで始終、呻き、何かを叫びつづけている。
103:
「あれは・・・人なのか?」
「一応な。あれでも元トルメキアの第四皇女様だ」
ユパが息を呑む。
「なんと・・・! ではあれはクシャナか! 信じられん。何故このようなことになったのだ」
104:
「ここにはな、巨神兵の心臓があったんだ」
「巨神兵の・・・心臓だと?」
「すげぇチカラを持ったエンジンさ。
コブシ大しかないってのに世界の七分の一をぶっ飛ばしちまえるくらいのエネルギーを持ってる。
ハウル帝に侵略された時、クシャナ殿下はそいつを使って逆転を狙ったんだ。
だが失敗した。
心臓のチカラを得ようとした殿下は逆に心臓に取り込まれちまった。
正気を失った殿下を、俺達はここに封印するだけで精一杯だった」
「彼女を見捨てたというのか!」
「仕方ねぇだろ。ハウル帝にバレたら俺達の身まで危うい」
「だが、彼女はそなた達のためにチカラを得ようとしたんだぞ!」
「どうだかな。ナウシカ姫と違ってそんなに優しい姫さんってわけでもなかったし」
「・・・・・・」
「けど、まぁ今は・・・」
「見捨てたのをちょい後悔してる」
105:
クロトワがクシャナのもとへ歩み寄っていく。
特殊な鎖でチカラを封じられているとはいえ、
巨神兵の心臓を持つクシャナが腕を振れば、それだけでクロトワは肉塊と化すだろう。
それがわかっているにも関わらず、クロトワの歩みはあまりに無造作だった。
「申し訳ありませんでした、殿下。お迎えに上がるのが遅くなりました」
クロトワを視界に認めたクシャナが叫ぶのをやめる。
クロトワはクシャナの鎖をためらいもなく外すとふいに抱きしめた。
「ご無礼のほど平にご容赦を。手前勝手な申し出ではありますが、今一度殿下にお仕えしたく存じます」
「タ・・ヌキ・・め」
爛れたクシャナの口元が笑みの形を描いたようにみえた。
112:
ハウル帝とナウシカ姫の婚姻が決まり、トラスは連日お祭り騒ぎだった。
人々は昼も夜も、場所を問わず踊りまわり、口々にハウルとナウシカを賛美していた。
その目に正気の色はない。
ハウルの魔力により、人々は思考するチカラを失っていた。
街を徘徊する異形の魔物の存在も、誰一人気付いている様子がない。
このような状態で、レジスタンスが結成されるはずもなく、ハウルの支配は磐石を極めていた。
平和だ。
平和だけれども、こんな平和はまともじゃない。
「これがあの人の目指す世界なの? こんなものが・・・」
「ナウシカさん、時間よ。準備はできた?」
「ええ・・・」
137:
空中聖堂に集まった貴族達は、その時を待っていた。
そこかしこで小声で交わされる会話。その端々に思ったよりもハウル帝の支配は悪くないとの評判が混じる。
ハウル帝の魔法と、彼の率いる魔軍のチカラは恐ろしいが、彼は基本的に子供だ。
機嫌さえ損ねなければ、自分達も甘い汁が吸えそうだ。
138:
式開始の鐘が鳴る。
厳かな音楽と共にハウル帝とその花嫁が入ってきた。
貴族達は皆、花嫁の美しさに目を見張る。
美しい姫だとは思っていたがこれほどとは。聖なる薄青のドレスも彼女にはよく似合っている。
ハウル帝も彼らしくもなく、花嫁のあまりの美しさに緊張しているようで、顔を赤くしぎこちなく歩いていた。
祭壇の前まで進んだ時、次なる変化に、今度は一同目を剥いた。
奥の控え室からとんでもない化け物が現れたのだ。
139:
体長4mはあろうかという熊のような化け物である。
人の腕ほどの長さのある爪はたやすく人を殺してのけるだろう。
皿のようにギョロリと剥いた目は何を考えているのかわからない。
その化け物はなにが楽しいのかニヘラニヘラ笑みを浮かべており、
無理矢理着せられた感のある神父服の胸元をぼりぼり掻いて破いていた。
化け物は祭壇のうえに立つとぷしゅんぷしゅんと鼻をならした。
まさかあれが神父か!
140:
「えー式を始めます。進行役は僕、マルクルがさせてもらいます」
皆が固唾を飲んで見守る中、式は一応滞りなく進んでいく。
「ぶおぎゃあああああ!」
「はい、望みます」
「ぐるおおおおおおおお!!」
「はい、誓います」
「ぐおぁぁぁぁあ!!」
「・・・はい、望みます」
「ぐああがああああ!!!」
「・・・はい、誓います」
「ぶっふぉ」
おそらく「では誓いのキスを」と言ったのだと思われる化け物は何故か頬を赤らめている。
それから顔を近づけようとしている新郎新婦を食い入るように見つめていた。
ふたりがキスを交わそうとしたその時だった。
141:
扉バーン!!
「皇帝陛下!! 大変です!! 蟲の大群が攻めてきました!!!」
なんだってー! ざわざわ
「ふふっ、面白い。おそらく彼の仕業だな。ナウシカ、ついてきなさい。見晴らしのいいところにいこう」
143:
蟲うおーー!! 魔軍ぎゃああ!! 空では光がちゅどんちゅどんちゅどーん!!
「あれは王蟲!! どうして!?」
「アシタカ君だよ。どうやったかはわからないが、蟲達の助力を得たんだろう。君を助けるためにね」
「アシタカさんが・・・?」
遠目に見ても、ハウル軍の劣勢は明らかだ。
魔軍のチカラは恐ろしいが怒れる大地のチカラの前では無力にひとしい。
「とんでもない連中だ。いくつもの世界を回ったがこんなことははじめてだよ。
だけど愚かだね。この街には強力な結界が幾重にも張り巡らされている。
いくら王蟲といえども、この街に近づくことは・・・なっなに!?」
144:
その時、大軍の先頭から巨大なレーザービームが街目掛けて放たれた。
街を包んでいた結界が即座に反応し、防御する。
だがレーザーの出力は凄まじく、結界を次々溶かし、砕いていく。
「まずい!」
ハウルが結界に向けて腕を伸ばす。瞬間、結界が強化されもちなおした。
レーザーの出力は徐々に弱まり、凌ぎきれるかに思えたが。
「ば・・・馬鹿な!」
レーザーは最後のダメ押しとばかりに、突如、倍以上に膨れあがり、結界を貫いてしまった。
ハウルの腕がぼたぼたと血を流す。
「ハウル!」
「・・・大丈夫、これくらいなんともない。それより・・・彼が来たようだよ」
145:
一隻のガンシップが急接近し、上空をかすめると、そこからひとりの若者が飛び出した。
すぐにわかる。あれはアシタカだ。
「アシタカさん!」
「人が式を挙げているっていうのに野暮なことをする。
マルクル、出航の準備を。この場をあとにしたほうが良さそうだ」
146:
迫りくる魔物達を切り伏せながら、アシタカは己を恥じていた。
ハウルに呪いを封じられ、故郷に帰れると告げられた時、彼はとまどってしまった。
故郷に帰る。愛する人々にもう一度会う。叶うはずのないその願いを、叶えるために彼は贖罪の旅を続けていた。
それが達成されそうになった瞬間、不覚にも彼はナウシカの身のことを忘れてしまっていた。
誰かの犠牲のうえに成り立つ幸せなど、あっていいはずがないのに。
「だが今は違う。私はそなたを助ける。待っていろ、ナウシカ」
148:
その時、街の地面が揺れた。見れば街の中心にあった空中聖堂が天へと伸びていく。
いや、伸びているのではない。聖堂の下に眠っていた巨大な戦艦ごと空へと飛び去ろうとしているのだ。
悲鳴と崩壊の音が入り乱れる中、アシタカの聴力は彼の名を呼ぶ声をとらえた。
「アシタカさん!」
「ナウシカ!」
「はっはっは! アシタカ君! 悪いけど、僕達はこれからハネムーンに行かなくちゃあならないんだ!
お土産を期待しないでそこでずっと待っていてくれたまえ!」
150:
空中戦艦は見る間に浮上していく。
「くそっ! どうすればいい!」
とその時、アシタカの前にどこからともなく巨大な化け物がのっそり現れた。
化け物は何故か神父の服を着ており、真っ黒な傘を差して瓦礫の雨をしのいでいる。
152:
「ぶあぉ?」
「異議あり? なんのことだ」
「ぶぉあ?」
「・・・この結婚に異議がおありか? もちろんだ!」
「ぶおぅ!(情熱的!)」
化け物は懐からコマをとりだすと、しゅんっと勢いをつけて回しはじめた。
コマは不思議なチカラで宙に浮いている。
化け物はそれにちょんと乗っかるとニヤリと笑った。
「連れていってくれるのか? 助かる!」
アシタカは化物につかまると、共に空へと舞い上がっていった。
157:
通路。ナウシカの手をとり、引っ張っていくハウル。
「いや! 放して!」
「放さないよ。さっき神父の前で誓いあったばかりじゃないか。ずっと一緒にいますって」
「ぶおぶお言ってただけじゃない!」
「君が言ったんじゃないか。トトロでいいって」
「ハウル、もうやめなさい」
「ソフィ! あ〜そのドレスいいね。似合うよ」
「ハウル、もうこんな馬鹿げたことはおしまいよ。ナウシカさんを放しなさい」
「ええ、やだよ! まだキスもしてないのに!」
つかつかとソフィはハウルに近寄ると、ハウルのほっぺたぱぁん!
159:
「いった! なにするんだよ!」
「もうたくさん! 人の気持ちも考えず、わがままなことばかり!
あなたのそのわがままでどれだけの人が苦しんでると思ってるの!
心をなくしたなんて言い訳にはならないわ!
ずっとかわいそうに思っていたけれど、これ以上は我慢できない!」
「ソフィ・・・」
「ハウル、元の世界に帰りましょう。
あなたが心がほしいなら、私があなたの心になるから・・・だから」
「ははは痴話喧嘩かね、皇帝陛下」
160:
通路の奥から男が現れる。
皇帝を前に傲岸不遜といった態度のこの男は魔軍の参謀長だった。
男は少年の頭に銃をつきつけている。
「マルクル!」「ソフィ〜! たすけて!」
「ムスカ・・・なんのつもりだ」
「なに、いよいよ時が満ちたようなのでね。下克上といったところさ」
パンッ! とハウルに向けて銃が火をふく。
結界に阻まれるはずの弾はなぜかハウルの肩をやすやす貫いた。
161:
大佐キタ──(゚∀゚)──!
162:
「ハウル!」「くっ・・・なにをしたムスカ」
「不覚だったなハウル君。この戦艦ゴリアテは私の指揮で造り上げたものだが・・・
実はね、その一部にはラピュタの技術が応用されている」
「ラピュタだと?」
「かつての超文明だよ。その想像を絶する技術の中には、君がいうところの魔法も含まれていた。
ということはだよ、ふふ、魔封じの法もまたラピュタは有していたということさ。
君のチンケな魔力くらい完全に抑えこめるほどのものをね。
君に気付かれてはまずいから、この通路だけに、それを施しておいたのだ」
「ムスカ、貴様」
「おっと動くなよ。このガキの頭がふっとぶぞ」
「・・・なにが目的だ」
「異界の扉」
「!!」
165:
「君の持つあの宝石は正式な名を『飛行石』といってね、ラピュタの眠りを醒ますには必要なものなのだ」
「あんなものいくらでもくれてやる」
「もちろんいただく。だが、君に生きていられるのも迷惑なのだ。
君はあらゆる世界を巡ったが、心臓を見つけることはできなかった。なぜだかわかるかな?」
「おそらく・・・強力な魔封じの中にあるから」
「そうだ。そして君の心臓の放つ魔力を封じることができるほどのものとなると
ラピュタ内部以外にはありえない。知れば君はラピュタを目指そうとするだろう。
だがそれでは困る。あれは私のものだ。我が祖先の故郷だ。誰にも触れさせたくはない」
「・・・・・・」
「さぁ、おしゃべりの時間はここまでだ。君には死んでもらう」
「ハウル!」
ぱぁん!
190:
http://img16.pixiv.net/img/tobiume/8122706.jpg
191:
>>190
えっなにこれすごい
193:
>>190
うめぇ
213:
「ソ・・・ソフィ!!」「ソフィさん!」「ソソソソフィ!」
「ちっババアめ! 邪魔だどけ!!」「やっやめろ!!」
ぱんぱんぱぁん! どさっ ハウル駆け寄って抱き寄せ!
「ソフィ!! しっかりするんだ! ソフィ!」
倒れたソフィの髪が黒く染まり、若い娘の姿へと戻っていく。
「ハウル・・・お願い・・・もう誰も苦しめないで
あなたは本当は・・・優しい人よ・・・私・・・あなたのことが・・・」
がくっ・・・
214:
「ソ・・・ソフィ・・・うそだろ? 目を開けてくれ、ソフィ」
「ふん、余計な手間をかけさせやがって。次は貴様だ」
その時、急に周囲の気温がさがりはじめた。
照明が落ち、暗くなった通路の壁面に無数の紋様が浮かび上がっている。
魔封じの仕掛けの紋様だ。
それがハウルの強力な魔力によって打ち砕かれていく。
「なっ! こ、こいつ無理矢理式を書き換えているのか! ばっ化け物め! 死ね!!」
ハウルの背から現れた巨大な翼が弾丸を阻む。
「くっくそ! ひっ!」
放たれた魔力の光にムスカは目を潰された。
「目がぁぁぁ目がぁぁぁ!!」
さんざ悶えたあと、ムスカは内側から膨れ出し、爆発して死んでしまった。
215:
ソフィの遺体を抱えたまま、ハウルは声もなく呻きつづけいる。
その身体はどんどん異形と化していく。
「ハウル・・・」
見かねたナウシカが屈み、ハウルの頬に触れた。
ハウルの黒い眼が見開かれる。
何の光も宿していないその瞳と見つめあった直後、ナウシカは腕をつかまれ、通路の奥へとさらわれていった。
217:
>「目がぁぁぁ目がぁぁぁ!!」
やっぱり入れて来たかwww
218:
アシタカが空中戦艦に侵入したと同時に、戦艦はあちこちで爆発を起こしはじめ、ゆっくりと降下をはじめた。
助けを求め、しがみついてくる貴族達に時間をとられながらも、通路を急ぎ進んでいく。
途中でマルクルと出会う。
「あっ! アシタカさん! ソ、ソ、ソフィが死んじゃって・・・ナウシカとハウルさんが!!」
「彼らは今どこにいる?」
「大聖堂の方です!」
「わかった。君は逃げ惑っている人達を誘導して脱出しなさい。後部甲板にいるトトロがチカラになってくれるはずだ」
「はっはい!」
219:
なんとか大聖堂へと辿り着く。
祭壇の前にはふたりの少女が寝かせられていた。
ひとりはナウシカ。もうひとりは血塗れの見知らぬ少女だ。
ナウシカは目を閉じたままアシタカの声に応じない。死んではいないようだが、魔法で眠らされているようだった。
黒の翼を生やし、異形の姿となったハウルは天に腕をかざし、何か呪文を唱え続けていた。
220:
「ハウル・・・これはどういうことだ。おまえは何をしている」
「・・・アシタカか」
振り返ったハウルの瞳は穴でもあいているかのように黒かった。死んだ獣のような暗さだ。
「何をしていると聞いているのだ! ハウル!!」
「取り戻そうとしている・・・ソフィを」
ハウルは祭壇からおり、ソフィという名であろう少女の頬に触れた。
「僕は・・・馬鹿だ。
失ってから大事なものに気付く。
家族も、心臓もそうだった。先生も、友人も。
そして今、最愛の人を失おうとしている。これ以上は耐えられない」
「どういう意味だ」
「ソフィを取り戻す。無垢な少女を媒介とし、ソフィの魂の容れ物とする」
「!!」
221:
「ナウシカもわかってくれた。彼女も今から僕がすることを受け入れてくれている。何も問題はない」
「そなた! 気は確かか!」
「正気だよ。なにせ心がないからね。僕は僕にとって一番利になることを冷静にためらいもなく実行できる。
それを邪魔するのなら容赦しないよ」
「ナウシカを返せ。さもなくば私とて容赦しない」
「じゃあ決闘だね。今度は殺すよ」
「私は死なない。かかってくるがいい」
224:
ハウルが指を軽く振るうたびに魔法の矢が飛んでいく。
アシタカはそれを避けつつ、こちらからも矢を放つ。
だがハウルに刺さる前に矢は宙で止まり、悉くはたきおとされる。
「何の変哲もないただの矢じゃ僕は倒せないよ」
続けて急接近し、あらんかぎりのチカラでハウルに斬りかかった。
ハウルはそれを翼で受け止める。
アシタカの振るう刃は鉄すら裂くが、ハウルの翼には傷ひとつつけられない。
ハウルが手をアシタカにかざすと、それだけでアシタカは吹っ飛び、壁に叩きつけられた。
「無駄だよ。仮に呪腕のチカラが使えても無駄だ。
君がどういった経緯で呪われたかは知らないが、たかが祟り神のチカラごときじゃ今の僕にはかなわない」
225:
「ただの・・・祟り神ではない。命の神だ」
「?」
「私が村を出たきっかけは・・・確かに祟り神の呪いによるものだった。
だが、私は旅を続ける中で・・・さらなる罪を犯した。
今の私は死ぬことすらままならない・・・」
「なんの話をしている」
アシタカは右腕の袖を破り捨てた。腕はハウルの施した封印が刻まれていたが、
その封印は少しずつ紫の染みで溶けはじめていた。
「・・・余程の相手だったんだね。だが、それならこうするまでだ」
ハウルがさっと腕を払う。閃光がはしり、アシタカの右腕が切断されてしまった。
227:
「さっ、これでしまいだ。僕は儀式を続けさせて・・・なに?」
ハウルは目を疑った。
肩から先がなくなったアシタカの腕が、突如、切断面からぶくぶくと盛り上がりはじめ再生してしまった。
腕に絡みつく紫の染みが禍々しい輝きを放つ。
「私は・・・罪を犯した。
その罪はどんなことをしても贖えたものではない。 
だが、救うことのできる命があるのなら、私はその罪で得たチカラを使おう」
「君は・・・一体?」
「シシ神よ! 命の主・森の神よ! 我にチカラを示せ!」
231:
〜 〜 〜
太古から連綿と命を紡ぎ続けてきた森が焼けていく。
人も、獣も、古き神々も・・・炎は全てを飲み込んでいく。
血だらけで倒れ伏していたアシタカは、必死に、腕の力だけで、近くに転がる桶のところまで這っていく。
「サン・・・私は生きるぞ・・・サン・・・」
桶の蓋を開けると、そこには巨大なシシの頭が。
「・・・私は、私は生きる・・・・生き続けてみせる」
〜 〜 〜
233:
アシタカの腕から全身へと染みが広がっていく。
染みは他の染みと絡まりあい、古代の戦士の入墨の如き紋様へと変わっていく。
ヤマタオロチ級呪い蛇オーラばーん! こっこいつぁ危険だぁ!
「信じられない。それほどの呪いに侵されながら生きていられるなんて。
だがなるほど、命の神の呪いか・・・それなら頷ける。
蟲達を従えたのもその神のチカラか。
よく気を保っていられるね。それだけの呪いをうけているんだ。絶えず怨嗟に悩まされているだろう?」
「私のしたことを考えれば当然の罰だ。耐えられないなど口にもできない」
235:
蛇がアシタカの剣に巻きつき、刃に変わる。
しゅばっと駆けて剣を振るう。
ハウルは翼で防御するが、簡単に斬り飛ばされてしまう。
ずどどんどーん! エリアルレイブ!
ずばばんばんばんばーん! ずどーんもくもく。
ハウルの喉元に刃を突きつける。
「終わりだ、ハウル。ナウシカを解放するんだ」
「まだだ・・・まだだよ。僕は今までさんざん逃げ回ってきた。だが今は・・・今だけは逃げるわけにはいかない」
ハウルが雄叫びをあげ、巨大な魔獣の姿へと変わっていく。
アシタカもそれに応じて剣を構えなおし、オーラを滾らせていく。
大聖堂の揺れが激しくなってきている。戦艦の墜落までもうまもなくだ。
237:
ナウシカが目を開けると、そこには青空があった。
何が起こったかわからない。
自分は今どこにいるのだろう。
大きな揺れと強い風、物の焼ける臭いを感じ、はっと上体を起こした。
「そうだ・・・私、大聖堂で・・・」
238:
思い出してきた。確か自分はハウルにさらわれ、ソフィと魂を入れ替えられようとしていたのだ。
ソフィを取り戻そうとするハウルの姿があまりにも憐れで、かわいそうで、ロクに逆らうこともせず
ハウルに乞われるままに身体を差し出そうとしていたのだが、今考えるとぞっとする。
周りの瓦礫を見るに、ここは大聖堂だったところのようだ。
壁と天井が完全に吹き飛ばされ、見晴らしがよくなってしまっているが、なんとかわかる。
241:
「一体、ここでなにが起こったの?」
「私とハウルが戦ったのだ」
後ろから声が聞こえた。ふりかえるとそこにはアシタカがいた。
「アシタカさん・・・その姿は」
「呪いと戦いによるものだ。心配しなくていい。すぐにおさまる」
そのとおりだった。アシタカの身体中につけられた傷はまもなく塞がり、全身を覆っていた紋様も右腕へと収まっていった。
「・・・そうだ! ソフィさん! それにハウルは?」
「こっちだ」
アシタカと連れられ、聖堂の奥、祈りの間へと向かう。
248:
そこには巨大な魔獣が横たわっていた。
風に羽がむしられ、飛んでいく。
獣の姿はやがて吹き消されるように溶けていき、跡にはひとりの男がうずくまっていた。
男は虚ろな眼で、腕に抱えた少女を見つめたまま死んでいた。
ハウルとソフィだった。
「ハウル・・・ソフィさん・・・」
ナウシカの目に涙があふれてくる。
「どうして・・・! どうしてふたりが死ななければならないの!」
泣きむせぶナウシカ。戦艦の揺れが激しい。
250:
「行こう、ナウシカ。もう時間がない」
「いや! 嫌よ! ふたりをここに残すなんてできない!」
「私達ができることはもう何もない。行こう。早く去らねば危ない」
「いや! 放して! 人殺し!」
アシタカぐっとナウシカの手を引き、抱きしめる。
「・・・すまない。私もふたりを助けたかった」
ナウシカ、アシタカに謝る代わりに腕をまわす。
「・・・・・・この船が落ちたら、また大勢の人が死ぬわ。私達だけ逃げるなんてできない」
「そのためにできることがある。チカラを貸してくれ。ナウシカ」
「私に・・・できること?」
「行こう。こっちだ」
251:
向かった先はナウシカがハウルにあてがわれていた寝室だった。
聖堂と同じく、あの城も空中戦艦の一部だったようだ。
ここも屋根が吹き飛び、見晴らしがよくなってしまっている。
「ここで何をするの?」
アシタカは応えるかわりに懐からなにかを取り出した。
それは青く輝く美しい結晶のペンダントだった。
255:
「ペンダント? これは?」
「飛行石というものらしい。先ほどハウルから受け取った」
「飛行石・・・思い出した。あの軍人が言っていた異界の門のことね」
「簡単な呪文でいくつかの奇跡を起こせるらしい。
この部屋の床には魔力を増幅する特殊な陣が張ってある。
このふたつのチカラで、船を安全なところまで運べるかもしれない。
そのようにハウルが教えてくれた」
「ハウルが・・・。わかったわ、早くその呪文を」
「わからない」
「えっ?」
257:
ハウルさんまじうっかり
258:
「ハウルの知っていた呪文は異世界の扉を開くものだけだった。
その呪文ではこの船を浮遊させつづけるようなことはできない。
だが、君なら必要な呪文がわかるかもしれない」
「私が? どうして?」
「ハウルは言っていた。ある種の超古代文明は時空を超えて世界に影響を与えていた。
その文明の用いていた言葉の名残は、わずかだが、風の谷のような辺境の民の伝承の中に残されている、と」
「風の谷の・・・伝承の中に?」
「ナウシカ、それらしい言葉をそなたは知らないだろうか。その言葉が皆を救う」
「そんな、急に言われてもわからないわ」
「なんでもいいんだ。気休め程度のものでもかまわない。呪文とはそういうおまじないの中にあるものらしい」
「おまじない・・・おまじない・・・」
ナウシカの手に飛行石を持たせ、アシタカが後ろから優しく抱きしめてくる。
「だいじょうぶだ、ナウシカ。落ち着いて思い出して」
261:
背を包む暖かさが、ナウシカの幼い頃の記憶を刺激する。
泣いている彼女を抱きしめ、色んなおまじないを教えてくれた祖母の声。
そうだ、あのおまじないなら。
「アシタカさん、私できるかもしれない!」
「やってごらん。何が起きても私が君を守るから」
頷き、ナウシカはおまじないを唱えた。
「リーテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール(我を助けよ 光よ蘇れ)」
262:
ナウシカが唱えおわった途端、膨大な光が飛行石から発せられた。
部屋の床に記されていた陣が反応し、飛行石と呼応しあってどこまでも光が広がっていく。
それは飛行石を活性化させる呪文だった。
本来、人ひとりをゆっくりと浮遊落下させる程度のチカラしかない飛行石が
活性化と陣の助力を得て、この巨大な戦艦ごと浮かびあがらせるほどの浮力を発揮しはじめた。
「すごい・・・! やったぞナウシカ! ・・・ナウシカ?」
ナウシカの顔色が悪い。必死の形相で、飛行石を握り締めている。
265:
「どうしたんだ!」
「石のチカラが・・・強すぎて」
ナウシカの手の中で飛行石が暴れまわっているようだった。
いや、それだけではない。掴んでいるナウシカの手自体が、結晶に変化しようとしている。
「放すんだナウシカ!」
「ダメよ! ここで放したら船が墜落しちゃう!」
言う間にどんどん結晶化が進み、ナウシカの肘の辺りまで変化してきた。
「よせ! 死ぬつもりか!」
「死んだってかまわない! 私ひとりの犠牲で済むなら、死んだってかまわないわ!」
「生きろ!」
アシタカの手ががナウシカの手をうえから包む。
「アシタカ! やめて! あなたまで死んじゃう!」
「放すものか!」
266:
アシタカの手にチカラがこもる。
「生きろ・・・生きるんだナウシカ。そなたは美しい」
「えっ?」
「君も、私も、誰も犠牲にはならない。共に生きて帰ろう」
「・・・うん」
「シシ神よ! 私に贖罪の機会を与えたまえ! 命を救うために今一度チカラを貸してくれ!」
アシタカの身体に白の紋様が浮かびあがり・・・そして
268:
〜 〜 〜
金色の野を一頭のシシが歩いている。
楽しげな足取りでどこまでも歩いていく。
シシが土を踏むたびに大地は喜び、命を芽吹かせる。
シシの名は命。その息吹は祝福。
シシは野の中ほどで、ふたつの命を見た。
命は消えようとしていたが、生きればもっともっと楽しい命になりそうだった。
シシはふたつの命に、祝福を与えた。
〜 〜 〜
269:
アシタカは夢を見ていた。
遠い過去の記憶。もう会えない人々。
隣に姫が座っていた。美しい眼の姫だ。
姫はアシタカをふりむき、微笑んでくれた。
270:
気がつくと、アシタカは金色の葦の草原に座っていた。
西に沈もうとしている太陽の光が全てを優しく包んでいる。
腕の中にはナウシカがいた。まだ夢を見ているのだろうか。
ナウシカが身じろぎして目を覚ます。アシタカに気付き、そして野にいることに気付き、彼女もきょとんとしている。
「私達・・・どうなったの? ここは天国かしら?」
「いや、そうじゃなさそうだよ。生きているみたいだ」
遥かうしろに空中戦艦の残骸を見つけた。
彼らは気力をふりしぼり、戦艦を誰もいない無人の砂漠にまで運んだのだが
そこで部屋の陣が壊れ、墜落してしまったのだ。
落ちたとき、確かにここは砂漠だったのだが、今は草原に変わっていた。
「アシタカ・・・その腕!」
見ると右腕をとりまいていた、染みが手のひらのわずかな部分を残して消えていた。
「シシ神よ・・・私を許してくれるのか」
271:
ふたりが野を進んでいると、遠くに同じくふたつの影を認めた。
「うそっ! あれって!」
手を振り、近づいてくるのはハウルとソフィだった。
四人は再会を喜びあい、共に帰路に着く。
272:
「そんなわけで、僕達はこれからラピュタへ向かうよ。
カルシファーが寂しがってるだろうからね。早く迎えに行ってやらなきゃ」
「ハウル、ソフィ、それにマルクル君、旅が終わったらいつでも遊びにきて。お元気で!」
「ええ貴方達こそ、お元気で。次に会うときは空飛ぶ城で一緒に旅に出ましょう。きっと素敵な旅になるわ」
「アシタカ君、今回のところはまぁナウシカからは手をひくよ。彼女はどうも僕に気がないみたいだし。
だけどもし彼女を悲しませた時は覚悟したまえ。君を倒してもう一度彼女をさらっていくからね。
僕は悪い魔法使いなんだ。せいぜい気をつけたまえ」
「しばらくそなたの軽口が聞けなくなると思うと寂しいな。何か困ったことがあればいつでも呼んでくれ。
ヤックルに乗ってどこでも駆けつけよう」
異界の扉が開き、三人は旅立っていった。
278:
「私達も行きましょう、アシタカ」
「どこにだい?」
「色んなところよ。世界には不思議なことがたくさんあるんだもの。
世界のことをもっと知れば、もっともっと素敵な世界にしていけるわ!」
「ああ、そうだね。行こう・・共に生きよう」
金色の野の丘でトトロが腹を掻いて寝そべっている。
腐海の森の奥深くでは木霊が顔を鳴らしていた。
おわり
280:
精いっぱいの乙
282:

いわゆるクロスものを初めて読んだんだが、元を知ってると面白いな
284:
全員キャラ崩れてなくてすごいな
287:
最後まで読んでくれて心からありがとさんです。
特に保守カキコしてくれた方々には頭あがりません。長時間のキープほんと感謝します。
ちょい余裕できたらいくつかレスします。
288:
全力で拍手する
294:
改めてたくさんの支援ありがとさんでした。
次パロ書くことがあれば、
文学少女の遠子先輩がそっち系の小説食ってだんだん気持ちよくなっていく話か
アスベルがナウシカをNTRる話
あるいは普通に青春ストライク系ジブリかもしんないです。
どちらかっちゅうと前者ふたつの可能性が高いです。
そんじゃまた。最後までお付き合いいただきまして本当にあんがとさんでした。
295:
乙だー
こういうオールスターものってすごく好きなんだ
また何か思いついたらやってください
29

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