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恒一「お見舞いに来たよ、小椋さん」
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1:
恒一「やあ、小椋さん」
小椋「………」
恒一「…体の調子はどう?」
小椋「………」
恒一「顔色はいいみたいだね」
小椋「………」
恒一「でもちょっと痩せたかな?ちゃんと食べてる?」
小椋「………」
2:
恒一「今日は果物持ってきたよ」
小椋「………」
恒一「もうすっかり秋だし、色々売り出されててね」
小椋「………」
恒一「何にするか迷っちゃったよ」
小椋「………」
恒一「寒くない?空調の温度上げようか?」
小椋「………」
4:
恒一「あ、適当に雑誌買ってきたから置いとくね」
小椋「………」
恒一「中学生の女の子がどんな雑誌読むのか解らなくて、ほんと適当で悪いんだけど」
小椋「………」
恒一「何かリクエストがあるなら言ってね。次に来るときに持ってくるから」
小椋「………」
恒一「あ、いかん。花も買おうとしてたのに忘れてたな」
小椋「………」
恒一「ここの病室は殺風景だからね…景色はいいんだけど、さすがに見飽きるよね」
小椋「………」
恒一「………」
6:
恒一「僕も転校する前はここでお世話になってたんだよ」
小椋「………」
恒一「この風景も懐かしいな…あれからもう半年か」
小椋「………」
恒一「いや、まだ半年…のほうが正しいかな」
小椋「………」
恒一「あの日、クラスを代表してお見舞いに来てくれたのが赤沢さ…」
小椋「………」
恒一「………」
小椋「………」
恒一「…花…次に来るときは買ってくるからね…どんなのがいいかな?」
小椋「………」
恒一「………ふぅ…」
8:
恒一「………」
小椋「………」
恒一「…こほん」
小椋「………」
恒一「んー…っ」ポキポキ
小椋「………」
恒一「ふぅ…」
小椋「………」
小椋「………」
小椋「はぁ……あんたも物好きよね…つっ立ってないで座ったら?」
恒一「うん、ありがとう」ガタ
10:
恒一「何か剥くよ。リンゴでいいかな」
小椋「……うん」
恒一「信濃物産館やってたからふじりんご買っちゃった。これ美味しいんだよ」ショリショリ
小椋「……そう」
恒一「おや、ほら見てよ小椋さん、蜜がこんなに。アタリだね、これ」ショリショリ
小椋「………そう」
恒一「………」ショリショリ
小椋「………はぁ…」
11:
小椋「ザマぁ無いわね…」
恒一「え?」
小椋「恒一くん、お見舞いに来てくれたの何回目だっけ…」
恒一「えーと、7…いや、6回目かな?確か先週はこれなかったから」
小椋「もうそんなにか……あたしさ…最初のときは殆ど喋らなかったじゃない」
恒一「うん、そうだったね」
小椋「何か変な意地張っちゃっててさ…恒一くん相手に突っ張ったトコで意味無いのにね」
恒一「………」
12:
小椋「一応…悪いとは思ってたんだよ。でもなんか、言い方はアレだけどなかなか素直になれなくって」
小椋「でね、先週来なかったから、恒一くんもう来ないんじゃないかって思って……そしたらだんだん怖くなってきて…」
小椋「もし、また恒一くんがお見舞いに来てくれたら…次こそはちゃんと話そうって決めてたんだ」
小椋「でも、いざ来てくれたら……ふふ、あたしったら、今度はなかなか言葉が出てこないでやんの…」
恒一「……やっと調子を取り戻してくれたみたいだね。嬉しいよ」ショリショリ
小椋「まあねぇ、また布団の中で恒一くんの事考えて悶々するのもヤダし」
恒一「……」////
小椋「? どうかした?」
恒一「あ、いや…なんでもない」
13:
小椋「はー…」
恒一「…体の調子は、どう?」ショリ
小椋「ん…相変わらず…まともに動くのは右手だけ」
恒一「…そっか」
小椋「先生はリハビリすれば、可能性はまだ十分にあるって言ってたけど…」
恒一「…左手も最近は動かせるようになったそうじゃないか」
小椋「ほんの少しだけ…ね」
恒一「一歩一歩、ゆっくりやろう」
小椋「そうね…」
恒一「僕も協力するからさ」
小椋「ふふ…別にいいのに…」
14:
小椋「はぁ?あ…これはアレね。罰が当たったのかな」
恒一「ばち?」
小椋「だってそうじゃん…結局、見崎のヤツは死者じゃなかったんでしょ?それなのにあたし…」
小椋「あたし、あの時頭に血が上っちゃって、あんたたちをナイフで追い回して…」
恒一「お兄さんや綾野さんの事もあったからね…仕方ないよ」ショリショリ
小椋「グスッ、あんたたちは、みんなを救おうとしてたのに、あたし…何も知らないで…」
小椋「あたしが…あたしがあんな事…してなかったら…あたしは…こんな体には…」
小椋「それだけじゃないわ…もしかしたら…助かってた子もいたのかもって…」ジワ
小椋「それ考えるとあたし…罪悪感で夜も眠れなくって…ぐすっ」
小椋「笑っちゃうね…グス、きっと天罰なんだ…このままあたしは一生醜態晒しながら…」
恒一「あーん」
17:
小椋「…っ?」
恒一「小椋さん、はいあーんして」
小椋「え…な、なによ」
恒一「ほら、リンゴ切れたよ。あーん」
小椋「あ…う…な…」
恒一「どうしたの?ほら、ウサギさんりんごだよ?」
小椋「こ、子ども扱いしないでよ…それともバカにしてるの…?」
恒一「…バカになんかしてないさ。…でも、君は子供だよ」
小椋「なんですって?」
18:
恒一「僕達は…いつだって結果の中を生きてる」
小椋「はあ?」
恒一「結果の中で生きてる僕らは、いつだって思うんだ
恒一「現状は不本意だ、あの時ああしていれば、もっと他の方法が…てね」
小椋「当たり前じゃない…あたしだって、目を覚ましてから…何度も…何度も何度も…いつだって…今だって…」
恒一「いつだって…ね」
恒一「ほら、それが子供だってことさ」
小椋「―――ッ!?」
20:
恒一「過去を振り返る事、それ自体はいいよ。でも、過去を振り返るのと縛られているのは全く別だ」
小椋「だって…あんな目にあったのよ?そんな簡単に忘れられるわけない…っ」
恒一「そうだね、僕達は確かに手酷い過去を背負ってしまった。でもね、小椋さん。過去と向き合っている間、人は前に進めないよ」
恒一「過去を振り返るどころか、その場に座り込んで泣きべそかいてるようでは子供呼ばわりされたって仕方ないさ」
小椋「だって…そんな事言ったって…あたし…」ウルウル
恒一「僕達は前に進まなきゃならない。振り返ったら振り返った分だけ進まなきゃいけない」
恒一「僕達が背負った辛い過去も、泣きたくなるような後悔も、この先一生付き合っていくことになるだろうね。でも」
恒一「それでも前に進まなきゃいけないんだ。這い蹲ってでも、身を捩ってでも前に。…そうやって僕達は大人になっていくんだ」
恒一「それが残された僕らに課せられた義務だと思う。思い出の中から見守ってくれる、みんなの願いだと思う」
小椋「みんなの…願い…彩…お兄ちゃん…」
21:
小椋「グスッ…う…うっ、ヒック、うえっ、うええっ」
恒一「大切な人がいなくなった気持ちは解る。でも僕らは生きているんだ。生きている者は、生きていかなきゃいけない」
恒一「さあ、食べるんだ小椋さん。食べて栄養を蓄えて、いつかその足で立って歩くんだよ!さあ、口をあけて」
恒一「ろくに食べてないんだろう?いつまでも甘ったれた事を言うのは僕が許さない、さあ、口を開けないなら僕は無理矢理にでも…」
小椋「ヒック…よ…余計なお世話よ…」
恒一「……」
小椋「あっ、あんたに…っ、ヒック、あんたに言われなくたって、わかっ、わ、わかってるわよ!!」
恒一「!」
小椋「貸しなさいっ!子ども扱いすんな!こんなの、ひ、一人で食べられるもんっ!ぐ…くぅ…」グググ
恒一「…うん、それでいいんだよ、小椋さん」
22:
恒一「頑張れ、小椋さん。落とさないように気をつけて」
小椋「んぎぎ…んが…あががが…」グググググ
恒一「右手を使ったっていいんだよ。食べるときくらいは…」
小椋「う、うるさい!黙ってみてなさい!」
小椋「うぐぅ…ちくしょ…こんなモン…左手一本で…よ、よゆーでぇ…!」ググググ
恒一「もう少しだよ、頑張れ!」
小椋「うが…んががが…あ、あー」プルプルプル
小椋「はぐっ」シャコ
恒一「少しづつでいい、前に向かって進んでいこう」
小椋「?っ?っ」ガシュガシュ
小椋「うっ、うええぇ???っ、なによこのリンゴぉ?っ!おいひ、おいひぃじゃないのぉ?っ!」ブワッ
23:
小椋「うえっ、うえええぇぇええぇ??っおいしぃ、おいしいのぉ?っえええ?ん」ウェーン
恒一「ふふ…奮発した甲斐があったよ」
小椋「うえっ、えっ、えっぐ、恒一くん、ありがと、ありがとう…」ポロポロ
恒一「いいんだ」
小椋「あたし、頑張るから…ヒック、頑張って…いつかきっと、絶対、立って、歩いて、うえっ、うええぇ?っ」
恒一「その調子だよ、小椋さん」
小椋「でも、うえっ、彩、彩に会いたいよぉ?っ!うえっ、えっぐ、彩にも、この、りんご、りんごぉ…うええぇ…」
25:
恒一「…うっ」
小椋「彩、あのこっ、甘いのっ、好きでっ、ひぐ、ぶひっ、がっこ、帰り、喫茶て、よく一緒、一緒にっ」
小椋「夏は、彩んちでへぇっ、す、スイカ、お正月っ、う、うちのおこたで、ヒッ、み、みかん一緒にぃっ」
小椋「あれ…なんで今、こんな昔の事思い出して…なんで…あれ、あれぇ?」
小椋「も、あたし、なんかワケわかんない、思い出が、彩との思い出、止まんないよ、どうして、ああっ!」
小椋「こ、恒一くん…!お願い、ヤバイ、ごめん、ちょっとだけ、ちょっとだけだからギュってして!」
小椋「恒一くん、あああバラバラになりそうっ、お願い、ぶひっ、ひいぃ?ん」ポロポロポロ
恒一「小椋さん…」ギュ
小椋「ふぇっ、ふうえええ?っ、恒一くん、恒一くんん?っ!」ギュウウ
小椋「ふわぁああっ、ああああん!うわああああああん!!」
26:
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
小椋「クスン…クスン…ズッ…ひっく、ひっく…うう…」
恒一「……」ポンポン
小椋「も…もういいわ…ごめん…ありがと…」
恒一「?♪」ナデナデ
小椋「ちょ、もういいってば…」
恒一「??♪」ナデナデナデナデ
小椋「ちょ、調子に乗るなっ!もういいって言ってるでしょ!」
恒一「????っ!」ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデ
小椋「はっ、は、は、離せってーのぉ!」グイ
恒一「おおっぷ、右手は健在だね…別に遠慮しなくていいのに」
小椋「誰がするか!じゃなくて…へ、変な気起こされても困るしね!今のあたしじゃ抵抗できないし…」
恒一「し、信用ないなぁ…」
27:
小椋「あう…それにしても、みっともないトコ見せちゃったわね…ゴメン」
恒一「なんのなんの、僕でよければまた胸を貸すよ」
小椋「調子に乗るんじゃないわよ…今のは…アレよ。なんつーか、魔がさしたっていうか…」
恒一「ふふふ、そういう事にしとこうか」
小椋「しとこうか、じゃなくて…!あ、あのね、この事は絶対、誰にも言っちゃダメだからね」
恒一「わかったよ…でも、あの小椋さんが『ギュってして』とはね…ふふふ」
小椋「?????っ!」カァ???ッ
小椋「くのやろっ!」ヅン
恒一「…い、いだ!痛い!」
小椋「この馬鹿!アホ!最低!信じらんない!喰らえ!オラ!」ヅンヅン
恒一「ちょ、小椋さん爪楊枝はやめて!い、痛い!痛いって!」
28:
恒一「いたたた…酷いや小椋さん、こんな時だけ右手使うんだもん…」サスサスリ
小椋「うっさい!あーあとね、お見舞いで思い出したんだけど、アンタよくもあの時あたしに膝蹴りお見舞いしてくれたわね!」
恒一「うわっ、憶えてたの?あれは、その…ゴメン」
小椋「あんたのせいであたしは人前でゲボ吐かされたのよ!いつか絶対仕返ししてやるからね!」
恒一「ええ?、そんなぁ…」
小椋「ああ?なるほどなるほど、アンタの顔見るたびに感じてたモヤモヤの正体はコレかぁ?♪ふふーん♪」
恒一「ひいぃ…」
小椋「見てなさい恒一くん!リハビリしまくって動けるようになったら、絶対渾身の膝蹴りをお見舞いしてやんだから!」
恒一「そんな…待ってよ、確か小椋さんの蹴りって鍵の掛かったドアを数秒で破壊して…」
小椋「せいぜい今のうちにあたしのご機嫌取っとくことね!逃げるんじゃないわよ!わかった!?」
恒一「は、はいぃ…」
小椋「ふん、よろしい♪」
29:
小椋「あーあ、なんか久しぶりに大声出したらスッキリしたなぁ?」
恒一「そ、そう…それはよかった」
小椋「ふっふっふ、恒一くん、あたしねぇ、ここの病院食もいい加減飽きてきててねぇ」
恒一「ああ、その気持ちは解るよ」
小椋「りんごもいいけど、次は駅前のケーキ屋さんのタルトが食べたいなぁ?♪」
恒一「うん、退院したら好きなだけ…」
小椋「次はいつ来てくれるの?」
恒一「え?あ?、いつになるのかなぁ?」
小椋「お花、買ってきてくれるんだよね?」ニコッ
恒一「ああ、そういえばそんな事言ったような…」
小椋「ケーキ屋の隣が花屋さんだったな?そういえば。ふふ、楽しみにしてるからね♪」
恒一「なんだかレクター博士みたいな…」
小椋「何か言った?」
恒一「いや、なんでも…」
31:
恒一「さて、小椋さんの元気な顔も見れたし、今日は帰るね」
小椋「えっもう?」
恒一「うん、ちょっと用事があってね」
小椋「そ、そう…じゃあ、仕方ないわね」
(用事ってなによ!もう少しくらい居てくれたっていいじゃない…)
恒一「また来るよ」
小椋「や、約束だからね!花とケーキ忘れるんじゃないわよ!」
(いつ来てくれるの!?ねえ、あたし何日我慢すればいいの!?)
恒一「ふふふ、憶えておくよ」
小椋「ふっふっふ、憶えておいてくれたまえ」
(いらない!ケーキもお花もいらないから、だから恒一くん、もう少しだけ…)
恒一「じゃあまたね、小椋さん」ギシ
小椋(待ってぇ!動いて!動いてあたしの左手ぇえええっ!!)
33:
クイッ
恒一「え?」
小椋「……っ」ググ…グググ…
恒一「小椋さん…左手…こんなに力強く僕の服掴んで…」
小椋「いかない…で…」グググ
恒一「え…」
小椋「行っちゃやだ…恒一くん…いかないで…」
小椋「やだよ…さびしいよぅ…恒一くん…一緒にいてぇ…いてよぉう…」
小椋「ケーキもお花もいらないからぁ、恒一くんがいてくれれば…それだけで…あたし…」
恒一「………わかったよ」
恒一「一緒にいる。ずっとここにいるよ」
小椋「ふぇ…?ほんと?」
恒一「うん」
36:
小椋「ほんとに?ほんとにほんと?」
恒一「うん、ずっと一緒だよ」
小椋「恒一くん、もう一回ギュってして」
恒一「こう?」ギュ
小椋「…うん」
小椋「恒一くん」
恒一「ん?」
小椋「キスして」
恒一「いいよ、じゃあ、目を閉じて…」
小椋「ん…」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
37:
恒一「?」
恒一「…ん?あれ?」クルッ
小椋「………」
恒一「小椋さん、今僕の服の裾、引っ張った?」
小椋「んーん」フルフル
恒一「あれぇ?気のせいかな…今、微かに引っ張られたような気が…」
小椋「知らなーい。幽霊じゃないの?」
恒一「ちょ、やめてよ…もう」
小椋「ひひひ、びびってやんの」
恒一「そんなんじゃないよ…んん??…まあいいか」
恒一「じゃあ、また来るからね」
小椋「うん、バイバイ」
バタン…
38:
小椋「………」
小椋「ハァ……忌々しい左手め…もうちょっとだったのにな…」グググ
小椋「………」ポテ…
小椋「//////」ボッ
小椋「て、アホかあたしは…何考えてんのよ…いやらしい…」
小椋「……はぁ」
小椋「リハビリ…がんばろう」
小椋「そんで…次は…ちゃんと」
小椋「この手で…しっかり恒一くんn
ガチャ
恒一「ところで小椋さん」ヒョコ
小椋「にゃっほおぉうい!!」ビクーン!!
40:
恒一「にゃ…にゃっほい…?て何?」
小椋「なななななな、なーなー、何よ!! のの、ノックくらいしなさいよ!!」ドキドキドキ
恒一「あ、ごめん」
小椋「はぁ、はぁ、あぁビックリした…」
恒一「脅かすつもりは無かったんだけど…」
小椋「…聞いてた?」
恒一「え、何を?」
小椋「なな、なんでもないわよ!で、何の用よ!もう!」プンプン
恒一「小椋さん、どんな花が好みなのかなって思って」
43:
小椋「はぁ…もう、そんなの適当でいいわよ」
恒一「そう?じゃあ、綺麗なの見繕って持って来るね」
小椋「ん」
恒一「じゃ、またね」
小椋「うん、また」
パタン…
小椋「あっ、待って!ちょっと待った!」
カチャ
恒一「どうかした?」ヒョコ
小椋「あたし、あれが欲しい。アネモネの花」
45:
恒一「姉もね?」
小椋「うん、アネモネ」
恒一「どんな花なの?」
小椋「ええっと…牡丹みたいな花…だったかな?花自体はあんまりよく憶えてないんだけど」
恒一「え?憶えてないようなのを指定するの?」
小椋「い、いいのよ!ちゃんと言ったからね!アネモネだからね!」
恒一「わ、わかった…じゃあ、今度こそバイバイ、小椋さん」
小椋「うむ!気をつけて帰んなさいよ!じゃーね!バイバイ!」
恒一「うん、またね」
パタン
46:
小椋「………」
小椋「はぁ????…」
小椋「なんか疲れた…」
小椋「………」
小椋「…まだその辺に潜んでんじゃないでしょうね…恒一くん?」
小椋「そこにいるのは解ってんのよー出てきなさーい」
小椋「………」
小椋「……はぁ…なわけないか」
小椋「……」
小椋「ふふっ」
小椋「よいしょっと」カタ
小椋「よっ…彩…」
48:
小椋「えへへ…恒一くん、あんたが言ってた通りのいいヤツだね…」
小椋「さっきね、あんたとの思い出が溢れ出て、涙が止まらなくなったんだ…」
小椋「頑張らなきゃ…って、強く想ったらね、彩がいなくなったこと、今になって初めて実感しちゃった…」
小椋「でもそれは、過去に縋って座り込んでたあたしが、やっと前に向かって歩き出すことが出来たからなのかな」
小椋「彩、あんた前に恒一くんに命を救われたんだよね」
小椋「あたしも今日…恒一くんに救われたよ…だから…」
小椋「あんたの所に行くのは、思ってたよりも、もっとずっと先になるかもね…」
小椋「ふふっ、でも最後のはちょっとだけ…らしくなかったかなぁ」
小椋「…笑っちゃうよね…あたしが花言葉なんて」
50:
小椋「ねえ、彩…あたし、変わるよ。強くなる。もうあんたの写真見ても、淋しがって泣いたりしない」
小椋「…そりゃ、時々泣いちゃうこともあるだろうけど…てかすでに今もそうなんだけど…」
小椋「………グス…」
小椋「見守っててね、彩。あたしも、もう彩に心配かけないように強くなるから…」
小椋「………」
小椋「………」
小椋「彩……あたしね…」
小椋「今日、好きな人ができたよ」
56:
恒一「ふぅ…小椋さんが元気になってくれて良かったな」
恒一「ちょっと元気になりすぎたような気もするけど…」
恒一「………」
恒一「…ベッドの横にあったの、綾野さんの写真だったな…」
恒一「小椋さん…」
恒一「おっとここか、通り過ぎるトコだった」
恒一「はぁ……」
恒一「…うう、胃が痛い…心が罪悪感でいっぱいだ…」キリキリ
503号室 綾野 彩様
58:
恒一「……」
恒一「すぅ?」
恒一「はぁ??…」
恒一「……ッ」バチバチンッ
恒一「よしっ、気合入れて行k
『ふあああぁ???』
恒一「!?」
恒一「綾野さん!?」ガチャッ
60:
恒一「どうしたの綾野さん!?あや…」
綾野「ああぁ?こういっちゃん、こういっちゃん見てコレ凄いの?」クチュクチュ
恒一「うっわ゛あああああああああ!!」シビビビビ
綾野「おまたいじると超きもちーよぉ?♪すごいよ?あ??」
恒一「わ゛あああああああああああ!!」ドタドタガチャッ バタン
恒一「はぁはぁはぁはぁはぁ…」※部屋の外
『あれーこういっちゃん?こういっちゃ…あ、あっあっあっ、ああ?なんか来るよ、ああ?』
『あっ!あああっ!ああ?………わは、いっぱいでた♪』
恒一「はぁ…はぁ……」
恒一「はああ?????…」ガクリ
恒一「ダメだ…これじゃ小椋さんに会わせるなんて、とてもじゃないけど無理だ…うう」
62:
恒一「あ、あの…綾野さん?も、もう入っていいかな?」
『いーよー』
恒一「ほっ…綾野さん、お見舞いに来たよ…」カチャ
綾野「おーこういっちゃん、いらっしゃーい」フキフキ
恒一「ぶはっ!!あ、綾野さんパンツはいて!パンツ!」クルッ
綾野「ふぇーい」ハキハキ
恒一「パジャマもね」
綾野「ふいふい」モゾモゾ
恒一「もういいかい?」
綾野「もーいーよ♪アハハッ フフッ」
63:
恒一「はぁ…来て早々何なんだこの疲労感は…」
綾野「こういっちゃんお土産?お土産?♪」
恒一「はいはい、今日はりんごだよ。今剥いてあげるからね」
綾野「ウサギさんりんご!」
恒一「はいはい」ショリショリ
綾野「うーさぎうさぎ♪うさうさぎ♪」パヤパヤ
恒一「はいはい」ショリショリ
綾野「うさぎさんりんごっていいよね?うさぎさんいい、りんごいい、いいといいで10倍だぞ10倍!」
恒一「はいはい」ショリショリ
恒一「はい、できたよ」
綾野「ワーイ!!」
恒一「ふふ…」
65:
綾野「わっはー♪かわいいね?食べるのが勿体無いね?でもたべる!なぜならおいしいから!」ムシャムシャ
恒一「まだ剥くからどんどん食べてね」
綾野「うん!こういっちゃん大好き!あははっ♪」
恒一「そ、そう…ありがと…」
恒一「ところで綾野さん……何か思い出した?」
綾野「全然!」ムシャムシャ
恒一「仲の良かった子のこととか、何か無いかな?」
綾野「まったく!」ムシャムシャ
恒一「…そう」
67:
綾野「はぐはぐ…あっ!そうだ!」ブッハー
恒一「うわっと…綾野さん、ちゃんと飲み込んでから叫ぼうね」
綾野「あたし、こういっちゃんなかなか来てくれないから、来たら文句言おうと思ってたんだっけ!」
綾野「んん、でもお土産持ってきてくれたしこういっちゃんが来てくれたから許す!よかったねこういっちゃん♪」
恒一「うん、ごめんね。色々忙しくて…」
綾野「じゃあしゃーなしだね!許す!」
恒一「ありがと」
綾野「よし日記に書こう!70月43日うどん曜日!こういっちゃん!りんご!うさぎ!げきとつ!おわり!」ぐりぐり
恒一「…綾野さん、日記つけてるんだね。ちょっと見せてくれないかな?」
綾野「いーよー、ほい」
恒一「ありがと…毎日つけてるの?」パラパラ
綾野「うん、毎日書いてるよ。3日くらいまえも久しぶりに書いた」モグモグ
恒一「そっか…ええと…う、字がデカイ…」
68:
2月も日犬曜日 ぎゅうにゅうはすごいや。白いや。ごはんにかけたらマズかった。おわり。
65月※※(判読不可)ひまだ。ひまだから数字かぞえてた。6899の次ってなんだっけ。おわり
1月2日34曜日 男の子が来た。なんかあたしの手をにぎって泣いてた。あほだ。こういっちゃんとよぶことにした。
5月6日78曜日 こういっちゃん、いろんな人と話してた。遊んでほしかったのに。こういっちゃんまたきてね。おわり
9月10日11曜日 あと、かんごふさんがあたしのことをアヤちゃんて呼びはじめた。アヤノかアヤかはっきりしろ。今度こそおわり。
恒一「…この3ページぶち抜きの日記は…僕が始めて来た日か…」
恒一「………」
恒一(あの日の衝撃は一生忘れられそうに無いよ)
70:
恒一(エレベーター探してる時にたまたま見かけた身元不明で記憶喪失の重傷患者が、まさか綾野さんだったなんて…)
恒一(車が潰れた上に爆発炎上して、何人乗ってたかも判らない状態だったから…てっきり亡くなったのかと思ってたよ)
恒一(警察の人が言うには落下中に奇跡的に車から投げ出されて、その後森の中を何日も彷徨って、力尽きた所を偶然保護されたらしいけど…)
恒一(発見されたのが夜見山の外で、事故現場から離れていたから身元が解らなかったんだな…でも、そのお陰で一時的に災厄からは逃れられた)
恒一(それでもまた夜見山総合病院に搬送されて、一時はかなり危険な状態だったけど、ある日を境に回復に向かっていったんだってね)
恒一(あの、合宿の日から…災厄が止まった、あの日から)
恒一(今はもう怪我自体は心配する状態じゃないって聞いて安心してたんだけど…)チラ
綾野「はっ!食べられちゃったうさぎの仲間が仕返しにきたらどうしようっ!」ビクーン
綾野「……よし、そいつもたべよう」ウヘヘ
恒一「………」
恒一「……ただ一箇所…肝心なところがなぁ…」ハァ
72:
恒一「日記から綾野さんの記憶を取り戻す手がかりが得られないかなぁ…」ペラペラ
が月に日よ曜日 手のほうたいが取れた。ので、じゃんけんして遊んだ。みぎつええ。おわり
日付無記名 いいおてんき。あしのぎぷすをかえた。ぎぷすくさい!くさい!おわり
0月0日8曜日 あめはキライ。じめじめしとしと。さむいし。もうねよっと。おわり
日付無記入 ケガしたところをいじると、いたいけど、なんかやめられない。おわり
日付無記名 アニメ見たであります。おもしろかったであります。おわりであります。
日付無記入 女の子がきた。家来になればオカシくれるって。ねえさん一生ついてきます。わんわん。おわり
恒一「…………」
恒一「………んん?」
73:
日付無記入 ねえさんのがんたいはぢごくのケモノをふうじていて、取ると世界がおわるらしい。さすがねえさん。おわり
日付無記入 ねえさんのあたまから飛び出てるかみの毛は、えいえんのヒロインのあかしらしい。ねえさんにはかなわねーや。おわり
恒一「…見崎だよね、これ…見崎もお見舞いに来てくれてたのか…」
恒一「色々引っかかる点もあるけど、まあよしとしとこう」
日付無記入 こういっちゃんきた!ウヒョー※※※(以下判読不能)
恒一「……ふふ、日記の呈を成してないや。でも喜んでくれてるみたいでよかった」
日付無記入 こういっちゃんこないかなー。こういっちゃんきた!うそです。あーあ。おわり
日付無記入 こういっちゃんこないな。あいたいな。こういっちゃんいつでもきてね。まってるよ。おわり
恒一「はぁ…ごめんよ綾野さん…来たいのは山々なんだけど、おじいちゃんが本格的にボケてきちゃって色々大変なんだ…」
75:
恒一「手掛かり…手掛かりは…」パラパラ
日付無記入 お昼のプリンをねえさんにとられた。かわりにオカシでできたキノコもらった。プリン3こぶんの価値があるって。とくした気分。おわり
恒一「…ひどい…きのこにそんな価値があるワケ無いだろ…せめてたけのこを…ていうか怪我人からオヤツ巻き上げるなよ…」
日付未記入 ねえさんはあたまがいい。ねえさんはびじん。ていっぱい言ったらきのこくれるねえさんまじステキ。おわり
恒一「見崎…虚しくならないのか…?」
日付無記入 ねえさんはよくナデナデしてくれる。こういっちゃんもナデナデしてくんないかな。ナデナデシテー。おわり
恒一「…でも結構頻繁に来てるんだな…綾野さん身寄りがいなくなっちゃったから、見崎なりに気遣ってるのかも。今度お礼言っとこう」
恒一「……」ナデナデ
綾野「おっおっ?わは、わーい♪」ニコニコ
恒一「ええと、次は…」ペラ
綾野「わーんもっとー」
78:
日付無記入 おまたをいじるときもちいいってねえさんが教えてくれた。こんどヒマなときやってみよう。おわり
日付無記入 これはすごい。おわり
恒一「…前言撤回…見崎のヤツ…何を考えてるんだ…」ペラ
日付無記入 女の子だってせいよくはある。それがわからないのはどうていだってねえさんが言ってた。よくわかんないや。おわり
恒一「悪かったね…てか見崎のやつ、僕が日記を読むのを見越してたんじゃないよな…?」
恒一「もういいや、見崎関連の日記は。見透かされているようで不安になる。それより綾野さんの記憶だ」
恒一「せめて何か…ヒントになる項でもないかなぁ…」
81:
恒一「これは…違うか…これは…くっ…見崎の奴…」ペラペラ
綾野「むー」
恒一「んん?…」ペラ…ペラ
綾野「こういっちゃん、まだ??」
恒一「ごめん綾野さん、もう少し待ってて」ペラ
綾野「もー、こういっちゃん、いっつも待たせてばっかりだね」
恒一「う…ご、ごめん」
綾野「毎日待ってるのに、なかなか来てくれないしさ」プクー
恒一「ごめんよ綾野さん、もうちょっとだけ…そしたら何かして遊ぼう」
綾野「はぁ…待ってる間テレビでも見よっと。アニメやってないかな?」
恒一「うん、ごめんね…」ペラ
82:
綾野「お、やってるやってる。なんのアニメだろ」
恒一「……うーん…」ペラリ
恒一「……おや?」
テレビでくるまがどかーん。あたまいたくなた。こわくてさみしい。こういっちゃんにあいたい。おわり
恒一「………」
恒一「ええと…確か綾野さんの簡易看護日誌があったはず…」ガサガサ
恒一「あった、これだ。ええっと…」
10月26日 午後8時 頭痛と強い恐怖感を訴え、一時的に心神喪失状態に陥って病室から這って脱走。嘔吐、失禁有り。原因は不明。
注釈 見舞いの少年(榊原恒一氏)の名を連呼。念のため以後見回りの回数を3から5に増やす対応
恒一「これは…日記には日付が書いてないけど、この日記との符合は…?」
84:
恒一「ねえ、綾野さん」
綾野「………」
恒一「綾野さん?」
恒一(…熱心にアニメを見てる。何のアニメだろう…)
恒一(…なんか…陰鬱な雰囲気だな…深刻な顔した学生が千切れたカセットテープを囲んで…おや、急に場面が変わった)
恒一(雨の中、山沿いの道を車が走ってる……乗ってるのは親子かな…)
綾野「う…」
恒一「綾野さん?」
綾野「う…あ…ダメ…」
恒一「どうしたの?綾野さん顔が真っ青だよ…?」
85:
綾野「やだ…怖いよ、死にたくない…死にたくないよ…」ブルブル
恒一「どうしたの綾野さん!?大丈夫だよ!もう現象は止まったんだよ!」
綾野「ひっ……ひいぃぃぃ……!」ガタガタガタガタ
テレビ『キョキョキョッ ドガシャッ 』
綾野「――ッ!!」ギクンッ
綾野「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
恒一「綾野さん!?」
87:
綾野「アアアアアアアアアアッ!怖い!怖い怖いぃい!こういっちゃん!ああっ!わアアアアアアアアアアアッ!!」
恒一「綾野さん落ち着いて!今ナースコールしたよ!すぐ先生が来てくれるから…」ガシ
綾野「こういっちゃんどこぉ!?ひいいっ!死ぬ、死んじゃう!こういっちゃんどこぉ!?どこなの!?わああああっ」ブンブン
恒一「!? 綾野さん僕はここだよ!おちついて、ね、傷が開いちゃうから暴れないで…!」ググググ
恒一(凄い力だ…!車が崖から落下する場面で触発したのか?くそっ、僕が予測して止めるべきだった…!)
89:
綾野「こういっちゃんどこ!?助けて!いやああ死んじゃう!死んじゃうよおおっ!」
恒一「僕はここだよ綾野さん!だから落ち着いて…うわっ」ドタッ
綾野「怖い…痛いぃ…!怖い痛い怖い痛い怖いよこういっちゃん、助けてよぉ…こういっちゃん、どこおぉ!?」
恒一「いててて…ま、待って綾野さん!まだ足の傷が…立っちゃダメだ!」
綾野「こういっちゃあぁ????!」トテトテ…
恒一「待って!待って綾野さん!病室に戻って!」ググ…ムクリ
恒一「綾野さん!!」ダッ
98:
看護婦さん「フンフフンフフン♪」ガラガラガラ
看護婦さん「今日の由美ちゃん、なんかいつもより元気だったからお姉さん安心しちゃった?」ガラガラ
看護婦さん「きっとあのオミマイ少年のお陰かな??手鏡欲しがったり散髪の予約入れたり…」ガラガラガラ
看護婦さん「いやぁ?青春してるわね?♪ンフフ?♪」ガラガラガラ
看護婦さん「こういういい日はアレね?、普段はクッソ重たい、医療器具満載のカートも軽く感じちゃうわ?」ガチャガチャ
看護婦さん「お?ここだここだ。ふい?疲れたぁ♪やっほ?メガネ少年、元気してるカナ??」ガチャ
「ああああぁん!こういっちゃ、こういっちゃあ??ん!」
「どこだよおぉう、うえっ、うええ??…」トテトテトテ
「あっ!綾野さん危ないっ!!」
ドガシャァッ!!
看護婦さん「ひえっ!?な、何!?って今の音…まさか、誰かがカートに!?」
100:
カランカラン…
恒一「………う…」
恒一「あ…綾野さん…怪我は無い?」ナデ…
綾野「ううっ、うっ、ヒック、ヒック、うえっ、えっぐ…」ギュウ…
看護婦さん「きゃあああああ!!だ、大丈夫ですかぁ!?大変…お怪我は…!?」
恒一「大丈夫です…ただ、少し足の傷が開いちゃってるみたいで…綾野さん、他に痛いとこないかい?」
看護婦さん「そ、そうじゃなくて…キミは大丈夫なの!?カートに背中から突っ込んだんでしょ!?この子を庇ったのね?」
恒一「ごめんなさい、カートひっくり返しちゃって…僕は大丈夫です…たぶん…あいたた…」
看護婦さん「あ、こ、こうしちゃいられないわ!すぐに先生を呼んでくるからね!」タッタッタ
恒一「あ、お気遣い無く…」
101:
綾野「ひっく、グシュ、うえっ、えっ、こういっちゃ…こういっちゃん?…」ギュウウ
恒一「ん、なんだい?綾野さん」ナデナデポンポン
綾野「やっと来てくれたね…また…助けてもらっちゃったね…」
恒一「なんのなんの、気にしないで……って…」
恒一「え?『また』?」
恒一「綾野さん…記憶が戻ったの…?」
103:
綾野「ひっく…うえっく…グス…」
綾野「あの時…車が落っこちた時…こういっちゃんがね、助けに来てくれるような気がしたよ」
綾野「こういっちゃんが…また守ってくれそうな気がね…したの」
恒一「……ごめん…僕は…」
綾野「ううん、いいの。ちゃんとこうして受け止めてくれたもん」
綾野「待ってたかいがあったよ…こういっちゃん」ギュ
綾野「なんだか…落ちてく感覚が止まって、やっと地に足がついたみたい…」
恒一「そうか…綾野さんの時間はずっと事故の時のまま…」
綾野「こういっちゃん…パパとママは…?」
104:
恒一「……亡くなったよ」
綾野「ふぐうっ………そだね……車、燃えちゃってたからね…こういっちゃん…背中、痛くない?」
恒一「大丈夫」
綾野「じゃあさ…もうちょっとだけ、このままでいいかなぁ…っ」
綾野「ひっぐ、うえっ、ちゅ、ちょっとだけ…泣いていいかなぁっ?」ワナワナワナ
恒一「お帰り…綾野さん」
綾野「ふえっ、ふぇえええええ??っ!こういっちゃ、おふぇっ、ぶひっ、ひぃぃい??っ!ふあっ、ああぁ??ん」
綾野「こういっちゃ、パパと、ママがぁ、しっ、死んじゃったよぉっ、ああっ、ふえあああああぁ?…っ!」
恒一「今は泣いていいんだよ…いっぱい泣いて、それから前に進んでいこう」
恒一「そうやって僕達は大人になっていくんだから…」ナデ
105:
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「3年2組、19番 榊原彩」
彩「はいっ!」ビシィ!
小椋『彩ぁ?!手は挙げなくていいの!』ヒソヒソ
彩「あ、そうだっけ?エヘヘ」
校長「卒業表彰、榊原彩殿…以下同文です」
彩「ははぁ?」ウヤウヤ
校長『辛い過去を乗り切ってよく頑張ったね、おめでとう』ボソッ
彩「えへ♪ありがと、校長せんせ」
106:
「3年2組、20番 小椋由美」
小椋『んじゃ行ってくるかな…よっこらしょっと』
彩『由美ぃ、杖いる?』
小椋『ん、いらない』
彩『がんばれ由美ぃ♪コケてパンツ晒すなよ?』
小椋『わーってるわよっ』
小椋「………っと………あぶねっ……」フラフラ
ガンバレー
シッカリー
小椋「な…なによ、もう」/////
108:
校長「卒業表彰、小椋由美殿…以下同文です」
小椋「……」ペコリ
校長『君が自分の足で立って、その手で表彰状を受け取ってくれて私も嬉しい』ボソッ
小椋「――ッ?」ブワッ
小椋「あ…あ゛……ありがどうごじゃいまひたぁ?うええ?」ポロポロポロ
校長『降りるときも気をつけたまえ』ボソッ
小椋「ひゃいいぃ??、おしぇわになりまじだぁ?っ」ポロポロポロポロ
彩「ほら泣いた♪うひひひ」
男子生徒「予想通りで賭けにならんな」
女子生徒「やばい…ウチも泣きそう…てか千曳サンもやばくない?」ウルウル
千曳「ううっ、ヴェフュッ、お、おめでどう二人どもリュフッ!エヴォリョフッ!!私は嬉しュリュヴェノフッ!!」プルプルプル
あーおーげばー とーおーとしー わーがー…
111:
彩「ふい?終わったぁ、いや?この学校とも今日でお別れとなると感慨深いねぇ、由美?」
小椋「ふん、あたしは別に…」
女子生徒A「おつかれちゃーん♪いやー由美ねえさん、いい泣きっぷりでしたねぇ♪」
小椋「そのねえさんってのやめなさい……て言い続けて一年経っちゃったわね…てか泣いてないわよ!」
女子生徒B「由美ぃ?それはさすがに通らないでしょ??私が鼻水拭いてあげたのに、ねぇ?彩♪」
彩「ね?♪由美可愛かったよね?♪」
女子生徒A「ね?♪これだからねえさんからは目が離せないよねぇ?♪」
小椋「ぐぬぬ…あんたらねぇ…」
男子生徒「ちょっといいか…!?」
112:
女子生徒A「んあ?なんスか?」
男子生徒「お、お前じゃない…小椋…!俺、お前に話があるんだ…!」
小椋「へ?あたし?」
女子生徒B「なになに、告白ぅ??」
男子生徒「そ、そうじゃねえ!あ、い、いや、そうじゃねえって事も無いんだが…」ゴニョゴニョ
小椋「なによ」
男子高生「くっ…その目…たまらん…っと、ええっと、あのだな、その…俺…お前の事…」
女子生徒A「あっ!な、なんかイケメンがこっち見てる!手ぇ振ってる!」
彩「ふえ?ああ?!こういっちゃんだぁ?!ワーイ!」ダーッ
小椋「えっ、恒一くん!?ちょ、待ってよ彩ぁ!」ヨタヨタ
男子生徒「………」
女子生徒B「ありゃ…コホン、まぁ、そーゆーことらしいから…元気だしな。じゃ」
127:
恒一「二人とも、遅れてごめんね」
彩「こういっちゃん来てくれたんだ嬉しいよまた背ぇ伸びたねうわっほーい♪」ダキッ
恒一「おおっと…あはは♪」グルグル
彩「キャッキャッ♪」グルグル
小椋「よ、恒一くん…久しぶり…またデカくなったわね…」////
恒一「小椋さん、卒業おめでとう」ストン ワーンモットマワルノー
小椋「ん…まぁ…ね…」モジモジ
恒一「ふふ、会うたびに回復してるみたいだね。嬉しいよ」
小椋「そ…そうかな…あたしも…」
小椋(あたしも…恒一くんに会うたびに…胸が苦しくなって…)
女子生徒B「あ、あのー…由美ぃ、ちょっといいかなぁ??」ツンツン
130:
小椋「わっひゃ!?なな、なによ!何も言ってないわよ!バカ!」アセアセ
女子生徒B「ば、バカは無いでしょ??そ、それより由美に彩ぁ?!」
女子生徒A「誰なんスかこの爽やかなイケメンさんはぁ?」
小椋「誰って…えっと、あたしが首やって休学する前の同級生の、榊原恒一くん…」
恒一「よろしくね」ニコ
A・B「へええ??」
彩「あと、あたしの従兄弟だよ!」
A・B「ええええ??っ!?」
彩「従兄弟っても、全然血は繋がってないけどね!」
A・B「ひええええ??っ!?」
132:
女子生徒B「聞きまして奥様?」ヒソヒソ
女子生徒A「聞きましてよ奥様!」ヒソヒソ
恒一「あはは…」
小椋「な、何か変な事考えてない?あんたら…」
小椋「あのね、恒一くんは、彩を養女に引き取った榊原家の孫だから従兄弟なの!」
小椋「そーいうことなの!わかった!? …聞いてる?」
女子生徒B「わあぁ?////」グルグル
恒一「ええっと…何してるんだろう、僕…」グルグル
女子生徒A「先輩次あたしね!ねえそろそろ交代してよぉ!」ピョコピョコ
小椋「コ、コ、コラァ―――ッ!!」
135:
女子生徒B「はふぅ…堪能しちゃった♪」ツヤツヤ
小椋「まったく…あんたらときたら…」プンプン
女子生徒B「なるほどねぇ?、あれが由美の好きな人かぁ?」
小椋「ほへぁっ!?ななななーに言ってんの?ちがうし!たたただのとと友達だし!」
女子生徒B「隠すな隠すな、由美の事はよくわかってるつもりだよ」
小椋「………っ」
女子生徒B「なるほどねー、今の由美があるのはあの人のお陰かぁ…」
女子生徒B「酷い状態だったんでしょ?一年半もリハビリして、やっと立てるようになったんだよね」
女子生徒B「彼に励まされて♪」
小椋「……うん…」
女子生徒B「彩と一緒に東京の高校受けたのも、彼の傍にいたいから?当たってる?」
小椋「………」
小椋「/////」コクン
136:
女子生徒B「だよねだよねぇ、そうだよねぇ?♪じゃさ、いい機会だし告っちゃいなさいよぅ」
小椋「えっ?」
女子生徒「あの人だって由美の事憎からず思ってるんじゃないの?東京からわざわざ卒業式に来てくれるなんてさぁ」
小椋「んん…」
小椋「…今はまだ…やめとく」
女子高生B「なんでよぉ?」
小椋「彩…多分恒一くんの事、好きだから…」
女子生徒B「そ、そんな事言い出したら…」
小椋「彩はあたしの親友で、リハビリも休学も、ずっと付き合ってくれた恩人だから…」
女子生徒B「………」
138:
小椋「そんな顔しないでよ。だから諦める、てワケでもないし」
小椋「そのうち…自分でもどうしようもなくなっちゃう時がくるから…その時まで保留しとく」
小椋「あ、それにあたしも彩もさ、高校行けば他にもっといい人見つかるかもしれないじゃん?」
女子生徒B「そうは見えないけど…いや、彼見た限りじゃそれはないわ」
小椋「えへへ、やっぱそうかなぁ」ニヘラ
女子生徒B「惚気るトコ?」
小椋「とにかく、あたしは彩を出し抜くような真似は絶対にしないって決めたんだ」
女子生徒B「あんた達って…ホント困難の種に事欠かないね…」
女子生徒A「うっひょおお♪これスゲェッス!なんか、なんかたまんねーッス先輩!」グルグル
彩「あはははは♪あはははははははは♪」カタグルマ
恒一「目が回ってきたよ…」グールグール
142:
女児生徒A「軽くイキそうになっちゃった♪いい卒業記念になったよー」テカテカ
恒一「ふぅ、疲れた…あ、そうだ」
恒一「カメラ持ってきたんだっけ、みんなで記念写真撮ろう」
彩「おお?、いいねいいねぇ♪由美、こっちこっち」
小椋「はいはい、今行くわよ」ヒョコヒョコ
彩「みんなも一緒に撮ってもらお?」
女子生徒A「ほいさ♪じゃあ4人で組体操の扇でもげっぷッ!」グエエ
女子生徒B「あ、まず二人で撮ってあげてください。私達は後でいいですから」ググ…
144:
小椋「ちょ、ちょっと彩、くっつきすぎよ!」
彩「え?いいじゃーん♪由美がコケないように支えててあげる♪にひっ」
小椋「もう、彩だってしょっちゅうコケまくってるじゃん…」
彩「二人一緒ならへーきだよぅ♪ほらほら、腕も組んじゃお♪可愛く撮ってねこういっちゃん♪」
小椋「…ふふっ 恒一くん、手ブレなんかしてたら後でヒドイわよ♪」
恒一「あはは、変な汗が出てきたよ」
女子生徒A「二人ともいい顔してるね…やっぱデキてるのかな…」
女子生徒B「…取り越し苦労かぁ…あの二人なら、何があってもずっと一緒にやっていけそう」
恒一「お、丁度いい具合に桜が舞って…二人とも笑って、撮るよ?」
彩「いえーい、ピースピース♪」ニカッ
小椋「わっ、ちょ、ぴ、ピース♪」ニコッ
恒一「ふふふ…二人とも、卒業おめでとう」カシャ
145:
147:
まさにこれ
155:
>>147
そらが元絵だからな
157:
>>155
146見てすぐうpしたが1のほうがはやかった
152:
153:
>>152
つID
154:
>>152
記念パピコ
160:
夜見山総合病院 PM 9:00
小椋「ふぅ、リハビリ疲れたぁ…」
小椋「今日は恒一くんが応援にきてくれたから、つい張り切っちゃった」
小椋「でも、お陰で左手は今までより動くようになったし、時間はかかるけど一人でご飯だって食べられるんだから」
小椋「もう、恒一君を掴み止める事だって……まあ、しないケドね。今は…だけど」
小椋「……でも…いつか…フフ」
小椋「……………」
小椋「這い蹲ってでも、前に…かぁ」
小椋「恒一くん…ありがと…」
162:
小椋「あ、そういえば恒一くん、今度すごい報告するって言ってたけど…なんだろう?」
小椋「…………」
小椋「…………」
小椋「小椋さん、好きだ!付き合ってくれ!」
小椋「こ、こーいちくん…!いいの?あたしこんなだよ?」
小椋「関係ないさ!小椋さん!だきっ!」
小椋「ああっ!こういちくん!由美って呼んでっ」
小椋「由美…」
小椋「恒一くん…ちゅ…」エンダァアアアア
小椋「??????っ!!」プルプルプル
小椋「なんてね!なんてね!デュフフフフ♪」バンバン
ヒタヒタヒタ
小椋「?」
163:
小椋「え?今なんか…聞こえたような…」
ヒタヒタヒタ ヒタヒタヒタヒタヒタ ペタペタペタペタペタ…
小椋「…何?」
小椋「なんなの…?足音?裸足みたいな足音が…」ゾク
小椋「近づいてくる…ねえ、ちょっと、やめてよ…」ブルブル
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタッ!
小椋「ひいっ」バサッ ※ふとんバリアー
小椋(病室の前に来たっ!お願い、どっかいって!)ブルブル
小椋(いる!何かが病室の前にいる!なんでまだいるの?はやくどっか行ってよぉ!)ガタガタ
小椋(助けて!恒一くん、彩、怖いよぅ、怖いよぉ?っ!)ポロポロ
カタ…カタカタ…カタカタカタガタタガタガタ
小椋(いやああああ!扉が動いて…!ひいい?なんまんだぶなんまんだぶ…!)
164:
そと
??「?♪」ガタガタガタ
警備員「………」
??「??♪」ガタガタガタガタ
警備員「……何だお前は…」
??「!?」ギクッ
警備員「ん?眼帯着けてるのか?患者か?」
??「??っ」アワアワアワ
??「っ!」ダッ
警備員「あっ、待て!」
??「??っ!」ヒタヒタヒタヒタヒタ…
警備員「…なんだったんだ今のは…妖怪か?座敷わらしの親戚?」
小椋「うえええぇ?恒一くん助けてぇ、こわいよお?っ」ベソベソ
おし まい
168:
鳴ちゃんェ・・・
169:
恒一「お見舞いに来たよ、川掘君」ガチャ
川掘「おお、榊原か!丁度いいところに来た、さっそく頼みたいことがある」
恒一「頼みたいこと?なに?」
川掘「しゃぶれよ」
恒一「じゃあ、僕はこれで…」キィ…
川掘「待ってくれ!両腕を粉砕骨折して合宿から今まで一回も出してねーんだよ!健全な中学男子にとっちゃ拷問に等しい!頼む助けてくれ!」
恒一「健全ってどの口が言うんだよ…嫌だよ」
川掘「じゃあもうこの際手でいい!三こすり半、いや二こすりだけで十分だ!頼む榊原そんな顔しないで!」(切実)
恒一「…ううぅ…仕方ないなぁ…いやだなぁ…」シブシブ
川掘「待て、榊原」
恒一「?」
川掘「俺の顔みながらやれ」
恒一「じゃ、またね」パタン
川掘「待ってくれ榊原ぁああああ!!!」
恒一「ええっと…次は…」
173:
恒一「お見舞いに来たよ、風見君」
風見「川の瀬にます瀬織津姫といふ神、大海原にも出でなむ。かくも出でなば賢みたまえ…賢みたまへ…」ブツブツ
恒一「うん、調子はどう?」
風見「天つ神は、天の磐門を押し披きて、天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて聞こしめさむ…」ブツブツブツ
恒一「うんうん」
風見「天の八重雲を吹き放つことの如く、朝の御霧、夕の御霧を、朝風夕風の吹き払ふことのごとく…」ブツブツブツ
恒一「うんうん、全然わかんないや」
風見「此久持 出往奈婆 荒潮乃潮乃八百道乃 八潮道乃潮乃八百會爾坐須…」ブツブツブツブツ
恒一「じゃあ、僕そろそろいくね。また来るよ」
恒一「じゃあね、風見君」
パタン
風見「払へたまひ清めたまふことを、天つ神国つ神 八百萬の神たち 共に聞こしめせとまおす。恐こみ…恐こみ…」フワー
風見「我見たり、悠久を揺蕩い境界に潜みし知識の渦を。我得たり、疎は御霊。神の魂…」フワフワ ピカー ぐるんぐるん
恒一「さて…次に近いのは…」
177:
恒一「お見舞いに来たよ、金木さん松井さ…うわっ!ご、ごめん!」
恒一「え?入ってこいって?いやいいよ、お楽しみ中みたいだし…ていうか二人とも服着てないよね…?」
恒一「ほら、金木さん嫌がってるじゃないか…また終わったら来るから…」
恒一「いやいやそうじゃなくて、金木さんが本当は見られたがってるとか、そういう問題じゃなくてね」
恒一「…え?僕なら参加していい?」
恒一「………………………」
恒一「いや駄目だ、そういうのはまだ早いっていうか、初めては大切にしたいっていうか、何言ってるんだろうね僕は」
恒一「はいはい、臆病者で結構。そうだよ童貞だよ。え?金木さんが興奮しすぎて失神しそう?この際しちゃっていいよ、もう」
恒一「…………」
恒一「…待ってよ、僕だって出来れば助けたかったんだよ、でもあの時はまさに不意を突かれて成す術もなく…」
恒一「ちょ、な、泣くことないじゃないか松井さん、いや、いやそうじゃない、気持ち悪いだなんて思ってないよ」
恒一「人の趣味にどうこう言うつもりなんてないんだ、愛情の形は人それぞれっていうか」
恒一「あああもうわかったよ!わかった入るから!いいさ見てやろうじゃないか!でも見るだけだからね!」
恒一「押忍!失礼します!」
ガチャ
180:
『いーや駄目だ!ごめん松井さん僕もう帰るね!じゃあね!お大事に!さいなら!』
バタン
恒一「………ぷはぁ…」
恒一「結局最後まで見ててしまった…最低だ、僕…」
恒一「でも女の子の身体をあんなにじっくり見たのって初めてだな」
恒一「しかし…なんなんだありゃ…あんな世界があったのか…」
恒一「凄かったな…なんなのアレ…松井さんはオシッコじゃないって言ってたけど…」
恒一「金木さん最後は白目剥いて泡吹いてたな…しかも松井さんは飽き足らずに僕に迫ってくるし…」
恒一「…あのまま部屋に残ってたら、僕はどうなってたんだろう…」
恒一「……」チラ
恒一「いやいや何考えてるんだ僕は、男のプライドを捨てちゃ駄目だ、やらないと言ったらやらない」
恒一「はぁ…………でもなんか、すごく勿体無い事をしたような気もする」
恒一「…………」
恒一「ただ一つ、確かなことは」
恒一「あの二人、確実にもう退院できるよね」
181:
恒一「お見舞いに来たよ、杉浦さん、赤沢さん」
赤沢「あっ、こ、恒一君…んぎゅ!」
杉浦「??っ!」ギュウウ
赤沢「ちょ、ちょっと多佳子、恒一君よ、怖くないのよ!」
杉浦「??っ!」ブンブン
赤沢「もう…ごめんね恒一君、多佳子、あれからずっとこんな感じで」
恒一「ふふふ、仲良しなんだね」
恒一「それより赤沢さん、身体の調子はどう?」
183:
赤沢「どうもこうもないわよ!どてっ腹にガラスが刺さりまくったうえに瓦礫に全身潰さえて焼かれて…」
恒一(普通の人なら確実に死んでるよね…)
赤沢「焼け残った部分繋ぎ合わせてこのザマよ!助かったのは嬉しいけどもうちょっとどうにかならなかったわけ?」ジタバタ
恒一(後遺症とかも全く無さそうだな…どういう生命力なんだ赤沢さん)
赤沢「頭が重いわ手足は短いわ看護婦さんはやたら抱っこしたりナデナデしてくるわ着せ替えはされるわ…」
恒一(前から『強い女の子』って印象はあったけど…もう強いとか弱いとかの話じゃないよね)
赤沢「こないだなんてチアのコスチューム着させられて写真撮られまくったわよ!ああもう、最悪」
恒一「ずいぶんちっちゃくなっちゃったよね…デフォルメされてるみたいだよ」
赤沢「うるちゃい!あうう、滑舌も時々こんなだし…これから先が思いやられるわ」
恒一「うーん…でも、こういう言い方はアレだけどさ、赤沢さん可愛いよ。子犬みたいで」
赤沢「ほんとにアレな言い方ね…まあ恒一君が言うなら腹も立たないけど」/////
186:
恒一「でもホント助かってよかった。夜見山にたまたま世界的な名医さんがいてよかったね」
赤沢「あぁあの白黒の先生ね…噂によると医師免許持ってないらちいけど。しかも治療費がバカ高いって…」
恒一「あ、それなら安心して。事情を話したら随分安く済んだよ。なんか『その言葉を聞きたかった』とか言って…」
赤沢「へえ、何て言ったの?」
恒一「それが僕、あの時は本当に参ってたからよく覚えてないんだ。なんかちょっとこっ恥ずかしい台詞を言ったような…」
赤沢「ふーん、ま、お礼は言っておくわね」
赤沢「多佳子も恒一君にお礼言いなさいよ」
杉浦「??♪」ナデナデ
赤沢「やめなさいってば、もう」グリグリ
恒一「ふふふ」
190:
恒一「………あの…ところで、さ…赤沢さん」
赤沢「なぁに?」
恒一「ええっと…その…僕…看護婦さんの気持ちも解るっていうか」
赤沢「どうしたのよ?」
恒一「ちょっと言いにくいんだけど」
赤沢「なによ、言ってみて」
恒一「えっと…僕もその…赤沢さんを抱っこしてもいいかな…?」
赤沢「えっ?」
恒一「その…あ、赤沢さんさえよければ…なんだけど…」
赤沢「え…あ…うん…ぃぃょ…」//////
192:
恒一「じゃあ…杉浦さん、赤沢さんをこっちに…」
赤沢「多佳子、ちょっと離してくれる?」
杉浦「??っ」ブンブン
赤沢「ね、多佳子、大丈夫だからちょっと離してくれない?」
杉浦「??っ」ブンブン
恒一「あ、無理にとは言わないよ」
赤沢「恒一君は黙ってて!多佳子離しなさい!ほら!はやく!」
杉浦「??っ!」ブンブンブン
赤沢「ああもういいわ、恒一くん無理矢理ひっぺがして頂戴」
恒一「え、いやいいよ、杉浦さん赤沢さんを離したくないみたいだし」
赤沢「いいからはやく!ホラ!抱っこするんでしょ!?早くしてよ!」
恒一「う、うん…」ギュ
赤沢(ああ…恒一くんの手…大きい…でも、あの時のままだ…)
194:
恒一「じゃあ…いくよ?」
赤沢「ウン…来て…」ポッ
恒一「よい…せっと」ギュウウ
杉浦「??っ!」ギュウウウ
赤沢「い、いたたたた」ミシミシ
恒一「だ、大丈夫?赤沢さんもう止めよう」
赤沢「い、嫌ぁあああ…!だっこ…だっこしたいんでしょ…!」
恒一「いや別にそこまでってわけじゃ…」
赤沢「しなさいぃ!あ、あたしを…抱っこするのよおぉ?っ!」ミシミシペキ
恒一「あ、赤沢さん…」
恒一「…」パッ
赤沢「うわああん恒一君の裏切り者ぉおお!」ワーン
杉浦「♪」ぎゅー
196:
赤沢「ワーン恒一くんの嘘つき!薄情者!なによ!抱っこしてくれるってゆったのに!」
恒一「ごめん…あのまま引っ張ったら赤沢さんが真っ二つになりそうで…」
赤沢「それが何よ!またくっつければいでしょ!?ほらもう一回!だっこだっこぉ!」
恒一「そ、そうはいかないよ…プラナリアじゃあるまいし…」
赤沢「抱っこしてぇ…してくれるって言ったじゃん嘘つき…」ウルウル
恒一「日を改めるよ。あ、じゃあせめて撫でてもいいかな?」
赤沢「え?…うん、ナデナデしていいよ…でも次はちゃんとだっこしてね?」
恒一「うん、約束だよ」
赤沢「あ、あたしがいいって言うまで撫でなさいよ…」
恒一「うん」
赤沢「じゃあ…きて」
恒一「では…」
197:
恒一「失礼して…」
赤沢「……」ドキドキドキ
恒一「よーしよしよしよしよしよし」
赤沢(わああ?なんか釈然としないとこはあるけど恒一君が私の頭ナデナ
ガブッ
恒一「うっぎゃあああああああああああああああ!!」シビビビ
杉浦「う?っ!う?っ!」ハグハグ
赤沢「た、多佳子のバカぁあああああ!!うわあああん!なんでこうなるのよお!?」
赤沢「ワーン」
おし まい
おまけって事で許してくんなまし
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