小鞠「夏海は去年までお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ってたよね」back

小鞠「夏海は去年までお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ってたよね」


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1:
教室
れんげ「ほたるん。にゃんぱすー」
蛍「おはよう、れんちゃん。あれ、こま先輩と夏海先輩は?」
れんげ「まだきてないのん」
蛍「そっか」
れんげ「それより、ほたるん。ビッグニュースがあるのん」
蛍「え?なになに?」
れんげ「ウチ、ついに一人お風呂デビューしました!!」
蛍「へぇー、すごーい」
れんげ「ウチ、もう頭からお湯とかかぶっても平気なのん」
蛍「れんちゃん、偉いね。私なんて去年までお父さんと一緒に入ってたよぉ。最近、一緒に入ってくれなくなったけど」
4:
れんげ「ほたるんはまだまだこどもなのんなー。ウチなんて湯船につかって30までは数えちゃうのん」
蛍「うん。私もれんちゃんを見習わないとね」
れんげ「見習うのん」
小鞠「おはよう、蛍、れんげ」
夏海「おーっす」
蛍「おはようございます」
れんげ「にゃんぱすー」
小鞠「なんか話してたの?れんげの声、廊下まで聞こえてたけど」
れんげ「よくぞきいてくれました。実はスーパーニュースがあるのん」
夏海「なに?一人でお風呂に入れるようになったとか?」
れんげ「なっつん!!なんで知ってるん!?エスパーなのん!?」
夏海「れんちょんのことならなんでも分かるからね、ウチは」
れんげ「流石、なっつん!!なっつんはウチのことなんでもしってるん!!」
小鞠「いや、声が廊下まで聞こえてたからだって」
7:
蛍「聞いたんですか?」
小鞠「一人お風呂デビューだけはよく聞こえたからね」
れんげ「なっつん、なんでウチに嘘つくん!」
夏海「いやぁ。年上としてエスパーなところも見せておきたくてさぁ」
小鞠「なんだそれ」
夏海「でも、れんちょんはすごいなー。小学一年生で一人お風呂なんて難易度高いと思うけど」
小鞠「それもそうだよね」
蛍「私も去年まではお父さんと一緒に入ってました」
夏海「えー!?マジで!?」
小鞠「そうなんだ。ちょっと意外かも」
蛍「そうですか?こま先輩はどうですか?」
小鞠「私は早かったよ。小学校2年生ぐらいには卒業してたし」
夏海「ウチもそれぐらいかなー」
れんげ「みんなウチよりデビューが遅いのん。だめだめなん」
9:
夏海「いやー。ある意味、れんちょんはすごいって。なんかさ、一人でお風呂って結構勇気いるし」
蛍「分かります。目とかつぶると怖いですよね」
夏海「そーそー。姉ちゃんとかよく泡を目に入れちゃって大騒ぎしてた」
小鞠「うるさいなぁ!シャンプーハット付け忘れたときのことを今言うなって!」
夏海「姉ちゃん、未だにつけてるんだっけ?」
小鞠「つけてないぃ!!小学5年生でやめたんだから!!」
蛍「それまではつけてたんですね」
れんげ「こまちゃん、ウチもそれは外せないのん」
小鞠「だよね。頭洗ってるときに目をつぶると、誰かが背後にいる感じがして……」
れんげ「いや、泡が目に入ったらいたいいたいになるからなのん」
小鞠「……」
夏海「あっはっはっは。やっぱり姉ちゃん、怖いんじゃん。今でもシャンプーハットは必需品なんでしょー?素直になりなってー」
小鞠「……なに?」
夏海「それにー、姉ちゃんが小2で卒業したのは父ちゃんと一緒に入るのだけで、暫くはウチと一緒に入ってたじゃん」
10:
小鞠「いうなー!!」
蛍「そうなんですか?」
れんげ「こまちゃん、いつまでなっつんと入ってたのん?」
小鞠「いや、まぁ、えっと……」
夏海「去年までは一緒に入ってたよねー」
小鞠「入ってない!!2年前の12月が最後だった!!間違いない!!!」
夏海「去年みたいなもんじゃん」
小鞠「全然違う!!」
れんげ「こまちゃんとなっつんはデビューがおくれてるん」
夏海「いやいや、れんちょん。私は違うから。姉ちゃんが一人じゃ入れないから、仕方なくウチも入ってたんだって」
れんげ「つまり、こまちゃんだけが一人お風呂できてなかったと?」
夏海「そうそう。そういうこと」
小鞠「夏海……そんなこというんだ……」
夏海「え?なにが?事実だし」
12:
小鞠「夏海は去年までお兄ちゃんと一緒にお風呂に入ってたよね」
夏海「ばっ……!?!?」
蛍「え……」
れんげ「なっつん、そうなのん?」
夏海「いや!違うって!!姉ちゃん、なにいってんの!?そんなことあるわけないじゃん!!!」
小鞠「忘れもしないよ。去年の夏だったかな……」
夏海「おー!!おー!!ちょっとまってよ、お姉様ぁ!!!」
小鞠「なに?」
夏海「あれは……あの……小学生だったし……セーフってことで……」
小鞠「えー?でもなぁ、事実だしなぁ」
夏海「いやぁ、あれはだって、事故みたいなもんだったし……」
小鞠「事故ぉ?夏海から誘ってなかったっけぇ?」
夏海「ちがっ!!違いますよぉ!!都合のいい記憶をおもちですなぁ!!ウチの姉ちゃんは!!」
れんげ「なっつん、もしかしてウチらの中で一番一人お風呂デビューがおそかったのん?」
14:
夏海「ウチは早いって!!小3ぐらいで一人で入ってた記憶しかないし!!」
蛍「あの……」
夏海「ほたるんは信じてくれるよね!!ね!!」
蛍「なんというか……ご本人にきくのがいちばんかなーって……」
夏海「ほ、本人って……」
卓「……」
小鞠「お兄ちゃん、去年の夏に夏海と一緒にお風呂はいったよね?」
卓「……」コクッ
れんげ「やっぱり!!」
夏海「ちょっと!!兄ちゃん!!なんでいっちゃうかなぁ!!!」
蛍「仲がいいんですね」
夏海「ほたるん!!勘違いしちゃいけない!!事情、事情があるんだから!!」
蛍「事情ですか……?」
夏海「ほら、兄ちゃん!!話してよ!!あの日のことをさぁ!!!」
卓「……」
16:
一年前
夏海「うぇぇ……さいあくだぁ……」
小鞠「ど、どうしたの、夏海!?ていうか、くっさ!!」
夏海「やっぱり?ウチも自分のこと臭いと思ってたところさ」
小鞠「もしかして、あそこに入ったの?」
夏海「見事に肥料まみれです……」
小鞠「どうしてあそこにはまっちゃうの?」
夏海「いや、普通に帰ってくるのもつまんないから、目をつぶって歩いてたらこんなことに……」
小鞠「バッカじゃないの!?そんなことしたら危ないじゃん!!」
夏海「反省はしてます」
小鞠「あーもう、いいからお風呂入りなよ」
夏海「へいへーい」
小鞠「ああ、そのまま上がるな!!おにいちゃーん!!拭くものもってきてー!!」
卓「……?」
17:
小鞠「え?庭?」
卓「……」コクッ
小鞠「あ、そっか。まずは外で汚れを流したほうがいいか」
夏海「あー、そうしよう、そうしよう」
小鞠「そうと決まれば庭に移動して、ほらほら」
夏海「うぅー……」
卓「……」
夏海「なにぃ、兄ちゃん?」
卓「……」
夏海「え?」
小鞠「夏海ー!!はやくー!!」
夏海「今、いきまーす」
小鞠「ほら、そこにたって!水、かけるから!」
夏海「や、やさしくおねがいします」
19:
小鞠「うりゃー!!」バシャーン
夏海「うわっぷ!!」
小鞠「どう?」
夏海「まだ、よごれてるかなぁ」
小鞠「それじゃ、もう一発ね」
夏海「も、もっと優しくして……」
小鞠「うるさい!!」バシャーン
夏海「うぶっ!?」
小鞠「これでよしっ。さ、これで拭いて」
夏海「はいはい……」ゴシゴシ
小鞠「拭いたらお風呂いきなよ」
夏海「わかってるってぇ」
卓「……」
小鞠「お兄ちゃん、どうかしたの?ずっと夏海を見てるけど」
20:
小鞠「うわ!ホントだ!?夏海!血が出てる!!」
夏海「え?マジで?うわぁ……足、きったんだ……」
小鞠「もー。救急箱出しておくから、とりあえずお風呂ね。まだ少し臭いし」
夏海「そんなに臭い臭いいわなくてもわかってるって」
卓「……」
夏海「くさいし、血はでるし……夏海ちゃんの厄日だ……」
小鞠「救急箱はどこだっけー?」
夏海「あー……今日、夏休みの宿題しようと思ってたけど、やめたー」
卓「……」グイッ
夏海「おぉ!?な、なに、兄ちゃん!?」
卓「……」
夏海「……」
卓「……」
夏海「いや、なんか言ってよ……。そんな見つめられても……。今のウチ、くさいし……」
22:
夏海「え?ウチの頭、兄ちゃんが洗うの?」
卓「……」コクッ
夏海「バカにしないでくれるかな、兄ちゃん。ウチは小6、来年から中1なんだよ?一人で洗えるって」
卓「……」
夏海「もういいからはなして」
卓「……」コクッ
夏海「それじゃ、ウチは禊を済ませてきますので。おっふろー、おっふろー」
卓「……」
小鞠「救急箱とれないぃ……!!うーん……!!だれぇ!!こんな高いところに救急箱置いたのは!!とれないじゃん!!」
卓「……」スッ
小鞠「ありがとう、お兄ちゃん」
卓「……」
小鞠「夏海はほんとバカだよね。来年から中学生なのに、正直不安しかないよ」
卓「……」コクッ
24:
夏海「――じゃーん!!夏海ちゃん、ふっかーつ!!!」
小鞠「はい、こっち来て。絆創膏はってあげるから」
夏海「一人でできるってば」
小鞠「いいから、くる」
夏海「うぇー。姉ちゃん、最近母ちゃんに似てきてない?」
小鞠「さーね。夏海がバカだから、お母さんと同じ事を言わせてるだけじゃない?」
夏海「なんだよー、そのいいかたー。まるでウチが出来損ないの妹みたいじゃん」
小鞠「ほら、足出して」
夏海「はぁーい」
小鞠「えーと、ここだ。はるね」
夏海「おねがいしまーす」
小鞠「……ん?」
夏海「どしたの?」
小鞠「夏海、まだなんか臭いんだけど……」
夏海「え!?嘘!?しっかり洗ったって!!反省と一緒に!!」
26:
小鞠「反省と一緒に洗うな!!」
夏海「ど、どこ?どこが臭いん?」
小鞠「うーん……。よくわかんないけど、夏海が臭い」
夏海「存在が臭いのかよ!?」
小鞠「ちゃんとあらったー?」
夏海「あらったさ!!こう見えてもウチ、綺麗好きだもんね!!!」
小鞠「どの口がいってんの?」
夏海「臭いかなぁ……?」
小鞠「もう一回、入ってきたら?」
夏海「でも、今絆創膏貼ったばかりなのにとれちゃうじゃん。そんなもったいない。絆創膏に恨まれるって」
小鞠「はぁ?絆創膏貼ってても大丈夫だって。すぐには剥がれないし」
夏海「姉ちゃん、ちょっと離れてみて」
小鞠「えー?……これくらい?」
夏海「どう?臭う?」
小鞠「いや、臭わないけど」
28:
夏海「おーるおっけー!!」
小鞠「夏海、お母さんにバレたらまた怒られるよ?いいの?」
夏海「これぐらいの距離を保っていればバレることはないでしょ?」
小鞠「……もういい。好きにすれば?」
夏海「わーい」
小鞠「あとで痒くなってもしらないからねー」
夏海「へーきだって!」
小鞠「夏海ったら……。私のいうこと一つも聞かないんだから……」
小鞠「でも、臭かったが気になるなぁ……」
卓「……」
小鞠「あ、お兄ちゃん。いたんだ」
卓「……」コクッ
小鞠「ねえ、お兄ちゃんからもいってあげて。夏海、臭かったのにお風呂入ろうとしないし」
卓「……」
31:
夏海「ふんふーん」
卓「……」
夏海「ん?なに、兄ちゃん?」
卓「……」クサッ
夏海「え!?なになに!?急に失礼じゃん!?」
卓「……」
夏海「兄ちゃんまで何言い出すんだよ!!もー!!妹をうやまえー!!」
卓「……」
小鞠「ほら、夏海。お兄ちゃんも臭いっていってるし、お風呂入って」
夏海「また夜に入るって。今はつかれてるんだから、ちょっと休ませてよー」
小鞠「あのねぇ……」
卓「……」スッ
夏海「え?なに……?本?」
小鞠「お兄ちゃん、その本なに?家庭の医学……?」
卓「……」ペラッ
33:
夏海「……」
小鞠「えーと……。傷口に雑菌がはいって、かいし……?」
卓「……」フルフル
小鞠「ああ、壊死って読むんだ。壊死してしまう可能性があるので……よく洗いましょう……」
夏海「これがなに?」
卓「……」ペラッ
夏海「ぎゃぁー!?」
小鞠「お、お兄ちゃん!!なにこれ!?気持ち悪いんだけど!?あ、足が腐ってる写真なの!?」
卓「……」コクッ
小鞠「も、もしかしてこのままだと、夏海の足がこうなるの……?」
卓「……」コクッ
夏海「またまたー。兄ちゃん、そんな嘘がこの夏海ちゃんに通じるとでも思ってるの?あっはっはっは」
卓「……」
小鞠「な、夏海ぃ……」
夏海「足がこれぐらいのことで腐るとかないない。大袈裟すぎだってー」
36:
卓「……」
夏海「もういいから。ちゃんとお風呂入るって。夜には」
小鞠「夏海!!もしもこうなったらどうすんの!?歩けなくなったらこまるじゃん!?」
夏海「いや、だってちょっと切っただけだしー」
卓「……」ペラッ
小鞠「え、えーと……小さな傷からでも……壊死ははじまり……ます……」
夏海「……え?」
小鞠「な、なつみ!!ほら、もっとよく洗わないと!!腐っちゃうから!!」
夏海「なんだよー!入ってきたらいいんだろ!!はいってきますよ!!」
小鞠「初めから素直にそう言えばいいのに」
夏海「全く。そんな写真みたいなことになるわけないのにさー。そこまでウチをお風呂にいれたいのはわかったけど」
小鞠「夏海、ちゃんと洗いなさいよ!!隅々まで!!」
夏海「はいはい」
卓「……」
38:
夏海「姉ちゃんも兄ちゃんもなんであそこまでいうかねぇ……。わけわかんないし」スルッ
夏海「こんなことで足が腐るとか、ありえないし」
夏海「大体、さっき洗ったんだからもう十分菌も流れ落ちてるはずだし」
夏海「腐るとかないない。ありえない」ゴシゴシ
夏海「……」ゴシゴシ
夏海(でも、よく洗ったはずなのに、姉ちゃんには臭いっていわれたなぁ)
夏海(どうして臭いんだろう……?)
夏海(そういえば、腐ったら臭くなるってきいたことが……)
夏海(も……もしかして、ウチ腐ってきてる……?)
夏海「な、ないない!!だって、傷も浅かったし!絆創膏はったからもう安心だし!!」
夏海「消毒……はしてないけど……」
夏海「水で洗ったから……でも……菌はもうはいってて……ウチ、くさって……」
夏海「……」
夏海「うわぁー!!!!あぁー!!!ウチ、腐ってるん!?どーしよー!!!」
39:
小鞠「夏海!?どうしたのん!?」
夏海「ねーちゃん!!ウチ、くさってるかもしれないのん!!」
小鞠「えぇぇ!?ど、どこが!?どこがぁ!?」
夏海「わかんないけど!!ウチ、臭いし!!」
小鞠「えー!?あー!!ちゃんと洗ったの!?洗ったら大丈夫だって!!」
夏海「でもでも!!さっき洗ったのに姉ちゃんには存在が臭いっていわれた!!」
小鞠「それは、なんかどこから臭ってきてるのかわかんなくてぇ……」
夏海「ってことはもう全身が腐ってるってことじゃん!?」
小鞠「そ、そうなの!?夏海!!全身が腐ってるの!?」
夏海「ウチ、もう人間じゃないのん!!」
小鞠「ぎゃー!!!ゾンビー!!!」
夏海「姉ちゃん、まてー!!!」
小鞠「こっちこないでー!!」
夏海「ひどい!!姉ちゃん!!!ゾンビでもウチ姉ちゃんの妹なのにー!!!」
小鞠「あ、そうだ……。私、なにいってんだろ……。で、でも、ゾンビになった妹とどう接していけばいいのん……?」
41:
夏海「姉ちゃん……ウチのことみすてないでぇ……」
小鞠「よしよし。大丈夫だから、夏海のことは守ってあげるから」
夏海「姉ちゃん……もう姉ちゃんだけが頼りだよ……」
小鞠「でも、やっぱりちょっと臭いね」
夏海「腐ってるからね」
卓「……」コンコン
小鞠「あ、お兄ちゃん!?お兄ちゃん、夏海が大変なのん!!」
夏海「兄ちゃん、ウチソンビになっちゃったんだけど、家庭の医学でどうにかならない?」
卓「……」フルフル
小鞠「首振ってる……。だめなんだ……」
夏海「うぅ……ねえちゃん……」
小鞠「なつみぃ……」
卓「……」コンコン
夏海「な、なに、兄ちゃん?」
43:
小鞠「え!?ほんと!?洗えば大丈夫なの!?」
卓「……」コクッ
夏海「兄ちゃん、それマジ!?マジなのん!?」
卓「……」
小鞠「よし!!なら夏海!!洗おう!!洗えるところは全部洗うぐらいの勢いで!!!」
夏海「あぁ、でも、ウチじゃしっかり洗える自信ないよ。姉ちゃん、洗って」
小鞠「洗ってあげたいのは山々だけど、私も自信ないよ……」
夏海「そ、そんなぁ!」
小鞠「そ、そうだ!お兄ちゃん!!」
卓「……」
小鞠「お兄ちゃんなら上手く洗えるはずだよね!!お願い、夏海を救って!!」
夏海「兄ちゃん、ウチの体を洗ってよー!!」
卓「……」コクッ
小鞠「やった!!夏海!!おにいちゃん、洗ってくれるって!!」
夏海「やっほー!!兄ちゃん、早くはいってきて!!ほらほら!!」
45:
卓「……」ガラッ
小鞠「お兄ちゃん、がんばって!」
卓「……」コクッ
夏海「どうしたらいい?ウチ、座ってていいの?」
卓「……」ガシッ
夏海「おぉう……」
卓「……」ゴシゴシ
夏海「あー……」
卓「……」
小鞠「ど、どう?」
夏海「なんか懐かしいー。昔は3人でお風呂はいってたもんね」
小鞠「そうだね。自然と入らなくなっちゃったけど」
夏海「なんでかなー。兄ちゃんが嫌がりはじめたんだっけー」
小鞠「そうだったかも」
卓「……」ゴシゴシ
46:
夏海「右が痒いかな?」
卓「……」ゴシゴシ
小鞠「私、着替えとタオル用意しとくから」
夏海「うん、おねがい」
小鞠「ごゆっくり」
夏海「あーい」
卓「……」ゴシゴシ
夏海「はぁー……きもちいー……でも……これ……」
卓「……」
夏海「兄ちゃん!!これはマズイって!!!」
卓「……」
夏海「いや、ウチ、裸だし!!兄ちゃんが体洗うってよく考えたら変じゃん!!」
卓「……」
夏海「ねえちゃーん!!!やっぱり姉ちゃんがあらってー!!!」
48:
小鞠「なにいってんの。お兄ちゃんに洗ってもらったほうが確実じゃん」
夏海「そういうことじゃなくって!!ウチ、兄ちゃんに裸見られてるんですけど!!」
小鞠「夏海の裸なんてお兄ちゃんが気にするわけないってば」
夏海「ウチが気にするんですが!!」
小鞠「腐ってもいいの!?」
夏海「そ、それは困るけどさぁ」
小鞠「だったら、お兄ちゃんに洗われたほうがいいんだから、洗われてこい」
夏海「うぅぅ……兄ちゃん、目はつぶって……」
卓「……」
夏海「あ。もうつぶってたのか……。もしかして入ってくるときから?」
卓「……」コクッ
夏海「なんだ……そうなんだ……」
卓「……」ゴシゴシ
夏海「……」
49:
卓「……」バシャーッ
夏海「んー……」フルフル
卓「……」
夏海「終わり?」
卓「……」コクッ
夏海「えっと……兄ちゃんが先、出る?」
卓「……」コクッ
夏海「あ……兄ちゃん……」
卓「……」
夏海「もう、ウチ、腐らない、よね?」
卓「……」
夏海「兄ちゃん!?腐らないよね!?」
卓「……」コクッ
夏海「はぁ……よ、よかったぁ……。兄ちゃん、ありがとう……洗ってくれて……」
小鞠「なつみー!!もう大丈夫なのん!?」ギュッ
51:
夏海「ね、姉ちゃん……」
小鞠「ほら、体拭かないと。夏でも風邪はひくしね」ゴシゴシ
夏海「くすぐったいってぇ」
小鞠「我慢して!」
夏海「うぅー」
小鞠「お兄ちゃんっ」
卓「……」
小鞠「夏海のことありがとう」
卓「……」コクッ
夏海「今日はホント、夏海ちゃんは厄日だなぁ」
小鞠「なにいってるの。お兄ちゃんに体洗ってもらってよかったじゃん」
夏海「恥ずかしいだけだって、あんなの」
小鞠「私なんてもう随分、お兄ちゃんに洗ってもらってないんだから」
夏海「それはそうかもしれないけどさ。いや、ホント恥ずかしいし」
小鞠「ごちゃごちゃ言わない。まだ拭けてないんだから。一応、あとで絆創膏は貼りなおしとこうか」
53:
卓「……」
小鞠「ほら、夏海。足、見せて」
夏海「もう血は止まってるみたいだけどね」
小鞠「貼っておかないとバイキンはいって壊死して、腐って、夏海が歩けなくなったら私が困るじゃん!!」
夏海「うぇー。ごめんなさーい」
小鞠「全く、夏海は……」ソーッ
夏海「慎重に貼ってくれるんだね」
小鞠「はい、貼れたよ。お兄ちゃん、これで夏海はゾンビにならずに済むんだよね?」
卓「……」
夏海「兄ちゃん。ウチの足は大丈夫なんだよね!?」
卓「……」コクッ
夏海「あぁー!!今日はホントにつかれたー!!お腹もすいたー!!ごはんまだー!!」
小鞠「もうすぐお母さんも帰ってくるから、それまでの辛抱」
夏海「はぁ……。そうだ。もうウチ、臭くない?」
小鞠「え?んー……うんっ。大丈夫。いつも通り、夏海の匂いがする」
54:
夏海「よかったぁ」
小鞠「これもお兄ちゃんの洗い方が上手かったからだね」
夏海「確かに。兄ちゃんに頭洗われてるとき、すっごく気持ちよかった」
小鞠「本当?私も洗ってもらおうかな」
夏海「いいの、姉ちゃん?」
小鞠「なにが?」
夏海「冷静に考えてみ。兄ちゃんと一緒に風呂だよ?」
小鞠「それがなに?」
夏海「いや、だって、兄ちゃんに裸みられたいの?」
小鞠「水着着ればいいだけだし」
夏海「水着着てふろに入るのかー!!そんなの日本人としてどうかとおもうけどー!!!」
小鞠「裸でお兄ちゃんと一緒なんて無理にきまってんじゃん!!」
夏海「裸ではいったウチはどうなるんだー!!」
小鞠「しるかー!!」
卓「……」
56:
教室
卓「……」
れんげ「ほぉー。去年、そんなことが」
蛍「えっと……」
夏海「兄ちゃん、細かいところまで覚えてるなぁ」
小鞠「わ、私、そんなこと言ってたっけ……?」
卓「……」コクッ
小鞠「あははは……流石、お兄ちゃんだね……」
れんげ「それで、こまちゃん」
小鞠「え?な、なに?」
れんげ「兄にぃとお風呂、一緒にはいったのん?」
小鞠「え……?」
蛍「は、入ったんですか?その日の夜とかに」
夏海「……姉ちゃん?」
小鞠「いやー。入ってるわけないよー。だって、私はもう中学生だったしー……」
58:
夏海「入ったんだ!!姉ちゃんも兄ちゃんと入ったのか!!!」
小鞠「入ってない!!入ってないって!!!」
夏海「怪しい!!目が泳いでるし!!絶対に入ってる!!」
小鞠「お、お兄ちゃん!!なんとか言ってよ!!あの日、入ってないよね!?」
卓「……」コクッ
夏海「ホントに!?」
卓「……」コクッ
小鞠「ほ、ほら!!私とお兄ちゃんが一緒にお風呂入ったのは、小学生までなの!!」
夏海「ホントかぁ……?」
小鞠「ホントだってばぁ!!お兄ちゃんは嫌がってはいってくれ……あ」
夏海「……」
蛍「せ、先輩から卓先輩を誘ったんですか……?」
小鞠「あ……あにょ……」
夏海「こまちゃん、散々ウチのことバカにしておいて、兄ちゃんのこと誘ったんだぁ……へぇ……?」
小鞠「だ、だって……夏海だけ……洗ってもらって……その……なんか……不公平で……」
60:
夏海「ふざけるなー!!!」
小鞠「うぇぇぇん!!ごめんなさーい!!!」
れんげ「結局、こまちゃんもなっつんも去年まで一人お風呂デビューできてなかったん」
夏海「違うって!!ウチのは事故だから!!ノーカン!!姉ちゃんのほうが問題あるっしょ!!」
小鞠「でも、一緒に入ってないもん!!ノーカンだぁ!!」
夏海「誘ってるくせに!!」
小鞠「でも、入り損ねたし!!」
蛍「あ、あの、やめてくださいよぉ」
卓「……」
蛍「す、卓先輩も見てないで二人を止めてください」
卓「……」
れんげ「ほたるん。兄にぃはこういうときどうすればいいのかわかってるのん」
蛍「え?ど、どうするの?」
れんげ「見守るん!!」
蛍「それだけ!?」
62:
一穂「はーい。席についてー。楽しい授業をはっじめっるっよー」
夏海「ふんっ」
小鞠「ふんだっ」
一穂「あらぁ、どうかした?喧嘩でもしたの?」
夏海「姉ちゃんが兄ちゃんをお風呂に誘ったんだよぉ!!」
小鞠「夏海だけ一緒に入っててちょっとだけ羨ましかったの!!」
一穂「……なんの話?」
れんげ「こまちゃんとなっつんは一緒にお風呂入りたかっただけなのん」
一穂「一緒に風呂?へぇー。まぁ、裸の付き合いって大事だもんなぁ」
蛍「そうなんですか?」
一穂「そうだぞぉ、ほたるん。裸になることでお互いの距離が近づくってもんさ。だから、一緒にお風呂って大事なことなんだよねぇ」
れんげ「え……。ということは、一人お風呂デビューはいけないことなん?」
一穂「いけないことではないけどねぇ。みんなでお風呂もいいよねぇ」
れんげ「むむむ……ウチ、一人お風呂デビューは早すぎたかもしれないのん。ほたるん、なっつん、こまちゃん。話があるのん」
蛍「え?なに?」
63:
宮内家
夏海「おじゃましまーす」
小鞠「きましたけどー」
蛍「こんばんはー」
れんげ「いらっしゃいん!!」
一穂「いやー。よくきたねぇ。さ、おはいり」
蛍「ちょっとドキドキします。友達の家でお風呂だなんて……」
一穂「そんなに広いお風呂じゃないから、ちょっと窮屈かもしれないけどねぇ」
蛍「いえ、そんなことはありません!!」
れんげ「今日はみんなでお風呂デビューなのん!!」
夏海「別にウチはさぁ……」
小鞠「私だって、入りたいわけじゃ……」
れんげ「兄にぃも一緒がよかったのん?」
夏海「なわけあるかー!!!」
一穂「まぁ、兄ちゃんも男だしね。その辺は先生として許すわけにはいかんねぇ」
66:
れんげ「おふろーみんなでおふろー」
蛍「先輩とお風呂だなんて……うふふふ……」
一穂「しっかり温まっておいで」
夏海「……なんでこんなことに」
小鞠「れんげの頼みじゃ断れないじゃん」
夏海「そうだけど……」
れんげ「なっつん、迷惑だったのん?」
夏海「え!?いやいや!!そんなことないって!!ほら、れんちょん。服脱ごうか!ばんざーいして!ばんざーい!!」
れんげ「ばんざーいん!!」
夏海「よいしょー!!」グイッ
れんげ「すぽーん!!!」
夏海「いや、顔で引っかかってるから、れんちょん。気持ちよく脱ぎたかったんだろうけど」
れんげ「なっつん……はやくぬがしてなのん……」
蛍「先輩もバンザーイしてください」
小鞠「一人で脱げるよ!!!」
68:
蛍「先輩、背中洗ってあげましょうか!?」
小鞠「一人でできるってばぁ」
蛍「で、でも、ほら!!みんなでお風呂の醍醐味ってこういうことじゃないですか!?」
小鞠「……というか、蛍の体は直視できない」
蛍「ど、どうしてですか!?」
れんげ「……」
夏海「れんちょん、頭洗ってあげようか?」
れんげ「ウチ、ほたるんに洗って欲しいのん」
夏海「え?」
れんげ「ほたるーん!!あらってなのーん!!」
蛍「で、でも……」
れんげ「ほたるんにゴシゴシしてほしいん!!」
蛍「……うんっ。洗ってあげる」
れんげ「くるしゅうないのん」
蛍「夏海先輩はこま先輩のことお願いしますね」
70:
夏海「えぇ……」
小鞠「……いいよ。一人で洗えるから」
夏海「いや、でも、姉ちゃんは頭洗うのヘタクソだし」
小鞠「なにをぉ!?なら、そこで見とけ!!うりゃー!!」ゴシゴシ
夏海「姉ちゃん、目開けてたら……」
小鞠「いたたたたた!!!目に!!目にはいった!!いたい!!いたい!!」
夏海「ほーら、いわんこっちゃない。姉ちゃん、流すよー」バシャー
小鞠「いたいぃ……」
夏海「ほら、目つぶって。ウチが洗うから」
小鞠「うん……」
夏海「やっぱり、姉ちゃんにはウチがいないとダメだね」ゴシゴシ
小鞠「違う。今日はたまたま上手くいかなかっただけだもん」
蛍「れんちゃん、痒いところない?」
れんげ「おしりがかゆいのん」
蛍「いや、頭の部分で言ってほしいんだけど……」
74:
れんげ「さっぱりん!!」
蛍「湯船につかりましょうか」
小鞠「さんせー」
夏海「いやぁーごくらくじゃー」
蛍「あったかーい」
れんげ「いいゆじゃー」
小鞠「ふぅー……」
夏海「なんか今日は変に疲れちゃったよ」
小鞠「夏海が余計なこというから」
夏海「姉ちゃんが真実を隠そうとするから」
小鞠「それはだから……」
夏海「いや、まぁ、いいか。昔のことだしねー」
小鞠「そうだね」
れんげ「これから一緒にお風呂はいるときは、ウチらと一緒に入ればいいのんな!」
蛍「うん!いいね!週に一回は入ろう!!」
75:
夏海「週一回は多すぎない?」
蛍「えー!?そうですか!?いいと思いますけど!!私の家で入ってもいいですよ!?」
小鞠「いや、どの家とかの問題じゃなくて」
れんげ「ウチも一緒がいいのん!!」
夏海「れんちょん、一人お風呂できなくなってもいいの?」
れんげ「一人よりみんなといっしょがいいのん!!」
夏海「れんちょんがそこまでいうなら、ウチも賛成ってことで」
小鞠「マジぃ?」
蛍「先輩は嫌なんですか!?」
小鞠「嫌って言うかさぁ」
れんげ「こまちゃん、アヒルさんと船だけじゃつまらないん?」
小鞠「玩具の問題でもないんだけど」
夏海「いいじゃん、こまちゃん。裸の付き合いしよーよ」ギュゥゥ
蛍「そ、そうですよぉ!」ギュゥゥ
小鞠「こまちゃんいうなぁ!!ひっつくなー!!蛍も引っ付いてこないでー!!自分が惨めになるからー!!」
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