「アルミン怪奇譚」back

「アルミン怪奇譚」


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2:
『夜を歩く』
その夜はどうにも眠れず、僕は真ん丸の月のした訓練場を歩いている。
視線の向こうで月明かりに照らされて、女が一人立っていた。
女「ああ、そこの人。あたしを女子寮へ案内してくれないかしら」
妙に艶っぽい撫で声が僕の耳をくすぐった。
一見するとどうやら訓練兵ではないようだ。子供とは言い難い熟れた体が科を作り、挑発めいた笑みを僕に投げかける。
なにより獣の毛皮を羽織ってはいるようだが、その下は白い柔肌を覗かせるばかりで服を着ているようには思えない。
アルミン「"あなたの行くべき"場所はそこではないでしょう。さあ、お送りしますから腕を」
僕が肘を軽く上げると女は少し不満そうに、しかし大人しく僕の腕をとった。
夜を寄り添い歩く道すがら、女は何度も話しかけてきた。
女「あなたはとても可愛い顔をしているわね。肌も柔らかでおいしそう」
女「このままどこに連れてかれても構わないけれど。あなたはそういうのには初心そうね」
女「憎い女が居て、せめて一噛みくらいと思ったけど、もうどうでもいいわ」
女「ここまででいいわ。ありがとう、さようなら」
立体軌道の訓練に使われる森の奥、女は煙のように消えてしまった。
そういえばこの森に狼が出た時、訓練の一環として僕らは狼を屠ったことがある。
弓を射られてあれが死んだのは、丁度このあたりではなかったか。
翌朝、僕は眠気眼を擦りながら食堂へと赴く。
丁度手を合わせている笑顔のサシャを見つけたので、僕は彼女パンを半分毟って無造作にそれを自分の口へと放り込んだ。
鬼だ! 蛇だと! 泣きつかれたが、当の僕はどこ吹く風だ。
だって、これは正統な報酬なのだから。
―『夜を歩く』 終わり
元スレ
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アルミン怪奇譚
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3:
『顔のない男』
僕が一人書庫で本を読んでいると、部屋の隅に顔のない男が座っていた。
頭はあるが、その顔があるべき場所には虚(内部が空・空洞)が穿っており、内には暗黒が広がるばかりだ。
アルミン「顔はどうしたんですか?」
と、僕が尋ねれば
男「落としてしまいました」
と顔のない男は照れくさそうに頭をかいた。
どうやら声も出るし目も見えるそうだが、多少絵の心得のあった僕は代わりの顔を描いてあげることにした。
どうせならうんと綺麗な顔を見繕ってやろう。
アルミン「さあ、これがあなたの顔ですよ」
男「おお、これが」
顔の描かれた紙を手渡すと、男はそれを自分の虚へとあてがった。
男「私の新しい顔」
紙は男の虚に溶けるように交じり合い、本当の顔となったようだ。
暫くして、書庫からボロボロの人間の顔が見つかった。
見つかったのはあの男が座っていた椅子の下。ずっと尻に敷いたまま気付かなかったとは何とも間の抜けた話である。
僕はその事について男に話したのだが、男の方は―
男「いりませんよ。元々醜い顔でしたから、私は今の顔が気に入っているんです」
―自分の一部を失くした魂は成仏できないと聞く。
でもそれもいいのだろうと僕は思う。
男は綺麗な顔に手を当てて、幸せそうに笑っていた。
―『顔のない男』 終わり
4:
『幽体離脱』
私はミーナ。成績は平均、容姿もそれなりのどこにでも居るごく普通の女の子。
でも、私は一つだけとっておきの力を持っているの。
それはシエスタ! ただ昼寝じゃないよ、なんと幽体離脱ができちゃうの!
時間は昼休み限定だけど、それでもこの力は凄いんだ。
どこへでも自由に飛べてすり抜けて、見つかることなく誰かの些細な日常を覗き見れる。そこには普段見せない皆の顔や秘密がたくさん詰まってる。
私はそれを見るのが楽しみで、今日も自分の身体を飛び出して青い空の下を漂っている。
あ。あそこに居るのはアルミンだ。
アルミン、私と同じ訓練生。私を見るといつも顔を赤らめて目を伏せてしまう可愛い男の子。もしかしたら私のことが好きなのかな?
彼は今、人気のない木陰で一人本を読んでいる。
間近でその表情を眺めてみるのもいいかもしれない。今日のターゲットをアルミンに決めると私は彼の元へと飛んでいった。
近づいてみたらアルミンは何だか落ち着かない様子だった。
本を目で追ってはいるんだけど集中できてない感じ。何か別のことでも考えてるのかな?
私がまじまじと近くでアルミンを眺めていると、彼は突然本を閉じ、私のほうを向いてこう言った。
アルミン「ミーナ、前から言おうと思ってたんだけど…その、前隠した方がいいよ?」
ミーナ(?! ………!?//// キャアアアッ!!////」
絶叫と共に私は昼寝から飛び起きた。
顔が熱い、もうシエスタは絶対しない。っていうかやれない。
…ああ。私は次からどんな顔してアルミンに会えばいいんだろう。
―『幽体離脱』 終わり
5:
『カニバリズム』
巨人はなぜ人を食べるのでしょう?
座学で聴いた話では確か[ピーーー]ためだった気がしますが、ならわざわざ『食べる』必要あるんですかね?
巨人なら殺し方なんて、別に食べる以外でも幾らでもやりようがある気がするんですが。
不謹慎ですよね…ごめんなさい。でも不謹慎ついでにもう一つだけ。
もしかして人ってすごく美味しいんですかね?
アルミン「あのねサシャ、そんなこと訊かれても僕にだって答えられることと答えられないことはあるよ?」
人気のない書庫の中で、僕はサシャに曖昧な返事を返す。
サシャ「でも気になって気になってしょうがないんですよ。それにアルミンって何だかとっても美味しそうじゃないですか」
サシャ「だから一口だけでいいんですよ、指でも耳でもなんでもいいんで、食べさせてくださいよ。ア ル ミ ン」
拒否権はないようだ。僕は獣のような俊敏さでサシャに押し倒されてしまった。
白目を剥いたサシャの口の端には泡立ったヨダレがテラテラと光っている。むき出した歯は獲物に噛みつかんとする興奮に震えているようだった。
アルミン「ねえ、いい加減怒るよ。サシャに悪戯する位は許すけど度が過ぎるよ、狼」
サシャ「あら、バレてたの。残念だけどあなたに怒られるのは嫌だからこれくらいでやめておくわ。また遊びましょ」
そういうとサシャの身体から力が抜けて、僕に跨ったまま文字通り憑き物が落ちたかのように大人しくなった。
サシャ「…ハッ! 私は何を…って、ええー!? なにさせとるんアルミン!」
アルミン「あはは…とりあえず早くどいてくれないかなサシャ」
サシャ「あっ、ごごごごめんなさい!」
サシャの重みが腹部から離れようとした時、ジャンが僕ら二人を見下ろしているのに気がついた。
ジャン「…テメーらそういう仲だったのか。芋女と死に急ぎ野郎の腰巾着ってだけで驚きだが、こんな明るい内から盛ってるとは思わなかったぜ」
サシャ「ジャン!? 誤解ですよ?!」
アルミン「あはは……相変わらずジャンは」
人を食ったような性格だね。
―『カニバリズム』 終わり
6:
『人ご○し』
兵舎の廊下で見知らぬ男とすれ違った。
顔色は優れないが晴れ晴れとした顔をしていた。振り向いて僕が何かいいことでもあったのと訊くと
晴れ晴れとした男「憎いあいつをこ○してやったんです」
と言って消えた。
僕はそのまま廊下を進み、用のあった物置へと入っていった。
顔色は優れないが、怒りに満ちた顔の男が座っていた。正面に立って何を怒っているのと訊くと
怒りに満ちた男「憎いあいつが襲ってきやがった。返り討ちにしてやったけどな」
と言って消えた。
なるほど、事情は知らないが消えた二人はこの物置でこ○し合いの末相打ちとなったのだろう。
そしてお互い自分が死んだと知らぬまま勝利に浸り、またこ○しあっては勝利に浸っているのだろう。
この不毛な戦いに、僕が介入すれば彼等は矛を収めるのだろうか。
勿論、思いついてもそんなことはしない。
アルミン(信頼してもいない人ご○しのために、危険を冒す度胸はないや)
用事を終え、来た道を戻ると先ほど晴れ晴れとした顔だった男が鬼の形相で物置へと向かって行くのにすれ違った。
―『人ご○し』 終わり
7:
『雛』
獣に襲われたのか、翼の折れた鳥が地面の上でピーピーと鳴いていた。
何となく放っておけなかった僕はそれを優しく掌に包むと寮へと持ち帰ることにした。
しかし持ち帰ってみれば手の中に居たはずの鳥はどこにも見当たらなかった。
ユミル「クリスタの様子がおかしいんだ」
ユミルが相談を持ちかけてきたのはそれから暫く経ってのことだった。
訊けば四六時中クリスタは口を押さえて吐き気を我慢しているようだと言う。
悪阻じゃねぇだろうなぁと、ユミルの言葉にいつもの余裕はなさそうだ。
ともかく僕はクリスタを診ることになった。なるほどユミルの言うとおりクリスタは口を押さえて俯くばかりだ。
アルミン「やあクリスタ、気分はどう」
クリスタ「」フルフル
アルミン「吐き気とかはある?」
クリスタ「」フルフル
アルミン「…何か、言いたい事がある?」
クリスタ「」ピタッ
アルミン「…ユミルか僕には言えるかな?」
クリスタ「」フルフル
アルミン「わかった、クリスタ、手をどけて」
僕は嫌がるクリスタの手をどけると、無造作にその口に右手の指を突っ込んだ。
うっというクリスタの嗚咽と全身の痙攣を見ながら、僕は指を抜いてクリスタの口元に手をかざす。
小さな雛が、クリスタの舌を伝って僕の掌へと落ちてきた。
雛は一頻り僕の掌でのた打ち回った後に、全身全霊を込めて不平不満を言うようにピーピーと泣き出した。
アルミン「気分はどう?」
クリスタ「…アルミン」
涙目で上気しているようだが、さっぱりした顔のクリスタがそこにはいた。
アルミン「別に言葉で伝えなくてもいいんだよ」
クリスタ「…うん」
僕の掌で泣き続ける雛を二人で見ながらそう呟く。気付けばいつか拾った鳥が泣き叫ぶ雛に寄り添っていた。
アルミン「…そうか、こっちはクリスタに返した方がいいね」
僕はいつか拾った方の鳥を摘み上げるとクリスタの口へと運んだ。今度はクリスタは抵抗しなかった。
アルミン「知っている人のだといいけど」
クリスタ「……!!!」
クリスタはまた両手で口を押さえて泣き始めた。でも大丈夫だろうと僕は思う。
お母様、と嗚咽に紛れた声を僕は聞こえないフリをする。
ユミルが怖い形相で飛び込んできたのはそれから間もなくの事だった。
―『雛』 終わり
8:
『蜜月』
少女「身体を貸してほしいのよ」
少女は開口一番にそう言った。
事情を聴けば特に俗世に恨み言はないのだが、オボ○のまま逝くのが無念なようだ。
生身の身体で一度でいいから蜜月たるものを味わってみたいというのが少女の弁だった。
アルミン「話は分ったけど何で僕にお願いするのかな。僕男だからね」
少女「細かいことは気にしないでよ。身体があれば何とかなるし、それにあたしが見えるのあなただけみたいなんだもん」
アルミン「う〜ん、嘘はないみたいだね。いいさ、使ってくれ。でもあんまり無茶はしないでね」
その言葉を聴くと、少女はニィっと笑って、僕の体に飛び込んできた。
それから間もなくして、僕の身体は女のそれへと変わっていった。
* * *
翌朝起きて自分の身体を触ってみると、どうやら身体は元に戻っているようだった。
何時もと変わらない日常が始まった。ただ少し違う事といえばエレンが僕を方を見て顔を赤らめる事くらいであろうか。
アルミン「どうしたの、エレン?」
エレン「あっ…いや。アルミンは男だもんな…何でもない、絶対違う」
そう言って伏せられたエレンの顔は赤いままだった。
アルミン「…変なエレン」
僕が意地悪っぽく笑って見せると、エレンの顔は益々赤くなるばかりだ。
―『蜜月』 終わり
9:
『背徳感』
私は訓練兵だ。私の傍らにはアルミンが眠っている。
たまの休日を読書で潰していたのであろう。木漏れ日の中、草のベッドの上でアルミンは本を枕に眠っていた。
私はアルミンが大好きだった。しかしこの想いは叶わないと知って、せめてもの願いで眠れる彼の傍にいる。
彼は美しい。女性と見紛う顔立ちに白く滑らかな柔肌は、今はただ無防備でひたすらに眩しかった。
まるで強い引力が発生しているかのように、私の唇は彼の頬へと降りていく。
もし目を覚ましまったら、卑怯な行為、されど抗い難い。
やがて私の唇はアルミンの頬へと到達する。それは蕩ける様に甘く、私の背後から脳髄へと黒い蛇を這わすような感覚に襲われた。
自己嫌悪と快楽が結びつく。このままアルミンと溶け合ってしまいたい。
そうして思考が薄れていく中、本当にアルミンと溶け合っていくような気がした。
そして目を覚ますと、私はアルミンの身体の一部となっていた。
アルミン「やぁ、お目覚めかい」
訓練兵「ア、アルミン?! これは一体…」
アルミン「気付いていなかったようだから言っておくけど、君は既に死んでいるんだよ。訓練中の事故でね」
ああ、そうか。確かに私は死んでいる。訓練中命綱を切られて怖くなり、崖から落ちて死んだのだ。
アルミン「何が原因で彷徨ってるか分らなかったから放っておいたけど僕だったんだね。そういうことなら成仏するまで僕の身体にいればいいさ」
訓練兵「…いいの?」
アルミン「ただし背中から顔出すくらいにしてね。視界に入ると日常生活に支障が出そうだから」
訓練兵「うん、アルミンと一緒に入れるなら」
こうして僕の背中には顔がある。
少女「なになに、新入り? 他人の身体でルームシェアーとはねー。分んないことあったら何でも言ってよ」
それらは僕にしか聞こえない声で話を交える。
訓練兵「ちょ、なんですかこの子! アルミン、説明してください!」
ちょっと困ることを挙げるなら
アルミン「…んっ」
彼女らが口を動かすたび、背中がくすぐったくてしょうがないことだ。
―『背徳感』 終わり
11:
『アルミン怪奇譚』
ある訓練兵は語る。曰く、
眠れぬ夜に外へ出でれば、狼とアルミンが月夜を並んで歩いていたと。
ある訓練兵は語る。曰く、
逢魔時に書庫へと足を運べば、美しき男に口説かれ、帰り際には煙のように消えていたと。
それはアルミンの友と語り、彼のお陰で自分に自信ができたという。
ある訓練兵は語る。曰く、
サシャがたまに、アルミンの方を眺めては虚ろな目をして涎を垂らしていると。
話しかければ何時ものサシャに戻るそうな。
ミーナがアルミンを見て顔を赤らめるのはまた別の理由であろう。
ある訓練兵は語る。曰く、
誰もが不気味がって敬遠していた物置から、刃物を持ったアルミンが出てきたと。
奇妙な事だがそれ以来、その物置を怖がる者が少なくなっていったという。
ある訓練兵は語る。曰く、
突き当たりで聞き覚えのない女性二人の声が聞こえるので好奇心から覗いてみると、
そこにはアルミンの背中があるばかりだったと。
ある訓練兵は語る。曰く、
訓練所に野鳥が増えたが、それらはなぜかアルミンの周りに集まっている気がすると。
ある訓練兵は語る。曰く、
な、何か夜な夜なエレンのベッドの上に金髪全裸のねーちゃんが乗っかってるように見えるんだけど、俺が馬鹿だからじゃないよな!と。
アルミンもエレンと同室だがさてはて。
摩訶不思議な怪奇譚。
それらはアルミンという一人に符合することから、何時しかこう呼ばれるようになった。
総じて―
―『アルミン怪奇譚』 お終い
12:
これでお終いです。
読んでくれた方々、お付き合い有難うございました。
13:
おつ。不思議で中々面白かった。
14:
>>13
不思議と感じてもらえたなら嬉しいです。
15:
引き込まれるような文
不思議な気分になったよ
あわよくばもう少し見たかったけど、これが一番収まりがいいのか
何はともあれ、とてもよかった乙
17:
>>15
感想ありがとうございます。
手軽に読める短さで不思議を感じてもらえればなーと思って書いたので嬉しいです。
もう一つだけ思いついたのでおまけで書かせてもらいます。
18:
おまけ『きみが悪い話』
朝起きると枕元に一房の黒い髪が落ちていた。
自分の抜け毛かとも思ったが、その黒髪は細く艶やかで、何より自分のものより長かった。
同室の者たちの物かと顔を思い浮かべるも合点がいかない。それからというものその黒髪は至る所で目に付くようになった。
食堂の椅子の上、たまたま座った座学の席、訓練場を走る間に垣間見た地面。
流石に気味が悪くなってきたので、俺はアルミンにこの事を相談することにした。
エレン「…と言うわけで気味が悪くてさ、アルミンならどうにかしてくれるんじゃないかって」
アルミン「話は分ったよエレン。僕の方でも色々調べてみるから気をしっかり持ってね」
エレン「ああ、すまねぇなアルミン。解決したら何でもお礼するからさ」
アルミン「うん…ああ、それならエレンには先にお礼の方を前借しちゃおうかな。お願いしたい事があるんだけど―」
* * *
それから程なくして、エレンの問題は解決したようだった。
夕食の時間になり食堂へと向かう道すがら、僕は上機嫌なミカサに会った。
ミカサ「あ。アルミン」
アルミン「やぁミカサ。なんだが機嫌が良さそうだね、何かいいことでもあったの?」
ミカサ「ええ。訓練兵になって、エレンに言われて髪を切ってから暫く経った。今日、初めてエレンが、その、髪型を似合うと言ってくれた。とても嬉しい」
アルミン「そっか! よかったね、ミカサ!」
ミカサ「うん!」
それからミカサは先に食堂へと向かっていった。次にあったのはエレンだった。
エレン「よおアルミン! 今回の事は本当にありがとうな!」
アルミン「僕は何もしてないよエレン。結局、僕に相談してからすぐに髪の毛は見なくなったんだろ?」
エレン「いや、そうだけどさ…あー…じゃーそういうことにしておいてやる。兎に角ありがとな、アルミン」
アルミン「ふふ、何もしてないけどどういたしまして、エレン」
二人笑い合いながら僕らは歩く。しかしエレンはどうにも得心がいかないようで、最後にこう呟いた。
エレン「…しかし何だったんだろうなあの黒髪は。気味が悪いよ」
アルミン「…そうだね。ああ、本当に」
君が悪いよ。
―『きみが悪い話』 終わり
19:
最後にやっぱり幼馴染3人組を出したかった。
今度こそおしまいです。ありがとうございました。
20:
アルミンは幽霊にモテモテだな!
22:
これは良いな
32:
・現在公開可能な情報
『アルミン・アルレルト』
物心付いた頃から人には見えない怪異を見ることができる少年。
怪異という一点に絞れば、どれだけ凄惨な光景を見せられても揺るがない精神力を持つ。
それが強い精神なのか、壊れた精神なのかは誰にもわからない。
33:
『落ちてきた男』
僕は一度だけウォール・マリアの壁の上から外の世界を見たことがある。
赤ら顔のハンネスさんに連れられて、一般の子供が壁の上に登るなんて不味いんじゃないかなとも思ったけどそんな考えはすぐに吹き飛んだ。
秋の清浄な空の下、外の世界は広大で、ただひたすらに美しかった。
アルミン「すごいやハンネスさん! 見て! ずっと向こうで空と大地が重なってる! 世界は本当に丸いんだ!」
あの山の向こうには海があるのだろうか、この外の世界のどこかに、炎の水、氷の大地、砂の雪原があるのだろうか。
ハンネス「おいおいアルミン、あんまはしゃぐと落っこちまうぞ」
そう言ってハンネスさんは後ろから優しく僕を抱きとめる。少しお酒臭いけど、秋晴れの刺すように冷たい風の中、ハンネスさんの体は暖かだった。
一頻りはしゃいで落ち着き始めた頃、僕の横にいつの間にか男が立っているのに気が付いた。
駐屯兵団の服は着ていない。僕が怪訝な顔をして男を見ると、男は一言
男「下でまた会おう」
といって消えた。
それから程なくして壁の上の見学会は終わりを迎えた。
* * *
ハンネス「な、なぁアルミン。頼むから今日のことは内緒にしてくれな。バレたらやべぇ…マジでやべぇ」
アルミン「大丈夫ですよハンネスさん。絶対に誰にも言いませんから」
酔いが覚めてまずいことをしたと気付いたのか、落ち着きのないハンネスさんと秘密を交わしてから僕たちは別れた。顔が赤くなったり青くなったり忙しい人だ。
下に降りた僕は名残惜しさから壁を見上げる。すると壁の上で会った男が落ちてくるのが見えた。
グシャっと、僕の目の前に奇妙なオブジェが出来上がる。辛うじて原型をとどめた顔で僕を見上げると、男はニィッと笑った。
アルミン「…楽しい?」
先ほどまでの感動を台無しにされた気がして、僕はちょっと腹を立てながら男に問いただす。
男「ああ、楽しいとも。"死ぬほどにな"」
笑えない冗談を言って男はケラケラと笑う。
すると風が吹いて、冷たい秋風が僕の肌を刺した。
アルミン「…寒い」
他意はなかったのだけど、それを聴くと男はムッとした顔をして僕の前から姿を消してしまった。
―『落ちてきた男』 終わり
34:
・現在公開可能な情報
『見える人』
極稀に存在する怪異を認識できる人々の総称。
怪異には群がられ、見えない人からは異常者と思われる事から平穏な人生を送る者は少ないとされる。
35:
『シミ』
子供の頃にはよくある話だ。
天井の木目にじっと目を凝らして見れば、その木目が生き物のように動いて見えるとか。
ベッドのシーツにできた皺が顔に見えて、何だかこっちを見つめているように見えるとか。
カルラ「エレン、買い物に行ってきてくれるかしら」
俺がお使いを頼まれたときに辿る市場への道筋に、一つ、大きなシミの広がった壁がある。
何となく立ち止まってそのシミに目を凝らすと、俺はシミの中に猫の顔を見た。
猫の死体を見つけたのは、それからすぐ後のことだった。
次の日、俺は今日も母さんのお使いであの壁の前を通る。
昨日のことは偶然だろうと、俺はまた立ち止まって壁のシミに目を凝らす。今度はシミの中に犬の顔を見た。
犬の死体を見つけたのは、それからすぐ後のことだった。
次の日、俺は今日も母さんのお使いであの壁の前を通る。
流石に怖くなっていたので、俺はもうシミは見ずに通り過ぎようと腹に決めていた。
すると今日は壁の前にアルミンが立っている。
アルミンは、ジィッと壁のシミを見つめていた。
エレン「アルミン! 見ちゃだ―」
ぐえっと、壁からくぐもった声が聞こえてシミが一斉に飛び出した。
なんてこった。俺がシミだと思って見ていたものは血だったらしい。正面に立って壁を見据えていたアルミンは、飛び散った血を直に浴びて頭から血塗れになっていた。
アルミン「あ、エレン」
今更こっちに気付いたのか、アルミンが間の抜けた返事をする。俺が恐る恐る駆け寄って壁の方を見ると、シミは綺麗さっぱり消えてしまっていた。
俺はアルミンの身を案じるよりも先に、急に膨れ上がっていく疑問の方を投げかけた。
エレン「…なぁアルミン、教えてくれ。お前は一体、"あのシミの中に何を見たんだ"?」
アルミン「なにって、やだなぁエレン」
アルミン「"シミの中にシミを見た"に決まってるだろ? それ以外何があるのさ」
変なエレンと、俺の友達は血塗れの顔で笑った。
―『シミ』 終わり
36:
・現在公開可能な情報
『二度にわたる死の考察』
人は殺○れて死んだ時、肉体は滅ぶ代わりに魂が地上に存在し続け「亡者」と言われるものに成る可能性があるという。
では、その魂でさえ殺○れて滅んでしまった場合、人は一体何に成るというのだろう?
37:
『先生』
幼馴染の二人と会えない日、僕は決まって先生の後ろにひっついて回る。
先生、といっても別に学問を教えてくれるというわけではない。言うなれば見える人の振舞い方を教えてくれる先生だ。
一つ、見えん者には合わせて見えん振りをしろ。一つ、見てもいいが好いのと悪いのとの分別を付けろ。
そう講釈をたれる辛うじて人らしい姿をしてる先生は、今日も上半身を覆うほどの大きな頭をフラフラ揺らしながら歩いている。
アルミン「先生。あれは?」
僕が指差す先にいるのは、血まみれの這いずる肉の塊だ。
先生「食うてもいいが腹を壊すぞ。喋り相手にも口がない」
アルミン「先生。あれは?」
次に僕が指差したのは、臍の辺りまで唇を伸ばした妙な風体の男だ。
先生「あれはいかんな。耳を吸うて一生囁く。話しかけるな」
こんな風に、先生は僕に何でも教えてくれる。
見た目は怖いけれど、見える人のいろはを教えてくれた僕の大好きな先生だ。
ただ、ちょっと悪い癖があって―
先生「おっ」
―言うが早いか、先生が体躯に見合わぬ身のこなしで飛び出した。
その先にいたのは、たまたま通りかかった僕と年の変わらぬ男の子。
先生はそのままその子に覆いかぶさるや、瞬く間に頭からボリボリと平らげてしまった。
アルミン「…先生、魂っておいしいの?」
先生「んー、味はせんな。ただ、楽しくなる」
先生の悪い癖、それは人の魂を見ると形振り構わず食べに行くところだ。
呆れ顔の僕を知ってか知らずか、気分を良くした先生はこちらを向いてこう言った。
先生「お前が死んだらすぐ行くぞ。駆けつける。絶対に、逃がしゃせん」
先生はニッコリしながらまた重たい頭を揺らして歩き出す。
僕もまた先生に倣ってその背中をついて行く。
僕の、大好きな先生の背中を。
―『先生』 終わり
38:
・現在公開可能な情報
『しょうたい』
招待・正体と2つの説がある。
見える人と関わりのある見えない人が、稀に見える人の力を通して怪異を体験する現象。
幼少期のときほど起こりやすいとされる。
39:
『楽しくないゲーム』
アルミン「ゲームをしようか」
アルミンがそう俺とミカサに投げかけたのは、もう帰ろうかと思い始めた夕暮れ時のことだった。
アルミン「断っておくけどもう始まっているからね。ルールは簡単、今から上を向かずにあの道の先にある十字路まで歩いて行くだけだよ」
エレン「はぁ? …なぁアルミン、それって全然ゲームじゃなくねぇか? だいたい上を向いたからなんだって―」
上を向こうとした俺の頭がグイッとミカサの馬鹿力でねじ伏せられた。何すんだよと文句を付けるも当のミカサは呆れ顔だ。
ミカサ「…エレン、アルミンはもうゲームは始まっていると言った。上を向けばあなたは負け。それに私もエレンには前々から忍耐が足りないと思っていた。これはアルミンなりの訓練」
なんだと、と売り言葉に買い言葉だ。俺はアルミンの提案を呑み、三人で道の向こうにある十字路まで上を向かずに歩く事となった。
会話はなかった。どういうわけだか空気が重たく、俺たち三人は俯いたまま目的の十字路まで歩いていく。
エレン「…なぁ、アルミン」
アルミン「駄目だよエレン、上を向いたら」
なんだろう。
ミカサ「…アルミン」
アルミン「駄目だよミカサも、上を向いたら」
上を向きたくてしょうがない。
エレン「なぁアルミン、何で上を向いたら駄目なんだ? 俺なんだか、上から、見られて」
アルミン「あはは。そんなこと言っても駄目だよ。ミカサの言うとおり、エレンはちょっと忍耐が足りないのかも」
ミカサ「アルミン、私も何だか、その、上から、声が」
アルミン「珍しいねミカサ。駄目っていわれるとやりたくなるものなのかな? でも上を向いてはいけないよ」
アルミン「…はい、到着。二人とも上を向いてもいいよ」
いつの間にか立っていた十字路の上、俺とミカサは一斉に上を向く。
そこには無数の千切れ雲と、夕暮れの優しい茜色の空が広がるばかりだった。
先ほどまでの重苦しい空気はどこへやら。ポカンとしている俺たちを尻目に、アルミンは「それじゃまた明日ね」と言って一足先に帰ってしまった。
取り残された俺とミカサが互いに顔を見合わせていると、後ろから
「んー、これはあんまり楽しくない」
という声と何かを齧る音が聴こえた。
後ろを向いてはいけないよ。
いない筈のアルミンにそう言われた気がして、俺たちは振り向くことなく全力疾走で家へと走っていった。
―『楽しくないゲーム』終わり
40:
・現在公開可能な情報
『怪異』
人や巨人には認識されることのない、全く役に立たない存在の総称。
強い力を持った怪異でさえ人に極微弱な影響力をもたらす程度とされている。
ただし、見える人たちにとっては脅威の対象となる。
41:
『長い冬の終わり』
その冬は長く、世界はただ真っ白で。
ミカサ(…早く帰ろう)
私はミカサ、今はこの白い世界で薪を拾って歩いている。
とてもとても長い冬だった。何度冷たい夜を越えても春の日差しはまだ遠く、街の誰も彼もが冬の備蓄が尽き始めて困ってる。
私は今日も一人で薪を拾う。エレンが高熱で倒れてしまってからはカルラおばさんは付きっ切りで看病を、グリシャおじさんは今日も忙しそうに街の人々を診て回っている。
切り株のお爺さんと会ったのはそんな冬の空の下でのことだった。
ミカサ「…こんにちは」
お爺さん「ああ、こんにちは」
切り株のお爺さん。冬になってからはいつも同じ切り株の上に座って日永ぼんやり遠くを見ているお爺さん。挨拶するのは今日が初めてだ。
ミカサ「お爺さん、何時もここで何をしているの?」
お爺さん「何もしとらんよ。果さなきゃならん仕事があったが、中々踏ん切りが付かずこうやって日永座っとる。情けない話しさ」
それ以上何も訊くことができずに、私は充分な薪を集めると帰路へと急いだ。
翌日、私はまた薪を拾いに外へ出る。
道中アルミンと出くわした、アルミンは私を見てギョッとした様子だったが、すぐに何時もの調子を取り戻して挨拶をしてくれた。
鉈を失くしてしまったのか、アルミンは細い薪を集めるだけには不釣合いな斧をぶら下げている。
ミカサ「大丈夫アルミン、斧、重そうなら私が」
アルミン「大丈夫だよミカサ、全部済んだから。エレンもきっとすぐ良くなるさ」
ミカサ「? …うん」
それからアルミンは先を急ぐようにしてそのまま私の横を通り過ぎていく。
それを追うようにして、一筋の暖かな風が私の頬を撫でるように横切った。
振り向けばすでにアルミンの姿はない。私は頬に手を当てると何故かこの長い冬は終わったのだと感じた。
切り株へと辿りつくと、そこに何時も腰掛けていたお爺さんの姿はなかった。
まるでお爺さんの別れの挨拶であるかのように、切り株には周りよりも多くの雪が積もっている。
ミカサ「………」
雪は淡く、やがては大地へ解け結ぶ。
そして春には、きっと花と芽吹くだろう。
―『長い冬の終わり』 終わり
42:
『無関心』
私は何も見えない、聞こえない、言うこともない。だから私を放っておいて。
「本当に俺達が見えないのか? 本当は見えているんじゃないのか?」
「見えているのに無関心を装っているのさ。冷酷な女だよ」
「あんたが、あたし達を殺したんじゃない」
アニ(私は何も見えない、聞こえない、言うこともない。だから私を放っておいて)
ウォールマリア崩壊後、私は俯きながら亡者を引き連れ歩いている。
仲間にはこれが見えないようだったから、私も合わせて見えない振りをした。
なぜ私だけと腹立たしく思うこともある。しかし今は背負うべき咎なのだと諦めた。
ふと前から楽しげな声が聴こえ、私は羨望から顔を上げる。
アニ「…ひっ」
思わず、口から小さな悲鳴が漏れた。
前から歩いてきたのは、私と年も変わらぬ子供達3人だ。
前の黒髪二人はどうでもいい。その後ろを歩く金髪の少年―
―笑っていた。
私なんかが及ばない、異形の者達を引き連れて笑っていた。
まるでそれが日常であるかのように、前の二人と談笑しながら。
すれ違いざまにその少年と目が合った。
少し私の周りに目を走らせると、彼は笑顔で私の前を通り過ぎていく。
暫くその場から動けずにいると、私はある異変に気がついた。私の周りにいた亡者達が減っている。
いや、減り続けているといった方が正しいか。目の前で異様に頭のでかい怪物が、私の亡者を食べていた。
「これは楽しい、いや楽しい」
怪物は見る見るうちに亡者達を平らげていく。最後に残った亡者を拾い上げると、その頭を口へと運ぶ。
アニ「…あっ」
それは少女の亡者だった。他の連中が恨み言を言う中で、ただ一人何も言わずに私の隣を歩いていた少女の亡者。
彼女は今まさに頭を齧られんとする最中、無感動に私を眺めてこう言った。
少女「また、あたしを[ピーーー]のか」
アニ「…違―」
ボリッと肉を齧る音が、私の耳だけに木霊した。
* * *
ミカサ「…さっきの子は知り合い?」
先ほどの一瞬を目聡く見ていたのか、ミカサが僕に問いかける。
アルミン「ううん、たまたま目が合っただけだよ」
笑顔で彼女の問いを流しながら僕は考える。どうやら自分以外にも見える人がいたようだ。
ふと彼女と話してみたいという思いが頭を掠めたが、僕はすぐに頭を振った。
アルミン(関わっても碌なことにはならないか)
僕が先生の居ないことに気がついたのは、それから暫く経ってのことだった。
―『無関心』終わり
43:
『ありがとう』
キース「貴様は何者だ!?」
アルミン「シガンシナ区出身! アルミン・アルレルトです!!」
その背中を見たとき、まるで世界が止まったようだった。
キース「3列目後ろを向け!」
金髪の少年がこちらを振り返る。間違いなかった、あいつは、あの時私を悪夢から救ってくれた少年だった。
私の名前はアニ・レオンハート。今は教官の通過儀礼を終えてあいつの姿を探している。
ウォール・ローゼで避難民として生活していた時、私を亡者達から解き放ってくれたあいつの背中を。
追いついて、ただ一言、お礼が言いたかった。
―解っている。
私に、そんなことをする資格はない。
そもそもあいつ等を招くことになった原因は、全部私たちにあったのだから。
本当は一生背負わなければならなかった。あいつ等にだって、罪などあるわけがない。
アニ(それでも、私は…)
お礼が言いたかった、あの異形どもを引き連れて、それでも私に笑顔を向けてくれた少年に。
アルミン・アルレルト…ほんと、馬鹿みたいな名前。
アニ(いた!)
見つけた、間違いない。いつかの二人と一緒に食堂の方へと歩いている。
異形どもの姿は見当たらなかった。私が見えなくなったのか、それともあいつから離れていったのかは判らない。
とにかく、追いつかなきゃ。追いついて、あたしはあんたにちゃんとお礼を言うんだ。
待って、アルミン。私は、あんたに
アニ「ま、待って!」
前の三人が一斉にこちらを向いた。
私を覚えていないのだろう。アルミンは不思議そうに首を傾げてこちらを向いている。
ようやく言える。あんたに、ずっと言いたかった一言を―
(また、あたしを殺○のか)
―言いたかった。ずっと言いたかったんだ。
でも、出ない。
言葉が、出ない。
―『ありがとう』 終わり
44:
ちびっこ達の七不思議篇、これでお終いです。
読んでくれた方々、お付き合いありがとうございました。
45:

これはまた来ることを期待してもいいのか?
51:
アルミン怪奇譚〜食いしん坊の妖怪譚
書き溜め、カップリングなし。先に怪奇譚の方を読んだ方がいいかもしれません。
サシャが主人公、息抜きのゆる〜い3話、妖怪の解説でお送りします。
52:
『おいてけぼり』
サシャ「ババ抜きをしましょう」
クリスタ「ババ抜き?」
ユミル「何だよ藪から棒に」
サシャ「いいからしましょう!」グイグイ
クリスタ「きゃ! ちょっとサシャ?!」グイグイ
ユミル「おい! 引っ張んな!」グイグイ
* * *
サシャがその女と会ったのは訓練所からほど近い山の中だった。
伸び放題の黒髪に一糸纏わぬ艶姿。変態さんですか? とサシャが尋ねると、女は―
女「おいてけ」グイグイ
―と言ってサシャが持っている兎4羽を引っ張り出した。
兎はその日、山で獲れたサシャの大切な獲物である。
サシャ「ちょ、引っ張らないでくださいよ! 変態さんじゃなくて山賊ですか!」グイグイ
女「い い か ら お い て け」グイグイ
サシャ「い や や て」グイグイ
どれくらい引っ張り合っていただろう。双方譲らず、互いに息が上がってくると、どちらからともなく一度手を離してその場で一息つくことと相成った。
少し落ち着いたのか、先に顔を上げたのは女の方だった。
女「いいかい、こちとら変態でもなけりゃ賊でもねぇ! 列記とした『おいてけぼり』って怪(アヤカシ)だ! あんたがその兎を置いていかなきゃあたいの沽券に関わるんだ! いいから置いてけ!」
サシャ「だから嫌ですって! 何が悲しくて知らない人に獲物を横取りされなきゃならないんですか!」
女「…禁猟区」
うっとサシャが動きを止め、女はにぃと顔を歪ませる。
女「バレたら、不味いよなぁ?」
サシャ「怪のくせに何でそんなこと知っているんですか…」
女「細かいことは気にしなさんな。ま、あたいとここまで張り合ったのはあんたが初めてだ。それを見込んでチャンスをやらんでもない」
サシャ「本当ですか!」
女「そうさね…それじゃ勝っても負けても恨みっこなし。一発勝負の―」
どこから取り出したのか、何時の間にか女の手からトランプカードが握られていた。
女「―ババ抜きといこうか」
* * *
サシャ「ババ抜きをしましょう」
クリスタ「ババ抜き?」
ユミル「何だよ藪から棒に」
サシャ「いいからしましょう!」グイグイ
クリスタ「きゃ! ちょっとサシャ?!」グイグイ
ユミル「おい! 引っ張んな!」グイグイ
―次は、次は絶ッッ対に負けません!
おいてけぼり「おいてけ!」
―『おいてけぼり』 終わり
53:
・現在公開可能な情報
『おいてけぼり』
江戸本所の堀の名。本所七不思議の一。釣りをして帰ろうとすると、水中から「置いてけ、置いてけ」と呼ぶ声がして、魚を返すまで言いつづけたという。
サシャが見たおいてけぼりは随分変わったおいてけぼりのようだ。
54:
『ヒダル神と子泣き爺』
サシャ「お腹が減って動けません」
地面にうつ伏せになったサシャがぽつりとそう呟いた。
ユミル「お前なぁ、さっき昼食ったばかりだろ。泣き言いってないで早く立てって」
クリスタ「そうだよサシャ。今日は遠征訓練で道のりは長いんだから頑張ろう?」
各班に分かれて別々の山から合流地点へと向かう遠征訓練。サシャが動かなくなったのは山に入ってすぐのことだった。
サシャ「…駄目です。気分も身体の調子も良いはずなんですがお腹が減って減って死にそうです」
ミーナ「ちょっと妙じゃないかしら…確かに訓練始まる前にお昼食べたばかりだし。それにお腹が減ってもサシャなら倒れたりしないと思う」
ユミル「そう言われてみれば妙だな。通過儀礼の時に芋食って、飯抜きで死ぬ寸前まで走らされてるサシャが…」
クリスタ「食料庫に入ったのがバレて、よくご飯抜きで走らされているサシャが…」
ミーナ「禁猟区で狩りしていたのがバレて、やっぱりご飯抜きで走らされているサシャが…」
サシャ「あれ、馬鹿にされてますか? 馬鹿にされてますよね私?」
クリスタ「あ、待って。そういえば訓練前にアルミンが言ってた症状と似てるかも」
ミーナ(アルミン?!)ビクッ
回想アルミン『山で調子は良いのに急にお腹が減って動けなくなったら何でもいいから口に入れるんだ。そうしたら動けるようになるよ』
ユミル「結局食わせなきゃ解決しないわけだ。しょうがねぇ、私の携帯食料を―」
サシャ「頂きます!」ガブッ
ユミルがバックパックから携帯食料を取り出すのと、ユミルの腕が手首まですっぽりとサシャの口に収まったのはほぼ同時だったという。
…近隣の山々に、ユミルの悲鳴が木霊した。
* * *
\アンギャー!/
アルミン(!? 今の泣き声はまさか子泣き爺! 注意しないと…)
ジャン「おーいアルミン。今度はダズがぶっ倒れた」
―『ヒダル神と子泣き爺』 終わり
55:
・現在公開可能な情報
『ヒダル神』
ヒダル神は人間に空腹感をもたらす憑き物で、何か少しでも食物を口にすれば助かると言われている。
作中に登場したといっていいのだろうかこれ。
『子泣き爺』
ゲゲゲの鬼太郎では心強い助っ人だが騙されてはいけない。
夜中に泣く赤子がいると憐れんで抱いてみれば、引っ掴んで話さないどころか段々体重が重くなっていき、終いには抱いていた人を押し潰して命を奪うという怖い妖怪。
もはや登場さえしていない。
56:
『夢を駆ける』
私は夢の中で森を駆けています。
もうどのくらい駆けていたのか、それでも疲れを知らず、ただ楽しくて、私は夢中で夜の森を駆け抜けます。
そうしているとやがて、私の身体は風のように軽やかになり、肌全体で世界を感じて、耳は大きく囁きを聴き、舌が大気を舐めて、鼻を色んな匂いがくすぐって―
―私は、一匹の狼になるんです。
―なんて、気持ちがいいんでしょうか。
―このままどこまでも、駆けていけそうで。
―気分がふわふわ、楽しいです。
―世界は、とても綺麗です。
サシャ(…近くに、居ますね)
走る先には一匹の雌鹿、私に気付いてこっちを向きました。
でも、もう遅いです。
雌鹿と目線が交差します。
まるでその瞬間、雌鹿と魂で繋がったような気がして。
夢中で、首筋に
* * *
ユミル「…こいつまた床で寝てやがる。あーあー泥だらけじゃねぇか全く」
クリスタ「でもお布団汚さずにすんで良かったかも。朝食前に起こしてお風呂入ってもらおう」
ミカサ「クリスタ、手伝おう」
アニ「こいつ、本当に大丈夫なの? 夢遊病みたいだけど…ッ、口も血生臭い…一体どこで何を」
ミカサ「アルミンが放っておいていいと言っていた。だから大丈夫」
アニ「…なら大丈夫かもね」
クリスタ「ね」
ユミル「何だよお前らアルミンアルミンって…ま、確かに大丈夫そうではあるが」
クリスタ「本当にね。だって…」
アニ「まぁ、確かに…」
ミカサ「この寝顔―」
サシャ「…ムフフー…」スヤスヤ
―凄く、幸せそう。
―『夢を駆ける』 終わり
57:
食いしん坊の妖怪譚、これでお終いです。
読んでくれた方々、お付き合いありがとうございました。
58:
おまけ『嘘予告』
散さま「進撃の巨人?」フフン
不退転戦鬼軍団、頭領・散参上!
ハンネス「信じられねぇ…超大型巨人が張り手一発で…」
地上に舞い降りし人界の美兵、散の零式防衛術が巨人達に裁きを下す!
ミカサ「散さまへの忠誠心ある限り! 我が身は不滅!」
エレンゲリオン"散さまの燃える口づけを受けて、人ではいられなくなったのだ!"
104期生「「「散さまのために!!」」」ババッ
散さま「美しさは兵器」ウィンク
巨人不要! 散さまの美進撃が今始まる!!
―誰か書いてくださいお願いします。
59:
そろそろくると思ってた頃だ
そこまで考えたなら君が書くしかないだろう?
60:
乙!
散さまをメインに持ってくるあたりに>>1の性癖が
64:
どれくらいで落ちるか忘れたけど
とりあえず保守
65:
>>64
保守ありがとうございます。
今からラストまで投稿します。
アルミン怪奇譚〜僕らは怪異バスターズ篇
書き溜め、カップリングなし。全11話、再登場怪異の紹介を交えてお送りします。
前に登場した奴らが一暴れするようです。
66:
『ありふれた突拍子もない夢・上』
―眩しい。
ヒストリア「…あれ?」
ユミル「っだーあっちぃ。なーヒストリア、コンビニで涼んでいこうぜ。このままじゃ干からびちまう」
―ユミル?
ヒストリア「どうして私の名前…」
ユミル「ああ? 名前がどうしたって?」
…ああ、そうか。今は学校の帰りだったっけ。
今日は午前で授業が終わったから夏の日差しはまだまだ高い。どうやら暑さで頭がボーっとしていたようだ。
ユミルが忌々しそうに暑さと格闘している。丈の短いスカートを両手で掴んでバサバサと靡かせ、気休めの温風を足の間に送っていた。
ヒストリア「やめなよユミル見っともない。人の目もあるんだし女の子なんだから…」
ユミル「サービスだサービス。見たい奴には見せてやるさ…ま、ヒストリアがやった方がサービスになるけどな」
やらないからね、と言って顔を見合わせ私たちは笑う。
今日は沢山時間がある。ユミルと私、他の人たちも呼んで遊びに出かけるのもいいかもしれない。
何をしようか。ユミルと楽しい考えを巡らせながら歩く、この帰路が私は好き。
「全――い話――――か。あん―――――、―――――くれる気―――――っぽっちも――ったん―ね」
「――――は助け――とになった―――――こ―――てほし―な。――に―――――礼――わな―――――いね」
ヒストリア「あの二人…」
ユミル「ん、何だヒストリア知り合いか?」
前で二人の男女が話し合っている。制服からして同じ学校の人だろうか、とても楽しそう。
―何故だろう、知っている人のような気がするのに思い出せない。
―何故だろう、胸がちくりと、切なく痛い。
―『ありふれた突拍子もない夢・上』 終わり
67:
『変態』
蝶っていう踊り子が居たのさ。
その名の通り、蝶のように舞うから蝶。この見世物小屋の客寄せだった。
蝶はある日、楽屋のテントで巨大な虫に犯された。全身舐(ネブ)られ圧し掛かれて…
芋虫「そうして俺は産まれたのさ…逃げようにもこんな形(ナリ)じゃ這うのがやっと。今じゃいい見世物さ」
アルミン「………」
目の前に倒れる裸体の少女が卑屈そうに笑う。
ただの少女ではない、頭から臀部に掛けては美しい少女のそれだが、その下に伸びる筈の足はなく、代わりに巨大な芋虫の体躯がでんと蠢いていた。
芋虫「しかし酔狂な野郎だ。団長に幾らか銀貨掴ませて、俺の楽屋に入ってくれば身の上話が聞きたいだ? 始めは俺を抱くつもりかと思ったぜ」
ま、抱けるわけねぇかと少女は下半身の芋虫を見せ付けるようにうねらせる。
それでも僕が臆せず近づき身を屈めると少女は幾らかたじろいだ。いじらしくも初めて己の乳房をその手に隠して。
アルミン「君は嘘をついているね」
少女がはっと身を震わせる。
アルミン「その時産まれてもいなかった君がまるで見た来たような物言いだ。蝶は誰だ? 君の本当の父親は誰だ?」
僕は彼女の両手をどけると、そっと胸元へと手を伸ばす。
アルミン「人は君を芋虫女だと言う。でも僕は君の中に"蛹"が見えるよ。その殻の中に、一体何を隠している?」
芋虫「嫌だ! 触るな!!」
アルミンの手が、少女の胸に触れた。
―あッ。
蝶(きゃっ! 団長、着替え中ですよ! 出てってください!)
蝶(…団長? こっちこないで…やめて、怖い)
蝶(嫌! 離して! やめてよ! "お父さん"!!)
―そうか、俺は。
―あたしは。
気付けばあたしの下半身には芋虫でない人の足が生えていた。
全部思い出した、思い出したくなかった。
胸元のぬくもりが消え、あたしは去っていく男の背中に気付く。
蝶「待ってよ! こんなこと思い出させておいて…あたしはこれからどうしたらいいんだ!!」
アルミン「知らないよ…でも蛹から孵った蝶は空を舞うと相場が決まってる―
―自由に飛んでみたらいい…そうだな、僕は見届けた。だから、僕だけは君の自由を許そう」
蝶「………」
* * *
後日、見世物小屋の団長が何者かに殺される事件が起きた。
芋虫女が消えていたことから、憲兵団は強盗の線で捜査をしているようだ。
―蝶は、今もこの空のどこかで自由に舞っているのだろうか。
―『変態』 終わり
68:
『漸くの邂逅』
ようこそ当宿へ。
さあさあ、まずは火の傍へ。外は寒うございましたでしょう。
お連れの方は後からいらっしゃるんで? それとも、女ぁ呼びましょうか。
何、一人で泊まりたい? 失礼ですが宿を間違えちゃいませんか。何故ってここはそういう宿ですし。
ま、お客様には違いないですからそれではお部屋にご案内…はぁ、宿ではなく離れの方に泊まりたいと。
…そっちのお客様でございましたか。老婆心で言わせてもらえばお止めになった方がいいですよ。
あそこ、本当に出ますから。
ありきたりな話です。
どこぞの商会のボンボンが、遊郭の女と惚れた腫れたの駆け落ちだ。
夜中にこっそり家を抜け出して落ち合おうと、人目に付かなきゃなおいいってんで白羽の矢が立ったのがあの離れです。
迷惑な話ですよ。ええ、私もこの話の当事者でした。
駆け落ちが行われた翌朝、何も知らない私が離れに入ってみれば女が首吊ってんだから驚きだ。
男が来なかったんでしょう。裏切られて逃げる気力も失って、さりとて戻ればきつい折檻が待っている。
さぞ無念だったでしょうよ。
それからですよ、こんな夜更けに男が一人離れに入ると女の幽霊が出るようになったのは。
寂しそうにこちらをじっと見つめて、煙のように消えちまうそうです。
惚れた男を捜してるのか…こっちとしては迷惑ですが、惚れた男を死んでも待ち続けてるんだ。いじらしい限りだぁね。
さて、昔話はこれでお終い。ここが件の離れでさ。
ご忠告はいたしましたからね。それでは、ごゆっくり―
* * *
…あなた?
あなた、あなたなの!?
酷いよ、あたしずっと待ってたんだよ!
なのにこんなに待たせて…馬鹿!
もっと、もっと強く抱いとくれよ。
ああ温かい。嬉しいよ、嬉しいよお、あなた―
―あなた、あなた、あなた。
* * *
アルミン「お疲れ様」
朝、宿から出てきた男に僕は声をかける。
男「何がお疲れ様ですか。早く顔を返してください」
怒った顔で男が抗議する。僕が顔の書かれた紙を取り出すと、男は奪うようにその紙を掴み取った。
男「二度と、しませんからね」
アルミン「いいじゃないか。だって不公平だろ? 男は今も幸せに生きているのに、彼女ばっかり待ち損だ」
件の男の振りをするのによほど抵抗あったのか、それでも彼は膨れ面。
アルミン「今度違う顔描いてあげるから」
男「…東洋系でお願いします」
それっきり、僕の友人はぷいと顔を背けてしまった。
―『漸くの邂逅』 終わり
69:
・現在公開可能な情報
『顔のない男』
1回目の「顔のない男」で登場。
顔が取り替え可能な便利な男。イケメン顔を手に入れてから軟派な男になったらしい。
女絡みの怪異があるとよくアルミンに助っ人として引っ張り出される。
本人は嫌がっているようだが何だかんだで協力してくれる頼れる相棒。
70:
『夜の女』
私はルミ、夜の女。好きなタイプは初心な反応をする可愛い子。
今夜も一夜の恋人を探し街を歩く。
物騒な事件が起きてから、夜の街に若い娘の姿はまばらだ。
―物騒な事件―若い女を狙った殺人―血を抜かれたミイラのような変死体。
どうやら、この街には吸血鬼が出るらしい。
紳士「お嬢さん、よかったらお送りしましょう。最近は吸血鬼が出るという噂だ、一人歩きは危険ですよ」
ルミ「…他を当たって下さる? タイプじゃないの」
口説きなれている男は嫌。私は紳士を袖にすると再び夜の街を歩き出す。
残念だけど今夜は目ぼしい男が見つからない、大人しく帰ってしまおうか?
そんな考えを巡らせていると何時の間にか人気のない路地を歩いていた。
先ほどあった紳士が、私の前に佇んでいる。
紳士「一人は危険ですよ、お嬢さん?」
ルミ「ごめんなさい。しつこい男はもっとタイプじゃないの」
紳士が下品な高笑いを返す。気のせいか身体が徐々に盛り上がり、開いた大口からはひときは犬歯が大きく見えた。
…あらあら、そういうこと。私ったらうっかりさん。
紳士「お高く留まってんじゃねえぞこの売女!!」
吸血鬼が、私に飛び掛ってくる。
どうしようかしらと考えてとりあえず手持ちのバッグを相手に投げることにした。
ピッチャーさながらバッグを掲げ、片足上げて身体を捻り、えいやと投げたバッグは綺麗な放物線を描いて吸血鬼の顔にヒットした。
まさか反撃されると思っていなかったのか、吸血鬼はぐえっと情けない声を出す。
紳士「貴さm」
二の句は告げさせない、私は彼の首をむんずと掴む。
ルミ「私がそんなに欲しいんだ? だったらいいわよ。しつこい男はタイプじゃないけど特別に"搾り取ってあげる"」
紳士(なんだ!? 奴の手から何か吸い……身体が…萎…)
* * *
―翌朝。
エレン「聞いたかよアルミン、昨日、初の男のミイラが出たって。俺達も用心しねえとな」
アルミン「へぇ! そうなんだ!」ツヤツヤ
エレン「…どうしたアルミン、偉いハツラツとしてるな」
アルミン「うん! 今朝は何だか凄い調子が良いんだ!」ツヤツヤ
エレン「そ、そうか」
* * *
私はルミ、夜の女。好きなタイプは初心な反応をする可愛い子。
だけどしつこい男はお断り。
―『夜の女』 終わり
71:
・現在公開可能な情報
『少女』
1回目の「蜜月」で登場。
人の性別を変えるとか実は凄い亡者。今宵もアルミンの身体を借りて男を漁る。
「吸性」はサキュバスの業だが、「吸性」転じて「吸生」となり、やる気を出せば生命そのものを吸い取れるようになったらしい。
少女の名前のまま夜遊びさせても不味いので急遽ルミと命名。名前の由来は況や、である。
エレンはポイされた模様。
72:
『殺し合いの仲裁』
憎い男を物置へと呼び出せた。
ようやくだ、僕はナイフの柄をぎゅっと握り締めると物置へ早足に歩く。
昔から鼻持ちならない奴だった。何度○してやろうと考えたものか、それも今日で終わりだ。
物置に到着した。僕が勢いよく扉を開けると憎い男がナイフを持って立っていた。
計画がばれていたのか! しかし構うものか、僕はナイフを構えて憎い男に踊りかかった!
「うっ」
やった! 僕の勝ちだ! 憎い男が血溜まりに倒れている!
興奮冷めやらぬ中、僕は憎い男の死に顔を見た。
…違う、誰だこの少年は!?
どうして勘違いしてしまったのか、そこには憎い男とは似ても似つかない金髪の少年が横たわっている。
なんてことだ、僕は全く関係のない少年を○してしまった。
罪悪感で胸が張り裂けそうだ…もうここには居られない、僕は物置から出ると全力で逃げ出した。
* * *
憎い男に呼び出されて俺は物置にいる。
俺を○す算段だろうがそうはいかない、俺はナイフの柄をぎゅっと握ると憎い男が来るのを待つ。
昔から目障りな奴だった。何度○してやろうかと思ったか、だがそれも今日までだ。
返り討ちにして奴の絶望した死に顔を心行くまで拝んでやる。
物置の扉が開いた。憎い男はやはりナイフを持ってやがった。
先手必勝だ、俺はナイフを構えると憎い男に突進した。
「あっ」
よし! 俺の勝ちだ! 憎い男が血溜まりに倒れている!
予定通りだ、俺は憎い男の死に顔を拝んでやることにする。
…誰だ、知らねえガキじゃねえか!?
興奮してバカになってたのか、俺は全く関係のない金髪のガキを殺してしまったらしい。
畜生、こんなはずじゃなかったのに。俺は物置から飛び出ると一目散に逃げ出した。
* * *
ライナー「アルミン!?」
物置から青い顔したアルミンが出てくるのを見て俺はとっさに抱きとめる。
ライナー「何やってんだお前、ここは封鎖中だって知っているだろ」
アルミン「ごめんねライナー、ちょっと野暮用があって…」
俺は物置の扉に眼をやった。前から気味が悪くて敬遠されていた物置だったが、ある事件が起きてついに封鎖が決まった。
訓練兵の二人が、この物置で何かに取り憑かれたように殺しあったのだ。
アルミン「ねぇライナー…」
ライナー「何だ?」
アルミン「殺されるのは、嫌だね」
ライナー「…そうだな」
もう会話はない。俺は気絶したアルミンを背負うと物置を後にする。
―『殺し合いの仲裁』 終わり
73:
・現在公開可能な情報
『物置に行く男、待つ男』
1回目の「人ご○し」で登場。
お互い死んだことに気づかず物置で殺し合いを続ける迷惑な二人。
放置を決め込んでたアルミンだが実害が出てしまったので仕方なく参戦。
今回は逃がしただけなので成仏はしていない。二人がまた再会することはあるだろうか。
74:
『恋愛相談』
ハンナ「怖いの」
兵舎の壁にもたれながら彼女はそう洩らした。
聞けばフランツという男の子に恋をしているらしい。その思いの丈を伝えたいが、断られた時を考えると勇気が出せないそうだ。
曰く、フランツは格好いいの。
曰く、フランツは優しいの。
曰く、フランツは凄いの。
曰く、フランツはさいっこーなの。
…分るわー。私もアルミンに同じこと思ってるし。ほんと、アルミンは格好―
―そんなこんなで私達は意気投合した。
ハンナ「ありがとう、話したら何だかスッキリしちゃった」
いえいえ楽しい時間だったわ。それでフランツには告白するの?
ハンナ「…うーん、あなたは?」
告白する前に気持ちを見透かされちゃってさ、それにどうしようもない事情もあって叶わなかった。
ハンナ「そっか…」
でもアルミンは傍に居ていいって。嬉しかったな、恋は叶わなかったけど私は今でも幸せなんだ。
だから、何も始まってないのに終わらせちゃ駄目だと私は思うの。あなたは生きてるんだから、何度でも当たって砕ければいい。
ハンナ「ちょっと、振られるの前提みたいに言わないでよ」
ごめんごめん、と私達は笑う。
彼女の目が輝いている、私も少しは役に立てただろうか。
ハンナ「よーしやるぞ! 私フランツに告白する!」
その意気だ! 私も応援してるからね。
ハンナ「ありがとう。そういえば自己紹介まだだったね、私はハンナ。あなたは?」
秘密。
ハンナ「え?」
私と話したことも皆には秘密にね。それじゃ、そろそろ行かなくちゃ。
ハンナ「あ、待って!」
私は足早に逃げていく。
ハンナ、素敵な名前の女の子。生きている時に会えれば友達になれただろうか。
命短し恋せよ乙女、短過ぎた私の分まで彼女には幸せになってほしいものだ。
勿論、だからと言って私が不幸せという意味ではない。
私には、還る背中があるのだ。
―『恋愛相談』 終わり
75:
・現在公開可能な情報
『訓練兵』
1回目の「背徳感」に登場。
訓練中の事故で亡くなったアルミンにベタ惚れの亡者。
現在はアルミンの身体に憑依して第二の人生を満喫中だが、同じく憑依中の少女を若干うざがっている。
眼鏡っ娘らしい。どうでもいいね。
76:
『後悔』
アルミン「お母さんと二人っきりにしてもらえるかな」
男「分った、外にいるよ」
僕の頼みを聞いて、男が部屋を退出する。
部屋には、僕とベッドに寝たきりの夫人だけが残された。
アルミン「…狐狸(※コリ/人を騙す妖怪の総称)」
夫人「その若さでよく…あんたは?」
アルミン「彼の同期です。相談されてここに伺いました」
―君、人には見えない者が見えるんだろ。
―待ってくれ、真面目な話なんだ! 君の周りの奇妙な噂を聞いてピンと来た! お願いだから助けてくれ!
アルミン「彼は寝たきりのあなたを見舞う度、小さな違和感を積もらせていました」
―後悔? 後悔なんてするものか。何も分らないまま、あの母を見舞い続ける方が辛い。
アルミン「彼はどこかであなたが偽者だと気付いている。だから僕に助けを求めた」
―僕は真実が知りたい!
アルミン「彼の本当の母親は既に亡くなっていますね? そしてあなたはその母親に化けて彼を騙している」
夫人「…騙してる、か。あたしは訓練で親の死に目に会えなかったあの子が不憫なだけさ。
あたしが母親に化けてる間は、少なくともあの子は不幸じゃない」
アルミン「確かに、"化けるだけなら"」
ピクリと夫人が眉を顰める。
アルミン「彼の顔色を見れば一目瞭然だ…彼の慙愧(ザンキ/苦しい感情)を餌にしていたな、この狸!」
夫人「…アハハハッ!」
夫人の化けの皮が剥がれ、巨大な古狸が躍り出た。
古狸「青二才が吠えるな!」
古狸がアルミンを組み伏せようと襲い掛かる。しかし彼の胸から飛び出した巨大な狼が、逆に古狸を組み伏せた。
古狸「狼っ…何故こんな強い霊が」
狼「狸なんて久しぶりね。食べていい? こいつ」
アルミン「いいよ、お食べ」
アルミンの言葉に嬉しそうに狼が牙を剥き、古狸の断末魔が辺りに響いた。
* * *
男「何の騒ぎだ!」
獣の悲鳴が部屋から聴こえ、僕は慌てて護身用にナイフを構えて部屋へと入る。
…何だ、これ。
アルミン「…ああ、君」
何で、母のベッドで狸が死んでいる。
アルミン「残念だけど、君のお母さんは既に」
やめろ、黙れ、こんなの違う。母さんを返せよ。
僕は突発的にアルミンの腹にナイフを突き立てる。
抵抗はなかった。彼はただ悲しそうな顔をして僕の頬を撫でる。
アルミン「後悔はしない。君はそう言ったじゃないか」
うるさい。 僕は倒れたアルミンを黙って見下ろす。
…もう母も友もいない、ここには死があるばかりだ。
―『後悔』 終わり
77:
・現在公開可能な情報
『狼』
1回目の「夜を歩く」に登場。
サシャに弓で射殺されて亡者となった牝の狼。
恨みこそ忘れたようだがよくサシャに憑依して遊んでいる。何気に登場回数が多い。
アルミンの身体に歯形の痕があったら大体こいつのせい。
78:
『先生の訪問』
僕はよほどナイフと縁があるのか、最近刺されてばかりのような気がする。
いや、本当に刺されるのは初めてか。病室のベッドの上、僕は眠り疲れた重たい頭で考える。
医者(目が覚めたかい。大丈夫、傷は浅いよ。安静にしていればすぐに退院できるだろう)
医者(彼は牢獄だ。いずれ開拓地へ回されるだろうが、もうまともに働くことは…)
医者(君の友人二人は謹慎中だ…理由は、分るね?)
医者(刑が軽く済んだのは彼らにとって幸いだった…医者としては人を傷つける者は等しく許せんがね)
特に感傷はない。よくあることだ。
だた、エレンとミカサにはすまないことになってしまった。今度ちゃんとお詫びをしなくちゃ。
今は何時だろう。皆は恐らく立体機動の訓練をしてる頃だろうか。
「健在か、アルミン」
懐かしい声が僕の耳をくすぐった。
* * *
ユミル「おいクリスタ、飛ばし過ぎだ!」
クリスタ「大丈夫!」
クリスタのブレードが張りぼての項を削ぎ取った。
普段なら褒めちぎってやるところだが今のクリスタは駄目だ、どう見ても冷静じゃない。
ユミル(クソッ。あの三馬鹿が起こした問題のせいか!)
私はクリスタの尻について必死に度を落とすよう呼びかける。
無視すんなよ、つれねえな。心の中でそう嘯くと、クリスタのアンカーが木に弾かれるのが見えた。
背筋に、冷たいものが伝う。
* * *
先生「やはりそれ位の刺し傷では死なぬか。残念、残念」
アルミン「お見舞いに来てくれたと思ったのに酷いや…お久しぶりです、先生」
僕はクスクス笑いながら先生を見上げる。性格も顔の大きさも相変わらずだ。
アルミン「ここには僕の魂を食べに?」
先生「いんや、ついでの挨拶よ。何やら近くの森が楽しそうでな」
アルミン「…森?」
先生「直、誰か死ぬぞ。楽しみじゃ、楽しくなれそうで楽しみじゃ」
* * *
ユミル「――――! ―――――――――――――!!」
…ユミルの声が聞こえる。
…何を言っているんだろう、よく分らない。
…今、とっても眠いの。だからユミル、また後でね。
…お休みなさい。
ユミル「クリスタ! 頼むよ返事してくれクリスタ!!」
ユミルの腕の中、血だらけのクリスタの顔はまるで眠っているように穏やかだった。
―『先生の訪問』 終わり
79:
・現在公開可能な情報
『先生』
2回目の「先生」に登場。
人の亡者とあれば問答無用で食べに行く頭のでかい怪物。食べる理由は「楽しくなる」から。
幼少アルミンの質問攻めに付き合っているうちに先生の愛称がついた。
アルミンが死んだら「楽しくなる」予定。
80:
『夜を歩く2』
どこかで見た鳥に先導されて、私は夜の森を歩いている。
暫くすると裸の女性達が現れた。
―あら可愛いお嬢さん。私達と遊びましょうよ。後悔はさせないわ。
彼女達は次々に擦り寄って、甘い香りに私は顔を赤くする。
男「失礼。その娘より僕と遊んでくれませんか」
すると綺麗な顔立ちの男が現れそう言った。
―まあ素敵。あら色男。ちょっと抜け駆けしないでよ。
男は彼女達を引きつれ森の奥へ消えてゆく。
彼は去り際こちらに振り返ると、まるで帽子を軽く外して会釈でもするかのように―
―顔を外して私にニヤリと笑って見せた。
* * *
どこかで見た鳥に先導されて、私は夜の森を歩いている。
暫くすると今度は大勢の子供達が現れた。
子供達は私を母と呼ぶと、次々に服を引っ張りあれこれせがむ。
ルミ「こら、その子困ってるじゃない。私がママになってあげるからこっちにおいで」
すると現れた女がそう言って、子供達は嬉しそうに彼女へと駆け寄った。
彼女は子供達を引き連れ森の奥へと消えゆく。
去り際、振り返ることなく私にひらひらと手を振ってくれた。
* * *
どこかで見た鳥に先導されて、私は夜の森を歩いている。
暫くすると今度はアルミンが現れた。
アルミンは私に愛を囁くと、手を引いて鳥の居ない方へと連れて行こうとする。
訓練兵「ちょっと、私のアルミンの顔して何やってくれてんの」
すると怒った顔の女性が出てきて、アルミンを森の奥へと引きずり消えてゆく。
森の奥で悲鳴が聞こえたけど、私は黙って耳を塞いだ。
* * *
鳥の行く先に光が見える。でも、私はもう歩けそうにない。
クリスタ(…もうちょっとだったのにな)
すると今度は大きな狼が現れた。
怖くて目を瞑ったけど、狼は私の頬を優しく舐めるとそれ以上何もしなかった。
恐る恐る目を開ける。狼はその場で伏せるとじっとこちらを見つめていた。乗れと言ってるの?
私が狼に跨ってみると、狼は力強く立ち上がり光に向かって歩き始めた。
―あなたは、あなた達はアルミンのお友達?
狼は答えない。
―また、助けられちゃった。
光が近くなる。
―いつか私も彼を助けたい…私、できるかな?
ガウッと狼は一咆え上げる。
―ありがとう。
遂に、辿り着いた。
視界が、光で溢れてゆく。
―眩しい。
―『夜を歩く2』 終わり
81:
『ありふれた突拍子もない夢・下』
助けなきゃ。不意に、そう思った。
「全く酷い話じゃないか。あんたはあの時、私を助けてくれる気なんてこれっぽっちも無かったんだね」
「結果的には助けることになったんだからそこは許してほしいな。先生にはいつかお礼を言わなきゃいけないね」
「…でも、遇えて嬉しいよ。私がもう石になろうって時なのに、こうして、あんたの話を聞けたんだから」
何の話をしているのかは判らない。
遠くで警鐘が鳴って、私の胸がざわついた。
「また聞かせてあげる、何度でも。ほら、僕の後ろを見てごらん―」
警鐘が大きくなる。少年の背後にはまるで黒い絨毯が広がっていくように巨大な影が落ちた。影から、無数の何かが這い出してくる。
…駄目。そう口から漏れて私の足が動き出した。背後でユミルが何かを言っていたが全く耳に入ってこない。
「僕の怪異達だ――
―彼等はこれからの未来、あるいは過去に出会う怪異達―
―どこまで行けるか判らない。でも、精一杯足掻いて何時かまた君に届けるよ。僕の怪異譚を」
「うん、楽しみにしてるよ。それから―」
駄目だよ、それ以上は。
私の足は二人に向かって全力で駆け出していた。
「―ようやく言える。あの時、あんたに言えなかった言葉―
―ありがとう」
さようなら。その言葉を最期に少女の輪郭がぼやけていく。
いや、お願い、消えないで。
ヒストリア「駄目だよ! そんな別れ方! アニ!!」
絶叫に近い訴えと共に私は二人の名前を思い出した。
アニの姿が消えてしまった。アルミンもまた、背後に出現した怪異達に群がられている。
服を掴まれ、髪を引っ張られ、腕を引かれて怪異の群れの中へと埋もれていく。
ヒストリア「嫌! アルミン! 逃げて!!」
声が届いたのか、初めてアルミンがこちらに振り返る。
アルミン「何時までもこんな所にいちゃいけないよ、クリスタ。もう目を覚ます時間だ」
まるで悪戯した子供をたしなめるような口振りで、まるで何でもないような優しい笑顔で、
それっきり、怪異の渦の中でアルミンの姿は見えなくなってしまった。
―『ありふれた突拍子もない夢・下』 終わり
82:
『夢の終わり』
(―――タ、――スタ)
誰だろう、私を呼ぶ声が聴こえる。
ユミル「クリスタ!」
クリスタ「…ユミル?」
目を覚ますとそこにユミルの顔があった。
どうしたの、ユミル、何だか泣き出しそうな顔してる。
疑問は声にならずただ黙ってユミルの瞳を見つめ返すと、ユミルは私を優しく抱き寄せて肩を震わせた。
―温かい。
ユミル「馬鹿野郎…心配かけさせやがって」
クリスタ「ユミル、苦しいよ」
ユミルの肩越しに私は周囲を見渡した。どうやら病室のベッドの上のようだ。
気付けば他の仲間達も安堵の表情で私を見つめている。皆は代わる代わる私に労わりの言葉を掛けてくれた。
クリスタ「私どうして…」
ユミル「覚えてないのか。お前、立体機動の訓練中に落ちたんだよ。本当に危なかったんだからな」
そうだったんだ。言われてみれば訓練中にアンカーが木に刺さらなかった辺りから記憶がない。
…何だか、とても長い夢を見ていた気がする。
どんな夢だったっけ、記憶を手繰ろうとするが思い出せない。
クリスタ「そういえばアルミンは?」
ユミル「やれやれ、こんな時まで他の奴の心配か。あいつならあっちのベッド寝てるよ、暢気なもんだ」
私はユミルの立てた親指の方向を見る。少し離れた場所にあるベッドにアルミンの寝顔が見えた。
クリスタ「…?」
なんだろう。
ユミル「お前もさっさと寝てさっさと傷治せよ。残念だが私らは撤収の時間だ」
クリスタ「う、うん。皆お見舞いありがとうね」
ユミルが背を向けて、でもほんの少し立ち止まってからまた私の方に振り返る。
ユミル「クリスタ」
クリスタ「何、ユミル?」
ユミル「…おかえり」
クリスタ「…ただいま」
私は病室を出て行く皆に手を振ってから、二人きりとなった病室でもう一度アルミンの方を見る。
…やっぱり、見間違いではなかったようだ。
クリスタ(…なんだろう、薄ぼんやりとだけど)
アルミンのベッドの周りで―
―どこか見覚えのある、3人と1匹が―
―凄く怒った顔をした、頭の大きな怪物と対峙しているのが見えた。
―『夢の終わり』 終わり
83:
皆様、長いことお付き合いありがとうございました。
アルミン怪奇譚全編、これにて全てお終いです。
初のSSに半ばテンパりながらの進行でしたが、無事完結できてよかったです。
千文字に収めるために泣く泣く入れたかった内容を削ったり、
じっくり時間掛ければもうちょっとは完成度上がったんじゃないかなと思う残念な話が多々ありますが、
それら全部含めてこれが私の精一杯です。
最後に重ねてお付き合いありがとうございました。
別のSSに挑戦することがあれば、その時はまた読んでやってください。
それでは、また。
84:
『嘘予告』
エレン奪還作戦の壮絶な死闘から半年――単身、ユミルが調査兵団の元に帰還した。
もう元の生活には戻れない。しかし彼女はそれでも…ただ、ヒストリアと一緒に居られるならばそれでいい―
―筈だった。
ユミル「…なぁヒストリア、これ外してくれよ」クサリツキクビワ
ヒストリア「…それを外して、また私の前から消える気なの?」
ちょっと病んでるヒストリアと―
ヒストリア「ユミル! 行かないで!!」ピャー!
―ちょっと退いてるユミルが送る―
ユミル「便所だ! 個室まで入ってくんな!!」ギャー!
―どたばたハートフルコメディ!
次回作、ユミル「…なぁヒストリア、これ外してくれよ」でお送りします!
ヒストリア「お帰りなさい貴女! クリスタにする? ヒストリアにする? それともわ・た・し?」
ユミル「選択肢ねぇなー畜生」
乞うご期待!
みたいな感じで誰かお願いします。
85:
とてもいいssだった
これで終わりなのが名残惜しいけど

次に期待
86:
乙。いい幻想ホラーだった。
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